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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】染料捕捉不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/21 20060101AFI20240213BHJP
   D06M 13/11 20060101ALI20240213BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20240213BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240213BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20240213BHJP
   D06M 15/59 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
D06M15/21
D06M13/11
C11D7/22
C08L77/00
C08L33/00
D06M15/59
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021571992
(86)(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2020063964
(87)【国際公開番号】W WO2020244925
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】19178414.9
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513321250
【氏名又は名称】グラットフェルター ゲルンスバッハ ゲーエムベーハー
【住所又は居所原語表記】Hoerdener Str. 5 76593 Gernsbach Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】ベヴァリッジ,コリン
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,アルミン
(72)【発明者】
【氏名】ナジ,マーテー
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/062865(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0362551(US,A1)
【文献】国際公開第2018/083170(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/107405(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
C11D1/00-19/00、
D06F1/00-51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布基材を製造するステップと、
前記不織布基材に成分を適用するステップと、を含み、
前記成分は、バインダ及び染料捕捉剤を含むと共に、酸及び/又はその塩をさらに含み、
前記バインダがポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)を含み、
前記染料捕捉剤が、ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマー、ビニルイミダゾールとビニルカルバゾールとのコポリマー、ビニルイミダゾールとビニルフタルイミドとのコポリマー、及びビニルイミダゾールとビニルインドールとのコポリマーからなる群から選択され、
前記成分が不織布基材の製造中に適用される、染料捕捉不織布を製造する方法。
【請求項2】
不織布基材を製造するステップが、ウェットレイドプロセス、エアレイドプロセス、スパンレースプロセス、及びスパンボンドプロセスからなる群から選択される少なくとも1つのプロセスによって不織布基材を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記酸及び/又はその塩は有機酸及び/又はその塩を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記成分が、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)、ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマー、及びクエン酸を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記染料捕捉不織布をカチオン化剤で処理するステップをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記カチオン化剤がグリシドトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)を含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
不織布基材と、
バインダによって前記不織布基材に放出不可かつ非共有結合的に付着している染料捕捉剤と、
を含み、
前記染料捕捉剤がビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマーを含み、
前記バインダがポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)を含む、染料捕捉不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーキャッチャー洗濯シート(color catcher laundry sheet)などの染料(色素)捕捉不織布(dye-capturing non-woven fabric)を製造する方法、及び染料捕捉不織布に関する。特に、染料捕捉不織布は、衣類が洗濯されている間に洗濯水から染料(色素)を捕捉することができると共に、いずれかの放出された染料が衣類に再付着することを防ぐことができる。
【背景技術】
【0002】
カラーキャッチャー洗濯シートは、洗濯プロセス中に、ある洗濯物から別の洗濯物に色移りすることを防止するために、洗濯中に洗濯物と一緒に洗濯機に入れることができる。カラーキャッチャー洗濯シートは、典型的には、ベースシートと、ベースシートに化学的に結合された特殊なカラーキャッチ物質からなる。ベースシートは通常、繊維とバインダで構成されている。繊維は様々な種類(合成、天然及び/又は再生セルロースなど)であることができるが、少なくとも1種類の繊維は、例えばセルロース繊維のように、OH基を含む。ベースシートは、ウェットレイド(wet-laid)、エアレイド(air-laid)、又はスパンレース(spunlace)プロセスで製造することができる。
【0003】
従来、カラー捕捉機能化は、高pH(例えば、10よりも高い)で不織布基材をカチオン化することによって実現されてきた。公知技術は、例えば、水酸化ナトリウム、グリシドトリメチルアンモニウムクロリド(glycidetrimethylammonium chloride)(GMAC)などの第四級アンモニウム化合物(quartery ammonium compounds)、2-ジエチルアミノエチルクロリド(DEC)及びポリビニルアミンを使用する。GMAC化学物質などの場合、セルロースのヒドロキシ基と共有結合を形成するために、高pH環境(アルカリ性pHなど)が必要となる。このような二次化学処理に関して、発がん性の可能性のある物質の存在及び放出と相俟ってこのような化合物の取り扱い及び処理について健康と安全の懸念が取り上げられている。さらに、GMACグラフトの時間は典型的には24~36時間である。グラフト化後、WO97/48789に開示されているように、HClでの中和+洗浄+乾燥が必要となる。さらに、カラーキャッチ物質がベースシートに共有結合しているさらなる従来のカラーキャッチャー洗濯シートは、WO2018/083170A1及びWO2016/096715A1に開示されている。
【0004】
洗濯機における用途に関して、カラーキャッチ物質と捕捉された染料がベースシート上に残り、洗濯物を含む洗濯液に染み出さないことは重要な要件である。さもなければ、洗濯物は、カラーキャッチャー洗濯シートにすでに結合していた色で再び着色してしまうだろう。従来技術によれば、これは、上述のように、カラーキャッチ物質をベースシートに共有結合させることによって達成される。
【0005】
しかしながら、そのようなカチオン性化合物の共有結合は、ベースシートを弱め、潜在的な強度及び最終的な洗濯用途における分解問題(break up issues)に通じることも知られている。さらに、GMACアプローチの欠点は、GMACがベースシートのセルロース成分にのみと結合することであり、これは、ベースシートの特定部分のみを機能化できることを意味する。例えば、バインダはこれまでカラーキャッチ効果に寄与していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO97/48789
【文献】WO2018/083170A1
【文献】WO2016/096715A1
【発明の目的】
【0007】
本発明は、上記の問題及び欠点を解消することを目的としている。特に、本発明の目的は、ベースシートの機能化の程度を高めると共に、染料を回収する能力を高めた染料捕捉不織布、製造時に健康及び安全性のリスクを低下させた染料捕捉不織布、及び/又は、迅速化されていると共に、費用効果の高い染料捕捉不織布の製造方法(例えば、二次化学処理ステップを不要にすることによる)を提供することとすることができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、詳細な研究を行い、ベースシートとしての不織布基材(不織基材)(non-woven substrate)に成分(組成物)(composition)を適用し、成分が結合機能(binding functionality)及び染料捕捉機能(dye-capturing functionality)の両方を有することにより、ベースシートを実質的に完全に(すなわち、その表面上のみではなく)染料捕捉機能を備えることができることを見い出した。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、本発明者らは、例えば酸によって(すなわち、危険なアルカリ性環境ではなく、酸性環境において)引き起こすことができるバインダ(結合剤)(又はウェット強度剤(wet-strength agent))の重合反応が生じたときに、少なくとも、染料捕捉機能の一部又は結合成分に配合された染料捕捉剤が、形成ポリマー(マトリックス)中に閉じ込められ又は埋め込まれ、これにより、不織布基材の繊維に(特に、基材全体で実質的に完全に及び/又は均一に)結合又は付着する、特に非共有結合的に結合又は付着する、ことができることと考えた。特に、これにより、染料捕捉機能又は染料捕捉剤は、GMACなどの従来の化学的カチオン化から知られているような共有結合するのではなく、ベースシートに吸収されることができる。結果として、例えば20%を超える、染料回収(DPU;dye pick-up)の増加を達成することができる。さらに、染料捕捉機能又は染料捕捉剤が繊維に非共有結合的に結合することができるので、共有結合による強度及び分解に関する問題を回避することができ、得られる不織布は十分な強度特性、特に湿式(濡れ)引張強度(wet tensile strength)、を維持することができ、又は改善された強度特性を示すことさえできる。さらに、該成分は、不織布基材の製造又は形成中に単一のインライン処理として適用することができ、これにより、コストを削減し、製造速度を上げることができる。特に、その後の二次化学処理ステップ(例えば、GMACによるカチオン化ステップなど)は不要とすることができるが、適用された場合には、染料回収性能をさらに高めることができる。またさらに、上述のように、カチオン化におけるアルカリ性条件は、発がん可能性物質の存在と放出と共に回避することができ、これによって、製造時及び洗濯中における染料捕捉不織布(又はカラーキャッチャー洗濯シート)の利用時の健康及び安全の懸念を軽減することができる。
【0009】
したがって、本発明は、染料捕捉(又はカラー捕捉)不織布(又は洗濯シート)を製造するための方法に関するものであり、不織布基材(又はベースシート)を準備する(供給する)こと、及び不織布基材に成分を適用することを含み、該成分は、結合(特に重合)機能及び染料捕捉機能を有する(結合時(特に重合時)に染料捕捉機能(染料捕捉剤など)の少なくとも一部が不織布基材に付着する(特に放出不可(非放出可能)に(non-releasably)及び/もしくは非共有結合的に(non-covalently)付着する)ように、並びに/又は結合時(特に重合時)に染料捕捉機能(染料捕捉剤など)の少なくとも一部が不織布基材に吸収されるように)。
【0010】
本発明は、さらに、本明細書に記載の染料捕捉不織布を製造する方法によって得ることができる染料捕捉(又はカラー捕捉)不織布(又は洗濯シート)に関する。
【0011】
また、本発明は、不織布基材(又はベースシート)と、バインダ(もしくはウェット強度剤)によって不織布基材に付着している(特に、放出不可に及び/もしくは非共有結合的に付着もしくは結合している)染料捕捉剤並びに/又は不織布基材に吸収されている染料捕捉剤と、を含む染料捕捉(又はカラー捕捉)不織布(又は洗濯シート)に関する。
【0012】
本発明の実施形態の他の目的及び付随する利点の多くは、本発明の実施形態の以下の詳細な説明を参照することによって容易に認識され、より深く理解されるようになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】分岐第四級アミン部分における安定化カチオン電荷
図2】イミダゾールと使用される他のコポリマー構成ブロックの例
図3a】ポリアミド-アミンエピクロロヒドリンポリマー(polyamido-amine epichlorohydrin polymer)構造
図3b】PAAEポリマーにおける安定化カチオン性第四級アミン及び反応性基
図4】クエン酸による(イミダゾール-エピクロロヒドリン)-付加物活性化
図5】クエン酸によるポリアミド-アミンエピクロロヒドリン活性化
図6】クエン酸によって活性化/接続されたカチオン電荷安定化(イミダゾール-エピクロロヒドリン)-付加物(R1)及びポリアミド-アミンエピクロロヒドリン(R2)の不織布繊維構造周りの硬化バインダ構造案
【発明の詳細な説明】
【0014】
以下、本発明の詳細並びに本発明の他の特徴及び利点について説明する。しかしながら、本発明は、以下の特定の説明に限定されるものではなく、これらはむしろ例示のみを目的としている。
【0015】
1つの例示的な実施形態又は例示的な態様に関連して説明される特徴は、他のいずれかの例示的な実施形態又は例示的な態様と組み合わせることができ、特に、染料捕捉不織布のいずれかの例示的な実施形態に記載される特徴は、特に明記しない限り、染料捕捉不織布の他のいずれかの例示的な実施形態と組み合わせることができると共に、染料捕捉不織布を製造する方法のいずれかの例示的な実施形態と組み合わせることができ、その逆も同様であることは留意すべきである。
【0016】
「a」、「an」、又は「the」などの不定冠詞又は定冠詞が単数形の用語を指すときに使用される場合、特に明記されていない限り、その用語の複数形も含まれ、逆もまた同様であるが、本明細書で使用される単語「一(one)」又は数字「1」は、典型的には、「ちょうど1」又は「正確に1」を意味する。
【0017】
本明細書で使用される「含む(comprising)」という表現は、「comprising」、「including」又は「containing」の意味を含むだけでなく、「本質的にからなる(consisting essentially of)」及び「からなる(consisting of)」も含むことができる。
【0018】
特に明記しない限り、本明細書で使用される「の少なくとも一部(at least a part of)」という表現は、その少なくとも5%、特にその少なくとも10%、特にその少なくとも15%、特にその少なくとも20%、特にその少なくとも25%、特にその少なくとも30%、特にその少なくとも35%、特にその少なくとも40%、特にその少なくとも45%、特にその少なくとも50%、特にその少なくとも55%、特にその少なくとも60%、特にその少なくとも65%、特にその少なくとも70%、特にその少なくとも75%、特にその少なくとも80%、特にその少なくとも85%、特にその少なくとも90%、特にその少なくとも95%、特にその少なくとも98%を意味することができ、またその100%を意味することもできる。
【0019】
本明細書で使用される「不織布(non-woven fabric)」という用語は、ニット(knitted fabric)又は織物(woven fabric)のように規則的な方式ではなく、特に、少なくとも部分的に絡み合っている個々の繊維の網状物(web)を意味することができる。本願の文脈において、不織布は「洗濯シート(laundry sheet)」としても示されることができ、その意図した使用目的を例示すると、例えば家庭において又は洗濯所において、洗濯プロセス中に洗濯機に洗濯物と一緒に入れられる。
【0020】
本明細書で使用される「染料捕捉(dye-capturing)」(「カラー捕捉(color capture)」、「カラーキャッチ(color catch)」、「染料除去(dye-scavenging)」などとも称することもできる)という用語は、特に、洗濯水などの液体から染料又はカラーを結合、吸着、吸収、又は他の方法で捕捉し、染料が除去された液体に再び容易に放出されないように当該物を保持する能力を表すことができる。
【0021】
本明細書で使用される「染料捕捉機能(dye-capturing functionality)」という用語は、特に、洗濯水などの液体から染料又はカラーを結合、吸着、吸収、又は他の方法で捕捉し、染料が除去された液体に再び容易に放出されないように当該物を保持することができる(又はそのように構成された)(例えば分子又は化合物の、例えば染料捕捉剤の)特性又は官能基を表すことができる。このため、洗濯物の一部から洗濯水に放出されたり、にじみでたりすることがある染料又はカラーのほとんどは、典型的には、アニオン性化合物である(すなわち、一時的又は恒久的に負に荷電している)ので、染料捕捉機能は、特に、(一時的に(pH環境に依存して)もしくは恒久的に正に荷電するなどの)カチオン特性を有するか、又は(第三級もしくは第四級アミン官能基もしくは部分などの)カチオン性官能基を表すことができる。
【0022】
本明細書で使用される「結合機能(binding functionality)」という用語は、特に、結合又は付着することができる(又はそのように構成された)(例えば分子又は化合物の、例えばバインダ(結合剤)又はウェット強度剤の)特性又は官能基を示すことができる。このため、本願の文脈において、結合機能は、特に重合機能を表すことができる。本明細書で使用される「重合機能(polymerizing functionality)」という用語は、特に、重合反応を受けることができる(又はそのように構成された)(例えば分子又は化合物の)特性又は官能基を示すことができる。これにより、結合成分に配合された染料捕捉機能又は染料捕捉剤の少なくとも一部を閉じ込め又は埋め込むことができる(又はそのように構成された)ポリマー、例えばポリマーマトリックス、を形成することができ、したがって、染料捕捉機能又は染料捕捉剤の少なくとも一部は、不織布基材(の繊維)に結合もしくは付着される、特に放出不可に及び/もしくは非共有結合的に結合もしくは付着する、又は不織布基材(もしくはベースシート)に吸収されることができる。
【0023】
第1の態様において、本発明は、染料を捕捉する不織布を製造する方法に関し、該方法は、
不織布基材を準備するステップと;
不織布基材に成分を適用するステップと、を含み、該成分は結合機能及び染料捕捉機能を有する。
【0024】
最初に、該方法は、不織布基材(「ベースシート」と称することもできる)を準備する(提供する)ステップを含む。
【0025】
実施形態において、不織布基材は、基本的に不織布基材を構成する1つ又は複数の種類の繊維を含む。繊維の好適な例には、天然繊維及び/又は合成繊維が含まれる。
【0026】
特に、(セルロースパルプなどの)セルロース繊維又はセルロース系繊維を使用することができる。本明細書で使用される「セルロース系繊維(cellulosic fibers)」という用語は、特に、セルロースに基づく繊維、特に、セルロースから調製された繊維などの変性もしくは再生セルロース繊維、又はエチルセルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体を示すことができる。本明細書で使用される「再生セルロース繊維(regenerated cellulose fibers)」という用語は、特に、溶媒紡糸プロセスによって得られる人工セルロース繊維を示すことができる。特に好適な例には、セルロース、ビスコース、リヨセル、綿、麻、マニラ、ジュート、サイザル麻、レーヨン、アバカ及びその他などの繊維が含まれ、軟材パルプ及び硬材パルプの繊維も含まれる。ビスコース(レーヨン)は、典型的には、キサントゲン酸セルロースとしてのセルロースの中間溶解、それに続く繊維への紡糸を含むビスコースプロセスに従って製造される溶媒紡糸繊維の一種である。リヨセル(テンセル)は、典型的には、セルロースをN-メチルモルホリンN-オキシドに溶解し、続いて繊維に紡糸することを含むアミンオキシドプロセスに従って製造される溶媒紡糸繊維の一種である。
【0027】
さらに好適な繊維には、合成繊維又はヒートシール可能な繊維が含まれる。それらの例には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリ(乳酸)(PLA)など、の繊維が含まれる。さらなる例には、シースコア(sheathcore)タイプのバイコンポーネントファイバなどのバイコンポーネントファイバ(bicomponent fibers)が含まれる。バイコンポーネントファイバは、異なる物理的及び/又は化学的特徴、特に異なる溶融特徴を有する2種類のポリマーから構成される。シースコアタイプのバイコンポーネントファイバは、典型的には、高融点成分のコア及び低融点成分のシースを有する。バイコンポーネントファイバの例には、PET/PET繊維、PE/PP繊維、PET/PE繊維、及びPLA/PLA繊維が含まれる。
【0028】
一実施形態において、不織布基材は、セルロース又はセルロース系繊維を含む。
【0029】
不織布基材及び/又は不織ウェブ(non-woven web)のグラメージは、特に限定されない。典型的には、不織布基材及び/又は不織ウェブは、15~1000g/m、好ましくは50~600g/m又は20~120g/mのグラメージを有する。
【0030】
繊維の長さ及び粗さ(coarseness)は特に限定されない。繊維の粗さは、繊維の単位長さあたりの重量として定義される。典型的には、繊維は、1~100mm、例えば3~80mmなど、の長さを有することができる。典型的には、天然繊維又はセルロース繊維は、30~300mg/km、例えば70~150mg/kmなど、の粗さを有する。典型的には、合成繊維又はヒートシール可能繊維は、0.1~5dtex、例えば0.3~3dtexなど、の粗さを有する。
【0031】
一実施形態において、繊維は、1~15mm、例えば3~10mmなど、の平均繊維長を有することができる。これは、特に不織布基材がウェットレイドプロセスによって調製される場合に有利となり得る。
【0032】
一実施形態において、繊維は、3mm~100mm、特に10mm~80mm、の平均繊維長を有することができる。これは、特に不織布基材がエアレイドプロセスによって調製される場合に有利となり得る。
【0033】
一実施形態において、不織布基材は、本明細書でさらに説明されるように、成分が不織布基材に適用される前に、一定期間保管されるなど、事前に調製することができる。市販の不織布基材を購入することによって不織布基材を準備することも可能であり得る。
【0034】
しかしながら、不織布基材を準備するステップ及び不織布基材に成分を適用するステップが、特に、同じ製紙機などの同じ設備を使用することによって、順々に直接実施される場合に又は組み合わされる場合でも有利となり得る。
【0035】
一実施形態において、不織布基材を準備するステップは、ウェットレイドプロセス、エアレイドプロセス、スパンレースプロセス、及びスパンボンドプロセスからなる群から選択される少なくとも1つのプロセスによって不織布基材を形成することを含む。例えば、不織布基材は、傾斜ワイヤもしくはフラットワイヤ機などのウェットレイド機を使用する従来のウェットレイドプロセス、又は乾式形成エアレイド不織布製造プロセスによって形成することができる。従来のウェットレイプロセスは、例えば、米国特許出願公開第2004/0129632A1号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれているものとする。適切な乾式形成エアレイド不織布製造プロセスは、例えば、米国特許第3,905,864号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれているものとする。したがって、不織布基材は、ウェットレイドプロセス又はエアレイドプロセスによって形成することができる。また、スパンレースプロセスを行うことができる。(ハイドロエンタングルメントと称することもできる)スパンレーシングは、微細な高圧のウォータージェットを繊維状ウェブに貫通させて、繊維の絡み合いを引き起こし、これによって完全な布地を提供するウェット又はドライ繊維状ウェブの結合プロセスである。例示的なスパンボンドプロセスにおいて、(実質的に無限の)繊維又はフィラメント(典型的には、熱可塑性又は熱弾性ポリマーなどのポリマーから作製される)は溶融塊又は溶液から紡糸され、次にデフレクターによってウェブに直接分散されるか、又は気流で方向付けして引き伸ばすこともできる。一実施形態において、スパンドボンドプロセスはまた、典型的には、溶融ポリマー繊維をスピンネット又はダイを通して押し出し、繊維がダイから落下するときに繊維上に熱風を通過させることによって伸長及び冷却される細長い繊維を形成することを含むメルトブローンプロセスを含むこともできる。
【0036】
一実施形態において、成分は、不織布基材を形成するプロセスの間に(インラインで)(すなわち、不織布基材の製造中に)適用される。これは、例えば、典型的には、抄紙機の一部であるフラール(foulard)もしくはサイズプレス(size press)によって、又は噴霧によって達成することができる。したがって、GMACなどによる従来のカラー捕捉機能化において典型的に必要とされるような後続の(2番目の)プロセスを必要とすることなく、例えば、不織布基材の製造又は形成中の単一のインライン処理として、該成分は、不織布基材の製造にインラインで適用することができる。結果として、製造コストを削減し、製造速度を高めることができる。
【0037】
一実施形態において、不織布基材に適用される成分は、例えば水及び/又は別の溶媒を含む、溶液又は分散液などの液体組成物である。これは、例えば、サイズプレス又はフラールによって、成分を不織布基材に効率的かつ均一に適用することにとって有利となり得る。追加的又は代替的に、成分は、キャスティング、ディスペンシング、スプレッディング、スプレーコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、ロールコーティング、印刷(インクジェット印刷など)又はその他によって適用することもできる。
【0038】
不織布基材に適用される成分は、結合機能及び染料捕捉機能の両方を有する。特に、成分は、結合機能を有する1つ又は複数の化合物と、染料捕捉機能を有する1つ又は複数の(他の)化合物と、を含むことができる。しかしながら、成分は、結合機能及び染料捕捉機能の両方を有する1つ又は複数の化合物、例えば、染料捕捉機能を有するバインダ又は結合機能を有する染料捕捉剤、を含むことも可能であり得る。
【0039】
結合機能と染料捕捉機能の両方を有する成分を不織布基材に適用することにより、結合時に染料捕捉機能(染料捕捉剤など)を不織布基材に、特にその繊維に、付着させる又はくっつけることが可能となり得る。特に、染料捕捉機能(染料捕捉剤など)を不織布基材に、特にその繊維に、放出不可に付着させる又はくっつけることが可能となり得る、すなわち、染料捕捉剤が水と接触して不織布基材から放出されないようにする、例えば、染料捕捉剤が実質的に浸み出したり洗い流されないようにする。追加的又は代替的に、染料捕捉機能(染料捕捉剤など)を不織布基材に、特にその繊維に、非共有結合的にくっつける又は付着させることが可能となり得る。特に、不織布基材に染料捕捉機能又は染料捕捉剤を吸収することが可能となり得る。例えば、バインダ又はウェット強度剤の重合反応を引き起こすと、成分に配合された染料捕捉機能又は染料捕捉剤の少なくとも一部は、形成ポリマー(マトリックス)に閉じ込められ又は埋め込まれ、これにより、不織布基材の繊維に(特に、基材全体において実質的に完全に及び/又は均一に)結合する又はくっつく、特に非共有結合的に結合する又はくっつくことができる。記述的に言えば、染料捕捉機能(染料捕捉剤など)は、にかわ又は接着剤として作用するポリマーバインダによって不織布基材の繊維にくっつくことが可能となり得るが、繊維と共有結合(又は化学結合)は形成しない。これにより、染料捕捉機能の強固なくっつきを達成することができ、これにより、(染料捕捉機能によって一度捕捉された)染料の放出又は浸出を実質的に回避することができるが、従来のカラーキャプチャ機能化においてよくあるような、例えばGMACを使用したカチオン化などによって、不織布基材の強度を損なうことない。むしろ、結合機能を有する成分を適用することにより、不織布基材の強度、例えばウェット引張強度など、を高めることさえ可能となり得る。さらに、不織布基材が実質的に完全に(すなわち、その表面上だけでなく)染料捕捉機能を備えることが可能となり得るので、染料回収能力を著しく高めることができる。
【0040】
一実施形態において、成分はカチオン性ポリマーを含む。カチオン性ポリマーは、結合機能及び/又は色素捕捉機能を提供することができる。したがって、この手段を講じることにより、結合機能及び染料捕捉機能の両方を有する成分を単一の化合物によって達成することができる。それにもかかわらず、それぞれが結合機能及び染料捕捉機能の両方を有する2つ以上のカチオン性ポリマーの組み合わせもまた使用することができる。
【0041】
一実施形態において、カチオン性ポリマーは、アミン部分、特に第一級、第二級、第三級及び第四級アミン部分のうちの少なくとも1つ、より具体的には第二級、第三級及び第四級アミン部分のうちの少なくとも1つ、またさらに具体的には第三級及び第四級アミン部分のうちの少なくとも1つを含む。
【0042】
一実施形態において、カチオン性ポリマーは、第四級アミン部分を含む。この手段を講じることにより、ポリマーは、pH環境に関係なく、例えば、洗濯水の場合であり得るように、中性又はアルカリ性のpHでさえも、染料捕捉機能を提供することができる。
【0043】
一実施形態において、カチオン性ポリマーは、そのポリマー主鎖(骨格鎖)にカチオン性部分を有する。例えば、カチオン性ポリマーは、カチオン性部分を有するポリマー主鎖を有する線状ポリマーとすることができる。カチオン性部分は、特に、第三級又は第四級アミン部分から選択することができる。その好適な例には、本発明の目的を解決するのに特に適していることが証明されているポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)が含まれ得る。
【0044】
一実施形態において、カチオン性ポリマーは、カチオン性部分を含む側鎖を有する。例えば、カチオン性ポリマーは、カチオン性部分を含む側鎖でグラフト化された(分岐)ポリマーとすることができる。カチオン性部分は、特に、第三級又は第四級アミン部分から選択することができる。その好適な例には、本発明の目的を解決するのに特に適していることが証明されているビニルイミダゾールとビニルピロリドンのコポリマーが含まれ得る。
【0045】
一実施形態において、成分は、成分の総重量に基づいて、0.1~30wt%の量、例えば0.2~20wt%の量、例えば0.5~15wt%の量、例えば0.75~12.5wt%の量、例えば1~10wt%の量など、のカチオン性ポリマーを含む。
【0046】
一実施形態において、成分は、バインダ(又はウェット強度剤)及び染料捕捉剤を含む。本明細書で使用される「バインダ(binder)」という用語は、特に、結合機能を有する又は示す化合物を表すことができる。本明細書で使用される「ウェット強度剤(wet-strength agent)」という用語は、特に、ウェット状態において不織ウェブの引張強度を改善し、結合機能を有する又は示すことができる作用物質を表すことができる。本明細書で使用される「染料捕捉剤(dye-capturing agent)」という用語は、特に、染料捕捉機能を有する又は示す化合物を表すことができる。
【0047】
一実施形態において、バインダ又はウェット強度剤は、本発明の目的を解決するのに特に適していることが証明されているポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)を含む。
【0048】
一実施形態において、染料捕捉剤は、ビニルイミダゾール(より具体的にはN-ビニルイミダゾール)とビニルピロリドン(より具体的にはN-ビニルピロリドン)とのコポリマー、ビニルイミダゾール(より具体的にはN-ビニルイミダゾール)とビニルカルバゾール(より具体的にはN-ビニルカルバゾール)とのコポリマー、ビニルイミダゾール(より具体的にはN-ビニルイミダゾール)とビニルフタルイミド(より具体的にはN-ビニルフタルイミド)とのコポリマー、及びビニルイミダゾール(より具体的にはN-ビニルイミダゾール)とビニルインドール(より具体的にはN-ビニルインドール)とのコポリマーからなる群から選択される。特に、染料捕捉剤は、本発明の目的を解決するのに特に適していることが証明されている、ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマーを含むことができる。
【0049】
一実施形態において、成分は、成分の総重量に基づいて、0.1~30wt%の量、例えば0.2~25wt%の量、例えば0.5~20wt%の量、例えば0.75~17.5wt%の量、例えば1~15wt%の量など、のバインダ又はウェット強度剤を含む。
【0050】
一実施形態において、成分は、成分の総重量に基づいて、0.1~20wt%の量、例えば0.2~17.5wt%の量、例えば0.5~15wt%の量、例えば0.75~12.5wt%の量、例えば1~10wt%の量など、の染料捕捉剤を含む。
【0051】
一実施形態において、成分は、酸及び/又はその塩(すなわち、酸性塩)、特に有機酸及び/又はその塩(すなわち、有機酸塩)をさらに含む。この手段を講じることによって、成分のpH値は、成分が不織布基材に適用され、例えば熱及び/又は圧力にさらされた後に、バインダ機能の又はバインダもしくはウェット強度剤の重合反応が誘発又は引き起こされ得るように適切に調整することができる。その結果として、成分に配合された染料捕捉機能又は染料捕捉剤の少なくとも一部は、形成ポリマー(マトリックス)に閉じ込め又は埋め込まれ、これにより、不織布基材の繊維に結合する又はくっつく、特に非共有結合的に結合する又はくっつく、ことができる。
【0052】
酸の好適な例には、特にモノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及びポリカルボン酸からなる群から選択されるカルボン酸、特に脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、及び脂肪族ポリカルボン酸からなる群から選択されるカルボン酸、好ましくはジカルボン酸、トリカルボン酸、及びポリカルボン酸からなる群から選択されるカルボン酸、特に脂肪族ジカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸、及び脂肪族ポリカルボン酸からなる群から選択されるポリカルボン酸が含まれる。例えば、酸は、酢酸、マレイン酸、フマル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸、及びブタンテトラカルボン酸からなる群から選択することができる。特に、酸は、本発明の目的を解決するのに特に適していることが証明されているクエン酸を含むことができる。前述の酸の好適な塩には、そのアルカリ塩、特にそのナトリウム塩及び/又はカリウム塩、例えばクエン酸ナトリウムなど、が含まれる。
【0053】
一実施形態において、成分は、成分の総重量に基づいて、0.1~5wt%の量、例えば0.2~2.5wt%の量、例えば0.3~2wt%の量、例えば0.4~1.5wt%の量、例えば0.5~1wt%の量など、の酸及び/又はその塩を含む。
【0054】
一実施形態において、成分は、pH2~pH7、特にpH2.5~pH6、例えばpH3~pH5、特にpH3~pH4、の範囲の、例えば、成分への酸及び/又はその塩の添加によって調整されたpH値を有することができる。この手段を講じることによって、成分が不織布基材に適用され、例えば熱及び/又は圧力にさらされた後に、バインダ機能の又はバインダもしくはウェット強度剤の重合反応を誘発又は引き起こすことができる。その結果として、成分に配合された染料捕捉機能又は染料捕捉剤の少なくとも一部は、形成ポリマー(マトリックス)に閉じ込め又は埋め込まれることができ、これにより不織布基材の繊維に結合する又はくっつく、特に非共有結合的に結合する又はくっつく、ことができる。さらに、カチオン化におけるアルカリ性条件を回避することができ、これにより、製造時及び洗濯中の染料捕捉不織布(又はカラーキャッチャー洗濯シート)の利用時における健康及び安全上の懸念を低減することができる。
【0055】
好ましい実施形態において、成分は、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)、ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマー、並びにクエン酸(及び/又はその塩、例えばクエン酸ナトリウムなど)を含み、この組み合わせは、本発明の目的を解決するのに特に適していることが証明されている。
【0056】
一実施形態において、該方法は、特に、結合機能及び染料捕捉機能を有する成分を不織布基材に適用するステップの後に、例えば、成分を不織布基材に適用するステップの直後に、乾燥ステップをさらに含むことができる。例えば、乾燥ステップは、好ましくは、成分から又は(例えば、ウェットレイドプロセス及び/もしくはスパンレースプロセスの場合に)不織布基材の形成から由来する水又はいずれか他の溶媒が実質的に除去されるように行うことができる。追加的に又は代替的に、乾燥ステップは、好ましくは、成分の結合機能が重合反応を受け、これにより、不織布基材(の繊維)に染料捕捉機能又は染料捕捉剤のうちの少なくとも一部をくっつけさせる又は結合させるように行うことができる。このため、乾燥温度は、80℃よりも高い、例えば100℃よりも高い、例えば120℃よりも高い、例えば140℃よりも高い、例えば180℃よりも高い、温度に設定することができる。
【0057】
一実施形態において、該方法は、前述において論じたように、特に、結合機能及び染料捕捉機能を有する成分を適用するステップの後に、並びに/又は、特に、(選択的な)乾燥ステップの後に、(さらなる又は二次的な、例えば従来の)カチオン化剤で染料捕捉不織布を処理するステップをさらに含むことができる。このような後続の処理ステップ又は二次化学処理ステップによって、染料回収性能をさらに向上させることができる。特に、(二次)カチオン化剤は、グリシドトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)を含むことができ、これは、本発明による染料捕捉不織布の染料回収性能をさらに高めるのに特に適していることが証明されている。
【0058】
第2の態様において、本発明は、本明細書に記載の染料捕捉不織布を製造する方法によって得ることが可能な染料捕捉不織布に関する。
【0059】
第3の態様において、本発明は、不織布基材(又はベースシート)と、バインダ又はウェット強度剤によって不織布基材に付着する(特に、放出不可に及び/又は非共有結合的に付着又は結合する)染料捕捉剤と、を含む染料捕捉不織布に関する。特に、染料捕捉剤は、共有結合するのではなく、不織布基材に吸収されることができる。第3の態様による染料捕捉不織布は、例えば、本明細書に記載の染料捕捉不織布を製造する方法によって作製することができる。
【0060】
さらに、第2及び/又は第3の態様による染料捕捉不織布は、染料を捕捉する不織布を製造する方法に関連して上記で例示したように、不織布基材、染料捕捉剤及び/又はバインダ(もしくはウェット強度剤)を含むことができる。特に、染料捕捉不織布は、ポリマー(マトリックス)に閉じ込められ又は埋め込まれ、これにより不織布基材の繊維に結合した又はくっついた、特に非共有結合的に結合した又はくっついた、染料捕捉機能又は染料捕捉剤を含むことができる。特に、染料捕捉機能又は染料捕捉剤は、共有結合されるのではなく、不織布基材に吸収されることができる。
【0061】
好ましい実施形態において、染料捕捉剤は、ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマーを含み、バインダ又はウェット強度剤は、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)を含み、この組み合わせは、以下においてさらに例示するように、本発明の目的を解決するのに特に適していることが証明されている。
【0062】
本発明は、以下の典型的な反応ステップ及び実施例によってさらに説明され、これらは、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、いかなる方法でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されない。
【0063】
ポリアミドアミンエピクロロヒドリン(PAAE)、ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマー及びクエン酸の典型的な反応ステップ:
【0064】
ステップ1:
エピクロロヒドリン(エポキシ樹脂)を使用したイミダゾール基の電荷安定化(図1を参照)。
【0065】
反応可能なイミダゾール基の量は、コポリマーの[n/m]比を変えることによって調整することができる。プロセス例においては、ビニルピロリドン(NVP)コポリマーが使用される。他の使用可能なコポリマー群を図2に示す。
【0066】
図3a及び3bに示すように、カチオン電荷はそのPAAE基で安定しているため、PAAEは電荷安定化を必要としない。したがって、PAAEは、ポリマー主鎖上に、利用可能なエポキシ基と官能性カチオン性第四級アミン基があるため、ウェット強度樹脂の選択肢となる。
【0067】
ステップ2
重合化のために、安定化された荷電分子の活性化。これは、図4に示す(イミダゾール-エピクロロヒドリン)-付加物(IE-付加物)及び図5に示すポリアミド-アミンエピクロロヒドリン(PAAE)のクエン酸による活性化を意味する。
【0068】
ステップ3
バインダ混合物の酸性及び熱硬化による活性化荷電ポリマーフラグメントの固定化。ポリアミドアミンエピクロロヒドリンのカルボン酸活性化はカチオン性官能基化の喪失につながるため、重合要件(バインダ強度)及びPAAE主鎖からの電荷の喪失のバランスを見つけることが重要である。示されているプロセス例においては、6Kgのクエン酸充填が1000Lのバインダ溶液において行われ、pH3.9に達した。
【0069】
クエン酸は基本的にIE付加物とPAAEの間の接続ブリッジとして作用する。両グループは、安定化されたカチオン電荷、分岐ポリマー部分上のIE付加物、ポリマー骨格上のPAAEを有している。図6は、硬化した結合混合物の描写された提案構造を示し、活性化ポリマーセグメントを示す:[R1]としてIE付加物及び[R2]としてPAAE。
【実施例
【0070】
比較例1(C.Ex.1):
【0071】
標準の不織布基材(66%国際的なECFパルプ、34%ビスコース繊維(ダヌフィル(Danufil)5mm又は8mm×0.95dtex)を、従来の二次化学処理においてグリシドトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)で処理し、GMAC機能化コントロールサンプルを得た。
【0072】
実施例1(Ex.1):
【0073】
比較例1に使用されたのと同様の標準的な不織布基材は、以下を含む成分を適用することによって、インライン機能化され、本発明の例示的な実施形態による染料捕捉不織布を得た:
-80L ソカラン(Sokalan)HP66K(ビニルイミダゾールとビニルピロリドンとのコポリマー)
-130L キメン(Kymene)GHP20(ポリアミドアミンエピクロロヒドリン)
-6kg クエン酸
-+786L 水
最終pHが3.9の1000Lの組成物を得た。
【0074】
実施例2(Ex.2):
【0075】
実施例1の染料捕捉不織布を、従来の二次化学処理においてグリシドトリメチルアンモニウムクロリド(GMAC)で追加処理して、本発明の別の例示的な実施形態による染料捕捉不織布を得た。
【0076】
比較例1並びに実施例1及び2による不織布の種々の材料特性が決定され、その結果は以下の表1にまとめられている。
【0077】
乾式及び湿式引張強度は、ISO1924-2に記載されている試験方法と同様に決定した。ここで、「引張MD(tensile MD)」は機械方向のそれぞれの引張強度を表し、「引張CD(tensile CD)」は機械幅方向のそれぞれの引張強度を表す。
【0078】
さらに、不織布の染料回収(DPU;Dye Pick Up)性能を測定した。DPUテストは社内で開発され、分光計(ハックランゲ(Hach Lange)DR6000、測定は538nmの波長で記録された)を使用して染料吸収のmgを測定した。重要な引用値は「3分後の染料の吸収mg」である。
【0079】
【表1】
【0080】
表1に示す結果からわかるように、二次GMAC処理を使用した場合と使用しない場合の両方で優れた染料捕捉性能が記録された。不織布基材の製造中に結合機能及び色素捕捉機能を有する成分を適用することにより(実施例1)、GMACによる従来の二次処理(比較例1)と比較して25%を超えるDPU性能の向上を達成することができ、さらに引張強度、乾式及び湿式の両方、並びにMD及びCDの両方、を高めることができる。GMACを用いた追加の二次処理(実施例2)により、DPU性能は、GMACを用いた従来の二次処理のみ(比較例1)と比較して、例えば50%を超えてさらに改善することができる。
【0081】
本発明は、特定の実施形態及び実施例によって詳細に説明されているが、本発明はそれらに限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正が可能である。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6