(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】車両のための緊急エネルギアキュムレータ
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20240213BHJP
B60T 13/74 20060101ALI20240213BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20240213BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240213BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20240213BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
H02J9/06 110
B60T13/74 D
H02J7/34 G
H02J7/00 302C
H02M3/155 W
H02M3/155 C
B62D5/04
(21)【出願番号】P 2022186962
(22)【出願日】2022-11-23
(62)【分割の表示】P 2020565773の分割
【原出願日】2019-06-04
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】102018209464.0
(32)【優先日】2018-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ドノテック ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ソランキ ジテンドラ
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016103829(DE,A1)
【文献】特開2013-188090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0120770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
B60T 13/74
H02J 7/34
H02J 7/00
H02M 3/155
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のための緊急エネルギアキュムレータ(1)であって、
複数の電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)と、
それぞれ第1の接続部(11-i)および第2の接続部(12-i)を備えた複数の変圧器(10-i)と、
を有しており、
この場合、各変圧器(10-i)がそれぞれ前記第1の接続部(11-i)で前記電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)とそれぞれ結合されており、
複数の前記変圧器(10-i)がそれぞれ前記第2の接続部(12-i)で互いに電気結合されていて、
複数の前記変圧器(10-i)が、直列接続された2つの半導体スイッチエレメント(M1-M6)を備えた1つのハーフブリッジをそれぞれ有していて、
まだ機能している電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)のうちの少なくとも1つが、故障した電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)に依存することなしに放電されることによって、緊急エネルギのアウトプットが可能であり、
前記緊急エネルギアキュムレータ(1)は電気機械式のブレーキ倍力装置の外側および/または内側に組み込まれていて、前記電気機械式のブレーキ倍力装置が有するゲートドライバが前記緊急エネルギアキュムレータ(1)の前記半導体スイッチエレメント(M1-M6)および、前記電気機械式のブレーキ倍力装置の前記緊急エネルギアキュムレータ(1)外部の電子回路のスイッチエレメントを切り替え可能であり
、
前記2つの半導体スイッチエレメントが下側のスイッチエレメントと上側のスイッチエレメントからなり、
前記下側のスイッチエレメントと前記上側のスイッチエレメントとが互いに接続されている分岐点がインダクタを介して前記電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)に接続され、
前記下側のスイッチエレメントの前記分岐点に接続されていない接続部が接続エレメントに接続され、前記上側のスイッチエレメントの前記分岐点に接続されていない接続部が別の接続エレメントに接続され、前記接続エレメントと前記別の接続エレメントの間に出力電圧が提供される、車両のための緊急エネルギアキュムレータ(1)。
【請求項2】
複数の前記電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)がそれぞれ少なくとも1つのストレージコンデンサを有している、請求項1記載の緊急エネルギアキュムレータ(1)。
【請求項3】
複数の前記変圧器(10-i)がそれぞれ1つの昇圧コンバータを有している、請求項1または2記載の緊急エネルギアキュムレータ(1)。
【請求項4】
前記緊急エネルギアキュムレータ(1)が2つまたは3つの変圧器(10-i)を有しており、前記変圧器(10-i)のそれぞれが、B6ブリッジを備えたハーフブリッジを有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の緊急エネルギアキュムレータ(1)。
【請求項5】
複数の前記変圧器(10-i)の各変圧器(10-i)が個別に制御可能および/または作動可能である、請求項1から4までのいずれか1項記載の緊急エネルギアキュムレータ(1)。
【請求項6】
車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置において、該ブレーキ倍力装置が車両のマスタブレーキシリンダの前方に配置可能または配置されており、請求項1から5までのいずれか1項記載の緊急エネルギアキュムレータ(1)を備えていて、前記緊急エネルギアキュムレータ(1)から前記電気機械式のブレーキ倍力装置へ緊急エネルギのアウトプットが可能である、車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置。
【請求項7】
車両のためのブレーキシステムにおいて、
請求項1から5までのいずれか1項記載の緊急エネルギアキュムレータ(1)および請求項6記載の電気機械式のブレーキ倍力装置を有していて、前記緊急エネルギアキュムレータ(1)から前記電気機械式のブレーキ倍力装置へ緊急エネルギのアウトプットが可能である、車両のためのブレーキシステム。
【請求項8】
車両の緊急エネルギアキュムレータ(1)を製造するための方法において、
複数の電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)および複数の変圧器(10-i)を準備するステップ(S1)と、
それぞれ1つの前記電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)を前記変圧器(10-i)の第1の接続部(11-i)に電気結合するステップ(S2)と、
複数の前記変圧器(10-i)をこれらの変圧器(10-i)の第2の接続部(12-i)に電気結合するステップ(S3)と
を有し、
複数の前記変圧器(10-i)が、直列接続された2つの半導体スイッチエレメント(M1-M6)を備えた1つのハーフブリッジをそれぞれ有していて、
まだ機能している電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)のうちの少なくとも1つが、故障した電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i) に依存することなしに放電されることによって、緊急エネルギのアウトプットが可能であり、
前記緊急エネルギアキュムレータ(1)は電気機械式のブレーキ倍力装置の外側および/または内側に組み込まれていて、前記電気機械式のブレーキ倍力装置が有するゲートドライバが前記緊急エネルギアキュムレータ(1)の前記半導体スイッチエレメント(M1-M6)および、前記電気機械式のブレーキ倍力装置の前記緊急エネルギアキュムレータ(1)外部の電子回路のスイッチエレメントを切り替え可能であ
り、
前記2つの半導体スイッチエレメントが下側のスイッチエレメントと上側のスイッチエレメントからなり、
前記下側のスイッチエレメントと前記上側のスイッチエレメントとが互いに接続されている分岐点がインダクタを介して前記電気的なエネルギアキュムレータ装置(20-i)に接続され、
前記下側のスイッチエレメントの前記分岐点に接続されていない接続部が接続エレメントに接続され、前記上側のスイッチエレメントの前記分岐点に接続されていない接続部が別の接続エレメントに接続され、前記接続エレメントと前記別の接続エレメントの間に出力電圧が提供される、緊急エネルギアキュムレータ(1)を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のための緊急エネルギアキュムレータに関する。同様に本発明は、車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置、車両のためのブレーキシステムおよび/またはステアリングシステム、および車両のためのエネルギ供給システムに関する。さらに本発明は、車両の緊急エネルギアキュムレータのための製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の自動車は、たいていは、いわゆるブレーキ倍力装置を用いて車両運転者を支援するブレーキシステムを有しているので、車両運転者はブレーキ装置を操作するためにひたすら全力を加える必要はない。さらに、車両は、電気駆動装置を用いて車両運転者を支援するいくつかの別の支援システムを有していてもよい。
【0003】
特許文献1は、電気機械式のブレーキ倍力装置を開示する。電動機およびねじ伝動装置を用いてブレーキシステムのピストンロッドに補助力が加えられる。電動機を駆動するために、電動機に電気エネルギを供給する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本発明は、請求項1の特徴を有する車両のための緊急エネルギアキュムレータ、請求項7の特徴を有する車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置、請求項8の特徴を有する車両のためのブレーキシステムおよび/またはステアリングシステム、請求項9の特徴を有する車両のためのエネルギ供給システム、並びに請求項10の特徴を有する車両の緊急エネルギアキュムレータのための製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、それぞれの車両の車載電源網が故障したときでも、「緊急エネルギ」またはリザーブエネルギを車両の車両構成部品に供給するための可能性を提供する。本発明の特別な利点は、このような状況において、本発明によって、エネルギ供給のために用いられる蓄電池に故障が発生した場合でもなお、所定の緊急エネルギを車両構成部品に提供可能である、という点にある。従って本発明は、このような稀に発生する緊急事態においても、本発明が、車両によって要求された走行特性を車両構成部品の運転によって生ぜしめるかまたは支援できることを保証することによって、車両構成部品を備えた車両の快適性レベルおよび安全性レベルの向上に寄与する。これは、本発明が、車載電源網の故障時における第1のフォールバックレベルに追加して、車載電源網の故障時およびそれと同時にエネルギ供給のために使用された蓄電池に故障が発生したときに、いわゆる(強化された)第2のフォールバックレベルを提供する、と言い換えてもよい。
【0007】
本発明のその他の利点を、以下に本発明の実施例の詳細な記述を用いて説明する。
【0008】
一実施例では、複数の電気的なエネルギアキュムレータ装置がそれぞれ少なくとも1つのストレージコンデンサを有している。ストレージコンデンサは、例えばハイブリッドスーパーコンデンサ(Hybrid Super Capacitor、HSC)であってよい。特に、それぞれのエネルギアキュムレータ装置のための複数の並列および/または直列接続されたストレージコンデンサの任意の適切な配置も可能である。
【0009】
一実施例では、複数の前記変圧器がそれぞれ1つの昇圧コンバータを有している。この場合、昇圧コンバータとして、例えば入力側に供給された直流電圧を出力側の直流電圧に変換する直流電圧コンバータが解釈されてよく、この場合、出力側の直流電圧の値が入力側に供給された直流電圧の値よりも高い。このような形式で、このような変圧器の入力部で変動する、特に低下する電圧においても、適切な、好適には一定の出力電圧が提供され得る。しかしながら使用目的に応じて、別の変圧器、例えば降圧コンバータまたは組み合わされた昇圧/降圧コンバータ(英語.Boost/Buck converter)が使用されてもよいことは自明である。特に、例えば双方向性の直流電圧コンバータも可能である。従って、例えばエネルギアキュムレータ装置は、変圧器を用いてより高い圧力レベルに充電されてもよい。
【0010】
一実施例では、複数の変圧器が、直列接続された2つの半導体スイッチエレメントを備えたそれぞれ1つのハーフブリッジを有している。さらに、変圧器は、別の構成エレメント、例えばインダクタ、キャパシタ等を有していてもよい。それぞれ1つのハーフブリッジを使用することによって、変圧器のための簡単かつそれに伴って安価な回路装置が実現され得る。特に、簡単な形式で、複数のハーフブリッジは複数の変圧器に組み合わせることができる。半導体スイッチエレメントは、例えばMOSFETを有していてよい。しかしながらさらに、基本的に別の半導体スイッチ、例えば絶縁されたゲート接続部(IGBT)等を有するバイポーラトランジスタも可能である。
【0011】
一実施例では、緊急エネルギアキュムレータが2つまたは3つの変圧器を有している。この場合、各変圧器は、B6ブリッジを備えたハーフブリッジを有していてよい。このような形式で、B6ブリッジを用いて複数の変圧器の特に簡単な配置が実現可能である。このような形式のB6ブリッジは、エネルギ技術の分野における標準構造群である。従って、B6ブリッジは、比較的安価な製造コストに関する多様性を提供することができる。
【0012】
一実施例では、複数の変圧器の各変圧器が個別に制御可能および/または非作動化可能である。個別の変圧器を個別に制御並びに個別に作動させることによって、適切な電気エネルギを、それぞれの接続されたエネルギアキュムレータ装置から受け取ることができる。これによって特に、それぞれの変圧器は個別に、それぞれのエネルギアキュムレータ装置の充電状態に依存して、変圧器の出力に一定の出力電圧が提供されるように、制御され得る。さらに、例えば故障時に、単数または複数の変圧器を的確に作動停止させることが可能である。これによって、それぞれのエネルギアキュムレータ装置および/またはそれぞれの変圧器に故障が発生した場合でも、このような故障がエネルギ供給を妨げることはないことが保証され得る。
【0013】
前記利点は、車両のマスタブレーキシリンダの前方に配置可能または配置されていてこのような緊急エネルギアキュムレータを有している、車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置においても保証されている。
【0014】
相応の緊急エネルギアキュムレータおよび/またはこのような形式の電気機械式のブレーキ倍力装置を備えた車両のためのブレーキシステムおよび/またはステアリングシステムも、前記利点を実現する。
【0015】
同様に、既に上記した利点は、車両バッテリおよび相応に構成された緊急エネルギアキュムレータを備えた車両のためのエネルギ供給システムによって得られる。
【0016】
さらに、車両の緊急エネルギアキュムレータのための対応する製造方法を実行することによっても前記利点は得られる。この製造方法は、緊急エネルギアキュムレータの実施例に従ってさらに改良可能であることを明確に指摘しておく。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による緊急エネルギアキュムレータの実施例の概略図である。
【
図2】本発明による緊急エネルギアキュムレータの実施例の原理回路図の概略図である。
【
図3】車両の緊急エネルギアキュムレータの製造方法の実施例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のその他の特徴および利点を、以下に図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本発明による緊急エネルギアキュムレータ1の実施例の概略図を示す。
【0020】
図1に概略的に示された緊急エネルギアキュムレータ1は、車両/自動車の外側および/または内側に取り付け可能/組み込み可能である。緊急エネルギアキュムレータ1の使用可能性は所定の車両型式/自動車型式に限定されない、ということを明確に指摘しておく。
【0021】
緊急エネルギアキュムレータ1は、複数の蓄電池20-iを有している。各蓄電池20-iはそれぞれ少なくとも1つの(図示していない)ストレージコンデンサを有している。蓄電池20-iの少なくとも1つが複数のストレージコンデンサを有している場合、これらのストレージコンデンサは選択的に並列回路および/または直列回路として各蓄電池20-iにおいて接続されていてよい。
図1に示した、ちょうど4つの蓄電池20-1乃至20-4を備えた緊急エネルギアキュムレータ1の構成は、一例としてのみ解釈されるべきであって、本発明の限定を意味するものではない。
【0022】
蓄電池20-iのストレージコンデンサとは、特にスーパーコンデンサ(SuperCapacitor,略してSupercapまたはSC)のような、例えば電気化学式のコンデンサのことであると解釈されてよい。例えば少なくとも1つのハイブリッドスーパーコンデンサ(Hybrid Super Capacitor、略してHSC)は、ストレージコンデンサとして蓄電池20-iに取り付けられていてよい。従って、蓄電池20-iの少なくとも1つは例えばスーパーコンデンサセルとして構成されていてよい。様々な蓄電池型式の組み合わせが同様に可能である。
【0023】
緊急エネルギアキュムレータ1は、緊急エネルギアキュムレータ1の蓄電池20-i内に蓄えられたエネルギが、緊急エネルギアキュムレータ1を装備した車両/自動車の車載電源網が故障したときでも、「緊急エネルギ」としてなおそれぞれの車両/自動車の少なくとも1つの車両構成部品にアウトプットされ得るように、構成されている。従って、車両構成部品を車載電源網の故障にも拘わらずなお、少なくとも一時的に「緊急エネルギ」のアウトプットによってさらに運転することができ、それによって車載電源網の故障の影響が少なくとも一時的に弱められる。それによって、緊急エネルギアキュムレータ1は、それぞれの車両/自動車の快適性レベルおよび安全性レベルの向上に寄与する。例えば、車両/自動車のステアリングシステム/ステアリングおよび/またはブレーキシステムの構成部品を、緊急エネルギアキュムレータ1によってアウトプットされた「緊急エネルギ」によって、車載電源網の故障にも拘わらず、さらに運転することができ、運転者または自律制御システムは車両/自動車を、なお、比較的快適であり、比較的確実に制動および/または操縦することができる。緊急エネルギアキュムレータ1は、このような形式で、車載電源網の故障にも拘わらず車両/自動車の操縦および/または制動時に運転者または自律制御システムを支援するための第1の(強化された)フォールバックレベルを提供する。
【0024】
図1の緊急エネルギアキュムレータ1はさらに、緊急エネルギアキュムレータ1の蓄電池20-i毎にそれぞれ1つの変圧器10-iを有しており、この場合、蓄電池20-iは、それぞれその(専用の)対応配設された変圧器10-iに接続されている。従って緊急エネルギアキュムレータ1は、例えば蓄電池20-iと同じ数の変圧器10-iを有している。好適には、緊急エネルギアキュムレータ1の蓄電池20-iの蓄電池総数は、緊急エネルギアキュムレータ1の変圧器10-iの変圧器総数と同じである。
【0025】
緊急エネルギアキュムレータ1の各蓄電池20-iにそれぞれ1つの個々の変圧器10-iが対応配設されていることに基づいて、緊急エネルギアキュムレータ1の各蓄電池20-iは、緊急エネルギアキュムレータ1の別の蓄電池20-iに依存することなく放電され得る。従って、まだ機能している蓄電池20-iのうちの少なくとも1つが、故障した蓄電池20-iに依存することなしに放電されることによって、緊急エネルギアキュムレータ1の蓄電池20-iのうちの1つに発生した故障も対処され得る。従って、緊急エネルギアキュムレータ1の蓄電池20-iの1つに発生した故障にも拘わらず、それぞれの車両/自動車の車載電源網の故障時においてもなおそれぞれの車両構成部品への「緊急エネルギ」のアウトプットが可能である。従って、
図1の緊急エネルギアキュムレータ1は、従来のシステムに対して高められた、それぞれの車両/自動車の快適性レベルおよび安全性レベルを追加的に高めるために寄与する冗長性を有する。従って、この緊急エネルギアキュムレータ1は、車載電源網の故障時においてのみ第1の(強化された)フォールバックレベルを生ぜしめるのではなく、その蓄電池20-iのうちの1つに故障が発生したときにさらに第2のフォールバックレベルを実現し、この第2のフォールバックレベルにおいて、運転者または自律制御システムはやはり、車両/自動車の操縦および/または制動時でもアウトプット可能な「緊急エネルギ」によって支援される。従って、車載電源網の故障および蓄電池20-iの1つに存在する故障に基づく「二重故障状態」は、その影響が緊急エネルギアキュムレータ1の高い冗長性によって少なくとも弱められる。
【0026】
変圧器10-iは、それぞれDC-DC変圧器、DC-DCコンバータまたはコンバータと呼ばれてもよい。
図1で分かるように、緊急エネルギアキュムレータ1の変圧器10-iは、互いに並列に接続されている。従って、緊急エネルギアキュムレータ1の接点31および32で出力電圧U_outが測定可能であり、この出力電圧U_outは、並列接続された変圧器10-iの接続部12-iの出力電圧に相当する。特に、それぞれ並列接続されたアクティブな変圧器10-iは、2つの接点31と32との間にそれぞれ同じまたは少なくとも概ね同じ高さの出力電圧を提供するように制御される。この場合、それぞれのアクティブな変圧器10-iを個別に制御することによって、それぞれ接続された蓄電池20-iの異なる充電状態においてもおよび/または変圧器10-iの接続部11-iにおけるそれぞれ異なる入力電圧においても、すべての変圧器10-iのために、接点31と32との間に同じ高さの出力電圧を提供することが可能である。
【0027】
それぞれの蓄電池20-iは対応配設された変圧器10-iによって個別に制御され、特に作動可能でもあるので、さらに、変圧器10-i内にまたは接続された蓄電池20-iに故障が発生したときも、またそれぞれの蓄電池20-iの深い放電(深い放電深度、DoD)においても、それぞれの分岐を作動停止することができる。
【0028】
図2は、一実施例による緊急エネルギアキュムレータ1の原理回路図を概略的に示す。3つの蓄電池20-1,20-2および20-3を有するここに記載される実施例も、本発明を理解するために用いられるだけであり、本発明をこれに限定するものではない。この場合、各変圧器10-iは、直列接続された2つの半導体スイッチならびに1つのインダクタより成るハーフブリッジによって形成される。第1の変圧器10-1は、直列接続された2つの半導体スイッチM1およびM2によって形成される。2つの半導体スイッチM1およびM2が互いに接続されている第1の分岐点は、第1のインダクタL1を介して第1の蓄電池20-1の接続部に接続されている。同様に、2つの半導体スイッチM3およびM4が互いに接続されている第2の分岐点は、第2のインダクタL2を介して第2の蓄電池20-2の接続部に接続されている。同様に、2つの半導体スイッチM5およびM6が互いに接続されている第3の分岐点は、第3のインダクタL3を介して第3の蓄電池20-3の接続部に接続されている。蓄電池20-iのそれぞれ別の接続部並びにハーフブリッジの下側のスイッチエレメントM2,M4およびM6の下側の接続部は、例えば前記接点32に相当する、出力接続部の接続エレメントに接続されている。上側の半導体スイッチM1,M3およびM5は、それぞれ分岐点に接続されていない接続部で、例えば前記接点31に相当する、出力接続部の別の接続エレメントに接続されている。変圧器10-iのスイッチエレメントM1乃至M6は、例えばMOSFETとして構成されていてよい。出力接続部の2つの接続エレメントの間に、1つまたは複数の並列接続されたコンデンサより成るキャパシタンスCが配置されていてよい。
【0029】
図2に示されているように、緊急エネルギアキュムレータ1が多くとも3つの変圧器10-iを有している場合、緊急エネルギアキュムレータ1は1つのB6ゲートドライバ(B6 Gate Driver)を有していてよく、このB6ゲートドライバによって変圧器10-1乃至10-3の多くとも6つのスイッチエレメントM1乃至M6が切替え可能である。これにより、緊急エネルギアキュムレータ1の製造のために、しばしば採用されているゲートドライバ部分を使用することができる。このことは、緊急エネルギアキュムレータ1の製造を簡単にし、製造コストの削減に寄与する。
【0030】
前記緊急エネルギアキュムレータ1によって、例えばそれぞれの車両/自動車の例えばブレーキ圧上昇装置、例えばiBooster、および/またはそれぞれの車両/自動車のブレーキ圧変換ユニット、例えばESPが、車載電源網の故障にも拘わらず、なお少なくとも一時的に運転され得る。従って、緊急エネルギアキュムレータ1は、好適にはブレーキシステムの外側および/または内側に組み込まれていてよい。ブレーキ圧上昇装置は、例えば電気機械式のブレーキ倍力装置であってよく、このブレーキ倍力装置は、出力電圧によって生ぜしめられた電気機械式のブレーキ倍力装置の運転によって、マスタブレーキシリンダ内の圧力およびマスタブレーキシリンダに接続されたホイールブレーキシリンダ内の圧力を上昇可能/上昇させるように、車両のマスタブレーキシリンダに前置可能/前置されている。
図2の実施例では、緊急エネルギアキュムレータ1は、例えば3つの蓄電池20-iを有している。これら3つの蓄電池20-iは、車両/自動車の車載電源網の故障時においても電気機械式のブレーキ倍力装置の少なくとも一時的な運転を保証するために十分である。従って、車両/自動車は、このような状況においてもなお確実に、出力電圧U_outによって制動され得る。この場合、選択的に自律制動または運転者支援制動が可能である。
【0031】
特に、
図1および
図2に概略的に示された緊急エネルギアキュムレータ1は、電気機械式のブレーキ倍力装置の外側および/または内側に組み込まれていてよい。従来の電気機械式のブレーキ倍力装置は、通常は6つのMOSFETをスイッチエレメントとして有している。従って、緊急エネルギアキュムレータ1が多くとも3つの変圧器10-iを有している場合、電気機械式のブレーキ倍力装置は1つのB12ゲートドライバ(B12 Gate Driver)を有していてよく、このB12ゲートドライバによって、緊急エネルギアキュムレータ1の多くとも6つのスイッチエレメントM1乃至M6並びに電気機械式のブレーキ倍力装置の緊急エネルギアキュムレータ外部の電子回路のさらに6つのスイッチエレメントが切換可能である。
【0032】
さらに、緊急エネルギアキュムレータ1は、(場合によっては電気機械式のブレーキ倍力装置に追加して)別の1つのブレーキ圧上昇構成部品を、車両/自動車の車載電源網の故障後に、なお過渡期間運転することができる。例えば緊急エネルギアキュムレータ1は、車載電源網の故障後にステアリング/ステアリングシステムのモータ構成部品を出力電圧によって運転することができる。緊急エネルギアキュムレータ1がステアリングのためにも共に使用される場合は、蓄電池20-iの数を4つの蓄電池に増やすことが可能である。従って緊急エネルギアキュムレータ1は好適には、車両のためのステアリングの外側および/または内側若しくは車両のためのブレーキおよびステアリングシステムの外側および/または内側に組み込まれてよい。同様に、車両バッテリおよび緊急エネルギアキュムレータ1を備えた車両のためのエネルギ供給システムが有利である。
【0033】
図3は、車両の緊急エネルギアキュムレータ1のための製造方法の実施例を説明するためのフローチャートを示す。
【0034】
以下に記載された製造方法によって、例えば前記緊急エネルギアキュムレータ1を製造することができる。しかしながらこの製造方法の実施可能性は、この緊急エネルギアキュムレータ1に限定されるものではない。
【0035】
方法ステップS1で、複数の電気的な装置20-iおよび複数の10-iが準備される。次いで次の方法ステップS2で、それぞれ1つの電気的なエネルギアキュムレータ装置20-iが変圧器10-iの第1の接続部11-iに電気結合され、方法ステップS3で、複数の変圧器10-iが変圧器10-iの第2の接続部12-iに電気結合される。方法ステップS2およびS3は、任意の順序で、同時にまたは時間的に重なって実行されてよい。
【0036】
要約すると、本発明は、車両のための緊急エネルギアキュムレータであって、複数の電気的なエネルギアキュムレータ装置がそれぞれ別個の変圧器によって並行して電気エネルギを車両の電気的なエネルギ供給網に供給することができる、緊急エネルギアキュムレータに関する。また本発明は、車両のための電気機械式のブレーキ倍力装置、車両のためのブレーキシステムおよび/またはステアリングシステムおよび車両のためのエネルギ供給システムに関する。さらに、本発明は、車両の緊急エネルギアキュムレータのための製造方法に関する。
【符号の説明】
【0037】
1 緊急エネルギアキュムレータ
10-i 変圧器
10-1 第1の変圧器
10-2 第2の変圧器
10-3 第3の変圧器
11-i 第1の接続部
12-i 第2の接続部
20-i 蓄電池、電気的なエネルギアキュムレータ装置
20-1 第1の蓄電池
20-2 第2の蓄電池
20-3 第3の蓄電池
31,32 接点、
L1 第1のインダクタ
L2 第2のインダクタ
L3 第3のインダクタ
M-1,M-2,M―3,M-4,M-5,M-6 半導体スイッチ、半導体スイッチエレメント
S1,S2,S3 方法ステップ
U_out 出力電圧