(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】警告システム、吸入器及び警告生成方法
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20240213BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M11/00 D
(21)【出願番号】P 2021566050
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 IB2020054091
(87)【国際公開番号】W WO2020225666
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-03-30
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520448463
【氏名又は名称】キンデーバ ドラッグ デリバリー リミティド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】ニール エフ.グリフィス
(72)【発明者】
【氏名】パーフェス モハメッド
(72)【発明者】
【氏名】アダム スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】ポール エイチ.アール.ジョリー
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-519600(JP,A)
【文献】特表2017-525511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入器と共に使用するための警告システムであって、前記吸入器は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構を有し、前記吸入器は、前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に定量の薬剤を分配し、前記警告システムは、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に起動する制御回路と、
前記制御回路に通信可能に結合され、警告を生成するように構成された警報装置と、を有し、
前記制御回路は、前記警報装置を制御して、前記動作機構が前記噴射状態から前記リセット状態に作動するまで前記警告を生成するように構成さ
れ、
前記リセット状態は、前記定量の前記薬剤を患者が吸入した後、レバーが閉位置に戻され、計量弁が停止位置に戻されている状態であり、
前記事前準備状態とは、前記レバーが開位置まで回転され、バネが前記薬剤を含むキャニスタを圧縮して押し、前記キャニスタが静止している状態であり、
前記噴射状態とは、前記レバーが前記開位置に留まり、マウスピースを介した前記患者による吸入時に、前記バネに蓄積されたエネルギーが前記キャニスタを押し下げ、前記計量弁を作動させ、前記定量の前記薬剤が放出される状態である、
警告システム。
【請求項2】
薬剤を分配するための吸入器であって、前記吸入器は、
リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構と、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に、定量の前記薬剤を分配するように構成された分配機構と、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に起動する制御回路と、
前記制御回路に通信可能に結合され、警告を生成するように構成された警報装置と、を有し、
前記制御回路は、前記警報装置を制御して、前記動作機構が前記噴射状態から前記リセット状態に作動するまで前記警告を生成するように構成さ
れ、
前記リセット状態は、前記定量の前記薬剤を患者が吸入した後、レバーが閉位置に戻され、計量弁が停止位置に戻されている状態であり、
前記事前準備状態とは、前記レバーが開位置まで回転され、バネが前記薬剤を含むキャニスタを圧縮して押し、前記キャニスタが静止しており、前記分配機構によって移動するのを防がれ得る状態であり、
前記噴射状態とは、前記レバーが前記開位置に留まり、マウスピースを介した前記患者による吸入時に、前記バネに蓄積されたエネルギーが前記キャニスタを押し下げ、前記計量弁を作動させ、前記定量の前記薬剤が放出される状態である、
吸入器。
【請求項3】
吸入器の使用後に警告を生成する方法であって、前記吸入器は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構を有し、前記吸入器は、前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に、定量の薬剤を分配し、前記方法は、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に制御回路を起動し、
前記動作機構が前記噴射状態から前記リセット状態に作動するまで警告を、警報装置によって、生成し、前記警報装置は前記制御回路によって制御さ
れ、
前記リセット状態は、前記定量の前記薬剤を患者が吸入した後、レバーが閉位置に戻され、計量弁が停止位置に戻されている状態であり、
前記事前準備状態とは、前記レバーが開位置まで回転され、バネが前記薬剤を含むキャニスタを圧縮して押し、前記キャニスタが静止している状態であり、
前記噴射状態とは、前記レバーが前記開位置に留まり、マウスピースを介した前記患者による吸入時に、前記バネに蓄積されたエネルギーが前記キャニスタを押し下げ、前記計量弁を作動させ、前記定量の前記薬剤が放出される状態である、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概ね、吸入装置に関し、より具体的には、警告を生成するための警告システムを有する吸入器及び警告を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺送達用の吸入器を、患者の口腔に薬剤を送達するように設計する。そのような吸入器は、患者の吸入に基づいて薬剤を送達する呼吸作動トリガ機構を備えることができる。患者の吸入に基づいて、計量された量の薬剤を、計量弁によって吸入器の開口部に導入する。計量弁は、薬剤を保持するキャニスタなどの流体源と選択的に流体連通している。薬剤は、開口部から、吸入器のマウスピースに流入する。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本開示は、吸入器と共に使用するための警告システムに関する。吸入器は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構を備える。吸入器は、動作機構の事前準備状態から噴射状態への作動時に定量の薬剤を分配する。警告システムは、動作機構の事前準備状態から噴射状態への作動時に起動する制御回路を備える。警告システムは、また、制御回路に通信可能に結合され、警告を生成するように構成された警報装置を備える。さらに、制御回路は、警報装置を制御して、動作機構が噴射状態からリセット状態に作動するまで警告を生成するように構成される。
【0004】
別の態様では、本開示は、薬剤を分配するための吸入器に関する。吸入器は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構を備える。吸入器は、動作機構の事前準備状態から噴射状態への作動時に、定量の薬剤を分配するように構成された分配機構を備える。吸入器は、また、動作機構の事前準備状態から噴射状態への作動時に起動する制御回路を備える。吸入器は、制御回路に通信可能に結合され、警告を生成するように構成された警報装置をさらに備える。さらに、制御回路は、警報装置を制御して、動作機構が噴射状態からリセット状態に作動するまで警告を生成するように構成される。
【0005】
別の態様では、本開示は、吸入器の使用後に警告を生成する方法に関する。吸入器は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構を備える。吸入器は、動作機構の事前準備状態から噴射状態への作動時に、定量の薬剤を分配する。方法は、動作機構の事前準備状態から噴射状態への作動時に制御回路を起動することを含む。方法は、また、動作機構が噴射状態からリセット状態に作動するまで警告を、警報装置によって、生成することを含む。さらに、警報装置は制御回路によって制御される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本明細書に開示する例示的な実施形態が、以下の図に関連する以下の詳細な説明を考慮して、さらに完全に理解され得る。図は必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。図で使用する類似の番号が類似の構成要素を指す。しかしながら、所与の図の構成要素を指すために番号を使用することは、同じ番号でラベル付けされた別の図の構成要素を制限することを意図するものではないことが理解されよう。
【
図1】本開示の実施形態による、リセット状態の吸入器の斜視図である。
【
図2】事前準備状態の
図1に示す吸入器の斜視図である。
【
図3】本開示の実施形態による、
図1に示す吸入器に関連する分配機構の断面図である。
【
図4】本開示の実施形態による、
図1に示す吸入器に関連する動作機構の斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態による、
図1に示す吸入器に関連する動作機構の動作を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態による、
図1に示す吸入器に関連する動作機構の動作を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態による、
図1に示す吸入器に関連する警告システムを示すブロック図である。
【
図8】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムに関連するフランジ部材の斜視図である。
【
図9】本開示の実施形態による、フランジ部材を示す吸入器の断面図である。
【
図10】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムに関連するスイッチ及び制御回路を示す図である。
【
図11】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムに関連するフランジ部材を示す吸入器の一部の断面図である。
【
図12】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムに関連するフランジ部材を示す吸入器の一部の断面図である。
【
図13】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムに関連する制御回路を受容するポケットを示す図である。
【
図14】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムに関連する制御回路を受容するポケットを示す図である。
【
図15】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムに関連する警報装置及び制御回路を示す図である。
【
図16】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムによって実施される第1の警告手順を示す図である。
【
図17】本開示の実施形態による、
図7に示す警告システムによって実施される第2の警告手順を示す図である。
【
図18】吸入器の使用後に警告を生成する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の説明では、説明の一部を形成し、例示としてさまざまな実施形態が示されている添付の図を参照する。本開示の範囲又は精神から逸脱することなく、他の実施形態が検討され、作成され得ることを理解されたい。このため、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきではない。
【0008】
本開示は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照して説明されるが、本開示はそれに限定されない。記載の図面は概略的なものに過ぎず、非限定的なものである。図面では、いくつかの要素のサイズは、例示の目的で誇張され、縮尺通りに描かれていない場合がある。
【0009】
本明細書で使用する「垂直」、「水平」、「上」、「下」、「上方」、「下方」、「左」、「右」などの用語は、図の特定の向きを指し、このような用語は、本明細書に記載の特定の実施形態を限定するものではないことが理解されよう。
【0010】
吸入器は、キャニスタ保持ハウジング部分又は管状ハウジング部分及び管状マウスピース部分を備えることができ、管状マウスピース部分は、管状ハウジング部分に対して角度が付けられている。空気取入口は、管状ハウジング部分の上端及び下端のうちの少なくとも1つの近位に形成される。さらに、分配機構は、吸入器のキャニスタ又はリザーバから薬剤を分配する管状ハウジング部分内に配置される。分配機構は、薬剤の送達中に作動する計量弁を備える。計量弁は、使用するたびにリセットして位置決めし、後にリザーバから補充して次の投与量を提供することができるようにする必要がある。吸入器の動作では、薬剤のプルームを、分配機構によって管状マウスピース部分に分配し、管状マウスピース部分を通して患者が吸入する。しかしながら、計量弁は、そのような使用の直後にリセットすることができない場合があり、長時間噴射状態のままにしておくと破損する可能性がある。
【0011】
図1は、患者に薬剤を分配するための吸入器100の斜視図を示す。吸入器100は、電子吸入器として具現化されてもよい。さらに、吸入器100は、吸入器100のさまざまな電子部品に電力を供給する、バッテリ又は電池などの(図示しない)内蔵電源を備えてもよい。吸入器100は、加圧式定量噴霧吸入器(pMDI)として具現化されてもよい。
【0012】
図示の実施形態では、吸入器100は、呼吸作動式吸入器である。そのような場合、(図示しない)計量弁を、患者の吸入によって生じた圧力差によって作動させて、手動の介入なしに薬剤の噴霧を自動的に分配することができる。吸入器100は、薬剤を保持するためのアクチュエータハウジング102を備える。アクチュエータハウジング102は、(
図3に示す)ハウジング部分104を備える。ハウジング部分104は、実質的に中空の構造を有してもよく、管状の形状である。
【0013】
アクチュエータハウジング102は、また、ハウジング部分104を覆うカバー部材106を備える。カバー部材106は外面108を形成する。外面108は、(図示しない)把持部を形成してもよい。把持部は、カバー部材106の下端に近接して形成される。把持部により、ユーザは、吸入器100を使用している間、吸入器100を把持することができる。把持部は、本質的に、一組の突起、一組の窪み、あるいは外面108よりも良好な把持面を提供するスリーブ、あるいは任意の他のそのような構造的配置であってもよい。さらに、アクチュエータハウジング102は、空気流を受け入れるための(図示しない)空気取入口を備える。空気取入口は、アクチュエータハウジング102の上端又は下端に形成されてもよい。アクチュエータハウジング102は、空気取入口を形成する(図示しない)空気取入口カバーを備える。空気取入口カバーは格子として具現化されてもよい。
【0014】
図2を参照すると、吸入器100はマウスピース112を備える。マウスピース112は、アクチュエータハウジング102から延びるほぼ管状の部分として具現化され、実質的に中空の構造を有してもよい。マウスピース112はハウジング部分104に接合される。一例では、マウスピース112は、アクチュエータハウジング102に対して角度が付けられている。マウスピース112は、円形の断面、あるいは楕円形又は長方形の断面等の非円形の断面を有してもよい。使用者又は患者は、吸入器100を使用するために、マウスピース112の少なくとも一部を自身の口に挿入してもよい。
【0015】
(図示しない)キャニスタはハウジング部分104内に取り外し可能に受け入れられる。キャニスタは、薬剤と共に処方された流体を含み、エアロゾルキャニスタとして具現化されてもよい。他の実施形態では、薬剤と共に処方された流体はリザーバに貯蔵されてもよい。キャニスタは、概ね円筒形の構造を有してもよい。キャニスタは、分配機構118の作動に基づいて、所定量の薬剤を放出する。
図3を参照すると、分配機構118は、要求に従って、定量の薬剤を分配するように構成される。分配機構118は計量弁を備える。所定量の薬剤は、計量弁の起動時に計量弁を通過する。計量弁は、起動すると、キャニスタと流体連通する。計量弁は、単一の噴霧パターン又は噴霧プルームに対応する、キャニスタから流出する薬剤の量を計量する。分配機構118は、計量弁から延びる(図示しない)弁ステムと、ステムソケットを有する(図示しない)ノズルブロックとをさらに備える。ノズルブロックは、アクチュエータハウジング102の閉じた下端に位置する。ステムソケットは、弁ステムを受容するために設けられる。さらに、ステムソケットは、吸入器100の(
図2に示す)マウスピース112と連通している出口開口部を備える。
【0016】
図4に示すように、吸入器100は動作機構122を備える。動作機構122は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成される。吸入器100は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に、定量の薬剤を分配する。より具体的には、分配機構118は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に、定量の薬剤を分配するように構成される。動作機構122は、吸入器100が動作しておらず、計量弁が停止位置又は閉位置にあるとき、リセット状態にあると考えられる。さらに、動作機構122は、吸入器100が動作中であり、計量弁が起動位置又は開位置にあるとき、噴射状態にあると考えられる。動作機構122の事前準備状態について、この項の後半で説明する。
【0017】
動作機構122はレバー124を備える。レバー124は、閉位置と開位置との間で旋回可能である。動作機構122は、レバー124が開位置にあるときに事前準備状態又は噴射状態にあってもよい。一方、動作機構122は、レバー124が閉位置にあるときにリセット状態にあると考えられる。さらに、レバー124は、吸入器100が使用されていないときに、マウスピース112(
図2を参照)を外部環境から隔離することによって、ダストキャップの機能を実行する。動作機構122は、また、アクチュエータハウジング102内に受容されるシリンダ126を備える。シリンダ126は、閉位置と開位置との間のレバー124の動作により、シリンダ126がアクチュエータハウジング102内で往復運動するように、レバー124に結合される。
【0018】
図5を参照すると、動作機構122は、シリンダ126と動作可能に結合された(
図5に概略的に示す)バネ128を備える。使用時において、患者は、レバー124(
図2及び
図4を参照)を開位置まで回転させ、露出したマウスピース112を自身の口に挿入することができる。そのような場合、動作機構122は、事前準備状態に作動している。レバー124の回転により、矢印「P1」で示すように、(図示しない)中心から外れたカムがバネ128を圧縮する。バネ128は、シリンダ126を介してキャニスタを圧縮して押す。しかしながら、キャニスタは静止したままであり、(図示しない)留め金によって所定の位置に保持されている(図示しない)振り子によって移動するのを防ぐことができる。振り子及び留め金は分配機構118の一部を形成してもよい。マウスピース112を介した患者による吸入時に、動作機構122は事前準備状態から噴射状態に作動する。より具体的には、吸入中に、吸入によって引き起こされる気流は、留め金を解放し、振り子を回転させる分配機構118の羽根130(
図3を参照)を動かしてもよい。
図6に示すように、動作機構122が噴射状態にあるとき、事前準備状態中にバネ128に蓄積されたエネルギーが、矢印「P2」で示すように、シリンダ126を介してキャニスタを押し下げ、これは、次に計量弁を作動させ、これに基づいてキャニスタ内に含まれる薬剤が放出される。
【0019】
図2を参照すると、マウスピース112を介した患者による吸入時に、アクチュエータハウジング102内の圧力差により、キャニスタが弁ステムに対して移動する。それに応じて、キャニスタの計量室内に含まれる薬剤は、患者の吸気に応じて放出される。患者の吸気中、空気が、空気取入口からアクチュエータハウジング102を通って流れる。キャニスタから放出された薬剤は、この空気の流れに入る。このため、吸入器100の動作中に、分配機構118を介して分配された薬剤のプルームが、マウスピース112を介して患者によって吸入される。吸入器100は、また、キャニスタ内の薬剤が枯渇しそうな時期を患者に示し、健康監視データを医療従事者に提供するのを支援し得る、統合された用量カウンタを備えてもよい。
【0020】
定量の薬剤を患者が吸入した後、動作機構122(
図4を参照)がリセット状態に作動するように、レバー124はその閉位置に戻される必要がある。動作機構122がリセット状態に作動した後、計量弁が停止位置に戻ることに留意されたい。このため、計量弁が損傷する危険性を回避するために、吸入器100を使用した後にレバー124を閉位置に戻すことによって、動作機構122をリセット状態に作動させることができる。
図7に示すように、本開示は、吸入器100と共に使用するための警告システム700に関する。警告システム700は、患者が動作機構122をリセットすることを忘れる恐れがある状況で使用した後、動作機構122をリセット状態に作動することを患者に警告するための目立たない電子ベースの解決策を含んでもよい。警告システム700は、警告701を生成して、動作機構122をリセット状態に作動させるように患者に警告する。警告701は、光学的警告、音声的警告及び触覚的警告のうちの少なくとも1つである。
【0021】
警告システム700は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に作動するスイッチ702を備える。スイッチ702は、作動時に制御回路704を起動させるように構成される。スイッチ702は、マイクロスイッチを具現化したものであってもよい。実施形態では、
図8及び
図9に示すように、警告システム700は、動作機構122に動作可能に結合されたフランジ部材706を備える。フランジ部材706は、スイッチ702を作動させるために、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に移動可能である。フランジ部材706は、フランジ部材706の移動に基づいてスイッチ702に選択的に接触するフランジ部分710を有するほぼ中空の円筒形本体708を有する。
【0022】
スイッチ702は、警告システム700の制御回路704に動作可能に結合される。図示の例では、制御回路704はプリント回路基板(PCB)730を備える。
図10に示す実施形態では、スイッチ702はPCB730上に位置決めされてもよい。例えば、スイッチ702は、PCB730によって形成される第1の表面714上のPCB730のほぼ中央部分に位置決めされてもよい。
図11及び
図12に示すように、PCB730及びスイッチ702は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動に基づいて、フランジ部材706がスイッチ702を作動させるように位置決めされる。制御回路704は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に作動する。このため、制御回路704及びスイッチ702は、動作機構122が噴射状態にあるとき、起動状態にある。さらに、制御回路704は、動作機構122の噴射状態からリセット状態への作動時に停止する。スイッチ702は、制御回路704を電源732に選択的に接続する。スイッチ702がオフの場合、制御回路704は電源732から遮断される。一方、スイッチ702がオンのとき、制御回路704は電源732に接続され、それによって制御回路704を起動する。制御回路704は、警告システム700の構成要素から信号を受信するための単一のマイクロプロセッサ又は複数のマイクロプロセッサを具現化したものであってもよい。多数の市販のマイクロプロセッサが、制御回路704の機能を実行するように構成されてもよい。制御回路704は、データ及びアルゴリズムをその中に保存するためのメモリをさらに備えてもよい。
【0023】
図13及び
図14に示すように、ハウジング部分104は、スイッチ702及びPCB730を受容するポケット716を形成する。ポケット716は、ハウジング部分104の外面718に形成される。ポケット716は、スイッチ702が吸入器100の組み立て時に内側に突出してフランジ部材706がスイッチ702に接触して作動させることを可能にするように、スイッチ702を受容するスロット720を形成する。ポケット716の形状及び寸法を、PCB730の形状及び寸法に基づいて決定する。ポケット716は、ハウジング部分104の外面718からの(
図13に示す)長さ「L1」、(
図13に示す)幅「B1」及び(
図14に示す)深さ「D1」を規定する。さらに、長さ「L1」、幅「B1」及び深さ「D1」は概ね、(
図10に示す)長さ「L2」、(
図10に示す)幅「B2」及び制御回路704のPCB730の(図示しない)深さであって、その深さにPCB730を受容する深さよりも大きい。深さ「D2」は、PCB730の第1の表面714と第2の表面728との間に規定される。吸入器100が組み立てられるとき、ポケット716は、警告システム700の敏感な部品が外部環境から隔離されるように、カバー部材106によって覆われる。
【0024】
図5を参照すると、警告システム700は警報装置722を備える。警報装置722は、制御回路704に通信可能に結合され、警告701を生成するように構成される。制御回路704は、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで、警報装置722を制御して警告701を生成するように構成される。さらに、制御回路704は、警報装置722を制御して、動作機構122の噴射状態への作動からの所定の時間遅延後に警告701を生成するように構成される。いくつかの実施形態では、所定の時間遅延は可変である。そのような所定の時間遅延であるが、可変の時間遅延は、患者の好みに基づくものであってよく、誤った警告を回避することを目的とするものであってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、警報装置722は、光学装置、音声装置及び触覚装置のうちの少なくとも1つである。いくつかの実施形態では、警報装置722は、警告701を生成する単一の出力装置又は出力装置の組み合わせを備えてもよい。
図15に示すように、図示の例の警報装置722は、光学装置724及び音声装置726を備える。光学装置724は、発光ダイオード(LED)であり、警告701は、LEDの照明に基づいて発っせされる。音声装置726はブザーであり、ブザーによって生成された音に基づいて警告701が発せられる。これとは別に、光学装置724及び音声装置726は、本開示の範囲を制限することなく、警告701を発する任意の他の既知の出力装置を備えてもよい。光学装置724及び音声装置726は、PCB730の第2の表面728上に位置決めされてもよい。さらに、警報装置722は、また、警告701を発するために患者に触覚振動を提供する触覚装置を含んでもよい。いくつかの実施形態では、音声装置726は、音声的警告及び振動警告の両方を提供してもよい。警告701の性質を、患者の好みに基づいてカスタマイズしてもよく、患者は、動作機構122をリセット状態に作動させるように患者に警告するという点で最大の効果を達成するために、警告701の性質をプログラムし、変更する選択肢を有し得ることに留意されたい。
【0026】
ここで
図16を参照すると、警告システム700の第1の警告手順を示すグラフ1602が説明される。一例では、制御回路704は、警報装置722を制御して、第1の警告1602と、第1の警告1602の後の第2の警告1604とを生成するように構成される。一実施形態では、第1の警告1602は、動作機構122の噴射状態への作動からの第1の時間遅延「T1」の後に生成される。一例では、第1の時間遅延「T1」は15秒に概ね等しい。他の実施形態では、第1の時間遅延は、約5秒、約10秒又は約30秒である。第1の時間遅延「T1」は、定量の意図された量がキャニスタから放出された後にのみ第1の警告1602が生成されるように決定される。一例では、第1の警告1602は、第1の振幅及び第1の周波数を有する複数の第1のブリップ1606を備える。即ち、各ブリップは特定の周波数の短い音であり、注意を引くために所定のパターンを有する一連の音の状態で繰り返される。例えば、複数の第1のブリップ1606は、第2の警告1604が発せられる前に発せられる事前警告ブリップとして具現化されてもよい。複数の第1のブリップ1606は、ブリップが短く、動作機構122の現在の状態に患者の注意を向けさせるための比較的低い周波数を有し得るため、改善されたユーザ受け入れを提供し得るため、患者は、動作機構122を慎重にリセット状態に作動させてから、第2の警告1604を発することができる。このため、そのような状況では、警告システム700によって発せされた第1の警告1602は、周辺に存在する他の人々の注意をそらす必要も、注意を引き付ける必要もない。
【0027】
別の実施形態では、第2の警告1604を、第1の時間遅延「T1」の終了からの第2の時間遅延「T2」の後に生成する。一例では、第2の時間遅延「T2」は10秒に概ね等しい。他の実施形態では、第2の時間遅延は、約5秒、約20秒、約30秒又は約1分である。第2の警告1604は、第2の振幅及び第2の周波数を有する複数の第2のブリップ1608を含んでもよい。第2の振幅は、第1の振幅よりも大きくてもよく、及び/又は第2の周波数は、第1の周波数よりも大きくてもよい。これは、第1の警告に気づかなかった場合に、動作機構をリセットする必要性に注意を引くのに役立つ場合がある。別の例では、第2の警告1604は連続的な音声的警告を含む。第2の警告1604は、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで生成されてもよい。
【0028】
制御回路704は、第2の警告1604の後に第3の警告1610を生成するように警報装置722を制御するようにさらに構成される。第3の警告1610は、第2の時間遅延「T2」の終了からの第3の時間遅延「T3」の後に生成される。一例では、第3の時間遅延「T3」は10秒に概ね等しい。他の実施形態では、第3の時間遅延は、約5秒、約20秒、約30秒又は約1分である。第3の警告1610は、第2の振幅よりも大きい第3の振幅及び/又は第2の周波数以上である第3の周波数を有する連続的な音声的警告を含んでもよい。一例では、第3の警告1610は、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで継続してもよい。
【0029】
別の例では、第1の警告1602、第2の警告1604及び第3の警告1610のうちの1つ又は複数が、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで、複数のサイクルにわたって繰り返される。さらに、いくつかの実施形態では、第1の周波数及び第2の周波数のうちの1つ又は複数が、第1及び第2の警告1602、1604の複数のサイクルにわたって変化する。より具体的には、第1、第2及び/又は第3の警告1602、1604、1610の振幅、及び/又は第1及び/又は第2の警告1602、1604の周波数は、異なるサイクルに対して異なってもよい。いくつかの実施形態では、第1、第2及び/又は第3の警告の振幅及び/又は周波数は、任意の所与のサイクル内で変化してもよい。
【0030】
ここで
図17を参照すると、警告システム700によって実施される第2の警告手順を示すグラフ1702が示される。図示のように、制御回路704は、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで、第1、第2及び第3の警告1602、1604、1610のそれぞれを複数のサイクルにわたって繰り返すように構成される。この例では、第1、第2及び第3の警告1602、1604、1610のそれぞれが、第1のサイクル1702及び第2のサイクル1704に対して繰り返される。しかしながら、第1、第2及び第3の警告1602、1604、1610は、無制限に、2サイクルを超えて繰り返されてもよい。いくつかの例では、第2のサイクル1704の周波数が、第1のサイクル1702の後に増大し、その結果、第2のサイクル1704の周波数は第1のサイクル1702の周波数等よりも大きくなる。さらに、いくつかの例では、第3の警告1610は、患者が動作機構122をリセットするまで継続してもよい。例えば、第3の警告1610は、第2のサイクル1704の後、患者が動作機構122をリセットするまで継続してもよい。サイクルの総数と、第1、第2及び/又は第3の警告1602、1604、1610の振幅と、第1及び/又は第2の警告1602、1604の周波数と、第1、第2及び第3の時間遅延「T1」、「T2」及び「T3」とは、吸入器100を使用する患者の好みに基づいて変更されてもよく、この情報は、制御回路704に関連するメモリに保存されてもよいことに留意されたい。
【0031】
さらに、警告システム700は、また、制御回路704及び警報装置722などの警告システム700のさまざまな構成要素に電力を供給するために、電池などの電源732を備える。電源732は、1つ又は複数のボタン電池などの他の任意の電源を含んでもよい。さらに、警告システム700は、動作機構122が事前準備状態及び噴射状態にある場合にのみ、電源732から電力を受け取り得るため、警告システム700の貯蔵寿命が長くなる。
【0032】
図18は、吸入器100の使用後に警告701を生成する方法1800を示す。警告701は、光学的警告、音声的警告及び触覚的警告のうちの少なくとも1つである。吸入器100は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構122を備える。吸入器100は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に、定量の薬剤を分配する。
【0033】
ステップ1802では、制御回路704は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に起動する。より具体的には、フランジ部材706は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に移動して、スイッチ702を作動させる。このため、スイッチ702は、動作機構122の事前準備状態から噴射状態への作動時に作動し、ここで、スイッチ702は、作動時に、制御回路704を起動させるように構成される。より具体的には、スイッチ702は、制御回路704を電源732に選択的に接続する。スイッチ702がオフの場合、制御回路704は電源732から切り離される。スイッチ702がオンの場合、電源732は制御回路704に接続され、それによって制御回路704を起動する。
【0034】
ステップ1804では、警報装置722は、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで、警告701を生成する。さらに、制御回路704は、動作機構122の噴射状態からリセット状態への作動時に停止する。警報装置722は、制御回路704によって制御される。警告701は、動作機構122の噴射状態への作動からの所定の時間遅延の後に生成される。所定の時間遅延は可変である。
【0035】
一例では、警告701を生成することは、第1の警告1602及び第2の警告1604を生成することを含む。第1の警告1602は複数のブリップを含み、第2の警告1604は連続的な音声的警告を含む。第2の警告1604は、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで生成される。さらに、第1の警告1602は、動作機構122の噴射状態への作動からの第1の時間遅延「T1」の後に生成される。第1の警告1602は、第1の振幅及び第1の周波数を有する複数の第1のブリップを含む。さらに、第2の警告1604は、第1の時間遅延「T1」の終了からの第2の時間遅延「T2」の後に生成される。第2の警告1604は、第2の振幅及び第2の周波数を有する複数の第2のブリップを含み、第2の振幅は第1の振幅よりも大きく、第2の周波数は第1の周波数よりも大きい。一例では、第1の周波数及び第2の周波数のうちの1つ又は複数が、複数のサイクルにわたって変化する。
【0036】
さらに、警告701を生成することは、第2の警告1604の後の第3の警告1610を生成することを含む。第3の警告1610は、第2の時間遅延「T2」の終了からの第3の時間遅延「T3」の後に生成される。第3の警告1610は、第2の振幅よりも大きい第3の振幅を有する連続的な音声的警告を含む。一例では、第1の警告1602、第2の警告1604及び第3の警告1610のうちの1つ又は複数が、動作機構122が噴射状態からリセット状態に作動するまで、複数のサイクルにわたって繰り返される。
【0037】
本明細書に記載の警告システム700は、動作機構122がリセット状態に作動しない場合に発生する可能性がある計量弁への損傷の可能性を最小限にするための低コストで実施が容易な解決策を提供する。さらに、警告システム700は、警告システム700の構成要素がコンパクトであり、アクチュエータハウジング102のサイズを増大させることなくアクチュエータハウジング102内に収容され得るため、吸入器100のサイズを増大させない方法で実装されてもよい。
【0038】
上記の警告システム700は、国際特許出願公開第2017/112400号、「医療用吸入器」に記載されているような電子吸入器の一部を形成してもよい。本開示の教示は、電子式密着監視増設型吸入装置及び一体式の組み込み型吸入装置の両方に適用することができる。本開示は、患者と医療専門家の両方に貴重なフィードバックを提供し、それによって密着監視を改善するのに役立つ。例えば、警告システム700の機能を拡張して、データ収集基盤設備に伝達され得るタイムスタンプを有する用量の結果を記録するようにしてもよく、これは、次に、患者の転帰及びコンプライアンスの改善を支援する可能性がある。
【0039】
特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用する機構のサイズ、量及び物理的特性を表すあらゆる数字は、「約」という用語によって変更されるものとして理解されたい。このため、これとは反対に明記しない限り、上記の明細書及び添付の特許請求の範囲に示す数値パラメータは、本明細書に開示した教示を利用して当業者によって得られることが求められる所望の特性に応じて変化することが可能な近似値である。
【0040】
特定の実施形態を本明細書で例示し、説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、さまざまな代替及び/又は同等の実装を、図示し、説明した特定の実施形態の代わりに使用することができることが当業者には理解されるであろう。本願は、本明細書で考察した特定の実施形態の任意の適応又は変形を網羅することを意図するものである。このため、この開示は、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ制限されることが意図されている。
[構成1]
吸入器と共に使用するための警告システムであって、前記吸入器は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構を有し、前記吸入器は、前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に定量の薬剤を分配し、前記警告システムは、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に起動する制御回路と、
前記制御回路に通信可能に結合され、警告を生成するように構成された警報装置と、を有し、
前記制御回路は、前記警報装置を制御して、前記動作機構が前記噴射状態から前記リセット状態に作動するまで前記警告を生成するように構成される、
警告システム。
[構成2]
薬剤を分配するための吸入器であって、前記吸入器は、
リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構と、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に、定量の前記薬剤を分配するように構成された分配機構と、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に起動する制御回路と、
前記制御回路に通信可能に結合され、警告を生成するように構成された警報装置と、を有し、
前記制御回路は、前記警報装置を制御して、前記動作機構が前記噴射状態から前記リセット状態に作動するまで前記警告を生成するように構成される、
吸入器。
[構成3]
吸入器の使用後に警告を生成する方法であって、前記吸入器は、リセット状態、事前準備状態及び噴射状態に作動するように構成された動作機構を有し、前記吸入器は、前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に、定量の薬剤を分配し、前記方法は、
前記動作機構の前記事前準備状態から前記噴射状態への作動時に制御回路を起動し、
前記動作機構が前記噴射状態から前記リセット状態に作動するまで警告を、警報装置によって、生成し、前記警報装置は前記制御回路によって制御される、
方法。