(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】腸管免疫調節のための新規なプロバイオティック組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/747 20150101AFI20240213BHJP
A61K 35/745 20150101ALI20240213BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240213BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240213BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240213BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K35/745
A61P1/04
A61P29/00
A23L33/135
(21)【出願番号】P 2021577227
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 KR2019009117
(87)【国際公開番号】W WO2020262755
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】10-2019-0077422
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2018年7月23日発行のJournal of Medicinal Food,2018 Sep;21(9):p.858-865にて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年4月17日にICCJEJU(韓国済州道西帰浦市)で開催された2019 International Meeting of the Microbiological Society of Koreaにて発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2019年5月18日にサンディエゴコンベンションセンター(米国カリフォルニア州サンディエゴ)で開催されたDigestive Disease Week 2019にて発表
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 10923BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13586BP
【微生物の受託番号】KCTC KCTC 13587BP
(73)【特許権者】
【識別番号】518067342
【氏名又は名称】イルドン ファーマスーティカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジン ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,テ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】クォン,ヒュク-サン
【審査官】柴原 直司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136942(WO,A1)
【文献】営業資料 キムチ由来乳酸基CIB001, アンチエイジング株式会社, 2015, <http://www.cellinbio.com/wp-content/uploads/2016/06/CIB001_Jp.pdf>
【文献】J. Appl. Microbiol., (2018), 125, [6], p.1881-1889
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む、炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスは、それぞれの生菌又は死菌であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む、炎症性腸疾患の予防用又は改善用食品組成物。
【請求項4】
前記ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスは、それぞれの生菌又は死菌であることを特徴とする、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む、抗炎症用薬学的組成物。
【請求項6】
ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む、抗炎症用食品組成物。
【請求項7】
炎症性腸疾患の予防用又は治療用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む組成物の使用。
【請求項8】
ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、ヒトを除く個体における炎症性腸疾患の治療方法。
【請求項9】
前記炎症性腸疾患は、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸管ベーチェット病、及び虚血性腸炎からなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
抗炎症用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む組成物の使用。
【請求項11】
ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)IDCC9203菌株
(KCTC 10923BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)IDCC3501菌株
(KCTC 13586BP)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)IDCC4301菌株
(KCTC 13587BP)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む、ヒトを除く個体における炎症抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年6月27日に出願された韓国特許出願第10-2019-0077422号に基づく優先権を主張し、前記明細書全文は参照により本出願に援用する。
【0002】
本発明は、腸管免疫調節のための新規なプロバイオティック組成物に関するものであり、より詳細には、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む、炎症性腸疾患の予防、改善、又は治療用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0003】
炎症性腸疾患(Inflammatory bowel disease、IBD)とは、消化管に慢性的な炎症を誘発する疾患であり、比較的に若年層から発症し、腹痛、発熱、下痢、下血等の症状を伴う。概して潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis、UC)とクローン病(Crohn’s disease、CD)の2つの形態に分類される。潰瘍性大腸炎は、主に粘膜を侵し、多くの爛れや潰瘍を形成する大腸の原因不明の拡散性非特異性炎症(diffuse nonspecific inflammation)の一種であり、血性下痢をはじめ、様々な全身症状を伴う。クローン病は、口腔から肛門までの全消化管を非継続的に、粘膜における腸管の全層に潰瘍、線維化、狭窄、及び病変が進展する原因不明の肉芽腫性炎症性病変であり、腹痛、慢性下痢、発熱、栄養障害等の全身症状を伴う。
【0004】
炎症性腸疾患の発症原因は、未だに具体的に明らかになっていないが、免疫機能の異常が関与していることが知られている。これに関与する免疫学的要因としては、先天的免疫、サイトカイン(Cytokine)の生成、CD4の活性化等が知られている。特に、サイトカインが重要な役割を果たしていることが知られており、炎症部位における腫瘍壊死因子(Tumor nerosis cytokine; TNF-α)、インターロイキン(Interluekin; IL)-1、IL-6、IL-8の生成が、潰瘍性大腸炎とクローン病の患者において著しく増加していることが確認された。
【0005】
主要な炎症誘発性サイトカインであるTNF-αは、核内因子κB経路(nuclear factor kappa-B pathway)を介して、炎症誘発性サイトカイン(proinflammatory cytokines)の発現を増加させ、炎症反応を悪化させる。TNF-αの抑制は、粘膜Tリンパ球の細胞死滅(apoptosis)を防ぎ、腸の免疫を調節するのに非常に有効であるので、インフリキシマブ(infliximab)及びアダリムマブ(adalimumab)のような抗TNF-α抗体は、重症大腸炎患者を治療するとして承認された(非特許文献1)。IL-1βは、顆粒球(granulocyte)を集めて結腸炎を起こし、CD4+Th17細胞を活性化させてIL-17を分泌する(非特許文献2)。好中球(neutrophil)の浸潤は、慢性炎症の進行に本質的に必要なこととして知られている。IL-6は、大腸炎(結腸炎)領域への好中球の移動を促進する(非特許文献3)。
【0006】
既存の炎症性腸疾患を治療するために使用される薬剤としては、ステロイド性免疫抑制剤、プロスタグランジン(prostaglandins)の生成をブロックする5-アミノサリチル酸(5-aminosalicylic acid; 5-ASA)系薬(例えば、スルファサラジン等)、及びメサラジン等が使用される。前記例示のように、大腸炎を軽減するために、抗炎症剤及び免疫抑制剤が処方されるが、吐き気、嘔吐、頭痛、溶血性貧血、及び男性不妊等の望ましくない副作用があることがよく知られている。
【0007】
これらよりも安全かつ効果的である炎症性腸疾患治療剤の開発が継続的に求められているのが実情である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Atreya R,Zimmer M,Bartsch B,et al.:Antibodies against tumor necrosis factor(TNF)induce T-cell apoptosis in patients with inflammatory bowel diseases via TNF receptor 2 and intestinal CD14(+)macrophages,Gastroenterology 2011;141:2026-2038.
【文献】Coccia M,Harrison OJ,Schiering C,et al.:IL-1beta mediates chronic intestinal inflammation by promoting the accumulation of IL-17A secreting innate lymphoid cells and CD4(+)Th17 cells,J Exp Med 2012;209:1595-1609.
【文献】Wang Y,Wang K,Han GC,et al.:Neutrophil infiltration favors colitis-associated tumorigenesis by activating the interleukin-1(IL-1)/IL-6 axis,Mucosal Immunol 2014;7:1106-1115.
【発明の概要】
【0009】
[発明の詳細な説明]
[技術的課題]
これに対し、本発明者らは安全かつ効果的な炎症性腸疾患治療剤を開発するために研究努力をした結果、本発明に特有の3種の乳酸菌の組み合わせを併用することにより、炎症性腸疾患(IBD)の予防及び治療の効果が顕著に上昇することを確認しており、特に、このような効果は、従来のIBD治療薬としてよく使用されるスルファサラジン(sulfasalazine)と比較しても優秀な水準であることを確認した上、本発明を完成した。
【0010】
よって、本発明の目的は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供するものである。
【0011】
本発明の他の目的は、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として含む炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供するものである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として含む抗炎症用組成物(薬学的組成物又は食品組成物)を提供するものである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、炎症性腸疾患の予防用又は治療用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の使用を提供するものである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む炎症性腸疾患の治療方法を提供するものである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、抗炎症用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis )を有効成分として含む組成物の使用を提供するものである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む炎症抑制方法を提供するものである。
【0017】
[課題解決手段]
上述の目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として構成される炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として本質的に構成される炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0020】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として含む炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として構成される炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0022】
また、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として本質的に構成される炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0023】
本発明のさらに他の目的を達成するために、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として含む抗炎症用組成物(薬学的組成物又は食品組成物)を提供する。
【0024】
また、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として構成される抗炎症用組成物(薬学的組成物又は食品組成物)を提供する。
【0025】
また、ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスを有効成分として本質的に構成される抗炎症用組成物(薬学的組成物又は食品組成物)を提供する。
【0026】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、炎症性腸疾患の予防用又は治療用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0027】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む炎症性腸疾患の治療方法を提供する。
【0028】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、抗炎症用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0029】
本発明の他の目的を達成するために、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む炎症抑制方法を提供する。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
本発明の用語「~を含む(comprising)」とは、「含有する」又は「特徴とする」と同じように使用され、組成物又は方法において、言及されていない追加の成分要素又は方法の段階を排除しない。用語「~で構成される(consisting of)」とは、「~からなる」と同じように使用され、別途の記載がいない追加の要素、段階又は成分等を除外することを意味する。用語「本質的に構成される(essentially consisting of)」又は「本質的に~からなる」とは、組成物又は方法の範囲において、記載された成分要素又は段階を含み、その基本的な特性に実質的な影響を及ぼさない成分要素又は段階等を含むことを意味する。
【0032】
本明細書に開示された全般的内容にわたって、本発明に関連する様々な面又は条件が、範囲の形式で提供されてもよい。本明細書における範囲値の記載は、別途の記載がない限り、当該境界値を含むものであって、すなわち、下限値以上ないし上限値以下の値の両方を含む意味である。範囲の形式を述べることは、単に利便性と簡潔性のためのものであり、本発明の範囲に対する融通がない制限(inflexible limitation)として解釈するべきでないこととして理解するべきである。したがって、範囲の記述は、前記範囲内の個々の数値だけでなく、すべての可能な部分的範囲(subrange)を具体的に開示したこととして考えるべきである。例えば、7~170のような範囲の記述は、前記範囲内の個々の数値には、例えば、9、27、35、101、及び155のみならず、10~127、23~35、80~100、50~169等の部分的範囲を具体的に開示したものとみなされるべきである。これは範囲の幅とは関係せずに適用される。
【0033】
本発明において、用語「プロバイオティクス(Probiotics)」とは、適切な量で投与される場合、宿主に健康上の利益を与える微生物として定義される。確立された安全性とヒトの健康に有益な効果のために、プロバイオティクスが医薬の代替物又は補完物として登場することになった。プロバイオティクスの利点は、副作用がほとんどないことである。
【0034】
本発明者らは、幼児の糞便、キムチ、チーズから分離された複数の乳酸菌の菌株を対象にし、さまざまな側面から各菌株の個別的効能をスクリーニングし、また、複数の菌株を様々な組み合わせを利用して、多様な側面における効能評価を行った。その結果、本発明者らは、Lactobacillus johnsonii IDCC9203(KCTC 10923BP)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(KCTC 13586BP)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(KCTC 13587BP)の3種の菌株の組み合わせを併用する場合に特異的に、抗炎症効果における予期せぬ相乗効果のほかにも、炎症性腸疾患(IBD)に対する薬理的側面における実質的な治療効果が顕著であることを確認した。特に、このような本発明の治療効果は、公知となったIBD治療薬であるスルファサラジン(sulfasalazine)と比較しても優秀な水準であった。プロバイオティクスの特徴は、同一種のバクテリアでも菌株依存的であり、すべてのプロバイオティックの要件に対して優れた性能を示す組成物の製造に困難性があることを考慮すると、本願発明の3種の乳酸菌の構成と、本発明者らが確認した顕著な効果には大きい技術的意義がある。また、従来の韓国内における腸管免疫に対して唯一に認められたV社の8種の乳酸菌の混合製剤と比較して、本発明の3種の菌株の混合物は、より少ない容量でも優れた治療効果を示した。
【0035】
これに対して、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供し、また、前記3種の菌株を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0036】
また、本発明は、前記3種の菌株で構成される炎症性腸疾患の予防用もしくは治療用薬学的組成物、又は炎症性腸疾患の予防もしくは改善用食品組成物を提供する。また、本発明は、前記3種の菌株で本質的に構成される炎症性腸疾患の予防用もしくは治療用薬学的組成物又は炎症性腸疾患の予防もしくは改善用食品組成物を提供する。
【0037】
好ましくは、本発明は、ラクトバチルスジョンソニーIDCC9203(Lactobacillus johnsonii IDCC9203)菌株、ラクトバチルスプランタルムIDCC3501(Lactobacillus plantarum IDCC3501)菌株、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスIDCC4301(Bifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301)菌株を(有効量で)含むプロバイオティック(probiotic)組成物を提供し、また、前記3種の菌株で(有効量で)構成されるプロバイオティック(probiotic)組成物を提供し、また、前記3種の菌株で(有効量で)本質的に構成されるプロバイオティック(probiotic)組成物を提供する。
【0038】
好ましい一実施態様において、本発明は、ラクトバチルスジョンソニーIDCC9203(Lactobacillus johnsonii IDCC9203)菌株、ラクトバチルスプランタルムIDCC3501(Lactobacillus plantarum IDCC3501)菌株、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスIDCC4301(Bifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301)菌株を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供し、また、前記3種の菌株を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0039】
他の一実施態様において、本発明は、ラクトバチルスジョンソニーIDCC9203(Lactobacillus johnsonii IDCC9203)菌株、ラクトバチルスプランタルムIDCC3501(Lactobacillus plantarum IDCC3501)菌株、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスIDCC4301(Bifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301)菌株で構成される炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供し、また、前記3種の菌株で構成される炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0040】
他の一実施態様において、本発明は、ラクトバチルスジョンソニーIDCC9203(Lactobacillus johnsonii IDCC9203)菌株、ラクトバチルスプランタルムIDCC3501(Lactobacillus plantarum IDCC3501)菌株、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスIDCC4301(Bifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301)菌株で本質的に構成される炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物を提供し、また、前記3種の菌株で本質的に構成される炎症性腸疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
【0041】
前記「炎症性腸疾患」とは、当該業界に腸内炎症性病態が主要な病理であることが知られている疾患であれば、その種類は特に制限されないが、一例として、好ましくは、クローン病、潰瘍性大腸炎、腸管ベーチェット病、及び虚血性腸炎からなる群から選択されてもよい。
【0042】
本発明の組成物はこれに限定されないが、前記3種の乳酸菌(ラクトバチルスジョンソニー、ラクトバチルスプランタルム、ビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス)が混合物の形態で、一つの容器内に存在するように製剤化することができ、又は3種の乳酸菌それぞれが別個の容器内に包装されつつ提供されるが、使用時に同時に又は順次に投与されるように剤形化することができる。
【0043】
一実施態様において、前記本発明の3種の乳酸菌は、混合物の形態で提供される可能性があり、これらの実施形態の一例として、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)の混合乳酸菌を有効成分として含む炎症性腸疾患の予防用又は治療用薬学的組成物(又は前記疾患の予防又は改善用食品組成物)を提供する。
【0044】
本発明の組成物において、各菌株の有効量のコロニー形成単位(CFU)は、当該技術分野の当業者が目的とすること(病気の予防、健康又は治療的処置)、又は必要に応じて決定することができ、又は、最終的な剤形に応じて決定することができる。
【0045】
一例として、本発明の前記3種の菌株それぞれの生菌又は死菌体を、食品又は医薬品の製造の際に全組成物1g(又はmL)あたり菌を1×105~1×1015個(菌数又はCFU)添加することができ、好ましくは1×106~1×1013個の量で添加することができるが、これらに限定されない。
【0046】
また、前記生菌又はその死菌体が含まれている組成物の1日の摂取量は、総菌体数を基準にして1×105~1×1010CFU/kg、好ましくは一例として、1×106~1×109CFU/kgであってもよく、摂取量は一日一回摂取することも、数回に分けて摂取することもあるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の組成物において、前記3種の乳酸菌が提供される相対的割合(例えば、配合比)は、本発明で目的とする効果(抗炎症効果又は炎症性腸疾患の予防/治療/改善効能)を示す限り、特に制限されないが、一例として、L.johnsonii IDCC9203:L.plantarum IDCC3501:B.animalis subspecies lactis IDCC4301の組成比は、cfu/g(又はcfu/mL)単位を基準に1~100:1~100:1~100の割合で組成されてもよく、好ましくはcfu/g(又はcfu/mL)単位で1~30:1~30:1~30の割合、さらに好ましくはcfu/g(又はcfu/mL)単位で1~10:1~10:1~10の割合で組成されてもよい。
【0048】
一実施態様において、L.johnsonii IDCC9203:L.plantarum IDCC3501:B.animalis subspecies lactis IDCC4301の組成比は、cfu/g(又はcfu/mL)単位で1:7:2の割合で組成されてもよい。
【0049】
好ましい一実施態様において、前記3種の乳酸菌の組成比は、cfu/g(又はcfu /mL)単位で1:1:1の割合で組成されることもできる。
【0050】
また、本発明において、前記3種の乳酸菌は、それぞれ生菌や死菌体の形態で提供されることもできる。
【0051】
当該業界で生菌製剤を提供するための菌処理方法は、当該業界によく公知となっており、菌が生きている形態であれば、その提供形態が特に制限されない。一例として、前記菌株を培養した後、細胞ペレット(pellet)を回収し、これをそのまま使用するか、又は、例えば、濃縮及び/又は凍結乾燥することにより、所望の手段にて処理し、薬剤学的又は食用製品の製造に追加することができる。プロバイオティック調製物は寿命を改善するために、固定化又はカプセル化工程を経てもよい。いくつかのバクテリア固定化又はカプセル化技術が、当該技術分野に公知となっている。
【0052】
本発明において、用語「死菌体」とは、加熱、加圧、及び薬物処理等で殺菌処理された菌体を意味する。当該業界に公知となった乳酸菌の死菌化法によるものであれば、特に死菌体の製造方法における制限はなく、一例として、本発明の死菌体は、熱処理を含む(熱処理による)死菌化方式で製造されてもよい。前記熱処理は、培養液から分離し得た生菌体のみを対象にして行われてもよく、又は前記生菌体を含む培養液を対象にして行われてもよい。前記熱処理温度は、菌体の性状を維持し、他の一般細菌が滅菌される条件であれば、特にその温度条件に制限はないが、80℃~150℃で行われてもよく、好ましくは、80℃~110℃で行われてもよい。
【0053】
前記熱処理時間は、前記温度条件を考慮し、当業者が目的とする製造品質を収得することができる条件であれば、特にその時間に制限はないが、一例として、5分~15分で行うことができる。
【0054】
前記死菌体の製造のための熱処理工程のうち、当業者は、本発明の死菌の固有機能に影響を及ぼさない範囲で、製造効率のための任意の前処理又は追加の条件を付加することができる。一例として、前記熱処理前の生菌体に蒸留水の投入及び混合をすることができる。
【0055】
前記死菌化された菌体は、死菌製剤(剤形)の製造のための任意の追加工程を経ることができ、一例として、濃縮、乾燥等を行うことができる。前記乾燥は、当該業界における乳酸菌の乾燥に使用する方法であれば、その種類には特に制限されないが、例えば、熱(風)乾燥、凍結乾燥方法であってもよい。
【0056】
他の一実施態様において、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む抗炎症用薬学的組成物又は食品組成物を提供する。
【0057】
好ましく本発明は、ラクトバチルスジョンソニーIDCC9203(Lactobacillus johnsonii IDCC9203)菌株、ラクトバチルスプランタルムIDCC3501(Lactobacillus plantarum IDCC3501)菌株、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティスIDCC4301(Bifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301)菌株を有効成分として含む抗炎症用薬学的組成物又は食品組成物を提供する。
【0058】
前記本発明の薬学的組成物は、上述した3種の乳酸菌の生菌又は死菌体を単独で含有するか、又は複数の薬学的に許容できる担体、賦形剤、又は希釈剤をさらに含有することができる。前記「薬学的に許容できる」とは、生理学的に許容でき、ヒトに投与される場合に活性成分の作用を阻害せず、通常、胃腸障害やめまいのようなアレルギー反応又はこれに類似の反応を起こさない非毒性の組成物を意味する。
【0059】
薬学的に許容できる担体としては、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用の担体をさらに含むことができる。経口投与用担体は、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等を含むことができる。
【0060】
本発明の薬学的組成物は、ヒトをはじめとする哺乳動物にどのような方法でも投与することができる。例えば、経口又は非経口的に投与(一例として、塗布法等)することができる。また、本発明の薬学的組成物は、上述したような投与経路にしたがって経口投与用又は非経口投与用の製剤として製剤化することができる。
【0061】
一例として、経口投与用製剤の場合、本発明の組成物は、凍結乾燥された粉末、カプセル剤、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液、ウェハ等であり、当該業界に公知となった方法を用いて製剤化することができる。例えば、経口用製剤は、活性成分を固体賦形剤と配合した後、これに適切な補助剤を添加した後、カプセル剤等で加工することにより提供することができる。適切な賦形剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、及びマルチトール等を含む糖類;トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、及びポテト澱粉等を含む澱粉類;セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース等を含むセルロース類;ゼラチン;ポリビニルピロリドン等の充填剤を含むことができる。さらに、本発明の薬学的組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、及び防腐剤等をさらに含むことができ、これに限定されない。
【0062】
本発明の食品組成物は、通常の意味としての食品を全て含むものであって、機能性食品(functional food)、栄養補助食品(nutritional supplement)、健康食品(health food)、及び食品添加物(food additives)等のすべての形態を含む。前記類型の食品組成物は、当該業界に公知となった通常の方法によって様々な形態で製造することができる。
【0063】
本発明の食品組成物には、健康機能食品が含まれてもよい。本発明で使用される用語「健康機能食品」とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用し、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状、及び丸剤等の形態で製造及び加工を行った食品を意味する。ここで「機能性」とは、栄養素の調整や人体の構造及び機能に対する生理学的作用等のような健康目的に有用な効果を得ることを意味する。本発明の健康機能食品は、当該業界において通常に使用される方法によって製造することができ、製造の際には、当該業界において通常に添加する原料及び成分を添加して製造することができる。
【0064】
また、健康機能食品の製剤も、健康機能食品として認められる剤形であれば、制限なく製造することができる。本発明の食品用組成物は、様々な形態の剤形で製造することができ、一般的薬品とは異なり、食品を原料とし、薬品の長期服用時に発生しうる副作用等がない利点があり、携帯性に優れており、サプリメントとして摂取が可能である。
【0065】
例えば、健康機能食品としては、本発明の3種の乳酸菌生菌又はその死菌体をカプセル化又は顆粒化して摂取することができる。また、本発明の食品組成物は、様々な栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤等を含有することができる。その他の果物の果肉を含有することができる。これらの成分は、独立して又は混合して使用することができる。これらの添加剤の割合はそれほど重要ではなく、本発明の食品組成物の100重量部当たり0.01~0.3重量部の範囲のうちから選択されるのが一般的であるが、これらに限定されない。
【0066】
また、本発明の食品組成物は、様々な香味剤又は天然炭水化物等を追加成分として含有することができる。前記炭水化物は、ブドウ糖、果糖等のような単糖類と、マルトース、スクロースのような二糖類と、デキストリン、シクロデキストリンのような多糖類と、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコールである。甘味料としては、ソーマチン、ステビア抽出物のような天然甘味料や、サッカリン、アスパルテームのような合成甘味料等を使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、一般的に本発明の組成物100mL当たり約0.01~0.04g、好ましくは約0.02~0.03gであってもよいが、これに限定されない。
【0067】
また、本発明の食品組成物は発酵食品の形態で提供されてもよい。本発明の3種の乳酸菌は、乳製品、ヨーグルト、凝乳(curd)、チーズ(例えば、クワルク、クリーム、加工、軟質、及び硬質)、発酵乳、粉乳、乳発酵製品、アイスクリーム、発酵穀物製品(fermented cereal based product)、調製粉乳(milk based powder)、飲料、ドレッシング、及びペットフード等のような様々な食用製品に含有させることができる。本明細書における「食用製品」とは、本明細書において、薬剤学的製品及び獣医学的製品を除く、動物が摂取することができるあらゆる提供形態の全てのタイプの製品をはじめとする、最も広義的な意味を有する。他の食用製品の例としては、肉製品(例えば、肝臓ペースト、ソーセージ、サラミソーセージ、又は肉スプレッド)、チョコレートスプレッド、具材(例えば、トリュフ、クリーム)、及びフロスティング(frosting)、チョコレート、お菓子類(例えば、キャラメル、フォンダン(fondant)又はタフィー(toffee))、焼菓子(baked good)(ケーキ、ペストリー)、ソース及びスープ、フルーツジュース、コーヒークリーム(coffee whitener)がある。特に、興味深い食用製品は、栄養補助食品(dietary supplement)と離乳食(infant formula)である。また、本発明の一態様において、栄養補助食品は、ヒトの健康に医薬的効能を有する食品抽出物として公知となった機能性食品(nutraceutical)を含む。動物用飼料も本発明の範囲に含まれる。本発明の組成物は、他の食品製品の成分としても使用することができる。
【0068】
また、本発明は、炎症性腸疾患の予防用又は治療用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0069】
また、本発明は、炎症性腸疾患の予防用又は治療用製剤を製造するための前記3種の菌株を有効成分として構成される組成物の使用を提供し、本発明は、炎症性腸疾患の予防用又は治療用製剤を製造するための前記3種の菌株を有効成分として本質的に構成される組成物の使用を提供する。
【0070】
また、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む炎症性腸疾患の治療方法を提供する。
【0071】
また、本発明は、抗炎症用製剤を製造するためのラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の使用を提供する。
【0072】
また、本発明は、抗炎症用製剤を製造するための前記3種の菌株を有効成分として構成される組成物の使用を提供し、抗炎症用製剤を製造するための前記3種の菌株を有効成分として本質的に構成される組成物の使用を提供する。
【0073】
また、本発明は、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む組成物の有効量を、これを必要とする個体に投与する段階を含む炎症抑制方法を提供する。
【0074】
本発明における「抗炎症」とは、免疫細胞の浸潤、炎症誘発性サイトカイン、プロスタグランジン、及び一酸化窒素(NO)等の炎症誘発性因子の分泌等の分子細胞的炎症反応を抑制し、紅斑、角質化、皮膚の厚さの増加、充血、発熱、痛み等の症状を予防、緩和、又は改善することを意味する。
【0075】
本発明の前記「炎症抑制」とは、記載された前記抗炎症のように、免疫細胞の浸潤、炎症誘発性サイトカイン、プロスタグランジン、及び一酸化窒素(NO)等の炎症誘発性因子の分泌等の分子細胞的炎症反応を抑制し、紅斑、角質化、皮膚の厚さの増加、充血、発熱、痛み等の症状を予防、緩和、又は改善することを意味する。
【0076】
本発明の前記「有効量」とは、個体に投与したときに、炎症及び/又は炎症性腸疾患の改善、治療、予防、検出、診断、又は炎症及び/又は炎症性腸疾患の抑制又は減少の効果を示す量を意味し、前記「個体」とは、動物、好ましくは哺乳動物、特にヒトを含む動物であってよく、動物に由来する細胞、組織、器官等であってもよい。前記個体は、前記効果が必要な患者(patient)でもよい。
【0077】
本発明の前記「治療」とは、炎症及び/又は炎症性腸疾患、又は炎症及び/又は炎症性腸疾患の症状を改善させることを包括的に示し、これは、炎症及び/又は炎症性腸疾患の治癒、実質的予防、又は状態の改善を含んでもよく、前記疾患をはじめとする一つの症状又はほとんどの症状の緩和、治癒、予防を含むが、これに制限されるものではない。
【発明の効果】
【0078】
本発明の特有の3種の乳酸菌の組み合わせを含む組成物は、炎症性腸疾患(IBD)の予防及び治療の効果が顕著であり、特に、これらの効果は、公知のIBD治療薬(一例として、スルファサラジン)と比較しても薬理的に優れている。さらに、本発明の組成物は、プロバイオティクス組成物である特性上、副作用の危険性が非常に少ない安全な組成物として大きな利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【
図1】
図1は、Lactobacillus johnsonii IDCC9203(No.6)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(No.7)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(No.14)の個々の菌株と、これらの乳酸菌3種の混合物(「混合体」で表示)、同種のタイプ(Type)菌株混合物(Lactobacillus johnsonii KCTC 3801T、Lactobacillus plantarum KCTC 3108T、Bifidobacterium animalis ssp. lactis IDCC KCTC 3219T)と、をそれぞれ処理し、LPS処理によってRaw 264.7細胞で増加されたTNF-αに対する抑制効果を比較した結果を示す(DEX:デキサメタゾン)。
【
図2】
図2は、本発明の3種の乳酸菌製剤の処理によって、LPS処理によってRaw 264.7細胞で増加されたIL-6の抑制が確認された結果を示す。
【
図3】
図3は、本発明の組成物と同種関係にあるタイプ菌株の混合物(Lactobacillus johnsonii KCTC 3801T、Lactobacillus plantarum KCTC 3108T、Bifidobacterium animalis ssp. lactis IDCC KCTC 3219T)を、LPS処理されたRaw 264.7細胞に投与し、IL-6水準の変化の程度を確認した結果を示す。
【
図4】
図4は、本発明の3種の乳酸菌製剤の処理によって、LPS処理によってRaw 264.7細胞で増加されたIL-1βの抑制を確認した結果を示す。
【
図5】
図5は、本発明の組成物と同種関係にあるタイプ菌株の混合物(Lactobacillus johnsonii KCTC 3801T、Lactobacillus plantarum KCTC 3108T、Bifidobacterium animalis ssp. lactis IDCC KCTC 3219T)を、LPS処理されたRaw 264.7細胞に投与し、IL-1β水準の変化の程度を確認した結果を示す。
【
図6】
図6は、Lactobacillus johnsonii IDCC9203(No.6)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(No.7)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(No.14)菌株をはじめとし、様々な個別の乳酸菌株をLPS処理されたRaw 264.7細胞に投与し、NO(窒素酸化物)に対する抑制能力を確認した結果を示す。
【
図7】
図7は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合のDAIスコアを投与容量別に示し、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図8】
図8は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸の長さを観察した画像であり、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図9】
図9は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸の長さを測定した結果を投与容量別に示し、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図10】
図10は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸の断面組織を観察した画像であり、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図11】
図11は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸組織の損傷に対する組織学的スコアを比較的に示したものであり、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図12】
図12は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸内のTNF-α水準を測定した結果を投与容量別に示し、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図13】
図13は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸内のIL-1β水準を測定した結果を投与容量別に示し、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図14】
図14は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸内のIL-6水準を測定した結果を投与容量別に示し、対照群として公知のIBD治療剤であるスルファサラジンを使用した。
【
図15】
図15は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤又はV社の乳酸菌製剤を投与した場合のDAIスコアを示す。
【
図16】
図16は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤又はV社の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸の長さを観察した画像を示す。
【
図17】
図17は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤又はV社の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸の長さを測定した結果を示す。
【
図18】
図18は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤又はV社の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸組織の損傷に対する組織学的スコアを示す。
【
図19】
図19は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤又はV社の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸内TNF-α水準を測定した結果を示す。
【
図20】
図20は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤又はV社の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸内IL-1β水準を測定した結果を示す。
【
図21】
図21は、大腸炎の動物モデルに本発明の3種の乳酸菌製剤又はV社の乳酸菌製剤を投与した場合の大腸内のIL-6水準を測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0081】
但し、下記の実施例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記の実施例に限定されるものではない。
【0082】
実施例1:新規な組み合わせの菌株の混合物の発掘
幼児の糞便、キムチ、チーズから分離された複数の乳酸菌の菌株を対象に様々な側面から各菌株の個別的効能をスクリーニングし、また、複数の菌株を様々な組み合わせで利用し、様々な側面から効能評価を行った結果、本発明者らは、抗炎症効能におけるLactobacillus johnsonii IDCC9203(幼児の糞便から分離/受託番号KCTC 10923BP)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(キムチから分離/受託番号KCTC 13586BP)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(幼児の糞便から分離/受託番号KCTC 13587BP)の3種の菌株の組み合わせに対して、予期せぬ相乗効果のほかにも、炎症性腸疾患に対して薬理的側面における実質的治療効果が顕著であることを確認した。以下に提示するデータは、本願発明の3種の乳酸菌製剤の菌株の組み合わせによる予期しない発見を立証する。
【0083】
実施例2:本発明の3種の乳酸菌製剤(混合物)の抗炎症相乗効果の確認、及びその菌株の組み合わせの特異性の比較
【0084】
2-1. 本発明の3種の乳酸菌製剤(混合物)の構成菌株の組み合わせの特異性の確認、及び抗炎症効果の比較
Lactobacillus johnsonii IDCC9203(
図1では、No.6)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(
図1では、No.7)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(
図1では、No.14)のそれぞれを、MRS培地で2時間、37℃で培養した後、10,000×g、15分間の遠心分離を通じて菌体を収集した。菌体を1×PBS緩衝液で2回洗浄した後、試料を100℃で10分間加熱し死菌化(heat-killed)した後、抗炎症効果の分析に使用した。前記死菌化された各菌株をCFU基準で1:1:1の割合で混合し、前記3種の乳酸菌の死菌混合物を製造した。
【0085】
本願発明の3種の乳酸菌製剤(混合物)の構成菌株と同じ種(species)の異なる乳酸菌を利用し、本願発明と同様の方法で様々な混合物(すなわち、種は同じであり、具体的な株(strain)だけ異なる混合物)を製造し、効能を比較評価した。代表的な一例として、
図1、
図3、及び
図5は、本願発明と同種のタイプ(type)菌株の混合物(Lactobacillus johnsonii KCTC 3801
T、Lactobacillus plantarum KCTC 3108
T、Bifidobacterium animalis ssp. lactis IDCC KCTC 3219
T)に対する実験結果を示す。
【0086】
マウスマクロファージであるRAW 264.7細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Atlas、Fort Collins、CO、USA)、及び1%ペニシリン(Sigma-Aldrich、St. Lousi、MO、USA)を含むフェノールレッド不含ダルベッコ変法イーグル培地(phenol red-free Dulbecco’s modified Eagle medium(DMEM、Gibco-BRL、Gaithersburg、MD、USA))を使用して、37℃、5%CO
2の条件で培養した。本発明の3種の乳酸菌製剤(混合物)の炎症性サイトカインの生成に及ぼす影響を確認するために、前記培養したRaw 264.7細胞をスクレイパー(scrapper)又はトリプシン処理にて回収した後、15mLファルコンチューブに入れ、500rpmで5分間遠心分離を行った。上澄み液を除去した後、1mLの完全培地(complete media)を入れて再懸濁させ、1mL当たりの細胞数を計数した。6ウェルプレートの各ウェルに希釈した細胞液を2mLずつ入れ、24時間終夜(overnight)培養した。6ウェルプレートの各ウェルの培地を吸引(suction)した後、PBSで洗浄した。新しい培地を2mLずつ分注した後、すべてのウェルにLPSを4μLずつ(最終LPS濃度は2μL/mL)処理し、1回目のウェルには1mMデキサメタゾン(dexamethasone)を陽性対照群(positive control)として20μL(最終濃度10μM/mL)処理した。陰性対照群(negative control)としてPBSを処理し、残りのウェルにはLPSを処理し、本発明の3種の乳酸菌製剤を1×10
5~1×10
7細胞/mLの濃度別に処理した後、24時間終夜培養を行った。各ウェルの培養液を15mLファルコンチューブに移し入れた後、9,500rpmで5分間遠心分離した。各チューブの上澄み液を別々に回収してサイトカインの実験に使用した。炎症性サイトカイン(inflammatory cytokine)として代表的にTNF-α、IL-6、IL-1βの生成に対する抑制の程度を、ELISAキット(R&D system)を使用し確認した。実験の結果、本発明の3種の乳酸菌製剤(混合物)を処理した場合、これを構成する個々の菌株を単独に使用する場合に比べ、炎症性サイトカイン生成の抑制効果(すなわち、抗炎症効果)が顕著に上昇することを確認した。これを示す代表的な一例として、
図1に示したように、本発明の3種の乳酸菌製剤(
図1に「混合体」で表示)の処理により、TNF-α水準がデキサメタゾン処理群と同様の水準に減少する効果を示し、前記減少効果は、個々の菌株を単独処理した場合に比べて大幅に上昇したことを確認した。
【0087】
さらに、
図1、
図3、及び
図5に代表的に示したように、同種の異なる菌株を用いた混合物を利用する場合、TNF-α、IL-6、IL-1β生成の抑制効果が非常に少なかったことに比べて、本発明の3種の乳酸菌製剤(混合物)を用いる場合は、用量依存的に顕著な抗炎症効果が示されており、特に1X10
7細胞/mL投与群では、デキサメタゾンと同様ないし類似の水準の抗炎症効果が示された(
図1、
図2、及び
図4を参照)。
【0088】
2-2.構成菌株のNO生成抑制能力の比較
幼児の糞便、キムチ、及びチーズから分離された複数の乳酸菌の菌株を対象に、さまざまな側面における各菌株の個別的効能を比較した結果として、代表的に
図6は、NO(一酸化窒素)の生成抑制効果に対する個々の菌株の効能を比較実験結果にて示しており、本発明で使用されるLactobacillus johnsonii IDCC9203(
図1及び
図6では、No.6)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(
図1及び
図6では、No.7)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(
図1及び
図6では、No.14)を含む代表的な複数の菌株に対する実験結果を比較的に示す。
【0089】
簡単に述べると、実験方法は以下の通りである。各乳酸菌を上述した一般的な培養方法で培養し、培養終了後に遠心分離を行って菌体を収得し、100℃で15分間熱処理する方式にて死菌化(heat-killed)した。RAW 264.7細胞(1×105/mL)をDMEMで先に培養し、LPS(2μl/mL)及びそれぞれの熱処理された(heat-killed)菌体(1×105cell/mL)を処理した後、24時間インキュベーションを行った。NOの濃度は、グリース試薬(Griess試薬)(Sigma、USA)を用いて、製造会社のプロトコルに従って細胞培養液の上清み液中の亜硝酸塩の量を測定することにて調査した。上述した通りに処理し、かつ24時間のインキュベーションができたRaw 264.7細胞培地から収得した150μLの細胞培養液上清み液と、150μLグリース試薬とを混合した後、1000×gで10分間遠心分離を行い、常温で10分間培養した。吸光度は、マイクロプレートリーダーを用いて595nmで測定し、亜硝酸ナトリウム(sodium nitrite)を通じて形成された検量線(calibration curve)を基準にして比較した。
【0090】
本発明の構成物であるLactobacillus johnsonii IDCC9203(
図1及び
図6では、No.6)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(
図1及び
図6では、No.7)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(
図1及び
図6では、No.14)は、他の乳酸菌の菌株に比べてNO生成抑制力が顕著に優れていた(
図6参照)。
【0091】
実施例3:本発明の3種の乳酸菌生菌製剤のin vivo IBD(inflammatory bowel disease)の治療効能の確認、及びIBD治療剤化合物であるスルファサラジン(sulfasalazine)との効能比較
【0092】
実験方法
1)本発明の3種の乳酸菌生菌製剤の製造
実験に使用された本発明の3種の乳酸菌生菌製剤は、Lactobacillus johnsonii IDCC9203(KCTC 10923BP)、Lactobacillus plantarum IDCC3501(KCTC 13586BP)、及びBifidobacterium animalis subspecies lactis IDCC4301(KCTC 13587BP)の3つの生菌菌株を、CFU(colony-forming unit)基準で1:1:1の割合で混合して製造した。各生菌菌株は、2x1012CFU/gずつ含有させた。それぞれのバクテリアは、対数増殖期(exponential phase)になるまで、37℃で16時間、成長培地で培養した後、凍結乾燥機で前記細菌のペレットを保管しつつ凍結乾燥させた(真空下で-80℃の条件、終夜)。凍結乾燥された本発明の3種の乳酸菌製剤は、使用時まで4℃で保管した。
【0093】
2)実験動物
雌BALB/cマウス(8週齢)をOrient Bio(Seongnam、Republic of Korea)から購入した。ケージ当たり5匹の動物を、12/12h明(light)/暗(dark)サイクルの環境制御施設(温度22℃±2℃、湿度55%±5%)に収容させた。動物の管理及び治療は、「National Institutes of Health Animal Research and Care」が制定したガイドラインに従って行われており、Ildong Pharmaceutical Co.、Ltd社の動物実験倫理委員会(Institutional Animal Care and Use Committee、承認番号:A1611-2)からの承認を受けた。
【0094】
3)マウス大腸炎モデル
DSS(分子量36-50kDa/MP biochemicals、Santa Ana、CA、USA)によって誘導されたマウス大腸炎モデルを本研究に使用した。7日間の適応期間の後、表1に示したようにマウスを7個の群に分け(1群当たりマウス10匹ずつ)、初期体重(BW)の平均を同様に調節した。DSSを飲水に3.5%(w/v)の濃度で溶解させ、正常群(Normal)を除くすべてのマウスに0日目(day-0)から8日目(day-8)まで供給した。動物は水と食物を自由に摂取した。
【0095】
担体群(vehicle group)マウスには、200μLの蒸留水(DW)が経口投与された。本発明の3種の乳酸菌製剤は、10
6CFU/mice/日数~10
9CFU/mice/日数の容量範囲で、陽性対照群としてスルファサラジン(Tokyo chemical industry、Tokyo、Japan)は、500mg/kg(BW)/日数の濃度で、それぞれDWに懸濁させた後、担体群と同じ体積と同じ方法で投与した。下記の表1は、各実験群及び対照群に対する物質の処理条件をまとめて示したことである。
【表1】
【0096】
それぞれのマウスに対して、1日に1回BW(体重)と大便状態を観察し、従来から公知の方法の通りに、下記の表2に記載の基準に基づいてDAI(disease activity index)スコアを算出した。下記の表2に基づいて計算することができる最大値は12であった。二酸化炭素ガスで殺処分した後、回盲部(ileocecal junction)から肛門までの大腸(結腸)を摘出し、長さを測定し、腸内の残留消化物を除去するためにPBS(phosphate buffered saline)で洗浄した。遠位結腸の3分の1を10%ホルムアルデヒド溶液で固定し、病理組織学的分析に使用した。遠位結腸組織の残りの3分の2は、炎症誘発性サイトカイン(proinflammatory cytokine)水準を測定するためのタンパク質の抽出に使用され、使用時まで-80℃で保管した。
【0097】
【0098】
4)組織学的分析
結腸組織を10%中性緩衝ホルムアルデヒド(neutral buffered formaldehyde)溶液で固定させ、通常の方法でパラフィン包埋(paraffin embedding)処理を行った。パラフィン包埋された組織切片(section)を4μmの厚さに切断し、ヘマトキシリン&エオシン(H&E)で染色した。H&E染色された大腸組織をNikon ECLIPSE 50i光学顕微鏡(Nikon、Tokyo、Japan)を使用して100x及び200xの倍率で観察し、表3(組織学的評価システム(Histological Scoring System))に記載のように、従来から公知のパラメータに基づいて、2人の病理学者が組織学的評価を行った。表3に基づいて3つのパラメータをそれぞれ合算し算出される最大スコア値は10であった。
【表3】
【0099】
5)大腸炎症性サイトカイン水準の測定
タンパク質分解酵素阻害剤(Sigma-Aldrich、St.Louis、MO、USA)を添加したRIPA buffer(Upstate、Temesula、CA、USA)を使用し、結腸タンパク質を抽出した。結腸組織にRIPA buffer300μLを添加した後、組織を氷上で1分間均質化させ、4℃で15分間、20,000gで遠心分離を行った。上澄み液を収集した後、ビシンコニン酸タンパク質アッセイ試薬キット(bicinchoninic acid protein assay reagent kit(Pierce、Rockford、IL、USA))を用いて定量化した。ELISAキット(R&D Systems、Minneapolis、MN、USA)を製造会社のプロトコルに従って利用し、大腸組織内のTNF-a、IL-1b、及びIL-6のような炎症誘発性サイトカイン水準を検出した。各サイトカインの値は、それぞれの結腸タンパク質サンプルの総量に対して補正された。
【0100】
6)統計分析
結果は、平均±標準誤差として提示され、それぞれの結果は、統計分析システムであるPrism 7(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)を使用して処理した。すべての結果は、最少3回の独立した実験の平均で示された。担体群(vehicle group)と各治療群間の統計的比較は、一元配置分散分析(one-way analysis of variance)及び後続するダネットの検定(Dunnett’s test)にて行われた。P値<0.05は、統計的に有意なものとして考えた。
【0101】
実験結果
3-1.in vivoでの大腸炎の症状に対する本発明の3種の乳酸菌製剤の効果
大腸炎の重症度を確認するために、1日に1回ずつ各マウスのBWと排泄の状態を観察し、DAIスコアを記録した。マウスに提供されたDSSの量が増加するにつれて血便及び下痢の発生頻度が増加した反面、BW(body weight、体重)は次第に減少した。担体群においては、実験4日目からDAIスコアが継続的に上昇することが分かった。本発明の3種の乳酸菌製剤の投与は、容量依存的にDAIスコアを減少させ(
図7を参照)、体重減少防止、排泄物の外観の改善、及び血便の改善効果を示した。本発明の3種の乳酸菌製剤を10
8CFU/mice/日数又は10
9CFU/mice/日数の用量で投与した群のDAIスコアは、スルファサラジン投与群のDAIスコアと同様であった。
【0102】
大腸炎を誘発したマウスにおいては、大腸の長さが正常群より短かった。これらの大腸の長さの短縮症状は、本発明の3種の乳酸菌製剤により用量依存的に防止されており、本発明の3種の乳酸菌製剤10
8CFU/mice/日数又は10
9CFU/mice/日数の容量の投与群とスルファサラジン投与群の間で同じ効果の様相を示した(
図8及び
図9を参照)。
【0103】
3-2.本発明の3種の乳酸菌製剤が大腸組織学的パラメータに及ぼす影響
DSSで誘発させた大腸炎の組織学的損傷重症度を評価するために、顕微鏡を使用し、H&E染色された結腸の組織を観察し、組織学的スコア(histologic score)を測定した。
図10及び
図11に示したように、担体群において、粘膜及び粘膜下組織内の炎症細胞の浸潤、深刻な腸陰窩の損傷、杯細胞(goblet cell)、及び上皮細胞の消失が観察された。また、組織学的スコアは7.2±0.6に増加した。一方、スルファサラジン投与群における組織学的スコアは急激に減少した。本発明の3種の乳酸菌製剤処理群においては、組織学的スコアが用量依存的に減少した。特に、本発明の3種の乳酸菌製剤の10
8CFU/mice/日数の投与群及び10
9CFU/mice/日数の投与群における大腸損傷の組織学的スコアが顕著に減少しており(それぞれ5.2±0.5及び4.9±0.6)、これはスルファサラジン投与群と同様の水準であった(4.5±0.5)。
【0104】
3-3.大腸における炎症誘発性サイトカインの発現に対する本発明の3種の乳酸菌製剤の効果
炎症反応に関連する大腸サイトカイン水準を検出するために、ELISAを行った。代表的にTNF-α、IL-1β、及びIL-6の3つの炎症誘発性サイトカインの発現様相を調査しており、これらは大腸炎病理学において重要な役割をすることが知られている。
図12、
図13、及び
図14に示したように、前記各サイトカインの発現水準は、大腸炎の病理状態で増加した状態であったが、本発明の3種の乳酸菌製剤投与により用量依存的に減少した。陽性対照群として使用されたスルファサラジン投与群と比較しても、本発明の3種の乳酸菌製剤10
9CFU/mice/日数の投与群では同様の抑制効果を示した。
【0105】
実施例4:IBDに対して承認された既存の市販プロバイオティクス製品と、本発明の3種の乳酸菌製剤の炎症性腸疾患の治療効能との比較評価
実験方法
現在、韓国内で最初でありながら唯一の食品医薬品安全処から「腸の免疫を調節して腸の健康に役立つことができること」を個別に認められたプロバイオティクス製品であるV社の乳酸菌製剤を使用し、炎症性腸疾患(IBD)の改善に対する効果を、本発明の3種の乳酸菌生菌製剤(混合物)と比較した。前記V社の乳酸菌製剤は、1包に合計約4,500億個(4.5×1011菌数/1包)の生菌で構成されていることが知られており、具体的にLactobacillus paracasei DSM 24734、Lactobacillus plantarum DSM 24730、Lactobacillus acidophilus DSM 24735、Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus DSM 24734、Bipidobacterium longum DSM 24736、Bipidobacterium breve DSM 24732、Bipidobacterium infantis DSM 24737、Streptococcus salivarius subsp. thermophilus DSM 24731の8種の生菌菌株が混在していることとして知られている。
【0106】
試験群の構成は、下記の表4に示した通りに遂行し、この場合、本発明の3種の乳酸菌生菌混合物として上述した3種の菌株を、CFU基準で1:1:1の割合で混合したものを代表的に実験に用いた。下記の表4に記載の条件に加えて、残りの実験方法は前記実施例3と同様の方法で行われた。
【表4】
【0107】
実験結果
4-1.in vivoでの大腸炎の症状に対する効果の比較
実験結果
図15で示したように、本発明の3種の乳酸菌製剤及びV社の乳酸菌製剤投与群において、体重減少の防止、排泄物の外観の改善、及び血便の改善における効果が示され、それに応じてDAIスコアが減少した。特に、代表的に本発明の3種の乳酸菌製剤10
8CFUの投与群を比較してみると、V社の乳酸菌製剤5.4×10
8CFU群に比べてより低いCFU容量で投与したにもかかわらず、DAIスコアが前記V社の乳酸菌製剤と比較して同様の水準に減少した。
【0108】
さらに、
図16及び
図17に示したように、本発明の3種の乳酸菌製剤は、大腸炎による大腸の長さの短縮現像を防止ないし改善する効果が顕著であることを確認した。
【0109】
4-2.大腸組織学的パラメータ比較
【0110】
代表的に
図18に示したように、担体群において、粘膜及び粘膜下組織内の炎症細胞の浸潤、深刻な腸陰窩(crypt)損傷、杯細胞(goblet cell)及び上皮細胞の消失が観察された反面、本発明の3種の乳酸菌製剤処理群及びV社の乳酸菌製剤投与群においては、大腸損傷の組織学的スコアが減少し、大腸組織の回復効果を示した。特に、代表的に、本発明の3種の乳酸菌製剤10
8CFU群を比較してみると、V社の乳酸菌製剤5.4×10
8CFU群に比べて、より低いCFU容量で投与したにもかかわらず、V社の乳酸菌製剤と比較して同様の水準に大腸損傷の予防及び/又は治療の効果を示した。
【0111】
4-3.大腸における炎症誘発性サイトカイン(proinflammatory cytokine)の発現に対する効果の比較
代表的に
図19、
図20、
図21に示したように、炎症反応に関連する大腸サイトカイン水準を検出するためにELISAを行った結果、大腸炎病理状態において増加したTNF-α、IL-1β、及びIL-6の炎症誘発性サイトカインの発現が、本発明の3種の乳酸菌製剤処理群及びV社の乳酸菌製剤投与群で顕著に低くなることを確認した。特に、代表的に本発明の3種の乳酸菌製剤10
8CFU群を比較してみると、V社の乳酸菌製剤5.4×10
8CFU群に比べてより低いCFU容量で投与したにもかかわらず、V社の乳酸菌製剤と比較して同様の水準に大腸損傷の予防及び/又は治療の効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0112】
上述したように、本発明は、腸管免疫調節のための新規なプロバイオティック組成物に関するものであり、より詳細には、ラクトバチルスジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)、及びビフィズス菌アニマリス亜種ラクティス(Bifidobacterium animalis subspecies lactis)を有効成分として含む炎症抑制及び/又は炎症性腸疾患の予防、改善、又は治療用組成物に関するものである。
【0113】
本発明の特有の3種の乳酸菌の組み合わせを含む組成物は、炎症性腸疾患(IBD)の予防と治療の効果が顕著であり、特にこれらの効果は、公知のIBD治療薬(一例として、スルファサラジン)と比較しても薬理的に優秀である。さらに、本発明の組成物は、プロバイオティクス組成物である特性上、副作用の危険性が非常に少ない安全な組成物として大きな利点を有するので、産業上の利用可能性が高い。
【受託番号】
【0114】
寄託機関:韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)
受託番号:KCTC10923BP
寄託日付:2006.03.15
寄託機関:韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)
受託番号:KCTC13586BP
寄託日付:2018.07.17
寄託機関:韓国生命工学研究院生物資源センター(KCTC)
受託番号:KCTC13587BP
寄託日付:2018.07.17