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特許7434547切断要素、その使用方法及びそれを用いた可動式切断装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】切断要素、その使用方法及びそれを用いた可動式切断装置
(51)【国際特許分類】
   A01D 34/73 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
A01D34/73 102
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022530269
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2020082645
(87)【国際公開番号】W WO2021104979
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-07-25
(31)【優先権主張番号】19211203.5
(32)【優先日】2019-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516232368
【氏名又は名称】セラティチット ルクセンブルグ エス.アー.エール.エル
【氏名又は名称原語表記】CERATIZIT LUXEMBOURG S.A.R.L.
【住所又は居所原語表記】Route de Holzem 101,L-8232,LU
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】マギン,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ピアース,グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】ステックラー,ロマン
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-106925(JP,U)
【文献】登録実用新案第3038840(JP,U)
【文献】実開昭62-060130(JP,U)
【文献】特開2012-214887(JP,A)
【文献】実開昭56-015336(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0130473(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02810548(EP,A1)
【文献】特開2009-065963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植生領域の草の茎または他の有機茎材を切断できるように設計され、基体材料によって形成される基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)と、前記基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)の対向側辺に形成された切断刃(3’,3’’)とを備える切断要素であって
前記切断刃(3’,3’’)の少なくとも一方は、前記基体材料とは異なる切断刃材料によって形成され、焼結され、前記基体材料よりも硬くされており、
前記焼結された切断刃材料は超硬合金によって形成され、その高い硬度はその中の硬質材料粒子に基づいており
前記超硬合金は複合材料であり、
前記複合材料の主成分であるタングステン粒子が骨格構造を形成しており、
前記複合材料の隙間が比較的延性の高い金属結合材で満たされており、
前記硬質材料粒子は、一体の粒子ネットワークを形成し、任意の前記硬質材料粒子も少なくとも1つの他の硬質材料粒子と接触しており、
前記超硬合金の炭化タングステンの重量分率が80~99重量パーセントであり、
前記基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)は、少なくとも1つの切欠部(4’,4’’,4’’’)を有し、前記切欠部が、前記切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)をロータに締結するために使用され、
前記基体材料が鋼で形成され、
前記硬質材料粒子が、0.5μm~2μmの平均粒径を有し、
前記超硬合金からなる前記焼結された切断刃(3’,3’’)は、少なくとも基体材料がエネルギービームの作用によって溶融されることにより基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)に材料結合されている、
ことを特徴とする切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)。
【請求項2】
前記超硬合金の前記硬質材料粒子間の隙間にある結合剤が、コバルト、ニッケルおよび/または鉄またはこれらの元素の1つの基合金によって形成されること
を特徴とする請求項1に記載の切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)。
【請求項3】
前記超硬合金からなる前記焼結された切断刃(3’,3’’)は、60°以下かつ0°より大きいくさび角を有することを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)。
【請求項4】
前記基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)の前記側辺の少なくとも1つが略直線状に形成されるか、または前記基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)の対向側辺によりV字形を形成し、前記超硬合金からなる前記焼結された切断刃(3’,3’’)が前記基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)のこのように形成された側辺上に作られていることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)。
【請求項5】
前記切欠部(4’,4’’,4’’’)は、少なくとも2つの丸みを帯びた領域を有し、前記丸みを帯びた領域により前記切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)を前記ロータのピンを中心に回転させるための回転軸受が形成され、前記丸みを帯びた領域は、前記切欠部(4’,4’’,4’’’)のそれらの領域とは異なって形成された接続側辺により互いに接続され、前記超硬合金からなる前記焼結された切断刃(3’,3’’)は、前記基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)の前記接続側辺または前記丸みを帯びた領域の1つに対向している側辺に形成されていることを特徴とする請求項に記載の切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)。
【請求項6】
前記接続側辺が略直線状であり、超硬合金からなる前記焼結された切断刃(3’,3’’)が形成された基体(2’,2’’,2’’’,2’’’’)の側辺と対向していることを特徴とする請求項に記載の切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)。
【請求項7】
植生領域の草の茎または他の有機茎材の切断のために使用する請求項1からのいずれか1項に記載の少なくとも1つの切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)の使用方法。
【請求項8】
ロータと、これに取り付けられた請求項1からのいずれか1項に記載の切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)とを備え、前記ロータを回転させることにより、植生領域の草の茎または他の有機茎材を前記切断要素(1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’)によって切断することができる、可動式切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基体材料から形成された基体と、基体の相対向する側辺に形成された切断刃とを有する、植生領域の草の茎または他の有機茎材を切断できるように形成された切断要素に関する。
【0002】
本発明はさらに、植生領域の草の茎または他の有機茎材を切断するための切断要素の使用方法に関する。
【0003】
最後に本発明は、ロータと、それに取り付けられ植生領域の草の茎または他の有機茎材をロータの回転によって切断できるようにした少なくとも1つの切断要素とを備えた可動式切断装置、特にコンバインハーベスタまたはコンバインロボットに関する。
【背景技術】
【0004】
上述したタイプの切断要素は、例えば特許文献1から芝刈り刃の形態、すなわち、草の茎を切断するための切断要素として知られている。これらの茎は、このような切断要素によって切断することができ、対応する植物繊維もこれにより切断され、したがって植生領域、すなわちこの場合は芝生面から分離される。これは、金属等の切削とは異なり、すなわちプラウ(鋤)ひいてはそれに対応して形作られた別の切断要素のように、金属の中に侵入して切り屑を生成するものとは異なる。したがって、後者の目的に適した切断要素の対応する切削刃は、むしろ尖ってなく、通常は切り屑除去のために最適化される。これに対し草の茎や他の有機茎材を切断する場合には、むしろクリーンな切断を生み出すために切断要素の切れ味が問題となる。
【0005】
従来知られている芝刈り刃では、過負荷保護は、ロータのピボットが偏心して係合する長いスロットによって実現されている。したがって、芝刈り刃は、石に衝突した場合にピボットを中心に旋回し、ピボットに沿って滑動することになる。このようにして実現された回転の後、別の切断要素が草の茎を切断するために活性位置に配置され、芝刈り刃を駆動するロータの回転方向を変える必要がないようにする。
【0006】
それに応じて破損の危険性が低減される。しかし、これは、従来知られている芝刈り機の切断刃が、草の茎や他の有機茎材を切断する際に、通常の損耗にさらされるという事実を変えるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許出願公開第3273766号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の課題は、冒頭に記載した種類の切断要素、冒頭に記載した種類の使用方法および冒頭に記載した種類の可動式切断装置、特にコンバインハーベスタまたはコンバインロボットにおいて、それぞれ1つの切断刃または複数の切断刃の範囲内で従来技術のものより長い耐用年数を有するものを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の切断要素によって解決される。その有利な実施形態は、請求項1の従属請求項に記載されている。
【0010】
この切断要素は、植生領域の草の茎や有機茎材を切断できるように設計されたものであって、基体材料により形成された基体と、基体の相対向する側辺に形成された切断刃とを備え、切断刃の少なくとも1つは、基体材料とは異なる切断刃材料により形成され、焼結されて基体材料よりも硬くなっており、焼結された切断刃材料は、硬質金属またはサーメットにより形成されており、その高い硬度はその中の硬質材料粒子に基づくものである。
【0011】
これは、このような切断要素が、摩耗を減らすことが重要である箇所、すなわち一方の切断刃の領域では硬く、切断要素の対応する柔軟性が破損を避けるために重要である箇所、すなわち基体の領域ではより柔らかいので有利である。後者の手段により衝突エネルギーの減衰が用意される。
【0012】
硬質金属(超硬合金)およびサーメットは、それぞれ複合材料の大部分を構成する硬質材料粒子が骨格または骨組構造を形成し、その隙間が比較的延性の高い金属結合材で満たされている複合材料である。この場合硬質材料粒子は、特に、少なくとも主に炭化タングステン、炭化チタンおよび/または炭窒化チタンによって形成することができ、比較的少量の添加量として例えば他の硬質材料粒子、特に周期表のIV族からVI族の元素の炭化物が存在してもよい。延性金属結合材は、通常、少なくとも主にコバルト、ニッケル、鉄、またはこれらの元素の少なくとも1つの基合金からなる。しかしながら他の元素も、より少ない量で金属結合材中に溶解させることができる。基合金とは、この元素が合金の主成分を形成するという意味として理解されるべきである。最も頻繁に使用される硬質金属は、硬質材料粒子が少なくとも主に炭化タングステンによって形成され、金属結合剤がコバルトまたはコバルト・ニッケル基合金であるものであり、対応する炭化タングステン粒子の重量比は、特に少なくとも70重量パーセント、好ましくは80重量パーセント以上のものである。
【0013】
この明細書の範囲内で、骨格構造とは、硬質材料粒子、例えば主として炭化タングステンによって形成される硬質材料粒子により、任意の硬質材料粒子が少なくとも1つの他の硬質材料粒子に接触する一体の粒子ネットワークが形成されることを意味する。
【0014】
少なくとも2つの切断刃が焼結された切断刃材料から成ると特に有利であるが、これは例えば切断要素の切断方向が逆転した場合に摩耗をより低減するからである。後者は、焼結された切断刃が相対向する側辺に形成されることによって可能となる。さらに好ましくは、切断刃が基体のすべての対向側辺において焼結された切断刃材料、すなわち硬質金属またはサーメットから形成されることである。
【0015】
基体は有利にはプレート状であり、基体のプレート面で測定して切断刃よりも大きな表面積を有するようにされる。その理由は、これが焼結された切断刃、すなわち硬質金属またはサーメットの破損の危険性をさらに低減するからである。というのもそれによって、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が硬い物質、例えば石に当たった場合に切断面内の基体によって切断刃に十分な減衰力が与えられるからである。
【0016】
この明細書において、「相対向する側辺」等という用語は、特に基体の互いに平行するまたは斜めにある側辺を意味し、例えば正方形、長方形、三角形、台形または平行四辺形の対応する側辺や、上述の形態に略対応する形状の側辺をも意味する。
【0017】
硬さという用語は、比較的硬い験体の切断刃材料および基体材料への侵入に対する抵抗を意味する。
【0018】
少なくとも1つの切断刃を焼結することにより、切断刃は基体とは独立して成形できるので有利である。なぜなら基体は、焼結前に成形できるため、摩耗を低減することに加え、切断刃の幾何学的形状を適応させることで切断性能を向上させることができるからである。これは、析出法によって切断刃を設置することとは対照的であり、後者の場合には切断刃は、それが形成される側辺領域において、基体の形状を継承する。
【0019】
基体の相対向する側辺に切断刃が形成されることにより、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が切断要素の切断運動時に切断活性状態にあり、場合によっては焼結された切断刃材料から成る他方の切断刃が切断不活性状態にあり、切断運動の反転とともに、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が切断活性状態となり、他方の切断刃が切断不活性状態になる。したがって、本開示による切断要素は、草の茎または他の有機茎材を、2つの異なる切断方向、例えば時計の針の回り方向およびその逆方向に切断することができる。切断刃が相対向する側辺に形成されていることにより、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、切断移動中に活性状態にあり、また場合によっては焼結された切断刃材料によって形成される別の切断刃が切断不活性状態にあり、切断要素の設置位置の変化および切断運動の維持により硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が切断活性状態にあり、他方の切断刃が切断不活性になる。設置位置は基体を回転させることによって実現することができ、この場合元の下側を上方に回転させ、元の上側を下方に回転させると、基体はこのようにして断面平面内に存在する回転軸を中心に回転される。あるいはまたは付加的に、設置位置は、基体の質量中心に対する基体の中心または偏心回転、すなわち、切断面に垂直な軸を中心とする回転によって実現することができる。後者の場合、基体は回転によって長手方向に例えば、偏心器のようにずらされて2つの設置位置が互いに対称となるが、基体の長手方向の動きを伴わずに中心回転時にも可能である。
【0020】
他の有機茎材とは、特に他のイネ科植物、例えば穀類を意味し、その中でも特に小麦、ライ麦、大麦、燕麦およびトウモロコシはもちろん、サトウキビおよびヨシ等も意味する。
【0021】
切断要素の一実施形態によれば、硬質金属の硬質材料粒子は主として炭化タングステンによって形成される。これは有利なことに特に硬い材料であり、摩耗をさらに減少させ、したがって耐用年数を増加させる。好ましくは、炭化タングステン粒子とも呼ばれ得る対応する炭化タングステンカーバイド粒子の相応する重量比は、硬質金属から成る焼結された切断刃材料の全組成に関して、70重量パーセント~99重量パーセントまでの範囲であり、より好ましくは80重量パーセント~99重量パーセントまで、最も好ましくは85重量パーセント~99重量パーセントまで、さらには88重量パーセント~99重量パーセントまでの範囲である。しかしながら、周期表のIV族からVI族までの金属の炭化物または窒化炭化物によって形成される他の付加的な硬質材料粒子の使用も考えられ、また可能である。
【0022】
切断要素の一実施形態によれば、硬質金属またはサーメットの硬質材料粒子間の空間における結合剤は、コバルト、ニッケルおよび/または鉄、またはこれらの元素の1つの基合金によって形成される。金属の基合金とは、この金属が合金の主成分を形成することを意味する。上述の元素に加えて、より少量の他の元素も結合剤中に溶解させることができる。
【0023】
切断要素の一実施形態によれば、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は基体と材料結合される。これは、硬質金属またはサーメットで作られた焼結された切断刃を、摩耗抵抗の増加にもかかわらず、そのような交換が必要であれば、対応する接合を解除することによって、別の同様に構成された切断刃と交換することができるので、有利である。材料結合とは、例えば、硬質金属やサーメットからなる焼結された切断体を基体の側辺に半田付け、接着または溶接することを意味する。
【0024】
切断要素の一実施形態によれば、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、少なくとも基体材料がエネルギービームの作用によって溶融されることによって基体に材料結合される。これにより、切断刃と基体の間の特に安定した結合が用意される。エネルギービームは、例えばレーザービーム又は電子ビームとすることができる。
【0025】
切断要素の一実施形態によれば、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、60°以下かつ0°より大きく、好ましくは45°以下かつ15°以上のくさび角を有する。これにより硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、特に切れ味が良くなるが、これらの領域の個々の値もここに開示されている。すなわち、0°を超えるものから60°を含むものまでのすべてのくさび角である。このように形成された超硬質合金またはサーメットの焼結された切断刃の刃先は、対称的であり、その横断面は正三角形または二等辺三角形として成形されてもよく、あるいは非対称であってもよく、その横断面は例えば直角三角形として成形されてもよい。対称的な刃先は切断時に特に安定するが、非対称の刃先は特に切れ味が良くなる。
【0026】
切断要素の一実施形態によれば、硬質材料粒子は平均粒径0.5μm~2μm、好ましくは0.8μm~1.3μmである。これは、0.5μm~2μm、好ましくは0.8μm~1.3μmの粒度範囲が、破壊応力を高めるとともに、切断刃材料をより硬く、より耐摩耗性を高めるとともに破壊耐性を高めるので、特に植生領域における草の茎または他の有機茎材を切断するのに有利である。これにより切断刃材料は、より切れ味が良いものに製造することができ、すなわち草の茎はより正確に切断することができ、より長く切れ味を維持することができる。これは、硬質金属の硬質材料粒子が主として炭化タングステンによって形成される場合にはさらに改善される。炭化タングステン粒子の重量比は、特に、70重量パーセント~99重量パーセントまで、さらにより好ましくは80重量パーセント~99重量パーセントまで、最も好ましくは85重量パーセント~99重量パーセントまでを含む範囲とすることができ、88重量パーセント~99重量パーセントまでを含む範囲とすることも考えられ、また可能である。
【0027】
この明細書において、主として炭化タングステンによって形成されるとは、硬質材料粒子の少なくとも90%、好ましくは95%、最も好ましくは99%が炭化タングステンによって形成されることを意味する。硬質材料粒子が別の硬質材料相によって略形成される場合も同様である。
【0028】
この明細書において、粒度は国際規格ISO 4499-2:2008(E)に従って「直線切片長さ」として測定される。基準としてはEBSD写真記録(EBSD、電子後方散乱回折)が用いられた。このような写真による測定方法は、例えばKP Mingardらの著作「硬質金属の粒度測定の従来の方法とEBSD法との比較(Comparison of EBSD and conventional methods of grain size measurement of hard metals)」、Int. Journal of refractory Metals & Hard Materials 27(2009) 213-223に記載されたものが基礎として役立った。
【0029】
切断要素の一実施形態によれば、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、一体の切断帯として設計され、それは基本的にそれが形成される基体の全側辺に沿って延在する。これは、切断性能を向上させるのに有用である。好ましくは、このようにして形成された切断帯と反対側になる切断刃も少なくとも焼結された切断刃材料、すなわち硬質金属やサーメットから成り、および切断帯などの形状を有するものとする。
【0030】
切断要素の一実施形態によれば、基体の側辺のうち少なくとも1つは略直線状に形成され、外側からこれを見て凹状に形成されるかまたは基体の対向側辺とともにV字状をなし、そのように成形された側辺には硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が形成される。これらは、特に硬質金属またはサーメットからなる基体または焼結された切断刃の特に好適な形態である。凹面の側辺およびV字形状の場合には、切断要素の質量を低減できるので有利である。これは、切断要素が石等に衝突した場合に、衝突エネルギーがそれに対応して減少するので、耐用年数を増加させる。しかしながら、基体の対向する2つの側辺を互いに略平行に位置するように構成することもでき、この場合には焼結された切断刃は、これらの側辺のうちの1つに形成される。
【0031】
このような切断要素の実施形態によれば、基体はV字形状の場合略三角形であり、例えば基体に設けられその中にロータのピンを係合可能な切欠部は略三角形に形成され、切欠部の角部が丸みを帯びるようになっており、これらが基体の重心を中心として対称的に配置されている。
【0032】
切断要素の一実施形態によれば、基体材料は鋼によって形成される。これは、鋼が延性、靭性及び強度の特に良好な組合せを有し、従って切断要素の十分な形状安定性を維持しつつ焼結された切断刃材料の破損の危険性を低減し、特にその硬質材料粒子がコバルト、ニッケルおよび/または鉄またはこれらの元素の1つの基合金によって炭化タングステンおよび結合材によって形成される場合には有利である。この場合、コバルトまたはその基合金が特に有利である。
【0033】
切断要素の一実施形態によれば、基体は切断要素をロータに固定するように設計された少なくとも1つの切欠部を有する。その結果、切断要素は有利なことに、可動式切断装置、例えば、コンバインハーベスタ、可動式コンバインロボット、またはロータを有する別の手動切断装置で操作することができる。この場合切欠部は1つまたは複数の孔によって形成することができ、これらの孔は基体を貫通または開口するので、ロータのピンを切断要素に挿入することができ、切断要素は特にピンに自由に回転可能に係合することができ、しかも切断要素の重心に対し偏心する。これにより切断要素は、ロータの回転によって生じる遠心力によって外側に向かって整列させることができる。複数の切欠部、例えば2個、3個、4個または5個の切欠部が、特に対応する孔として形成されている場合、これらが偏心的に且つ同時に切断要素の重心を中心として対称的に配置されていることが合目的的である。1つの切欠部が形成される場合、これは切断要素の重心で交差する複数の孔で形成することができる。
【0034】
切断要素の一実施形態によれば、切欠部は基体の相対向する2辺の間に形成され、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、これらのいずれかの辺に形成されている。その結果、そのために別個の領域を、例えば基体の突起の形態で設けることが回避されるので、切断要素の質量を有利に減少させることができる。これにより衝突エネルギーが減少し、したがって耐用年数が長くなる。
【0035】
しかしながら、この突起は別の実施形態で実現されることも考えられ、すなわち切断刃が形成される対向する側辺の外側に切欠部またはその少なくとも1つが形成される。この利点は、有効切断長さが1つの切断刃または複数の切断刃の長手方向に増加することである。
【0036】
切断要素の一実施形態によれば、切欠部は少なくとも2つの丸みを帯びた領域を有し、これらの丸みを帯びた領域によりそれぞれロータのピンを中心として切断要素を回転させる回転軸受が形成され、丸みを帯びた領域は切欠部の異なる形状の接続辺によって互いに接続され、かつ硬質合金またはサーメットから成る焼結された切断刃は、接続辺または丸みを帯びた領域の一方と対向する基体の側辺に形成される。その結果、一方では切断要素は特に有利なことにピンを中心に回転せしめられ、遠心力によって整列させると同時に硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃と硬い物体との衝突に対して柔軟に支承されるので耐用年数を増加させることができる。他方では、切断要素ひいては基体は、切欠部の異なる形状の側辺に沿って、一方の丸みを帯びた領域から他方の丸みを帯びた領域までピン上を滑動することができる。その結果、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃がロータの回転時に石に衝突した場合、切断刃の回転運動の一部が、例えば偏心の意味で、その並進運動に変換される。ピンを中心に完全に回転した後、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、切断不活性状態となり、同様に焼結された切断刃材料によって形成することができる対向片にある切断刃が、切断活性状態になるか、またはその逆である。このようにして形成された切欠部が、切断要素の重心を中心として対称的に形成され、180°、90°以上の回転対称の意味で略対称である場合、すなわち切欠部が対応する回転後にそれ自体と整列されると有利であり、その際回転軸は切断要素の重心を突破し、切断面に対して垂直となる。
【0037】
丸みを帯びた1つの領域または複数の領域は、ピンの周囲を部分的に面的に取り囲むことによって、それぞれ回転軸受を形成する。
【0038】
ピンは、例えばこの明細書の範囲内では、円筒形の部材によって、ロータは例えば円盤状物体によって形成され、ピンがロータに偏心的に接続され、所定の回転軸が円盤面に対して中心的に垂直にこの本体を貫通している。ピンが円筒形である場合、丸みを帯びた部分または複数の部分は、切欠部内から見てこのような形状に続くように形成されることが好ましい。
【0039】
切断要素の一実施形態によれば、接続側辺は、この方向に見て凸状に湾曲しており、基体の側辺の丸みを帯びた領域の一つに対向しており、この領域には硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が形成されている。これによりピンは凸状の接続側辺に沿って滑動することができる。これは特に、基体が略三角形であり、丸みを帯びた領域が3つ設けられ、それに応じてこれらが合計3つの凸状接続側辺によって接続され、すなわち切欠部が丸みを帯びた角部と内側から見て凸状の側辺を有する三角形の形状を有するようにすると有利である。なぜならこれにより全部で3つの切断刃を基体の対向側辺に形成することができ、そのうちの少なくとも1つは硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃であり、衝突の際に切断活性位置からそれを保護するための切断不活性位置に切り替えることができるからであり、その理由は切欠部が対応する回転および長手方向運動のため形成されるからである。このようにして形成された切欠部が切断要素の重心を中心として対称的であれば特に有利である。
【0040】
切断要素の一実施形態によれば、接続側辺は、略直線状であり、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が形成される基体の側辺に対向している。このようにすればピンは直線状の接続側辺に沿って滑動することができる。これは、基体が略矩形又は正方形である場合に特に有利であり、2つの丸みを帯びた領域が設けられ、それに応じてこれらの領域は直線状の全部で2つの接続側辺によって接続され、すなわち切欠部は、丸みを帯びた角部および直線状の側辺を有する長方形または正方形の形状を有する。長方形の場合には、切欠部は、それに応じて細長く、例えば、丸い角部を有する長孔のようになる。いずれの場合も、直線状の接続側辺は、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃が形成された基体の側辺に略平行になる。いずれの場合も、切断刃の全部で2つを基体の対向する2つの側辺に形成することができ、そのうちの少なくとも1つは、硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃であり、衝突の場合には、それを保護するために切断活性位置から切断不活性位置に切り替えることができる。なぜなら、切欠部は、対応する回転および長手方向の動きのために設計されているからである。このようにして形成された切欠部が切断要素の重心を中心として対称であれば特に有利である。
【0041】
この実施形態は、基体の対向する2つの側辺が互いに略平行に形成されていればさらに改良される。硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は、これらの側辺の1つに形成され、切欠部は、その長辺が基体の略平行な側辺に略平行に延びるように、細長く形成される。
【0042】
また前記の課題は、請求項14に記載の使用方法、すなわち請求項1またはその従属請求項またはその実施形態および実施例に記載の少なくとも1つの切断要素を、植生領域の草の茎または他の有機茎材を切断するために使用することによって解決される。すなわち切断要素はこれらの材料を切断するために使用されるが、その際硬質金属またはサーメットからなる焼結された切断刃は切断活性状態にあるか、または切断要素の設置位置を切断面に垂直または平行に回転軸を中心に回転させることによって切断活性状態にあるようにされる。草の茎を切断するのに使用する場合は、これは芝刈り器と呼ぶこともできる。さらに好ましくは、切断要素は、可動式切断装置のロータと共に使用され、このロータに、特にそのピンに翼状に取り付けられるが、最も好ましくはピンに偏心して取り付けられ、例えば遠心力によって自在に回転可能かつ配向可能であるようにされる。
【0043】
前記の課題は、請求項15に記載の可動式切断装置、特にコンバインハーベスタまたはコンバインロボットによって解決される。
【0044】
可動式切断装置、特にコンバインロボットは、ロータと、それに取り付けられた請求項1またはそれに従属する請求項、またはここに開示された実施形態または実施例に記載の少なくとも1つの切断要素を備え、ロータの回転によって植生領域の草の茎または他の有機茎材を切断することができる。可動式切断装置は、例えばコンバインハーベスタなどの刈り取り機であってもよく、コンバインロボットは、例えば走行器具、走行駆動装置、シャーシ、ロータおよびその駆動装置であって、芝刈りに特に好ましいように形成された自走式ロボットでありうる。コンバインロボットの場合、切断要素は翼状にロータに、特にそのピンに取り付けられ、最も好ましくはピンに偏心して取り付けられ、例えば遠心力によって自由に回転可能かつ整列可能にされる。可動式切断装置は、例えば芝剪断機のように手で直接案内できるように設計することが考えられ、また可能である。
【0045】
本発明の更なる利点及び合目的的性は、添付された図面を参照のもとに実施例の以下の説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】従来技術による、矩形の基体と、その相対向する2つの側辺に形成された切断刃と、細長い切欠部とを有する切断要素の概略斜視図である。
図2】第1の実施形態による、鋼からなる矩形の基体、その相対向する2つの側辺に形成された焼結硬質金属および細長い切欠部からなる切断刃を備えた切断要素の概略斜視図である。
図3】第2の実施形態による、鋼からなる矩形の基体、その相対向する2つの側辺に形成された焼結硬質金属および細長い切欠部からなる切断刃を有する切断要素の概略斜視図である。
図4】第3の実施形態による、鋼からなる矩形の基体、その相対向する2つの側辺に形成された焼結硬質金属および丸い切欠部からなる切断刃を有する切断要素の概略斜視図である。
図5】第4の実施形態による、鋼からなる矩形の基体、その相対向する2つの側辺に形成された焼結硬質金属および2つの丸い切欠部から成る切断刃を有する切断要素の概略斜視図である。
図6】第5の実施形態による、鋼からなる台形の基体、その相対向する2つの側辺に形成された焼結硬質金属および2つの丸い切欠部からなる切断刃を有する切断要素の概略斜視図である。
図7】第6の実施形態による、鋼からなる三角形の基体、その相対向する3つの側辺に形成された焼結硬質金属からなる切断刃および3つの切欠部の対向する3つの側面に形成された、鋼からなる三角形の基体を有する切断要素の概略斜視図である。
図8】第7の実施形態による、鋼からなる三角形の基体、その相対向する3つの側辺に形成された焼結硬質金属からなる切断刃および丸みを帯びた角部と内側から見て凸面の側辺を有する三角形の切欠部を有する切断要素の概略斜視図である。
【0047】
なお図1図8では、同一、類似又は同一の効果を有する部材には同一の符号を付しており、冗長性を避けるために、以下の説明ではこれらの部材の繰り返し説明を回避している。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は従来例に係る切断要素1を示す。この切断要素1は、プレート状の矩形の基体2を有している。基体2の相対向する2つの長辺は、それぞれくさび状に対称的に外側に向かってテーパを付けられている。それに応じて2つの対向する切断刃3が形成され、これにより草の茎や穀物、サトウキビまたは葦などの他の有機茎材を切断することができる。このために、基体2の細長い切欠部4が、図示しない切断装置、例えばコンバインロボットのロータの図示しないピンに係合させられる。ロータが十分に速く回転させられると、切断要素1は、ロータの回転軸に対して半径方向に外側に向くが、この回転軸は、基体2のプレート面に垂直である。この場合ピンは、切欠部4の丸みを帯びた領域の1つに位置するが、これらの領域はそれぞれ切欠部の2つの丸みを帯びた角部によって形成され、切断要素1をピンの上および周囲に回転させるための回転軸受を形成する。このため切断要素1はピンに偏心して支承されることになるが、その理由は切断要素1の重心が切欠部4の中心にあり、すなわち切欠部が切断要素1の重心を中心として対称に形成されているからである。2つの切断刃3の一方が草の茎の切断時に石に衝突した場合、切断要素1は、ピンを中心に回転すると同時に切欠部4の長辺に沿って摺動するが、ピンが細い場合これらの辺の一方のみに沿って切欠部4の他方の丸みを帯びた領域に向って摺動する。その後、石に衝突した切断刃3は、図1で選択した図の反対側に、すなわち切断不活性状態に位置決めされ、石とは反対側にあった他方の切断刃3は、石に衝突した切断刃3の位置を取る、すなわち切断活性状態に位置決めされる。
【0049】
なお図1では、切断刃3が材料の継ぎ目なしに基体2にモノリシックに接続されていること、すなわちそれらが基体2から形成されていることが特に明瞭に分かる。したがって、切断刃3と基体2とは、同一の材料からなる。
【0050】
図2は、第1の実施形態による切断要素1’を示す。切断要素1と同様に、切断要素1’はプレート状の矩形の基体2’を有する。くさび形の切断刃3’は、エネルギービームの作用によって、基体2’の相対向する長辺にそれぞれ取り付けられる。しかしながら、切断刃3’を基体2’に半田付けにより接続することも考えられるし、また可能である。切断刃3とは異なり、切断刃3’は焼結硬質金属から形成され、従って硬質で耐摩耗性であり、後付けで、すなわち焼結後に基体2’に接続され、この場合硬質材料粒子は、炭化タングステンカーバイドからおよび結合剤はコバルトから形成される。一方、基体2’は鋼からなるため、切断刃3’よりも柔らかく、すなわち、切断刃3’に及ぼされる衝突エネルギーを、その中で逸散によって減衰させる。基体2’に形成された細長い切欠部4’は、その長辺が焼結された切断刃3’もしくは基体2’の対応する側辺と平行に配置され、その丸みを帯びた領域が長辺によって互いに接続され、ピンに対して回転軸受として作用するが、その機能は従来技術からの切欠部4の機能に対応する。
【0051】
図2から、切断刃3’は、それぞれくさび状に対称的に外側に向かってテーパを付けられ、それによって対称的な切断エッジを形成することが分かる。これらのくさび角はそれぞれ45°以下である。
【0052】
図3は、第2の実施形態による切断要素1’’を示す。切断要素1’’は、基体2’の切欠部4’’が切欠部4’と異なる点でのみ切断要素1’と異なっている。切欠部4’’は丸いが、これは基体2’’のプレート面に対する垂直孔によって得ることができる。切欠部4’’は、2つの丸みを帯びた領域を有する切欠部4’と同様に、ピンが係合する回転軸受として機能する。焼結された切断刃3’の一方が石に衝突すると、切断要素1’’がピンを中心に回転し、その後、衝突した焼結された切断刃3’は完全回転(360°)後も引き続き切断活性状態にある。切断活性状態にある切断刃3’から茎材とは反対側にあって切断不活性状態にある切断刃3’への切り替えは、切断要素1’’がピンから離れ基体2’’の長辺に平行な回転軸を中心として180°だけ回転させ、最終的にこの位置で自由に回転可能にピンに接続させることで実現される。
【0053】
図4は、第3の実施形態による切断要素1’’’を示す。切断要素1’’’と切断要素1’’との相異点は、2つの丸い切欠部4’’が基体2’’に形成され、しかも互いに直径方向に且つ切断要素1’’の重心に対し等距離に形成されていること、また焼結された切断刃3’に類似した焼結された切断刃3’’がそれぞれ外側に向かって非対称的にくさび形にテーパを付けられ、それによって非対称的な切断エッジを形成する点のみである。これらのくさび角はそれぞれ45°以下である。
【0054】
切断要素1’’’の場合、切断活性状態にある切断刃3’’から切断不活性状態にあった他方の切断刃3’’への切り替えは、切断要素1’’に類似して実施することができ、この場合ピンは切換の前後において同じ切欠部4’’と係合するようにされる。あるいは、切り替えは、切断要素1’’’をピンから解放し、基体2’のプレート面に垂直な回転軸を中心に180°回転させ、次いで、ピンを別の切欠部4’’に移動させることによって実施することもできる。切断刃3’と同じ材料からなりこれと同様に基体2’と材料結合される焼結された切断刃3’’は、非対称的な形状のために図4に示した辺が基体2’と同一平面上にあり、その結果、切断要素1’’’は、焼結された切断刃3’’の領域においてもロータ上に平坦に載置することができる。
【0055】
図5は、第4の実施形態による切断要素1’’’’を示す。切断要素1’’’’は台形の基体2’’を有し、これは基体2’と同様に鋼である。その斜面において、焼結された切断刃3’は、他の実施形態に従って、基体2’’に材料結合される。傾斜側面はV字形を形成する。丸い切欠部4’’は、切断要素1’’’’の重心の外側に形成され、その結果、切断要素1’’’’も、ロータの回転時に遠心力による半径方向外側の方向付けが生じる。切断活性状態にある焼結された切断刃3’から、切断状態からその後に切断不活性状態になる焼結された切断刃3’への切り替えは、切断要素1’’と同様に実施される。
【0056】
図6は、第5の実施形態による切断要素1’’’’’を示す。切断要素1’’とは異なり、この切断要素は、プレート状でより狭い突起5を有する矩形のプレート状基体2’’’を有し、この突起は、焼結された切断刃3’が材料結合される基体2’’’の側辺の外側に位置し、基体2’’’は、他の実施形態の鋼から形成される。切断活性状態にある焼結された切断刃3’から、切断不活性状態にありその後に切断活性状態になる焼結された切断刃3’への切り替えは、切断要素1’’と同様に実現される。丸い切欠部4’’は、切断要素1’’’’’の重心の外側に形成され、その結果、切断要素1’’’’’も、ロータが回転するときに遠心力の結果として、それに対して半径方向外側に整列される。
【0057】
図7は、第6の実施形態による切断要素1’’’’’’を示す。切断要素1’’’’’’のプレート状基体2’’’’は、角部が直線状に切り取られた三角形状に形成されている。対をなしてV字形状を形成する基体2’’’’の3つの主要側辺では、他の実施形態と同様に、焼結された切断刃3’の合計3つが基体2’’’’に接合される。丸い3つの切欠部4’’は、切断要素1’’’’’’の重心を中心として対称に配置されている。切断活性状態にある焼結された切断刃3’から切断不活性状態にありその後に切断活性状態になる焼結された切断刃3’への切り替えは、例えば、各切欠部4’’によって切断要素1’’と同様に実施され、代替的に、元々ピンに係合されていた切欠部4’’から別の切欠部4’’への切り替えによって実施される。各切欠部4’’は、切断要素1’’’’’’の重心の外側に形成されるので、切欠部4’’の1つにおける各係合に対して、ロータの回転時に半径方向外側への遠心力により生じる切断要素1’’’’’’の整列がなされる。
【0058】
図8は、第7の実施形態による切断要素1’’’’’’’を示す。切断要素1’’’’’’’は、基体2’’’’に1つの切欠部4’’’が形成され、その3つの角部は丸くされ、その3つの側面が切欠部4’’’’の内側から見て凸状に湾曲している。丸い角部の各々は切欠部4’’と同様にピンの回転軸受として作用し、焼結された切断刃3’の一つに対向配置される。衝突の場合、これらの切断刃3’の1つが石に衝突する時には、ピンは1つの側辺に沿って摺動し、そこで丸みを帯びた別の角部に係合する。切欠部4’と同様に、ピンを中心とする回転と相俟ってこのような摺動運動時には、先に切断不活性状態にあった切断刃3’の1つが切断活性状態になり、またその逆も成り立つ。
【0059】
図2から図8に示した切断要素1’、1’’、1’’’、1’’’’、1’’’’’、1’’’’’’および1’’’’’’’では、切断刃3’または3’’の一方のみが焼結され、硬質金属によって形成されることも考えられ、また可能である。
【符号の説明】
【0060】
1,1’,1’’,1’’’,1’’’’,1’’’’’,1’’’’’’,1’’’’’’’ 切断要素
2,2’,2’’,2’’’,2’’’’ 基体
3,3’,3’’ 切断刃
4,4’,4’’,4’’’ 切欠部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8