(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】エステル化油溶性ポリアルキレングリコール
(51)【国際特許分類】
C08G 65/332 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
C08G65/332
(21)【出願番号】P 2022505569
(86)(22)【出願日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 CN2019099755
(87)【国際公開番号】W WO2021022541
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ドーグス、エドワード
(72)【発明者】
【氏名】グリーブ、マーティン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヤオクン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-241996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するプロセスであって、
前記プロセスが、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールおよび過剰量の吉草酸を含む反応混合物を形成することを含み、
前記反応混合物が、前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、触媒量のオルトリン酸触媒の存在下で形成され
、
前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D1209に従って決定された110未満のAmerican Public Health Association(APHA)単位の色数を有し、
前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが有する、ASTM D7042に従って決定された100℃での運動粘度(KV100)が4mm
2
/秒以下である、
プロセス。
【請求項2】
前記低粘度油溶性ポリアルキレングリコールおよび前記過剰量の吉草酸が、1.01モルの酸:1モルの油溶性ポリアルキレングリコール~10モルの酸:1モルの油溶性ポリアルキレングリコールのモル比で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D1209に従って決定され
た100未満のAPHA単位の色数を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D2270に従って決定された160超の粘度指数を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D2270に従って決定された160超の粘度指数、およびASTM D1209に従った100未満のAPHA単位の色数を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D7042に従って決定され
た3.2mm
2/秒以下のKV100を有する、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記プロセスが、全反応物質の重量に対して1.0重量%未
満の溶媒、または前記反応混合物の総重量に対して0.0重量パーセント
の溶媒を含む、無溶媒プロセスである、請求項5または6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの形成に続いて、前記過剰量の吉草酸の残量を除去することと、
前記過剰量の吉草酸の前記残量の除去に続いて、前記触媒量のオルトリン酸を除去することと、をさらに含む、請求項5~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記過剰量の吉草酸の前記除去された残量を、前記プロセスへの投入物として再利用することをさらに含む、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
有機相から前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを除去することと、乾燥低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、前記除去された低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを乾燥させることと、をさらに含み、前記乾燥低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、前記乾燥された低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの総重量に基づいて
、5重量パーセント未
満の油溶性ポリアルキレングリコールの重量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記低粘度油溶性ポリアルキレングリコールが、前記吉草酸の標準沸点よりも高い理論上の標準沸点を有する、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、エステル化ポリアルキレングリコールに関し、より具体的には、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤は、様々な用途に利用され得る。潤滑剤は、可動部品の表面間の摩擦を制御する、可動部品の摩耗を低減する、可動部品の表面の腐食を低減する、機械的衝撃を減衰させる、および/または密封を形成するなどの、様々な機能を有し得る。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するプロセスを提供する。例えば、本開示は、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールおよび過剰量の吉草酸を含む反応混合物を形成することによって、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するプロセスを提供し、反応混合物は、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、触媒量のオルトリン酸触媒の存在下で形成される。様々な実施形態では、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールは、吉草酸の標準沸点よりも高い理論上の標準沸点を有する。
【0004】
低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、ASTM D1209に従って決定された110未満のAmerican Public Health Association(APHA)単位、100未満のAPHA単位、または70未満のAPHA単位の色数を有し得る。本開示の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、100℃においてASTM D7042に従って決定された4ミリメートル2(mm2)/秒(cSt)以下、または3.2mm2/秒以下の運動粘度(KV100)を有し得る。本開示の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールはまた、ASTM D2270に従って決定された150超または160超の粘度指数を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、本開示の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、他の可能性の中でも、ASTM D2270に従って決定された160超の粘度指数、およびASTM D1209に従った100未満のAPHA単位の色数を有し得る。
【0005】
本開示の上記の概要は、各開示された実施形態を説明するようにも、本開示のすべての実施態様を説明するようにも意図されていない。より具体的に示す本明細書は、例示的な実施形態を例示するものである。本出願全体にわたるいくつかの場所では、例のリストを通じて指針が提供され、これらの例は、様々な組み合わせで使用することができる。どの場合も、列挙されたリストは、代表的なグループとしてのみ機能し、排他的なリストとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示のプロセスは、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールおよび過剰量の吉草酸を含む反応混合物を形成することによって、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造し、反応混合物は、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、触媒量のオルトリン酸触媒の存在下で形成される。様々な実施形態では、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールは、吉草酸の標準沸点よりも高い理論上の標準沸点を有する。
【0007】
本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、様々な用途に望ましい1つ以上の特性を有し得る。
【0008】
例えば、本明細書のプロセスは、望ましくは色数が低い、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。すなわち、一般に、色数は、反応物質のうちの1つの分解および/または油溶性ポリアルキレングリコールを形成するときの副反応などの副反応に起因し得る。例えば、標準/理論上の沸点がより高いグリコールエーテルを用いようとする場合、沸点が比較的低いビス-ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル(標準沸点摂氏約230度)などの出発成分をともに用いるプロセスでは、臭いおよび色をあまり含まない製品を得るのが難しい場合がある。しかしながら、本明細書のプロセスは、様々な実施形態において、110未満のAPHA単位、100未満のAPHA単位、または70未満のAPHA単位の色数を有する低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。例えば、いくつかの実施形態では、標準沸点が低いグリコールエーテルおよび/または対応する酸(アジピン酸および/または安息香酸)よりも沸点が低いグリコールエーテルを用いる、米国特許第9,908,839B2号に詳述されるような他のアプローチとは対照的に、低粘度油溶性ポリアルキレングリコール出発成分は、本明細書に詳述されるように、存在する酸、例えば吉草酸の標準沸点よりも高い理論上の標準沸点を有する。
【0009】
さらに、本明細書に記載されるプロセスは、他のいくつかの潤滑剤と比較して、より高い粘度指数値を提供し得る、本明細書の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。粘度指数は、潤滑剤の粘度が、40~100℃の温度とともにいかに変化するかの尺度である。潤滑剤について、比較的低い粘度指数値(例えば、<120)は、比較的高い粘度指数値(例えば、>150)を有する潤滑剤と比較して、高温での潤滑剤の粘度のより大きな低減を示す場合がある。したがって、多くの用途について、比較的高い粘度指数値が有益であり、その結果、潤滑剤は、低温から高温に移行する極端な温度での粘度変化があまり目立たず、一般に安定した粘度を維持する。本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、他のいくつかの潤滑剤と比較して、より高い粘度指数値を提供し得る。
【0010】
さらに、本明細書で定義される、40℃で15センチストークス(cSt)未満の運動粘度、および/または100℃で4cSt以下の運動粘度を有するような低粘度潤滑剤などの、いくつかの潤滑剤は、例えば、高粘度潤滑剤と比較して、より揮発性である。本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度潤滑剤であり、すなわち、本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、40℃で15cSt未満の運動粘度、および100℃で4cSt以下の運動粘度を有する。すなわち、本開示のプロセスは、40℃で15cSt未満の運動粘度、および100℃で4cSt以下の運動粘度を有し得、したがって、低粘度潤滑剤とみなすことができるエステル化油溶性ポリアルキレングリコール、すなわち、低粘度エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。0℃以下などの低温で比較的低い粘度、例えば、運動粘度および/または動的粘度を有する低粘度潤滑剤は、自動車のエンジンの周りに潤滑剤を注入するときなど、より低いエネルギー損失の提供に有利に役立つことができる。本明細書のプロセスは、他のいくつかの潤滑剤と比較して、低温で比較的低い粘度、例えば、運動粘度および/または動的粘度を有し得る、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。
【0011】
上述のように、本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、油溶性ポリアルキレングリコールおよび酸を反応させることによって形成される。鉱油基油とは異なり、油溶性ポリアルキレングリコールは、ポリマー主鎖中の酸素の有意な存在を有する。本開示の実施形態は、油溶性ポリアルキレングリコールが、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドのアルコール開始コポリマーであり、そこで、ブチレンオキシドから誘導される単位が、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから誘導される単位の合計に基づいて、50重量パーセント~95重量パーセントであることを提供する。50重量パーセント~95重量パーセントのすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、油溶性ポリアルキレングリコールは、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシドから誘導される単位の合計に基づいて、下限50、55、または60重量パーセント~上限95、90、または85重量パーセントのブチレンオキシドから誘導される単位を有し得る。様々な実施形態について、プロピレンオキシドは、1,2-プロピレンオキシドおよび/または1,3-プロピレンオキシドであり得る。様々な実施形態について、ブチレンオキシドは、1,2-ブチレンオキシドまたは2,3-ブチレンオキシドから選択され得る。好ましくは、1,2-ブチレンオキシドは、油溶性ポリアルキレングリコールを形成するのに使用される。
【0012】
油溶性ポリアルキレングリコールのアルコール開始剤は、モノオール、ジオール、トリオール、テトロール、またはこれらの組み合わせであり得る。アルコール開始剤の例としては、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、およびドデカノールなどのモノオールが挙げられるが、これらに限定されない。ジオールの例は、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、および1,4ブタンジオールである。トリオールの例は、グリセロールおよびトリメチロールプロパンである。テトロールの例は、ペンタエリスリトールである。モノオール、ジオール、トリオール、および/またはテトロールの組み合わせが使用され得る。アルコール開始剤は、1~30個の炭素原子を含み得る。1~30個の炭素原子のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、アルコール開始剤は、下限1、3、または5個の炭素原子~上限30、25、または20個の炭素原子を有し得る。
【0013】
油溶性ポリアルキレングリコールは、既知の条件を用いて既知のプロセスによって調製され得る。油溶性ポリアルキレングリコールは、市販のものを入手することができる。市販の油溶性ポリアルキレングリコールの例としては、両方ともDow Chemical Companyから入手可能である、UCON(商標)OSP-12およびUCON(商標)OSP-18などの商品名UCON(商標)下の油溶性ポリアルキレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0014】
油溶性ポリアルキレングリコールと反応して、本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを形成する酸は、カルボン酸であり得る。酸の例としては、酢酸、プロパン酸、吉草酸、例えば、イソ吉草酸、n-ペンタン酸、カプリル酸、ドデカン酸、これらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、酸は、形成する吉草酸であり得る
【0015】
本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコール、油溶性ポリアルキレングリコールおよび酸は、モル過剰の油溶性ポリアルキレングリコールを用いる他のアプローチとは対照的に、過剰量の、吉草酸などの酸と反応させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書のプロセスは、1.01モルの酸:1モルの油溶性ポリアルキレングリコール~10モルの酸:1モルの油溶性ポリアルキレングリコール以上のモル比を用いることができる。1.01:1の酸のモル:油溶性ポリアルキレングリコールのモル~10モルの酸:1モルの油溶性ポリアルキレングリコールのすべての個々の値および部分範囲が含まれる。例えば、酸および油溶性ポリアルキレングリコールは、酸対油溶性ポリアルキレングリコール(すなわち、ポリエーテル)のモルを、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、1.5、1.01のモル比で反応させることができる。
【0016】
低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、既知の条件を用いて本明細書に記載されるプロセスによって調製され得る。例えば、本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、エステル化プロセス、例えば、フィッシャーエステル化(Fisher Esterification)によって形成され得る。エステル化では、他の既知の成分の中でも、酸触媒、中和剤、および/または塩吸収剤などの既知の成分が、利用され得る。中和剤の例は、中でも、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、および水酸化カリウムである。塩吸収剤の例は、中でも、ケイ酸マグネシウムである。
【0017】
酸触媒の例は、リン酸、例えばオルトリン酸である。いくつかの実施形態では、酸触媒は、2以上のpKaを有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、酸触媒は、2.16のpKaを有するオルトリン酸であり得る。酸触媒は、本明細書に記載される、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するための触媒量で存在することができ、例えば、反応混合物の総重量に対して0.1~5.0重量パーセントの量で存在することができる。例えば、いくつかの実施形態では、酸触媒の量は、本明細書に記載されるものなどの反応混合物の約0.8重量パーセントであり得る。いくつかの実施形態では、リン酸は、85%リン酸の水溶液として供給される。
【0018】
本開示のプロセスは、ASTM D1209に従って決定された110未満のAPHA単位の色数を有し得る、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。例えば、色数は、110未満のAPHA、100未満のAPHA単位、または70未満のAPHA単位であり得る。いくつかの実施形態では、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、27~63の色数を有し得る。27~63のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、本開示の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、下限27または34~上限40、59、または63の色数を有し得る。
【0019】
本開示のプロセスは、100℃で4cSt以下、または3.2cSt以下である運動粘度を有し得る、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、100℃においてASTM D7042により決定した場合に、下限2.8、3.0、または3.2cSt~上限3.9、4.0、または4.1cStの運動粘度を有し得る。本開示のプロセスは、40℃で15cSt未満である運動粘度を有し得る、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。例えば、本開示のプロセスは、40℃においてASTM D7042により決定された場合、下限10cSt~上限15または13cStの運動粘度を有し得る、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。様々な実施形態では、本明細書に開示される低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、40℃で15cSt未満の運動粘度、および100℃で4cSt以下の運動粘度を有する。したがって、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、低粘度潤滑剤として、かつ/または様々な低粘度潤滑剤用途に有利に利用され得る。
【0020】
本開示のプロセスは、ASTM D2270に従って決定された150超の粘度指数を有し得る、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。例えば、いくつかの実施例では、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、150~180の範囲の粘度指数を有し得る。150~180のすべての個々の値および部分範囲が含まれ、例えば、本開示の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、下限150または160~上限170または180の粘度指数を有し得る。
【0021】
本開示のプロセスは、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、無溶媒であることを提供する。本明細書で使用される場合、無溶媒であるということは、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを形成するために、全反応物質の重量に対して1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量パーセント未満、または反応混合物の総重量に対して0.0重量パーセントを用いるプロセスを指す。例えば、いくつかの実施形態では、プロセスは、本明細書に詳述されるような、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを形成するときに、ゼロ溶媒(反応混合物の総重量に対して0.0重量パーセント)を用いることができる。溶媒の例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、シクロヘキサン、ヘプタン、および使用される反応条件/成分に対して不活性であり、蒸留による水の除去を容易にし、本明細書に記載されるような許容可能な温度で沸騰する、他の溶媒が挙げられる。
【0022】
本開示のプロセスは、本明細書で述べたように、基油に油溶性(可溶性)である、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供する。例えば、10~0.01重量%の本開示の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを、周囲温度(23℃)にて90~99.9重量パーセント(重量%)の基油中に溶解し、透明な均一混合物を作製することができ、ここで、重量%は、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールと基油との混合物の総重量に基づく。
【0023】
本明細書で使用される場合、本開示の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが溶解する基は、American Petroleum Institute(API)のグループIの炭化水素基油、APIのグループIIの炭化水素基油、APIのグループIIIの炭化水素基油、APIのグループIVの炭化水素基油、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。好ましくは、潤滑剤調合物の基油は、APIのグループIIIの炭化水素基油である。APIのグループI~IVの炭化水素油の組成は以下の通りである。グループIIおよびグループIIIの炭化水素油は、典型的には、過酷な水素化工程を使用して従来のグループIの供給原料から調製されて、芳香族化合物、硫黄、窒素の含有量を低減させ、続いて、脱ロウ、水素化仕上げ、抽出、および/または蒸留工程を行って、完成した基油を生成する。グループIIおよびIIIの基原料は、硫黄、窒素、および芳香族化合物の含有量が非常に低いという点で、従来の溶媒精製されたグループIの基原料とは異なる。結果として、これらの基油は、従来の溶媒精製された基原料とは組成的に非常に異なる。APIは、これらの異なる基原料の種類を次のように分類している:グループI、>0.03重量%の硫黄、および/または<90体積%の飽和、80~120の粘度指数;グループII、≦0.03重量%の硫黄、および≧90体積%の飽和、80~120の粘度指数;グループIII、≦0.03重量%の硫黄、および≧90体積%の飽和、>120の粘度指数。グループIVは、ポリアルファオレフィン(PAO)である。水素化処理された基原料および触媒的に脱ロウされた基原料は、硫黄および芳香族化合物の低い含有量のため、一般にグループIIおよびグループIIIの区分に分類される。
【0024】
本開示の実施形態は、油溶性である低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを提供するプロセスを提供し含み、例えば、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、10/90~90/10の低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコール/鉱物油の重量パーセントのレベルで、APIのグループIの鉱物油に混和性を示す。グループIの鉱物油の例は、Totalから入手可能なTotal 150SNである。
【0025】
本開示の実施形態は、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するプロセスを提供する。このプロセスは、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールおよび過剰量の吉草酸を含む反応混合物を形成することを含み得る。反応混合物は、本明細書に記載される、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、触媒量のオルトリン酸触媒の存在下で形成され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、プロセスは、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの形成に続いて、過剰量の吉草酸の残量を除去することと、過剰量の吉草酸の残量の除去に続いて、触媒量のオルトリン酸を除去することと、を含み得る。そのような実施形態では、プロセスは、過剰量の吉草酸の除去された残量を、プロセスへの投入物として再利用することをさらに含み得る。例えば、いくつかの実施形態では、過剰量の吉草酸の残量を、他の可能性の中でも、真空蒸留(容易に蒸留/真空蒸留することができる水との共沸混合物の形成)およびアルカリ水溶液抽出によって除去することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、プロセスは、有機相から低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを除去することと、乾燥低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、除去された低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを乾燥させることと、を含み得る。そのような実施形態では、乾燥低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールは、乾燥した低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの総重量に基づいて、約5重量パーセント未満、4重量パーセント未満、3重量パーセント未満、または2重量パーセント未満の油溶性ポリアルキレングリコールの重量を有する。
【実施例】
【0028】
本実施例では、例えば、以下を含む、材料に関する様々な用語および名称を使用する。
【0029】
OSP-1(油溶性ポリアルキレングリコール、UCON(商標)OSP-12、ドデカノール開始ランダムコポリマー[50重量パーセントのプロピレンオキシド/50重量パーセントのブチレンオキシド;平均分子量374g/モル、25℃で16~17の範囲のpKa値]、The Dow Chemical Companyから入手可能);OSP-2(油溶性ポリアルキレングリコール、UCON(商標)OSP-18、ドデカノール開始ランダムコポリマー[50重量パーセントのプロピレンオキシド/50重量パーセントのブチレンオキシド;平均分子量467g/モル、25℃で16~17の範囲のpKa値]、The Dow Chemical Companyから入手可能);p-トルエンスルホン酸[PTSA](酸触媒、Sinopharm Chemical Reagent Co.Ltd(SCRC)から入手可能);リン酸(酸触媒、Sigma-Aldrichから入手可能);水酸化ナトリウム(中和剤、Sigma-Aldrichから入手可能)、ケイ酸マグネシウム(MagSil、塩吸収剤、Dallas Groupから入手可能);吉草酸(n-ペンタン酸)(酸、Dow Chemical Company入手可能)。
【0030】
実施例1(Ex.1)を実施例6のように形成し、実施例6におけるOSP-2ではなくOSP-1に変更し、表1の比率を用いて約1064gの実施例1を得た。
実施例2(Ex.2)を実施例6のように形成し、実施例6におけるOSP-2ではなくOSP-1に変更し、表1の比率を用いて約1500gの実施例2を得た。
実施例3(Ex.3)を実施例6のように形成し、実施例6におけるOSP-2ではなくOSP-1に変更し、表1の比率を用いて約1465gの実施例3を得た。
比較例A(C.Ex.A)を次のように形成した。トルエン(500mL、434g)中のOSP-1(374g、1モル)および吉草酸(102g、1モル)を1.90g(0.001モル)のパラトルエンスルホン酸と混合して、ディーンスターク(Dean-Stark)トラップを使用して135℃で蒸留し、18.0mLの水を除去した。冷却後、1.12g(0.002モル)の水酸化カリウムを添加し、次に10gのMagSilを添加し、濾過前にスラリーを60℃まで温めた。溶媒を真空蒸発により除去して、388gの黄色の液体を得た。
実施例4(Ex.4)を、表2の比率を用いて実施例6のように形成し、約1091gの実施例4を得た。
実施例5(Ex.5)を、表2の比率を用いて実施例6のように形成し、約1504gの実施例5を得た。
比較例B(C.Ex.B)を次のように形成した。トルエン(500mL、434g)中のOSP-2(350g、0.75モル)および吉草酸(76.5g、0.75モル)を1.42g(0.0075モル)のパラトルエンスルホン酸と混合して、ディーンスターク(Dean-Stark)トラップを使用して165℃で蒸留し、13.0mLの水を除去した。冷却後、50gの炭酸ナトリウムを添加し、次に10gのMagSilを添加し、濾過前にスラリーを60℃まで温めた。溶媒を真空蒸発により除去して、330gの黄色の液体を得た。
実施例6(Ex.1)、次のように低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するプロセス。温度制御された加熱マントル内で磁気撹拌させながら、温度制御された水冷還流スプリッターを上に載せた、高さ12インチ、直径1インチである真空ジャケット付きの銀メッキしたビグリュー(Vigreux)蒸留カラムを上に載せた、3リットル(L)丸底ガラスフラスコに、OSP-2(1352.5グラム(g);2.90モル)、吉草酸(589.8g;5.77モル)、およびリン酸(85%で24.86g)を充填して、反応混合物を形成した。ドライアイスで保護されたEdwards Vacuumポンプによって供給された真空を適用し、ガスの生成が停止するまで、反応混合物を約667パスカル[5トル]未満の圧力で保持した。窒素ブリードを使用して真空を約5333パスカル[40トル]に調整し、反応混合物を加熱還流した。留出物を、摂氏60度(℃)の最大オーバーヘッド温度および120℃のポット温度で、約26時間にわたって1:1の還流比を用いて除去し、67.05gの留出物を除去した。真空を約24000パスカル[18トル]に調整し、33.98gのさらなる留出物を70℃の最大ヘッド温度で除去した。真空を約133パスカル[1トル]未満に調整し、222.22gのさらなる留出物(合計323.25g)を90℃の最大オーバーヘッド温度および120℃のポット温度で除去した。溶液を50℃まで冷却し、窒素を用いて真空を開放した。645.48gの水中の50.85gの50%水酸化ナトリウム水溶液の溶液を、撹拌しながら留出物に添加し、混合物を形成した。50℃で1時間撹拌後、混合物のpHは6.57であった。34.86gのさらなる20%水酸化ナトリウム水溶液を加え、50℃でさらに1時間撹拌を続けた。撹拌後、混合物のpHは10.74であった。混合物を3Lの分液漏斗に移し、下部の754.31gの水相を除去した。上部の有機相(1539.8g)を49.26gの無水ケイ酸マグネシウムと混合し、任意の残留物の酸性度を低減/除去し、得られた混合物を真空下で濾過した。133パスカル[1トル]未満の真空を濾液上で2~4時間維持し、1508.0gの重さの透明溶液を得た(94%収率、40のAPHAの色数、HPLCアッセイによる1.3重量%のOSP 2)。
【0031】
運動粘度をASTM D7042に従って決定した[KV
40は40℃での運動粘度であり、KV
100は100℃での運動粘度である]。粘度指数[VI]をASTM D2270に従って決定した。ASTM D1209に従って決定された色数。結果を表1および表2に報告する。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【0032】
表1および2のデータは、実施例1~6の各々が、比較例AおよびBのものと同様の運動粘度値[KV40およびKV100]および粘度指数[VI]値を有するが、実施例1~6は各々、改善された、すなわち、比較例AおよびBと比較してより低い色数を提供することを示している。具体的には、実施例1~6の色数は、それぞれ、40、34、27、59、63、および40であるが、比較例AおよびBの色数は、それぞれ、131および140である。すなわち、実施例1~6は、比較例AおよびBによって用いられるより酸性の触媒(パラトルエンスルホン酸(p-TSA、pKa=-1.34))から生じるより高い色数値と比較して、改善されたより低い色数値を示す。
【0033】
特に、実施例1~6はまた、油溶性ポリアルキレングリコールと反応させる酸の標準沸点(吉草酸、186℃の標準沸点)よりも高い理論上の標準沸点を有する油溶性ポリアルキレングリコールを用い、化学量論的に過剰量で存在する酸を有する。反応水を除いて、酸は反応の最低沸騰成分である。すなわち、実際には、油溶性ポリアルキレングリコールは、油溶性ポリアルキレングリコールの計算された標準沸点に実際に沸騰/到達する前に熱分解する可能性がある。熱分解は250℃を超えると発生するため、その理論上の沸点は250℃を超える。したがって、油溶性ポリアルキレングリコールの理論上の標準沸点は、物質の分解温度を超える計算された標準沸点を指す。本明細書で使用される場合、標準沸点は、物質が1気圧の圧力で沸騰する温度を指す。上述のように、実施例1~6は、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの形成に続いて、過剰量の吉草酸の残量を除去し、次いで、触媒量の酸触媒(オルトリン酸)を除去する。低粘度油溶性ポリアルキレングリコールが、酸の標準沸点よりも高い理論上の標準沸点(例えば、250℃超の温度)を有する場合、過剰量の酸の残量の除去に続いて、酸触媒(オルトリン酸)を除去することは可能である。理論に束縛されるものではないが、過剰量の酸の除去に続いて、酸触媒を除去することは、酸の除去の前にグリコールエーテルを除去する他のアプローチと比較して、望ましくは、副生成物の形成、例えば、不飽和副生成物および/または有色副生成物を最小化すると考えられている。さらに、過剰量の酸を用いることにより、望ましくは、反応を加速させることを促進し、完成/理論上の最大収率までの低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造する(表1および2の高収率によって証明される)。なおさらに、過剰量の酸を用いることにより、過剰量の有機酸を容易に除去することができるため(ポリエーテルよりもその沸点が低い場合)、かつ/または過剰量の酸の残量をプロセスの投入物として容易に再利用することができるため、低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの製造を容易にする。さらに他には、比較例AおよびBにおける、反応水以外の最低沸点成分のようなトルエンなどの溶媒の使用を回避することにより、別個の単離工程にて生成物から溶媒を除去する必要性が排除され、反応溶媒を用いて反応性成分を希釈することを避けることによって、プロセスの質量スループットを増加させる。
本発明は、以下の態様にも関する。
(1)低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを製造するプロセスであって、前記プロセスが、低粘度油溶性ポリアルキレングリコールおよび過剰量の吉草酸を含む反応混合物を形成することを含み、前記反応混合物が、前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、触媒量のオルトリン酸触媒の存在下で形成される、プロセス。
(2)前記低粘度油溶性ポリアルキレングリコールおよび前記過剰量の吉草酸が、1.01モルの酸:1モルの油溶性ポリアルキレングリコール~10モルの酸:1モルの油溶性ポリアルキレングリコールのモル比で存在する、上記(1)に記載のプロセス。
(3)前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D1209に従って決定された110未満のAmerican Public Health Association(APHA)単位、100未満のAPHA単位、または70未満のAPHA単位の色数を有する、上記(1)に記載のプロセス。
(4)前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D2270に従って決定された160超の粘度指数を有する、上記(1)~(3)のいずれか一項に記載のプロセス。
(5)前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D2270に従って決定された160超の粘度指数、およびASTM D1209に従った100未満のAPHA単位の色数を有する、上記(1)に記載のプロセス。
(6)前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、ASTM D7042に従って決定された4ミリメートル
2
(mm
2
)/秒以下、または3.2mm
2
/秒以下のKV100を有する、上記(5)に記載のプロセス。
(7)前記プロセスが、全反応物質の重量に対して1.0重量%未満、0.5重量%未満、0.1重量パーセント未満、または前記反応混合物の総重量に対して0.0重量パーセントを含む、無溶媒プロセスである、上記(5)または(6)に記載のプロセス。
(8)前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの形成に続いて、前記過剰量の吉草酸の残量を除去することと、前記過剰量の吉草酸の前記残量の除去に続いて、前記触媒量のオルトリン酸を除去することと、をさらに含む、上記(5)~(7)のいずれか一項に記載のプロセス。
(9)前記過剰量の吉草酸の前記除去された残量を、前記プロセスへの投入物として再利用することをさらに含む、上記(8)に記載のプロセス。
(10)有機相から前記低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを除去することと、乾燥低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを生成するため、前記除去された低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールを乾燥させることと、をさらに含み、前記乾燥低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールが、前記乾燥された低色数エステル化油溶性ポリアルキレングリコールの総重量に基づいて、約5重量パーセント未満、4重量パーセント未満、3重量パーセント未満、または2重量パーセント未満の油溶性ポリアルキレングリコールの重量を有する、上記(1)に記載のプロセス。
(11)前記低粘度油溶性ポリアルキレングリコールが、前記吉草酸の標準沸点よりも高い理論上の標準沸点を有する、上記(1)に記載のプロセス。