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特許7434389二重内腔超音波カテーテル、システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】二重内腔超音波カテーテル、システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20240213BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20240213BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20240213BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240213BHJP
   A61B 17/22 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
A61B17/3207
A61B17/32 510
A61M25/14 518
A61M25/00 506
A61M25/14 512
A61B17/22
【請求項の数】 4
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022035190
(22)【出願日】2022-03-08
(62)【分割の表示】P 2019558375の分割
【原出願日】2017-04-28
(65)【公開番号】P2022078240
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2022-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591018693
【氏名又は名称】シー・アール・バード・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】1 Becton Drive Franklin Lakes NEW JERSEY 07417 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ホイ,ジェシカ・リン・ロール
(72)【発明者】
【氏名】ヤング,アマンダ
(72)【発明者】
【氏名】パーメンティアー,ウィリアム・イー
【審査官】鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06296620(US,B1)
【文献】特表2009-504338(JP,A)
【文献】特表2011-500286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3207
A61B 17/32
A61M 25/14
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内病変を修正するように構成されたカテーテル組立体を製造する方法であって、
第1の内腔を有する第1の管および第2の内腔を有する第2の管を含む押出し成形二重管を押出し成形するステップと、
前記押出し成形二重管の近位端部分において前記第1の管を削ぎ落し、前記第1の管を有さずに前記第2の管を含む前記押出し成形二重管の削がれた部分を提供する、ステップと、
前記押出し成形二重管の遠位端部分において前記第2の管をフレア形状にして、前記第2の管のフレア形状部分を提供するステップと、
少なくとも、前記押出し成形二重管の前記削がれた部分をマニホールドに配置するステップであって、前記押出し成形二重管の前記削がれた部分の前記第2の管を支持管に配置するステップと、その後、前記支持管を、これに隣接する、前記第1の管および前記第2の管を含む前記押出し成形二重管の部分とともに、前記マニホールドに配置するステップとを含む、少なくとも、前記押出し成形二重管の前記削がれた部分をマニホールドに配置するステップと、
前記第2の管の前記フレア形状部分に、寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料を配置するステップと、
前記第2の管の前記フレア形状部分に、寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料を配置するステップの後、前記押出し成形二重管の遠位端部に病変修正チップ部材を設置するステップと、を含み、
前記ガイドワイヤ管材料は、前記押出し成形二重管の前記第2の内腔を前記病変修正チップ部材まで延在させることにより、ガイドワイヤが前記病変修正チップ部材を通過することを可能にする、方法
【請求項2】
前記第2の管が、前記押出し成形二重管の前記第1の管の内部に配置され、前記第2の管と前記第1の管が、壁部を共有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも、前記押出し成形二重管の前記削がれた部分をマニホールドに配置する前記ステップの後、ガイドワイヤハブを前記支持管に取り付けるステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の内腔にコアワイヤを配置するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[0001]アテローム性動脈硬化は、脂肪、コレステロール、カルシウムなどの血液由来の物質を含む粥腫の一部に形成される、1つまたは複数の血管内病変を特徴とする。動脈病変などの血管内病変は、動脈内腔の壁に生じ、内腔を横切ってその反対側の壁まで構築される場合がある。最後の開存点は、動脈病変と動脈内腔の反対側の壁との境界に存在することが多い。血管形成術または粥腫切除術などのアテローム性動脈硬化向けの外科的処置を用いて、1つまたは複数の血管内病変で失われた開存性および血流を回復させることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
[0002]アテローム性動脈硬化の外科的処置は、1つまたは複数の管腔内装置(endoluminal device)を血管内病変へと進めて、血管内病変を修正(modify)することを含む場合がある。たとえば、血管形成術または粥腫切除術は、管腔内装置のガイドワイヤ内腔内のガイドワイヤを覆うようにオーバーザワイヤ(「OTW」)管腔内装置を血管内病変へと進めて、血管内病変を修正することを含む場合がある。しかし、OTW管腔内装置を血管内病変へと進めることにより、粗末に設計または製造された、管に入った管という設計のOTW管腔内装置では特に、装置の問題から外科的課題が生じる場合がある。たとえば、別個に押出し成形されたガイドワイヤ内腔を含むガイドワイヤ管が、OTW管腔内装置のシースの内壁に不十分に留められていると、ガイドワイヤ管のうち、シースから独立して動くことができる部分がねじれるなど、装置の問題が生じる恐れがある。本明細書では、いくつかの実施形態において、前述のことに対処する二重内腔カテーテル、システム、および方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0003】
[0003]本明細書では、いくつかの実施形態ではコアワイヤと、コアワイヤを含む押出し成形二重内腔と、押出し成形二重内腔の一部の周りに配置されるマニホールドとを含む、血管内病変を修正するように構成されたカテーテル組立体が提供される。コアワイヤは、超音波トランスデューサに振動結合するように構成された近位端部を含む。押出し成形二重内腔は、第1の内腔および第2の内腔を含む。コアワイヤは、第1の内腔内に配置され、第2の内腔は、ガイドワイヤを収容するように構成される。マニホールドは、少なくとも、押出し成形二重内腔の削がれた(skived)近位端部分の周りに配置され、削がれた部分は、第1の内腔を有さずに第2の内腔を含む。
【0004】
[0004]こうした実施形態では、第2の内腔は、押出し成形二重内腔の第1の内腔内に配置される。
[0005]こうした実施形態では、押出し成形二重内腔の削がれた部分の長さは、約35mm以下である。
【0005】
[0006]こうした実施形態では、押出し成形二重内腔の削がれた部分は、支持管の中に配置される。マニホールドは、支持管、削がれた部分、ならびにこれに隣接する、第1の内腔および第2の内腔を含む押出し成形二重内腔の部分の周りに配置される。
【0006】
[0007]こうした実施形態では、カテーテル組立体は、押出し成形二重内腔の遠位端部に設置されるチップ部材をさらに含む。押出し成形二重内腔の第2の内腔は、チップ部材まで延在して、ガイドワイヤがチップ部材を通過することを可能にする。
【0007】
[0008]こうした実施形態では、押出し成形二重内腔の遠位端部は、押出し成形二重内腔のフレア形状部分を含む。寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料が、フレア形状部分に配置されて、押出し成形二重内腔の第2の内腔をチップ部材まで延在させる。
【0008】
[0009]こうした実施形態では、カテーテル組立体は、コアワイヤの近位端部に超音波トランスデューサをさらに含む。
[0010]本明細書では、いくつかの実施形態ではカテーテル組立体と、超音波エネルギー生成機構とを含む、血管内病変を修正するように構成されたシステムも提供される。カテーテル組立体は、コアワイヤと、コアワイヤを含む押出し成形二重内腔と、押出し成形二重内腔の一部の周りに配置されるマニホールドとを含む。押出し成形二重内腔は、第1の内腔および第2の内腔を含む。コアワイヤは、第1の内腔内に配置され、第2の内腔は、ガイドワイヤを収容するように構成される。マニホールドは、少なくとも、押出し成形二重内腔の削がれた近位端部分の周りに配置され、削がれた部分は、第1の内腔を有さずに第2の内腔を含む。超音波エネルギー生成機構は、超音波発生装置および超音波トランスデューサを含む。コアワイヤは、超音波トランスデューサに振動結合するように構成された近位端部を含む。
【0009】
[0011]こうした実施形態では、第2の内腔は、押出し成形二重内腔の第1の内腔内に配置される。第2の内腔は、内腔壁の少なくとも一部を第1の内腔と共有する。
[0012]こうした実施形態では、押出し成形二重内腔の削がれた部分の長さは、約35mm以下である。
【0010】
[0013]こうした実施形態では、押出し成形二重内腔の削がれた部分は、支持管の中に配置される。マニホールドは、支持管、削がれた部分、ならびにこれに隣接する、第1の内腔および第2の内腔を含む押出し成形二重内腔の部分の周りに配置される。
【0011】
[0014]こうした実施形態では、システムは、押出し成形二重内腔の遠位端部に設置されるチップ部材をさらに含む。押出し成形二重内腔の第2の内腔は、チップ部材まで延在して、ガイドワイヤがチップ部材を通過することを可能にする。
【0012】
[0015]こうした実施形態では、押出し成形二重内腔の遠位端部は、押出し成形二重内腔のフレア形状部分を含む。寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料が、フレア形状部分に配置されて、押出し成形二重内腔の第2の内腔をチップ部材まで延在させる。
【0013】
[0016]こうした実施形態では、システムは、足踏みスイッチと、超音波発生装置および超音波トランスデューサを含む超音波エネルギー生成機構とを含むコンソールをさらに含む。足踏みスイッチは、超音波エネルギー生成機構を動作させるように、および動作停止させるように構成される。
【0014】
[0017]こうした実施形態では、システムは、足踏みスイッチと、超音波エネルギー生成機構の超音波発生装置とを含むコンソールをさらに含む。カテーテル組立体は、超音波エネルギー生成機構の超音波トランスデューサをさらに含む。足踏みスイッチは、超音波エネルギー生成機構を動作させるように、および動作停止させるように構成される。
【0015】
[0018]本明細書では、いくつかの実施形態ではコアワイヤと、コアワイヤを含む押出し成形二重管と、押出し成形二重管の一部の周りに配置されるマニホールドとを含む、血管内病変を修正するように構成されたカテーテル組立体も提供される。コアワイヤは、超音波トランスデューサに振動結合するように構成された近位端部を含む。押出し成形二重管は、第1の内腔を有する第1の管と、第2の内腔を有する第2の管とを含む。コアワイヤは、第1の内腔内に配置され、第2の内腔は、ガイドワイヤを収容するように構成される
。マニホールドは、少なくとも、押出し成形二重管の削がれた近位端部分の周りに配置され、削がれた部分は、第1の管を有さずに第2の管を含む。
【0016】
[0019]こうした実施形態では、第2の管は、押出し成形二重管の第1の管の中に配置される。第2の管は、第1の管の中に配置されると、管壁の少なくとも一部を第1の管と共有する。
【0017】
[0020]こうした実施形態では、押出し成形二重管の削がれた部分の第2の管は、支持管の中に配置される。マニホールドは、支持管、削がれた部分、ならびにこれに隣接する、第1の管および第2の管を含む押出し成形二重管の部分の周りに配置される。
【0018】
[0021]こうした実施形態では、システムは、押出し成形二重管の遠位端部に設置されるチップ部材をさらに含む。押出し成形二重管の第2の内腔は、チップ部材まで延在して、ガイドワイヤがチップ部材を通過することを可能にする。
【0019】
[0022]こうした実施形態では、押出し成形二重管の遠位端部は、第2の管のフレア形状部分を含む。寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料が、第2の管のフレア形状部分の中に配置されて、押出し成形二重管の第2の内腔をチップ部材まで延在させる。
【0020】
[0023]本明細書では、いくつかの実施形態ではカテーテル組立体と、超音波エネルギー生成機構とを含む、血管内病変を修正するように構成されたシステムも提供される。カテーテル組立体は、コアワイヤと、コアワイヤを含む押出し成形二重管と、押出し成形二重管の一部の周りに配置されるマニホールドとを含む。押出し成形二重管は、第1の内腔を有する第1の管と、第2の内腔を有する第2の管とを含む。コアワイヤは、第1の内腔内に配置され、第2の内腔は、ガイドワイヤを収容するように構成される。マニホールドは、少なくとも、押出し成形二重管の削がれた近位端部分の周りに配置され、削がれた部分は、第1の管を有さずに第2の管を含む。超音波エネルギー生成機構は、超音波発生装置および超音波トランスデューサを含む。コアワイヤは、超音波トランスデューサに振動結合するように構成された近位端部を含む。
【0021】
[0024]こうした実施形態では、第2の管は、押出し成形二重管の第1の管の中に配置される。第2の管は、第1の管の中に配置されると、管壁の少なくとも一部を第1の管と共有する。
【0022】
[0025]こうした実施形態では、押出し成形二重管の削がれた部分の第2の管は、支持管の中に配置される。マニホールドは、支持管、削がれた部分、ならびにこれに隣接する、第1の管および第2の管を含む押出し成形二重管の部分の周りに配置される。
【0023】
[0026]こうした実施形態では、システムは、押出し成形二重管の遠位端部に設置されるチップ部材をさらに含む。押出し成形二重管の第2の内腔は、チップ部材まで延在して、ガイドワイヤがチップ部材を通過することを可能にする。
【0024】
[0027]こうした実施形態では、押出し成形二重管の遠位端部は、第2の管のフレア形状部分を含む。寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料が、第2の管のフレア形状部分の中に配置されて、押出し成形二重管の第2の内腔をチップ部材まで延在させる。
【0025】
[0028]こうした実施形態では、システムは、足踏みスイッチと、超音波発生装置および超音波トランスデューサを含む超音波エネルギー生成機構とを含むコンソールをさらに含む。足踏みスイッチは、超音波エネルギー生成機構を動作させるように、および動作停止させるように構成される。
【0026】
[0029]こうした実施形態では、システムは、足踏みスイッチと、超音波エネルギー生成機構の超音波発生装置とを含むコンソールをさらに含む。カテーテル組立体は、超音波エネルギー生成機構の超音波トランスデューサをさらに含む。足踏みスイッチは、超音波エネルギー生成機構を動作させるように、および動作停止させるように構成される。
【0027】
[0030]本明細書では、いくつかの実施形態では押出し成形二重管を押出し成形するステップと、押出し成形二重管の一部を削ぐステップと、押出し成形二重管の別の部分をフレア形状にするステップと、マニホールドの中に押出し成形二重管を配置するステップと、押出し成形二重管にチップ部材を設置するステップとを含む、血管内病変を修正するように構成されたカテーテル組立体を製造する方法も提供される。押出し成形二重管を押出し成形するステップは、第1の内腔を有する第1の管および第2の内腔を有する第2の管を押出し成形するステップを含む。第1の内腔は、その内部にコアワイヤを配置するように構成される。第2の内腔は、ガイドワイヤを収容するように構成される。押出し成形二重管の一部を削ぐステップは、押出し成形二重管の近位端部分において第1の管を削ぎ落し、第1の管を有さずに第2の管を含む押出し成形二重管の削がれた部分を提供するステップを含む。押出し成形二重管の他の部分をフレア形状にするステップは、押出し成形二重管の遠位端部分において第2の管をフレア形状にして、第2の管のフレア形状部分を提供するステップを含む。マニホールドの中に押出し成形二重管を配置するステップは、少なくとも押出し成形二重管の削がれた部分をマニホールドの中に配置するステップを含む。押出し成形二重管にチップ部材を設置するステップは、押出し成形二重管の遠位端部に病変修正チップ部材を設置するステップを含む。
【0028】
[0031]こうした実施形態では、第2の管は、押出し成形二重管の第1の管の内部に配置される。第2の管と第1の管は、壁部を共有する。
[0032]こうした実施形態では、方法は、押出し成形二重管の削がれた部分の第2の管を支持管の中に配置するステップをさらに含む。その後、削がれた部分を含む支持管は、これに隣接する、第1の管および第2の管を含む押出し成形二重管の部分とともに、マニホールドの中に配置される。
【0029】
[0033]こうした実施形態では、方法は、ガイドワイヤハブを支持管に取り付けるステップをさらに含む。
[0034]こうした実施形態では、方法は、第2の管のフレア形状部分に、寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料を配置するステップをさらに含む。その後、チップ部材が、押出し成形二重管の遠位端部に設置される。
【0030】
[0035]こうした実施形態では、方法は、第1の内腔にコアワイヤを配置するステップをさらに含む。
[0036]本明細書に提示される概念の上記その他の特徴は、図面、説明、および添付の特許請求の範囲を参照すると、よりよく理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】[0037]いくつかの実施形態によるシステムを示す概略図である。
図2】[0038]いくつかの実施形態によるカテーテル組立体を示す概略図である。
図3】[0039]いくつかの実施形態によるカテーテル本体を示す概略図である。
図4】[0040]いくつかの実施形態によるカテーテル組立体のマニホールド部分の構造を示す概略図である。
図5】[0041]いくつかの実施形態によるカテーテル組立体のチップ部分の構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[0042]いくつかの特定の実施形態をより詳細に提示する前に、本明細書に提示される特定の実施形態は、本明細書に提示される概念の範囲を限定しないことを理解されたい。本明細書に提示される特定の実施形態は、その特定の実施形態から容易に切り離すことができかつ本明細書に提示される複数の他の実施形態のうちの任意の実施形態の特徴と任意選択で組み合わせまたは置換することができる特徴を有する場合があることも理解されたい。
【0033】
[0043]本明細書で使用する術語に関しては、各術語はいくつかの特定の実施形態を説明するためのものであり、本明細書に提供される概念の範囲を限定しないということも理解されたい。別段の指示がない限り、序数(たとえば第1の、第2の、第3の、など)は、複数の特徴またはステップの群の中の、互いに異なる特徴またはステップを区別または識別するために使用され、順番の限定または数的な限定を加えるものではない。たとえば、「第1の」、「第2の」、および「第3の」特徴またはステップは、必ずしもその順序で現れる必要はなく、こうした特徴またはステップを含む特定の実施形態は、これら3つの特徴またはステップに必ずしも限定される必要はない。別段の指示がない限り、「左」、「右」、「前」、「後ろ」、「上」、「下」、「順方向」、「逆方向」、「時計回り」、「反時計回り」、「上に」、「下に」などの任意の表記、または「上部」、「下部」、「後部」、「前部」、「垂直」、「水平」、「近位」、「遠位」などの他の同様の用語は、便宜的に使用されており、たとえばいかなる特定の固定的な位置、向き、または方向も意味するものではないことも理解されたい。むしろ、こうした表記は、たとえば相対的な位置、向き、または方向を示すために使用される。文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、「a」、「an」、および「the」という単数形は、複数形を含むということも理解されたい。
【0034】
[0044]別段の定めがない限り、本明細書に用いるすべての技術的用語および科学的用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味をもつ。
[0045]アテローム性動脈硬化の外科的処置は、1つまたは複数の管腔内装置を血管内病変へと進めて、血管内病変を修正することを含む場合がある。たとえば、血管形成術または粥腫切除術は、管腔内装置のガイドワイヤ内腔内のガイドワイヤを覆うようにオーバーザワイヤ(「OTW」)管腔内装置を血管内病変へと進めて、血管内病変を修正することを含む場合がある。しかし、OTW管腔内装置を血管内病変へと進めることにより、粗末に設計または製造された、管に入った管という設計のOTW管腔内装置では特に、装置の問題から外科的課題が生じる場合がある。たとえば、別個に押出し成形されたガイドワイヤ内腔を含むガイドワイヤ管が、OTW管腔内装置のシースの内壁に不十分に留められていると、ガイドワイヤ管のうち、シースから独立して動くことができる部分がねじれるなど、装置の問題が生じる恐れがある。本明細書では、いくつかの実施形態において、前述のことに対処する二重内腔カテーテル、システム、および方法を提供する。
【0035】
[0046]図1には、いくつかの実施形態によるシステム100を示す概略図が提示してある。システム100は、血管内病変の通過、血管内病変のアブレーション、または血管内病変の通過とアブレーションの組合せを含め、血管内病変を修正するように構成されたカテーテル組立体160に結合されるコンソール110を含む。
【0036】
[0047]図1に示すように、システム100は、コンソール110を含む。コンソール110は、システム100および種々のサブシステム、ならびにそれらの機能を監視および制御するための機器をシステム操作者に提供する。コンソール110は、超音波発生装置120および超音波トランスデューサ130を含む超音波エネルギー生成機構を含む。別法として、コンソール110は超音波発生装置120を含み、カテーテル組立体160は超音波トランスデューサ130を含み、超音波エネルギー生成機構は、コンソール110とカテーテル組立体160に分けられる。超音波エネルギー生成機構は、電流を振動エネルギーに変換するように構成される。たとえば、超音波発生装置120は、交流電流(たとえば商用電源に関連付けられた電流)を高周波電流(たとえば、超音波トランスデューサ130の動作周波数と同等の周波数をもつ電流)に変換するように構成され、超音波トランスデューサ130は、高周波電流を振動エネルギー(たとえば20.5kHz±500Hzなど、>20kHz)に変換するように構成される。
【0037】
[0048]コンソール110は、カテーテル組立体160のコアワイヤ192(たとえばニチノールのコアワイヤ)を動作させる、動作停止させるなど、システム100を動作させるように、および動作停止させるように構成された足踏みスイッチ140を任意選択でさらに含む。コアワイヤ192は、カテーテル組立体160のシース180のコアワイヤ内腔183に配置される。コアワイヤ192の近位端部は、超音波トランスデューサ130に振動結合され(vibrationally coupled)、コアワイヤ192の遠位端部は、病変修正チ
ップ部材194に振動結合される。したがって、コアワイヤ192は、血管内病変を修正するために、超音波トランスデューサ130からチップ部材194へと振動エネルギーを伝達するように構成される。システム100に電源が入っているが動作していないとき、足踏みスイッチ140を使用してシステム100を動作させ、それによってカテーテル組立体160の超音波トランスデューサ130、コアワイヤ192、およびチップ部材194を動作させる。システム100に電源が入っており動作しているとき、足踏みスイッチ140を使用してシステム100を動作停止させ、それによってカテーテル組立体160の超音波トランスデューサ130、コアワイヤ192、およびチップ部材194を動作停止させる。
【0038】
[0049]コンソール110は、任意選択で、カテーテル組立体160のイリゲーションポート172にイリゲーション剤を注入するように構成された注入装置150をさらに含む。イリゲーション剤は、たとえば、血管内病変の修正処置(たとえば血管内病変の通過、血管内病変のアブレーションなど)を受けている解剖学的部位のイリゲーション、カテーテル組立体160のコアワイヤ192の冷却、シース180のガイドワイヤ内腔183のフラッシング、またはこれらの組合せのための無菌の液体(たとえば水、生理食塩水、ヘパリン加生理食塩水など)である。
【0039】
[0050]コンソール110は、任意選択で、足踏みスイッチ140と注入装置150の両方をさらに含む。こうした実施形態では、足踏みスイッチ140は、システム100が足踏みスイッチ140で動作されると注入装置150を動作させ、システム100が足踏みスイッチ140で動作停止されると注入装置150を動作停止させるように、さらに構成される。
【0040】
[0051]図2には、いくつかの実施形態によるカテーテル組立体160を示す概略図が提示してある。カテーテル組立体160は、血管内病変の通過、血管内病変のアブレーション、または血管内病変の通過とアブレーションの組合せを含めて血管内病変を修正するように構成されたカテーテル本体275に結合されるハウジング270を含む。
【0041】
[0052]図2に示すように、ハウジング270は、イリゲーションポート172と、ハブ274と、超音波トランスデューサ130にハウジング270をロック(換言すれば、固定)するためのロックカラー276とを含む。超音波トランスデューサ130にハウジング270をロックすることにより、コアワイヤ192の近位端部が、血管内病変を修正するのに十分に、超音波トランスデューサ130に振動結合されることが確実となる。別法として、この場合もやはり、カテーテル組立体160が超音波トランスデューサ130を含み、これにより、超音波エネルギー生成機構がコンソール110とカテーテル組立体160に分けられる。こうした実施形態では、ハウジング270は、コアワイヤの近位端部においてハウジング270の内部に配置される超音波トランスデューサ130をさらに含み、それにより、図2に示すロックカラー276は不要になる。
【0042】
[0053]図3には、いくつかの実施形態によるカテーテル本体275を示す概略図が提示してある。カテーテル本体275は、血管内病変の通過、血管内病変のアブレーション、または血管内病変の通過とアブレーションの組合せを含め、血管内病変を修正するように構成された、シース180、マニホールド286、結合管287、支持管288、ガイドワイヤハブ289、およびコアワイヤ192を含む。
【0043】
[0054]図3に示すように、シース180は、コアワイヤ192を内部に配置するように構成された第1の内腔183(たとえばコアワイヤ内腔183)を有する第1の管382、およびガイドワイヤGを収容するように構成された第2の内腔185(たとえばガイドワイヤ内腔185)を有する第2の管384を含む押出し成形二重管で形成されるか、またはそれを含む。押出し成形二重管の第1の管382および第2の管384は、それぞれ第1の内腔183および第2の内腔185を含むので、本明細書では、シース180も、押出し成形二重内腔から形成される、またはそれを含むと言われる。いくつかの文脈ではシース180について説明され、いくつかの他の文脈では押出し成形二重管(たとえば図4の押出し成形二重管480)について説明されるが、シース180と押出し成形二重管はいくつかの特徴を共有しており、したがって、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、シース180についての説明は押出し成形二重管にも当てはまり、押出し成形二重管についての説明はシース180にも当てはまることを理解されたい。
【0044】
[0055]押出し成形二重管の第2の管384は、押出し成形二重管の第1の管382の内部に配置される。言い換えれば、押出し成形二重内腔の第2の内腔185は、押出し成形二重内腔の第1の内腔183の内部に配置される。さらに、第2の管384が押出し成形二重管の第1の管382の内部に配置されているとき、押出し成形二重管の第2の管384は、管壁の少なくとも一部を第1の管382と共有する。管壁が共有される場合、第1の管382と第2の管384は、その相当な長さに沿って互いに固定され、第2の管384を第1の管382に留める(tack)必要がなくなる。本明細書に提示されるように、別個に押出し成形されたガイドワイヤ管を管腔内装置のシースの内壁に不十分に留めていると、ガイドワイヤ管のうち、シースから独立して動くことができる部分がねじれるなど、装置の問題が生じる恐れがある。
【0045】
[0056]押出し成形二重管は、第1の管382と第2の管384の両方を含む単一の押出し成形品であることを理解されたい。押出し成形二重管は、第1の管382に固定された第2の管384を既に含んでいるので、第1の管382に第2の管384を固定するために、取り付け、留め、接合するなどの後のステップを実施する必要はなく、本明細書に提示されるように、この後のステップは、ガイドワイヤ管のうち、シースから独立して動くことができる部分がねじれるなど、装置の問題を引き起こす恐れがある。
【0046】
[0057]マニホールド286は、シース180の内腔を二股に分けるように構成され、それにより、コアワイヤ内腔183は結合管287へと延在し、ガイドワイヤ内腔185は支持管288へと延在し、この支持管288は、それに結合されるガイドワイヤハブ289において開口している。こうした構成により、カテーテル組立体160にOTWタイプのカテーテルが提供される。前述のことにかかわらず、ラピッドエクスチェンジ(「RX」)またはショートラピッドエクスチェンジ(「SRX」)カテーテル組立体を提供するように、カテーテル組立体160への変更が加えられてもよい。しかし、こうした実施形態では、シース180の押出し成形二重管部分の長さは、本明細書に記載されているものよりも短くなる場合がある。
【0047】
[0058]結合管287は、カテーテル本体275をハウジング270に結合するように構成される。結合管287は、シース180のコアワイヤ内腔183の伸長部を含む。したがって、カテーテル組立体160のコアワイヤ192は、シース180の遠位端部の振動結合チップ部材194からシース180の近位端部のマニホールド286へと延在し、マニホールド286およびその内部に配置された結合管287の少なくとも一部を通り、結合管287の残りの部分を通り、ハウジング270を通って、振動結合された超音波トランスデューサ130へと延在する。
【0048】
[0059]図4には、いくつかの実施形態によるカテーテル組立体160のマニホールド部分の構造を示す概略図が提示してある。
[0060]やはりマニホールド286は、シース180の内腔を二股に分けるように構成され、それにより、コアワイヤ内腔183は結合管287へと延在し、ガイドワイヤ内腔185は支持管288へと延在する。図4に示すように、第1の管382を有さずに第2の管384を含む、シース180の削がれた近位端部分481が、支持管288の中に配置され、この支持管288は、マニホールド286の中に配置され、それにより、ガイドワイヤ内腔185は、ガイドワイヤハブ289を通じてアクセスできるように、支持管288へと延在する。言い換えれば、マニホールド286は支持管288の周りに配置され、この支持管288は、少なくとも、シース180の削がれた近位端部分481の周りに配置され、それにより、ガイドワイヤ内腔185は、ガイドワイヤハブ289を通じてアクセスできるように、支持管288へと延在する。加えて、マニホールド286は、これに隣接する、第1の管384および第2の管382を含むシース180の部分に当接し、またはその周りに配置される。
【0049】
[0061]本明細書に記載のように、シース180の削がれた部分481は、押出し成形二重管480の近位端部分において、第1の内腔183を囲む第1の管382の一部を削ぎ落し、第2の管384を削がれた部分481に残すことから得られる。シース180の削がれた部分481の長さは、約25mm以下など、約35mm以下を含め、約50mm以下である。たとえば、シース180の削がれた部分の長さは、約31mm以下である。
【0050】
[0062]図5には、いくつかの実施形態によるカテーテル組立体160のチップ部分の構造を示す概略図が提示してある。
[0063]図5に示すように、カテーテル組立体160のチップ部分は、シース180の遠位端部に設置されるチップ部材194(たとえば金属チップ部材194)を含む。シース180の第2の内腔185(たとえばガイドワイヤ内腔185)は、チップ部材194まで延在して、ガイドワイヤがチップ部材194を通過することを可能にする。シース180の遠位端部、具体的には第2の管384の遠位端部は、フレア形状部分を含む。第2の管384のフレア形状部分は、約3~5mmを含め、約2~6mm、たとえば約4mmまで広げられる。1本のガイドワイヤ管材料582の、寸法を一致させた、または狭窄した部分583が、第2の管384のフレア形状部分に配置されて、シース180の遠位端部にチップ部材194を設置することを可能にし、それにより、シース180の第2の内腔185は、ガイドワイヤ用チップ部材194まで延在する。
【0051】
[0064]図5には明確に示されていないが、シース180の遠位端部を含むシース180の遠位端部分は、テーパ付けされる。こうしたテーパを含まないカテーテル組立体160の実施形態では、第2の管384はフレア形状にされる必要はないか、または1本のガイドワイヤ管材料582を収容するほどフレア形状にされる必要はないことを理解されたい。さらに、1本のガイドワイヤ管材料582は、狭窄される必要はないか、またはこうした実施形態の場合ほど狭窄される必要はない。
【0052】
[0065]1本のガイドワイヤ管材料582は、ポリエーテルブロックアミドなど、生体適
合性ポリマーを含めた生体適合性材料、たとえばPebax(登録商標)で形成される。支持管288(図4を参照)は、同じかまたは異なる材料、ポリマー、またはポリエーテルブロックアミドで形成される。
【0053】
[0066]図4および図5を参照すると、カテーテル組立体160を製造する方法は、カテーテル組立体160のマニホールド部分およびチップ部分の構造を含む。カテーテル組立体160のマニホールド部分を構築するステップは、押出し成形二重管480を押出し成形するステップと、押出し成形二重管480の一部を削ぐステップと、押出し成形二重管480をマニホールド286の中に配置するステップとを含む。カテーテル組立体160のチップ部分を構築するステップは、押出し成形二重管480の一部をフレア形状にするステップと、押出し成形二重管480にチップ部材194を設置するステップとを含む。いくつかの実施形態では、方法は、押出し成形二重管480の第1の内腔183にコアワイヤ192を配置するステップをさらに含む。
【0054】
[0067]マニホールド部分を構築するステップに関して、押出し成形二重管480を押出し成形するステップは、生体適合性材料を押出し成形して、第1の内腔183を有する第1の管382および第2の内腔185を有する第2の管384を含む押出し成形二重管480を形成するステップを含む。第2の管384は、押出し成形二重管480の第1の管382の内部に配置され、第2の管384と第1の管382は、押出し成形二重管480の壁部を共有する。第1の内腔183は、その内部にコアワイヤ192を配置するように構成され、第2の内腔185は、ガイドワイヤを収容するように構成される。押出し成形二重管480の一部を削ぐステップは、押出し成形二重管480の近位端部分において第1の管382を削ぎ、押出し成形二重管480の削がれた部分481を提供するステップを含み、この削がれた部分481は、第1の管382を有さずに第2の管384を含む。押出し成形二重管480をマニホールド286に配置するステップは、押出し成形二重管480の削がれた部分481の第2の管384を支持管288の中に配置するステップを含む。その後、削がれた部分481の第2の管384を含む支持管288は、任意選択で、これに隣接する第1の管382および第2の管384を含む押出し成形二重管480の部分とともに、マニホールド286の中に配置される。方法は、ガイドワイヤハブ289を支持管288に取り付けるステップをさらに含む。
【0055】
[0068]押出し成形二重管480を押出し成形して、管壁が共有された状態で第1の管382の内部に第2の管384を形成することにより、第2の管384を第1の管382に留める必要がなくなる。本明細書に提示されるように、別個に押出し成形されたガイドワイヤ管を管腔内装置のシースの内壁に不十分に留めていると、ガイドワイヤ管のうち、シースから独立して動くことができる部分がねじれるなど、装置の問題が生じる恐れがある。さらに、別個に押出し成形されたガイドワイヤ管をシースの内壁に留めるには、本明細書に記載の押出し成形二重管480を押出し成形するよりも多くのステップが必要とされ、したがってより多くの時間が必要とされる。
【0056】
[0069]チップ部分を構築するステップに関して、押出し成形二重管480の一部をフレア形状にするステップは、押出し成形二重管480の遠位端部分において第2の管384をフレア形状にして、第2の管384のフレア形状部分を提供するステップを含む。押出し成形二重管480にチップ部材194を設置するステップは、第2の管384のフレア形状部分に、寸法を一致させた1本のガイドワイヤ管材料582を配置するステップを含む。その後、金属の病変修正チップ部材194が、押出し成形二重管480の遠位端部に設置される。
【0057】
[0070]本明細書ではいくつかの特定の実施形態を提示し、またこれら特定の実施形態をいくらか詳細に提示してきたが、これら特定の実施形態は、本明細書に提示される概念の
範囲を限定するものではない。当業者にはさらなる改変および/または変更が明らかである場合があり、より広い態様では、これらの改変および/または変更も包含される。したがって、本明細書に提示される概念の範囲から逸脱しない限り、本明細書に提示される特定の実施形態からの逸脱がなされてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5