(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】エレベータシステムのエレベータ構成要素の設置の少なくとも部分的に自動化された計画のための方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/00 20060101AFI20240213BHJP
B66B 7/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B66B7/00 G
B66B7/02 C
(21)【出願番号】P 2021533536
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 EP2019083250
(87)【国際公開番号】W WO2020120190
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040729
【氏名又は名称】インベンテイオ・アクテイエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】INVENTIO AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビュートラー,エーリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ツィマーリ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ビツィ,ラファエル
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-509955(JP,A)
【文献】国際公開第2018/041815(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト壁(18a、18b、18c、18d)によって区切られたエレベータシャフト(10)のエレベータ構成要素(16)の設置の、少なくとも部分的に自動化された計画のための方法であって、
-シャフト壁(18a、18b、18c、18d)のコースを記録するステップと、
-エレベータシャフト(10)のドア開口部(52a、52b、52c)の位置を決定するステップと、
-ドア開口部(52a、52b、52c)の特定の位置に応じてガイドレール(86a、86b)の目標コースを確立するステップと、
-ガイドレール(86a、86b)の確立された経路に応じて自動化された方法でエレベータ構成要素(16)の目標位置を確立するステップと、
を備え、
設置されるエレベータ構成要素(16)の少なくともいくつかは、シャフト壁(18a、18b、18c、18d)に固定され得る
固定可能部分(88)、および、固定可能部分(88)に対して確立された調整範囲(100)で可動な
可動部分(90)を有する調整可能なエレベータ構成要素として設計され、可動部分(90)の目標位置は調整可能なエレベータ構成要素(16)
のために決定され、
-調整可能なエレベータ構成要素(16)について、エレベータ構成要素(16)の可動部分(90)がその目標位置(102、108)に配置されたとき、前述の調整範囲(100)が固定可能部分(88)をシャフト壁(18a、18b、18c、18d)に固定するのに十分であるかどうかを決定するために、自動チェックが実行され、
-前述の試験の結果がさらなる処理のために出力されること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
調整可能なエレベータ構成要素(16)は、ガイドレール(86a、86b)をシャフト壁(18c、18d)に締結するためのレールブラケットとして設計され、レールブラケット(16)はそれぞれ、
前記固定
可能部分としてのレールブラケット下部(88)および
前記可動部分としてのレールブラケット上部(90)を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エレベータ構成要素(16)がシャフト壁(18c)の支持面(108)上で支持され、目標支持面(102、108)の表面輪郭が、シャフト壁(18a、18b、18c、18d)の記録されたコースおよびエレベータ構成要素(16)の目標位置から導出され、目標支持面(102、108)の表面輪郭が自動的にチェックされ、目標支持面(102、108)のチェックの結果がさらなる処理のために出力されることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
第1の認識規則によって、目標支持面(102、108)の表面輪郭における第1の凹凸(106)が認識され、目標支持面(102、108)に第1の凹凸(106)がないかどうかについて、目標支持面(102、108)の試験の結果が出力されることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
目標支持面(102、108)が第1の凹凸(106)を有さない場合、目標支持面(102、108)の表面輪郭の第2の凹凸(110)が第2の認識規則によって認識され、目標支持面(102、108)の試験の結果として、目標支持面(102、108)に第2の凹凸(110)がないかどうかが出力されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
エレベータ構成要素(16)について否定的な結果が出力された場合、元の目標位置がエレベータ構成要素(16)の新しい目標位置に自動的にシフトされ、新しい目標位置がチェックされることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
目標位置の前述の
シフトは、
予め決められたシフト範囲内でのみ実行され、
予め決められたシフト範囲内で適切な目標位置が見つけられることができない場合、否定的な結果が出力されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エレベータ構成要素(16)について否定的な結果が出力される場合、ガイドレール(86a、86b)の目標コースが自動的に変更されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
エレベータ構成要素(16)について調整範囲(100)のチェックの否定的な結果が出力される場合、前記エレベータ構成要素(16)の必要な調整範囲(100)が自動的に決定されて出力されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
エレベータシャフトのドア開口部(52a、52b、52c)の位置は、シャフト壁(18a、18b、18c、18d)の記録されたコースから自動的に決定されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
エレベータシャフト(10)のドア開口部(52a、52b、52c)の位置を決定するために、当初は大まかな位置が決定され、次いで大まかな位置の周りの領域でドア開口部(52a、52b、52c)の位置が決定されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ドア開口部(52a、52b、52c)の自動的に決定された位置は、オペレータによって変更されることができることを特徴とする、請求項10または請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
計画された設置は、自動取付装置(14)によって少なくとも部分的に実行され、計画中に、取付装置(14)がシャフト壁(18a、18b、18c、18d)上のそれぞれの目標位置にエレベータ構成要素(16)を設置することができるかどうかを決定するためにチェックが実行されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載のエレベータシステムのエレベータ構成要素の設置の、少なくとも部分的に自動化された計画のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第3085658号明細書は、シャフト壁によって区切られたエレベータシャフトのエレベータシステムのエレベータ構成要素の設置の部分的に自動化された計画および実装のための方法を記載している。この方法では、エレベータシャフトのドア開口部は、リフレクタを使用してマークされる。次いで、シャフト壁およびリフレクタの位置、したがってドア開口部は、エレベータシャフトに配置された、トータルステーションの形の自動走査装置によって記録される。エレベータシステムのドア開口部の位置およびエレベータかごの寸法に基づいて、次いでエレベータシャフト内でエレベータかごをガイドするための個々のガイドレール片から構成される少なくとも2つのガイドレールの目標コースが決定される。各ガイドレールの最も低いガイドレール片は、技術者によって手動でシャフト壁に固定される。次いで、自動設置装置がエレベータシャフトに導入され、2つのガイドレールの残りのガイドレール片をシャフト壁に自動的に固定する。欧州特許第3085658号明細書は、ガイドレールのシャフト壁への固定を選択または試験することに関するいかなる情報も含まない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対照的に、本発明によって対処される問題は、特に、エレベータシステムのエレベータ構成要素の設置の、少なくとも部分的に自動化された計画のための方法を提供することであり、それは、後続の設置が首尾よく効率的に実行されることを可能にする。本発明によれば、この問題は、請求項1の特徴を含む方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シャフト壁によって区切られたエレベータシャフトのエレベータシステムのエレベータ構成要素の設置の、少なくとも部分的に自動化された計画のための本発明による方法は、以下のステップを有する、すなわち、
-シャフト壁のコースを記録するステップ、
-エレベータシャフトのドア開口部の位置を決定するステップ、
-ドア開口部の特定の位置に応じてガイドレールの目標コースを確立するステップ、および、
-ガイドレールの確立されたコースに応じて、自動化された方法でエレベータ構成要素の目標位置を確立するステップ、
である。
【0006】
設置されるエレベータ構成要素の少なくともいくつかは、シャフト壁に固定されることができる部分および固定可能な部分に対して確立された調整範囲で可動な部分を有する調整可能なエレベータ構成要素として設計され、可動部分の目標位置は、調整可能なエレベータ構成要素に対して確立される。本発明によれば、調整可能なエレベータ構成要素、特にすべての調整可能なエレベータ構成要素について、エレベータ構成要素の可動部分がその目標位置に配置されたとき、前述の調整範囲が固定可能部分をシャフト壁に固定するのに十分であるかどうかを決定するために自動チェックが実行される。前述の試験の結果は、さらなる処理のために出力される。
【0007】
試験の前述の結果を考慮に入れ、1つまたは複数の調整可能なエレベータ構成要素の調整範囲が十分でないことを試験が示す場合に対策を開始することによって、調整可能なエレベータ構成要素がそれらの目標位置でシャフト壁に固定されることができ、したがってガイドレールがその目標位置に配置されることもできることが確保されることができる。そのような試験がなければ、調整可能なエレベータ構成要素が計画された設置中に計画通りに設置されることができないという非常に高いリスクがある。これは、時間のかかる再加工または他の適切なエレベータ構成要素の調達を必ず伴う。本発明による設置の計画は、エレベータ構成要素が計画通りに高い確率で設置されることを可能にし、その結果、時間がかかり、したがってコストがかかる再作業または設置中の中断が回避される。したがって、設置は非常に効率的に目標結果になる。
【0008】
本方法の記載されたステップは、特に指定された順序で実行される。しかしながら、異なる順序も可能である。
【0009】
「少なくとも部分的に自動化された計画」は、ここでは、計画の少なくとも個々のステップが、例えば、所定の規則を使用するコンピュータまたは制御手段によって自動化された方法で実行されることを意味するものと理解されるべきである。この目的のために、コンピュータまたは制御手段は、前述の規則がコード化されたプログラムを有する。オペレータは計画にも関与するが、オペレータの関与は完全に自動化された計画を開始することのみからなることができる。加えて、自動的に利用可能にされる情報によってサポートされる、オペレータが異なる時点で決定を行う可能性もある。
【0010】
設置が計画されているエレベータ構成要素は、特にエレベータシステムの、いわゆるシャフト材料として、またはシャフトドアとして設計されている。シャフト材料は、エレベータシステムのエレベータシャフトのシャフト壁に締結されたすべての構成要素を指す。これらは、例えば、エレベータシステムのガイドレールがシャフト壁に固定されることによる、いわゆるレールブラケットを含む。加えて、シャフト材料は、シャフトドア、照明またはケーブル配線用の締結材料として設計されることもできる。シャフトドアは、エレベータシャフトのドア開口部に取り付けられ、エレベータかごがドア開口部に配置されていない場合、ドア開口部を閉じる。
【0011】
「エレベータ構成要素の設置の計画」は、ここでは、特に、完全に設置されたエレベータシステムの個々のエレベータ構成要素の位置および、適用可能であれば、位置合わせまたは配向を確立することを意味すると理解される。加えて、少なくとも部分的な設置は、自動取付装置を使用して計画されることもできる。例えば、エレベータ構成要素の設置順序、設置ステップが実行される間の取付装置の位置、および/または特別な工具の使用が確立されることができる。前述した自動取付装置は、例えば、国際公開第2017/016783号に記載の取付装置に準拠して設計されることができる。
【0012】
エレベータシャフトを区切るシャフト壁は、特に、例えばコンクリート製の中実壁として設計されている。しかしながら、エレベータシャフトが、中実壁ではなく、好ましくは金属製の支柱によって少なくとも1つまたは2つの方向に区切られることも可能である。そのような支柱は、仕切梁とも呼ばれる。したがって、エレベータシャフトを区切るシャフト壁は、支柱、特に仕切梁によって形成されることもできる。
【0013】
シャフト壁のコースが記録されるとき、特に、シャフト壁上の多数の個々の点の位置が記録される。次いで、これらの壁点は、シャフト壁のコースが決定される、いわゆる点群を形成する。前述の位置は、例えば、1つまたは複数のレーザスキャナまたは1つまたは複数のデジタルカメラに基づく測定システムによって、記録されることができる。この目的のために、測定システムは、すべてのシャフト壁のコースが完全に記録されることができるように、特にエレベータシャフト内で変位される。したがって、エレベータシャフトのデジタルモデルが生成されることができる。測定システムは、例えば、国際公開第2018/041815号に記載されている測定システムのように設計されることができる。
【0014】
シャフト壁のコースを記録するとき、個々のまたは複数の基準要素がエレベータシャフトに配置されることもできる。このようにして、例えば、後にエレベータ要素を設置するために使用されることもできる、エレベータシャフトに座標系が確立されることができる。基準要素は、例えば、エレベータシャフトで張力が加えられたコードの形態で、および/または球体および/または他のマーキングとして設計されることができる。
【0015】
ドア切抜きの位置は、オペレータによって手動で、部分的に自動化された方法で、または完全に自動化された方法で記録されることができる。前述の位置は、特にシャフト壁の記録されたコースに基づいて記録される。例えば、シャフト壁のコースは、スクリーン上でオペレータに表示されることができる。これに基づいて、オペレータは、ドア切抜きの位置を自動的に決定し、例えば、マウスクリックでそれらを確立する。前述の欧州特許第3085658号明細書の手順と同様に、特に、シャフト壁のプロファイルが記録される前にマーキングが自動的に認識され得るようにドア開口部がマーキングされることも可能である。加えて、記録されたシャフト壁のコースに基づいて、完全に自動化された方法でドア開口部の位置を記録することが可能である。この自動記録の結果は、オペレータによって任意選択的に確認および調整されることができる。
【0016】
ガイドレールは、エレベータかごおよび任意選択的にエレベータシステムの釣合おもりを、エレベータシャフトで変位されている間にガイドするために使用される。以下では、エレベータかご用のガイドレールのみが考慮される。同様のことが釣合おもりガイドレールにも当てはまる。エレベータシステムは、通常、エレベータかごのための2つのガイドレールを有する。ガイドレールの位置は、エレベータシャフトのエレベータかごの位置および走行経路を確立する。したがって、ガイドレールは、すべてのドア開口部でエレベータかごに出入りすることが可能であり、特に、ドア開口部に配置されたシャフトドアをかごドアと共に開閉されることができるように、エレベータかごがエレベータシャフトのドア開口部で停止されることができるように配置されなければならない。加えて、ガイドレールは、エレベータかごがシャフト壁と衝突することなくエレベータシャフトで変位されることができるように延伸しなければならない。
【0017】
ガイドレールの位置を確立するために、直線がドア開口部の角を通って、特にドア開口部の両側に置かれる。例えば、最小二乗法がこの目的のために使用されることができる。2つの直線が、互いに平行となるように決定される。追加の条件として、特に高さの低い、例えば50mまでのエレベータの場合、直線が垂直方向に延伸することが指定されることができる。エレベータかごの寸法に応じて、ガイドレールの目標プロファイルが取得される。
【0018】
ガイドレールの目標コースは、シャフト壁に固定されるエレベータ構成要素、例えば、ガイドレールをシャフト壁またはシャフトドアに締結するためのレールブラケットの目標位置をもたらし、これはエレベータかごに対して、したがってガイドレールに対して所定の方法で位置合わせされなければならない。レールブラケットの目標位置を決定するために、上下に配置された2つのレールブラケット間の垂直方向の所定の距離はさらなる条件として考慮されることができる。
【0019】
エレベータ構成要素の少なくともいくつかは、シャフト壁に固定されることができる部分および、固定可能な部分に対して確立された調整範囲で可動な部分を有する、調整可能なエレベータ構成要素として設計される。可動部分は可動のみであり、したがってエレベータ構成要素の設置中に固定可能部分に対して調整可能である。エレベータシステムが取り付けられると、調整可能なエレベータ構成要素の2つの部分は、例えばねじ接続によって、特定の位置で互いに強固に接続される。したがって、「調整可能なエレベータ構成要素」という用語は、設置期間のみを指す。設置の完了後、可動と指定された部分はまた、シャフト壁に対して確立された位置に固定される。
【0020】
調整可能なエレベータ構成要素は、特に、ガイドレールをシャフト壁に締結するためのレールブラケットとして設計される。レールブラケットはブラケットとしても知られており、市場では多くの変形形態で入手可能である。レールブラケットは、固定可能部分としてのレールブラケット下部および可動部分としてのレールブラケット上部を有する。エレベータシステムが取り付けられると、ガイドレールは、適切なクリップによってレールブラケット上部に接続され、したがって、レールブラケット上部およびレールブラケット下部によってシャフト壁に固定され、特にねじ止めされる。「レールブラケット下部」および「レールブラケット上部」という用語は、2つの部分を区別するのに役立つだけであり、各部の互いに必要な向きまたは配置については何も示していない。
【0021】
ガイドレールとエレベータ構成要素の移動部分の間の接続のために、エレベータ構成要素の移動部分の位置は、ガイドレールの目標コースによって確立される。エレベータ構成要素の可動部分がその目標位置に配置されたとき、前述の調整範囲が固定可能部分をシャフト壁に固定するのに十分であるかどうかを決定するために、自動チェックが少なくとも1つ、特に各調整可能なエレベータ構成要素について実行される。言い換えれば、可動部分がその目標位置に配置され、固定可能部分がシャフト壁に固定され得るように、エレベータ構成要素の2つの部分が互いに対して配置されることができるかどうかを決定するためにチェックが実行される。この場合、対応するエレベータ構成要素は必要に応じて設置されることができる。固定可能なレールブラケット下部および可動レールブラケット上部を備えるレールブラケットの例では、レールブラケット上部は、ガイドレールがその目標コースを有し、レールブラケット下部がシャフト壁に固定され、レールブラケット上部もレールブラケット下部に固定されるように配置されることができる。
【0022】
前述の試験は、調整可能なエレベータ構成要素が意図したように設置されることができる場合、すなわちエレベータ構成要素の調整範囲が十分である場合に肯定的な結果をもたらす。これが不可能である場合、すなわち調整範囲が不十分である場合、否定的な結果をもたらす。
【0023】
結果は、多種多様な方法で出力されることができる。結果は、例えば、画面上に、例えばテーブルの形態で出力され、オペレータによってさらに処理され得る。前述の出力は、結果をさらに処理する特別なプログラムモジュールに電子形式で渡されることによって行われることも可能である。
【0024】
本発明の一実施形態では、エレベータ構成要素は、シャフト壁の支持面上で支持される。目標支持面の表面輪郭が、シャフト壁の記録されたコースおよびエレベータ構成要素の目標位置から導出され、目標支持面の表面輪郭が自動的にチェックされ、目標支持面の試験の結果がさらなる処理のために出力される。これにより、エレベータ構成要素が実際にそれらの目標位置に設置されることができる可能性は特に高くなる。
【0025】
シャフト壁は、特にコンクリートで作られている場合、その表面に、したがってその表面構造に、隆起部、例えば肩部または窪み、例えば穴の形態の凹凸を有することができる。このような凹凸は、エレベータ構成要素をシャフト壁に固定することを困難にし、または不可能にさえする可能性がある。凹凸は、シャフト壁上のエレベータ構成要素の支持に悪影響を及ぼし、エレベータ要素を固定するためにねじまたはアンカーボルトが挿入される穴が穿孔されることを妨げる場合がある。エレベータ構成要素の意図された支持面の表面輪郭をチェックすることにより、エレベータ構成要素は計画通りにシャフト壁に固定されることもでき、すなわち、特にねじ止めされることができることが確実にされることができる。
【0026】
前述の試験は、特に設置されるすべてのエレベータ構成要素、すなわち調整可能および調整不可能なエレベータ構成要素に対して実行される。目標支持面の表面輪郭がエレベータ構成要素の設置と矛盾しない場合、試験は肯定的な結果をもたらす。表面輪郭が前述の設置と矛盾する場合、これは否定的な結果をもたらす。
【0027】
表面輪郭を確認するために、目標支持面の表面輪郭の第1の凹凸は、特に第1の認識規則によって認識される。目標支持面の試験の結果、目標支持面に第1の凹凸がないかどうかが出力される。したがって、試験は、目標支持面が第1の凹凸を有さない場合に肯定的な結果をもたらし、第1の凹凸を有する場合に否定的な結果をもたらす。
【0028】
特に、前述の壁点の決定された位置を使用して目標支持面の表面輪郭を決定するとき、理想的な壁面が決定される。理想的な壁面は、例えば、壁点と理想的な壁面との距離の二乗和が最小となるように、すなわち最小二乗法が使用されて、決定されることができる。理想的な壁面を決定するために、RANSACアルゴリズム(ランダムサンプルコンセンサス)を使用することも可能である。理想的な壁面を決定した後、個々の壁面と理想的な壁面との距離が決定される。これらの距離は、目標支持面の表面輪郭の凹凸を認識するための基礎として機能する。
【0029】
目標支持面の表面輪郭が決定された後、これがチェックされ、表面輪郭の第1の凹凸が第1の認識規則によって認識される。例えば、壁上の点と理想的な壁面との距離が第1の閾値よりも大きい場合、壁点における第1の凹凸は認識されることができる。
【0030】
表面輪郭は、特に、いくつかの段階、特に2つの段階でチェックされることができる。これは、目標支持面が第1の凹凸を有さない場合、目標支持面の表面輪郭の第2の凹凸が第2の認識規則によって認識され、目標支持面の試験の結果として、目標支持面に第2の凹凸がないかどうかが出力されるように実施されることができる。第1の試験中、特に大まかな、したがって迅速なチェックが実行されることができる。この大まかなチェックが肯定的な結果を提供する場合にのみ、第2のチェックで凹凸がより正確にチェックされることができる。これは、試験全体が非常に迅速かつ引き続き徹底的に実行されることができることを意味する。したがって、例えば、比較的大きな凹凸のみが第1の認識規則によって認識されることができ、小さな凹凸も第2の認識規則によってのみ認識されることができる。第1および第2の凹凸は、特に、エレベータシャフト全体の前述の試験に備えて決定および保存されることができる。
【0031】
特に、表面輪郭の第1の凹凸を認識するための第1の認識規則は、以下のステップを備える。すなわち、
-第1の閾値よりも大きい、理想的な壁面から少し離れた壁点を決定するステップ、
-前述の条件を満たす、隣接する壁点を組み合わせるステップ、および、
-結合された壁点の面積が境界面積より大きい場合、第1の凹凸を認識するステップ、
である。
【0032】
第1の閾値は、例えば5mm以上10mm以下であり、境界表面積は、例えば15cm2以上30cm2以下である。壁点が組み合わされる場合、例えば、前述の条件を満たし、かつ前述の条件を満たして、例えば、5mm~50mmの限界距離未満である別の壁点から少し離れた壁点も組み合わされる。加えて、組み合わせるときに長方形が定義されることができ、その長方形は前述の壁点のすべてを含む。
【0033】
特に、表面輪郭の第2の凹凸を認識するための第2の認識規則は、以下のステップを備える。すなわち、
-第2の閾値よりも大きい理想的な壁面から少し離れた壁点を決定するステップ、
-前述の条件を満たす各壁点における第2の凹凸を認識するステップ、
である。
【0034】
第2の閾値は、前述の第1の閾値と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2の閾値は、特に、第1の閾値よりも小さくすることができ、例えば、3~5mmとすることができる。
【0035】
本発明の一実施形態では、エレベータ構成要素について否定的な結果が出力された場合、元の目標位置がエレベータ構成要素の新しい目標位置に自動的にシフトされ、新しい目標位置がチェックされる。エレベータ構成要素の結果が否定的な場合、すなわち、エレベータ構成要素が計画通りに設置されることができない場合、オペレータは直接介入する必要はない。したがって、本方法は、非常に大きな範囲まで自動化されることができる。
【0036】
新しい目標位置は、元の目標位置から、特に例えば5~10cmの確立された距離だけ逸脱する。シフトは、特にガイドレールの目標コースに沿って発生する。可動部分の目標位置は、調整可能なエレベータ構成要素の場合に確立されるため、エレベータ構成要素の目標位置がシフトされると、可動部分の目標位置もシフトされる。これはまた、調整可能なエレベータ構成要素の関連する固定可能部分の可能な目標支持面を変更する。
【0037】
目標位置の前述のシフトは、特に、確立されたシフト範囲内でのみ実行される。シフト範囲内に適切な目標位置が見つけられない場合、否定的な結果が出力される。前述の否定的な結果は、目標位置のさらなるシフトがもはや不可能であるため、最終的な否定的な結果と呼ばれることができる。この結果は特別にマークされることができ、したがって特別に処理されることもできる。
【0038】
前述のシフト範囲は、例えば、ガイドレールの目標コースに沿って両方向に、元の目標位置から20~30cmに及ぶ。
【0039】
本発明の一実施形態では、エレベータ構成要素について否定的な結果が出力される場合、ガイドレールの目標コースは自動的に変更される。これは、特に、エレベータ構成要素の試験が上述のように最終的に否定的な結果をもたらした場合に実行される。そのため、特に少数の場合でオペレータの介入が必要となる。したがって、本方法は、特に大幅に自動化されることができる。
【0040】
ガイドレールの目標コースを変更した後、エレベータ構成要素の記述した試験が再び実行される。目標コースは、例えば、ドア開口部に平行な1~3cmなどの確立された距離だけシフトされることができる。
【0041】
本発明の一実施形態では、エレベータ構成要素の調整範囲の試験の否定的な結果が出力される場合、このエレベータ構成要素の必要な調整範囲が自動的に決定されて出力される。したがって、調整範囲が十分でないという問題は、目標位置をシフトすることによって解決されるのではなく、十分または適切な調整範囲を伴うエレベータ構成要素を使用することによって解決される。これはまた、設置も実施されることができることを確実にする。必要な調整範囲を決定して出力することにより、適切なエレベータ構成要素が特に容易に見つけられることができ、または必要に応じて特別に製造されることができる。適切なエレベータ構成要素は、必ずしもより大きな調整範囲を有する必要はなく、当初計画されたエレベータ構成要素の場合よりも小さくすることさえできる。適合は、特にエレベータ構成要素の固定可能部分または可動部分を適合させることによって行われることができる。例えば、レールブラケット部分は、関連するレールブラケット上部がシャフト壁からより大きく離れた距離にあるように設計されることができる。
【0042】
必要な調整範囲は、エレベータ構成要素の調整可能部分をその目標位置に仮想的に配置し、固定可能部分をシャフト壁に仮想的に配置することによって決定されることができる。次いで、必要な調整範囲は、少なくともエレベータ構成要素の2つの部分が互いに接続され得る、例えばねじ止めされ得るようなものでなければならない。
【0043】
本発明の一実施形態では、エレベータシャフトのドア開口部の位置は、シャフト壁の記録されたコースから自動的に決定される。したがって、本方法は、非常に大きな範囲まで自動化されることができる。ドア開口部に対する十分なサイズおよび特徴的な形状の凹部は、シャフト壁の過程で自動的に識別されることができる。次に、凹部の角が決定されることができる。
【0044】
ドア開口部の位置は、第1の大まかな位置、次いでドア開口部の位置が大まかな位置の周りの領域で決定される場合、特に効果的に自動的に決定されることができる。特に、大まかな位置は2Dデータに基づいて決定されることができ、大まかな位置の近傍のドア開口部の正確な位置は3Dデータに基づいて決定されることができる。
【0045】
ドア開口部の自動的に決定された位置は、特にオペレータによって変更されることができる。したがって、本方法は、高度な自動化にもかかわらず非常に柔軟である。
【0046】
ドア開口部の位置は、調整可能なエレベータ構成要素の調整範囲の記述した試験とは無関係に自動的に決定されることもできる。したがって、シャフト壁によって区切られたエレベータシャフトのエレベータ構成要素の設置の、少なくとも部分的に自動化された計画のための方法は、以下の方法ステップを備える。すなわち、
-シャフト壁のコースを記録するステップ、
-自動化された方法でエレベータシャフトのドア開口部の位置を決定するステップ、
-ドア開口部の特定の位置に応じてガイドレールの目標コースを確立するステップ、
-ガイドレールの確立されたコースに応じて自動化された方法でエレベータ構成要素の目標位置を確立するステップ、
であり、独立した発明を構成する。
【0047】
本発明の一実施形態では、計画された設置は、少なくとも部分的に自動取付装置によって実行される。計画中に、取付装置がシャフト壁上のそれぞれの目標位置にエレベータ構成要素を設置することができるかどうかを決定するために、次いで追加のチェックが実行される。少なくとも部分的に自動化された方法で設置を実行することにより、計画だけでなく設置も非常に効果的に実行されることができる。加えて、前述の追加の試験は、取付装置によって安全に設置が行われることもできることを確保する。
【0048】
取付装置は、特に、キャリア構成要素およびメカトロニクス設置構成要素を備える。キャリア構成要素は、エレベータシャフトに対して、すなわちエレベータシャフト内で、例えば変位され、エレベータシャフト内の異なる高さに配置されるように設計される。設置構成要素は、キャリア構成要素上に保持され、少なくとも部分的に自動化された、好ましくは完全に自動化された方法で設置プロセスの一部として設置ステップを実行するように設計される。設置構成要素は、例えば産業用ロボットとして設計される。取付装置は、特に、キャリア構成要素がエレベータシャフトで移動されることができる変位装置、およびエレベータシャフトのキャリア構成要素を固定、特に強固に固定するための固定構成要素を有する。取付装置は、特に、取付装置の個々の構成要素を制御するための制御手段を有する。取付装置は、例えば、国際公開第2017/016783号に記載の取付装置に準拠して設計される。
【0049】
取付装置がシャフト壁上のそれぞれの目標位置にエレベータ構成要素を設置することができるかどうかを確認するために、例えば、個々のエレベータ構成要素の取り付けのシミュレーションが実行される。前述のシミュレーションでは、コンピュータ支援シミュレーションツールが使用され、取付装置およびエレベータシャフトがモデル化される。次いで、個々の自動取付ステップのシミュレーションが実行される。シミュレーション中に、取付ステップが実際に実行されることができるかどうか、または例えば設置構成要素とエレベータシャフトまたはキャリア構成要素との間に衝突があるかどうかを決定するために、オペレータによってまたは自動化された方法でチェックが実行されることができる。
【0050】
本発明のさらなる利点、特徴および詳細は、実施形態の以下の説明および図面から明らかになり、同一または機能的に同一の要素には同一の参照符号が付されている。図面は単に概略的なものであり、縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】エレベータシステムのエレベータシャフトのシャフト壁のコースを記録するための測定システムを示す図である。
【
図2】
図1のエレベータシャフトのドア切抜き部を示す図である。
【
図3】2つのガイドレールを備えるエレベータシャフトを上から見た図である。
【
図4】レールブラケットによってシャフト壁に固定されたガイドレールを示す図である。
【
図5】シャフト壁上のレールブラケットを前方から見た図である。
【
図7】表面輪郭に凹凸を有するシャフト壁の断面図である。
【
図8】内部に受け入れられた取付装置を備えるエレベータシステムのエレベータシャフトの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
シャフト壁によって区切られたエレベータシャフトのエレベータ構成要素の設置の、少なくとも部分的に自動化された計画のための方法では、エレベータシャフトは、シャフト壁のコースが記録される第1の方法ステップで測定される。
図1は、エレベータシャフト10に配置された測定システム50を示す。垂直に整列したエレベータシャフト10は、コンクリート製の4つのシャフト壁によって区切られているが、
図1は、後方シャフト壁18aおよび前方シャフト壁18bのみを示している。前方シャフト壁18bは、上下に配置された合計3つのドア開口部52a、52b、52cを有している。エレベータシステムが完全に取り付けられると、シャフトドアがドア開口部52a、52b、52cに配置され、シャフトドアはエレベータシャフト10を閉じ、エレベータかごが対応するシャフトドアに配置されている場合にのみエレベータかご(
図1には図示せず)へのアクセスを可能にする。
【0053】
この場合、測定システム50は、例えば、ケーブル54およびウインチ56によって略直方体のエレベータシャフト10のシャフトヘッド60のシャフト天井58から吊り下げられた光慣性測定システムとして設計される。シャフトヘッド60の反対側に、エレベータシャフト10は、シャフト底部64によって閉鎖されるシャフトピット62を有する。
【0054】
測定システム50は、複数、特に4つまたは5つのデジタルステレオカメラを備えるカメラシステムを有する。ステレオカメラは、すべてのシャフト壁が記録され得るように配置される。第1のカメラ66aおよび第2のカメラ66bを備えるデジタルステレオカメラ66が、例として以下で説明される。ステレオカメラ66は、図示されている状態では、4つすべてのシャフト壁の詳細を取り込むことができるように設計されている。ステレオカメラ66は、ステレオカメラ66によって取り込まれた画像を受信して評価する、測定システム50の評価ユニット68に信号によって接続される。評価ユニット68は、特徴的な点、例えばシャフト壁の一方における角または隆起を画像から検索する。カメラ66a、66bの両方の画像の特徴的な点を識別するとすぐに、三角測量を使用して、カメラ66a、66bに対する、したがって測定システム50に対する特徴的な点の位置を、2つのカメラ66a、66b間の既知の距離および2つの画像の特徴的な点の異なる位置から決定することができる。特徴的な点は、シャフト壁の壁点と呼ばれることもできる。
【0055】
2つのカメラ66a、66bの間には、慣性測定ユニット70が配置されている。慣性測定ユニット70は、各々が互いに対して垂直に配置された3つの加速度センサ(図示せず)、および互いに対して垂直に配置された3つの回転速度センサ(図示せず)を有し、これらによって、x、y、およびz方向の加速度、ならびにx、y、およびz軸の周りの回転加速度が決定されることができる。測定された加速度から、慣性測定ユニット70は、開始位置に基づいてその位置、したがって測定システム50の位置も推定し、これらの位置を測定システム50の評価ユニット68に送信することができる。
【0056】
エレベータシャフト10の垂直方向における測定システム50の位置をより正確に決定するために、測定システム50は位置決定ユニット72に結合される。位置決定ユニット72は、シャフト底部64とシャフト天井58との間に張力が加えられて垂直に整列したコードストリップ74を有する。コードストリップ74は、垂直方向の位置に関する情報を表す不可視の磁気コードマークを有する。位置決定ユニット72はまた、測定システム50上に配置され、コードストリップ74が通過する読み取りユニット76を有する。読み取りユニット76は、コードストリップ74の磁気コードマークの形態で情報を読み取り、したがって、読み取りユニット76、したがって測定システム50の垂直方向の位置を非常に正確に決定することができる。
【0057】
位置決定ユニット72によって決定された測定システム50の垂直方向の位置は、測定システム50の正しい位置と見なされ、したがって、慣性測定ユニット70によって推定された測定ユニット50の垂直方向の位置と置き換えられる。
【0058】
上述のように決定された、測定システム50の位置、および三角測量によって決定された測定システム50に対する特徴的な点の位置から、評価ユニット68は、特徴的な点、すなわち壁点の絶対位置を決定する。したがって、評価ユニット68は、多数の壁点の位置を決定し、したがって、当初は多数の個々の点、すなわちいわゆる点群からなるエレベータシャフト10のデジタルモデルを作成する。エレベータシャフト10全体を測定するために、測定システム50は、エレベータシャフト10で上から下へウインチ56によって変位される。
【0059】
位置決定ユニット72を使用する代わりに、またはそれに加えて、エレベータシャフト10を測定するためのさらなる情報および支援が使用されることができる。そのような支援も
図1に示されている。シャフト開口部52a、52b、52cの領域では、マーキング78a、78b、78cの形態の基準要素が各シャフト壁に配置される。マーキング78a、78b、78cは、後続の床被覆から1メートルの距離をマーキングする、いわゆるメータラインとして設計されている。法線ゼロを上回る絶対高さまたはシャフト底部64を上回る相対高さは、マーキング78a、78b、78cについて既知である。したがって、エレベータシャフト10内の垂直方向におけるマーキング78a、78b、78cの位置は既知である。評価ユニット68は、上述のように測定システム50に対するマーキング78a、78b、78cの位置を決定し、垂直方向におけるマーキング78a、78b、78cの既知の位置および前述の位置に基づいて、垂直方向における測定システム50の実際の位置を推定することができる。このようにして決定された測定システム50のこの実際の位置は、次にエレベータシャフト10の測定に使用される。
【0060】
補足的に、またはマーキング78a、78b、78cに加えて、基準要素、特に2つのケーブル13の形態の2つの細長い基準要素は、シャフト底部64とシャフト天井58との間に張力が加えられることができる。ケーブル13は、特に、約8~12mmの直径を有する。したがって、ケーブル13は、垂直方向に互いに隣接して延伸する。球体80の形態のマーキングは、シャフト底部64およびシャフト天井58の領域にそれぞれの場合に配置される。ケーブル13および球体80によって、評価ユニット68は、後のエレベータシステムの設置にも使用されることができる座標系を定義することができる。前述の球体の代わりに、ケーブルは、評価ユニットによって認識および評価され得るパターンを有することもできる。
【0061】
エレベータシャフト10が測定された後、すなわち、記述された点群が記録された後、記録されたデータは後処理される。この後処理は、評価ユニット68ではなく、より強力なコンピュータ(図示せず)によって実行される。そのような後処理のための様々な効果的なプログラムが市場で入手可能である。点群のデータは、例えば、無線データ接続またはデータメモリ、例えばUSBメモリスティックを介して、評価ユニット68から前述のコンピュータに送信されることができる。
【0062】
エレベータ構成要素の設置の少なくとも部分的に自動化された計画の第2の方法ステップも、前述のコンピュータ上で実行される。この目的のために、ドア開口部52a、52b、52cの位置は、自動化された方法で決定される。これらは、
図2で正面から見て示されている。ドア開口部52a、52b、52cの位置は、略矩形のドア開口部52a、52b、52cの4つの角82.1a、82.2a、82.3a、82.4a、82.1b、82.2b、82.3b、82.4b、82.1c、82.2c、82.3c、82.4cの位置によって決定される。この目的のために、前方シャフト壁18bのコースがコンピュータプログラムによって評価される。第1のステップでは、前方シャフト壁18bのコースの2Dデータに基づいて、4つの角82.1a、82.2a、82.3a、82.4a、82.1b、82.2b、82.3b、82.4b、82.1c、82.2c、82.3c、82.4cの大まかな位置が決定される。次に、前述の大まかな位置の近傍の4つの角82.1a、82.2a、82.3a、82.4a、82.1b、82.2b、82.3b、82.4b、82.1c、82.2c、82.3c、82.4cの正確な位置が3Dデータに基づいて決定される。角82.1a、82.2a、82.3a、82.4a、82.1b、82.2b、82.3b、82.4b、82.1c、82.2c、82.3c、82.4cの決定された位置は、コンピュータの画面(図示せず)に表示される。必要に応じて、すなわち、位置の自動決定が満足のいく結果を提供しなかった場合、オペレータは位置を変更することができる。
【0063】
ドア開口部52a、52b、52cの位置を自動的に決定する代わりに、これは、後処理された点群に基づいてオペレータによって手動で実行されることもできる。
【0064】
エレベータ構成要素の設置の少なくとも部分的に自動化された計画の第3の方法ステップも、前述のコンピュータ上で実行される。ガイドレールの位置を確立するために、ドア開口部52a、52b、52cの両側のドア開口部52a、52b、52cの角を通って直線が自動的に引かれる。したがって、角82.1a、82.3a、82.1b、82.3b、82.1c、82.3cを通る第1の左手直線84a、および角82.2a、82.4a、82.2b、82.4b、82.2c、82.4cを通る第2の右手直線84bがある。この目的のために、最小二乗法が使用される。2つの直線は、前述の角と特定の直線との間の距離の二乗の合計が最小になるように確立される。2つの直線84a、84bも、互いに平行であり、かつ、垂直方向に延伸するように決定される。エレベータシステムのエレベータかごの寸法に応じて、エレベータかごをガイドするための2つのガイドレール86a、86bの目標コースが取得される。
【0065】
図3および
図4によれば、ガイドレール86a、86bは、レールブラケット16の形態の調整可能なエレベータ構成要素によって、サイドシャフト壁18c、18dに固定される。ガイドレール86a、86bがそれらの目標コースにより延伸することができるようにするために、レールブラケット16の目標位置は、エレベータ構成要素の設置の少なくとも部分的に自動化された計画の第4の方法ステップにおいて自動的に決定される。水平方向(x、y方向)の位置に加えて、垂直方向(z方向)の位置も決定される。垂直方向の位置は、上下に配置された2つのレールブラケット16が互いに定義された距離を有するように決定される。
【0066】
図5および
図6によれば、レールブラケット16は、レールブラケット下部88およびレールブラケット上部90からなり、これらは2つのねじ-ナット接続92によって互いにねじ止めされる。取り付けられると、レールブラケット下部88は、ボルト-ねじ接続94によってシャフト壁18cに固定される。レールブラケット下部88の接触面95は、シャフト壁18cに当接する。したがって、レールブラケット下部88は、レールブラケットとして設計されたエレベータ構成要素の固定可能な部分である。エレベータシステムが取り付けられると、ガイドレール86a(
図5および
図6には図示せず)がレールブラケット上部90に固定される。したがって、レールブラケット上部90の位置は、ガイドレール86aのコースを確立する。したがって、ガイドレール上部90の目標位置も、ガイドレール86aの目標コースから取得される。
【0067】
レールブラケット下部88は第1の長穴96を有し、レールブラケット上部90は対応する第2の長穴98を有する。ねじ-ナット接続92は、2つの長穴96、98を通って延伸する。ねじ-ナット接続92が強固に締め付けられていない限り、この配置は、レールブラケット上部90がレールブラケット下部88に対して変位することを可能にし、したがって、レールブラケット上部90はレールブラケット下部88に対して調整されることができる。したがって、レールブラケット上部90は、レールブラケットとして設計されたエレベータ構成要素の可動部分である。
図6のレールブラケット上部90は、シャフト壁18cから最大距離を有する。他方の極端な場合(図示せず)には、レールブラケット上部90がシャフト壁18cに当接する。これは、矢印100によって表されるレールブラケット16の調整範囲をもたらす。
【0068】
エレベータ構成要素の設置の少なくとも部分的に自動化された計画の第4の方法ステップでは、前述のコンピュータ上で実行されるプログラムは、レールブラケット上部90がその目標位置に配置されたときに、レールブラケット16の調整範囲100がレールブラケット下部88をシャフト壁18cに固定するのに十分であるかどうかを自動的にチェックする。この試験は、設置されるすべてのレールブラケット16に対して実行され、試験の結果は、さらなる処理のために、特に前述のコンピュータ上で実行される別のプログラム上で、または画面上で出力される。
【0069】
加えて、シャフトドアの調整範囲が、ガイドレール86a、86bの目標コースから生じる位置でドア開口部52a、52b、52cに取り付けるのに十分であるかどうかを決定するために、自動チェックが実行される。
【0070】
説明したように、レールブラケット下部88の接触面95は、シャフト壁18cに当接することで、シャフト壁18cに支持される。より正確に説明すると、接触面95は、シャフト壁18cの支持面に当接する。シャフト壁上の目標支持面102(
図7に示す)は、レールブラケット上部90の目標位置およびレールブラケット下部88への可能な結合から生じる。エレベータ構成要素の設置の少なくとも部分的に自動化された計画のさらなる方法ステップによれば、目標支持面102の表面輪郭が自動的にチェックされる。レールブラケット下部88がシャフト壁19cに固定されることを妨げる場合がある凹凸を表面輪郭が有しているかどうかのチェックが実行される。
【0071】
最初に、目標支持面102の表面輪郭を決定するときには、前述の壁面点の決定された位置を使用して理想的な壁面が決定される。理想的な壁面は、目標支持面102だけでなく、目標支持面を上下に変位させることができる、いわゆる変位領域104に対しても決定される。理想的な壁面は、RANSACアルゴリズムを使用して決定される。理想的な壁面を決定した後、個々の壁面と理想的な壁面との距離が決定される。これらの距離は、目標支持面102の表面輪郭の凹凸を認識するための基礎として機能する。
【0072】
目標支持面102の表面輪郭が決定された後、チェックが実行され、表面輪郭の第1の凹凸が第1の認識規則によって認識される。第1の認識規則は、以下のステップからなっている。すなわち、
-第1の閾値よりも大きい理想的な壁面から少し離れた壁点を決定するステップ、
-前述の条件を満たす隣接する壁点を組み合わせるステップ、および、
-結合された壁点の面積が境界面積より大きい場合、第1の凹凸を認識するステップ、
である。
【0073】
第1の閾値は、例えば5mm以上10mm以下であり、境界表面積は、例えば15cm
2以上30cm
2以下である。上記のように壁点が組み合わされる場合、前述の条件を満たし、かつ前述の条件を満たして、例えば、5mmから50mmの限界距離未満である、別の壁点から少し離れた距離を有する壁点が組み合わされる。加えて、組み合わせるとき、前述の壁点のすべてを含む矩形が定義される。これにより、
図7に示される例では、合計4つの第1の凹凸106が生じる。
【0074】
第1の凹凸が決定された後、自動チェックが行われ、目標支持面102に第1の凹凸106があるかどうかを決定する。これは、レールブラケット上部の目標位置が自動的に垂直方向下方に変位するための場合である。これにより、目標支持面102もまた、新しい目標支持面108上に垂直方向に下方に変位する。レールブラケット16の調整範囲100は、レールブラケット下部88をシャフト壁18cに固定するのに十分であると仮定される。次いで、新しい目標支持面108は、第1の凹凸106についてもチェックされる。新しい目標支持面108に第1の凹凸106がない場合、さらなる試験が行われる。この目的のために、第2の凹凸は、第2の認識規則によって認識される。
【0075】
表面輪郭の第2の凹凸を認識するための第2の認識規則は、以下のステップを含む。すなわち、
-第2の閾値よりも大きい理想的な壁面から少し離れた壁点を決定するステップ、
-前述の条件を満たす各壁点における第2の凹凸を認識するステップ、
である。
【0076】
第2閾値は、例えば3~5mmである。これにより、
図7に示される例では、一連の第2の凹凸110が生じる。
【0077】
第2の凹凸を決定した後、自動チェックが行われ、新しい目標支持面108に第2の凹凸110があるかどうかを決定する。新しい目標支持面108が支持面108として受け入れられる場合、これはここでは当てはまらない。したがって、レールブラケット下部88に対する新しい目標支持面108の表面輪郭のチェックは、肯定的な結果を提供する。
【0078】
新しい目標支持面108に第1の凹凸106または第2の凹凸110がある場合、レールブラケット上部90の目標位置、したがって目標支持面は再びシフトされ、新しい目標支持面は再びチェックされる。このプロセスは、支持面が見つかるまで、または変位領域104の上端および下端に達するまで繰り返される。
【0079】
表面輪郭の記述されたチェックは、設置されるすべてのエレベータ構成要素、すなわち調整可能および調整不可能なエレベータ構成要素に対して実行される。すべての試験が肯定的な結果をもたらす場合、設置が実行されることができる。結果は、コンピュータの画面上でオペレータに表示される。
【0080】
1つまたは複数のエレベータ構成要素に対して調整範囲が不十分である場合、または適切な支持面を見つけられることができない場合、ガイドレールの目標コースは自動的に変更されることができ、試験全体は再び実行されることができる。目標コースは、例えば、ドア開口部に平行な1~3cmなどの確立された距離だけシフトされることができる。
【0081】
調整範囲が1つまたは複数のエレベータ構成要素に十分でない場合、このエレベータ構成要素に必要な調整範囲も自動的に決定および出力されることができる。オペレータは、コンピュータ上で適切な入力を行うことによって、どの変形が実行されるかを確立することができる。
【0082】
少なくともいくつかのシャフト構成要素は、設置構成要素を含む自動取付装置によって実行される。これが首尾よく実行されるために、取付装置がシャフト壁上のそれぞれの目標位置にエレベータ構成要素を設置することができるかどうかを決定するために、最終チェックが実行される。
【0083】
この目的のために、個々のエレベータ構成要素の取り付けのシミュレーションが実行される。シミュレーション中に、取付ステップが実際に実行されることができるかどうか、または例えば設置構成要素とエレベータシャフトまたはキャリア構成要素との間に衝突があるかどうかを決定するために、オペレータによってまたは自動化された方法でチェックが実行されることができる。
【0084】
図8は、エレベータシステム12のエレベータシャフト10に配置された自動取付装置14を示し、これにより、取付装置レールブラケット下部88はシャフト壁18cに固定されることができる。この目的のために、取付装置14によってシャフト壁18に孔15が穿孔されることができる。エレベータシャフト10は、
図8において垂直に向けられた主延伸方向11に延伸する。後の取付ステップにおいて、エレベータシステム12のガイドレール(図示せず)は、レールブラケット下部88を介してシャフト壁18に固定されることができる。取付装置14は、キャリア構成要素20およびメカトロニクス設置構成要素22を有する。キャリア構成要素20は、メカトロニクス設置構成要素22が取り付けられるフレームとして設計されている。前記フレームは、エレベータシャフト10内のキャリア構成要素20を垂直に変位させること、すなわち、例えば、建物内の異なる階の異なる垂直位置にキャリア構成要素を移動させることを可能にする寸法を有する。図示の例では、メカトロニクス設置構成要素22は、下方に吊り下げられるようにキャリア構成要素20のフレームに取り付けられた産業用ロボット24として設計されている。この場合、産業用ロボット24の一方のアームは、キャリア構成要素20に対して移動され、例えば、エレベータシャフト10のシャフト壁18に向かって変位されることができる。
【0085】
懸架手段26として使用される鋼ケーブルを介して、キャリア構成要素20は、エレベータシャフト10の上部でエレベータシャフト10の天井の保持点29に取り付けられたモータ駆動ケーブルウインチの形態の変位構成要素28に接続される。変位構成要素28によって、取付装置14は、エレベータシャフト10内で、エレベータシャフト10の主延伸方向11に、すなわちエレベータシャフト10の全長にわたって垂直に変位されることができる。
【0086】
取付装置14は、固定構成要素30をさらに備え、それによってキャリア構成要素20はエレベータシャフト10内で横方向、すなわち水平方向に固定されることができる。
【0087】
コードの形態の2つの基準要素13は、エレベータシャフト10でその全長にわたって張力が加えられており、これらの要素は主延伸方向11に沿って配向されている。これらのコード13は、特に、エレベータシャフト10が測定されたときに、エレベータシャフト10で既に張力が加えられていたものと同じである。
【0088】
【0089】
キャリア構成要素20は、水平方向および垂直方向に延伸する複数のバーが機械的に耐性のある構造を形成するケージ状フレームとして設計されている。保持ケーブル32は、ケージ状キャリア構成要素20の上部に取り付けられ、ケーブルは、懸架手段26に接続されることができる。
【0090】
図示の実施形態では、メカトロニクス設置構成要素22は、産業用ロボット24を使用して形成される。示されている例では、産業用ロボット24は、旋回軸を中心に旋回可能な複数のロボットアームが装備されている。産業用ロボットは、例えば、少なくとも6つの自由度を有することができ、すなわち、産業用ロボット24によってガイドされる取付ツール34は、6つの自由度、すなわち、例えば、3つの回転自由度および3つの並進自由度で移動されることができる。産業用ロボットは、例えば、垂直座屈アームロボット、水平座屈アームロボット、SCARAロボットもしくはデカルトロボットとして、またはポータルロボットとして設計されることができる。
【0091】
ロボットの支持されていない端部は、異なる取付ツール34に結合されることができる。取付ツール34は、それらの設計およびそれらの使用目的に関して異なり得る。取付ツール34は、産業用ロボット24の支持されていない端部が前記ツールまたはセンサに向かって運ばれ、その一方に結合されることができるように、キャリア構成要素20上に保持されることができる。この目的のために、産業用ロボット24は、例えば、この種の複数の取付ツール34の少なくとも取り扱いを可能にするように設計されたツール交換システムを有することができる。
【0092】
最後に、「有する(having)」、「備える(comprising)」などの用語は、他の要素またはステップを排除するものではなく、「1つの(a)」または「1つの(an)」などの用語は、複数を排除するものではないことに留意されたい。上記の実施形態のうちの1つを参照して説明された特徴またはステップは、上述の他の実施形態の他の特徴またはステップと組み合わせて使用することもできることにさらに留意されたい。特許請求の範囲における参照符号は、限定的であると見なされるべきではない。