IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日精エー・エス・ビー機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図1
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図2
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図3
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図4
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図5
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図6
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図7
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図8
  • 特許-型開閉装置および型開閉装置の制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】型開閉装置および型開閉装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20240213BHJP
   B29C 45/64 20060101ALI20240213BHJP
   B29C 49/56 20060101ALI20240213BHJP
   B29C 49/78 20060101ALI20240213BHJP
   B29C 49/28 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/64
B29C49/56
B29C49/78
B29C49/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022518060
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2021016680
(87)【国際公開番号】W WO2021221022
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2020078455
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】日高 康裕
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-115921(JP,A)
【文献】特開平08-318552(JP,A)
【文献】国際公開第2014/030639(WO,A1)
【文献】特開2003-145614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型を開閉させる油圧シリンダと、
作動油の供給により前記油圧シリンダを駆動させる油圧駆動装置と、
前記油圧駆動装置を制御する制御部と、を備える型開閉装置の制御方法であって、
前記油圧シリンダは、前記型を鉛直方向に沿って駆動し、
前記制御部は、前記油圧シリンダの動きを減速させる減速領域での速度変化を前半部分と後半部分で変化させ
型閉時の前記減速領域での制御では、前記前半部分では速度を非線形で変化させ、かつ前記後半部分における時間当たりの速度の変化幅を前記前半部分と比べて小さくし、前記後半部分の速度変化を前記前半部分よりも線形に近づける制御を行う
型開閉装置の制御方法。
【請求項2】
前記制御部は、前記減速領域での前記前半部分の速度変化と前記後半部分の速度変化を指数の異なる関数によってそれぞれ制御し、前記前半部分の関数を規定する第1の指数と前記後半部分の関数を規定する第2の指数の入力を外部から受け付ける
請求項1に記載の型開閉装置の制御方法。
【請求項3】
前記制御部は、前記減速領域の始点の入力をさらに外部から受け付け、当該入力に基づき前記減速領域の始点を変化させる
請求項2に記載の型開閉装置の制御方法。
【請求項4】
前記制御部は、前記減速領域での速度変化を示すグラフを表示装置に表示させる
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の型開閉装置の制御方法。
【請求項5】
型を開閉させる油圧シリンダと、
作動油の供給により前記油圧シリンダを駆動させる油圧駆動装置と、
前記油圧駆動装置を制御する制御部と、を備え、
前記油圧シリンダは、前記型を鉛直方向に沿って駆動し、
前記制御部は、前記油圧シリンダの動きを減速させる減速領域での速度変化を前半部分と後半部分で変化させ
型閉時の前記減速領域での制御では、前記前半部分では速度を非線形で変化させ、かつ前記後半部分における時間当たりの速度の変化幅を前記前半部分と比べて小さくし、前記後半部分の速度変化を前記前半部分よりも線形に近づける制御を行う
型開閉装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記油圧シリンダの速度変化を示すグラフを表示した画面を表示装置に表示させる出力を行い、前記画面を介して、前記油圧シリンダの速度変化を調整するパラメータの入力を受けつける
請求項に記載の型開閉装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記減速領域での前記前半部分の速度変化と前記後半部分の速度変化を指数の異なる関数によってそれぞれ制御し、前記画面を介して、前記前半部分の関数を規定する第1の指数と前記後半部分の関数を規定する第2の指数の入力を受け付ける
請求項に記載の型開閉装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記減速領域の始点の入力をさらに前記画面を介して受け付け、当該入力に基づき前記減速領域の始点を変化させる
請求項に記載の型開閉装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記画面を介して、前記減速領域における前記油圧シリンダへの作動油の流量を調整するパラメータの入力を受け付ける
請求項から請求項のいずれか一項に記載の型開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、型開閉装置および型開閉装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ホットパリソン式の樹脂製容器のブロー成形方法に関しては、生産性の向上のために成形サイクルの一層の短縮化が求められている。かかる成形サイクルの短縮のためには、射出成形時の型開閉時間を短縮するとともに、その型開閉の動作を安定させることが求められている。この種の型開閉の制御については、従来から種々の提案がなされている(特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭58-145351号公報
【文献】特許第2942605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
型の開閉時間を短縮する観点からは、油圧シリンダの動きを減速させる減速領域の時間はできるだけ短い方が好ましい。しかし、減速領域の時間を短くすると、排油側の油圧回路に異常な油圧変動(サージ圧や油撃など)によって型が停止位置で静止せずにバウンドし、型開閉時間の短縮および安定した型開閉動作が困難になる。また、減速領域の時間を短くすると、金型や油圧部品が破損し易くなり、大きな異音も生じ易い。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、型開閉時間の短縮および安定した型開閉動作を実現できる型開閉装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、型を開閉させる油圧シリンダと、作動油の供給により油圧シリンダを駆動させる油圧駆動装置と、油圧駆動装置を制御する制御部と、を備える型開閉装置の制御方法である。油圧シリンダは、型を鉛直方向に沿って駆動する。制御部は、油圧シリンダの動きを減速させる減速領域での速度変化を前半部分と後半部分で変化させる。型閉時の減速領域での制御では、前半部分では速度を非線形で変化させ、かつ後半部分における時間当たりの速度の変化幅を前半部分と比べて小さくし、後半部分の速度変化を前半部分よりも線形に近づける制御を行う。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、型開閉装置の制御において、型開閉時間の短縮および安定した型開閉動作を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るブロー成形装置の概略平面図である。
図2図1の射出成形部の型開状態を示す概略側面図である。
図3図1の射出成形部の型閉状態を示す概略側面図である。
図4】昇降シリンダおよび型開閉シリンダの制御に関する制御部の構成例を示す図である。
図5】シリンダの昇降速度と時間の関係の一例を示すグラフである。
図6】本実施形態のブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。
図7】第1制御パターンの調整画面の一例を示す図である。
図8】型開閉装置を含む射出成形装置の構成例を示す概略平面図である。
図9】射出成形部の別例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0010】
<ブロー成形装置の説明>
図1は、型開閉装置を含むブロー成形装置の概略平面図である。図2は、図1の射出成形部の型開状態を示す概略側面図である。図3は、図1の射出成形部の型閉状態を示す概略側面図である。
【0011】
本実施形態のブロー成形装置1は、プリフォーム20を室温まで冷却せずに射出成形時の保有熱(内部熱量)を活用してブロー成形するホットパリソン方式の装置である。ブロー成形装置1は、射出成形されたプリフォーム20を一度にブロー成形する構成の装置(例えば、図1に示す1ステップ方式(1ステージ方式とも称する)の装置)であってもよい。あるいは、ブロー成形装置1は、射出成形されたプリフォーム20を複数回に分けてブロー成形する構成の装置(例えば、WO2020/209294の図1に示す1.5ステップ方式の装置)であってもよい。
【0012】
図1図3に示すように、ブロー成形装置1は、機台2と、機台2の上方(図中Z方向)に配置された上部基盤10とを備える。上部基盤10は、機台2から上方へ立設された複数の支柱(不図示)によって支持されている。
【0013】
ブロー成形装置1において、機台2と上部基盤10の間の空間には、射出成形部4、温度調整部5、ブロー成形部6および取出部7が配置されている。また、ブロー成形装置1の各要素の動作は、制御部8によって制御される。
【0014】
射出成形部4、温度調整部5、ブロー成形部6および取出部7は、後述する移送板12の回転中心Oを基準として、所定角度(例えば90度)ずつ回転した位置に配置されている。なお、ブロー成形装置1において、温度調整部5や取出部7は必ずしも配置されていなくてもよい。
【0015】
ここで、上部基盤10の射出成形部4の位置には、射出成形部4の上部型締板32や図2に示す射出コア型24がそれぞれ上面側に配置される。上部基盤10の温度調整部5の位置には、加熱コアおよび加熱コアの昇降機構(いずれも不図示)が上面側に配置される。上部基盤10のブロー成形部6の位置には、延伸ロッドおよび延伸ロッドの昇降機構(いずれも不図示)がそれぞれ上面側に配置される。また、上部基盤10の取出部7の位置には、取出カム(不図示)が配置される。
【0016】
また、機台2の上方であって上部基盤10の下面には、扇形の4つの移送板12が所定角度(例えば90度)ごとに配置されている。4つの移送板12は、それぞれ上部基盤10の周囲に固定された複数の受部材46A、46B(図2図3参照)に案内されて、回転中心Oを回転軸とする回転方向に沿って間欠的に循環移動する。移送板12(または後述するネック型22)に保持されたプリフォーム20(または容器)は、移送板12の回動により、射出成形部4、温度調整部5、ブロー成形部6、取出部7の順に搬送される。なお、移送板12は、成形部ごとに分割されていない単一の円盤形状であってもよい。
【0017】
また、図2図3に示すように、各移送板12の下面には、プリフォーム20の軸方向が上下方向に沿うようにプリフォームを保持するネック型22が設けられている。また、各移送板12におけるネック型22の上面側には開口部が形成されており、当該開口部から射出コア型24、ブローコアおよび延伸ロッドなどを上方からプリフォーム20に挿入することが可能である。
【0018】
(射出成形部4)
射出成形部4は、射出金型21と、射出金型21を高速で開閉する高速型開閉機構31と、ネック型22を射出キャビティ型26に対して昇降させる昇降機構40を備える。射出成形部4には、プリフォームの原材料である樹脂材料を供給する射出装置3が接続されている。
【0019】
射出金型21は、プリフォーム20の内部形状を規定する射出コア型24と、プリフォーム20の外部形状を規定する射出キャビティ型26と、射出装置3から供給された溶融樹脂を射出金型21の型空間に導くホットランナー型28と、を有している。射出キャビティ型26およびホットランナー型28は、機台2に取り付けられた下部型締板34に固定される。一方、射出コア型24は、タイバー38A,38Bで支持された上部型締板32に取り付けられ、上下方向(鉛直方向であるZ方向)に昇降可能である。
【0020】
射出成形部4は、射出キャビティ型26、射出コア型24と、移送板12のネック型22とを型閉じしてプリフォーム形状の型空間を形成する。そして、このようなプリフォーム形状の型空間内に射出装置3から樹脂材料を射出することで、射出成形部4でプリフォーム20が製造される。
【0021】
昇降機構40は、移送板12を保持する受部材46A,46Bと、受部材46A,46Bを昇降させる昇降シリンダ42と、受部材46A,46Bから下方に延びる昇降ロッド44,45と、を含む。受部材46Aは、移送板12の回転半径方向外側に配置され、昇降ロッド45と接続される。受部材46Bは、移送板12の回転中心O側に配置され、昇降ロッド44と接続される。昇降ロッド44,45は、機台2内において、連結部材48によって連結される。
【0022】
昇降シリンダ42は、下部型締板34の下面に固定されて機台2内に配置されている。昇降シリンダ42は、例えば、油圧シリンダであって、油圧によって進退駆動される昇降ピストンロッド43と、昇降ピストンロッド43をスライド可能に収容するシリンダチューブを有する。昇降ピストンロッド43の先端は、図3に示すように、連結部材48に接続されている。昇降シリンダ42は、連結部材48を機台2内で昇降させることで、昇降ロッド44,45を介して受部材46A,46Bを上下方向に昇降させる。これにより、受部材46A,46Bに保持される移送板12が上下方向に昇降する。
【0023】
高速型開閉機構31は、移送板12の上方に配置された略三角形状の上部型締板32を機台2に対して昇降移動させる。上部型締板32の下面には、固定板23を介して複数(例えば4本)の射出コア型24が固定されている。上部型締板32は、機台2から上方に延在する円柱形状の複数(例えば3本)のタイバー38A,38Bの上端側に固定されている。タイバー38Aは、回転半径方向外側に2本配置され、タイバー38Bは回転中心O側に1本配置される。タイバー38A,38Bは、上部型締板32の三角形状の各頂点付近で固定されている。
【0024】
また、タイバー38A,38Bの下端側は、機台2内に配置された下部可動板36にそれぞれ固定されている。また、下部型締板34の下面と下部可動板36の間には、型開閉シリンダ50が配置されている。
【0025】
型開閉シリンダ50は、下部型締板34の下面に固定されて機台2内に配置されている。型開閉シリンダ50は、例えば、油圧シリンダであって、油圧によって進退駆動される型開閉ピストンロッド51と、型開閉ピストンロッド51を収容するシリンダチューブを有する。型開閉ピストンロッド51の先端は、図3に示すように、下部可動板36に接続されている。型開閉シリンダ50は、下部可動板36を機台2内で昇降させることで、タイバー38A,38Bを介して上部型締板32を上下方向に昇降させる。これにより、上部型締板32に固定される射出コア型24が上下方向に昇降する型開閉動作が行われる。
【0026】
なお、射出成形部4の型開きをしたときにも、移送板12のネック型22は開放されずにそのままプリフォーム20を保持して搬送する。射出成形部4で同時に成形されるプリフォーム20の数(すなわち、ブロー成形装置1で同時に成形できる容器の数)は、適宜設定できる。一例として、図1では4本のプリフォーム20を搬送する構成を示す。
【0027】
(温度調整部5)
温度調整部5は、図示しない温度調整用の金型ユニット(温調ポットや温調ロッド)と、その金型ユニットの昇降機構(いずれも不図示)を備える。温度調整部5は、温調ポットにより、射出成形部4で製造されたプリフォーム20の均温化や偏温除去を行い、プリフォーム20の温度を最終ブローに適したブロー温度(例えば約90℃~105℃)に調整する。また、本実施形態の温度調整部5は、射出成形後の高熱のプリフォーム20を冷却する機能も担う。なお、温度調整部5にも、射出成形部4と同様の構成の移送板12の昇降機構(不図示)を設けてもよい。
【0028】
(ブロー成形部6)
ブロー成形部6は、ブロー成形金型、延伸ロッド、射出成形部4と同様の構成である移送板12の昇降機構(いずれも不図示)を備える。ブロー成形部6は、ブロー成形金型に配置されたプリフォーム20を延伸ロッドで軸方向に延伸させるとともに、内部に高圧エアを導入して二軸延伸ブロー成形を行い、容器を製造する。
【0029】
(取出部7)
取出部7は、取出カムによってネック型22を開放し、ブロー成形部6で製造された容器をブロー成形装置1から取り出す。取出部7で取り出された容器は、箱詰めされるかあるいは充填ラインへ搬送される。なお、取出部7にも、射出成形部4と同様の構成の移送板12の昇降機構(不図示)を設けてもよい。
【0030】
(制御部8)
制御部8は、移送板12の昇降や、各部での型開閉、射出成形部4での射出成形動作およびブロー成形部6でのブロー成形動作などをそれぞれ制御する。
【0031】
一例として、制御部8による射出成形部4の制御には、昇降シリンダ42および型開閉シリンダ50の少なくとも一方を駆動させる駆動制御が含まれる。制御部8は、ユーザの設定に応じて型開閉シリンダ50への作動油の流量を調整することで、上部型締板32に固定される射出コア型24の昇降を制御する。同様に、制御部8は、ユーザの設定に応じて昇降シリンダ42への作動油の流量を調整することで、移送板12に設けられるネック型22の昇降を制御する。
【0032】
図4は、昇降シリンダ42および型開閉シリンダ50の制御に関する制御部8の構成例を示す図である。
制御部8は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの制御装置60と、表示部61および操作部62を有する。制御部8は、型開閉シリンダ50への作動油の流量を調整する第1の油圧駆動装置63に少なくとも接続され、適宜、昇降シリンダ42への作動油の流量を調整する第2の油圧駆動装置64にも接続される。
【0033】
第1の油圧駆動装置63および第2の油圧駆動装置64は、いずれも油圧シリンダの給油口に接続される電磁比例弁(不図示)を含む。第1の油圧駆動装置63および第2の油圧駆動装置64は、電磁比例弁のスプール(弁体)の移動量により電磁比例弁のポート(作動油の流出口)の開閉度合いを制御し、各油圧シリンダへの作動油の流量を調整することができる。また、第1の油圧駆動装置63および第2の油圧駆動装置64は、油圧ポンプで生成された作動油が流通する油圧回路(不図示)と繋がっている。なお、第1の油圧駆動装置63および第2の油圧駆動装置64は、油圧ポンプを含む構成であってもよい。
【0034】
制御装置60は、射出コア型24の昇降速度の変化を規定する第1制御パターンに基づいて、第1の油圧駆動装置63に対しスプールの移動量を指示する制御信号を出力する。これにより、型開閉シリンダ50への作動油の流量が制御されて型開閉ピストンロッド51の昇降が制御され、射出コア型24の昇降速度が第1制御パターンで変化する。
同様に、制御装置60は、移送板12の昇降速度の変化を規定する第2制御パターンに基づいて、第2の油圧駆動装置64に対しスプールの移動量を指示する制御信号を出力する。これにより、昇降シリンダ42への作動油の流量が制御されて昇降ピストンロッド43の昇降が制御され、移送板12の昇降速度が第2制御パターンで変化する。
【0035】
操作部62は、第1制御パターンまたは第2制御パターンを調整するためのパラメータの入力をユーザから受け付ける。操作部62は、例えば、複数の入力ボタンを備えた操作パネルや、タッチパネルなどで構成される。
また、表示部61は、例えば液晶パネルなどの表示装置であって、ユーザが第1制御パターンまたは第2制御パターンを設定するときに、設定中の制御パターンのグラフを画面に表示する。これにより、ユーザは設定中の制御パターンのグラフを確認することができる。
【0036】
表示部61および操作部62は、例えば、液晶パネル上に光透過性のタッチパネルが積層された画面表示機能を有するタッチパネル装置として構成されていてもよい。なお、表示部61および操作部62は、ブロー成形装置1に内蔵されるものに限定されず、有線または無線の通信手段を介して外付けされるものであってもよい。
【0037】
以下、図5を参照しつつ、制御部8による第1制御パターンおよび第2制御パターンの調整について説明する。ここで、第1制御パターンおよび第2制御パターンについては、調整の方法はほぼ同様である。そのため、本実施形態では、射出コア型24を昇降させる第1の油圧駆動装置63の第1制御パターンについて説明し、移送板12を昇降させる第2の油圧駆動装置64の第2制御パターンの説明は省略する。
【0038】
図5(A)は、第1制御パターンでのシリンダの昇降速度と時間の関係を示すグラフである。図5では、一例として型閉時の場合を説明する。型開時の制御に関しても、型閉時と同様の制御を適用することができる。なお、図5の各図において、縦軸はシリンダロッドの昇降速度(シリンダロッドの移動速度、射出コア型の昇降速度、電磁比例弁のスプールの移動量に伴うポートの開度、作動油の流量)であり、横軸は時間である。
【0039】
第1制御パターンは、射出コア型24の移動距離等により区分けされた、加速領域、等速領域および減速領域を含む。
加速領域は、時間軸において0からT1までの区間であり、停止している油圧シリンダを駆動させ始めるときの動作状態に対応する。加速領域では、油圧シリンダのシリンダロッドの昇降速度がゼロから所定の速度まで加速される。加速領域での昇降速度の増加曲線はxn1の関数で表現される。したがって、加速領域では、型開閉シリンダ50の型開閉ピストンロッド51が、収縮して停止している状態から伸張して移動開始する状態に移り、昇降速度(伸張速度)がゼロから所定の速度まで加速される。
【0040】
等速領域は、時間軸においてT1からT2までの区間である。等速領域では、油圧シリンダのシリンダロッドの昇降速度が所定の速度で維持される。したがって、等速領域では、型開閉ピストンロッド51の昇降速度(伸張速度)は所定速度で維持される。
減速領域は、時間軸においてT2からT3までの区間であり、油圧シリンダのシリンダロッドの移動を停止させるときの動作状態に対応する。減速領域では、制御部8で設定される減少曲線に従って、シリンダの昇降速度が所定の速度からゼロまで減速される。したがって、減速領域では、制御部8で設定される減少曲線に従って、型開閉ピストンロッド51の昇降速度(伸張速度)が所定速度からゼロまで減速される。
【0041】
図5(B)は、本実施形態の減速領域での昇降速度の減少曲線を拡大して示すグラフである。
減速領域における昇降速度の減少曲線は、前半部分(T2からT2’まで)と後半部分(T2’からT3まで)で異なる関数によって表現される。前半部分の減少曲線はxn2の関数で表現され、後半部分の減少曲線はxn3の関数で表現される。X、n2およびn3は、所定の有理数(小数および整数)で設定される。また、減速領域の始点T2の位置はユーザの指定により変更できる。T2’は、例えば、制御部8がT2とT3の中点を算出することで自動的に設定される。
【0042】
操作部62は、上記の関数xn2の指数n2の値と上記の関数xn3の指数n3の値の入力をユーザから受け付ける。制御部8は、入力された指数n2、n3に基づいて、関数xn2から前半部分の減少曲線を設定し、関数xn3から後半部分の減少曲線を設定する。以上のように、本実施形態の制御部8は、前半部分と後半部分の各減少曲線の形状を、ユーザの設定に応じて個別に調整することが可能である。
【0043】
制御部8は、後半部分の減少曲線における時間当たりの速度の変化幅を前半部分の減少曲線と比べて小さく設定することが好ましい。例えば、制御部8は、図5(B)中破線で示す正弦曲線Sinと前半部分の減少曲線がほぼ一致するように関数xn2を設定する。一方、制御部8は、後半部分の減少曲線では前半部分の減少曲線(正弦曲線Sin)と比べて速度の変化幅が小さくなるように関数xn3を設定する。図5(B)に示すように、減速部分の後半部分において減少曲線(実線)と正弦曲線(破線)を比べると減少曲線の方が線形に近く、正弦曲線Sinよりも時間当たりの速度の変化が一定に近いことが分かる。
【0044】
ここで、比較例として、減少曲線を2つに分けずに1つの関数(正弦曲線の関数)で制御する場合を想定する。一般に、射出コア型24の型開閉時間を短縮する観点からは、減速領域の時間はできるだけ短い方が好ましい。比較例において減速領域の時間を短く設定し、減少曲線の全体を1つの関数(正弦曲線の関数)で制御すると、時間当たりの速度の変化幅が大きくなる領域が生じる。このように、時間当たりの速度の変化幅がばらつくと、排油側の油圧回路に異常な油圧変動(サージ圧や油撃など)が生じやすくなる。例えば、シリンダを停止させる直前で排油側の油圧回路に異常な油圧変動が生じると、射出コア型24が停止位置で静止せずにバウンドする事象(バウンド現象)が生じ、型開閉時間の短縮が困難になるとともに型開閉時間のばらつきも大きくなる。また、型停止時の衝撃によって金型の破損や騒音の増加も生じ、しかも上記の油圧変動によってパッキン等の油圧部品の消耗も大きくなる。
【0045】
一方、本実施形態では、減速領域の始点T2の位置で減速領域を調整するとともに、指数n2、n3により、減速領域の前半部分と後半部分とで型開閉シリンダ50の昇降速度をそれぞれ調整できる。また、減速領域の後半部分では、減少曲線における時間当たりの速度の変化幅を前半部分よりも小さくする。
型開閉シリンダ50の型閉時には、大重量(例えば100キログラム以上)の上部型締板32を支える型開閉シリンダ50を鉛直方向に駆動させて射出コア型24を高速で降下させるので、射出コア型24のバウンド現象がより生じやすくなる。しかし、制御部8の上記の制御によれば、後半部分(つまり、T3で停止させる直前)において型開閉シリンダ50の排油側の油圧回路での油圧変動が小さくなるので、射出コア型24のバウンド現象を抑制できる。これにより、制御部8は、型開閉時間の短縮と型開閉動作の安定化を実現できる。
【0046】
<ブロー成形方法の説明>
図6は、本実施形態のブロー成形装置1によるブロー成形方法の工程を示すフローチャートである。本実施形態では、ブロー成形サイクルの各工程(S102~S105)が実施される前に、射出コア型24または移送板12の昇降速度を調整する型開閉動作の調整工程(S101)が行われる。
【0047】
(ステップS101:型開閉動作の調整工程)
型開閉動作の調整工程では、第1の油圧駆動装置63の第1制御パターンまたは第2の油圧駆動装置64の第2制御パターンの調整作業が行われる。
一例として、第1の油圧駆動装置63による射出コア型24の型閉時の第1制御パターンを調整する場合を説明する。まず、制御装置60は、第1制御パターンの調整画面90を表示部61に表示させる。
【0048】
図7は、表示部61で表示される第1制御パターンの調整画面90の一例を示す図である。調整画面90は、画面の上から順に、第1領域91と、第2領域92と、第3領域93とを含む。なお、図7の調整画面90は、型閉じ制御のときの画面であるが、型開き制御の時の画面としても利用でき、両者の画面の構成は同一である。なお、調整画面90の少なくとも第2領域92は、型閉じ制御と型開き制御とで別画面にしてもよい。
【0049】
調整画面90の第1領域91は、第1の油圧駆動装置63に関する情報と、射出コア型24の位置情報を表示する領域である。第1領域91は、第1の油圧駆動装置63(または油圧ポンプ)の圧力のモニタ値91a、第1の油圧駆動装置63(または油圧ポンプ)の流量のモニタ値91b、第1の油圧駆動装置63(または油圧ポンプ)の圧力の指令値91c、第1の油圧駆動装置63(または油圧ポンプ)の流量の指令値91d、射出コア型24の位置のモニタ値91eをそれぞれ表示する。
【0050】
調整画面90の第2領域92は、第1制御パターンの曲線(図5(A)、(B)参照)のグラフ表示92aと、当該曲線を調整する各種パラメータの入力項目を表示する。制御装置60は、表示部61に調整画面90が表示された状態において、操作部62を介して第2領域92によるパラメータの入力をユーザから受け付ける。なお、グラフ表示92aにおいて、縦軸は油圧シリンダ(シリンダロッド)の昇降速度(速度変化)、または、油圧シリンダ(シリンダロッド)の昇降速度を定める作動油の流量を示し、横軸は時間を示す。
【0051】
第2領域92の入力項目は、加速領域の終点位置92b、等速領域での速度92c、減速領域の始点92d、減速領域の後半部分の始点92e、減速領域の前半部分の係数92f、減速領域の後半部分の係数92gを含む。
【0052】
加速領域の終点位置92bは、図5のT1に相当し、例えば、射出コア型24の移動開始からの経過時間(秒)で規定される。加速領域の終点位置92bは、金型停止位置からの移動距離(mm)で規定されてもよい。等速領域での速度92cは、例えば、所定の最高速度に対する割合(油圧ポンプにおける作動油の最大吐出量に対する割合、第1の油圧駆動装置63から油圧シリンダに流れる作動油の最大流量に対する割合、電磁比例弁のポートの開度、等)(%)で規定される。等速領域での速度92cは同一の値になるため、図7においてはグラフ(直線)の一部は省略されている。減速領域の始点92dは、図5のT2に相当し、例えば、減速領域の始点から金型停止位置までの金型移動距離(mm)で規定される。減速領域の後半部分の始点92eは、図5のT2’に相当し、例えば、減速領域の後半部分の始点から金型停止位置までの金型移動距離(mm)で規定される。減速領域の前半部分の係数92fは、図5のn2に相当するパラメータである。減速領域の後半部分の係数92gは、図5n3に相当するパラメータである。したがって、第2領域92の上記のパラメータの入力により、図5に示す始点T2、指数n2、n3がそれぞれ指定される。
【0053】
また、第2領域92は、第1の油圧駆動装置63および油圧シリンダに作動油を供給するポンプの圧力に関する入力項目をさらに有する。ポンプの圧力に関する入力項目は、加速領域の立ち上がり部分でのポンプ圧力92h、加速領域の立ち上がり部分から減速領域の後半部分の始点までのポンプ圧力92i、減速領域の後半部分でのポンプ圧力92jを含む。これらのパラメータの入力により、第1の油圧駆動装置63および油圧シリンダに対する作動油の流量および圧力を調整することができる。
【0054】
調整画面90の第3領域93は、型閉じ時または型開きの実際の時間情報を表示する領域である。第3領域93は、型閉じ時の全体の所要時間93a、型閉じ時の等速領域の時間93b、型閉じ時または型開き時の減速領域の時間93cをそれぞれ表示する。
【0055】
制御装置60は、調整画面90が表示された状態において入力を受け付けた上記の始点T2、指数n2、n3に応じて、第1制御パターンにおける減速領域の減速曲線を設定する。このとき、制御装置60は、後半部分の減少曲線における時間当たりの速度の変化幅を前半部分の減少曲線と比べて小さく設定するものとする。これにより、射出コア型24の型閉時において、型開閉シリンダ50の排油側の油圧回路での油圧変動が小さくなり、射出コア型24のバウンド現象の抑制と、型開閉時間の高速化を図ることができる。
上記の型開閉動作の調整工程が完了すると、以下に示すブロー成形方法の各工程(ブロー成形サイクル)が実行される。
【0056】
(ステップS102:射出成形工程)
まず、射出成形部4において、射出キャビティ型26、射出コア型24およびネック型22で形成されたプリフォーム形状の型空間に射出装置3から樹脂を射出し、プリフォーム20が製造される。
【0057】
ステップS102において、樹脂充填の終了直後または樹脂充填後に設けられた最小限の冷却時間後に射出成形部4が型開きされる。つまり、プリフォーム20の外形が維持できる程度の高温状態でプリフォーム20が射出キャビティ型26、射出コア型24から離型される。その後、移送板12が所定角度回転し、ネック型22に保持されたプリフォーム20が温度調整部5に搬送される。
【0058】
本実施形態においては、樹脂材料の融点以上の温度で樹脂材料が射出成形されると、射出成形部4では射出成形後のプリフォーム20の最小限の冷却のみを行い、温度調整部5でプリフォーム20の冷却および温度調整を行う。本実施形態において、射出成形部4で樹脂材料の射出が完了してから樹脂材料を冷却する時間(冷却時間)は、樹脂材料を射出する時間(射出時間)に対して1/2以下であることが好ましい。また、上記の樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料の重量に応じて、樹脂材料を射出する時間に対してより短くすることができる。樹脂材料を冷却する時間は、樹脂材料を射出する時間に対して2/5以下であるとより好ましく、1/4以下であるとさらに好ましく、1/5以下であると特に好ましい。本実施形態では、プリフォームの冷却時間を著しく短縮させることで、プリフォームのスキン層(固化状態にある表面層)は従来よりも薄く、コア層(軟化状態または溶融状態にある内層)は従来よりも厚く形成される。つまり、スキン層とコア層との間の熱勾配が大きく、高温で保有熱が高いプリフォームが成形される。
【0059】
射出成形されたプリフォーム20は、温度調整部5への移動に伴ってスキン層とコア層間の熱交換(熱伝導)による均温化が進む。また、外気との接触により、プリフォーム20は外表面から若干冷却される。しかし、温度調整部5への搬入時までプリフォーム20の温度はほぼ高温の離型温度の状態で維持される。
【0060】
(ステップS103:温度調整工程)
続いて、温度調整部5において、プリフォーム20の温度を最終ブローに適した温度に近づけるための温度調整が行われる。
温度調整工程においては、まず、プリフォーム20が温調ポットの温度調整用の空間内に収容される。続いて、温調ポットに収容されたプリフォーム20に温調ロッドが挿入される。
【0061】
温度調整工程においては、プリフォーム20が温調ポットや温調ロッドと接触することで、プリフォーム20はブロー成形に適した温度以下にならないように温度調整され、さらに射出成形時に生じた偏温も低減される。その後、ブロー成形が行われるまでプリフォーム20の温度はブロー温度に維持される。なお、温調ポットや温調ロッドはプリフォーム20の形状に対応し、プリフォームの形状は温度調整工程においても所望の形状のまま維持される。
【0062】
温度調整工程の後、移送板12が所定角度回転し、ネック型22に保持された温度調整後のプリフォーム20がブロー成形部6に搬送される。
【0063】
(ステップS104:ブロー成形工程)
続いて、ブロー成形部6において、容器のブロー成形が行われる。
まず、ブロー成形金型を型閉じしてプリフォーム20を内部に収容し、プリフォーム20の首部にエア導入部材が挿入される。そして、延伸ロッドを兼ねるエア導入部材を降下させつつ、エア導入部材からプリフォーム20内にブローエアを導入する。これにより、プリフォーム20は、ブロー成形金型に密着するように膨出して賦形され、容器にブロー成形される。
【0064】
(ステップS105:容器取り出し工程)
ブロー成形が終了すると、ブロー成形金型が型開きされる。これにより、ブロー成形部6から容器が移動可能となる。
続いて、移送板12が所定角度回転し、容器が取出部7に搬送される。取出部7において、容器の首部がネック型22から開放され、容器がブロー成形装置1の外部へ取り出される。
【0065】
以上で、ブロー成形方法の1サイクルが終了する。その後、移送板12を所定角度回転させることで、上記のS102からS105の各工程が繰り返される。ブロー成形装置1の運転時には、1工程ずつの時間差を有する4サイクル分の容器の製造が並列に実行される。
なお、ブロー成形装置1の構造上、射出成形工程、温度調整工程、ブロー成形工程および容器取り出し工程の待機時間はそれぞれ同じ長さになる。同様に、各工程間の搬送時間もそれぞれ同じ長さになる。
【0066】
<その他の実施形態>
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0067】
上記実施形態では、射出成形部4の射出コア型24の型閉時の制御を中心に説明した。しかし、射出コア型24の型開時の動作や、射出成形部4、温度調整部5、ブロー成形部6における各移送板12の昇降動作に関しても上記実施形態と同様の制御を行うことができる。また、上記実施形態の制御は、例えば、ブロー成形部6のブロー金型(割型)の開閉動作に適用することもできる。
【0068】
また、上記実施形態の型開閉装置の構成は、ホットパリソン式のブロー成形装置への適用に限定されるものではない。例えば、プリフォームを高速で製造するために使用される射出成形装置において上記実施形態と同様の制御を行ってもよい。
【0069】
図8は、型開閉装置を含む射出成形装置70の構成を模式的に示す図である。図8の射出成形装置70は、プリフォームを高速で製造するために使用される装置であって、上記実施形態のブロー成形装置1からブロー成形部6を除いたものに相当する。そのため、図8の説明において、上記実施形態と同様の構成については同一符号を付して重複説明を省略する。
【0070】
射出成形装置70は、射出成形部4と、後冷却部5aと、取出部7と、搬送機構としての回転板71と、制御部8を備える。
【0071】
射出成形部4、後冷却部5aおよび取出部7は、回転板71の周方向において所定角度(例えば120度)ずつ回転した位置に配置されている。射出成形装置70では、回転板71の回転により、回転板71に首部が保持されたプリフォームが、射出成形部4、後冷却部5a、取出部7の順に搬送される。
【0072】
射出成形部4、取出部7、制御部8の構成は、上記実施形態と同様である。なお、射出成形部4には、樹脂材料を供給する射出装置3が接続されている。
後冷却部5aは、プリフォーム冷却用の金型ユニット(温調ポットや温調ロッド)を備え、取出部7でプリフォームを硬化状態で排出可能な程度に短時間で冷却可能な構成である。後冷却部5aは、広義的には温度調整部5の一種である。
【0073】
射出成形装置70においては、射出成形部4の下流側に後冷却部5aを設けることで、後冷却部5aにおいてプリフォームの追加冷却を行うことができる。後冷却部5aでプリフォームの追加冷却を行うことで、射出成形部4ではプリフォームを高温の状態でも離形でき、射出成形部4におけるプリフォームの冷却時間を大幅に短縮できる。これにより、次のプリフォームの成形を早く開始できるので、射出成形装置70でのプリフォームの成形サイクル時間を短縮できる。
また、減速領域の後半部分において型開閉シリンダの排油側の油圧回路での油圧変動が小さくなるので、射出コア型のバウンド現象などを抑制でき、型開閉時間の短縮と型開閉動作の安定化を実現できる。
【0074】
また、本発明の型開閉装置の構成は、上記実施形態の射出成形部4の構成に限定されない。例えば、本発明の型開閉装置は、図9に示す射出成形部4のように油圧シリンダの配置などを種々変更することができる。
【0075】
図9は、型開閉装置を含む射出成形部4の別例を示す図である。なお、図9において、上記実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
射出成形部4は、上部型締盤32、下部型締盤34、型開閉シリンダ50、可動盤81、下部基盤82を備えている。上部型締盤32はタイバー38の上端側に固定され、下部型締盤34はタイバー38の下端側に固定される。下部型締盤34は、下部基盤82よりも下側において上下動可能に配置されている。
【0076】
可動盤81は、下部基盤82と上部型締盤32の間に配置され、一対の型開閉シリンダ(油圧シリンダ)50からそれぞれ延びる型開閉ピストンロッド(シリンダロッド)51によって上下方向に昇降可能に支持されている。可動盤81の下面側には、射出コア型24が取り付けられている。
下部基盤82は、機台(図9では不図示)の上部側に固定されて保持されている。下部基盤82の上面側には、型開閉ピストンロッド51を上下動させる一対の型開閉シリンダ50が固定され、これらの間に射出キャビティ型26およびホットランナー型28が載置されている。また、下部基盤82の下面側には、伸縮可能な型締シリンダ83を介して下部型締盤34が接続されている。
型開閉シリンダ50は、電磁比例弁を含む油圧駆動装置(不図示)を介して、作動油が流通する油圧回路(不図示)に繋がっている。また、射出成形部4は、型開閉シリンダ50への作動油の流量が調整可能な制御部(不図示)を備える。また、制御部は、図5と同様、作動油の流量を制御するための制御パターンが調整(入力・変更)できる、制御装置・操作部・表示部(不図示)を備える。制御パターンは、図5と同様、減速領域における油圧シリンダの動き(シリンダロッドの速度変化)を前半部分と後半部分で変更させる減少曲線、を含む。
【0077】
図9に示す射出成形部4では、型開閉シリンダ50の駆動(型開閉ピストンロッド51の上下動)によって可動盤81が昇降する。これにより、可動盤81に固定される射出コア型24が上下方向に昇降する型開閉動作が行われる。図9に示す型開閉シリンダ50による型開閉動作の制御においても、上記実施形態と同様の制御を適用することができる。つまり、制御部で設定される減少曲線に従い、減速領域において型開閉ピストンロッド51の昇降速度(下降速度)が制御され、型開閉時間の短縮と型開閉動作の安定化が実現できる。
【0078】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1…ブロー成形装置、4…射出成形部、5…温度調整部、6…ブロー成形部、8…制御部、12…移送板、20…プリフォーム、22…ネック型、24…射出コア型、26…射出キャビティ型、42…昇降シリンダ、43…昇降ピストンロッド、50…型開閉シリンダ、51…型開閉ピストンロッド、60…制御装置、61…表示部、62…操作部、63…第1の油圧駆動装置、64…第2の油圧駆動装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9