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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】自己粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240213BHJP
   C09J 123/20 20060101ALI20240213BHJP
   A44B 18/00 20060101ALI20240213BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J123/20
A44B18/00
H05K1/03 610J
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022508441
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2021011183
(87)【国際公開番号】W WO2021187595
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2020048764
(32)【優先日】2020-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020135699
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020177619
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】西川 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】田原 修二
(72)【発明者】
【氏名】品田 恒利
(72)【発明者】
【氏名】上田 剛史
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-194132(JP,A)
【文献】特開2016-014129(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047321(WO,A1)
【文献】特開2018-119138(JP,A)
【文献】特開平08-308611(JP,A)
【文献】特開2017-038931(JP,A)
【文献】国際公開第2012/042878(WO,A1)
【文献】特開2001-026073(JP,A)
【文献】特表2018-532538(JP,A)
【文献】特開2001-130598(JP,A)
【文献】特開2005-238633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
A44B18/00
B32B
B65D
C08F210/14
C08J5/00
H05K
A61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂組成物からなる自己粘着シートであって、
前記樹脂組成物100質量%に対して、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体の含有量が60質量%以上であり、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位とを含み、
前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、前記4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%としたとき、前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、
当該自己粘着シートは、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が10℃以上50℃以下の範囲に少なくとも1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であり、
当該自己粘着シートの一方の面における算術平均粗さRaが0.01~10μmの範囲内であり、かつ十点平均粗さRzが0.1~50μmの範囲内であり、複数の当該自己粘着シート同士が接するようにして用いられる、自己粘着シート。
【請求項2】
前記自己粘着シートの動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度10℃以上40℃以下の範囲に少なくとも1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.8以上3以下である、請求項1に記載の自己粘着シート。
【請求項3】
前記自己粘着シートの平均厚みが0.01mm以上30mm以下の範囲内である、請求項1または2に記載の自己粘着シート。
【請求項4】
当該自己粘着シートの一方の面における算術平均粗さRaが3.5μm以下である、請求項1乃至いずれか一項に記載の自己粘着シート。
【請求項5】
前記自己粘着シートは、面内方向において平行線状、波状、格子状、メッシュ状、ハニカム状、およびドット状の中から選ばれる1または2以上の形状に加工されている、請求項1乃至いずれか一項に記載の自己粘着シート。
【請求項6】
請求項1乃至いずれか一項に記載の自己粘着シートが複数であって、当該自己粘着シート同士が接する積層部を備える、固定部材。
【請求項7】
請求項1乃至いずれか一項に記載の自己粘着シートを着脱面とする、面ファスナー。
【請求項8】
自己粘着シートと、
配線と、
を備える配線基板であって、
当該自己粘着シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂組成物からなり、
前記樹脂組成物100質量%に対して、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体の含有量が60質量%以上であり、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位とを含み、
前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、前記4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%としたとき、前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、
当該自己粘着シートは、以下の条件を満たすものであり、
前記自己粘着シート側の外表面を生体の皮膚に密着させるようにして用いられる、配線基板。
(条件)
当該自己粘着シートについて、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が10℃以上50℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
【請求項9】
前記配線は、電極と電気的に接続され、かつ、
前記自己粘着シートは、前記配線を被覆し、前記電極を露出させる開口を有する、請求項に記載の配線基板。
【請求項10】
変形性を有する、請求項またはに記載の配線基板。
【請求項11】
前記自己粘着シートは絶縁性を有する、請求項乃至10いずれか一項に記載の配線基板。
【請求項12】
前記配線は、導電性インクにより形成されている、請求項乃至11いずれか一項に記載の配線基板。
【請求項13】
前記配線基板は、前記自己粘着シートの外表面の一部に緩やかに湾曲する吸盤状凹部を有する、請求項乃至12いずれか一項に記載の配線基板。
【請求項14】
前記配線基板は、外縁部の厚みが中央部の厚みよりも薄い、請求項乃至13いずれか一項に記載の配線基板。
【請求項15】
請求項乃至14いずれか一項記載の配線基板と、
前記自己粘着シートの外表面に露出した電極と、
前記配線に電気的に接続される電子部品と、
を有する、電子デバイス。
【請求項16】
自己粘着面を有し、以下の要件1を満たす自己粘着シートからなる自己粘着部材を含む封止部材であって、
当該封止部材は、前記自己粘着面が対向することによって開閉部が形成され、前記開閉部は、対向する前記自己粘着面同士が離れることによって開き、かつ、対向する前記自己粘着面同士が粘着することによって閉じるように構成され、
当該自己粘着シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む樹脂組成物からなり、
前記樹脂組成物100質量%に対して、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体の含有量が60質量%以上であり、
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位とを含み、
前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、前記4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~3のα-オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%としたとき、前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が60モル%以上90モル%以下である、封止部材。
(要件1)昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が10℃以上50℃以下の範囲に少なくとも1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
【請求項17】
さらに、前記自己粘着部材に対して前記自己粘着面とは反対側に配置される樹脂板を含み、
前記樹脂板は、以下の要件2~要件4を満たす請求項16に記載の封止部材。
(要件2)前記樹脂板は、曲げ弾性率が500MPa~2500MPa(JIS K7171)である。
(要件3)前記樹脂板は、厚みが500μm~3000μmである。
(要件4)前記樹脂板は、両端にヒンジ構造を備える。
【請求項18】
前記自己粘着部材と前記樹脂板との間にクッション材を含む請求項17に記載の封止部材。
【請求項19】
チューブ、カテーテル、電源ケーブル、通信ケーブル及びワイヤからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上が、前記開閉部を貫通する請求項16乃至18いずれか一項に記載の封止部材。
【請求項20】
請求項16乃至19いずれか一項に記載の封止部材と、包装材料と、を備える包装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己粘着シートに関する。より詳細には、自己粘着シートおよびこれを用いた配線基板、封止部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤を介さなくてもフィルム自体が有する粘着性により粘着できる自己粘着性フィルムが知られている。例えば、特許文献1には、特定のエラストマーを含み、自動車用ワイヤーハーネスの外装材等に用いられる自己粘着性シートが開示されている。
【0003】
一方で、折り曲げや伸縮などの変形性を有する電子デバイスの開発がおこなわれている(たとえば、特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-70676号公報
【文献】特開2020-47818号公報
【文献】特開2020-10052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的な面ファスナーは、フック状に起毛された面と、ループ状に密集して起毛された面とを対向させることで、繰り返し脱着して使用できる。
しかしながら、面ファスナーの脱着面は、繰り返しの使用により、付着物により吸着力が低減したり、ループ部がフックによって損傷、劣化し、吸着力が落ちるなどの問題があった。また、ある程度広範な面積が必要なため、デザイン上の制限があり、スタイリッシュなデザインには不向きな側面があった。
【0006】
そこで、本発明者は、自己粘着性シートを面ファスナーのように重ね合わせて用いることに着目し、研究を重ねたところ、特許文献1に記載されるような従来の自己粘着性シートにおいては、面方向における固定性において改善の余地があることを見出した。
【0007】
すなわち、第1の本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、固定性が向上した自己粘着シート、固定部材および面ファスナーを提供するものである。
【0008】
また一方で、近年、変形性を有する電子デバイスの中でも生体に装着して利用されるウェアラブルデバイス等が高い注目を集めている。ウェアラブルデバイスは、軽量化・薄型化・小型化に加え、可撓性や伸縮性といったフレキシブル性が求められる。しかしながら、軽量化・薄型化・小型化を実現しつつ、生体に対して良好に密着できるウェアラブルデバイスは未だ開発されていなかった。
【0009】
本発明者は、新たに生体などに対して良好な密着性を有する配線基板の開発に着目し、研究を重ねたところ、特定の条件を満たすシートを用いることで、生体に対して良好な密着性が得られることを見出した。すなわちシートに含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体の所定の損失正接を指標として、これを制御することで、配線基板が使用される環境温度において良好な粘性が発揮される結果、配線基板として適切な形状追従性や密着性が得られることが見出され、第2の本発明が完成された。
【0010】
また、開閉部を備える封止部材を用いて、様々な封止対象物を封止されることが知られている。上記封止対象物としては、果物などの食品、注射器、薬剤、医療用チューブなどの医療機器、患者の傷口などの患部、隔離を要する感染症患者等が挙げられる。
医療現場、食品を取り扱う現場などでは、菌の侵入又は漏れを防ぐ為、特定区域をフィルム等で封止して密封する場合がある。
例えば、食品分野では、外部からの菌、昆虫などの侵入を防ぐ為、封止部材の内部を加圧して侵入を防ぐことがある。
例えば、医療分野では、感染症患者を受け入れる際に、感染防止を図るために外部と隔離する観点から、密封性の有る隔離フィルム等で封止し、内部を陰圧にして菌の漏れ、拡散を防ぐように区分けすることがある。
【0011】
上記の例において、封止部材内部の密封性が劣るために、菌の侵入又は漏れを防ぐことができない場合がある。
特に、開閉部が閉口状態である場合において、開閉部の密閉性を高めることが困難であった。
【0012】
そこで、第3の発明が解決しようとする課題は、常温に近い環境下において、開閉部の密閉性に優れる封止部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、面方向における固定性に優れる自己粘着シートを実現するために鋭意検討した結果、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む自己粘着シートにおいて、当該4-メチル-1-ペンテン系重合体における所定の損失正接を指標として、これを制御しつつ、自己粘着シート本体の表面粗度を特定することの有効性を初めて見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち、本発明によれば、以下に示す第1の発明、第2の発明および第3の発明が提供される。
【0015】
[1]
4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む自己粘着シートであって、
当該自己粘着シートは、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であり、
当該自己粘着シートの一方の面における算術平均粗さRaが0.01~10μmの範囲内であり、かつ十点平均粗さRzが0.1~50μmの範囲内である、自己粘着シート。
[2]
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位とを含む、[1]に記載の自己粘着シート。
[3]
前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、前記4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%としたとき、前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が10モル%以上90モル%以下である、[1]または[2]に記載の自己粘着シート。
[4]
前記自己粘着シートの動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上40℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.8以上3以下である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の自己粘着シート。
[5]
前記自己粘着シートの平均厚みが0.01mm以上30mm以下の範囲内である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の自己粘着シート。
[6]
当該自己粘着シートの一方の面における算術平均粗さRaが3.5μm以下である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の自己粘着シート。
[7]
前記自己粘着シートは、面内方向において平行線状、波状、格子状、メッシュ状、ハニカム状、およびドット状の中から選ばれる1または2以上の形状に加工されている、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の自己粘着シート。
[8]
[1]乃至[7]いずれか一つに記載の複数の自己粘着シート同士が接する積層部を備える、固定部材。
[9]
[1]乃至[8]いずれか一つに記載の自己粘着シートを着脱面とする、面ファスナー。
【0016】
[10]
自己粘着シートと、
配線と、
を備える配線基板であって、
当該シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含み、かつ以下の条件を満たすものである、配線基板。
(条件)
当該自己粘着シートについて、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
[11]
前記配線は、電極と電気的に接続され、かつ、
前記自己粘着シートは、前記配線を被覆し、前記電極を露出させる開口を有する、[10]に記載の配線基板。
[12]
変形性を有する、[10]または[11]に記載の配線基板。
[13]
前記自己粘着シートは絶縁性を有する、[10]乃至[12]いずれか一つに記載の配線基板。
[14]
前記配線は、導電性インクにより形成されている、[10]乃至[13]いずれか一つに記載の配線基板。
[15]
前記配線基板は、前記自己粘着シートの外表面の一部に緩やかに湾曲する吸盤状凹部を有する、[10]乃至[14]いずれか一つに記載の配線基板。
[16]
前記配線基板は、外縁部の厚みが中央部の厚みよりも薄い、[10]乃至[15]いずれか一つに記載の配線基板。
[17]
前記自己粘着シート側の外表面を生体の皮膚に密着するようにして用いられる、[10]乃至[16]いずれか一つに記載の配線基板。
[18]
[10]乃至[17]いずれか一つ記載の配線基板と、
前記自己粘着シートの外表面に露出した電極と、
前記配線に電気的に接続される電子部品と、
を有する、電子デバイス。
【0017】
[19]
自己粘着面を有し、以下の要件1を満たす自己粘着シートからなる自己粘着部材を含み、
前記自己粘着面が対向することによって開閉部が形成され、
前記開閉部は、対向する前記自己粘着面同士が離れることによって開き、かつ、対向する前記自己粘着面同士が粘着することによって閉じる、封止部材。
(要件1)昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
[20]
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位とを含む、[19]に記載の封止部材。
[21]
さらに、前記自己粘着部材に対して前記自己粘着面とは反対側に配置される樹脂板を含み、
前記樹脂板は、以下の要件2~要件4を満たす[19]または[20]に記載の封止部材。
(要件2)前記樹脂板は、曲げ弾性率が500MPa~2500MPa(JIS7171)である。
(要件3)前記樹脂板は、厚みが500μm~3000μmである。
(要件4)前記樹脂板は、両端にヒンジ構造を備える。
[22]
前記自己粘着部材と前記樹脂板との間にクッション材を含む[19]乃至[21]いずれか一つに記載の封止部材。
[23]
チューブ、カテーテル、電源ケーブル、通信ケーブル及びワイヤからなる群から選ばれる1つまたは2つ以上が、前記開閉部を貫通する[19]乃至[22]いずれか一つに記載の封止部材。
[24]
[19]乃至[23]いずれか一つに記載の封止部材と、包装材料と、を備える包装部材。
【発明の効果】
【0018】
第1の本発明によれば、固定性が向上した自己粘着シート、固定部材および面ファスナーを提供することができる。第2の本発明によれば、密着性が良好な配線基板、および電子部品を提供することができる。第3の発明によれば、常温に近い環境下において、開閉部の密閉性に優れる封止部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第2実施形態の配線基板を模式的に示した断面図である。
図2】第2実施形態の配線基板の変形例を模式的に示した断面図である。
図3】平行線状の間隙を有するシートの一例を模式的に示した平面図である。
図4】波状の間隙を有するシートの一例を模式的に示した平面図である。
図5】ハニカム状のシートの一例の一例を模式的に示した平面図である。
図6】メッシュ状のシートの一例の一例を模式的に示した平面図である。
図7】格子状のシートの一例の一例を模式的に示した平面図である。
図8】第2実施形態の配線基板の変形例を模式的に示した断面図である。
図9】開閉部を囲うために用いられる自己粘着部材の一実施態様を示す概略図である。
図10】加工後の自己粘着部材を重ね合わせることで開閉部を製造する方法を説明するための概略図である。
図11】他の材料に取り付けられた本開示の封止部材の実施態様を示す概略図である。
図12】クッション材を含む封止部材を示す概略図である。
図13】樹脂板及びクッション材を含む封止部材を示す概略図である。
図14】自己粘着面同士を離すことによって開閉部を開く方法を示す模式図である。
図15】開閉部に貫通部材を貫通させる方法を示す模式図である。
図16】貫通部材を挟み込んだ開閉部を閉じる方法を示す模式図である。
図17】貫通部材を挟み込んだ開閉部が密着した状態を維持する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態について、適宜、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0021】
本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
本明細書中、「シート」は、一般的に「シート」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「フィルム」と呼ばれているものも含む概念である。
なお、一般的に「シート」と呼ばれているものは厚さが250μm以上であり、一般的に「フィルム」と呼ばれているものは厚さが250μm未満である。
また、本件明細書において「自己粘着」とは、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシートの面同士を40℃に設定したヒートシーラー(テスター産業製TP701B)用いて、0.026MPaで1秒間圧力をかけ、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、24時間置いた後の引張試験(チャック間距離50mm、引張速度50mm/分)での最大せん断応力(MPa)が2.0MPa以上であるものを意図する。
【0022】
<第1実施形態>
まず、第1の発明の実施形態について、説明する。
【0023】
1.自己粘着シート
[損失正接(tanδ)]
本実施形態に係る自己粘着シートは、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、上記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
例えば、自己粘着シートを縦50mm×幅5mmの試験片に切り出し、周波数1.59Hz、昇温速度4℃/分、測定温度範囲0℃~110℃、歪量0.1%、チャック間距離20mm、引張モードの条件で、レオメータを用いて測定することができる。
【0024】
本発明者らは、固定性に優れる自己粘着シートを実現するために鋭意検討した。その結果、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む自己粘着シートにおいて、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度範囲および損失正接の極大値を上記範囲に調整することにより、固定性、柔軟性および形状追従性の性能バランスを向上できることを見出した。
【0025】
かかる理由の詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。
まず、周波数1.59Hzという比較的低周波数領域での損失正接(tanδ)を高くすることによって、瞬間的な衝撃などの力と比較して時間をかけてかかる力(遅い力ともいう)に対しては追従しやすくなる。そのため、自己粘着シート同士を粘着させた際や粘着後の使用時に付加される力により、自己粘着シートの表面形状が互いに追従し、これを引き剥がそうとする力(特に面方向の力)に対して固定力が高まると推測される。
さらに、10℃以上100℃以下の範囲において損失正接の極大値が上記範囲内である自己粘着シートは、変形する際に与えられる力学的エネルギーの多くを熱エネルギーに変換でき、エネルギーを多く吸収できるため、変形後の復元速度が緩やかになると考えられる。その結果、自己粘着シートが有する柔軟性を維持しながら、変形に良好に追従でき、その結果、固定性が向上できると考えられる。
【0026】
本実施形態に係る自己粘着シートの上記損失正接は、例えば、(1)後述する4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の種類や配合割合、(2)シートの架橋の有無、(3)自己粘着シート成形方法等を適切に調節することにより、上記範囲内に制御することが可能である。
具体的には、例えば、自己粘着シート中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の配合割合を高めること、シートに対し架橋処理をおこなわないこと等が挙げられる。
【0027】
本実施形態に係る自己粘着シートは、固定性を良好にする観点から、未架橋であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る自己粘着シートは、例えば、電子線やγ線を用いた電離性放射架橋等の架橋処理がなされていない未架橋シートであることが好ましい。これにより10℃以上100℃以下の範囲における損失正接の極大値を向上させることができ、固定性により一層優れる自己粘着シートを得ることができる。
【0028】
本実施形態に係る自己粘着シートにおいて、動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上80℃以下の範囲に1つ以上あることが好ましく、10℃以上60℃以下の範囲に1つ以上あることがより好ましく、10℃以上50℃以下の範囲に1つ以上あることがさらに好ましく、10℃以上50℃以下の範囲に1つあることが特に好ましい。これにより、自己粘着シートが25℃~40℃程度の人肌に接したとき、または自己粘着シートが人体に近い位置に配置されたときに、より良好な固着性が得られるようになる。
【0029】
また、本実施形態に係る自己粘着シートにおいて、上記損失正接の極大値は0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。そして本実施形態に係る自己粘着シートにおいて、上記損失正接の極大値は3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
これにより、本実施形態に係る自己粘着シートの固定性を得つつ、柔軟性および形状追従性の性能バランスをより良好にすることができる。ここで、損失正接の極大値が大きいほど、自己粘着シートの粘性的な性質が強いことを意味する。粘性的な性質が強い自己粘着シートは、変形する際に与えられる力学的エネルギーのより多くを熱エネルギーに変換でき、エネルギーをより多く吸収できるため、変形後の復元速度がより一層緩やかになると考えられる。その結果、自己粘着シートが有する柔軟性を維持しながら、変形後の形状をより一層良好に保持できたり、変形により一層良好に追従できたりし、結果として、面方向に対する固定性を向上できると考えられる。
【0030】
[表面粗度]
本実施形態に係る自己粘着シートは、一方の面の算術平均粗さRaが0.01~10μmの範囲内であり、かつ十点平均粗さRzが0.1~50μmである。これにより、良好な固定性が得られる。算術平均粗さRaは、好ましくは0.02~8μmであり、より好ましくは0.03~5μmである。また、自己粘着シートの使用温度において自己粘着シートの表面の微細な凹凸が絡み合うことにより良好な接着性を得る点からは、算術平均粗さRaは、好ましくは3.5μm以下、より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。また、十点平均粗さRzは、好ましくは0.2~40μmであり、より好ましくは0.3~25μmであり、さらに好ましくは0.3~20μmである。
本実施形態において、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzを組み合わせて制御することによって、凹凸のばらつきを効果的に抑制し、自己粘着シート全面においてより均一な固定力が得られるようになる。
また、本実施形態に係る自己粘着シートは、少なくとも粘着面(固定面)となる側の面の算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzが、上記の数値範囲を満たすものであればよい。言い換えると、後述の面ファスナーにおいて、少なくとも自己粘着シート同士が対抗する面側において、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzが、上記の数値範囲を満たす。
【0031】
本実施形態に係る自己粘着シートの表面粗度の調整方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、シート製造過程でエンボス加工を施す等の型成型による方法、シートを巻き取る際、シートの間に間紙(セパレータ)を挟み込み、間紙の表面形状を転写させる方法、研磨加工、並びにウォーターブラスト及びエアーブラスト等のブラスト処理等により行ってもよい。なかでも、ブラスト処理としては、ウォーターブラスト処理が好ましい。
【0032】
算術平均粗さRa、及び十点平均粗さRzは、JIS B0610-2001に準拠して測定できる。
【0033】
[厚み]
本実施形態に係る自己粘着シートの厚みは特に限定されないが、好ましくは0.01mm以上30mm以下の範囲であり、より好ましくは0.01mm以上10mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.02mm以上5mm以下の範囲であり、ことさらに好ましくは0.03mm以上2mm以下の範囲である。
本実施形態に係る自己粘着シートの厚みを、上記下限値以上とすることにより、固定性を向上しつつ、形状追従性、機械的特性、成形性、および耐湿性等の良好なバランスが得られる。
本実施形態に係る自己粘着シートの厚みを、上記上限値以下とすることにより、良好な固定性を保持しつつ、軽量性、外観、および取扱い性を良好にできる。
【0034】
本実施形態に係る自己粘着シートは、用途に応じて、通気性を高めるために通気孔を有してもよい。例えば、機械式パンチング、ニードル加工、レーザーパーフォレーション、ウォータージェット等の加工技術により、表裏に連通した多数の通気孔を設けることができる。
【0035】
[密度]
本実施形態に係る自己粘着シートのASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.3~1.5g/cm、より好ましくは0.5~1.2g/cm、さらに好ましくは0.8~0.9g/cm、ことさらに好ましくは0.83~0.85g/cmである。
【0036】
[透明性]
本実施形態の自己粘着シートは、後述する透明性を活かした用途に適用される場合、可視光線に対する内部ヘイズ(以下、単に「内部ヘイズ」ともいう)が、30%以下であることが望ましい。
ここで、「内部ヘイズ」とは、自己粘着シートの外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズを指す。また、「内部ヘイズ」は、自己粘着シートに対して、JIS-K7105に準拠して、25℃で測定したときの値である。
【0037】
本実施形態の自己粘着シートの内部ヘイズは30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、13%以下であることが更に好ましく、5%以下であることがこと更に好ましく、2.0%以下であることが更に一層好ましく、1.0%以下であることが特に好ましい。
一方、本実施形態の自己粘着シートの内部ヘイズは、透明性の観点からは低ければ低いほどよいが、粘着性などとのバランスの観点からは、その下限値は、0.01%以上であることが好ましい。
すなわち、本実施形態の自己粘着シートの透明性は、内部ヘイズによって評価することができる。
【0038】
また、本実施形態の自己粘着シートの透明性は、上記の内部ヘイズだけでなく、内部光線透過率によって評価されてもよい。
ここで、「内部光線透過率」とは、自己粘着シートの外表面の形状による影響を除外した光線透過率を指す。
【0039】
本実施形態の自己粘着シートの内部光線透過率は、90.0%以上が好ましく、95.0%以上がより好ましく、97.0%以上が更に好ましく、98.0%以上がこと更に好ましく、99.0%以上が更に一層好ましく、理想的には100%である。
【0040】
本実施形態の自己粘着シートの内部ヘイズおよび内部光線透過率は、具体的には、以下のようにして測定することができる。
【0041】
-内部ヘイズ-
以下の方法により、本実施形態の自己粘着シートの内部ヘイズ(以下、内部ヘイズ(H1)ともいう)を得る。
まず、予めガラス板2枚の間に、シリコンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96-100CS)のみを挟んでヘイズ(H2)(%)を測定した。次に、シリコンオイルで表面を均一に塗らした上記自己粘着シートを上記のガラス板2枚で挟んでヘイズ(H3)(%)を測定する。
次に、以下の式(1)のようにこれらの差をとることで、上記自己粘着シートの内部ヘイズ(H1)(%)を得る。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)-ヘイズ(H2) (1)
【0042】
なお、ヘイズ(H2)及びヘイズ(H3)(いずれも単位は%)は、それぞれ、下記測定条件下で下記装置を用いて測定する。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC-HIIIDPK
試料サイズ:幅30mm×長さ30mm
測定条件:JIS-K7136(2000)に準拠
測定温度:室温(25℃)
【0043】
-内部光線透過率-
本実施形態の自己粘着シートの内部ヘイズの測定中、ヘイズ(H2)の測定において、ヘイズ(H2)ではなく光線透過率(T2)(%)を測定し、ヘイズ(H3)の測定において、ヘイズ(H3)ではなく光線透過率(T3)(%)を測定する。次に、以下の式(2)により、自己粘着シートの内部光線透過率(T1)(%)を得る。
内部光線透過率(T1)=100-(光線透過率(T2)-光線透過率(T3)) (2)
【0044】
以下、本実施形態に係る自己粘着シートを構成する各成分について説明する。
【0045】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体]
本実施形態に係る自己粘着シートは、4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む。これにより、損失正接(tanδ)の極大値をより大きくすることができる。
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)としては、例えば、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(c1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位(c2)とを含む4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)が挙げられる。
ここで、本実施形態において、「炭素原子数2~20のα-オレフィン」は特に断らない限り4-メチル-1-ペンテンを含まないことを意味する。
【0046】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、自己粘着シートの柔軟性および固定性をより向上させる観点から、構成単位(c1)と構成単位(c2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(c1)の含有量が10モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、自己粘着シートの柔軟性や機械的特性等をより良好にする観点から、構成単位(c1)と構成単位(c2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(c1)の含有量が30モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、構成単位(c1)の含有量が50モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましく、構成単位(c1)の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上40モル%以下であることがさらにより好ましく、構成単位(c1)の含有量が65モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上35モル%以下であることが特に好ましい。
【0047】
本実施形態において、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)に用いられる炭素原子数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、直鎖状又は分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物等が挙げられ、直鎖状のα-オレフィンが好ましい。
【0048】
直鎖状α-オレフィンの炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~5、さらに好ましくは2~3である。直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン等が挙げられ、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選択される一種または二種以上が好ましく、エチレンおよびプロピレンから選択される少なくとも一種がより好ましい。
分岐状のα-オレフィンの炭素原子数は、好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。分岐状のα-オレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン等が挙げられる。
環状オレフィンの炭素原子数は、好ましくは5~15である。環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0049】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノ又はポリアルキルスチレン等が挙げられる。
共役ジエンの炭素原子数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~10である。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン等が挙げられる。
【0050】
官能基化ビニル化合物としては、例えば、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸およびその酸無水物や酸ハライド、アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミン等の不飽和アミン、(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、不飽和エポキシ化合物、エチレン性不飽和シラン化合物等が挙げられる。
上記水酸基含有オレフィンとしては、例えば、炭素原子数2~20、好ましくは2~15の直鎖状又は分岐状の末端水酸基化α-オレフィン等が挙げられる。
上記ハロゲン化オレフィンとしては、例えば、炭素原子数が2~20、好ましくは2~15の直鎖状又は分岐状のハロゲン化α-オレフィン等が挙げられる。
【0051】
これらの炭素原子数2~20のα-オレフィンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でも炭素原子数2~5のα―オレフィンが好ましく、エチレン、プロピレンがより好適であるが、プロピレンを使用すると、柔軟性等をより良好にできる点で特に好ましい。
【0052】
なお、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、本発明の目的を損なわない範囲で、構成単位(c1)と構成単位(c2)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成としては、非共役ポリエン由来の構成単位が挙げられる。
非共役ポリエンとしては、炭素原子数が好ましくは5~20、より好ましくは5~10の直鎖状、分岐状又は環状のジエン、各種のノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。これらの中でも、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
【0053】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体の135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、自己粘着シートの柔軟性や機械的強度をより良好にする観点から、0.01~5.0dL/gであることが好ましく、0.1~4.0dL/gであることがより好ましく、0.5~3.0dL/gであることがさらに好ましく、1.0~2.8dL/gであることが特に好ましい。
【0054】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.810~0.850g/cm、より好ましくは0.820~0.850g/cm、さらに好ましくは0.830~0.850g/cmである。
【0055】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体は種々の方法により製造することができる。例えば、マグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号、国際公開第01/027124号、特開平3-193796号公報、および特開平02-41303号公報等に記載のメタロセン触媒;国際公開第2011/055803号に記載されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0056】
本実施形態に係る自己粘着シート中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の含有量は特に限定されないが、自己粘着シートの全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、一方、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下、さらにより好ましくは98質量%以下、特に好ましくは97質量%以下である。
これにより、衝撃吸収性、柔軟性、形状追従性、軽量性、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、耐湿性等のバランスにより優れた自己粘着シートを得ることができる。
【0057】
本実施形態に係る自己粘着シートは、上記4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)以外の成分を含んでもよい。
【0058】
[改質樹脂(a2)]
本実施形態に係る自己粘着シートは、外観や肌触り、固定性をより良好にする観点から、性改質樹脂(a2)(ただし、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を除く)を含有してもよい。本実施形態に係る改質樹脂(a2)は、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびゴムから選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
上記の熱可塑性樹脂(ただし、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を除く)としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性ポリオレフィン樹脂;脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)、ポリエーテルブロックアミド共重合体等の熱可塑性ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等の熱可塑性ビニル芳香族系樹脂;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;ポリフッ化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ETFE等のフッ素系樹脂;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイド;ポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂;石油樹脂等が挙げられる。
ゴムとしては、例えば、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α-オレフィン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
さらに、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、酸変性スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。
また、これらの改質樹脂(a2)をアクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸等により酸変性したものであってもよい。
これらの改質樹脂(a2)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
これらの改質樹脂(a2)の中でも、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体から選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエーテルブロックアミド、アイオノマー、フッ素系樹脂、酸変性フッ素系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂およびスチレン系エラストマーから選択される一種または二種以上で、添加により溶融張力を向上させるものがより好ましい。
また、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)と適度な相容性があるものがさらに好ましい。さらに、スチレン系エラストマーの中で、クラレ社製のビニルSIS(製品名:ハイブラー、銘柄5127)、ビニルSEPS(製品名:ハイブラー、銘柄7125)、および旭化成社製SEBS(製品名:S.O.E、銘柄:S1605、S1611、およびL609)についても、相容性、損失正接の極大値を示す温度範囲、損失正接の極大値の大きさの観点から、好ましく用いることができる。
【0061】
本実施形態に係る自己粘着シートは、これらの改質樹脂(a2)の中から1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0062】
本実施形態に係る自己粘着シート中の改質樹脂(a2)の含有量は特に限定されないが、自己粘着シートの全体を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
改質樹脂(a2)の含有量が上記下限値以上であると、本実施形態に係る自己粘着シートの外観や肌触り、固定性等をより良好にすることができる。改質樹脂(a2)の含有量が上記上限値以下であると、本実施形態に係る自己粘着シートの固定性、柔軟性等の性能バランスをより良好にすることができる。
【0063】
[その他の成分]
本実施形態に係る自己粘着シートは、必要に応じて、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、着色剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤を配合してもよい。これらの中でも、可塑剤、軟化剤、天然油および合成油は、本実施形態に係る自己粘着シートの固体粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度および損失正接の極大値を調整するために、種類および添加量を制御して用いてもよい。
【0064】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む樹脂組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る自己粘着シートは、単層であってもよく、多層であってもよい。多層である場合、少なくとも1層が4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む層であればよく、2層以上が4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含んでもよい。
【0066】
<自己粘着シートの製造方法>
本実施形態に係る自己粘着シートは、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む樹脂組成物または4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)をシート状に成形することにより得ることができる。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができ、例えば、押出成形、インフレーション成形、カレンダーリング成形等の公知の方法を適用することができる。なかでも、押出成形装置により成形することが好ましい。また、自己粘着シートを多層構造とする場合にも、共押出(マルチダイを使用した押出)、各種ラミネート法など、公知の方法を適宜適用することができる。
【0067】
2.固定部材
本実施形態に係る固定部材は、上記の複数の自己粘着シート同士が対向するように直接接するように積層された積層部を備えるものである。上記の自己粘着シートは、面方向の固定性に優れるため、層間の密着性が良好となり、積層部の層間?離が高度に抑制される。
積層部は、自己粘着シートを2層積層したものであってもよく、3層以上を積層したものであってもよく、長尺の自己粘着シートを折りたたんで重ねることもできる。
【0068】
また、積層部に、上記の自己粘着シートとは異なる、その他部材を積層した複合体としてもよい。
たとえば、上記の自己粘着シートは、固定性、柔軟性および形状追従性の性能バランスに優れるため、その他部材に対する接着性に優れている。そのため、上記の自己粘着シートを長期間使用しても、上記の自己粘着シートとその他部材との接着性を維持することができ、耐久性に優れることができる。すなわち、本実施形態に係る複合体は、柔軟性、形状記憶性、応力緩和性、および耐久性の性能バランスに優れる。
【0069】
本実施形態に係る複合体を形成する方法は各種公知の方法が適用可能である。
例えば、上記の自己粘着シートに対し、その他部材を積層し、必要に応じてプレス等により加熱圧着、または溶着することにより複合体を作製することができる。
また、上記の自己粘着シートとその他部材との間に接着剤を付与し、次いで、上記の自己粘着シートとその他部材を接着剤を介して接合することにより、複合体を作製することもできる。
接着剤としては、SBR系溶剤接着剤や、EVA、石油樹脂、またはEVAと石油樹脂との混合物等からなるホットメルト接着剤を好適に用いることができる。
【0070】
その他部材としては特に限定されないが、例えば、織布、不織布、合成繊維、人工皮革、合成皮革、天然皮革、毛皮、金属、炭素材、ゴム、熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、高分子発泡体、メッシュ構造体(経編繊維、ダブルラッセルメッシュ、3次元スプリング構造体等)、繊維強化プラスチック、紙、木材、ガラス、石材、セラミック等が挙げられる。これらの部材は一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0071】
3.面ファスナー
本実施形態に係る面ファスナーは、上記の自己粘着シートを着脱面とするものである。上記の自己粘着シートは、面方向の固定性に優れるため、上記の自己粘着シートを面ファスナーの着脱面とすることで、良好な粘着性が得られるとともに、繰り返し脱着することができる。
また、本実施形態に係る面ファスナーは、従来のループを有する面ファスナーのように繰り返しの脱着によりループが破損することがないため、粘着性の低下が比較的に低減できる。
更に、本実施形態に係る面ファスナーは、外す際に音がしにくいため、従来の面ファスナーよりも幅広い分野での応用が期待される。
【0072】
[用途]
本実施形態に係る面ファスナーは、従来の面ファスナーと同様に、繰り返し脱着される用途に幅広く適用することができ、例えば、衣料品、医療・介護用品、住宅設備、自動車・航空機等の各種産業分野において利用することができる。
より具体的には、上記の自己粘着シートが体の形状にフィットしやすく、容易に粘着性が得られる観点から、衣料用の固定部材として、例えば、インナー、スポーツ、アウトドア用衣料等に利用することができる。また、シューズ用の固定部材として、スニーカー、パンプス、サンダル等に利用することができる。また、服飾雑貨の固定部材として、腕時計、眼鏡帽子等に利用することができる。また、医療用の固定部材として、例えば、固定テープ、バンド、ベルト、及びサポーター等に利用することができる。同様の観点から、ウェアラブル用の材料として、例えば、生体センシングデバイス、eスポーツデバイス、テクノスポーツデバイス、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、スマートウォッチ、スマートグラス、ロボットスーツ等の基材や部材等に利用することができる。
また、上記の自己粘着シートが体温に近い温度でより柔軟性・追従性が得られるために、体温で容易に接着できる観点から、即興で袋、コップ、箱等生活用品を容易に作製することができる。この容易さを活かし、例えば、アウトドアグッズ、スポーツ関連グッズ、災害時や緊急時の基材や部材等に利用することができる。同様の観点から、DIY素材、アート作品素材、折り紙代替素材等の芸術、美術、工作等の新しい素材として利用することができる。
更に、上記の自己粘着シートが人間の体との親和性が高いことから、アパレル素材、シート素材、寝具素材、グリップ、眼鏡、ヘルメット、ウィッグ、ヘッドホン、イヤホン、腕時計、及びベルト等にも好適に利用することができる。
その他にも、玩具、文具、結束バンド、ラップ、及びシール素材等の生活用品等、幅広い用途で利用することができる。
【0073】
また、本実施形態に係る自己粘着シートは、透明性が高ければ、更に応用範囲が広がる。例えば、腕時計のバンドや、ドレス、ブラジャー等のインナーのファスナーやホック等に使用されれば、透明感を活かした新たな意匠性・デザイン性を付与することができ、各種製品の可能性を広げることができる。この場合の本実施形態に係る自己粘着シートの透明性は、上述したとおりである。
【0074】
<第2実施形態>
次に、第2の発明の実施形態について、説明する。なお、第1実施形態と同様の構成、効果については、適宜説明を省略する。
【0075】
<<配線基板>>
図1に示すように、本実施形態の配線基板9は、自己粘着性シート1と、配線2と、を備え、自己粘着性シート1は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含み、かつ以下の条件を満たすものである。
(条件)
自己粘着性シート1について、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
【0076】
なお、図1(a)には、自己粘着性シート1上に、複数の配線2が配置された配線基板9aが示されており、図1(b)には、自己粘着性シート1の内部に複数の配線2が埋設された配線基板9bが示されている。配線2の数や配置方法は特に限定されず、公知の技術を採用することができる。例えば、シートの表面の一部に配線の一部が面一となるように配置されていてもよく、シートが凹部を有し、凹部内に配線の少なくとも一部が露出するように配置されていてもよい。
また、本実施形態において、配線2とは、導電性を有する部材であればよく、いわゆる導電層、および後述の電極4も含むものである。なお、自己粘着性シート1、配線2、電極4の詳細については後述する。
【0077】
本実施形態の配線基板9は、かかる条件を満たす自己粘着性シート1を用いることによって、生体に対して良好な密着性が得られ、ウェアラブルデバイスとして有効に適用される。すなわち自己粘着性シート1に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体の所定の損失正接を指標として、これを制御することで、配線基板9を用いた電子デバイスが使用される環境温度において良好な粘性が得られる結果、生体に対して良好に追従でき優れた密着性を発揮することができる。
なお、本実施形態において、生体に対する密着性とは、自己粘着性シート1による柔軟性、形状追従性により、生体の外表面の形状や動きに自己粘着性シート1が付着したり、固定されることによって得られる密着性を意図する。
【0078】
[損失正接(tanδ)]
本実施形態に係る自己粘着性シート1は、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、上記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
例えば、自己粘着性シート1を縦50mm×幅5mmの試験片に切り出し、周波数1.59Hz、昇温速度4℃/分、測定温度範囲0℃~110℃、歪量0.1%、チャック間距離20mm、引張モードの条件で、レオメータを用いて測定することができる。
【0079】
本発明者は、密着性・固定性に優れる自己粘着性シート1を実現するために鋭意検討した。その結果、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含む自己粘着性シート1において、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度範囲および損失正接の極大値を上記範囲に調整することにより、生体に対する密着性・固定性、柔軟性および形状追従性の性能バランスを向上できることを見出した。
【0080】
かかる理由の詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。
まず、周波数1.59Hzという比較的低周波数領域での損失正接(tanδ)を高くすることによって、瞬間的な衝撃などの力と比較して時間をかけてかかる力(遅い力ともいう)に対しては追従しやすくなる。そのため、生体の表面形状や動きに対して良好に追従し、密着性・固定力が高まると推測される。
さらに、10℃以上100℃以下の範囲において損失正接の極大値が上記範囲内である自己粘着性シート1は、変形する際に与えられる力学的エネルギーの多くを熱エネルギーに変換でき、エネルギーを多く吸収できるため、変形後の復元速度が緩やかになると考えられる。その結果、自己粘着性シート1が有する柔軟性を維持しながら、変形に良好に追従でき、その結果、固定性が向上できると考えられる。
【0081】
本実施形態に係る自己粘着性シート1の上記損失正接は、例えば、(1)後述する4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の種類や配合割合、(2)シートの架橋の有無、(3)自己粘着性シート1成形方法等を適切に調節することにより、上記範囲内に制御することが可能である。
具体的には、例えば、自己粘着性シート1中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の配合割合を高めること、シートに対し架橋処理をおこなわないこと等が挙げられる。
【0082】
本実施形態に係る自己粘着性シート1は、固定性・密着性を良好にする観点から、未架橋であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係る自己粘着性シート1は、例えば、電子線やγ線を用いた電離性放射架橋等の架橋処理がなされていない未架橋シートであることが好ましい。これにより10℃以上100℃以下の範囲における損失正接の極大値を向上させることができ、固定性・密着性により一層優れる自己粘着性シート1を得ることができる。
【0083】
本実施形態に係る自己粘着性シート1において、動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上80℃以下の範囲に1つ以上あることが好ましく、10℃以上60℃以下の範囲に1つ以上あることがより好ましく、10℃以上50℃以下の範囲に1つ以上あることがさらに好ましく、10℃以上50℃以下の範囲に1つあることが特に好ましい。これにより、自己粘着性シート1が25℃~40℃程度の人肌に接したとき、または自己粘着性シート1が人体に近い位置に配置されたときに、より良好な固着性・密着性、形状追従性が得られるようになる。
【0084】
また、本実施形態に係る自己粘着性シート1において、上記損失正接の極大値は0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。そして本実施形態に係る自己粘着性シート1において、上記損失正接の極大値は3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
これにより、本実施形態に係る自己粘着性シート1の固定性・密着性を得つつ、柔軟性および形状追従性の性能バランスをより良好にすることができる。ここで、損失正接の極大値が大きいほど、自己粘着性シート1の粘性的な性質が強いことを意味する。粘性的な性質が強い自己粘着性シート1は、変形する際に与えられる力学的エネルギーのより多くを熱エネルギーに変換でき、エネルギーをより多く吸収できるため、変形後の復元速度がより一層緩やかになると考えられる。その結果、自己粘着性シート1が有する柔軟性を維持しながら、変形後の形状をより一層良好に保持できたり、変形により一層良好に追従できたりし、結果として、生体の皮膚や動きに対する固定性・密着性を向上できると考えられる。
【0085】
本実施形態の配線基板9は、さらに、以下の構成を備えることによって、一層良好な密着性が得られるとともに、さらなる特性、効果を得ることができる。以下、図2~8を用いて説明する。
【0086】
図2に示すように、本実施形態の配線基板10は、電極4と電気的に接続される配線2と、配線2を被覆し、電極4を露出させる開口を有する自己粘着性シート1と、を備えていてもよい。すなわち、配線基板10は、基材3、配線2、および自己粘着性シート1がこの順に積層し、自己粘着性シート1の外表面の一部に電極4が露出した構造を備えている例である。
【0087】
また、本実施形態の電子デバイス11は、配線基板10と、自己粘着性シート1の開口に露出した電極4と、配線2に電気的に接続される電子部品と、を有するものである。なお、図2では電子部品は図示されていない。
【0088】
<自己粘着性シート1>
本実施形態の自己粘着性シート1は、柔軟性、形状追従性を有し、配線基板10を生体に良好に密着させるために機能する。
本実施形態において、自己粘着性シート1は、配線2を被覆し、電極4を露出させる開口を有する。また、自己粘着性シート1は、配線2からの漏電、放電を抑制するように被覆していることが好ましい。
なお、被覆とは連続的である場合に限られず、一部に非連続の部分があってもよい。
また自己粘着性シート1の開口の数、配置および大きさ等は、使用される電極4の数、配置および大きさ等に応じて設定される。漏電や放電を抑制する点から、開口は電極4の少なくとも一部が露出されればよく、開口面積は電極4の断面積と同一または小さいことが好ましい。
【0089】
[絶縁性]
自己粘着性シート1は、少なくとも外表面側が絶縁性であることが好ましい。これにより配線基板10の自己粘着性シート1を生体の皮膚に直接付着させて通電した際の電気的刺激を妨げ、安全に使用することができる。
【0090】
[通気性]
自己粘着性シート1は、用途に応じて、少なくとも一部に通気性を有していてもよい。これにより配線基板10を用いた電子デバイス11を装着した際の肌触りを良好にしたり、蒸れの発生を低減できる。また、軽量化を図り、装着感を良好にできる。
【0091】
本実施形態において通気性とは、JIS K6400-7:2012(B法)に準拠し、24℃、50%RHの条件で測定される、通気量が1cc/cm/sec以上であることが好ましく、5cc/cm/sec以上であることがより好ましく、10cc/cm/sec以上であることがさらに好ましく、20cc/cm/sec以上であることがさらにより好ましく、30cc/cm/sec以上であることが特に好ましい。一方、当該通気量の上限は特に限定されないが、例えば、10000cc/cm/sec以下である。
【0092】
自己粘着性シート1の通気性は、例えば、(1)自己粘着性シート1を発泡体としたり、(2)自己粘着性シート1に貫通孔を設けたり、(3)自己粘着性シート1の形状を変形加工させて得られるもの等が挙げられ、上記(1)~(3)を組み合わせてもよい。以下、それぞれについて説明する。
【0093】
上記(1)の自己粘着性シート1を発泡体とした場合、例えば、発泡体に内在する連続気泡が自己粘着性シート1の一方の面から他方の面まで連なることによって通気性をえてもよい。なお、自己粘着性シート1は、連続気泡の他、独立気泡を有していてもよい。発泡体の詳細については、後述する。
【0094】
上記(2)の貫通孔としては、成形された自己粘着性シート1に対し、公知の穴あけ加工により得ることができる。穴あけ加工としては、例えば、機械式パンチング、ニードル加工、レーザーパーフォレーション、ウォータージェット等を用いることができる。貫通孔の孔径は特に限定されないが、例えば、0.1mm以上、50mm以下が挙げられる。また、貫通孔は、自己粘着性シート1の全面に均一に形成されていてもよく、また、特に通気性を得たい部分のみに形成されたり、または通気性を得たい部分において密度が高くなるように形成されていてもよい。
【0095】
上記(3)の形状の変形加工としては、自己粘着性シート1の面内方向(xy面内)において平行線状、波状、格子状、メッシュ状(網目状)、ハニカム状、及びドット状等の形状に間隙を加工することが挙げられる。これらの形状は、1または2以上の形状を組み合わせてもよい。また、自己粘着性シート1の少なくとも一部に加工されていればよい。
例えば、平行線状は、すべてが同じ長さでなくてもよく、自己粘着性シート1の一方の外縁から中央部に向かう直線と、中央部に延在する直線とが互いに平行であってもよい。図3には、平行線状の間隙を有する自己粘着性シート1の一例が示されている。これにより、平行線に直交する方向に自己粘着性シート1を伸長することができる。
また、波状とは、曲線に限られず、三角形状、矩形状の凹凸形状が波のように周期的に繰り返すものであってもよい。図4(a)には、曲線状の波状の間隙を有する自己粘着性シート1の一例、図4(b)には、三角形状の波状の間隙を有する自己粘着性シート1の一例、図4(c)には、矩形状の波状の間隙を有する自己粘着性シート1の一例が示されている。これにより、波の凹凸方向(図3における上下方向)に自己粘着性シート1を伸長することができる。なお、図4では、1周期分の波状のスリットが2本平行に形成されている例が示されているが、波の周期、スリットの数はこれに限られない。
また、図5には、平面視におけるハニカム状の自己粘着性シート1の一例、図6には、平面視におけるメッシュ状の自己粘着性シート1の一例、図7には、平面視における格子状の自己粘着性シート1の一例をそれぞれ示す。
【0096】
間隙とは、スリット状細線、穴状開口のいずれであってもよい。間隙の大きさは、用途および加工形状に応じて適宜設定されるが、機械的強度を保持しつつ、良好な変形性を得る観点から、
【0097】
加工方法としては、自己粘着性シート1となる原材料をネット押出成形法等を用いてシート状に押し出すことで得ることができる。例えば、ネット押出法では、押出機の先端に設けたネット成形用回転ダイのノズルから樹脂組成物を押出しながら、ネット状に溶着成形し、得られた押出ネットを所定の温度にした水槽に通すことによって、ネット状またはメッシュ状のシートが得られる。
また、間隙がスリット状細線の場合、成形された自己粘着性シート1に対し、公知の方法で、スリットを形成してもよい。
【0098】
[変形性]
自己粘着性シート1は、変形性を有することが好ましい。
例えば、自己粘着性シート1を上記(3)の形状の変形加工を施した場合、自己粘着性シート1の柔軟性および伸縮性を一層向上することができる。自己粘着性シート1の形状を変形加工した場合、配線2および基材3も略同一形状に変形加工されていてもよい。これにより、配線基板10全体としての可撓性及び/又は伸縮性などの変形性を有することができる。
【0099】
さらに、図4に示されるように、自己粘着性シート1の略中央部に1周期分の波状スリットが一組形成されている場合、略中央部で自己粘着性シート1を折り曲げることができる。これにより、折り曲げ性といった変形性を得ることもできる。この場合、配線2は、自己粘着性シート1の面内方向において波状に加工され、一組の上記の波状スリットの間に配置されることで自己粘着性シート1の折り畳み線を介した一方の領域から他方の領域への電通を可能とする。
【0100】
さらに、自己粘着性シート1の可撓性及び/又は伸縮性などの変形性を高めるため、少なくとも一部が、自己粘着性シート1の面内方向に沿って(z軸方向、厚み方向)波状(ひだ状や蛇腹状を含む)であってもよい。この場合、配線2および基材3も面内方向に沿って(z軸方向)波状(ひだ状や蛇腹状を含む)であることが好ましい(図8参照)。これにより、配線基板10全体としての可撓性及び/又は伸縮性などの変形性を一層高めることができる。
【0101】
[発泡体]
本実施形態の自己粘着性シート1は、用途に応じて、発泡体であってもよい。これにより、自己粘着性シート1の柔軟性が向上し、形状追従性および密着性を向上でき、軽量化を図り、また肌触りも良好にしやすくなる。発泡体は単独気泡および/または連続気泡を有する。
また、本実施形態において発泡体の気泡の程度は、自己粘着性シート1の厚み方向において異なるものであってもよく、均一であってもよい。例えば、自己粘着性シート1の外表面側から配線2側に向かって、発泡体の密度が高くなってもよい。この場合、自己粘着性シート1の外表面側では発泡体の密度が比較的低くなり柔軟性が得られ良好な密着性を保持しつつ、自己粘着性シート1の配線2側では発泡体の密度が比較的高くなり硬さが得られ配線2を保護しやすくなる。
【0102】
自己粘着性シート1の発泡体は、公知の方法により得られるが、例えば、後述する自己粘着性シート1の製造方法において、自己粘着性シート1の原料となる樹脂組成物と、発泡剤を用いて、押出成形機によりシート状に発泡成形することにより得ることができる。
【0103】
本実施形態に係る自己粘着性シート1の成形の際に用いられる発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤が挙げられる。
化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、各種カルボン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、アゾジカルボアミド、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、重曹クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、または二酸化炭素と窒素の混合物等が挙げられ、いずれもガス状、液状または超臨界状態のいずれでも供給することが可能である。
化学発泡剤は押出成形機に投入する前に自己粘着性シート1の原料となる4-メチル-1-ペンテン系重合体系樹脂組成物と配合して均一に混合することが好ましい。また、物理発泡剤として二酸化炭素を使用する場合は、4-メチル-1-ペンテン系重合体系樹脂組成物が押出成形機内で混練、可塑化された状態になった後、直接押出成形機内へ注入することが好ましい。
【0104】
自己粘着性シート1の発泡倍率は特に限定されず、自己粘着性シート1の諸物性を考慮して適宜決定することができる。
【0105】
[表面粗度]
本実施形態の自己粘着性シート1は、用途に応じて、外表面に微細な凹凸を有していてもよい。これにより、自己粘着性シート1同士の接着性(自己粘着性)が飛躍的に向上できる。その結果、例えば、自己粘着性シート1同士が対向するような使用態様において、自己粘着性シート1同士を固着(自己粘着)させることにより、配線基板10を生体に対して一層良好に固定することができる。なかでも、自己粘着性シート1の面内方向における高い接着力が得られる。
なお、自己粘着性シート1の外表面とは、配線基板10の一方の面であり、生体側となる面である。
【0106】
本実施形態に係る自己粘着性シート1は、好ましくは、外表面の算術平均粗さRaが0.01~10μmの範囲内、および/または、十点平均粗さRzが0.1~50μmである。これにより、良好な固定性(自己粘着性)が得られる。算術平均粗さRaは、より好ましくは0.02~8μmであり、さらに好ましくは0.03~5μmである。また、十点平均粗さRzは、より好ましくは0.2~40μmであり、さらに好ましくは0.3~20μmである。
本実施形態において、算術平均粗さRaおよび/または十点平均粗さRzを制御することによって、凹凸のばらつきを効果的に抑制し、自己粘着性シート1全面においてより均一な固定力、保持力が得られるようになる。
【0107】
本実施形態に係る自己粘着性シート1の表面粗度の調整方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、シート製造過程でエンボス加工を施す等の型成型による方法、シートを巻き取る際、シートの間に間紙(セパレータ)を挟み込み、間紙の表面形状を転写させる方法、研磨加工、及びブラスト処理等により行ってもよい。
【0108】
算術平均粗さRa、及び十点平均粗さRzは、JIS B0610-2001に準拠して測定できる。
【0109】
[厚み]
本実施形態に係る自己粘着性シート1の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.01mm以上30mm以下の範囲であり、より好ましくは0.01mm以上10mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.02mm以上5mm以下の範囲であり、ことさらに好ましくは0.03mm以上2mm以下の範囲である。
本実施形態に係る自己粘着性シート1の厚みを、上記下限値以上とすることにより、固定性を向上しつつ、形状追従性、機械的特性、成形性、および耐湿性等の良好なバランスが得られる。
本実施形態に係る自己粘着性シート1の厚みを、上記上限値以下とすることにより、良好な固定性を保持しつつ、軽量性、外観、および取扱い性を良好にできる。
【0110】
[多層]
本実施形態の自己粘着性シート1は、単層または多層であってもよい。多層の場合、互いに異なる性能を有するものとしてもよい。例えば、通気性を有する層、発泡体からなる層を組み合わせて積層してもよい。
【0111】
[密度]
本実施形態に係る自己粘着性シート1のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、用途に応じて適宜設定されるが、好ましくは0.01~2.0g/cm、より好ましくは0.1~1.5g/cm、さらに好ましくは0.3~1.0g/cmである。
【0112】
本実施形態に係る自己粘着性シート1を構成する各成分(材料)は、第1実施形態と同じものを用いることができる。
【0113】
また、本実施形態に係る自己粘着性シート1は、第1実施形態と同様に、単層であってもよく、多層であってもよい。多層である場合、少なくとも1層が4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む層であればよく、2層以上が4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含んでもよい。
【0114】
また、本実施形態に係る自己粘着性シート1は、第1実施形態と同様の製造方法によって得ることができる。
【0115】
<配線2>
本実施形態の配線2は、電極4と電気的に接続されるものであり、導電性を有する。
配線2を構成する材料としては、導電性を有する材料であれば特に限定されないが、(i)導電性材料自体が変形性や伸縮性を有しているもの、(ii)導電性材料自体は変形性や伸縮性を有していないもののいずれか、または両方を用いたものであってもよい。
【0116】
上記(i)導電性材料自体が変形性や伸縮性を有しているものとしては、配線2の変形、伸縮に対する耐久性を得る点から、例えば、樹脂と、導電性粒子を有する導電性樹脂組成物から形成されるが挙げられる。導電性樹脂組成物は、印刷、エッチング、スパッタリング、および貼付等の方法を用いることによって、配線2を得ることができる。
上記の樹脂としては、一般的な熱塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマー、または導電性樹脂を用いることができる。
上記の導電性粒子としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、白金、およびカーボンブラック等から選ばれる1種または2種以上からなる粒子が挙げられる。
導電性粒子の粒子径は1nmから500nmが好ましく、10nmから100nmがより好ましい。粒子径を上記下限値以上とすることにより、粒子の反応性を良好にし、インクの保存安定性をほじできる。粒子径を上記上限値以上とすることにより、配線層2の厚みを均一に形成しやすくなる。
【0117】
なかでも、導電性樹脂組成物は、導電性インクにより形成されていることが好適である。導電性インクとは、導電性を有するインクであり、印刷により所望の形状の印刷層を形成し、その後、乾燥等行うことによって、所望の形状の配線2を形成することができるものである。また、乾燥後、任意で焼成処理を行ってもよい。
導電性インクは、導電性樹脂、カーボンブラック、およびゴム成分を含むものが挙げられる。導電性樹脂としては、例えば、PEDOT:PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリ(4-スチレンスルホン酸))、ポリピロール、およびポリアニリン(PANI)等が挙げられる。またゴム成分としては、ポリウレタン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-(エチレン・ブチレン)-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、天然ゴム等が挙げられる。
導電性インクは、カーボンブラックを用いることにより、抵抗変化のヒステリシスを低減することができる。カーボンブラックの含有率は、1.0~4.0質量%であるのが好ましく、1.6~2.3質量%であるのがより好ましい。また、導電性インク中の上記導電性樹脂の含有率は0.1~1.0質量%であるのが好ましく、0.3~0.5質量%であるのがより好ましい。また導電性インク中の上記ゴム成分の含有率は10~20質量%であるのが好ましく、12~15質量%であるのがより好ましい。
導電性インクは、導電性樹脂、カーボンブラック、およびゴム成分等を水を分散媒として混合することによって得られる。また、導電性導電インク中の上記水の含有率は70~90質量%であるのが好ましく、83~86%であるのがより好ましい。導電性インクの粘度は、1cpsから500cpsであることが好適である。
導電性インクを用いた印刷方法は公知の方法を用いることができるが、例えば、ステンシル印刷、インクジェット印刷、およびフレキソ印刷などが好適である。
【0118】
上記(ii)導電性材料自体は変形性や伸縮性を有していないものであっても、配線2の形状を後述のように工夫することによって、変形性や伸縮性を得ることができる。
配線2の材料自体が伸縮性を有さないものとしては、金属膜が挙げられる。金属膜としては、銅、ニッケル、銀、金、及び錫の中から選ばれる1種または2種以上から形成されるメッキ膜が挙げられる。導電性の観点から銅を用いることが好ましい。メッキ膜の厚さは、0.03μmから100μmが好ましく、1μmから35μmがより好ましく、3μmから18μmがさらに好ましい。
【0119】
また、配線2は、例えば、自己粘着性シート1上に、導電性インクを用いて配線パターンを形成した第1の配線層と、第1の配線層の上にメッキ膜として形成された第2の配線層とを備えるものであってもよい。また、第1の配線層と自己粘着性シート1との境界領域において、第1の配線層の空隙内に自己粘着性シート1の一部が入り込んだ構造を有していてもよい。これにより自己粘着性シート1と配線2との結合を高めることができる。
【0120】
配線2の厚みは、配線基板10および電子デバイス11の厚みよりも小さく、例えば50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。配線2の幅は、例えば50μm以上且つ10mm以下である。
【0121】
本実施形態の配線2は、面内方向(xy面内)において平行線状、波状、ひだ状、格子状、メッシュ状(網目状)、ハニカム状、ドット状に加工されていることが好ましい。これらの形状は、1または2以上の形状を組み合わせてもよい。また、配線2の少なくとも一部がかかる形状を有していればよい。これにより、生体の皮膚および動きに沿って変形または伸長しながら延在することができる。その結果、配線基板10および電子デバイス11の装着感を良好にするとともに、電子デバイス11の通電性を安定にし、良好な電気信号を得ることができる。
なかでも、配線2が面内方向において(xy面内)平行線状、波状、ひだ状、格子状、メッシュ状(網目状)であることによって、(ii)導電性材料自体は変形性や伸縮性を有していない場合であっても、配線2自体が蛇腹やばね様に伸縮することによって、変形性や伸縮性を得ることができる。
【0122】
配線2は、漏電・放電を抑制できる程度に自己粘着性シート1に被覆されていればよく、自己粘着性シート1と略同一形状であってもよく、異なっていてもよい。配線2は、自己粘着性シート1の形状および変形性に応じて、適宜設計される。
【0123】
本実施形態の配線2は、少なくとも一部が、配線基板10の面内方向に沿って(z軸方向)波状(ひだ状や蛇腹状を含む)であってもよい(図8参照)。すなわち、配線2の一部が、配線基板10の厚み方向において複数の山部および谷部が交互に並ぶひだ状または蛇腹状となっている。これにより、配線基板10が弛緩状態にある場合、配線2は、山部及び谷部が配線基板10の面内方向に沿って繰り返し現れるひだ形状または蛇腹形状部を有することとなり、配線基板10を伸長させた場合、配線2の蛇腹形状部が面内方向に拡張できる。その結果、配線2の伸縮性が得られ、自己粘着性シート1の伸縮性と相まって、配線基板10が良好に生体の皮膚および動きに追従し、密着性を向上できる。この場合、自己粘着性シート1も、配線基板10の面内方向に沿って(z軸方向)波状(ひだ状または蛇腹状部)を有していてもよく、自己粘着性シート1自体が伸縮性を有する場合は、かかるひだ状部または蛇腹状部を有していなくてもよい。
【0124】
<基材3>
本実施形態において、配線基板10は、配線2の、自己粘着性シート1が設けられた面とは反対側の面上に、基材3を有する。これにより、配線基板10の機械的強度を高くしたり、付加的機能を設けるなどの設計の自由度を広げることができる。
また、基材3は、配線基板10の生体等に対する使用時において、自己粘着性シート1よりも生体等から遠い側に位置するものである。なお、図1に示すように配線基板9が自己粘着性シート1と配線2から構成される場合、自己粘着性シート1と基材3は共通する。
【0125】
基材3は、伸縮性を有するよう構成されていることが好ましい。伸縮性は、伸縮性を有する材料によって得られるものと、材料自体は伸縮性を有さなくても形状・構造を工夫することによって伸縮性が得られるものであってもよく、両方であってもよい。
【0126】
基材3を構成する材料としては、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゲル、およびシリコンゲルなどの合成樹脂;織物、編物、および不織布などの布等を用いることができる。上記熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、ブタジエン系熱可塑性エラストマー、およびフッ素系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
また、基材3を構成する材料は、自己粘着性シート1を構成する材料と同一であってもよい。これにより、良好な可撓性及び/又は伸縮性などの変形性を得つつ、製造工程を簡略化したり、自己粘着性シート1と基材3との接合領域の密着性を高めることができる。
【0127】
基材3の厚みは、例えば、10μm以上10mm以下であり、好ましくは100μm以上1mm以下である。基材3の厚みを上記下限値以上とすることにより、配線2を保護し、配線基板10の機械的強度を保持できる。一方、基材3の厚みを上記上限値以下とすることにより、伸縮に要する力を低減でき、配線基板10を薄膜化・軽量化しやすくなる。また、配線基板10を用いた電子デバイス11を生体に付着した際の装着感を低減できる。
【0128】
基材3は、可撓性及び/又は伸縮性などの変形性を得るため、上述した自己粘着性シート1または配線2と同様の構造とすることができる。すなわち、基材3は、面内方向(xy面内)において平行線状、波状、格子状、メッシュ状(網目状)、ハニカム状、ドット状に加工されていてもよい。また、基材3は、少なくとも一部が、配線基板10の面内方向に沿って(z軸方向)波状(蛇腹状)であってもよい(図8参照)。これにより、配線基板10全体の変形性が高まり、良好に生体の皮膚および動きに追従し、密着性を向上できる。
【0129】
<電極4>
電極4は、生体に接触し、電気的信号を受信するものである。
電極4は、導電性を有する材料であれば特に限定されず、上記の配線2と同様の材料を用いることによって得られる。電極4の形成方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。中でも、所望の形状に形成しやすい点から、導電性インクを用いることが好適である。
自己粘着性シート1の外表面積に対する電極4の露出面積比は、特に限定されず、電極4の配置場所や用途に応じて適宜設定される。
【0130】
<その他>
本実施形態の配線基板10は、上記以外の構成をさらに備えていてもよい。
例えば、蒸れを抑制したり汗などを吸水する層、摩擦を抑制するための層、防水性を有する層等が挙げられる。これらの層は、自己粘着性シート1側の面が生体の皮膚に付着でき、電極4への通電を妨げない範囲において、公知のものを公知の方法で用いることができる。
また、配線基板10は、配線2と電気的に接続される電子部品を保護するための補強部材を備えていてもよい。補強部材は、電子部品を変形などによる応力等から保護する観点から、自己粘着性シート1および基材3よりも変形しにくいものであることが好適である。または、補強部材は、防水、耐熱、または耐候を目的とするものであってもよい。
【0131】
また、配線基板10の生体に付着される側の面は、用途に応じて適宜設定されるが、密着性が高めやすい観点からは、全面が自己粘着性シート1で構成されていることが好ましい。
【0132】
また、配線基板10は、自己粘着性シート1の外表面の一部に緩やかに湾曲する吸盤状凹部を有することが好ましい。これにより、自己粘着性シート1を生体の皮膚等に押し付けることにより吸盤状凹部が潰されて空気が抜け、配線基板10の生体接触面に吸盤作用を発生させることができる。したがって配線基板10または電子デバイス11の生体との密着性が向上する。一方、配線基板10または電子デバイス11を生体から取り外す際においては、配線基板10または電子デバイス11(自己粘着性シート1)の外縁部のみを皮膚から剥離することにより吸盤作用が失われ、容易に自己粘着性シート1を生体から離間させることができる。
吸盤状凹部の大きさは、配線基板10または電子デバイス11が生体に対して適切に密着できるものであれば、特に限定されない。
【0133】
さらに、配線基板10は、外縁部の厚みが中央部の厚みよりも薄いことが好ましい。また、配線基板10の自己粘着性シート1側の面を平坦な面に接触させたとき、配線基板10の外縁からやや内側の領域から外縁部に向かって緩やかに傾斜していることが好適である。これにより、吸盤作用により生体に付着された配線基板10または電子デバイス11において、配線基板10の外縁が良好に生体に密着しやすくなり、外縁が引っ掛かったりすることで自己粘着性シート1と生体との間に隙間が生じることを抑制し、吸盤作用が低下することを低減できる。
【0134】
<配線基板10の製造方法>
本実施形態の配線基板10は、例えば、以下のようにして製造することができる。
基材3上に配線2を設ける。配線2を設ける方法としては、例えば、基材3上に導電性インクを印刷する方法が挙げられる。続けて、基材3上に配線2と電気的に接続する電極4を設ける。
次に、電極4の少なくとも一部が露出するようにして、配線2上に自己粘着性シート1を配置し配線2を被覆する。自己粘着性シート1を配置する方法としては、自己粘着性シート1の材料を有機溶媒に溶解してワニス状にし、当該ワニスを配線2上に塗布、乾燥させて自己粘着性シート1を配置してもよく、または、押出ラミネートにより配線2上に自己粘着性シート1を配置してもよい。
または、自己粘着性シート1上に配線2を配置した後配線2上にさらに自己粘着性シート1を積層してもよく、自己粘着性シート1を形成した後、自己粘着性シート1の一部を除去して配線2を埋め込んでもよい。
【0135】
<<電子デバイス>>
本実施形態の電子デバイス11は、上記の配線基板10と、自己粘着性シート1の開口に露出した電極4と、配線2に電気的に接続される電子部品と、を有する。
【0136】
上記の電子部品としては、例えば、センサ;トランジスタ、LSI(Large-ScaleIntegration)、MEMS(MicroElectroMechanicalSystems)、リレー、LED、OLED、LCDなどの発光素子;ブザー等の発音部品;振動を発する振動部品;冷却発熱をコントロールするペルチェ素子、電熱線などの冷発熱部品;抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、スイッチ、及びコネクタなどが挙げられる。
上記のセンサとしては、例えば、温度センサ、圧力センサ、圧電センサ、光センサ、光電センサ、近接センサ、せん断力センサ、生体センサ、レーザーセンサ、マイクロ波センサ、湿度センサ、歪みセンサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、変位センサ、磁気センサ、ガスセンサ、GPSセンサ、超音波センサ、臭いセンサ、脳波センサ、電流センサ、振動センサ、脈波センサ、心電センサ、および光度センサ等を挙げることができる。なかでも、生体センサが好ましい。生体センサは、心拍や脈拍、心電、血圧、体温、血中酸素濃度、筋電、脳波、体温、筋肉活動量等の生体情報を測定することができる。
【0137】
<用途>
配線基板の用途としては、電子デバイスが必要なあらゆる分野において、利用することができる。特に生体に対して良好な密着性を有することから、人の体に接する用途において利用することができる。例えば、アパレル、服飾雑貨、スポーツ、アウトドア、医療、介護、住宅、家具、寝具、文具、玩具、モビリティ(自動車、航空機、電車等)、家電、ディスプレイ、ウェアラブル、センサ、ロボット等、幅広い分野で利用することができる。中でも体の複雑な形状に密着させ、正確な生体情報を得ることができるため、各種ウェアラブルデバイスに利用することができる。例えば、スマートウォッチ、スマートグラス、VR(仮想現実)デバイス、AR(拡張現実)デバイス、eスポーツデバイス、テクノスポーツデバイス、ロボットスーツ、生体センシングデバイス、ソフトロボティクスデバイス、スキンディスプレイ等で利用することができる。また、あらゆるモノから情報を得るIoT時代の到来により、体に接するモノであれば、好適に利用することができる。例えば、帽子、ヘルメット、ウィッグ、ヘッドホン、イヤホン、補聴器、眼鏡、マスク、フェイスマスク、アクセサリー(ピアス、イヤリング、ネックレス、ブレスレッド、指輪等)、腕時計、下着、シャツ、パンツ、ズボン、スカート、ベルト、サポーター、リストバンド、スカーフ、靴下、靴(スニーカー、パンプス、革靴、ブーツ、サンダル等)、スリッパ、レガース、プロテクター、保護具、防護服、シート(自動車シート、航空機シート、電車シート、ソファ、オフィスチェア等)、クッション、寝具(ベッド、マットレス等)、まくら、グリップ(ゴルフ等のスポーツ関連、ペン等の文具関連等)、携帯電話、パソコン、各種ディスプレイ(タッチパネル等)、リモコン、スイッチ、各種医療機器(体温計、脈拍計、血圧計、心電図、筋電図、脳波計、身体部位の高精度計測等)、各種医療製品(止血バンド等)等で利用することができる。また優れた伸縮性、柔軟性を活かし、人体の複雑な動き、伸縮する動き、激しい動きや、高速で動作するモノの動きをモニタリングする用途にも利用できる。また体に接するモノ以外でも柔らかい素材との親和性が高いことから、柔らかく、伸縮する素材の計測が必要な様々な分野、用途へ利用することができる。例えば、機器類の柔らかい箇所(チューブ等)の動作計測や、ウェアやシューズ等の形状の変化を計測する等にも利用することができる。
【0138】
<第3実施形態>
次に、第3の発明の実施形態について、説明する。なお、第1実施形態と同様の構成、効果については、適宜説明を省略する。
【0139】
本開示の封止部材は、自己粘着面を有する自己粘着部材を含み、前記自己粘着面が対向することによって開閉部が形成され、前記開閉部は、対向する前記自己粘着面同士が離れることによって開き、かつ、対向する前記自己粘着面同士が粘着することによって閉じ、前記自己粘着部材は、下記要件1を満たす高分子を含む。
(要件1)
前記高分子は、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が、10℃以上100℃以下の範囲に少なくとも1つ存在し、前記極大値が0.5以上3.5以下である。
なお、本実施形態において、自己粘着部材は、自己粘着シートからなり、当該自己粘着シートは、上記の要件1を満たすものである。
【0140】
本開示の封止部材は、上記の構成を含むことで、常温に近い環境下において、開閉部の密閉性に優れる封止部材を提供することができる。
上記開閉部の密閉性に優れるとは、開閉部にチューブ等の貫通部材を固定した状態の開閉部の密閉性に優れること、及び、開閉部に貫通部材等の他の部材を固定していない状態の開閉部の密閉性に優れること、を意味する。
すなわち、本開示の封止部材は、自己粘着面を有する自己粘着シートの当該自己粘着面同士が対向するように配置されたものであり、当該自己粘着面同士が着脱自在であるため、対向する前記自己粘着面同士が離れることによって開口部が生じ、かつ、対向する前記自己粘着面同士が粘着することによって当該開口部が閉じられるように構成されたものである。
なお、上記の貫通部材とは、本開示の封止部材により得られる開口部を通り抜けることができる程度の大きさの部材であって、当該開口部を通り抜け自在である部材を意図する。すなわち、貫通部材は、部材そのものが貫通部分を有するものに限定されない。また、貫通部材は、本開示の封止部材の開口部が閉じられた際に、当該開口部を形成する自己粘着面同士により挟まれるものであってもよい。
【0141】
本開示における開閉部の製造方法の一実施態様について、図9及び図10を用いて説明する。
図9は、開閉部を囲うために用いられる自己粘着部材の一実施態様を示す概略図である。
開閉部を囲う自己粘着部材として、例えば、図9に示すような適切な厚みを有する自己粘着部材を同じサイズで2枚を用意する。用意した自己粘着部材を、切り出し線a1に沿って切り出し、折り曲げ線a2に沿って垂直方向を折り曲げ方向a3として折り曲げて、開閉部の長さl及び開閉部の幅wが、所望の値となるように加工する。
【0142】
自己粘着部材の厚み(t)は適宜調整すればよい。
例えば、自己粘着部材の厚み(t)は、開閉部において挟み込む部材(貫通部材ともいう)がある場合、貫通部材の外径によって調整することができる。
貫通部材の外径が比較的大きい場合(例えば10φ~30φ)は、tを比較的厚く(例えば100μm~250μm)設定してもよい。
貫通部材の外径が比較的小さい場合(例えば1φ~20φ)は、tを比較的厚く(例えば50μm~150μm)設定してもよい。
【0143】
図10は、加工後の自己粘着部材を重ね合わせることで開閉部を製造する方法を説明するための概略図である。
図10に示す通り、上述の加工において切り出した面同士が対向するように、垂直方向を重ね合わせ方向a5として、加工後の厚みtを有する自己粘着部材a4の各々を重ね合わせる。これによって、自己粘着部材によって囲まれた開閉部を得ることができる。
【0144】
<自己粘着部材>
本開示の封止部材は、自己粘着面を有する自己粘着部材を含み、前記自己粘着部材は、下記要件1を満たす高分子を含む。
(要件1)
前記高分子は、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が、10℃以上100℃以下の範囲に少なくとも1つ存在し、前記極大値が0.5以上3.5以下である。
なお、本実施形態において、自己粘着部材は、自己粘着シートからなり、当該自己粘着シートは、上記の要件1を満たすものである。
【0145】
上記の構成を含む自己粘着部材は、30℃~35℃程度の人肌に近い温度になるに従い徐々に軟化する。そして、僅かな外力で粘着部分を剥がし、開口部を確保することができる。また、上記の構成を含む自己粘着部材は、開口部を確保した状態にて、36℃~40℃程度に昇温することで軟化し粘着力が最大となり、容易に貫通部材を開口部に挟み込むことができる。
その結果、貫通部材を開口部に挟み込んだ後、自己粘着部材を閉じることで、貫通部材を開口部に挟み込んだ状態で粘着面を良好に密着させることができる。一方、自己粘着部材を上記温度範囲外の温度(例えば常温に近い23℃)に低下させて維持することで、粘着面が密着された状態のまま固化することができる。つまり、強固に自己粘着材同士が粘着された状態を維持することができる。
以上により、本開示の封止部材は、開閉部の密閉性に優れる。また、上記の通り、本開示の封止部材は、開閉部の開閉容易性にも優れる。
【0146】
(自己粘着面)
自己粘着部材は、開閉部内に配置される自己粘着面を有する。
前記自己粘着面は、互いに対向するように配置される。
また、前記開閉部は、対向する前記自己粘着面同士が離れることによって開き、対向する前記自己粘着面同士が粘着することによって閉じる。
これによって、開閉部の開閉を調節することができる。また、閉口状態において、封止部材の密封性を向上させることができる。
【0147】
〔高分子〕
自己粘着部材は、下記要件1を満たす高分子を含む。
(要件1)
前記高分子は、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により測定される損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が、10℃以上100℃以下の範囲に少なくとも1つ存在し、前記極大値が0.5以上3.5以下である。
【0148】
かかる理由の詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。
まず、自己粘着面は、周波数1.59Hzという比較的低周波数領域における高分子の損失正接(tanδ)を高くすることによって、瞬間的な衝撃などの力と比較して時間をかけてかかる力(遅い力ともいう)に対しては追従しやすくなる。そのため、自己粘着面同士を粘着させた際、粘着後の使用の際などにおいて付加される力により、自己粘着面の表面形状が互いに追従し、これを引き剥がそうとする力(特に面方向の力)に対して固定力が高まると推測される。
さらに、自己粘着面は、10℃以上100℃以下の範囲において損失正接の極大値が上記範囲内である高分子を含むことで、変形する際に与えられる力学的エネルギーの多くを熱エネルギーに変換でき、エネルギーを多く吸収できるため、変形後の復元速度が緩やかになると考えられる。その結果、自己粘着面が有する柔軟性を維持しながら、変形に良好に追従でき、その結果、固定性が向上できると考えられる。
【0149】
[損失正接(tanδ)の極大値を示す温度]
本開示における自己粘着部材において、高分子は、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上80℃以下の範囲に1つ以上あることが好ましく、10℃以上60℃以下の範囲に1つ以上あることがより好ましく、10℃以上50℃以下の範囲に1つ以上あることがさらに好ましく、10℃以上50℃以下の範囲に1つあることが特に好ましい。
これにより、自己粘着部材が36~40℃程度の人肌に接した場合、または自己粘着部材が人体に近い位置に配置された場合軟化し、自己粘着面同士の粘着力が最大となる。その結果、より容易に自己粘着面同士を密着させることができる。
一方、自己粘着部材が、上記の温度範囲以外の温度範囲(例えば、23℃の常温)に維持した場合、そのままの固化状態が維持され良好な密着性が得られる。その結果、より強固に自己粘着面同士を粘着させることができる。
【0150】
[損失正接(tanδ)の極大値]
本開示における自己粘着部材において、高分子は、損失正接の極大値が、0.5以上3.5以下である。
上述の観点から、0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。
本開示における高分子において、損失正接の極大値は3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
これにより、本開示における自己粘着部材の固定性を得つつ、柔軟性および形状追従性の性能バランスをより良好にすることができる。
【0151】
ここで、損失正接の極大値が大きいほど、自己粘着部材の粘性的な性質が強いことを意味する。粘性的な性質が強い自己粘着部材は、変形する際に与えられる力学的エネルギーのより多くを熱エネルギーに変換でき、エネルギーをより多く吸収できるため、変形後の復元速度がより一層緩やかになると考えられる。その結果、自己粘着部材が有する柔軟性を維持しながら、変形後の形状をより一層良好に保持できたり、変形により一層良好に追従できたりし、結果として、面方向に対する固定性を向上できると考えられる。
【0152】
上述の通り、本開示において、高分子の損失正接(tanδ)は、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により測定される。
例えば、高分子を含む自己粘着部材を縦50mm×幅5mmの試験片に切り出し、周波数1.59Hz、昇温速度4℃/分、測定温度範囲0℃~110℃、歪量0.1%、チャック間距離20mm、引張モードの条件で、レオメータを用いて測定することができる。
【0153】
本開示における高分子の損失正接は、例えば、(1)後述する4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の種類や配合割合、(2)シートの架橋の有無、(3)自己粘着部材成形方法等を適切に調節することにより、上記範囲内に制御することが可能である。
具体的には、例えば、自己粘着部材中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の配合割合を高めること、シートに対し架橋処理をおこなわないこと等が挙げられる。
【0154】
本開示における自己粘着部材において、高分子は、固定性を良好にする観点から、未架橋であることが好ましい。すなわち、本開示における自己粘着部材は、例えば、電子線やγ線を用いた電離性放射架橋等の架橋処理がなされていない未架橋シートであることが好ましい。
これにより10℃以上100℃以下の範囲における損失正接の極大値を向上させることができ、より一層固定性に優れる自己粘着部材を得ることができる。
【0155】
本開示における高分子としては、上述の(要件1)を満たす高分子であれば、特に制限なく用いることができる。
高分子としては、例えば、オレフィン系重合体が挙げられ、中でも4-メチル-1-ペンテン系重合体であることが好ましい。
【0156】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体]
本開示における高分子は、4-メチル-1-ペンテン系重合(a1)を含むことが好ましい。
これにより、損失正接(tanδ)の極大値をより大きくすることができる。
【0157】
本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)としては、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(c1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位(c2)とを含む4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)が好ましい。
即ち、本開示における高分子は、4-メチル―1-ペンテン系重合体を含み、4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位とを含むことが好ましい。
【0158】
ここで、本開示において、「炭素原子数2~20のα-オレフィン」は特に断らない限り4-メチル-1-ペンテンを含まないことを意味する。
【0159】
本開示における4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、自己粘着部材の柔軟性および固定性をより向上させる観点から、構成単位(c1)と構成単位(c2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(c1)の含有量が10モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
また、本開示における4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、自己粘着部材の柔軟性や機械的特性等をより良好にする観点から、構成単位(c1)と構成単位(c2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(c1)の含有量が30モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、構成単位(c1)の含有量が50モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましく、構成単位(c1)の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上40モル%以下であることがさらにより好ましく、構成単位(c1)の含有量が65モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上35モル%以下であることが特に好ましい。
【0160】
本開示において、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)に用いられる炭素原子数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、直鎖状又は分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物等が挙げられ、直鎖状のα-オレフィンが好ましい。
【0161】
直鎖状α-オレフィンの炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~5、さらに好ましくは2~3である。直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン等が挙げられ、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選択される一種または二種以上が好ましく、エチレンおよびプロピレンから選択される少なくとも一種がより好ましい。
分岐状のα-オレフィンの炭素原子数は、好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。分岐状のα-オレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン等が挙げられる。
環状オレフィンの炭素原子数は、好ましくは5~15である。環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0162】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノ又はポリアルキルスチレン等が挙げられる。
共役ジエンの炭素原子数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~10である。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン等が挙げられる。
【0163】
官能基化ビニル化合物としては、例えば、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸およびその酸無水物や酸ハライド、アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミン等の不飽和アミン、(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、不飽和エポキシ化合物、エチレン性不飽和シラン化合物等が挙げられる。
上記水酸基含有オレフィンとしては、例えば、炭素原子数2~20、好ましくは2~15の直鎖状又は分岐状の末端水酸基化α-オレフィン等が挙げられる。
上記ハロゲン化オレフィンとしては、例えば、炭素原子数が2~20、好ましくは2~15の直鎖状又は分岐状のハロゲン化α-オレフィン等が挙げられる。
【0164】
これらの炭素原子数2~20のα-オレフィンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でもエチレン、プロピレンが好適であるが、プロピレンを使用すると、柔軟性等をより良好にできる点で特に好ましい。
【0165】
なお、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、本開示の目的を損なわない範囲で、構成単位(c1)と構成単位(c2)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成としては、非共役ポリエン由来の構成単位が挙げられる。
非共役ポリエンとしては、炭素原子数が好ましくは5~20、より好ましくは5~10の直鎖状、分岐状又は環状のジエン、各種のノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。これらの中でも、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
【0166】
本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体の135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、自己粘着部材の柔軟性や機械的強度をより良好にする観点から、0.01~5.0dL/gであることが好ましく、0.1~4.0dL/gであることがより好ましく、0.5~3.0dL/gであることがさらに好ましく、1.0~2.8dL/gであることが特に好ましい。
【0167】
本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.810~0.850g/cm、より好ましくは0.820~0.850g/cm、さらに好ましくは0.830~0.850g/cmである。
【0168】
本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体は種々の方法により製造することができる。例えば、マグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号、国際公開第01/027124号、特開平3-193796号公報、および特開平02-41303号公報等に記載のメタロセン触媒;国際公開第2011/055803号に記載されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0169】
本開示における自己粘着部材中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)の含有量は特に限定されないが、自己粘着部材の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、一方、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下、さらにより好ましくは98質量%以下、特に好ましくは97質量%以下である。
これにより、衝撃吸収性、柔軟性、形状追従性、軽量性、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、耐湿性等のバランスにより優れた自己粘着部材を得ることができる。
【0170】
本開示における自己粘着部材は、上記4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)以外の成分を含んでもよい。
【0171】
[改質樹脂(a2)]
本開示における自己粘着部材は、外観や肌触り、固定性をより良好にする観点から、性改質樹脂(a2)(ただし、本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を除く)を含有してもよい。本開示における改質樹脂(a2)は、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびゴムから選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0172】
上記の熱可塑性樹脂(ただし、本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を除く)としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPEともいう)、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン(LLDPEともいう)、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性ポリオレフィン樹脂;脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)、ポリエーテルブロックアミド共重合体等の熱可塑性ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等の熱可塑性ビニル芳香族系樹脂;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;ポリフッ化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ETFE等のフッ素系樹脂;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイド;ポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂;石油樹脂等が挙げられる。
ゴムとしては、例えば、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α-オレフィン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
さらに、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、酸変性スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。
また、これらの改質樹脂(a2)をアクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸等により酸変性したものであってもよい。
これらの改質樹脂(a2)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0173】
これらの改質樹脂(a2)の中でも、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体から選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエーテルブロックアミド、アイオノマー、フッ素系樹脂、酸変性フッ素系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂およびスチレン系エラストマーから選択される一種または二種以上で、添加により溶融張力を向上させるものがより好ましい。
また、本開示における4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)と適度な相容性があるものがさらに好ましい。さらに、スチレン系エラストマーの中で、クラレ社製のビニルSIS(製品名:ハイブラー、銘柄5127)、ビニルSEPS(製品名:ハイブラー、銘柄7125)、および旭化成社製SEBS(製品名:S.O.E、銘柄:S1605、S1611、およびL609)についても、相容性、損失正接の極大値を示す温度範囲、損失正接の極大値の大きさの観点から、好ましく用いることができる。
【0174】
本開示における自己粘着部材は、これらの改質樹脂(a2)の中から1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0175】
本開示における自己粘着部材中の改質樹脂(a2)の含有量は特に限定されないが、自己粘着部材の全体を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
改質樹脂(a2)の含有量が上記下限値以上であると、本開示における自己粘着部材の外観や肌触り、固定性等をより良好にすることができる。改質樹脂(a2)の含有量が上記上限値以下であると、本開示における自己粘着部材の固定性、柔軟性等の性能バランスをより良好にすることができる。
【0176】
[その他の成分]
本開示における自己粘着部材は、必要に応じて、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、着色剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤を配合してもよい。これらの中でも、可塑剤、軟化剤、天然油および合成油は、本開示における自己粘着部材の固体粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度および損失正接の極大値を調整するために、種類および添加量を制御して用いてもよい。
【0177】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む樹脂組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0178】
また、本開示における自己粘着部材は、単層であってもよく、多層であってもよい。多層である場合、少なくとも1層が4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む層であればよく、2層以上が4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含んでもよい。
【0179】
[表面粗度]
本開示における自己粘着部材は、良好な固定性の観点から、自己粘着面の算術平均粗さRaが、好ましくは0.01μm~10μmある。
自己粘着面の算術平均粗さRaは、より好ましくは0.02μm~8μmであり、さらに好ましくは0.03μm~5μmである。
【0180】
本開示における自己粘着部材は、良好な固定性の観点から、自己粘着面の十点平均粗さRzが、好ましくは0.1μm~50μmであり、より好ましくは0.2μm~40μmであり、さらに好ましくは0.3μm~20μmである。
本開示において、算術平均粗さRaおよび十点平均粗さRzを組み合わせて制御することによって、凹凸のばらつきを効果的に抑制し、自己粘着部材全面においてより均一な固定力が得られるようになる。
【0181】
本開示における自己粘着部材は、好ましくは、自己粘着面の算術平均粗さRaが0.01μm~10μmの範囲内であり、かつ、十点平均粗さRzが0.1μm~50μmである。
【0182】
本開示における自己粘着面の表面粗度の調整方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、シート製造過程でエンボス加工を施す等の型成型による方法、シートを巻き取る際、シートの間に間紙(セパレータ)を挟み込み、間紙の表面形状を転写させる方法、研磨加工、及びブラスト処理等により行ってもよい。
【0183】
算術平均粗さRa、及び十点平均粗さRzは、JIS B0610-2001に準拠して測定する。
具体的には、JIS B0610-2001に従って、表面粗さ形状測定機(例えばサーフコム1400D、東京精密製)を用いて、測定長さ40mm、測定速度0.15mm/秒で、自己粘着部材の表面の算術平均粗さRa、十点平均粗さRzを測定する。この測定を3回行い、それぞれの平均値を算術平均粗さRa(μm)、十点平均粗さRz(μm)とする。
【0184】
[厚み]
本開示における自己粘着部材の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.01mm以上30mm以下の範囲であり、より好ましくは0.01mm以上10mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.02mm以上5mm以下の範囲であり、特に好ましくは0.03mm以上2mm以下の範囲である。
【0185】
本開示における自己粘着部材の厚みを、上記下限値以上とすることにより、固定性を向上しつつ、形状追従性、機械的特性、成形性、および耐湿性等の良好なバランスが得られる。
本開示における自己粘着部材の厚みを、上記上限値以下とすることにより、良好な固定性を保持しつつ、軽量性、外観、および取扱い性を良好にできる。
【0186】
本開示における自己粘着部材の形状は、特に制限はないが、好ましくはシート形状である。
【0187】
本開示における自己粘着部材は、用途に応じて、通気性を高めるために通気孔を有してもよい。例えば、機械式パンチング、ニードル加工、レーザーパーフォレーション、ウォータージェット等の加工技術により、表裏に連通した多数の通気孔を設けることができる。
【0188】
[密度]
本開示における自己粘着部材のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定される密度は、好ましくは0.3~1.5g/cmであり、より好ましくは0.5~1.2g/cmであり、さらに好ましくは0.8~0.9g/cmであり、特に好ましくは0.83~0.85g/cmである。
自己粘着部材の密度は、ASTM D 1505(水中置換法)に従って測定される密度である。
具体的には、 ASTM D 1505(水中置換法)に従って、例えばALFA MIRAGE社電子比重計MD-300Sを用い、水中と空気中で測定された各試料の重量から算出する。
【0189】
[透明性]
本開示における自己粘着部材は、例えば、透明性を活かした用途に適用される場合、可視光線に対する内部ヘイズ(以下、単に「内部ヘイズ」ともいう)が、30%以下であることが好ましい。
ここで、「内部ヘイズ」とは、自己粘着部材の外表面の形状によるヘイズを除外したヘイズを指す。また、「内部ヘイズ」は、自己粘着部材に対して、JIS-K7105に準拠して、25℃で測定される値である。
【0190】
本開示における自己粘着部材の内部ヘイズは、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、13%以下であることがさらに好ましく、5%以下であることが特に好ましく、2.0%以下であることがより一層好ましく、1.0%以下であることがさらに一層好ましい。
一方、本開示における自己粘着部材の内部ヘイズは、透明性の観点からは低ければ低いほどよいが、粘着性などとのバランスの観点からは、その下限値は、0.01%以上であることが好ましい。
すなわち、本開示における自己粘着部材の透明性は、内部ヘイズによって評価することができる。
【0191】
また、本開示における自己粘着部材の透明性は、上記の内部ヘイズだけでなく、内部光線透過率によって評価されてもよい。
ここで、「内部光線透過率」とは、自己粘着部材の外表面の形状による影響を除外した光線透過率を指す。
【0192】
本開示における自己粘着部材の内部光線透過率は、90.0%以上が好ましく、95.0%以上がより好ましく、97.0%以上がさらに好ましく、98.0%以上が特に好ましく、99.0%以上がさらにより一層好ましく、理想的には100%である。
【0193】
本開示における自己粘着部材の内部ヘイズおよび内部光線透過率は、具体的には、以下のようにして測定することができる。
【0194】
-内部ヘイズ-
以下の方法により、本開示における自己粘着部材の内部ヘイズ(以下、内部ヘイズ(H1)ともいう)を得る。
まず、予めガラス板2枚の間に、シリコンオイル(信越化学工業株式会社製信越シリコーン(商標)、型番:KF96-100CS)のみを挟んでヘイズ(H2)(%)を測定した。次に、シリコンオイルで表面を均一に塗らした上記自己粘着部材を上記のガラス板2枚で挟んでヘイズ(H3)(%)を測定する。
次に、以下の式(1)のようにこれらの差をとることで、上記自己粘着部材の内部ヘイズ(H1)(%)を得る。
内部ヘイズ(H1)=ヘイズ(H3)-ヘイズ(H2) (1)
【0195】
なお、ヘイズ(H2)及びヘイズ(H3)(いずれも単位は%)は、それぞれ、下記測定条件下で下記装置を用いて測定する。
測定装置:東京電色社製、HAZE METER TC-HIIIDPK
試料サイズ:幅30mm×長さ30mm
測定条件:JIS-K7136(2000)に準拠
測定温度:室温(25℃)
【0196】
-内部光線透過率-
本開示における自己粘着部材の内部ヘイズの測定中、ヘイズ(H2)の測定において、ヘイズ(H2)ではなく光線透過率(T2)(%)を測定し、ヘイズ(H3)の測定において、ヘイズ(H3)ではなく光線透過率(T3)(%)を測定する。次に、以下の式(2)により、自己粘着部材の内部光線透過率(T1)(%)を得る。
内部光線透過率(T1)=100-(光線透過率(T2)-光線透過率(T3)) (2)
【0197】
<剥離フィルム>
本開示の封止部材は、さらに、前記自己粘着面同士の間に配置された剥離フィルムを含むことが好ましい。
これによって、所望の時期まで自己粘着面同士が粘着することを防止することができる。
即ち、本開示の封止部材は、対向する自己粘着面と自己粘着面との間に配置された剥離フィルムを含むことができる。
【0198】
剥離フィルムとしては、延伸ポスチレンフィルム(OPS)、延伸ポプロピレンフィルム(OPP)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)等が挙げられる。
【0199】
剥離フィルムを含む封止部材を製造する方法については、特に制限はない。
例えば、加工後の自己粘着部材を重ね合わせることで開閉部を製造する際に、予め自己粘着面と自己粘着面との間に剥離フィルムを介在させてもよい。
【0200】
本開示の封止部材は、他の材料(例えば、後述する包装材料)に対して取り付けることができる。
図11は、他の材料に取り付けられた本開示の封止部材の実施態様を示す概略図である。
図11に示す通り、開閉部a10に剥離フィルムa6を含む封止部材を包装材料a7に取り付ける前に、まず、包装材料a7に、封止部材の開閉部a10を通す孔a8を設ける。
次に、開閉部a10を孔a8に通す。そして、包装材料a7と封止部材とが一体となるように孔a8の外周部をヒートシールしてヒートシール部a9を設ける。
【0201】
<樹脂板>
本開示の封止部材は、さらに、前記自己粘着部材に対して前記自己粘着面とは反対側に配置される樹脂板を含み、前記樹脂板は、下記要件2~下記要件4を満たすことが好ましい。
(要件2)前記樹脂板は、曲げ弾性率が500MPa~2500MPa(JIS K7171)である。
(要件3)前記樹脂板は、厚みが500μm~3000μmである。
(要件4)前記樹脂板は、両端にヒンジ構造を備える。
本開示の封止部材は、本開示における樹脂板を含むことで、開閉部の開閉を容易に行うことができる。
本開示の封止部材は、本開示における樹脂板を含むことで、樹脂板自体の剛性により、開閉部の密閉性を良好に維持することができる。
【0202】
樹脂板は、JIS K7171(2016年)に準拠して測定される曲げ弾性率が、500MPa~2500MPaであることが好ましい。
曲げ弾性率が500MPa以上であることで、樹脂板に一定の剛性を付与することができるため、自己粘着部材をより強固に挟み込み、開閉部を良好に固定することができる。
一方、曲げ弾性率が2500MPa以下であることで、樹脂板に一定の柔軟性を付与することができるため、開閉部における開閉を良好に操作することができる。
上記の観点から、樹脂板は、JIS K7171(2016年)に準拠して測定される曲げ弾性率が、800MPa~2300MPaであることがより好ましく、800MPa~1500MPaであることがさらに好ましい。
【0203】
樹脂板は、厚みが500μm~3000μmである。
これによって、開閉部の開閉をより容易に行うことができる。
上記の観点から、樹脂板は、厚みが1000μm~2000μmであることが好ましい。
【0204】
樹脂板は、両端にヒンジ構造を備える。
樹脂板が要件2及び要件3を満たしさらに両端にヒンジ構造を備えることで、樹脂板を容易に湾曲させることができるため、取り扱い性を向上させることができる。
本開示の封止部材は、前記自己粘着部材に対して前記自己粘着面とは反対側に配置される一対の樹脂板を含むことが好ましい。
【0205】
ヒンジ構造の形成方法としては、特に制限はない。
例えば、樹脂板の両端を熱融着させてヒンジ構造を形成してもよい。
【0206】
樹脂板の材質としては、特に制限はない。
例えば、樹脂板の材質としては、硬質塩化ビニル(PVC)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(ABS)等が挙げられる。
【0207】
樹脂板は、各種熱可塑性樹脂からなる板であってもよく、樹脂を発泡させた発泡体であってもよく、数種類の樹脂の積層体であってもよい。
【0208】
<クッション材>
本開示の封止部材は、前記自己粘着部材と前記樹脂板との間にクッション材を含むことが好ましい。
これによって、樹脂板に圧力を加えて自己粘着部材を密着させる際、開閉部の密着性をより向上させることができるため、開閉部の密閉性を向上させることができる。
例えば、開閉部に一定の厚みを有する貫通部材を挟み込む場合に、自己粘着部材と樹脂板との間にクッション材を含むことが好ましい。これによって、樹脂板に圧力を加えて自己粘着部材を密着させる際、開閉部の密着性に加え、自己粘着面と貫通部材との密着性も向上させることができる。
その結果、開閉部にチューブ等の貫通部材を固定した状態の開閉部の密閉性に優れ、開閉部に貫通部材等の他の部材を固定していない状態の開閉部の密閉性にも優れる。
【0209】
開閉部を貫通する貫通部材としては、特に制限はない。
例えば、本開示の封止部材は、チューブ、カテーテル、ケーブル及びワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1つが、前記開閉部を貫通することが好ましい。
中でも、本開示の封止部材は、チューブ、カテーテル、電源ケーブル、通信ケーブル及びワイヤからなる群から選ばれる少なくとも1つが、開閉部を貫通することが好ましい。
【0210】
クッション材の厚みとしては、特に制限はない。
例えば、開閉部に一定の厚みを有する貫通部材を挟み込む場合、貫通部材の厚みによって、適宜設定してもよい。
クッション材の厚みとしては、5mm~20mmであってもよく、7mm~15mmであってもよく、9mm~13mmであってもよい。
【0211】
クッション材の態様としては、樹脂板に圧力を加えて自己粘着部材を密着させる際、開閉部の密着性をより向上させることができる態様であれば、特に制限はない。
例えば、ポリエチレン等の樹脂であってもよく、高圧法低密度ポリエチレン(LLDPEともいう)であることが好ましい。
また、クッション材は、発泡体であることが好ましい。
【0212】
本開示の封止部材における樹脂板及びクッション材の態様について、図12及び図13を用いて説明する。
図12は、クッション材を含む封止部材を示す概略図である。
図12において、厚みtの封止部材は、厚みTの一対のクッション材a11によって囲まれた開閉部a10と、を含み、対向する自己粘着面の間には剥離フィルムa6を含む。
つまり、自己粘着部材の自己粘着面とは反対側にクッション材a11を含む。
これによって、例えば、開閉部に一定の厚みを有する貫通部材を挟み込む場合に、貫通部材の部材容積分を吸収することができる。
封止部材と包装材料a7とが一体となるようにヒートシールを施すことで、ヒートシール部a9が形成されている。
【0213】
樹脂板及びクッション材を含む封止部材について、図13を用いて説明する。
図13は、樹脂板及びクッション材を含む封止部材を示す概略図である。
図13に示す通り、封止部材は、一対の自己粘着部材と、自己粘着部材によって囲まれた開閉部a10と、を含み、対向する自己粘着面の間には剥離フィルムa6を含む。
また、封止部材は、自己粘着面とは反対側に配置される樹脂板a12を含み、自己粘着部材と樹脂板a12との間にクッション材a11を含む。
封止部材と包装材料a7とが一体となるようにヒートシールを施すことで、ヒートシール部a9が形成されている。
【0214】
続いて、本開示の封止部材において、開閉部に貫通部材を通す方法の実施態様について、図14図17を用いて説明する。
図14は、自己粘着面同士を離すことによって開閉部を開く方法を示す模式図である。
図14に示すように、包装材料a7の所定箇所に取り付けた封止部材において、樹脂板a12が備える両端のヒンジ構造を、手動で樹脂板同士を離す方向a13に絞って付加をかけ、樹脂板同士の間に孔a8を設ける。孔a8を設けた状態で、剥離フィルムa6を矢印の方向へ引き抜く。
なお、この際、自己粘着面同士は離れた状態であり、開閉部が開いている。
【0215】
図15は、開閉部に貫通部材を貫通させる方法を示す模式図である。
貫通部材a14を、孔a8に通し任意の箇所まで挿し通す。これによって、開閉部に貫通部材a14を貫通させることができる。
なお、上記貫通を行う前に、密閉性の観点から、貫通部材について、ゴミ、埃、水分、油分等を予め取り除くことが好ましい。
【0216】
図16は、貫通部材を挟み込んだ開閉部を閉じる方法を示す模式図である。
貫通部材a14を貫通させた後、手動でかけていた付加を樹脂板同士を閉じる方向a15に解放し、貫通部材a14を樹脂板a12で挟み込む。
この際、貫通部材a14が開閉部を貫通した状態にて開閉部が閉じている。
【0217】
図17は、貫通部材を挟み込んだ開閉部が密着した状態を維持する方法を示す模式図である。
貫通部材a14を挟み込んだ開閉部a10を含む封止部材を、所定の温度(例えば、25℃以下)にて保管することで、自己粘着面同士、並びに、自己粘着面及び貫通部材a14が密着した状態を維持することができる。
【0218】
貫通部材(a14)の取り外し、交換等を行う場合は、上述の図15に係る項、及び図16に係る項に従って行えばよい。
【0219】
<自己粘着部材の製造方法>
本開示における自己粘着部材は、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を含む樹脂組成物または4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)をシート状に成形することにより得ることができる。
成形装置および成形条件としては特に限定されず、従来公知の成形装置および成形条件を採用することができ、例えば、押出成形、インフレーション成形、カレンダーリング成形等の公知の方法を適用することができる。なかでも、押出成形装置により成形することが好ましい。また、自己粘着部材を多層構造とする場合にも、共押出(マルチダイを使用した押出)、各種ラミネート法など、公知の方法を適宜適用することができる。
【0220】
≪包装部材≫
本開示の包装部材は、本開示の封止部材と、包装材料と、を備える。
本開示の封止部材は、常温に近い環境下において、開閉部の密閉性に優れるため、封止される内部領域において気密性が高い。
そのため、本開示の包装部材は、上記構成を備えることで、包装される対象物を、菌の増殖が抑えられた環境下にて保管することができる。
包装材料としては、特に制限はない。
包装材料としては市販品を用いてもよく、例えばテドラー(登録商標)バッグを用いてもよい。
【0221】
[用途]
本開示の封止部材及び包装部材は、開閉部を繰り返し開閉することができる。
そのため、開閉部を繰り返し開閉又は脱着する用途に幅広く適用することができ、例えば、食品、衣料品、医療用品、介護用品、住宅設備、自動車・航空機等の各種産業分野において利用することができる。
【0222】
本開示の封止部材は、常温に近い環境下において、開閉部の密閉性に優れるため、封止される内部領域において気密性が高い。その結果、例えば、封止される内部領域において、菌の増殖を抑えることが可能である。
そのため、本開示の封止部材は、ヒト、動物、食品、医薬品、又は化粧品を収容するために用いられることが好ましい。
【0223】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0224】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0225】
<測定方法>
(1)シートの動的粘弾性測定
自己粘着シートを短冊状に縦50mm×幅5mmに切り出し、試験片とした。次いで、得られた試験片に対して、ティーエイインスツルメント社製RSAIIIを用いて、チャック間距離20mm、周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、引張モードの条件で温度範囲0℃~110℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した。得られたグラフから、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度およびそのtanδの極大値をそれぞれ求めた。
【0226】
(2)4-メチル-1-ペンテン系重合体の極限粘度[η]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した。
【0227】
(3)4-メチル-1-ペンテン系重合体の組成
4-メチル-1-ペンテン系重合体中の4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの含有量は13C-NMRにより定量した。
【0228】
(4)シートの密度
ASTM D 1505(水中置換法)に従って、ALFA MIRAGE社電子比重計MD-300Sを用い、水中と空気中で測定された各試料の重量から算出した。
【0229】
(5)シートの表面粗度
JIS B0610-2001に従って、表面粗さ形状測定機サーフコム1400D(東京精密製)を用いて、測定長さ40mm、測定速度0.15mm/秒で、自己粘着シートの表面の算術平均粗さRa、十点平均粗さRzを測定した。この測定を3回行い、それぞれの平均値を算術平均粗さRa(μm)、十点平均粗さRz(μm)とした。
【0230】
[実験1]
<材料>
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
(1)4-メチル-1-ペンテン系重合体:4-メチル-1-ペンテンとプロピレンとの共重合体(4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量:72モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:28モル%)
・ガラス転移温度:30℃
・135℃のデカリン中での極限粘度[η]:1.5dL/g
・MFR:28g/10min
【0231】
(2)発泡剤:炭酸水素ナトリウム系化学発泡剤
【0232】
<4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシートの作製>
[実施例1A]
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:65mm、フルフライトスクリュー、Tダイ(ダイ幅:750mm)、冷却ロール、および引取機、とからなる装置を用いた。
まず、4-メチル-1-ペンテン系重合体を押出成形機に投入し、シリンダー各部の温度100~250℃、スクリュー回転数23rpmの条件で、溶融・混練し、押出量15kg/時間となるようにTダイから押出した。
押し出されたシートは、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度1.3m/分)、シート厚み0.3mm、シート幅約700mmの4-メチル-1-ペンテン系重合体シートを得た。
得られたシートの表面に凹凸加工された合紙を押し当てて凹凸を転写して、シートの表面粗度を調整した。
【0233】
[実施例2A]
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:65mm、フルフライトスクリュー、Tダイ(ダイ幅:750mm)、冷却ロール、および引取機、とからなる装置を用いた。
まず、4-メチル-1-ペンテン系重合体を押出成形機に投入し、シリンダー各部の温度100~250℃、スクリュー回転数50rpmの条件で、溶融・混練し、押出量23kg/時間となるようにTダイから押出した。
押し出されたシートは、冷却ロール(ロール内部通水温度10℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度1.0m/分)、シート厚み0.6mm、シート幅約700mmの4-メチル-1-ペンテン系重合体シートを得た。
得られたシートの表面に凹凸加工された合紙を押し当てて凹凸を転写して、シートの表面粗度を調整した。
【0234】
[比較例1A]
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:65mm、フルフライトスクリュー、Tダイ(ダイ幅:750mm)、冷却ロール、および引取機、とからなる装置を用いた。
まず、4-メチル-1-ペンテン系重合体97wt%と炭酸水素ナトリウム系化学発泡剤3wt%を押出成形機に投入し、シリンダー各部の温度100~220℃、スクリュー回転数20rpmの条件で(各成分原料を)溶融・混練し、押出量13kg/時間となるようにTダイから押出した。
押し出されたシートは、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度1.3m/分)、シート厚み0.5mm、シート幅約700mmの4-メチル-1-ペンテン系重合体発泡シートを得た。
【0235】
[比較例2A]
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:50mm、フルフライトスクリュー、Tダイ(ダイ幅:320mm)、冷却ロール、および引取機、とからなる装置を用いた。
まず、4-メチル-1-ペンテン系重合体97wt%と炭酸水素ナトリウム系化学発泡剤3wt%を押出成形機に投入し、シリンダー各部の温度100~220℃、スクリュー回転数10rpmの条件で(各成分原料を)溶融・混練し、押出量3kg/時間となるようにTダイから押出した。
押し出されたシートは、冷却ロール(ロール内部通水温度25℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.6m/分)、シート厚み0.5mm、シート幅約280mmの4-メチル-1-ペンテン系重合体発泡シートを得た。
【0236】
<評価>
得られた各シートを用いて、以下の評価を行った。結果を、表1に示した。
・最大せん断速度、および伸び(%)
シートを短冊状に縦85mm×幅20mmに切り出し、試験片とした。温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、2枚の試験片を幅20mm、長さ25mmの貼り付けサイズにて、表1に示す表面粗度の面同士が対向するように重ね合わせ、40℃に設定したヒートシーラー(テスター産業製TP701B)用いて、0.026MPaで1秒間圧力をかけた。その後、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、24時間置いた。
次いで、引張試験機(島津製作所製AG-X-5)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度50mm/分で、引張試験を行い、引きはがす際の最大せん断応力(MPa)と伸び(%)を測定した。この測定を5回行い、それぞれの平均値を最大せん断応力(MPa)と伸び(%)とした。
【0237】
【表1】
【0238】
[実験2]
<評価>
上記の実験1で得られた実施例1A,2Aの各シートを成人男性の皮膚(上腕)に付着させたところ、各シートは良好に密着し、上腕を回しても外れなかった。
【0239】
[実験3]
<測定方法>
(動的粘弾性測定)
自己粘着部材を短冊状に縦50mm×幅5mmに切り出し、試験片とした。次いで、得られた試験片に対して、ティーエイインスツルメント社製RSAIIIを用いて、チャック間距離20mm、周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、引張モードの条件で温度範囲0℃~110℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した。得られたグラフから、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度およびそのtanδの極大値をそれぞれ求めた。
【0240】
(4-メチル-1-ペンテン系重合体の組成)
4-メチル-1-ペンテン系重合体中の4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの含有量は13C-NMRにより定量した。
【0241】
<材料>
実施例および比較例で用いた原料について以下に示す。
・発泡剤:炭酸水素ナトリウム系化学発泡剤
・包装材料:容量1Lのガスバリヤー試験袋「テドラーパック」(ジーエルサイエンス株式会社製)
上記テドラーパックには、6φのピンチコックが2ケ所に取り付けられている。
【0242】
[実施例1C]
<4-メチル-1-ペンテン系重合体>
実施例1において、下記の4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いた。
・4-メチル-1-ペンテン系重合体:4-メチル-1-ペンテンとプロピレンとの共重合体(4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量:72モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:28モル%)
損失正接(tanδ)の極大値を示す温度:30℃
損失正接(tanδ)の極大値:2.7
ガラス転移温度:30℃
135℃のデカリン中での極限粘度[η]:1.5dL/g
MFR:28g/10min
【0243】
<4-メチル-1-ペンテン(4-MP)系重合体を含む自己粘着部材の作製>
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:65mm、フルフライトスクリュー、Tダイ(ダイ幅:750mm)、冷却ロール、および引取機からなる装置を用い、材料としては4-メチル-1-ペンテン系重合体を用い、表1に記載の厚み、幅及び長さを有する自己粘着部材を得た。
得られた自己粘着部材の自己粘着面に対し、凹凸加工された合紙を押し当てて凹凸を転写して、自己粘着面の表面粗度を調整した。
【0244】
<封止部材を含む包装部材の作製>
本実施例における封止部材を含む包装部材の作製方法を説明する。
まず、2つの自己粘着部材を加工し重ね合わせることで、幅=15mm、長さl=40mmの開閉部を作製した。また、開閉部における自己粘着面と自己粘着面との間に剥離フィルム(厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム)を挟み込んだ。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを開閉部に挟み込んだ。
【0245】
次に、包装材料である容量1Lのガスバリヤー試験袋「テドラーパック」(ジーエルサイエンス株式会社製)の面の一ケ所に、開閉部の長さと同じ長さとなるように切り込みを入れて孔を形成した。
開閉部の長さ方向の辺と孔が一致する様に、孔に開閉部を通した。そして、孔の外周部をヒートシールしてヒートシール部を設けることによって、開口部と包装材料とを連結させて封止部材を得た。
【0246】
その後、封止部材を40℃~45℃に加温し、粘着性及び柔軟性を向上させて、開閉部を開き剥離フィルムを除いた。そして、一方を封止した外径4φの「シリコンチューブ」(ラボランシリコーンチューブ(株)製、貫通部材)を開閉部に挟み込み手動で開閉部を閉じた。
以上により、封止部材を含む包装部材を作製した。
【0247】
[実施例2C~実施例8C、及び比較例1C~比較例4C]
下記の点以外は、実施例1Cと同様にして実施例2C~実施例8C、及び比較例1C~比較例4Cを行った。
実施例2C~実施例8C、及び比較例1C~比較例4Cでは、自己粘着部材の厚み、幅及び長さを表2に記載の通りに変更し、貫通部材の種類及び外径を表2に記載の通りに変更した。
実施例2C~実施例8C、及び比較例1C~比較例4Cでは、封止部材に対して、表2に記載の材質、発泡倍率及び厚みを有するクッション材を形成した。
実施例2C~実施例8C、及び比較例1C~比較例4Cでは、封止部材に対して、両端にヒンジ構造を備え、表2に記載の材質、厚み、長さ及び曲げ弾性率を有する樹脂板を形成した。
実施例7C及び実施例8Cでは、高分子の種類を、表2に記載の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度及び損失正接(tanδ)の極大値を有する4-MPに変更した。
比較例1C~比較例4Cでは、高分子の種類を、表1に記載の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度及び損失正接(tanδ)の極大値を有するポリプロピレン(PP、プライムポリマー株式会社製)に変更した。
【0248】
なお、表2において、「-」の表示は、その項目に該当する構成、数値又は成分が含まれていないことを意味する。
例えば、「クッション材」、「樹脂板」及び「貫通部材」の項目における「-」の表示は、封止部材に「クッション材」、「樹脂板」及び「貫通部材」が含まれていないことを意味する。
表2中、「PP5倍発泡体」とは、5倍発泡のポリプロピレン板(「パロニアスーパー」、三井化学東セロ株式会社製)を意味する。
表2中、「PET」とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)板(「厚み0.2mmのPETフィルム(帝人株式会社製)を3枚貼り合わせたもの)を意味する。
表2中、「LDPE」とは、低密度ポリエチレンを意味する。
表2中、「HDPE」とは、高密度ポリエチレンを意味する。
表2中、「ABS」とは、ポリスチレンを意味する。
【0249】
[参考例]
参考例に係る包装材料は、封止部材を含んでいない。即ち、包装材料「テドラーパック」自体を包装部材としている。
【0250】
<評価>
(自己粘着性)
実施例1C~8Cで得られた4-メチル-1-ペンテン(4-MP)系重合体を含む自己粘着部材の面同士を40℃に設定したヒートシーラー(テスター産業製TP701B)用いて、0.026MPaで1秒間圧力をかけ、温度23℃、相対湿度50%の環境下にて、24時間置いた後、引張試験(チャック間距離50mm、引張速度50mm/分)を行ったところ、最大せん断応力(MPa)が2.0MPa以上であった。
【0251】
(密閉性1)
各実施例及び比較例に係る包装部材を、それぞれ5つ用意した。
5つの包装部材のそれぞれについて以下の操作を行った。
【0252】
開閉部に貫通部材を挟み込んだ封止材を含む包装部材の開閉部を体温と同じ温度になるように温め、対向する開閉部の自己粘着部分同士が触れるように閉じた後すぐに、23℃、相対湿度50%の部屋へ移し、1時間放置して封止部材の開閉部を固定化させた。
【0253】
1時間放置した後、包装材料が備える2つのピンチコックのうち、一方のピンチコックには圧力計を、他方のピンチコックには容量500mlのエアシンダーを、それぞれ差し込み、包装部材内へ空気を送り込めるように設定した。
【0254】
その後、エアシンダーを用いて、包装部材内の空気圧が150mmHgとなるように空気を入れ、23℃、相対湿度50%の条件で、24時間保管した。保管の前後において、包装部材内の圧力及び空気量を測定した。
各実施例及び比較例に係る5つの包装部材のそれぞれについて得られた、保管の前後における包装部材内の圧力の平均値を、各実施例及び比較例に係る包装部材の保管の前後における包装部材内の圧力とする。
また、各実施例及び比較例に係る5つの包装部材のそれぞれについて得られた、保管の前後における包装部材内の空気量の平均値を、各実施例及び比較例に係る包装部材の保管の前後における包装部材内の空気量とする。
【0255】
(密閉性2)
開閉部に貫通部材を挟み込んだ封止材を含む包装部材の開閉部を体温と同じ温度になるように温め、対向する開閉部の自己粘着部分同士が触れるように閉じた後すぐに、23℃、相対湿度50%の部屋に移して1時間放置し、封止部材の開閉部を固定化させた。
1時間放置した後、封止部材の開閉部の両端を片手でつかみ、開閉部の両端から開閉部の中心へ向かう方向に力を加えて開閉部が開くか否かを試験し、以下の評価基準に従って評価した。
なお、開閉部を開けるために加える力が強いほど、密閉性に優れる。
~評価基準~
A:強い力を加えた場合にのみ、開閉部を開けることができた。
B:弱い力を加えただけで、開閉部を開けることができた。
C:力を加えることなく、開閉部を開けることができた。
【0256】
【表2】
【0257】
表2に示す通り、自己粘着面を有する自己粘着部材を含み、前記自己粘着面が対向することによって開閉部が形成され、前記開閉部は、対向する前記自己粘着面同士が離れることによって開き、かつ、対向する前記自己粘着面同士が粘着することによって閉じ、前記自己粘着部材は、上述の要件1を満たす高分子を含む封止部材を用いた実施例は、開閉部の密閉性に優れていた。
一方、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が8℃であり、損失正接(tanδ)の極大値が0.08である比較例1~比較例4は、実施例と比較して、密閉性に劣っていた。
【0258】
この出願は、2020年3月19日に出願された日本出願特願2020-048764号、2020年8月11日に出願された日本出願特願2020-135699号および2020年10月22日に出願された日本出願特願2020-177619号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17