(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240213BHJP
G02B 27/01 20060101ALI20240213BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240213BHJP
G09G 5/10 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B60K35/23
G02B27/01
G09G5/00 550H
G09G5/10 Z
(21)【出願番号】P 2022108506
(22)【出願日】2022-07-05
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 朋宏
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-130771(JP,A)
【文献】特開2019-089480(JP,A)
【文献】特開2014-174416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/20
G02B 27/01
G09G 5/00
G09G 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示面を有する画像表示装置と、
前記画像の表示光をドライバの前方の反射面に向けて投影する光学系と、
前記画像表示装置を制御する制御部と、
を備え、
前記表示面は、ドライバの両目によって視認される領域である第一領域と、前記第一領域よりも前記表示面における画像横方向の端部側の領域である第二領域と、を有し、
前記制御部は、前記画像の表示位置が前記第一領域である場合は前記画像表示装置に第一画像を表示させ、前記画像の表示位置が前記第一領域と前記第二領域との境界部である場合は前記画像表示装置に第二画像を表示させ、
前記第二画像は、前記第一画像とは異なるパターンの画像であり、かつ低輝度の部分と高輝度の部分とを組み合わせて構成されて
おり、
前記第一画像は、一つの図形の画像であり、
前記第二画像は、複数の要素を並べて構成される図形の画像である
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記第二画像は、
画像縦方向に並ぶ複数の前記要素に分割される
または、画像縦方向に対して傾斜した分割線によって複数の前記要素に分割される
または、画像横方向に並ぶ複数の前記要素に分割される
または、画像縦方向に並ぶ複数の要素群を有し、前記要素群は、画像横方向に延在しており、かつ画像横方向に並ぶ複数の前記要素を有する
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
隣り合う前記要素の間には、隙間が設けられている
請求項
1に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記第二画像は、画像横方向に沿って輝度が変化するグラデーションを有する画像である
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記第二画像の前記グラデーションは、前記第一領域と前記第二領域との境界線へ向かうに従って輝度が低くなる
請求項4に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両において画像を表示する装置がある。特許文献1には、取得した目の位置に応じて、表示される画像の全体をドライバが視認可能なように表示面における画像表示領域を設定する車両用表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広い範囲に虚像を表示するためには、表示面の全体を利用して画像を表示することが好ましい。一方で、片目のみで視認される表示領域と、両目で視認される表示領域との境界部に画像を表示する場合、画像の視認性が低下する可能性がある。例えば、左目が視認する画像の形状と、右目が視認する画像の形状とが異なることで、ドライバに違和感を与えることがある。
【0005】
本発明の目的は、画像の視認性を向上させることができる車両用表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用表示装置は、画像を表示する表示面を有する画像表示装置と、前記画像の表示光をドライバの前方の反射面に向けて投影する光学系と、前記画像表示装置を制御する制御部と、を備え、前記表示面は、ドライバの両目によって視認される領域である第一領域と、前記第一領域よりも前記表示面における画像横方向の端部側の領域である第二領域と、を有し、前記制御部は、前記画像の表示位置が前記第一領域である場合は前記画像表示装置に第一画像を表示させ、前記画像の表示位置が前記第一領域と前記第二領域との境界部である場合は前記画像表示装置に第二画像を表示させ、前記第二画像は、前記第一画像とは異なるパターンの画像であり、かつ低輝度の部分と高輝度の部分とを組み合わせて構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る車両用表示装置において、境界部に表示される第二画像は、第一画像とは異なるパターンの画像であり、かつ低輝度の部分と高輝度の部分とを組み合わせて構成されている。低輝度の部分および高輝度の部分を有する第二画像は、左目が視認する画像の形状と、右目が視認する画像の形状とが異なることによる違和感を軽減することができる。よって、本発明に係る車両用表示装置によれば、画像の視認性を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る車両用表示装置の配置を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る遮光壁を示す平面図である。
【
図3】
図3は、左右の目によって視認できる範囲を示す図である。
【
図4】
図4は、左右の目によって視認できる範囲を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態の第一画像を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態の第二画像を示す図である。
【
図7】
図7は、両目で視認される画像を説明する図である。
【
図8】
図8は、第二画像の隙間を説明する図である。
【
図18】
図18は、画像の視認性の低下について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施形態に係る車両用表示装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
[実施形態]
図1から
図18を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、車両用表示装置に関する。
図1は、実施形態に係る車両用表示装置の配置を示す図、
図2は、実施形態に係る遮光壁を示す平面図、
図3および
図4は、左右の目によって視認できる範囲を示す図、
図5は、実施形態の第一画像を示す図、
図6は、実施形態の第二画像を示す図、
図7は、両目で視認される画像を説明する図、
図8は、第二画像の隙間を説明する図、
図9から
図17は、第二画像の例を示す図、
図18は、画像の視認性の低下について説明する図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の車両用表示装置1は、車両100に搭載され、ヘッドアップディスプレイを構成する。車両用表示装置1は、例えば、インストルメントパネルの内部に配置される。インストルメントパネルには、表示光70を通過させる開口が設けられている。車両100には、ドライバ200を撮像するドライバモニタ7が配置されている。
【0012】
車両用表示装置1は、筐体4、カバー5、制御部6、画像表示装置20、および光学系25を有する。制御部6、画像表示装置20、および光学系25は、筐体4の内部に収容されている。筐体4は、本体2と、本体2に対して係合する蓋部材3と、を有する。本体2は、上方に向けて開口する開口部を有する。蓋部材3は、本体2の開口部を上方から閉塞する。蓋部材3は、車両上下方向Zにおいてウインドシールド102と対向する壁部30を有する。平面視における蓋部材3の形状は、矩形の枠形状である。壁部30は、上方に向けて開口している開口31を有する。カバー5は、蓋部材3の開口31を閉塞する透明な板状の部材である。カバー5は、例えば、ポリカーボネート(PC)やアクリル等の透光性を有する樹脂で形成される。
【0013】
画像表示装置20は、画像を表示する表示面を有し、画像の表示光70を出射する。例示された画像表示装置20は、液晶表示装置であり、例えば、TFT-LCD(Thin Film Transistor-Liquid Crystal Display)である。画像表示装置20は、例えば、バックライトユニットの光によって表示光70を出射する。画像表示装置20の背面には、ヒートシンク21が配置されている。なお、画像表示装置20は液晶表示装置には限定されない。画像表示装置20は、例えば、レーザ光を走査して透過性のスクリーンに画像を生成する装置であってもよい。
【0014】
制御部6は、画像表示装置20を制御する制御回路や制御装置である。制御部6は、演算部、メモリ、通信インタフェース等を有するコンピュータで構成されている。制御部6は、例えば、本明細書で開示する動作を実行するためのプログラムを予め記憶している。制御部6は、画像表示装置20が表示する画像の形状、画像の位置、画像の輝度分布等を制御するように構成されている。画像表示装置20が液晶表示装置である場合、制御部6は、バックライトユニットが有する複数の光源の輝度を制御してもよい。画像表示装置20がレーザ光を走査して画像を形成する装置である場合、制御部6は、走査位置に応じてレーザ素子の出力を制御してもよい。
【0015】
光学系25は、第一ミラー22を有する。第一ミラー22は、画像表示装置20から出射される表示光70をウインドシールド102の反射面102aに向けて反射する。第一ミラー22の反射面の形状は、例えば、自由曲面である。例示された第一ミラー22は、表示光70を拡大させながら反射する凹面ミラーである。
【0016】
第一ミラー22によって反射された表示光70は、開口31を通過し、ウインドシールド102の反射面102aによってドライバ200に向けて反射される。ウインドシールド102の反射面102aは、ドライバ200の目201と対向している最終反射面である。ドライバ200の目201に入射する表示光70によって、虚像10が形成される。
【0017】
本実施形態の車両用表示装置1は、車両100の前景に重ねて虚像を表示できるように構成されている。車両用表示装置1は、例えば、車両100の前方の路面や、車両100の先行車両、車両100の前方の注意対象等に重ねて虚像を表示させる。
【0018】
図2に示すように、画像表示装置20は、画像を表示する表示面20aを有する。表示光70は、表示面20aから出射される。車両用表示装置1は、遮光壁23を有する。遮光壁23は、表示光70が不要な方向へ拡散することを防ぐ壁部である。例示された遮光壁23は、画像表示装置20の表示面20aと第一ミラー22との間に配置されている。遮光壁23は、第一遮光壁23aおよび第二遮光壁23bを有する。第一遮光壁23aは、画像に対してドライバ200から見て左側に位置する。第二遮光壁23bは、画像に対してドライバ200から見て右側に位置する。第一遮光壁23aと第二遮光壁23bとの間には、例えば、開口23cが設けられる。つまり、遮光壁23は、表示光70の光路71を挟むように画像横方向GWの両側に配置されている。
【0019】
図3に示すように、表示面20aは、画像を表示する表示領域40を有する。表示領域40において、ドライバ200の左目201Lによって視認できる範囲40L、および右目201Rによって視認できる範囲40Rは、遮光壁23の開口23cの幅および開口23cの位置によって決まる。視認できる範囲40L,40Rは、画像横方向GWにおける範囲である。
【0020】
図3に示す目201の位置は、アイボックスEBにおける車幅方向CWの中央の位置である。アイボックスEBは、目201の位置が移動する範囲として予め想定された範囲である。アイボックスEBは、車幅方向CWに所定の幅を有する。車両用表示装置1は、目201がアイボックスEBの内部にある場合に表示領域40がドライバ200から視認できるように構成される。
【0021】
図4には、目201の位置がアイボックスEB内において右側に寄っている状態が示されている。この場合、左目201Lによって視認できる範囲40L、および右目201Rによって視認できる範囲40Rは、
図3に示す位置に対して左側にずれている。従って、両目で視認される領域は、
図3の場合と比較して左側にずれている。これとは逆に、目201の位置がアイボックスEB内において左側に寄った位置である場合、視認できる範囲40R,40Lは、
図3に示す位置に対して右側にずれる。すなわち、ドライバ200の目201の位置に応じて、ドライバ200の両目で見える範囲は変化する。
【0022】
図3に示す第一領域41は、ドライバ200が両目で視認できる領域である。より詳しくは、第一領域41は、目201の位置がアイボックスEB内のどの位置であってもドライバ200の両目によって視認される領域である。
図3に示す第二領域42は、第一領域41よりも画像横方向GWの端部側の領域である。言い換えると、第二領域42は、表示領域40の全領域のうち、第一領域41を除く領域である。
【0023】
第二領域42は、ドライバ200の片目のみによって視認されることがある領域である。第二領域42は、左端領域42aおよび右端領域42bを有する。左端領域42aは、ドライバ200から見て第一領域41に対して左側に位置する。左端領域42aは、ドライバ200の右目201Rのみによって視認されることがある領域である。左端領域42aの少なくとも一部の領域は、目201の位置に応じて、ドライバ200の両目によって視認されることがあってもよい。
【0024】
右端領域42bは、ドライバ200から見て第一領域41に対して右側に位置する。右端領域42bは、ドライバ200の左目201Lのみによって視認されることがある領域である。右端領域42bの少なくとも一部の領域は、目201の位置に応じて、ドライバ200の両目によって視認されることがあってもよい。
【0025】
表示領域40には、第一領域41と第二領域42との境界線43が設定される。境界線43の位置は、例えば、固定位置である。本実施形態の境界線43は、第一境界線43aおよび第二境界線43bを含む。第一境界線43aは、左端領域42aと第一領域41との境界線である。第二境界線43bは、右端領域42bと第一領域41との境界線である。
【0026】
第一境界線43aは、左目201Lによって視認できる範囲40Lに基づいて決められる。より詳しくは、第一境界線43aは、目201がアイボックスEB内において最も左側に位置している場合の範囲40Lの左端である。表示領域40において、第一境界線43aよりも左側の領域は、左目201Lから視認できなくなることがある。
【0027】
第二境界線43bは、右目201Rによって視認できる範囲40Rに基づいて決められる。より詳しくは、第二境界線43bは、目201がアイボックスEB内において最も右側に位置している場合の範囲40Rの右端である。表示領域40において、第二境界線43bよりも右側の領域は、右目201Rから視認できなくなることがある。
【0028】
上記のように、本実施形態の第一領域41は、ドライバ200の目201がアイボックスEBの内部にある限り両目で視認されることが保証されている。一方、第二領域42は、ドライバ200の両目で視認されるとは限らない領域である。
【0029】
ここで、以下に説明するように、画像が第一領域41と第二領域42との境界をまたぐ場合、画像の視認性が低下することがある。
図18の左側には、第二境界線43bに跨がって表示された画像50が示されている。例示された画像50は、車両100の前方の対象に重畳するように表示される。例えば、画像50は、前方の車両に重畳される。画像50は、例えば、画像横方向GWに延在する線状の図形、または、画像横方向GWが長手方向である矩形の画像である。画像50の一部は第一領域41に表示され、画像50の残りの一部は右端領域42bに表示されている。
図18の中央には、左目201Lによる画像50の見え方、および右目201Rによる画像50の見え方が示されている。
【0030】
図18に示すように、ドライバ200の左目201Lは、画像50の全体を見ることができる。一方、右目201Rは、画像50の一部しか見ることができない。画像50の残りの一部は、遮光壁123によって隠されている。この場合、
図18の右側に示すように、ドライバ200によって視認される虚像52に黒い線52aが生じてしまうことがある。線52aは、右目201Rから見える画像50の右端の位置に生じる。言い換えると、線52aは、遮光壁123のエッジによって発生する。遮光壁123のエッジを境にして明るさが不連続に変化するために、明確な線52aが認識されてしまうという問題が発生する。
【0031】
以下に説明するように、本実施形態の車両用表示装置1は、画像50の表示位置に応じて画像50における輝度分布を制御する。制御部6は、例えば、画像50を第一領域41に表示する場合と、画像50を境界部に表示する場合とで画像50における輝度分布を異ならせる。ここで、境界部は、第一領域41と第二領域42との境界線43を含む領域である。
【0032】
図5には、第一領域41に表示される画像50が示されている。
図6には、境界線43を跨いで表示される画像50が示されている。以下の説明では、第一領域41に表示される場合の画像50を「第一画像50A」と称し、境界線43を跨いで表示される場合の画像50を第二画像50Bと称する。
図5に示す第一画像50Aは、画像横方向GWおよび画像縦方向GHに連続した一つの図形の画像である。第一画像50Aの形状は、画像横方向GWに沿った矩形である。
【0033】
一方、
図6に示す第二画像50Bは、画像横方向GWに並ぶ三つの要素50eに分割されて表示されている。言い換えると、第二画像50Bは、第一画像50Aが画像縦方向GHの分割線によって複数に分割された画像である。第二画像50Bの画像パターンにおいて第一画像50Aの画像パターンと異なる点は、例えば、第二画像50Bが複数の要素50eで構成されている点である。なお、第二画像50Bにおける要素50eの個数は、三個には限定されない。
【0034】
例示された第二画像50Bの輪郭は、第一画像50Aの輪郭と等しい。つまり、第一画像50Aは、矩形の画像50がそのまま表示された画像であり、第二画像50Bは、矩形の画像50が複数の小さな矩形に分割された画像である。第二画像50Bの全体形状は、第一画像50Aの形状と等しい。つまり、第二画像50Bは、第一画像50Aと同じ領域に複数の要素50eを並べて構成される矩形の図形である。
【0035】
第二画像50Bにおける輝度分布は、第一画像50Aにおける輝度分布と異なっている。より詳しくは、第二画像50Bは、画像横方向GWに沿って明部と暗部が交互に並んで構成されている。要素50eは第二画像50Bの高輝度部であり、隣り合う要素50eの間の隙間Gpは、第二画像50Bの低輝度部である。一方、
図5に示される第一画像50Aでは、画像横方向GWに沿って輝度が一様に分布している。
【0036】
制御部6は、第一画像50Aに対するマスク処理により第二画像50Bを生成してもよい。制御部6は、第一画像50Aおよび第二画像50Bを別な画像として記憶していてもよい。
【0037】
図7には、左目201Lによって視認される第二画像50B、および右目201Rによって視認される第二画像50Bが示されている。
図7の左側に示されているように、左目201Lは、第二画像50Bの全体を視認可能である。
図7の中央に示されているように、右目201Rは、第二画像50Bの一部のみを視認可能である。
図7の例において、右目201Rは、中央の要素50eの一部、および右側の要素50eの全体を視認できない。
【0038】
図7の右側には、ドライバ200によって認識される虚像52が示されている。虚像52には、左側の高輝度の部分と右側の低輝度の部分との境界線52bが発生している。この境界線52bは、左目201Lで視認される画像の形状と、右目201Rで視認される画像の形状とが異なることにより発生する。言い換えると、左右の視差により境界線52bが認識されてしまう。しかしながら、本実施形態の虚像52は、互いに離間した複数の要素50eを有している。従って、虚像52において境界線52bが目立ちにくい。言い換えると、境界線52bがドライバ200に対して違和感を与えにくい。よって、本実施形態の車両用表示装置1は、違和感の少ない虚像52を表示することができる。
【0039】
なお、
図8を参照して説明するように、隣り合う要素50eの隙間Gpの大きさは、ドライバ200から二つの要素50eを識別できるように定められることが望ましい。隙間Gpの大きさは、例えば、アイボックスEBから表示面20aまでの光路長と、目201の分解能とに基づいて決定される。一例として、二つの要素50eの端と、目201とでなす角度θが最小角度θminよりも大きくされてもよい。最小角度θminは、目201の分解能から決定されてもよく、例えば、1/60[°]とされてもよい。
【0040】
本実施形態の制御部6は、対象物の位置に基づいて表示面20aにおける画像50の表示位置を設定する。対象物は、例えば、先行車両、前方の障害物、前方の歩行者、前方の路面等である。対象物の位置は、例えば、車両100の前方を撮像した前方画像に基づいて算出される。前方画像は、車両100に搭載されたカメラによって生成される。制御部6は、対象物の位置に基づいて、対象物に対して画像50が重なるように、画像50の表示位置を算出する。
【0041】
制御部6は、画像50の表示位置が第一領域41の内部である場合、画像表示装置20に対して第一画像50Aの表示を指令する。制御部6は、例えば、画像50の表示位置に基づいて、
図5に示す画像50の左端位置WLおよび右端位置WRを算出する。この場合、制御部6は、左端位置WLおよび右端位置WRが何れも第一領域41の内部の位置である場合、画像50の表示位置が第一領域41の内部であると判断する。画像表示装置20は、制御部6の指令に従い、第一領域41に第一画像50Aを表示する。これにより、
図5に示すように第一領域41に第一画像50Aが表示される。ドライバ200は、両目で第一画像50Aを視認することができる。
【0042】
制御部6は、画像50の表示位置が第一領域41と第二領域42との境界部である場合、画像表示装置20に対して第二画像50Bの表示を指令する。制御部6は、例えば、左端位置WLおよび右端位置WRのうち一方が第一領域41に位置し、他方が第二領域42に位置する場合、画像50が境界線43を跨ぐと判断する。画像表示装置20は、制御部6の指令に従い、
図6に示すように境界部に第二画像50Bを表示する。
【0043】
このような処理によれば、対象物に追従して画像50の表示位置が第一領域41から第二領域42へ向けて移動するときに、画像50の表示態様が第一画像50Aから第二画像50Bへと切り替わる。制御部6は、画像50の全体が第二領域42に表示される場合、画像表示装置20に対して第一画像50Aを表示するように指令してもよい。
【0044】
制御部6は、画像50の表示位置が第一領域41と第二領域42との境界部から第一領域41へと移動するときに、画像50の表示態様を第二画像50Bから第一画像50Aへと切り替える。よって、本実施形態の車両用表示装置1は、違和感の少ない適切な虚像表示を実現できる。
【0045】
図9には、第二画像50Bの一例が示されている。
図9に示す第二画像50Bは、画像縦方向GHに並ぶ四つの要素50eに分割されている。それぞれの要素50eは、第二画像50Bの一端から他端まで、画像横方向GWに延在している。言い換えると、第二画像50Bは、第一画像50Aが画像横方向GWの分割線によって複数に分割された画像である。隣り合う要素50eの間には、隙間Gpが設けられている。第二画像50Bが複数の要素50eによって構成されていることで、明暗の境界線52bが目立ちにくくなる。
【0046】
図10には、第二画像50Bの他の例が示されている。
図10に示す第二画像50Bは、画像横方向GWに並ぶ複数の要素50eに分割されている。それぞれの要素50eは、画像縦方向GHに対して傾斜している。つまり、
図10の第二画像50Bは、画像縦方向GHに対して傾斜した分割線によって複数に分割されている。複数の要素50eの傾斜角度は、等しい。また、隣り合う要素50eの間には、隙間Gpが設けられている。
【0047】
図11には、第二画像50Bの他の例が示されている。
図11に示す第二画像50Bは、画像横方向GWに並ぶ複数の要素50eに分割されている。要素50eの形状は、円形である。要素50eの形状は、四角形に限定されず、
図11に示すような円形であってもよい。要素50eの形状は、六角形等の多角形であってもよい。
【0048】
図12には、第二画像50Bの他の例が示されている。
図12に示す第二画像50Bは、複数の要素群50dを有する。要素群50dは、画像横方向GWに延在しており、かつ画像横方向GWに並ぶ複数の要素50eを有する。複数の要素群50dは、画像縦方向GHに並んでいる。例示された要素50eの形状は、矩形である。要素群50dが有する複数の要素50eは、対角線が画像横方向GWと平行になるように並んでいる。
【0049】
図13には、第二画像50Bの他の例が示されている。
図13に示す第二画像50Bは、
図12に示す第二画像50Bよりも多くの要素群50dを有する。また、各要素群50dは、
図12に示す要素群50dよりも多くの要素50eを有する。第二画像50Bにおける分割数を多くすることにより、明暗の境界線52bが目立ちにくくなる。例えば、第二画像50Bにおいて要素群50dを多くすることや、要素群50dにおいて要素50eの数を多くすることにより、境界線52bによる煩わしさが軽減される。
【0050】
図14には、第二画像50Bの他の例が示されている。
図14に示す第二画像50Bは、複数の要素群50dを有する。
図14に示す各要素50eは、ぼかし処理された意匠である。要素50eは、少なくとも輪郭線が明瞭とならないようにぼかされている。要素50eは、例えば、円形の画像に対するぼかし処理により生成される。要素50eの輪郭がぼかされていることで、境界線52bが目立ちにくくなる。
【0051】
図15には、第二画像50Cが示されている。第二画像50Cは、グラデーション画像である。第二画像50Cは、第一画像50Aに対して画像横方向GWに沿って輝度が変化するグラデーションを施した画像である。制御部6は、第一領域41と第二領域42との境界部に画像50を表示する場合、第二画像50Cを表示させてもよい。第二画像50Cの画像パターンにおいて、第一画像50Aの画像パターンと異なる点は、例えば、第二画像50Cがグラデーションを有する点である。
【0052】
例示された第二画像50Cは、画像横方向GWの中央に低輝度部50gを有し、かつ両端部に高輝度部50hを有する。第二画像50Cは、グラデーションを有している。第二画像50Cは、高輝度部50hから低輝度部50gへ向かうに従って画素の輝度が低くなるグラデーションを有する。より詳しくは、第二画像50Cは、第一中間部50jおよび第二中間部50kを有する。第一中間部50jは、左側の高輝度部50hから低輝度部50gに向けて輝度が低くなっていくグラデーション部である。第二中間部50kは、低輝度部50gから右側の高輝度部50hに向けて輝度が高くなっていくグラデーション部である。
図15に示す第二画像50Cは、低輝度部50gの中心が境界線43に位置するように表示されている。
【0053】
第二画像50Cにおける低輝度部50gの位置は、可変であってもよい。例えば、低輝度部50gが境界線43と重なるように、第二画像50Cにおける低輝度部50gの位置が調整されてもよい。
【0054】
なお、第二画像50Cは、第一中間部50jまたは第二中間部50kが境界線43と重なるように表示されてもよい。
図16に示す第二画像50Cは、第一中間部50jが境界線43に位置するように表示されている。言い換えると、第二画像50Cは、第一領域41の側から境界線43へ向かうに従って輝度が低くなるグラデーションを有しており、かつこのグラデーション部が境界線43と重なっている。
【0055】
第二画像50Cは、低輝度部50gに対して画像横方向GWの片側のみに高輝度部50hを有していてもよい。例えば、
図17に示すように、低輝度部50gが第二画像50Cにおける画像横方向GWの端部に位置していてもよい。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の車両用表示装置1は、画像表示装置20と、光学系25と、制御部6と、を有する。画像表示装置20は、画像50を表示する表示面20aを有する。光学系25は、画像の表示光70をドライバ200の前方の反射面102aに向けて投影する。制御部6は、画像表示装置20を制御する。表示面20aの表示領域40は、第一領域41と、第二領域42と、を有する。第一領域41は、ドライバ200の両目によって視認される領域である。第二領域42は、第一領域41よりも表示面20aにおける画像横方向GWの端部側の領域である。
【0057】
制御部6は、画像50の表示位置が第一領域41である場合は画像表示装置20に第一画像50Aを表示させる。制御部6は、画像50の表示位置が第一領域41と第二領域42との境界部である場合は画像表示装置20に第二画像50B,50Cを表示させる。第二画像50B,50Cは、第一画像50Aとは異なるパターンの画像であり、かつ低輝度の部分と高輝度の部分とを組み合わせて構成されている。例えば、第二画像50Bは、高輝度である要素50eの部分と、低輝度である隙間Gpの部分と、を有する。第二画像50Cは、高輝度部50hおよび低輝度部50gを有する。本実施形態の車両用表示装置1は、画像が境界部に表示されるときの境界線52bを目立ちにくくすることで、画像の視認性を向上させることができる。
【0058】
本実施形態の第一画像50Aは、一つの図形の画像である。第二画像50Bは、複数の要素50eを並べて構成される図形の画像である。第二画像50Bが複数の要素50eで構成されることで、境界線52bが目立ちにくくなる。
【0059】
本実施形態の第二画像50Bにおいて、隣り合う要素50eの間には、隙間Gpが設けられている。隙間Gpは、低輝度の部分と高輝度の部分との境界線を発生させる。よって、視差による境界線52bが目立ちにくくなる。
【0060】
本実施形態の第二画像50Cは、画像横方向GWに沿って輝度が変化するグラデーションを有する画像である。第二画像50Cが明暗の変化を有していることで、境界線52bが目立ちにくくなる。
【0061】
本実施形態の第二画像50Cのグラデーションは、第一領域41と第二領域42との境界線43へ向かうに従って輝度が低くなる。このようなグラデーションにより、境界線52bが目立ちにくくなる。
【0062】
なお、第一画像50Aおよび第二画像50B,50Cの形状は、本実施形態で例示された形状には限定されない。例えば、第一画像50Aの形状は、長円形状やリング形状であってもよい。この場合、第二画像50Bは、複数の要素50eによって構成される長円形状やリング形状の画像であってもよい。
【0063】
制御部6は、画像が境界線43を跨いでいなくても、画像表示装置20に第二画像50Bを表示させてもよい。例えば、境界線43に対して一定の幅の境界領域が設定されてもよい。この場合、制御部6は、画像50が境界領域と重なる場合に画像表示装置20に第二画像50Bを表示させてもよい。
【0064】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。実施形態の変形例において、上記実施形態と異なる点は、例えば、境界線43の位置が目201の位置に応じて定められる点である。実施形態の変形例に係る制御部6は、目201の位置に応じて表示面20aにおける境界線43の位置を変化させる。
【0065】
制御部6は、例えば、ドライバモニタ7から取得する画像に基づいて、ドライバ200の目201の位置を検出する。目201の位置は、例えば、左目201Lの位置と、右目201Rの位置との中央である。制御部6は、車幅方向CWにおける目201の位置に基づいて、境界線43の位置を定める。このような処理により、目201の実際の位置に応じて適切に第一画像50Aと第二画像50B,50Cとを切り替えることが可能となる。
【0066】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 車両用表示装置
2:本体、 3:蓋部材、 4:筐体、 5:カバー、 6:制御部
7:ドライバモニタ、 10:虚像
20:画像表示装置、 20a:表示面、 22:第一ミラー、
23:遮光壁、 23a:第一遮光壁、 23b:第二遮光壁
23c:開口、 25:光学系
40:表示領域、 41:第一領域
42:第二領域、 42a:左端領域、 42b:右端領域
43:境界線、 43a:第一境界線、 43b:第二境界線
50:画像、 50A:第一画像、 50B,50C:第二画像
50d:要素群、 50e:要素、 50g:低輝度部、 50h:高輝度部
50j:第一中間部、 50k:第二中間部
70:表示光、 71:光路
100:車両、 102:ウインドシールド、 102a:反射面
200:ドライバ、 201:目、 201L:左目、 201R:右目
GW:画像横方向、 GH:画像縦方向
Gp:隙間
WL:左端位置、 WR:右端位置