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特許7434357不快な体臭、特に口臭を処置するための局所用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】不快な体臭、特に口臭を処置するための局所用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20240213BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240213BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/73
A61Q11/00
A61Q19/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021557510
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020058679
(87)【国際公開番号】W WO2020193743
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】1903283
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】メンティンク、レオン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルス、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ルーヴェ-ポミエ、ジェラルディン
(72)【発明者】
【氏名】ピオット、ソフィー
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109289042(CN,A)
【文献】国際公開第2017/106467(WO,A1)
【文献】特表平05-501126(JP,A)
【文献】特開2007-296062(JP,A)
【文献】特表2010-520193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピル化α-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化γ-シクロデキストリンから選択される少なくとも1つの変性シクロデキストリンと、
イソソルビド、イソマンニド、イソイジドから選択される少なくとも1つの1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール、及び/又は、少なくとも1つの1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体と、を含
前記1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体が、モノメチルイソソルビド、ジメチルイソソルビド、ラウリン酸イソソルビド、オレイン酸イソソルビド、ジカプリル酸イソソルビド、ジカプリン酸イソソルビド、ジオレイン酸イソソルビド、ジリノール酸イソソルビド、及びジリノレン酸イソソルビドから選択される、局所用組成物。
【請求項2】
前記変性シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリンであることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記変性シクロデキストリンが、0.1~3のヒドロキシプロピル置換度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトールが、イソソルビドであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記変性シクロデキストリンの質量含有率が、0.1%~15%であり、
前記1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール又は前記1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体の質量含有率が、0.1%~25%であり、
含水率の範囲が、0.5%~95%であることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
化粧品又は皮膚用製剤における防臭剤としての、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物の非治療的な化粧品使用。
【請求項7】
不快な体臭の処置に使用するための、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
不快な臭を予防、低減、又は排除するための、請求項に記載の使用又は請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記悪臭が、表皮上にあり、又は口腔領域内にあることを特徴とする、請求項に記載の使用又は請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
口腔領域内の前記悪臭が、口臭によって引き起こされることを特徴とする、請求項に記載の使用又は請求項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
請求項1~のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする、化粧品又は皮膚用製剤。
【請求項12】
口腔スプレー、マウスウォッシュローション、口腔リンスローション、練り歯磨き、口腔錠、口内分散性フィルム、デオドラントスティック、デオドラントスプレーの形態であることを特徴とする、請求項11に記載の化粧品又は皮膚用製剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
本出願は、化粧品の分野に関し、より具体的には、殺菌性及び/又は静菌性局所用組成物の作用、並びに臭気の捕捉による、悪臭の局所ケアの分野に関する。本発明による組成物は、口腔領域(sphere)にも有用であり得るが、微生物活動に起因して悪臭が発生し得る皮膚の領域、すなわち、脇の下、股間及び足にも有用であり得る。好ましくは、本発明の局所用組成物は、口腔領域を処置するために使用され、より好ましくは口臭を処置するために使用される。
【背景技術】
【0002】
特許PCT/FR2018/053059号では、本出願人は、口腔微生物叢から悪玉菌を排除するために、ジアンヒドロヘキシトール、特にイソソルビドの使用を提案している。この除去に起因する効果は、歯垢の減少、歯肉損傷の低減、及び歯の脱灰の低減である。本出願の発明によって排除された細菌の微生物活動に起因して発生した悪臭には言及がなされていない。
【0003】
Yajimaによる米国特許第4267166号では、ヒトの息の悪臭を処置するための方法は、食用組成物中のシクロデキストリンの使用に基づいている。この組成物は、ジアンヒドロヘキシトールを含まない。
【0004】
Henkelの国際公開第2008/064948号は、水、エタノール、及び少なくとも1つのシクロデキストリンを含むマウスウォッシュ溶液を開示している。マウスウォッシュ溶液はまた、特にキシリトール及びソルビトールである2つのポリオールなどの多価アルコールも含み得る。ジアンヒドロヘキシトール、更にはイソソルビドである多価アルコールのより具体的なカテゴリは、本特許では言及されていない。このマウスウォッシュ溶液では、エタノールの存在は口を乾燥させる傾向があり、口腔粘膜に刺激性である。
【0005】
前の文献によれば、悪臭を捕捉するためのシクロデキストリンの使用が知られており、アンヒドロヘキシトール及びジアンヒドロヘキシトールなどのヘキシドの使用は、口腔又は皮膚微生物叢から細菌を抑制すること、又はその発生を制限することが知られている。しかしながら、不快な体臭、特に口臭又は皮膚臭を予防、低減又は排除するための、局所用組成物中でのこれらの全ての分子の使用は既知ではなく、更には、これら2種類の分子の同時に使用することは知られていない。
【0006】
最新の文献のいずれも、局所用組成物において、少なくとも1つのジアンヒドロヘキシトールと少なくとも1つのシクロデキストリンとの組み合わせを提案しておらず、そのような組成物を用いて口臭をはるかに少なくするよう処置するように、皮膚臭であっても口臭であっても、不快な体臭の処置を最大にするために、そのようにすることを誰も奨励していない。
【0007】
口臭に対する一般的な処置は、クロルヘキシジンを殺菌剤として、最も多くの場合、マウスウォッシュで使用することである。この物質は、歯垢の形成を増加させ、歯の表面の着色を誘発し、また味を変化させる主要な欠点を有する。
【0008】
技術的問題
目的は、ヒトの全身で、優先的には口腔領域内での使用に好適な「防臭」効果を有する局所用組成物、特に口臭に対する現行の処置の代替品を見つけ出すことであり、これはまた、同時に、
天然由来であり、
皮膚又は粘膜を刺激若しくは攻撃しないが、それとは反対に有利に水和することができるように、アルコールを含まず、所望により合成防腐剤を含まず、
微生物叢、特に口腔微生物叢に有益であり、すなわち、バランスのとれた健康な口腔微生物フローラを促進又は維持し、
及びその適用後の最初の瞬間から悪臭を低減又は排除し、
及び悪臭の形成を持続的に低減し、特に悪臭分子の産生に関与する微生物株を低減する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の目的は、
α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、優先的にβ-シクロデキストリンから選択される、少なくとも1つの天然又は変性シクロデキストリンと、
イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、優先的にイソソルビドから選択される、少なくとも1つの1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール、及び/又は、少なくとも1つの1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体と、を含む、局所用組成物、水性組成物又は固体組成物である。
【0010】
本発明の第2の目的は、化粧品又は皮膚用製剤における防臭剤としての、本発明による局所用組成物の非治療的な化粧品使用である。
【0011】
本発明の第3の目的は、不快な体臭の処置に使用するための本発明による局所用組成物に関する。
【0012】
特に、本発明は、不快な体臭を予防、低減、又は排除するための、上記の局所用組成物、又は本発明によるその使用に関する。これらの悪臭は、表皮、特に脇の下、股間、及び足に局在化し得るか、又は、例えば口臭によって引き起こされる口腔領域内にある。具体的には、本発明による局所用組成物の非治療的な化粧品使用は、口臭を予防、低減股は排除するように、優先的には、口臭の原因及び影響に同時に対抗するために、対抗するように行われる。
【0013】
したがって、好ましい実施形態によれば、本発明は、口臭の処置に使用するための上記の局所用組成物に関する。
【0014】
本発明の第4の目的は、上記の局所用組成物を含む化粧品又は皮膚用製剤に関する。優先的には、口腔領域に関しては、製剤は、口腔スプレー、マウスウォッシュローション、口腔リンスローション、練り歯磨き、口腔錠、口内分散性フィルムの形態となる。優先的には、皮膚領域に関しては、製剤は、デオドラントスティック、デオドラントスプレー、デオドラントロールオン、デオドラントマスクの形態となる。
【0015】
防臭
【0016】
「防臭」とは、本発明による組成物が臭気を中和する能力、及びまた臭気、特に悪臭、優先的には局所微生物叢、特にヒト局所微生物叢、及び特にヒト口腔微生物叢の細菌活動に由来するものの形成を防止する能力を有することを意味する。
【0017】
シクロデキストリン
【0018】
本出願において、用語「シクロデキストリン」は、炭素1と4との間の共有結合によって結合された6~12個のグルコース単位を含有する、特に、それぞれ6、7、及び8個のグルコース単位を含有するα-、β-及びγ-シクロデキストリンを含有する、天然及び非置換シクロデキストリンなどの、他の既知のシクロデキストリンのうちのいずれか1つを意味し、包含する。これらのシクロデキストリンのCAS番号は、αについては10016-20-3であり、βについては7585-39-9であり、γについては17465-86-0である。
【0019】
「変性シクロデキストリン」は、OHヒドロキシル基の少なくとも一部が、OR基に変換されているシクロデキストリンであり、式中、Rは、一般にアルキル又はカルボキシアルキル基を示す。この観点から、シクロデキストリン誘導体としては、特に、メチル化又はエチル化シクロデキストリンなどのアルキル基で置換されたシクロデキストリンが挙げられるが、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン及びヒドロキシエチル化シクロデキストリンなどのヒドロキシアルキル基で置換されたもの、並びにカルボキシメチル化シクロデキストリンなどのカルボキシアルキル基で置換されたもの、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0020】
完全に天然起源のため、本発明による好ましいシクロデキストリンは、未変性シクロデキストリンである天然α-、β-及びγ-シクロデキストリンである。好ましい実施形態によれば、本発明による局所用組成物に使用されるシクロデキストリンは、β-シクロデキストリン、好ましくは「天然」(化学変性されていない)である。
【0021】
しかしながら、天然シクロデキストリンの溶解度が局所用組成物又は化粧品若しくは皮膚用製剤に十分に高くない場合、シクロデキストリン、優先的には変性β-シクロデキストリンが好ましく、優先的にはヒドロキシアルキル化シクロデキストリンが好ましく、及び最も優先的にはヒドロキシアルキル化β-シクロデキストリンが好ましい。更により優先的には、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン、及び最も優先的にはヒドロキシプロピル化β-シクロデキストリンである。本発明において有用なヒドロキシプロピル化シクロデキストリンは、0.1~3、優先的には0.5~2、最も優先的には1~1.5の範囲の、DSによって表されるヒドロキシプロピルに対する置換度を有する。
【0022】
局所用組成物が固体形態であるとき、シクロデキストリンは、結晶性、擬結晶性、又は非晶質粉末の形態であってもよい。
【0023】
シクロデキストリンは、「遊離」と呼ばれる形態、すなわちその空洞が空である形態、又は解離することができる既知の包接錯体形態であってもよい。シクロデキストリンは、優先的には遊離形態である。
【0024】
ジアンヒドロヘキシトール
【0025】
1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトールは、1,4-3,6-ジアンヒドロソルビトールであるイソソルビド、1,4-3,6-ジアンヒドロマンニトールであるイソマンニド、1,4-3,6-ジアンヒドロイジトールであるイソイジド、及びこれらの生成物のうちの少なくとも2つの混合物から選択される。好ましくは、イソソルビドであり、そのIUPAC名は(3R,3aR,6S,6aR)-ヘキサヒドロフロ[3,2-b]フラン-3,6-ジオールである。
【0026】
この1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトールは、簡単にジアンヒドロヘキシトール又はイソヘキシドとも呼ばれ、これらは、ソルビトール、マンニトール、及びイジトールなどのC6ポリオール(ヘキシトール)の二重内部脱水の生成物である。この点に関し、本出願人は、ジアンヒドロヘキシトールの生成が、一般に、その合成中に水を生成することを示し、この反応媒体中でジアンヒドロヘキシトールを回収することにより、1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトールは、本発明による使用のためにジアンヒドロヘキシトールの水溶液の形態で直ちに利用可能である。ジアンヒドロヘキシトールの溶液は、特に、前述の特許出願の欧州特許第1287000号及び国際公開第03/043959号に記載されている方法に従って得ることができる。ジアンヒドロヘキシトールの調製中に使用される水の全て若しくは一部を維持するか、又は水を完全に排除して、単に水を添加することによって水溶液に戻される固体形態の生成物を得ることを選択することが可能であり、これは、本発明に従って使用することができるジアンヒドロヘキシトールの水溶液を調製するための別の可能性である。
【0027】
ジアンヒドロヘキシトール誘導体
【0028】
本発明による局所用組成物は、少なくとも1つのジアンヒドロヘキシトール誘導体を含み得る。
【0029】
本出願では、用語「1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトール誘導体」は、1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトールの化学修飾又は酵素修飾によって得られる全ての生成物を含む。一実施形態によれば、1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトール誘導体は、一方又は両方のヒドロキシル官能基でエステル化された(モノエステル及びジエステルがそれぞれ対応する)1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトール、一方又は両方のヒドロキシル官能基でエーテル化された(モノエーテル及びジエーテルがそれぞれ対応する)1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトールから選択される。一実施形態によれば、1,4:3,6ジアンヒドロヘキシトール誘導体は、モノメチルイソソルビド、ジメチルイソソルビド、ラウリン酸イソソルビド、オレイン酸イソソルビド、ジカプリル酸イソソルビド、ジカプリン酸イソソルビド、ジオレイン酸イソソルビド、ジリノール酸イソソルビド、及びジリノレン酸イソソルビドから選択される。
【0030】
α-ヒドロキシ酸又はポリヒドロキシ酸
【0031】
本発明の好ましい実施形態によると、局所用組成物は、少なくとも1つのα-ヒドロキシ酸又はポリヒドロキシ酸若しくはα-ヒドロキシ酸又はポリヒドロキシ酸前駆体、例えばラクトン型、優先的にはグルコノラクトンなどの環状ラクトン、最も優先的にはグルコノ-δ-ラクトンなどの環状ラクトンを含む。
【0032】
α-ヒドロキシ酸は、頭字語AHAによっても既知であり、その主な炭素鎖上の酸官能基に対して「α」位のヒドロキシル官能基、すなわち、酸官能基を担持する炭素原子に隣接する炭素原子によって担持されるヒドロキシル官能基を有するカルボン酸である。本発明で有用なAHAは、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸から選択される。
【0033】
本発明による局所用組成物の一実施形態によれば、この局所用組成物は液体形態であり、グリコール酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、優先的には、グルコン酸から選択されるα-ヒドロキシ酸を含む。
【0034】
ポリヒドロキシ酸は、頭字語PHAによっても既知であり、カルボン酸官能基を担持する炭素原子に対して、隣接する炭素によって担持されるか、又は少なくとも1つの炭素原子によって離間された少なくとも2つのヒドロキシル官能基を有するカルボン酸である。PHAは、直鎖、分枝鎖、又は環状分子であり得る。本発明の防臭組成物を形成するのに有用なPHAは、グルコン酸及びグルクロン酸から選択される。
【0035】
α-ヒドロキシ酸又はポリヒドロキシ酸前駆体
【0036】
α-ヒドロキシ酸又はポリヒドロキシ酸の「前駆体」とは、本出願人は、例えば、水溶液中で加水分解し、したがって解離の化学平衡によって解離することができる化学的機能を含む有機分子であって、AHA前駆体の場合、α位に少なくとも1つのヒドロキシルを有するカルボン酸官能基を有する分子、又はPHA前駆体の場合、更に炭素鎖上のカルボン酸官能基を有する分子を意味する。
【0037】
一実施形態によれば、α-ヒドロキシ酸前駆体は、グルコノラクトンである。IUPAC名(3R,4S,5S,6R)-3,4,5-トリヒドロキシ-6-(ヒドロキシメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-2-オンを有するグルコノラクトンは、グルコン酸の環状エステルである。これは、グルコノ-δ-ラクトンとも呼ばれる。
【0038】
本発明による局所用組成物の一実施形態によれば、局所用組成物は個体形態であり、ラクトンから、優先的にはグルコノラクトンから、及び最も優先的にはグルコノ-δ-ラクトンから選択されるα-ヒドロキシ酸又はポリヒドロキシ酸前駆体を含む。
【0039】
補完的ポリオール
【0040】
一実施形態によれば、水性組成物は、グリセロール、水素化グルコースシロップ、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、エリスリトール、イソマルト、ラクチトール、キシリトールから選択され、及び優先的には、キシリトール、マルチトール及びソルビトールから選択され、及び非常に優先的には、キシリトール及びマルチトールから選択される、少なくとも1つの直鎖ポリオールを更に含む。
【0041】
本発明による組成物の物理的形態
【0042】
本発明による局所用防臭組成物は、粉末若しくはスケールなどの固体形態、又はペースト、ゲル、若しくは溶液などの流体形態であり得る。固体形態の場合、局所用防臭組成物は、必ずしも完全に無水ではなく、したがって、少量、特に最大約5重量%の水を含有してもよい。流体形態の場合、ペースト、ゲル、又は1~95重量%であり得る乾燥物を有する水溶液であってもよい。好ましくは、物流及び保管コストの理由から、局所使用のための化粧品又は皮膚用製剤の製造中の使用を容易にするために、30重量%を超える、優先的には50重量%を超える重量を有し、より更に70重量%を超える乾燥物を有する濃縮溶液が、むしろ保持されるであろう。特に、75重量%~85重量%の乾燥物を有する局所用組成物を使用することができる。
【0043】
局所用組成物の成分の質量含有率
【0044】
一実施形態によれば、本発明による局所用組成物は、
0.1%~15%の天然又は変性シクロデキストリンの質量含有率、
0.1%~25%の1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール又は1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体の質量含有率、
0.5%~95%、優先的には1%~95%、より優先的には10%~95%、及び最も優先的には25%~95%の範囲の含水率を有する。
【0045】
別の実施形態によれば、本発明による局所用組成物は、
0.1%~15%の天然又は変性シクロデキストリンの質量含有率、
0.1%~25%の1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール又は1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体の質量含有率、
0.01%~10%のα-ヒドロキシ酸若しくはポリヒドロキシ酸又はα-ヒドロキシ酸若しくはポリヒドロキシ酸前駆体の質量含有率、
0.5%~95%、優先的には1%~95%、より優先的には10%~95%、及び最も優先的には25%~95%の範囲の含水率を有する。
【0046】
別の実施形態によれば、本発明による局所用組成物は、
0.1%~15%のシクロデキストリン又は変性シクロデキストリンの質量含有率、
0.1%~25%の1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール又は1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体の質量含有率、
0.01%~10%のα-ヒドロキシ酸若しくはポリヒドロキシ酸又はα-ヒドロキシ酸若しくはポリヒドロキシ酸前駆体の質量含有率、
0.1%~25%の範囲の、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトールから選択される、直鎖ポリオールの質量含有率、
0.5%~95%、優先的には1%~95%、より優先的には10%~95%、及び最も優先的には25%~95%の範囲の含水率を有する。
【0047】
化粧品又は皮膚用製剤
【0048】
本発明の意味の範囲内で、用語「化粧品又は皮膚用製剤」は、皮膚、ヒト、又は動物と接触させることが意図される任意の化粧品又は皮膚用製剤を意味する。局所使用のための製剤の非限定的な例は、ローション、クリーム、セラム、ゲル、軟膏、バルム、液体石鹸又はシャワーゲル、シャンプー、フォーム、ファンデーション、制汗剤、及びデオドラントを含む。一実施形態によれば、本発明による局所用組成物を含む化粧品又は皮膚用製剤は、口腔スプレー、マウスウォッシュローション、口腔リンスローション、練り歯磨き、口腔錠、口内分散性フィルム、デオドラントスティック、デオドラントスプレーの形態である。
【0049】
これらの製剤は、本発明による局所用組成物に加えて、局所使用のための製剤に通常使用される他の成分、例えば、化粧品又は皮膚用製剤活性成分、及び防腐剤、可溶化剤、又は香料などの補助剤を含んでもよい。また、例えば、ベタイン、グリセリン若しくはアセトアミドエトキシエタノールなどの保湿剤、又は、例えばデンプンなどの皮膚に対する感覚効果を有する他の活性製品(単数又は複数)を含んでもよい。
【0050】
技術的効果
【0051】
本発明による防臭組成物を含む化粧品又は皮膚用製剤は、適用前に身体上に既に存在する悪臭を排除し、身体の処置された部分を無臭、又は弱く無臭に保つことを可能にする。本発明による局所用組成物が口腔ケア又は衛生用化粧品製剤に使用されるとき、これは、瞬時の脱臭、及び口腔微生物叢、特に細菌の微生物の発生の低減又は阻害を可能にし、これらの細菌の生物学的活性に起因する悪臭の形成を低減又は防止する。本発明による局所用組成物は、1日を通して、優先的には、1時間を超える期間にわたって、息を爽やかに維持するのを助けることを可能にする。
【0052】
本発明による局所用防臭組成物は、口腔フローラの細菌の活性、及び/又は発生を阻害し、同時に口内に既に存在する悪臭を捕捉することができる。したがって、これら2つの作用手段の間にいかなる遅延も伴わずに、悪臭の原因、及び悪臭自体の原因の両方に作用する。このため、それを含有する化粧品製剤は、シクロデキストリンを通しての瞬時の有益な効果、及び1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール並びに/又は1,4-3,6-ジアンヒドロヘキシトール誘導体を通した長期効果を有することが可能になる。
【0053】
本発明による局所用防臭組成物は、急速な殺菌効果及び/又は静菌効果、特に抗菌性及び/又は抗真菌性を有し、したがって、口臭に関与する口内の微生物の存在を低減又は排除することができ、したがって、長時間、典型的には数時間、爽やかな息を維持することができる。加えて、本発明による局所用組成物は、中等度から強い除染活性を有し、刺激を誘発せず、使用の快適性を保証する。
【0054】
口腔の皮膚表面又は粘膜表面上にフィルムを展開し、本発明による活性組成物が持続し、口臭の処置に作用し続けることができるために、本発明による局所用組成物にフィルム形成ポリマーを有利に添加することができる。このようなポリマーは、例えば、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン、スチレンアクリレートなどの合成ポリマー、又は優先的には、例えばセルロース若しくはデンプン誘導体などの天然起源のポリマーであり得る。
【0055】
本発明による局所用組成物の使用
【0056】
本発明はまた、化粧品又は皮膚用製剤における防臭剤としての、本発明による局所用組成物の非治療的な化粧品使用に関する。
【0057】
本発明はまた、不快な体臭の処置において、優先的には口臭の処置に使用するための、本発明による局所用組成物に関する。
【0058】
一実施形態によれば、本発明による局所用組成物又は本発明によるその使用は、不快な体臭を予防、低減、又は排除することができる。これらの悪臭は、表皮、特に脇の下、股間、及び足に局在化し得るか、又は口腔領域内に局所化し得る。
【0059】
1つの変形形態によれば、局所用組成物の非治療的な化粧品使用は、口臭と対抗し、優先的には口臭の原因及び口臭の影響と同時に対抗することを可能にする。
【実施例
【0060】
実施例1:抗口臭水溶液の調製
【0061】
以下のプロトコルに従って、以下の表1の質量による組成物に従って、本発明による局所用防臭組成物を水溶液の形態で調製する。
【0062】
【表1】
【0063】
第1の工程として、相Aが調製される。約22℃で、キシリトール粉末(Roquette(登録商標)製のBeaute by Roquette(登録商標)PO370)を水に溶解し、ソルビトール粉末(Roquette(登録商標)製のBeaute by Roquette(登録商標)PO160)を、調製される溶液の体積の半分にほぼ等しい体積の水に溶解し、デフロキュレーティングパドル(deflocculating paddle)で撹拌しながら溶解する。次いで、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリン粉末(Roquette(登録商標)製のBeaute by Roquette(登録商標)CD110)、及びイソソルビド水溶液(Roquette(登録商標)製のPolysorb(登録商標)LP)を順次添加し、デフロキュレータブレード(deflocculator blade)で穏やかに攪拌しながら、2つの成分間の完全な溶解を待った。次いで、ミント風味料(Colin Ingredients(登録商標)製の粉末状ミント風味量023C301)を添加する。
【0064】
所望により、ソルビン酸カリウム(Thor(C)製のMicrocare KS)及び安息香酸ナトリウム(Thor(C)製のMicrocare NB)からなる相Bを、相A添加することができるが、これらの防腐剤は本発明に必須ではない。これらは、微生物学的安定性を確保するためにのみ機能する。
【0065】
所望により、染料はまた、上記で得られた溶液に添加することができ、例えば、ここでは、Sensient Cosmetic Technologiesによりトレード・レファレンス「FDC Blue1」で販売されている青色染料「CI42090」である。
【0066】
5.8のpHに達するまで、グルコノラクトン(相D)中に10質量%の水溶液を添加することにより、調製を完了する。グルコノラクトンは、Roquetteにより、トレード・レファレンスBeaute by Roquette(登録商標)GA290で供給されている。