(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】金属セラミック基材を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20240213BHJP
B23K 1/19 20060101ALI20240213BHJP
B23K 1/008 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C04B37/02 B
B23K1/19 B
B23K1/008 C
(21)【出願番号】P 2022092781
(22)【出願日】2022-06-08
【審査請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・シュヴェーベル
(72)【発明者】
【氏名】アントン-ゾラン・ミリック
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ワッカー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・シュネー
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/199060(WO,A1)
【文献】特開平07-187839(JP,A)
【文献】特表2018-524250(JP,A)
【文献】国際公開第2022/244769(WO,A1)
【文献】特表2020-527461(JP,A)
【文献】特開平04-006179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/02
C23C 28/00
B23K 1/19
B23K 1/008
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属セラミック基材を製造するための方法であって、
a)積層体を準備するステップであって、前記積層体が、
a1)セラミック体と、
a2)金属箔と、
a3)前記セラミック体及び前記金属箔と接触したはんだ材料であって、前記はんだ材料が、
(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属と
を含む、はんだ材料と
を含有する、積層体を準備するステップと、
b)前記積層体を加熱するステップであって、
b1)前記積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-250℃に相当する温度に曝される持続期間を指す高温加熱持続期間が、60分以下である条件、
b2)前記積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-50℃に相当する温度に曝される持続期間を指すピーク温度加熱持続期間が、30分以下である条件、
b3)前記積層体が、100℃の温度から開始して、ピーク温度に到達するために必要とする期間を示す加熱持続期間が、60分以下である条件
のうちの少なくとも1つが満たされる、前記積層体を加熱するステップと
を含
み、
銀の割合が、前記はんだ材料の総金属重量に対して、3.0重量パーセント未満であり、
前記はんだ材料は、有機媒体を含有するペーストであり、有機媒体の割合は、前記ペーストの総重量に対して、5~80重量%である、方法。
【請求項2】
前記セラミック体の前記セラミックが、窒化アルミニウムセラミック、窒化ケイ素セラミック、及び酸化アルミニウムセラミックからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記金属箔の前記金属が、銅であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記はんだ材料が、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを有する(a)少なくとも1つの金属成分と、(b)有機媒体とを含むペーストであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも700℃の融点を有する前記金属が、銅であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
700℃未満の融点を有する前記金属が、錫、ビスマス、インジウム、ガリウム、亜鉛、アンチモン、及びマグネシウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記活性金属が、ハフニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、及びセリウムからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記積層体が、加熱のための加熱ゾーンを通過することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
非酸化性雰囲気が、前記加熱ゾーン内に存在することを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
窒素雰囲気が、前記加熱ゾーン内に存在することを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱が、連続炉において起こることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項12】
前記ピーク温度が、700~1100℃の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項13】
前記加熱持続期間が、5時間以下であり、前記加熱持続期間が、前記積層体が、加熱の際に、少なくとも200℃の温度に曝される持続期間に関係することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属セラミック基材を製造するための方法に関する。
【0002】
金属セラミック基材は、パワーエレクトロニクスの分野において重要な役割を果たす。金属セラミック基材は、電子構成要素の設計における重要な要素であり、これらの構成要素の動作中の大量の熱の迅速な放散を確実にする。金属セラミック基材は通常、セラミック層と、セラミック層に結合(connect)された金属層とからなる。
【0003】
金属層をセラミック層に結合するためのいくつかの方法が、従来技術から知られている。直接銅接合(Direct Copper Bonding、DCB)方法として知られている方法では、銅箔には、銅と反応性ガス(通常、酸素)との反応によって、銅よりも低い融点を有する銅化合物(通常、酸化銅)が表面上に提供される。このようにして処理された銅箔がセラミック体に適用され、複合物が焼成される場合、銅化合物は、溶融し、セラミック体の表面を濡らし、このため、安定した材料結合が、銅箔とセラミック体との間に発生する。この方法は、例えば、米国特許第3744120(A)号又は独国特許第2319854(C2)号に記載されている。
【0004】
明らかな利点にもかかわらず、DCB方法は、2つの大きい不利点を有する。第1に、方法は、比較的高い温度、すなわち、銅の融点をやや下回る温度で実施されなければならない。第2に、方法は、酸化アルミニウム又は表面上酸化した窒化アルミニウムなどの酸化物ベースのセラミックのみに使用され得る。したがって、より低い厳密性の条件下で金属セラミック基材を製造するための代替の方法の必要性がある。代替の方法では、金属箔は、約650~1000℃の温度でセラミック体に結合され得、ここで、特有のはんだが、使用され、該はんだは、少なくとも700℃の融点を有する金属(通常、銀)と、活性金属とを含有する。活性金属の役割は、セラミック材料と反応することと、したがって、セラミック材料と残りのはんだとの結合が反応層を形成することを可能にすることとであり、少なくとも700℃の融点を有する金属は、この反応層を金属箔に結合するために役立つ。例えば、特許4812985(B2)号では、50~89重量パーセントの銀と、また、銅、ビスマス、及び活性金属とを含有するはんだを使用して、銅箔をセラミック体に結合することが提案されている。この方法では、銅箔をセラミック体と確実に接合する(join)ことが可能である。銀の移行に関連する問題を回避するために、銀を含まないはんだを、金属箔をセラミック体と結合するために使用することが有利であり得る。これらのはんだは、例えば、高融点金属(特に、銅)、低融点金属(ビスマス、インジウム、又は錫など)、及び活性金属(チタンなど)をベースにする。このような技法は、例えば、独国特許出願公開第102017114893(A1)号に提案されている。使用されるはんだのベースは、異なる金属(銀の代わりに、銅)によって形成されており、これは、材料特性の変更につながり、他のはんだ成分及び修正された接合条件(joining condition)に関する適応をもたらすため、基本的に、この技法は、新しい独立したクラスの結合につながる。したがって、このようにして製造された金属セラミック基材は、金属層及びセラミック層に加えて、金属層とセラミック層との間に位置する接合層(bonding layer)を有し、該接合層は、活性金属を含有する。
【0005】
パワーエレクトロニクスの分野における着実に増加する要求に起因して、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを含有するはんだ材料を使用して製造された金属セラミック基材の熱及び電流伝導率を更に改善する必要性の増大もある。
【0006】
金属セラミック基材の熱及び電流伝導率を増加させるための以前の手法は、金属層とセラミック層との間の接合層の組成を変化させることに集中してきた。しかしながら、いくつかの理由から、接合層の組成が変更されないままであることが有利であり得る。したがって、例えば、接合層の所与の組成は、理想的には、熱及び電流伝導率以外の技術的要件を満たすことができる、又は容易に生成され得る、又は更により費用効果があることができる。したがって、適切なプロセス方策により、接合層の所与の組成について、金属セラミック基材の熱及び電流伝導率を改善することが有利である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、増加した熱及び電流伝導率を有する金属セラミック基材が、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを含有するはんだ材料を使用して得られ得る方法を提供することである。
【0008】
この目的は、請求項1に記載の方法により達成される。したがって、本発明は、金属セラミック基材を製造するための方法を提供し、該方法は、
a)積層体を準備するステップであって、積層体が
a1)セラミック体と、
a2)金属箔と、
a3)セラミック体及び金属箔と接触したはんだ材料であって、はんだ材料が、
(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、
(ii)700℃未満の融点を有する金属と、
(iii)活性金属とを含む、はんだ材料と
を含有する、積層体を準備するステップと、
b)積層体を加熱するステップであって、
b1)積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-250℃に相当する温度に曝される持続期間を指す高温加熱持続期間が、60分以下である条件、
b2)積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-50℃に相当する温度に曝される持続期間を指すピーク温度加熱持続期間が、30分以下である条件、
b3)積層体が、100℃の温度から開始して、ピーク温度に到達するために必要とする期間を示す加熱持続期間が、60分以下である条件
のうちの少なくとも1つが満たされる、積層体を加熱するステップとを含む。
【0009】
本発明による方法では、積層体が、最初に準備され、積層体は、セラミック体と、金属箔と、セラミック体及び金属箔と接触したはんだ材料とを含有する。
【0010】
したがって、はんだ材料は、好ましくは、積層体内のセラミック体と金属箔との間に位置する。好ましい実施形態によれば、積層体は、セラミック体と、(第1の)金属箔と、セラミック体及び第1の金属箔と接触した(第1の)はんだ材料と、第2の金属箔と、セラミック体及び第2の金属箔と接触した第2のはんだ材料を含有する。この実施形態によれば、(第1の)はんだ材料は、好ましくは、セラミック体と(第1の)金属箔との間に位置し、第2のはんだ材料は、好ましくは、セラミック体と第2の金属箔との間に位置する。更に、この実施形態によれば、第1のはんだ材料は、好ましくは、第2のはんだ材料に相当する。
【0011】
したがって、セラミック体は、好ましくは、第1の表面と、第2の表面とを有する。金属箔は、好ましくは、第1の表面を有する。第2の金属箔は、第2の金属箔が存在する場合、好ましくは、第1の表面を有する。したがって、好ましい実施形態によれば、積層体内で、(第1の)はんだ材料は、セラミック体の第1の表面と(第1の)金属箔の第1の表面との間に位置する。更に好ましい実施形態によれば、積層体は、セラミック体の第2の表面及び第2の金属箔の第1の表面と接触した第2のはんだ材料を含有する。この実施形態によれば、積層体内で、(第1の)はんだ材料は、好ましくは、セラミック体の第1の表面と(第1の)金属箔の第1の表面との間に位置し、第2のはんだ材料は、好ましくは、セラミック体の第2の表面と第2の金属箔の第1の表面との間に位置する。更に好ましい実施形態によれば、本発明によるはんだ材料に加えて、更なる層は、セラミック体と(第1の)金属箔との間に位置しない。更に別の実施形態によれば、本発明によるはんだ材料に加えて、更なる層は、第2の金属箔が存在する場合、セラミック体と第2の金属箔との間に位置しない。
【0012】
セラミック体のセラミックは、好ましくは、絶縁セラミックである。好ましい実施形態によれば、セラミックは、酸化物セラミック、窒化物セラミック、及び炭化物セラミックからなる群から選択される。更に好ましい実施形態によれば、セラミックは、金属酸化物セラミック、酸化ケイ素セラミック、金属窒化物セラミック、窒化ケイ素セラミック、窒化ホウ素セラミック、及び炭化ホウ素セラミックからなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、セラミックは、窒化アルミニウムセラミック、窒化ケイ素セラミック、及び酸化アルミニウムセラミック(例えば、ジルコニア強化アルミナ(Zirconia Toughened Alumina、ZTA)セラミックなど)からなる群から選択される。セラミック体は、好ましくは0.05~10mm、より好ましくは0.1~5mmの範囲、特に好ましくは0.15~3mmの範囲の厚さを有する。
【0013】
金属箔の金属は、好ましくは、銅、アルミニウム、及びモリブデンからなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、金属箔の金属は、銅及びモリブデンからなる群から選択される。とりわけ好ましい実施形態によれば、金属箔の金属は銅である。金属箔は、好ましくは0.01~10mmの範囲、より好ましくは0.03~5mmの範囲、特に好ましくは0.05~3mmの範囲の厚さを有する。
【0014】
はんだ材料は、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、(ii)700℃未満の融点を有する金属と、(iii)活性金属とを含む。
【0015】
好ましい実施形態によれば、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属、(ii)700℃未満の融点を有する金属、及び(iii)活性金属は、少なくとも1つの金属成分(metal component)の構成要素(constituent)として存在する。したがって、はんだ材料は、好ましくは、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、(ii)700℃未満の融点を有する金属と、(iii)活性金属とを含む少なくとも1つの金属成分を含む。例えば、はんだ材料は、少なくとも700℃の融点を有する金属を含有する金属成分(i)と、700℃未満の融点を有する金属を含有する金属成分(ii)と、活性金属を含有する金属成分(iii)とを含むことが好ましいことがある。更に、はんだ材料は、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属、(ii)700℃未満の融点を有する金属、及び(iii)活性金属からなる群からの一要素(a member)を含有する金属成分(i)と、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属、(ii)700℃未満の融点を有する金属、及び(iii)活性金属からなる群からの要素(members)であって、金属成分(i)に含有されない要素を含む金属成分(ii)とを含むことが好ましいことがある。「金属成分」という用語は、更に限定されない。金属及び金属合金に加えて、金属成分はまた、金属間化合物相(intermetallic phases)などの金属化合物、及び金属水素化物などの他の化合物を含む。したがって、好ましい実施形態によれば、金属成分は、金属、金属合金、及び金属化合物からなる群から選択される。
【0016】
はんだ材料は、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属を含む。少なくとも700℃の融点を有する金属は、好ましくは少なくとも850℃の融点を有し、特に好ましくは少なくとも1000℃の融点を有する。好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属は、銅、ニッケル、タングステン、及びモリブデンからなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、金属は、少なくとも700℃の融点を有する銅である。更に好ましい実施形態によれば、はんだ材料は、少なくとも700℃の融点を有する金属を含有する金属成分(i)を含む。特に好ましい実施形態によれば、はんだ材料は、銅を含有する金属成分(i)を含む。更に好ましい実施形態によれば、金属成分(i)は、銅である。
【0017】
はんだ材料は、(i)700℃未満の融点を有する金属を含む。700℃未満の融点を有する金属は、好ましくは600℃未満の融点を有し、特に好ましくは550℃未満の融点を有する。好ましい実施形態によれば、700℃未満の融点を有する金属は、錫、ビスマス、インジウム、ガリウム、亜鉛、アンチモン、及びマグネシウムからなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、金属は、700℃未満の融点を有する錫である。更に好ましい実施形態によれば、はんだ材料は、700℃未満の融点を有する金属を含有する金属成分(ii)を含む。特に好ましい実施形態によれば、金属成分(ii)は、700℃未満の融点を有する金属と更なる金属との合金である。更なる金属は、例えば、700℃未満の融点を有する金属、少なくとも700℃の融点を有する金属、及び活性金属からなる群から選択され得る。更に好ましい実施形態によれば、700℃未満の融点を有する金属を含有する金属成分(ii)は、錫、ビスマス、インジウム、ガリウム、亜鉛、アンチモン、マグネシウム、錫-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-アンチモン合金、錫-亜鉛-ビスマス合金、及びインジウム-錫合金からなる群から選択される。更に特に好ましい実施形態によれば、700℃未満の融点を有する金属を含有する金属成分(ii)は、錫、錫-銅合金、錫-ビスマス合金、錫-アンチモン合金、錫-亜鉛-ビスマス合金、及びインジウム-錫合金からなる群から選択される。
【0018】
はんだ材料は、活性金属を含む。活性金属は、好ましくは、はんだ材料の成分から形成されたはんだとセラミックとの間の接合を化学反応によって生成する金属である。好ましい実施形態によれば、活性金属は、ハフニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、タンタル、バナジウム、及びセリウムからなる群から選択される。より好ましい実施形態によれば、活性金属は、ハフニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、及びセリウムからなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、活性金属は、ハフニウム、チタン、及びジルコニウムからなる群から選択される。とりわけ好ましい実施形態によれば、活性金属は、チタンである。更に好ましい実施形態によれば、はんだ材料は、活性金属を含有する金属成分(iii)を含む。特に好ましい実施形態によれば、金属成分(iii)は、活性金属合金又は活性金属化合物、特に好ましくは活性金属水素化物である。金属成分(iii)は、好ましくは、水素化チタン、チタン-ジルコニウム-銅合金、水素化ジルコニウム、及び水素化ハフニウムからなる群から選択される。特に好ましい実施形態によれば、金属成分(iii)は、水素化ハフニウム、水素化チタン、及び水素化ジルコニウムからなる群から選択される。とりわけ好ましい実施形態によれば、金属成分(iii)は、水素化チタンである。
【0019】
好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属の割合は、はんだ材料の総金属重量に対して、50~90重量パーセント、より好ましくは55~90重量パーセント、特に好ましくは65~90重量パーセント、とりわけ好ましくは70~90重量パーセントである。更に好ましい実施形態によれば、700℃未満の融点を有する金属の割合は、はんだ材料の総金属重量に対して、5~45重量パーセント、より好ましくは5~40重量パーセント、特に好ましくは5~30重量パーセント、とりわけ好ましくは5~25重量パーセントである。更に別の好ましい実施形態によれば、活性金属の割合は、はんだ材料の総金属重量に対して、1~20重量パーセント、より好ましくは1~15重量パーセント、特に好ましくは1~12重量パーセント、とりわけ好ましくは1~10重量パーセントである。
【0020】
はんだ材料は、好ましくは、銀を含まない、又は低銀である。したがって、銀の比は、はんだ材料の総金属重量に対して、好ましくは3.0重量パーセント未満、特に好ましくは1.0重量パーセント未満、とりわけ好ましくは0.2重量パーセント未満である。銀の非存在又は少量の銀のみの存在に起因して、完成した金属セラミック基材内の接合層の縁部における銀の移行は、回避され得る又は低減され得る。驚くべきことに、本発明による方法はまた、このような低減された銀含有量で、金属セラミック基材の電流及び熱伝導率を改善することができることが見出された。はんだのベースとしての銀の置き換えに起因して、このような金属セラミック基材が、実際には、異なる材料特性を有する独立した接合クラスをもたらし、これが、部分的に、他のはんだ成分及び修正された接合条件に関する適応を必要とする場合、これは、驚くべきことである。
【0021】
更に好ましい実施形態によれば、はんだ材料は、低ケイ素である、又はケイ素を含まない。したがって、ケイ素の割合は、はんだ材料内の全ての金属及び半金属の総重量に対して、好ましくは3.0重量パーセント未満、より好ましくは1.0重量パーセント未満、とりわけ好ましくは0.5重量パーセント未満である。
【0022】
はんだ材料は、セラミック体及び金属箔と接触している。したがって、はんだ材料は、好ましくは、セラミック体と金属箔との間に位置する。例えば、はんだ材料は、セラミック体上に提供されてもよく、次いで、金属箔は、はんだ材料上に適用されてもよい。はんだ材料は、好ましくは、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを有するペースト、フィルム、及び堆積物からなる群から選択される少なくとも1つの材料である。したがって、はんだ材料はまた、異なる組成の2つ以上の材料から形成されてもよい。例えば、好ましくはセラミック体と直接接触した第1の材料は、活性金属を含有する金属成分(iii)を有してもよく、好ましくは第1の材料と金属箔との間に配置された第2の材料は、少なくとも700℃の融点を有する金属を含有する金属成分(i)と、700℃未満の融点を有する金属を含有する金属成分(ii)とを有してもよい。
【0023】
はんだ材料は、ペーストであってもよい。ペーストは、好ましくは、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを有する(a)少なくとも1つの金属成分と、(b)有機媒体とを含有する。
【0024】
有機媒体は、好ましくは、典型的には当該技術分野において使用される有機媒体である。有機媒体は、好ましくは、有機バインダー、有機分散媒、又はこれらの混合物を含有する。
【0025】
有機バインダーは、好ましくは、加熱の際に、はんだ材料から除去される。有機バインダーは、好ましくは、熱可塑性物質(thermoplastics)又は熱硬化性物質(thermosets)を含む。有機バインダーの例には、セルロース誘導体(エチルセルロース、ブチルセルロース、及びセルロースアセテートなど)、ポリエーテル(ポリオキシメチレンなど)、及びアクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート及びポリブチレンメタクリレートなど)が挙げられる。
【0026】
有機分散媒は、好ましくは、適切な粘度をペーストに付与しペーストの乾燥の際に又は加熱の際に排出される有機化合物である。有機分散媒は、例えば、脂肪族アルコール、テルペンアルコール、脂環式アルコール、芳香族環状カルボン酸エステル、脂肪族エステル、カルビトール、及び脂肪族ポリオールから選択されてもよい。有機分散媒の例には、オクタノール、デカノール、テルピネオール(例えば、ジヒドロテルピネオール)、シクロヘキサノール、フタル酸ジブチル、カルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、ブタンジオール、及びグリセロールが挙げられる。
【0027】
また、ペーストは、通例の添加剤を含有することができる。このような添加剤の例には、無機バインダー(ガラスフリットなど)、安定剤、界面活性剤、分散剤、レオロジー調整剤、湿潤助剤、消泡剤、充填剤、及び硬化剤が挙げられる。
【0028】
好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを有する少なくとも1つの金属成分の割合は、ペーストの総重量に対して、20~95重量パーセント、より好ましくは30~95重量パーセント、特に好ましくは75~95重量パーセントである。更に好ましい実施形態によれば、有機媒体の割合は、ペーストの総重量に対して、5~80重量パーセント、より好ましくは5~70重量パーセント、特に好ましくは5~25重量パーセントである。
【0029】
更に好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを有する(a)少なくとも1つの金属成分の総重量と(b)有機媒体の重量との比は、少なくとも5:1、特に好ましくは少なくとも7:1、とりわけ好ましくは少なくとも8:1である。更に好ましい実施形態によれば、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを有する(a)少なくとも1つの金属成分の総重量と(b)有機媒体の重量との比は、1:1~20:1の範囲、特に好ましくは2:1~20:1の範囲、とりわけ好ましくは5:1~15:1の範囲である。
【0030】
積層体を準備するために、ペーストは、好ましくは、セラミック体の表面上に適用される。ペーストは、例えば、分散プロセス又は印刷プロセスにより、適用されてもよい。好適な印刷方法は、例えば、スクリーン印刷方法、インクジェット印刷方法、及びオフセット印刷方法である。ペーストは、好ましくは、スクリーン印刷方法により、セラミック体の表面上に適用される。
【0031】
ペースト適用後に、ペーストは、必要に応じて、予備乾燥を受けてもよい。予備乾燥は、室温又は高温で起こってもよい。予備乾燥についての条件は、ペーストに含有された有機媒体に依存して、変化し得る。予備乾燥温度は、例えば、50~180℃の範囲であってもよく、好ましくは80~150℃の範囲である。予備乾燥は、通常、2分間~2時間の期間の間、好ましくは5分間~1時間の期間の間、起こる。
【0032】
その後、金属箔は、金属箔の表面でペースト上に適用され得、これは、必要に応じて、予備乾燥を受けて、積層体を得る。
【0033】
はんだ材料はまた、フィルムであってもよい。
【0034】
フィルムは、(i)少なくとも700℃の融点を有する金属と、(ii)700℃未満の融点を有する金属と、(iii)活性金属とを含む。加えて、フィルムは、例えば、好適なバインダーなどの更なる成分を含んでもよい。
【0035】
フィルムは、例えば、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属と、任意選択で、更なる構成要素とを有する少なくとも1つの金属成分が、均質化され、少なくとも700℃の融点を有する金属、700℃未満の融点を有する金属、及び活性金属の融解温度を下回るが、金属間の接合を形成するのに十分である温度に加熱されることによって、得られてもよい。この温度は、例えば、少なくとも200℃であり得る。
【0036】
代替として、フィルムは、例えば、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、活性金属とを有する少なくとも1つの金属成分とバインダーとが混合され、混合物が、グリーン体(green body)に形成され加熱されることによって、得られてもよい。加熱の際に、バインダーは、硬化し得、金属がその内に分配されているマトリックスを形成し得る。
【0037】
積層体を得るために、フィルムは、例えば、セラミック上に置かれてもよい。その後、金属箔は、積層体を得るために、金属箔の表面で、セラミック上に位置するフィルム上に適用されてもよい。
【0038】
更なる実施形態によれば、はんだ材料は、堆積物であってもよい。はんだ材料の堆積物は、例えば、ガルバニック堆積(galvanic deposition)又は化学蒸着により、生成されてもよい。はんだ材料の堆積物は、好ましくはセラミック体上に生成される。その後、金属箔は、積層体を得るために、セラミック上に堆積されたはんだ材料上に適用されてもよい。
【0039】
積層体の加熱は、好ましくは、金属セラミック基材を得るように起こる。好ましい実施形態によれば、加熱が起こり、ここで、金属セラミック基材は、はんだ材料によるセラミック体と金属箔との間の材料接合の形成で得られる。材料接合の形成は、好ましくは、活性金属がセラミック体との接合を始め、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、金属箔の金属とが結合されて合金を形成するように起こる。その後の凝固の際に、材料接合は、はんだ材料によりセラミック体と金属箔との間に形成される。
【0040】
積層体の加熱は、好ましくは、セラミック体と金属箔との間の材料接合がはんだ材料により生成されるように起こる。
【0041】
積層体を加熱する際に、条件のうちの少なくとも1つ、特に好ましくは少なくとも2つ(すなわち、条件b1及び条件b2、又は条件b1及び条件b3、又は条件b2及び条件b3)、とりわけ好ましくは以下の条件の全てが満たされる。
【0042】
b1)積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-250℃に相当する温度に曝される持続期間を指す高温加熱持続期間が、60分以下である条件、
b2)積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-50℃に相当する温度に曝される持続期間を指すピーク温度加熱持続期間が、30分以下である条件、
b3)積層体が、100℃の温度から開始して、ピーク温度に到達するために必要とする期間を示す加熱持続期間が、60分以下である条件。
【0043】
加熱の際に、積層体は、ピーク温度に加熱される。ピーク温度は、更に限定されず、好ましくは、少なくとも700℃の融点を有する金属の融点以下であり、金属箔の金属の融点よりも低い。好ましい実施形態によれば、ピーク温度は、金属箔の金属の融点を、少なくとも10℃、特に好ましくは少なくとも50℃下回る。更に好ましい実施形態によれば、ピーク温度は、少なくとも700℃である。ピーク温度は、好ましくは700~1100℃の範囲、特に好ましくは750~1050℃の範囲、とりわけ好ましくは800~1000℃の範囲である。本明細書で使用される場合、ピーク温度とは、熱電対によって積層体において測定される温度を指す。したがって、ピーク温度は、積層体において測定される最大温度である。溶融金属の流動性が高すぎることに起因する溶融金属の過度の収縮又は滲出などの不利な効果を防止するために、当業者は、過度に高いピーク温度を回避しようとする。
【0044】
加熱の際に、積層体は、加熱持続期間の間、温度チャージング(temperature charging)を経験する。本明細書では、加熱持続期間とは、好ましくは、積層体が、加熱の際に、少なくとも200℃の温度に曝される期間を指す。加熱持続期間は、加熱持続期間が、結合される表面の濡れ、及び結合される表面の材料可用性を確実にするのに十分である限り、更に限定されない。好ましい実施形態によれば、加熱持続期間は、少なくとも5分、特に好ましくは少なくとも10分である。更に好ましい実施形態によれば、加熱持続期間は、5時間以下、特に好ましくは2時間以下、とりわけ好ましくは90分以下である。加熱持続期間は、好ましくは5分~5時間の範囲、特に好ましくは5分~2時間の範囲、とりわけ好ましくは10~90分の範囲である。
【0045】
加熱の際に、積層体は、高温加熱持続期間の間、温度チャージングを経験する。本明細書では、高温加熱持続期間とは、好ましくは、積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-250℃に相当する温度に曝される持続期間を指す。したがって、900℃の例示的なピーク温度を考慮すれば、高温加熱持続期間は、積層体が、加熱の際に、少なくとも650℃の温度に曝される持続期間に相当する。好ましい実施形態(条件b1)によれば、高温加熱持続期間は、60分以下、より好ましくは50分以下、特に好ましくは45分以下、とりわけ好ましくは40分以下である。高温加熱持続期間は、好ましくは2~60分の範囲、より好ましくは3~50分の範囲、特に好ましくは5~45分の範囲、とりわけ好ましくは10~40分の範囲である。
【0046】
加熱の際に、積層体は、ピーク温度加熱持続期間の間、温度チャージングを経験する。本明細書では、ピーク温度加熱持続期間とは、好ましくは、積層体が、加熱の際に、少なくともピーク温度-50℃に相当する温度に曝される持続期間を指す。したがって、900℃の例示的なピーク温度を考慮すれば、ピーク温度加熱持続期間は、積層体が、加熱の際に、少なくとも850℃の温度に曝される持続期間に相当する。好ましい実施形態(条件b2)によれば、ピーク温度加熱持続期間は、30分以下、より好ましくは25分以下、特に好ましくは20分以下、とりわけ好ましくは15分以下である。ピーク温度加熱持続期間は、好ましくは1~30分の範囲、より好ましくは1~25分の範囲、特に好ましくは2~20分の範囲、とりわけ好ましくは3~15分の範囲である。
【0047】
更に特に好ましい実施形態によれば、高温加熱持続期間は、10~40分の範囲であり、ピーク温度加熱持続期間は、3~15分の範囲である。
【0048】
更に好ましい実施形態によれば、ピーク温度加熱持続期間(分)と加熱持続期間(分)との比は、1:2以下である。ピーク温度加熱持続期間(分)と加熱持続期間(分)との比は、好ましくは1:2~1:15の範囲、より好ましくは1:2~1:10の範囲、特に好ましくは1:2~1:7の範囲、とりわけ好ましくは1:3~1:6の範囲である。驚くべきことに、ピーク温度加熱持続期間(分)と加熱持続期間(分)との特定の範囲の比を考慮すれば、金属セラミック基材の熱及び電流伝導率が更に改善され得ることが見出された。
【0049】
加熱の際に、温度チャージングが、加熱持続期間の間、起こる。したがって、加熱持続期間とは、好ましくは、積層体が、100℃の温度から開始して、ピーク温度を達成するために必要とする期間を示す。好ましい実施形態(条件b3)によれば、加熱持続期間は、60分以下、特に好ましくは45分以下、とりわけ好ましくは30分以下である。加熱持続期間は、好ましくは1~60分の範囲、より好ましくは5~45分の範囲、特に好ましくは10~30分の範囲である。
【0050】
驚くべきことに、積層体が加熱され、したがって、条件b1、b2、及びb3のうちの少なくとも1つが満たされ、したがって、60分の高温加熱持続期間が超えられず、30分のピーク温度が超えられず、及び/又は60分の加熱持続期間が超えられない場合、改善された熱及び電流伝導率を有する金属セラミック基材が得られ得ることが見出された。
【0051】
理論に拘束されないが、これは、積層体が、低い高温加熱持続期間、低いピーク温度加熱持続期間、及び/又は低い加熱持続期間において、制限されたエネルギー入力のみを経験し、該制限されたエネルギー入力が、はんだ材料によるセラミック体と金属箔との間の材料接合を生成するのに十分である一方、該制限されたエネルギー入力が、金属箔内への少なくとも700℃の融点を有する金属及び700℃未満の融点を有する金属の過度の拡散が回避されるように、制限されていることに起因し得る。この低減された拡散は、次いで、完成した金属セラミック基材における改善された電流及び熱伝導率を生じさせることができる。
【0052】
積層体は、好ましくは、加熱ゾーンから開始して、加熱のために必要とされるエネルギー入力が、積層体の方向で起こるように加熱される。材料接合の形成は、好ましくは、活性金属がセラミック体との接合を始め、少なくとも700℃の融点を有する金属と、700℃未満の融点を有する金属と、金属箔の金属とが結合されて合金を形成するように起こる。その後の凝固の際に、材料接合は、はんだ材料によりセラミック体と金属箔との間に形成される。
【0053】
積層体及び加熱ゾーンの配置は、更に限定されない。
【0054】
積層体及び加熱ゾーンはそれぞれ、静的に配置されてもよい。
【0055】
一方、積層体が加熱のための加熱ゾーンを通過することが好ましいことがある。
【0056】
この好ましい実施形態によれば、加熱ゾーン内では、はんだ材料によるセラミックと金属箔との間の材料接合の形成を可能にする条件が存続する。加熱ゾーン内に存在する温度及び雰囲気は、好ましくは、調整可能である。加熱ゾーンは、好ましくは、入口と、出口とを有する。加熱ゾーンを通過した際に、積層体は、好ましくは、入口を介して加熱ゾーン内に入り、出口を介して加熱ゾーンから出る。入口は、好ましくは、出口とは異なる。
【0057】
更に好ましい実施形態によれば、積層体及び加熱ゾーンは、積層体が加熱ゾーンを通過することを可能にするために、加熱ゾーンの位置に対する積層体の位置が変更され得るように配置されている。積層体と加熱ゾーンとの間の距離は、好ましくは、加熱ゾーンの通過の前に減少し、加熱ゾーンの通過の際に最小に到達し、加熱ゾーンの通過の後に増加する。好ましい実施形態によれば、積層体と加熱ゾーンとの相対的運動が起こり、ここで、積層体及び加熱ゾーンは、最初に、互いに対する相対的運動を行い、通過後に、互いに離れる相対的運動を実行する。このために、積層体は、静止して配置されてもよく、加熱ゾーンは、可動であるように配置されてもよく、積層体は、可動であるように配置されてもよく、加熱ゾーンは、静止して配置されてもよく、又は積層体及び加熱ゾーンは、可動であるように配置されてもよい。
【0058】
したがって、加熱ゾーンを通過した際に、積層体は、好ましくは、温度チャージングを経験する。したがって、通過の際に、積層体は、セラミック体と金属箔との間の材料接合の形成のために必要とされる温度増加を確実にする、加熱ゾーンからの距離にある。
【0059】
驚くべきことに、積層体が、加熱の際に、加熱ゾーンを通過する場合、更に改善された熱及び電流伝導率を有する金属セラミック基材が得られ得ることが見出された。理論に拘束されないが、これは、加熱ゾーンの通過がエネルギー入力の目標制御を可能にするということに起因し得る。積層体が加熱ゾーンを通過する場合、加熱ゾーン内の温度、及び積層体が加熱ゾーンを通過する速度は、理想的には、積層体の構造及び寸法に一致することができ、このため、セラミック体と金属箔との間の材料接合の形成のために必要とされるエネルギー入力のみが起こる。これは、過度に強いエネルギー入力がたびたび、金属箔内への少なくとも700℃の融点を有する金属及び700℃未満の融点を有する金属の増加した拡散につながり、これが最終的に、完成した金属セラミック基材における電流及び熱伝導率の減少を生じさせ得ることを防止する。更に、温度及び加熱ゾーン内に含まれたガス(例えば、不活性ガス)の均一な分配が、加熱ゾーンの通過の際に、確実にされる。結果として、複数の金属セラミック基材が本発明による方法を使用して製造されたときに、従来の方法(例えば、バッチ炉を使用する)と比較して、製造された金属セラミック基材の品質のより低いばらつきが発生する。これに関して、積層体が加熱ゾーンを通過する、加熱ゾーンの方向での積層体の相対的運動は、(例えば、バッチ炉における)静的な加熱と比較して有利であることが見出された。
【0060】
特に好ましい実施形態によれば、積層体の加熱は、炉、好ましくは連続炉において起こる。
【0061】
炉は、好ましくは、加熱ゾーンと、搬送システムとを有する。積層体は、好ましくは、搬送システム上に配置される。加熱ゾーン及び搬送システムは、好ましくは、加熱ゾーンを通過する間に積層体の加熱を可能にするために、加熱ゾーンの位置に対する積層体の位置が変更され得るように設計されている。したがって、加熱ゾーン及び搬送システムは、好ましくは、積層体と加熱ゾーンとの間の距離が、加熱ゾーンを通過する際の距離が最小になるまで低減され得、距離が、加熱ゾーンを通過した後に増加することができるように設計されている。したがって、好ましい実施形態によれば、加熱ゾーン及び搬送システムは、積層体及び加熱ゾーンが、最初に、互い対する相対的運動を行い、通過後に、互いに離れる相対的運動を実行するように、相対的運動のために設計されている。
【0062】
炉は、好ましくは、連続炉であってもよい。したがって、好ましい実施形態によれば、積層体の加熱は、連続炉において起こり、ここで、積層体は、加熱の際に、連続炉の加熱ゾーンを通過する。連続炉は、好ましくは、少なくとも1つの加熱ゾーンを有し、例えば、回転コンベヤチェーン、移送システムローラ、又は移送スライドシステムを、ワークピースが加熱ゾーンを通過してその上で移送され得る搬送システムとして有する。加熱ゾーンの前及び加熱ゾーンの後の移送方向で、更なるゾーンが、連続炉内に位置してもよい。したがって、冷却ゾーンが連続炉内の加熱ゾーンの後に位置することは有利であり得る。また、ゾーンへのガス(例えば、窒素などの不活性ガス)の供給がそれらを介して起こることができるガス入口及びガス出口は、加熱ゾーン内に、及び任意選択で存在する更なるゾーン内に位置することが有利であり得る。このような連続炉は、従来技術(例えば、独国特許第4008979(C1)号及び欧州特許第0085914(A2)号を参照されたい)から十分に知られている。
【0063】
本発明による方法の好ましい実施形態によれば、積層体は、最初に、基材上に適用される。基材は、例えば、炭化ケイ素から作製されてもよい。炭化ケイ素から作製された基材には、更なるコーティング、例えば、グラファイト箔が提供されてもよい。
【0064】
その後、好ましくは基材上に配置された積層体は、好ましくは、搬送システム、例えばコンベヤベルト上に置かれる。コンベヤベルトは、例えば、連続炉のコンベヤチェーン、移送ローラシステム、又は移送スライドシステムであってもよい。
【0065】
好ましい実施形態によれば、積層体は、搬送システム上で加熱ゾーンを通過する。搬送システムは、好ましくは、例えばローラにより駆動される。
【0066】
非酸化性雰囲気が、好ましくは、加熱ゾーン内に存在する。非酸化性雰囲気は、好ましくは、不活性ガス雰囲気である。窒素雰囲気、ヘリウム雰囲気、又はアルゴン雰囲気が、好ましくは、加熱ゾーン内に存在する。特に好ましい実施形態によれば、窒素雰囲気が、加熱ゾーン内に存在する。非酸化性雰囲気中の反応性ガス、特に、酸素の割合は、好ましくは1000ppm未満、より好ましくは500ppm未満、特に好ましくは40ppm未満である。
【0067】
金属セラミック基材を得るためのはんだ材料によるセラミック体と金属箔との間の材料接合の形成は、好ましくは、積層体を加熱した際に起こる。金属セラミック基材は、必要に応じて、更なる処理ステップに供されてもよい。例えば、金属セラミック基材、好ましくは、金属セラミック基材の金属箔の露出表面が、研磨されてもよい。金属セラミック基材の金属箔の表面は、好ましくは、物理的又は化学的に研磨される。金属セラミック基材はまた、構造化されてもよい。例えば、金属セラミック基材には、導体トレースが提供されてもよい。導体トレースは、好ましくは、エッチングによって生成される。
【0068】
本発明によって製造された金属セラミック基材は、特に、エレクトロニクスにおける用途、とりわけ、パワーエレクトロニクスの分野における用途のために使用されてもよい。
【実施例】
【0069】
実施例では、金属セラミック基材が、様々な条件下で製造された。したがって、セラミック体と、金属箔と、セラミック体及び金属箔と接触したはんだ材料とを含有する積層体のそれぞれが、準備され、その後、加熱された。はんだ材料は、銅、錫、及びチタンを金属として含有する標準的なペーストであった。次いで、電流及び熱伝導率が、定性的に評価された。同等の結果(comparable results)がまた、他の材料の組み合わせで達成され得る
【0070】
実施例1
金属セラミック基材の製造のために、最初に、31.67重量パーセントのSnCu0.7粉末、7.24重量パーセントの水素化チタン、及び、Texanolを含有する9.50重量パーセントの有機賦形剤が、35Hzで20分間、スタンドミキサーにおいて混合された。その後、51.59重量パーセントの銅粉末が、徐々に(in increments)添加された。このようにして生成された混合物は、均質なペーストが得られるまで高速で撹拌された。
【0071】
このようにして生成されたペーストを使用して、セラミック体は、セラミック体の対向する表面上で、銅箔に両側上で接合された。このために、(Tosiba Materialsから入手可能な)寸法177.8×139.7×0.32mmを有するセラミック体のそれぞれが、使用され、該セラミック体は、同一の前側及び後側調達を有した。ペーストは、165メッシュスクリーンによって、このようなセラミック体の後側上の寸法137×175mm2の領域にスクリーン印刷され、125℃で15分間予備乾燥を受けた。予備乾燥後のペーストの厚さは、35±5μmであった。その後、このようにして生成された配置(arrangement)は、反転され、ペーストは、同様に、セラミック体の前側上に印刷され、予備乾燥を受けた。その後、ペーストが両側上に提供されたセラミックには、両側上で、99.99%の純度及び174×137×0.3mmの寸法を有する無酸素高導電性銅から作製された銅箔が提供されて、銅箔-予備乾燥済みペースト-セラミック-予備乾燥済みペースト-銅箔の構造を有する積層体が得られた。
【0072】
次いで、積層体は、連続炉において加熱された。このために、最初に、グラファイト箔がその上に適用された炭化ケイ素板が、連続炉のコンベヤチェーン上に置かれた。積層体は、グラファイト箔上に置かれ、次いで、該積層体は、更なるグラファイト箔で覆われ、該積層体には、更なる炭化ケイ素板(重量=600g)で重みがかけられた。その後、構造体は、連続炉の加熱ゾーンを通過してコンベヤチェーン上で移送された。(Temperatur Messelemente Hettstedt GmbH社から入手可能なタイプK熱電対で、積層体において測定された)ピーク温度は、935℃であり、加熱持続期間は、17分であった。加熱持続期間は、29.5分であり、高温加熱持続期間は、13分であり、ピーク温度加熱持続期間は、6.5分であった。その後、このようにして得られた金属-セラミック基材は、室温に冷却されて、金属セラミック基材が得られ、金属セラミック基材は、両側上で接合層により銅層に結合されたセラミック層を含有した。
【0073】
実施例2
実施例2は、変更された加熱パラメータで、実施例1に類似して実施された。(Temparatur Messelemente Hettstedt GmbH社から入手可能なタイプK熱電対で、積層体において測定された)ピーク温度は、910℃であり、加熱持続期間は、21.5分であった。加熱持続期間は、41分であり、高温加熱持続期間は、17分であり、ピーク温度加熱持続期間は、7分であった。
【0074】
比較例
比較例は、実施例1と類似して実施されたが、積層体は、連続炉の代わりに、バッチ炉において加熱された。(Temperatur Messelemente Hettstedt GmbH社から入手可能なタイプK熱電対で、積層体において測定された)ピーク温度は、910℃であり、加熱持続期間は、230分であった。加熱持続期間は、380分であり、高温加熱持続期間は、120分であり、ピーク温度加熱持続期間は、35分であった。その後、このようにして得られた金属-セラミック基材は、室温に冷却されて、金属セラミック基材が得られ、金属セラミック基材は、両側上で接合層により銅層に結合されたセラミック層を含有した。
【0075】
その後、実施例において得られた金属セラミック基材の熱及び電流伝導率は、以下のように評価された。
【0076】
【0077】
金属セラミック基材の伝導率は、本発明による方法の適用を考慮すれば、著明に改善され得ることが見出された。理論に拘束されないが、これは、700℃未満の融点を有する金属(実施例において、錫)が、本発明による方法では、従来の方法による場合よりも金属箔内に深く浸透しないことに起因し得る。したがって、700℃未満の融点を有する金属(実施例において、錫)は、本発明による方法では、従来の方法による場合よりも金属箔内に深く浸透しないことが示され得る。実施例1及び実施例2において得られた金属セラミック基材について、深さ方向分析(depth profile analysis)は、銅箔内への錫の拡散が、比較例の金属セラミック基材と比較して、30%超で低減されたことをもたらした。したがって、実施例1及び実施例2において、完成した金属セラミック基材の伝導率は、より少ない強さで損なわれている。