(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】電池、電池パック、車両及び定置用電源
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240213BHJP
H01M 50/466 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20240213BHJP
H01M 50/451 20210101ALI20240213BHJP
H01M 10/38 20060101ALI20240213BHJP
H01M 10/36 20100101ALI20240213BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240213BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240213BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20240213BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/466
H01M50/489
H01M50/446
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/451
H01M10/38
H01M10/36 A
H01M10/058
H01M10/052
H01M10/0566
(21)【出願番号】P 2022142379
(22)【出願日】2022-09-07
(62)【分割の表示】P 2019048203の分割
【原出願日】2019-03-15
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 隼人
(72)【発明者】
【氏名】堀田 康之
(72)【発明者】
【氏名】松野 真輔
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-183182(JP,A)
【文献】特開2015-153579(JP,A)
【文献】特開2010-199281(JP,A)
【文献】特開2018-160342(JP,A)
【文献】特開2018-156837(JP,A)
【文献】特開2017-004854(JP,A)
【文献】特開昭63-078460(JP,A)
【文献】実開昭59-012468(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 50/40-497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収納空間を有する外装部材と、
前記外装部材の前記収納空間に収納され、気体が透過可能で、かつ、透気係数が1.0×10
-14m
2以下になるセパレータであって、第1のバッグを備えるセパレータと、
前記収納空間において前記セパレータの前記第1のバッグの内部に収納される第1の電極と、
前記第1のバッグの内部において前記第1の電極に保持される第1の電解質と、
前記第1の電極とは反対の極性であり、前記収納空間において前記第1のバッグの外部に配置される第2の電極と、
前記収納空間において前記第1のバッグの外部で前記第2の電極に保持される第2の電解質と、
を具備し、
前記セパレータは、
支持体と、
前記支持体において前記第1の電極が位置する側の表面及び前記第2の電極が位置する側の表面の少なくとも一方に積層され、粒子及び高分子材料が混合される混合層と、
を備え、
前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である正極側電解質は、前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中で他方である負極側電解質に比べて、耐酸化性が高い、
電池。
【請求項2】
内部に収納空間を有する外装部材と、
前記外装部材の前記収納空間に収納され、気体が透過可能で、かつ、透気係数が1.0×10
-14m
2以下になるセパレータであって、第1のバッグを備えるセパレータと、
前記収納空間において前記セパレータの前記第1のバッグの内部に収納される第1の電極と、
前記第1のバッグの内部において前記第1の電極に保持される第1の電解質と、
前記第1の電極とは反対の極性であり、前記収納空間において前記第1のバッグの外部に配置される第2の電極と、
前記収納空間において前記第1のバッグの外部で前記第2の電極に保持される第2の電解質と、
を具備し、
前記セパレータは、
支持体と、
前記支持体において前記第1の電極が位置する側の表面及び前記第2の電極が位置する側の表面の少なくとも一方に積層され、粒子及び高分子材料が混合される混合層と、
を備え、
前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である負極側電解質は、前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中で他方である正極側電解質に比べて、耐還元性が高い、
電池。
【請求項3】
前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれを複数具備し、
前記セパレータは、前記第1のバッグを前記第1の電極と同一の数備え、
前記セパレータの前記第1のバッグのそれぞれの内部には、前記第1の電極の対応する1つが収納され、
前記外装部材の前記収納空間では、前記第1の電極及び前記第2の電極が交互に配列され、
配列方向について互いに対して隣り合う前記第1の電極と前記第2の電極との間には、前記セパレータの少なくとも一部が介在する、
請求項1又は2の電池。
【請求項4】
前記セパレータは、前記第2の電極が内部に収納される第2のバッグを備え、
前記第2のバッグは、前記外装部材の前記収納空間において前記第1のバッグの外部に形成され、
前記第2の電解質は、前記第2のバッグの内部において前記第2の電極に保持される、
請求項1乃至3のいずれか1項の電池。
【請求項5】
内部に収納空間を有する外装部材と、
第1のバッグを備え、前記外装部材の前記収納空間に収納されるセパレータであって、気体が透過可能で、かつ、透気係数が1.0×10
-14m
2以下になるセパレータと、
前記収納空間において前記セパレータの前記第1のバッグの内部に収納される複数の第1の電極と、
前記第1のバッグの内部において複数の前記第1の電極に保持される第1の電解質と、
前記第1の電極とは反対の極性であり、前記収納空間において前記第1のバッグの外部に配置される複数の第2の電極と、
前記収納空間において前記第1のバッグの外部で前記第2の電極の複数に保持される第2の電解質と、
を具備し、
前記セパレータは、
支持体と、
前記支持体において前記第1の電極が位置する側の表面及び前記第2の電極が位置する側の表面の少なくとも一方に積層され、粒子及び高分子材料が混合される混合層と、
を備え、
前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である正極側電解質は、前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中で他方である負極側電解質に比べて、耐酸化性が高い、
電池。
【請求項6】
内部に収納空間を有する外装部材と、
第1のバッグを備え、前記外装部材の前記収納空間に収納されるセパレータであって、気体が透過可能で、かつ、透気係数が1.0×10
-14m
2以下になるセパレータと、
前記収納空間において前記セパレータの前記第1のバッグの内部に収納される複数の第1の電極と、
前記第1のバッグの内部において複数の前記第1の電極に保持される第1の電解質と、
前記第1の電極とは反対の極性であり、前記収納空間において前記第1のバッグの外部に配置される複数の第2の電極と、
前記収納空間において前記第1のバッグの外部で前記第2の電極の複数に保持される第2の電解質と、
を具備し、
前記セパレータは、
支持体と、
前記支持体において前記第1の電極が位置する側の表面及び前記第2の電極が位置する側の表面の少なくとも一方に積層され、粒子及び高分子材料が混合される混合層と、
を備え、
前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である負極側電解質は、前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中で他方である正極側電解質に比べて、耐還元性が高い、
電池。
【請求項7】
前記セパレータは、前記第2の電極の複数が内部に収納される第2のバッグを備え、
前記第2のバッグは、前記外装部材の前記収納空間において前記第1のバッグの外部に形成され、
前記第2の電解質は、前記第2のバッグの内部において複数の前記第2の電極に保持される、
請求項5又は6の電池。
【請求項8】
前記外装部材の前記収納空間では、前記第1の電極及び前記第2の電極が交互に配列され、
配列方向について互いに対して隣り合う前記第1の電極と前記第2の電極との間には、前記セパレータの一部が介在する、
請求項5乃至7のいずれか1項の電池。
【請求項9】
前記セパレータは、前記第1の電極及び前記第2の電極の一方である負極と対向する第1のセパレータ表面と、前記第1の電極及び前記第2の電極の前記負極とは別の一方である正極と対向する第2のセパレータ表面とを有し、
前記セパレータの前記第1のセパレータ表面は、前記混合層から形成される、
請求項1乃至8のいずれか1項の電池。
【請求項10】
前記混合層は、前記支持体に対して、少なくとも前記負極が位置する側に配置される、請求項9の電池。
【請求項11】
前記混合層は、前記支持体に対して、前記負極が位置する側、及び、前記正極が位置する側の両方に配置され、
前記セパレータの前記第1のセパレータ表面及び前記第2のセパレータ表面の両方は、前記混合層から形成される、
請求項10の電池。
【請求項12】
前記混合層は、固体電解質、酸化アルミニウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1つを前記粒子として含む、請求項1乃至11のいずれか1項の電池。
【請求項13】
前記支持体は、多孔質層を含む、請求項1乃至12のいずれか1項の電池。
【請求項14】
前記第1の電解質の浸透圧及び前記第2の電解質の浸透圧の小さい一方は、前記第1の電解質の前記浸透圧及び前記第2の電解質の前記浸透圧の大きい別の一方に対して、10%以上
100%未満となる、請求項1乃至13のいずれか1項の電池。
【請求項15】
前記第1の電解質及び前記第2の電解質のそれぞれは、水系溶媒を含む電解質である、請求項1乃至14のいずれか1項の電池。
【請求項16】
前記第1の電解質及び前記第2の電解質は、互いにpHが異なる、請求項1乃至14のいずれか1項の電池。
【請求項17】
前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である正極側電解質は、前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中で他方である負極側電解質に比べて、pHが小さい、請求項16の電池。
【請求項18】
請求項1乃至17のいずれか1項の電池を1つ以上具備する、電池パック。
【請求項19】
前記電池に電気的に接続される外部端子と、
保護回路と、
をさらに具備する、請求項18の電池パック。
【請求項20】
前記電池を複数具備し、
複数の前記電池は、互いに対して、電気的に直列に接続される、電気的に並列に接続される、又は、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続される、
請求項18又は19の電池パック。
【請求項21】
請求項18乃至20のいずれか1項の電池パックを具備する、車両。
【請求項22】
請求項18乃至20のいずれか1項の電池パックを具備する、定置用電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電池、電池パック、車両及び定置用電源に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池等の二次電池は、エネルギー密度が高い電池として、様々な適用が進められている。これらの二次電池等の電池では、エネルギー密度をさらに高くすることに加えて、充放電効率(クーロン効率)、貯蔵性能及びサイクル特性等が優れていることが、求められる。このため、電池を形成する材料としては、化学的及び電気化学的な安定性、及び、耐腐食性等が優れた材料を組み合わせる必要がある。ここで、エネルギー密度をさらに向上させると同時にその他の特性も向上させるためには、電池において、電解液等の電解質の副反応が起こり難くする必要がある。例えば、電解質として水系溶媒を含む水系電解液が用いられる場合、水の電気分解が起こり難くする必要がある。水の電気分解を起こり難くするためには、正極では電解液の耐酸化性を高くし、負極では電解液の耐還元性を高くする必要がある。前述のような事情から、二次電池等の電池では、電解質の副反応が安定して抑制する構成を実現することが、求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-59529号公報
【文献】国際公開2016/147497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、電解質の副反応が安定して抑制される電池を提供することにある。また、その電池を備える電池パック、及び、その電池パックを備える車両及び定置用電源を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態によれば、電池は、外装部材、セパレータ、第1の電極、第1の電解質、第2の電極及び第2の電解質を備える。外装部材は、内部に収納空間を有し、セパレータは、外装部材の収納空間に収納される。セパレータは、気体が透過可能で、かつ、透気係数が1.0×10-14m2以下になり、バッグを備える。第1の電極は、収納空間においてセパレータのバッグの内部に収納される。第1の電解質は、バッグの内部において第1の電極に保持される。第2の電極は、第1の電極とは反対の極性であり、収納空間においてバッグの外部に配置される。第2の電解質は、収納空間においてバッグの外部で第2の電極に保持される。セパレータは、支持体及び混合層を備える。混合層は、支持体において第1の電極が位置する側の表面及び第2の電極が位置する側の表面の少なくとも一方に積層され、混合層では、粒子及び高分子材料が混合される。第1の電解質及び第2の電解質の中の一方である正極側電解質は、第1の電解質及び第2の電解質の中で他方である負極側電解質に比べて、耐酸化性が高い、又は、第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である負極側電解質は、第1の電解質及び第2の電解質の中で他方である正極側電解質に比べて、耐還元性が高い。
【0006】
また、実施形態によれば、電池は、外装部材、セパレータ、複数の第1の電極、第1の電解質、複数の第2の電極及び第2の電解質を備える。外装部材は、内部に収納空間を有する。セパレータは、バッグを備え、外装部材の収納空間に収納される。セパレータは、気体が透過可能で、かつ、透気係数が1.0×10
-14
m
2
以下になる。第1の電極の複数は、収納空間においてセパレータのバッグの内部に収納される。第1の電解質は、バッグの内部において第1の電極の複数に保持される。第2の電極は、第1の電極とは反対の極性であり、第2の電極の複数は、収納空間においてバッグの外部に配置される。第2の電解質は、収納空間においてバッグの外部で第2の電極の複数に保持される。セパレータは、支持体及び混合層を備える。混合層は、支持体において第1の電極が位置する側の表面及び第2の電極が位置する側の表面の少なくとも一方に積層され、混合層では、粒子及び高分子材料が混合される。第1の電解質及び第2の電解質の中の一方である正極側電解質は、第1の電解質及び第2の電解質の中で他方である負極側電解質に比べて、耐酸化性が高い、又は、第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である負極側電解質は、第1の電解質及び第2の電解質の中で他方である正極側電解質に比べて、耐還元性が高い。
【0007】
また、実施形態によれば、前述の電池を1つ以上備える電池パックが提供される。
【0008】
また、実施形態によれば、前述の電池パックを備える車両が提供される。
【0009】
また、実施形態によれば、前述の電池パックを備える定置用電源が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る電池を示す概略図である。
【
図2】
図2は、
図1のA1-A1断面を概略的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図2のA2-A2断面を概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る電池の電極群の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図5A】
図5Aは、第1の実施形態に係る電極群のセパレータのバッグの製造方法の一例を示す概略図である。
【
図5B】
図5Bは、
図5Aの状態から、2枚のシートを互いに対して熱融着し、バッグを形成した状態を示す概略図である。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施形態に係る電極群のセパレータのバッグの製造方法の
図5A及び
図5Bの一例とは別の一例を示す概略図である。
【
図6B】
図6Bは、
図6Aの状態から、シートの一部をシートの別の一部に熱融着し、バッグを形成した状態を示す概略図である。
【
図7A】
図7Aは、第1の実施形態のある変形例に係る電池の電極群の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図7B】
図7Bは、第1の実施形態の
図7Aとは別のある変形例に係る電池を概略的に示す断面図である。
【
図7C】
図7Cは、
図7Bの変形例において、電極群のセパレータのバッグの構成を示す概略図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る電池を概略的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、
図8のA3-A3断面を概略的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係る電池の電極群の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態のある変形例に係る電池の電極群の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、第2の実施形態の
図11とは別のある変形例に係る電池の電極群の一部を拡大して概略的に示す断面図である。
【
図13A】
図13Aは、
図12の変形例に係る電極群のセパレータの2つバッグの製造方法の一例を示す概略図である。
【
図13B】
図13Bは、
図13Aの状態から、シートを一方のバッグ(第1のバッグ)に熱融着し、他方のバッグ(第2のバッグ)を形成した状態を示す概略図である。
【
図14】
図14は、第3の実施形態に係る電池を概略的に示す断面図である。
【
図15A】
図15Aは、第3の実施形態に係る電極群のセパレータのバッグの製造方法の一例を示す概略図である。
【
図15B】
図15Bは、
図15Aの状態から、シートの一部をシートの別の一部に熱融着し、バッグを形成した状態を示す概略図である。
【
図16】
図16は、第4の実施形態に係る電池を概略的に示す断面図である。
【
図17A】
図17Aは、第4の実施形態に係る電極群のセパレータの2つのバッグの製造方法の一例を示す概略図である。
【
図17B】
図17Bは、
図17Aの状態から、シートを一方のバッグ(第1のバッグ)に熱融着し、他方のバッグ(第2のバッグ)を形成した状態を示す概略図である。
【
図18】
図18は、実施形態に係る電池を用いた電池パックの一例を概略的に示す分解斜視図である。
【
図20】
図20は、実施形態に係る電池を用いた電池パックが搭載される車両の一例を示す概略図である。
【
図21】
図21は、実施形態に係る電池を用いた電池パックが搭載される定置用電源を備えるシステムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
[電池]
まず、実施形態に係る電池について説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1乃至
図3は、電池の一例として第1の実施形態の電池1を示す。電池1は、例えば、二次電池である。
図2は、
図1のA1-A1断面を示し、
図3は、
図2のA2-A2断面を示す。
図1乃至
図3等に示すように、電池1は、外装部材(容器)2及び電極群3を備える。外装部材2は、例えば、金属から形成される。外装部材2の内部には、収納空間5が規定され、電極群3は、収納空間5に収納される。
【0014】
ここで、本実施形態の電池1では、高さ方向(矢印X1及びX2で示す方向)、高さ方向に対して交差する(垂直又は略垂直な)第1の交差方向(矢印Y1及び矢印Y2で示す方向)、及び、高さ方向及び第1の交差方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直な)第2の交差方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す方向)が、規定される。
図1は、第1の交差方向に対して垂直又は略垂直な断面を示し、
図2は、第2の交差方向に対して垂直又は略垂直な断面を示す。そして、
図3は、高さ方向に対して垂直又は略垂直な断面を示す。本実施形態では、外装部材2は、底付きの筒状に形成され、外装部材2の収納空間5は、電池1の高さ方向について一方側(矢印X1側)へ向かって開口する。
【0015】
電極群3は、1つ以上(本実施形態では複数)の負極6と、1つ以上(本実施形態では複数)の正極7と、セパレータ8と、を備える。負極6及び正極7は、互いに対して反対の極性である。収納空間5では、負極6及び正極7が交互に配列される。本実施形態では、負極6及び正極7の配列方向は、第1の交差方向と一致又は略一致する。したがって、負極6及び正極7の配列方向は、高さ方向及び第2の交差方向の両方に対して交差する(垂直又は略垂直である)。また、収納空間5では、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間に、セパレータ8の少なくとも一部が介在する。
【0016】
図4は、電極群3の一部を拡大して示す。
図4では、電極群3は、第2の交差方向に垂直又は略垂直な断面で示される。
図4等に示すように、負極6のそれぞれは、負極集電体11と、負極活物質含有層12と、を備える。負極活物質含有層12は、負極活物質を含み、負極集電体11の両面又は片面に担持される。また、負極集電体11は、負極活物質含有層12が無担持の部分を有する。同様に、正極7のそれぞれは、正極集電体15と、正極活物質含有層16と、を備える。正極活物質含有層16は、正極活物質を含み、正極集電体15の両面又は片面に担持される。また、正極集電体15は、正極活物質含有層16が無担持の部分を有する。
【0017】
なお、ある一例では、配列方向について電極群3の両外端には、負極6が配置される。そして、配列方向について両外端に配置される負極6のそれぞれの負極集電体11では、片面にのみ、すなわち、配列方向について内側を向く面にのみ、負極活物質含有層12が担持される。そして、両外端に配置される負極6以外の負極6のそれぞれでは、負極集電体11の両面に、負極活物質含有層12が担持される。また、全ての正極7のそれぞれでは、正極集電体15の両面に、正極活物質含有層16が担持される。
【0018】
図1、
図2及び
図4等に示すように、電池1は、負極リード13、正極リード17及び蓋18を備える。蓋18は、例えば、金属から形成される。蓋18は、収納空間5の開口部において溶接等によって外装部材2に取付けられ、収納空間5の開口部を塞ぐ。リード13,17のそれぞれは、例えば、金属等から形成され、導電性を有する。負極6のそれぞれでは、負極集電体11の負極活物質含有層12が無担持の部分に、負極リード13が接続される。同様に、正極7のそれぞれでは、正極集電体15の正極活物質含有層16が無担持の部分に、正極リード17が接続される。なお、本実施形態では、リード13,17は、第2の交差方向に互いに対して離れて配置され、リード13,17の互いに対する接触が、防止される。また、リード13,17のそれぞれの外装部材2及び蓋18への接触は、絶縁部材(図示しない)等によって、防止される。このため、リード13,17の間が短絡することが、有効に防止される。
【0019】
蓋18の外表面には、負極端子21及び正極端子22が取付けられる。端子21,22のそれぞれは、例えば、金属等から形成され、導電性を有する。負極端子21には、負極リード13が接続され、正極端子22には、正極リード17が接続される。なお、本実施形態では、端子21,22は、第2の交差方向に互いに対して離れて配置され、端子21,22の互いに対する接触が、防止される。また、負極端子21の蓋18への接触は、絶縁部材23等によって防止され、正極端子22の蓋18への接触は、絶縁部材24等によって防止される。このため、端子21,22の間が短絡することが、有効に防止される。
【0020】
図2乃至
図4等に示すように、セパレータ8は、1つ以上(本実施形態では複数)のバッグ26を備える。本実施形態では、バッグ(第1のバッグ)26は、負極6と同一の数、設けられる。そして、バッグ26のそれぞれの内部には、負極6の対応する1つが収納される。したがって、本実施形態では、負極6のそれぞれが、バッグ(第1のバッグ)26の対応する1つの内部に配置される第1の電極となる。また、バッグ26のそれぞれは、負極6の対応する1つを内部に収納した状態で、外装部材2の収納空間5に配置される。
図2乃至
図4の一例では、バッグ26のそれぞれは、バッグ開口27を有する。バッグ26のそれぞれの内部は、バッグ開口27において、電池1の高さ方向について蓋18が位置する側(矢印X1側)に向かって、開口する。なお、バッグ26のそれぞれは、バッグ開口27でのみ、外部に対して開口し、バッグ開口27以外の部位では、外部に対して開口しない。すなわち、バッグ26のそれぞれでは、バッグ開口27以外の部位は、閉塞されている。
【0021】
また、外装部材2の収納空間5では、正極7のそれぞれは、全てのバッグ26の外部に配置され、バッグ26のいずれにも収納されていない。したがって、本実施形態では、正極7のそれぞれが、全てのバッグ(第1のバッグ)26の外部に配置される第2の電極となる。なお、本実施形態では、前述のように、負極6及び正極7が、交互に配列される。したがって、収納空間5では、バッグ26のそれぞれに負極6の対応する1つが収納された状態で、バッグ26及び正極7が、交互に配列される。また、バッグ26のそれぞれに負極6の対応する1つが収納されるため、前述のように、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間には、セパレータ8の少なくとも一部が介在する。
【0022】
図2乃至
図4等に示すように、電池1は、電解質31,32を備える。ある一例では、電解質31,32のそれぞれは、水系溶媒を含む水系電解液である。電解質(第1の電解質)31は、バッグ(第1のバッグ)26のそれぞれの内部に収納される。そして、バッグ26の内部のそれぞれでは、電解質31は、負極6の対応する1つに保持(含浸)される。また、収納空間5において全てのバッグ26の外部には、電解質(第2の電解質)32が設けられる。そして、収納空間5において全てのバッグ26の外部で、電解質32は、正極7に保持(含浸)される。なお、
図2乃至
図4等では、電解液等である電解質31,32を強調して示す。
【0023】
前述のように、本実施形態では、負極側電解質及び正極側電解質の2つの電解質31,32が、用いられる。そして、セパレータ8のバッグ26によって、電解質31,32が互いに対して隔離される。本実施形態では、バッグ26の内部に配置される電極が負極であるため、バッグ26のそれぞれの内部に収納される電解質(第1の電解質)31が負極側電解質となり、全てのバッグ26の外部に配置される電解質(第2の電解質)32が正極側電解質となる。そして、本実施形態では、負極側電解質である電解質31は、セパレータ8に対して負極6が位置する側に存在し、正極側電解質である電解質32は、セパレータ8に対して正極7が位置する側に存在する。なお、電池1では、電解質31,32のそれぞれの液面等の界面は、バッグ26のそれぞれのバッグ開口27に対して、蓋18が位置する側とは反対側(矢印X2側)、すなわち、鉛直下側の位置で維持される。これにより、バッグ26の外部へのバッグ開口27を通しての電解質31の流出が有効に防止されるとともに、バッグ26の内部へのバッグ開口27を通しての電解質32の流入が有効に防止される。
【0024】
電解質31,32の浸透圧の小さい一方は、電解質31,32の浸透圧の大きい別の一方に対して、10%以上100%以下になることが好ましい。すなわち、10%≦(小さい方の浸透圧/大きい方の浸透圧)×100≦100%という、関係が成立し、電解質31,32の浸透圧の大きい一方に対する電解質31,32の浸透圧の小さい一方の比率である浸透圧比が、10%以上100%以下になる。また、電解質31,32の浸透圧の小さい一方は、電解質31,32の浸透圧の大きい別の一方に対して、50%以上になることがより好ましい。ここで、浸透圧Π(N/m2)は、以下のようにして算出される。すなわち、電解質(電解液)における溶媒の体積をV(m3)、電解質での溶質の物質量(全モル数)をn(mol)、気体定数をR(m2・kg/(s2・K・mol))、電解質の絶対温度をT(K)とすると、浸透圧Πは、以下の式(1)のようにして算出される。
【0025】
【0026】
ここで、電解質31,32が電解液である場合、電解液の溶質は、無機塩及び有機化合物等である。無機塩については高周波結合プラズマ(ICP:Inductivity Coupled Plasma)分析により、構造を同定し、有機化合物についてはフーリエ変換赤外分光法(FT-IR:Fourier Transform Infrared Spectroscopy)により、構造を同定する。そして、電解質(電解液)を分留することにより、電解液の濃度を算出し、電解液中の無機塩及び有機化合物等の物質量を算出する。なお、物質量nは、溶質の全モル数であり、溶質の電離も考慮する。実際に、溶質が無機塩及び有機化合物等である場合、これらの溶質は、電解液中で全て電離していると考える。例えば、溶質がアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩等である場合、アルカリ金属イオン及びアルカリ土類イオンは、アニオンに対して全て電離していると考え、物質量nを算出する。例えば、溶質としてLiClを12mol/L溶解させた場合は、電解液中ではLi+及びCl-に電離するため、濃度は24mol/Lと考える。
【0027】
また、電解質31,32のそれぞれが水系の電解液等である場合、電解質31,32は、互いにpHが異なる。この場合、電解質31,32の中でセパレータ8に対して正極7が位置する側に分離される正極側電解質は、電解質31,32の中でセパレータ8に対して負極6が位置する側に分離される負極側電解質に比べて、pHが小さい。すなわち、本実施形態では、負極側電解質となる電解質31に比べて、正極側電解質となる電解質32は、pHが小さい。
【0028】
図4等に示すように、セパレータ8は、セパレータ表面35,36を備える。セパレータ表面35,36は、互いに対して反対側を向く。本実施形態では、セパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、負極6が位置する側を向き、負極6と対向する。そして、セパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、正極7が位置する側を向き、正極7と対向する。前述のように、本実施形態では、バッグ26のそれぞれの内部に、負極6の対応する1つが収納される。このため、本実施形態では、バッグ26のそれぞれにおいて、セパレータ表面(第1のセパレータ表面)35が内側の負極6側を向き、セパレータ表面(第2のセパレータ表面)36が外側の正極7側を向く。
【0029】
また、本実施形態では、セパレータ8は、組成物層37及び支持体38を備える。組成物層37は、粒子及び高分子を含む層であるか、及び、固体電解質を含む固体電解質含有層であるかの、少なくとも一方である。組成物層37が粒子及び高分子材料を含む場合、組成物層37は、粒子及び高分子材料が混合される混合層であり得る。ある一例では、組成物層37は、粒子及び高分子材料が混合される混合層であり、混合層は、粒子として、固体電解質を含む。この場合、組成物層37は、固体電解質含有層となる。また、組成物層37は、電解液の水系溶媒等が浸透し難く、リチウムイオンの伝導性に優れている。また、セパレータ8では、支持体38の片面に組成物層37が積層される。本実施形態では、支持体38は、セパレータ8において多孔質層を含む。このため、支持体38では、組成物層37に比べて、電解液の水系溶媒等が浸透し易い。そして、組成物層37は、支持体38に比べて、透気係数が低い。また、組成物層37及び支持体38から形成されるセパレータ8では、透気係数が1.0×10-14m2以下になる。
【0030】
ここで、セパレータ8の透気係数KT(m2)は、以下のようにして算出する。透気係数KTの算出では、例えば、厚さL(m)のセパレータ8を測定対象とする場合、測定面積A(m2)の範囲に、粘性係数σ(Pa・s)の気体を透過させる。この際、投入される気体の圧力p(Pa)が互いに対して異なる複数の条件で、気体を透過させ、複数の条件のそれぞれにおいて、セパレータ8を透過した気体量Q(m3/s)を測定する。そして、測定結果から、圧力pに対する気体量Qをプロットし、傾きであるdQ/dpを求める。そして、厚さL、測定面積A、粘性係数σ及び傾きdQ/dpから、式(2)のようにして、透気係数KTが算出される。
【0031】
【0032】
透気係数KTが算出方法のある一例では、それぞれに直径10mmの孔が開いた一対のステンレス板でセパレータ8を挟み込む。そして、一方のステンレス板の孔から空気を圧力pで送り込む。そして、他方のステンレス板の孔から漏れる空気の気体量Qを測定する。したがって、孔の面積(25πmm2)が測定面積Aとして用いられ、粘性係数σとしては0.000018Pa・sが用いられる。また、気体量Qは、100秒の間に孔から漏れる量δ(m3)を測定し、測定された量δを100で割ることにより算出する。
【0033】
そして、圧力pが互いに対して少なくとも1000Pa離れる4点で、前述のようにして圧力pに対する気体量Qを測定する。例えば、圧力pが1000Pa、2500Pa、4000Pa及び6000Paとなる4点のそれぞれで、圧力pに対する気体量Qを測定する。そして、測定した4点について圧力pに対する気体量Qをプロットし、直線フィッティング(最小二乗法)によって圧力pに対する気体量Qの傾き(dQ/dp)を算出する。そして、算出した傾き(dQ/dp)に(σ・L)/Aを乗算することにより、透気係数KTを算出する。
【0034】
なお、セパレータ8の透気係数の測定においては、電池1から分解し、セパレータ8を電池1の他の部品から分離する。セパレータ8は、純水で両面を洗い流した後、純水に浸漬させて48時間以上放置する。その後、さらに純水で両面を洗い流し、100℃の真空乾燥炉にて48時間以上乾燥させた後に、透気係数の測定を行う。また、セパレータ8において任意の複数箇所で、透気係数を測定する。そして、任意の複数箇所の中で透気係数が最も低い値になる箇所での値を、セパレータ8の透気係数とする。
【0035】
また、本実施形態のバッグ26のそれぞれでは、支持体38に対して負極6が位置する側に、組成物層37が積層される。そして、バッグ26のそれぞれでは、支持体38において負極6が位置する側を向く表面に、組成物層37が積層される。また、本実施形態では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。そして、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、支持体38から形成される。
【0036】
図5A及び
図5Bは、バッグ(第1のバッグ)26の製造方法の一例を示す。
図5A及び
図5Bの一例では、1つのバッグ26は、2つのシート41A,41Bから形成される。
図5Aに示すように、シート41Aは、4つの辺42A~45Aを有する略長方形状に形成され、シート41Bは、4つの辺42B~45Bを有する略長方形状に形成される。バッグ26の製造では、
図5Bに示すように、シート41Aにおいて辺42Aの近傍の部位を、シート41Bにおいて辺42Bの近傍の部位に熱融着し、シート41Aにおいて辺43Aの近傍の部位を、シート41Bにおいて辺43Bの近傍の部位に熱融着する。そして、シート41Aにおいて辺44Aの近傍の部位を、シート41Bにおいて辺44Bの近傍の部位に熱融着する。これにより、シート41A,41Bの融着部分が、略U字状に形成される。融着部分では、熱融着性を有する樹脂を介して、シート41A,41Bが互いに対して熱融着される。前述のように融着部分が形成されることにより、バッグ26では、シート41Aの辺45A、及び、シート41Bの辺45Bによって、バッグ開口27の開口縁が形成される。
【0037】
図6A及び
図6Bは、バッグ26の製造方法の別の一例を示す。
図6A及び
図6Bの一例では、バッグ26は、1つのシート51のみから形成される。
図6Aに示すように、シート51は、4つの辺52~55を有する略長方形状に形成される。バッグ26の製造では、
図6Bに示すように、シート51において辺52の近傍の部位を、シート51において辺54の近傍の部位に熱融着する。そして、シート51において辺53が延設される範囲を、熱融着によって閉じる。これにより、シート51の一部のシート51の別の一部への融着部分が、略L字状に形成される。融着部分では、熱融着性を有する樹脂を介して、シート51の一部がシート51の別の一部に熱融着される。前述のように融着部分が形成されることにより、バッグ26では、シート51の辺55によって、バッグ開口27の開口縁が形成される。
【0038】
なお、
図5A及び
図5Bの一例のシート41A,41B、及び、
図6A及び
図6Bの一例のシート51のそれぞれには、前述の組成物層37及び支持体38が形成される。本実施形態では、前述のように、バッグ26のそれぞれの内部に、負極6の対応する1つが収納され、セパレータ8において負極6に対向するセパレータ表面35は、組成物層37から形成される。このため、
図5A及び
図5Bの一例、及び、
図6A及び
図6Bの一例のいずれかによってバッグ26を製造する場合、組成物層37が支持体38に対してバッグ26の内側に位置する状態で、熱融着が行われ、バッグ26が製造される。
【0039】
熱融着に用いられる材料(樹脂)としては、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、及び、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。組成物層37が粒子及び高分子材料を含む場合、熱融着に用いられる材料の融点は、組成物層37に含まれる高分子材料(バインダー)の軟化点よりも低いことが、望ましい。これにより、組成物層37に含まれる高分子材料の軟化及び融解等が防止され、シート41A,41B等が不適切に融着されることが防止される。
【0040】
(第1の実施形態の変形例)
前述の実施形態等では、バッグ26のそれぞれの内部に、負極6の対応する1つが収納されるが、これに限るものではない。ある変形例では、バッグ(第1のバッグ)26が正極7と同一の数、設けられ、バッグ26のそれぞれの内部に、正極7の対応する1つが収納される。この場合、正極7のそれぞれが、バッグ(第1のバッグ)26の対応する1つの内部に配置される第1の電極となる。また、本変形例では、外装部材2の収納空間5において、負極6のそれぞれは、全てのバッグ26の外部に配置され、バッグ26のいずれにも収納されていない。したがって、本変形例では、負極6のそれぞれが、全てのバッグ(第1のバッグ)26の外部に配置される第2の電極となる。また、本変形例では、バッグ26のそれぞれの内部に収納される電解質(第1の電解質)31が正極側電解質となり、全てのバッグ26の外部に配置される電解質(第2の電解質)32が負極側電解質となる。
【0041】
本変形例でも、バッグ26のそれぞれは、前述の実施形態等と同様にして製造される。ただし、本変形例では、バッグ26のそれぞれの内部に、正極7の対応する1つが収納される。本変形例でも、セパレータ8において負極6に対向するセパレータ表面35は組成物層37から形成される。このため、
図5A及び
図5Bの一例、及び、
図6A及び
図6Bの一例のいずれかによってバッグ26を製造する場合、組成物層37が支持体38に対してバッグ26の外側に位置する状態で、熱融着が行われ、バッグ26が製造される。
また、バッグ26が複数設けられる場合、複数のバッグ26は互いに対して独立していてもよい。また、複数のバッグ26は、例えば
図5Bの辺42A,42B,43A,43B,44A,44Bに相当する部分のうちの1か所で、互いに対して熱融着することもできる。
【0042】
また、ある変形例では、セパレータ8に支持体38が設けられず、セパレータ8が、組成物層37のみから形成される。本変形例では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。そして、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36も、組成物層37から形成される。したがって、セパレータ表面35,36の両方が、組成物層37から形成される。また、本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。
【0043】
本変形例でも、バッグ26のそれぞれは、前述の実施形態等と同様にして製造される。ただし、本変形例では、
図5A及び
図5Bの一例のシート41A,41B、及び、
図6A及び
図6Bの一例のシート51のそれぞれは、組成物層37のみから形成される。すなわち、シート41A,41B及びシート51のそれぞれには、支持体38は設けられない。本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10
-14m
2以下になる。
【0044】
また、
図7Aに示すある変形例では、セパレータ8において、支持体38の両面に組成物層37が配置される。すなわち、組成物層37は、支持体38に対して、負極6が位置する側、及び、正極7が位置する側の両方に、積層される。本変形例では、支持体38に対して負極6が位置する側に、組成物層37Aが積層され、支持体38に対して正極7が位置する側に、組成物層37Bが積層される。
【0045】
本変形例でも、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37(37A)から形成される。また、本変形例では、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36も、組成物層37(37B)から形成される。このため、セパレータ8では、支持体28が露出していない。したがって、セパレータ表面35,36の両方が、組成物層37から形成される。本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。
【0046】
本変形例でも、バッグ26のそれぞれは、前述の実施形態等と同様にして製造される。ただし、本変形例では、
図5A及び
図5Bの一例のシート41A,41B、及び、
図6A及び
図6Bの一例のシート51のそれぞれには、前述の組成物層37A,37B及び支持体38が形成される。
【0047】
また、組成物層37が粒子及び高分子層を含む混合層等である場合、組成物層37は、固体電解質の代わりに酸化アルミニウム又はシリカが、粒子として含むことができる。この場合、組成物層37では、例えば、酸化アルミニウム又はシリカが、高分子材料と混合される。この一例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。また、組成物層37では、酸化アルミニウム及びシリカ等の粒子は、固体電解質の粒子及び高分子材料と混合して用いてもよい。
【0048】
また、セパレータ8の組成物層37は、固体電解質のみから形成される板であってもよい。この場合、固体電解質の板は、電解液の水系溶媒等を浸透させない。また、固体電解質の板が組成物層37としてセパレータ8に設けられる構成では、セパレータ8の透気係数は、0m2又はほぼ0m2になる。
【0049】
また、
図7B及び
図7Cに示すある変形例では、バッグ26のそれぞれに、バッグ開口27が形成されない。本変形例でも、バッグ26のそれぞれの内部には、負極6及び正極7の一方である第1の電極、及び、電解質31が収納される。本変形例のバッグ26の形成では、例えば、
図5A及び
図5Bの一例と同様にして、シート41A,41Bを略U字状に融着する。そして、バッグ26の内部に第1の電極及び電解質31を収納した後に、シート41Aにおいて辺45Aの近傍の部位を、シート41Bにおいて辺45Bの近傍の部位に熱融着する。これにより、バッグ開口27が形成されないバッグ26が形成される。この場合、負極リード13等は、例えば、辺45A,45Bが融着している部分から、バッグ26の外部へ延出される。また、複数のバッグ26が設けられる構成では、複数のバッグ26のうちの少なくとも一つが、バッグ開口27が形成されない構成であってもよい。
【0050】
前述の第1の実施形態及びその変形例等のセパレータ8は、組成物層37を備える。そして、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。また、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下となる。
【0051】
第1の実施形態及びその変形例等では、外装部材は、内部に収納空間を有し、セパレータは、外装部材の収納空間に収納される。セパレータの透気係数は、1.0×10-14m2以下になるとともに、セパレータは第1のバッグを備える。第1の電極は、収納空間においてセパレータの第1のバッグの内部に収納される。第1の電解質は、第1のバッグの内部において、第1の電極に保持される。第2の電極は、収納空間において第1のバッグの外部に配置される。第2の電解質は、収納空間において第1のバッグの外部で第2の電極に保持される。
【0052】
(第2の実施形態)
図8及び
図9は、第2の実施形態の電池1を示す。本実施形態の電池1は、第1の実施形態から、以下の構成を変更している。ここで、
図8は、第2の交差方向(矢印Z1及び矢印Z2で示す方向)に対して垂直又は略垂直な断面を示し、例えば、
図1のA1-A1断面に相当する断面を示す。また、
図9は、
図8のA3-A3断面を示し、高さ方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)に対して垂直又は略垂直な断面を示す。
【0053】
図8及び
図9に示すように、本実施形態でも前述の第1の実施形態等と同様に、バッグ26のそれぞれに、負極6の対応する1つが収納される。ただし、本実施形態では、セパレータ8は、バッグ26に加えて、1つ以上(本実施形態では複数)のバッグ46を備える。バッグ(第2のバッグ)46は、正極7と同一の数、設けられる。そして、バッグ46のそれぞれの内部には、正極7の対応する1つが収納される。したがって、本実施形態では、負極6のそれぞれが、バッグ(第1のバッグ)26の対応する1つの内部に配置される第1の電極となり、正極7のそれぞれが、バッグ(第2のバッグ)46の対応する1つの内部に配置される第2の電極となる。また、バッグ46のそれぞれは、正極7の対応する1つを内部に収納した状態で、外装部材2の収納空間5に配置される。
【0054】
本実施形態では、外装部材2の収納空間5において、バッグ(第2のバッグ)46のそれぞれは、全てのバッグ(第1のバッグ)26の外部に配置され、バッグ26のいずれにも収納されていない。したがって、本実施形態でも、第2の電極である正極7のそれぞれは、全てのバッグ(第1のバッグ)26の外部に配置される。また、
図8及び
図9の一例では、バッグ46のそれぞれは、バッグ開口47を有する。バッグ46のそれぞれの内部は、バッグ開口47において、電池1の高さ方向について蓋18が位置する側(矢印X1側)に向かって、開口する。なお、バッグ46のそれぞれは、バッグ開口47でのみ、外部に対して開口し、バッグ開口47以外の部位では、外部に対して開口しない。すなわち、バッグ46のそれぞれでは、バッグ開口47以外の部位は、閉塞されている。
【0055】
本実施形態でも、負極6及び正極7が、交互に配列される。したがって、収納空間5では、バッグ26のそれぞれに負極6の対応する1つが収納され、かつ、バッグ46のそれぞれに正極7の対応する1つが収納された状態で、バッグ26,46が、交互に配列される。また、バッグ26のそれぞれに負極6の対応する1つが収納され、かつ、バッグ46のそれぞれに正極7の対応する1つが収納されるため、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間には、セパレータ8の少なくとも一部が介在する。
【0056】
本実施形態でも、電解質(第1の電解質)31は、バッグ(第1のバッグ)26のそれぞれの内部に収納され、バッグ26の内部のそれぞれでは、電解質31は、負極6の対応する1つに保持(含浸)される。また、本実施形態では、電解質(第2の電解質)32は、バッグ(第2のバッグ)46のそれぞれの内部に収納され、バッグ46の内部のそれぞれでは、電解質32は、正極7の対応する1つに保持(含浸)される。ここで、バッグ46のそれぞれは、前述のように全てのバッグ26の外部に配置される。このため、本実施形態でも、収納空間5において全てのバッグ26の外部で、電解質32は、正極7に保持(含浸)される。なお、
図8及び
図9等では、電解質31,32を強調して示す。
【0057】
本実施形態では、バッグ26のそれぞれの内部に収納される電解質(第1の電解質)31が負極側電解質となり、バッグ46のそれぞれの内部に収納される電解質(第2の電解質)32が正極側電解質となる。なお、電池1では、電解質31,32のそれぞれの液面等の界面を、バッグ26のそれぞれのバッグ開口27及びバッグ46のそれぞれのバッグ開口47に対して、蓋18が位置する側とは反対側(矢印X2側)、すなわち、鉛直下側の位置で維持する必要がある。これにより、バッグ26の外部へのバッグ開口27を通しての電解質31の流出が有効に防止されるとともに、バッグ26の内部へのバッグ開口27を通しての電解質32の流入が有効に防止される。同様に、バッグ46の外部へのバッグ開口47を通しての電解質32の流出が有効に防止されるとともに、バッグ46の内部へのバッグ開口47を通しての電解質31の流入が有効に防止される。
【0058】
図10は、本実施形態の電極群3の一部を拡大して示し、電極群3の一部を第2の交差方向に垂直又は略垂直な断面で示す。
図10等に示すように、本実施形態でも、セパレータ8は、負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35、及び、正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36を備える。ただし、本実施形態では、前述のように、バッグ26に加えて、バッグ46が設けられる。このため、セパレータ表面35は、バッグ26のそれぞれにおいて、内側を向く。そして、セパレータ表面36は、バッグ46のそれぞれにおいて、内側を向く。
【0059】
また、本実施形態では、セパレータ8は、前述の組成物層37及び支持体38に加えて、組成物層57及び支持体58を備える。組成物層57を形成する材料としては、組成物層37と同様の材料が用いられる。このため、組成物層57は、電解液の水系溶媒等が浸透し難く、リチウムイオンの伝導性に優れている。また、セパレータ8では、支持体58の片面に組成物層57が積層される。支持体58を形成する材料としては、支持体38と同様の材料が用いられる。このため、支持体58は、セパレータ8において多孔質層を形成し、組成物層37,57に比べて、電解液の水系溶媒等が浸透し易い。そして、組成物層37,57は、支持体38,58に比べて、透気係数が低い。本実施形態でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。なお、透気係数は、第1の実施形態において前述したようにして、算出される。
【0060】
本実施形態でも、バッグ(第1のバッグ)26のそれぞれにおいて、支持体38に対して負極6が位置する側に、組成物層37が積層される。また、本実施形態では、バッグ(第2のバッグ)46のそれぞれにおいて、支持体58に対して負極6が位置する側に、組成物層57が積層される。そして、バッグ46のそれぞれでは、支持体58において負極6が位置する側を向く表面に、組成物層57が積層される。本実施形態でも、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。ただし、本実施形態では、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、支持体58から形成される。
【0061】
また、本実施形態のセパレータ8では、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間において、負極6に近い側から、組成物層37、支持体38、組成物層57及び支持体58の順に配置される。したがって、組成物層37及び支持体38は、組成物層57及び支持体58に対して、負極6に近い側に配置される。
【0062】
バッグ46は、バッグ26と同様にして製造可能である。したがって、
図5A及び
図5Bの一例、及び、
図6A及び
図6Bの一例のいずれかと同様の方法によって、バッグ46を製造可能である。ただし、バッグ46を製造する場合は、
図5A及び
図5Bの一例のシート41A,41B等と同様のシートのそれぞれには、前述の組成物層57及び支持体58が形成される。また、本実施形態では、バッグ46のそれぞれの内部に、正極7の対応する1つが収納される。このため、
図5A及び
図5Bの一例、及び、
図6A及び
図6Bの一例のいずれかと同様の方法によってバッグ46を製造する場合、組成物層57が支持体58に対してバッグ46の外側に位置する状態で、熱融着が行われ、バッグ46が製造される。
【0063】
なお、本実施形態では、前述のようにバッグ26,46のそれぞれが形成されるため、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間には、シート41A,41B等と同様のシートが2枚配置される。そして、2枚のシートによって、隣り合う負極6及び正極7の間が、隔離される。
【0064】
(第2の実施形態の変形例)
なお、第2の実施形態等では、バッグ26のそれぞれの内部に、負極6の対応する1つが収納され、バッグ46のそれぞれの内部に、正極7の対応する1つが収納されるが、これに限るものではない。ある変形例では、バッグ(第1のバッグ)26のそれぞれの内部に、正極7の対応する1つが収納され、バッグ(第2のバッグ)46のそれぞれの内部に、負極6の対応する1つが収納される。この場合、正極7のそれぞれが、バッグ(第1のバッグ)26の対応する1つの内部に配置される第1の電極となる。そして、負極6のそれぞれが、バッグ(第2のバッグ)46の対応する1つの内部に配置される第2の電極となる。また、本変形例では、バッグ26のそれぞれの内部に収納される電解質(第1の電解質)31が正極側電解質となり、バッグ46のそれぞれの内部に収納される電解質(第2の電解質)32が負極側電解質となる。
【0065】
また、ある変形例では、セパレータ8に支持体38,58が設けられず、セパレータ8が、組成物層37,57のみから形成される。本変形例では、バッグ26のそれぞれは、組成物層37のみから形成され、バッグ46のそれぞれは、組成物層57のみから形成される。また、本変形例では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。そして、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、組成物層57から形成される。本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。
【0066】
本変形例でも、バッグ26,46のそれぞれは、第2の実施形態等と同様にして製造される。ただし、本変形例では、バッグ26を形成に用いられるシート(例えば、シート41A,41B等と同様のシート)のそれぞれは、組成物層37のみから形成される。そして、バッグ46の形成に用いられるシート(例えば、シート41A,41B等と同様のシート)のそれぞれは、組成物層57のみから形成される。
【0067】
また、
図11に示すある変形例では、セパレータ8において、支持体38の両面に組成物層37が積層される。そして、支持体58の両面に組成物層57が積層される。すなわち、組成物層37は、支持体38に対して、負極6が位置する側、及び、正極7が位置する側の両方に、積層される。そして、組成物層57は、支持体58に対して、負極6が位置する側、及び、正極7が位置する側の両方に、積層される。本変形例では、支持体38に対して負極6が位置する側に、組成物層37Aが積層され、支持体38に対して正極7が位置する側に、組成物層37Bが積層される。そして、支持体58に対して負極6が位置する側に、組成物層57Aが積層され、支持体58に対して正極7が位置する側に、組成物層57Bが積層される。
【0068】
本変形例では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37(37A)から形成される。また、本変形例では、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、組成物層57(57B)から形成される。また、本変形例のセパレータ8では、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間において、負極6に近い側から、組成物層37A、支持体38、組成物層37B、組成物層57A、支持体58及び組成物層57Bの順に配置される。したがって、組成物層37A,37B及び支持体38は、組成物層57A,57B及び支持体58に対して、負極6に近い側に配置される。本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。
【0069】
本変形例でも、バッグ26,46のそれぞれは、第2の実施形態等と同様にして製造される。ただし、本変形例では、バッグ26を形成に用いられるシート(例えば、シート41A,41B等と同様のシート)のそれぞれは、組成物層37A,37B及び支持体38から形成される。そして、バッグ46の形成に用いられるシート(例えば、シート41A,41B等と同様のシート)のそれぞれは、組成物層57A,57B及び支持体58から形成される。
【0070】
また、ある変形例では、
図11の変形例と同様に、セパレータ8において、支持体38の両面に組成物層37(37A,37B)が積層される。ただし、組成物層57は、支持体58に対して、負極6が位置する側にのみ、積層される。本変形例では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37(37A)から形成される。そして、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、支持体58から形成される。
【0071】
また、別のある変形例では、
図11の変形例と同様に、セパレータ8において、支持体58の両面に組成物層57(57A,57B)が積層される。ただし、組成物層37は、支持体38に対して、負極6が位置する側にのみ、積層される。本変形例では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。そして、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、組成物層57(57B)から形成される。
【0072】
また、ある変形例では、外装部材2の収納空間5において、全てのバッグ(第1のバッグ)26の外部で、かつ、全てのバッグ(第2のバッグ)46の外部に、電解質31,32の一方が充填されてもよい。本変形例でも、バッグ26のそれぞれの内部には、電解質31が収納され、バッグ46のそれぞれの内部には、電解質32が収納される。収納空間5において全てのバッグ26,46の外部に電解質32が配置される場合は、セパレータ8のバッグ26によって、電解質31,32が互いに対して隔離される。また、収納空間5において全てのバッグ26,46の外部に電解質31が配置される場合は、セパレータ8のバッグ46によって、電解質31,32が互いに対して隔離される。
【0073】
また、
図12に示すある変形例では、セパレータ8に組成物層57及び支持体58が設けられず、セパレータ8が、組成物層37及び支持体38のみから形成される。本変形例では、組成物層37は、支持体38に対して負極6が位置する側にのみ、積層される。そして、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。ただし、本実施形態では、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、支持体38から形成される。本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10
-14m
2以下になる。
【0074】
図13A及び
図13Bは、本変形例におけるバッグ(第1のバッグ)26及びバッグ(第2のバッグ)46の製造方法の一例を示す。
図13A及び
図13Bの一例では、前述のシート41A,41B及びシート41Cから、バッグ26,46の両方が形成される。
図13Aに示すように、シート41Cは、4つの辺42A~45Aを有する略長方形状に形成される。
図13A及び
図13Bの一例では、
図13Aに示すように、
図5A及び
図5Bの一例と同様にして、シート41A,41Bからバッグ(第1のバッグ)26を形成する。
【0075】
そして、バッグ(第2のバッグ)46の形成では、
図13Bに示すように、シート41Cにおいて辺42Cの近傍の部位を、シート41Bにおいて辺42Bの近傍の部位に熱融着し、シート41Cにおいて辺43Cの近傍の部位を、シート41Bにおいて辺43Bの近傍の部位に熱融着する。そして、シート41Cにおいて辺44Cの近傍の部位を、シート41Bにおいて辺44Bの近傍の部位に熱融着する。これにより、シート41B,41Cの融着部分が、略U字状に形成され、バッグ46が形成される。シート41Cは、シート41Bに対して、シート41Aが位置する側とは反対側から融着される。融着部分では、熱融着性を有する樹脂を介して、シート41B,41Cが互いに対して熱融着される。前述のように融着部分が形成されることにより、バッグ46では、シート41Bの辺45B、及び、シート41Cの辺45Cによって、バッグ開口47の開口縁が形成される。
【0076】
なお、別のある一例では、
図6A及び
図6Bの一例と同様にして、シート51からバッグ(第1のバッグ)26を形成する。そして、
図13A,13Aの一例と同様にして、シート41Cがバッグ26に融着され、バッグ46が形成される。
【0077】
また、ある一例では、
図13A及び
図13Bの一例のように3枚のシート42~44からバッグ26,46を形成する必要はなく、1枚のシートのみからバッグ26,46が形成される。この場合、シートの一部をシートの別の一部に熱融着することにより、バッグ26,46が形成される。
また、バッグ26,46は互いに対して独立していてもよい。また、バッグ26,46は、例えば
図5Bの辺42A,42B,43A,43B,44A,44Bに相当する部分のうちの1か所で、互いに対して熱融着することもできる。
【0078】
また、本変形例では、前述のようにバッグ26,46のそれぞれが形成されるため、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間には、シート41A~41C等と同様のシートが1枚のみ配置される。そして、1枚のシートによって、隣り合う負極6及び正極7の間が、隔離される。また、本変形例では、隣り合う負極6及び正極7の間に配置される1枚のシートは、第1の電極(負極6及び正極7の一方)が収納されるバッグ26の一部を形成するとともに、第2の電極(負極6及び正極7の他方)が収納されるバッグ46の一部を形成する。すなわち、隣り合う負極6及び正極7の間に配置される1枚のシートは、バッグ26,46の両方に共用される。
【0079】
また、ある変形例では、
図12の変形例と同様に、セパレータ8に組成物層57及び支持体58が設けられない。そして、セパレータ8は、組成物層37のみから形成され、組成物層37によってバッグ26,46が形成される。本変形例では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37から形成される。そして、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36も、組成物層37から形成される。本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10
-14m
2以下になる。また、本変形例でも、
図12の変形例等と同様にして、バッグ26,46のそれぞれが形成される。このため、隣り合う負極6及び正極7の間に配置される1枚のシートは、バッグ26,46の両方に共用される。
【0080】
また、ある変形例では、
図12の変形例と同様に、セパレータ8に組成物層57及び支持体58が設けられない。そして、セパレータ8において、支持体38の両面に組成物層37(37A,37B)が積層される。すなわち、組成物層37(37A,37B)は、支持体38に対して、負極6が位置する側、及び、正極7が位置する側の両方に、積層される。本変形例では、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37Aから形成される。そして、セパレータ8において正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36は、組成物層37Bから形成される。本変形例でも、セパレータ8の透気係数は、1.0×10
-14m
2以下になる。また、本変形例でも、
図12の変形例等と同様にして、バッグ26,46のそれぞれが形成される。このため、隣り合う負極6及び正極7の間に配置される1枚のシートは、バッグ26,46の両方に共用される。
【0081】
また、組成物層37,57が粒子及び高分子材料を含む混合層等である場合、組成物層37,57のそれぞれは、固体電解質を粒子として含むことができる。また、組成物層37,57のそれぞれにおいて、固体電解質の代わりに酸化アルミニウム又はシリカが、粒子として含むことができる。また、ある一例では、組成物層37,57のそれぞれは、固体電解質の板から形成される。さらに、ある一例では、固体電解質と酸化アルミニウム又はシリカを混合することもできる。
【0082】
また、ある変形例では、
図7B及び
図7Cの一例と同様に、バッグ26のそれぞれに、バッグ開口27が形成されない。また、ある変形例では、バッグ46のそれぞれに、バッグ開口47が形成されない。
【0083】
前述の第2の実施形態及びその変形例等のセパレータ8は、組成物層(37及び57の少なくとも一方)を備える。そして、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層から形成される。また、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。
【0084】
そして、第2の実施形態及びその変形例等では、セパレータは、第1のバッグに加えて、第2の電極が内部に収納される第2のバッグを備える。第2のバッグは、外装部材の収納空間において第1のバッグの外部に形成される。第2の電解質は、第2のバッグの内部において第2の電極に保持される。
【0085】
(第3の実施形態)
図14は、第3の実施形態の電池1を示す。本実施形態の電池1は、第1の実施形態から、以下の構成を変更している。ここで、
図14は、高さ方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)に対して垂直又は略垂直な断面を示し、
図2のA2-A2断面に相当する断面を示す。また、本実施形態では、例えば、
図1のA1-A1断面に相当する断面等の、第2の方向に対して垂直又は略垂直な断面は、第1の実施形態(
図2参照)と略同様になる。
【0086】
図14に示すように、本実施形態でも前述の第1の実施形態等と同様に、外装部材2の収納空間5に、バッグ(第1のバッグ)26が収納される。ただし、本実施形態では、バッグ26は、1つのみ設けられ、1つのバッグ26に、複数の負極6が収納される。本実施形態では、全ての負極6が、バッグ26の内部に収納される。そして、全ての正極7が、収納空間5においてバッグ26の外部に、配置される。したがって、本実施形態では、負極6のそれぞれが、1つのバッグ(第1のバッグ)26の内部に配置される第1の電極となり、正極7のそれぞれが、バッグ26の外部に配置される第2の電極となる。また、
図14の一例では、バッグ26は、バッグ開口27を有する。
【0087】
本実施形態では、バッグ26の周壁に、ジグザグ状に延設されるジグザグ部56が、形成される。ジグザグ部56によって、バッグ26では、凸部α1及び凹部β1が交互に配列される。バッグ26の内部では、凸部α1のそれぞれに、負極6の対応する1つが配置される。また、凹部β1のそれぞれでは、バッグ26の外部に隙間が形成される。凹部β1のそれぞれが形成する隙間に、正極7の対応する1つが配置される。前述のように負極6及び正極7が配置されるため、本実施形態でも、負極6及び正極7が、交互に配列される。そして、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間には、セパレータ8の一部が介在する。なお、本実施形態では、負極6及び正極7の配列方向は、ジグザグ部56での凸部α1及び凹部β1の配列方向に対して、一致又は略一致する。
【0088】
本実施形態でも、電解質(第1の電解質)31は、バッグ(第1のバッグ)26の内部に収納され、バッグ26の内部では、電解質31は、負極6に保持(含浸)される。そして、電解質(第2の電解質)32は、収納空間5においてバッグ26の外部で、正極7に保持(含浸)される。
【0089】
また、本実施形態でも、セパレータ8は、負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35、及び、正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36を備える。このため、バッグ26において、セパレータ表面35は内側を向き、セパレータ表面36は外側を向く。セパレータ8は、前述の組成物層(例えば37)を少なくとも1つを備える。また、本実施形態では、第1の実施形態及びその変形例等と同様に、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37(37A)から形成される。また、セパレータ8では、第1の実施形態及びその変形例において前述したように、支持体38及び組成物層37Bのそれぞれの有無等を、適宜に変更可能である。また、組成物層は、粒子及び高分子材料を含む層か、及び、固体電解質を含む固体電解質含有層であるかの、少なくとも一方である。本実施形態でも、第1の実施形態及びその変形例等と同様に、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。
【0090】
図15A及び
図15Bは、本実施形態のバッグ(第1のバッグ)26の製造方法の一例を示す。
図15A及び
図15Bの一例では、バッグ26は、1つのシート61から形成される。
図15Aに示すように、シート61は、4つの辺62~65を有する略長方形状に形成される。バッグ26の製造では、シートを複数箇所で折り曲げる等して、ジグザグ部56を形成する。そして、
図15Bに示すように、シート61において辺62の近傍の部位を、シート61において辺64の近傍の部位に熱融着する。そして、シート61において辺63が延設される範囲を、熱融着によって閉じる。これにより、シート61の一部がシート61の別の一部へ融着する融着部分が、形成される。融着部分では、熱融着性を有する樹脂を介して、シート61の一部がシート61の別の一部に熱融着される。前述のように融着部分が形成されることにより、バッグ26では、シート61の辺65によって、バッグ開口27の開口縁が形成される。
【0091】
なお、
図15A及び
図15Bの一例では、1つのシート61からバッグ26が形成されるが、複数のシートからバッグ26が形成されてもよい。また、本実施形態では、前述のように、バッグ26の内部に、負極6が収納され、セパレータ8において負極6に対向するセパレータ表面35は組成物層37から形成される。このため、例えば、セパレータ8が組成物層37及び支持体38の二層構造に形成される場合、組成物層37が支持体38に対してバッグ26の内側に位置する状態で、熱融着が行われ、バッグ26が製造される。
【0092】
(第3の実施形態の変形例)
なお、ある変形例では、バッグ26の内部に、正極7が収納される。この場合、正極7のそれぞれが、1つのバッグ(第1のバッグ)26の内部に配置される第1の電極となる。そして、負極6のそれぞれが、バッグ26の外部に配置される第2の電極となる。また、本変形例では、バッグ26の内部に収納される電解質(第1の電解質)31が正極側電解質となり、バッグ26の外部に配置される電解質(第2の電解質)32が負極側電解質となる。
【0093】
本変形例でも、バッグ26は、前述の第3の実施形態等と同様にして製造される。ただし、本変形例では、バッグ26の内部に、正極7が収納される。このため、例えば、セパレータ8が組成物層37及び支持体38の二層構造に形成される場合、組成物層37が支持体38に対してバッグ26の外側に位置する状態で、前述した熱融着が行われ、バッグ26が製造される。
【0094】
また、ある変形例では、
図7B及び
図7Cの一例と同様に、バッグ26に、バッグ開口27が形成されない。
【0095】
(第4の実施形態)
図16は、第4の実施形態の電池1を示す。本実施形態の電池1は、第2の実施形態及び第3の実施形態等から、以下の構成を変更している。ここで、
図16は、高さ方向(矢印X1及び矢印X2で示す方向)に対して垂直又は略垂直な断面を示し、
図8のA3-A3断面に相当する断面を示す。また、本実施形態では、例えば、
図1のA1-A1断面に相当する断面等の、第2の方向に対して垂直又は略垂直な断面は、第2の実施形態(
図8参照)と略同様になる。
【0096】
図16に示すように、本実施形態でも前述の第3の実施形態等と同様に、ジグザグ部56が形成される1つのバッグ(第1のバッグ)26に、全ての負極6が収納される。ただし、本実施形態では、セパレータ8は、バッグ26に加えて、1つのバッグ(第2のバッグ)46を備える。そして、1つのバッグ46に、複数の正極7が収納され、本実施形態では、全ての正極7が、バッグ46の内部に収納される。したがって、本実施形態では、負極6のそれぞれが、1つのバッグ(第1のバッグ)26の内部に配置される第1の電極となり、正極7のそれぞれが、バッグ(第2のバッグ)46の内部に配置される第2の電極となる。また、バッグ46は、全ての正極7を内部に収納した状態で、外装部材2の収納空間5に配置される。
【0097】
本実施形態では、外装部材2の収納空間5において、バッグ(第2のバッグ)46は、バッグ(第1のバッグ)26の外部に配置され、バッグ26に収納されていない。したがって、本実施形態でも、第2の電極である正極7のそれぞれは、バッグ(第1のバッグ)26の外部に配置される。また、
図16の一例では、バッグ46は、バッグ開口47を有する。
【0098】
本実施形態でも、バッグ26の周壁に、前述のジグザグ部56が形成される。そして、バッグ26の内部では、ジグザグ部56の凸部α1のそれぞれに、負極6の対応する1つが配置される。また、本実施形態では、バッグ46の周壁に、ジグザグ状に延設されるジグザグ部66が形成される。ジグザグ部66によって、バッグ46では、凸部α2及び凹部β2が交互に配列される。バッグ46の内部では、凸部α2のそれぞれに、正極7の対応する1つが配置される。また、凹部β2のそれぞれでは、バッグ46の外部に隙間が形成される。
【0099】
本実施形態では、バッグ26のジグザグ部56の凹部β1のそれぞれが形成する隙間に、ジグザグ部66の凸部α2の対応する1つが配置される。このため、ジグザグ部56の凹部β1のそれぞれが形成する隙間には、正極7の対応する1つが配置される。また、バッグ46のジグザグ部66の凹部β2のそれぞれが形成する隙間に、ジグザグ部56の凸部α1の対応する1つが配置される。このため、ジグザグ部66の凹部β2のそれぞれが形成する隙間には、負極6の対応する1つが配置される。前述のように負極6及び正極7が配置されるため、本実施形態でも、負極6及び正極7が、交互に配列される。そして、配列方向について互いに対して隣り合う負極6及び正極7の間には、セパレータ8の一部が介在する。なお、本実施形態では、負極6及び正極7の配列方向は、ジグザグ部56での凸部α1及び凹部β1の配列方向、及び、ジグザグ部66での凸部α2及び凹部β2の配列方向に対して、一致又は略一致する。
【0100】
本実施形態でも、電解質(第1の電解質)31は、バッグ(第1のバッグ)26の内部に収納され、バッグ26の内部では、電解質31は、負極6に保持(含浸)される。そして、電解質(第2の電解質)32は、収納空間5においてバッグ46の内部に収納され、バッグ46の内部では、電解質32は、正極7に保持(含浸)される。このため、電解質32は、バッグ26の外部で、正極7に保持(含浸)される。
【0101】
また、本実施形態でも、セパレータ8は、負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35、及び、正極7と対向するセパレータ表面(第2のセパレータ表面)36を備える。このため、バッグ26において、セパレータ表面35は内側を向く。そして、バッグ46において、セパレータ表面36は内側を向く。セパレータ8は、前述の組成物層(例えば37,57)の少なくとも1つを備える。また、本実施形態では、第2の実施形態及びその変形例等と同様に、セパレータ8において負極6と対向するセパレータ表面(第1のセパレータ表面)35は、組成物層37(37A)から形成される。また、本実施形態では、第2の実施形態及びその変形例等で前述したように、セパレータ8では、支持体38,58及び組成物層37B,57(57A,57B)のそれぞれの有無等を、適宜に変更可能である。また、組成物層37,57等は、粒子及び高分子材料を含む層か、及び、固体電解質を含む固体電解質含有層であるかの、少なくとも一方である。本実施形態でも、第2の実施形態及びその変形例等と同様に、セパレータ8の透気係数は、1.0×10-14m2以下になる。
【0102】
バッグ46は、
図15A及び
図15Bの一例の方法等の第3の実施形態等で前述した方法によって、バッグ26と同様に、製造可能である。この際、ジグザグ部56の形成と同様に、シート(例えば、シート61等と同様のシート)を複数箇所で折り曲げる等して、ジグザグ部66を形成する。そして、バッグ26の形成と同様にして、熱融着が行われ、バッグ46が形成される。なお、本実施形態では、前述のように、バッグ46の内部に、正極7が収納される。このため、例えば、組成物層57(57A)及び支持体58から形成されるシートを用いてバッグ46を製造する場合、組成物層57が支持体58に対してバッグ46の外側に位置する状態で、熱融着が行われ、バッグ46が製造される。
【0103】
また、セパレータ8に、組成物層57(57A,57B)及び支持体58が設けられない構成では、
図17A及び
図17Bの一例に示す方法によって、バッグ26,46を製造可能である。
図17A及び
図17Bの一例の方法でセパレータ8を製造する場合、セパレータ8は、組成物層37(37A)のみから形成されるか、組成物層37(37A)及び支持体38のみから形成されるか、及び、組成物層37A,37B及び支持体38のみから形成されるか、のいずれかである。
【0104】
図17A及び
図17Bの一例では、前述のシート61及びシート71から、バッグ26,46の両方が形成される。
図17Aに示すように、シート71は、4つの辺72~75を有する略長方形状に形成される。
図17A及び
図17Bの一例では、
図17Aに示すように、
図15A及び
図15Bの一例と同様にして、シート61からバッグ(第1のバッグ)26を形成する。そして、バッグ(第2のバッグ)46の形成では、
図17Bに示すように、シート71において辺72の近傍の部位、シート71において辺73の近傍の部位、及び、シート71において辺74の近傍の部位を、バッグ26に熱融着する。これにより、シート71のバッグ26への融着部分が形成され、バッグ(第2のバッグ)46が形成される。融着部分では、熱融着性を有する樹脂を介して、シート61,71が互いに対して熱融着される。前述のように融着部分が形成されることにより、バッグ46では、シート61の辺65、及び、シート71の辺75によって、バッグ開口47の開口縁が形成される。
【0105】
(第4の実施形態の変形例)
なお、ある変形例では、バッグ(第1のバッグ)26の内部に、正極7が収納され、バッグ(第2のバッグ)46の内部に、負極6が収納される。この場合、正極7のそれぞれが、バッグ(第1のバッグ)26の内部に配置される第1の電極となる。そして、負極6のそれぞれが、バッグ(第2のバッグ)46の内部に配置される第2の電極となる。また、本変形例では、バッグ26の内部に収納される電解質(第1の電解質)31が正極側電解質となり、バッグ46の内部に収納される電解質(第2の電解質)32が負極側電解質となる。
【0106】
また、ある変形例では、第2の実施形態の変形例でも前述したように、収納空間5においてバッグ26,46の外部に、電解質31,32の一方が配置(充填)されてもよい。
【0107】
また、ある変形例では、
図7B及び
図7Cの一例と同様に、バッグ26に、バッグ開口27が形成されない。また、ある変形例では、バッグ46に、バッグ開口47が形成されない。
【0108】
(各構成要素の詳細)
以下、前述の実施形態等(変形例を含む)の電池1の各構成要素について、詳細に説明する。以下の説明では、電解質31,32、負極6、正極7、セパレータ8、及び、外装部材2について、詳細に説明する。
【0109】
1)電解質
まず、負極側電解質について、説明する。負極側電解質は、少なくとも、負極によって保持される。負極側電解質は、例えば、アルカリ金属塩と、アルカリ金属塩が溶解される水系溶媒とを含む水系溶液(水系電解液)である。なお、負極側電解質は、負極に加え、正極及びセパレータの少なくとも一方にも保持され得る。
【0110】
負極側電解質の水系溶媒は、水を含む溶媒であり、水単独、又は、水と水以外の溶媒からなり得る。水以外の溶媒として、水溶性の有機溶媒が挙げられる。水溶性の有機溶媒には、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、アルコール類、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及び、テトラヒドロフラン等が挙げられる。負極側電解質の水系溶媒に含まれる溶媒の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。負極側電解質の水系溶媒では、水以外の溶媒の含有量は、20重量%以下にすることが望ましい。
【0111】
負極側電解質に含まれるアルカリ金属塩は、例えば、Li、Na及びKより成る群から選択される1種又は2種以上のアルカリ金属塩である。Li、Na及びKのそれぞれは、イオン伝導性に優れているため、負極側電解質のイオン伝導性を高くすることができる。負極側電解質のアルカリ金属塩の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。なお、アルカリ金属塩を水系溶媒に溶解することで、Li+がアルカリ金属イオンとして得られることが、より好ましい。このため、負極側電解質のアルカリ金属塩としては、リチウム塩が用いられることが、より好ましい。
【0112】
負極側電解質において、水系溶媒中のアルカリ金属イオンの濃度は、1mol/L以上12mol/L以下であることが好ましい。アルカリ金属イオンの濃度を高くすることにより、負極側電解質中のフリーな水分子が減少し、水素発生を抑制することができる。なお、水系溶媒中のアルカリ金属イオンの濃度は、前述の範囲内においても、4mol/L以上であることが好ましく、5mol/L以上であることがより好ましい。また、水系溶媒中のアルカリ金属イオンの濃度は、前述の範囲内においても、10mol/L以下であることが好ましい。
【0113】
負極側電解質のアルカリ金属塩は、例えば、リチウム塩である。リチウム塩としては、例えば、LiCl、LiBr、LiOH、Li2SO4、LiNO3、Li2C2O4、Li2CO3、Li[(FSO2)2N]、Li[(CF3SO2)2N]及びLiB[(OCO)2]2等が挙げられる。使用するリチウム塩の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。使用するリチウム塩としては、LiCl、LiOH、Li[(FSO2)2N]又はLi[(CF3SO2)2N]を含むリチウム塩が好ましい。
【0114】
負極側電解質のアルカリ金属塩の陰イオンは、例えば、Cl-、Br-、OH-、SO4
2-、NO3
-、C2O4
2-、CO3
2-、[(FSO2)2N]-、[(CF3SO2)2N]-及びB[(OCO)2]2
-より成る群から選ばれる一種又は二種以上のイオンを含む。特に、陰イオンは、Cl-、OH-、[(FSO2)2N]-及び[(CF3SO2)2N]-より成る群から選ばれる一種又は二種以上のイオンを含むことが好ましい。これにより、アルカリ金属イオンの濃度を高くすることができるため、負極での水素発生を抑制することができる。これにより、電池の充放電効率(クーロン効率)が高くなり、保存性能及びサイクル寿命性能が大幅に向上する。
【0115】
また、負極側電解質のpH値は、3以上14以下の範囲であることが好ましい。pH値が前述の範囲であることにより、負極での水素発生電位が低下するため、負極での水素発生が抑制される。これにより、電池の保存性能及びサイクル寿命性能が向上する。
【0116】
また、負極側電解質は、前述のアルカリ金属塩と高分子材料との複合体を含むゲル状電解質であってもよい。負極側電解質がゲル状電解質である場合、負極側電解質からの水分子の負極への拡散を抑制することができ、負極での水素発生を大幅に抑制することができる。このため、電池のサイクル寿命性能及び保存性能を大幅に向上することができる。複合体は、例えば、前述のアルカリ金属塩が水系溶媒に溶解した水系溶液と高分子材料とを複合化によりゲル状にしたゲル状電解質である。アルカリ金属塩と複合化される高分子材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩(例えば、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸カリウム等)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。高分子材料の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。高分子材料の形態は、例えば、粒状及び繊維状を取り得る。負極側電解質中の高分子材料の含有量は、0.5重量%以上10重量%以下の範囲にすることができる。
【0117】
次に、正極側電解質について、説明する。正極側電解質は、少なくとも、正極によって保持される。正極側電解質は、例えば、アルカリ金属塩と、アルカリ金属塩が溶解される水系溶媒とを含む水系溶液(水系電解液)である。なお、正極側電解質は、正極に加え、負極及びセパレータの少なくとも一方にも保持され得る。
【0118】
正極側電解質の水系溶媒は、水を含む溶媒であり、水単独、又は、水と水以外の溶媒からなり得る。水以外の溶媒として、水溶性の有機溶媒が挙げられる。水溶性の有機溶媒には、γ-ブチロラクトン、アセトニトリル、アルコール類、N-メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、及び、テトラヒドロフラン等が挙げられる。正極側電解質の水系溶媒に含まれる溶媒の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。正極側電解質の水系溶媒では、水以外の溶媒の含有量は、20重量%以下にすることが望ましい。
【0119】
正極側電解質に含まれるアルカリ金属塩は、例えば、Li、Na及びKより成る群から選択される1種又は2種以上のアルカリ金属塩である。Li、Na及びKのそれぞれは、イオン伝導性に優れているため、正極側電解質のイオン伝導性を高くすることができる。正極側電解質のアルカリ金属塩の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。なお、アルカリ金属塩を水系溶媒に溶解することで、Li+がアルカリ金属イオンとして得られることが、より好ましい。このため、正極側電解質のアルカリ金属塩としては、リチウム塩が用いられることが、より好ましい。
【0120】
正極側電解質において、水系溶媒中のアルカリ金属イオンの濃度は、1mol/L以上8mol/L以下が好ましい。アルカリ金属イオンの濃度を前述の範囲内にすることにより、良好なイオン伝導性の正極側電解質が得られる。なお、水系溶媒中のアルカリ金属イオンの濃度は、前述の範囲内においても、1mol/L以上6mol/L以下であることが好ましく、1.5mol/L以上6mol/L以下であることがより好ましい。この場合、正極側電解質のイオン伝導性が高くなり、正極での反応抵抗が小さくなる。このため、電池の大電流性能が向上する。
【0121】
正極側電解質のアルカリ金属塩は、例えば、リチウム塩である。リチウム塩としては、例えば、LiCl、LiBr、LiOH、Li2SO4、LiNO3、Li2C2O4、Li2CO3、Li[(FSO2)2N]、Li[(CF3SO2)2N]及びLiB[(OCO)2]2等が挙げられる。使用するリチウム塩の種類は、1種類又は2種類以上にすることができる。使用するリチウム塩としては、LiCl、LiNO3、Li2CO3又はLi2SO4を含むリチウム塩が好ましい。LiClは、充電時のCl2の発生が懸念されるが、水系溶媒への溶解性に優れている。Li2SO4及びLiNO3のそれぞれは、水系溶媒への溶解性が高くはないが、電池の大電流性能及びサイクル寿命性能の向上に寄与する。
【0122】
正極側電解質のアルカリ金属塩の陰イオンは、例えば、Cl-、Br-、OH-、SO4
2-、NO3
-、C2O4
2-、CO3
2-、[(FSO2)2N]-、[(CF3SO2)2N]-及びB[(OCO)2]2
-より成る群から選ばれる一種又は二種以上のイオンを含む。特に、陰イオンは、Cl-、NO3
-、CO3
2-、及びSO4
2-より成る群から選ばれる一種又は二種以上のイオンを含むことが好ましい。これにより、電池の充放電効率(クーロン効率)が向上するため、電池のサイクル寿命性能及び保存性能が向上する。
【0123】
また、正極側電解質のpH値は、1以上8以下の範囲であることが好ましい。pH値が前述の範囲であることにより、正極での酸素発生電位が高くなるため、正極での酸素発生が減少する。これにより、電池の保存性能及びサイクル寿命性能が大幅に向上する。正極側電解質のpH値は、3以上7.5以下の範囲であることが、より好ましい。
【0124】
また、正極側電解質は、前述のアルカリ金属塩と高分子材料との複合体を含むゲル状電解質であってもよい。正極側電解質がゲル状電解質である場合、正極側電解質からの水分子の負極への拡散を抑制することができ、負極での水素発生を大幅に抑制することができる。このため、電池のサイクル寿命性能及び保存性能を大幅に向上することができる。複合体は、例えば、前述のアルカリ金属塩が水系溶媒に溶解した水系溶液と高分子材料とを複合化によりゲル状にしたゲル状電解質である。アルカリ金属塩と複合化される高分子材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩(例えば、ポリアクリル酸リチウム、ポリアクリル酸カリウム等)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエチレンオキサイド(PEO)等を挙げることができる。高分子材料の種類は1種類又は2種類以上にすることができる。高分子材料の形態は、例えば、粒状及び繊維状を取り得る。正極電解質中の高分子材料の含有量は、0.5重量%以上10重量%以下の範囲にすることができる。
【0125】
なお、負極側電解質に含まれるアルカリ金属塩の陰イオン(アニオン)の種類と、正極側電解質に含まれるアルカリ金属塩の陰イオン(アニオン)の種類は、互いに対して同一であってもよく、互いに対して異なってもよい。負極側電解質の陰イオンとしてCl-、OH-、[(FSO2)2N]-及び[(CF3SO2)2N]-より成る群から選ばれる一種又は二種以上のイオンを用い、かつ、正極側電解質の陰イオンとしてCl-、NO3
-、CO3
2-及びSO4
2-より成る群から選ばれる一種又は二種以上のイオンを用いることにより、電池の充放電効率(クーロン効率)が向上するとともに、負極での水素発生が抑制される。このため、電池(二次電池)の保存性能及びサイクル寿命性能を向上させることができる。また、負極側電解質及び正極側電解質のそれぞれは、リチウムイオン、ナトリウムイオン及びマグネシウムイオンを含むことができる。さらに、亜鉛イオン、水酸化物イオンを含むこともできる。これらのイオンは単独で用いられてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0126】
また、負極側電解質及び正極側電解質として、前述の水系電解質の代わりに、非水系電解質を用いることができる。負極側電解質及び正極側電解質として用いられる非水系電解質には、非水系電解液が含まれ得る。非水系電解液は、電解質を有機溶媒に溶解することにより調製される。非水系電解液では、電解質の濃度は、0.5mol/L以上2.5mol/L以下の範囲内であることが、好ましい。
【0127】
有機溶媒に溶解される電解質の例には、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4)、六フッ化砒素リチウム(LiAsF6)、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)、及び、ビストリフルオロメチルスルホニルイミドリチウム(LiN(CF3SO2)2)等のリチウム塩、及び、これらの混合物が、挙げられる。また、電解質は、高電位でも酸化し難いことが好ましく、電解質としてLiPF6が用いられることが、最も好ましい。
【0128】
電解質が溶解される有機溶媒の例には、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、及び、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、及び、メチルエチルカーボネート(MEC)等の鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2MeTHF)、及び、ジオキソラン(DOX)等の環状エーテル;ジメトキシエタン(DME)及びジエトキシエタン(DEE)等の鎖状エーテル;γ-ブチロラクトン(GBL)、アセトニトリル(AN)、及び、スルホラン(SL)が、挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で、又は、混合溶媒として用いることができる。
【0129】
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、及び、ジエチルカーボネート(DEC)からなる群より選択される少なくとも2種以上を混合した混合溶媒、又は、γ-ブチロラクトン(GBL)を含む混合溶媒が用いられることが好ましい。これらの混合溶媒が用いられることにより、電池の高温特性が向上する。
【0130】
また、非水系電解液の代わりにゲル状の非水系電解質を用いることができる。ゲル状の非水系電解質は、前述の非水系電解液と高分子材料とを複合化することにより、調製される。非水系電解液と複合化される高分子材料の例には、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリロニトリル(PAN)及びポリエチレンオキサイド(PEO)、及び、これらの混合物が含まれる。
【0131】
2)負極
負極は、負極集電体と、負極集電体上に配置される負極活物質含有層と、を備える。負極活物質含有層は、負極集電体の片面又は両面に形成され得る。負極活物質含有層は、負極活物質を含む。また、負極活物質含有層は、導電剤及び結着剤を任意に含むことができる。
【0132】
負極集電体は、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、マグネシウム、マンガン及び鉄から成る群から選択される少なくとも1種の金属を含む。負極集電体は、前述の金属の中の1種の金属を含むことができる。また、負極集電体は、前述の金属の中の2種以上の金属を含むこともできる。ある実施例では、負極集電体は、例えば、前述の金属の中の1種からなる金属箔である。また、別のある実施例では、負極集電体は、例えば、前述の金属の2種以上を含んだ合金の箔である。負極集電体の形状としては、箔以外にも、例えば、メッシュ及び多孔体等が挙げられる。なお、電池のエネルギー密度及び出力の向上の観点から、負極集電体は、体積が小さく、かつ、表面積が大きい箔の形状であることが、望ましい。また、負極集電体の厚さは5μm以上20μm以下の範囲にすることができる。
【0133】
負極活物質含有層に含まれる負極活物質としては、アルカリ金属イオンを吸蔵放出する金属又は化合物が用いられ、リチウムイオンを吸蔵放出する金属又は化合物が用いられることが好ましい。特に、負極活物質は、リチウムイオンの吸蔵放出電位がLi電位基準で0.2V(vs.Li/Li+)以上3V(vs.Li/Li+)以下の範囲にあることが、望ましい。負極活物質の例には、リチウム合金等の金属合金、炭素材料、及び、チタン含有酸化物が、挙げられる。使用する負極活物質の種類は、1種又は2種以上にすることができる。
【0134】
負極活物質は、チタン含有酸化物を含むことが好ましい。チタン含有酸化物が、負極活物質として用いられることにより、負極において、水の還元分解による水素発生を、大幅に抑制することができる。これにより、リチウムイオンを、効率よく吸蔵放出できる。チタン含有酸化物の例には、チタン酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブチタン酸化物及びナトリウムニオブチタン酸化物が、含まれる。
【0135】
チタン酸化物の例には、単斜晶構造のチタン酸化物、ルチル構造のチタン酸化物、及び、アナターゼ構造のチタン酸化物等が挙げられる。各結晶構造のチタン酸化物は、充電前の組成をTiO2、充電後の組成をLixTiO2(xは0≦x≦1)で表すことができる。また、単斜晶構造のチタン酸化物の充電前構造をTiO2(B)と表すことができる。
【0136】
リチウムチタン酸化物の例には、スピネル構造のリチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi5O12(xは-1≦x≦3))、ラムスデライト構造のリチウムチタン酸化物(例えば、Li2+xTi3O7(-1≦x≦3))、Li1+xTi2O4(0≦x≦1)、Li1.1+xTi1.8O4(0≦x≦1)、及び、Li1.07+xTi1.86O4(0≦x≦1)、及び、LixTiO2(0<x≦1))等が挙げられる。また、リチウムチタン酸化物は、例えば、スピネル構造又はラムスデライト構造等の前述のリチウムチタン酸化物に異種元素が導入されているリチウムチタン含有複合酸化物を含む。
【0137】
ニオブチタン酸化物の例には、LiaTiMbNb2±βO7±σ(0≦a≦5、0≦b≦0.3、0≦β≦0.3、0≦σ≦0.3、MはFe,V,Mo及びTaから成る群から選択される少なくとも1種の元素)で表される単斜晶型ニオブチタン複合酸化物等が、挙げられる。
【0138】
ナトリウムニオブチタン酸化物の例には、一般式Li2+vNa2-wM1xTi6-y-zNbyM2zO14+δ(0≦v≦4、0<w<2、0≦x<2、0<y≦6、0≦z<3、y+z<6、-0.5≦δ≦0.5、M1はCs,K,Sr,Ba,Caから成る群から選択される少なくとも1つを含み、M2はZr,Sn,V,Ta,Mo,W,Fe,Co,Mn,Alから成る群から選択される少なくとも1つを含む)で表される直方晶型Na含有ニオブチタン複合酸化物等が、挙げられる。
【0139】
前述した組成のチタン含有酸化物は、リチウムイオンの吸蔵放出の電位が1.4(vs.Li/Li+)以上2V(vs.Li/Li+)以下の範囲に含まれる。このため、前述した組成のチタン含有酸化物を前述の負極側電解質及び正極側電解質と組み合わせることにより、負極において水素発生を抑制でき、効率よくリチウムイオンを吸蔵放出することができる。また、負極活物質に用いられるチタン含有酸化物には、スピネル構造のリチウムチタン酸化物が含まれることが、より好ましい。スピネル構造のリチウムチタン酸化物を用いることにより、充放電反応による負極活物質の体積変化を小さくすることができる。
【0140】
また、負極活物質としては、前述した活物質以外の酸化物及び硫化物等の化合物を用いることが可能である。負極活物質として用いられる酸化物及び硫化物等の化合物は、リチウムイオン等のアルカリ金属イオン(又はアルカリ土類金属)、鉛イオン、亜鉛イオン及び水酸化物イオンのいずれかを挿入及び脱離させることが可能である。
【0141】
また、負極活物質含有層が導電剤を含む場合、負極での集電性能が高まり、負極活物質と負極集電体との間の接触抵抗が抑えられる。負極活物質含有層の導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維(例えば気相成長炭素繊維(VGCF: Vapor Grown Carbon Fiber))、及び、黒鉛等の炭素質物が挙げられる。導電剤には、前述の炭素質物の中の1つを単独で用いてもよく、前述の炭素質物の中の複数を用いてもよい。また、導電剤を用いる代わりに、負極活物質の粒子の表面に、炭素コート又は電子導電性無機材料コート等を施してもよい。
【0142】
負極活物質含有層が結着剤を含む場合、結着剤によって、負極活物質含有層の隙間が埋められ、負極活物質、導電剤、及び、負極集電体が結着される。結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE: Polytetrafluoroethylene)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF: Polyvinylidene fluoride)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、イミド化合物、及び、セルロース等が挙げられる。結着剤に用いられるアクリル樹脂としては、ポリアクリル酸化合物等が挙げられる。また、結着剤に用いられるセルロースとしては、カルボキシメチルセルロース(CMC: Carboxymethyl Cellulose)及びカルボキシメチルセルロースの塩等が挙げられる。結着剤としては、前述の材料の1つを単独で用いてもよく、前述の材料の中の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0143】
負極活物質含有層における負極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、負極活物質が70重量%以上95重量%以下、導電剤が3重量%以上20重量%以下、及び、結着剤が2重量%以上10重量%以下の範囲であることが好ましい。導電剤を3重量%以上にすることにより、負極の導電性が確保される。また、導電剤を20質量%以下にすることにより、導電剤の表面での水系電解質の分解が、低減される。また、結着剤を2重量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤を10重量%以下にすることにより、負極において絶縁材料となる結着剤の配合量が減少するため、内部抵抗が減少する。
【0144】
負極は、例えば、次の方法により製造することができる。まず、負極活物質、導電剤及び結着剤を溶媒に懸濁し、スラリーを調製する。次に、調整したスラリーを、負極集電体の片面又は両面に塗布する。そして、負極集電体上の塗膜を乾燥することにより、負極活物質含有層を形成する。その後、負極集電体及び負極集電体上に形成された負極活物質含有層をプレスする。また、プレスの代わりに、負極活物質、導電剤及び結着剤をペレット状に形成し、負極活物質含有層として用いてもよい。
【0145】
3)正極
正極は、正極集電体と、正極集電体上に配置される正極活物質含有層と、を備える。正極活物質含有層は、正極集電体の片面又は両面に形成され得る。正極活物質含有層は、正極活物質を含む。また、正極活物質含有層は、導電剤及び結着剤を任意に含むことができる。
【0146】
正極集電体は、アルミニウム、チタン、銅、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、マンガン、クロム及び鉄から成る群から選択される少なくとも1種の金属を含む。ある実施例では、正極集電体は、例えば、前述の金属の中の1種からなる金属箔である。また、別のある実施例では、正極集電体は、例えば、前述の金属の2種以上を含んだ合金の箔である。正極集電体の形状としては、箔以外にも、例えば、メッシュ及び多孔体等が挙げられる。正極集電体は、例えば、負極集電体と同様の形状に、形成される。
【0147】
正極活物質としては、例えば、リチウムの吸蔵及び放出が可能な化合物を用いることができる。正極活物質に用いられる化合物としては、金属酸化物が挙げられる。正極活物質としては、以下の活物質の中の1種を単独で用いてもよく、以下の活物質の中の2種以上を用いてもよい。
【0148】
正極活物質として用いられる金属酸化物としては、例えば、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムコバルトアルミニウム複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、スピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、リチウムマンガンコバルト複合酸化物、オリビン型のリチウムリン酸鉄(例えば、LiFePO4)、及び、オリビン型のリチウムリン酸マンガン(例えばLiMnPO4)等が挙げられる。
【0149】
好ましい正極活物質としては、例えばLixMn2O4(0<x≦1)及びLixMnO2(0<x≦1)等のリチウムマンガン複合酸化物、例えばLixNi1-yAlyO2(0<x≦1、0<y≦1)等のリチウムニッケルアルミニウム複合酸化物、例えばLixCoO2(0<x≦1)等のリチウムコバルト複合酸化物、例えばLixNi1-y-zCoyMnzO2(0<x≦1、0<y≦1、0≦z≦1、0<1-y-z<1)等のリチウムニッケルコバルト複合酸化物、例えばLixMnyCo1-yO2(0<x≦1、0<y≦1)等のリチウムマンガンコバルト複合酸化物、例えばLixMn2-yNiyO4(0<x≦1、0<y<2)等のスピネル型リチウムマンガンニッケル複合酸化物、例えばLixFePO4(0<x≦1)、LixFe1-yMnyPO4(0<x≦1、0≦y≦1)及びLixCoPO4(0<x≦1)等のオリビン構造を有するリチウムリン酸化物、及び、例えばLixFeSO4F(0<x≦1)等のフッ素化硫酸鉄が、挙げられる。これらの金属酸化物のいずれかを正極活物質として用いることにより、高電圧が得られる。
【0150】
高電圧が得られる前述の正極活物質の中でも、リチウムニッケルアルミニウム複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、及び、リチウムマンガンコバルト複合酸化物のいずれかが用いられることが、より好ましい。この場合、高温環境下での電解質との反応を抑制することができ、電池の寿命を大幅に向上することができる。特に、LixNi1-y―zCoyMnzO2(0≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、より好ましくは0<x≦1.1、0<y≦0.5、0<z≦0.5)で表せるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を正極活物質として用いることにより、高温での耐久性がさらに向上し、電池の寿命がさらに向上する。
【0151】
また、前述した正極活物質の中でも、オリビン構造を有するリチウムリン酸化物及びスピネル構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(例えばLixMn2O4(0<x≦1))のそれぞれは、水系溶媒に対する安定性が高い。このため、これらの金属酸化物を正極活物質として用いることも、好ましい。
また、正極活物質としては、前述した活物質以外の酸化物及び硫化物等の化合物を用いることが可能である。正極活物質として用いられる酸化物及び硫化物等の化合物は、リチウムイオン等のアルカリ金属イオン(又はアルカリ土類金属)、鉛イオン、亜鉛イオン及び水酸化物イオンのいずれかを挿入及び脱離させることが可能である。
【0152】
また、正極活物質含有層が導電剤を含む場合、正極での集電性能が高まり、正極活物質と正極集電体との間の接触抵抗が抑えられる。正極活物質含有層の導電剤には、負極活物質含有層に含まれる導電剤と同様の材料を含むことができる。このため、正極活物質含有層の導電剤の例には、アセチレンブラック、カーボンブラック、コークス、炭素繊維、及び、黒鉛等の炭素質物が挙げられる。導電剤には、前述の炭素質物の中の1つを単独で用いてもよく、前述の炭素質物の中の複数を用いてもよい。また、導電剤を用いる代わりに、正極活物質の粒子の表面に、炭素コート又は電子導電性無機材料コート等を施してもよい。
【0153】
また、正極活物質含有層が結着剤を含む場合、負極活物質含有層の結着剤と同様に、正極活物質含有層の隙間が埋められ、正極活物質、導電剤、及び、正極集電体が結着される。正極活物質含有層の結着剤には、負極活物質含有層に含まれる結着剤と同様の材料を含むことができる。このため、正極活物質含有層の結着剤の例には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、イミド化合物、及び、セルロース等が挙げられる。結着剤に用いられるアクリル樹脂としては、ポリアクリル酸化合物等が挙げられる。また、結着剤に用いられるセルロースとしては、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースの塩等が挙げられる。結着剤としては、前述の材料の1つを単独で用いてもよく、前述の材料の中の複数を組み合わせて用いてもよい。
【0154】
正極活物質含有層における正極活物質、導電剤及び結着剤の配合比は、正極活物質が70重量%以上95重量%以下、導電剤が3重量%以上20重量%以下、及び、結着剤が2重量%以上10重量%以下の範囲であることが好ましい。導電剤の配合比を3重量%以上にすることにより、正極の導電性が確保される。また、導電剤の配合比を20重量%以下にすることにより、導電剤の表面での水系電解質の分解が、低減される。そして、結着剤の配合比を2重量%以上にすることにより、十分な電極強度が得られる。また、結着剤の配合比を10重量%以下にすることにより、正極において絶縁材料となる結着剤の配合量が減少するため、内部抵抗が減少する。また、正極は、例えば、前述の正極活物質を用いて、負極と同様の方法により作製することができる。
【0155】
4)セパレータ
セパレータは、負極と正極との間に介在し、負極及び正極の互いに対する接触を防ぐ。また、セパレータは、絶縁体であり、負極と正極とを電気的に絶縁する。セパレータは、負極と接していることが好ましく、負極及び正極の両方と接していることがより好ましい。セパレータによって負極側及び正極側を互いに対して適切に隔てることにより、水の電気分解をより抑制することができる。
【0156】
セパレータは、負極及び正極の一方である第1の電極が収納される第1のバッグを備える。そして、負極及び正極の他方である第2の電極は、第1のバッグの外部に配置される。また、セパレータの第1のバッグの内部では、第1の電極に、負極側電解質及び正極側電解質の対応する一方である第1の電解質が保持される。そして、第1のバッグの外部では、負極側電解質及び正極側電解質の中で第1の電解質とは別の一方である第2の電解質が、第2の電極に保持される。
【0157】
また、セパレータは、第1のバッグの外部に第2のバッグを備えることができる。この場合、第2のバッグの内部に、第2の電極が収納される。そして、第2のバッグの内部で、第2の電極に第2の電解質が保持される。また、セパレータは、負極に対向する第1のセパレータ表面と、正極に対向する第2のセパレータ表面と、を備える。セパレータでは、第1のセパレータ表面が負極に接していることが、好ましい。また、セパレータでは、第1のセパレータ表面が負極に接し、かつ、第2のセパレータ表面が正極に接していることが、より好ましい。
【0158】
セパレータは、1価の陽イオンを透過させることができる。1価の陽イオンとしては、例えば、リチウムイオン及びナトリウムイオン等のアルカリ金属イオンが挙げられる。また、セパレータは、鉛イオン、亜鉛イオン及び水酸化物イオン等を透過させることができる。セパレータは、負極と正極の間の電位差によって、前述のイオンを選択的に透過させることが好ましい。また、セパレータは、水系電解質に含まれる水系溶媒等を透過させ難い。したがって、セパレータでは、溶媒和したアルカリ金属イオンが通過できないことが、好ましい。そして、セパレータでは、溶媒和したアルカリ金属イオンが、溶媒和していない状態に変化し得る。また、セパレータは、透気係数が1.0×10-14m2以下に形成される。
【0159】
セパレータは、組成物層を備える。組成物層は、粒子及び高分子材料を備えた層であるか、及び、固体電解質を含む固体電解質含有層であるかの、少なくとも一方である。組成物層が粒子及び高分子材料を含む場合、組成物層は、粒子及び高分子材料が混合された混合層であり得る。混合層は、例えば固体電解質を粒子として含む固体電解質含有層等、電解質含有層であり得る。また、セパレータは、混合層等の組成物層のみから形成されてもよい。セパレータでは、負極に対向する第1のセパレータ表面は、組成物層から形成される。また、セパレータでは、第1のセパレータ表面に加えて、正極に対向する第2のセパレータ表面も、組成物層から形成されてもよい。なお、前述の実施形態等では、組成物層37(37A,37B),57(57A,57B)が、以下の組成物層に相当する。
【0160】
組成物層が固体電解質粒子と高分子材料とを含む混合層(固体電解質含有層)である場合、固体電解質が混合層の主成分であることが、好ましい。混合層おける固体電解質の割合は、混合層の密度を高める観点からは、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、75質量%以上であることがさらに好ましい。また、混合層における固体電解質の割合は、混合層の可撓性を高める観点からは、98質量%以下であることが好ましく、94質量%以下であることがより好ましく、92質量%以下であることがさらに好ましい。固体電解質等の粒子と高分子材料との混合層における割合は、セパレータの透気係数に影響を与える。セパレータの透気係数を1.0×10-14m2以下にする観点からは、混合層における固体電解質の割合は、50質量%以上であることが好ましい。また、セパレータの透気係数を1.0×10-17m2以下にする観点からは、混合層における固体電解質の割合は、60質量%以上であることが好ましい。
【0161】
固体電解質粒子の形状は特に限定されないが、例えば、球状、楕円形状、扁平形状、又は繊維状等にすることができる。固体電解質粒子の平均粒径は、アルカリ金属イオン伝導性を高めるという観点からは、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがさらに好ましい。固体電解質粒子の平均粒径の下限値は、特に限定するものではないが、ある一例では、0.05μm以上である。
【0162】
混合層(固体電解質含有層)の固体電解質としては、無機固体電解質を用いることが好ましい。無機固体電解質としては、例えば、酸化物系固体電解質及び硫化物系固体電解質等が挙られる。酸化物系固体電解質としては、NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質を用いることができる。NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質は、一般式Li1+xM2(PO4)3(Mは、Ti,Ge,Sr,Zr,Sn及びAlより成る群から選ばれる一種または二種以上、xは0≦x≦0.5)で表される。NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質としては、LATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3(xは0≦x≦0.5))、Li1+xAlxZr2-x(PO4)3(xは0≦x≦0.5)、及び、Li1+xAlxGe2-x(PO4)3(xは0≦x≦0.5)等が、挙げられる。特に、NASICON型構造のリチウムリン酸固体電解質の中でも、LATPを固体電解質として用いることが好ましい。LATPは、耐水性に優れるため、固体電解質としてLATPを用いることにより、電池において加水分解が生じ難い。
【0163】
また、酸化物系固体電解質としては、アモルファス状のLIPON(Li2.9PO3.3N0.46)、又は、ガーネット型構造のLLZ(Li7La3Zr2O12)を用いてもよい。また、酸化物系固体電解質としては、リチウムチタン含有複合酸化物が用いられてもよい。固体電解質として用いられるリチウムチタン含有複合酸化物の例には、スピネル構造のリチウムチタン酸化物(例えば一般式Li4+xTi5O12(xは-1≦x≦3))が挙げられる。混合層に用いられる固体電解質は、1種類であってもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、固体電解質としては、ナトリウム含有固体電解質を用いてもよい。ナトリウム含有固体電解質は、ナトリウムイオンのイオン伝導性に優れている。ナトリウム含有固体電解質としては、β-アルミナ、ナトリウムリン硫化物、及び、ナトリウムリン酸化物等が挙げられる。ナトリウム含有固体電解質は、ガラスセラミックスの形態にあることが好ましい。
【0164】
混合層に含まれる高分子材料は、固体電解質粒子同士の隙間に存在し得る。高分子材料は、混合層において、固体電解質粒子同士の結着性を高める。高分子材料の重量平均分子量は、例えば、3000以上である。高分子材料の重量平均分子量を3000以上にすることにより、固体電解質の結着性をより高めることができる。高分子材料の重量平均分子量は、3000以上5000000以下であることが好ましく、5000以上2000000以下であることがより好ましく、10000以上1000000以下であることがさらに好ましい。
【0165】
混合層における高分子材料の割合は、混合層の可撓性を高める観点からは、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また、混合層における高分子材料の割合は、混合層におけるリチウムイオンの伝導性を高める観点からは、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。セパレータの透気係数を1.0×10-14m2以下にする観点からは、混合層における高分子材料の割合は、40質量%以下であることが好ましい。また、セパレータの透気係数を1.0×10-17m2以下にする観点からは、混合層における高分子材料の割合は、40質量%以下であることが好ましい。
【0166】
混合層に含まれる高分子材料は、単一のモノマーユニットからなる重合体(ポリマー)、複数のモノマーユニットからなる共重合体(コポリマー)、又は、これらの混合物であり得る。高分子材料は、炭化水素で構成されるモノマーユニットを含み、モノマーユニットを構成する炭化水素は、酸素(O)、硫黄(S)、窒素(N)及びフッ素(F)から成る群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を有する。高分子材料において、モノマーユニットで構成された部分が占める割合は、70モル%以上である。以下、炭化水素で構成される前述のモノマーユニットを、第1のモノマーユニットと称する。また、共重合体において、第1のモノマーユニット以外のものを、第2のモノマーユニットと称する。第1のモノマーユニットと第2のモノマーユニットとの共重合体は、交互共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよく、又は、ブロック共重合体であってもよい。
【0167】
高分子材料において第1のモノマーユニットで構成された部分が占める割合が70モル%より低い場合、混合層において水が透過し易くなる。このため、電池の充放電効率が低下する可能性がある。高分子材料において、第1のモノマーユニットで構成された部分の割合は、90モル%以上であることが好ましい。高分子材料は、第1のモノマーユニットで構成された部分の割合が100モル%、すなわち、第1のモノマーユニットのみからなる重合体であることが最も好ましい。
【0168】
第1のモノマーユニットは、酸素、硫黄、窒素及びフッ素から成る群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を側鎖に有し、主鎖が炭素-炭素結合により構成された化合物であってもよい。第1のモノマーユニットを構成する炭化水素は、酸素、硫黄、窒素及びフッ素から成る群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を、1種類又は2種類以上有してもよい。第1のモノマーユニットが有する前述の官能基によって、混合層を通過するアルカリ金属イオンの伝導性が、高められる。このため、第1のモノマーユニットを構成する炭化水素は、酸素、硫黄及び窒素から成る群より選ばれる少なくとも1種類の元素を含む官能基を有することが好ましい。これにより、混合層におけるアルカリ金属イオンの伝導性がさらに高まり、内部抵抗を低下する。
【0169】
第1のモノマーユニットに含まれる官能基としては、ホルマール基、ブチラール基、カルボキシメチルエステル基、アセチル基、カルボニル基、水酸基及びフルオロ基から成る群より選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。また、第1のモノマーユニットは、カルボニル基及び水酸基の少なくとも一方を官能基に含むことがより好ましく、カルボニル基及び水酸基の両方を含むことがさらに好ましい。したがって、第1のモノマーユニットは、以下の式(3)により表すことができる。
【0170】
【0171】
式(3)において、R1は、水素(H)、アルキル基、及びアミノ基から成る群より選ばれることが好ましい。また、R2は、水酸基(-OH)、-OR1、-COOR1、-OCOR1、-OCH(R1)O-、-CN、-N(R1)3、及び-SO2R1から成る群より選ばれることが好ましい。第1モノマーユニットとしては、例えば、ビニルホルマール、ビニルアルコール、酢酸ビニル、ビニルアセタール、ビニルブチラール、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、アクリロニトリル、アクリルアミド及びその誘導体、スチレンスルホン酸、及び、テトラフルオロエチレンから成る群より選ばれる少なくとも1種又は2種以上が挙げられる。
【0172】
高分子材料は、ポリビニルホルマール、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリメタクリル酸メチル及びポリテトラフルオロエチレンから成る群より選ばれる少なくとも1種類を含むことが好ましい。以下に、高分子材料として用いることができる化合物の構造式の一例を示す。
【0173】
ポリビニルホルマールの構造式は、以下の式(4)の通りである。式(4)において、aは50以上80以下であり、bは0以上5以下であり、cは15以上50以下であることが好ましい。
【0174】
【0175】
また、ポリビニルブチラールの構造式は、以下の式(5)の通りである。式(5)において、lは50以上80以下であり、mは0以上10以下であり、nは10以上50以下であることが好ましい。
【0176】
【0177】
また、ポリビニルアルコールの構造式は、以下の式(6)の通りである。式(6)において、nは70以上20000以下であることが好ましい。
【0178】
【0179】
また、ポリメタクリル酸メチルの構造式は、以下の式(7)の通りである。式(7)において、nは30以上10000以下であることが好ましい。
【0180】
【0181】
第2のモノマーユニットは、高分子材料において第1のモノマーユニット以外の化合物である。したがって、第2のモノマーユニットは、酸素、硫黄、窒素及びフッ素から成る群より選ばれる1種類又は2種類以上の元素を含む官能基を有さないか、又は、この官能基を有しているが炭化水素ではないものである。第2のモノマーユニットとしては、例えば、エチレンオキシド及びスチレンが挙げられる。第2のモノマーユニットから成る重合体としては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)及びポリスチレン(PS)が挙げられる。
【0182】
また、混合層(固体電解質含有層)は、固体電解質及び高分子材料に加えて、可塑剤及び電解質塩を含んでもよい。混合層が電解質塩を含むことにより、セパレータでのアルカリ金属イオンの伝導性が、さらに高められる。電解質塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩及びこれらの混合物のいずれかを用いることが好ましい。電解質塩は、1種類又は2種類以上のものを使用することができる。また、混合層に含まれる電解質塩は、前述の負極側電解質及び正極側電解質に含まれる電解質塩のいずれかと同一の種類であってもよく、負極側電解質及び正極側電解質に含まれる電解質塩とは異なる種類であってもよい。
【0183】
混合層に含まれるリチウム塩として、例えば、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)、水酸化リチウム(LiOH)、硫酸リチウム(Li2SO4)、硝酸リチウム(LiNO3)、酢酸リチウム(CH3COOLi)、シュウ酸リチウム(Li2C2O4)、炭酸リチウム(Li2CO3)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(LiTFSI;LiN(SO2CF3)2)、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI;LiN(SO2F)2)及びリチウムビスオキサレートボラート(LiBOB:LiB[(OCO)2]2)等を用いることができる。また、ナトリウム塩としては、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、水酸化ナトリウム(NaOH)、硝酸ナトリウム(NaNO3)及びナトリウムトリフルオロメタンスルホニルアミド(NaTFSA)等を用いることができる。
【0184】
また、混合層の密度は、高いことが好ましい。混合層の密度が高くなることにより、水系電解質に含まれる水系溶媒が、混合層を透過し難くなる。混合層の密度は、固体電解質としてLATP(Li1+xAlxTi2-x(PO4)3)粒子を用いた場合、ある一例では2.4g/cm3以上であり、別のある一例では2.5g/cm3以上である。また、固体電解質としてLATP粒子を用いた場合の、混合層の密度は、ある一例では2.8g/cm3以下であり、別のある一例では2.7g/cm3以下である。
【0185】
また、混合層は、可撓性を有することが好ましい。混合層が可撓性を有することにより、混合層においてクラック等の欠陥が発生し難くなる。したがって、可撓性を有する混合層を備えるセパレータを用いることにより、電池において、負極側及び正極側を互いに対してより適切に隔てることができ、水の電気分解をより抑制することができる。混合層の可撓性は、例えば、高分子材料の種類及び配合量等を変化させることにより、調整可能である。
【0186】
混合層が可撓性を有していることは、例えば、混合層について屈曲性試験を行うことにより、判別することができる。屈曲性試験を行う際には、まず、二次電池を解体し、混合層(固体電解質含有層)を取出す。そして、混合層を切断して、試験片を得る。試験片の形状は、例えば、横方向の長さが2cm、縦方向の長さが10cmの短冊状とする。そして、この試験片を、23℃の温度の水に24時間浸漬させた後、乾燥させる。そして、乾燥後の試験片について、日本工業規格JIS C 5016:1994「フレキシブルプリント配線板試験方法」に規定されている方法に準じて、屈曲性試験を行う。屈曲性試験において、屈曲半径は、例えば、3mmとし、屈曲回数は、100回とする。屈曲性試験後の試験片を目視により観察し、ひび割れ及び破断等が生じていなければ、可撓性を有すると判断される。
【0187】
混合層の層厚は、電池(二次電池)のエネルギー密度を高める観点からは、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。高分子材料を含む混合層では、層厚を薄くしても、十分な強度を得ることができる。また、混合層の層厚は、機械的強度を高めるという観点からは、1μm以上であることが好ましい。
【0188】
また、組成物層が粒子及び高分子材料を含む混合層等である場合、混合層では、固体電解質の代わりに酸化アルミニウム又はシリカが、粒子として含まれてもよい。この場合、混合層では、酸化アルミニウム又はシリカが、前述の高分子材料と混合される。また、混合層では、酸化アルミニウム及びシリカ等の粒子を、固体電解質の粒子及び高分子材料と混合して用いてもよい。
【0189】
また、組成物層は、前述の混合層等の代わりに、固体電解質の板から形成されてもよい。この場合、組成物層は、固体電解質の板から形成される固体電解質含有層となる。固体電解質の板には、前述の高分子材料は、含まれない。固体電解質の板は、例えば、LATPのセラミックス板であり得る。固体電解質の板がセパレータに設けられる構成では、セパレータの透気係数は、0m2又はほぼ0m2になる。
【0190】
また、セパレータは、組成物層に加えて、支持体を備えてもよい。前述の実施形態等では、支持体38,58が、以下の支持体に相当する。セパレータでは、前述の組成物層等が、支持体の片面又は両面に積層される。すなわち、組成物層等は、支持体の一対の主面の少なくとも一方に積層される。セパレータに支持体を設け、セパレータを積層体にすることにより、セパレータの強度をさらに高めることができる。
【0191】
支持体は、多孔質層であり得る。この場合、支持体では、組成物層等に比べて、水系電解質に含まれる水系溶媒等が透過し易い。支持体が多孔質層となる場合、支持体として、例えば、多孔質フィルム又は不織布を用いることができる。多孔質フィルム又は不織布の材料としては、例えば、ポリエチレン(PE:polyethylene)、ポリプロピレン(PP:polypropylene)、セルロース及びポリフッ化ビニリデン(PVdF:polyvinylidene fluoride)のいずれかを用いることができる。
【0192】
なお、セパレータが組成物層及び支持体を備える積層体である場合、支持体に対して少なくとも負極が位置する側に、組成物層が積層されることが好ましい。そして、セパレータにおいて負極と対向する第1のセパレータ表面は、組成物層から形成されることが、好ましい。そして、組成物層と負極とが接触していることが、より好ましい。前述のように組成物層が配置されることにより、前述した水の分解がさらに抑制される。また、セパレータが組成物層及び支持体を備える積層体である場合、支持体に対して負極が位置する側及び正極が位置する側の両方に、組成物層が積層されることがより好ましい。この場合、セパレータでは、負極と対向する第1のセパレータ表面に加えて、正極に対向する第2のセパレータ表面も、組成物層から形成されることが、好ましい。そして、組成物層と負極とが接触するとともに、組成物層と正極とが接触していることが、より好ましい。前述のように組成物層が配置されることにより、前述した水の分解がさらに抑制される。
【0193】
また、組成物層が固体電解質粒子及び高分子材料が混合された混合層である場合、混合層は、例えば、以下の方法により形成される。混合層の形成では、まず、固体電解質粒子を高分子材料及び溶媒と混合し、混合液を得る。セパレータの透気係数を1.0×10-14m2以下にする観点から、混合液では、固体電解質粒子を60質量%以上しに、高分子材料を40質量%以下にすることが好ましい。なお、混合液には、任意に電解質塩を添加してもよい。この場合、混合液では、セパレータの透気係数を1.0×10-14m2以下にする観点から、固体電解質粒子を60質量%以上にし、高分子材料を20質量%以下にし、電解質塩を20質量%以下にすることが好ましい。混合液の溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。そして、この混合液を、ボールミル等の分散機を用いて十分に撹拌し、スラリーを得る。そして、このスラリーを支持体の表面上に、例えば、ドクターブレード法により塗工する。そして、塗工したスラリーを乾燥させ、混合層を形成する。そして、混合層及び支持体をプレス加工し、前述のシート41A,41B等と同様のシートを形成する。混合層及び支持体のプレス加工におけるプレス圧力及びプレス温度により、セパレータの透気係数を調整可能である。例えば、プレス圧力及びプレス温度のいずれかが高ければ、透気係数は小さくなる。
【0194】
また、セパレータの第1のバッグ及び第2のバッグのそれぞれは、1つ以上のシートから、前述の製造方法(例えば
図5A及び
図5Bの一例に示す方法等)のいずれかによって、形成される。バッグを形成するシートのそれぞれは、前述した組成物層等を備える。なお、バッグにおいてシートの融着部分は、ポリエチレン等の熱融着性を有する樹脂を介して融着される。
【0195】
また、組成物層が固体電解質粒子及び高分子材料を含む混合層である場合、混合層を備えるセパレータを用いることにより、二次電池の充放電効率を高めることができる。例えば、アルカリ金属イオンとしてリチウムイオンを用いた二次電池では、電池の充電時において、リチウムイオンの一部が、セパレータを介して正極側から負極側へと移動する。ここで、正極側電解質(水系電解質)中のリチウムイオンの大部分は、溶媒和した状態にある。また、セパレータの混合層では、固体電解質及び高分子材料が、層全体に渡って略均一に混合されている。したがって、充電を開始すると、正極側の溶媒和したリチウムイオンの一部は、セパレータの正極側の主面、すなわち、第2のセパレータ表面において、固体電解質及び高分子材料のそれぞれに接触する。そして、固体電解質に接触した溶媒和リチウムイオンは、脱溶媒和して、溶媒和していない状態に変化する。そして、リチウムイオンのみがセパレータ内に侵入する。セパレータ内に侵入したリチムイオンの一部は、セパレータ内の固体電解質粒子を介して、負極側へと移動し、負極に到達する。
【0196】
一方、第2のセパレータ表面において高分子材料に接触した溶媒和リチウムイオンの一部は、高分子材料内に侵入し得る。高分子材料内の溶媒和したリチウムイオンの一部は、セパレータ内において、固体電解質粒子と接触するまで、溶媒和したリチウムイオンとして移動する。そして、高分子材料内の溶媒和したリチウムイオンの一部は、固体電解質粒子と接触すると、前述したように、溶媒和していない状態に変化する。そして、リチウムイオンのみが、負極側へと移動する。
【0197】
なお、二次電池の放電時には、リチウムイオンは、充電時とは逆方向に移動する。すなわち、放電時には、負極側のリチウムイオンの少なくとも一部が、正極側へと移動する。この際も、溶媒和したリチウムイオンの一部は、セパレータ内等において固体電解質粒子と接触すると、前述したように、溶媒和していない状態に変化する。そして、リチウムイオンのみが、正極側へと移動する。
【0198】
混合層に含まれる高分子材料は、前述の第1のモノマーユニットを含む。そして、第1モノマーユニットが含まれる前述の官能基は、混合層においてリチウムイオンの移動を促進する。このため、前述の高分子材料を含む混合層を備えるセパレータを用いることにより、リチウムイオンの伝導性が高められる。また、前述の高分子材料を含む混合層は、水系溶媒を透過させ難い。このため、混合層を備えるセパレータを用いることにより、溶媒和したリチウムイオン及び水系電解質の水系溶媒は、セパレータ内を透過し難くなり、負極側へと移動し難くなる。また、前述の混合層を備えるセパレータを用いることにより、水系溶媒等がセパレータを透過し難いため、負極側電解質及び正極側電解質が混ざり難くなる。したがって、充放電を繰り返しても、負極側電解質のpHは高い状態で維持される。前述の観点から、前述の混合層を含むセパレータを備えた二次電池は、優れた充放電効率を実現することができる。
【0199】
5)外装部材
外装部材の内部には、収納空間が規定される。収納空間には、第1のバッグの内部に第1の電極及び第1の電解質が収納されたセパレータが、配置される。また、収納空間において第1のバッグの外部には、第2の電極が配置され、第2の電解質は、収納空間において第1のバッグの外部で、第2の電極に保持される。また、セパレータが第1のバッグ及び第2のバッグを備える場合、第2のバッグは、収納空間において第1のバッグの外部に形成される。この場合、第2の電解質は、第2のバッグの内部において、第2の電極に保持される。
【0200】
外装部材としては、ラミネートフィルム製の袋状容器、金属製容器及び樹脂製容器のいずれかを用いることができる。外装部材の形状としては、例えば、扁平型、角型、円筒型、コイン型、ボタン型、シート型、及び、積層型等が挙げられる。
【0201】
金属製容器は、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛及びチタンから成る群から選択される少なくとも1種の金属、又は、これらの金属の合金により形成されることが、好ましい。具体的には、合金の例として、ステンレス鋼及びアルミニウム合金が挙げられる。樹脂製容器は、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のいずれかから形成される。また、金属製容器及び樹脂製容器のそれぞれの肉厚は、0.5mm以下であることが好ましく、肉厚が0.3mm以下であることがより好ましい。
【0202】
ラミネートフィルムとしては、例えば、多層フィルムを用いることができ、多層フィルムは、複数の樹脂層と、樹脂層同士の間に配置される金属層とを含むことができる。この場合、金属層は、軽量化の観点から、アルミニウム箔又はアルミニウム合金箔であることが好ましい。樹脂層は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ナイロン、及び、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の高分子材料を用いることができる。ラミネートフィルムは、例えば、熱融着によりシールを行うことにより、外装部材の形状に成形される。また、ラミネートフィルムの厚さは、0.5mm以下であることが好ましく、0.2mm以下であることがより好ましい。
【0203】
前述した実施形態等の電池1では、セパレータ8がバッグ26を備え、バッグ26の内部に負極6及び正極7の一方である第1の電極が収納される。そして、負極6及び正極7の他方である第2の電極は、バッグ26の外部に配置される。そして、実施形態等の電池1では、バッグ26の内部において第1の電極に電解質31が保持され、バッグ26の外部において第2の電極に電解質32が保持される。このため、電解質31,32は、バッグ26によって、互いに対して隔離される。このような構成であるため、実施形態等では、電解質31,32として互いに対して異なる電解質を用いることが可能となり、負極側電解質及び正極側電解質として互いに対して異なる電解質を用いることが可能となる。
【0204】
例えば、正極側電解質として耐酸化性が高い電解質を用い、負極側電解質として耐還元性の高い電解質を用いることにより、電解質の副反応が起こり難くなる。電解質として水系溶媒を含む水系電解液が用いられる場合は、水の電気分解が、電解質の副反応として起こり得る。水の電気分解では、負極において式(8)に示す化学反応が起こり、正極において式(9)で示す化学反応が起こる。
【0205】
【0206】
【0207】
また、水の電気分解等の電解質の酸化還元反応では、酸化反応による分解が発生しない電位窓、及び、還元反応による分解が発生しない電位窓が、存在する。例えば、水の電気分解では、ネルンストの式から、負極の電位E1に関して式(10)で示す関係が成立すると、還元反応によって負極において水素が発生し易くなる。そして、正極の電位E2に関して式(11)で示す関係が成立すると、酸化反応によって正極において酸素が発生し易くなる。ここで、式(10)及び式(11)においてpHは、電解質(水系電解液)のpHを示す。
【0208】
【0209】
【0210】
式(10)及び式(11)から、負極側と正極側とで電解質が隔離されない場合は、電解質のpHがいずれであっても、負極と正極との間の電圧が1.23Vより大きくなると、熱力学的に水の電気分解が起こり易くなる。前述の実施形態等では、負極側電解質及び正極側電解質は、セパレータ8によって互いに対して隔離される。このため、正極側電解質及び負極側電解質として、互いに対してpHが異なる電解質を用いることが可能になる。ここで、正極側電解質として、負極側電解質よりpHが小さい電解質を用いることにより、負極と正極との間の電圧が1.23Vより大きくなっても、水の電気分解が起こり難くなる。例えば、正極側電解質としてpHが1の電解質を用い、負極電解質としてpHが14の電解質を用いた場合、負極と正極との間の電圧が2V程度にまで上昇しない限りは、水の電気分解が起こり難いと考えられる。
【0211】
前述のように、実施形態等では、正極側電解質として耐酸化性が高い電解質を用い、負極側電解質として耐還元性の高い電解質を用いることにより、水の電気分解等の電解質の副反応が起こり難くなる。このため、実施形態の電池では、電解質の副反応が安定して抑制される。電解質の副反応が安定して抑制されることにより、充放電効率(クーロン効率)、貯蔵性能及びサイクル特性が向上する。したがって、実施形態では、エネルギー密度が高いとともに、充放電効率、貯蔵性能及びサイクル特性等のその他の特性も優れた電池を、提供することができる。
【0212】
なお、電解質31,32として、有機溶媒を含む非水系電解質を用いる場合でも、負極側電解質及び正極側電解質をセパレータ8によって互いに対して隔離し、負極側電解質及び正極側電解質として互いに対して異なる電解質を用いることにより、電解質の副反応を抑制可能になる。例えば、有機溶媒を含む非水電解液が電解質として用いられるリチウムイオン電池では、以下に示す副反応が起こり得る。例えば、非水電解液が用いられるリチウムイオン電池では、式(12)に示す有機溶媒の不可逆的な交換反応が、副反応として起こり得る。
【0213】
【0214】
また、リチウムコバルト複合酸化物の一種であるコバルト酸リチウムが正極活物質として用いられる場合は、正極活物質の結晶構造の変化に対応して、式(13)に示す反応が、副反応として起こり得る。式(13)に示す反応によって、酸素が発生する。
【0215】
【0216】
また、正極で発生した酸素によって、式(14)に示す有機溶媒の酸化分解が、副反応として起こり得る。式(14)に示す副反応によって、二酸化炭素及び水が発生する。式(14)において、Rは、炭化水素基を示す。
【0217】
【0218】
また、負極では、式(15)及び式(16)等に示す有機溶媒の還元分解が、副反応として起こり得る。式(15)及び式(16)等の副反応によって、多種の炭化水素が大量に発生し得る。式(15)及び式(16)において、Rは、炭化水素基を示す。
【0219】
【0220】
【0221】
また、非水電解液が電解質として用いられるリチウムイオン電池では、負極活物質及び正極活物質の表面と電解液との反応によって、負極及び正極の表面にSEI(Solid Electrolyte Interphase)が形成される。SEIが過度に形成されると、負極及び正極のそれぞれの抵抗が上昇する。実施形態等では、負極側電解質及び正極側電解質として互いに対して異なる電解質を用いることにより、SEIが過度に形成されることを防止可能となる。
【0222】
実施形態等では、前述のように、非水系電解質が用いられる電池においても、電解質の副反応を安定して抑制可能である。電解質の副反応が安定して抑制されることにより、充放電効率(クーロン効率)、貯蔵性能及びサイクル特性が向上する。したがって、実施形態では、エネルギー密度が高いとともに、充放電効率、貯蔵性能及びサイクル特性等のその他の特性も優れた電池を、提供することができる。
【0223】
また、実施形態等では、セパレータ8の透気係数が1.0×10-14m2以下になる。このため、セパレータ8は、電解質31,32に含まれる水系溶媒等を透過させ難い。水系溶媒等がセパレータ8を透過し難いため、収納空間5では、電解質31,32が混ざり難くなる。これにより、前述のように負極側電解質及び正極側電解質で互いに対してpHが異なる電解質を用いた場合、充放電を繰り返しても、負極側電解質のpHは高い状態で維持され、正極側電解質のpHは低い状態で維持される。これにより、充放電を繰り返しても、水の電気分解等の副反応が、適切に抑制される。
【0224】
また、実施形態等では、電解質31,32の浸透圧の中の小さい一方は、電解質31,32の中の大きい別の一方に対して、10%以上100%以下になる。電解質31,32の浸透圧が前述のようになるため、収納空間5では、電解質31,32が混ざり難くなる。このため、負極側電解質及び正極側電解質で互いに対してpHが異なる電解質を用いた場合、負極側電解質のpHは高い状態で維持され、正極側電解質のpHは低い状態で維持される。したがって、水の電気分解等の副反応が、より適切に抑制される。なお、電解質31,32の浸透圧の中の小さい一方を、電解質31,32の中の大きい別の一方に対して、50%以上にすることにより、電解質31,32がさらに混ざり難くなり、副反応がさらに適切に抑制される。
【0225】
また、実施形態等では、セパレータ8において負極6と対向する第1のセパレータ表面35は、水系溶媒等を透過させ難い組成物層から形成されることが、好ましい。これにより、負極6において、水の還元分解による水素の発生等がさらに抑制され、副反応がさらに抑制される。そして、実施形態等のセパレータ8では、第1のセパレータ表面35に加えて、正極7と対向する第2のセパレータ表面36も、組成物層から形成されることが、好ましい。これにより、正極7において、水の酸化分解による酸素の発生等がさらに抑制され、副反応がさらに抑制される。
【0226】
また、第3の実施形態及び第4の実施形態等の構成では、1つのバッグ26の内部に、第1の電極が複数収納されるとともに、電解質(第1の電解質)31が収納される。このような構成にすることにより、バッグ26の内部に収納される電解質(電解液)31を多くすることが可能になる。バッグ26の内部の電解質31が多くなることにより、第1の電極のそれぞれにおいてドライアップ(液枯れ)の発生が有効に防止される。
【0227】
第1の電極においてドライアップが発生した場合、ドライアップが発生した部位において、リチウムイオン等のアルカリ金属イオンの伝導パスが途絶え、第1の電極において伝導パスとして使用できない部位が発生する。このため、電池の放電容量が低下する。また、第1の電極においてドライアップが発生した場合、ドライアップが発生していない部位への電流集中が発生する。このため、電池において局所的に温度が上昇し、第1の電極においてドライアップしていない部位(使用可能な部位)でも、劣化が進行する。これにより、サイクル特性が低下する。第3の実施形態及び第4の実施形態の構成では、第1の電極でのドライアップが有効に防止されるため、電池の劣化がさらに有効に防止され、電池のサイクル特性がさらに向上する。
【0228】
また、第4の実施形態等の構成では、1つのバッグの46の内部に、第2の電極が複数収納されるとともに、電解質(第2の電解質)32が収納される。このような構成にすることにより、バッグ46の内部に収納される電解質(電解液)32も多くすることが可能になる。バッグ46の内部の電解質32が多くなることにより、第2の電極のそれぞれにおいても、ドライアップ(液枯れ)の発生が有効に防止される。第2の電極でのドライアップが有効に防止されることにより、電池の劣化がさらに有効に防止され、電池のサイクル特性がさらに向上する。
【0229】
[電池パック]
次に、前述した実施形態等の電池が用いられる電池パックについて、説明する。電池パックは、組電池を備える。組電池は、前述の実施形態等の電池を複数備える。組電池では、複数の電池が、直列及び並列の少なくとも一方で電気的に接続される。また、電池パックでは、組電池の代わりに、前述の実施形態等の電池を1つのみ備えてもよい。
【0230】
電池パックに設けられる組電池では、複数の電池のそれぞれが、他の電池と電気的に接続される。前述の実施形態等の電池には、正極端子及び負極端子が電極端子として設けられる。組電池では、複数の電池のそれぞれの電極端子は、金属製のバスバー等の接続部材を介して、他の電池の対応する電極端子に接続される。ハスバーを形成する金属としては、アルミニウム、ニッケル及び銅等が、挙げられる。なお、2つの電池の間において正極端子同士及び負極端子同士が接続されることにより、その2つの電池は、電気的に並列に接続される。また、2つの電池の間において一方の正極端子が他方の負極端子に接続されることにより、その2つの電池は、電気的に直列に接続される。
【0231】
電池パックは、通電用の外部端子をさらに備えることができる。外部端子は、電池パックの外部の機器に接続される。外部端子は、組電池からの電流の外部への出力、及び/又は、組電池への電流の入力に用いられる。電池パックの組電池を電源として使用する際には、電流が通電用の外部端子を通して、電池パックの外部に供給される。また、組電池を充電する際には、充電電流は、通電用の外部端子を通して組電池に供給される。組電池の充電電流には、例えば、自動車等の動力の回生エネルギー等が含まれる。
【0232】
電池パックは、電流検出機能及び電圧検出機能を有するとともに、温度検出器等を備えることができる。電池パックでは、組電池への入力電流、及び、組電池からの出力電流を検出してもよく、組電池を形成する複数の電池のいずれかを流れる電流を検出してもよい。また、電池パックでは、組電池全体に印加される電圧を検出してもよく、組電池を形成する複数の電池のいずれかに印加される電圧を検出してもよい。また、温度検出器は、組電池を形成する電池のそれぞれの温度を検出する。
【0233】
電池パックは、保護回路をさらに備えることができる。保護回路は、組電池と外部端子との間の電気的な接続を遮断可能な機能を有する。保護回路には、接続遮断部として、リレー又はヒューズ等が設けられる。
【0234】
また、保護回路は、組電池の充放電を制御する機能を有する。保護回路は、前述の電流、電圧及び温度等のいずれかに関する検出結果に基づいて、組電池の充放電を制御する。これにより、組電池において、電池のそれぞれの充放電が制御される。例えば、組電池の過電流が検出されたことに基づいて、保護回路は、組電池と外部端子との間の電気的接続を遮断する。これにより、組電池への電流の入力、及び、組電池からの電流の出力が停止される。なお、ある実施例では、電池パック(組電池)を電源として使用する装置に形成される回路を、保護回路として使用してもよい。
【0235】
図18及び
図19は、前述の実施形態等の電池を用いた電池パックの一例を示す。
図18は、電池パック70の分解斜視図である。
図19は、
図18の電池パック70の回路構成を示す図である。
【0236】
図18及び
図19の一例では、電池パック70は、組電池80を備え、組電池80は、前述の実施形態等の電池1を複数備える。組電池80では、複数の電池1は積層され、積層された電池1は、粘着テープ94等で締結される。また、組電池80では、電池1のそれぞれは、前述の電極端子(正極端子及び負極端子)を介して、対応する他の電池1に電気的に接続される。
図18及び
図19の一例では、組電池80において、複数の電池1が直列に接続される。
【0237】
電池パック70では、プリント配線基板84が、組電池80と対向して配置される。プリント配線基板84には、温度検出器であるサーミスタ101、保護回路100及び通電用の外部端子102が、搭載される。なお、プリント配線基板84において組電池80と対向する面には、絶縁板(図示しない)が取り付けられることが、好ましい。これにより、プリント配線基板84上の電気経路と組電池80の配線との不要な接続が、防止される。
【0238】
また、電池パック70では、組電池80に、正極リード92及び負極リード93が接続される。ある実施例では、正極リードの92の一端は、組電池80を形成する複数の電池1のある1つにおいて、正極端子に接続される。そして、正極リード92の他端は、プリント配線基板84の正極コネクタ95に電気的に接続される。また、負極リード93の一端は、組電池80を形成する複数の電池1の中で、正極リード92が接続される電池1とは別のある1つにおいて、負極端子に接続される。そして、負極リード93の他端は、プリント配線基板84の負極コネクタ96に電気的に接続される。正極コネクタ95は、プリント配線基板84に形成される配線95Aを介して、保護回路100に接続され、負極コネクタ96は、プリント配線基板84に形成される配線96Aを介して、保護回路100に接続される。
【0239】
電池パック70の組電池80では、プリント配線基板84に対向する側面を除く三側面に、保護シート83が配置される。保護シート83は、ゴム又は樹脂から形成される。組電池80は、保護シート83及びプリント配線基板84と一緒に、収納容器81の内部に収納される。そして、組電池80は、保護シート83及びプリント配線基板84で囲まれた空間に、位置する。蓋82は、収納容器81の上面に、取り付けられる。
【0240】
サーミスタ101は、組電池80を形成する複数の電池1のそれぞれについて、温度を検出する。そして、サーミスタ101は、温度についての検出信号を、保護回路100に出力する。
【0241】
また、電池パック70では、例えば、組電池80への入力電流、及び、組電池80からの出力電流が、検出される。また、電池パック70では、組電池80において、電池1のそれぞれの電圧が検出される。電池パック70では、組電池80と保護回路100との間が、配線85を介して、接続される。保護回路100には、電流についての検出信号、及び、電圧についての検出信号が、配線85を介して出力される。
【0242】
なお、ある実施例では、電池1のそれぞれの電圧が検出される代わりに、組電池80を形成する電池1のそれぞれについて、正極電位又は負極電位が検出される。この場合、組電池80に、参照極としてリチウム電極等が設けられる。そして、参照極での電位を基準として、電池1のそれぞれの正極電位又は負極電位が検出される。
【0243】
保護回路100は、温度、電流及び電圧のそれぞれに関する検出結果に基づいて、組電池80が所定の条件になったか否かを判断してもよい。例えば、サーミスタ101の検出温度が所定温度以上になった場合、保護回路100は、所定の条件になったと判断する。また、組電池80において過充電、過放電及び過電流等のいずれかが検出された場合に、保護回路100は、組電池80が所定の条件になったと判断する。
【0244】
電池パック70には、通電用の外部端子102が設けられる。保護回路100は、プラス配線103A及びマイナス配線103Bを介して外部端子102に接続可能である。組電池80が前述の所定の条件になったと判断した場合、保護回路100は、保護回路100と通電用の外部端子102との間の導通を、遮断できる。保護回路100と通電用の外部端子102との間の導通が遮断されることにより、組電池80からの電流の外部への出力、及び、組電池80への電流の入力が停止される。これにより、組電池80において過電流等が継続して発生することが、有効に防止される。
【0245】
なお、組電池80の固定には、粘着テープ94の代わりに、熱収縮テープを用いてもよい。この場合、組電池80の長辺方向に沿う側面の両方に保護シート83を配置し、組電池80に熱収縮テープを周回させる。そして、熱収縮テープを熱収縮させて、組電池80を結束させる。
【0246】
また、
図17及び
図18の一例では、組電池80において電池1が互いに対して直列に接続されるが、組電池において、電池が互いに対して並列に接続されてもよい。また、組電池において、電池が直列に接続される直列接続、及び、電池が並列に接続される並列接続の両方が形成されてもよい。また、前述の電池パックを複数形成し、電池パックの組電池同士を電気的に直列及び/又は並列に接続してもよい。
【0247】
前述した電池パックには、前述の実施形態等の電池が用いられる。実施形態の電池は、エネルギー密度が高いとともに、充放電効率、貯蔵性能及びサイクル特性等のその他の特性も優れる。このため、実施形態の電池を用いることにより、エネルギー密度が高いとともに、充放電効率、貯蔵性能及びサイクル特性等のその他の特性も優れた電池パックが提供される。
【0248】
[電池パックの用途]
前述した電池パックの構成等は、用途により、適宜変更される。電池パックの用途としては、大電流での充放電が求められている装置等であることが、好ましい。具体的な電池パックの用途には、デジタルカメラの電源用、車両の車載用、及び、定置用電源等が、挙げられる。この場合、組電池を含む電池パックが搭載される車両としては、二輪乃至四輪のハイブリッド電気自動車、二輪乃至四輪の電気自動車、アシスト自転車、及び、鉄道用車両等が挙げられる。
【0249】
前述した実施形態の電池を備える電池パックは、前述のように、エネルギー密度が高く、かつ、充放電効率(クーロン効率)及び貯蔵性能等のその他の特性も高い。このため、電池パック(組電池)は、鉛電池の代替電源として車両用のスタータ電源に用いることも好適であるとともに、ハイブリッド車に搭載する車載用電源、及び、定置用電源としても好適である。
【0250】
(車両)
図20は、前述の電池パック70の第1の適用例として、車両110への適用例を示す。
図20に示す一例では、車両110は、車両本体111と、電池パック70と、を備える。
図20に示す一例では、車両110は、四輪の自動車である。なお、車両110は、複数の電池パック70を搭載してもよい。
【0251】
図20の一例では、電池パック70が車両本体111の前方に位置するエンジンルーム内に搭載される。なお、電池パック70は、例えば、車両本体111の後方、又は、座席の下に搭載してもよい。前述のように、電池パック70は、車両110の電源として用いることができる。また、電池パック70は、車両110の動力の回生エネルギーを、回収することができる。
【0252】
(定置用電源)
図21は、前述の電池パック70(70A,70B)の第2の適用例として、定置用電源122,133への適用例を示す。
図21に示す一例では、定置用電源122,133が用いられるシステム120が示される。システム120は、発電所121、定置用電源122、需要家側電力系統123及びエネルギー管理システム(EMS)125を備える。また、システム120には、電力網126及び通信網127が形成され、発電所121、定置用電源122、需要家側電力系統123及びEMS125は、電力網126及び通信網127を介して、接続される。EMS125は、電力網126及び通信網127を活用して、システム120全体を安定化させる制御を行う。
【0253】
発電所121は、火力及び原子力等の燃料源によって、大容量の電力を生成する。発電所121からは、電力網126等を通して電力が供給される。また、定置用電源122には、電池パック70Aが搭載される。電池パック70Aは、発電所121から供給される電力等を蓄電できる。また、定置用電源122は、電池パック70Aに蓄電された電力を、電力網126等を通して供給できる。システム120には、電力変換装置128が設けられる。電力変換装置128は、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置128は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置128は、発電所121からの電力を、電池パック70Aへ蓄電可能な電力に変換できる。
【0254】
需要家側電力系統123には、工場用の電力系統、ビル用の電力系統、及び、家庭用の電力系統等が、含まれる。需要家側電力系統123は、需要家側EMS131、電力変換装置132及び定置用電源133を備える。定置用電源133には、電池パック70Bが搭載される。需要家側EMS131は、需要家側電力系統123を安定化させる制御を行う。
【0255】
需要家側電力系統123には、発電所121からの電力、及び、電池パック70Aからの電力が、電力網126を通して供給される。電池パック70Bは、需要家側電力系統123に供給された電力を蓄電できる。また、電力変換装置131は、電力変換装置128と同様に、コンバータ、インバータ及び変圧器等を含む。したがって、電力変換装置131は、直流と交流との間の変換、互いに対して周波数が異なる交流の間の変換、及び、変圧(昇圧及び降圧)等を行うことができる。このため、電力変換装置131は、需要家側電力系統123に供給された電力を、電池パック70Bへ蓄電可能な電力に変換できる。
【0256】
なお、電池パック70Bに蓄電された電力は、例えば、電気自動車等の車両の充電等に用いることができる。また、システム120には、自然エネルギー源が設けられてもよい。この場合、自然エネルギー源は、風力及び太陽光等の自然エネルギーによって、電力を生成する。そして、発電所121に加えて自然エネルギー源からも、電力網126を通して、電力が供給される。
【0257】
[実施形態に関する検証]
また、前述の実施形態に関連する検証を行った。以下、行った検証について、説明する。検証では、以下の実施例1~13、及び、比較例1~4の電池を作製した。そして、実施例1~13、及び、比較例1~4の電池について、試験を行った。なお、実施例1~13、及び、比較例1~5の試験条件及び試験結果については、表1及び表2を参照して、以下に説明する。
【0258】
【0259】
【0260】
(実施例1)
電池では、前述した実施形態等のように、複数の負極及び複数の正極が配列方向について交互に配列される電極群を形成した。なお、電極群では、配列方向について両外端には、負極を配置した。負極及び正極のそれぞれは、以下のように形成した。
【0261】
負極活物質含有層の形成においては、負極活物質として平均二次粒子径(直径)15μmのLi4Ti5O12を、導電剤として黒鉛粉末を、結着剤としてポリアクリルイミド(PAI)を、用いた。そして、負極活物質を80重量%、導電剤を10重量%、及び、結着剤を10重量%の割合で配合し、配合された負極活物質、導電剤及び結着剤をN-メチルピロリドン(NMP)の溶媒に分散することにより、スラリーを調製した。また、負極集電体としては、厚さ50μmの亜鉛箔を用いた。調製したスラリーを亜鉛箔に塗布し、塗布したスラリーを乾燥することにより、負極活物質含有層を形成した。そして、負極集電体及び負極活物質含有層をプレス加工することにより、負極を形成した。形成された負極では、負極集電体以外の部分での電極密度が、2.0g/cm3になった。また、負極は、前述ようにして、合計4枚形成した。
【0262】
なお、配列方向について電極群の両外端に配置される2つの負極のそれぞれについては、負極集電体の片面にのみスラリーを塗布し、負極集電体の片面にのみ負極活物質含有層を形成した。また、配列方向について電極群の両外端に配置される2つの負極以外の負極のそれぞれについて、負極集電体の両面にスラリーを塗布し、負極集電体の両面に負極活物質含有層を形成した。
【0263】
正極活物質含有層の形成においては、正極活物質として平均粒子径10μmのスピネル構造のリチウムマンガン酸化物(LiMn2O4)を、導電剤として黒鉛粉末を、結着剤としてポリアクリルイミド(PAI)を、用いた。そして、正極活物質を80重量%、導電剤を10重量%、及び、結着剤を10重量%の割合で配合し、配合された正極活物質、導電剤及び結着剤をN-メチルピロリドン(NMP)の溶媒に分散することにより、スラリーを調製した。また、正極集電体としては、厚さ12μmのチタン箔を用いた。調製したスラリーをチタン箔に塗布し、塗布したスラリーを乾燥することにより、正極活物質含有層を形成した。そして、正極集電体及び正極活物質含有層をプレス加工することにより、正極を形成した。形成された正極では、正極集電体以外の部分での電極密度が、3.0g/cm3になった。また、正極は、前述ようにして、合計3枚形成した。なお、全ての正極のそれぞれについて、正極集電体の両面にスラリーを塗布し、正極集電体の両面に正極活物質含有層を形成した。
【0264】
また、電池では、セパレータを形成するシートを、以下のようにして形成した。シートは、1つの混合層(固体電解質含有層)及び1つの支持体(多孔質層)を備える二層構造に形成した。そして、本実施例では、混合層は、固体電解質粒子及び高分子材料を含む固体電解質含有層に形成した。混合層の形成においては、固体電解質として平均二次粒子径(直径)15μmのLi4Ti5O12を、高分子材料としてポリビニルブラチール(PVB)を、用いた。そして、固体電解質を90重量%、及び、高分子材料を10重量%の割合で配合し、配合された固体電解質及び高分子材料をN-メチルピロリドン(NMP)の溶媒に分散することにより、スラリーを調製した。また、支持体としては、不織布を用いた。調製したスラリーを不織布に塗布し、塗布したスラリーを乾燥することにより、混合層を形成した。そして、混合層及び支持体をプレス圧力20kN、プレス温度120℃でプレス加工することにより、シートを形成した。なお、全てのシートのそれぞれについて、支持体の片面にのみスラリーを塗布し、支持体の片面にのみ混合層を形成した。
【0265】
シートのそれぞれは、
図5A及び
図5Bの一例のシート41A,41B等と同様に、4つの辺を有する略長方形状に形成した。そして、シートのそれぞれは、厚さ20μmに形成した。前述のようにシートを形成することにより、セパレータの透気係数は、1.0×10
-17m
2になった。なお、セパレータの透気係数は、第1の実施形態で前述したようにして、測定及び算出した。
【0266】
電極群の形成においては、前述のように形成したシートを用いて、第1のバッグ(バッグ26に相当)を、負極と同一の数だけ形成した。第1のバッグのそれぞれは、2枚のシートから
図5A及び
図5Bの一例と同様にして、形成した。この際、第1のバッグのそれぞれでは、混合層が支持体に対して内側に位置する状態に、2枚のシートを熱融着した。したがって、第1のバッグのそれぞれは、混合層(固体電解質含有層)が内表面を形成する状態に、形成した。また、第1のバッグのそれぞれには、
図5A及び
図5Bの一例と同様にしてバッグ開口を形成し、2枚のシートの融着部分を略U字状に形成した。また、第1のバッグのそれぞれでは、130℃で加熱プレスすることにより、ポリエチレンを介して、2枚のシートを熱融着した。
【0267】
そして、第1のバッグの内部のそれぞれに、負極の対応する1つを収納した。そして、負極のそれぞれが第1のバッグの対応する1つの内部に収納され、かつ、正極が全ての第1のバッグの外部に配置される状態で、負極(第1のバッグ)及び正極を交互に配列した。これにより、扁平形状の電極群を形成した。このため、本実施例では、第1の実施形態等と同様の電極群が形成された。以下、第1の実施形態等と同様の電極群の構造を、構造γ1と称する。
【0268】
そして、構造γ1に形成された電極群を、外装部材の収納空間に収納した。外装部材としては、ステンレスから形成される薄型の金属容器を用いた。金属容器は、肉厚が0.25mmの容器を用いた。そして、電極群を外装部材の収納空間に収納した状態で、第1のバッグのそれぞれの内部に、負極側電解質を注入した。また、外装部材の収納空間において、全ての第1のバッグの外部に正極側電解質を注入した。
【0269】
正極側電解質は、水にLiClを12mol/L溶解させた水系電解液を用いた。また、負極電解質は、水にLiClを12mol/L及びLiOHを1mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、正極側電解質の浸透圧は24RTとなり、負極側電解質の浸透圧は26RTとなった。したがって、正極側電解質の浸透圧は、負極側電解質の浸透圧に対して、92%となった。すなわち、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の大きい一方に対する正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の小さい一方の浸透圧比が、92%になった。なお、浸透圧は、体積の単位をm3、電解質での溶質の物質量の単位をmolとして、式(1)を用いて算出した。
【0270】
(実施例2)
実施例2では、セパレータを形成するシートの混合層(固体電解質含有層)において、固体電解質を90重量%、及び、高分子材料を10重量%の割合にし、固体電解質及び高分子の割合を実施例1と同一にした。ただし、本実施例では、混合層及び支持体のプレス加工において、プレス圧力を20kN、プレス温度を110℃とした。これにより、セパレータの透気係数は、1.0×10-14m2になり、実施例1に比べて高くなった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0271】
(実施例3)
実施例3では、セパレータを形成するシートの混合層(固体電解質含有層)において、固体電解質を90重量%、及び、高分子材料を10重量%の割合にし、固体電解質及び高分子の割合を実施例2と同一にした。ただし、混合層及び支持体のプレス加工において、プレス圧力を10kN、プレス温度を120℃とした。これにより、セパレータの透気係数は、1.0×10-16m2になり、実施例2に比べて低いが、実施例1に比べて高くなった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと等、実施例1及び実施例2と同様にして電池を形成した。
【0272】
(実施例4)
実施例4では、セパレータを形成するシートの混合層(固体電解質含有層)において、固体電解質と高分子材料との割合を実施例1乃至実施例3から変化させた。本実施例では、固体電解質を80重量%、及び、高分子材料を20重量%の割合にし、実施例1に比べて高分子材料の割合を高くした。そして、混合層及び支持体のプレス加工において、プレス圧力を20kN、プレス温度を120℃とした。これにより、セパレータの透気係数は、1.0×10-18m2になり、実施例1に比べて低くなった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと等、実施例1乃至実施例3と同様にして電池を形成した。
【0273】
(実施例5)
実施例5では、セパレータを形成するシートの混合層(固体電解質含有層)において、固体電解質を80重量%、及び、高分子材料を20重量%の割合にし、固体電解質及び高分子の割合を実施例4と同一にした。そして、混合層及び支持体のプレス加工において、プレス圧力を30kN、プレス温度を130℃とした。これにより、セパレータの透気係数は、1.0×10-20m2になり、実施例4に比べてさらに低くなった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと等、実施例1乃至実施例4と同様にして電池を形成した。
【0274】
(実施例6)
実施例6では、セパレータを形成するシートにおいて、混合層及び支持体を形成せず、固体電解質の板のみからシートを形成した。固体電解質の板のみから形成されるシートとしては、LATPのセラミック板を用いた。本実施例では、セパレータの透気係数は、0m2になった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成した等、実施例1乃至実施例5と同様にして電池を形成した。
【0275】
(実施例7)
実施例7では、実施例1と同様にして、第1のバッグ(バッグ26に相当)を、負極と同一の数だけ形成した。また、本実施例では、第1のバッグに加えて、第2のバッグ(バッグ46に相当)を、正極と同一の数だけ形成した。第2のバッグのそれぞれも、第1のバッグと同様に、実施例1で前述したシートを用いて、形成した。このため、第2のバッグのそれぞれも、2枚のシートから
図5A及び
図5Bの一例と同様にして、形成した。この際、第2のバッグのそれぞれでは、固体電解質含有層が支持体に対して外側に位置する状態に、2枚のシートを熱融着した。したがって、第2のバッグのそれぞれは、固体電解質含有層(混合層)が外表面を形成する状態に、形成した。また、第2のバッグのそれぞれには、バッグ開口を形成し、2枚のシートの融着部分を略U字状に形成した。また、第2のバッグのそれぞれでは、130℃で加熱プレスすることにより、ポリエチレンを介して、2枚のシートを熱融着した。
【0276】
そして、第1のバッグのそれぞれの内部に、負極の対応する1つを収納し、第2のバッグのそれぞれの内部に、正極の対応する1つを収納した。そして、負極のそれぞれが第1のバッグの対応する1つの内部に収納され、かつ、正極のそれぞれが第2のバッグのそれぞれに収納される状態で、負極(第1のバッグ)及び正極(第2のバッグ)を交互に配列した。これにより、扁平形状の電極群を形成した。このため、本実施例では、第2の実施形態等と同様の電極群が形成された。以下、第2の実施形態等と同様の電極群の構造を、構造γ2と称する。
【0277】
そして、構造γ2に形成された電極群を、外装部材の収納空間に収納した。外装部材としては、実施例1と同様の金属容器を用いた。そして、電極群を外装部材の収納空間に収納した状態で、第1のバッグのそれぞれの内部に負極側電解質を注入し、第2のバッグのそれぞれの内部に正極側電解質を注入した。前述の事項以外については、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0278】
(実施例8)
実施例8では、セパレータにおいて、第1のバッグ(バッグ26に相当)を1つのみ形成した。第1のバッグは、
図15A及び
図15Bの一例と同様にして、1枚のシートから形成した。第1のバッグを形成するシートは、
図15A及び
図15Bの一例のシート61と同様に、4つの辺を有する略長方形状に形成するとともに、第1の実施例と同様に混合層(固体電解質含有層)及び支持体を備える二層構造に形成した。
【0279】
第1のバッグでは、固体電解質含有層が支持体に対して内側に位置する状態に、シートの一部をシートの別の一部に熱融着した。したがって、第1のバッグは、固体電解質含有層(混合層)が内表面を形成する状態に、形成した。また、第1のバッグには、
図15A及び
図15Bの一例と同様にして、バッグ開口及びジグザグ部を形成し、シートにおける融着部分を形成した。また、第1のバッグでは、130℃で加熱プレスすることにより、ポリエチレンを介して、シートの一部をシートの別の一部に熱融着した。
【0280】
そして、第1のバッグの内部に、全ての負極を収納した。そして、全ての負極が第1のバッグの内部に収納され、かつ、正極が第1のバッグの外部に配置される状態で、負極及び正極を交互に配列した。この際、第1のバッグの内部において、ジグザグ部の凸部のそれぞれに、負極の対応する1つを配置した。また、第1のバッグの外部において、ジグザグ部の凹部のそれぞれが形成する隙間に、正極の対応する1つを配置した。前述のように正極及び負極を配置することにより、扁平形状の電極群を形成した。このため、本実施例では、第3の実施形態等と同様の電極群が形成された。以下、第3の実施形態等と同様の電極群の構造を、構造γ3と称する。
【0281】
そして、構造γ3に形成された電極群を、外装部材の収納空間に収納した。外装部材としては、実施例1と同様の金属容器を用いた。そして、電極群を外装部材の収納空間に収納した状態で、第1のバッグの内部に、負極側電解質を注入した。また、外装部材の収納空間において、第1のバッグの外部に正極側電解質を注入した。前述の事項以外については、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0282】
(実施例9)
実施例9では、実施例8と同様にして、第1のバッグ(バッグ26に相当)を、1つのみ形成した。また、本実施例では、第1のバッグに加えて、第2のバッグ(バッグ46に相当)を、1つのみ形成した。第2のバッグも、第1のバッグと同様に、実施例8で前述したシートを用いて、形成した。このため、第2のバッグも、1枚のシートから
図15A及び
図15Bの一例と同様にして、形成した。この際、第2のバッグでは、固体電解質含有層が支持体に対して外側に位置する状態に、シートの一部をシートの別の一部に熱融着した。したがって、第2のバッグは、固体電解質含有層(混合層)が外表面を形成する状態に、形成した。また、第2のバッグには、バッグ開口及びジグザグ部を形成し、シートにおける融着部分を形成した。また、第2のバッグでは、130℃で加熱プレスすることにより、ポリエチレンを介して、シートの一部をシートの別の一部に熱融着した。
【0283】
そして、第1のバッグの内部に、全ての負極を収納し、第2のバッグの内部に、全ての正極を収納した。そして、全て負極が第1のバッグの内部に収納され、かつ、全ての正極が第2のバッグの内部に収納される状態で、負極及び正極を交互に配列した。この際、第1のバッグの内部において、ジグザグ部の凸部のそれぞれに、負極の対応する1つを配置した。また、第2のバッグの内部において、ジグザグ部の凸部のそれぞれに、正極の対応する1つを配置した。前述のように正極及び負極を配置することにより、扁平形状の電極群を形成した。このため、本実施例では、第4の実施形態等と同様の電極群が形成された。以下、第4の実施形態等と同様の電極群の構造を、構造γ4と称する。
【0284】
そして、構造γ4に形成された電極群を、外装部材の収納空間に収納した。外装部材としては、実施例1及び実施例8等と同様の金属容器を用いた。そして、電極群を外装部材の収納空間に収納した状態で、第1のバッグのそれぞれの内部に負極側電解質を注入し、第2のバッグのそれぞれの内部に正極側電解質を注入した。前述の事項以外については、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例8と同様にして電池を形成した。
【0285】
(実施例10)
実施例10では、正極側電解質は、水にLiClを13mol/L溶解させた水系電解液を用いた。また、負極電解質は、実施例1と同様に、水にLiClを12mol/L及びLiOHを1mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、正極側電解質の浸透圧は26RTとなり、負極側電解質の浸透圧は26RTとなった。したがって、正極側電解質の浸透圧は、負極側電解質の浸透圧に対して、100%となった。すなわち、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の大きい一方に対する正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の小さい一方の浸透圧比が、100%になった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと、及び、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0286】
(実施例11)
実施例11では、正極側電解質は、水にLiClを6.5mol/L溶解させた水系電解液を用いた。また、負極電解質は、実施例1と同様に、水にLiClを12mol/L及びLiOHを1mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、正極側電解質の浸透圧は13RTとなり、負極側電解質の浸透圧は26RTとなった。したがって、正極側電解質の浸透圧は、負極側電解質の浸透圧に対して、50%となった。すなわち、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の大きい一方に対する正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の小さい一方の浸透圧比が、50%になった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと、及び、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0287】
(実施例12)
実施例12では、正極側電解質は、水にLiClを2.6mol/L溶解させた水系電解液を用いた。また、負極電解質は、実施例1と同様に、水にLiClを12mol/L及びLiOHを1mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、正極側電解質の浸透圧は5.2RTとなり、負極側電解質の浸透圧は26RTとなった。したがって、正極側電解質の浸透圧は、負極側電解質の浸透圧に対して、20%となった。すなわち、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の大きい一方に対する正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の小さい一方の浸透圧比が、20%になった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと、及び、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0288】
(実施例13)
実施例13では、正極側電解質は、水にLiClを1.3mol/L溶解させた水系電解液を用いた。また、負極電解質は、実施例1と同様に、水にLiClを12mol/L及びLiOHを1mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、正極側電解質の浸透圧は2.6RTとなり、負極側電解質の浸透圧は26RTとなった。したがって、正極側電解質の浸透圧は、負極側電解質の浸透圧に対して、10%となった。すなわち、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の大きい一方に対する正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の小さい一方の浸透圧比が、10%になった。前述の事項以外については、電極群を構造γ1に形成したこと、及び、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0289】
(比較例1)
比較例1では、実施例1と同様にして負極を1枚形成し、実施例1と同様にして正極を1枚形成した。なお、負極活物質含有層は、負極集電体の両面に形成し、正極活物質含有層は、正極集電体の両面に形成した。また、実施例1と同様に混合層(固体電解質含有層)及び支持体(不織布)を備える二層構造のシートを、2枚形成した。そして、負極、シート、正極及びシートの順に積層される積層体を形成した。そして、形成した積層体を渦巻き状に捲回した。この際、負極が最外周を形成する状態に、積層体を捲回した。そして、捲回された積層体を90℃で加熱プレスすることにより、扁平状の電極群を形成した。これにより、電極群では、セパレータにおいて負極と正極との間に介在する部位が、シートによって形成された。
【0290】
また、電極群の形成では、セパレータにおいて負極に対向する第1のセパレータ表面を前述の混合層が形成し、かつ、セパレータにおいて正極に対向する第2のセパレータ表面を支持体が形成する状態に、前述の積層及び捲回を行った。前述のようにして形成された電極群の構造を、構造γ0と称する。
【0291】
そして、構造γ0に形成された電極群を、外装部材の収納空間に収納した。外装部材としては、実施例1と同様の金属容器を用いた。構造γ0の電極群では、負極と正極との間にセパレータ(シート)が介在するが、実施例1~13とは異なり、セパレータによって、第1のバッグ及び第2のバッグは形成されない。このため、外装部材の収納空間において、電解質を負極側と正極側とに隔離できない。したがって、本比較例では、1種類の電解質のみを用い、負極側及び正極側で互いに対して共通の電解質を用いた。
【0292】
本比較例では、実施例1の正極側電解質と同様の電解質を用いた。すなわち、電解質は、水にLiClを12mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、電解質の浸透圧は24RTとなった。電解質は、外装部材の収納空間に電極群が配置された状態で、収納空間に注入した。前述の事項以外については、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、実施例1と同様にして電池を形成した。
【0293】
(比較例2)
比較例2でも、比較例1と同様に、電極群を構造γ0に形成した。このため、本比較例でも、1種類の電解質のみを用い、負極側及び正極側で互いに対して共通の電解質を用いた。ただし、本比較例では、実施例1の負極側電解質と同様の電解質を用いた。すなわち、電解質は、水にLiClを12mol/L及びLiOHを1mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、電解質の浸透圧は26RTとなった。前述の事項以外については、セパレータの透気係数が1.0×10-17m2になったこと等、比較例1と同様にして電池を形成した。
【0294】
(比較例3)
比較例3でも、比較例1及び比較例2と同様に、電極群を構造γ0に形成した。このため、本比較例でも、1種類の電解質のみを用い、負極側及び正極側で互いに対して共通の電解質を用いた。ただし、本比較例では、セパレータに前述の混合層(固体電解質含有層)を設けず、セパレータを、不織布(支持体)のみから形成した。このため、セパレータの透気係数は、1.0×10-12m2になった。前述の事項以外については水にLiClを12mol/L溶解させた水系電解液を電解質として用いたこと等、比較例1と同様にして電池を形成した。
【0295】
(比較例4)
比較例4でも、比較例1乃至比較例3と同様に、電極群を構造γ0に形成した。このため、本比較例でも、1種類の電解質のみを用い、負極側及び正極側で互いに対して共通の電解質を用いた。また、本比較例でも、比較例3と同様に、セパレータに前述の混合層を設けず、セパレータを、不織布(支持体)のみから形成した。ただし、本比較例では、実施例1の負極側電解質と同様の電解質を用いた。すなわち、電解質は、水にLiClを12mol/L及びLiOHを1mol/L溶解させた水系電解液を用いた。このため、電解質の浸透圧は26RTとなった。前述の事項以外については、セパレータの透気係数が1.0×10-12m2になったこと等、比較例3と同様にして電池を形成した。
【0296】
(試験内容)
試験では、前述の実施例1~13及び比較例1~4のそれぞれの電池について、以下のようにして、クーロン効率(充放電効率)を評価した。まず、実施例1~13及び比較例1~4のそれぞれの電池を前述のように形成した後、6時間待機した。そして、待機時間である6時間が経過した後、電池のそれぞれを、2.7Vまで充電した。充電は、25℃の環境下で、1C(100mAに相当)レートの定電流で行った。なお、電池それぞれの1Cは、負極活物質に基づいて換算した。2.7Vまで充電した後は、2.2Vまで放電した。放電も、25℃の環境下で、1Cレートの定電流で行った。そして、試験では、電池のそれぞれについて、1Cレートでの2.7Vまでの充電及び1Cレートでの2.2Vまでの放電を10サイクル行った。そして、10サイクル目の充電容量Q1及び放電容量Q2から、式(17)のようにして、クーロン効率ηを算出した。
【0297】
【0298】
また、試験では、前述の実施例1~13及び比較例1~4のそれぞれの電池について、以下のようにして、サイクル特性を評価した。試験では、クーロン効率の評価と同様に、実施例1~13及び比較例1~4のそれぞれの電池を前述のように形成した後、6時間待機した。そして、待機時間である6時間が経過した後、電池のそれぞれについて、25℃の環境下で、2.7Vまでの1Cレートの定電流での充電、及び、2.2Vまでの1Cレートの定電流での放電を、繰り返し行った。2.7Vまでの充電及び2.2Vまでの放電を繰り返し行っている際には、電池のそれぞれについて、10サイクル目の放電容量を測定した。そして、10サイクル目の放電容量に対して放電容量が80%まで減少するサイクル数を、サイクル特性として取得した。
【0299】
(試験結果及び考察)
実施例1~13では、比較例1~4に比べて、クーロン効率及びサイクル特性の両方が向上した。したがって、電解質を負極側と正極側とにセパレータによって隔離し、かつ、正極側電解質及び負極側電解質に適宜の電解質を用いることにより、クーロン効率及びサイクル特性が向上することが立証された。このため、電解質を負極側と正極側とにセパレータによって隔離し、かつ、正極側電解質及び負極側電解質に適宜の電解質を用いることにより、電解質の副反応が安定して抑制されることが実証された。
【0300】
また、実施例1~13より、電解質を負極側と正極側とにセパレータによって隔離する構成では、セパレータの透気係数を1.0×10-14m2以下にすることにより、クーロン効率及びサイクル特性が高く確保されることが実証された。したがって、透気係数1.0×10-14m2以下のセパレータによって電解質を負極側と正極側とに隔離することにより、負極側電解質及び正極側電解質がセパレータを透過し難くなり、負極側電解質及び正極側電解質が混ざり難くなることが実証された。このため、透気係数が1.0×10-14m2以下のセパレータによって電解質を負極側と正極側とに隔離し、かつ、正極側電解質及び負極側電解質に適宜の電解質を用いることにより、電解質の副反応がより安定して抑制されることが実証された。
【0301】
また、実施例1~6より、他の条件が同一ならば、セパレータの透気係数が小さいほど、電池のクーロン効率及びサイクル特性が向上することが実証された。したがって、セパレータの透気係数が小さいほど、負極側電解質及び正極側電解質がセパレータを透過し難くなり、電解質の副反応がより安定して抑制されることが実証された。
【0302】
また、実施例1及び実施例7~9より、他の条件が同一ならば、電極群を構造γ3,γ4のいずれかに形成した場合は、電極群を構造γ1,γ2のいずれかに形成した場合に比べて、電池のサイクル特性が向上することが実証された。したがって、1つの第1のバッグに複数の第1の電極及び第1の電解質が収納される構造γ3,γ4のそれぞれでは、第1の電極において前述したドライアップが発生し難くなることが立証された。
【0303】
また、実施例1及び実施例10~13より、他の条件が同一ならば、正極側電解質の浸透圧の負極側電解質の浸透圧に対する比率である浸透圧比(ここでは(小さい一方の浸透圧)/(大きい一方の浸透圧))が大きい(100%に近づく)ほど、電池のクーロン効率及びサイクル特性が向上することが実証された。特に、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の小さい一方を、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の大きい一方に対して10%以上にすることにより、電池のクーロン効率及びサイクル特性が高く確保されることが実証された。すなわち、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の小さい一方を、正極側電解質及び負極側電解質の浸透圧の中の大きい一方に対して10%以上にすることにより、負極側電解質及び正極側電解質がセパレータを透過し難くなり、負極側電解質及び正極側電解質が混ざり難くなることが実証された。
【0304】
前述の少なくとも一つの実施形態又は実施例の電池によれば、外装部材の収納空間では、セパレータのバッグの内部に第1の電極が収納され、バッグの内部では、第1の電極に第1の電解質が保持される。そして、第2の電極は、収納空間においてバッグの外部に配置され、収納空間においてバッグの外部では、第2の電極に第2の電解質が保持される。これにより、電解質の副反応が安定して抑制される電池を提供することができる。
【0305】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
以下、本願の原出願の当初の特許請求の範囲に記載された事項を付記する。
(付記項1)
内部に収納空間を有する外装部材と、
前記外装部材の前記収納空間に収納され、透気係数が1.0×10
-14
m
2
以下になるセパレータであって、第1のバッグを備えるセパレータと、
前記収納空間において前記セパレータの前記第1のバッグの内部に収納される第1の電極と、
前記第1のバッグの内部において前記第1の電極に保持される第1の電解質と、
前記第1の電極とは反対の極性であり、前記収納空間において前記第1のバッグの外部に配置される第2の電極と、
前記収納空間において前記第1のバッグの外部で前記第2の電極に保持される第2の電解質と、
を具備する電池。
(付記項2)
前記第1の電極及び前記第2の電極のそれぞれを複数具備し、
前記セパレータは、前記第1のバッグを前記第1の電極と同一の数備え、
前記セパレータの前記第1のバッグのそれぞれの内部には、前記第1の電極の対応する1つが収納され、
前記外装部材の前記収納空間では、前記第1の電極及び前記第2の電極が交互に配列され、
配列方向について互いに対して隣り合う前記第1の電極と前記第2の電極との間には、前記セパレータの少なくとも一部が介在する、
付記項1の電池。
(付記項3)
前記セパレータは、前記第2の電極が内部に収納される第2のバッグを備え、
前記第2のバッグは、前記外装部材の前記収納空間において前記第1のバッグの外部に形成され、
前記第2の電解質は、前記第2のバッグの内部において前記第2の電極に保持される、
付記項1又は2の電池。
(付記項4)
内部に収納空間を有する外装部材と、
第1のバッグを備え、前記外装部材の前記収納空間に収納されるセパレータと、
前記収納空間において前記セパレータの前記第1のバッグの内部に収納される複数の第1の電極と、
前記第1のバッグの内部において複数の前記第1の電極に保持される第1の電解質と、
前記第1の電極とは反対の極性であり、前記収納空間において前記第1のバッグの外部に配置される複数の第2の電極と、
前記収納空間において前記第1のバッグの外部で前記第2の電極の複数に保持される第2の電解質と、
を具備する電池。
(付記項5)
前記セパレータは、前記第2の電極の複数が内部に収納される第2のバッグを備え、
前記第2のバッグは、前記外装部材の前記収納空間において前記第1のバッグの外部に形成され、
前記第2の電解質は、前記第2のバッグの内部において複数の前記第2の電極に保持される、
付記項4の電池。
(付記項6)
前記外装部材の前記収納空間では、前記第1の電極及び前記第2の電極が交互に配列され、
配列方向について互いに対して隣り合う前記第1の電極と前記第2の電極との間には、前記セパレータの一部が介在する、
付記項4又は5の電池。
(付記項7)
前記セパレータの透気係数は、1.0×10
-14
m
2
以下である、付記項4乃至6のいずれか1項の電池。
(付記項8)
前記セパレータは、前記第1の電極及び前記第2の電極の一方である負極と対向する第1のセパレータ表面と、前記第1の電極及び前記第2の電極の前記負極とは別の一方である正極と対向する第2のセパレータ表面とを有し、
前記セパレータは、粒子及び高分子材料を含む組成物層を備え、
前記セパレータの前記第1のセパレータ表面は、前記組成物層から形成される、
付記項1乃至7のいずれか1項の電池。
(付記項9)
前記組成物層は、固体電解質、酸化アルミニウム及びシリカからなる群れより選ばれる少なくとも1つを前記粒子として含む、付記項8の電池。
(付記項10)
前記セパレータは、前記第1の電極及び前記第2の電極の一方である負極と対向する第1のセパレータ表面と、前記第1の電極及び前記第2の電極の前記負極とは別の一方である正極と対向する第2のセパレータ表面とを有し、
前記セパレータは、固体電解質を含む組成物層を備え、
前記セパレータの前記第1のセパレータ表面は、前記組成物層から形成される、
付記項1乃至7のいずれか1項の電池。
(付記項11)
前記セパレータは、支持体をさらに備え、
前記組成物層は、前記支持体に対して、少なくとも前記負極が位置する側に配置される、
付記項8乃至10のいずれか1項の電池。
(付記項12)
前記組成物層は、前記支持体に対して、前記負極が位置する側、及び、前記正極が位置する側の両方に配置され、
前記セパレータの前記第1のセパレータ表面及び前記第2のセパレータ表面の両方は、前記組成物層から形成される、
付記項11の電池。
(付記項13)
前記支持体は、多孔質層を含む、付記項11又は12の電池。
(付記項14)
前記第1の電解質の浸透圧及び前記第2の電解質の浸透圧の小さい一方は、前記第1の電解質の前記浸透圧及び前記第2の電解質の前記浸透圧の大きい別の一方に対して、10%以上100%以下となる、付記項1乃至13のいずれか1項の電池。
(付記項15)
前記第1の電解質及び前記第2の電解質のそれぞれは、水系溶媒を含む電解質である、付記項1乃至14のいずれか1項の電池。
(付記項16)
前記第1の電解質及び前記第2の電解質は、互いにpHが異なる、付記項1乃至14のいずれか1項の電池。
(付記項17)
前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中の一方である正極側電解質は、前記第1の電解質及び前記第2の電解質の中で他方である負極側電解質に比べて、pHが小さい、付記項16の電池。
(付記項18)
付記項1乃至17のいずれか1項の電池を1つ以上具備する、電池パック。
(付記項19)
前記電池に電気的に接続される外部端子と、
保護回路と、
をさらに具備する、付記項18の電池パック。
(付記項20)
前記電池を複数具備し、
複数の前記電池は、互いに対して、電気的に直列に接続される、電気的に並列に接続される、又は、直列接続及び並列接続を組み合わせて電気的に接続される、
付記項18又は19の電池パック。
(付記項21)
付記項18乃至20のいずれか1項の電池パックを具備する、車両。
(付記項22)
付記項18乃至20のいずれか1項の電池パックを具備する、定置用電源。
【符号の説明】
【0306】
1…電池、2…外装部材、3…電極群、5…収納空間、6…負極、7…正極、8…セパレータ、26…バッグ(第1のバッグ)、31…電解質(第1の電解質)、32…電解質(第2の電解質)、35…第1のセパレータ表面、36…第2のセパレータ表面、37,57…組成物層、38,58…支持体、46…バッグ(第2のバッグ)。