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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】過冷却解除装置、蓄熱装置及び動力装置
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20240213BHJP
   F01P 7/16 20060101ALI20240213BHJP
   C09K 5/06 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
F28D20/02 D
F01P7/16 502B
C09K5/06 D
C09K5/06 M
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022537986
(86)(22)【出願日】2021-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2021026888
(87)【国際公開番号】W WO2022019246
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2020124419
(32)【優先日】2020-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 隆一
(72)【発明者】
【氏名】菅野 恒
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-158306(JP,A)
【文献】特開2010-105570(JP,A)
【文献】特開2018-105601(JP,A)
【文献】実開平03-096335(JP,U)
【文献】国際公開第2020/189089(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/02
F01P 7/16
C09K 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させ
前記過冷却解除装置は、前記荷重を加える方向に直交する方向への前記第1部材及び前記第2部材の変位を規制するガイド部材をさらに備え、
前記ガイド部材は、シリンダ及びシャフトからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、
前記シリンダは、前記第1部材及び前記第2部材を収容し、
前記シャフトは、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに形成された貫通孔に挿入されている、過冷却解除装置。
【請求項2】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させ、
前記過冷却解除装置は、第3部材及び第4部材をさらに備え、
前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置し、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置し、
前記第3部材と前記第4部材との間に前記第1部材及び前記第2部材が位置し、
前記第3部材は、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有し、
前記第4部材は、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、過冷却解除装置。
【請求項3】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させ、
前記過冷却解除装置は、第3部材及び第4部材をさらに備え、
前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置し、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置し、
前記第3部材と前記第4部材との間に前記第1部材及び前記第2部材が位置し、
前記第3部材は、樹脂部材であり、
前記第4部材は、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、過冷却解除装置。
【請求項4】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させ、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記荷重を加えた状態で互いに接触する表面に、前記蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有さない、過冷却解除装置。
【請求項5】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させ、
前記過冷却解除装置は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に前記荷重を加えるピストンをさらに備える、過冷却解除装置。
【請求項6】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させ、
前記過冷却解除装置は、前記第1部材及び前記第2部材を収容するシリンダをさらに備える、過冷却解除装置。
【請求項7】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、板状の形状を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項8】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記荷重を加えた状態で互いに接触する表面として、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより接触面積が広がるように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、請求項に記載の過冷却解除装置。
【請求項9】
前記荷重を加える方向に直交する方向への前記第1部材及び前記第2部材の変位を規制するガイド部材をさらに備えた、請求項からのいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項10】
前記ガイド部材は、シリンダ及びシャフトからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、
前記シリンダは、前記第1部材及び前記第2部材を収容し、
前記シャフトは、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに形成された貫通孔に挿入されている、請求項に記載の過冷却解除装置。
【請求項11】
第3部材をさらに備え、
前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置し、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置し、
前記第3部材は、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、請求項1、4、5及び6のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項12】
第3部材をさらに備え、
前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置し、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置し、
前記第3部材は、樹脂部材である、請求項1、4、5及び6のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項13】
第4部材をさらに備え、
前記第3部材と前記第4部材との間に前記第1部材及び前記第2部材が位置し、
前記第4部材は、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する、請求項11又は12に記載の過冷却解除装置。
【請求項14】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記荷重を加えた状態で互いに接触する表面として、平坦面を有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項15】
前記金属の25℃における熱伝導率が225W/m・Kより小さい、請求項1から14のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項16】
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させることにより、前記第1部材と前記第2部材との間に過冷却状態の前記蓄熱材が侵入するように、前記第1部材と前記第2部材とを相対的に変位させる、請求項1から15のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項17】
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記荷重を加えた状態で互いに接触する表面に、前記蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有さない、請求項1、2、3、5及び6のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項18】
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に荷重を加えるピストンをさらに備えた、請求項2、3、4及び6のいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項19】
前記第1部材及び前記第2部材を収容するシリンダをさらに備えた、請求項からのいずれか1項に記載の過冷却解除装置。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の過冷却解除装置と、
水和塩、糖アルコール及び包接水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む蓄熱材と、
前記蓄熱材を収容する容器と、
を備えた、蓄熱装置。
【請求項21】
請求項20に記載された蓄熱装置と、
前記蓄熱装置から放出された熱を受け取る動力機関と、
を備えた、動力装置。
【請求項22】
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、
互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けて前記過冷却状態を維持し、かつ、前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させる荷重負荷部材と、
前記荷重を加える方向に直交する方向への前記第1部材及び前記第2部材の変位を規制するガイド部材と、
を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、かつ板状の形状を有し、
前記ガイド部材は、シリンダ及びシャフトからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、
前記シリンダは、前記第1部材及び前記第2部材を収容し、
前記シャフトは、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに形成された貫通孔に挿入されている、過冷却解除装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過冷却解除装置、蓄熱装置及び動力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄熱材が液相と固相との間で相転移することによって、蓄熱及び放熱を行う蓄熱装置が知られている。蓄熱装置は、過冷却された蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置を備えている。過冷却解除装置を備えた蓄熱装置は、例えば、ガソリンエンジン、電動機などの動力機関を備えた動力装置に利用される。
【0003】
特許文献1から3には、可撓性を有する部材の曲げ変形を利用して、蓄熱材の過冷却状態を解除する従来の過冷却解除装置が開示されている。詳細には、特許文献1の過冷却解除装置では、コイル状のトリガーばねを外部から押圧して曲げ変形させて生じさせた摺動摩擦力により、蓄熱材の過冷却状態が解除される。特許文献2及び3の過冷却解除装置では、可撓性を有する板状部材を外部から押圧して曲げ変形させる。この変形に伴って、蓄熱材の結晶が過冷却状態にある周囲の蓄熱材と接触し、蓄熱材の過冷却状態が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実願昭63-121489号(実開平2-42045号)のマイクロフィルム
【文献】実願平2-54363号(実開平3-96335号)のマイクロフィルム
【文献】特開2015-158306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の過冷却解除装置を用いて過冷却状態を解除するためには、可撓性を有する部材を曲げ変形させるために、外部から新たに荷重を加え、或いは外部からの荷重を増加させる操作が必要となる。これらの過冷却装置では、過冷却状態を解除するための部材は、過冷却状態において、意図しない力が外部から加わったときにも、曲げ変形が可能な状態にある。このため、使用環境によっては避けがたい振動、突発的な物体の衝突等により、意図しないタイミングで過冷却状態が解除されることがある。
【0006】
本開示は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適した新たな過冷却解除装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様にかかる過冷却解除装置は、
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させる。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適した新たな過冷却解除装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の実施形態1にかかる過冷却解除装置の概略断面図である。
図2図2は、図1に示した過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
図3図3は、図1に示した過冷却解除装置の分解図である。
図4図4は、本開示の実施形態2にかかる過冷却解除装置の概略断面図である。
図5図5は、図4に示した過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
図6A図6Aは、図4に示した過冷却解除装置が備える第3部材の変形例を示す斜視図である。
図6B図6Bは、第3部材の別の変形例を示す斜視図である。
図6C図6Cは、第3部材のさらに別の変形例を示す斜視図である。
図7図7は、本開示の実施形態3にかかる過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
図8図8は、本開示の実施形態4にかかる過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
図9図9は、本開示の実施形態5にかかる過冷却解除装置の概略断面図である。
図10図10は、図9に示した過冷却解除装置の一部を示す分解斜視図である。
図11図11は、本開示の過冷却解除装置を用いた蓄熱装置の概略断面図である。
図12図12は、図11に示した蓄熱装置のXII-XII線に沿った概略断面図である。
図13図13は、本開示の蓄熱装置を用いた動力装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本開示の基礎となった知見)
可撓性を有する部材の曲げ変形を必須とする上述の過冷却解除装置では、振動及び衝突に代表される外部応力や熱膨張により発生しうる内部応力によって突発的又は偶発的に部材の曲げ変形が生じることがある。このような変形は、意図しないタイミングで蓄熱材の過冷却状態を解除することがある。また、このような変形は、密閉が保たれているべき狭小空間を周囲と連通させ、場合によっては狭小空間に収容された蓄熱材の結晶を融解させて過冷却解除機能を損なうことがある。振動などの衝撃は、過冷却解除装置を車両などの動力装置に配置した場合に顕著に生じ得る。
【0011】
本発明者は、鋭意検討した結果、互いに接触することが可能であって、それぞれ金属を含む第1部材及び第2部材の少なくとも一方に、これらの部材を互いに接触させる荷重を加え続けた状態で、過冷却状態を維持し、かつ過冷却状態を解除すべきときには荷重を減少させる過冷却解除装置とすることにより、過冷却解除機能が安定して得られる過冷却解除装置を実現できることを見出した。
【0012】
本開示の第1態様にかかる過冷却解除装置は、
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けた状態で、前記過冷却状態が維持され、
前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させる。
【0013】
第1態様によれば、例えば、次の方法によって蓄熱材の過冷却状態を解除できる。まず、第1部材及び第2部材に外部から荷重が加わっていない状態で過冷却解除装置を過冷却状態の蓄熱材に接触させる。過冷却解除装置を蓄熱材に接触させると、その刺激によって蓄熱材の結晶化が進行する。これにより、蓄熱材の結晶が第1部材と第2部材との間に配置される。次に、第1部材及び第2部材の少なくとも一方に荷重を加え、第1部材と第2部材とを互いに密着させる。この状態で蓄熱材を加熱すると、過冷却解除装置の周囲に存在する蓄熱材が融解する。一方、第1部材と第2部材との間に存在する微量の蓄熱材は、結晶状態を維持する。次に、蓄熱材を冷却すると、過冷却解除装置の周囲に存在する蓄熱材は、過冷却状態に変化する。次に、上記の荷重を減少させると、過冷却状態の蓄熱材が第1部材及び第2部材の間に侵入し、蓄熱材の結晶と接触する。これにより、蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材が固化する。このように、過冷却解除装置は、第1部材及び第2部材の少なくとも一方に、これらの部材を互いに接触させる荷重を加え続けた状態で、過冷却状態を維持し、かつ過冷却状態を解除すべきときには荷重を減少させる。このような過冷却解除装置は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0014】
本開示の第2態様において、例えば、第1態様にかかる過冷却解除装置では、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、板状の形状を有していてもよい。第2態様によれば、過冷却解除装置は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0015】
本開示の第3態様において、例えば、第2態様にかかる過冷却解除装置では、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記荷重を加えた状態で互いに接触する表面として、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより接触面積が広がるように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。第3態様によれば、過冷却解除装置は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0016】
本開示の第4態様において、例えば、第1から第3態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、前記荷重を加える方向に直交する方向への前記第1部材及び前記第2部材の変位を規制するガイド部材をさらに備えていてもよい。第4態様によれば、過冷却解除装置は、繰り返して使用しても過冷却解除機能を維持しやすい。
【0017】
本開示の第5態様において、例えば、第4態様にかかる過冷却解除装置では、前記ガイド部材は、シリンダ及びシャフトからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよく、前記シリンダは、前記第1部材及び前記第2部材を収容してもよく、前記シャフトは、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに形成された貫通孔に挿入されていてもよい。第5態様によれば、過冷却解除装置は、繰り返して使用しても過冷却解除機能を維持しやすい。
【0018】
本開示の第6態様において、例えば、第1から第5態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、第3部材をさらに備えていてもよく、前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置していてもよく、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置していてもよく、前記第3部材は、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。第6態様によれば、蓄熱材を加熱したときに、第1部材と第2部材との間に存在する微量の蓄熱材が結晶状態を維持しやすい。蓄熱材の結晶が第1部材と第2部材との間に確実に残るため、過冷却解除装置は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0019】
本開示の第7態様において、例えば、第1から第6態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、第3部材をさらに備えていてもよく、前記第1部材と前記第3部材との間に前記第2部材が位置していてもよく、又は、前記第2部材と前記第3部材との間に前記第1部材が位置していてもよく、前記第3部材は、樹脂部材であってもよい。第7態様によれば、第3部材は、例えば、第1部材又は第2部材と接触した状態で圧縮されることによって弾性変形しやすい。弾性変形した第3部材は、第1部材又は第2部材に対して、荷重を均一に加えることができる。これにより、第2部材と第1部材とを互いに密着させやすい。そのため、蓄熱材を加熱したときに、第1部材と第2部材との間に存在する微量の蓄熱材が結晶状態を維持しやすい。蓄熱材の結晶が第1部材と第2部材との間に確実に残るため、過冷却解除装置は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0020】
本開示の第8態様において、例えば、第6又は第7態様にかかる過冷却解除装置は、第4部材をさらに備えていてもよく、前記第3部材と前記第4部材との間に前記第1部材及び前記第2部材が位置していてもよく、前記第4部材は、平坦面、及び、前記荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよい。第8態様によれば、蓄熱材を加熱したときに、第1部材と第2部材との間に存在する微量の蓄熱材が結晶状態をより維持しやすい。そのため、過冷却解除装置は、より高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0021】
本開示の第9態様において、例えば、第1から第8態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置では、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記荷重を加えた状態で互いに接触する表面として、平坦面を有していてもよい。第9態様によれば、過冷却解除装置は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0022】
本開示の第10態様において、例えば、第1から第9態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置では、前記金属の25℃における熱伝導率が225W/m・Kより小さくてもよい。第10態様によれば、過冷却解除装置の周囲に存在する蓄熱材が加熱されたときに、第1部材と第2部材との間に存在する微量の蓄熱材が融解しにくい。そのため、過冷却解除装置は、高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる傾向がある。
【0023】
本開示の第11態様において、例えば、第1から第10態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置では、前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させることにより、前記第1部材と前記第2部材との間に過冷却状態の前記蓄熱材が侵入するように、前記第1部材と前記第2部材とを相対的に変位させてもよい。第11態様によれば、冷却解除装置は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0024】
本開示の第12態様において、例えば、第1から第11態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置では、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、前記荷重を加えた状態で互いに接触する表面に、前記蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有さなくてもよい。第12態様によれば、第1部材及び第2部材を容易に準備できる。
【0025】
本開示の第13態様において、例えば、第1から第12態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に荷重を加えるピストンをさらに備えていてもよい。第13態様によれば、ピストンによって、過冷却解除装置の動作の再現性が向上する。
【0026】
本開示の第14態様において、例えば、第1から第13態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置は、前記第1部材及び前記第2部材を収容するシリンダをさらに備えていてもよい。第14態様によれば、過冷却解除装置の動作の再現性が向上する。
【0027】
本開示の第15態様にかかる蓄熱装置は、
第1から第14態様のいずれか1つにかかる過冷却解除装置と、
水和塩、糖アルコール及び包接水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む蓄熱材と、
前記蓄熱材を収容する容器と、
を備える。
【0028】
第15態様によれば、蓄熱装置において、過冷却解除装置は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0029】
本開示の第16態様にかかる動力装置は、
第15態様にかかる蓄熱装置と、
前記蓄熱装置から放出された熱を受け取る動力機関と、
を備える。
【0030】
第16態様によれば、動力機関は、暖機運転を行うときの燃料の消費又は電力の消費を抑制することができる。
【0031】
本開示の第17態様にかかる過冷却解除装置は、
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置であって、
前記過冷却解除装置は、
互いに接触することが可能な第1部材及び第2部材と、
前記第1部材及び前記第2部材の少なくとも一方に、前記第1部材の表面の少なくとも一部と前記第2部材の表面の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けて前記過冷却状態を維持し、かつ、前記過冷却状態を解除すべきときに、前記荷重を減少させる荷重負荷部材と、
を備え、
前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれは、金属を含み、かつ板状の形状を有する。
【0032】
第17態様によれば、過冷却解除装置は、蓄熱材の過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0033】
本開示の第18態様において、例えば、第17態様にかかる過冷却解除装置は、前記荷重を加える方向に直交する方向への前記第1部材及び前記第2部材の変位を規制するガイド部材をさらに備えていてもよい。第18態様によれば、過冷却解除装置は、繰り返して使用しても過冷却解除機能を維持しやすい。
【0034】
本開示の第19態様において、例えば、第18態様にかかる過冷却解除装置では、前記ガイド部材は、シリンダ及びシャフトからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよく、前記シリンダは、前記第1部材及び前記第2部材を収容してもよく、前記シャフトは、前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに形成された貫通孔に挿入されていてもよい。第19態様によれば、過冷却解除装置は、繰り返して使用しても過冷却解除機能を維持しやすい。
【0035】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施形態は例示に過ぎず、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0036】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の過冷却解除装置100の概略断面図である。図1に示すように、過冷却解除装置100は、互いに接触することが可能な第1部材10及び第2部材20を備えている。本実施形態において、方向Xは、第2部材20から第1部材10に向かう方向であり、第1部材10と第2部材20とを接触させる荷重を加える方向の一例である。方向Yは、方向Xに直交する方向である。
【0037】
過冷却解除装置100では、第1部材10及び第2部材20の間に、蓄熱材の結晶を収容することができる。第1部材10と第2部材20との間に蓄熱材の結晶を保持しつつ第1部材10と第2部材20とを密着させると、第1部材10と第2部材20との間への液体の蓄熱材の侵入が制限される。そのため、蓄熱材に熱を蓄えるための蓄熱工程を経ても、第1部材10と第2部材20との間に蓄熱材の結晶が残りやすい。蓄熱工程を経て、蓄熱材は、液相かつ過冷却状態を保つことによって熱を蓄える。第1部材10と第2部材20との間への液体の蓄熱材の侵入を制限することによって、蓄熱材が過冷却状態に維持される。蓄熱材が過冷却された状態で第2部材20を第1部材10の表面から離間させると、過冷却状態の蓄熱材が第1部材10及び第2部材20の間に残っている蓄熱材の結晶と接触する。これにより、蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材が固化する。なお、本明細書において、「第1部材10と第2部材20とを密着させる」は、第1部材10と第2部材20との間への液体の蓄熱材の侵入が制限されるように、第1部材10と第2部材20とを接触させることを意味する。
【0038】
図2は、過冷却解除装置100の一部を示す分解斜視図である。図1及び2に示すように、第1部材10の形状は、例えば、板状である。第1部材10は、例えば、平面視で円の形状を有する。第1部材10は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。第1部材10の形状は、平板状であってもよく、波板状であってもよい。波板状の第1部材10は、例えば、弾性変形可能である。「波板状」については、後述する第3部材で詳細に説明する。第1部材10は、JIS B1251:2018で規定されているばね座金の形状を有していてもよく、皿ばね座金の形状を有していてもよい。
【0039】
第1部材10は、第2部材20に対向し、第2部材20と接触することが可能な表面11を有する。表面11は、例えば、第1部材10の主面であり、第1部材10の最も広い面積を有する面である。表面11は、例えば、平坦面、及び、荷重を加えることにより第2部材20との接触面積が広がるように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。一例として、平板状の第1部材10の表面11は、実質的に平坦面からなる。波板状の第1部材10の表面11は、実質的に、荷重を加えることにより第2部材20との接触面積が広がるように弾性変形する非平坦面からなる。非平坦面は、荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形してもよい。非平坦面は、例えば、起伏を有する。非平坦面は、起伏に代えて又は起伏とともに、段差を有していてもよい。
【0040】
表面11は、第2部材20と面接触することが可能であってもよい。第2部材20と面接触可能な表面11は、第1部材10と第2部材20との間への液体の蓄熱材の侵入を制限することに適している。平坦面を有する表面11は、第2部材20と面接触することに適している。ただし、表面11が第2部材20に沿った形状を有していれば、表面11が平坦面を有していなくても、表面11は、第2部材20と面接触することが可能である。
【0041】
第1部材10は、例えば、表面11に、蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有していない。詳細には、第1部材10は、例えば、表面11に、目視によって確認できる凹部を有していない。一例として、第1部材10の表面11は、その全域にわたって平坦である。本実施形態では、第1部材10に凹部を形成する必要がないため、第1部材10を容易に準備できる。
【0042】
第1部材10が第2部材20に接触したとき、表面11の面積に対する、表面11と第2部材20との接触面積の比率は、特に限定されない。表面11は、その全体が第2部材20と接触できるように構成されていてもよい。
【0043】
第1部材10は、貫通孔12を有していてもよい。貫通孔12は、例えば、第1部材10の厚さ方向又は方向Xに延びている。貫通孔12は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔12は、例えば、第1部材10の表面11の重心付近に位置する。第1部材10は、貫通孔12によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔12の直径は、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0044】
第1部材10は、金属を含む。詳細には、第1部材10の表面11が金属を含む材料で構成されている。第1部材10は、本体部と、金属を含む材料で構成され、本体部を被覆する被覆層とを有していてもよい。第1部材10の本体部は、金属を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第1部材10は、金属を主成分として含んでいてもよい。「主成分」とは、第1部材10に重量比で最も多く含まれた成分を意味する。第1部材10は、例えば、実質的に金属からなる。「実質的に~からなる」は、言及された材料の本質的特徴を変更する他の成分を排除することを意味する。ただし、第1部材10は、金属の他に不純物を含んでいてもよい。
【0045】
第1部材10に含まれる金属の25℃における熱伝導率は、特に限定されず、例えば300W/m・K以下であってもよく、225W/m・Kより小さくてもよく、100W/m・K以下であってもよく、50W/m・K以下であってもよく、20W/m・K以下であってもよい。金属の熱伝導率の下限値は、特に限定されず、例えば10W/m・Kである。
【0046】
第1部材10に含まれる金属としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタンなどが挙げられる。第1部材10に含まれる金属は、合金であってもよい。第1部材10に含まれる合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼、黄銅などが挙げられる。ステンレス鋼の具体例は、SUS304である。
【0047】
第1部材10は、金属酸化物を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。特に、第1部材10が本体部及び被覆層を有する場合、被覆層は、金属酸化物を含んでいなくてもよい。第1部材10全体又は被覆層における金属酸化物の含有率は、特に限定されず、例えば10wt%以下である。
【0048】
第1部材10の厚さは、特に限定されず、例えば0.01mm以上であり、0.05mm以上であってもよく、0.1mm以上であってもよく、0.3mm以上であってもよく、0.5mm以上であってもよい。第1部材10の厚さの上限値は、特に限定されず、例えば10mmである。本明細書において、「厚さ」は、平均厚さを意味する。平均厚さは、例えば、部材における任意の複数の点(少なくとも5点以上)で測定された厚さの平均値である。
【0049】
第1部材10の具体例は、市販のリング状平板である。第1部材10は、金属製ウェーブワッシャーであってもよい。
【0050】
図1及び図2に示すように、第2部材20の形状は、例えば、板状である。第2部材20は、例えば、平面視で円の形状を有する。第2部材20は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。第2部材20の形状は、平板状であってもよく、波板状であってもよい。波板状の第2部材20は、例えば、弾性変形可能である。「波板状」については、後述する第3部材で詳細に説明する。第2部材20は、JIS B1251:2018で規定されているばね座金の形状を有していてもよく、皿ばね座金の形状を有していてもよい。一例として、第1部材10及び第2部材20のそれぞれが板状の形状を有していてもよい。
【0051】
第2部材20は、第1部材10に対向し、第1部材10と接触することが可能な表面21を有する。表面21及び表面11は、例えば、第2部材20及び第1部材10の少なくとも一方に荷重を加えた状態で互いに接触する。表面21は、例えば、第2部材20の主面であり、第2部材20の最も広い面積を有する面である。表面21は、例えば、平坦面、及び、荷重を加えることにより第1部材10との接触面積が広がるように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。言い換えると、第1部材10及び第2部材20のそれぞれは、外部から荷重を加えた状態で互いに接触する表面として、平坦面、及び、荷重を加えることにより接触面積が広がるように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有していてもよく、平坦面を有していてもよい。一例として、平板状の第2部材20の表面21は、実質的に平坦面からなる。波板状の第2部材20の表面21は、実質的に、荷重を加えることにより第1部材10との接触面積が広がるように弾性変形する非平坦面からなる。
【0052】
表面21は、第1部材10の表面11と面接触することが可能であってもよい。第1部材10と面接触可能な表面21は、第1部材10と第2部材20との間への液体の蓄熱材の侵入を制限することに適している。平坦面を有する表面21は、第1部材10と面接触することに適している。ただし、表面21が第1部材10に沿った形状を有していれば、表面21が平坦面を有していなくても、表面21は、第1部材10と面接触することが可能である。
【0053】
第2部材20は、例えば、表面21に、蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有していない。言い換えると、第1部材10及び第2部材20のそれぞれは、例えば、外部から荷重を加えた状態で互いに接触する表面に、蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有さない。詳細には、第2部材20は、例えば、表面21に、目視によって確認できる凹部を有していない。一例として、第2部材20の表面21は、その全域にわたって平坦である。本実施形態では、第2部材20に凹部を形成する必要がないため、第2部材20を容易に準備できる。
【0054】
第2部材20が第1部材10に接触したとき、表面21の面積に対する、表面21と第1部材10との接触面積の比率は、特に限定されない。表面21は、その全体が第1部材10の表面11と接触できるように構成されていてもよい。
【0055】
第2部材20は、貫通孔22を有していてもよい。貫通孔22は、例えば、第2部材20の厚さ方向又は方向Xに延びている。貫通孔22は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔22は、例えば、第2部材20の表面21の重心付近に位置する。第2部材20は、貫通孔22によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔22は、例えば、第1部材10の貫通孔12と重なっている。貫通孔22の直径は、第1部材10の貫通孔12の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0056】
第2部材20は、金属を含む。詳細には、第2部材20の表面21が金属を含む材料で構成されている。第2部材20は、本体部と、金属を含む材料で構成され、本体部を被覆する被覆層とを有していてもよい。第2部材20の本体部は、金属を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。第2部材20は、金属を主成分として含んでいてもよい。第2部材20は、例えば、実質的に金属からなる。ただし、第2部材20は、金属の他に不純物を含んでいてもよい。
【0057】
第2部材20に含まれる金属の25℃における熱伝導率は、特に限定されず、例えば300W/m・K以下であってもよく、225W/m・Kより小さくてもよく、100W/m・K以下であってもよく、50W/m・K以下であってもよく、20W/m・K以下であってもよい。金属の熱伝導率の下限値は、特に限定されず、例えば10W/m・Kである。特に、第1部材10に含まれる金属及び第2部材20に含まれる金属のそれぞれについて、25℃における熱伝導率が225W/m・Kより小さくてもよい。
【0058】
第2部材20に含まれる金属としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタンなどが挙げられる。第2部材20に含まれる金属は、合金であってもよい。第2部材20に含まれる合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼、黄銅などが挙げられる。第2部材20に含まれる金属は、第1部材10に含まれる金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。一例として、第1部材10及び第2部材20からなる群より選ばれる少なくとも1つがステンレス鋼を含んでいてもよい。
【0059】
第2部材20は、金属酸化物を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。特に、第2部材20が本体部及び被覆層を有する場合、被覆層は、金属酸化物を含んでいなくてもよい。第2部材20全体又は被覆層における金属酸化物の含有率は、特に限定されず、例えば10wt%以下である。
【0060】
第2部材20の厚さは、特に限定されず、例えば0.01mm以上であり、0.05mm以上であってもよく、0.1mm以上であってもよく、0.3mm以上であってもよく、0.5mm以上であってもよい。第2部材20の厚さの上限値は、特に限定されず、例えば10mmである。
【0061】
第2部材20の具体例は、市販のリング状平板である。第2部材20は、金属製ウェーブワッシャーであってもよい。第2部材20の材料及び形状は、第1部材10と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0062】
図1に示すように、過冷却解除装置100は、荷重負荷部材40及びシリンダ50をさらに備えていてもよい。荷重負荷部材40は、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に、第1部材10の表面11の少なくとも一部と第2部材20の表面21の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けることによって、蓄熱材の過冷却状態を維持することができる。さらに、荷重負荷部材40は、蓄熱材の過冷却状態を解除すべきときに、上記の荷重を減少させることができる。
【0063】
本開示は、その別の側面から、
蓄熱材の過冷却状態を解除する過冷却解除装置100であって、
過冷却解除装置100は、
互いに接触することが可能な第1部材10及び第2部材20と、
第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に、第1部材10の表面11の少なくとも一部と第2部材20の表面21の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けて過冷却状態を維持し、かつ、過冷却状態を解除すべきときに、荷重を減少させる荷重負荷部材と、
を備え、
第1部材10及び第2部材20のそれぞれは、金属を含み、かつ板状の形状を有する、過冷却解除装置を提供する。
【0064】
図3は、図1の過冷却解除装置100の分解図である。図3に示すように、荷重負荷部材40は、例えば、第1シャフト41、モータ42、ギヤ43及び第2シャフト44を有する。第1シャフト41は、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に荷重を加えるピストンとして機能する。詳細には、第1シャフト41の一端は、ギヤ43を介してモータ42に接続されている。第1シャフト41の他端は、第2シャフト44に接続されている。第1シャフト41の端面45が第2シャフト44の端面と接している。端面45は、第1部材10又は第2部材20に対向する第1シャフト41の表面である。
【0065】
モータ42は、第1シャフト41を変位させるアクチュエータとして機能する。後述のとおり、モータ42によれば、第1シャフト41を第1部材10又は第2部材20に対して接近させる方向、及び、第1部材10又は第2部材20から離間させる方向に変位させることができる。詳細には、モータ42は、第1シャフト41にトルクを印加し、第1シャフト41を回転させる。モータ42は、ねじ機構を利用して第1シャフト41を変位させることができる。
【0066】
ギヤ43は、第1シャフト41に印加されるべきトルクを調節する。第1シャフト41に印加されるべきトルクは、特に限定されず、0.01N・m以上3.0N・m以下であってもよく、0.2N・m以上3.0N・m以下であってもよい。第2シャフト44及び第1シャフト41のそれぞれは、例えば、方向Xに延びている。第2シャフト44の端面の直径は、第1シャフト41の端面45の直径よりも小さい。そのため、第1シャフト41の端面45の一部が荷重負荷部材40の外部に露出している。
【0067】
図1及び図2に示すように、第2シャフト44は、第1部材10の貫通孔12及び第2部材20の貫通孔22のそれぞれに挿入されている。これにより、第1部材10及び第2部材20が荷重負荷部材40によって固定される。第1シャフト41の端面45は、例えば、第2部材20の表面21に対向する第2部材20の表面23を覆う。第1シャフト41の端面45は、第2部材20の表面23全体を覆ってもよく、第2部材20の表面23を部分的に覆ってもよい。第1シャフト41の端面45は、第2部材20の表面23に接することができる。
【0068】
図1及び図3に示すように、第1シャフト41の側面には、例えば、雄ねじとして機能するねじ部46が形成されている。ねじ部46は、後述するシリンダ50のねじ部53と螺合することができる。このように、ねじ部46及び53がねじ機構を構成する。このねじ機構を利用して、第1シャフト41は、方向Xに前進及び後退することができる。詳細には、モータ42によって、第1シャフト41を時計回り方向に回転させると、ねじ部46がねじ部53にねじ込まれ、第1シャフト41が方向Xに移動する。第1シャフト41の端面45が第2部材20の表面23に接しているときに、第1シャフト41が方向Xに移動することによって、第2部材20に対して方向Xの荷重を加えることができる。第2部材20に荷重を加えることによって、第1部材10と第2部材20とが密着する。一方、モータ42によって、第1シャフト41を反時計回り方向に回転させると、ねじ部46が緩み、第1シャフト41が方向Xの反対方向に移動する。これにより、第2部材20に加わっていた荷重が減少し、荷重が取り除かれる。
【0069】
図1では、第2部材20は、第1部材10と第1シャフト41との間に配置されている。ただし、第2部材20の位置と第1部材10の位置とは、互いに入れ替わっていてもよい。すなわち、第1部材10が第2部材20と第1シャフト41との間に配置されていてもよい。このとき、荷重負荷部材40は、第1部材10から第2部材20に向かう方向に、第1部材10に荷重を加えることができる。このように、過冷却解除装置100は、荷重負荷部材40によって、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に荷重を加えることができる。詳細には、荷重負荷部材40によれば、第1部材10の表面11の少なくとも一部と第2部材20の表面21の少なくとも一部とが接触した状態で、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に荷重を加えることができる。これにより、第1部材10と第2部材20とを互いに密着させることができる。荷重負荷部材40と、第1部材10又は第2部材20との間には、後述する第3部材などの他の部材が配置されていることがある。この場合、荷重負荷部材40は、他の部材を介して、第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に荷重を加えることができる。
【0070】
第1シャフト41が金属を含み、かつ、その端面45が第1部材10の表面11に対向し、表面11と接触することができれば、第1シャフト41が第2部材として機能することもできる。第1シャフト41が第2部材として機能する場合、過冷却解除装置100は、第2部材20を有していなくてもよい。
【0071】
図1及び図3は、シリンダ50の断面を示している。シリンダ50は、第1部材10及び第2部材20を収容する。図3に示すように、シリンダ50は、本体部56を有する。本体部56は、例えば、筒状であり、方向Xに延びている。本体部56は、第1部材10、第2部材20及び荷重負荷部材40を収容する。詳細には、本体部56は、荷重負荷部材40の第1シャフト41及び第2シャフト44を収容する。
【0072】
本体部56は、支持部51、貫通孔52、ねじ部53及び開口部55を有する。支持部51は、例えば、本体部56の内部において、方向Xに直交する平面である。支持部51は、第1部材10及び第2部材20を支持する。詳細には、第1部材10及び第2部材20は、支持部51と第1シャフト41との間に挟み込まれている。支持部51は、例えば、第1部材10と接している。
【0073】
貫通孔52は、方向Xにおいて、支持部51から本体部56の一端まで延びている。貫通孔52は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔52は、例えば、第1部材10の貫通孔12と重なっている。貫通孔52の直径は、第1部材10の貫通孔12の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。貫通孔52には、荷重負荷部材40の第2シャフト44が挿入されている。
【0074】
開口部55は、本体部56の側面に形成されている。開口部55は、方向Xに延びている。開口部55によって、支持部51がシリンダ50の外部に露出している。開口部55によって、本体部56に収容された第1部材10及び第2部材20が過冷却解除装置100の外部に露出している。開口部55の数は、特に限定されず、例えば、1以上10以下である。図2に示すように、本実施形態の過冷却解除装置100において、シリンダ50は、2つの開口部55a及び55bを有している。開口部55aは、開口部55bに対向している。なお、図2では、説明のため、シリンダ50の本体部56の一部が省略されている。
【0075】
図1及び図3に示すように、ねじ部53は、本体部56の内側に形成されており、雌ねじとして機能する。ねじ部53は、例えば、本体部56の他端に接している。上述のとおり、ねじ部53は、第1シャフト41のねじ部46と螺合することができる。図1において、ねじ部53には、第1シャフト41のねじ部46がねじ込まれている。
【0076】
シリンダ50は、固定部54をさらに有していてもよい。固定部54によって、過冷却解除装置100を蓄熱装置に固定することができる。固定部54は、例えば、ねじ、ボルトなどの締結具をねじ込むことができる開口を有している。
【0077】
過冷却解除装置100は、方向Yへの第1部材10及び第2部材20の変位を規制するガイド部材を備えている。過冷却解除装置100において、ガイド部材は、例えば、上述のシリンダ50、及び荷重負荷部材40の第2シャフト44からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。例えば、シリンダ50は、第1部材10及び第2部材20を収容することによって、方向Yへの第1部材10及び第2部材20の変位を規制することができる。第2シャフト44は、第1部材10及び第2部材20のそれぞれに形成された貫通孔12及び22に挿入されることによって、方向Yへの第1部材10及び第2部材20の変位を規制することができる。
【0078】
図1に示すように、過冷却解除装置100は、連結部57をさらに備えていてもよい。連結部57は、例えば、荷重負荷部材40においてモータ42を第1シャフト41に連結する。モータ42は、連結部57を通じて、第1シャフト41を回転駆動させてもよい。
【0079】
第1シャフト41、第2シャフト44及びシリンダ50の材料としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。金属は、合金であってもよい。合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼などが挙げられる。樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
【0080】
次に、過冷却解除装置100の使用方法の一例を説明する。
【0081】
まず、以下の方法によって、過冷却解除装置100の準備を行う。第1部材10及び第2部材20に外部から荷重が加わっていない状態で、過冷却解除装置100の先端部分を過冷却状態の蓄熱材に接触させる。詳細には、過冷却状態の蓄熱材がシリンダ50の開口部55を通じてシリンダ50の本体部56の内部に侵入するように、過冷却解除装置100を蓄熱材に浸漬させる。過冷却解除装置100を蓄熱材に接触させると、その刺激によって蓄熱材の結晶化が進行する。蓄熱材の結晶化を促進させるために、蓄熱材と接触する過冷却解除装置100の部分に、蓄熱材の結晶をあらかじめ付着させていてもよい。第1部材10と第2部材20とが密着していないため、蓄熱材の結晶化が進行することによって、蓄熱材の結晶が第1部材10及び第2部材20の間に配置される。
【0082】
次に、モータ42を作動させ、第1シャフト41を方向Xに移動させる。これにより、第1部材10の表面11の少なくとも一部と第2部材20の表面21の少なくとも一部とが接触した状態で、第2部材20に対して方向Xに荷重が加わる。この操作によって、第1部材10及び第2部材20のそれぞれには圧縮荷重が加わる。第2部材20に加えるべき荷重Lは、蓄熱材の過冷却状態を維持できる限り、特に限定されず、例えば0.5MPa以上であり、1MPa以上であってもよい。この荷重Lの上限値は、特に限定されず、例えば11MPaであり、10.6MPaであってもよい。
【0083】
第2部材20に対して方向Xに荷重が加わることによって、第2部材20と第1部材10とが密着する。このとき、表面21は、表面11と面接触していてもよい。第1部材10及び第2部材20の間には、微量の蓄熱材の結晶が収容される。過冷却解除装置100では、第1部材10及び第2部材20のそれぞれが金属を含むことによって、第1部材10及び第2部材20の間に蓄熱材の結晶が残りやすい。以上の操作によって、過冷却解除装置100の準備が終了する。
【0084】
次に、上記の操作を行った過冷却解除装置100を用いて、蓄熱材の過冷却状態を解除する方法を説明する。まず、蓄熱材を加熱する。蓄熱材の温度が蓄熱材の融点を上回ると、蓄熱材が融解する。このとき、過冷却解除装置100は、第2部材20に対して、表面11の少なくとも一部と表面21の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けている。言い換えると、第2部材20と第1部材10とが密着した状態が維持されている。そのため、第1部材10及び第2部材20の間に保持された蓄熱材と過冷却解除装置100の周囲に存在する蓄熱材との接触が制限される。これにより、第1部材10及び第2部材20の間に保持された蓄熱材が融解しにくい。すなわち、蓄熱材を加熱しても、第1部材10及び第2部材20の間に保持された蓄熱材は、結晶状態を維持しやすい。
【0085】
次に、蓄熱材を冷却する。これにより、蓄熱材の温度が蓄熱材の融点を下回り、蓄熱材が過冷却される。このとき、過冷却解除装置100は、第2部材20に対して、表面11の少なくとも一部と表面21の少なくとも一部とを接触させる荷重を加え続けている。言い換えると、第2部材20と第1部材10とが密着した状態が維持されている。そのため、第1部材10及び第2部材20の間に保持された蓄熱材と過冷却解除装置100の周囲に存在する蓄熱材との接触が制限されている。これにより、蓄熱材の過冷却状態が維持される。
【0086】
次に、所望のタイミングでモータ42を作動させ、第1シャフト41を方向Xの反対方向に移動させる。これにより、第2部材20に加えられた荷重が減少する。このとき、第2部材20における荷重の減少量Dは、蓄熱材の過冷却状態を解除できる限り、特に限定されず、例えば0.5MPa以上であり、1MPa以上であってもよい。荷重の減少量Dは、過冷却解除装置100の準備段階で第2部材20に加えられた荷重Lと同じであってもよい。第2部材20における荷重の減少率Pは、特に限定されず、例えば10%以上であり、40%以上であってもよく、60%以上であってもよく、100%であってもよい。荷重の減少率Pは、過冷却解除装置100の準備段階で第2部材20に加えられた荷重L(MPa)に対する、荷重の減少量D(MPa)の比率を意味する。
【0087】
第2部材20に加えられた荷重が減少すると、第1部材10に対して第2部材20が変位する。言い換えると、第2部材20の表面21が第1部材10の表面11からわずかに離間する。このとき、第2部材20の表面21と第1部材10の表面11との間に、過冷却状態の蓄熱材が侵入する。過冷却状態の蓄熱材は、第1部材10及び第2部材20の間に保持された蓄熱材の結晶と接触する。すなわち、第1部材10及び第2部材20の間に保持された蓄熱材と過冷却解除装置100の周囲に存在する蓄熱材との接触が許容される。これにより、蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材が固化する。言い換えると、過冷却解除装置100では、蓄熱材の過冷却状態を解除すべきときに、外部からの荷重を減少させることにより、第1部材10と第2部材20との間に過冷却状態の蓄熱材が侵入するように、第1部材10と第2部材20とを相対的に変位させる。
【0088】
過冷却解除装置100では、互いに接触することが可能であって、それぞれ金属を含む第1部材10及び第2部材20の少なくとも一方に、これらの部材を互いに接触させる荷重を加え続けた状態で、過冷却状態を維持し、かつ荷重を減少させることによって過冷却状態を解除することができる。このような過冷却解除装置100では、振動などの外部応力を受けた場合であっても、第1部材10及び第2部材20を互いに接触させる荷重を加えている状態であれば、第1部材10及び第2部材20の間に保持された蓄熱材の結晶は、過冷却解除装置100の周囲に存在する蓄熱材と接触しにくい。そのため、過冷却解除装置100では、突発的又は偶発的に蓄熱材の過冷却状態が解除されること、及び、蓄熱材の過冷却解除機能が損なわれることを十分に抑制することができる。すなわち、過冷却解除装置100は、過冷却状態を意図したタイミングで解除することに適している。
【0089】
さらに、本実施形態の過冷却解除装置100によれば、第1部材10及び第2部材20の変形動作をほとんど利用せずに蓄熱材の過冷却状態を解除できる。言い換えると、過冷却解除装置100は、可撓性を有する部材の曲げ変形を実質的に利用せずに蓄熱材の過冷却状態を解除できる。過冷却解除装置100を繰り返し使用しても、第1部材10及び第2部材20には、疲労が蓄積されにくい。そのため、第1部材10及び第2部材20が破損しにくい。さらに、第1部材10及び第2部材20が塑性変形することもほとんどない。このように、過冷却解除装置100は、長期的な使用に適している。
【0090】
本実施形態の過冷却解除装置100では、第1部材10、第2部材20及びシリンダ50のそれぞれが貫通孔12、22及び52を有している。そのため、過冷却状態の蓄熱材が第1部材10及び第2部材20の間に速やかに侵入することができる。本実施形態の過冷却解除装置100の構造は、蓄熱材の過冷却状態を解除することに適している。本実施形態の過冷却解除装置100によれば、蓄熱材が高い温度を経由して冷却された場合であっても、第1部材10及び第2部材20の間に蓄熱材の結晶が残りやすいため、蓄熱材の過冷却状態を高い確率で解除できる。このように、本実施形態の過冷却解除装置100は、高い信頼性で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0091】
(実施形態2)
図4は、本実施形態2にかかる過冷却解除装置110の概略断面図である。図5は、過冷却解除装置110の一部を示す分解斜視図である。図4及び5に示すように、過冷却解除装置110は、第3部材30をさらに備えている。以上を除き、過冷却解除装置110の構造は、実施形態1の過冷却解除装置100の構造と同じである。したがって、実施形態1の過冷却解除装置100と本実施形態の過冷却解除装置110とで共通する要素には同じ参照符号を付し、それらの説明を省略することがある。すなわち、以下の各実施形態に関する説明は、技術的に矛盾しない限り、相互に適用されうる。さらに、技術的に矛盾しない限り、各実施形態は、相互に組み合わされてもよい。
【0092】
過冷却解除装置110において、第1部材10と第3部材30との間に第2部材20が位置している、又は、第2部材20と第3部材30との間に第1部材10が位置している。図5では、第1部材10、第2部材20及び第3部材30がこの順番で並んでいる。詳細には、第3部材30は、第1シャフト41と第2部材20との間に配置されている。ただし、第3部材30は、第1部材10と支持部51との間に配置されていてもよい。上述のとおり、第2部材20の位置と第1部材10の位置とは、互いに入れ替わっていてもよい。この場合、第3部材30は、第1シャフト41と第1部材10との間に配置されていてもよく、第2部材20と支持部51との間に配置されていてもよい。
【0093】
第3部材30の形状は、特に限定されず、例えば板状である。以下では、一例として、第3部材30の形状が平板状である場合について説明する。第3部材30は、例えば、平面視で円の形状を有する。第3部材30は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。
【0094】
第3部材30は、例えば、第1部材10又は第2部材20に対向し、これらの部材10又は20と接触することが可能な表面31を有する。表面31は、例えば、第3部材30の主面であり、第3部材30の最も広い面積を有する面である。表面31は、例えば、平坦面、及び、荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。平板状の第3部材30において、表面31は、例えば、実質的に平坦面からなる。
【0095】
表面31は、第1部材10又は第2部材20と面接触することが可能であってもよい。第3部材30は、第1部材10及び第2部材20と同様に、表面31に、蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有していなくてもよい。
【0096】
第3部材30は、貫通孔32を有していてもよい。貫通孔32は、第3部材30の厚さ方向又は方向Xに延びている。貫通孔32は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔32は、例えば、第3部材30の表面31の重心付近に位置する。第3部材30は、貫通孔32によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔32は、例えば、第1部材10の貫通孔12及び第2部材20の貫通孔22の少なくとも一方と重なっている。貫通孔32の直径は、第1部材10の貫通孔12の直径、又は、第2部材20の貫通孔22の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0097】
第3部材30は、弾性変形可能であってもよく、弾性変形可能でなくてもよい。弾性変形可能な第3部材30は、例えば、第3部材30の厚さ方向に圧縮されることによって弾性変形することができる。第3部材30は、例えば、フックの法則に従う弾性を有する材料で作られた部材である。
【0098】
第3部材30の材料としては、例えば、樹脂が挙げられる。すなわち、第3部材30は、樹脂部材であってもよい。第3部材30に含まれる樹脂としては、シリコーン、ウレタン、エポキシ、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。第3部材30は、ポリカーボネート及びポリフェニレンサルファイドからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよい。第3部材30は、シリコーンゴムを含んでいてもよい。
【0099】
第3部材30は、金属を含んでいてもよい。第3部材30に含まれる金属としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタンなどが挙げられる。第3部材30に含まれる金属は、合金であってもよい。第3部材30に含まれる合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼、黄銅などが挙げられる。
【0100】
弾性変形可能な第3部材30は、例えば、第1部材10又は第2部材20と接触した状態で圧縮されることによって弾性変形する。例えば、過冷却解除装置110では、第1シャフト41を方向Xに移動させると、第3部材30は、第1シャフト41及び第2部材20に挟み込まれて、その厚さ方向に圧縮される。これにより、第3部材30が弾性変形する。弾性変形した第3部材30は、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重を均一に加えることができる。これにより、第2部材20の表面21を第1部材10の表面11に容易に密着させることができる。そのため、第1部材10と第2部材20との間に存在する微量の蓄熱材が結晶状態を維持しやすい。蓄熱材の結晶が第1部材10と第2部材20との間に確実に残るため、過冷却解除装置110は、より高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0101】
上述のとおり、弾性変形可能な第3部材30は、第1シャフト41及び第2部材20に挟み込まれて、その厚さ方向に圧縮される。この状態で第1シャフト41を方向Xに前進又は後退させることによって、第1部材10又は第2部材20に加えられた荷重を連続的に変化させることができる。すなわち、第1シャフト41及び第3部材30の組み合わせによって、第1部材10又は第2部材20に加えられた荷重を精密に制御することができる。そのため、過冷却解除装置110によれば、蓄熱材の過冷却状態の解除操作を精密に、かつ高い再現性で行うことができる。
【0102】
弾性変形可能な第3部材30によれば、比較的小さい荷重によって第2部材20の表面21を第1部材10の表面11に密着させることもできる。第1部材10又は第2部材20に加えるべき荷重が減少すれば、過冷却解除装置110を構成する部材の耐久性が向上する傾向がある。
【0103】
(実施形態2の変形例)
図6Aは、過冷却解除装置110が備える第3部材30の変形例を示す斜視図である。過冷却解除装置110が備える第3部材30の形状は、平板状に限定されず、図6Aに示すように、波板状であってもよい。波板状の第3部材30の表面31は、荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面を有する。表面31は、荷重を加えることにより第1部材10又は第2部材20との接触面積が広がるように弾性変形してもよい。
【0104】
図6Aに示すように、第3部材30は、複数の山部35及び複数の谷部36を有する。第3部材30における山部35の数及び谷部36の数のそれぞれは、特に限定されず、例えば、3以上10以下である。本実施形態では、第3部材30は、3つの山部35a,35b及び35cと、3つの谷部36a,36b及び36cとを有する。複数の山部35a,35b及び35cと、複数の谷部36a,36b及び36cとは、例えば、第3部材30の外周面37によって規定された仮想円の周方向に沿って等間隔で交互に並んでいる。複数の山部35a,35b及び35cの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。複数の谷部36a,36b及び36cの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0105】
波板状の第3部材30の材料としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。第3部材30の耐久性を向上させる観点から、波板状の第3部材30は、金属製であってもよい。波板状の第3部材30に含まれる金属としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタンなどが挙げられる。波板状の第3部材30に含まれる金属は、合金であってもよい。波板状の第3部材30に含まれる合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼、黄銅などが挙げられる。波板状の第3部材30は、シリコーン、ウレタン及びエポキシからなる群より選ばれる少なくとも1つを含んでいてもよく、シリコーンを含んでいてもよい。
【0106】
波板状の第3部材30が厚さ方向に圧縮されると、山部35及び谷部36の高さが低減するように、第3部材30が弾性変形する。弾性変形した第3部材30は、山部35又は谷部36によって、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重を均一に加えることができる。波板状の第3部材30において、山部35の数及び谷部36の数が多ければ多いほど、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重をより均一に加えることができる傾向がある。第1部材10又は第2部材20に対して荷重を均一に加えることによって、第2部材20を第1部材10に容易に密着させることができる。
【0107】
(実施形態2の別の変形例)
図6Bは、第3部材30の別の変形例を示す斜視図である。図6Bに示すように、第3部材30は、4つの山部35a,35b,35c及び35dと、4つの谷部36a,36b,36c及び36dとを有する。複数の山部35a,35b,35c及び35dと、複数の谷部36a,36b,36c及び36dとは、例えば、第3部材30の外周面37によって規定された仮想円の周方向に沿って等間隔で交互に並んでいる。複数の山部35a,35b,35c及び35dの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。複数の谷部36a,36b,36c及び36dの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0108】
(実施形態2のさらに別の変形例)
図6Cは、第3部材30のさらに別の変形例を示す斜視図である。図6Cに示すように、第3部材30は、5つの山部35a,35b,35c,35d及び35eと、5つの谷部36a,36b,36c,36d及び36eとを有する。複数の山部35a,35b,35c,35d及び35eと、複数の谷部36a,36b,36c,36d及び36eとは、例えば、第3部材30の外周面37によって規定された仮想円の周方向に沿って等間隔で交互に並んでいる。複数の山部35a,35b,35c,35d及び35eの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。複数の谷部36a,36b,36c,36d及び36eの高さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0109】
第3部材30の形状は、図5及び図6Aから6Cに示された平板状及び波板状に限定されない。第3部材30の形状は、例えば、JIS B1251:2018で規定されているばね座金の形状を有していてもよく、皿ばね座金の形状を有していてもよい。第3部材30の具体例としては、市販のリング状平板及びウェーブワッシャーが挙げられる。
【0110】
(実施形態3)
図7は、本実施形態3の過冷却解除装置120の一部を示す分解斜視図である。図7に示すように、過冷却解除装置120は、第1部材10、第2部材20及び第3部材30の他に、第4部材15をさらに備えている。以上を除き、過冷却解除装置120の構造は、実施形態2の過冷却解除装置110の構造と同じである。
【0111】
過冷却解除装置120において、第3部材30と第4部材15との間に第1部材10及び第2部材20が位置している。図7では、第4部材15、第1部材10、第2部材20及び第3部材30がこの順番で並んでいる。詳細には、第4部材15は、第1部材10と支持部51との間に配置されている。ただし、第4部材15の位置と第3部材30の位置とは、互いに入れ替わっていてもよい。
【0112】
第4部材15の形状は、特に限定されず、例えば板状である。第4部材15は、例えば、平面視で円の形状を有する。第4部材15は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。第4部材15の形状は、平板状であってもよく、波板状であってもよい。波板状の第4部材15は、例えば、弾性変形可能である。第4部材15は、JIS B1251:2018で規定されているばね座金の形状を有していてもよく、皿ばね座金の形状を有していてもよい。第4部材15の形状は、第3部材30と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0113】
第4部材15は、例えば、第1部材10又は第2部材20に対向し、これらの部材10又は20と接触することが可能な表面16を有する。表面16は、例えば、第4部材15の主面であり、第4部材15の最も広い面積を有する面である。表面16は、例えば、平坦面、及び、荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。表面16は、荷重を加えることにより第1部材10又は第2部材20との接触面積が広がるように弾性変形してもよい。
【0114】
表面16は、第1部材10又は第2部材20と面接触することが可能であってもよい。第4部材15は、第1部材10及び第2部材20と同様に、表面16に、蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有していなくてもよい。
【0115】
第4部材15は、貫通孔17を有していてもよい。貫通孔17は、第4部材15の厚さ方向又は方向Xに延びている。貫通孔17は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔17は、例えば、第4部材15の表面16の重心付近に位置する。第4部材15は、貫通孔17によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔17は、例えば、第1部材10の貫通孔12及び第2部材20の貫通孔22の少なくとも一方と重なっている。貫通孔17の直径は、第1部材10の貫通孔12の直径、又は、第2部材20の貫通孔22の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0116】
第4部材15の形状が平板状である場合、第4部材15は、弾性変形可能であってもよく、弾性変形可能でなくてもよい。弾性変形可能な第4部材15は、例えば、第4部材15の厚さ方向に圧縮されることによって弾性変形することができる。第4部材15は、例えば、フックの法則に従う弾性を有する材料で作られた部材である。
【0117】
第4部材15の材料としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。第4部材15に含まれる金属としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタンなどが挙げられる。第4部材15に含まれる金属は、合金であってもよい。第4部材15に含まれる合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼、黄銅などが挙げられる。第4部材15に含まれる樹脂としては、シリコーン、ウレタン、エポキシ、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。第4部材15の材料は、第3部材30と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0118】
第4部材15の具体例としては、市販のリング状平板及びウェーブワッシャーが挙げられる。
【0119】
弾性変形可能な第4部材15は、例えば、第1部材10又は第2部材20と接触した状態で圧縮されることによって弾性変形する。例えば、過冷却解除装置120では、第1シャフト41を方向Xに移動させると、第4部材15は、支持部51及び第1部材10に挟み込まれて、その厚さ方向に圧縮される。これにより、第4部材15が弾性変形する。弾性変形した第4部材15は、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重を均一に加えることができる。これにより、第2部材20の表面21を第1部材10の表面11に容易に密着させることができる。特に、第3部材30及び第4部材15のそれぞれが弾性変形可能である場合、第2部材20と第1部材10とをより容易に密着させることができる。これにより、蓄熱材の結晶が第1部材10と第2部材20との間に確実に残るため、過冷却解除装置120は、より高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる。
【0120】
上述のとおり、弾性変形可能な第4部材15は、支持部51及び第1部材10に挟み込まれて、その厚さ方向に圧縮される。この状態で第1シャフト41を方向Xに前進又は後退させることによって、第1部材10又は第2部材20に加えられた荷重を連続的に変化させることができる。すなわち、第1シャフト41及び第4部材15の組み合わせによって、第1部材10又は第2部材20に加えられた荷重を精密に制御することができる。そのため、過冷却解除装置120によれば、蓄熱材の過冷却状態の解除操作を精密に、かつ高い再現性で行うことができる。
【0121】
(実施形態4)
図8は、本実施形態4の過冷却解除装置130の一部を示す分解斜視図である。図8に示すように、過冷却解除装置130は、第1部材10、第2部材20、第3部材30及び第4部材15の他に、第5部材25をさらに備えている。以上を除き、過冷却解除装置130の構造は、実施形態3の過冷却解除装置120の構造と同じである。
【0122】
過冷却解除装置130において、第3部材30と第5部材25との間に、第1部材10、第2部材20及び第4部材15が位置している。図8では、第5部材25、第4部材15、第1部材10、第2部材20及び第3部材30がこの順番で並んでいる。詳細には、第5部材25は、第4部材15と支持部51との間に配置されている。
【0123】
第5部材25の形状は、特に限定されず、例えば板状である。第5部材25は、例えば、平面視で円の形状を有する。第5部材25は、平面視で矩形の形状を有していてもよい。第5部材25の形状は、平板状であってもよく、波板状であってもよい。波板状の第5部材25は、例えば、弾性変形可能である。第5部材25は、JIS B1251:2018で規定されているばね座金の形状を有していてもよく、皿ばね座金の形状を有していてもよい。第5部材25の形状は、第3部材30と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0124】
第5部材25は、例えば、第4部材15に対向し、第4部材15と接触することが可能な表面26を有する。表面26は、例えば、第5部材25の主面であり、第5部材25の最も広い面積を有する面である。表面26は、例えば、平坦面、及び、荷重を加えることにより平坦性が増すように弾性変形する非平坦面からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する。表面26は、荷重を加えることにより第4部材15との接触面積が広がるように弾性変形してもよい。
【0125】
表面26は、第4部材15と面接触することが可能であってもよい。第5部材25は、第1部材10及び第2部材20と同様に、表面26に、蓄熱材の結晶を収容するために形成された凹部を有していなくてもよい。
【0126】
第5部材25は、貫通孔27を有していてもよい。貫通孔27は、第5部材25の厚さ方向又は方向Xに延びている。貫通孔27は、例えば、平面視で円の形状を有する。貫通孔27は、例えば、第5部材25の表面26の重心付近に位置する。第5部材25は、貫通孔27によって、平面視でリングの形状を有している。貫通孔27は、例えば、第4部材15の貫通孔17と重なっている。貫通孔27の直径は、第4部材15の貫通孔17の直径と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
第5部材25の形状が平板状である場合、第5部材25は、弾性変形可能であってもよく、弾性変形可能でなくてもよい。弾性変形可能な第5部材25は、例えば、第5部材25の厚さ方向に圧縮されることによって弾性変形することができる。第5部材25は、例えば、フックの法則に従う弾性を有する材料で作られた部材である。
【0128】
第5部材25の材料としては、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。第5部材25に含まれる金属としては、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、チタンなどが挙げられる。第5部材25に含まれる金属は、合金であってもよい。第5部材25に含まれる合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼、黄銅などが挙げられる。第5部材25に含まれる樹脂としては、シリコーン、ウレタン、エポキシ、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイドなどが挙げられる。第5部材25の材料は、第3部材30と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0129】
第5部材25の具体例としては、市販のリング状平板及びウェーブワッシャーが挙げられる。
【0130】
弾性変形可能な第5部材25は、例えば、第4部材15と接触した状態で圧縮されることによって弾性変形する。例えば、過冷却解除装置130では、第1シャフト41を方向Xに移動させると、第5部材25は、支持部51及び第4部材15に挟み込まれて、その厚さ方向に圧縮される。これにより、第5部材25が弾性変形する。弾性変形した第5部材25は、第4部材15を介して、第1部材10又は第2部材20に対して、荷重を均一に加えることができる。これにより、第2部材20の表面21を第1部材10の表面11に容易に密着させることができる。
【0131】
過冷却解除装置130では、弾性変形可能な部材と、弾性変形可能でない部材とが方向Xに交互に並んでいてもよい。例えば、過冷却解除装置130において、第5部材25、第1部材10及び第3部材30のそれぞれが弾性変形可能であり、かつ、第4部材15及び第2部材20のそれぞれが弾性変形可能でなくてもよい。より具体的には、第5部材25、第1部材10及び第3部材30のそれぞれの形状が波板状であり、かつ、第4部材15及び第2部材20のそれぞれの形状が平板状であってもよい。このような構成を有する過冷却解除装置130は、より高い確率で蓄熱材の過冷却状態を解除できる傾向がある。
【0132】
(実施形態5)
図9は、本実施形態5の過冷却解除装置140の概略断面図である。図10は、過冷却解除装置140の一部を示す分解斜視図である。図9及び図10に示すように、過冷却解除装置140の第1部材10及び第2部材20のそれぞれは、貫通孔を有していない。荷重負荷部材40は、第2シャフトを有していない。シリンダ50の本体部56は、貫通孔を有していない。シリンダ50の本体部56は、3つの開口部55a,55b及び55cを有する。以上を除き、過冷却解除装置140の構造は、実施形態1の過冷却解除装置100の構造と同じである。
【0133】
上述のとおり、シリンダ50の本体部56は、3つの開口部55a,55b及び55cを有する。このような本体部56の構造によれば、第1部材10及び第2部材20が支持部51から移動して本体部56から脱落することをより抑制できる。
【0134】
(蓄熱装置の実施形態)
図11は、本実施形態の蓄熱装置200の概略断面図である。図12は、図11に示した蓄熱装置200のXII-XII線に沿った概略断面図である。図11に示すように、蓄熱装置200は、過冷却解除装置100、蓄熱材60及び容器65を備えている。蓄熱装置200では、過冷却解除装置100に代えて、過冷却解除装置110、120、130及び140も使用可能である。過冷却解除装置100は、蓄熱材60に接触するように配置されている。詳細には、過冷却解除装置100は、容器65の上方から容器65の内部に挿入されている。過冷却解除装置100の先端部分が蓄熱材60に接触している。過冷却解除装置100は、容器65の外部において、シリンダ50の固定部54によって容器65に固定されている。例えば、固定部54及び容器65のそれぞれに開口が設けられており、これらの開口に締結具がねじ込まれることによって、過冷却解除装置100が容器65に固定されている。蓄熱装置200が備える過冷却解除装置100の数は、特に限定されず、例えば、1以上5以下である。本実施形態では、蓄熱装置200は、2つの過冷却解除装置100を備えている。
【0135】
蓄熱材60は、物質の相変化を利用して熱を蓄える潜熱蓄熱材でありうる。蓄熱材60は、例えば、液相と固相との間で相転移することによって、蓄熱及び放熱することができる。蓄熱材60は、例えば、水和塩、糖アルコール及び包接水和物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む。蓄熱材60は、水和塩、糖アルコール又は包接水和物を主成分として含んでいてもよい。
【0136】
水和塩としては、例えば、酢酸ナトリウム三水和物、硫酸ナトリウム十水和物、硫酸水素ナトリウム一水和物、塩素酸リチウム三水和物、過塩素酸リチウム三水和物、フッ化カリウム二水和物、フッ化カリウム四水和物、塩化カルシウム二水和物、塩化カルシウム四水和物、塩化カルシウム六水和物、硝酸リチウム三水和物、炭酸ナトリウム七水和物、炭酸ナトリウム十水和物、臭化カルシウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム二水和物、リン酸水素二ナトリウム七水和物、リン酸水素二ナトリウム十二水和物、塩化鉄四水和物、塩化鉄六水和物、チオ硫酸ナトリウム五水和物、硫酸マグネシウム七水和物、酢酸リチウム二水和物、水酸化ナトリウム一水和物、水酸化バリウム一水和物、水酸化バリウム八水和物、硫酸アンモニウムアルミニウム六水和物、ピロリン酸ナトリウム十水和物、リン酸三ナトリウム六水和物、リン酸三ナトリウム八水和物及びリン酸三ナトリウム十二水和物が挙げられる。
【0137】
糖アルコールとしては、例えば、グリセリン、キシリトール、ソルビトール及びエリトリトールが挙げられる。包接水和物としては、例えば、テトラヒドロフランクラスレートハイドレート、トリメチルアミンセミクラスレートハイドレート、二酸化硫黄クラスレートハイドレート、テトラブチルアンモニウムホルメートハイドレート、酢酸テトラブチルアンモニウムハイドレート、臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB)ハイドレート、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl)ハイドレート及びフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)ハイドレートが挙げられる。
【0138】
蓄熱材60は、水和塩、糖アルコール及び包接水和物以外に、安定剤などの添加剤、水などをさらに含んでいてもよい。
【0139】
容器65は、蓄熱材60を収容している。図11及び12に示すように、容器65の形状は、例えば、円柱状である。容器65の形状は、楕円柱状であってもよく、角柱状であってもよい。容器65の容積に対する蓄熱材60の体積の比率は、特に限定されず、例えば、60vol%以上95vol%以下である。容器65の材料は、特に限定されず、例えば、金属及び樹脂が挙げられる。金属としては、銅、アルミニウムなどが挙げられる。金属は、合金であってもよい。合金としては、上記の金属を含む合金、ステンレス鋼などが挙げられる。樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。
【0140】
図11及び図12に示すように、蓄熱装置200は、配管70をさらに備える。配管70は、容器65の内部において、蓄熱材60に接触している。配管70は、例えば、容器65の1対の端面の一方から他方に向かう方向に延びており、容器65を貫通している。配管70は、熱媒体75の流路である。配管70は、蓄熱材60と熱媒体75とを隔てる隔壁として機能する。配管70は、伝熱性を有する材料でできている。
【0141】
熱媒体75は、蓄熱材60に熱を付与する又は蓄熱材60から熱を回収する。熱媒体75としては、例えば、水、不凍液及びオイルが挙げられる。不凍液は、例えば、エチレングリコール水溶液である。オイルは、潤滑油であってもよい。熱媒体75によれば、容器65の外部において、蓄熱材60から回収された熱を利用することができる。
【0142】
蓄熱装置200は、複数の配管70を備えていてもよい。配管70の数は、特に限定されず、例えば、1以上100以下である。図12に示すように、本実施形態では、蓄熱装置200は、8つの配管70を備えている。
【0143】
蓄熱装置200が複数の配管70を備えているとき、複数の配管70内のそれぞれを流れる複数の熱媒体75は、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、図11において、配管70a内を流れる熱媒体75aが不凍液であり、配管70b内を流れる熱媒体75bがオイルであってもよい。
【0144】
(動力装置の実施形態)
図13は、本実施形態の動力装置300の概略構成図である。図13に示すように、動力装置300は、蓄熱装置200及び動力機関80を備えている。蓄熱装置200は、配管70a及び70bを備える。配管70a内を不凍液が流れている。配管70b内をオイルが流れている。動力機関80は、例えば、内燃機関である。内燃機関としては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、蒸気機関、電動機などが挙げられる。動力機関80の内部では、オイル及び不凍液が循環している。動力装置300は、例えば、自動車、2輪車などの車両である。自動車としては、ガソリン自動車、ディーゼル自動車、電気自動車などが挙げられる。
【0145】
動力機関80は、オイルパン84及びポンプ85を有する。オイルパン84は、オイルを収容する。ポンプ85は、動力機関80の内部を循環するオイルを昇圧し、オイルの流量を調節する。
【0146】
動力装置300は、オイル排出経路90をさらに備えている。オイル排出経路90は、動力機関80から排出されたオイルを蓄熱装置200に送るための経路である。オイル排出経路90は、動力機関80のオイル出口に接続された一端と蓄熱装置200の配管70bの入口に接続された他端とを有する。
【0147】
動力装置300は、オイル供給経路91をさらに備えている。オイル供給経路91は、動力機関80にオイルを供給するための経路である。オイル供給経路91は、蓄熱装置200の配管70bの出口に接続された一端と動力機関80のオイル入口に接続された他端とを有する。
【0148】
動力装置300は、バイパス経路92をさらに備えている。バイパス経路92は、オイル排出経路90から分岐している。バイパス経路92は、オイル供給経路91に接続されている。バイパス経路92には、熱交換器83が配置されている。熱交換器83は、バイパス経路92を流れるオイルと、後述する不凍液供給経路96を流れる不凍液との間で熱交換を生じさせる液-液熱交換器である。熱交換器83の具体例は、プレート式熱交換器である。
【0149】
動力装置300は、不凍液排出経路95をさらに備えている。不凍液排出経路95は、動力機関80から排出された不凍液を蓄熱装置200に送るための経路である。不凍液排出経路95は、動力機関80の不凍液出口に接続された一端と蓄熱装置200の配管70aの入口に接続された他端とを有する。
【0150】
動力装置300は、不凍液供給経路96をさらに備えている。不凍液供給経路96は、動力機関80に不凍液を供給するための経路である。不凍液供給経路96は、蓄熱装置200の配管70aの出口に接続された一端と動力機関80の不凍液入口に接続された他端とを有する。不凍液供給経路96には、熱交換器83及びポンプ82が配置されている。ポンプ82は、不凍液供給経路96内の不凍液を昇圧し、不凍液の流量を調節する。
【0151】
動力装置300は、バイパス経路98及び99をさらに備えている。バイパス経路98は、分岐点93から分岐点94まで延びている。分岐点93は、不凍液排出経路95に位置する。分岐点94は、不凍液供給経路96における熱交換器83とポンプ82との間に位置する。バイパス経路98には、ラジエータ81が配置されている。ラジエータ81は、バイパス経路98内を流れる不凍液を冷却する。
【0152】
バイパス経路99は、分岐点97から熱交換器83まで延びている。分岐点97は、不凍液排出経路95における分岐点93と蓄熱装置200との間に位置する。バイパス経路99は、熱交換器83において、不凍液供給経路96と合流する。
【0153】
動力機関80を運転していると、動力機関80の温度が上昇する。これにより、動力機関80の内部を循環している不凍液及びオイルの温度も上昇する。動力機関80の内部を循環している不凍液の一部は、不凍液排出経路95を通じて動力機関80から排出される。不凍液排出経路95を流れる不凍液は、蓄熱装置200に送られる。蓄熱装置200の配管70aを流れる不凍液は、蓄熱装置200の蓄熱材60に熱を付与する。これにより、蓄熱材60を加熱することができる。蓄熱装置200から排出された不凍液は、不凍液供給経路96を通じて、動力機関80に供給される。
【0154】
動力機関80から排出された不凍液は、バイパス経路98又は99に送られてもよい。バイパス経路98に送られた不凍液は、ラジエータ81によって冷却される。冷却された不凍液は、不凍液供給経路96を通じて、動力機関80に供給される。
【0155】
動力機関80の内部を循環しているオイルの一部は、オイル排出経路90を通じて動力機関80から排出される。オイル排出経路90を流れるオイルは、バイパス経路92を通じて、熱交換器83に送られる。熱交換器83において、オイルの温度は、不凍液の温度よりも高い。そのため、熱交換器83におけるオイルと不凍液との熱交換によって、オイルが冷却される。熱交換器83で冷却されたオイルは、オイル供給経路91を通じて、動力機関80に供給される。
【0156】
動力機関80の運転を停止すると、動力機関80とともに、オイル及び不凍液の温度が低下する。さらに、蓄熱材60の温度も低下する。蓄熱材60の温度が蓄熱材60の融点を下回り、蓄熱材60が過冷却される。
【0157】
動力機関80の運転を再び開始するとき、蓄熱装置200の過冷却解除装置100の動作によって、蓄熱材60の過冷却状態が解除される。これにより、蓄熱材60が放熱する。配管70aを流れる不凍液及び配管70bを流れるオイルは、蓄熱材60から放出された熱を回収する。加熱された不凍液は、不凍液供給経路96を通じて動力機関80に供給される。加熱されたオイルは、オイル供給経路91を通じて動力機関80に供給される。これにより、動力機関80は、蓄熱装置200から放出された熱を受け取ることができる。動力装置300によれば、動力機関80を効率的に加熱することができる。そのため、動力機関80の暖機運転の時間を短縮できる。暖機運転を行うときの燃料の消費又は電力の消費を抑制することができる。特に、本実施形態の動力装置300によれば、外部環境の温度が-20℃を下回る寒冷地において、暖機運転を行うときの燃料の消費又は電力の消費を大幅に抑制することができる。
【実施例
【0158】
本開示を実施例に基づき、具体的に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0159】
(実施例1)
実施例1では、第1から第3部材、荷重負荷部材及びシリンダを備える過冷却解除装置を準備した。実施例1の過冷却解除装置において、第1部材は、平面視でリングの形状を有していた。第1部材は、外径が7mmであり、内径が3.2mmであった。第1部材の厚さは、0.5mmであった。第1部材は、ステンレス鋼(SUS)製のリング状平板であった。第2部材は、第1部材と同じ形状を有していた。第2部材は、SUS製のリング状平板であった。第3部材は、波板状の形状を有していた。第3部材の形状は、図6Aに示した形状と同じであった。第3部材は、外径が7mmであり、内径が3.2mmであった。第3部材は、SUS製のウェーブワッシャーであった。荷重負荷部材及びシリンダの形状は、それぞれ、図1に示した荷重負荷部材及びシリンダと同じであった。第1から第3部材、荷重負荷部材及びシリンダの配置は、図4に示した配置と同じであった。
【0160】
(実施例2から8)
第1から第3部材の材料、形状及び配置を表1に示すように変更したことを除き、実施例1と同じ方法で実施例2から8の過冷却解除装置を準備した。
【0161】
(実施例9)
過冷却解除装置に第4部材を追加したこと、及び、第1から第4部材を表2に示すように配置したことを除き、実施例1と同じ方法で実施例9の過冷却解除装置を準備した。実施例9において、第4部材は、第3部材と同じ形状を有するSUS製のウェーブワッシャーであった。
【0162】
(実施例10)
過冷却解除装置に第4部材及び第5部材を追加したこと、並びに、第1から第5部材を表2に示すように配置したことを除き、実施例6と同じ方法で実施例10の過冷却解除装置を準備した。実施例10では、第4部材は、第2部材と同じ形状を有するSUS製のリング状平板であった。第5部材は、第3部材と同じ形状を有するSUS製のウェーブワッシャーであった。
【0163】
(比較例1から4)
第1から第3部材の材料、形状及び配置を表3に示すように変更したことを除き、実施例1と同じ方法で比較例1から4の過冷却解除装置を準備した。
【0164】
[過冷却解除試験の準備]
実施例1から10及び比較例1から4の過冷却解除装置のそれぞれについて、以下の方法で過冷却解除試験の準備を行った。まず、60mLのスクリュー管内に蓄熱材52.3gを添加した。蓄熱材は、酢酸ナトリウム三水和物を主成分として含んでいた。次に、75℃に設定した恒温槽内でスクリュー管を加熱することによって、蓄熱材を完全に融解させた。次に、20℃に設定した恒温槽を用いて、蓄熱材を冷却した。これにより、過冷却状態の蓄熱材が得られた。
【0165】
次に、蓄熱材と接触する過冷却解除装置の部分に、酢酸ナトリウム三水和物の種結晶をあらかじめ付着させた。次に、過冷却解除装置の先端部分をスクリュー管の開口部に挿入した。過冷却解除装置をスクリュー管に挿入してから、スクリュー管を密閉した。過冷却解除装置の先端部分と過冷却状態の蓄熱材とを接触させることによって、蓄熱材の結晶化が進行した。これにより、蓄熱材の結晶が第1部材及び第2部材の間に収容された。次に、荷重負荷部材の第1シャフトを時計回りに回転させることによって、第1シャフトを第2部材から第1部材に向かう方向に移動させた。これにより、第2部材に対して、第2部材から第1部材に向かう方向に荷重が加わり、第1部材と第2部材とが互いに密着した。以上の操作によって、過冷却解除試験の準備が終了した。
【0166】
[過冷却解除試験]
次に、過冷却解除装置について、以下の方法で過冷却解除試験を行った。まず、90℃に設定した恒温槽内で、スクリュー管を1時間加熱した。次に、20℃に設定した恒温槽を用いて、蓄熱材を冷却した。これにより、過冷却状態の蓄熱材が得られた。次に、過冷却解除装置の荷重負荷部材の第1シャフトを反時計回りに回転させることによって、第1シャフトを第1部材から第2部材に向かう方向に移動させた。これにより、第2部材に加えられた荷重が減少し、第1部材に対して第2部材が変位した。このとき、蓄熱材の結晶化が進行するかどうかを確認した。
【0167】
蓄熱材の過冷却状態が解除され、蓄熱材の結晶化が進行した場合、荷重負荷部材の第1シャフトを第2部材から第1部材に向かう方向に再び移動させた。これにより、第2部材に対して、第2部材から第1部材に向かう方向に荷重が加わり、第1部材と第2部材とが互いに密着した。次に、上述の方法によって、過冷却解除試験を繰り返した。
【0168】
蓄熱材の過冷却状態が解除されず、蓄熱材の結晶化が進行しなかった場合、スクリュー管から過冷却解除装置を取り外した。次に、酢酸ナトリウム三水和物の結晶を用いて、過冷却解除装置に付着した蓄熱材を結晶化させた。この過冷却解除装置をスクリュー管に再び挿入し、スクリュー管を密閉した。過冷却解除装置の先端部分と過冷却状態の蓄熱材とを接触させることによって、蓄熱材の結晶化を進行させた。次に、荷重負荷部材の第1シャフトを第2部材から第1部材に向かう方向に移動させた。これにより、第2部材に対して、第2部材から第1部材に向かう方向に荷重が加わり、第1部材と第2部材とが互いに密着した。次に、上述の方法によって、過冷却解除試験を繰り返した。
【0169】
以上の操作によって、過冷却解除試験を複数回繰り返した。得られた結果に基づいて、過冷却解除率を算出した。過冷却解除率は、試験回数に対する、蓄熱材の過冷却状態が解除された回数の比率を意味する。
【0170】
【表1】
【0171】
表1において、「PC」は、ポリカーボネートを意味する。「PPS」は、ポリフェニレンサルファイドを意味する。「Cu」は、黄銅を意味する。「PC製リング状平板」、「PPS製リング状平板」及び実施例7の「Cu製リング状平板」の形状は、実施例1のSUS製リング状平板と同じであった。実施例8の「Cu製リング状平板」は、外径が7mmであり、内径が3.2mmであり、厚さが0.1mmであった。
【0172】
【表2】
【0173】
【表3】
【0174】
表1から3からわかるとおり、第1部材及び第2部材のそれぞれが金属を含む実施例の過冷却解除装置は、高い過冷却解除率を示した。一方、少なくとも第2部材が金属を含まない比較例の過冷却解除装置は、蓄熱材の過冷却状態を解除することができなかった。
【0175】
(測定例1から5)
次に、実施例1の過冷却解除装置を用いて、過冷却解除試験の条件の検討を行った。詳細には、蓄熱材の過冷却状態を解除するときにおける第2部材に対する荷重の減少率Pを表4に示すように変更したことを除き、上述した方法と同じ方法によって、測定例1から5の過冷却解除試験を行った。なお、荷重の減少率Pは、過冷却解除装置の準備段階で第2部材に加えられた荷重L(MPa)に対する、荷重の減少量D(MPa)の比率を意味する。測定例1の条件は、上述した過冷却解除試験と同じである。測定例2では、過冷却解除装置の準備段階で第2部材に加えられた荷重Lを測定例1よりも大きい値に設定した。
【0176】
【表4】
【0177】
表4からわかるとおり、実施例1の過冷却解除装置は、過冷却解除試験の条件を変更した場合であっても、高い過冷却解除率を示した。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本開示の過冷却解除装置は、所望のタイミングで蓄熱材の過冷却状態を解除し、蓄熱材を放熱させることができる。本開示の蓄熱装置は、内燃機関の廃熱、燃焼式ボイラーの廃熱などを熱源として機器の暖機を行うことに適している。本開示の動力装置によれば、エネルギー資源の有効利用が可能である。本明細書に開示された技術は、ガソリン自動車、空調機、給湯器、電気自動車(EV)用の冷却システム、住宅の床暖房システムにも適用できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13