(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】再形成された小径先端部を有する外科用縫合糸を製造するシステム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/04 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
A61B17/04
(21)【出願番号】P 2021530176
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(86)【国際出願番号】 IB2019059990
(87)【国際公開番号】W WO2020109935
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512080321
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Ethicon, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ルソー・ロバート・エイ
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0351752(US,A1)
【文献】特表2015-507101(JP,A)
【文献】特開2013-132419(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0030883(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/04 - 17/06
A61L 17/00 - 17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再形成された先端部を有する外科用縫合糸の製造方法であって、
細長い繊維を準備することであって、前記細長い繊維が、第1の端部と、第2の端部と、その前記第1の端部と前記第2の端部との間に延びる中心軸
と、を有する、ことと、
前記細長い繊維の前記第1の端部と前記第2の端部との間に位置する、前記細長い繊維の中央領域を、コア塊と、
前記コア塊から横方向に
突出する変形した塊とに再成形するために前記中央領域を圧縮することと、
前記コア塊のみが、前記細長い繊維の前記第1の端部と前記第2の端部とを相互接続するために残存するように、前記中央領域の前記変形した塊を、前記中央領域の前記コア塊から分離することと、
前記変形した塊を前記コア塊から分離した後、前記コア塊を、前記細長い繊維の前記中心軸からオフセットした再形成塊中心軸を有する再形成された塊に再成形することと、
前記再形成された塊を、前記細長い繊維が延在する方向に対して垂直方向で切断して、前記再形成された塊を2つの部分に分離することによって、前記再形成された先端部を有する前記外科用縫合糸の製造することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記細長い繊維の前記中央領域を圧縮することが、
上面と、前記上面に形成された細長いチャネルとを有する受け型を準備することと、
前記受け型の前記上面に対向する底面を有する上型を準備することと、
前記上型の前記底面が前記受け型の前記上面から離間して配置されている状態で、前記細長い繊維の前記中央領域を前記受け型の前記細長いチャネル内に位置付けることと、
前記上型と前記受け型との間で前記細長い繊維の前記中央領域を圧縮するために、前記上型の前記底面を、前記受け型の前記上面と接触するように移動させることと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変形した塊を前記コア塊から分離することが、前記変形した塊を前記コア塊から切断することを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記変形した塊を前記コア塊から切断することが、前記変形した塊を前記コア塊から切断するための鋭利な切断刃を有する切断要素を使用することを含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記コア塊を再成形することが、
前記変形した塊を前記コア塊から切断した後、前記上型を前記受け型から離れる方向に移動させて、前記上型の前記底面と前記受け型の前記上面との間に間隙を設けることと、
前記コア塊を、切断後の形状から、前記切断後の形状とは異なる再形成された形状に再成形するために、第1の再形成型及び第2の再形成型を、前記上型の前記底面と前記受け型の前記上面との間の前記間隙内に前進させて、前記コア塊に係合させることと、を含む、請求項
3に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の再形成型が、第1の凹曲面を含む第1のJ字形構造を含み、前記第2の再形成型が、第2の凹曲面を含む第2のJ字形構造を含む、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
前記細長い繊維を加熱することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記細長い繊維が生体適合性ポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
遠位先端部を有する外科用縫合糸であって、
近位端と、遠位端と、その前記近位端と前記遠位端との間に延びる中心軸と、第1の断面寸法を画定する第1の外表面と、を有する細長い繊維を含み、
前記細長い繊維は、その前記遠位端に位置する
前記遠位先端部を含み、前記遠位先端部は、前記第1の外表面の前記第1の断面寸法よりも小さい第2の断面寸法を画定する第2の外表面を有し、前記遠位先端部が、前記細長い繊維の前記中心軸からオフセットした中心軸を有する、外科用縫合糸。
【請求項10】
前記遠位先端部の前記第2の外表面の一部分が、前記細長い繊維の前記第1の外表面の一部分と整列されている、請求項
9に記載の外科用縫合糸。
【請求項11】
前記細長い繊維が、前記細長い繊維の前記第1の外表面と前記遠位先端部の前記第2の外表面との間に延在する傾斜遷移表面を更に含む、請求項
10に記載の外科用縫合糸。
【請求項12】
前記細長い繊維が生体適合性ポリマーを含む、請求項
9に記載の外科用縫合糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、概して、外科用縫合糸に関連し、より具体的には、外科用縫合糸を端部処理するためのシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの外科的処置は、外科用縫合針と縫合針に取り付けられた縫合糸との組み合わせを使用して、創傷を閉じる及び/又は組織を近接させる。従来より、ほとんどの外科用縫合針は、針の近位端に位置する針穴を有し、外科用縫合糸をこの針穴に通して縫合糸を針の近位端に取り付けることができた。この設計は、針穴の周囲で折り畳まれる縫合糸ストランドの少なくとも最大直径を収容するための針穴を近位端に形成できるだけの十分な寸法を有する針の近位端を必要とした。縫合糸の最大直径を倍にすることにより、及び針の近位端の寸法を増加させることが必要であることから、針-縫合糸の組み合わせは、組織を通過させる際に大きな断面積を有した。針-縫合糸の組み合わせが組織を通過したときに形成される、結果として生じる穴は、組織を接近させるために使用される後続の縫合糸の断面積よりも実質的に大きかった。
【0003】
長年にわたって、外科手技及び患者の転帰を改善するために、針の近位端に位置する針穴を省略するための、また、縫合糸ストランドを外科用縫合針の近位端に取り付けることができる他の技術及び方法を見出すために、様々な技術が開発されてきた。例えば、1つの改良された縫合糸取り付け技術は、従来の金属形成プロセスによって針の近位端にチャネルを形成することを伴う。この技術では、縫合糸の遠位端はチャネル内に配置され、チャネルは、縫合糸端部を針チャネル内に機械的に固定するために機械的にかしめられる。別の既知の技術は、レーザー孔開加工及び機械的孔開加工などの従来のプロセスを使用して、外科用縫合針の近位端に穿孔を孔開加工することを伴う。同様に、外科用縫合糸の遠位端は、穿孔内に配置され、穿孔を収容している針の近位端は、機械的にかしめられる。これらの技術の多くは、針の近位端の直径又は最大寸法が、取り付けられた縫合糸の細長い本体の直径よりも実質的に大きく、したがって、針-縫合糸の組み合わせを使用して組織を接合する場合、縫合糸は依然として、針によって形成された組織内の得られた穴及び経路を完全に充填しないことを必要とした。
【0004】
改善された外科用縫合針-縫合糸の組み合わせを提供することを目的とした多くの努力がなされてきた。例えば、McGregorに付与された米国特許第3,890,975号は、液体樹脂溶液中に浸漬されたときに張力を加えることによってサイジングが施される編組縫合糸を開示している。縫合糸を乾燥させて溶媒を除去し、コーティングされた領域を凝固させる。編組縫合糸は張力を受けているため、編組要素が軸方向に整列し始めるにつれて直径が減少し、それによってコア繊維を圧縮する。液体樹脂が乾燥すると、張力をかけられてコーティングされた繊維を含む縫合糸のコーティングされた領域又は先端は、縮径構成にロックされる。非コーティング領域は、張力が解放されたときに再び元の直径に戻る。縫合糸が、圧着後に針からより一貫した力で解放されることを確実にするために、サイジング操作が行われる。このプロセスは、編組縫合糸にのみ適用可能であり、最終縫合糸直径は、利用される編組縫合糸の品質又は密度に依存する。
【0005】
Coatesに付与された米国特許第4,832,025号は、外科用縫合針に挿入するための先端領域の溶融融合を伴う、編組縫合糸を処理するための方法を開示している。縫合糸は、マルチフィラメント縫合糸の外側フィラメントの一部分を効果的に「溶融融合」するのに十分な高温に加熱される。このような温度は、典型的には、約260℃~300℃(500°F~572F)の範囲である。次いで、縫合糸は冷却時に硬化する。外側フィラメントの表面溶融は、縫合糸が切断されるときに各フィラメントを一緒に保持する効果を有する。表面溶融はまた、縫合糸の硬化をもたらし、これにより、縫合糸端部を針の孔開加工された穿孔に挿入するのが容易になる。しかしながら、この溶融融合プロセスは、いくつかの重要な欠点を有する。第1に、フィラメントの溶融融合は縫合糸の強さを弱め、その引張強度は、溶融融合の程度に比例して低下する。第2に、溶融融合は、縫合糸フィラメントの不可逆的な変化を引き起こし、その結果、永久的な硬化及び外側編組シース引張強度の有意な損失がもたらされ、その結果、シースがコア繊維とは無関係に破断して外れて、使用中に縫合糸シースの集群を生じさせる可能性がある。
【0006】
Chenらに付与された米国特許第5,007,922号は、小径縫合糸の領域を有するモノフィラメント縫合糸を製造する方法を開示している。縫合糸は、ドラムユニットの周りに螺旋状の形態又は螺旋状に巻かれる。ドラムユニットは、スプリットドラム設計を使用することにより、ドラムの周囲に効果的により大きな円周寸法を作り出すために拡張することができる領域を含む。繊維がドラムの円周の周囲に巻き付けられると、加熱要素が、ドラムの中心軸に平行な軸に沿ってドラムの側面に対して接線方向に配置される。加熱要素は、ドラムの側面に沿ったこの接触線に沿って露出される全ての縫合糸の温度を上昇させる。十分な量の加熱が生じた後、ドラムの円周が増大するようにドラムを作動させる。縫合糸はドラムの円周の周囲に巻き付けられているため、加熱された縫合糸の領域は、この寸法の変化に適応するように延伸される。このプロセスにより、縫合糸の残りの非加熱領域の配向以外に、高度に配向された小径領域が縫合糸内に得られる。分子整列の変化に加えて、露出領域の得られた縫合糸直径は、繊維巻回体の過熱セグメント又は加熱不足のセグメントのいずれかにおいて受けた変形の量に応じて変化する。
【0007】
Lindhらに付与された米国特許第8,216,497号は、外科用途での使用に好適な所定の形状を有する組織保持装置を形成するための様々な方法を開示しており、そのような方法に従って形成された装置も提供されている。これらの方法としては、プレス成形法、及びプレス成形法と外形抜きとの組み合わせが挙げられる。このような方法に従って形成された組織保持装置は、コア、及びコアから外向きに延在する返し部などの複数の組織保持要素のための様々な構成を含む。このプロセスは、中実のかかりのついた要素を形成するために、押出成形された繊維を、形成された繊維成分の複数区間を除去するためにパンチプレスタイプの技術を適用することを可能にする幅広の構成に高温で成形するための方法を提供する。それらの意図は、付加物がこのコアから本質的に延在している状態で、従来の縫合糸の断面積に近い中央領域を維持することである。繊維のコアの断面積は、匹敵する返し部のない縫合糸と同等の大きさであるため、強度は従来の匹敵する繊維と本質的に同じである。プロセスは、開示されるように、繊維の全長の変位に依存して、繊維の打ち抜きに供される均一なビレットを製造する。打ち抜き形成作業は、中心コア領域からの延長部を備えた楕円形状を有する繊維を生成して、繊維が、同等のサイズの円形縫合糸の結節強度要件を満たすことを確実にする。打ち抜き前のビレットを形成するために繊維体積全体が大きく変位していることから、バルク形成プロセスにおける配向の損失に起因して、縫合糸本体の直線引張強度は、未形成押出縫合糸と比べて低くなる。加えて、ビレットの大量生産に依存することから、当該製造に必要なスペースに起因して、成形プロセスと切断プロセスとを結合させて連続的な形成及び切断プロセスにすることはできない。
【0008】
上記で特定された方法論の多くは、縫合糸の本体が、針穴のない針にチャネル又は穿孔のいずれかにおいて取り付けられるか又は装着される縫合糸の部分(例えば、先端)よりも実質的に大きい、多径縫合糸を製造する。小径の縫合糸先端部を製造するためのプロセスは、典型的には、繊維剛性の増加又は縫合糸直径の一貫性の喪失を引き起こすことによって、縮径部分内の縫合糸の可撓性を負の方法で変更するが、それにより様々な針取り付け強度が生まれる。
【0009】
従来技術の縫合糸端部処理プロセスは、それらの意図される目的に適切であるが、それらの使用に付随する特定の欠点が存在する。欠点としては、端部処理された領域における縫合糸の可撓性の喪失、端部処理された領域のフィブリル化、縫合糸材料の降伏応力の変化、完成した先端の幾何学的形状のばらつき、及び非編組縫合糸への限定された適用可能性、並びに繊細な工具への依存が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、外科的処置中に外科医が組織に針を通すことによって生じた組織内の孔及び経路が、縫合糸の本体によって実質的に充填されるように、針の最大直径と縫合糸の最大直径とが同じサイズである、外科用縫合針-縫合糸の組み合わせが依然として必要とされている。この要件は、血管に富んだ組織を接合又は接近させる際に、針によって作られた経路及び孔を通して血液が滲出又は浸透するのを防ぐために、特に重要である。この要件はまた、細菌の経路を閉鎖して感染を予防するためにも重要である。
【0011】
更に、縫合糸先端部の物理的寸法を改善することによって一貫した針取り付け強度を提供しながら、縫合糸の材料特性である降伏応力及び針取り付け位置における縫合糸可撓性を維持する、小さくされた断面積の再形成された先端部を有する縫合糸を製造するための改善されたシステム、装置及び方法が依然として必要とされている。また、従来技術で見出された欠点を克服する新規先端構造又は部分を有するモノフィラメント縫合糸を製造するための改善されたシステム、装置及び方法も依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態では、再形成された先端部を有する外科用縫合糸の製造方法は、好ましくは、細長い繊維を準備することであって、細長い繊維が、第1の端部と、第2の端部と、その第1の端部と第2の端部との間に延びる中心軸と、細長い繊維の断面寸法を画定する外表面と、を有する、ことと、細長い繊維の第1の端部と第2の端部との間に位置する、細長い繊維の中央領域を、コア塊と、細長い繊維の断面寸法の外側に横方向に延在する変形した塊とに再成形するために中央領域を圧縮することと、を含む。
【0013】
一実施形態では、望ましくは、コア塊のみが、細長い繊維の第1の端部と第2の端部とを相互接続するために残存するように、中央領域の変形した塊を、中央領域のコア塊から分離することと、変形した塊をコア塊から分離した後、コア塊を、細長い繊維の中心軸からオフセットした再形成塊中心軸を有する再形成された塊に再成形することと、を含む。
【0014】
一実施形態では、細長い繊維の中央領域を圧縮する工程は、好ましくは、細長い繊維の外表面の少なくとも2つの側面を圧縮するための型を使用することを含む。
【0015】
一実施形態では、細長い繊維の中央領域を圧縮する工程は、変形した塊を形成するために細長い繊維の1つの側面を拘束しない一方で、コア塊を形成するために細長い繊維の中央領域の少なくとも3つの側面を拘束するための型を使用することを含むことができる。
【0016】
一実施形態では、細長い繊維の少なくとも2つの側面を圧縮するための型を使用する工程は、望ましくは、上面と、上面に形成された細長いチャネルとを有する受け型を準備することと、受け型の上面に対向する底面を有する上型を準備することと、上型の底面が受け型の上面から離間して配置されている状態で、細長い繊維の中央領域を受け型の細長いチャネル内に位置付けることと、を含む。一実施形態では、方法は、好ましくは、上型と受け型との間で細長い繊維の中央領域を圧縮するために、上型の底面を、受け型の上面と接触するように移動させることを含む。
【0017】
一実施形態では、変形した塊は、変形した塊をコア塊から切断することによってコア塊から分離されてもよい。一実施形態では、変形した塊は、変形した塊をコア塊から切断するための鋭利な切断刃を有する切断要素を使用することによって、コア塊から切断されてもよい。
【0018】
一実施形態では、コア塊を再成形することは、変形した塊をコア塊から切断した後、上型を受け型から離れる方向に移動させて、上型の底面と受け型の上面との間に間隙を設けることと、コア塊を、切断後の形状から、切断後の形状とは異なる再形成された形状に再成形するために、第1の再形成型及び第2の再形成型を、上型の底面と受け型の上面との間の間隙内に前進させて、コア塊に係合させることと、を含んでもよい。
【0019】
一実施形態では、第1の再形成型は、第1の凹曲面を有する第1のJ字形構造を含んでもよく、第2の再形成型は、第2の凹曲面を有する第2のJ字形構造を含んでもよい。
【0020】
一実施形態では、方法は、細長い繊維を加熱することを含んでもよい。一実施形態では、細長い繊維は、生体適合性ポリマーを含んでもよい。
【0021】
一実施形態では、再形成された先端部を有する外科用縫合糸を製造するためのシステムは、受け型であって、上面と、底面と、受け型の第1の端部と第2の端部との間に延在する、上面に形成された細長いチャネルと、を有する、受け型を含み得る。一実施形態では、細長いチャネルは、好ましくは、第1の端部と、第2の端部と、縫合糸チャネルの第1の端部と受け型の第1の端部との間で下方に延在する第1の傾斜した面と、縫合糸チャネルの第2の端部と受け型の第2の端部との間で下方に延在する第2の傾斜した面と、を含む。
【0022】
一実施形態では、再形成された先端部を有する外科用縫合糸を製造するためのシステムは、好ましくは、上面と、受け型の上面に対向する底面とを有する上型を含む。一実施形態では、システムは、望ましくは、上型の底面が受け型の上面から離間している型が開いた位置と、上型の底面が受け型の上面と接触している型が閉じた位置と、を有する。
【0023】
一実施形態では、システムは、受け型及び上型と連結された切断要素を含んでいてもよい。一実施形態では、システムは、上型の底面及び受け型の上面と交差する切断要素移動軸に沿って、上型及び受け型を通って延在する切断要素ガイドスロットを有してもよい。一実施形態では、切断要素は、好ましくは、切断要素ガイドスロットの切断要素移動軸内を、上型の上面に向かう第1の方向、及び受け型の底面に向かう第2の方向に摺動するように適合されている。
【0024】
一実施形態では、受け型内に位置する縫合糸チャネルは、好ましくは、受け型の上面と平行な平面内に延在する縫合糸着座面を含む。一実施形態では、第1の傾斜した面は、好ましくは、縫合糸チャネルの第1の端部と受けチャネルの底面との間で下向きに傾斜している。一実施形態では、第2の傾斜した面は、好ましくは、縫合糸チャネルの第2の端部と受け型の底面との間で下向きに傾斜している。
【0025】
一実施形態では、切断要素は、上端部と、下端部と、切断要素の上端部と下端部との間に位置する鋭利な切断縁部と、鋭利な切断縁部の両端に位置する第1のガイド脚部及び第2のガイド脚部と、を有してもよい。切断要素のガイド脚部は、好ましくは、切断要素の摺動運動を案内するための切断要素ガイドスロットを通過する。
【0026】
一実施形態では、システムは、縫合糸再形成アセンブリであって、第1の再形成型及び第2の再形成型を含み、第1の再形成型及び第2の再形成型は、細長い繊維のコア塊を再成形するために、第1の再形成型と第2の再形成型とが、切断要素の第1のガイド脚部と第2のガイド脚部との間で一緒に接合される伸張位置と、第1の再形成型と第2の再形成型とが互いに離間している後退位置と、を有してもよい。
【0027】
一実施形態では、軸外遠位先端部を有する外科用縫合糸は、好ましくは、近位端と、遠位端と、その近位端と遠位端との間に延びる中心軸と、第1の断面寸法を画定する第1の外表面と、を有する、生体適合性ポリマー材料で作製された細長い繊維などの細長い繊維を含む。一実施形態では、細長い繊維は、好ましくは、その遠位端に位置する遠位先端部を含み、遠位先端部は、第1の外表面の第1の断面寸法よりも小さい第2の断面寸法を画定する第2の外表面を有する。一実施形態では、遠位先端部は、好ましくは、細長い繊維の中心軸からオフセットした中心軸を有する。
【0028】
一実施形態では、遠位先端部の第2の外表面の一部分は、細長い繊維の第1の外表面の一部分と整列されてもよい。
【0029】
一実施形態では、細長い繊維は、細長い繊維の第1の外表面と遠位先端部の第2の外表面との間に延在する傾斜遷移表面を含んでもよい。
【0030】
一実施形態では、再形成された小径の遠位先端部を有する外科用縫合糸を製造するためのシステムは、好ましくは、第1のローラーであって、第1のローラーの外周に沿って延在する、第1のローラー内部に形成された第1の溝を有する、第1のローラーと、第1のローラーに対向する第2のローラーであって、第2のローラーの外周に沿って延在する、第2のローラー内部に形成された第2の溝を有する、第2のローラーと、を含む。
【0031】
一実施形態では、システムは、望ましくは、第1のローラーと第2のローラーとを接近させるための駆動システムであって、細長い繊維のある部分を、細長い繊維のコア塊及び細長い繊維の少なくとも1つの変形した塊に再形成するために、第1のローラー及び第2のローラーが細長い繊維の部分上で駆動されたときに、細長い繊維の両側に接触させて、第1のローラーの外周と第2のローラーの外周との間の細長い繊維を圧縮するための、駆動システムを含む。
【0032】
一実施形態では、システムは、好ましくは、細長い繊維のコア塊のみが、細長い繊維の第1の端部と第2の端部とを相互接続するために残存するように、細長い繊維の少なくとも1つの変形した塊を、細長い繊維のコア塊から切断するための切断要素を含む。
【0033】
一実施形態では、システムは、好ましくは、第1の再形成型及び第2の再形成型を有する縫合糸再形成アセンブリを含み、第1の再形成型及び第2の再形成型は、コア塊を再成形するために第1の再形成型及び第2の再形成型の対向面がコア塊の両側と係合する伸張位置と、第1の再形成型と第2の再形成型とが互いに離間しており、コア塊の両側と接触していない後退位置との間で移動する。
【0034】
一実施形態では、本特許出願は、より大きく頑丈なツールの使用を可能にするために、二次再形成操作と結合された、細長い繊維の片面形成及びトリミングを伴うシステム、装置及び方法を開示している。
【0035】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、組織を接合するために使用されるときに、針によって生成された孔が、組織を接合するモノフィラメント縫合糸によって実質的に充填されることになる、針-縫合糸の組み合わせを製造するために使用されてもよい。
【0036】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、モノフィラメント縫合糸上の新規な縫合糸先端部分を製造するために使用されてもよい。
【0037】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、新規なオフセット軸及び/又は非対称形態を有する先端を有する縫合糸を製造するために使用されてもよい。
【0038】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、モノフィラメント縫合糸上の新規先端部分を製造するために使用されてもよい。
【0039】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、様々なポリマー又は延性材料のモノフィラメントから断面積が小さくされた外科用縫合糸を製造するために使用されてもよい。一実施形態では、モノフィラメントは、縫合糸本体の変形した断面部分を製造するために、任意選択的に熱処理と結合された、繊維要素の機械的成形に供される。変形した縫合糸本体領域は、続いて、抜き型又は打ち抜き型内でトリミング形成作業に供される。縫合糸本体領域の縮径部分は切断されて、断面積が小さくされた端部部分を有する縫合糸を形成する。一実施形態では、各縮径領域は、トリミングされて断面積が小さくされた部分のほぼ中央で切断されて、断面積が小さくされた両端部を有する縫合糸を形成する。
【0040】
一実施形態では、縫合糸の中央領域を圧縮して、平坦化部分を有する中央領域を作成てもよい。一実施形態では、平坦化された中央領域の少なくとも一部は、縫合糸の主本体部分の中心軸からオフセットされた小さくされた断面積を有する中央領域を提供するために、除去(例えば、切断)されてもよい。除去操作は、切断、剪断、超音波、熱、レーザーアブレーション、又は他のエネルギーに基づく装置によって達成され得る。
【0041】
一実施形態では、小さくされた断面積は、遷移部分と、外周を有する断面を有する先端部分と、を提供するための第2の形成操作に供され、これにより、先端部分の断面の最大寸法は、縫合糸本体の最大断面寸法よりも小さくなる。
【0042】
一実施形態では、小さくされた断面積は、縫合糸本体の断面形状と同様の断面形状を有する先端部分を提供するための第2の形成操作に供されてもよい。
【0043】
一実施形態では、切断することで断面積を小さくすることによって、外科用縫合針の近位端の孔又は開口部に挿入されるように適合及び/又は構成された先端部分を形成することができる。
【0044】
本発明のこれら及びその他の好ましい実施形態は、以下でより詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本特許出願の一実施形態による、上型、受け型、及び切断要素を備える、再形成された小径先端部を有する縫合糸を作製するためのシステムの分解図である。
【
図4A】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸を製造するための、
図1に示したシステムを使用する方法の段階を示す。
【
図4B】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸を製造するための、
図1に示したシステムを使用する方法の段階を示す。
【
図4C】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸を製造するための、
図1に示したシステムを使用する方法の段階を示す。
【
図4D】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸を製造するための、
図1に示したシステムを使用する方法の段階を示す。
【
図5A】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図5B】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図5C】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図5D】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図5E】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図5F】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図6A】本特許出願の一実施形態による、大径の第1の端部及び第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間に位置する再形成された小径先端部とを有する縫合糸の側面図である。
【
図6B】再形成された小径先端部(red cued diameter tip)と、大径の第1の端部とを含む、
図6Aに示した縫合糸の断面端面図である。
【
図7A】本特許出願の一実施形態による、大径の第1の端部及び第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間に位置する再形成された小径先端部と、を有する縫合糸の側面図である。
【
図7B】大径の第1の端部を含む、
図7Aに示した縫合糸の断面端面図である。
【
図8】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の断面端面図である。
【
図9】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の断面端面図である。
【
図10】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の断面端面図である。
【
図11】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の断面端面図である。
【
図12】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の断面端面図である。
【
図13】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の断面端面図である。
【
図14A】本特許出願の一実施形態による、第1のローラー、第2のローラー、及び切断型を備える、再形成された小径先端部を有する縫合糸を製造するためのシステムの斜視図である。
【
図14B】第1のローラー及び第2のローラーが縫合糸の外表面と係合するときの、
図14Aのシステムである。
【
図15A】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図15B】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の製造方法の段階を示す。
【
図16】本特許出願の一実施形態による、再形成された小径先端部を有する縫合糸の遠位端を、外科用縫合針の近位端に取り付ける方法の段階を示す。
【
図17】本特許出願の一実施形態による、縫合糸の遠位端が外科用縫合針の近位端に固定された後の、
図16の再形成された小径先端部を有する縫合糸及び外科用縫合針である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1を参照すると、一実施形態では、再形成された小径先端部を有する縫合糸を作製するためのシステムは、好ましくは、上面104及び底面106を有する上型102を含む。一実施形態において、上型は、上型の上面104から底面106まで延在する第1の切断要素ガイドスロット108を含むことが望ましい。
【0047】
一実施形態では、システム100は、好ましくは切断要素110を含み、この切断要素110は、切断要素110の下端まで延在する第1の切断要素ガイド脚部116と第2の切断要素ガイド脚部118との間に延在する、鋭利な切断縁部114を有する角度のついた刃112を備えている。
【0048】
一実施形態では、システム100は、望ましくは、小径先端部を有する縫合糸を形成するために切断及び/又はトリミングされる縫合糸を受容するように適合された受け型120を含む。受け型120は、好ましくは、受け型の第1の端部124から第2の端部126まで延在する上面122を有する。一実施形態では、受け型120は、望ましくは、受け型の第1の端部124から第2の端部126まで延在する、上面122に形成された細長いチャネル128を含む。一実施形態では、細長いチャネル128は、望ましくは、縫合糸が切断要素110を使用してトリミングされるように、縫合糸(例えば、縫合糸の中央領域)を着座させるように適合された縫合糸チャネル130を含む。細長いチャネル128は、望ましくは、切断要素110の第1切断要素ガイド脚部116及び第2の切断要素ガイド脚部118を受容するように適合された第2の切断要素ガイドスロット132を含む。一実施形態では、上型の第1の切断要素ガイドスロット及び受け型の第2の切断要素ガイドスロットは、好ましくは、互いに整列され、これにより、切断要素は、先端形成プロセスの一部として、縫合糸から横方向に延在する塊を切断するために上型及び受け型内で上下に摺動することができるようになる。
【0049】
一実施形態では、受け型120は、望ましくは、受け型の第1の端部124に位置する、細長いチャネル128内に形成された第1の傾斜斜面134を含む。受け型120は、好ましくは、受け型の第2の端部126に隣接して位置する、細長いチャネル128内に形成された第2の傾斜斜面136を含む。一実施形態では、縫合糸の中央領域が縫合糸チャネル130の上に配置されると、縫合糸チャネル130内に位置付けられていない縫合糸の外側端部(例えば、中央領域との境界となる第1の端部及び第2の端部)は、それぞれの第1の傾斜斜面134及び第2の傾斜斜面136内で自由に下方に傾斜する。縫合糸が受け型120の細長いチャネル128を通過する際の縫合糸の細長い本体への損傷を最小限にするために、好ましくは、各傾斜斜面134、136それぞれの外側端部にリリーフ構造(relief form)138が位置している。
【0050】
図2を参照すると、一実施形態では、再形成された小径先端部を有する縫合糸を作製するために、縫合糸140の中央領域140Aは、受け型120の上面122に形成された細長いチャネル128内に好ましくは位置する縫合糸チャネル130(
図1)の上に位置付けられてもよい。一実施形態では、縫合糸140は、好ましくは受け型120の上面122に形成された細長いチャネル128の長手方向軸に沿って延在する細長い繊維である。縫合糸チャネル130(
図1)内に着座していない縫合糸140の第1の端部140B及び第2の端部140Cは、受け型120に形成された第1の傾斜斜面134(
図1)及び第2の傾斜斜面136上で自由に下方に傾斜する。
【0051】
図3A及び
図3Bを参照すると、一実施形態では、受け型120は、好ましくは、上面122に形成された細長いチャネル128を備えた上面122を有する。一実施形態では、細長いチャネル128は、好ましくは、受け型の第1の端部124から第2の端部126まで延在する。受け型は、好ましくは切断要素110(
図1)によってトリミングされることになる縫合糸140(縫合糸の中央領域140Aなど)を着座させるように適合された、縫合糸チャネル130を含むことが望ましい。一実施形態では、縫合糸チャネル130は、実質的に平坦であり、かつ受け型120の上面122と平行である縫合糸支持面を含んでもよい。縫合糸支持面は、縫合糸の第1の端部140B及び第2の端部140Cが、受け型の第1傾斜斜面134及び第2の傾斜斜面136の上にそれぞれ延在することを可能にしながら、縫合糸の中央領域140Aを着座させることができる。
【0052】
一実施形態では、受け型120は、好ましくは、受け型120の第1の端部124に隣接する第1の傾斜斜面134と、受け型120の第2の端部126に隣接する第2の傾斜斜面136と、を含む。第1の傾斜斜面134及び第2の傾斜斜面136は、望ましくは、縫合糸チャネル130の縫合糸着座面から離れる方向に下方に傾斜している。縫合糸140が縫合糸チャネル130の縫合糸支持面上に位置付けられると、縫合糸の第1の端部140B及び第2の端部140Cは、第1の傾斜斜面134及び第2の傾斜斜面136の傾斜した面にそれぞれ適合し得る。
【0053】
一実施形態では、受け型120は、好ましくは、切断要素110(
図1)の切断要素ガイド脚部116、118及び鋭利な切断縁部114を受容するように適合された、切断要素の上下運動を案内するための第2の切断要素ガイドスロット132を含む。一実施形態では、第2の切断要素ガイドスロットの外側端部は、好ましくは、受け型の第1傾斜斜面134及び第2の傾斜斜面136とそれぞれ位置合わせされる。
【0054】
図4Aを参照すると、一実施形態では、縫合糸140は、好ましくは、受け型120の細長いチャネル128内に形成された縫合糸チャネル130(
図3B)内に位置付けられる。切断及び/又はトリミングされる縫合糸140の中央領域140Aは、好ましくは、切断要素110の鋭利な切断縁部114と整列される。縫合糸140の第1の端部140B及び第2の端部140Cは、受け型120の第1の端部124及び第2の端部126に隣接する第1の傾斜斜面134(
図3B)及び第2の傾斜斜面136上で自由に下方に傾斜する。切断要素110の第1の切断要素ガイド脚部116及び第2の切断要素ガイド脚部118は、望ましくは、受け型120内に形成された第2の切断要素ガイドスロット132に挿入される。切断要素110の上端部は、好ましくは、上型102に設けられた第1の切断要素ガイドスロット108内に配置される。一実施形態では、第1の切断要素ガイドスロット108及び第2の切断要素ガイドスロット132は、望ましくは、上型102、受け型120及び切断要素110が一体に組付けられると、互いに整列して、縫合糸切断形成動作中に切断要素の上下摺動運動を案内する。
【0055】
図4Bを参照すると、一実施形態では、上型102は、受け型120から離間して、上型102の底面106及び下型120の上面122から延在する間隙Gを画定することができる。切断要素110は、上型102に設けられた第1の切断要素ガイドスロット108内に配置され、切断要素110の第1のガイド脚部116及び第2のガイド脚部118は、受け型120に設けられた第2の切断要素ガイドスロット132内に配置される。
図4Bに示される開位置では、縫合糸140は、上型102の底面106と受け型120の上面122との間を、上型102又は受け型120のいずれとも接触することなく、自由に通過することができる。一実施形態では、縫合糸140は、縫合糸140の中央領域140Aが受け型120の縫合糸チャネル130(
図1)と整列し、中央領域140Aが、切断要素110の第1切断要素ガイド脚部116と第2の切断要素ガイド脚部118との間に位置付けられるまで、方向DIR1に前進することができる。この位置では、縫合糸140の中央領域140Aはまた、第1切断要素ガイド脚部116と第2の切断要素ガイド脚部118との間に延在する切断要素110の鋭利な切断縁部114とも整列する。
【0056】
図4Cを参照すると、一実施形態では、縫合糸を上型、切断要素及び受け型に対して適切に整列させるための縫合糸140の割出動作が完了した後、好ましくは、上型102の底面106が受け型120の上面122と接触するように上型102及び受け型120を緊密に接近させる。一実施形態では、圧力を、好ましくは、上型102及び受け型120を通して加えて、縫合糸140の中央領域140A(
図4B)をその元の押出形状から変形させる。中央領域の変形した塊は、細長い縫合糸本体の通常の外側面を越えて横方向に延びる。変形させる縫合糸の中央領域は、好ましくは、切断要素110の第1の切断要素ガイド脚部116と第2の切断要素ガイド脚部118との間に位置する空間とほぼ一直線に位置付けられた縫合糸140の軸線に沿って存在する。
【0057】
図4Dを参照すると、一実施形態では、切断要素110は、
図4Cに示される上の位置から、
図4Dに示される下の位置まで移動して、切断要素110の第1の切断要素ガイド脚部116と第2の切断要素ガイド脚部118(
図4C)との間に位置する縫合糸の変形した塊を切断、トリミング及び/又は剪断して外すことができる。変形した塊142の切断部分は、好ましくは廃棄材料として除去される。受け型120の傾斜した端部傾斜面と位置合わせされている縫合糸140の第1の端部部分140B及び第2の端部部分140Cは、好ましくは、上型102と傾斜斜面の対向する面の間で、それらの全長の一部分にわたって、圧縮されているだけである。
図4Dは、リリーフ構造138を有する第2の傾斜斜面136を示す。
【0058】
図5Aを参照すると、一実施形態では、縫合糸140の中央領域140Aは、好ましくは、受け型120の縫合糸チャネル130内に位置付けられる。切断動作の一段階中、上型102は、好ましくは、上型102の底面106と受け型120の上面122との間に間隙Gが存在するように受け型120の上方に離間配置される。第1の切断要素ガイド脚部116及び第2の切断要素ガイド脚部118は、望ましくは、切断要素110の上下運動を案内するために、受け型120の第2の切断要素ガイドスロット132内に位置付けられる。切断要素110の上端部は、好ましくは、上型102の上面104から底面106まで延在する第1の切断要素ガイドスロット108内に配置される。縫合糸を切断及び/又はトリミングするために上型及び受け型が一体に組付けられると、第1の切断要素ガイドスロット108及び第2の切断要素ガイドスロット132は、好ましくは、切断要素の上下摺動運動を案内するために互いに整列される。
【0059】
図5Bを参照すると、一実施形態では、上型102が受け型120上に閉じられ、これにより、縫合糸140は、上型102の底面106と、受け型120の上面122に形成された縫合糸チャネル130との間で圧縮される。縫合糸チャネル130内に配置された縫合糸140の中央領域140A(
図3A及び
図3B)は、変形させられて、縫合糸チャネル130の境界内に留まるコア塊143と、切断要素110の第1の切断要素ガイド脚部116と第2の切断要素ガイド脚部118との間に横方向に突出する変形した塊145と、を提供する。切断要素110の鋭利な切断縁部114は、望ましくは、縫合糸140のコア塊143と縫合糸の変形した塊145との間に位置付けられる。
【0060】
図5B-1、
図5B-2、及び
図5B-3を参照すると、縫合糸140が上型102と受け型120(
図5B)との間で圧縮されるとき、縫合糸チャネル130(
図5B)の上に位置する縫合糸140の中央領域140Aの底面は平坦化され、第1の傾斜斜面134及び第2の傾斜斜面136(
図3B)のそれぞれに覆い被さる縫合糸の第1の端部140B及び第2の端部140Cは、縫合糸140の圧縮された平坦な中央領域と、圧縮されていない第1の端部140B及び第2の端部140Cとの間に延在する、縫合糸の傾斜した遷移領域140D、140Eを画定する。縫合糸140の中央領域140Aが圧縮されると、縫合糸の変形した塊145は、切断要素110の鋭利な切断縁部114に曝されるように、第1の切断要素ガイドスロット108及び第2の切断要素ガイドスロット132内へと横方向に(縫合糸の長手方向軸に対して)突出する。
【0061】
図5Cを参照すると、一実施形態では、切断要素110は、受け型120の底部に向けて下げられてもよく、その際、切断要素の鋭利な切断縁部114は、縫合糸の変形した塊145を縫合糸のコア塊143から切り取る。縫合糸140の残りのコア塊143は、縫合糸の切断されていない第1の端部140B及び第2の端部140C(
図5B-2)と比べて低減された幅を有する。一実施形態では、変形した塊145は、切り取られた後、システム100から廃棄物として除去される。
【0062】
図5Dを参照すると、一実施形態では、縫合糸140が切断要素110によって切断された後、コア塊143は縫合糸の第1の端部と第2の端部とを相互接続するために残存する。一実施形態では、切断要素110の鋭利な切断縁部114は後退し、上型102は、好ましくは、上型102の底面106と受け型120の上面122との間には間隙Gが再び存在するように受け型120から離れる方向に移動する。上型102が受け型120から離れる方向に移動するにつれて、上型と受け型の対向面の間の横方向のアクセス間隙Gが増大し得る。
【0063】
上型102及び受け型120が互いから離れる方向に移動して、それらの間に横方向の間隙Gを提供した後、再形成プロセスが、第1の再形成型150及び第2の再形成型152を利用してコア塊143に対して実施されてもよい。一実施形態では、第1の再形成型150は、J字形の形成面を提供する下部延長部156を含む凹曲面54を有する。同様に、第1の再形成型150に対向する第2の再形成型152は、凹曲面158と、J字形の形成面を画定する延長部160と、を有する。一実施形態では、第1の再形成型150及び第2の再形成型152は、縫合糸140のコア塊143を押圧して再成形するために互いに向かって移動するように構成され、円筒形状の外側外形を有し得る再形成された塊を提供する。
【0064】
図5Eを参照すると、一実施形態では、第1の再形成型150及び第2の再形成型152が閉じられると、縫合糸140のコア塊143は、対向するJ字形の形成面の間で再成形及び/又は再形成される。一実施形態では、コア塊143は、望ましくは、第1の再形成型150及び第2の再形成型152によって押圧されて、より円形及び/又は円筒形の外形に再成形される。
【0065】
図5Fを参照すると、一実施形態では、コア塊143が再形成された後、第1の再形成型150及び第2の再形成型152は後退されてもよく、それによって、縫合糸140の再形成されたコア塊143は、縫合糸140の元の切断されていない領域の中心軸(点によって表される)と同軸でない中心軸(十字形よって表される)を有する。
【0066】
本明細書に開示されるシステム、装置、及び方法は、任意の従来のモノフィラメント縫合糸と共に使用されてもよい。本明細書に開示されるシステム、装置及び方法を使用して端部処理された得る市販のモノフィラメント縫合糸の例としては、PROLENE(登録商標)縫合糸、PRONOVA(登録商標)縫合糸、PDS(登録商標)縫合糸、NUROLON(登録商標)縫合糸という商標で販売されている縫合糸、並びに外科用腸縫合糸、及びステンレス鋼縫合糸などが挙げられる。縫合糸は、外科用腸などの合成材料及び天然材料の両方の従来の生体適合性ポリマー材料から作製されてもよい。縫合糸は、吸収性若しくは非吸収性ポリマー、又はこれらの組み合わせから作製されてもよい。吸収性ポリマーとしては、ラクチド、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、グリコリド、ポリジオキサノン、ポリカプロラクトン、これらのコポリマー及びこれらのブレンドなどの、従来の生体適合性ポリマーが挙げられる。非吸収性ポリマーとしては、従来の生体適合性ポリマー、例えば、ポリオレフィン/ポリアミド(ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)及びポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン61)のコポリマー及びこれらのブレンド)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチルテレフタレート、コポリマー、及びこれらのブレンド)、フルオロポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン及びフッ化ポリビニリデン)ポリオレフィン(例えば、アイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレン及びこれらのブレンドを含むポリプロピレン、並びに、主にヘテロタクチックポリプロピレンとブレンドされたアイソタクチック及びシンジオタクチックポリプロピレンからなるブレンド(参照により本明細書に援用される、Ethicon,Inc.に譲渡された1985年12月10日発行の米国特許第4,557,264号に記載されている)及び超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。縫合糸はまた、外科用ステンレス鋼、ニチノールなどを含む従来の生体適合性金属及び金属合金から作製されてもよい。
【0067】
本明細書に開示される端部処理された縫合糸は、サイズ5~サイズ10-0の範囲の縫合糸サイズを有してもよい。一実施形態では、本明細書に開示される端部処理された縫合糸は、外科用ステンレス鋼、タングステン-レニウム合金などを含む金属合金などの従来の生体適合性材料から作製された従来の外科用縫合針に取り付けられてもよい。所望であれば、外科用縫合針は、セラミック、ポリマー材料、及び複合材などの生体適合性材料から作製されてもよい。針は、好ましくは、遠位縫合糸先端部を受容して針に装着するための孔開加工された穿孔又はチャネル付き特徴部を有する近位針装着端部を有する。縫合糸先端部は、機械的かしめ、糊付け、溶融などを含む従来の取り付け技術によって、外科用縫合針の近位縫合糸装着端部に装着又は固定される(すなわち、取り付けられる)ことができる。一実施形態では、縫合糸先端部が適所に装着されて固定された(すなわち、取り付けられた)後の針の近位装着端部における最大外側寸法は、好ましくは、針の本体の最大直径と等しい。
【0068】
図6A~
図6Cを参照すると、縫合糸140の中央領域140A内のコア塊143が再形成型によって再形成された後、再形成された塊143は、縫合糸140の変更されていない第1の端部140B及び第2の端部140Cの中心軸A
1と同軸でない中心軸A
2を有する。一実施形態では、再形成された塊143は、好ましくは、再形成された塊143のより小さい断面寸法OD
1から、縫合糸の第1の端部140B及び第2の端部140Cのより大きい断面寸法OD
2に遷移する、概ね非対称の円錐構造を画定する傾斜遷移領域147を含む。
【0069】
図7A及び
図7Bを参照すると、一実施形態では、再形成型に供された縫合糸140’の中央領域140A’は、中央領域に概ね丸い外形を形成する。この実施形態では、縫合糸の遷移部分147’は、部分的にのみ再形成され、元のトリミングされた表面のセグメントSは残っている。
【0070】
本特許出願の特定の実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、様々な断面構成を有する外科用縫合糸を製造するために利用され得る。
図8を参照すると、一実施形態では、縫合糸240の再形成された先端部240Aは、縫合糸の変更されていない部分240Bと同軸ではなく、これは、再形成された先端部240Aの中心軸の印Xと、縫合糸240の元の非変更領域240Bの中心軸のドットとの対比によって示されている。
図8に示される実施形態では、再形成された先端部240Aは、縫合糸の元の非変更領域240Bの外周の一部285と整列している、その外周の1つの部分275を有する。
【0071】
図9を参照すると、一実施形態では、縫合糸340の再形成された先端部340Aは、縫合糸の非変更部分340Bと同軸ではなく、これは、再形成された先端部340Aの中心軸を指定する印Xと、縫合糸340の非変更部分340Bの中心軸を指定するドットとの対比によって示されている。
【0072】
図10を参照すると、一実施形態では、縫合糸440の再形成された先端部440Aは、縫合糸の非変更部分440Bと同軸であり、これは、再形成された先端部440Aの中心軸を指定する印Xが、縫合糸440の非変更領域440Bの中心軸を指定するドットと整列していることによって示されている。再形成された先端部440Aは、縫合糸の非変更領域440Bの外側寸法よりも小さい外側寸法を有する。
【0073】
図11~
図13を参照すると、特定の実施形態では、それぞれの縫合糸540、640、740の再形成された先端部540A、640A、及び740Aの小径部分に関しては、他の再形成された形状が実現可能である。これらの異なる形状は、様々な形状を有する再形成型を使用して、又は再形成型の部分閉鎖によって得ることができる。
【0074】
図14Aを参照すると、一実施形態では、縫合糸840を成形して、再形成された小径先端部を有する縫合糸を作製するためのシステム800は、好ましくは、その外周に形成された凹溝などの溝804を有する第1の形成ローラー802と、その外周に形成された凹溝などの溝808を有する第2の形成ローラー806と、を備える。一実施形態では、第1の形成ローラー802及び第2の形成ローラー806は、均一なロール表面を有してもよい。一実施形態では、第1の形成ローラー802及び第2の形成ローラー806は、駆動されてもよく、また、ローラーを縫合糸840の周囲に近接させ、かつ、縫合糸を再形成するために縫合糸の外表面(複数可)上でローラーを短い距離にわたって横断させるフレーム上に取り付けられてもよい。システム800は、好ましくは、受容スロット812を有する切断型810の下半分を含む切断型を備え、受容スロット812は、縫合糸の所望の最終外形と一致するサイズ及び形状を有している。受容スロット812は、好ましくは、受容スロット812の両端にテーパ部分814を含む。一実施形態では、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、本発明の譲受人に譲渡された米国特許出願公開第2015/0351752号(Rousseauら)に開示されているように、縫合糸のある部分を排出するために、バネ式エジェクタ要素が受容スロット812内に収容されていてもよい。
【0075】
図14Bを参照すると、一実施形態では、第1の形成ローラー802及び第2の形成ローラー806は、互いに近接するように移動させられることが可能であり、これにより、それぞれのローラーがそれぞれの中心軸を中心に駆動されたときに、ローラーは縫合糸840の選択された領域840Aを横断することができる。その結果、縫合糸の選択された領域840Aを変形させて、一対の横方向に延出するウィング845A、845Bと弓状の上面及び下面855とを有する縫合糸を提供することができる。ローラー接触部の開始点及び終端点における縫合糸の傾斜部分865は、好ましくは、変位した材料の天然のテーパ状遷移領域を形成する。
【0076】
図15Aを参照すると、一実施形態において、外科用縫合糸940は、第1の端部940Bと、第2の端部940Cと、細長い繊維の長さに沿ってその第1の端部940Bと第2の端部940Cとの間に延在する中心軸A
1と、を有する細長い繊維を含み得る。細長い繊維の第1の端部940A及び第2の端部940Bは、外側寸法OD
1を画定する外表面955を有する。一実施形態では、細長い繊維は、好ましくは、第1の端部940Bと第2の端部940Cとの間に配置された再形成された中央領域940Aを有する。
図15Aに示す再形成された中央領域940Aは、本明細書に開示される加工工程に供されているので、横方向に延在する変形した塊は中央領域から切断され、残りのコア塊は、再形成型を使用して再形成されている。細長い繊維940の再形成された中央領域940Aは、好ましくは、細長い繊維の第1の端部940A及び第2の端部940BのOD
1よりも小さい外側寸法OD
2を画定する外表面957を有する、細長い繊維の小径領域を画定する。一実施形態では、再形成された中央領域940Aは、細長い繊維の第1の端部940B及び第2の端部940Cの中心軸A
1からオフセットされた中心軸A
2に沿って延在する長さを有する。
【0077】
一実施形態では、細長い繊維は、好ましくはその第1の端部940Aと中央領域940Aとの間に延在する第1の遷移領域940Dを有する。一実施形態では、第1の遷移領域940Dは、繊維の第1の端部940Bの外表面955と、繊維の再形成された中央領域940Aの外表面957との間で内側に傾斜する傾斜外表面959を有する。
【0078】
一実施形態では、細長い繊維は、その第2の端部940Cと中央領域940Aとの間に延在する第2の遷移領域940Eを有する。一実施形態では、第2の遷移領域940Eは、繊維の第2の端部940Cの外表面955と、繊維の中央領域940Aの外表面957との間で内側に傾斜する傾斜外表面961を有する。
【0079】
図15A及び
図15Bを参照すると、一実施形態では、細長い繊維の中央領域940Aは、再形成された小径先端部をそれぞれが有する2つの別個の縫合糸を形成するために、切断刃910を使用して切断されてもよい。一実施形態では、中央領域940Aを切断することにより、第1の端部940Bと、中央領域940Aの第1の部分(例えば、切断刃910の右側の部分)と、を含む第1の端部処理された縫合糸、及び、第2の端部940Cと、中央領域940Aの第2の部分(例えば、切断刃910の左側の部分)と、を含む別個の第2の縫合糸を製造する。
【0080】
図15Bを参照すると、一実施形態では、再形成された小径先端部を有する第1の縫合糸940は、外径OD
1を画定する外表面955を有する第1の端部940Bを含む。第1の端部940Bは、中心軸A
1に沿って延在する長さを有する。再形成された小径先端部945は、OD
1未満の外径OD
2を画定する外表面957を有する。再形成された小径先端部940Aは、第1の端部940Bの中心軸A
1からオフセットされた中心軸A
2に沿って延在する長さを有する。第1の縫合糸は、大径の第1の端部940Bと小径の再形成された先端部945との間に位置する遷移領域940Dを画定する傾斜した面959を有する。
【0081】
図16を参照すると、一実施形態では、
図15A及び
図15Bに示され、上述された、再形成された軸外の小径先端部945を有する外科用縫合糸940は、外科用縫合針1002の近位端に取り付けられてもよい。一実施形態では、外科用縫合針1002は、タングステン-レニウム耐火合金などの生体適合性金属から作製されてもよい。一実施形態では、針1002は、好ましくは、遠位貫通点1006を有する本体1004と、針の近位端1010に隣接して位置する縫合糸取り付け部分1008と、を有する。縫合糸取り付け穿孔1012は、針の近位端にあってもよい。一実施形態では、穿孔1012は、好ましくは、遠位端1016及び近位端1018を有する空洞1014を含み、この空洞1014は、近位端1010に形成された開口部1020と連通している。
【0082】
針1002は、耐火金属合金などの生体適合性金属から作製された外科用縫合針を製造するように適合された従来の製造プロセスを使用して作製されてもよい。典型的には、従来のプロセスでは、所望の金属合金から作製されたワイヤが、線材圧延機内で所望の直径まで引き伸ばされる。次いで、ワイヤを従来のワイヤ切断装置で切断して、所望の長さを有する針ブランクを製造する。次いで、ワイヤは、成形、研削、研磨、洗浄、及び孔開加工を含む一連の従来の製造プロセス工程を経る。
【0083】
縫合針ブランクは、いくつかの方法で孔開加工されてもよい。ブランクは固定具に装着されてもよく、従来の機械的孔開加工を使用して、針ブランクの近位端に穿孔を孔開加工してもよい。機械的孔開加工は、外科用縫合針に穿孔を孔開加工するのに有用であり得るが、そのような孔開加工プロセスに関連する制限がある。例えば、ドリルは摩耗し、常に交換される必要がある。加えて、機械的孔開加工プロセスは時間がかかり、高速自動生産プロセスにとって望ましくない。更に、機械的ドリルは、典型的には、非常に硬い材料、又は孔開加工形成作業中に簡単に加工硬化する材料から作られた縫合針の孔開加工には、費用効果的に使うことができない。レーザー孔開加工システムは、外科用縫合針に穿孔を孔開加工するために開発された。これらのレーザーシステムは、典型的には、Nd:YAGレーザーを使用するが、必要とされる出力密度を提供することができ、かつ必要とされるスポットサイズに集中させることができる任意の種類のレーザーは、許容可能である。光束出力、エネルギー密度、エネルギー密度分布、パルス波形、パルス持続時間、及びパルス数を含むレーザービーム束パラメータを制御することにより、特定のサイクルを利用して、望ましい穿孔直径及び深さを得る。
【0084】
図16及び
図17を参照すると、一実施形態では、再形成された先端部945を有する外科用縫合糸940は、外科用縫合針1002の近位端1010に開口部1020を有する穿孔1012に挿入され得る。外科用縫合糸1040は、機械的かしめ型を使用して縫合糸取り付け部分1008内に固定されてもよい。一実施形態では、外科用縫合糸940を外科用縫合針1002にかしめるために、針は型に装着され、針の縫合糸取り付け部分1008にツールが押し付けられる。これにより、孔開加工された穿孔1012に挿入された縫合糸940の再形成された先端部945が穿孔の空洞1014内で圧縮されるように、金属の変形を引き起こす。縫合糸の再形成された先端部を外科用縫合針の近位端に取り付けるための他の方法としては、接着剤、糊剤及び/又はセメントが挙げられる。
【0085】
一実施形態では、本明細書に開示される切断及び再形成工程の間、抵抗加熱器、高周波発生器、プラズマ、レーザー又は超音波装置によって生成される熱を利用して、ポリマー系構造体の可動化を支援して、切断及び/又は形成動作を改善することができる。
【0086】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、細長い繊維をクランプフレーム内の定位置に保持する手動プロセス、又は自動スプールフィードタイプのプロセスを含んでもよい。
【0087】
自動スプールフィードプロセスの一実施形態では、端部処理される縫合糸繊維は、繰り出しスプールから先端形成システムに供給されてもよい。繊維の先端は、繊維を加熱及び形成ステーションに引き込むことができるインデックスヘッド内に位置付けられてもよい。加熱及び形成ステーションは、本明細書に開示されるものと同様の1組の成形型で構成されてもよい。各型は、垂直移動するように実装されてもよく、任意選択的に加熱されてもよい。あるいは、型は、冷却された構成でのみ動作されてもよい。繊維の加熱は、縫合糸の長さに沿って成形型ステーションと同じ軸方向位置に位置する加熱源を使用することによって達成され得る。一実施形態では、加熱源は、成形ステーションの平面に対して90度回転される平面内に配置されてもよい。例えば、成形ステーションが垂直に横断する場合、加熱ステーションは、繊維が成形ステーション内に位置している間に繊維の加熱を提供するために、水平位置に実装され得る。加熱源としては、従来の赤外線ヒータ、空気流などの加熱された対流媒体、又は加熱された型などの他の導電性の供給源、及びこれらの等価物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0088】
一実施形態では、縫合糸先端部を再形成するためのシステム、装置及び方法は、細長い繊維を作製するために使用されるポリマー材料を成形するために、熱及び/又は圧力を使用してもよい。一実施形態では、成形工程中の型の接触が繊維を冷却する役割を果たす間に繊維を再成形するために、成形型は、加熱源よりも低い温度で動作し得る。一実施形態では、室温より低いTgを有する材料の場合、材料を加熱する必要はなく、形成動作は周囲室温で行われてもよい。
【0089】
一実施形態では、繊維は、切断及び再形成動作中に高い張力に曝されない場合がある。一実施形態では、繊維供給機構は、繰り出し機構及び巻き上げ機構の両方を介して割り出された量の繊維だけを前進させて、繊維の同じ相対運動を維持することができる。
【0090】
一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、寸法的に一貫しており、かつ、押出成形又はロール成形などのバルク加工技術を使用する場合には達成されない可能性がある改善された精度を有する、再形成された先端部を有する外科用縫合糸を製造する。寸法一貫性は、外科用縫合針が再形成された縫合糸先端部にかしめられるときに、再現可能な取り付け強度を可能にする。特定の実施形態では、窪み、起伏、対向する部分的螺旋、又は隆起した特徴部などの他の特徴部が、縫合糸先端部の表面形状上に形成されてもよく、そうすることで、針の取り付け強度を改善することができる。更に、繊維の過延伸による繊維フィブリル化が回避され、縫合糸の本体と比べて端部処理された繊維の剛性が高められることはない。
【0091】
本発明の新規なプロセスは、タングステン、モリブデン、ニオブ、タンタル、及びレニウムを含む耐火金属の合金から作製された外科用縫合針と共に利用することができる。タングステン-レニウム合金から作製された外科用縫合針は、参照により組み込まれる以下の参考文献に開示されている:米国特許第5,415,707号(Bendelら)、米国特許出願第11/611,353号、同第11/611,387号、同第11/756,668号、及び同第11/756,679号。一実施形態では、本明細書に開示されるシステム、装置及び方法は、従来のステンレス鋼合金から作製されたレーザー孔開加された外科用縫合針と共に使用されてもよい。
【0092】
上記の説明は本発明の実施形態に関するものであるが、本発明の他の及び更なる実施形態を本発明の基本的な範囲から逸脱することなく行うことが可能であり、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。例えば、本発明では、本明細書で説明するか又は本明細書に参照により組み込まれる実施形態のいずれかに示す特徴のいずれかを、本明細書で説明するか又は本明細書に参照により組み込まれるがやはり本発明の範囲内に含まれる他の実施形態のいずれかに示す特徴のいずれかと組み合わせてもよいことが意図されている。
【0093】
〔実施の態様〕
(1) 再形成された先端部を有する外科用縫合糸の製造方法であって、
細長い繊維を準備することであって、前記細長い繊維が、第1の端部と、第2の端部と、その前記第1の端部と前記第2の端部との間に延びる中心軸と、前記細長い繊維の断面寸法を画定する外表面と、を有する、ことと、
前記細長い繊維の前記第1の端部と前記第2の端部との間に位置する、前記細長い繊維の中央領域を、コア塊と、前記細長い繊維の前記断面寸法の外側に横方向に延在する変形した塊とに再成形するために前記中央領域を圧縮することと、
前記コア塊のみが、前記細長い繊維の前記第1の端部と前記第2の端部とを相互接続するために残存するように、前記中央領域の前記変形した塊を、前記中央領域の前記コア塊から分離することと、
前記変形した塊を前記コア塊から分離した後、前記コア塊を、前記細長い繊維の前記中心軸からオフセットした再形成塊中心軸を有する再形成された塊に再成形することと、を含む、方法。
(2) 前記細長い繊維の前記中央領域を圧縮することが、前記細長い繊維の前記外表面の少なくとも2つの側面を圧縮するための型を使用することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記細長い繊維の前記中央領域を圧縮することが、前記変形した塊を形成するために前記細長い繊維の1つの側面を拘束しない一方で、前記コア塊を形成するために前記細長い繊維の前記中央領域の少なくとも3つの側面を拘束するための型を使用することを含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記細長い繊維の少なくとも2つの側面を圧縮するための前記型を使用することが、
上面と、前記上面に形成された細長いチャネルとを有する受け型を準備することと、
前記受け型の前記上面に対向する底面を有する上型を準備することと、
前記上型の前記底面が前記受け型の前記上面から離間して配置されている状態で、前記細長い繊維の前記中央領域を前記受け型の前記細長いチャネル内に位置付けることと、
前記上型と前記受け型との間で前記細長い繊維の前記中央領域を圧縮するために、前記上型の前記底面を、前記受け型の前記上面と接触するように移動させることと、を含む、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記変形した塊を分離する工程が、前記変形した塊を前記コア塊から切断することを含む、実施態様4に記載の方法。
【0094】
(6) 前記変形した塊を前記コア塊から切断することが、前記変形した塊を前記コア塊から切断するための鋭利な切断刃を有する切断要素を使用することを含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記コア塊を再成形することが、
前記変形した塊を前記コア塊から切断した後、前記上型を前記受け型から離れる方向に移動させて、前記上型の前記底面と前記受け型の前記上面との間に間隙を設けることと、
前記コア塊を、切断後の形状から、前記切断後の形状とは異なる再形成された形状に再成形するために、第1の再形成型及び第2の再形成型を、前記上型の前記底面と前記受け型の前記上面との間の前記間隙内に前進させて、前記コア塊に係合させることと、を含む、実施態様5に記載の方法。
(8) 前記第1の再形成型が、第1の凹曲面を含む第1のJ字形構造を含み、前記第2の再形成型が、第2の凹曲面を含む第2のJ字形構造を含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記細長い繊維を加熱することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記細長い繊維が生体適合性ポリマーを含む、実施態様1に記載の方法。
【0095】
(11) 再形成された先端部を有する外科用縫合糸を製造するためのシステムであって、
受け型であって、上面と、底面と、前記受け型の第1の端部と第2の端部との間に延在する、前記上面に形成された細長いチャネルと、を有する、受け型と、
縫合糸チャネルを含む前記細長いチャネルであって、前記縫合糸チャネルは、第1の端部と、第2の端部と、前記縫合糸チャネルの前記第1の端部と前記受け型の前記第1の端部との間で下方に延在する第1の傾斜した面と、前記縫合糸チャネルの前記第2の端部と前記受け型の前記第2の端部との間で下方に延在する第2の傾斜した面と、を有する、前記細長いチャネルと、
上面と、前記受け型の前記上面に対向する底面とを有する上型であって、前記システムが、前記上型の前記底面が前記受け型の前記上面から離間している型が開いた位置と、前記上型の前記底面が前記受け型の前記上面と接触している型が閉じた位置と、を有する、上型と、
前記受け型及び前記上型と連結された切断要素と、を含む、システム。
(12) 前記上型の前記底面及び前記受け型の前記上面と交差する切断要素移動軸に沿って、前記上型及び前記受け型を通って延在する切断要素ガイドスロットと、
前記切断要素ガイドスロットの前記切断要素移動軸内を、前記上型の前記上面に向かう第1の方向、及び前記受け型の前記底面に向かう第2の方向に摺動するように適合されている前記切断要素と、を更に含む、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記縫合糸チャネルが、前記受け型の前記上面と平行な平面内に延在する縫合糸着座面を含む、実施態様11に記載のシステム。
(14) 前記第1の傾斜した面が、前記縫合糸チャネルの前記第1の端部と前記受けチャネルの前記底面との間で下向きに傾斜しており、前記第2の傾斜した面が、前記縫合糸チャネルの前記第2の端部と前記受け型の前記底面との間で下向きに傾斜している、実施態様13に記載のシステム。
(15) 前記切断要素であって、上端部と、下端部と、前記切断要素の前記上端部と前記下端部との間に位置する鋭利な切断縁部と、前記鋭利な切断縁部の両端に位置する第1のガイド脚部及び第2のガイド脚部と、を有する、前記切断要素と、
縫合糸再形成アセンブリであって、第1の再形成型及び第2の再形成型を含み、前記第1の再形成型及び前記第2の再形成型は、前記第1の再形成型と前記第2の再形成型とが、前記切断要素の前記第1のガイド脚部と前記第2のガイド脚部との間で一緒に接合される伸張位置と、前記第1の再形成型と前記第2の再形成型とが互いに離間している後退位置と、を有する、縫合糸再形成アセンブリと、を更に含む、実施態様11に記載のシステム。
【0096】
(16) 軸外遠位先端部を有する外科用縫合糸であって、
近位端と、遠位端と、その前記近位端と前記遠位端との間に延びる中心軸と、第1の断面寸法を画定する第1の外表面と、を有する細長い繊維を含み、
前記細長い繊維は、その前記遠位端に位置する遠位先端部を含み、前記遠位先端部は、前記第1の外表面の前記第1の断面寸法よりも小さい第2の断面寸法を画定する第2の外表面を有し、前記遠位先端部が、前記細長い繊維の前記中心軸からオフセットした中心軸を有する、外科用縫合糸。
(17) 前記遠位先端部の前記第2の外表面の一部分が、前記細長い繊維の前記第1の外表面の一部分と整列されている、実施態様16に記載の外科用縫合糸。
(18) 前記細長い繊維が、前記細長い繊維の前記第1の外表面と前記遠位先端部の前記第2の外表面との間に延在する傾斜遷移表面を更に含む、実施態様17に記載の外科用縫合糸。
(19) 前記細長い繊維が生体適合性ポリマーを含む、実施態様16に記載の外科用縫合糸。
(20) 再形成された小径の遠位先端部を有する外科用縫合糸を製造するためのシステムであって、
第1のローラーであって、前記第1のローラーの外周に沿って延在する、前記第1のローラー内部に形成された第1の溝を有する、第1のローラーと、
前記第1のローラーに対向する第2のローラーであって、前記第2のローラーの外周に沿って延在する、前記第2のローラー内部に形成された第2の溝を有する、第2のローラーと、
前記第1のローラーと前記第2のローラーとを接近させるための駆動システムであって、細長い繊維のある部分を、前記細長い繊維のコア塊及び前記細長い繊維の少なくとも1つの変形した塊に再形成するために、前記第1のローラー及び前記第2のローラーが前記細長い繊維の前記部分上で駆動されたときに、前記細長い繊維の両側に接触させて、前記第1のローラーの前記外周と前記第2のローラーの前記外周との間の前記細長い繊維を圧縮するための、駆動システムと、
前記細長い繊維の前記コア塊のみが、前記細長い繊維の第1の端部と第2の端部とを相互接続するために残存するように、前記細長い繊維の前記少なくとも1つの変形した塊を、前記細長い繊維の前記コア塊から切断することと、を含む、システム。
【0097】
(21) 第1の再形成型及び第2の再形成型を含む縫合糸再形成アセンブリを更に含み、前記第1の再形成型及び前記第2の再形成型は、前記コア塊を再成形するために前記第1の再形成型及び前記第2の再形成型の対向面が前記コア塊の両側と係合する伸張位置と、前記第1の再形成型と前記第2の再形成型とが互いに離間しており、前記コア塊の前記両側と接触していない後退位置と、を有する、実施態様20に記載のシステム。