(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 60/81 20210101AFI20240213BHJP
A61M 60/174 20210101ALI20240213BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20240213BHJP
A61M 60/408 20210101ALI20240213BHJP
A61M 60/808 20210101ALI20240213BHJP
A61M 60/857 20210101ALI20240213BHJP
【FI】
A61M60/81
A61M60/174
A61M60/237
A61M60/408
A61M60/808
A61M60/857
(21)【出願番号】P 2022138887
(22)【出願日】2022-09-01
(62)【分割の表示】P 2020099903の分割
【原出願日】2014-10-31
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2013-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515170724
【氏名又は名称】エーツェーペー エントヴィッケルングゲゼルシャフト エムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェケル マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ディッケ ロバート
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0204362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0093764(US,A1)
【文献】米国特許第05697906(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0101510(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0093796(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0053623(US,A1)
【文献】特表2012-531975(JP,A)
【文献】特表2009-530041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/81
A61M 60/174
A61M 60/237
A61M 60/408
A61M 60/808
A61M 60/857
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端部および遠位端部、ならびに、その間に配置されているポンプハウジングと、長手方向に沿って前記ポンプハウジングの内部に配置されているドライブシャフトと、前記ドライブシャフトの上に配置されている搬送エレメントと、カニューレとを有する血液ポンプ(1)であって、
前記血液ポンプの前記近位端部に作用する力の印加の下で、前記ポンプハウジングが少なくとも部分的に前記カニューレの中へ移され得るように、前記ポンプハウジングが形成されており、前記ポンプハウジングは、そうする際に、少なくとも、前記長手方向に対して横断方向に延在する半径方向に沿って、膨張
された状態から圧縮された状態へと移され、
前記搬送エレメントは、少なくとも1つの折り畳み可能なセグメントを含み、
前記ポンプハウジングは、前記膨張された状態において
、長手方向軸線に沿って、前記長手方向軸線の周りにらせん状延びる複数のらせん構造体を含む少なくとも1つの部分を有しており、
各前記らせん構造体は、前記血液ポンプの前記近位端部から前記遠位端部へ考えたときに、第1の方向に巻かれていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプであって、
前記少なくとも1つの折り畳み可能なセグメントの展開方向は、展開する間に前記第1の方向に延在していることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の血液ポンプであって、前記少なくとも1つの折り畳み可能なセグメントの展開方向は、展開する間に前記第1の方向に対して反対側の方向に延在していることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
前記ポンプハウジングは、形状記憶材料から作り出されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
前記ポンプハウジングは、ポンプ受け入れ部分と、前記ポンプ受け入れ部分の近位に配置されている近位部分とを含み、前記近位部分の内径は、前記ポンプハウジングの前記膨張された状態において、前記ポンプ受け入れ部分の直径から、前記近位部分の近位端部に向かって低減されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載の血液ポンプであって、
複数の前記らせん構造体が、前記近位部分に配置されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
請求項5に記載の血液ポンプであって、
複数の前記らせん構造体が、前記ポンプ受け入れ部分に配置されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項8】
請求項5に記載の血液ポンプであって、
前記ポンプハウジングが、前記ポンプ受け入れ部分の遠位に配置されているさらなる遠位部分を含み、前記さらなる遠位部分の内径は、前記ポンプハウジングの前記膨張された状態において、前記ポンプ受け入れ部分の直径から、前記遠位部分の遠位端部に向かって低減されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項9】
請求項8に記載の血液ポンプであって、
複数の前記らせん構造体が、前記遠位部分に配置されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
前記ドライブシャフトが、少なくとも前記ポンプハウジングの近位端部の領域において軸支されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項11】
請求項10に記載の血液ポンプであって、
前記ドライブシャフトが、前記ポンプハウジングの遠位端部の領域において追加的に軸支されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
複数の前記らせん構造体が、
それぞれらせん状の支柱を含むことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、
前記少なくとも1つの
折り畳み可能なセグメントは、前記搬送エレメントの回転方向が、前記血液ポンプの前記遠位端部から前記近位端部へ流体が搬送されることを引き起こすように形成されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項14】
請求項13に記載の血液ポンプであって、
前記ポンプハウジングが前記圧縮された状態から前記膨張された状態へ移されるときに、前記少なくとも1つの
折り畳み可能なセグメントの展開方向は、前記回転方向と反対に方向付けされていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記ドライブシャフトが、前記ポンプハウジングの領域においてコアを含む中空のシャフトであることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の血液ポンプであって、前記ポンプハウジングの「オーステナイト終了」(A
f)温度が、34℃よりも低いことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項17】
請求項16に記載の血液ポンプであって、前記ポンプハウジングの「オーステナイト終了」(Af)温度が、30℃よりも低いことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項18】
請求項17に記載の血液ポンプであって、前記ポンプハウジングの「オーステナイト終了」(Af)温度が、20℃よりも低いことを特徴とする血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学、精密機械学、および材料技術の分野に存在しており、ポンプまたはポンプ構成体、とりわけ、血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、近位端部および遠位端部、ならびに、その間に配置されているポンプハウジングと、長手方向の方向に沿ってポンプハウジングの内部に配置されているドライブシャフトと、ドライブシャフトの上に配置されている搬送エレメントと、また、ポンプハウジングの近位に配置されているカニューレまたはカテーテルとを有する、ポンプが知られている。このタイプのポンプは、可撓性のドライブシャフトを有することが多く、アクセスするのが困難な場所でもポンプがガイドされ得るようになっており、ポンプがそこでポンプ効果を実装することができるようになっている。1つの例は、血液ポンプであり、血液ポンプは、たとえば、大腿動脈を通して大動脈弓を介して心臓の左心室の中へ挿入され、大動脈弁の領域に残ったままになる。ポンプの近位端部において、すなわち、たとえば、身体の外側に配置されたままになっているドライブシャフトの端部において、ポンプは、モーターに接続可能で、モーターは、ドライブシャフト、および、したがって、ドライブシャフトの上に配置されている搬送エレメントを駆動し、ここで、ポンプは、たとえば左心室の中に配置されている。したがって、血液が、心室から大動脈へとポンプ送りされ得る。
【0003】
そのようなポンプにおいて、ポンプの近位端部に作用する力の印加の下で、ポンプハウジングがカニューレまたはカテーテルの中へ少なくとも部分的に移され得るように、ポンプハウジングは形成されているということが知られている。換言すれば、たとえば、ドライブシャフトの近位端部の領域における引張力の印加によって、ポンプハウジングは、カニューレの中へ引き込まれ可能で、したがって、より大きい半径方向の広がりを伴う膨張された状態から、より小さい半径方向の広がりを伴う圧縮された状態へと持っていかれることが可能である。この移り変わりは、とりわけ、身体の中へのポンプの挿入、および、身体からのポンプの除去の前に、提供される。その理由は、ポンプハウジングの低減された直径が、人間の身体の中でのポンプの遠位端部のナビゲーションを促進させ、とりわけ、皮膚を通る最小侵襲通路を確保するからである。ここでは、ポンプハウジングは、通常、金属、たとえば、形状記憶金属から作製されている。さらなる材料が、それらが圧縮および膨張の間の機械的な応力に耐え、また、医療的衛生基準を満たすという条件で、ポンプハウジングに関して使用され得る。
【0004】
このタイプのポンプのケースでは、また、ローターなどのような搬送エレメントが、たとえばローターブレードの形態の、少なくとも1つの折り畳み可能なまたは可撓性のセグメントを含むことは普通である。このタイプのローターの例が、たとえば、米国特許出願第13/261,565号に説明されており、その開示は、その全体の範囲が本出願に援用されている。そのうえ、米国特許出願第13/261,100号が、同様に、その全体の範囲が本出願に援用されている。
【0005】
ポンプハウジングに関して、例として、米国特許出願第13/146,452号が参照され、それは、同様に、その全体の範囲が本出願に援用されている。また、米国特許出願第13/261,256号が参照され、それは、同様に、その全体の範囲が本出願に援用されている。
【0006】
ポンプハウジングを設計するときに、ポンプハウジングの膨張された状態において、ドライブシャフトに沿って延在する長手方向軸線に沿って、ポンプの近位端部から遠位端部に向かって考えたときに、長手方向軸線の周りでのスパイラル状の様式で、この長手方向軸線の周りに巻いている部分を生成させることが可能であるということが証明された。しかし、ここで、スパイラル状またはらせん状の様式で延在する構造体、とりわけ、スパイラル状またはらせん状の支柱は、これが長手方向軸線を完全に取り囲まなければならないことを意味するように理解されるべきではない。それは、単に長手方向軸線の周りのスパイラルのセグメントを形成するスパイラルの一部分を意味するようにも理解され、すなわち、また、一部分にわたって長手方向軸線の周りのスパイラルのコースを実質的に辿る湾曲した支柱が参照され得る。
【0007】
このタイプのポンプの開発によって、本発明者らは、ポンプハウジング、ドライブシャフト、および搬送エレメントの間の有利な協調が、比較的に長期間にわたって移植され得る効率的な血液ポンプを生成させるために役立つということを確認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴による血液ポンプによって実現される。
【0010】
本発明の第1の参考例によれば、ポンプハウジングが膨張された状態から圧縮された状態へ移されるときに、第1の方向と反対に方向付けされたトルクが折り畳み可能なセグメントに作用するように、らせん状に延在する複数の構造体、または、らせん状に延在する構造体(単数形)が形成されている。ここで、本出願において、時計回り方向または反時計回り方向に作用するトルクが頻繁に参照されるということが述べられるべきである。より具体的には、ここでは、トルクが参照されるのではなく、トルクを発生させる力の方向が参照されている。トルクは、長手方向軸線から外向きに方向付けされた半径方向の位置ベクトルと発生する力のベクトル積であり、したがって、発生する力に対して垂直方向に延在する。換言すれば、時計回り方向に延在するトルクが参照される場合には、これは、むしろ、長手方向軸線に対して平行に延在するトルクを意味している。しかし、簡単化および改善された配向のために、トルクの方向は、発生する力の方向と同一視されることが多いが、これは、物理的な定義には対応していない。
【0011】
らせん状に延在する構造体を含む部分は、好ましくは、単に、ポンプハウジングの限定された部分だけを形成している。この部分は、ポンプハウジングがカニューレの中へ引き込まれるときにトルクを発達させることを引き起こし、そのトルクは、らせん状の巻線の方向と反対に方向付けされている。ローターは、その形態およびその可撓性のまたは折り畳み可能なセグメントのために、ハウジングが圧縮するときにドライブシャフトの周りに特定の方向に巻き付く傾向を有している。トルクは、ハウジングが圧縮するときに作り出されるので、これは、同様に、折り畳み可能なセグメントに作用し、したがって、たとえば、それに関して事前に決定された折り畳み方向に折り畳み可能なセグメントを促すことが可能である。
【0012】
これは、ポンプハウジングによって印加されるトルクが、ドライブシャフトの周りでの可撓性のセグメントの自然な折り畳みを支援し、したがって、ローターにおける損傷に対抗するということ意味している。
【0013】
第1の参考例では、搬送エレメントの回転方向のトルクが、ポンプの遠位端部から近位端部への流体の搬送に相当するように、搬送エレメントの折り畳み可能なセグメントは形成されている。換言すれば、流体がポンプの遠位端部から近位端部へ搬送されるときに、搬送エレメントの可撓性のセグメントがそれにしたがって形成されているときに、らせん構造体が延在する第1の方向は、動作中の搬送エレメントの回転とは反対になっている。驚くことには、ポンプの効率の改善が結果として可能であるということ、および、ポンプハウジングの潜在的な損傷が低減され得るということの両方が見出された。
【0014】
さらなる参考例では、トルクが搬送エレメントの回転方向の反対側に方向付けされるように、搬送エレメントの折り畳み可能なセグメントは生成されており、加えて、展開する間の少なくとも1つの折り畳み可能なセグメントの展開方向は、第1の方向に延在している。これは、流体を遠位端部から近位端部へ搬送するときの搬送エレメントの回転方向が、ローターの展開方向の反対側に方向付けされているということ意味している。
【0015】
さらなる参考例では、ポンプの遠位端部から近位端部へ流体を搬送するために、トルクが搬送エレメントの回転方向の反対側に方向付けされるように、搬送エレメントの折り畳み可能なセグメントは形成され得る。
【0016】
さらなる参考例では、展開する間の少なくとも1つの折り畳み可能なセグメントの展開方向は、第1の方向に対して反対の方向になっている。
【0017】
さらなる参考例では、ポンプハウジングは、形状記憶材料から作り出されている。ここで、ポンプハウジングは、たとえばニチノールから製造され得る。
【0018】
さらなる参考例では、ポンプハウジングの「オーステナイト終了」(Af)温度は、健康な人体温よりも低く、とりわけ、30℃よりも低く、とりわけ、室温よりも低く、すなわち、20℃よりも低い。驚くことには、このAf温度において、ハウジングの安定性および寿命が改善され得るということが見出された。これは、とりわけAf温度が室温よりも低いときに真実である。
【0019】
さらなる参考例では、ポンプハウジングは、ポンプ受け入れ部分と、ポンプ受け入れ部分の近位に配置されている近位部分とを含み、近位部分の内径は、ポンプハウジングの膨張された状態において、ポンプ受け入れ部分の直径から、近位部分の近位端部へ低減されている。このタイプのポンプハウジングによって、カニューレの中へ引き込むことが、ポンプハウジングの形態のために、促進および支援される。ここで、本発明によるポンプの変形例が提供され、らせん構造体が、近位部分に配置されている。
【0020】
代替的な参考例では、らせん構造体が、ポンプ受け入れ部分に配置されている。さらなる参考例では、らせん構造体が、近位部分およびポンプ受け入れ部分の両方に配置されている。
【0021】
さらなる参考例では、ポンプハウジングが、ポンプ受け入れ部分の遠位に配置されているさらなる遠位部分を含み、前記さらなる遠位部分の内径は、好ましくは、ポンプハウジングの膨張された状態において、ポンプ受け入れ部分の直径から、遠位部分の遠位端部へ低減されている。
【0022】
したがって、ドライブシャフトは、たとえば、遠位部分の低減された内径の領域において、さらなる軸受によって軸支され得るので、ローターの改善された保護が可能である。
【0023】
実施形態では、らせん構造体が、遠位部分にも配置されている。ここで、らせん構造体は、第1の方向の反対に巻き付けられ、または巻かれ得る。この実施形態では、らせん構造体は、近位部分および遠位部分の両方においてトルクの形成を支援し、トルクの前記形成は、近位部分と遠位部分との間のポンプハウジング全体にわたって開始されるが、トルクは、単に近位部分および遠位部分の領域だけにおいて、らせんエレメントの撓みまたは捩じれを引き起こす。変形例では、トルクが近位におよび遠位に同じ方向に方向付けされるように、および/または、近位トルクおよび遠位トルクが同一の大きさとなるように、近位領域および遠位領域におけるらせん構造体が形成されている。これは、あめ玉の包み紙の中のあめ玉の包装と類似して同等であり、あめ玉は、両端部を保持し同時に引っ張ることによって包み紙から開けられ得る。したがって、例として、ドライブシャフトは、捩じれることが防止され、したがって、ドライブシャフトは損傷に対して保護される。
【0024】
さらなる参考例では、ドライブシャフトが、代替的にまたは追加的に、ポンプハウジングの近位端部の領域において軸支されている。
【0025】
本発明の血液ポンプは、近位端部および遠位端部、ならびに、その間に配置されているポンプハウジングと、長手方向に沿って前記ポンプハウジングの内部に配置されているドライブシャフトと、前記ドライブシャフトの上に配置されている搬送エレメントとを有する血液ポンプであって、前記搬送エレメントは、少なくとも1つの可撓性のセグメントを含み、前記搬送エレメントの回転方向が、血液ポンプの前記遠位端部から前記近位端部へ流体が搬送されることを引き起こすように、前記少なくとも1つの可撓性のセグメントは形成されており、血液ポンプの前記近位端部に作用する力の印加の下で、前記ポンプハウジングが少なくとも部分的にカニューレの中へ移され得るように、前記ポンプハウジングが形成されており、前記ポンプハウジングは、少なくとも部分的に前記カニューレの中へ移される際に、少なくとも、前記長手方向に対して横断方向に延在する半径方向に沿って、膨張可能な状態から圧縮された状態へと移され、前記ポンプハウジングが前記カニューレの中から引き出されて前記圧縮された状態から前記膨張された状態へ移されるときに、前記少なくとも1つの可撓性のセグメントの展開方向は、前記回転方向と反対に方向付けされており、前記搬送エレメントは、プラスチックの一体成形で構成されており、前記ポンプハウジングは、近位部分と遠位部分において、らせん状の支柱を有しており、前記近位部分と前記遠位部分の間において、格子形状の支柱を有しており、前記少なくとも1つの可撓性のセグメントの前記展開方向は、前記支柱のスパイラル方向と同一方向であること、を特徴とする。つまり本発明の態様では、ポンプハウジングを圧縮された状態から膨張された状態へ移すときに、少なくとも1つの可撓性のエレメントの展開方向は、らせん構造体に関係なく、流体がポンプの遠位端部から近位端部へ搬送されるときに、搬送エレメントの回転方向の反対に提供される。このケースでは、本発明の第1の態様のときと同様に、搬送エレメントのセグメントの外側端部の移動は、半径方向に考えたときに、展開方向を意味するということが理解されるべきである。
【0026】
参考例の血液ポンプは、ポンプハウジングと、長手方向軸線に沿って前記ポンプハウジングの内部に配置されているドライブシャフトと、前記ドライブシャフトの上に配置されている搬送エレメントとを有する血液ポンプであって、前記ポンプハウジングは、少なくとも1つのポンプ受け入れ部分と、前記ポンプ受け入れ部分の近位に配置されている1つの近位部分とを含み、前記ポンプハウジングは、前記長手方向に対して横断方向に延在する半径方向に、圧縮された状態から膨張された状態へと移され得り、前記ドライブシャフトは、前記ポンプハウジングの前記近位部分の領域において、近位軸受において軸支されており、前記ポンプハウジングの前記近位部分の前記領域、および前記近位軸受の遠位での前記ドライブシャフトの剛軟度が、前記近位部分の剛軟度と調整されるように、前記ドライブシャフトは構成されており、前記ポンプハウジングが曲がるときに、前記搬送エレメントが前記ポンプ受け入れ部分の中で実質的に同心円状に配置されるようになっていることを特徴とする。つまり、本参考例の態様は、ポンプハウジングと、長手方向軸線に沿ってポンプハウジングの内部に配置されているドライブシャフトと、ドライブシャフトの上に配置されている搬送エレメントとを含む。ポンプハウジングは、少なくとも1つのポンプ受け入れ部分と、ポンプ受け入れ部分の近位に配置されている1つの近位部分とを含み、ポンプハウジングは、長手方向に対して横断方向に延在する半径方向に、圧縮された状態から膨張された状態へと移され得る。ドライブシャフトは、ポンプハウジングの近位端部の領域において、近位軸受において軸支されている。
【0027】
参考例では、ポンプハウジングの近位部分の領域におけるドライブシャフトの剛軟度、および、近位軸受の遠位にあるドライブシャフトの剛軟度が、ポンプハウジングの近位部分の剛軟度に対応するように、ドライブシャフトは構成されている。このように、任意の曲げの場合に、ポンプハウジングおよび搬送エレメントは、ポンプ受け入れ部分の中で互いに実質的に同心円状に装着/軸支されている。換言すれば、近位部分におけるポンプハウジングの曲げラインは、近位部分の領域における可撓性のシャフトの曲げラインと調和されており、ポンプハウジングの遠位端部に作用する曲げモーメントが、ハウジングおよびシャフトの両方において同様の曲げを誘発するようになっている。したがって、ローターは、曲げに対する異なる抵抗のために、ポンプハウジングと衝突することが防止され、ポンプハウジングの破壊またはローター自身の破壊も防止される。ポンプの動作の間に、鼓動を打つ心臓の動きまたは患者の動きは、曲げモーメントまたは力を結果として生じさせる可能性があり、それは、曲げまたは曲げモーメントに対する抵抗の調整がなければ、ローターまたはポンプハウジングに対する損傷につながる可能性がある。
【0028】
変形例では、ポンプハウジングの近位部分の剛軟度は、ポンプ受け入れ部分と比較して、より柔らかい。近位部分の領域では、可撓性のシャフトも、ハウジングのポンプ受け入れ部分におけるシャフト部分と比較して、より柔らかい。
【0029】
近位部分におけるポンプハウジングの剛軟度は、たとえば、らせん構造体によって影響を与えられ得る。らせん構造体に起因して、1つの例示的な実施形態では、異なって作用する曲げモーメントのために機械的な交互に与えられる荷重を遮断する弾性領域が生成される。ここで、変形例によれば、らせん構造体は、長手方向軸線の周りに対称的に配置されることとなる。らせん構造体は、このように、スプリング効果を有するらせん状の領域を形成している。このスプリング効果は、所望の剛軟度の制御を可能にする。とりわけ、所望の剛軟度は、らせん構造体の角度またはスパイラルコースを介して設定され得る。ポンプハウジングの疲労強度を確保するために、ポンプハウジングの任意のポイントにおける最大局所ひずみは、変形例では、2%未満である。
【0030】
さらなる実施形態では、ポンプハウジングは、ポンプ受け入れ部分の遠位にある遠位部分も含み、ドライブシャフトは、ポンプハウジングの遠位端部の領域において、遠位軸受において軸支されており、ポンプハウジングが曲がるときに、搬送エレメントがポンプ受け入れ部分の中で実質的に同心円状に配置されるように、遠位部分の領域、および遠位部分の近位でのドライブシャフトの剛軟度が、遠位部分の剛軟度と調整されている。ここで、ドライブシャフトは、たとえば、ポンプの遠位端部の領域において追加的に軸支可能で、ドライブシャフトが、近位軸受と遠位軸受との間に固定されるようになっている。ポンプハウジングの遠位部分および近位部分の領域において、ドライブシャフトが、近位部分または遠位部分におけるポンプハウジングの剛軟度に対応する剛軟度を有しているので、ポンプハウジングの中にローターを実質的に同心円状に装着することを確実にすることが可能である。
【0031】
さらなる実施形態では、たとえば、ポンプ領域の遠位端部または近位端部において、それがカテーテルの剛性と調整されるように、ポンプハウジングが形成されている。カテーテルの剛性が高過ぎる場合には、強い変形がポンプハウジングの中へ導入されるが、しかし、カテーテルが柔らか過ぎる場合には、動作の間のハウジングの位置が固定されず、いずれのケースでも、ポンプハウジングの中のローターの信頼性の高い動作を確保することができないようになっている。ポンプハウジングの剛性をカテーテルの剛性と調整することによって、ポンプ受け入れ部分の中にローターを同心円状に装着することが、ここで、ポンプの動作の間でも確保される。
【0032】
シャフトの剛軟度に影響を与えるために、中空のシャフトが使用可能で、とりわけ、それには、ポンプ受け入れ部分の領域において、コアが設けられている。加えて、コアは、遠位軸受および近位軸受まで延在することが可能である。また、本発明の態様のポンプにおいて、ポンプハウジングの「オーステナイト終了」(Af)温度が、34℃よりも低く、更に、30℃よりも低く、更に、20℃より低くてもよい。
【0033】
この出願で記載されているポンプ構成体では、異なる外力効果および交互に与えられる曲げ荷重が、現実に、ドライブシャフト、ポンプハウジング、ポンプハウジングの遠位に配置されているピッグテール、および、適用可能な場合には、カテーテルまたは血液ポンプ構成体の軸受エレメントに作用する。左心室もしくは右心室または大動脈などのような、心臓室または血管の中の血液の脈動圧力変化もしくは流量変化によって、および/または、身体の位置もしくは姿勢の変化によって、とりわけ、穿刺部位の近辺における胴部の動きもしくは(脚部の)動きによって、外力効果および交互に与えられる曲げ荷重が、たとえば、心臓の内側壁部によってカテーテルに移され得る。カテーテルは、(たとえば、ピッグテール先端部として知られているものを介して)心臓の内側壁部に対抗して当接または支持され得る。これらの荷重にもかかわらず、血液は、たとえば、上記に説明されている血液ポンプ構成体の使用のときと同様に、たとえば上述の回転速度範囲の中にあるポンプローターの高い回転速度においても、比較的に長期間にわたって、たとえば、数時間、数日、または、数週間にもわたって、提案されているカテーテルおよび提案されている血液ポンプ構成体によって搬送され得る。
【0034】
各参考例に特定されている特徴も、請求項1に係る発明と組み合わせられ得るということが留意される。
【0035】
さらなる態様が、以下の図に基づいて説明されることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2a】ポンプハウジングの変形例を示す図であり、搬送エレメントがポンプハウジングの中でドライブシャフトの上に配置されており、ドライブシャフトが単に近位だけにおいて軸支されていることを示す図である。
【
図2b】ポンプハウジングの変形例を示す図であり、搬送エレメントがポンプハウジングの中でドライブシャフトの上に配置されており、ドライブシャフトが単に近位だけにおいて軸支されていることを示す図である。
【
図2c】ポンプハウジングの変形例を示す図であり、搬送エレメントがポンプハウジングの中でドライブシャフトの上に配置されており、ドライブシャフトが単に近位だけにおいて軸支されていることを示す図である。
【
図2d】ポンプハウジングの変形例を示す図であり、搬送エレメントがポンプハウジングの中でドライブシャフトの上に配置されており、ドライブシャフトが単に近位だけにおいて軸支されていることを示す図である。
【
図3a】ポンプの変形例を示す図であり、ポンプがポンプハウジングとドライブシャフトの上に装着された搬送エレメントとを備えており、ドライブシャフトが遠位および近位に軸支されていることを示す図である。
【
図3b】ポンプの変形例を示す図であり、ポンプがポンプハウジングとドライブシャフトの上に装着された搬送エレメントとを備えており、ドライブシャフトが遠位および近位に軸支されていることを示す図である。
【
図3c】ポンプの変形例を示す図であり、ポンプがポンプハウジングとドライブシャフトの上に装着された搬送エレメントとを備えており、ドライブシャフトが遠位および近位に軸支されていることを示す図である。
【
図3d】ポンプの変形例を示す図であり、ポンプがポンプハウジングとドライブシャフトの上に装着された搬送エレメントとを備えており、ドライブシャフトが遠位および近位に軸支されていることを示す図である。
【
図4a】ポンプハウジングとドライブシャフトとの間の対応する剛軟度の例示的な実施形態を示す図である。
【
図4b】ポンプハウジングとドライブシャフトとの間の対応する剛軟度の例示的な実施形態を示す図である。
【
図5a】対応する剛軟度を備えるポンプハウジングおよびドライブシャフトのさらなる実施形態を示す図である。
【
図5b】対応する剛軟度を備えるポンプハウジングおよびドライブシャフトのさらなる実施形態を示す図である。
【
図6a】コアおよびローターを備えるドライブシャフトの実施形態を示す図である。
【
図6b】コアおよびローターを備えるドライブシャフトの実施形態を示す図である。
【
図7a】ポンプハウジングの実施形態を示す図である。
【
図7b】ポンプハウジングの実施形態を示す図である。
【
図7c】ポンプハウジングの実施形態を示す図である。
【
図8】カテーテルがその中に取り付けられているポンプハウジングの遠位端部の実施形態を示す図である。
【
図9】曲げラインの調和に関して、ポンプハウジングおよびドライブシャフトの調整された組み合わせを備えたポンプ構成体の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
ポンプ構成体1の概略概観図が、
図1に基づいて提供されている。ポンプ構成体1は、カニューレまたはカテーテル3を備えるポンプハウジング2を含み、カニューレまたはカテーテル3の中には、ドライブシャフト4が配置されている。搬送エレメント5は、ドライブシャフト4を介して駆動され、モーター6は、ドライブシャフトの近位端部に取り付けられており、搬送エレメント5は、ポンプハウジング2の領域の中に位置付けされている。ドライブシャフト4を含むポンプは、ここでは、ポート7を介して、たとえば、大腿動脈8および大動脈弓9を通して、心室10の中へ導入されており、ポンプハウジングが大動脈弁の領域の中に位置するようになっている。ここで、血液が、心室から大動脈の中へ、すなわち、ポンプの遠位端部からポンプの近位端部へ、方向12に搬送されるように、ローター5は形成されている。
【0038】
ハウジング、ドライブシャフト、搬送エレメント、およびカニューレの間のさまざまな相互作用が、
図2aから
図2dに基づいて説明されることとなる。
図2aおよび
図2cでは、ポンプハウジング20が、膨張された状態(
図2a)および圧縮された状態(
図2c)において、縦断面で図示されている。対応する断面は、
図2bおよび
図2dにおいて見出され得る。
【0039】
ドライブシャフト21は、ポンプハウジング20の中に配置されており、搬送エレメント22が、ドライブシャフトの上に位置付けされている。本例では、搬送エレメントは、2つの可撓性のセグメント23および24を含み、2つの可撓性のセグメント23および24は、ローターブレードとして具現化されている。ポンプハウジング20は、引っ張り方向25にドライブシャフトを引っ張ることによって、膨張された状態から圧縮された状態へと移り、引っ張り方向25は、ポンプハウジングの長手方向の方向26に対して平行である。断面が、
図2aの説明図の中のポンプハウジングの図示に関して、
図2bに図示されている。ポンプハウジング20は、ドライブシャフト21の周りに実質的に同心円状に配置されているということがわかり得る。ここで図示されている断面では、らせん構造体としてらせん状に延在する支柱27が見られ、支柱27は、近位部分から遠位部分へ半径方向27aに幅を広げられ得る。支柱は、ポンプハウジング28の近位端部からポンプハウジング29の遠位端部へ反時計回り方向に延在している。比較によって、搬送エレメント22も示されており、搬送エレメント22の可撓性のセグメントが、流体を搬送する。また、これは、
図2aの平面図においても見られ得る。多様な支柱の代替として、別のらせん構造体も選択可能である。それは、たとえば、それらの配置のために、らせんのラインすなわち構造体を形成する多様な支柱などである。
【0040】
ポンプハウジング20が、引っ張り方向25に引っ張ることによって、
図2aに図示されている膨張された状態から圧縮された状態へとカニューレ30の中へ引き込まれる場合には、らせんエレメントがトルク31を作り出し、トルク31は、時計回り方向に作用する。したがって、それは、らせん状の支柱のコースの反対になっており、らせん状の支柱の捩じれに対抗することを試みるが、ハウジングの目に見える変化は認識できない。トルクの結果として、セグメント23および24が、
図2dに図示されているように、トルク31によってドライブシャフト21の周りに折り畳み方向32に巻き付くように、セグメント23および24は作用を受ける。したがって、ポンプハウジングがカニューレ30から長手方向に展開方向33にスライドして出されると、ローターが展開する。
【0041】
ここで図示されている例では、次に続くローターの回転方向は、回転方向34であり、回転方向34は、展開方向に対して反対である。とりわけ、より高い回転速度でローターをさらに展開することが、結果として提供され得る。しかし、他の変形例では、展開方向と一致するように回転方向を選択することが可能である。ここで、より高い回転速度は、折り畳み方向32へのローターの容易な折り畳みを引き起こす。
【0042】
本例では、ドライブシャフトは、35NL T(登録商標)またはMP35N(登録商標)などのような、ニッケル-コバルト合金から作製されている。たとえば、カニューレは、シリコーンまたはポリウレタンなどのような、先行技術から知られている材料から作製されたカテーテルから形成されている。ポンプハウジングは、たとえば、ニチノールから製作され得る。ここで、本例では、ポンプハウジングのAf温度は、おおよそ15℃にあり、Af温度が室温より下にあるようになっている。これは、ポンプハウジングの安定性の観点から利点を有する。以下の例では、ドライブシャフトは、単に、近位軸受スリーブ35によって軸支されている。ローターに関して使用される材料に関して、たとえば、米国特許出願第13/261565号に説明されている材料が使用され得る。
【0043】
図2に図示されている例では、らせん状に配置されている支柱は、ポンプハウジングの近位部分の中に、および、ポンプ受け入れ部分の領域の中の両方に延在しており、ポンプハウジングの近位部分は、搬送エレメント22の近位に位置しており、ポンプ受け入れ部分の領域は、搬送エレメント22の領域の中に位置している。
【0044】
ポンプハウジング、搬送エレメント、およびドライブシャフトの組み合わせの変形例が、例として
図3aから
図3dに示されている。
【0045】
図2の実施形態と
図3の実施形態との間の差は、とりわけ、
図3の実施形態の中のドライブシャフトが、遠位端部の中、および、ポンプハウジングの近位端部の領域の中の両方で軸支されているということである。
【0046】
図3aに図示されているポンプハウジング40は、ポンプ受け入れ部分41と、ポンプ受け入れ部分の遠位に配置されている部分42と、遠位部分の遠位に配置されている遠位端部部分43とを含む。また、ポンプハウジングは、ポンプ受け入れ部分の近位に配置されている近位部分44と、近位部分の近位に配置されている端部部分45とを含む。ポンプハウジング40は、近位部分44および遠位部分42において、らせん状の支柱46を有しており、それは、例として
図3bに示されている。ここで、支柱は、ポンプの近位端部からポンプの遠位端部へ反時計回り方向に延在している。カニューレ47は、追加的に
図3aに示されており、カニューレは、それが大動脈弓および身体の血管を通過するときに、ドライブシャフト48を包み込んでいる。ローター49が、ハウジングのポンプ受け入れ部分41の領域において、ドライブシャフトの上に追加的に配置されており、遠位端部から近位端部へ血液を搬送する役割を果たしている。
図3bに基づいて、らせん状の支柱46が、近位部分44において、反時計回り方向に、内側(すなわち、端部部分45の遠位端部)から外側へ(すなわち、部分41の近位端部に向かって)へ延在しており、一方、遠位部分42の中のらせん状の支柱50は、時計回り方向に外側から内側へ延在しているということがわかり得る。結果として、遠位端部部分43および近位端部部分45が、両方の部分で掴まれて反対方向に引っ張られると、時計回り方向に延在するトルクが、ポンプ受け入れ部分41に作用する。また、このメカニズムは、ポンプハウジングがカニューレの中へ引き込まれるときにも効果的である。
図2aに対応する様式で、
図3aのポンプは、膨張された状態で図示されている。ここで、長手方向52と反対に方向付けされた引張力53が効果的になる場合には、ポンプハウジングの直径が、一方では、部分41、42、および44において低減され、同時に、時計回り方向に作用するトルク51が誘発される。つぶれる間の直径の低減のために、ポンプハウジング40は、搬送エレメント49、または、搬送エレメント49の可撓性のセグメント54および55と相互作用する。それらの形態およびそれらの配向のために、可撓性のセグメント54および55は、トルクの方向に折り畳み方向56を有している。このように、可撓性のセグメント54および55は、ドライブシャフト48の周りに折り畳み方向56に巻き付けられる。ここで、ポンプハウジングが、
図3cの圧縮された構成から
図3aの膨張された構成へと移される場合には、ローターが、展開方向57に展開し、展開方向57は、らせん状の支柱のスパイラル方向58と一致している。本例では、次いで、ローター48が、方向59に回り、ポンプの遠位端部から近位端部へ血液をガイドするようになっている。
【0047】
図3に示されている実施形態は、「あめ玉の包装」に対応している。その理由は、らせん状の支柱のコースを画定するスパイラルが、遠位および近位部分において、反対方向に回転しているからである。結果として、トルクは、単に、遠位部分42および近位部分44において、ポンプ受け入れ部分41の中に導入されるが、しかし、遠位端部部分43および近位端部部分45の中で作用するトルクが低減される。ドライブシャフト48のための軸受(図示せず)が、遠位端部部分および近位端部部分に位置付けされているので、ポンプハウジング40が膨張された状態から圧縮された状態へと移されるときには、ポンプハウジングのトルクが、必要に応じてドライブシャフトに伝達される。
【0048】
ポンプハウジングの対応する剛軟度およびシャフトの対応する剛軟度の態様が、
図4aおよび
図4bに基づいて、ならびに、
図5aおよび
図5bにも基づいて、議論されることとなる。
【0049】
図3のものに対応するポンプ構成体が、
図4aおよび
図4bに図示されている。とりわけ、ポンプハウジング40は、
図3を参照して説明されている部分41から45、および、ドライブシャフト48を含み、ドライブシャフト48は、第1の軸受60において近位に保持され、また、遠位軸受61に保持されている。らせん状の支柱46および50は、遠位部分42および近位部分44の中にそれぞれ配設されている。ここで、
図4bに図示されているように、曲げモーメントがポンプハウジング40に印加される場合には、らせん状の支柱46および50は、ドライブシャフトの周りのそれらの対称的な配置のために、とりわけ、ポンプハウジングが曲がることを引き起こし、前記曲げは、それぞれ、遠位部分42および近位部分44におけるドライブシャフトの対応する曲げに対応する。ここで、シャフトは、たとえば上述の領域において、ポンプ受け入れ部分41の領域においてよりも柔らかいことが可能である。ポンプ受け入れ部分における硬化は、ローター自身またはローターハブによって、追加的に強化される。結果として、
図4bでわかり得るように、搬送エレメント49は、曲げ荷重の下でさえ、ポンプ受け入れ部分の中で実質的に同心円状のままである。例として、支柱の厚さ、らせん状の支柱の選択された角度、ならびに、支柱の数および配置のために、対応する曲げモーメントは、対応する領域におけるシャフトの剛軟度に適合され得る。ここで、曲げモーメントは、すべての作用する力にわたって、発生する力と対応する力アームの積の総和である。ここで、力アームは、軸受ポイントからの距離である。例として、近位軸受の領域の中のポイントは、軸受ポイントとして選択され得る。
【0050】
図5aおよび
図5bでは、対応する状況が図示されており、ここでは、ポンプ構成体が、
図2のポンプ構成体に実質的に対応している。しかし、ポンプハウジング20’は、このケースでは、剛体のポンプ受け入れ部分と、ポンプ受け入れ部分200の遠位に配設されている遠位部分201とを有しており、遠位部分は、らせん構造体27を有している。らせん構造体27は、多様な支柱のコンダクター状の(conductor-like)配置およびその接続のために、または、支柱構造体のセグメント回転によって発生させられ得り、らせん構造体27は、遠位部分201にあるポンプハウジングの剛軟度がポンプ受け入れ部分202にあるものよりも柔らかくなるように構成されている。したがって、ピッグテール36に作用する曲げモーメントは、遠位移行構造体37に加えて、遠位部分によっても吸収可能で、それは、たとえば、4つの支柱から構築され得る。したがって、曲げモーメント38(
図5b)は、ポンプ受け入れ部分には作用せず、曲げモーメントが印加されているときでも、ドライブシャフトがポンプ受け入れ部分の中に実質的に同心円状に位置するようになっている。ポンプ受け入れ部分200は、より剛性が高く、剛軟度を増加させるための措置が、次に続く例示的な実施形態のうちの1つの中で説明されることとなる。
【0051】
また、ポンプハウジングは、随意的に、らせん構造体27を有する近位部分202を含むことが可能であり、有効曲げモーメントを補償するように、および、ポンプハウジングの圧縮を促進させるようになっている。
【0052】
本発明のさまざまな態様のさらなる詳細が、
図6aおよび
図6bに基づいて議論されることとなる。シャフト構成体70は、遠位端部72と、搬送エレメント73と、近位端部74とを備えるドライブシャフト71を含み、それは、たとえば、カップリングエレメントを使用して、モーターに結合され得る。搬送エレメント73の領域において、ドライブシャフト71は、コア75によって強化されており、コアは、遠位端部72と搬送エレメント73の近位にある領域との間に延在している。搬送エレメント73は、2つの可撓性のセグメント76および77を含み、それは、近位端部から遠位端部へ考えたときに、搬送エレメントの回転方向が時計回り方向になっている状態で、流体が遠位端部から近位端部へ搬送されることを引き起こす。
図6bでは、近位端部から遠位端部へのローター73の断面が図示されている。ここで、可撓性のセグメント76および77の形態が、より詳細に見られ得る。ポンプハウジング(図示せず)がカニューレの中へ引き込まれるときのローターの折り畳み方向は、時計回り方向になっており、すなわち、ポイント78および79が、半径方向内向きに、および、時計回り方向に輸送される。したがって、搬送エレメントがカテーテルから反時計回り方向にスライドして出されるときに、ローターが展開する。したがって、変形例では、図示されている搬送エレメントまたはシャフト構成体70には、ハウジングが設けられており、ポンプハウジングが膨張された状態から圧縮された状態へと移されるときに、これが時計回り方向にトルクを作り出すように、ハウジングは形成されている。
【0053】
ここで、コア75は、中空のドライブシャフト71の他の領域と比較して改善された剛性を作り出すことが可能である。ここで、コアは、その遠位端部から近位端部へ異なる剛性を有することが可能であり、たとえば、搬送エレメントの近位および/または遠位の剛軟度が、搬送エレメントの領域の中のコアの剛性と比較して低減されるようになっている。しかし、搬送エレメントの領域の中のシャフトの対応する剛性は、ローターハブの対応する設計(または、調整)によっても実現され得る。
【0054】
ポンプハウジングのさらなる詳細が、
図7aから
図7cに基づいて説明されることとなる。
図7aでは、
図7bに図示されているポンプハウジングが、架空の分離線に沿って切断され、巻かれている状態が広げられ、平坦に押し付けられている。しかし、一実施形態では、ポンプハウジングは、
図7aに図示されているように、たとえばレーザーによって最初に切開される。ここで、切開は、チューブモールドの中で行われ得る。次いで、
図7bに図示されている形態は、モールドの中での焼鈍プロセスによって提供される。
図7aにおいて同様に巻かれている状態が広げられているポンプハウジング80は、その近位端部81において、近位端部部分83を有しており、近位端部部分83は、らせんエレメント82まで延在している。ここで、らせん状の支柱82の前後の短い領域は、近位部分84を画定している。ポンプ受け入れ部分85は、格子設計を有しており、格子設計では、格子形状に相互接続された支柱が、互いとの接点を有している。近位部分84と同様に、遠位部分86は、らせん状の支柱87を有しており、それは、明らかに、それらのスパイラル方向の観点から、支柱82に方向付けされている。遠位端部には、遠位端部部分88が配設されており、遠位端部部分88の領域には、たとえば、ドライブシャフトが、カテーテルまたはピッグテールの中で軸支され得る。らせんエレメント82が近位端部部分からポンプ受け入れ部分へ延在する角度は、たとえば、20°から40°の間にあることが可能である。同様に、支柱87の角度も、20°から40°であることが可能である(しかし、反対方向である)。
【0055】
それらの実施形態では、2つの角度が、
図7に図示されているように、反対側に方向付けされている。ここで、ポンプハウジング80が上記に示されているように接合される場合には、
図7bに図示されているような膨張された状態のポンプハウジングが作り出される。それぞれ、近位部分84および遠位部分86の領域において、近位端部から遠位端部への内径の拡大が存在しており、また、その逆もまた同様であるということが明確にわかり得る。ここで、ポンプ受け入れ部分85は、流体を搬送するときに高い効率を達成するために、最大の内径を有している。近位端部から遠位端部へ考えたときのポンプハウジング80の断面が、
図7cに示されており、支柱82が反時計回り方向に走っているということが明確に見られ得る。また、支持支柱89が図示されており、ポンプ受け入れ部分の格子支柱85aに移行している。
【0056】
ポンプハウジング80の遠位端部部分88が、
図8に基づいて図示されている。ここで、カテーテル90が、遠位端部部分88の中へ挿入されており、とりわけ、軸受スリーブ91を含み、軸受スリーブ91の中に、シャフト構成体70の遠位端部が軸支されている。ここで、軸受は、たとえば、セラミックから構成可能で、一方、シャフトは、以前に説明された材料から構築され得る。
【0057】
図9では、ポンプ構成体100を通る縦断面が示されており、ポンプ構成体100は、ポンプハウジング101と、ドライブシャフト102と、ドライブシャフトの上に配置されているローター103とを含む。また、流出チューブ104が図示されている。ポンプハウジングの遠位端部領域110において、これは、ピッグテール(図示せず)として形成されたカテーテルに接続されている。ここで、遠位端部部分におけるドライブシャフト102の装着は、
図8に基づいて説明された装着に実質的に対応している。
【0058】
近位端部部分111の領域において、ドライブシャフトの近位軸受/軸支部112が配設されており、それは、ラジアル軸受およびアキシャル軸受の両方を含む。この軸受は、特許文献1(欧州特許出願公開2868289A1号として公開された欧州特許出願、内部ファイル参照番号137EP 2457を有する)において、より詳細に説明されている。その出願は、本出願の中に完全に組み込まれている。
【0059】
ポンプハウジング101の遠位端部部分と近位端部部分との間には、遠位部分112と、ポンプ受け入れ部分113と、近位部分114とが、配設されている。ここで、遠位部分および近位部分の両方は、それぞれ、らせん状の支柱115および116を有しており、らせん状の支柱115および116は、ポンプ受け入れ部分に向かって、それぞれ、支持支柱117および118へと移行している。これらの支持支柱は、それぞれ、ポンプ受け入れ部分の支柱119へとさらに分割している。ポンプ受け入れ部分の内側には、プラスチックフィルム120が位置付けされており、プラスチックフィルム120は、例示的な実施形態では、ポリウレタンから作り出されている。このフィルムは、ローター103の搬送効果を改善する。
【0060】
ローター103は、2つの可撓性のローターブレード130および131を含み、2つの可撓性のローターブレード130および131は、ハブ132に締結されている。いくつかの例示的な実施形態では、ローターは、ポリウレタンなどのようなプラスチック、たとえばbiresin、または、シリコーンもしくはPebaxから作製された単一のワークピースである。明瞭化のために、ローター103は、縦断面の説明図に示されていない。
【0061】
ローター103は、ドライブシャフト102の上に配置されており、ドライブシャフト102は、中空のシャフトとして形成されている。さらなる詳細に関して、出願PMP Ref. 137EP 2457が参照される。中空のシャフトは、遠位軸受/軸支部と近位軸受/軸支部との間で、コア105によって強化されている。
【0062】
ポンプハウジングの曲げラインをドライブシャフトの曲げラインと調整するとき、曲げモーメント140(または、141もしくは142)がポンプハウジングに作用する場合には、ローター103がポンプ受け入れ部分113の中で実質的に同心円状のままであるということ、または、ローターがポンプ受け入れ部分113の内側面に接触しないということが確実にされるべきである。第1の措置として、ポンプ受け入れ部分の剛軟度が、この例示的な実施形態では、遠位部分または近位部分の剛軟度よりも剛性が高い。簡単化のために、遠位部分および近位部分の剛軟度は、示されている例示的な実施形態では、対称的に選択されている。ポンプ受け入れ部分113における剛軟度に影響を与える可能性は、考えられるハウジングの直径との関連で、支柱119の密度および数によって構成されている。本例では、遠位部分112および近位部分114は、それぞれ、10個のらせん状の支柱を有しており、それは、それぞれ、ポンプ受け入れ部分に向かって、20個の支持支柱117および118へと移行している。支持支柱117および118は、40個の支柱119へと再び分割しており、ポンプ受け入れ領域における支柱の数が、ここでは、4倍大きくなっている。他の例示的な実施形態では、この倍数は、0.9から20の間で変動することが可能である。ポンプ受け入れ部分における剛軟度は、このように、遠位領域または近位領域による剛軟度よりも大きい。
【0063】
ポンプ受け入れ部分と比較して遠位部分および近位部分の剛軟度をマッチさせる(ここでは、より柔らかくするということ)ためのさらなる可能性は、支柱115~119の幾何的寸法の変化によって構成されている。本例では、支柱115および116は、支柱119よりも、2倍から3倍だけ厚くなっている。支柱の数の比率における倍数4のために、近位部分および遠位部分は、仮に支柱115~119が等しい厚さのものであったならば、いくつかの例示的な実施形態では、そうでなければ、柔らかくなり過ぎることとなる。
【0064】
近位部分および遠位部分の領域における剛軟度をマッチさせるためのさらなる可能性は、らせん状の支柱の曲げ角度の選択によって構成される。本例では、らせん状の支柱は、近位部分または遠位部分の遠位端部から近位端部へ、おおよそ30°の角度によって巻いている。しかし、その範囲は、また、5°から90°の範囲に存在していてもよい。
【0065】
さらなる可能性は、近位部分および遠位部分の長さを変動させることである。ポンプハウジングの剛軟度をマッチさせるための方法では、シャフト構成体が最初に測定され、次いで、ポンプハウジングの異なる部分の上述のパラメーターが計算され、次いで、適切なポンプハウジングが作り出される。
【0066】
ドライブシャフトの剛軟度は、中空のシャフト剛性、コアの剛性、および、ローターの剛性によって、マッチさせられ得る。いくつかの例示的な実施形態では、中空のシャフトは、たとえば大動脈弓の中で、強い湾曲に曝され得るので、中空のシャフトは、このタイプの湾曲を可能にする剛軟度を有すると同時に、高い回転速度で可能な限り長く動作することができるような強度を有する剛軟度を有さなければならない。したがって、いくつかの例示的な実施形態では、中空のシャフトの剛軟度は、主に、モーターと軸受との間の中空のシャフトの要件に適合されている。しかし、ドライブシャフトの曲げラインを、近位軸受と遠位軸受との間のポンプハウジングの剛軟度に適合させるために、コアの剛性も適合され得る。
【0067】
そのうえ、ローター103の材料選択および幾何学形状が、ポンプ受け入れ部分113の領域におけるドライブシャフトの硬化を引き起こし、ポンプ受け入れ部分の領域においてよりも、遠位部分および近位部分の領域において、ローターを備えるドライブシャフト構成体が柔らかくなるようになっている。さらなる適合可能性は、ここでなされているコメントから、当業者に明確になることとなる。
【0068】
さらなる例示的な実施形態では、ポンプハウジングは、らせん構造体を有しており、らせん構造体は、相互接続された多様な支柱の結果として生じている。2つの支柱の間の接続ポイントの選択に起因して、支柱は、ある傾斜で上向きにまたは下向きに延在しているが、1つの方向に方向付けされたらせん構造体が作り出されている。構造体の厚さ、数、および長さに対する変化によって、ならびに、包含されている構造体の角度に対する変化によって、この構造体の剛軟度は、ドライブシャフトの剛軟度にマッチさせられ得る。
【0069】
本発明のさらなる実施形態および変形例は、ここで特定されている組み合わせから、および、当業者にとって明らかな組み合わせから、出現することとなる。