(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】複合不織布及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4266 20120101AFI20240213BHJP
D04H 1/498 20120101ALI20240213BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20240213BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20240213BHJP
D04H 5/03 20120101ALI20240213BHJP
【FI】
D04H1/4266
D04H1/498
D04H3/007
D04H3/16
D04H5/03
(21)【出願番号】P 2022535316
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025303
(87)【国際公開番号】W WO2022009835
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2020116943
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伏見 麻由
(72)【発明者】
【氏名】市川 太郎
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-235154(JP,A)
【文献】特開平08-003855(JP,A)
【文献】特開2010-222726(JP,A)
【文献】特開2018-100469(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107974766(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105113121(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101612416(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/4266
D04H 1/498
D04H 3/007
D04H 3/16
D04H 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲縮したシルク繊維を主成分として含むシルク領域と、
ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布領域と、
を含
み、
スパンレース不織布である、複合不織布。
【請求項2】
厚みが1.00mm以下である、請求項1に記載の複合不織布。
【請求項3】
目付が20g/cm
2~60g/cm
2である、請求項1又は請求項2に記載の複合不織布。
【請求項4】
複合不織布の全質量に対するシルク繊維の含有率が、30質量%~90質量%である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複合不織布。
【請求項5】
機械方向の引張強度が、20N/50mm以上である、請求項1~
請求項4のいずれか1項に記載の複合不織布。
【請求項6】
機械方向に対して平面視で直交する方向の引張強度が、5N/50mm以上である、請求項1~
請求項5のいずれか1項に記載の複合不織布。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含む、請求項1~
請求項6のいずれか1項に記載の複合不織布。
【請求項8】
前記合成繊維の平均繊維径が10μm~30μmである、請求項1~
請求項7のいずれか1項に記載の複合不織布。
【請求項9】
前記合成繊維が捲縮繊維を含む、請求項1~
請求項8のいずれか1項に記載の複合不織布。
【請求項10】
前記合成繊維不織布領域が、最外層としての2つのスパンボンド不織布と前記2つのスパンボンド不織布間に配置された少なくとも1つのメルトブローン不織布とを含むSMS不織布に由来する領域である、
請求項1~
請求項7のいずれか1項に記載の複合不織布。
【請求項11】
請求項1~
請求項10のいずれか1項に記載の複合不織布を製造する方法であって、
捲縮したシルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブを準備する工程と、
ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布を準備する工程と、
前記シルク繊維ウェブと前記合成繊維不織布とを交絡させることにより、前記複合不織布を得る工程と、
を含む、複合不織布の製造方法。
【請求項12】
前記複合不織布を得る工程において、前記シルク繊維ウェブと前記合成繊維不織布との前記交絡は、スパンレース処理によって行う、
請求項11に記載の複合不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合不織布及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつや包帯などの衛生材料に用いられている不織布は、肌に接して用いられるため、柔軟性に優れることが求められている。
衛生材料用の不織布として、ポリオレフィン系の不織布が使用されることがある。
また、不織布の材料として、絹(シルク)が知られている。例えば、特許文献1には、絹繊維を切断した短繊維のみから成る医療用絹不織布が記載されている。
また、特許文献2には、絹繊維独特の滑らかな風合いを有し、かつ、耐磨耗性を備えた衣類用布帛等にも使用することができる絹不織布として、所定の製造方法で製造した、絹不織布、メッシュ状織物、絹不織布の3層構造の絹不織布が記載されている。
【0003】
特許文献1:国際公開第97/07273号
特許文献2:特開2003-105661号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者等の検討により、ポリオレフィン系の不織布単独では、柔軟性及び保液性が不足する場合があることが判明した。
また、本発明者等の検討により、特許文献1に記載された絹不織布は、繊維として絹繊維しか含まないため、強度が不足する場合があることが判明した。
また、本発明者等の検討により、特許文献2に記載された絹不織布は、メッシュ状織物が一般的に硬く、厚みが大きいため、柔軟性が不足する場合があることが判明した。
【0005】
本開示の一態様の目的は、柔軟性、強度及び保液性に優れる複合不織布及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 捲縮したシルク繊維を主成分として含むシルク領域と、
ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布領域と、
を含む、複合不織布。
<2> 厚みが1.00mm以下である、<1>に記載の複合不織布。
<3> 目付が20g/cm2~60g/cm2である、<1>又は<2>に記載の複合不織布。
<4> 複合不織布の全質量に対するシルク繊維の含有率が、30質量%~90質量%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<5> スパンレース不織布である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<6> 機械方向の引張強度が、20N/50mm以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<7> 機械方向に対して平面視で直交する方向の引張強度が、5N/50mm以上である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<8> 前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含む、<1>~<7>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<9> 前記合成繊維の平均繊維径が10μm~30μmである、<1>~<8>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<10> 前記合成繊維が捲縮繊維を含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<11> 前記合成繊維不織布領域が、最外層としての2つのスパンボンド不織布と前記2つのスパンボンド不織布間に配置された少なくとも1つのメルトブローン不織布とを含むSMS不織布に由来する領域である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の複合不織布。
<12> <1>~<11>のいずれか1つに記載の複合不織布を製造する方法であって、
捲縮したシルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブを準備する工程と、
ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布を準備する工程と、
前記シルク繊維ウェブと前記合成繊維不織布とを交絡させることにより、前記複合不織布を得る工程と、
を含む、複合不織布の製造方法。
<13> 前記複合不織布を得る工程において、前記シルク繊維ウェブと前記合成繊維不織布との前記交絡は、スパンレース処理によって行う、<12>に記載の複合不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、柔軟性、強度及び保液性に優れる複合不織布及びその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示において、組成物に含有される各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0009】
〔複合不織布〕
本開示の複合不織布は、捲縮したシルク繊維を主成分として含むシルク領域と、ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布領域と、を含む。
本開示の複合不織布は、必要に応じ、その他の領域を含んでいてもよい。
【0010】
本開示の複合不織布は、柔軟性、強度、及び保液性に優れる。
かかる効果が得られる理由は、以下のように推測される。
本開示の複合不織布は、合成繊維不織布領域を含む複合不織布であることにより、合成繊維不織布領域を含まないシルク繊維ウェブと比較して、強度(特に、引張強度)に優れる。
本開示の複合不織布は、シルク領域を含む複合不織布であることにより、シルク領域を含まない合成繊維不織布と比較して、柔軟性及び保液性に優れる。
【0011】
更に、本開示の複合不織布は、シルク領域の主成分が捲縮したシルク繊維(以下、「捲縮シルク繊維」ともいう)であることにより、シルク領域の主成分が捲縮していないシルク繊維(以下、「非捲縮シルク繊維」ともいう)である場合と比較して、複合不織布の形状保持性及び剥離強度(即ち、複合不織布の厚み方向の強度)に優れる。
具体的には、シルク領域の主成分が捲縮シルク繊維であることにより、捲縮シルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブと、ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布と、を交絡させて本開示の複合不織布を得る際、シルク繊維ウェブと合成繊維不織布とを交絡させて一体化させやすくなる。これにより、得られる複合不織布の、形状保持性及び剥離強度(即ち、複合不織布の厚み方向の強度)が向上する。
ここで、シルク繊維ウェブにおける「ウェブ」とは、布全般(例えば、不織布、織布、等)を意味する。
【0012】
本開示において、主成分とは、含有される全成分のうち、含有質量が最大である成分を意味する。
【0013】
本開示の複合不織布は、シルク領域を、1つのみ含んでもよいし、2つ以上含んでもよい。
本開示の複合不織布は、合成繊維不織布領域を、1つのみ含んでもよいし、2つ以上含んでもよい。
本開示の複合不織布の好ましい態様は、
少なくとも1つのシルク領域と、
少なくとも1つの合成繊維不織布領域と、
が複合不織布の厚さ方向に配置されている態様である。
【0014】
複合不織布の肌当たりの観点から、本開示の複合不織布のより好ましい態様は、
複合不織布の厚さ方向に配置された2つのシルク領域と、
2つのシルク領域間に配置された、少なくとも1つの合成繊維不織布領域と、
を含む態様Aである。
態様Aに係る複合不織布は、態様Aの上記要件を満足する限り、上記2つのシルク領域に加え、1つ以上のシルク領域を更に含んでいてもよい。例えば、態様Aの要件を満足する限り、シルク領域及び合成繊維不織布領域が交互に配置され、シルク領域の総数が3つ以上である態様も、態様Aに包含される。
【0015】
本開示の複合不織布は、好ましくは、捲縮シルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブと、ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布と、を交絡させることによって製造される。
これにより、シルク繊維ウェブに由来する領域としてシルク領域が形成され、合成繊維不織布に由来する領域として合成繊維不織布領域が形成され、本開示の複合不織布が製造される。
【0016】
本開示の複合不織布は、好ましくは、スパンレース不織布である。
ここでいうスパンレース不織布は、捲縮シルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブと、ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布と、がスパンレース処理(即ち、水流交絡処理)によって交絡されてなる不織布である。
本開示の複合不織布がスパンレース不織布である場合には、複合不織布において、シルク繊維の柔らかさがより効果的に維持される。
【0017】
以下、複合不織布の好ましい物性を示す。
以下の好ましい物性の測定条件については、実施例の記載を参照できる。
【0018】
<複合不織布の厚み>
本開示の複合不織布の厚みは、好ましくは1.00mm以下であり、より好ましくは0.20mm~1.00mmであり、更に好ましくは0.20mm~0.80mmであり、特に好ましくは0.25mm~0.60mmである。
複合不織布の厚みが1.00mm以下であると、例えば衛生材料として用いた場合に、衛生材料を薄肉化することができる。また、複合不織布の厚みが1.00mm以下であると、柔軟性により優れる傾向がある。厚みが1.00mm以下である複合不織布は、例えば、後述のとおりスパンレース処理にて複合化することで得ることができる。
【0019】
<複合不織布の目付>
本開示の複合不織布の目付は、好ましくは20g/cm2~60g/cm2であり、より好ましくは20g/cm2~50g/cm2である。複合不織布の目付が上記範囲内であると、強度と薄さを両立できる傾向にあるため好ましい。
【0020】
本開示において、複合不織布の目付は、複合不織布の質量を複合不織布の面積で除した値である。
本開示において、複合不織布の厚み及び目付は、それぞれ、複合不織布から採取した1つ又は2つ以上の試料を用いて測定する。測定に用いる試料の合計面積は、250cm2以上(例えば500cm2)とする。
【0021】
<シルク繊維の含有率>
本開示の複合不織布におけるシルク繊維の含有率(詳細には、捲縮シルク繊維及び非捲縮シルク繊維の合計の含有率)は、複合不織布の全質量に対し、好ましくは30質量%~90質量%であり、より好ましくは35質量%~80質量%であり、更に好ましくは40質量%~70質量%である。
捲縮シルク繊維の含有量が30質量%以上であると、複合不織布の柔軟性および保液性がより優れる傾向にあるため好ましい。
捲縮シルク繊維の含有量が90質量%以下であると、複合不織布の強度がより優れる傾向にあるため好ましい。
【0022】
<複合不織布の引張強度>
本開示の複合不織布の機械方向(MD;Machine direction)の引張強度(以下、「MD引張強度」ともいう)は、好ましくは20N/50mm以上である。
複合不織布のMD引張強度は、より好ましくは20N/50mm~70N/50mmであり、更に好ましくは20N/50mm~50N/50mmである。
【0023】
本開示において、「N/50mm」との単位は、幅50mmの試料を用いて測定される、試料長手方向の引張強度(N)を意味する。
【0024】
本開示において、複合不織布のMD(即ち、機械方向。以下同じ。)の引張強度におけるMDとは、合成繊維不織布領域のMDを意味する。即ち、複合不織布のMDの引張強度とは、合成繊維不織布領域のMDについての複合不織布の引張強度を意味する。
【0025】
本開示の複合不織布の、機械方向に対して平面視で直交する方向(CD;Cross direction)の引張強度(以下、「CD引張強度」ともいう)は、好ましくは5N/50mm以上である。
複合不織布のCD引張強度は、より好ましくは5N/50mm~30N/50mmであり、更に好ましくは5N/50mm~20N/50mmである。
【0026】
本開示において、複合不織布のCD(即ち、機械方向に対して平面視で直交する方向。以下同じ。)の引張強度におけるCDとは、合成繊維不織布領域のCDを意味する。即ち、複合不織布のCDの引張強度とは、合成繊維不織布領域のCDについての複合不織布の引張強度を意味する。
【0027】
複合不織布のMD引張強度及びCD引張強度の測定方法については、後述の実施例において示すとおりである。但し、試験片の長さは、実施例における200mmであることには限定されず、チャック間距離100mmを確保できる長さ(例えば、120mm以上)であればよい。
【0028】
<複合不織布の通気度>
本開示の複合不織布の通気度(cm3/cm2/sec;以下、「ccs」とも表記する)は、好ましくは50ccs~300ccsであり、より好ましくは80ccs~200ccsである。
通気度が50ccs以上であると、複合不織布を衛生材料に用いた場合に、肌がムレにくくなる傾向があるため好ましい。
通気度が300ccs以下であると、複合不織布の保液性がより向上する傾向にあるため好ましい。
【0029】
複合不織布の通気度は、複合不織布から採取した1つ又は2つ以上の試料を用いて測定する。測定に用いる試料の合計面積は、10,000mm2以上(例えば22,500mm2)とする。
【0030】
<複合不織布の剥離強度>
本開示の複合不織布の剥離強度は、好ましくは0.3N以上であり、より好ましくは0.5N~2.0Nであり、更に好ましくは0.6N~1.5Nである。
【0031】
複合不織布の剥離強度の測定方法については、後述の実施例において示すとおりである。
【0032】
<複合不織布の剛柔度>
複合不織布のMD剛柔度は、好ましくは35mm~60mmであり、より好ましくは40mm~50mmである。
複合不織布のCD剛柔度は、好ましくは20mm~30mmであり、より好ましくは21mm~16mmである。
【0033】
複合不織布のMD剛柔度及びCD剛柔度の測定方法については、それぞれ、後述の実施例において示すとおりである。
【0034】
以下、シルク領域及び合成繊維不織布の好ましい態様について説明する。
【0035】
<シルク領域>
シルク領域は、捲縮シルク繊維を主成分として含む領域である。
シルク領域は、好ましくは、捲縮シルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブ(例えば、シルク繊維不織布、シルク繊維織布等)を用いて形成される。
【0036】
捲縮シルク繊維は、非捲縮シルク繊維(即ち、捲縮していないシルク)を捲縮させた繊維である。
非捲縮シルク繊維を捲縮させる方法としては、公知の方法を適用することができる。
非捲縮シルク繊維を捲縮させる方法としては、例えば、
非捲縮シルク繊維を、歯車のように噛み合っている一対の溝つきローラーの間に通してジグザグの形をつけるギヤー捲縮方式;
管状部を含む漏斗状の冶具を用い、非捲縮シルク繊維をジグザグ状に折り曲げた状態で、冶具の管状部に押し込み、押し込んだシルク繊維を管状部から押し出すことにより、非捲縮シルク繊維の屈曲をつける座屈方式;
等が挙げられる。
非捲縮シルク繊維、非捲縮シルク繊維を捲縮させる方法、及び捲縮シルク繊維については、公知技術を特に制限なく適用でき、例えば、特開2003-105661号公報、特開2006-207069号公報等の公知文献を適宜参照してもよい。
【0037】
シルク領域は、捲縮シルク繊維以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、非捲縮シルク繊維、シルク繊維以外の繊維、等が挙げられる。
また、シルク繊維ウェブと合成繊維不織布とを交絡させて複合不織布を製造した場合、シルク繊維ウェブに由来するシルク領域中に、交絡により、合成繊維が混入していてもよい。
シルク領域の全質量に対する捲縮シルク繊維の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0038】
シルク領域に含有される捲縮シルク繊維の平均繊維径は、好ましくは2μm~50μmであり、より好ましくは3μm~30μmであり、更に好ましくは5μm~20μmである。
捲縮シルク繊維の平均繊維径が上記の範囲内であると、合成繊維との交絡がより適切に形成されて、複合不織布の剥離強度がより向上する傾向にあるため好ましい。
上記平均繊維径は、捲縮シルク繊維30本分の繊維径の算術平均値を意味する。
【0039】
シルク領域に含有される捲縮シルク繊維の平均繊維長は、好ましくは10mm~100mmであり、より好ましくは20mm~80mmであり、更に好ましくは30mm~70mmである。
上記平均繊維長は、捲縮シルク繊維30本分の繊維長の算術平均値を意味する。
また、捲縮シルク繊維の繊維長は、捲縮形状をまっすぐに伸ばした状態で測定される繊維長である。
【0040】
捲縮シルク繊維における捲縮ピッチは、複合不織布の形状保持性及び剥離強度をより向上させる観点から、好ましくは0.2mm~3.0mmであり、より好ましくは0.5mm~2.0mmである。
ここで、捲縮ピッチとは、捲縮シルク繊維の形状が、山と谷との繰り返しであるジグザグ形状である場合には、隣り合う山の頂点間の平均距離を意味する。
上記平均距離は、30箇所の測定値(距離)の算術平均値を意味する。
【0041】
捲縮シルク繊維の捲縮度は、複合不織布の形状保持性及び剥離強度をより向上させる観点から、好ましくは3%以上であり、より好ましくは5%以上であり、更に好ましくは10%以上であり、特に好ましくは15%以上である。
捲縮シルク繊維の捲縮度の上限は、好ましくは80%、より好ましくは50%、更に好ましくは40%である。
ここで、捲縮度とは、捲縮の度合いを意味する。捲縮度の数値が大きい程、捲縮の度合いが大きい。捲縮比率の算出方法は、後述の実施例において説明する。
【0042】
<合成繊維不織布領域>
合成繊維不織布領域は、合成繊維不織布を含む領域である。
合成繊維不織布領域は、好ましくは、合成繊維不織布を用いて形成される。
合成繊維不織布領域及びその原料である合成繊維不織布は、いずれも、ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む。
合成繊維不織布領域の全質量に対する上記合成繊維の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
同様に、合成繊維不織布の全質量に対する上記合成繊維の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0043】
合成繊維は、ポリオレフィン系樹脂を1種のみ含んでいてもよいし2種以上含んでいてもよい。
合成繊維におけるポリオレフィン系樹脂の含有率(2種以上である場合には合計の含有率)は、合成繊維の全質量に対し、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0044】
本開示において、ポリオレフィン系樹脂とは、オレフィン単位(即ち、オレフィンが重合することによって形成される構造単位)を主成分として含む樹脂を意味する。
ポリオレフィン系樹脂の全質量に対するオレフィン単位の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィン単位以外の構造単位を有していてもよい。
【0045】
ポリオレフィン系樹脂に含まれるオレフィン単位は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
即ち、ポリオレフィン系樹脂は、1種のオレフィンの単独重合体であってもよいし、2種以上のオレフィンの共重合体であってもよい。
【0046】
オレフィン単位を形成するためのオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン等のα-オレフィンが挙げられる。
【0047】
ポリオレフィン系樹脂は、強度と柔軟性とのバランスの観点から、好ましくはポリプロピレン系樹脂を含む。
この場合、ポリオレフィン系樹脂中のポリプロピレン系樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
ここで、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単位(即ち、プロピレンが重合することによって形成される構造単位)を主成分として含む樹脂を意味する。
ポリプロピレン系樹脂の全質量に対するプロピレン単位の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単位以外の構造単位(好ましくは、プロピレン以外のα-オレフィンに由来する構造単位)を含んでいてもよい。
【0048】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)(詳細には、ASTM D 1238に準拠し、230℃、荷重2.16kgの条件で測定されるMFR。以下同じ。)は、好ましくは1g/10分~3,000g/10分であり、より好ましくは2g/10分~2,000g/10分であり、更に好ましくは10g/10分~1,000g/10分であり、特に好ましくは10g/10分~700g/10分である。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂に含有され得るポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単独重合体、及び、プロピレン・α-オレフィン共重合体(即ち、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体)の少なくとも一方であることが好ましい。
【0050】
プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン(即ち、プロピレン以外のα-オレフィン)は、1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン(即ち、プロピレン以外のα-オレフィン)として、好ましくは、プロピレン以外の炭素数2~10のα-オレフィン(例えば、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン)である。
プロピレン・α-オレフィン共重合体としては、プロピレン・エチレン共重合体が好ましく、プロピレン・エチレンランダム共重合体がより好ましい。
【0051】
プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるα-オレフィン含量(即ち、プロピレン・α-オレフィン共重合体の全構造単位中に占めるα-オレフィン単位のモル%)は、好ましくは1モル%~40モル%であり、より好ましくは2モル%~30モル%であり、更に好ましくは2モル%~20モル%であり、特に好ましくは2モル%~10モル%である。
プロピレン・α-オレフィン共重合体におけるプロピレン含量(即ち、プロピレン・α-オレフィン共重合体の全構造単位中に占めるプロピレン単位のモル%)は、好ましくは60モル%~99モル%であり、より好ましくは70モル%~98モル%であり、更に好ましくは80モル%~98モル%であり、特に好ましくは90モル%~98モル%である。
【0052】
プロピレン単独重合体の融点は、好ましくは155℃以上であり、より好ましくは157℃~165℃である。
プロピレン・α-オレフィン共重合体の融点は、好ましくは120℃~154℃であり、より好ましくは130℃~150℃である。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含む場合、ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂以外のその他の樹脂を含んでいてもよい。
ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を含む場合、ポリオレフィン系樹脂の全質量に対するポリプロピレン系樹脂の含有率は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更に好ましくは80質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。
【0054】
(平均繊維径)
合成繊維の平均繊維径は、合成繊維と捲縮シルク繊維との交絡をより促進し、剥離強度をより向上させる観点から、好ましくは10μm~30μmである。
合成繊維の平均繊維径の測定方法は、後述の実施例において示すとおりである。
【0055】
上述の平均繊維径は、合成繊維不織布領域を形成するための合成繊維不織布として、スパンボンド不織布を用いた場合に、実現されやすい。
【0056】
(捲縮繊維)
合成繊維は、合成繊維と捲縮シルク繊維との交絡をより促進して、剥離強度をより向上させる観点から、捲縮繊維を含むことが好ましい。
【0057】
本開示において、合成繊維が捲縮繊維を含む場合の捲縮繊維とは、異型繊維(即ち、断面が非対称である繊維)及び2以上の合成樹脂を含む複合繊維(即ち、捲縮複合繊維)の少なくとも一方を意味する。
捲縮繊維として、好ましくは捲縮複合繊維である。
捲縮複合繊維は、好ましくは、組成、分子量、及び物性(例えば、結晶化温度、融点、軟化点、結晶化速度、溶融粘度等)のうちの少なくとも1つが異なる2種以上のポリオレフィン系樹脂(好ましくは2種以上のポリプロピレン系樹脂)を含む。
捲縮複合繊維として、好ましくは、偏芯芯鞘型捲縮複合繊維である。
偏芯芯鞘型捲縮複合繊維とは、繊維の横断面(即ち、繊維長に対して直交する断面)において、芯部と、芯部の少なくとも一部を囲む鞘部と、からなり、芯部及び鞘部の中心同士が重ならない捲縮複合繊維を意味する。
偏芯芯鞘型捲縮複合繊維は、サイドバイサイド型の横断面形状を有することが好ましい。
ここで、サイドバイサイド型の横断面形状とは、鞘部が芯部の一部のみを囲み、芯部の残りの部分が、外部に露出している形状を意味する。
【0058】
捲縮複合繊維(例えば、偏芯芯鞘型捲縮複合繊維)については特に制限はなく、例えば、特許第4009196号公報、特許第5139669号公報、特許第5289459号公報、等の公知文献に記載された、公知の捲縮複合繊維を用いることができる。
【0059】
捲縮複合繊維として、好ましくは、第1ポリオレフィン系樹脂を含む芯部と、第1ポリオレフィン系樹脂とは異なる第2ポリオレフィン系樹脂を含む鞘部と、を含む偏心芯鞘型捲縮複合繊維である。
偏心芯鞘型捲縮複合繊維において、鞘部に対する芯部の質量比(以下、質量比〔芯部/鞘部〕ともいう)は、好ましくは0.05~5.00であり、より好ましくは0.10~1.00であり、更に好ましくは0.10~0.50である。
【0060】
芯部に含まれる第1ポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン単独重合体がより好ましい。
鞘部に含まれる第2ポリオレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂が好ましく、プロピレン・α-オレフィン共重合体がより好ましい。
プロピレン単独重合体及びプロピレン・α-オレフィン共重合体のそれぞれの好ましい態様については前述したとおりである。
第1ポリオレフィン系樹脂の融点から第2ポリオレフィン系樹脂の融点を差し引いた値(即ち、融点差〔第1ポリオレフィン系樹脂の融点-第2ポリオレフィン系樹脂の融点〕)は、好ましくは0℃超であり、より好ましくは5℃以上であり、更に好ましくは10℃以上であり、特に好ましくは15℃以上である。
融点差〔第1ポリオレフィン系樹脂の融点-第2ポリオレフィン系樹脂の融点〕の上限は、好ましくは50℃であり、より好ましくは40℃であり、更に好ましくは30℃である。
【0061】
捲縮繊維の平均繊維径は、好ましくは10μm~30μmであり、より好ましくは10μm~20μmである。
上述の平均繊維径は、捲縮繊維を含む合成繊維不織布領域を形成するための合成繊維不織布として、スパンボンド不織布を用いた場合に、実現されやすい。
【0062】
本開示の複合不織布の好ましい態様として、合成繊維不織布領域が、スパンボンド不織布(より好ましくは、捲縮繊維を含むスパンボンド不織布)に由来する領域である態様が挙げられる。
【0063】
(SMS不織布に由来する領域)
本開示の複合不織布の好ましい態様として、合成繊維不織布領域が、SMS不織布に由来する領域である態様も挙げられる。
ここで、SMS不織布とは、最外層としての2つのスパンボンド不織布と上記2つのスパンボンド不織布間に配置された少なくとも1つのメルトブローン不織布とを含む積層不織布を意味する。
かかる好ましい態様によれば、SMS不織布におけるメルトブローン不織布の作用により、合成繊維と捲縮シルク繊維との交絡がより促進され、その結果、剥離強度がより向上する。
SMS不織布は、最外層としての2つのスパンボンド不織布間に、メルトブローン不織布を、1つのみ含んでいてもよいし、2つ以上含んでいてもよい。
SMS不織布は、最外層としての2つのスパンボンド不織布間に、他のスパンボンド不織布を含んでいてもよい。例えば、SMS不織布は、スパンボンド不織布/スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布/スパンボンド不織布であってもよく、スパンボンド不織布/スパンボンド不織布/メルトブローン不織布/スパンボンド不織布であってもよい。
【0064】
SMS不織布中のスパンボンド不織布の平均繊維径は、例えば10μm~30μmである。
SMS不織布中のメルトブローン不織布の平均繊維径は、例えば0.1μm~7μmである。
SMS不織布中のスパンボンド不織布の平均繊維径及びSMS不織布中のメルトブローン不織布の平均繊維径の測定方法については、それぞれ、後述の実施例において示すとおりである。
【0065】
SMS不織布中のスパンボンド不織布における繊維、及び、SMS不織布中のメルトブローン不織布における繊維の好ましい態様は、それぞれ、ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維の好ましい態様として、すでに説明したとおりである。
【0066】
(用途)
本開示の複合不織布の好ましい用途として、例えば、オムツ、生理用品等の衛生材用途、マスク、フェイスマスク、化粧落としシート、化粧用パッドなどの化粧用品全般、創傷被覆や手術用パッドなどの医療用シート全般、細胞培養基材、アパレル用品、カツラ基材、寝具、食品包材、電子材料等が挙げられる。これらの中でも、本開示の複合不織布は、柔軟性、強度及び保液性が求められるフェイスマスク用途、特にフェイスマスクにおいて肌と接する面に好ましく用いることができる。
【0067】
〔複合不織布の製造方法の一例〕
本開示の複合不織布の製造方法の一例(以下、製法Aとする)は、
捲縮シルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブを準備する工程と、
ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布を準備する工程と、
上記シルク繊維ウェブと上記合成繊維不織布とを交絡させることにより、複合不織布を得る工程と、
を含む。
【0068】
製法Aでは、捲縮シルク繊維を主成分として含むシルク繊維ウェブを用いるので、上記シルク繊維ウェブと上記合成繊維不織布とを効果的に交絡させることができる。
従って、本開示の複合不織布を好適に製造できる。
【0069】
シルク繊維ウェブを準備する工程において準備するシルク繊維ウェブの好ましい態様は、前述した複合不織布におけるシルク領域の記載を適宜参照できる。
シルク繊維ウェブを準備する工程は、予め製造されたシルク繊維ウェブを単に準備するだけの工程であってもよいし、製法Aの実施のためにシルク繊維ウェブを製造する工程であってもよい。
シルク繊維ウェブを準備する工程では、シルク繊維ウェブを一枚のみ準備してもよいし、複数枚準備してもよい。シルク繊維ウェブの枚数は、複合不織布を得る工程で用いるシルク繊維ウェブの枚数に応じて適宜選択できる。
【0070】
合成繊維不織布を準備する工程において準備する合成繊維不織布の好ましい態様は、前述した複合不織布における合成繊維不織布領域の記載を適宜参照できる。
【0071】
製法Aにおいて、合成繊維と捲縮シルク繊維との交絡をより促進し、その結果、得られる複合不織布の剥離強度をより向上させる観点から、合成繊維不織布を準備する工程において準備する合成繊維不織布としては、スパンボンド不織布(好ましくは捲縮繊維を含むスパンボンド不織布)又はSMS不織布が好ましい。
【0072】
合成繊維不織布を準備する工程は、予め製造された合成繊維不織布を単に準備するだけの工程であってもよいし、製法Aの実施のために合成繊維不織布を製造する工程であってもよい。
合成繊維不織布を準備する工程では、合成繊維不織布を一枚のみ準備してもよいし、複数枚準備してもよい。合成繊維不織布の枚数は、複合不織布を得る工程で用いる合成繊維不織布の枚数に応じて適宜選択できる。
【0073】
複合不織布を得る工程は、少なくとも1枚のシルク繊維ウェブと少なくとも1枚の合成繊維不織布とを交絡させることにより、複合不織布を得る工程である。
本工程により、シルク繊維ウェブと合成繊維不織布とが三次元的に交絡されてこれらが一体化され、シルク繊維ウェブに由来するシルク領域と、合成繊維不織布に由来する合成繊維不織布領域と、を含む複合不織布が得られる。
【0074】
複合不織布を得る工程では、好ましくは、
最外層としての2つのシルク繊維ウェブと、
上記2つのシルク繊維ウェブ間に配置された少なくとも1つの合成繊維不織布と、
を交絡させる。
この態様において、シルク繊維ウェブ及び合成繊維不織布を交互に配置してもよい。
【0075】
シルク繊維ウェブと合成繊維不織布との交絡は、好ましくはスパンレース処理によって行う。シルク繊維ウェブと合成繊維不織布との交絡をスパンレース処理によって行った場合には、複合不織布において、シルク繊維の柔らかさがより効果的に維持される。
【0076】
ここで、スパンレース処理とは、水流交絡処理とも呼ばれる処理であり、シルク繊維ウェブと合成繊維不織布とを重ね合わせた積層体に対し、積層体の上面側及び下面側から積層体に水流を噴射することにより、シルク繊維ウェブと合成繊維不織布とを交絡させる処理である。
水流の水圧として、好ましくは0.5MPa~10MPaであり、より好ましくは1MPa~8MPaであり、更に好ましくは1MPa~6MPaである。
水流の噴射は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。
また、スパンレース処理において、上面側から噴射する水流の条件及び噴射回数と、下面側から噴射する水流の条件及び噴射回数と、が同一であってもよいし、異なっていてもよい。
スパンレース処理(水流交絡処理)については、例えば、国際公開第2020/036143号の公知文献に記載された処理を参照してもよい。
【実施例】
【0077】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
【0078】
〔実施例1〕
<複合不織布の作製>
(シルク繊維ウェブ(第1層及び第3層)の作製)
市販のシルク繊維(A1スライバー、平均繊維径12μm、株式会社長谷川商店製)に対し、冶具を用いた機械的捲縮操作を2回施し、捲縮シルク繊維(即ち、捲縮したシルク繊維。表1では「捲縮シルク」と表記する)の束を得た。
ここで、シルク繊維の平均繊維径は、シルク繊維30本の繊維径の平均値を意味する。各シルク繊維の繊維径は、走査型電子顕微鏡(日立製作所製 SU3500形;倍率300倍)を用いて測定した。
【0079】
機械的捲縮操作における冶具としては、管状部を含む漏斗状の冶具を用いた。
1回の機械的捲縮操作は、シルク繊維をジグザグ状に折り曲げた状態で、冶具の管状部に押し込み、押し込んだシルク繊維を管状部から束状に押し出す操作とした。
【0080】
得られた捲縮シルク繊維の束における捲縮シルク繊維の形状は、山と谷との繰り返しであるジグザグ形状であった。このジグザグ形状において、捲縮ピッチ、即ち、隣り合う山の頂点間の平均距離(詳細には、30箇所の測定値の平均値)は1.0mmであった。
【0081】
次に、上記捲縮シルク繊維の束を、平均繊維長が51mmとなるようにカットした。
ここで、捲縮シルク繊維の平均繊維長は、捲縮シルク繊維30本分の繊維長の平均値を意味する。
カットした捲縮シルク繊維の束を原料とし、開繊機及びローラー型パラレルカード機を用い、捲縮シルク繊維ウェブ(詳細には、捲縮シルク繊維不織布。以下同じ。)を作製した。
【0082】
以上の操作により、目付13g/m2の捲縮シルク繊維ウェブである第1層と、目付14g/m2の捲縮シルク繊維ウェブである第3層と、をそれぞれ得た。
ここで、目付の変更は、ローラー型パラレルカード機の回転数を変更することによって行った。目付の測定方法については後述する。
【0083】
(合成繊維不織布(第2層)の作製)
素材として、
融点162℃、MFR(ASTM D 1238に準拠し温度230℃、荷重2.16kgで測定。以下、特に断りが無い限り同様。)60g/10分のプロピレン単独重合体と、
融点142℃、MFR60g/10分、エチレン単位含量4.0モル%、プロピレン単位含量96.0モル%のプロピレン・エチレンランダム共重合体と、
をそれぞれ準備した。
これらの素材を用い、スパンボンド法により、第2層としての合成繊維不織布(実施例1ではスパンボンド不織布;表1では、「SB(単層)」と表記する)を作製した。
【0084】
詳細には、複合溶融紡糸により、芯部がプロピレン単独重合体であり、鞘部がプロピレン・エチレンランダム共重合体であり、質量比〔芯部/鞘部〕が0.25である捲縮複合繊維(詳細には、偏芯の芯鞘型捲縮複合繊維)を得、得られた捲縮複合繊維を捕集面上に堆積させ、次いで、エンボス面積率18%及びエンボス温度110℃の条件にてエンボス加工することにより、第2層として、目付17g/m2の合成繊維不織布(スパンボンド不織布)を得た。
得られた合成繊維不織布において、捲縮複合繊維の平均繊維径は、16μmであった。
捲縮複合繊維(詳細には、偏芯の芯鞘型捲縮複合繊維)は、サイドバイサイド型の横断面形状を有していた。
【0085】
第2層としての合成繊維不織布から、長さ10mm×幅10mmの矩形状の試験片を10個採取した。採取した各試験片を、Nikon社製ECLIPSE E400顕微鏡により、倍率300倍にて観察した。この観察において、繊維径9μm以上の捲縮複合繊維を、試験片1つにつき20本選定し、選定した繊維径9μm以上の捲縮複合繊維の各々の繊維径を、μm単位で小数点第1位までの値として測定した。得られた200個の測定値の平均値を算出し、捲縮複合繊維の平均繊維径とした。
【0086】
(複合不織布の作製)
上記第1層、上記第2層、及び上記第3層を、この順の配置にて重ねて積層体とし、得られた積層体をネット上に配置した。この際、第1層の機械方向(MD;Machine Direction)及び第3層のMDの各々が、第2層のMDに対して略平行となる向きに重ね合わせた。
次に、ネット及びその上に配置した積層体を速度7m/分にて進行させながら、上記積層体に対し、スパンレース処理(即ち、水流交絡処理)を施した。
スパンレース処理が施された積層体に対し、ニップロールによる表面の平滑処理、熱風貫通式熱処理機による110℃での乾燥処理、及びニップロールによる表面の平滑処理をこの順に施し、スパンレース不織布としての複合不織布を得た。
スパンレース処理(即ち、水流交絡処理)は、孔径0.10mmのオリフィスが1mm間隔で設けられているノズルを備えたウォータージェット装置を用い、積層体の上面に対し、水圧2MPaの柱状水流、水圧4MPaの柱状水流、及び水圧4MPaの柱状水流を1回ずつ噴射し、次いで、積層体の下面に対し、水圧4MPaの柱状水流を1回噴射することによって実施した。積層体の表面とオリフィスとの間の距離は15mmとした。
【0087】
<測定及び評価>
上記複合不織布及びその材料について、以下の測定及び評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0088】
(1)目付(g/m2;表1中では「gsm」)
複合不織布の目付は、複合不織布から10cm角の矩形状の試料を5つ採取し、採取した5つの試料の合計質量を上記5つの試料の合計面積で除すことによって求めた。
第1層~第3層の各々の目付も、それぞれ、複合不織布の目付(g/m2)と同様の方法によって求めた。
【0089】
(2)捲縮シルク繊維の捲縮度
平均繊維長が51mmとなるようにカットした捲縮シルク繊維の束から、繊維束の断面が1mm2程度の面積となる量の捲縮シルク繊維の束X1を取り出した。
取り出した捲縮シルク繊維の束X1を、出来るだけ波打たないように、定規に沿わせて配置した。束X1の一端をピンセットで掴み、ピンセットで掴んだ位置から他端側に3.0cm離れた位置で束X1を固定した。
次いでピンセットを、0.5cm/sec程度の速さで、束X1の一端方向に人の手で引っ張ることにより、束X1における固定位置からピンセットで掴んだ位置までの部分(即ち、伸長前の長さである長さ3.0cmの部分)を伸長させた。この操作を人の手で引っ張れなくなるまで(即ち、束X1が伸長しなくなるまで)行い、この時の固定位置からピンセットで掴んだ位置までの部分の長さ(cm)(以下、「伸長時の長さ」とする)を測定した。この操作を10回繰り返し、10個の測定値の平均値を求め、「伸長時の長さの平均値(cm)」とした。
伸長前の長さである3.0cmと、伸長時の長さの平均値と、を用い、下記式より捲縮度(%)を求めた。
捲縮度(%)={1-(3.0/伸長時の長さの平均値(cm))}×100
【0090】
(3)複合不織布におけるシルク含有率(質量%)
下記式により、複合不織布におけるシルク含有率(質量%)を求めた。
シルク含有率(質量%)={(第1層の目付(g/m2)+第3層の目付(g/m2))/複合不織布の目付(g/m2)}×100
【0091】
(4)複合不織布の厚み(mm)
複合不織布の厚みは、複合不織布の目付(g/m2)の測定と同様にして採取した5つの試料を用いて測定した。詳細には、5つの試料のそれぞれについて、試料の中央及び四隅の計5点の厚みを、厚み計(PEACOCK社製、品番「R1-250」、測定端子25mmφ、荷重7gf/cm2)を用いて測定した。得られた計25個の測定データを算術平均することにより平均厚みを求め、得られた平均厚みを、複合不織布の厚み(mm)とした。
【0092】
(5)複合不織布のMD引張強度
複合不織布から、長さ200mm×幅50mmの矩形状の試料を5つ採取した。5つの試料は、それぞれ、試料の長手方向が複合不織布の第2層のMD(機械方向)に対して略平行となる向きに採取した。
採取した各試料について、JIS L 1906に準拠し、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS-J)を用いて、チャック間距離100mm及びヘッドスピード300mm/minの条件で、試料の長手方向の破断強度を測定した。得られた5つの測定値の平均値を算出し、複合不織布の50mm幅でのMD引張強度とした。
【0093】
(6)複合不織布のCD引張強度
5つの試料を採取する向きを、試料の長手方向が複合不織布の第2層のCD(Cross direction;即ち、MDに対して平面視で直交する方向)に対して略平行となる向きに変更したこと以外は複合不織布のMD引張強度と同様にして、複合不織布のCD引張強度を測定した。
【0094】
(7)複合不織布の通気度(ccs(即ち、cm3/cm2/sec))
複合不織布から、長さ150mm×幅150mmの矩形状の試料を5つ採取した。5つの試料は、それぞれ、試料の長手方向が複合不織布の第2層のMD(機械方向)に対して略平行となる向きに採取した。
採取した各試料について、JIS L 1906に準拠し、フラジール通気度測定機によって通気度を測定した。得られた5つの測定値の平均値を算出し、複合不織布の通気度とした。
【0095】
(8)複合不織布の剥離強度
複合不織布の厚み方向の強度の指標として、以下のようにして、複合不織布の剥離強度を測定した。
複合不織布から、長さ200mm×幅20mmの矩形状の試料を5つ採取した。5つの試料は、それぞれ、試料の長手方向が複合不織布の第2層のMD(機械方向)に対して略平行となる向きに採取した。
各試料について、まず、長手方向一端から長さ50mmの領域における、第2層側と第3層側とを剥離した。次いで、剥離した第2層側及び第3層側を、それぞれ、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフAGS-J)のチャックに、チャック間距離を50mmとして固定した。次に、チャックに固定した第2層側及び第3層側を、ヘッドスピード100mm/minの条件にて反対方向に引っ張ることにより、残りの領域(長さ150mmの領域)における第2層側と第3層側とをT型剥離し、この際の剥離強度を測定した。得られた5つの測定値の平均値を算出し、複合不織布の剥離強度(N/20mm幅)とした。
【0096】
(9)MD剛軟度(mm)
複合不織布のMD(機械方向)における柔軟性の指標の一つとして、以下のようにして、MD剛軟度を測定した。
複合不織布から、長さ200mm×幅20mmの矩形状の試料を5つ採取した。5つの試料は、それぞれ、試料の長手方向が複合不織布の第2層のMD(機械方向)に対して略平行となる向きに採取した。
採取した各試料のオモテ側及びウラ側について、温度20±2℃、湿度65±2%の恒温室内で、JIS L 1096:2010(8.21.1A法(45°カンチレバー法))に準拠し、剛軟性(mm)を測定した。得られた10個の測定値(即ち、5つの試料のオモテ側及びウラ側)の平均値を算出し、MD剛軟度(mm)とした。
MD剛軟度の数値が大きい程、MD(機械方向)における柔軟性に優れる。
【0097】
(10)CD剛軟度(mm)
複合不織布のCD(機械方向に対して平面視で直交する方向)における柔軟性の指標の一つとして、以下のようにして、CD剛軟度を測定した。
即ち、各試料を採取する向きを、試料の長手方向が複合不織布の第2層のCD(機械方向)に対して略平行となる向きに変更したこと以外はMD剛軟度の測定と同様にして、CD剛軟度(mm)を測定した。
CD剛軟度の数値が大きい程、MD(機械方向)における柔軟性に優れる。
【0098】
(11)肌当たり及びフィット感
複合不織布の肌当たり及びフィット感を、以下のようにして評価した。
複合不織布から、顔への貼付用の試験片を採取した。
試験片の外形は、直径20cmの円形状とした。試験片には、目及び鼻に相当する部分(3箇所)の各々に、直径3cmの穴を空けた。
この試験片を用い、20代女性3名を被験者として、肌当たり及びフィット感に関する官能評価を実施した。
試験片を蒸留水に1時間浸漬させて引き上げ、試験片表面の余剰水滴を綿布によりふき取り、被験者の顔に貼付し、この際に被験者が感じた肌当たり及びフィット感をヒヤリングした。
同様の操作を、後述の比較例2における捲縮シルクウェブ、及び、後述の実施例4におけるSMS不織布(第2層)を用いて行った。
各被験者からのヒヤリング結果に基づき、下記評価基準により、各被験者の肌当たり及びフィット感の評点Aを決定した。
3名の被験者の評点Aの平均値を算出し、得られた平均値の小数点1桁目を四捨五入することにより、肌当たり及びフィット感の評点を決定した。
【0099】
-評価基準-
5:捲縮シルクウェブと同等の肌当たり及びフィット感であると感じ、かつ、この肌当たり及びフィット感が30分以上保たれた。
4:捲縮シルクウェブと同等の肌当たり及びフィット感であると感じた(但し、評点「5」に該当する場合を除く)。
3:捲縮シルクウェブと同等の肌当たりであると感じたが、フィット感は捲縮シルクウェブより劣ると感じた。
2:肌当たりが、捲縮シルクウェブより劣るが、SMS不織布よりは優れると感じた。
1:肌当たりが、捲縮シルクウェブより劣り、かつ、SMS不織布と同等であると感じた。
【0100】
(12)着用時の保湿時間
複合不織布の保液性の指標の一つとして、複合不織布の着用時の保湿時間を測定した。
上記肌当たり及びフィット感の評価において、試験片が被験者の顔から剥がれるまでの時間を測定し、3名の被験者における測定値の平均値を、複合不織布の着用時の保湿時間として求めた。
複合不織布の着用時の保湿時間が長い程、複合不織布の保液性に優れる。
【0101】
〔実施例2及び3〕
第1層の目付及び第3層の目付を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
目付の変更は、ローラー型パラレルカード機の回転数を変更することによって行った。
【0102】
〔実施例4〕
<複合不織布の作製>
(シルク繊維ウェブ(第1層及び第3層)の作製)
実施例1における第1層の作製と同様にして、目付13g/m2の捲縮シルク繊維ウェブである第1層と、目付13g/m2の捲縮シルク繊維ウェブである第3層と、をそれぞれ得た。
【0103】
(合成繊維不織布(第2層)の作製)
以下のようにして、SMS不織布(すなわち、本実施例においては、1つのスパンボンド不織布層と、1つのスパンボンド不織布層の間に配置された1つ以上のメルトブローン不織布層と、を含む不織布)である、第2層としての合成繊維不織布を作製した。
得られたSMS不織布は、スパンボンド不織布層中の繊維、及び、メルトブローン不織布層中の繊維を含む。これらの繊維は、いずれも、非捲縮繊維である。
【0104】
素材としてMFRが60g/10分であるプロピレン単独重合体を用い、溶融温度230℃、紡糸口金0.6mmφの条件の溶融紡糸によって繊維を形成し、形成した繊維を捕集面上に堆積させることにより、平均繊維径が16μmであり、目付が6g/m2であるスパンボンド不織布層S-1を形成した。
次に、素材としてMFRが400g/10分であるプロピレン単独重合体を用い、溶融温度280℃にて溶融した溶融物を紡糸口金から吐出し、かつ、紡糸口金の吐出孔出口において280℃の加熱空気を吹き付ける条件のメルトブローン法により、繊維を形成し、形成した繊維をスパンボンド不織布層S-1上に堆積させ、スパンボンド不織布層S-1上に、平均繊維径が3μmであり、目付が1g/m2であるメルトブローン不織布層M-1を形成した。
次に、メルトブローン不織布層M-1上に、スパンボンド不織布層S-1の形成と同様の条件にて、スパンボンド不織布層S-2を形成することにより、スパンボンド不織布層S-1、メルトブローン不織布層M-1、及びスパンボンド不織布層S-2が、この順に配置された積層構造を有する積層体を得た。
次に、得られた積層体に対し、エンボス面積率18%及びエンボス温度145℃の条件にてエンボス加工を施すことにより、スパンボンド不織布層S-1、メルトブローン不織布層M-1、及びスパンボンド不織布層S-2を一体化させ、目付13g/m2のSMS不織布(合成繊維不織布)である第2層を得た。
【0105】
実施例4において、SMS不織布(合成繊維不織布)の目付は、実施例1の第2層の目付と同様にして測定した。
スパンボンド不織布層S-1の目付及びメルトブローン不織布層M-1の目付は、それぞれ、これらの層の形成条件と同様の条件にて単層の不織布を形成し、形成された単層の不織布を用い、実施例1の第2層の目付と同様にして測定した。
スパンボンド不織布層S-1の平均繊維径は、実施例1の第2層の平均繊維径と同様にして測定した。
メルトブローン不織布層M-1の平均繊維径は、走査型電子顕微鏡(日立製作所製 SU3500形)を用い、倍率2000倍にて観察して行った。詳細には、観察視野の中から、繊維径が8μm以下の繊維を30本選定し、選定した30本の繊維の繊維径(μm)をそれぞれ測定した。得られた測定値の平均値を算出することにより、メルトブローン不織布層M-1の平均繊維径を求めた。
【0106】
(複合不織布の作製)
上記第1層、上記第2層、及び上記第3層を用い、実施例1における複合不織布の作製と同様にして、複合不織布を作製した。
【0107】
<測定及び評価>
上記複合不織布及びその材料について、実施例1と同様の測定及び評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例5〕
第1層の目付及び第3層の目付を、表1に示すように変更したこと以外は実施例4と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
目付の変更は、ローラー型パラレルカード機の回転数を変更することによって行った。
【0109】
〔実施例6〕
<複合不織布の作製>
(シルク繊維ウェブ(第1層及び第3層)の作製)
実施例1における第1層及び第3層の作製と同様にして、目付13g/m2のシルク繊維ウェブである第1層と、目付14g/m2のシルク繊維ウェブである第3層と、をそれぞれ得た。
【0110】
(合成繊維不織布(第2層)の作製)
素材として、MFRが60g/10分であるプロピレン単独重合体を用い、溶融温度230℃、紡糸口金0.6mmφの条件のスパンボンド法により、溶融紡糸によって繊維を形成し、得られた繊維を捕集面上に堆積させ、次いで、エンボス面積率18%及びエンボス温度150℃の条件にてエンボス加工を施すことにより、合成繊維不織布(第2層)として、平均繊維径が16μmであり、目付が17g/m2であるスパンボンド不織布(表1では、「SB(単層)」と表記する)を得た。
得られたスパンボンド不織布中の繊維は、非捲縮繊維である。
【0111】
(複合不織布の作製)
上記第1層、上記第2層、及び上記第3層を用い、実施例1における複合不織布の作製と同様にして、複合不織布を作製した。
【0112】
<測定及び評価>
上記複合不織布及びその材料について、実施例1と同様の測定及び評価を実施した。
結果を表1に示す。
【0113】
〔比較例1及び2〕
第1層の目付を表1に示すように変更し、かつ、第1層、第2層、及び第3層を重ねた積層体に代えて、第1層を用いたこと以外は実施例1と同様にして、単層の捲縮シルク繊維ウェブを作製し、形成された単層の捲縮シルク繊維ウェブを用い、実施例1と同様の測定及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0114】
〔比較例3〕
市販のシルク繊維(A1スライバー、平均繊維径12μm、株式会社長谷川商店製)(即ち、非捲縮シルク繊維)に対し、機械的捲縮操作を施さないこと以外は実施例1と同様にして複合不織布を作製しようと試みた。
しかし、第1層、第2層、及び第3層を交絡させることができず、複合不織布を作製することができなかった(即ち、複合不織布の形状保持性が著しく不足していた)。
【0115】
〔比較例4〕
第1層、第2層、及び第3層を重ねた積層体に代えて、第2層を用いたこと以外は実施例4と同様にして、SMS不織布を作製し、得られたSMS不織布を用い、実施例1と同様の測定及び評価を行った。
結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
表1に示すように、捲縮したシルク繊維を主成分として含むシルク領域と、ポリオレフィン系樹脂を含む合成繊維を主成分として含む合成繊維不織布領域と、を含む、実施例1~6の複合不織布は、柔軟性、強度(即ち、MD引張強度、CD引張強度、及び剥離強度)、及び保液性に優れていた。
各実施例に対し、合成繊維不織布領域を含まない比較例1及び2では、強度が不足していた。
また、シルク領域を含まない比較例4では、保液性及び柔軟性が不足していた。
また、実施例1に対し、捲縮したシルク繊維に代えて非捲縮シルク繊維を用いた比較例3では、各層を交絡させることができず、複合不織布を作製することができなかった。
【0118】
実施例1~6のうち、合成繊維が捲縮繊維を含む実施例1~3、並びに、合成繊維不織布領域がSMS不織布に由来する領域である実施例4及び5では、複合不織布の剥離強度により優れていた。
【0119】
2020年7月7日に出願された日本国特許出願2020-116943の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。