(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】荷役システム
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20240213BHJP
B61B 10/04 20060101ALI20240213BHJP
B60P 1/36 20060101ALI20240213BHJP
B65G 47/52 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B61B13/00 G
B61B10/04 F
B61B13/00 R
B61B13/00 A
B61B10/04 C
B60P1/36 D
B65G47/52 A
(21)【出願番号】P 2022035371
(22)【出願日】2022-03-08
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】天井 雅康
(72)【発明者】
【氏名】森 貢
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-164768(JP,A)
【文献】特開平08-040509(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B61B 10/04
B60P 1/36
B65G 47/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車と、台車と、前記台車を前記牽引車に左右に回動可能に連結する連結部材と、を備え
た荷役搬送車と、
前記台車と物品の受け渡しを行う受け渡し装置と、
前記受け渡し装置の前方に配置され、前記受け渡し装置の左右方向に延びるガイドレールと、を備えた荷役システムであって、
前記台車は、荷台を有する車体と、前記車体に固定された被ガイド部材と、を有し、
前記被ガイド部材は、前記車体の側方に配置されかつ上下方向に延びる第1係合部と、前記車体の側方かつ前記第1係合部の車両前後方向の後方に配置され、上下方向に延びる第2係合部と、を有し
、
前記ガイドレールは、前記被ガイド部材の前記第1係合部および前記第2係合部が係合するガイド溝を有し、
前記ガイド溝は、前記車体が前記受け渡し装置の手前に停止したときの前記車体と前記受け渡し装置との間に配置されている、荷役システム。
【請求項2】
牽引車と、台車と、前記台車を前記牽引車に左右に回動可能に連結する連結部材と、を備えた荷役搬送車と、
前記台車と物品の受け渡しを行う受け渡し装置と、
前記受け渡し装置の前方に配置され、前記受け渡し装置の左右方向に延びるガイドレールと、を備えた荷役システムであって、
前記台車は、荷台を有する車体と、前記車体に固定された被ガイド部材と、を有し、
前記被ガイド部材は、前記車体の側方に配置されかつ上下方向に延びる第1係合部と、前記車体の側方かつ前記第1係合部の車両前後方向の後方に配置され、上下方向に延びる第2係合部と、を有し、
前記ガイドレールは、前記被ガイド部材の前記第1係合部および前記第2係合部が係合するガイド溝を有し、
前記台車は、前記台車の車幅方向に移動可能な第1スライダと、前記台車の車幅方向に移動可能な第2スライダと、前記第1スライダが前記台車の車幅方向の内方に移動すると前記荷台上の物品の前記荷台外への移動を規制し、前記第2スライダが前記台車の車幅方向の内方に移動すると前記荷台上の物品の前記荷台外への移動を許容するロック部材と、を有するロック装置を備え、
前記受け渡し装置は、
前記第1スライダを前記台車の車幅方向の内方に押す第1駆動アクチュエータと、
前記第2スライダを前記台車の車幅方向の内方に押す第2駆動アクチュエータと、を備えている
、荷役システム。
【請求項3】
牽引車と、台車と、前記台車を前記牽引車に左右に回動可能に連結する連結部材と、を備えた荷役搬送車と、
前記台車と物品の受け渡しを行う受け渡し装置と、
前記受け渡し装置の前方に配置され、前記受け渡し装置の左右方向に延びるガイドレールと、を備えた荷役システムであって、
前記台車は、荷台を有する車体と、前記車体に固定された被ガイド部材と、を有し、
前記被ガイド部材は、前記車体の側方に配置されかつ上下方向に延びる第1係合部と、前記車体の側方かつ前記第1係合部の車両前後方向の後方に配置され、上下方向に延びる第2係合部と、を有し、
前記ガイドレールは、前記被ガイド部材の前記第1係合部および前記第2係合部が係合するガイド溝を有し、
前記台車は、
前記荷台の側方の少なくとも一部を覆うシートと、
前記シートを巻き取る巻取りローラと、
上下方向に移動可能な上下移動部材と、
前記上下移動部材と前記巻取りローラとを連結し、前記上下移動部材が上昇すると前記シートを巻き取るように前記巻取りローラを回転させる動力伝達機構と、
前記上下移動部材に接続され、車幅方向の外方に突出する突出部材と、を備え、
前記受け渡し装置は、前記受け渡し装置の左右方向の一方から他方に向けて上方に延びる上面を有し、前記台車の走行に伴って前記突出部材が前記上面上を移動することによって前記突出部材を上昇させるガイド部材を備えている
、荷役システム。
【請求項4】
前記第1係合部および前記第2係合部の各々は、上下方向に延びる軸と、前記軸に回転可能に支持されたローラと、を有している、請求項
1~3のいずれか一つに記載の
荷役システム。
【請求項5】
前記第1係合部は、前記車体の車両前後方向の中間位置よりも前方に配置され、
前記第2係合部は、前記車体の車両前後方向の中間位置よりも後方に配置されている、請求項
1~4のいずれか一つに記載の
荷役システム。
【請求項6】
前記牽引車は、車輪と、前記車輪を駆動する電動モータと、前記電動モータに電力を供給する二次電池と、前記電動モータを制御するコンピュータと、を有する自動運転車である、請求項
1~5のいずれか一つに記載の
荷役システム。
【請求項7】
前記ガイド溝は、前記受け渡し装置の左右方向に真っ直ぐに延びる直線溝と、前記直線溝に連続し、前記受け渡し装置の左右方向に沿って前記直線溝から遠ざかるほど前記受け渡し装置の前後方向の幅が大きくなる入口溝と、を有している、請求項
1~6のいずれか一つに記載の荷役システム。
【請求項8】
前記受け渡し装置は、
前記受け渡し装置の前後方向に物品を搬送するコンベアと、
前記コンベアを上下方向の一方に移動させる上下駆動アクチュエータと、
前記コンベアに接続され、前記コンベアの上下方向の一方の移動によって前記台車に対して上下方向に当接する上下当接部材と、を備えている、請求項
1~7のいずれか一つに記載の荷役システム。
【請求項9】
前記受け渡し装置は、
前記受け渡し装置の前後方向に物品を搬送するコンベアと、
前記コンベアを前記受け渡し装置の左右方向の一方に移動させる左右駆動アクチュエータと、
前記コンベアに接続され、前記コンベアの前記受け渡し装置の左右方向の一方の移動によって前記台車に対して前記受け渡し装置の左右方向に当接する左右当接部材と、を備えている、請求項
1~7のいずれか一つに記載の荷役システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車と牽引車によって牽引される台車とを備えた荷役搬送車を備えた荷役システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば工場における荷役ステーション間の物品の搬送等の用途に、牽引車と牽引車によって牽引される台車とを備えた荷役搬送車が用いられている。牽引車は、台車を牽引しながら走行することにより、台車に積まれた物品を荷役ステーションに搬送する。牽引車と台車とは連結部材によって連結されている。牽引車に牽引される台車が牽引車に引き続いて円滑に旋回できるよう、台車は牽引車に対して左右に回動可能に連結されている。
【0003】
荷役ステーションには、台車と物品の受け渡しを行う受け渡し装置が設けられている。牽引車は、受け渡し装置の前方を通過し、台車が受け渡し装置の手前に到達したときに停止する。これにより、台車と受け渡し装置との間で物品の受け渡しが可能となる。ところが、受け渡し装置の手前で停止した台車が受け渡し装置に対して傾いていると、台車と受け渡し装置との間で物品を良好に受け渡すことが困難となる。
【0004】
牽引車および台車を備えた荷役搬送車では、牽引車が停止した後、台車が慣性により牽引車よりも遅れて停止する傾向がある。そのため、牽引車が停止した後、台車が牽引車に対して左方または右方に回動してしまい、台車が受け渡し装置に対して傾いてしまう場合がある。特許文献1には、停止に先立って牽引車を微速走行させ、センサにより停止位置を検出したときに、走行モータの回転速度を徐々に低下させて停止することが記載されている。すなわち、慣性によって台車の姿勢が崩れないように、停止前に牽引車および台車を微速走行させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された荷役搬送車では、停止前に微速走行を行う特別な制御が必要である。
【0007】
本発明の目的の一つは、牽引車が停止前に微速走行を行わなくても、停止時に台車が傾かないようにすることができる荷役搬送車を提供することである。本発明の目的の他の一つは、荷役搬送車の台車と受け渡し装置との間で良好に物品の受け渡しができる荷役システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示される荷役搬送車は、牽引車と、台車と、前記台車を前記牽引車に左右に回動可能に連結する連結部材と、を備える。前記台車は、荷台を有する車体と、前記車体に固定された被ガイド部材と、を有する。前記被ガイド部材は、前記車体の側方に配置されかつ上下方向に延びる第1係合部と、前記車体の側方かつ前記第1係合部の車両前後方向の後方に配置され、上下方向に延びる第2係合部と、を有している。
【0009】
ここに開示される荷役システムは、前記荷役搬送車と、前記台車と物品の受け渡しを行う受け渡し装置と、前記受け渡し装置の前方に配置され、前記受け渡し装置の左右方向に延びるガイドレールと、を備える。前記ガイドレールは、前記被ガイド部材の前記第1係合部および前記第2係合部が係合するガイド溝を有している。
【0010】
上記荷役搬送車によれば、牽引車が受け渡し装置の前方を通過すると、牽引車に牽引された台車が受け渡し装置の手前の位置に向かって前進するので、台車の側方に配置された第1係合部および第2係合部は受け渡し装置の手前の位置に向かって移動する。受け渡し装置の前方に受け渡し装置の左右方向に延びるガイドレールが配置されている場合、第1係合部および第2係合部はガイドレールに案内され、台車は受け渡し装置の左右方向に真っ直ぐに走行する。また、牽引車の停止時に、台車が牽引車に対して左方または右方に回動することがガイドレールによって抑制される。したがって、牽引車が停止前に微速走行を行わなくても、台車が受け渡し装置に対して傾くことが抑制される。台車が受け渡し装置に対して傾くことが抑制されるので、荷役搬送車の台車と受け渡し装置との間で荷物の受け渡しを良好に行うことができる。
【0011】
前記第1係合部および前記第2係合部の各々は、上下方向に延びる軸と、前記軸に回転可能に支持されたローラと、を有していてもよい。
【0012】
このことにより、第1係合部および第2係合部は、ローラが回転することによりガイドレールに円滑に案内される。よって、台車が受け渡し装置に対して傾くことを抑制しながら、台車を受け渡し装置の手前に円滑に案内することができる。
【0013】
前記第1係合部は、前記車体の車両前後方向の中間位置よりも前方に配置されていてもよい。前記第2係合部は、前記車体の車両前後方向の中間位置よりも後方に配置されていてもよい。
【0014】
このことにより、第1係合部と第2係合部との車両前後方向の距離を十分に確保することができる。よって、台車が受け渡し装置に対して傾かないようにすることが容易となる。
【0015】
前記牽引車は、車輪と、前記車輪を駆動する電動モータと、前記電動モータに電力を供給する二次電池と、前記電動モータを制御するコンピュータと、を有する自動運転車であってもよい。
【0016】
上記荷役搬送車によれば、牽引車が受け渡し装置の前方を通過して停止するだけで、台車を受け渡し装置に対して傾かないように停止させることができる。そのため、自動運転を行う荷役搬送車でありながら、高度な制御を行わなくても、台車が受け渡し装置に対して傾かないようにすることができる。
【0017】
前記ガイド溝は、前記受け渡し装置の左右方向に真っ直ぐに延びる直線溝と、前記直線溝に連続し、前記受け渡し装置の左右方向に沿って前記直線溝から遠ざかるほど前記受け渡し装置の前後方向の幅が大きくなる入口溝と、を有していてもよい。
【0018】
このことにより、台車がガイドレールの側方を走行するときに、第1係合部および第2係合部はガイドレールに導入されやすい。ガイドレールに対して第1係合部および第2係合部をより確実に係合させることができる。
【0019】
前記受け渡し装置は、前記受け渡し装置の前後方向に物品を搬送するコンベアと、前記コンベアを上下方向の一方に移動させる上下駆動アクチュエータと、前記コンベアに接続され、前記コンベアの上下方向の一方の移動によって前記台車に対して上下方向に当接する上下当接部材と、を備えていてもよい。
【0020】
このことにより、台車が受け渡し装置の手前で停止した後、上下駆動アクチュエータがコンベアを上方または下方に移動させると、コンベアに設けられた上下当接部材は台車に当接するまで上方または下方に移動する。上下当接部材が台車に当接することにより、台車に対するコンベアの上下位置が合わせられる。よって、台車とコンベアとの間で物品を良好に受け渡しすることができる。
【0021】
前記受け渡し装置は、前記受け渡し装置の前後方向に物品を搬送するコンベアと、前記コンベアを前記受け渡し装置の左右方向の一方に移動させる左右駆動アクチュエータと、前記コンベアに接続され、前記コンベアの前記受け渡し装置の左右方向の一方の移動によって前記台車に対して前記受け渡し装置の左右方向に当接する左右当接部材と、を備えていてもよい。
【0022】
このことにより、台車が受け渡し装置の手前で停止した後、左右駆動アクチュエータがコンベアを左方または右方に移動させると、コンベアに設けられた左右当接部材は台車に当接するまで左方または右方に移動する。左右当接部材が台車に当接することにより、台車に対するコンベアの左右位置が合わせられる。よって、台車とコンベアとの間で物品を良好に受け渡しすることができる。
【0023】
前記台車は、前記台車の車幅方向に移動可能な第1スライダと、前記台車の車幅方向に移動可能な第2スライダと、前記第1スライダが前記台車の車幅方向の内方に移動すると前記荷台上の物品の前記荷台外への移動を規制し、前記第2スライダが前記台車の車幅方向の内方に移動すると前記荷台上の物品の前記荷台外への移動を許容するロック部材と、を有するロック装置を備えていてもよい。前記受け渡し装置は、前記第1スライダを前記台車の車幅方向の内方に押す第1駆動アクチュエータと、前記第2スライダを前記台車の車幅方向の内方に押す第2駆動アクチュエータと、を備えていてもよい。
【0024】
このことにより、台車が受け渡し装置の手前で停止した後、第2駆動アクチュエータが第2スライダを車幅方向の内方に押すと、荷台上の物品の荷台外への移動が許容される。そのため、台車から受け渡し装置に物品を渡すことができる。台車が受け渡し装置から物品を受け取った後、第1駆動アクチュエータが第1スライダを車幅方向の内方に押すと、荷台上の物品の荷台外への移動がロック部材により規制される。そのため、台車の走行時に物品が荷台から落ちてしまうことが防止される。
【0025】
前記台車は、前記荷台の側方の少なくとも一部を覆うシートと、前記シートを巻き取る巻取りローラと、上下方向に移動可能な上下移動部材と、前記上下移動部材と前記巻取りローラとを連結し、前記上下移動部材が上昇すると前記シートを巻き取るように前記巻取りローラを回転させる動力伝達機構と、前記上下移動部材に接続され、車幅方向の外方に突出する突出部材と、を備えていてもよい。前記受け渡し装置は、前記受け渡し装置の左右方向の一方から他方に向けて上方に延びる上面を有し、前記台車の走行に伴って前記突出部材が前記上面上を移動することによって前記突出部材を上昇させるガイド部材を備えていてもよい。
【0026】
このことにより、荷台の側方の少なくとも一部がシートによって覆われるので、台車の走行中に、荷台に載せられた物品が風雨に晒されることが抑制される。台車が受け渡し装置の手前に到着するときには、台車の突出部材が受け渡し装置のガイド部材の上面と接触し、上面に沿って上昇する。突出部材が上昇すると上下移動部材が上昇するので、巻取りローラが回転してシートを巻き取る。荷台の側方の少なくとも一部を覆っていたシートが巻き取られるので、荷台の側方が開放される。これにより、台車と受け渡し装置との間で物品の受け渡しが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、牽引車が停止前に微速走行を行わなくても、停止時に台車が傾かないようにすることができる荷役搬送車を提供することができる。荷役搬送車の台車と受け渡し装置との間で良好に物品の受け渡しを行うことができる荷役システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は実施形態に係る荷役システムの概念図である。
【
図2】
図2は台車、ガイドレール、および受け渡し装置を受け渡し装置の左方から見た図である。
【
図5】
図5は台車および受け渡し装置の一部の平面図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は上下位置調整機構の概念図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)はワークロック装置の概念図である。
【
図10】
図10(a)は、雨よけカバーおよび巻き上げ機構を受け渡し装置の後方から見た図であり、
図10(b)は、雨よけカバーおよび巻き上げ機構を受け渡し装置の左方から見た図である。
【
図11】
図11は受け渡し装置のガイド板を前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る荷役システム100の概念図である。まず、
図1を参照しながら、荷役システム100の概要について説明する。
【0030】
本実施形態に係る荷役システム100は、工場内に設けられており、複数の荷役ステーション20Sと、荷役ステーション20S間でワーク9を搬送する荷役搬送車10とを備える。なお、ワーク9は、荷役搬送車10によって搬送される物品の一例であるが、物品の種類は特に限定されない。荷役ステーション20Sには、ワーク9の受け渡し装置20が設置されている。ここでは、荷役ステーション20Sには、受け渡し装置20の他、受け渡し装置20が受け取ったワーク9を加工する加工装置20A等が設置されている。
【0031】
荷役システム100は、ワーク9を搬送する荷役搬送車10と、受け渡し装置20と、ガイドレール30とを備えている。荷役搬送車10は、牽引車1と、牽引車1に牽引される台車2とを有している。牽引車1と台車2とは、連結部材3によって連結されている。連結部材3は、台車2を牽引車1に対して左右に回動可能に連結している。連結部材3は、牽引車1および台車2のいずれか一方に左右に回動可能に接続されていてもよく、両方に左右に回動可能に接続されていてもよい。
【0032】
牽引車1は手動運転される車両であってもよいが、本実施形態では自動運転車である。牽引車1は、車輪5と、車輪5を駆動する電動モータ6と、電動モータ6に電力を供給する二次電池7と、電動モータ6等を制御するコンピュータ8とを有している。コンピュータ8は、牽引車1の走行、停止、左折、および右折を制御する。牽引車1は、前進および後進が可能に構成されていてもよいが、本実施形態では、前進は可能であるが後進ができないように構成されている。
【0033】
荷役システム100では、牽引車1が受け渡し装置20の前方を通過し、台車2が受け渡し装置20の手前の位置に到達した時に牽引車1が停止する。台車2が受け渡し装置20の手前に停止しているときに、台車2と受け渡し装置20との間でワーク9の受け渡しが行われる。以下の説明では、特に断らない限り、受け渡し装置20の前方、後方、左方、右方を、それぞれ単に前方、後方、左方、右方と言うこととする。受け渡し装置20の左右方向、前後方向を、それぞれ単に左右方向、前後方向と言うこととする。図面中の符号F、Re、L、Rは、それぞれ前方、後方、左方、右方を表す。符号X、Yは、それぞれ前後方向、左右方向を表す。一方、台車2を基準とした前後方向、左右方向を、それぞれ車両前後方向、車両左右方向と言う。
図1の符号V1、V2は、それぞれ車両前後方向、車両左右方向を表す。
【0034】
ガイドレール30は受け渡し装置20の前方に設置されている。ガイドレール30は、台車2が受け渡し装置20の前方を走行するときに、台車2が受け渡し装置20に対して傾かないようにする役割を果たす。なお、台車2が受け渡し装置20に対して傾かない、または、台車2が受け渡し装置20に対して真っ直ぐであるとは、
図1に示すように、台車2の車両左右方向V2が受け渡し装置20の前後方向Xと一致することを意味する。台車2が受け渡し装置20に対して傾いているとは、台車2の車両左右方向V2が受け渡し装置20の前後方向Xから傾いていることを意味する。なお、ガイドレール30は、受け渡し装置20から離間していてもよく、受け渡し装置20に接続されていてもよい。
【0035】
台車2は、荷台23を有する車体2Aと、車体2Aに固定された被ガイド部材2Bとを有している。被ガイド部材2Bは、車体2Aの側方に配置された第1係合部21および第2係合部22を有している。第1係合部21および第2係合部22は上下方向に延びており、ここでは下方に延びている。
図1において、符号2F、2Reは、それぞれ車体2Aの前端、後端の車両前後方向の位置を示す直線を表している。符号2Mは、車体2Aの車両前後方向の中間位置を示す直線を表している。第1係合部21は、車体2Aの車両前後方向の中間位置よりも前方に配置されている。第2係合部22は、車体2Aの車両前後方向の中間位置よりも後方に配置されている。
【0036】
ガイドレール30は、第1係合部21および第2係合部22を案内するガイド溝31を有している。ガイド溝31は、下方に凹んだ溝であって、左右方向に延びている。台車2が受け渡し装置20の前方を走行するときに、第1係合部21および第2係合部22はガイド溝31に係合する。ガイド溝31は、直線溝31aおよび入口溝31bを有している。直線溝31aは左右方向に真っ直ぐに延びている。入口溝31bは、直線溝31aに連続しており、直線溝31aの側方に配置されている。ここでは、台車2は受け渡し装置20の右方から左方に向かって走行するので、入口溝31bは直線溝31aの右方に配置されている。直線溝31aの前後方向の幅は一定である。入口溝31bの前後方向の幅は、受け渡し装置20の左右方向に沿って直線溝31aから遠ざかるほど大きくなっている。ここでは、入口溝31bの前後方向の幅は、右方に行くほど大きくなっている。
【0037】
牽引車1が受け渡し装置20の前方を左方に向かって前進すると、牽引車1に牽引される台車2は、受け渡し装置20の手前の位置に向かって前進する。台車2がガイドレール30の側方を通過するときに、第1係合部21および第2係合部22はガイドレール30のガイド溝31に入り込む。入口溝31bの幅は右方に向かって広がっているので、台車2の車両左右方向(言い換えると、受け渡し装置20の前後方向)の位置が多少ずれていたとしても、第1係合部21および第2係合部22は入口溝31bに入り込む。その後、台車2の前進に伴って、第1係合部21および第2係合部22は入口溝31bから直線溝31aに導かれる。
【0038】
第1係合部21および第2係合部22が直線溝31aに入り込むと、台車2は予め定められた所定の位置を真っ直ぐに走行することになる。これにより、台車2の車両左右方向の位置ずれが抑制される。台車2と受け渡し装置20との前後方向の距離は、予め定められた所定の距離となる。また、第1係合部21および第2係合部22が直線溝31aに入り込むと、台車2の車両左右方向の傾きが抑制される。これにより、
図1に示すように、台車2の姿勢は受け渡し装置20に対して真っ直ぐとなる。
【0039】
台車2が受け渡し装置20の手前の位置に到達すると、牽引車1は停止する。これにより、台車2は、受け渡し装置20の手前において、受け渡し装置20に対して真っ直ぐな姿勢で停止する。よって、その後に台車2と受け渡し装置20との間でワーク9の受け渡しを行うときに、ワーク9を良好に受け渡すことができる。
【0040】
以上が、本実施形態に係る荷役システム100および荷役搬送車10の概要である。台車2、ガイドレール30、および受け渡し装置20の具体的構成は何ら限定されないが、次に、台車2、ガイドレール30、および受け渡し装置20の構成の一例について説明する。
【0041】
図2は、台車2が受け渡し装置20の手前に停止しているときに、台車2、ガイドレール30、および受け渡し装置20を左方から見た図である。
図2は、台車2、ガイドレール30、および受け渡し装置20を車両前後方向の前方から見た図に相当する。
図3は
図2のA部分の拡大図である。
図4は、A部分の平面図である。
【0042】
図2に示すように、台車2は、荷台23を有する車体2Aと、車輪24とを備えている。車輪24はいわゆる従動輪である。台車2は、車輪24を駆動する駆動装置(例えば電動モータ)を備えていない。また、台車2は、ワーク9を移動させる駆動力を発生する駆動装置を備えていない。ここでは、台車2には、電力を消費する電気機器は設けられていない。
【0043】
図3に示すように、車体2Aの底部には、被ガイド部材2Bが固定されている。被ガイド部材2Bは、車両左方方向に延びるアーム21cを有している。
図4に示すように、アーム21cは、車両前後方向に一対設けられている。車両前後方向の前側のアーム21cには、第1係合部21が設けられている。車両前後方向の後側のアーム21cには、第2係合部22が設けられている。
図3に示すように、第1係合部21は、前側のアーム21cの先端部から下方に延びる軸21aと、軸21aに回転可能に支持されたローラ21bとを有している。図示は省略するが同様に、第2係合部22は、後側のアーム21cの先端部から下方に延びる軸21aと、軸21aに回転可能に支持されたローラ21bとを有している。ローラ21bは、ガイドレール30のガイド溝31に係合している。ローラ21bの直径は、直線溝31aの前後方向の幅よりも若干小さく設定されている。
【0044】
図5は、台車2および受け渡し装置20の一部の平面図である。
図5に示すように、台車2の荷台23には、ローラコンベア25が設けられている。ローラコンベア25は、車両前後方向に延びる軸線周りに回転可能な複数のローラ25aを有している。ローラコンベア25は、ワーク9を車両左右方向に搬送可能に構成されている。前述したように、台車2はワーク9を移動させる駆動装置を備えていない。ローラ25aは、自らは回転しないローラである。
【0045】
受け渡し装置20は、チェーンコンベア40を備えている。チェーンコンベア40は、受け渡し装置20の前後方向に延びる搬送チェーン45を有している。
図6はチェーンコンベア40の左側面図であり、チェーンコンベア40を
図5のB方向から見た図である。
図6に示すように、チェーンコンベア40は、フレーム40Aと、スプロケット41,42,43,44と、それらスプロケット41,42,43,44に巻かれた搬送チェーン45とを備えている。また、チェーンコンベア40は、電動モータ46と、電動モータ46に連結された駆動スプロケット47と、従動スプロケット48と、駆動スプロケット47と従動スプロケット48とに巻かれた伝動チェーン49とを備えている。従動スプロケット48とスプロケット41とは、同軸状に連結されている。電動モータ46とスプロケット41とは、駆動スプロケット47、伝動チェーン49、および従動スプロケット48を介して、互いに連結されている。なお、
図5では、スプロケット41,42,43,44、電動モータ46、駆動スプロケット47、従動スプロケット48,および伝動チェーン49の図示は省略している。
【0046】
電動モータ46を駆動すると、スプロケット41が回転するため、搬送チェーン45が循環する。電動モータ46は、両方向に回転可能に構成されている。電動モータ46が一方の方向に回転すると、搬送チェーン45は
図6のC1方向に循環する。これにより、搬送チェーン45に支持されたワーク9は、受け渡し装置20の後方に搬送される。電動モータ46が他方の方向に回転すると、搬送チェーン45は
図6のC2方向に循環する。これにより、搬送チェーン45に支持されたワーク9は、受け渡し装置20の前方に搬送される。
【0047】
受け渡し装置20は、噛合チェーン式アクチュエータ50(例えば、ジップチェーンアクチュエータ(登録商標))を備えている。噛合チェーン式アクチュエータ50は、前後方向に伸縮するチェーン51を有している。チェーン51をローラコンベア25上のワーク9に引っ掛け、後方に収縮させると、ワーク9はローラコンベア25からチェーンコンベア40に移される。これにより、ワーク9は台車2から受け渡し装置20に搬送される。ワーク9に引っ掛けたチェーン51を前方に伸張させると、ワーク9はチェーンコンベア40からローラコンベア25に移される。これにより、ワーク9は受け渡し装置20から台車2に搬送される。
【0048】
チェーンコンベア40とローラコンベア25との間でワーク9を受け渡しする際に、チェーンコンベア40およびローラコンベア25の上下方向の位置が揃っていることが好ましい。本実施形態では、受け渡し装置20は、チェーンコンベア40の上下方向の位置を調整する上下位置調整機構60を備えている。
図7(a)および
図7(b)に示すように、上下位置調整機構60は、上支持台61と、上支持台61に取り付けられたエアシリンダ62と、エアシリンダ62のロッド62aに取り付けられたスライダ63と、チェーンコンベア40の底部に設けられた押し上げ板64とを有している。押し上げ板64は、前方かつ下方に延びる下面64aを有している。下面64aは水平面から傾斜している。スライダ63は、押し上げ板64の下面64aに接触する接触部63aを有している。
【0049】
図7(a)は、エアシリンダ62のロッド62aが収縮した状態を表している。
図7(b)は、エアシリンダ62のロッド62aがシリンダ本体62bから伸張した状態を表している。エアシリンダ62のロッド62aが収縮した状態から伸張すると、スライダ63は前方に移動する。これにより、スライダ63の接触部63aが押し上げ板64の下面64aに沿って移動し、押し上げ板64は接触部63aによって押し上げられる。その結果、チェーンコンベア40は上方に移動する。チェーンコンベア40には、台車2に対して上向きに当接する上下当接部材65が設けられている。エアシリンダ62のロッド62aが伸張したときに、上下当接部材65が台車2に当接することにより、チェーンコンベア40およびローラコンベア25の互いの上下方向の位置が揃うと共に、ロッド62aの伸張が停止する。これにより、チェーンコンベア40の上下方向の位置が調整される。
【0050】
また、チェーンコンベア40とローラコンベア25との間でワーク9を受け渡しする際に、チェーンコンベア40およびローラコンベア25の左右方向の位置が揃っていることが好ましい。本実施形態では、受け渡し装置20は、チェーンコンベア40の左右方向の位置を調整する左右位置調整機構70を備えている。
図8に示すように、左右位置調整機構70は、上支持台61を支持する下支持台71と、上支持台61および下支持台71に取り付けられたエアシリンダ72とを備えている。エアシリンダ72のシリンダ本体72bは上支持台61に取り付けられ、エアシリンダ72のロッド72aは下支持台71に取り付けられている。
【0051】
エアシリンダ72のロッド72aが収縮した状態から伸張すると、上支持台61が右方に移動するので、チェーンコンベア40は右方に移動する。チェーンコンベア40には、台車2に対して右向きに当接する左右当接部材74が設けられている。エアシリンダ72のロッド72aが伸張したときに、左右当接部材74が台車2に当接することにより、チェーンコンベア40およびローラコンベア25の互いの左右方向の位置が揃うと共に、ロッド72aの伸張が停止する。これにより、チェーンコンベア40の左右方向の位置が調整される。
【0052】
台車2の走行中は、荷台23からワーク9が落ちないよう、ワーク9の荷台23の外側への移動を規制することが好ましい。台車2は、ワーク9の荷台23外への移動を規制する機構を備えていることが好ましい。ところで、ローラコンベア25とチェーンコンベア40との間でワーク9を受け渡しするときには、ワーク9の荷台23外への移動を許容する必要がある。本実施形態では、台車2は電力を消費しないように構成されている。台車2は、電動の駆動アクチュエータを備えていない。本実施形態では、台車2は、受け渡し装置20によってON/OFFされるワークロック装置80を備えている。
【0053】
図9(a)および
図9(b)に示すように、ワークロック装置80は、荷台23の側方に配置されたロック板81と、上スライダ82と、上シリンダ83と、下シリンダ84と、下スライダ85とを備えている。ロック板81、上スライダ82、上シリンダ83、下シリンダ84、および下スライダ85は、台車2に設けられている。ここでは、上シリンダ83および下シリンダ84は、油圧シリンダによって構成されている。ただし、上シリンダ83および下シリンダ84は油圧シリンダに限定されず、エアシリンダ等であってもよい。
【0054】
ロック板81は、荷台23の車幅方向の外方に配置されており、上下に移動可能に構成されている。なお、車幅方向の外方とは、車両左右方向のうち車両中心線から遠ざかる方を言い、車幅方向の内方とは、車両左右方向のうち車両中心線に近づく方を言う。車両中心線とは、車体2Aの車両左右方向の中間の位置を通り、車両前後方向に延びる直線のことを言う。上スライダ82は、車両左右方向に移動可能に構成されている。上スライダ82は、車幅方向の内方かつ上方に延びる上面82aを有している。
【0055】
受け渡し装置20には、アンロックシリンダ87とロックシリンダ86とが設けられている。アンロックシリンダ87およびロックシリンダ86は、エアシリンダ等であってもよいが、ここでは油圧シリンダである。
【0056】
台車2が受け渡し装置20の手前で停止し、かつ、ワークロック装置80がONされているときに、アンロックシリンダ87のロッド87aが伸張すると、ロッド87aは上スライダ82と当接し、上スライダ82を車幅方向の内方(ここでは、受け渡し装置20の前方)に向かって押す。すると、
図9(b)に示すように、上スライダ82が車幅方向の内方に移動し、ロック板81は上スライダ82の上面82aに沿って下降する。その結果、ワーク9の車幅方向の外方(ここでは、受け渡し装置20の後方)への移動が可能となり、ワーク9の荷台23の外側への移動が許容される。台車2と受け渡し装置20との間でワーク9の受け渡しが可能となる。このようにして、ワークロック装置80はOFFされる。なお、上スライダ82が車幅方向の内方に移動すると、上シリンダ83のロッド83aは上スライダ82に押されることによって収縮する。上シリンダ83と下シリンダ84とは接続されているので、上シリンダ83のロッド83aが収縮すると、下シリンダ84のロッド84aが伸張する。下シリンダ84のロッド84aが伸張すると、下スライダ85はロッド84aに押されて車幅方向の外方に移動する。
【0057】
台車2が受け渡し装置20の手前で停止し、かつ、ワークロック装置80がOFFされているときに、ロックシリンダ86のロッド86aが伸張すると、ロッド86aは下スライダ85と当接し、下スライダ85を車幅方向の内方に向かって押す。すると、下スライダ85が車幅方向の内方に移動し、下シリンダ84のロッド84aが下スライダ85に押されることによって収縮する。下シリンダ84のロッド84aが収縮すると、上シリンダ83のロッド83aが伸張し、ロッド83aは上スライダ82を車幅方向の外方に向かって押す。上スライダ82が車幅方向の外方に移動すると、ロック板81は上スライダ82の上面82aに沿って上昇する。すなわち、ロック板81は上スライダ82によって押し上げられる。ロック板81が上昇すると、ワーク9の車幅方向の外方への移動がロック板81によって阻止される。ワークロック装置80はONされ、ワーク9の荷台23の外側への移動は規制される。なお、上スライダ82が車幅方向の外方に移動すると、アンロックシリンダ87のロッド87aは、上スライダ82に押されて収縮する。
【0058】
このように、ワークロック装置80は、受け渡し装置20に設けられたアンロックシリンダ87およびロックシリンダ86の駆動力によってON/OFFされる。本実施形態によれば、台車2に駆動アクチュエータを備えることなく、ワークロック装置80のON/OFFが可能となる。
【0059】
本実施形態に係る荷役搬送車10は、屋内は勿論、屋外も走行可能に構成されている。荷役搬送車10が雨天時に屋外を走行する場合、台車2に積まれたワーク9が風雨に晒されるおそれがある。ワーク9が風雨に晒されないよう、台車2は雨よけカバーを備えていることが好ましい。しかし、台車2と受け渡し装置20との間でワーク9を受け渡しするときには、雨よけカバーが邪魔になる場合がある。そこで、雨よけカバーは開閉式であることが好ましい。すなわち、雨よけカバーは、台車2の走行時にはワーク9の周囲の一部または全部を覆うように閉じられ、台車2と受け渡し装置20との間でワーク9の受け渡しを行うときには開放されることが好ましい。一方、前述の通り、台車2は電力を消費しないように構成されている。台車2は、雨よけカバーを開閉する電動の駆動アクチュエータを備えていない。本実施形態では、台車2は、受け取り装置20と係合することによって自動的に開閉する雨よけカバー90を備えている。
【0060】
図10(a)および
図10(b)に示すように、雨よけカバー90は、台車2の側方を覆うシート97と、シート97を巻き上げる巻き上げ機構96とを備えている。巻き上げ機構96は、台車2の車体2Aの上部に配置されている。ここでは、巻き上げ機構96は、車体2Aの車両左右方向の右側かつ上側の部分に設けられている。巻き上げ機構96は、上下に移動可能なラック91と、ラック91に接続されたガイドローラ92と、ラック91と噛み合うピニオン93と、ピニオン93と噛み合う第1中間ギア94Aと、第1中間ギア94Aと同軸状に設けられた第2中間ギア94Bと、第2中間ギア94Bと噛み合う第3中間ギア94Cと、第3中間ギア94Cと同軸状に設けられた巻取りローラ95とを備えている。シート97の一部は巻取りローラ95に巻かれている。ガイドローラ92は、ラック91から車幅方向の外方(ここでは車両左右方向の右方)に突出している。第2中間ギア94Bの直径は第1中間ギア94Aの直径よりも大きく、巻取りローラ95の直径は第3中間ギア94Cの直径よりも大きい。ピニオン93の回転は、増速されて巻取りローラ95に伝達される。ピニオン93、第1中間ギア94A、第2中間ギア94B、および第3中間ギア94Cは、ラック91が上昇するとシート97を巻き取るように巻取りローラ95を回転させる動力伝達機構98を構成している。
【0061】
図11に示すように、受け渡し装置20の上部には、ガイドローラ92を案内するガイド板28が設けられている。ガイド板28は、左方かつ上方に延びる傾斜面28aと、左方に延びる水平面28bとを含んでいる。水平面28bは傾斜面28aの左方に配置されている。台車2は受け渡し装置20の前方を左向きに走行するので、傾斜面28aは車両前後方向の前方かつ上方に延びている。
【0062】
台車2が受け渡し装置20の前方を走行するときに、巻き上げ機構96のガイドローラ92はガイド板28上を走行する。ガイドローラ92が傾斜面28a上を走行する際、ガイドローラ92は上昇する。ラック91はガイドローラ92に接続されているので、ガイドローラ92が上昇するとラック91は上昇する。ラック91の上昇に伴い、ピニオン93が回転する。ピニオン93の回転は、第1中間ギア94A、第2中間ギア94B、第3中間ギア94Cを介して、巻取りローラ95に伝達される。巻取りローラ95が回転することにより、シート97が巻き上げられる。これにより、台車2の側方が開放され、台車2と受け渡し装置20との間でワーク9の受け渡しが可能となる。すなわち、台車2のチェーンコンベア40と受け渡し装置20のローラコンベア25との間でワーク9の搬送が可能となる。
【0063】
受け渡し装置20から台車2にワーク9が搬送された後、台車2が受け渡し装置20から左方に移動すると、ガイドローラ92はガイド板28から離れる。すると、ガイドローラ92およびラック91は、自重により下降する。ラック91の下降に伴い、ピニオン93は逆方向に回転する。このピニオン93の逆回転が第1中間ギア94A、第2中間ギア94B、第3中間ギア94Cを介して巻取りローラ95に伝達され、巻取りローラ95は逆回転する。これにより、シート97は下降し、台車2の車体2Aの側方を覆う。台車2は、車体2Aの側方がシート97に覆われた状態で走行する。これにより、台車2に積まれたワーク9が風雨に晒されることが防止される。
【0064】
次に、本実施形態に係る荷役搬送車10および荷役システム100によってもたらされる様々な効果について説明する。
【0065】
図1に示すように、本実施形態に係る荷役搬送車10は、牽引車1と、台車2と、台車2を牽引車1に左右に回動可能に連結する連結部材3とを備えている。台車2は、荷台23を有する車体2Aと、車体2Aに固定された被ガイド部材2Bとを有している。被ガイド部材2Bは、車体2Aの側方に配置された第1係合部21と、車体2Aの側方かつ第1係合部21の後方(すなわち、車両前後方向の後方)に配置された第2係合部22とを有している。荷役システム100は、荷役搬送車10と、台車2とワーク9の受け渡しを行う受け渡し装置20と、ガイドレール30とを備えている。ガイドレール30は受け渡し装置20の前方に配置されており、左右方向に延びるガイド溝31を有している。
【0066】
本実施形態によれば、牽引車1が受け渡し装置20の前方を通過すると、牽引車1に牽引された台車2が受け渡し装置20の手前の位置に向かって前進するので、台車2の側方に配置された第1係合部21および第2係合部22は受け渡し装置20の手前の位置に向かって移動する。第1係合部21および第2係合部22がガイドレール30に案内されるので、台車2は受け渡し装置20の左右方向に真っ直ぐに走行する。また、牽引車1の停止時に、台車2が牽引車1に対して左方または右方に回動することが抑制される。したがって、本実施形態によれば、牽引車1が停止前に微速走行を行わなくても、台車2が受け渡し装置20に対して傾くことを抑制することができる。本実施形態によれば、台車2が受け渡し装置20に対して傾かないので、台車2と受け渡し装置20との間でワーク9の受け渡しを良好に行うことができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、第1係合部21および第2係合部22がガイドレール30に案内されるので、受け渡し装置20に対する台車2の前後方向(受け渡し装置20の前後方向)の位置が調整される。台車2と受け渡し装置20との前後方向の距離が適切に保たれるので、ワーク9の受け渡しを良好に行うことができる。
【0068】
図3に示すように、第1係合部21および第2係合部22の各々は、上下方向に延びる軸21aと、軸21aに回転可能に支持されたローラ21bとを有している。台車2の走行時に、ローラ21bはガイドレール30の壁面に接触すると回転する。第1係合部21および第2係合部22は、ガイドレール30の壁面に対して摺動せず、ローラ21bが回転することによってガイドレール30に円滑に案内される。よって、台車2が受け渡し装置20に対して傾くことを抑制しながら、台車2を受け渡し装置20の手前に円滑に案内することができる。
【0069】
図1に示すように本実施形態では、第1係合部21は車体2Aの車両前後方向の中間位置よりも前方に配置され、第2係合部22は車体2Aの車両前後方向の中間位置よりも後方に配置されている。第1係合部21と第2係合部22との車両前後方向の距離を十分に確保することができる。よって、台車2が受け渡し装置20に対して傾かないようにすることが容易となる。
【0070】
本実施形態によれば、牽引車1は自動運転車である。本実施形態によれば前述の通り、牽引車1が受け渡し装置20の前方を通過して停止するだけで、台車2を受け渡し装置20に対して傾かないように停止させることができる。そのため、自動運転を行う荷役搬送車10でありながら、高度な制御を行わなくても、台車2が受け渡し装置20に対して傾かないようにすることができる。
【0071】
本実施形態によれば、ガイドレール30のガイド溝31は、受け渡し装置20の左右方向に真っ直ぐに延びる直線溝31aと、受け渡し装置20の左右方向に沿って直線溝31aから遠ざかるほど前後方向の幅が大きくなる入口溝31bとを有している。そのため、台車2がガイドレール30の側方を走行するときに、第1係合部21および第2係合部22はガイドレール30に導入されやすい。したがって、ガイドレール30に対して第1係合部21および第2係合部22をより確実に係合させることができる。
【0072】
図7(a)および
図7(b)に示すように、受け渡し装置20は、チェーンコンベア40を上方に移動させるエアシリンダ62と、チェーンコンベア40に接続され、チェーンコンベア40の上昇によって台車2に対して上向きに当接する上下当接部材65とを備えている。台車2が受け渡し装置20の手前で停止した後、エアシリンダ62がチェーンコンベア40を上昇させると、上下当接部材65は台車2に当接するまで上昇する。上下当接部材65が台車2に当接することにより、台車2に対するチェーンコンベア40の上下位置が合わせられる。よって、台車2とチェーンコンベア40との間でワーク9を良好に受け渡しすることができる。
【0073】
図8に示すように、受け渡し装置20は、チェーンコンベア40を右方に移動させるエアシリンダ72と、チェーンコンベア40に接続され、チェーンコンベア40の右方への移動によって台車2に対して右向きに当接する左右当接部材74とを備えている。台車2が受け渡し装置20の手前で停止した後、エアシリンダ72がチェーンコンベア40を右方に移動させると、左右当接部材74は台車2に当接するまで右方に移動する。左右当接部材74が台車2に当接することにより、台車2に対するチェーンコンベア40の左右位置が合わせられる。よって、台車2とチェーンコンベア40との間でワーク9を良好に受け渡しすることができる。
【0074】
図9に示すように、台車2はワークロック装置80を備えている。ワークロック装置80は、台車2の車幅方向に移動可能な上スライダ82および下スライダ85と、下スライダ85が車幅方向の内方に移動するとワーク9の荷台23外への移動を規制し、上スライダ82が車幅方向の内方に移動するとワーク9の荷台23外への移動を許容するロック板81とを有している。受け渡し装置20は、下スライダ85を車幅方向の内方に押すロックシリンダ86と、上スライダ82を車幅方向の内方に押すアンロックシリンダ87とを備えている。台車2が受け渡し装置20の手前で停止した後、アンロックシリンダ87が上スライダ82を車幅方向の内方に押すと、スライダ板81は下降する(
図9(b)参照)。これにより、ワーク9の荷台23外への移動が許容され、台車2から受け渡し装置20にワーク9を移すことができる。一方、台車2が受け渡し装置20からワーク9を受け取った後、ロックシリンダ86が下スライダ85を車幅方向の内方に押すと、ロック板81は上昇する(
図9(a)参照)。これにより、ワーク9の荷台23外への移動が規制され、台車2の走行中にワーク9が荷台23から落ちてしまうことを防止することができる。
【0075】
図10(a)および
図10(b)に示すように、台車2は、荷台23の側方の少なくとも一部を覆うシート97を備えている。荷台23の側方の少なくとも一部がシート97によって覆われるので、台車2の走行中に、荷台23に載せられたワーク9が風雨に晒されることが抑制される。また、台車2は、シート97を巻き取る巻取りローラ95と、上下方向に移動可能なラック91と、ラック91が上昇するとシート97を巻き取るように巻取りローラ95を回転させる動力伝達機構98と、ラック91に接続され、車幅方向の外方に突出するガイドローラ92とを備えている。
図11に示すように、受け渡し装置20は、左方かつ上方に延びる傾斜面28aを有するガイド板28を備えている。ガイド板28は、台車2の走行に伴ってガイドローラ92が傾斜面28a上を移動することにより、ガイドローラ92を上昇させる。台車2が受け渡し装置20の手前を走行するときには、ガイドローラ92がガイド板28の傾斜面28aと接触し、傾斜面28aに沿って上昇する。ガイドローラ92が上昇するとラック91が上昇するので、巻取りローラ95が回転してシート97を巻き取る。これにより、荷台2の側方が開放されるので、台車2と受け渡し装置20との間でワーク9の受け渡しが可能となる。
【0076】
以上、一実施形態について説明したが、上記実施形態は一例に過ぎない。他にも様々な実施形態が可能である。
【0077】
前記実施形態では、第1係合部21および第2係合部22は下方に延び、ガイドレール30のガイド溝31は下方に凹んでいるが、第1係合部21および第2係合部22が上方に延び、ガイド溝31が上方に凹んでいてもよい。
【0078】
第1係合部21および第2係合部22は必ずしもローラ21bを有していなくてもよい。例えば、第1係合部21および第2係合部22は、レール30の壁面に対して摺動するように構成されていてもよい。
【0079】
第1係合部21および第2係合部22の車両前後方向の位置は限定されない。第1係合部21および第2係合部22の両方が、車体2Aの車両前後方向の中間位置よりも前方に配置されていてもよく、車体2Aの車両前後方向の中間位置よりも後方に配置されていてもよい。被ガイド部材2Bは、第1係合部21および第2係合部22に加えて、1つまたは2つ以上の他の係合部を備えていてもよい。
【0080】
牽引車1は自動運転車でなくてもよい。牽引車1は無人車に限らず、人が手動で運転する車両であってもよい。台車2は、電力を消費する機器を備えていてもよい。台車2は、電動モータ等の駆動アクチュエータを備えていてもよい。
【0081】
ガイドレール30の入口溝31bは必ずしも必要ではない。
【0082】
受け渡し装置20のコンベアはチェーンコンベア40に限定されない。受け渡し装置20のコンベアはローラコンベア等であってもよい。コンベアを上下方向の一方に移動させる上下駆動アクチュエータは、エアシリンダ62に限定されず、電動モータ等であってもよい。左右当接部材は、台車2に対して上向きに当接する部材に限らず、下向きに当接する部材であってもよい。この場合、上下駆動アクチュエータは、コンベアを下方に移動させるアクチュエータであればよい。
【0083】
コンベアを左右方向の一方に移動させる左右駆動アクチュエータは、エアシリンダ72に限定されず、電動モータ等であってもよい。左右当接部材は、台車2に対して右向きに当接する部材に限らず、左向きに当接する部材であってもよい。この場合、左右駆動アクチュエータは、コンベアを左方に移動させるアクチュエータであればよい。
【0084】
上下位置調整機構60および左右位置調整機構70の一方または両方は無くてもよい。また、ワークロック装置80は無くてもよい。雨よけカバー90および巻き上げ機構96は無くてもよい。
【0085】
ここに用いられた用語及び表現は、説明のために用いられたものであって限定的に解釈するために用いられたものではない。ここに示されかつ述べられた特徴事項の如何なる均等物をも排除するものではなく、本発明のクレームされた範囲内における各種変形をも許容するものであると認識されなければならない。本発明は、多くの異なった形態で具現化され得るものである。この開示は本発明の原理の実施形態を提供するものと見なされるべきである。それらの実施形態は、本発明をここに記載しかつ/又は図示した好ましい実施形態に限定することを意図するものではないという了解のもとで、実施形態がここに記載されている。ここに記載した実施形態に限定されるものではない。本発明は、この開示に基づいて当業者によって認識され得る、均等な要素、修正、削除、組み合わせ、改良及び/又は変更を含むあらゆる実施形態をも包含する。クレームの限定事項はそのクレームで用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0086】
1…牽引車、2…台車、2A…車体、2B…被ガイド部材、3…連結部材、5…車輪、6…電動モータ、7…二次電池、8…コンピュータ、9…ワーク(物品)、10…荷役搬送車、20…受け渡し装置、21…第1係合部、21a…軸、21b…ローラ、22…第2係合部、23…荷台、28…ガイド版(ガイド部材)、28a…傾斜面(上面)、30…ガイドレール、31…ガイド溝、31a…直線溝、31b…入口溝、40…チェーンコンベア(コンベア)、62…シリンダ(上下駆動アクチュエータ)、65…上下当接部材、72…シリンダ(左右駆動アクチュエータ)、74…左右当接部材、80…ワークロック装置(ロック装置)、81…ロック板(ロック部材)、82…上スライダ(第1スライダ)、85…下スライダ(第2スライダ)、86…ロックシリンダ(第2駆動アクチュエータ)、87…アンロックシリンダ(第1駆動アクチュエータ)、91…ラック(上下移動部材)、92…ローラ(突出部材)、95…巻取りローラ、97…シート、98…動力伝達機構、100…荷役システム