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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】外部電極用ペースト
(51)【国際特許分類】
   C03C 8/16 20060101AFI20240213BHJP
   C03C 8/04 20060101ALI20240213BHJP
   C03C 8/18 20060101ALI20240213BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240213BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C03C8/16
C03C8/04
C03C8/18
H01B1/22 A
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022071753
(22)【出願日】2022-04-25
(65)【公開番号】P2023161393
(43)【公開日】2023-11-07
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】河方 信吾
(72)【発明者】
【氏名】沼口 穣
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-017423(JP,A)
【文献】国際公開第2020/040138(WO,A1)
【文献】特開2002-100526(JP,A)
【文献】特開2003-077336(JP,A)
【文献】特開2002-163928(JP,A)
【文献】特開2000-048643(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
H01B 1/22,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層セラミック電子部品の外部電極の形成に用いられる外部電極用ペーストであって、
少なくとも、Cu粒子と、ガラス粒子と、分散媒とを含み、
前記ガラス粒子は、当該ガラス粒子全体を100質量%としたとき、95質量%以上が酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO :1質量%~10質量%;
:10質量%~20質量%;
ZnO :15質量%~30質量%;
Al :1質量%~10質量%;
RO :40質量%~60質量%;
(ここで、前記ROはBaOおよびCaOである)を含み、
SiOを主成分として含む無機フィラーをさらに含み、
前記ガラス粒子は、前記SiO 、前記B 、前記ZnO、前記Al および前記RO以外の成分として、P 、Bi 、Li O、Na O、K O、TiO 、MnO、FeO、Fe 、Fe 、SnO、SnO 、V 、ZrO 、Nb 、CuO、Cu O、La 、CeO からなる群から選択される少なくとも一種を0質量%~5質量%含む、外部電極用ペースト。
【請求項2】
前記外部電極用ペーストの全体を100質量%としたときに、前記無機フィラーの含有量が0.1質量%~10質量%である、請求項1に記載の外部電極用ペースト。
【請求項3】
前記無機フィラーのメジアン径D50は、0.01μm~1μmである、請求項1または2に記載の外部電極用ペースト。
【請求項4】
前記ガラス粒子の軟化点は、500℃~650℃である、請求項1または2に記載の外部電極用ペースト。
【請求項5】
前記ガラス粒子は、TiOを実質的に含有しない、請求項1または2に記載の外部電極用ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部電極用ペーストに関する。より詳細には、本発明は、積層セラミック電子部品の外部電極の形成に用いられる外部電極用ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、積層セラミックコンデンサ(Multi-Layer Ceramic Capacitor:MLCC)、積層型インダクタ、積層型圧電素子(積層バリスタ)などの積層セラミック電子部品が広い分野で使用されている。例えば、MLCCは、セラミック材料を含む誘電体層と、導電材料を含む内部電極層とが交互に積層された積層チップを有している。そして、積層チップの外部(例えば側面)には、複数の内部電極層の各々と接続する外部電極が形成される。この外部電極は、例えば、導電性粒子とガラス粒子を含む外部電極用ペーストを焼成することによって形成される。この種の外部電極用ペーストでは、安価であり、かつ、好適な導電性を有しているという観点から、導電性粒子として銅粒子(Cu粒子)が広く使用されている。
【0003】
また、MLCCの製造工程では、外部電極の表面に金属メッキ層を形成するメッキ処理が行われることがある。これによって、MLCCと基板とのはんだ付けにおける接合性を向上できる。しかし、このメッキ処理では、メッキ液が外部電極を通過して積層チップ内に侵入する可能性がある。この場合、絶縁抵抗の増大などの性能低下が生じるおそれがある。また、積層チップ内に侵入したメッキ液は、外部からの熱で気化するため、はんだ付けの際に積層チップが破裂するポップコーン現象の原因にもなり得る。これに対して、特許文献1には、積層チップ内へのメッキ液の侵入を防止する技術が開示されている。具体的には、特許文献1に記載の外部電極用ペーストは、錫(Sn)メッキ液に対する耐食性に優れたガラスフリット(ガラス粒子)を含んでいる。これによって、焼成後の外部電極がSnメッキ液に侵食されることを防止できるため、外部電極が薄い場合でも積層チップ内へのメッキ液の侵入を防止できる。また、特許文献1に記載のガラスフリットは、焼成中の導電性粒子(Cu粒子)との濡れ性を考慮した組成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-134120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、MLCCの外部電極は、メッキ液への耐食性という化学的性能だけでなく、優れた緻密性を有しているという物理的な性能も要求される。焼成後の外部電極に複数の間隙が形成されていると、当該間隙を通じて積層チップにメッキ液が侵入するおそれがあるためである。本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、積層チップ内へのメッキ液の侵入を抑制しつつ、外部電極の表面に適切なメッキ層を形成できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上述の課題を解決するために、ペースト焼成中のガラス成分の粘性に着目した。具体的には、外部電極用ペースト中のガラス粒子は、焼成時に溶融して液状のガラス成分となる。そして、このガラス成分は、導電性粒子の焼結体の間隙に充填されて外部電極を緻密化する。このときのガラス成分の粘性が低くなると、外部電極の全体にガラス成分が拡散するため、緻密性に優れた外部電極を形成できる。一方で、Cu粒子を含むペースト(以下「Cuペースト」とも言う。)は、他の導電性粒子(Ni粒子など)を含むペーストと比べて焼成温度が低温になる傾向がある。このような低温焼成では、ガラス粒子を充分に溶融させ、流動性に優れた(粘性が低い)ガラス成分を生じさせることが難しい。上述の観点に基づいて、本発明者は、Cuペースト用の低温焼成において低粘性のガラス成分となり得るガラス粒子について検討した。
【0007】
上述の検討の結果、本発明者は、酸化ケイ素(SiO)の存在割合が低いホウケイ酸系ガラスにおいて、アルカリ土類金属酸化物の存在割合を増加させることに思い至った。具体的には、ガラス骨格の主成分がSiOであるガラス(ケイ酸系ガラス)は、熱的安定性に優れており、軟化点が高温であるため、Cuペースト用の低温焼成で充分に溶融させることが難しい。このため、ガラス骨格における酸化ホウ素(B)の存在割合を増加させ、酸化ケイ素(SiO)の存在割合を低下させることによって、低温焼成においても充分な流動性を確保することができる。加えて、ガラス粒子中のガラス骨格を修飾する成分としてアルカリ土類金属酸化物を多く含む場合、溶融後のガラス成分の粘性が非常に低下するという特性も生じる。すなわち、上記組成のガラス粒子を含むペーストを焼成すると、外部電極の全体にガラス成分が容易に拡散するため、低温焼成を実施した場合でも、緻密性に優れた外部電極を形成できる。
【0008】
しかしながら、上記組成のガラス粒子を含むペーストを実際に使用すると、焼成後の外部電極の表面にメッキ層が充分に付着しない現象(メッキ不良)が生じることがあった。そして、本発明者の検討の結果、メッキ不良が生じた積層セラミック電子部品では、外部電極の表面(上面)にガラス成分が浮上して薄膜を形成するガラス浮きが生じていることが分かった。具体的には、上記組成のガラス粒子は、焼成中のガラス成分の流動性を大きく向上させるため、外部電極の全体にガラス成分を拡散できる。しかし、このガラス成分の流動性が大きくなりすぎると、拡散後のガラス成分が外部電極の表面に浮き上がって薄膜を形成するおそれがある。そして、このガラス浮きが生じた外部電極では、表面の導電性が大きく低下するため、電解メッキ処理が適切に実施できなくなることがある。
【0009】
以上の知見から、本発明者は、溶融後の流動性(拡散性)に優れたガラス粒子を使用した上で、当該ガラス成分の拡散が進むにつれて当該ガラス成分の流動性を低下させることを考えた。これによって、緻密な外部電極を形成し、かつ、電極表面へのガラス浮きを抑制できる。そして、種々の実験と検討を行った結果、SiOを主成分とする無機フィラー(SiOフィラー)をペーストに添加することに思い至った。具体的には、上記組成のガラス粒子は、ガラス骨格中のSiOの存在割合を低下させることによって、焼成中のガラス成分の流動性を向上させている。これに対して、ペーストにSiOフィラーを添加すると、焼成によって流動(拡散)するガラス成分にSiOフィラーが順次溶解する。これによって、焼成中のガラス成分は、拡散が進むにつれて、流動性が低いケイ酸系ガラスに変化していく。この結果、外部電極の全体にガラス成分が拡散した後に、ガラス成分の流動性が低下するため、ガラス浮きの発生を抑制することができる。
【0010】
ここに開示される外部電極用ペーストは、上述の知見に基づいてなされたものである。ここに開示される外部電極用ペーストは、積層セラミック電子部品の外部電極の形成に用いられる。この外部電極用ペーストは、少なくとも、Cu粒子と、ガラス粒子と、分散媒とを含む。また、ガラス粒子は、当該ガラス粒子全体を100質量%としたとき、95質量%以上が酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO :1質量%~10質量%;
:10質量%~20質量%;
ZnO :15質量%~30質量%;
Al :1質量%~10質量%;
RO :40質量%~60質量%;
を含む。なお、上記組成中のRは、アルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素を含む。そして、ここに開示される外部電極用ペーストは、SiOを主成分として含む無機フィラーをさらに含む。
【0011】
上記構成の外部電極用ペーストのガラス粒子は、SiOの含有比率が10質量%以下であり、かつ、Bの含有比率が10質量%以上である。これによって、ペースト焼成中にガラス粒子を容易に溶融させて、流動性に優れたガラス成分を生じさせることができる。次に、このガラス粒子は、40質量%以上のアルカリ土類金属酸化物を含んでいる。これによって、溶融後のガラス成分の粘性を大きく低下させ、焼成後の外部電極の全体にガラス成分を拡散させることができる。そして、ここに開示される外部電極用ペーストは、SiOフィラーを含んでいる。かかるSiOフィラーは、拡散中のガラス成分に溶解し、当該ガラス成分の流動性を低下させる。これによって、拡散後のガラス成分が更に流動することを防止し、電極表面へのガラス浮きを抑制できる。以上の通り、ここに開示される外部電極用ペーストによると、優れた緻密性を有し、かつ、ガラス浮きが抑制された外部電極を形成できる。かかる外部電極は、積層チップ内へのメッキ液の侵入を抑制しつつ、表面に適切なメッキ層を形成することができる。
【0012】
ここに開示される外部電極用ペーストの好ましい一態様では、外部電極用ペーストの全体を100質量%としたときに、無機フィラーの含有量が0.1質量%~10質量%である。これによって、緻密性の向上とガラス浮きの抑制を高いレベルで両立できる。
【0013】
ここに開示される外部電極用ペーストの好ましい一態様では、無機フィラーのメジアン径D50は、0.01μm~1μmである。これによって、焼成中のガラス成分にSiOフィラーが溶融しやすくなるため、ここに開示される技術の効果をより好適に発揮できる。
【0014】
ここに開示される外部電極用ペーストの好ましい一態様では、ガラス粒子の軟化点は、500℃~650℃である。これによって、Cuペースト用の低温焼成でもガラス粒子を容易に溶融させることができる。
【0015】
ここに開示される外部電極用ペーストの好ましい一態様では、アルカリ土類金属酸化物(RO)は、少なくともBaOを含む。これによって、溶融後のガラス成分の粘性を好適に低下させ、より緻密性に優れた外部電極を形成できる。
【0016】
ここに開示される外部電極用ペーストの好ましい一態様では、ガラス粒子は、TiOを実質的に含有しない。TiOを含むガラス粒子は、焼成中に結晶化しやすく、軟化流動しにくいという特徴を有している。このため、焼成後の電極の焼結性や緻密性を適切に確保するという観点から、ガラス粒子は、TiO2を実質的に含有しないことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】一実施形態に係る外部電極用ペーストを用いて製造したMLCCの構成を概略的に説明する断面模式図である。
図2】サンプル1を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図3】サンプル2を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図4】サンプル3を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図5】サンプル4を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図6】サンプル5を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図7】サンプル6を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図8】サンプル7を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図9】サンプル8を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図10】サンプル9を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図11】サンプル10を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図12】サンプル11を用いて形成した外部電極の断面SEM写真である。
図13】サンプル1を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図14】サンプル2を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図15】サンプル3を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図16】サンプル4を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図17】サンプル5を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図18】サンプル6を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図19】サンプル7を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図20】サンプル8を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図21】サンプル9を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図22】サンプル10を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
図23】サンプル11を用いて形成した外部電極の表面SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、ここに開示される技術の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここに開示される技術の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここに開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施できる。なお、本明細書において数値範囲を示す「A~B」との表記は「A以上B以下」を意味するものとする。
【0019】
[外部電極用ペースト]
ここに開示される外部電極用ペーストは、積層セラミック電子部品の外部電極の形成に用いられる。この外部電極用ペーストは、少なくとも、銅粒子(Cu粒子)と、ガラス粒子と、分散媒と、SiOフィラーとを含む。以下、ここに開示される外部電極用ペーストの各成分について説明する。
【0020】
1.Cu粒子
Cu粒子は、焼成後の外部電極の主成分となる材料である。上述した通り、Cu粒子は、安価であり、かつ、好適な導電性を有しているため、外部電極の主成分として広く使用されている。なお、ここに開示される技術の効果を著しく阻害しない限りにおいて、Cu粒子の形状は、特に限定されない。例えば、Cu粒子の形状は、球形あるいは非球形であってよい。非球形とは、例えば、板状、鱗片状、フレーク状、不定形状等であってよい。Cu粒子の充填密度を高め易いとの観点から、球形のCu粒子としては、例えば、アスペクト比が1.2以下、好ましくは1.15以下、例えば1.1以下のものを好ましく用いることができる。また、Cu粒子の接触面積を増大させ易いとの観点からは、非球形のCu粒子は、例えば、アスペクト比が1.2超過、好ましくは1.3以上、1.5以上、例えば1.7以上、さらに好ましくは2以上のものを用いるとよい。上記効果を相乗させる観点から、Cu粒子は、球形のものと非球形のものとが混合されていてもよい。これにより、ペーストから乾燥によって溶剤が除去されたときに、複数のCu粒子が好適に接触し、導電性膜の電気伝導性を高めることができる。なお、本明細書における「平均アスペクト比」は、電子顕微鏡観察に基づいて算出される。具体的には、アスペクト比は、電子顕微鏡写真において粒子に外接する矩形を描いたときの、短辺の長さ(a)に対する長辺の長さ(b)の比(b/a)である。そして、平均アスペクト比は、100個の粒子について得られたアスペクト比の算術平均値である。
【0021】
また、外部電極用ペーストにおけるCu粒子の含有量は、特に限定されず、必要に応じて適宜調節できる。なお、焼成後の外部電極の電気伝導性を向上するという観点から、Cu粒子の含有量は、60質量%以上が好ましく、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。一方、ガラス粒子及びSiOフィラーの含有量を一定以上確保するという観点から、Cu粒子の含有量の上限は、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。なお、本明細書における「含有量」は、特に言及がない場合、外部電極用ペーストの総質量を100質量%としたときの質量割合を意味するものとする。
【0022】
また、Cu粒子の粒子径は、特に限定されず、外部電極用ペーストの分野において採用され得る粒子径を特に制限なく適用できる。例えば、Cu粒子のメジアン径は、0.1μm以上でもよく、0.25μm以上でもよく、0.5μm以上でもよく、1μm以上でもよく、3μm以上でもよい。また、Cu粒子のメジアン径は、50μm以下でもよく、25μm以下でもよく、10μm以下でもよく、5μm以下でもよく、4μm以下でもよい。なお、本明細書における「メジアン径」は、レーザ回折散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒子径の小さい側からの積算値50%に相当する粒径(体積球相当径)である。
【0023】
また、ペースト中でのCu粒子の凝集を抑制するという観点から、Cu粒子のBET比表面積は、5m/g以下が好ましく、4m/g以下がより好ましく、3m/g以下がさらに好ましく、2m/g以下が特に好ましい。一方、Cu粒子のBET比表面積が大きくなると、Cu粒子同士の接触面積が増大するため、焼成後の外部電極の導電性が向上する傾向がある。かかる観点から、Cu粒子のBET比表面積は、0.1m/g以上が好ましく、0.2m/g以上がより好ましく、0.3m/g以上がさらに好ましく、0.4m/g以上が特に好ましい。なお、本明細書における「BET比表面積」は、吸着質として窒素(N)ガスを用いたガス吸着法(定容量吸着法)によって測定したガス吸着量に基づいて、BET法(例えばBET一点法)で算出した比表面積である。
【0024】
2.ガラス粒子
ここに開示される外部電極用ペーストは、焼成中に溶融して液状のガラス成分となるガラス粒子を含む。この液状のガラス成分は、Cu粒子の焼結体の間隙に充填されて外部電極を緻密化する機能を有している。そして、ここに開示されるガラス粒子は、当該ガラス粒子全体を100質量%としたとき、95質量%以上が酸化物換算の質量比で以下の組成を含んでいる。以下、ここに開示されるガラス粒子について説明する。
SiO :1質量%~10質量%;
:10質量%~20質量%;
ZnO :15質量%~30質量%;
Al :1質量%~10質量%;
RO :40質量%~60質量%;
【0025】
(1)ガラス粒子の組成
本項では、ここに開示されるガラス粒子の具体的な組成について説明する。
【0026】
(a)酸化ケイ素(SiO
SiOは、単独でガラス骨格を構成し得る成分(ガラス骨格構成成分)の一つである。このガラス骨格構成成分におけるSiOの割合が高くなるにつれて、ガラス粒子の熱的安定性が向上して軟化点が高温化する。すなわち、SiOを多く含むケイ酸系ガラスは、ペースト焼成中に充分に溶融させて、流動性に優れたガラス成分を生じさせることが難しい。かかる観点から、ここに開示される技術では、ガラス粒子中のSiOの含有比率が10質量%以下に設定されている。なお、ペースト焼成中のガラス粒子の溶融をさらに容易にするという観点から、ガラス粒子中のSiOの含有比率は、9質量%以下が好ましく、8.5質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、7.5質量%以下が特に好ましい。また、SiOは、ガラス粒子の耐化学性を高めるという機能も有している。このため、メッキ液に対する最低限の耐食性を確保するという観点から、SiOの含有比率の下限は、1質量%以上に設定される。なお、ガラス粒子の耐化学性性を向上させるという観点から、SiOの含有比率は、1.5質量%以上が好ましく、2.5質量%以上がより好ましく、3.5質量%以上がさらに好ましく、4質量%以上が特に好ましい。
【0027】
(b)酸化ホウ素(B
は、ガラス骨格構成成分の一つである。すなわち、ここに開示されるガラス粒子は、ガラス骨格にSiOとBを含むホウケイ酸系ガラスである。このホウケイ酸系ガラスでは、ガラス骨格におけるBの割合が高くなるにつれて、溶融後のガラス成分の流動性が向上する傾向がある。かかる観点から、ここに開示される技術では、ガラス粒子中のBの含有比率が10質量%以上に設定されている。なお、ガラス成分の流動性をさらに向上させるという観点から、Bの含有比率は、11質量%以上が好ましく、13質量%以上がより好ましく、14質量%以上が特に好ましい。これによって、溶融後のガラス成分をさらに拡散させやすくし、より優れた緻密性を有する外部電極を形成できる。一方、ガラス成分の流動性が高くなりすぎることによるガラス浮きを抑制するという観点から、Bの含有比率の上限は、20質量%以下に設定される。なお、ガラス浮きをより好適に抑制するという観点から、Bの含有比率は、19質量%以下が好ましく、18質量%以下がより好ましい。
【0028】
(c)酸化亜鉛(ZnO)
ZnOは、ガラス骨格を修飾し得る成分(ガラス骨格修飾成分)である。このZnOは、ガラスの溶融性を高めて焼成時のガラス成分の粘度を調整すると共に、耐水性や耐熱衝撃性などを向上するという機能を有している。ここに開示される技術では、焼成中のガラス成分の流動性を向上させるという観点から、ガラス粒子中のZnOの含有比率が15質量%以上に設定されている。なお、ガラス成分の流動性をさらに好適に向上させるという観点から、ガラス粒子中のZnOの含有比率は、16質量%以上が好ましく、18質量%以上がより好ましく、19.5質量%以上が特に好ましい。これによって、さらに緻密性に優れた外部電極を形成できる。一方、ガラス成分の流動性が高くなりすぎることによるガラス浮きを抑制するという観点から、ZnOの含有比率の上限は、30質量%以下に設定される。なお、ガラス浮きをより好適に抑制するという観点から、ZnOの含有比率は、28質量%以下が好ましく、26質量%以下がより好ましく、25質量%以下が特に好ましい。
【0029】
(d)酸化アルミニウム(Al
Alは、ガラス骨格を安定化させる機能を有しており、焼成後の外部電極の耐化学性に寄与する。ここに開示される技術では、焼成後の外部電極に最低限の耐化学性を付与するという観点から、ガラス粒子中のAlの含有比率が1質量%以上に設定されている。なお、より好適な耐化学性を有する外部電極を形成するという観点から、ガラス粒子中のAlの含有比率は、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、4質量%以上が特に好ましい。一方、ガラス粒子中のAlの含有比率が増加すると、焼成中のガラス成分の流動性が低下する傾向がある。このため、焼成初期のガラス成分に充分な流動性を生じさせるという観点から、Alの含有比率の上限は、10質量%以下に設定される。なお、焼成初期のガラス成分の流動性をより好適に向上させるという観点から、Alの含有比率は、9質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、7.5質量%以下が特に好ましい。
【0030】
(e)アルカリ土類金属酸化物
次に、ここに開示されるガラス粒子は、アルカリ土類金属酸化物(RO)を含有している。このアルカリ土類金属酸化物としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)などが挙げられる。これらのアルカリ土類金属酸化物は、ガラス骨格修飾成分であり、溶融後のガラス成分の粘性を低下させる機能を有している。すなわち、アルカリ土類金属酸化物を多く含むガラス粒子を焼成すると、外部電極全体に拡散しやすい高い流動性のガラス成分が生じる。これによって、焼成後の外部電極の緻密性を大きく向上できる。かかる観点から、ここに開示されるガラス粒子では、上述した通り、アルカリ土類金属酸化物(RO)の合計含有比率が40質量%以上に設定されている。なお、溶融後のガラス成分の粘性をさらに低下させるという観点から、アルカリ土類金属酸化物の合計含有比率は、42質量%以上が好ましく、43質量%以上がより好ましく、44質量%以上がさらに好ましく、45質量%以上が特に好ましい。一方、ガラス成分の流動性が高くなりすぎることによるガラス浮きを抑制するという観点から、ここに開示されるガラス粒子におけるアルカリ土類金属酸化物の合計含有比率は、60質量%以下に設定される。なお、ガラス浮きをより適切に抑制するという観点から、アルカリ土類金属酸化物の合計含有比率は、59質量%以下が好ましく、57質量%以下がより好ましく、55質量%以下が特に好ましい。
【0031】
なお、酸化バリウム(BaO)は、溶融後のガラス成分の粘性を特に大きく低下させることができるため、アルカリ土類金属酸化物の主成分として好適である。具体的なBaOの含有比率は、35質量%以上が好ましく、37.5質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましく、42質量%以上が特に好ましい。これによって、さらに優れた緻密性を有する外部電極を形成することができる。一方、ガラス成分の流動性が高くなりすぎることによるガラス浮きを抑制するという観点から、BaOの含有比率の上限は、55質量%以下が好ましく、52.5質量%以下がより好ましく、50質量%以下が特に好ましい。
【0032】
また、アルカリ土類金属酸化物の他の好適例として、酸化カルシウム(CaO)が挙げられる。このCaOは、ガラス成分の粘性を低下させる機能の他に、耐化学性や耐摩耗性を向上させる機能も有している。このため、ここに開示されるガラス粒子は、アルカリ土類金属酸化物の一部としてCaOを含んでいることが好ましい。具体的なCaOの含有比率は、1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、3.5質量%以上が特に好ましい。一方、CaOの含有比率の上限は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、4.5質量%以下が特に好ましい。
【0033】
(f)他の成分
なお、以上の説明は、ここに開示されるガラス粒子の組成を上記(a)~(e)の成分に限定することを意図したものではない。ここに開示されるガラス粒子は、SiOとB以外のガラス骨格形成成分として、P、Biなどを含んでいてもよい。また、ガラス骨格修飾成分として、LiO、NaO、KO、TiO、MnO、FeO、Fe、Fe、SnO、SnO、V、ZrO、Nb、CuO、CuO、La、CeOなどを含んでいてもよい。また、上述した通り、ここに開示されるガラス粒子は、上記(a)~(e)の成分の合計含有比率が95質量%以上となるように構成される。すなわち、上述した他の成分の合計含有比率は、5質量%以下(好適には4質量%以下、より好適には3質量%以下、さらに好適には2質量%以下、特に好適には1質量%以下)となる。
【0034】
なお、ガラス骨格修飾成分として例示した酸化チタン(TiO)は、ガラス粒子に実質的に含有されていないことが好ましい。TiOを含むガラス粒子は、焼成中に結晶化しやすく、軟化流動しにくいため、焼成後の電極の焼結性や緻密性を低下させるおそれがある。なお、焼成後の電極の焼結性や緻密性をより好適に確保するという観点から、TiOの含有比率は、0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましく、0.005質量%以下が特に好ましい。
【0035】
(2)ガラス粒子の形状・含有量等
次に、ガラス粒子の形状・含有量等に関する内容について説明する。
【0036】
(a)メジアン径
ここに開示される技術を限定するものではないが、ガラス粒子のメジアン径D50は、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましく、3μm以下が特に好ましい。ガラス粒子のメジアン径D50が小さくなるにつれて、ペースト焼成時にガラス粒子が溶融しやすくなる傾向がある。一方、ガラス粒子のメジアン径D50が小さくなりすぎると、ペースト中で無機粒子(Cu粒子、ガラス粒子)同士が凝集し、ペースト粘度が上昇しやすくなる。かかる観点から、ガラス粒子のメジアン径D50は、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.7μm以上がさらに好ましく、1μm以上が特に好ましい。なお、焼成後の外部電極の緻密性を考慮すると、ガラス粒子のメジアン径は、Cu粒子のメジアン径よりも小さい方が好ましい。これによって、粗大なCu粒子の隙間に微小なガラス粒子が配置されるため、焼成中にCu粒子の焼結体の間隙にガラス成分が充填されやすくなる。
【0037】
(b)アスペクト比
次に、ガラス粒子の形状は、特に限定されない。ガラス粒子は、球形でもよいし、非球形(例えばラグビーボール形状、柱状、針状など)でもよい。なお、ペーストの粘度上昇を抑制するという観点から、ガラス粒子は、球状または略球状であることが好ましい。例えば、ガラス粒子の平均アスペクト比は、典型的には1~2、好ましくは1~1.5であるとよい。
【0038】
(c)軟化点
また、ガラス粒子の軟化点は、650℃以下が好ましく、630℃以下がより好ましく、610℃以下がさらに好ましく、600℃以下が特に好ましい。これによって、Cuペースト用の低温焼成においても、好適な流動性を有するガラス成分を生じさせることができる。一方、ガラス成分の流動性が高くなりすぎることによるガラス浮きを抑制するという観点から、ガラス粒子の軟化点は、500℃以上が好ましく、520℃以上がより好ましく、540℃以上が特に好ましい。なお、本明細書における「軟化点」は、ガラスが自重で軟化変形し始める温度である。典型的には、軟化点は、JIS R 3103-1(2001)に準じて測定された「ガラス粘度が約107.6dPa・sとなる温度」とすることができる。
【0039】
(d)含有量
外部電極用ペーストにおけるガラス粒子の含有量は、必要に応じて適宜調節することが好ましい。なお、ガラス粒子の含有量が増加するにつれて、焼成後の外部電極の緻密性が向上する傾向がある。かかる観点から、外部電極用ペーストの総質量を100質量%としたときのガラス粒子の含有量は、2.5質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、7.5質量%以上がさらに好ましい。一方、ガラス浮きを抑制することを考慮すると、ガラス粒子の含有量の上限は、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0040】
3.SiOフィラー
次に、ここに開示される外部電極用ペーストは、SiOを主成分として含む無機フィラー(SiOフィラー)を含有することを特徴とする。上記組成のガラス粒子とSiOフィラーを同時に焼成すると、焼成中に拡散するガラス成分にSiOフィラーが順次溶解する。これによって、外部電極内に拡散するにつれて、ガラス成分がケイ酸系ガラスに変化する。このケイ酸系ガラスは流動性が低いため、外部電極の表面へのガラス浮きを抑制できる。以上の通り、上記組成のガラス粒子とSiOフィラーを同時に焼成することによって、焼成後の外部電極の緻密性を向上させつつ、電極表面へのガラス浮きを抑制できる。
【0041】
このSiOフィラーは、SiOを主成分として含む無機フィラー(無機粒子)である。ここでの「SiOを主成分として含む」とは、SiOフィラーを構成する成分のうちの最大成分がSiOであることを意味する。すなわち、SiOフィラーは、副成分として、SiO以外の無機成分を含んでいても良い。ここでの「SiO以外の無機成分」は、SiOフィラーの生成過程などにおいて混入し得る不可避的不純物であり、特定の金属元素に限定されない。例えば、SiOフィラーの純度(総重量に対するSiOの含有量)は、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、99%以上が特に好ましい。SiOフィラーの純度が高くなるにつれて、上述したガラス浮きを抑制する効果が発揮されやすくなる傾向がある。
【0042】
なお、外部電極用ペーストにおけるSiOフィラーの含有量が増加するにつれて、焼成後のガラス浮きが抑制されやすくなる傾向がある。かかる点を考慮すると、外部電極用ペーストの総質量を100質量%としたときのSiOフィラーの含有量は、例えば、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上が特に好ましい。一方、ガラス浮きの抑制という観点では、SiOフィラーの含有量の上限値は、特に限定されず、10質量%以下程度に設定できる。なお、SiOフィラーを含む無機フィラーの含有量を増大させすぎると、ガラス成分が流動しにくくなり、緻密性の低下が生じる可能性がある。このことを考慮すると、SiOフィラーの含有量の上限値は、7.5質量%以下でもよく、5質量%以下が好ましく、2.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以下が特に好ましい。
【0043】
また、ここに開示される技術を限定するものではないが、SiOフィラーのメジアン径D50は、1μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.08μm以下がさらに好ましく、0.07μm以下が特に好ましい。SiOフィラーのメジアン径D50が小さくなるにつれて、焼成中のガラス成分にSiOフィラーが溶解しやすくなる。一方、SiOフィラーのメジアン径D50が小さくなりすぎると、ペースト内の特定の位置に多量のSiOフィラーが凝集するおそれがある。この場合、焼成の進行(ガラス成分の拡散)に伴ってガラス成分の流動性を順次低下させる効果が生じにくくなる可能性がある。かかる観点から、ガラス粒子のメジアン径D50は、0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、0.03μm以上が特に好ましい。
【0044】
なお、SiOフィラーの形状は、特に限定されない。SiOフィラーは、球形でもよいし、非球形(例えば楕円状、円筒形状、扁平状、リン片状、フレーク状、針状、デンドライト状、棒状、繊維状、ウィスカー状、柱状、平板状、結晶状、樹枝状など)でもよい。なお、SiOフィラーは、球形状であることが好ましい。また、SiOフィラーの平均アスペクト比は、典型的には1.0~1.5、好ましくは1.0~1.2であるとよい。
【0045】
4.分散媒
分散媒は、上述した粉体材料(Cu粒子、ガラス粒子、SiOフィラー等)を分散させる液状媒体である。かかる分散媒の詳細な成分は、特に限定されず、外部電極用ペーストの調製に用いられ得る従来公知の分散媒を使用できる。また、分散媒は、乾燥および焼成によって消失することを前提とした成分であるため、沸点が約150℃以上300℃以下程度(例えば、170℃以上270℃以下程度)であることが好ましい。
【0046】
なお、分散媒の一例として、有機系分散媒(非水系分散媒)が挙げられる。このような有機系分散媒の一例として、メタノール、スクラレオール、シトロネロール、フィトール、ゲラニルリナロオール、テキサノール、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、1-フェノキシ-2-プロパノール、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、イソボルネオール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコール等のアルコール系溶剤;ターピネオールアセテート、ジヒドロターピネオールアセテート、イソボルニルアセテート、カルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;ミネラルスピリット等が挙げられる。これらのなかでも、アルコール系溶剤(例えばジヒドロターピネオール)を好ましく使用できる。
【0047】
なお、分散媒の含有割合は、外部電極用ペーストを塗布する際の作業性を考慮して適宜調整されていることが好ましい。なお、かかるペースト塗布時の作業性は塗布手段によって変動し得るため、分散媒の含有割合は特定の数値に限定されるものではない。一例として、塗布手段としてスクリーン印刷を採用する場合、分散媒の含有量は、5質量%~20質量%(好ましくは10質量%~15質量%)の範囲内に調節され得る。
【0048】
5.他の添加剤
なお、ここに開示される外部電極用ペーストは、ここに開示される技術の効果(緻密性向上とガラス浮きの抑制)を著しく損なわない限りにおいて、この種の外部電極用ペーストに使用され得る従来公知の添加剤を特に制限なく使用できる。例えば、外部電極用ペーストは、バインダ、分散剤、増粘剤、可塑剤、pH調整剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤(顔料、染料等)等を含有していてもよい。
【0049】
例えば、バインダ(結着剤)は、積層チップにペーストを塗布した際の定着性と、Cu粒子同士の結合性の向上に寄与する添加剤である。また、バインダは、分散媒と同様に、焼成時に消失する材料であることが好ましい。したがって、バインダは、有機バインダ(典型的には、焼失温度が500℃以下の有機化合物)であることが好ましい。なお、ここに開示される外部電極用ペーストにおけるバインダの具体的な成分は、特に限定されず、従来公知のバインダを特に制限なく使用できる。かかるバインダとしては、例えば、ロジン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン系樹脂等の有機高分子化合物が挙げられる。上述の分散媒との組み合わせにもよるため一概には言えないが、これらの有機化合物の中でも、セルロース系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリル系樹脂等がバインダとして好適である。バインダは、上述の有機化合物のいずれか1種を用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、バインダは、これらの有機化合物を共重合させた共重合体やブロック共重合体などであってもよい。なお、バインダの含有量は、好適な定着性が発揮できるように適宜調節されていることが好ましい。例えば、バインダの含有量は、1質量%以上が好ましく、1.5質量%以上がより好ましく、2質量%以上がさらに好ましく、2.5質量%以上が特に好ましい。一方、焼成後のバインダ残留を防止するという観点から、バインダの含有量は、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましく、7.5質量%以下が特に好ましい。
【0050】
また、分散剤は、ペースト中の無機粒子(Cu粒子、ガラス粒子、SiOフィラー等)の凝集を抑制する添加剤である。具体的には、分散剤は、無機粒子と分散媒との間の固液界面を安定化させ、無機粒子の凝集を防止する機能を有している。なお、分散剤の種類等は、特に限定されず、従来公知の分散剤を必要に応じて適宜選択できる。かかる分散剤の一例として、アニオン系分散剤が挙げられる。アニオン系分散剤は、無機粒子に対する吸着力に優れているため、無機粒子を長期にわたって適切に分散できる。このようなアニオン系分散剤として、カルボン酸系分散剤が挙げられる。かかるカルボン酸系分散剤の具体例としては、ステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、リノール酸、ラウリン酸、リノレン酸などが挙げられる。なお、また、外部電極用ペーストは、2種以上の分散剤を含有していてもよい。かかる分散剤の含有量は、0.05質量%~5質量%(好適には0.1質量%~1質量%、より好適には0.1質量%~0.5質量%)の範囲内で調節されていることが好ましい。
【0051】
[外部電極用ペーストの用途]
以上、ここに開示される外部電極用ペーストについて説明した。上記構成の外部電極用ペーストは、積層セラミック電子部品の製造に用いられる。以下、ここに開示される外部電極用ペーストの用途の一例として、積層セラミックコンデンサ(MLCC)の製造方法について説明する。かかる製造方法は、ペースト準備工程と、ペースト塗布工程と、焼成工程とを少なくとも含む。
【0052】
1.ペースト準備工程
本工程では、上記構成の外部電極用ペーストを準備する。本工程において外部電極用ペーストを調製する場合には、Cu粒子とガラス粒子とSiOフィラーを分散媒に添加し、従来公知の攪拌混合装置(例えばロールミル、マグネチックスターラー、プラネタリーミキサー、ディスパー等)を用いて撹拌するとよい。
【0053】
2.ペースト塗布工程
本工程では、外部電極用ペーストを、MLCCの本体である積層チップの表面の一部(例えば側面)に塗布する。外部電極用ペーストを塗布する方法としては、例えば、チップインディップ法や、ディスペンサー供給法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷およびインクジェット印刷等の印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。MLCCの外部電極を形成する場合、ディップ法がより好適である。
【0054】
3.焼成工程
本工程では、外部電極用ペーストが塗布された積層チップを所定の温度で焼成する。これによって、積層チップと外部電極を備えたMLCCが形成される。本工程では、ペースト中のCu粒子が焼結して多孔質の焼成体が形成されると共に、ガラス粒子が溶融して焼成体の空隙に充填される。このとき、ここに開示される外部電極用ペーストのガラス粒子は、溶融後のガラス成分の流動性が高くなるような組成(SiOの含有比率が少ない、アルカリ土類金属酸化物を多く含むなど)を有している。これによって、外部電極の全体にガラス成分を適切に拡散させ、緻密性に優れた外部電極を形成できる。そして、ここに開示される外部電極用ペーストには、SiOフィラーが含まれている。このため、焼成が進行してガラス成分が拡散するにつれて、ガラス成分にSiOフィラーが溶解する。これによって、流動性が低いケイ酸系ガラスが生じるため、外部電極の表面へのガラス浮きを抑制できる。以上の通り、ここに開示される外部電極用ペーストによると、焼成後の外部電極の緻密性を向上させつつ、電極表面へのガラス浮きを抑制できる。
【0055】
なお、本工程における焼成温度(最高焼成温度)は、500℃~1000℃程度が好ましく、600℃~900℃程度がより好ましい。導電性粒子としてCu粒子を含むCuペーストでは、上述した範囲の低温焼成が行われる。ここに開示される外部電極用ペーストは、このような低温焼成を実施した場合でも、ガラス成分の拡散を適切に生じさせることができるため、緻密性に優れた外部電極を形成することができる。そして、上述した通り、ここに開示される技術によると、低温焼成に適した流動性の高いガラス成分を使用した場合でも、焼成後の外部電極にガラス浮きが生じることを抑制できる。すなわち、ここに開示される技術は、低温焼成が実施されるCuペーストに対して特に好適に適用できる。
【0056】
[積層セラミックコンデンサ]
次に、ここに開示される外部電極用ペーストを用いて製造された積層セラミック電子部品の一例として、積層セラミックコンデンサ(MLCC)を説明する。図1は、MLCCの構成を概略的に説明する断面模式図である。
【0057】
図1に示すように、積層セラミックコンデンサ(MLCC)1は、多数の誘電体層20と内部電極層30とが、交互にかつ一体的に積層されて構成された積層チップ10を備えている。なお、図1中の誘電体層20及び内部電極層30は、従来公知のMLCCにおける構造及び材料を特に制限なく採用することができ、ここに開示される技術を限定する要素ではないため、詳しい説明を省略する。
【0058】
また、このMLCC1では、誘電体層20と内部電極層30とからなる積層チップ10の側面に、一対の外部電極40が設けられている。一例として、内部電極層30は、積層順で交互に異なる外部電極40に接続される。これにより、誘電体層20と、当該誘電体層20を挟む一対の内部電極層30とからなるコンデンサ構造が並列に接続された、小型大容量のMLCCが構築される。また、図示は省略するが、外部電極40の表面には金属メッキ層が形成される。
【0059】
そして、このMLCC1の外部電極40は、ここに開示される外部電極用ペーストを焼成することによって形成される。上述したように、ここに開示される外部電極用ペーストを用いて形成された外部電極40は、優れた緻密性を有している。このため、外部電極40の表面に金属メッキ層を形成する際に、積層チップ10の内部にメッキ液が侵入することを防止できる。加えて、この外部電極40は、ガラス浮きの発生が抑制されている。このため、外部電極40の表面に、電解メッキ処理を適切に実施できる。したがって、ここに開示される技術によると、積層チップ内へのメッキ液の侵入を抑制しつつ、外部電極の表面に適切なメッキ層を形成できる。
【0060】
なお、ここに開示される外部電極用ペーストの用途は、上述したMLCCに限定されない。ここに開示される外部電極用ペーストが使用され得る積層セラミック電子部品の他の例として、積層インダクタ、積層型圧電素子(積層バリスタ)などが挙げられる。これらの電子部品においても、緻密性が低い外部電極をメッキ液が通過して性能低下を生じさせる可能性がある。これに対して、ここに開示される外部電極用ペーストによると、外部電極の緻密性を向上させ、メッキ液の侵入を防止できる。このため、ここに開示される外部電極用ペーストを用いることによって、高性能の積層インダクタや積層バリスタなどを製造することができる。
【0061】
なお、ここに開示される技術は、以下の項目1~項目6に記載の外部電極用ペーストを包含する。
【0062】
[項目1]
積層セラミック電子部品の外部電極の形成に用いられる外部電極用ペーストであって、
少なくとも、Cu粒子と、ガラス粒子と、分散媒とを含み、
前記ガラス粒子は、当該ガラス粒子全体を100質量%としたとき、95質量%以上が酸化物換算の質量比で以下の組成:
SiO :1質量%~10質量%;
:10質量%~20質量%;
ZnO :15質量%~30質量%;
Al :1質量%~10質量%;
RO :40質量%~60質量%;
(ここで、Rはアルカリ土類金属から選択される少なくとも1種の元素を含む)を含み、 SiOを主成分として含む無機フィラーをさらに含む、外部電極用ペースト。
【0063】
[項目2]
前記外部電極用ペーストの全体を100質量%としたときに、前記無機フィラーの含有量が0.1質量%~10質量%である、項目1に記載の外部電極用ペースト。
【0064】
[項目3]
前記無機フィラーのメジアン径D50は、0.01μm~1μmである、項目1または2に記載の外部電極用ペースト。
【0065】
[項目4]
前記ガラス粒子の軟化点は、500℃~650℃である、項目1~3のいずれか一項に記載の外部電極用ペースト。
【0066】
[項目5]
前記ROは、少なくともBaOを含む、項目1~4のいずれか一項に記載の外部電極用ペースト。
【0067】
[項目6]
前記ガラス粒子は、TiOを実質的に含有しない、項目1~5のいずれか一項に記載の外部電極用ペースト。
【0068】
[試験例]
次に、ここに開示される技術に関する試験例を説明する。なお、以下に示す試験例は、ここに開示される技術を限定することを意図したものではない。
【0069】
1.サンプルの準備
(1)サンプル1
本サンプルでは、75質量%の板状Cu粒子(平均粒子径:4μm)と、7.5質量%のガラス粒子と、5質量%のバインダ(アクリル樹脂、分子量:15万~20万)と、0.3質量%の分散剤(カルボン酸系分散剤)と、12.2質量%の分散媒(ジヒドロターピネオール)とを混合した外部電極用ペーストを調製した。なお、サンプル1では、ガラス粒子として、以下の組成のガラスA(平均粒子径:1.5μm)を使用した。
【0070】
[ガラスAの組成]
SiO : 7.2質量%
:15.0質量%
ZnO :19.7質量%
Al : 7.2質量%
BaO :46.5質量%
CaO : 4.4質量%
【0071】
(2)サンプル2
本サンプルでは、74質量%のCu粒子と、8.14質量%のガラス粒子と、0.1質量%のSiOフィラー(平均粒子径:0.05μm)と、3.7質量%のバインダと、0.21質量%の分散剤と、13.45質量%の分散媒とを混合した外部電極用ペーストを調製した。すなわち、サンプル2では、SiOフィラーを添加した点を除いて、サンプル1と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0072】
(3)サンプル3
本サンプルでは、SiOフィラーの含有量を0.3質量%に増加させ、分散媒の含有量を13.25質量%に低減させた点を除いて、サンプル2と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0073】
(4)サンプル4
本サンプルでは、SiOフィラーの含有量を0.4質量%に増加させ、分散媒の含有量を13.15質量%に低減させた点を除いて、サンプル2と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0074】
(5)サンプル5
本サンプルでは、SiOフィラーの含有量を0.5質量%に増加させ、分散媒の含有量を13.05質量%に低減させた点を除いて、サンプル2と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0075】
(6)サンプル6
本サンプルでは、SiOフィラーの含有量を1質量%に増加させ、分散媒の含有量を12.95質量%に低減させた点を除いて、サンプル2と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0076】
(7)サンプル7
本サンプルでは、SiOフィラーの代わりに、1質量%のBaTiOフィラー(平均粒子径:0.3μm)を添加した点を除いて、サンプル5と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0077】
(8)サンプル8
本サンプルでは、SiOフィラーの代わりに、1質量%のZnOフィラー(平均粒子径:0.3μm)を添加した点を除いて、サンプル6と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0078】
(9)サンプル9
本サンプルでは、SiOフィラーの代わりに、1質量%のMnOフィラー(平均粒子径:0.05μm)を添加した点を除いて、サンプル6と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0079】
(10)サンプル10
本サンプルでは、SiOフィラーの代わりに、1質量%のMnフィラー(平均粒子径:0.3μm)を添加した点を除いて、サンプル6と同様の組成の外部電極用ペーストを調製した。
【0080】
(11)サンプル11
本サンプルでは、75質量%の板状Cu粒子(平均粒子径:4μm)と、7.5質量%のガラス粒子と、5質量%のバインダ(アクリル樹脂)と、0.3質量%の分散剤(カルボン酸系分散剤)と、12.2質量%の分散媒(ジヒドロターピネオール)とを混合した外部電極用ペーストを調製した。なお、サンプル11では、ガラス粒子として、以下の組成のガラスB(平均粒子径:2μm)を使用した。
【0081】
[ガラスBの組成]
SiO :25.0質量%
:23.0質量%
ZnO :18.2質量%
Al : 2.0質量%
BaO :24.4質量%
: 4.6質量%
MgO : 2.8質量%
【0082】
2.評価試験
(1)電極の形成
まず、0603サイズの積層セラミックコンデンサ素体(積層チップ)を準備し、当該積層チップの端面における内部電極が露出した部分に各サンプルのペーストを塗布した。なお、ペーストの塗布には、ディップコート法を使用した。その後、熱風式乾燥機を使用して、120℃、10分間の乾燥処理を行った。そして、形成された乾燥膜に対して焼成処理を実施することによって、MLCCの外部電極を形成した。なお、焼成温度は750℃に設定し、焼成時間は10分に設定した。また、昇温時間を含めた総処理時間(焼成開始から焼成終了までの時間)は1時間に設定し、焼成雰囲気は窒素雰囲気に設定した。
【0083】
(2)緻密性の評価
本評価では、各サンプルにおける外部電極の断面SEM写真を撮影し、当該外部電極の緻密性を目視で確認し、「◎」、「○」、「×」の三段階で評価した。サンプル1~11の各々の外部電極の断面SEM写真(倍率:2000倍)を図2図12に示す。また、各サンプルの評価結果を表1に示す。
【0084】
(3)ガラス浮き抑制効果の評価
本評価では、各サンプルにおける外部電極の表面SEM写真を撮影し、当該外部電極の表面におけるガラス浮きの程度を目視で確認し、「◎」、「○」、「×」の三段階で評価した。サンプル1~11の各々の外部電極の表面SEM写真(倍率:2000倍)を図13図24に示す。また、各サンプルの評価結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1及び図12に示すように、サンプル11では、多数の空隙を有する緻密性が低い外部電極が形成された。一方、図2図11に示すように、サンプル1~10では、一定以上の緻密性を有する外部電極が形成されていた。このことから、上記ガラスAのように、SiOの含有比率が10質量%以下、Bの含有比率が10質量%以上、アルカリ土類金属酸化物(BaO、CaO)の含有比率が40質量%以上のガラス粒子を使用すると、緻密性に優れた外部電極が形成できることが分かった。これは、上記組成のガラスは、溶融時の流動性が非常に高いためと推測される。
【0087】
次に、表1及び図13に示すように、サンプル1では、表面が非常に平滑な外部電極が形成されていた。これは、溶融したガラス成分が電極表面に浮上するガラス浮きが生じたためと解される。一方、外部電極用ペーストに無機フィラーを添加したサンプル2~10では、Cu粒子に由来する凹凸が電極表面に多数形成されており、ガラス浮きの発生が抑制されていた。これらの中でも、SiOフィラーを添加した場合には、サンプル2のようなフィラー添加量が極少量(0.1wt%)の場合でも、ガラス浮きを充分に抑制できることが分かった。さらに、サンプル3~6に示すように、SiOフィラーの添加量を0.3wt%以上にすると、ガラス浮きを特に好適に抑制できることが分かった。このことから、流動性の高いガラスを使用することによるガラス浮きを適切に防止するには、当該ペースト中にSiOフィラーを添加するとよいことが分かった。これは、ペースト中に分散したSiOフィラーが、ガラス成分に溶解して、当該ガラス成分の流動性を低下させるためと推測される。
【0088】
以上、本発明を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明はその主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
【符号の説明】
【0089】
1 積層セラミックコンデンサ(MLCC)
10 積層チップ
20 誘電体層
30 内部電極層
40 外部電極
図1
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