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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】光電変換装置及び撮像システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/773 20230101AFI20240213BHJP
   H04N 25/633 20230101ALI20240213BHJP
【FI】
H04N25/773
H04N25/633
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022151184
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2018050662の分割
【原出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2022171975
(43)【公開日】2022-11-11
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】黒田 享裕
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0290680(US,A1)
【文献】国際公開第86/003918(WO,A1)
【文献】特表2013-535931(JP,A)
【文献】特開2001-008104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光子の入射に応じた信号を出力するアバランシェフォトダイオードと、前記アバランシェフォトダイオードから出力される前記信号に基づくパルスの数に応じた信号を生成する信号生成部と、を含む複数の画素を有し
記複数の画素は、前記信号生成部が生成する信号の上限値が第1の値である第1画素と、前記信号生成部が生成する信号の上限値が前記第1の値よりも小さい第2の値である第2画素と、を含む
ことを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記アバランシェフォトダイオードから出力される前記信号に基づくパルスの数をカウントするカウンタ回路を有し、
前記第2画素の前記カウンタ回路のビット数は、前記第1画素の前記カウンタ回路のビット数よりも小さい
ことを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項3】
前記信号生成部は、前記アバランシェフォトダイオードから出力される前記信号に基づくパルスの数をカウントするカウンタ回路を有し、
前記第2画素の前記信号生成部は、前記カウンタ回路の出力値を閾値と比較する演算回路を更に有する
ことを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項4】
前記演算回路は、前記出力値が前記閾値を超えた場合に、前記出力値を、前記閾値以下の所定の値に置き換える
ことを特徴とする請求項3記載の光電変換装置。
【請求項5】
前記演算回路は、前記出力値が前記閾値を超えた場合に、前記カウンタ回路のカウント値をリセットする
ことを特徴とする請求項3記載の光電変換装置。
【請求項6】
前記閾値は、欠陥画素の判定基準に基づいて設定されている
ことを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項7】
前記第1画素は、受光領域に配されており、
前記第2画素は、遮光手段が設けられたオプティカルブラック領域に配されている
ことを特徴とする請求項3乃至6のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項8】
前記第2画素は、前記第1画素のアバランシェフォトダイオードよりも平面視における受光面積の小さいアバランシェフォトダイオードを有する
ことを特徴とする請求項1記載の光電変換装置。
【請求項9】
前記第2画素は、前記第1画素のアバランシェフォトダイオードよりも平面視における受光面積の小さいアバランシェフォトダイオードを有する
ことを特徴とする請求項2記載の光電変換装置
【請求項10】
対をなす2つの前記第2画素のうちの一方の前記信号生成部は、一方の前記第2画素の前記カウンタ回路の出力値と他方の前記第2画素の前記カウンタ回路の出力値との差分値を出力する演算回路を更に有する
ことを特徴とする請求項記載の光電変換装置。
【請求項11】
前記第2画素の受光感度は、前記第1画素の受光感度よりも低い
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項12】
前記複数の画素の前記アバランシェフォトダイオードが設けられた第1の基板と、
前記複数の画素の前記信号生成部が設けられた第2の基板と、を有する
ことを特徴とする請求項乃至11のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項13】
前記複数の画素のそれぞれは出力線を介して信号処理回路に接続され、
前記複数の画素のそれぞれにおいて、前記カウンタ回路は前記アバランシェフォトダイオードと前記出力線との間の電気的経路に設けられる
ことを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の光電変換装置。
【請求項14】
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置から出力される信号を処理する信号処理部と
を有することを特徴とする撮像システム。
【請求項15】
移動体であって、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の光電変換装置と、
前記光電変換装置からの信号に基づく視差画像から、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報に基づいて前記移動体を制御する制御手段と
を有することを特徴とする移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置及び撮像システムに関する。
【背景技術】
【0002】
受光部に到来する光子の数をデジタル的に計数し、その計数値をデジタル信号として画素から出力する光電変換装置が知られている。特許文献1には、光子の計数値をデジタル信号として出力する画素を複数配列してなる光電変換装置が記載されている。特許文献1では、受光部を設けた基板と画素回路部を設けた基板との積層構造にすることにより、光電変換装置の小型化や取得画像の高精細化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0200222号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光電変換装置の更なる高機能化のため、画素内において種々の信号処理を行うことが求められている。しかしながら、画素内に信号処理回路を追加するためには画素回路の回路規模やレイアウト面積を増大する必要があり、光電変換装置の小型化や取得画像の高精細化の妨げとなっていた。
【0005】
本発明の目的は、画素回路の規模を大きくすることなく高機能化を実現しうる光電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、光子の入射に応じた信号を出力するアバランシェフォトダイオードと、前記アバランシェフォトダイオードから出力される前記信号に基づくパルスの数に応じた信号を生成する信号生成部と、を含む複数の画素を有し、前記複数の画素は、前記信号生成部が生成する信号の上限値が第1の値である第1画素と、前記信号生成部が生成する信号の上限値が前記第1の値よりも小さい第2の値である第2画素と、を含む光電変換装置が提供される

【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、画素回路の規模を大きくすることなく光電変換装置の高機能化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態による光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態による光電変換装置の第1画素の構成を説明するための概念図である。
図3】本発明の第1実施形態による光電変換装置の第2画素の構成を説明するための概念図である。
図4】本発明の第1実施形態による光電変換装置の第1画素の構成例を示す回路図である。
図5】本発明の第1実施形態による光電変換装置の第2画素の構成例を示す回路図である。
図6】本発明の第1実施形態による光電変換装置の駆動方法を示すタイミングチャートである。
図7】本発明の第1実施形態による光電変換装置の概略断面図である。
図8】本発明の第2実施形態による光電変換装置の第2画素の構成例を示す回路図である。
図9】本発明の第3実施形態による光電変換装置の第2画素の構成例を示す回路図である。
図10】本発明の第4実施形態による光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図11】本発明の第4実施形態による光電変換装置の第2画素の構成例を示す回路図である。
図12】本発明の第5実施形態による光電変換装置の第2画素の構成例を示す回路図である。
図13】全減算器の動作を説明する真理値表及び回路図である。
図14】本発明の第6実施形態による撮像システムの概略構成を示すブロック図である。
図15】本発明の第7実施形態による撮像システム及び移動体の構成例を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による光電変換装置について、図1乃至図7を用いて説明する。
【0010】
図1は、本実施形態による光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態による光電変換装置100は、図1に示すように、画素領域10と、垂直選択回路3と、信号処理回路4と、水平選択回路5と、出力回路6と、制御回路7と、を含む。
【0011】
画素領域10には、複数行及び列方向に渡ってマトリクス状に配された複数の単位画素Pが設けられている。図1には、第0行から第5行までの6行と、第0列から第5列までの6列に配された36個の単位画素Pを、行番号及び列番号を示す符号とともに示している。例えば、第1行、第4列に配された単位画素Pには、「P14」の符号を付している。なお、画素領域10を構成する画素アレイの行数及び列数は、特に限定されるものではない。
【0012】
画素領域10は、受光領域11と、オプティカルブラック領域(以下、「OB領域」と表記する)12と、を含む。受光領域11は、図1の例では、単位画素P11から単位画素P55までの5行×5列の単位画素Pが配された領域に設けられている。OB領域12は、典型的には、受光領域11の周囲の2辺に沿って配される。図1の例では、OB領域12は、第0行の単位画素Pと第0列の単位画素Pとを含むL字型の領域に配されている。OB領域12は、入射光を遮る遮光手段、例えば遮光層を備えている。なお、受光領域11及びOB領域12の配置は、特に限定されるものではない。
【0013】
画素領域10の画素アレイの各行には、第1の方向(図1において横方向)に延在して、制御線PVSELが配されている。制御線PVSELは、第1の方向に並ぶ単位画素Pにそれぞれ接続され、これら単位画素Pに共通の信号線をなしている。制御線PVSELの延在する第1の方向は、行方向或いは水平方向と表記することがある。なお、図1には、制御線PVSELを、行番号を示す符号とともに表している。例えば、第1行の制御線には、「PVSEL[1]」の符号を付している。
【0014】
各行の制御線PVSELは、垂直選択回路3に接続されている。垂直選択回路3は、単位画素P内の信号生成回路(図示せず)を駆動するための制御信号を、制御線PVSELを介して単位画素Pに供給する回路部である。
【0015】
画素領域10の画素アレイの各列には、第1の方向と交差する第2の方向(図1において縦方向)に延在して、出力線POUTが配されている。出力線POUTは、第2の方向に並ぶ単位画素Pにそれぞれ接続され、これら単位画素Pに共通の信号線をなしている。出力線POUTの延在する第2の方向は、列方向或いは垂直方向と表記することがある。なお、図1には、出力線POUTを、列番号を示す符号とともに表している。例えば、第4列の出力線には、「POUT4」の符号を付している。出力線POUTの各々は、nビットのデジタル信号を出力するためのn本の信号線を備えている。
【0016】
出力線POUTは、信号処理回路4に接続されている。信号処理回路4は、画素領域10の画素アレイの各列に対応してそれぞれ設けられており、対応する列の出力線POUTに接続されている。信号処理回路4は、対応する列の出力線POUTを介して単位画素Pから読み出された信号を保持する機能を備える。単位画素Pから出力される信号は、出力線POUTのn本の信号線を介して入力されるnビットの信号であるため、信号処理回路4の各々は各ビットの信号を保持するため少なくともn個の保持部を有する。
【0017】
水平選択回路5は、信号処理回路4から信号を読み出すための制御信号を信号処理回路4に供給する回路部である。水平選択回路5は、各列の信号処理回路4に、制御線PHSELを介して制御信号を供給する。水平選択回路5から制御信号を受信した信号処理回路4は、保持部に保持している信号を、水平出力線HSIGを介して出力回路6へと出力する。なお、図1には、制御線PHSELを、列番号を示す符号とともに表している。例えば、第4列の制御線には、「PHSEL[4]」の符号を付している。水平出力線HSIGは、nビットのデジタル信号を出力するためのn本の信号線を備えている。
【0018】
出力回路6は、水平出力線HSIGを介して供給された信号を、出力信号SOUTとして光電変換装置100の外部へ出力するための回路部である。制御回路7は、垂直選択回路3、信号処理回路4、水平選択回路5、出力回路6の動作やそのタイミングを制御する制御信号を供給するための回路部である。なお、垂直選択回路3、信号処理回路4、水平選択回路5、出力回路6の動作やそのタイミングを制御する制御信号の少なくとも一部は、光電変換装置100の外部から供給してもよい。
【0019】
ここで、本実施形態による光電変換装置100は、画素領域10に配された複数の単位画素Pとして、第1画素P1と、第2画素P2と、を含む。例えば、第1画素P1は受光領域11に配される単位画素Pであり、第2画素P2はOB領域12に配される単位画素Pである。
【0020】
図2及び図3は、本実施形態による光電変換装置100における第1画素P1及び第2画素P2の構成を説明するための概念図である。第1画素P1は、図2に示すように、受光部20aと、信号生成部30aと、を含む。受光部20aは、光の入射を受けて、光子入射の有無を示すパルスを出力する。信号生成部30aは、受光部20aから出力されたパルス数を積分又は累積加算した累積信号を生成する。同様に、第2画素P2は、図3に示すように、受光部20bと、信号生成部30bと、を含む。受光部20bは、光の入射を受けて、光子入射の有無を示すパルスを出力する。信号生成部30bは、受光部20bから出力されたパルス数を積分又は累積加算した累積信号を生成する。
【0021】
第2画素P2の信号生成部30bは、回路規模やレイアウト面積が、第1画素P1の信号生成部30aよりも小さくなるように構成されている。その一手段として、本実施形態では、第2画素P2の信号生成部30bが生成する信号の上限値が第1画素P1の信号生成部30aが生成する信号の上限値よりも小さくなるように、信号生成部30a,30bを構成している。例えば、信号生成部30aは、nビットのカウンタ回路を含み、nビットの信号を出力するように構成される。これに対し、信号生成部30bは、nビットよりも少ないmビットのカウンタ回路を含み、mビットの信号を出力するように構成される。
【0022】
第1画素P1及び第2画素P2の具体的な構成例について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、第1画素P1の構成例を示す回路図である。図5は、第2画素P2の構成例を示す回路図である。
【0023】
第1画素P1は、図4に示すように、受光部20aと、信号生成部30aと、を含む。受光部20aは、アバランシェ増幅型のダイオードDaと、P型MOSトランジスタにより構成されるクエンチ素子Qaと、インバータ回路INVaと、を含む。信号生成部30aは、4ビットのカウンタ回路を構成する4つのT-フリップフロップ回路FFa0,FFa1,FFa2,FFa3と、N型MOSトランジスタにより構成されるスイッチSWa0,SWa1,SWa2,SWa3と、を含む。
【0024】
ダイオードDaのアノードは基準電圧ノード(電圧VSS)に接続され、ダイオードDaのカソードはクエンチ素子Qaを構成するP型MOSトランジスタのドレインに接続されている。クエンチ素子Qaを構成するP型MOSトランジスタのソースは、電源電圧ノード(電圧VDD)に接続されている。インバータ回路INVaの入力端子は、ダイオードDaとクエンチ素子Qaとの間の接続ノードに接続されている。受光部20aの出力端子でもあるインバータ回路INVaの出力端子は、信号生成部30aの入力端子であるT-フリップフロップ回路FFa0の入力端子Tに接続されている。
【0025】
T-フリップフロップ回路FFa0の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFa1の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFa0の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFa1の入力端子Tとの間の接続ノードは、スイッチSWa0を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。T-フリップフロップ回路FFa1の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFa2の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFa1の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFa2の入力端子Tとの間の接続ノードは、スイッチSWa1を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。T-フリップフロップ回路FFa2の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFa3の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFa2の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFa3の入力端子Tとの間の接続ノードは、スイッチSWa2を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。T-フリップフロップ回路FFa3の出力端子Qは、スイッチSWa3を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。
【0026】
クエンチ素子Qaを構成するP型MOSトランジスタのゲートは、所定のクエンチ抵抗を得るための電圧VQNCを供給する電源に接続されている。スイッチSWa0,SWa1,SWa2,SWa3を構成するN型MOSトランジスタのゲートは、制御線PVSELに接続されている。スイッチSWa0,SWa1,SWa2,SWa3を構成するN型MOSトランジスタのドレインは、出力線POUTに接続されている。T-フリップフロップ回路FFa0,FFa1,FFa2,FFa3のクリア端子CLRは垂直選択回路3に接続されており、垂直選択回路3から制御信号PCLRを供給できるようになっている。
【0027】
ダイオードDaには、クエンチ素子Qaを介してブレイクダウン電圧以上の大きさの逆バイアス電圧が印加されている。これにより、ダイオードDaは、ガイガーモードで動作するように設定されている。ダイオードDaに光子が入射すると、アバランシェ現象により複数の電子(及び正孔)が発生する。アバランシェ現象により発生した電流がクエンチ素子Qaに流れることでクエンチ素子Qaによる電圧降下が起こり、ダイオードDaの動作領域はガイガーモードから外れる。ダイオードDaのアバランシェ現象が停止すると、クエンチ素子Qaによる電圧降下が元に戻り、ダイオードDaの動作領域は再びガイガーモードとなる。インバータ回路INVaは、ダイオードDaのカソードの電位の変化を反転増幅する。このような構成により、受光部20aは、光子入射の有無を電圧パルス信号(信号PIXOUT)として出力することができる。
【0028】
T-フリップフロップ回路FFa0~FFa3が縦続接続されてなる4ビットのカウンタ回路は、受光部20aから供給される信号PIXOUTに重畳するパルスをカウントする。スイッチSWa0~SWa3は、制御線PVSELから供給される制御信号に応じてオンになることにより、T-フリップフロップ回路FFa0~FFa3により構成されるカウンタ回路の出力信号を、出力線POUTへと出力する。T-フリップフロップ回路FFa0~FFa3により構成されるカウンタ回路は、垂直選択回路3から供給される制御信号PCLRにより、カウンタ出力信号をリセットするように構成されている。
【0029】
第2画素P2は、図5に示すように、受光部20bと、信号生成部30bと、を含む。受光部20bは、アバランシェ増幅型のダイオードDbと、P型MOSトランジスタにより構成されるクエンチ素子Qbと、インバータ回路INVbと、を含む。信号生成部30bは、2ビットのカウンタ回路を構成する2つのT-フリップフロップ回路FFb0,FFb1と、N型MOSトランジスタにより構成されるスイッチSWb0,SWb1と、を含む。
【0030】
ダイオードDbのアノードは基準電圧ノード(電圧VSS)に接続され、ダイオードDbのカソードはクエンチ素子Qbを構成するP型MOSトランジスタのドレインに接続されている。クエンチ素子Qbを構成するP型MOSトランジスタのソースは、電源電圧ノード(電圧VDD)に接続されている。インバータ回路INVbの入力端子は、ダイオードDbとクエンチ素子Qbとの間の接続ノードに接続されている。受光部20bの出力端子でもあるインバータ回路INVbの出力端子は、信号生成部30bの入力端子であるT-フリップフロップ回路FFb0の入力端子Tに接続されている。
【0031】
T-フリップフロップ回路FFb0の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb0の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tとの間の接続ノードは、スイッチSWb0を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb1の出力端子Qは、スイッチSWb1を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。
【0032】
クエンチ素子Qbを構成するP型MOSトランジスタのゲートは、電圧VQNCのノードに接続されている。スイッチSWb0,SWb1を構成するN型MOSトランジスタのゲートは、制御線PVSELに接続されている。スイッチSWb0,SWb1を構成するN型MOSトランジスタのドレインは、出力線POUTに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1のクリア端子CLRは垂直選択回路3に接続されており、垂直選択回路3から制御信号PCLRを供給できるようになっている。
【0033】
第2画素P2は、信号生成部30bを構成するカウンタ回路が2ビットのカウンタ回路であるほかは、第1画素P1と同様である。T-フリップフロップ回路FFb0~FFb1が縦続接続されてなる2ビットのカウンタ回路は、受光部20bから供給される信号PIXOUTのパルスをカウントする。スイッチSWb0~SWb1は、制御線PVSELから供給される制御信号に応じてオンになることにより、T-フリップフロップ回路FFb0~FFb1により構成されるカウンタ回路の出力信号を、出力線POUTへと出力する。T-フリップフロップ回路FFb0~FFb1により構成されるカウンタ回路は、垂直選択回路3から供給される制御信号PCLRにより、カウンタ出力信号をリセットするように構成されている。
【0034】
次に、本実施形態による光電変換装置の動作について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態による光電変換装置の動作を示すタイミングチャートである。図6には、垂直選択回路3から供給される制御信号PCLR,PVSEL[0],PVSEL[1],PVSEL[5]、水平選択回路5から供給される制御信号PHSEL[0],PHSEL[1],PHSEL[5]、出力信号SOUTを示している。
【0035】
時刻t1において、垂直選択回路3は、制御信号PCLRをハイレベルからローレベルに制御する。これにより、第1画素P1及び第2画素P2を含む総ての単位画素Pのカウンタ出力信号がリセットされる。
【0036】
次いで、制御信号PCLRをハイレベルに戻してから時刻t2までの期間において、各単位画素Pの受光部20は、入射した光子の数に応じた数のパルスを含む信号PIXOUTを出力する。そして、各単位画素Pの信号生成部30は、受光部20から供給される信号PIXOUTに重畳するパルスの数をカウントする。
【0037】
次いで、時刻t2において、垂直選択回路3は、制御信号PVSEL[0]をローレベルからハイレベルへと制御し、第0行に属する単位画素PのスイッチSWa0~SWa3又はスイッチSWb0~SWb1をオンにする。これにより、第0行の各列の単位画素Pの信号生成部30でカウントしたカウント値を示す信号が、対応する列の出力線POUTを介して対応する列の信号処理回路4へと出力される。各列の信号処理回路4は、対応する列の単位画素Pから出力された信号を保持する。
【0038】
次いで、制御信号PVSEL[0]をローレベルに制御した後の時刻t3から時刻t4の期間において、水平選択回路5は、各列の信号処理回路4に対応する制御信号PHSEL[0],PHSEL[1],…,PHSEL[5]を、順次ハイレベルへと制御する。これにより、各列の信号処理回路4に保持されていた信号(データD00~D05)が、出力信号SOUTとして、水平出力線HSIG及び出力回路6を介して外部へと順次出力される。なお、出力信号SOUTのデータD00~D05は、図1における単位画素P00~P55の出力に対応している。
【0039】
この後、時刻t2から時刻t4の期間の動作と同様にして、第1行から第5行に属する単位画素Pからの信号の読み出しを行単位で順次行う。例えば、時刻t4から時刻t6の期間において、第1行の各列の単位画素Pから読み出した信号(データD10~D15)を、出力信号SOUTとして順次出力する。また、時刻t6から時刻t8の期間において、第5行の各列の単位画素Pから読み出した信号(データD50~D55)を、出力信号SOUTとして順次出力する。
【0040】
このように、本実施形態による光電変換装置100は、回路規模やレイアウト面積が相対的に大きい第1画素P1と、回路規模やレイアウト面積が相対的に小さい第2画素P2と、を含む。画素領域10を構成する複数の単位画素Pとして、第1画素P1及び第2画素P2を適宜選択することにより、チップ面積の縮小化や高機能化が可能である。
【0041】
例えば上述のように、第2画素P2の信号生成部30bのカウンタ回路のビット数を第1画素P1の信号生成部30aのカウンタ回路のビット数よりも小さくすることで、第2画素P2の回路規模やレイアウト面積を相対的に小さくすることができる。この場合、一例として、受光領域11には第1画素P1を配置し、OB領域12には第2画素P2を配置することができる。OB領域12には光入射がほとんどないため、カウンタ回路のビット数の少ない第2画素P2で対応が可能である。したがって、OB領域12に配置する単位画素Pのレイアウト面積を縮小した分、チップ面積の縮小化、有効画素数の増加や新たな回路を追加することによる高機能化等が可能である。
【0042】
次に、本実施形態による光電変換装置100の具体的な構成例について、図7を用いて説明する。図7は、本実施形態による光電変換装置の構造を示す概略断面図である。図7には、図1の単位画素Pに対応する2画素分の断面構造を示している。
【0043】
光電変換装置100は、第1のチップ101と、第2のチップ102と、を含む。第1のチップ101と第2のチップ102とは、接合面103において接合されている。第1のチップ101には、単位画素Pの構成要素のうち、ダイオードDが配される。第2のチップ102には、単位画素Pの構成要素のうち、単位画素PのダイオードD以外の他の構成要素、すなわち、クエンチ素子Q、インバータ回路INV、信号生成部30が配される。図7には、単位画素Pのこれら構成要素のうち、ダイオードDとクエンチ素子Qのみを示している。
【0044】
第1のチップ101は、第1の基板104を有する。第1の基板104は、接合面103側の面である主面105と、その反対側の面である裏面106と、有する。第1の基板104内には、ウェル113と、ウェル113間を分離する素子分離領域117と、が設けられている。ウェル113内の主面105側には、主面105に接するN型領域114と、N型領域114の底部に接するP型領域115とのpn接合により構成されるダイオードDが設けられている。第1の基板104の主面105上には、配線層122や配線層123を含む多層配線構造107が設けられている。ダイオードDと配線層122との間や、配線層122と配線層123との間は、例えばタングステンからなるコンタクトプラグ112によって電気的に接続されている。第1の基板104の裏面106上には、平坦化層などを含むカラーフィルタ層120と、マイクロレンズ121と、が設けられている。
【0045】
第2のチップ102は、第2の基板108を有する。第2の基板108は、接合面103側の面である主面109と、その反対側の面である裏面110と、を有する。第2の基板108内の主面109側には、ウェル124と、ウェル124間を分離する素子分離領域127と、が設けられている。ウェル124には、ソース/ドレイン領域125とゲート電極126とを含み、クエンチ素子Qを構成するP型MOSトランジスタが設けられている。第2の基板108の主面109上には、配線層128や配線層129を含む多層配線構造111が設けられている。クエンチ素子Qの各端子と配線層128との間や、配線層128と配線層129との間は、例えばタングステンからなるコンタクトプラグ112によって電気的に接続されている。
【0046】
第1のチップ101と第2のチップ102とは、第1のチップ101の最上層の配線123と第2のチップ102の最上層の配線層129とが接合面103において電気的に接続されるように、貼り合わされている。
【0047】
このように、本実施形態による光電変換装置100は、第1の基板104の裏面106側から入射した光をマイクロレンズ121及びカラーフィルタ層120を介してダイオードDへと導く裏面照射型の光電変換装置として構成可能である。ただし、本実施形態の光電変換装置100は、必ずしも裏面照射型の光電変換装置である必要はなく、表面照射型の光電変換装置であってもよい。
【0048】
このように、本実施形態によれば、画素回路の規模を大きくすることなく、光電変換装置の高機能化を実現することができる。
【0049】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による光電変換装置について、図8を用いて説明する。第1実施形態による光電変換装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。図8は、本実施形態による光電変換装置の第2画素の構成例を示す回路図である。
【0050】
本実施形態では、第2画素P2の他の構成例を説明する。その他の要素については、第1実施形態による光電変換装置と同様である。
【0051】
本実施形態による光電変換装置の第2画素P2は、図8に示すように、受光部20bと、信号生成部30cと、を有する。受光部20bは、図5に示す第1実施形態による光電変換装置の第2画素P2の受光部20bと同様である。信号生成部30cは、3ビットのカウンタ回路を構成する3つのT-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2と、演算回路32と、N型MOSトランジスタにより構成されるスイッチSWb0,SWb1と、を含む。演算回路32は、NOTゲートG11,G12,G13と、NORゲートG14,G15,G16と、を含む。
【0052】
受光部20bの出力端子でもあるインバータ回路INVbの出力端子は、信号生成部30cの入力端子であるNOTゲートG13の入力端子に接続されている。NOTゲートG13の出力端子は、NORゲートG16の一方の入力端子に接続されている。NORゲートG16の出力端子は、T-フリップフロップ回路FFb0の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb0の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb0の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tとの間の接続ノードは、NOTゲートG11の入力端子に接続されている。NOTゲートG11の出力端子は、NORゲートG14の一方の入力端子に接続されている。NORゲートG14の出力端子は、スイッチSWb0を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。
【0053】
T-フリップフロップ回路FFb1の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFb2の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb1の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFb2の入力端子Tとの接続ノードは、NOTゲートG12の入力端子に接続されている。NOTゲートG12の出力端子は、NORゲートG15の一方の入力端子に接続されている。NORゲートG15の出力端子は、スイッチSWb1を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb2の出力端子Qは、NORゲートG14,G15,G16の他方の入力端子に、それぞれ接続されている。
【0054】
スイッチSWb0,SWb1を構成するN型MOSトランジスタのゲートは、制御線PVSELに接続されている。スイッチSWb0,SWb1を構成するN型MOSトランジスタのドレインは、出力線POUTに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2のクリア端子CLRは垂直選択回路3に接続されており、垂直選択回路3から制御信号PCLRを供給できるようになっている。
【0055】
T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2が縦続接続されてなる3ビットのカウンタ回路は、NOTゲートG13及びNORゲートG16を介して受光部20bから供給される信号PIXOUTに重畳するパルスをカウントする。NORゲートG16は、T-フリップフロップ回路FFb2の出力Qがローレベルのとき、受光部20bから供給されたパルスをT-フリップフロップ回路FFb1に出力する。
【0056】
NORゲートG14は、T-フリップフロップ回路FFb2の出力Qがローレベルのとき、第0ビットのカウント値であるT-フリップフロップ回路FFb0の出力Qをそのまま出力する。また、NORゲートG14は、T-フリップフロップ回路FFb2の出力Qがハイレベルのとき、第0ビットのカウント値として0を出力する。
【0057】
同様に、NORゲートG15は、T-フリップフロップ回路FFb2の出力Qがローレベルのとき、第1ビットのカウント値であるT-フリップフロップ回路FFb1の出力Qをそのまま出力する。また、NORゲートG15は、T-フリップフロップ回路FFb2の出力Qがハイレベルのとき、第1ビットのカウント値として0を出力する。
【0058】
すなわち、演算回路32は、T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2により構成されるカウンタ回路の出力値を所定の閾値と比較し、閾値を超えている場合には閾値以下の所定の代替値に置き換えるように動作する。より具体的には、演算回路32は、T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2により構成される3ビットのカウンタ回路のカウント値が5以上の場合、カウンタ回路から出力されるカウント値を0にするように構成されている。
【0059】
本実施形態の第2画素P2をOB領域12に配置した場合、演算回路32が有する上記機能は、キズ画素の補正機能として利用することができる。例えば、ダイオードDbの欠陥に起因して受光部20bの出力パルスがある一定数(閾値)を超えた場合に、画素出力として黒レベルに相当する0を出力するように構成することができる。閾値は、欠陥画素の判定基準に基づいて設定することができる。
【0060】
第1実施形態において説明したように、第2画素P2のカウンタ回路は、第1画素P1よりも回路規模やレイアウト面積が小さくなるように構成されている。したがって、第2画素P2に演算回路32を追加して高機能化を図りつつ、回路規模やレイアウト面積の増大を抑制することが可能となる。
【0061】
なお、図8に示す信号生成部30cでは、カウンタ回路の閾値を5、代替値を0にそれぞれ設定し、受光部20bに入射した光子数が5以上の場合に画素出力が0になるように構成している。しかしながら、カウンタ回路の閾値及び出力の代替値は、これらに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0062】
このように、本実施形態によれば、画素回路の規模が拡大するのを抑制しつつ、光電変換装置の高機能化を実現することができる。
【0063】
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態による光電変換装置について、図9を用いて説明する。第1及び第2実施形態による光電変換装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。図9は、本実施形態による光電変換装置の第2画素の構成例を示す回路図である。
【0064】
本実施形態においては、第2画素P2の他の構成例を説明する。その他の要素については、第1実施形態による光電変換装置と同様である。
【0065】
本実施形態による光電変換装置の第2画素P2は、図9に示すように、受光部20bと、信号生成部30dと、を有する。受光部20bは、図5に示す第1実施形態による光電変換装置の第2画素P2の受光部20bと同様である。信号生成部30dは、3ビットのカウンタ回路を構成する3つのT-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2と、演算回路34と、N型MOSトランジスタにより構成されるスイッチSWb0,SWb1と、を含む。演算回路34は、NOTゲートG21,G22と、NORゲートG23,G24と、を含む。
【0066】
受光部20bの出力端子でもあるインバータ回路INVbの出力端子は、信号生成部30dの入力端子であるT-フリップフロップ回路FFb0の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb0の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb0の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tとの間の接続ノードは、スイッチSWb0を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb1の出力端子Qは、T-フリップフロップ回路FFb2の入力端子Tに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb1の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFb2の入力端子Tとの間の接続ノードは、スイッチSWb1を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。T-フリップフロップ回路FFb2の出力端子Qは、NORゲートG23,G24の一方の入力端子に、それぞれ接続されている。
【0067】
スイッチSWb0,SWb1を構成するN型MOSトランジスタのゲートは、制御線PVSELに接続されている。スイッチSWb0,SWb1を構成するN型MOSトランジスタのドレインは、出力線POUTに接続されている。
【0068】
NOTゲートG21の出力端子は、NORゲートG23の他方の入力端子に接続されている。NORゲートG23の出力端子は、T-フリップフロップ回路FFb0のクリア端子CLRに接続されている。また、NOTゲートG22の出力端子は、NORゲートG24の他方の入力端子に接続されている。NORゲートG24の出力端子は、T-フリップフロップ回路FFb1のクリア端子CLRに接続されている。NOTゲートG21,G22の入力端子は垂直選択回路3に接続されており、垂直選択回路3から制御信号PCLRを供給できるようになっている。また、T-フリップフロップ回路FFb2のクリア端子CLRは垂直選択回路3に接続されており、垂直選択回路3から制御信号PCLRを供給できるようになっている。
【0069】
T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2が縦続接続されてなる3ビットのカウンタ回路は、受光部20bから供給される信号PIXOUTに重畳するパルスをカウントする。スイッチSWb0~SWb1は、制御線PVSELから供給される制御信号に応じてオンになることにより、T-フリップフロップ回路FFb0~FFb1により構成されるカウンタ回路の下位2ビットの値を出力信号として出力線POUTへと出力する。
【0070】
演算回路34は、制御信号PCLRとT-フリップフロップ回路FFb2の出力に応じて、T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1をリセットするように構成されている。具体的には、演算回路34は、制御信号PCLR及びT-フリップフロップ回路FFb2の出力のうち、一方がハイレベルで他方がローレベルのとき、T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1をリセットする。
【0071】
つまり、演算回路34は、第2実施形態の演算回路32と同様、T-フリップフロップ回路FFb0,FFb1,FFb2により構成されるカウンタ回路のカウント値が5以上の場合、カウンタ回路から出力されるカウント値を0にするように構成されている。
【0072】
本実施形態の第2画素P2をOB領域12に配置した場合、演算回路34が有する上記機能は、キズ画素の補正機能として利用することができる。例えば、ダイオードDbの欠陥に起因して受光部20bの出力パルスがある一定数を超えた場合に、画素出力として黒レベルに相当する0を出力するように構成することができる。したがって、第2実施形態の場合と同様、第2画素P2に演算回路32を追加して高機能化を図りつつ、回路規模やレイアウト面積の増大を抑制することが可能となる。
【0073】
なお、図9に示す信号生成部30dでは、カウンタ回路の閾値を5に設定し、受光部20bに入射した光子数が5以上の場合に画素出力が0になるように構成している。しかしながら、カウンタ回路の閾値は、これに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0074】
このように、本実施形態によれば、画素回路の規模が拡大するのを抑制しつつ、光電変換装置の高機能化を実現することができる。
【0075】
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態による光電変換装置について、図10及び図11を用いて説明する。第1乃至第3実施形態による光電変換装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。
【0076】
第1乃至第3実施形態では、OB領域12に配置する単位画素Pとして第2画素P2を適用した例を示したが、第2画素P2の用途は、OB領域12に配置する単位画素Pに限定されるものではない。本実施形態では、単位画素Pが測距(焦点検出)用の複数のサブ画素を含む場合に、これらサブ画素を第2画素P2により構成する例を説明する。サブ画素の受光部は、第1画素P1の受光部よりも平面視における面積が小さい。
【0077】
図10は、本実施形態による光電変換装置の概略構成を示すブロック図である。本実施形態による光電変換装置100の基本的な構成は、図10に示すように、第1実施形態による光電変換装置と同様である。本実施形態による光電変換装置100が第1実施形態による光電変換装置と異なる点は、画素領域10を構成する単位画素Pの一部が、測距用の複数のサブ画素を含むことである。図10には、第2行及び第4行に配された各単位画素Pを、測距用の2つのサブ画素PA,PBにより構成した例を示している。測距用のサブ画素は、必ずしも2つである必要はなく、3つ以上であってもよい。
【0078】
光電変換装置100は、サブ画素PAに投影される像とサブ画素PBとに投影される像との間に位相差を生じるように構成された光学系(図示せず)を備えており、三角測距の原理を用いて被写体までの距離を得ることが可能である。図10に示す画素構成の光電変換装置100では、第0行、第1行、第3行及び第5行に配された単位画素Pを第1画素P1により構成し、第2行及び第4行に配された単位画素Pのサブ画素PA,PBを、第2画素P2により構成することができる。
【0079】
すなわち、本実施形態による光電変換装置100は、撮像用の画素としての複数の第1画素が配列された撮像領域と、測距用の画素としての複数の第2画素が配列された焦点検出領域と、を有する。
【0080】
図11は、本実施形態による光電変換装置におけるサブ画素PA,PBを含む単位画素Pの構成例を示す回路図である。サブ画素PA及びサブ画素PBの各々は、図11に示すように、図5に示す第2画素P2と同様の回路構成を有する。制御線PVSELはサブ画素PA,PBに共通の信号線である。サブ画素PA,PBを含む単位画素Pは、図11の回路構成の場合、サブ画素PAの出力を下位2ビット、サブ画素PBの出力を上位2ビットとする4ビットの信号を出力線POUTに出力するように構成することができる。
【0081】
撮像用の単位画素P及び測距用の単位画素Pは、例えば図10に示すように、同程度の画素面積を有することが多い。そのため、測距用の単位画素Pを構成するサブ画素PA及びサブ画素PBの平面的な受光領域は、撮像用の単位画素P(第1画素P1)の平面的な受光領域の半分以下であり、サブ画素PA,PBの受光感度は、撮像用の単位画素Pの受光感度よりも低くなる。
【0082】
したがって、測距用の単位画素Pのサブ画素PA及びサブ画素PBには、出力信号の上限値が相対的に小さい第2画素P2を適用することができる。これにより、画素回路の回路規模の増大を抑制しつつ、距離計測に必要な信号を取得する機能を付加するという高機能化を実現することができる。
【0083】
このように、本実施形態によれば、画素回路の規模が拡大するのを抑制しつつ、光電変換装置の高機能化を実現することができる。
【0084】
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態による光電変換装置について、図12及び図13を用いて説明する。第1乃至第4実施形態による光電変換装置と同様の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略し或いは簡潔にする。図12は、本実施形態による光電変換装置における測距用の単位画素Pの構成例を示す回路図である。
【0085】
本実施形態では、測距用の単位画素Pの他の構成例を示す。本実施形態による光電変換装置における測距用の単位画素Pは、図12に示すように、受光部20bと信号生成部30eとを有するサブ画素PAと、受光部20bと信号生成部30fとを有するサブ画素PBと、を含む。サブ画素PA及びサブ画素PBの受光部20bは、第4実施形態と同様である。サブ画素PAの信号生成部30eは、2ビットのカウンタ回路を構成する2つのT-フリップフロップ回路FFb0,FFb1を含む。サブ画素PBの信号生成部30fは、2ビットのカウンタ回路を構成する2つのT-フリップフロップ回路FFb0,FFb1と、演算回路36と、N型MOSトランジスタにより構成されるスイッチSWb0,SWb1と、を含む。演算回路36は、全減算器FS0,FS1を含む2ビットの並列減算器である。全減算器FS0,FS1は、3つの入力端子A(被減数),B(減数),Bi(借り入力)と、2つの出力端子D(差),Bo(借り出力)と、を有する。
【0086】
信号生成部30eのT-フリップフロップ回路FFb0の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tとの接続ノードは、全減算器FS0の入力端子Aに接続されている。信号生成部30eのT-フリップフロップ回路FFb1の出力端子Qは、全減算器FS1の入力端子Aに接続されている。信号生成部30fのT-フリップフロップ回路FFb0の出力端子QとT-フリップフロップ回路FFb1の入力端子Tとの接続ノードは、全減算器FS0の入力端子Bに接続されている。信号生成部30fのT-フリップフロップ回路FFb1の出力端子Qは、全減算器FS1の入力端子Bに接続されている。全減算器FS0の出力端子Boは、全減算器FS1の入力端子Biに接続されている。全減算器FS0の出力端子Dは、スイッチSWb0を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。全減算器FS1の出力端子Dは、スイッチSWb1を構成するN型MOSトランジスタのソースに接続されている。
【0087】
全減算器FS0,FS1の各々は、図13(a)の真理値表に示す動作をする。ここで、信号生成部30eのカウンタ回路からの出力をAとし、出力Aの第0ビットの値をA0、出力Aの第1ビットの値をA1とする。また、信号生成部30fのカウンタ回路からの出力をBとし、出力Bの第0ビットの値をB0、出力Bの第1ビットの値をB1とする。また、全減算器FS0の出力をD0、全減算器FS1の出力をD1とする。この場合、全減算器FS0の出力D0は、D0=A0-B0となる。また、全減算器FS1の出力D0は、D1=A1-B1-Bi(=Bo)となる。図13(b)は、全減算器FS0,FS1の各々を構成する回路の一例を示す回路図である。全減算器FS0,FS1は、例えば図13(b)に示す論理ゲートG31~G41により構成することができる。
【0088】
これにより、演算回路36は、出力Aと出力Bとの差分値、すなわち、信号生成部30eのカウンタ回路の出力Aから信号生成部30fのカウンタ回路の出力Bを差し引いた値を出力する。演算回路36からの出力の第0ビットの値がD0であり、演算回路36からの出力の第1ビットの値がD1である。
【0089】
これにより、測距用の単位画素Pは、垂直選択回路3からの制御信号PVSELに応じて、サブ画素PAの出力Aからサブ画素PBの出力Bを差し引いた差信号を、出力線POUTに出力することができる。出力Aと出力Bとの間の差信号は、サブ画素PAにより得た被写体像とサブ画素PBにより得た被写体像との間の位相差を表すため、被写体までの距離の算出に利用することができる。本実施形態による光電変換装置は、サブ画素PAにより得た被写体像とサブ画素PBにより得た被写体像との間の位相差に相応するカウンタ回路の差信号をも出力するものであり、第4実施形態による光電変換装置よりも更に高機能化されている。
【0090】
このように、本実施形態によれば、画素回路の規模が拡大するのを抑制しつつ、光電変換装置の高機能化を実現することができる。
【0091】
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態による撮像システムについて、図14を用いて説明する。図14は、本実施形態による撮像システムの構成例を示すブロック図である。
【0092】
本実施形態による撮像システム200は、図14に示すように、バリア201と、レンズ202と、絞り203と、光電変換装置204と、AFセンサ205と、を有している。レンズ202は、被写体の光学像を結像するための光学系である。バリア201は、レンズ202のプロテクトを行うものである。絞り203は、レンズ202を通過する光の光量を調整するためのものである。光電変換装置204は、第1乃至第5実施形態で説明した光電変換装置100を用いて構成され、レンズ202で結像された被写体の光学像を画像信号として取得するためのものである。AFセンサ205は、焦点検出に必要な信号を取得するためのものである。なお、光電変換装置204を第4又は第5実施形態による光電変換装置100により構成する場合、焦点検出に必要な信号は光電変換装置204から取得できるため、AFセンサ205は必ずしも設ける必要はない。
【0093】
また、撮像システム200は、信号処理部208を更に有している。信号処理部208は、光電変換装置204やAFセンサ205から出力された信号の処理や、得られた画像データに対して各種の補正を行い或いはデータを圧縮する処理を行うためのものである。
【0094】
また、撮像システム200は、メモリ部209、外部I/F回路210、タイミング発生部211、全体制御・演算部212、記録媒体制御I/F部213を更に有している。メモリ部209は、画像データを一時記憶するためのものである。外部I/F回路210は、外部コンピュータ215などの外部機器と通信するためのものである。タイミング発生部211は、信号処理部208などに各種タイミング信号を出力するためのものである。全体制御・演算部212は、各種演算とカメラ全体を制御するためのものである。記録媒体制御I/F部213は、取得した画像データを記録し、又は画像データの読み出しを行うための半導体メモリなどの着脱可能な記録媒体214との間でデータのやりとりを行うためのものである。
【0095】
バリア201がオープンされると、被写体からの光学像がレンズ202及び絞り203を介してAFセンサ205に入射される。全体制御・演算部212は、AFセンサ205からの出力信号をもとに、前記した位相差検出の手法により被写体までの距離を算出する。その後、全体制御・演算部212は、演算結果に基づいてレンズ202を駆動し、再び撮像面に合焦しているか否かを判断し、合焦していないと判断したときには、再びレンズ202を駆動するオートフォーカス制御を行う。
【0096】
次いで、合焦が確認された後に、光電変換装置204による電荷蓄積動作が開始される。光電変換装置204の電荷蓄積動作が終了すると、光電変換装置204から出力された画像信号は、信号処理部208を介して全体制御・演算部212によってメモリ部209に書き込まれる。
【0097】
その後、メモリ部209に蓄積されたデータは、全体制御・演算部212の制御により記録媒体制御I/F部213を介して記録媒体214に記録される。或いは、メモリ部209に蓄積されたデータは、外部I/F回路210を介して、直接に外部コンピュータ215などに入力してもよい。
【0098】
第1乃至第5実施形態において説明したように、これまでの実施形態に示した光電変換装置100を用いることにより、画素回路の規模が拡大するのを抑制しつつ、高機能化を達成することができる。したがって、この光電変換装置204を用いた本実施形態の撮像システムによれば、より高品質な画像を取得することが可能となる。
【0099】
[第7実施形態]
本発明の第7実施形態による撮像システム及び移動体について、図15を用いて説明する。図15は、本実施形態による撮像システム及び移動体の構成を示す図である。
【0100】
図15(a)は、車載カメラに関する撮像システムの一例を示したものである。撮像システム300は、撮像装置310を有する。撮像装置310は、上記第1乃至第5実施形態のいずれかに記載の光電変換装置100である。撮像システム300は、撮像装置310により取得された複数の画像データに対し、画像処理を行う画像処理部312と、撮像システム300により取得された複数の画像データから視差(視差画像の位相差)の算出を行う視差取得部314を有する。また、撮像システム300は、算出された視差に基づいて対象物までの距離を算出する距離取得部316と、算出された距離に基づいて衝突可能性があるか否かを判定する衝突判定部318と、を有する。ここで、視差取得部314や距離取得部316は、対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段の一例である。すなわち、距離情報とは、視差、デフォーカス量、対象物までの距離等に関する情報である。衝突判定部318はこれらの距離情報のいずれかを用いて、衝突可能性を判定してもよい。距離情報取得手段は、専用に設計されたハードウェアによって実現されてもよいし、ソフトウェアモジュールによって実現されてもよい。また、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated circuit)等によって実現されてもよいし、これらの組合せによって実現されてもよい。
【0101】
撮像システム300は車両情報取得装置320と接続されており、車速、ヨーレート、舵角などの車両情報を取得することができる。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、車両に対して制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置である制御ECU330が接続されている。また、撮像システム300は、衝突判定部318での判定結果に基づいて、ドライバーへ警報を発する警報装置340とも接続されている。例えば、衝突判定部318の判定結果として衝突可能性が高い場合、制御ECU330はブレーキをかける、アクセルを戻す、エンジン出力を抑制するなどして衝突を回避、被害を軽減する車両制御を行う。警報装置340は音等の警報を鳴らす、カーナビゲーションシステムなどの画面に警報情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどしてユーザに警告を行う。
【0102】
本実施形態では、車両の周囲、例えば前方又は後方を撮像システム300で撮像する。図15(b)に、車両前方(撮像範囲350)を撮像する場合の撮像システムを示した。車両情報取得装置320が、撮像システム300ないしは撮像装置310に指示を送る。このような構成により、測距の精度をより向上させることができる。
【0103】
上記では、他の車両と衝突しないように制御する例を説明したが、他の車両に追従して自動運転する制御や、車線からはみ出さないように自動運転する制御などにも適用可能である。さらに、撮像システムは、自車両等の車両に限らず、例えば、船舶、航空機あるいは産業用ロボットなどの移動体(移動装置)に適用することができる。加えて、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)等、広く物体認識を利用する機器に適用することができる。
【0104】
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
【0105】
例えば、いずれかの実施形態の一部の構成を他の実施形態に追加した例や、他の実施形態の一部の構成と置換した例も、本発明の実施形態である。
【0106】
また、第1乃至第5実施形態の光電変換装置100において、単位画素Pを構成する画素回路は、図示したものに限定されるものではない。例えば、信号処理回路を構成するカウンタ回路は、図示したカウンタビット数に対応した構成に限定されるものではない。
【0107】
また、第4及び第5実施形態では、カウンタ回路のカウント値が所定の閾値を超えたときに所定の代替値に置き換える演算回路を例示したが、カウンタ回路の閾値、代替値、演算回路の回路構成は上記実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0108】
また、上記第6及び第7実施形態に示した撮像システムは、本発明の光電変換装置を適用しうる撮像システム例を示したものであり、本発明の光電変換装置を適用可能な撮像システムは図14及び図15に示した構成に限定されるものではない。
【0109】
なお、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0110】
P…単位画素
P1…第1画素
P2…第2画素
T-FFa0~TFFa3,T-FFb0~T-FFb3…T-フリップフロップ回路
20a,20b…受光部
30a,30b,30c,30d,30e,30f…信号生成部
32,34,36…演算回路
図1
図2
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図15