(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタにおいて使用されるアセンブリ、インクジェットプリンタ、及び三次元電子デバイスの表面上に機能層を印刷するための方法
(51)【国際特許分類】
B41J 3/407 20060101AFI20240213BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240213BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20240213BHJP
B05C 11/10 20060101ALI20240213BHJP
B05C 9/12 20060101ALI20240213BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240213BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20240213BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240213BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B41J3/407
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 127
B41J2/01 121
B41J2/01 307
B05C5/00 101
B05C11/10
B05C9/12
B05D1/26 Z
B05D3/02 Z
B05D7/00 H
B41J29/00 H
(21)【出願番号】P 2022551235
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2021056923
(87)【国際公開番号】W WO2021185954
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-09-20
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】スタドニク、アラン ポール
(72)【発明者】
【氏名】シュタイガーヴァルト、アンドレアス
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第208306134(CN,U)
【文献】韓国公開特許第2015-0114229(KR,A)
【文献】国際公開第2018/035969(WO,A1)
【文献】特開2003-209038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0201504(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/407
B41J 2/01
B05C 5/00
B05C 11/10
B05C 9/12
B05D 1/26
B05D 3/02
B05D 7/00
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタ(1)において使用され、前記プリンタ内で三次元電子デバイス(1000)を移動させるように構成されたアセンブリであって、
第1のプリントヘッド(200)を保持するように構成された第1の固定具(3a)と、
少なくとも2つの処理ライン(A、B、C、D)であって、前記処理ラインの各々が、
機能層が前記電子デバイス(1000)の表面上に印刷される第1の印刷セクション(20)と、
前記第1の印刷セクション(20)から離間し、前記電子デバイス(1000)の前記表面に前記機能層を焼結するように構成された焼結セクション(40)であって
、焼結された
前記機能層が、結晶格子構造を呈する、焼結セクション(40)と、
前記印刷セクション(20)から前記焼結セクション(40)に移動するように構成された搬送機構(4)と、
を含む、処理ラインと、
を備え、
前記第1の固定具(3a)が、前記少なくとも2つの処理ライン(A、B、C、D)のうちの1つの処理ラインから、前記少なくとも2つの処理ライン(A、B、C、D)のうちの他の処理ラインに移動可能であるように構成さ
れ、
前記焼結セクション(40)が、UV光エミッタ又はIR放射線エミッタ(400)を含む、
アセンブリ。
【請求項2】
前記処理ライン(A、B、C、D)の各々の前記印刷セクション(20)及び前記焼結セクション(40)が、同一直線上に配置されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記少なくとも2つの処理ライン(A、B、C、D)が、互いに平行である、請求項1又は2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記電子デバイス(1000)を保持するように構成された支持体(5)を更に備え、前記第1の固定具(3a)及び前記支持体(5)が、互いに対して移動可能であるように構成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記支持体(5)が、前記搬送機構(4)に固定的に装着され、前記第1の固定具(3a)が、前記支持体(5)に対して移動可能である、請求項4に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記搬送機構(4)が、前記印刷セクション(20)と前記焼結セクション(40)との間で往復運動するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記搬送機構(4)が、摺動キャリッジ又はベルトコンベヤである、請求項1~6のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項8】
ハードUVエミッタ、エキシマレーザ、又は大気プラズマ生成デバイスからなる群から選択されるデバイス(100)を含む前処理セクション(10)を更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記少なくとも2つの処理ライン(A、B、C、D)のうちの少なくとも1つが、前記印刷セクション(20)の上流に前記前処理セクション(10)を含む、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
第2のプリントヘッド(300)を保持するように構成された第2の固定具(3a)を更に備える、請求項1~
9のいずれか一項に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記第2の固定具(3a)が、前記焼結セクション(40)の下流の保護層印刷セクション(30)内に配置され、前記搬送機構(4)が、前記印刷セクション(20)から、前記保護層印刷セクション(30)に、及び前記焼結セクション(40)に移動するように構成されている、請求項
10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記第2の固定具(3a)が、前記少なくとも2つの処理ライン(A、B、C、D)のうちの1つの処理ラインから、前記少なくとも2つの処理ライン(A、B、C、D)のうちの他の処理ラインに移動可能であるように構成されている、請求項
10又は
11に記載のアセンブリ。
【請求項13】
電子デバイス(1000)の表面上に機能層を印刷するように構成されたインクジェットプリンタ(1)であって、
インクを吐出するように構成されたプリントヘッド(200)と、
請求項1~
12のいずれか一項に記載のアセンブリと、
を備える、インクジェットプリンタ。
【請求項14】
前記プリントヘッド(200)が、インクを吐出するように構成されており、前記インクが、前記電子デバイス(1000)の前記表面上に印刷された後、かつ焼結された後に、結晶格子構造を有する電磁干渉シールドを前記電子デバイス(1000)上に形成する、請求項
13に記載のインクジェットプリンタ(1)。
【請求項15】
プリントヘッド(200)と、少なくとも第1及び第2の処理ライン(A、B、C、D)と、を有するインクジェットプリンタ(1)において、第1及び第2の三次元電子デバイス(1000)の表面上に機能層を印刷するための方法であって、前記処理ライン(A、B、C、D)の各々が、印刷セクション(20)及び焼結セクション(40)を含み、前記方法が、
前記第1の処理ライン(A)の前記印刷セクション(20A)内に前記プリントヘッド(200)を配置する工程と、
前記第1の処理ライン(A)の前記印刷セクション(20A)内の前記第1の電子デバイス(1000)の表面上に機能層を印刷する工程と、
前記第1の電子デバイス(1000)を前記第1の処理ライン(A)の前記焼結セクション(40A)に移動させる工程と、
焼結された
前記機能層が結晶格子構造を呈するように、前記第1の処理ライン(A)の前記焼結セクション(40A)内で前記第1の電子デバイス(1000)の前記機能層を焼結させる工程と、
前記プリントヘッド(200)を前記第2の処理ライン(B)の前記印刷セクション(20B)に移動させる工程と、
前記第1の処理ライン(A)の前記焼結セクション(40A)内で前記第1の電子デバイス(1000)の前記機能層を焼結させる間に、前記第2の処理ライン(B)の前記印刷セクション(20B)内の前記第2の電子デバイス(1000)の表面上に機能層を印刷する工程と、
を含
み、
前記焼結セクション(40)が、UV光エミッタ又はIR放射線エミッタ(400)を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
明細書
本発明は、インクジェットプリンタにおいて使用され、インクジェットプリンタ内で三次元電子デバイスを移動させるように構成されたアセンブリに関する。本発明はまた、前述のアセンブリを含むインクジェットプリンタと、インクジェットプリンタにおいて第1及び第2の三次元電子デバイスの表面上に機能層を印刷するための方法と、に関する。
【0002】
インクジェットプリンタは、紙に印刷するために広く使用されている。しかしながら、インクジェットプリンタは、他の目的のためにも使用され得る。例えば、インクジェットプリンタを採用して、例えば、「システムインパッケージ」(SIP)などの電子デバイス上に、電磁干渉から電子デバイスを保護するために導電性インクを堆積させることができる。
【0003】
SIPモジュールは、携帯型電子デバイスの小型化においてますます重要な役割を果たしている。SIPモジュールに組み込まれた電気機能は高密度であるため、電磁又は電気干渉(EMI)は、モジュールの完全な故障を引き起こす可能性がある。このため、SIPモジュールは、EMI放射線がSIPモジュールから放射されることと、SIPモジュールによって受信されることの両方を抑制するように遮蔽される必要がある。
【0004】
従来、SIPモジュールは、EMIシールドのために金属ハウジングを使用する。しかしながら、金属ハウジングは、小型化の目的に合わない。金属ハウジングを使用する代わりに、例えば、インクジェットインクを含む銀からなる機能層を、インクジェットプリンタを使用してSIPモジュールの表面上に堆積させることができる。インクジェットインクがSIPモジュールの表面に印刷されると、インクジェットインクは、SIPモジュールの表面上に連続機能層を形成するために、例えばUV光を使用して焼結される。IR放射線又はプラズマなどの焼結のための他の手段も考えられる。
【0005】
US2013/0342592A1は、三次元電子デバイス上にEMIシールドを印刷するために使用されるインクジェットプリンタを開示している。それにより、電子デバイスは、EMIシールドを電子デバイスの非平行表面上に均一に堆積させることができるように、傾斜及び回転させることができる固定具上に装着される。
【0006】
CN105291588A及びCN205202465は各々、互いに平行に配置された2つの可動作業プラットフォームを有するインクジェットプリンタに関する。硬化ユニットが、プリントヘッド上に配置されている。プリントヘッドは、作業プラットフォームのうちの一方に位置する物体の表面上に感光性インクを吐出する。吐出直後、感光性インクは硬化する。
【0007】
CN208306134Uは、バーコードなどの特定の種類のコードを物体上に印刷するためのインクジェットプリンタを開示している。インクジェットプリンタは2つの処理ラインを備え、各処理ラインが印刷される物体の作業台を含む。インクジェットガン及び硬化ユニットは、両方の処理ラインがインクジェットガン及び硬化ユニットを共有することができるように、2つの処理ラインを横切って移動することができる。
【0008】
KR20150114229Aは、電子デバイスをカラーマーキングするために使用されるインクジェットプリンタに関する。インクジェットプリンタは、共通のプリントヘッドと共通の硬化ユニットとを共有するいくつかの処理ラインを備える。インクジェットプリンタは、感光性インクを電子デバイス上に印刷するように特に適合されている。
【0009】
US2008/036799A1、US2006/003633A1、及びCN107053840Aは、物体上にインクを印刷するための従来技術の印刷システムに関する。しかしながら、これらのシステムは全て、硬化ユニットを含んでいない。
【0010】
WO2010/035263A1及びDE102010008233A1は、Si-ウェハなどの電子デバイスの搬送システムを開示している。これらの搬送システムは、2つ以上の電子デバイスの並列移動又は三次元移動を可能にし得る。
【0011】
本発明の目的は、インクジェットプリンタ、インクジェットプリンタにおいて使用されるアセンブリ、及び高効率で、特に高スループットで、電子デバイスの表面上に機能層を印刷するための方法を提供することである。
【0012】
この目的は、請求項1、14、及び16の主題によって達成される。本発明の任意選択的かつ好ましい特徴は、従属請求項2~13及び15の主題である。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、インクジェットプリンタにおいて使用され、プリンタ内で三次元電子デバイスを移動させるように構成されたアセンブリが提供される。アセンブリは、第1のプリントヘッドを保持するように構成された第1の固定具と、少なくとも2つの処理ラインと、を備える。各処理ラインは、機能層が電子デバイスの表面に印刷される第1の印刷セクションと、第1の印刷セクションから離間され、電子デバイスの表面に機能層を焼結するように構成され、焼結された機能層が結晶格子構造を呈する焼結セクションと、印刷セクションから焼結セクションに移動するように構成された搬送機構と、を含む。第1の固定具は、少なくとも2つの処理ラインのうちの1つの処理ラインから、少なくとも2つの処理ラインの他の処理ラインに移動可能であるように構成されている。
【0014】
好ましくは、各処理ラインの印刷セクション及び焼結セクションは、同一直線上に配置されている。
【0015】
より好ましくは、少なくとも2つの処理ラインは、互いに平行である。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、アセンブリは、電子デバイスを保持するように構成された支持体を更に備え、第1の固定具及び支持体は、互いに対して移動可能であるように構成されている。
【0017】
支持体が搬送機構に固定的に装着され、第1の固定具が支持体に対して移動可能であることが有利である。
【0018】
任意選択的に、搬送機構は、印刷セクションと焼結セクションとの間で往復運動するように構成されている。
【0019】
搬送機構が摺動キャリッジ又はベルトコンベヤである場合も、本発明の好ましい特徴である。
【0020】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、アセンブリは、ハードUVエミッタ、エキシマレーザ、又は大気プラズマ生成デバイスからなる群から選択されるデバイスを含む前処理セクションを更に含む。
【0021】
好ましくは、少なくとも2つの処理ラインのうちの少なくとも1つは、印刷セクションの上流に前処理セクションを含む。
【0022】
より好ましくは、焼結セクションは、UV光エミッタ又はIR放射線エミッタを含む。
【0023】
更により好ましくは、アセンブリは、第2のプリントヘッドを保持するように構成された第2の固定具を更に備える。
【0024】
第2の固定具が、焼結セクションの下流の保護層印刷セクション内に配置され、搬送機構が、印刷セクションから保護層印刷セクションに、及び焼結セクションに移動するように構成されている場合も好ましい。
【0025】
任意選択的に、第2の固定具は、少なくとも2つの処理ラインのうちの1つの処理ラインから、少なくとも2つの処理ラインのうちの他の処理ラインに移動可能であるように構成されている。
【0026】
本発明の第2の態様によれば、電子デバイスの表面上に機能層を印刷するように構成されたインクジェットプリンタが提供される。インクジェットプリンタは、インクを吐出するように構成されたプリントヘッドと、上記のようなアセンブリと、を備える。
【0027】
好ましくは、プリントヘッドは、インクを吐出するように構成され、そのインクは、電子デバイスの表面上に印刷された後、かつ焼結後に、結晶格子構造を有する電磁干渉シールドを電子デバイス上に形成する。
【0028】
本発明の第3の態様によれば、プリントヘッドと、各々が印刷セクション及び焼結セクションを含む少なくとも第1及び第2の処理ラインと、を有するインクジェットプリンタにおいて、第1及び第2の三次元電子デバイスの表面上に機能層を印刷するための方法が提供される。本方法は、第1の処理ラインの印刷セクション内にプリントヘッドを配置する工程と、第1の処理ラインの印刷セクション内の第1の電子デバイスの表面上に機能層を印刷する工程と、第1の電子デバイスを第1の処理ラインの焼結セクションに移動させる工程と、焼結された機能層が結晶格子構造を呈するように、第1の処理ラインの焼結セクション内で第1の電子デバイスの機能層を焼結させる工程と、プリントヘッドを第2の処理ラインの印刷セクションに移動させる工程と、第1の処理ラインの焼結セクション内で第1の電子デバイスの機能層を焼結させる間に、第2の処理ラインの印刷セクション内の第2の電子デバイスの表面上に機能層を印刷する工程と、を含む。
【0029】
ここで、添付図面を使用して、本発明を例示的に説明する。図面は、例示を目的としており、インクジェットプリンタにおいて使用され、プリンタ内で三次元電子デバイスを移動させるように構成された可能なアセンブリ、可能なインクジェットプリンタ、及び三次元電子デバイスの表面にインクジェット印刷するための可能な方法についての例を提供するためのみに供する。図面は、決して本発明を限定するものではなく、単にその好ましい実施形態を表す。
【0030】
本発明は、一般に、例えば電子デバイスなどの三次元デバイス上へのインクジェットインクの大量印刷に適している。いわゆる「システムインパッケージ」(SIP)上に機能層を堆積させることが特に好適である。機能層は、適用されるときに特定の機能を達成する任意の種類の層であり得る。この機能は、外部源から放出される電磁誘導又は電磁放射線によって引き起こされる電磁干渉(EMI)からの電子デバイスの遮蔽であり得る。機能層は、銀インク又は銀含有インクなどの導電性である種類の導電性インクから構成され得る。導電性インクはまた、導電性粒子、例えば銀粒子を含む種類のインクであり得る。導電性インクがEMIシールドとして作用するには、導電性インクが、好ましくは均一な厚さの連続層を、外部電磁放射線の周波数の4分の1波長よりも大きい間隙を有することなく電子デバイス上に形成するように実行されなければならない。
【0031】
本発明の文脈で使用される全てのインクは、焼結プロセスを必要とし、本発明の文脈では、特定の種類の硬化プロセスであると考えられる。焼結プロセスは、焼結導電性インクが結晶格子構造、短距離秩序及び遠距離秩序を有する構造を呈するのに十分な量のエネルギーを導電性インクに供給する。例えば、ネオデカン酸銀を含有する特定の種類のMODインクを使用する場合、銀原子は、銀ネオデカン酸銀の焼結時に結晶格子構造で配列される。
【0032】
これは、従来技術のように、架橋によりポリマーがモノマーから生成される感光性インクの硬化とは異なる。ポリマーは、硬化した光感受性インクに共有結合している。これらの共有結合は、短距離秩序及び遠距離秩序を有していない。
【0033】
電子デバイスは、異なる方向に延在する表面を有する任意の三次元幾何学形状を有し得る。この目的のために、本発明で使用されるプリントヘッドは異なる回転軸を中心に旋回可能であるため、電子デバイスの非平行表面は、連続機能層によりEMIを遮蔽され得る。
【0034】
本発明は、三次元電子デバイス上に導電性インクを印刷することに限定されず、原則として、高スループットを必要とする任意のインクジェット印刷プロセスにおいて使用され得る。
【0035】
本発明で使用されるプリントヘッドの印刷幅は、電子デバイスのサイズに応じて、例えば、30.5cm(12インチ)以上に選択され得る。印刷速度は、最大2000mm/秒であり得、インク液滴がプリントヘッドによって吐出される周波数であるプリントヘッド周波数は、最大150kHzであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の一般原理を示す。
図1によれば、少なくとも2つ、例えば4つの処理ラインA~Dが提供される。各処理ラインA~Dは、印刷セクション20A~20D及び焼結(硬化)セクション40A~40Dを含む。
【0037】
機能層は、印刷セクション20A内の第1の三次元電子デバイス1000(
図3)の表面(又は複数の表面)上に最初に堆積される。第1の電子デバイス1000の表面上に連続機能層を生成するために、プリントヘッド200(
図2)のいずれかが第1の電子デバイス1000に対して移動させられるか、又は第1の電子デバイス1000が、プリントヘッド200に対して移動させられる。機能層が第1の電子デバイス1000上に印刷されると、第1の電子デバイス1000は、印刷セクション20Aから第1の処理ラインAの焼結セクション40Aに移動させられる。機能層は、焼結セクション40A内で焼結され、焼結中に、プリントヘッド200は、第2の処理ラインBの印刷セクション20B内に移動させられる。第2の電子デバイス1000は、第2の処理ラインBの印刷セクション20B内で印刷され、いったん印刷が完了すると、第2の電子デバイス1000が、第2の処理ラインBに沿って焼結セクション40Bに移動させられる。焼結セクション40A、40B内で処理ラインA及びB内の第1及び第2の電子デバイス1000の各々を焼結させる間に、機能層が、第3の処理ラインCの印刷セクション20C内の第3の電子デバイス1000上に印刷される。印刷セクション20C内の第3の電子デバイス1000の印刷が完了すると、第3の電子デバイス1000は、第3の処理ラインCの焼結セクション40Cに移動させられる。焼結が、焼結セクション40A、40B、40Cで依然として進行中である間に、プリントヘッド200は、第4の処理ラインDの印刷セクション20Dに移動させられる。ここで、第4の電子デバイス1000の印刷が実行される。完了すると、第4の電子デバイス1000は、第4の処理ラインDの焼結セクション40Dに移動させられる。
【0038】
本発明の原理を使用して、高スループットでインクジェット印刷プロセスを達成することができる。印刷プロセスの期間は、焼結プロセスの期間の一部のみであるため、焼結が行われる期間は、別の処理ラインで別の電子デバイスを印刷するために利用することができる。言い換えれば、第2の電子デバイスの印刷は、第1の電子デバイスの印刷の完了直後に開始することができる。
【0039】
【
図2】
図2は上面図であり、3つの処理ラインA、B、Cを有するインクジェットプリンタ1の概略的な構造を示す。
図1に示す一般原理と比べて、電子デバイス1000の表面を印刷前に洗浄する洗浄セクションXが提供され得る。好ましくは、印刷される電子デバイス1000の表面又は複数の表面が酸化によって活性化される、前処理セクション10が提供される。活性化は、185nm未満の発光波長を有するUVエミッタ、又は172nm未満の発光波長を有するエキシマレーザを使用して、大気圧プラズマ又はハードUV放射線を用いることによって達成することができる。
【0040】
いったん電子デバイス1000の表面(複数可)が好ましくは洗浄され、前処理されると、電子デバイス1000は、印刷セクション20に移動させられ、印刷プロセスの後に焼結セクション40に搬送される。焼結は、好ましくは、395nmの波長でUV放射線を吐出するUV-LED400を使用することによって達成される。あるいは、焼結の目的でIR放射線エミッタを使用することができる。
図2に示されるように、プリントヘッド200は、1つの処理ラインAから他の処理ラインB及びCのいずれかに移動させることができる。プリントヘッドはまた、処理ラインA、B、及びCの間で往復運動することができる。
【0041】
好ましくは、印刷セクション20内に先に印刷された機能層の上に保護層を印刷するために、プリントヘッド300が設置される追加の印刷セクション30が提供され得る。プリントヘッド200と同様に、プリントヘッド300が電子デバイス1000に対して移動させられるか、又は電子デバイス1000がプリントヘッド300に対して移動させられる。
【0042】
電子デバイス1000を印刷セクション20又は30のいずれかから焼結セクション40に移動させるために、好ましくは摺動キャリッジ又はベルトコンベヤの形態の搬送機構4が提供される。
【0043】
【
図3】
図3は、本発明の好ましい実施形態による独立型インクジェットプリンタ1の斜視図である。インクジェットプリンタ1は、グリッド状パターンで配置されたいくつかの誘導レール3a、3bに取り付けられた剛性フレーム20を含む。プリントヘッド200は、フレーム2に移動可能に取り付けられているため、レール3aに沿って1つの処理ラインAから他の処理ラインB、C又はDのいずれかに沿って移動することができる。これは、保護層印刷セクション30に提供されるプリントヘッド300にも当てはまる。プリントヘッド200、300の下方、並びに焼結セクション40内のUV-LED400及び前処理セクション10内のハードUVエミッタ100の下方には、支持体5を使用することによって所定の位置に保持される電子デバイス1000が位置する。支持体5は、1つ又は複数の電子デバイス1000を保持するように構成された任意の種類の支持体であり得る。上述のように、支持体5は、1つ以上の異なる回転軸を中心に旋回可能であり得る。
【0044】
印刷プロセスは、
図4A~
図4Cに示されるように、複数経路、単一経路、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0045】
【
図4A】
図4Aに示す複数経路プロセスでは、1つの処理ラインA、B、又はCの印刷セクション20内のプリントヘッド200及び電子デバイス1000の一連の相対移動が利用される結果、導電性インクの複数層がその上に堆積される。好ましくは、プリントヘッド200は静止しているが、電子デバイス1000は、プリントヘッド200の下方で、一方向、例えば、X方向に往復運動させられる。更に、X方向における電子デバイス1000の移動は、好ましくは、Y方向(すなわち、X方向に直交)のプリントヘッド200の動きと重複してもよく、その結果、Y方向に重複する導電性インクの複数層が電子デバイス1000上に印刷される。導電性インクの複数層の重複は、Y方向におけるプリントヘッド200の移動量によって制御され得る。その結果、導電性インクは、例えば、段階状の又は連続的なプロファイルで、Y方向において様々な厚さを有し得る。各層の後、電子デバイス1000は、好ましくは、導電性インク層の焼結を実行するために焼結セクション40に移動させられ得る。あるいは、焼結は、導電性インクの複数層が電子デバイス1000上に印刷された後に実行される。前述の印刷及び焼結プロセスは、必要に応じて繰り返すことができる。任意選択的に、保護層が、最上部の導電性インク層の印刷セクション30内に印刷され、次いで焼結セクション40内で焼結される必要がある。
【0046】
【
図4B】
図4Bに示す単一経路プロセスでは、プリントヘッド200は、X方向及びY方向の両方で静止している。所望の厚さの導電性インクが電子デバイス1000上に印刷されるまで、電子デバイス1000のみがプリントヘッド200の下方でX方向に往復運動する。電子デバイス1000の印刷(コーティング)は、電子デバイス1000の一方向への移動中にのみ行われ、反対方向には行われないことが好ましい。あるいは、電子デバイス1000は、好ましくは、両方向に移動中に連続的に印刷され得る。印刷後、電子デバイス1000は、好ましくは、焼結セクション40に移動させられて、導電性インクの単一又は複数層の焼結を実行し得る。必要に応じて、前述の印刷及び焼結プロセスが繰り返され得る。
【0047】
【
図4C】
図4Cは、
図4Aの複数経路プロセスと
図4Bの単一経路プロセスの組み合わせを示す。唯一の違いは、電子デバイス1000上に印刷された導電性インクの複数層がY方向で重複しないことである。