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特許7434551軌道車両傾斜システム、傾斜制御方法、及び軌道車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】軌道車両傾斜システム、傾斜制御方法、及び軌道車両
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/24 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
B61F5/24 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022532647
(86)(22)【出願日】2021-02-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 CN2021077341
(87)【国際公開番号】W WO2022057202
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】202010990343.2
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518232342
【氏名又は名称】中車青島四方机車車輛股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 振先
(72)【発明者】
【氏名】王 旭
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ 欣
(72)【発明者】
【氏名】李 ▲貴▼宇
(72)【発明者】
【氏名】曹 洪勇
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-100614(JP,A)
【文献】特開2011-016441(JP,A)
【文献】特開2014-141244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラ(101)と、高圧エアリザーバー(102)と、左側空気ばね(105)と、右側空気ばね(107)と、左側副気室(106)と、右側副気室(108)と、第1の3位置電磁比例流量弁(109)と、第2の3位置電磁比例流量弁(110)と、センサと、差圧弁(104)と、2位置開閉弁(111)と、を備え、
前記左側空気ばね(105)は前記左側副気室(106)に連通し、前記右側空気ばね(107)は前記右側副気室(108)に連通し、
前記センサは、軌道車両の走行時のデータを収集し、収集したデータを前記コントローラ(101)に送信するためのものであり、前記コントローラ(101)は、前記高圧エアリザーバー(102)内の高圧気体がそれぞれ前記第1の3位置電磁比例流量弁(109)及び第2の3位置電磁比例流量弁(110)を介して前記左側空気ばね(105)及び前記右側空気ばね(107)に充填されるように、又は、前記左側空気ばね(105)及び前記右側空気ばね(107)内の気体がそれぞれ前記第1の3位置電磁比例流量弁(109)及び前記第2の3位置電磁比例流量弁(110)を介して大気中に放出されるように、前記センサが収集したデータに基づいて、前記左側空気ばね(105)のフィードフォワード制御量及びフィードバック制御量、前記右側空気ばね(107)のフィードフォワード制御量及びフィードバック制御量を得て、前記第1の3位置電磁比例流量弁(109)の制御指令及び前記第2の3位置電磁比例流量弁(110)の制御指令を生成し、前記第1の3位置電磁比例流量弁(109)及び前記第2の3位置電磁比例流量弁(110)を制御し、
前記差圧弁(104)は、前記左側副気室(106)と前記右側副気室(108)とを連通するためのものであり、前記2位置開閉弁(111)は、管路を介して前記左側副気室(106)と前記右側副気室(108)とにそれぞれ連通しており、
前記センサは、加速度センサと空気ばね高さ検出センサとを含み、
前記コントローラ(101)は、前記加速度センサが収集したフレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を受信し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を事前設定された不平衡遠心加速度閾値と比較し、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値を上回ると、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁(109)と第2の3位置電磁比例流量弁(110)との制御指令を生成することで、傾斜動作を完了するように、左側空気ばね(105)及び右側空気ばね(107)に対する空気充填又は空気排出の操作を実現し、
前記した、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁(109)と第2の3位置電磁比例流量弁(110)との制御指令を生成することは、具体的に、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率を算出し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率に基づいて、左側空気ばね(105)のフィードフォワード制御量及び右側空気ばね(107)のフィードフォワード制御量を得ることと、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、左側空気ばね(105)の高さ目標値及び右側空気ばね(107)の高さ目標値を算出することと、
前記左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値と前記左側空気ばね(105)の高さ目標値とに基づいて、左側空気ばね(105)のフィードバック制御量を決定し、前記右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値と前記右側空気ばね(107)の高さ目標値とに基づいて、右側空気ばね(107)のフィードバック制御量を決定することと、
前記左側空気ばね(105)のフィードバック制御量と前記左側空気ばね(105)のフィードフォワード制御量とに基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁(109)の制御指令を生成し、前記右側空気ばね(107)のフィードバック制御量と前記右側空気ばね(107)のフィードフォワード制御量とに基づいて、第2の3位置電磁比例流量弁(110)の制御指令を生成することと、を含むことを特徴とする軌道車両傾斜システム。
【請求項2】
前記加速度センサは、軌道車両のフレームのサイドビームに取り付けられ、
前記空気ばね高さ検出センサは、前記左側空気ばね(105)及び前記右側空気ばね(107)の近傍位置に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載の軌道車両傾斜システム。
【請求項3】
第3の3位置電磁弁(112)と第4の3位置電磁弁(113)とを更に含み、
前記第3の3位置電磁弁(112)は、それぞれ前記高圧エアリザーバー(102)、前記左側空気ばね(105)及び大気と連通し、前記第4の3位置電磁弁(113)は、それぞれ前記高圧エアリザーバー(102)、前記右側空気ばね(107)及び大気と連通し、
前記第3の3位置電磁弁(112)と前記第4の3位置電磁弁(113)との開閉は、いずれも前記コントローラ(101)によって制御されることを特徴とする請求項1又は2に記載の軌道車両傾斜システム。
【請求項4】
前記第3の3位置電磁弁(112)は、3位置電磁開閉弁、又は3位置電磁比例流量弁であり、或いは
前記第4の3位置電磁弁(113)は、3位置電磁開閉弁、又は3位置電磁比例流量弁であることを特徴とする請求項3に記載の軌道車両傾斜システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の軌道車両傾斜システムによる傾斜制御方法であって、
前記コントローラ(101)は、前記加速度センサが収集したフレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を受信し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を事前設定された不平衡遠心加速度閾値と比較するステップS11と、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値を上回ると、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁(109)と第2の3位置電磁比例流量弁(110)との制御指令を生成することで、傾斜動作を完了するように、左側空気ばね(105)及び右側空気ばね(107)に対する空気充填又は空気排出の操作を実現するステップS12と、を含むことを特徴とする傾斜制御方法。
【請求項6】
前記した、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁(109)と第2の3位置電磁比例流量弁(110)との制御指令を生成することは、具体的に、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率を算出し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率に基づいて、左側空気ばね(105)のフィードフォワード制御量及び右側空気ばね(107)のフィードフォワード制御量を得ることと、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、左側空気ばね(105)の高さ目標値及び右側空気ばね(107)の高さ目標値を算出することと、
前記左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値と前記左側空気ばね(105)の高さ目標値とに基づいて、左側空気ばね(105)のフィードバック制御量を決定し、前記右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値と前記右側空気ばね(107)の高さ目標値とに基づいて、右側空気ばね(107)のフィードバック制御量を決定することと、
前記左側空気ばね(105)のフィードバック制御量と前記左側空気ばね(105)のフィードフォワード制御量とに基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁(109)の制御指令を生成し、前記右側空気ばね(107)のフィードバック制御量と前記右側空気ばね(107)のフィードフォワード制御量とに基づいて、第2の3位置電磁比例流量弁(110)の制御指令を生成することと、を含むことを特徴とする請求項5に記載の傾斜制御方法。
【請求項7】
軌道車両が曲線区間を離れた後、左右両側の空気ばねのバランスを取るステップを更に含み、当該ステップは、具体的に、
軌道車両が緩和曲線を出るとき、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が徐々に減少し、外側空気ばねが空気排出され下降し始め、両側の空気ばね高さ偏差値が等しいとき、外側空気ばね内の空気を内側空気ばねに流入させて、左右両側の空気ばねがバランスの取れた状態に戻るように、2位置制御開閉弁を開くことを含み、
その中で、前記外側空気ばねは、前記左側空気ばね(105)と前記右側空気ばね(107)とのうち高さが相対的に高い空気ばねであり、前記内側空気ばねは、前記左側空気ばね(105)と前記右側空気ばね(107)とのうち高さが相対的に低い空気ばねであり、前記空気ばね高さ偏差値は、空気ばねリアルタイム高さ値と空気ばね高さ目標値との差であることを特徴とする請求項5に記載の傾斜制御方法。
【請求項8】
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値以下である場合、前記コントローラ(101)は、前記左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値及び前記右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値を受信し、前記左側空気ばね(105)のリアルタイム高さ値に基づいて第1の高さ偏差値を算出し、前記右側空気ばね(107)のリアルタイム高さ値に基づいて第2の高さ偏差値を算出するステップS21と、
前記第1の高さ偏差値を事前設定された第1の区間と比較し、前記第1の高さ偏差値が前記第1の区間の範囲を超えた場合、前記左側空気ばね(105)の高さを調節するように、前記第1の3位置電磁比例流量弁(109)を制御し、前記第2の高さ偏差値を事前設定された第2の区間と比較し、前記第2の高さ偏差値が前記第2の区間の範囲を超えた場合、前記右側空気ばね(107)の高さを調節するように、前記第2の3位置電磁比例流量弁(110)を制御するステップS22と、を更に含むことを特徴とする請求項5に記載の傾斜制御方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の軌道車両傾斜システムを備える軌道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[相互参照]
本願は、2020年09月18日に提出された、出願番号が2020109903432であり、発明の名称が「軌道車両傾斜システム、傾斜制御方法及び軌道車両」である中国特許出願を引用し、その全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本願は、鉄道交通の技術分野に関し、特に、軌道車両傾斜システム、傾斜制御方法、及び軌道車両に関する。
【背景技術】
【0003】
軌道車両が曲線区間を走行する際に発生する遠心力は、乗客に不快感を与え、ひどい場合には転覆事故に至ることもある。
【0004】
このため、従来技術では、外側レールをある程度持ち上げ、車体重力による向心分力(向心力)を利用して遠心力をバランスさせるのが一般的である。これは「レールのカント(superelevation of outer rail)」とも呼ばれる。
【0005】
しかしながら、鉄道は敷設時に自然条件の制約を受け、一部の困難な区間では、「レールのカント」は不十分な場合が多く、鉄道車両曲線通過速度が制限され、輸送効率が低下する。また、既存線路での速度アップ運転も同様に「レールのカント」が不十分であるという問題に直面している。これにより、曲線通過時に発生する遠心力のバランスが完全に取れていない場合は多く、不平衡遠心力による遠心加速度は乗員の乗り心地に悪影響を及ぼす。
【0006】
振り子式車両は、車体を軌道平面に対して一定の角度でスイングさせることができ、不平衡遠心加速度をある程度抑え、乗り心地を向上させる。既存の振り子式車両は、一般に二段サスペンションに複雑な傾斜システムを設置する必要があり、信頼性が低く、コストが高い。
【発明の概要】
【0007】
本願の実施形態は、従来技術に存在する課題に対して、軌道車両傾斜システム、傾斜制御方法、及び軌道車両を提供する。
【0008】
本願の第一態様の実施形態は、軌道車両傾斜システムを提供し、該軌道車両傾斜システムは、
コントローラ101と、高圧エアリザーバー102と、左側空気ばね105と、右側空気ばね107と、左側副気室106と、右側副気室108と、第1の3位置電磁比例流量弁109と、第2の3位置電磁比例流量弁110と、センサと、差圧弁104と、2位置開閉弁111と、を備え、
前記左側空気ばね105は前記左側副気室106に連通し、前記右側空気ばね107は前記右側副気室108に連通し、
前記センサは、軌道車両の走行時のデータを収集し、収集したデータをコントローラ101に送信するためのものであり、前記コントローラ101は、前記高圧エアリザーバー102内の高圧気体がそれぞれ前記第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110を介して前記左側空気ばね105及び右側空気ばね107に充填されるように、又は、前記左側空気ばね105及び右側空気ばね107内の気体がそれぞれ前記第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110を介して大気中に放出されるように、センサが収集したデータに基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110を制御し、
前記差圧弁104は、前記左側副気室106と右側副気室108とを連通するためのものであり、前記2位置開閉弁111は、管路を介して前記左側副気室106と前記右側副気室108とにそれぞれ連通している。
【0009】
上記の技術案において、前記センサは、加速度センサと空気ばね高さ検出センサとを含み、
前記加速度センサは、軌道車両のフレームのサイドビームに取り付けられ、
前記空気ばね高さ検出センサは、前記左側空気ばね105及び前記右側空気ばね107の近傍位置に取り付けられる。
【0010】
上記の技術案において、第3の3位置電磁弁112と第4の3位置電磁弁113とを更に含み、
前記第3の3位置電磁弁112は、それぞれ前記高圧エアリザーバー102、左側空気ばね105及び大気と連通し、前記第4の3位置電磁弁113は、それぞれ前記高圧エアリザーバー102、右側空気ばね107及び大気と連通し、
前記第3の3位置電磁弁112と第4の3位置電磁弁113との開閉は、いずれも前記コントローラ101によって制御される。
【0011】
上記の技術案において、前記第3の3位置電磁弁112は、3位置電磁開閉弁、又は3位置電磁比例流量弁であり、或いは
前記第4の3位置電磁弁113は、3位置電磁開閉弁、又は3位置電磁比例流量弁である。
【0012】
本願の第二態様の実施形態は、本願の第一態様の実施形態に記載の軌道車両傾斜システムによる傾斜制御方法を提供し、該傾斜制御方法は、
前記コントローラ101は、前記加速度センサが収集したフレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を受信し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を事前設定された不平衡遠心加速度閾値と比較するステップS11と、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値を上回ると、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109と第2の3位置電磁比例流量弁110との制御指令を生成することで、傾斜動作を完了するように、左側空気ばね105及び右側空気ばね107に対する空気充填又は空気排出の操作を実現するステップS12と、を含む。
【0013】
上記の技術案において、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109と第2の3位置電磁比例流量弁110との制御指令を生成することは、具体的に、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、軌道車両の車体の傾斜角度を算出することと、
前記軌道車両の車体の傾斜角度に基づいて、左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ差目標値を算出することと、
前記左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ差目標値に基づいて、左側空気ばねの高さ変化目標値、右側空気ばねの高さ変化目標値、及び左側空気ばねの高さ変化速度値、右側空気ばねの高さ変化速度値を算出することと、
受信した左側空気ばね105のリアルタイム高さ値及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、左側空気ばねの高さ変化目標値、右側空気ばねの高さ変化目標値、及び左側空気ばねの高さ変化速度値、右側空気ばねの高さ変化速度値を合わせて、第1の3位置電磁比例流量弁109と第2の3位置電磁比例流量弁110との制御指令を生成することと、を含む。
【0014】
上記の技術案において、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109と第2の3位置電磁比例流量弁110との制御指令を生成することは、具体的に、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率を算出し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率に基づいて、左側空気ばね105のフィードフォワード制御量及び右側空気ばね107のフィードフォワード制御量を得ることと、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、左側空気ばね105の高さ目標値及び右側空気ばね107の高さ目標値を算出することと、
左側空気ばね105のリアルタイム高さ値と左側空気ばね105の高さ目標値とに基づいて、左側空気ばね105のフィードバック制御量を決定し、右側空気ばね107のリアルタイム高さ値と右側空気ばね107の高さ目標値とに基づいて、右側空気ばね107のフィードバック制御量を決定することと、
前記左側空気ばね105のフィードバック制御量と前記左側空気ばね105のフィードフォワード制御量とに基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109の制御指令を生成し、前記右側空気ばね107のフィードバック制御量と前記右側空気ばね107のフィードフォワード制御量とに基づいて、第2の3位置電磁比例流量弁110の制御指令を生成することと、を含む。
【0015】
上記の技術案において、軌道車両が曲線区間を離れた後、左右両側の空気ばねのバランスを取るステップを更に含み、当該ステップは、具体的に、
軌道車両が緩和曲線を出るとき、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が徐々に減少し、外側空気ばねが空気排出され下降し始め、両側の空気ばねの高さ偏差値が等しいとき、外側空気ばね内の空気を内側空気ばねに流入させて、左右両側の空気ばねがバランスの取れた状態に戻るように、2位置制御開閉弁を開くことを含み、
その中で、前記外側空気ばねは、左側空気ばね105と右側空気ばね107とのうち高さが相対的に高い空気ばねであり、前記内側空気ばねは、左側空気ばね105と右側空気ばね107とのうち高さが相対的に低い空気ばねであり、前記空気ばね高さ偏差値は、空気ばねリアルタイム高さ値と空気ばね高さ目標値との差である。
【0016】
上記の技術案において、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値以下である場合、前記コントローラ101は、前記左側空気ばね105のリアルタイム高さ値及び前記右側空気ばね107のリアルタイム高さ値を受信し、前記左側空気ばね105のリアルタイム高さ値に基づいて第1の高さ偏差値を算出し、前記右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて第2の高さ偏差値を算出するステップS21と、
前記第1の高さ偏差値を事前設定された第1の区間と比較し、前記第1の高さ偏差値が前記第1の区間の範囲を超えた場合、前記左側空気ばね105の高さを調節するように、前記第1の3位置電磁比例流量弁109を制御し、前記第2の高さ偏差値を事前設定された第2の区間と比較し、前記第2の高さ偏差値が前記第2の区間の範囲を超えた場合、前記右側空気ばね107の高さを調節するように、前記第2の3位置電磁比例流量弁110を制御するステップS22と、を更に含む。
【0017】
本願の第三態様の実施形態は、本願の第一態様の実施形態に記載の軌道車両傾斜システムを備える軌道車両を提供する。
【0018】
本願の実施形態に係る軌道車両傾斜システム、傾斜制御方法、及び軌道車両によれば、軌道車両の運行時の状態に応じて、左右両側の空気ばねの高さ差を調節することにより、傾斜角度を調節することができ、軌道車両が曲線区間を運行する際に発生する遠心力をバランスさせることに寄与する。
【0019】
本願の実施形態又は従来技術における技術案をより明確に説明するために、以下、実施形態又は従来技術の説明に必要な図面を簡単に説明する。勿論、以下に説明する図面は、本願のいくつかの実施形態であり、当業者にとって、創造的な労働を要しない前提で、更にこれらの図面に基づいてその他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本願の実施形態に係る軌道車両の傾斜システムの構造の模式図である。
図2】加速度センサの取付け模式図である。
図3】本願の別の実施形態に係る軌道車両傾斜システムの模式図である。
図4】本願の実施形態に係る傾斜制御方法のフローチャートである。
図5】本願の実施形態に係る軌道車両の傾斜制御方法におけるフィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせた制御方式の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願の実施形態の目的、技術案及び利点をより明確にするために、本願の実施形態における図面を参照しながら、本願の実施形態における技術案を明確かつ完全に説明する。明らかなように、説明する実施形態は、本願の実施形態の一部であり、すべての実施形態ではない。本願の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労働を要しない前提で得られた他のすべての実施形態は、本願の保護の範囲内に含まれる。
【0022】
図1は本願の実施形態が提供する軌道車両の傾斜システムの構造の模式図であり、図1に示すように、本願の実施形態が提供する軌道車両の傾斜システムは、コントローラ101、高圧エアリザーバー102、空気圧縮機(図1において図示せず)、空気ばね、3位置電磁比例流量弁、センサ、差圧弁104、副気室、及び2位置開閉弁111を備え、その中で、前記空気ばねは、左側空気ばね105と右側空気ばね107とを含み、前記副気室は、左側副気室106と右側副気室108とを含み、前記3位置電磁比例流量弁は、第1の3位置電磁比例流量弁109と第2の3位置電磁比例流量弁110とを含み、前記空気圧縮機は、前記高圧エアリザーバー102に高圧気体を提供し、前記高圧エアリザーバー102は、それぞれ第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110を介して、前記左側空気ばね105と右側空気ばね107とに高圧気体を充填し、前記左側空気ばね105と右側空気ばね107とは、それぞれ第1の3位置電磁比例流量弁109と第2の3位置電磁比例流量弁110とを介して、大気中に内部の気体を放出し、左側空気ばね105は左側副気室106に連通し、前記右側空気ばね107は右側副気室108に連通し、差圧弁104は、左側副気室106と右側副気室108とを連通し、必要に応じて左側副気室106と右側副気室108との内部の気圧のバランスをとるためのものである。2位置開閉弁111は、それぞれ左側副気室106と右側副気室108とに管路を介して連通している。前記センサは、軌道車両の走行時のデータを収集し、収集したデータをコントローラ101に送信するためのものである。前記コントローラ101は、センサが収集したデータに基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110を制御する。
【0023】
次に、軌道車両傾斜システムの各構成要素を更に説明する。
【0024】
前記左側空気ばね105は、軌道車両の車体の左側下方に取り付けられている。左側空気ばね105と左側副気室106とは連通しており、気体は左側副気室106と左側空気ばね105との間を流れることができる。
【0025】
前記右側空気ばね107は、軌道車両の車体の右側下方に取り付けられている。右側空気ばね107と右側副気室108とは連通しており、気体は右側副気室108と右側空気ばね107との間を流れることができる。
【0026】
前記左側空気ばね105と前記右側空気ばね107とはそれぞれ、複数設けられている。例えば、1つの軌道車両の車室には4つの空気ばねが備えられ、その中で、2つの左側空気ばね105と2つの右側空気ばね107とが含まれている。
【0027】
前記第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110は、それぞれコントローラ101に電気的に接続されており、前記第1の3位置電磁比例流量弁109及び/又は第2の3位置電磁比例流量弁110は、コントローラ101の制御によって、気体の流れ方向(空気ばねへの空気の充填又は排出)及び気体流量を調節する。
【0028】
具体的には、前記第1の3位置電磁比例流量弁109は、3つの気体出入口を有し、その中で、第1の気体出入口は高圧エアリザーバー102に連通し、第2の気体出入口は空気排出管を介して大気に連通し、第3の気体出入口は管路を介して左側空気ばね105に連通している。左側空気ばねへの気体の充填が必要な場合には、コントローラ101の制御によって、第1の気体出入口と第3の気体出入口とは連通する。高圧エアリザーバー102内の気圧がより大きくなるため、気体は高圧エアリザーバー102から左側空気ばね105へ流れるようになり、左側空気ばね105への気体の充填が実現される。左側空気ばねを密封する必要がある場合には、コントローラ101の制御によって、3つの気体出入口はいずれも連通せず、左側空気ばね内の気体を安定に維持する。左側空気ばねからの気体の排出が必要な場合には、コントローラ101の制御によって、第2の気体出入口と第3の気体出入口とは連通し、左側空気ばね内の気圧がより大きくなるため、気体は左側空気ばね105から大気へ流れるようになり、左側空気ばね105からの気体排出が実現される。
【0029】
前記第2の3位置電磁比例流量弁110は、3つの気体出入口を有し、その中で、第1の気体出入口は高圧エアリザーバー102に連通し、第2の気体出入口は空気排出管を介して大気に連通し、第3の気体出入口は管路を介して右側空気ばね107に連通している。第2の3位置電磁比例流量弁110により、右側空気ばねに対する空気充填、空気排出、及び密封が実現される。具体的な実施手順は、左側空気ばねに対する第1の3位置電磁比例流量弁109の実施手順と同様であり、ここで説明は省略する。
【0030】
前記第1の3位置電磁比例流量弁109の数は、前記左側空気ばね105の数に対応し、前記第2の3位置電磁比例流量弁110の数は、前記右側空気ばね107の数に対応する。
【0031】
前記センサは、加速度センサと、空気ばね高さ検出センサと、を含む。
【0032】
図2は加速度センサの取付け模式図であり、図2に示すように、加速度センサは、軌道車両のフレームのサイドビームに取り付けられ、フレームの不平衡遠心加速度を検出するためのものである。
【0033】
前記空気ばね高さ検出センサは、空気ばね高さを検出するためのものである。各空気ばねの高さが異なることがあるため、空気ばねごとに高さ検出センサを設ける必要がある。好ましい一形態として、摩耗を低減して信頼性を高めるように、空気ばね高さ検出センサとして非接触式の角度センサが採用される。
【0034】
差圧弁104は、管路を介して、それぞれ左側副気室106と右側副気室108とに連通している。本願の実施形態では、差圧弁104は、システム全体の安全部品として、その開弁圧力が高い値(例えば250±20kPa)に設定されており、正常状態では、軌道車両が最大傾斜状態にあっても、差圧弁104は閉弁状態にあるが、故障状態では、片側の空気ばねが完全に空気抜けされると、両側の空気ばねの差圧が差圧弁104の開弁閾値に達し、差圧弁104は自動的に開弁し、両側の空気ばねの高さ差をある程度減少させ、列車の安全運行を確保する。
【0035】
差圧弁104は、システム全体の安全部品として、最も悪い故障状態でのみ開弁され、左側副気室106と右側副気室108との間の気圧の差を緊急バランスさせる。一方、2位置開閉弁111は、通常の部品であり、軌道車両が緩和曲線の区間と円曲線の区間とに進入したとき(軌道車両が曲線区間を走行しているとき、区間の変化は、直線-緩和曲線進入-円曲線-緩和曲線離れ-直線)に、2位置開閉弁111が閉弁して両側のエアバッグに高さ差を持たせ、軌道車両が緩和曲線の区間を離れたとき、2位置開閉弁111が開弁し、両側のエアバッグを速やかに同じ高さに回復させる。直線運転時にも、2位置開閉弁111が閉弁している。
【0036】
本願の実施形態に係る軌道車両傾斜システムは、軌道車両の走行時の状態に応じて、左右両側の空気ばねの高さ差を調節することにより、傾斜角度を調節することができ、軌道車両が曲線区間を走行する際に発生する遠心力をバランスさせることに寄与する。
【0037】
上記のいずれかの実施形態に基づいて、図3は、本願の他の実施形態に係る軌道車両傾斜システムの模式図であり、本願の他の実施形態に係る軌道車両傾斜システムは、図3に示すように、第3の3位置電磁弁112と第4の3位置電磁弁113とを更に備え、
第3の3位置電磁弁112は、それぞれ高圧エアリザーバー102、左側空気ばね105、及び大気に連通し、前記第4の3位置電磁弁113は、それぞれ高圧エアリザーバー102、右側空気ばね107及び大気に連通し、前記第3の3位置電磁弁112と第4の3位置電磁弁113との開閉は、いずれも前記コントローラ101によって制御される。
【0038】
本願の実施形態では、軌道車両傾斜システムに第3の3位置電磁弁112と第4の3位置電磁弁113とを追加している。第3の3位置電磁弁112は、第1の3位置電磁比例流量弁109と並列に接続されており、第1の3位置電磁比例流量弁109との協働により、左側空気ばね105の空気充填又は空気排出の速度を速めることができる。第4の3位置電磁弁113は、第2の3位置電磁比例流量弁110と並列に接続されており、第2の3位置電磁比例流量弁110との協働により、右側空気ばね107の空気充填又は空気排出の速度を速めることができる。
【0039】
第3の3位置電磁弁112及び第4の3位置電磁弁113は、3位置電磁開閉弁を採用してもよいし、3位置電磁比例流量弁を採用してもよい。具体的には、実際のニーズに応じて選択することができる。
【0040】
本願の実施形態に係る軌道車両傾斜システムは、電磁弁を追加することによって、空気ばねの空気充填と空気排出の速度とを速めることができ、軌道車両の状態を素早く調節することに有利で、遠心力による乗客の快適さへの影響を低減する。
【0041】
上記のいずれかの実施形態に基づいて、図4は本願の実施形態に係る傾斜制御方法のフローチャートであり、図4に示すように、本願の実施形態に係る傾斜制御方法は、
コントローラ101は、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を受信し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度を事前設定された不平衡遠心加速度閾値と比較するステップ401を含む。
【0042】
このステップでは、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度は、軌道車両のフレームのサイドビームに設けられた加速度センサにより収集され、コントローラ101に送信される。
【0043】
不平衡遠心加速度閾値は、軌道車両の許容される最大不平衡遠心加速度を反映する。フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度がこの閾値を下回る場合、軌道車両は直線又はレールのカントが十分である曲線上を走行していると考えられ、システムは高さ調節モードに入る。フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度がこの閾値以上である場合、軌道車両の遠心加速度をバランスさせる必要があると考えられ、システムはアクティブ傾斜モードに入る。本願の実施形態では、アクティブ傾斜モードの実現の過程を更に説明する。
【0044】
ステップ402では、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値を上回る場合、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110の制御指令を生成することで、傾斜動作を完了するように、左側空気ばね105及び右側空気ばね107の空気充填又は空気排出の動作を実現する。
【0045】
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値を上回る場合、軌道車両はアクティブ傾斜モードに入る。
【0046】
アクティブ傾斜モードでは、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110の制御指令を生成することで、傾斜動作を完了するように、左側空気ばね105及び右側空気ばね107の空気充填又は空気排出の動作を実現することができる。本願の他の実施形態では、制御指令の具体的な生成過程を更に説明する。
【0047】
本願の実施形態の軌道車両の傾斜制御方法は、軌道車両の走行時の状態に応じて、左右両側の空気ばねの高さ差を調節することにより、傾斜角度を調節することができ、軌道車両が曲線区間を走行する際に発生する遠心力をバランスさせることに寄与する。
【0048】
上記のいずれかの実施形態に基づき、本願の実施形態において、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110の制御指令を生成することは、具体的に、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、軌道車両の車体の傾斜角度を算出することと、
前記軌道車両の車体の傾斜角度に基づいて、左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ差目標値を算出することと、
前記左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ差目標値に基づいて、左側空気ばねの高さ変化目標値、右側空気ばねの高さ変化目標値、及び左側空気ばねの高さ変化速度値、右側空気ばねの高さ変化速度値を算出することと、
受信した左側空気ばね105のリアルタイム高さ値及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、左側空気ばね105の高さ変化目標値、右側空気ばね107の高さ変化目標値、及び左側空気ばね105の高さ変化速度値、右側空気ばね107の高さ変化速度値を合わせて、第1の3位置電磁比例流量弁109と第2の3位置電磁比例流量弁110との制御指令を生成することと、を含む。
【0049】
具体的には、本願の実施形態では、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、下記の式を用いて軌道車両の車体の傾斜角度を算出することができる。
【数1】
ここで、θrefは軌道車両の車体の傾斜角度、ancはフレームのリアルタイムの不平衡遠心加速度、anc0は許容最大不平衡遠心加速度、gは重力加速度である。
【0050】
軌道車両の車体の傾斜角度に基づいて、左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ差目標値を更に算出することができる。関連する算出式は下記の通りである。
【数2】
ここで、△zは左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ差目標値を示し、2bは左側空気ばねと右側空気ばねとの横方向スパンであり、この値が実測可能な値である。
【0051】
左側空気ばねと右側空気ばねとの現在の高さ値がいずれも同じ基準値であると仮定する。左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ差目標値は、更に、左側空気ばねの高さ変化目標値と右側空気ばねの高さ変化目標値とに分解することができる。
【0052】
左側空気ばねが上昇し、右側空気ばねが下降する場合を例として、
【数3】
ここで、△zは左側空気ばねの上昇高さ目標値を示し、△zは右側空気ばねの下降高さ目標値を示す。
【0053】
△zの具体的な算出式は下記通りである。
【数4】
ここで、△zR、maxは右側空気ばねの許容最大下降高さを示し、この値が予知値である。
【0054】
△zの具体的な算出式は下記通りである。
【数5】
ここで、△zL、maxは、左側空気ばねの許容最大上昇高さを示し、この値が予知値である。
【0055】
左側空気ばねと右側空気ばねとの高さ変化目標値を得た後、高さ変化目標値を微分して高さ変化速度値を得ることができる。
【0056】
左側空気ばねの高さ変化目標値、右側空気ばねの高さ変化目標値、及び左側空気ばねの高さ変化速度値、右側空気ばねの高さ変化速度値を得た後、これらの値に基づいて、左側空気ばねのリアルタイム高さ値及び右側空気ばねのリアルタイム高さ値を合わせて、第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110に対して対応する制御指令をそれぞれ生成することができる。
【0057】
本願の実施形態に係る軌道車両の傾斜制御方法は、軌道車両のフレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、軌道車両の車体の傾斜角度を算出し、更に空気ばねの高さ変化目標値、高さ変化速度値を算出し、最終的に、3位置電磁比例流量弁に対して制御指令を生成することで、軌道車両の傾斜に対する正確な制御に寄与し、軌道車両が曲線区間を走行する際に発生する遠心力をバランスさせることに寄与する。
【0058】
上記のいずれかの実施形態に基づき、本願の実施形態では、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値、及び右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて、第1の3位置電磁比例流量弁109及び第2の3位置電磁比例流量弁110の制御指令を生成することは、具体的に
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率を算出し、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率に基づいて、フィードフォワード制御量を得ることと、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて、左側空気ばね105の高さ目標値及び右側空気ばね107の高さ目標値を算出することと、
左側空気ばね105のリアルタイム高さ値と左側空気ばね105の高さ目標値とに基づいて、左側空気ばね105のフィードバック制御量を決定し、右側空気ばね107のリアルタイム高さ値と右側空気ばね107の高さ目標値とに基づいて、右側空気ばね107のフィードバック制御量を決定することと、
前記左側空気ばね105のフィードバック制御量と前記フィードフォワード制御量とに基づいて第1の3位置電磁比例流量弁109の制御指令を生成し、前記右側空気ばね107のフィードバック制御量と前記フィードフォワード制御量とに基づいて第2の3位置電磁比例流量弁110の制御指令を生成することと、を含む。
【0059】
本願の前の実施形態では、軌道車両のフレームのリアルタイム不平衡遠心加速度に基づいて軌道車両の車体の傾斜角度を算出し、更に空気ばねの高さ変化目標値、高さ変化速度値を算出し、最終的に、3位置電磁比例流量弁に対して制御指令を生成する方法を理論的に説明した。しかしながら、実際の操作では、外乱やデータ処理における時間遅延のため、制御精度やリアルタイム性は大きな影響を受ける。そこで、本願の実施形態では、電磁比例流量弁に対して制御指令を生成する過程において、フィードフォワード制御量とフィードバック制御量とを組み合わせた態様を採用することができる。
【0060】
図5は、本願の実施形態に係る軌道車両の傾斜制御方法におけるフィードフォワード制御とフィードバック制御とを組み合わせた制御方式の模式図である。図5に示すように、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度ancに基づいて、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率a’nc(即ち、リアルタイム不平衡遠心加速度の微分値)を算出し、フィードフォワードコントローラは、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度の変化率a’ncに基づいて、左(右)側空気ばねのフィードフォワード制御量sff(例えば、リアルタイム不平衡遠心加速度の変化率a’ncに実験で測定された比例係数を乗算して、フィードフォワード制御量sff)を得ると共に、左(右)側空気ばねの実際の高さ値zと左(右)側空気ばねの高さ目標値zref(高さ変化目標値と空気ばねの高さ基準値とから得られる)とを比較し、両者の差eが事前設定された区間範囲(閾値)を超えた場合、フィードバックコントローラは、閾値判定後の差eに基づいて、フィードバック制御量sfb(例えば、PIDアルゴリズムを用いて得られる)を生成し、前記フィードバック制御量sfbとフィードフォワード制御量sffとから最終的な制御量s(s=sfb+sff)を得る。前記制御量sに基づいて、左(右)側空気ばねの実際の高さ値と左(右)側空気ばねの高さ目標値との差が事前設定された区間範囲内となるまで、左(右)側空気ばねの空気充填又は空気排出の動作を制御することにより、軌道車両の傾斜動作が実現される。
【0061】
フィードフォワード制御は、予測制御の方法であり、観測量の変化の傾向に応じて、次の時刻の制御信号を補償し、実際の制御信号をより理想値に近づけることができる。
【0062】
本願の実施形態に係る軌道車両の傾斜制御方法は、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを合わせて、電磁比例流量弁の制御指令を生成する。これにより、応答速度の向上に寄与できる。
【0063】
上記のいずれかの実施形態に基づいて、本願の実施形態において、前記方法は、
軌道車両が曲線区間を離れた後、左右両側の空気ばねのバランスを取るステップを更に含む。
【0064】
軌道車両が緩和曲線を出ると、フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が徐々に減少し、外側空気ばねが空気排出され下降し始める。両側の空気ばねの高さ偏差値が等しいとき、外側空気ばね内の空気を内側空気ばねに流入させて、左右両側の空気ばねがバランスの取れた状態に戻るように、2位置制御開閉弁を開く。
【0065】
当業者にとって容易に理解されるように、本願の実施形態に記載の外側空気ばねは、左側空気ばね105と右側空気ばね107とのうち高さが相対的に高い空気ばねであり、前記内側空気ばねは、左側空気ばね105と右側空気ばね107とのうち高さが相対的に低い空気ばねである。空気ばね高さ偏差値は、空気ばねリアルタイム高さ値と空気ばね高さ目標値との差である。
【0066】
本願の実施形態に係る軌道車両の傾斜制御方法は、軌道車両の走行時の状態に応じて、左右両側の空気ばねの高さ差を調節することにより、傾斜角度を調節することができ、軌道車両が曲線区間を走行する際に発生する遠心力をバランスさせることに寄与する。
【0067】
上記のいずれかの実施形態に基づいて、本願の実施形態において、該方法は、
前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値以下である場合、前記コントローラ101は、前記左側空気ばね105のリアルタイム高さ値及び前記右側空気ばね107のリアルタイム高さ値を受信し、前記左側空気ばね105のリアルタイム高さ値に基づいて第1の高さ偏差値を算出し、前記右側空気ばね107のリアルタイム高さ値に基づいて第2の高さ偏差値を算出することと、
前記第1の高さ偏差値を事前設定された第1の区間と比較し、前記第1の高さ偏差値が前記第1の区間の範囲を超えた場合、前記左側空気ばね105の高さを調節するように、前記第1の3位置電磁比例流量弁109を制御し、前記第2の高さ偏差値を事前設定された第2の区間と比較し、前記第2の高さ偏差値が前記第2の区間の範囲を超えた場合、前記右側空気ばね107の高さを調節するように、前記第2の3位置電磁比例流量弁110を制御することと、を更に含む。
【0068】
本願の実施形態では、前記フレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値以下である場合に、軌道車両は、高さ調節モードに入る。
【0069】
具体的には、左側空気ばね105に設けられた高さ検出センサによって、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値を得ることができ、右側空気ばね107に設けられた高さ検出センサによって、右側空気ばね107のリアルタイム高さ値を得ることができる。
【0070】
コントローラ101は、対応するセンサから左側空気ばね105のリアルタイム高さ値と右側空気ばね107のリアルタイム高さ値とを取得した後、左側空気ばね105のリアルタイム高さ値と事前設定された第1の高さ目標値とを比較して左側空気ばね105の第1の高さ偏差値を取得し、右側空気ばね107のリアルタイム高さ値と事前設定された第2の高さ目標値とを比較して右側空気ばね107の第2の高さ偏差値を取得する。そのうち、第1の高さ目標値と第2の高さ目標値とは実際の必要に応じて設定され、両者の大きさは、同じであっても異なっていてもよい。
【0071】
左右両側の空気ばねの高さの調節が必要であるか否か、及びどのように調節するかについてそれぞれ制御する。左側空気ばね105を例として、まず、第1の高さ偏差値が事前設定された第1の区間範囲内にあるか否かを判定し、第1の区間範囲内にある場合には、左側空気ばね105の高さ偏差値が許容範囲内にあると考えられ、左側空気ばね105の高さを調節する必要がない。第1の高さ偏差値が第1の区間範囲を超えた場合には、左側空気ばね105の高さの調節が必要となる。調節の時には、第1の高さ偏差値の正負の値に基づいて、左側空気ばね105の高さを高くするか低くするかを決定する。左側空気ばね105の高さを高くする必要があれば、第1の3位置電磁比例流量弁109に対して制御指令を生成し、第1の3位置電磁比例流量弁109によって左側空気ばね105に空気充填を行い、左側空気ばね105の高さを低くする必要があれば、第1の3位置電磁比例流量弁109に対して制御指令を生成し、第1の3位置電磁比例流量弁109によって左側空気ばね105に空気排出を行う。左側空気ばね105のリアルタイム高さ値は、空気充填又は空気排出の過程において常に測定され、第1の高さ偏差値の大きさが事前設定された第1の区間範囲内に達すると、左側空気ばね105に対する空気充填又は空気排出の動作を停止する。
【0072】
右側空気ばね107に対する動作は、左側空気ばね105に対する上記動作と同様である。
【0073】
なお、前記第1の区間範囲と前記第2の区間範囲との大きさは、同じであっても異なっていてもよく、具体的には実際状況に応じて決定される。
【0074】
本願の実施形態に係る軌道車両の傾斜制御方法は、軌道車両のフレームのリアルタイム不平衡遠心加速度が事前設定された不平衡遠心加速度閾値以下である場合に、空気ばねの高さを調節して、軌道車両の状態を調節し、遠心力による乗客の快適性への影響を低減する。
【0075】
上記のいずれかの実施形態に基づいて、本願の別の実施形態は、軌道車両を提供し、前記軌道車両は、上記の軌道車両傾斜システムを備える。
【0076】
本願の実施形態に係る軌道車両は、運行時の状態に応じて、左右両側の空気ばねの高さ差を調節することにより、傾斜角度を調節することができ、軌道車両が曲線区間を運行する際に発生する遠心力をバランスさせることに寄与する。
【0077】
以上説明した装置の実施形態は単なる例示であって、分離手段として説明したユニットは、物理的に分離されているものであってもよいし、物理的に分離されているものでなくてもよく、ユニットとして示したユニットは、物理的なユニットであってもよいし、物理的なユニットでなくてもよく、1つの箇所に位置していてもよく、又は複数のネットワークユニットに分散していてもよい。本実施形態の技術案の目的は、実際のニーズに応じて、その一部又は全部のモジュールを採用することにより達成することができる。当業者は、創造的な労働を要しない前提で、それを理解し、実施することができる。
【0078】
以上の実施形態の説明により、当業者であれば、各実施形態がソフトウェアと必要な汎用ハードウェアプラットフォームとを組み合わせた形態で実現可能であることは明らかであり、勿論、ハードウェアによって実現可能である。上記の技術案は、コンピュータソフトウェア製品の形態で具現化することができ、当該コンピュータソフトウェア製品は、例えば、ROM/RAM、磁気ディスク、光ディスクなどのコンピュータ読取可能な記憶媒体に記憶可能であり、コンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、又はネットワーク装置などであってもよい)に各実施形態又は実施形態の一部に記載された方法を実行させるための命令を含む。
【0079】
なお、上記の実施形態は、本願の技術案を説明するためのものに過ぎず、本発明の技術案を限定するものではない。前述の実施形態を参照して本願を詳細に説明したが、当業者であれば、前述の各実施形態に記載された技術案を修正し、又はその一部の技術的特徴を等価的に置き換えることができ、これらの修正又は置き換えが、対応する技術案の本質を本願の各実施形態の技術案の趣旨及び範囲から逸脱させるものではないことを理解できるはずである。
図1
図2
図3
図4
図5