(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】エアバッグ用のシリコーンコーティング
(51)【国際特許分類】
D06M 15/643 20060101AFI20240213BHJP
D06M 13/513 20060101ALI20240213BHJP
D06M 11/74 20060101ALI20240213BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20240213BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20240213BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240213BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240213BHJP
C08K 5/109 20060101ALI20240213BHJP
C08K 5/5435 20060101ALI20240213BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20240213BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20240213BHJP
C08L 83/07 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
D06M15/643
D06M13/513
D06M11/74
D06M11/79
C09D7/40
C09D183/04
C08K3/36
C08K5/109
C08K5/5435
C08L83/04
C08L83/05
C08L83/07
(21)【出願番号】P 2022504125
(86)(22)【出願日】2019-07-30
(86)【国際出願番号】 CN2019098273
(87)【国際公開番号】W WO2021016833
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、シャオフイ
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ユイション
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-348410(JP,A)
【文献】特開2009-007468(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168315(WO,A1)
【文献】特開2018-003194(JP,A)
【文献】特表2013-516521(JP,A)
【文献】特開2018-076394(JP,A)
【文献】特表2012-514143(JP,A)
【文献】特表2019-513907(JP,A)
【文献】特開2018-104560(JP,A)
【文献】特表2007-515560(JP,A)
【文献】特表2013-531695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 10/00- 11/84
13/00- 15/715
C09D 1/00- 10/00
101/00-201/10
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物であって、
a)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基及び/又はアルキニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのケイ素-水素基を含有する直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサン、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)
1分子当たりM単位及びQ単位を含有する有機ケイ素樹脂であって、前記M単位の
一部が
、M
vi単位で
ある、有機ケイ素樹脂、
f)接着促進剤であって、
i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物を含む、接着促進剤、を含
み、
布基材上で硬化すると、EASC99040180A09に従って、105℃及び95%相対湿度での熱エージング後、>600ストロークの耐スクラブ性を有する、組成物。
【請求項2】
前期組成物中のケイ素結合水素基のアルケニル基及びアルキニル基に対するモル比が、ASTME168に従って1:1~5:1であり、及び/又は架橋剤が、1~30重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
接着促進剤(f)が
、前記組成物の約0.3~6重量%の(f)の(i)、(ii)及び(iii)の累積量で前記組成物中に存在する、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
成分(f)の(i)が、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランから選択され、及び/又は、前記組成物の0.1~5重量%の量で存在する、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
成分(f)の(ii)が、両方の分子鎖末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルポリシロキサン、又は両方の分子鎖末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位とのコポリマーであり、各場合において、25℃で500mPa・s以下の粘度を有し、及び/又は前記組成物の0.1~5重量%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
成分(f)の(iii)が、ジルコニウムテトラプロピレート及びジルコニウムテトラブチレート、テトラ-イソプロピルジルコネート、ジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、又はβ-ジケトンを有するジルコニウム錯体から選択されるジルコニウム系触媒である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、前記組成物の硬化を阻害するための抑制剤を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、A部及びB部の2部に保存され、A部が、成分a、b、d、fの(iii)、及び任意にeを含み、B部が、成分a、b、c、fの(i)、fの(ii)、及び任意にeを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の硬化物であるエラストマーコーティングでコーティングされた、エアバッグ布地。
【請求項10】
テキスタイルを請求項1~
8のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物でコーティングする方法であって、前記組成物を一緒に混合することと、テキスタイルを前記組成物でコーティングすることと、前記組成物を前記テキスタイル上で硬化させることとによる、方法。
【請求項11】
テキスタイルを請求項1~
8のいずれか一項に記載のヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物でコーティングする方法であって、前記テキスタイルが、噴霧、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフオーバーローラによるコーティング、ナイフオーバーエアによるコーティング、パディング、浸漬、及びスクリーン印刷によってコーティングされ、並びに/又は10g/m
2~150g/m
2のコート重量で適用される、方法。
【請求項12】
EASC99040180A09に従って、105℃及び95%の相対湿度での熱エージング後に、>600ストロークの耐スクラブ性を有する、コーティングされたテキスタイルを提供するための、請求項1~
8のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、テキスタイル上、特にエアバッグ及び/又はエアバッグ布地上にコーティングされるように設計されたヒドロシリル化硬化性シリコーン組成物、ヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物の硬化物でコーティングされたエアバッグ及び/又はエアバッグ布地、並びにエアバッグ及びエアバッグ布をヒドロシリル化硬化性シリコーンゴム組成物でコーティングするためのプロセスに関する。組成物は、組成物を適用及び硬化させることによって作製されたコーティングされた布地が、強化された耐スクラブ性を有するように設計されている。
【0002】
エアバッグは、概して、テキスタイルバッグ(クッションと呼ばれることもある)、センサ、及び膨張手段からなる。センサが衝突を検出すると、インフレータは、典型的にはガスの放出によってエアバッグの効果的に即時の膨張を引き起こす。エアバッグ及び/又はエアバッグ布地は、合成繊維、例えば、ナイロン-6,6又はポリエステルなどのポリアミドで作製された織布又はニット布地から作製され得る。それらは、十分な機械的強度を提供するために一緒にコーティングされ、次いで縫製された平坦な布片から作製されてもよく、又は一体的に織布シームで一体に織り上げられてもよい。縫製されたエアバッグは、概ね、エアバッグの内側でコーティングされた布表面と組み立てられる。一体に織り上げられた(One-piece woven)エアバッグは、エアバッグの外側でコーティングされる。
【0003】
今日、エアバッグは、最新の車両内の標準的なアクセサリであり、それらの多くは、エアバッグを柔軟性に保つように設計されたシリコーンコーティングでコーティングされ、温度変動、エージング、及び摩耗に耐性がある。それらは、例えば、衝突が展開を引き起こす前に、エアバッグが長期間未使用のままであり得るため、そのような特性を必要とする。これには、エアバッグが固着するのを防ぎ、長年経った後であっても円滑な展開を確保するために、シリコーンコーティングが経時的に非常に安定している必要がある。更に、インフレータが、通常、膨張中に非常に高温のガスを放出するように設計されており、そうでなければ乗客に火傷を引き起こし得ること、及びコーティングが施されている布地が乗客に火傷を引き起こす可能性を防止又は少なくとも著しく低減するように設計されていることを考慮すると、それらには良好な熱安定性が必要である。
【0004】
したがって、耐スクラブ性は、テキスタイル上の、特にエアバッグ及びエアバッグ布地に関しての、シリコーン系コーティングにとって非常に重要な特性である。これは、耐スクラブ性が、布地へのシリコーンコーティングの接着安定性を反映するためである。不十分な耐スクラブ性は、一定期間後に布地からのコーティングの層間剥離又は脱落をもたらす可能性があり、シリコーンコーティングを布地への接着性が低く、衝突又は他の事故によって引き起こされるとエアバッグの展開不良をもたらす可能性がある。
【0005】
今日、ますます安全性を意識する環境において、車両製造業者は、車両の乗客の保護、乗員の保護を改善するためにエアバッグの組み合わせを備えた車両を提供している。これらには、前面エアバッグ、サイドエアバッグ、胸部エアバッグ、サイドカーテンエアバッグ、及び/又は膝エアバッグが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0006】
したがって、エアバッグの安全性及び機能を改善するために、そのような組成物のエラストマー硬化物の物理的特性を改善する一定した必要性があり、例えば、改善された耐スクラブ性を有するエアバッグは、衝突によって引き起こされる突然の展開中にエアバッグの一体性を維持するその能力を高める。
【0007】
本明細書では、ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物が提供され、これは、
a)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基及び/又はアルキニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのケイ素-水素基を含有する直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサンであって、組成物中のケイ素結合水素基のアルケニル基及びアルキニル基に対するモル比が、1:1~5:1である、直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサン、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)M単位及びQ単位を含有する有機ケイ素樹脂であって、M単位の割合が、1分子当たりのMviであり得る、有機ケイ素樹脂、
f)接着促進剤であって、
i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物を含む、接着促進剤、を含む。
【0008】
また、上記組成物の硬化物でコーティングされたテキスタイルも提供される。一実施形態では、テキスタイルは、エアバッグ布地及び/又はエアバッグである。
【0009】
また、ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物でテキスタイルをコーティングする方法であって、コーティング組成物が、
a)1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基及び/又はアルキニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンポリマー、
b)ヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む補強性充填剤、
c)1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのケイ素-水素基を含有する直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサンであって、組成物中のケイ素結合水素基のアルケニル基及びアルキニル基に対するモル比が、1:1~5:1である、直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサン、
d)ヒドロシリル化硬化触媒、
e)M単位及びQ単位を含有する有機ケイ素樹脂であって、M単位の割合が、1分子当たりのMviであり得る、有機ケイ素樹脂、
f)接着促進剤であって、
i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物を含む、接着促進剤、を含み、
組成物を一緒に混合することと、テキスタイルを組成物でコーティングすることと、及び組成物をテキスタイル上で硬化させることとによる、方法も提供される。
【0010】
また、改善された耐スクラブ性を有するコーティングされたテキスタイルを提供するための、以降記載される組成物の使用も提供される。
【0011】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の成分(a)は、1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び/又は少なくとも1つのアルキニル基、あるいは1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基及び/又はアルキニル基、あるいは1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基及び/又はアルキニル基を含有する25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーである。ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)は、式(I):
RaSiO(4-a)/2 (I)
[式中、各Rは独立して、脂肪族ヒドロカルビル基、芳香族ヒドロカルビル基、又はオルガニル基(すなわち、官能基の種類とは無関係に、炭素原子において1つの自由原子価を有する、任意の有機置換基)から選択される]の複数の単位を有する。飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、オクチル、ウンデシル、及びオクタデシルなどのアルキル基、並びにシクロヘキシルなどのシクロアルキル基が例示されるが、それらに限定されない。不飽和脂肪族ヒドロカルビルとしては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニル、シクロヘキセニル、及びヘキセニルなどのアルケニル基、並びにアルキニル基が例示されるが、それらに限定されない。芳香族炭化水素基としては、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、スチリル、及び2-フェニルエチルが例示されるが、それらに限定されない。オルガニル基としては、クロロメチル、及び3-クロロプロピルなどのハロゲン化アルキル基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基などの窒素含有基、ポリオキシアルキレン基、カルボニル基、アルコキシ基、及びヒドロキシル基などの酸素含有基が例示されるが、それらに限定されない。更なるオルガニル基としては、硫黄含有基、リン含有基、及び/又はホウ素含有基が挙げられ得る。下付き文字「a」は、0、1、2又は3であってもよいが、典型的には主に2又は3である。
【0012】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)上の典型的な基の例としては、主にアルケニル基、アルキル基、及び/又はアリール基が挙げられる。基は、ペンダント位置(D又はTシロキシ単位上)であってもよく、又は末端(Mシロキシ単位上)であってもよい。したがって、ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)における好適なアルケニル基は、ビニル、イソプロペニル、アリル、及び5-ヘキセニルなど、典型的には2~10個の炭素原子を含有する。
【0013】
典型的には、アルケニル基及び/又はアルキニル基以外のポリジオルガノシロキサンポリマー(a)に結合したケイ素結合有機基は、典型的には1~10個の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基、及び典型的には6~12個の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から選択され、それらは、非置換であるか、又は、このヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の硬化を妨げることのないハロゲン原子などの基によって置換される。ケイ素結合有機基の好ましい種は、例えば、メチル、エチル、及びプロピルなどのアルキル基、並びにフェニルなどのアリール基である。
【0014】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)の分子構造は、典型的には直鎖状であるが、(前述のように)分子内のT単位の存在によってある程度の分岐が存在していてもよい。
【0015】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)の粘度は、別段の指示がない限り、Brookfield回転粘度計を使用して、1rpmで測定される粘度に対して最も適切なスピンドルを使用して、ASTM D1084に従って測定された、25℃で100~1000,000mPa・s、あるいは25℃で1000~150,000mPa・s、あるいは25℃で1000mPa・s~125,000mPa・s、あるいは25℃で1000mPa・s~100,000mPa・s、あるいは、25℃で1000mPa・s~75,000mPa・sであるべきである。
【0016】
ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)は、例えばアルケニル基及び/又はアルキニル基を含有するポリジメチルシロキサン、アルキルメチルポリシロキサン、アルキルアリールポリシロキサン、又はそれらのコポリマーから選択されてもよく、任意の好適な末端基を有してもよく、例えば、それらはトリアルキル末端、アルケニルジアルキル末端であってもよく、又は、各ポリマーが1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基を含有するという条件で、任意の他の好適な末端基の組み合わせで終端されてもよい。あるいは、ポリジオルガノシロキサンは部分的にフッ素化されていてもよく、例えば、トリフルオロアルキル、例えば、トリフルオロプロピル基及び/又はペルフルオロアルキル基を含んでもよい。したがって、ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)は、例えば、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルメチルフェニルシロキサン、トリアルキル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサン、又はジアルキルビニル末端ジメチルメチルビニルポリシロキサンコポリマーである。
【0017】
例えば、2つの末端にアルケニル基を含有するポリジオルガノシロキサンポリマー(a)は、一般式(II)で表される。
R’R’’R’’’SiO-(R’’R’’’SiO)m-SiR’’’R’’R’(II)
【0018】
式(II)において、各R’は、典型的には2~10個の炭素原子を含有するアルケニル基又はアルキニル基である。アルケニル基としては、ビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、アルケニル化シクロヘキシル基、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、又は同様の直鎖状及び分岐状アルケニル基、並びにアルケニル化芳香族環構造が挙げられるが、これらに限定されない。アルキニル基は、これらに限定されるものではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、アルキニル化シクロヘキシル基、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル、又は同様の直鎖状及び分岐状アルケニル基、並びにアルケニル化芳香族環構造から選択される。
【0019】
R’’はエチレン性不飽和を含有せず、各R’’は同一でも、異なってもよく、典型的には1~10の炭素原子を含有する一価飽和炭化水素基及び典型的には6~12の炭素原子を含有する一価芳香族炭化水素基から個別に選択される。R’’は、非置換でもよく、又は、このヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の硬化を妨げることのないハロゲン原子などの1つ以上の基によって置換されていてもよい。R’’’は、R’又はR’’である。
【0020】
25℃で1000~500,000mPa・sの粘度を有し、1分子当たり2つ以上のアルケニル基又はアルキニル基を含有する1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマー(a)は、組成物の10重量%~90重量%、あるいは、組成物の40~80重量%、あるいは、組成物の50~75重量%の量で存在する。
【0021】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の成分(b)は、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又は炭酸カルシウムなどの補強性充填剤である。シリカの微細化形態は、好ましい補強性充填剤(b)であり、例えば、比較的高い表面積、典型的には少なくとも50m2/gを有するシリカ充填剤である(ISO9277:2010に従うBET法)。例えば、50~450m2/g、あるいは50~400 450m2/g m2/g、あるいは50~300m2/g、あるいは200~300m2/gの表面積を有する充填剤(例えば、ヒュームドシリカ)(ISO9277:2010に従うBET法)
が、典型的には使用される。
【0022】
補強性充填剤(b)がもともと親水性である場合(例えば、未処理のシリカ充填剤)、典型的にはそれを処理剤で処理してそれを疎水性にする。これらの表面改質された補強性充填剤(b)は凝集せず、表面処理により充填剤がポリジオルガノシロキサンポリマー(a)によって容易に湿潤することから、以下に記載のポリジオルガノシロキサンポリマー(a)に均質に組み込むことができる。
【0023】
典型的には、補強性充填剤(b)は、加工中のオルガノシロキサン組成物のクレーピングを防ぐために適用可能な当技術分野で開示されている任意の低分子量有機ケイ素化合物で表面処理され得る。例えば、充填剤を疎水性にして、ひいては取り扱いをより容易にし、他の成分との均質な混合物を得るようにする、オルガノシラン、ポリジオルガノシロキサン、又はヘキサアルキルジシラザンなどのオルガノシラザン、短鎖シロキサンジオール、有機ケイ素環状物、又は脂肪酸若しくはステアリン酸エステルなどの脂肪酸エステルである。具体的な例としては、限定されるものではないが、シラノール末端トリフルオロプロピルメチルシロキサン、シラノール末端ViMeシロキサン、テトラメチルジ(トリフルオロプロピル)ジシラザン、テトラメチルジビニルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、シラノール末端MePhシロキサン、各分子中にジオルガノシロキサンの平均2~20個の繰り返し単位を含有する液状ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンが挙げられる。加工助剤としてのシリカ処理剤と共に、少量の水を添加してもよい。
【0024】
表面処理は、ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物中に導入する前に、又はin situで(すなわち、本明細書のヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の他の成分の少なくとも一部分の存在下で充填剤が完全に処理されるまで、これらの成分を一緒に室温でブレンドすることによって)行うことができる。典型的には、未処理の補強性充填剤(b)を、ポリジオルガノシロキサンポリマー(a)の存在下、インサイチュで、処理剤で処理し、それにより、後で他の成分と混合することができるシリコーンゴムのベース材料を調製する。
【0025】
補強性充填剤は、組成物の1.0~50重量%、あるいは組成物の1~30重量%、あるいは組成物の重量%に基づいて5.0~25重量%の量で存在する。
【0026】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の有機ハイドロジェンポリシロキサン(c)は、1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのケイ素-水素基を含有する直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサンであり、これは、(i)以下に記載される成分(d)によって触媒される、成分(c)中のケイ素結合水素原子のポリマー(a)中のアルケニル基との付加/ヒドロシリル化反応によって、ポリマーを硬化させるための架橋剤として機能する。通常、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(c)は3個以上のケイ素結合水素原子を含有し、それにより、その水素原子がポリマー(a)中の不飽和のアルケニル基又はアルキニル基と反応して、それらとネットワーク構造を形成することにより組成物を硬化させることができる。あるいは、ポリマー(a)が1分子当たり2個より多いアルケニル基又はアルキニル基を有する場合、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(c)の一部又は全てが1分子当たり2個のケイ素結合水素原子を有していてもよい。
【0027】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(c)は、1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのケイ素-水素基を含有する直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサンである。オルガノハイドロジェンポリシロキサン(c)の分子量/粘度は特に限定されないが、典型的には、ポリマー(a)との良好な混和性を得るために、粘度は、ガラスキャピラリ粘度計を使用して25℃で1~5,000m0Pa.sである。
【0028】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(c)は、典型的には、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(c)中のケイ素結合水素原子の総数の、ポリマー(a)中のアルケニル/アルキニル基の総数に対するモル比が0.5:1~20:1になる量で添加される。この比が0.5:1未満であるときは、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1より大きい場合、加熱されたときに、硬化した組成物の硬度が増加する傾向がある。好ましくは、組成物中のケイ素結合水素基のアルケニル基及びアルキニル基に対するモル比は、1:1~5:1、あるいは1:1~3:1である。
【0029】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物のケイ素結合水素(Si-H)の含有量は、ASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して決定される。本発明において、ケイ素結合水素のアルケニル(ビニル)及び/又はアルキニルに対する比は、ヒドロシリル化硬化プロセスに依存する場合に重要である。概ね、これは、組成物中のアルケニル基の総重量%、例えば、ビニル[V]と、組成物中のケイ素結合水素[H]の総重量%とを計算することによって決定され、ここで、水素の分子量を1、ビニルの分子量を27として、ビニルに対するケイ素結合水素のモル比は27[H]/[V]である。組成物において、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(c)は、組成物の1~40重量%、あるいは1~30重量%、あるいは1~20重量%の量で存在する。
【0030】
(d)ヒドロシリル化触媒
存在する場合、プライマー処理されたシリコーンエラストマー基材への適用に使用されるヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物のヒドロシリル化触媒(d)は、好ましくは、白金金属(白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、及びパラジウム)の1つ、又はそのような金属の1つ以上の化合物である。白金及び白金化合物が、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の活性レベルの高さから、好ましい。
【0031】
好ましいヒドロシリル化触媒(d)の例としては、白金黒、様々な固体担体上の白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、及びオレフィンなどのエチレン性不飽和化合物及び塩化白金酸のエチレン性不飽和のケイ素結合炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの錯体が挙げられるが、これらに限定されない。触媒(d)は、白金金属、担体、例えばシリカゲル若しくは粉末木炭に堆積させた白金金属、又は白金族金属の化合物若しくは錯体であってもよい。
【0032】
好適な白金系触媒の例としては、
(i)米国特許第3,419,593号に記載されている、エチレン性不飽和炭化水素基を含有するオルガノシロキサンとの塩化白金酸の錯体;
(ii)六水和物形態又は無水形態のいずれかの塩化白金酸;
(iii)塩化白金酸をジビニルテトラメチルジシロキサンなどの脂肪族不飽和有機ケイ素化合物と反応させることを含む方法によって得られる白金含有触媒;
(d)(COD)Pt(SiMeCl2)2(式中、「COD」は1,5-シクロオクタジエンである)などの米国特許第6,605,734号に記載されているアルケン-白金-シリル錯体;及び/又は
(v)典型的には溶媒中に、例えばトルエンを使用してもよい、約1重量%の白金を含有する白金とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体であるKarstedt触媒が挙げられる。これらは、米国特許第3,715,334号及び同第3,814,730号に記載されている。
【0033】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物のヒドロシリル化触媒(d)は、全組成物中に、触媒量、すなわち、付加/ヒドロシリル化反応を触媒し、所望の条件下で組成物をエラストマー材料に硬化させるために十分な量又は分量で存在する。様々な濃度のヒドロシリル化触媒(d)を使用して、反応速度及び硬化速度を調整することができる。ヒドロシリル化触媒(d)の触媒量は、概ね、組成物のポリマー(a)と充填剤(b)との合わせた重量に基づいた百万部当たりの白金属金属の重量部(ppm)で、0.01ppm~10,000ppm、あるいは0.01~5000ppm、あるいは0.01~3,000ppm、あるいは0.01~1,000ppmである。特定の実施形態において、触媒の触媒量は、組成物の重量に基づいて、0.01~1,000ppm、あるいは0.01~750ppm、あるいは0.01~500ppm、あるいは0.01~100ppmの範囲の金属であってもよい。範囲は、指定されたように、触媒内の金属含有量のみ、又は触媒全体(その配位子を含む)に関連し得るが、典型的には、これらの範囲は、触媒内の金属含有量のみに関連する。触媒は、単一種として、又は2種以上の異なる種の混合物として添加してよい。典型的には、触媒パッケージが提供される形態/濃度に依存して、存在する触媒の量は組成物の0.001~3.0重量%の範囲である。
【0034】
ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物はまた、成分(e)、前述の命名法に基づいて、M単位及びQ単位、並びに任意にMvi単位を含有する有機ケイ素樹脂を含む。任意の好適なMQ樹脂を成分e)として利用することができ、典型的には、成分(e)のMQ樹脂はSiO4/2(Q)シロキサン単位及びR2
3SiO1/2(M)シロキサン単位を含み、式中、各R2は、同じであっても、又は異なっていてもよく、好ましくは20個未満の炭素原子を有する、最も好ましくは1~10個の炭素原子を有する炭化水素基から選択される一価基を示す。好適なR2基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、オクチル基、ウンデシル基及びオクタデシル基などのアルキル基;シクロヘキシルなどの脂環式基、フェニル、トリル、キシリル、ベンジル、α-メチルスチリル及び2-フェニルエチルなどのアリール基が挙げられる。好ましい非反応性R2
3SiO1/2(M)シロキサン単位の例としては、Me3SiO1/2、PhMe2SiO1/2及びPh2MeSiO1/2が挙げられ、Meは以降メチルを示し、Phは以降フェニルを示す。任意に、M型シロキサン単位は、アルケニル基を含有してもよく、その場合、それらはMvi基として示される。通常、アルケニル基はビニル基であるが、他のアルケニル基が代替的に存在してもよい。Mvi基の例としては、ViMe2SiO1/2、ViPh2SiO1/2、Vi2MeSiO1/2、Vi2PhSiO1/2基が挙げられるが、これらに限定されない。M+Mviシロキサン単位のSiO4/2シロキサン単位に対するモル比は、0.5:1~1.2:1、あるいは0.6:1~1.1:1の値を有する。
【0035】
一実施形態では、MQ樹脂(e)は、M及び/又はMvi単位がSiO4/2シロキサン単位(すなわち、Q単位)に結合しており、Q単位の各々が、少なくとも1つの他のSiO4/2シロキサン単位に結合している樹脂部分を含む。M単位のQ単位に対するモル比は、0.5:1~1.2:1、あるいは0.6:1~1.1:1であり、樹脂は、平均1.5~7.5重量%のアルケニル基及び/又はアルキニル基あるいはアルケニル基を含有し、代替的に2~5重量%のアルケニル基及び/又はアルキニル基あるいはアルケニル基を含有する。アルケニル及び/又はアルキニル含有量はASTM E168に従って定量的赤外線分析を使用して決定される。MQ樹脂(e)は、2000~50,000g/mol、あるいは3,000~30,000g/molの数平均分子量を有し得る。合成ポリマー及び樹脂は、異なる重合度を有する巨大分子種、したがって異なる分子量を有する巨大分子種の混合物から常になる。種々のタイプの平均ポリマー分子量が存在し、それらは種々の実験で測定することができる。
【0036】
2つの最重要のものは、数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)である。シリコーンポリマー及び/又は樹脂のMn及びMwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、約10~15%の精度で測定することができる。この技術は標準的であり、Mw、Mn、及び多分散指数(PI)が得られる。重合度(DP)=Mn/Muであり、式中、MnはGPC測定からの数平均分子量であり、Muはモノマー単位の分子量である。PI=Mw/Mnである。DPは、Mwによりポリマーの粘度に関連し、DPが高くなるほど粘度が高くなる。MQ樹脂(e)は、1~60重量%、あるいは1~40重量%の量で組成物中に存在し得、好ましくはMQ又はMMviQ樹脂のいずれかの形態である。
【0037】
本明細書のヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物はまた、
i)分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
(ii)1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
(iii)有機アルミニウム化合物又は有機ジルコニウム化合物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物を含む、接着促進剤(f)を含む。
【0038】
接着促進剤(f)の第1の成分(i)は、エポキシ含有アルコキシシランである。エポキシ含有アルコキシシランの例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、4-グリシドキシブチルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、又は2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランを挙げることができる。成分(f)の(i)は、組成物の0.1~5重量%、あるいは組成物の0.5~3重量%、あるいは組成物の0.5~2重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0039】
接着促進剤(f)の第2の成分(ii)は、分子中に少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有するオルガノポリシロキサンオリゴマー、例えば、分子中にペンダントアルケニル基を含有する、α、ω-ヒドロキシ基若しくはアルコキシ基、又は両方の基を末端とするポリシロキサンである。
【0040】
オリゴマーオルガノポリシロキサンは、例えば、両方の分子鎖末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルポリシロキサン、又は両方の分子鎖末端がジメチルヒドロキシシロキシ単位であるメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサン単位とのコポリマーであり得る。オリゴマーオルガノポリシロキサンは、オルガノポリシロキサン分子の混合物であり得、そのいくつかは分子鎖両末端にシラノール末端基を有し、そのいくつかは、他の末端単位が例えばジメチルメトキシシロキシ単位、トリメチルシロキシ単位又はジメチルビニルシロキシ単位であるジメチルヒドロキシシロキシ末端単位など、1つのシラノール基のみを有する。好ましくは、オリゴマーオルガノポリシロキサンの50重量%超、より好ましくは60~100%は、分子鎖両末端にシラノール末端基を有する分子を含む。
【0041】
オリゴマーオルガノポリシロキサンは、好ましくは、少なくとも3重量%、より好ましくは少なくとも5重量%のビニル基を含有し、最大35又は40重量%のビニル基を含有し得る。最も好ましくは、オリゴマーオルガノポリシロキサンは、5~30重量%のビニル基を含有する。オリゴマーオルガノポリシロキサンは、好ましくは1000~10000の分子量を有する。オリゴマーオルガノポリシロキサンは、好ましくは0.1~300mPa・s、あるいは0.1~200mPa・s、あるいは1~100mPa・sの粘度を有する。(25℃でBrookfield DV 3Tレオメーターを使用して測定)。成分(f)の(ii)は、組成物の0.1~5重量%、あるいは組成物の0.1~3重量%、あるいは組成物の0.1~2重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0042】
接着促進剤(f)の第3の部分(iii)は、接着促進剤の他の成分、すなわち(f)の(i)及び(ii)の反応を触媒するために使用され得、ジルコネート及び/又はアルミネート縮合触媒を含む。ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物の更なる任意成分は、存在する場合、上記の接着促進剤(f)の反応を活性化及び/又は加速するために使用される縮合触媒である。縮合触媒は、ジルコネート、有機アルミニウムキレート、及び/又はジルコニウムキレートを含む有機金属触媒から選択され得る。
【0043】
ジルコネート系触媒は、一般式Zr[OR5]4[式中、各R5は同じであっても、又は異なっていてもよく、1~20個の炭素原子、あるいは1~10個の炭素原子を含有する状若しくは分岐状であり得る一価の、第一級、第二級又は第三級脂肪族炭化水素基を表す]による化合物を含んでもよい。任意に、ジルコネートは、部分不飽和基を含有してもよい。R5の好ましい例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、第三級ブチル基及び分岐状第二級アルキル基、例えば2,4-ジメチル-3-ペンチル基が挙げられるが、これらに限定されない。各R5が同じである場合、好ましくは、R5は、イソプロピル基、分岐状第二級アルキル基又は第三級アルキル基、特に第三級ブチル基である。具体例としては、ジルコニウムテトラプロピレート及びジルコニウムテトラブチレート、テトラ-イソプロピルジルコネート、ジルコニウム(IV)テトラアセチルアセトネート、(ジルコニウム(AcAc)4と呼ばれることもある)、ジルコニウム(IV)ヘキサフルオロアセチルアセトネート、ジルコニウム(IV)トリフルオロアセチルアセトネート、テトラキス(エチルトリフルオロアセチルアセトネート)ジルコニウム、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、ジルコニウム(IV)ジブトキシビス(エチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシビス(2,2,6,6-テトラメチル-ヘプタンチオネート)ジルコニウム、又は配位子として使用されるβ-ジケトン(それらのアルキル置換及びフッ素置換された形態を含む)を有する類似のジルコニウム錯体が挙げられる。
【0044】
好適なアルミニウム系縮合触媒としては、Al(OC3H7)3、Al(OC3H7)2(C3COCH2COC12H25)、Al(OC3H7)2(OCOCH3)、及びAl(OC3H7)2(OCOC12H25)のうちの1つ以上が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0045】
成分(f)の(iii)は、組成物の0.1~5重量%、あるいは組成物の0.1~3重量%、あるいは組成物の0.1~2重量%の量で組成物中に存在し得る。
【0046】
接着促進剤(f)は、典型的には、組成物の約0.3~6重量%の(f)の(i)、(ii)及び(iii)の累積量で、あるいは、0.3重量%~4重量%の(i)、(ii)及び(iii)の累積量で組成物中に存在する。
【0047】
前述のヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物を付加/ヒドロシリル化反応によって硬化させる場合、抑制剤を利用して組成物の硬化を阻害してもよい。これらの抑制剤は、触媒の活性を妨害する又は抑制することによって、貯蔵中の早期硬化を防止するために、及び/又はヒドロシリル化硬化組成物の作用時間若しくはポットライフをより長くするために利用される。ヒドロシリル化触媒(d)の抑制剤、例えば、白金金属系触媒は、当該技術分野において周知であり、ヒドラジン、トリアゾール、ホスフィン、メルカプタン、有機窒素化合物、アセチレンアルコール、シリル化アセチレンアルコール、ジブチルマレエートなどのマレエート、フマレート、エチレン性又は芳香族不飽和アミド、エチレン性不飽和イソシアネート、テトラメチルテトラジニルシクロテトラシロキサンなどのオレフィン性シロキサン、不飽和炭化水素モノエステル及びジエステル、共役エン-イン、ヒドロパーオキシド、ニトリル、及びジアジリジンが挙げられ得る。米国特許第3,989,667号に記載されているようなアルケニル置換シロキサンを使用してもよく、その環状メチルビニルシロキサンが好ましい。
【0048】
白金触媒(d)などのヒドロシリル化触媒の既知の抑制剤の一群としては、米国特許第3,445,420号に開示されているアセチレン化合物が挙げられる。2-メチル-3-ブチン-2-オールなどのアセチレンアルコールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する抑制剤の好ましい一群を構成する。典型的には、これらの抑制剤を含有する組成物は、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度に加熱する必要がある。
【0049】
アセチレンアルコール及びそれらの誘導体の例としては、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-ブチン-1-オール、3-メチルブチノール、3-ブチン-2-オール、プロパルギルアルコール、2-フェニル-2-プロピン-1-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-エチニルシクロペンタノール、1-フェニル-2-プロピノール、3-メチル-1-ペンテン-4-イン-3-オール、及びこれらの混合物が挙げられる。一代替例では、抑制剤は、1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)、テトラメチルテトラジニルシクロテトラシロキサン、3-メチルブチノール及び/又はマレイン酸ジブチルのうちの1つ以上から選択される。
【0050】
存在する場合、場合によっては、触媒(d)の金属1モル当たり1モルの抑制剤と同程度に低濃度の抑制剤により、十分な貯蔵安定性及び硬化速度がもたらされる。他の場合では、触媒(d)の金属1モル当たり最大500モルの抑制剤という抑制剤濃度が必要である。所与のヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物における、所与の抑制剤に対する最適な濃度は、通常の実験で容易に決定できる。上記の混合物もまた使用され得る。選択された抑制剤が商業的に提供/市販されている濃度及び形態に応じて、組成物中に存在する場合、抑制剤は、典型的には、組成物の0.0125~10重量%の量で、あるいは0.001~5重量%の抑制剤で、あるいは0.0125~5重量%の量で存在する。
【0051】
追加の任意成分
追加の任意成分は、その意図された最終用途に応じて、前述の液状シリコーンゴム組成物中に存在し得る。そのような任意成分の例としては、熱伝動性フィラー、ポットライフ延長剤、難燃剤、潤滑剤、非補強性フィラー、顔料及び/又は着色剤、殺菌剤、湿潤剤、熱安定剤、圧縮永久歪添加剤、可塑剤、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0052】
トリアゾールなどのポットライフ延長剤を使用してもよいが、本発明の範囲内では必須とはみなされない。したがって、液状硬化性シリコーンゴム組成物は、ポットライフ延長剤を含まなくてもよい。
【0053】
難燃剤の例としては、アルミニウムトリハイドレート、塩素化パラフィン、ヘキサブロモシクロドデカン、トリフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート、トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェート(臭素化トリス)、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。
【0054】
潤滑剤の例としては、テトラフルオロエチレン、樹脂粉末、黒鉛、フッ素化黒鉛、タルク、窒化ホウ素、フッ素オイル、シリコーンオイル、二硫化モリブデン、及びこれらの混合物又は誘導体が挙げられる。組成物中に存在する場合、難燃剤は、典型的には、組成物の0.1~5重量%の量で存在する。非補強性充填剤としては、粉砕石英、珪藻土、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン及びカーボンブラック、タルク、ウォラストナイトなどが挙げられる。単独で又は上記に加えて使用することができる他の充填剤としては、アルミナイト、硫酸カルシウム(無水石膏)、石膏、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリンなどの粘土、三水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム(例えば、水滑石)、グラファイト、炭酸銅、例えばマラカイト、炭酸ニッケル、例えばザラカイト(zarachite)、炭酸バリウム、例えば毒重石、及び/又は炭酸ストロンチウム、例えばストロンチウム石が挙げられる。
【0055】
その他の充填剤としては、酸化アルミニウム、かんらん石族;ざくろ石族;アルミノケイ酸塩;環状ケイ酸塩;鎖状ケイ酸塩;及び層状ケイ酸塩からなる群からのケイ酸塩が挙げられる。かんらん石族は、ケイ酸塩鉱物、例えばフォルステライト及びMg2SiO4を含むが、これらに限定されない。ざくろ石族は、赤色ざくろ石;Mg3Al2Si3O12;緑ざくろ石;及びCa2Al2Si3O12などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。アルミノケイ酸塩は、ケイ線石;Al2SiO5;ムライト;3Al2O3.2SiO2;カイヤナイト;及びAl2SiO5などの粉砕ケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。環状ケイ酸塩は、非補強性充填剤として利用されてもよく、これは、コージェライト及びAl3(Mg,Fe)2[Si4AlO18]などのケイ酸塩鉱物を含むがこれらに限定されない。鎖状ケイ酸塩族は、粉砕ケイ酸塩鉱物、例えば、珪灰石及びCa[SiO3]を含むが、これらに限定されない。層状ケイ酸塩は、代替的に又は追加的に、非補強性充填剤として使用されてもよく、適切な群は、ケイ酸塩鉱物、例えば、雲母、K2AI14[Si6Al2O20](OH)4;葉蝋石;Al4[Si8O20](OH)4;タルク、Mg6[Si8O20](OH)4;蛇絞石、例えばアスベスト;カオリナイト;Al4[Si4O10](OH)8;及びバーミキュライトなどのケイ酸塩鉱物を含むが、これらに限定されない。1つの代替例では、充填剤は、ヒュームドシリカ、沈殿シリカ、炭酸カルシウム、タルク、雲母、石英、及び酸化アルミニウムのうちの1つ以上から選択される。
【0056】
更なる添加剤としては、トリメチルシリル又はOH末端シロキサンなどのシリコーン流体が挙げられる。そのようなトリメチルシロキシ又はOH末端ポリジメチルシロキサンは、典型的には、Brookfield DV 3Tレオメーターを使用して測定された、25℃で150mPa.s未満の粘度を有する。このようなシリコーン流体は、存在する場合、液状硬化性シリコーンゴム組成物中に、組成物の全重量に基づいて0.1~5重量%の範囲の量で存在することができ、離型剤として機能することができる。
【0057】
顔料の例としては、二酸化チタン、酸化クロム、酸化ビスマスバナジウム、酸化鉄、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0058】
テキスタイルコーティング用の着色剤の例としては、顔料、バット染料、反応性染料、酸性染料、クロム染料、分散染料、カチオン性染料、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
本発明の好ましい実施形態では、顔料及び染料は、低粘度のポリジオルガノシロキサン(成分(a))中に25:75~70:30の比で分散された、顔料及び染料から構成される顔料マスターバッチの形態で使用される。
【0060】
熱安定剤の例としては、金属化合物、例えば、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、水酸化第二鉄、酸化セリウム、水酸化セリウム、酸化ランタン、銅フタロシアニン、水酸化アルミニウム、ヒュームド二酸化チタン、ナフテン酸鉄、ナフテン酸セリウム、セリウムジメチルポリシラノレート、及び銅、亜鉛、アルミニウム、鉄、セリウム、ジルコニウム、チタンなどから選択される金属のアセチルアセトン塩が挙げられる。存在する場合。組成物中の熱安定剤の量は、組成物全体の0.01重量%~1.0重量%の範囲であってもよい。
【0061】
一実施形態では、ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物であって:
a)組成物の10~90重量%、あるいは組成物の40~80重量%、あるいは組成物の50~75重量%の量で1分子当たり少なくとも2つのアルケニル基及び/又はアルキニル基を有する、25℃で100~1000,000mPa・s、あるいは25℃で1000~150,000mPa・s、あるいは1000mPa・s~125,000mPa・s、あるいは25℃で1000mPa・s~10,000mPa・sの粘度を有するポリジオルガノシロキサンポリマー(a)の直鎖状オルガノポリシロキサンポリマー、
b)組成物の1.0~50重量%、あるいは組成物の固形分の1~30重量%、あるいは組成物の固形分の重量%に基づいて5.0~25重量%の量で存在する、ヒュームドシリカ、沈降性シリカ及び/又は炭酸カルシウムを含む補強性充填剤、
c)組成物の1~30重量%、あるいは組成物の1~20重量%、あるいは組成物の1~15重量%の量で、1分子当たり少なくとも2つ、あるいは少なくとも3つのケイ素-水素基を含有する直鎖状トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサン、
d)組成物の0.001~3.0重量%の量のヒドロシリル化硬化触媒、
e)組成物の1~60重量%、あるいは1~40重量%の量で、M単位及びQ単位並びに任意にMvi単位を含有する有機ケイ素樹脂、
f)接着促進剤であって、
i)組成物の0.1~5重量%、あるいは組成物の0.5~3重量%、あるいは組成物の0.5~2重量%の量で、分子中にエポキシ基を有する1つ以上のアルコキシシランと、
ii)組成物の0.1~5重量%、あるいは組成物の0.1~3重量%、あるいは組成物の0.1~2重量%の量で、1分子当たり少なくとも1つのアルケニル基及び少なくとも1つのヒドロキシ基若しくはアルコキシ基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサンオリゴマーと、
iii)組成物の0.1~5重量%、あるいは組成物の0.1~3重量%、あるいは組成物の0.1~2重量%の量で、有機アルミニウム又は有機ジルコニウム化合物組成物を含む有機金属縮合反応触媒と、の混合物及び/又は反応生成物を含む、接着促進剤、を含み、
接着促進剤(f)は、典型的には、組成物の約0.3~6重量%の(f)の(i)、(ii)及び(iii)の累積量で、あるいは、組成物の0.3重量%~4重量%の(i)、(ii)及び(iii)の累積量で組成物中に存在する、ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物が提供される。組成物は、総重量%が100重量%である限りで、上記範囲の任意の組み合わせであり得る。
【0062】
典型的には使用前に、組成物は、成分(b)及び(d)を離して早期硬化を回避するために、A部及びB部の2部に保存される。典型的には、A部組成物は、成分(a)、(c)、及び(d)を含み、B部は、成分(a)、(b)及び(c)を含み、抑制剤が存在する場合、上記の成分(e)は、A部及びB部のいずれか又は両方に存在してもよい。接着促進剤とは無関係に、早期反応を防止するために、成分f)の(iii)は通常、A部に保存され、成分fの(i)及び(ii)は、B部に保存される。
【0063】
存在する場合、組成物中の添加剤は、任意の他の成分の特性に悪影響を及ぼさない限り(例えば、触媒不活性化)、A部又はB部のいずれかに存在し得る。ヒドロシリル化硬化性テキスタイルコーティング組成物のA部及びB部は、使用直前に共に混合されて、全組成物の硬化を開始し、シリコーンエラストマー材料となる。組成物は、任意の好適な比率で混合されるように設計することができ、例えば、A部:B部は、10:1~1:10、あるいは5:1~1:5、あるいは2:1~1:2の比率で、但し、最も好ましくは1:1の比率で、一緒に混合され得る。
【0064】
A部及び/又はB部のそれぞれの成分は、個々に一緒に混合されてもよく、又は、例えば、最終組成物を混合しやすくするために、組み合わせて予め調製した状態で組成物に導入されてもよい。例えば、成分(a)及び(b)は、多くの場合、他の成分と添加する前に、一緒に混合されてLSRポリマーベース又はマスターバッチを形成する。これらは次に、直接製造されている部の他の成分と混合されてもよく、又は、業界で通常マスターバッチと呼ばれる予め調製された濃縮物を製造するために使用されてもよい。
【0065】
この場合、成分の混合を容易にするために、1つ以上のマスターバッチを利用して、成分をうまく混合して、A部及び/又はB部組成物を形成することができる。例えば、「ヒュームドシリカ」マスターバッチを調製することができる。これは、効率的には、その場で処理されたシリカを含むLSRシリコーンゴムベースである。任意の好適な添加剤をそのような組成物に組み込んで、濃縮物/マスターバッチを形成して、導入の容易さを改善し得る。
【表1】
【0066】
したがって、ヒュームドシリカマスターバッチを利用した場合、1:1の重量比で混合される2部型組成物用のA部及びB部が、以下の表2に示され得る。
【表2】
【0067】
組成物はまた、A部に0.3~6重量%の接着触媒を有する接着促進剤と、B部に接着促進剤の他の成分とを含む。各場合において、A部及びB部の組成の表2の全組成は、それぞれ100%である。
【0068】
組成物のA部及びB部は、それぞれの成分の全てを周囲温度で組み合わせることによって調製することができる。この目的のために、先行技術に開示されている、任意の混合技術及びデバイスを用いることができる。使用する具体的な装置は、成分及び最終組成物の粘度によって決定される。好適なミキサーとしては、パドルタイプのミキサー、例えば遊星ミキサー、又はニーダータイプのミキサーが挙げられるが、これらに限定されない。混合中の成分の冷却によって、組成物の早期硬化を避けることが望ましい場合がある。
【0069】
使用前に、それぞれのA部及びB部の組成を所望の比で一緒に混合する。
【0070】
本開示は、前述のコーティング組成物で布地をコーティングするためのプロセスを含む。布地は、好ましくは織布、特に平織り布地及びポリエステルであるが、例えば、ニット又は不織布であり得る。布地は、合成繊維又は天然繊維と合成繊維とのブレンド、例えば、ナイロン-6,6などのポリアミド繊維、ポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル綿、又はガラス繊維から作製され得る。エアバッグ布地として使用するために、布地は、比較的小さな容積に折り畳むことができるが、また例えば爆薬装填の影響下で、高速での展開に耐えるのに十分に強い。前述のコーティング組成物は、概して接着することが難しい平織りナイロン及びポリエステル布地に対する良好な接着性を有する。上記のコーティング組成物は、コーティングされている布地の表面上のフィルム形成が均一であるように、布地に接触する直後に特に良好な接着性及びフィルム形成特性を有する。本発明のコーティング組成物はまた、布地への良好な浸透を有する。上記のコーティングされた布地は、ガス透過性及び/又は良好な気密性を低減する。
【0071】
上記のコーティング組成物は、任意の好適な既知の技術によって布地基材に適用され得る。これらには、噴霧、グラビアコーティング、バーコーティング、ナイフオーバーローラによるコーティング、ナイフオーバーエアによるコーティング、パディング、浸漬、及びスクリーン印刷が挙げられる。コーティング組成物は、細かく切断され、縫製されてエアバッグを組み立てられるエアバッグに、又は一体に織りあげられるエアバッグに適用され得る。コーティング組成物は、概ね、少なくとも10g/m2、あるいは少なくとも15g/m2のコート重量で適用され、必要に応じて、最大100又は150g/m2で適用されてもよい。
【0072】
好ましいとは言えないが、組成物を複数の層に適用することが可能であり、これは合わせて上記のコート重量を有する。必要と見なされれば、例えば、低摩擦を提供する材料の、更なる適合性コーティングをコーティング組成物に適用することも可能である。
【0073】
上記の組成物を硬化させることによって形成されたエアバッグ又はエアバッグ布地コーティングに適用される場合、コーティングされた布地の優れた耐スクラブ性を提供し、更に著しい接着性を達成する。得られたコーティングは、105℃及び相対湿度95%で408時間熱湿潤エージング後に非常に良好な接着耐久性を有する。接着促進剤は、上記のようなコーティング組成物の全般的な特性に、例えば、上述のコーティング組成物の硬化、レオロジー、機械的特性、及び加工性に関して悪影響を及ぼすことなく、上述の組成物とエアバッグ及び/又はエアバッグ布地との間の優れた結合性能を提供する。コーティングされた布地は、低剛性、良好な手触り、優れた耐スクラブ性及びブロッキング防止性能を示す。
【0074】
本明細書の組成物により提供される改善された耐スクラブ性は、布地へのシリコーンコーティングの改善された接着安定性を反映する。シリコーンコーティングが、一定期間後に層間剥離又は脱落するのを防ぐために、優れた耐スクラブ性が重要である。改善された耐スクラブ性により、シリコーンコーティングが布地への安定した接着性を維持し、衝突が展開を引き起こすと、コーティングされたエアバッグが長期間の後に機能することを確実にするシリコーン系コーティングを長期で確実にする。
【0075】
この技術は、任意の好適なエアバッグ用途、特に自動車市場で使用することができるが、また例えば、航空機からの脱出シュート、又は代替的にはテキスタイルバインダーコーティング組成物として使用することができる。上記の組成物が適用される布基材は、織布、特に平織り布地であり得るが、例えば、ニット又は不織布であり得る。布地は、合成繊維又は天然繊維と合成繊維とのブレンド、例えば、ナイロン-6,6などのポリアミド繊維、ポリエステル、ポリアミン、ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル綿、又はガラス繊維から作製されてもよく、好ましくは、織布、特に平織り布地であるが、例えば、ニット又は不織布であり得る。好ましい布地としては、エアバッグ/テキスタイルコーティング用途のためのポリアミド及びポリエステルが挙げられる。
【実施例】
【0076】
以下の実施例では、特に明記しない限り、パーセンテージは重量で示され、全ての粘度測定は、特に指示がない限り25℃で行われる。特に指示がない限り、ポリマーの粘度は、特に指示がない限り、1rpmで測定される粘度に最も適切なスピンドルを有するBrookfield回転粘度計を使用して、ASTM D1084に従って測定した。架橋剤の粘度は、ガラスキャピラリ粘度計を使用して測定した。ビニル基及びSi-H含有量は、それぞれ炭素二重結合伸縮及びシリコーン水素結合伸縮の標準を使用する、ASTME168に従って赤外分光法によって測定した。
調製プロセス
第1の工程として、表1に示される成分を混合し、残留水及び処理剤を除去することによって、その場で処理されたヒュームドシリカマスターバッチをKneaderミキサーで調製した。
【表3】
【0077】
次いで、得られたヒュームドシリカマスターバッチを利用して、以下の表で以下に示す2部型液状シリコーンゴム組成物を作製した:樹脂/ポリマー1混合物は、有機ケイ素樹脂とジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンポリマーとの混合物である。有機ケイ素樹脂は、約21,000g/mol(GPC)の数平均分子量、約0.8:1のM基対Q基のモル比、及び約5重量%のビニル含有量を有する。ポリマーは、0.23重量%のビニル含有量を有し、混合物は、34重量%の樹脂を含み、約6000mPa・sの粘度を有する。
ポリマー1:0.14重量%のビニル含有量及び12,000mPa・sの粘度を有するジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンポリマー。
架橋剤1:トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサン、粘度5mPa/s及び0.75重量%のSi-H含有量
架橋剤2:トリメチル末端ポリジメチルメチルハイドロジェンシロキサン、粘度50mPa/s及び0.72重量%のSi-H含有量
【0078】
次いで、Pt触媒を含有するA部及びSiH架橋剤を含有するB部を、1:100~1:1の好適な比で混合した。以下では、組成物は、Turelloミキサーにおいて1:1の重量比で混合されるように設計されている。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
全ての比較例及び実施例についてのSi-H対ビニル比は、2.5~3:1の領域であった。
【0079】
上記の表2及び3に示される異なる実施例及び比較例の物理的特性について、それらが満足のいくものであることを確認した。試料を、120℃の温度で10分間、2mmの厚さにプレス硬化した。他の物理的特性試験は、ASTM規格に従った(硬度についてはD2204、引張強さ及び破断点伸びについてはD412、粘度についてはD4287、及び引裂強さについてはD624)。
【表8】
【0080】
上記の実施例及び比較例でコーティングされたコーティングされた布地の試料は、Mathis labコーターを使用して調製した。A部及びB部の組成を、スピードミキサーで、1:1の重量比で混合した。次いで、得られた混合物を、ナイフコーティングによってMathis labコーター内のそれぞれPA66(ナイロン66織布)及びPET(ポリエチレンテレフタレート織布)上にコーティングした。次いで、コーティングされた布地を190℃で1分間加熱して、布地上のコーティングを硬化させ、次いで、その後冷却して、各試料について、コート重量は、約35±5g/m
2であることが見出された。
コーティングされた布地の試料もまた、EASC99040180A09に従って、105℃及び95%相対湿度で408時間にわたる熱/湿潤エージングの前後に耐スクラブ(摩耗)性ついて分析し、その結果を以下の表6a及び6bに示す。
【表9】
【表10】
【0081】
テトライソプロポキシチタネート(TIPT)ベースの接着パッケージを含有する比較例2は、比較例2と比較したときにコーティングされた布地の耐スクラブ性を改善したが、熱湿潤エージング後の耐スクラブ性は不十分であったことに留意されたい。本開示の実施例CV-ZCは、スクラブ改善について比較例2の組成物よりもはるかに良好である。本明細書の実施例の組成物を使用して優れた耐スクラブ性を達成し、上記の表6bに見ることができるように、これらの結果は依然として良好であった(HHエージング後>600ストローク)。