(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240213BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240213BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240213BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20240213BHJP
C07K 14/56 20060101ALI20240213BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240213BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240213BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240213BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240213BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240213BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240213BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240213BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20240213BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240213BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240213BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K19/00
C07K14/55
C07K14/56
C12N5/10
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K47/68
A61P35/00
A61K38/20
A61P43/00 121
C12N15/113 140Z
(21)【出願番号】P 2022554898
(86)(22)【出願日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2021032268
(87)【国際公開番号】W WO2021231741
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-09-12
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521083094
【氏名又は名称】エリクシロン・イミュノセラピューティクス・(ホンコン)・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フン-カイ・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ホン-セン・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュイ-ウェン・シャオ
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/011964(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C07K 1/00- 19/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域(CDR-L2)、及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに
(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)、及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)
を含む抗PD-L1抗体であって、ここで
:
(a)CDR-H1は配列番号49のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号50のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号51のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-H1は配列番号87のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号88のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号89のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号91のアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号97のアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-H1は配列番号99のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号100のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号101のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号103のアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-H1は配列番号105のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号106のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号108のアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号111のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号113のアミノ酸配列を含み;
(g)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号115のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号117のアミノ酸配列を含み;
(h)CDR-H1は配列番号119のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号120のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号122のアミノ酸配列を含み;又は
(i)CDR-H1は配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号125のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含む、
抗PD-L1抗体。
【請求項2】
(a)配列番号52と少なくとも90%の同一性を有する
重鎖可変ドメイン(V
H
)アミノ酸配列;及び配列番号56と少なくとも90%の同一性を有する
軽鎖可変ドメイン(V
L
)アミノ酸配列を含み
;
(b)配列番号90と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号92と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(c)配列番号96と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号98と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(d)配列番号102と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号104と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(e)配列番号107と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号109と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(f)配列番号112と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号114と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(g)配列番号116と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号118と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(h)配列番号121と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号123と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;又は
(i)配列番号126と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号56と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含む、
請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a)配列番号14
9と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC
)アミノ酸配列、及び配列番号14
2と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC
)アミノ酸配列
;
(b)配列番号15
4と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号12
8と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(c)配列番号15
5と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号13
0と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(d)配列番号15
6と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号13
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(e)配列番号15
7と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号13
4と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(f)配列番号15
8と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号13
6と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(g)配列番号15
9と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号13
8と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(h)配列番号16
0と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号14
0と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(i)配列番号16
1と少なくとも90%の同一性を有するHCアミノ酸配列、及び配列番号14
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列
を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
IL2、IL7、IL10、IL12、IL15、IL21又はIFN-αから選択されるサイトカインにリンカーを介して融合された重鎖(HC)を
含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項5】
サイトカインはIL10で
ある、請求項
4に記載の抗体。
【請求項6】
(a)配列番号8
3と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号14
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(b)配列番号12
7と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号12
8と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(c)配列番号12
9と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
0と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(d)配列番号13
1と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(e)配列番号13
3と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
4と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(f)配列番号13
5と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
6と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(g)配列番号13
7と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
8と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(h)配列番号13
9と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号14
0と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;又は
(i)配列番号14
1と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号14
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列、
を含む、請求項
5に記載の抗体。
【請求項7】
IL10にリンカーを介して融合された重鎖(HC)を含む抗PD-L1抗体であって、
(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域(CDR-L2)、及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに
(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)、及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)を含み、ここで
:
(a)CDR-H1は配列番号49のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号50のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号51のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含み
;
(b)CDR-H1は配列番号87のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号88のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号89のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号91のアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号97のアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-H1は配列番号99のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号100のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号101のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号103のアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-H1は配列番号105のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号106のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号108のアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号111のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号113のアミノ酸配列を含み;
(g)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号115のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号117のアミノ酸配列を含み;
(h)CDR-H1は配列番号119のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号120のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号122のアミノ酸配列を含み;又は
(i)CDR-H1は配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号125のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含む、
抗PD-L1抗体。
【請求項8】
(a)配列番号52と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号56と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み
;
(b)配列番号90と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号92と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(c)配列番号96と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号98と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(d)配列番号102と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号104と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(e)配列番号107と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号109と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(f)配列番号112と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列:及び配列番号114と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(g)配列番号116と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列:及び配列番号118と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;
(h)配列番号121と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号123と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含み;又は
(i)配列番号126と少なくとも90%の同一性を有するV
Hアミノ酸配列;及び配列番号56と少なくとも90%の同一性を有するV
Lアミノ酸配列を含む、
請求項
7に記載の抗体。
【請求項9】
(a)配列番号8
3と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号14
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列
;
(b)配列番号12
7と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号12
8と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(c)配列番号12
9と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
0と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(d)配列番号13
1と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(e)配列番号13
3と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
4と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(f)配列番号13
5と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
6と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(g)配列番号13
7と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号13
8と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;
(h)配列番号13
9と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号14
0と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列;又は
(i)配列番号14
1と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号14
2と少なくとも90%の同一性を有するLCアミノ酸配列
を含む、
請求項
7に記載の抗体。
【請求項10】
(a)1×10
-8M以
下の結合親和性でヒトPD-L1に結合
し、ここで、結合親和性は、配列番号174のhuPD-L1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K
D)によって測定され;
(b)1×10
-8M以
下の結合親和性でカニクイザルPD-L1に結合
し、ここで、結合親和性は、配列番号176のcynoPD-L1ポリペプチドに対する平衡解離定数(K
D)によって測定され;
(c)タンパク質は、MC/9細胞増殖を少なくとも25
%増加させ;
(d)タンパク質は、活性化CD8 T細胞からのIFNγ及びグランザイムBの産生を少なくとも25
%増加させ;並びに/又は
(e)28日目に測定された同系マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍体積を少なくとも25
%低下させ、ここで、マウス腫瘍モデルは:CT26結腸がん及びEMT6乳がんから選択される、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項11】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド若しくはベクター;又
はそのオリゴヌクレオチド若しくはベクターを含む単離された宿主細胞。
【請求項12】
抗体が産生されるように、請求項
11に記載の単離された宿主細胞を培養する工程を含む、抗体を産生する方法。
【請求項13】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成
物。
【請求項14】
対象におけるPD-L1媒介性疾患を処置する方法において使用するための請求項
13に記載の医薬組成物であって、前記抗体の治療有効量を
含む、医薬組成物。
【請求項15】
対象におけるがんを処置するための方法において使用するための医薬組成物であって、PD-L1アンタゴニスト及びIL10アゴニストを含
み、PD-L1アンタゴニストは、請求項1から
10のいずれか一項に記載の抗PD-L1抗体で
ある、医薬組成物。
【請求項16】
がんは、結腸がん、膵臓がん、卵巣がん、肝臓がん、腎がん、乳がん、肺がん、胃がん、頭頸部がん、又は口腔がんである、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
方法が対象にT細胞療法を投与する工程を更に含む、請求項
14から
16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年5月14日に出願された米国仮特許出願第63/024,855号について、米国特許法第119条(e)の下でその利益を主張するものであり、上記出願の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、PD-L1タンパク質に結合する抗体及び融合タンパク質並びにかかる抗体及び融合タンパク質を使用する方法に関する。
【0003】
配列表への参照
配列表の公式な写しは、EFS-Webを介し、ASCIIフォーマットのテキストファイルとして、ファイル名「09793-006WO1_SeqList_ST25.txt」、作成日2021年5月12日、及びサイズ234,722バイトで、本明細書と同時に提出される。EFS-Webを介して提出された配列表は、本明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
がんとは、身体の他の部分に侵入又は拡散し、主要死因を構成する可能性がある異常な細胞増殖を伴う疾患の大きなグループを表す。がん細胞は正常細胞から形質転換(発癌)するので、がん細胞によって提示される抗原表面タンパク質及び/又は糖タンパク質は、宿主生物体の正常な非腫瘍細胞に存在する抗原と同一又はそれに高度に類似している。したがって、宿主生物体の免疫系は、がん細胞を正常細胞から検出及び区別するのが困難な場合がある。加えて、がん細胞は、別のメカニズムを取り入れて宿主の免疫系の検出を回避することができる。
【0005】
プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)は、阻害性チェックポイント分子、PD1に結合し、それにより、妊娠、自己免疫疾患、及び肝炎等のその他の疾患状態の間の適応免疫応答を抑制する膜貫通タンパク質である。加えて、PD-L1はがん組織で高度に発現しており、その発現レベルは腫瘍の悪性度と強く相関することが見いだされてきた。PD-L1の過剰発現及びその受容体タンパク質であるPD1へのその結合は、がん細胞が宿主生物体の免疫系による破壊を回避するメカニズムにとって極めて重要であると考えられている。
【0006】
インターロイキン10又は「IL10」(サイトカイン合成阻害因子、CSIF、IL-10、IL10A、GVHDS、又はTGIFとしても知られる)は、免疫調節及び炎症において複数の効果を有するサイトカインである。IL10は、マクロファージ上のTh1サイトカイン、MHCクラスII抗原、及び共刺激分子の発現をダウンレギュレートすることが知られている。IL10はまた、B細胞の生存、増殖、及び抗体産生を増強することが知られている。IL10は、NF-κB活性を遮断することができ、JAK-STATシグナル伝達経路の調節に関与している。IL10は、マクロファージやTh1 T細胞等の細胞によって産生されるIFN-γ、IL-2、IL-3、TNFα及びGM-CSF等の炎症性サイトカインの合成を阻害することができる。また、IL10は、抗原提示細胞の抗原提示能を抑制する強力な能力を発揮する;しかし、ある特定のT細胞(Th2)及び肥満細胞に向けても刺激的であり、B細胞の成熟及び抗体産生を刺激する。
【0007】
IL10は、腫瘍転移の強力な阻害剤及び免疫がん処置法におけるに有用な免疫賦活剤として認められてきた。トランスジェニックマウスでは、IL10が発現すると又はIL10で投薬すると、原発腫瘍の成長を制御し、転移性の負担を低減することが観察されてきた。組換えマウスIL10のPEG化バージョンは、マウスモデルでIFNγ及びCD8+ T細胞依存性抗腫瘍免疫を誘導することが示されてきた。PEG化組換えヒトIL10は、細胞傷害性分子であるグランザイムB及びパーフォリンのCD8+ T細胞分泌を増強し、T細胞受容体依存性IFNγ分泌を強めることが示されてきた。治験では、PEG化組換えヒトIL10(PEG-rHuIL-10、AM0010)は、実質的な抗腫瘍効力を呈し、免疫刺激性サイトカインIFNγ、IL-18、IL-7、GM-CSF及びIL-4の用量滴定可能な誘導を惹起することが見いだされてきた。処置患者は、PD1やリンパ球活性化遺伝子3(LAG3)+や向上したFasリガンド(FasL)等の、活性化マーカーを発現する末梢CD8+ T細胞の増加、並びに血清TGFβの低下も呈した。これらの知見により、IL10処置によって、ヒトにおいて優勢免疫賦活効果がもたらされることが示唆される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
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【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示は、高親和性でヒトPD-L1と特異的に結合する抗PD-L1抗体を提供する。本抗体は、免疫チェックポイント分子PD1へのPD-L1結合によって媒介される免疫調節効果を低下させる、阻害する、及び/又は完全に遮断することができる。本開示はまた、抗PD-L1抗体と1つ又は2つのIL10ポリペプチドとの融合体も提供する。本開示のこれらの抗PD-L1/IL10融合タンパク質は、PD1へのPD-L1結合によって媒介される免疫調節効果を遮断することと、IL10によって媒介される免疫賦活効果をもたらすこととの併用治療効果を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
少なくとも一実施形態では、本開示は、
(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域(CDR-L2)、及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに/又は
(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)、及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)
を含む抗PD-L1抗体を提供し、ここで:
(a)CDR-H1は、配列番号49、57、65、87、93、99、105、119、及び124から選択されるアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-H2は、配列番号50、58、66、88、94、100、106、110、115、120、及び125から選択されるアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H3は、配列番号51、59、67、89、95、101、及び111から選択されるアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-L1は、配列番号53、61、及び69から選択されるアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-L2は、配列番号54、62、及び70から選択されるアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-L3は、配列番号55、63、71、91、97、103、108、113、117、及び122から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0012】
少なくとも一実施形態では、本開示は抗PD-L1抗体を提供し、ここで:
(a)CDR-H1は配列番号49のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号50のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号51のアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-H1は配列番号57のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号58のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号59のアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H1は配列番号65のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号66のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号67のアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-H1は配列番号87のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号88のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号89のアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-H1は配列番号99のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号100のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号101のアミノ酸配列を含み;
(g)CDR-H1は配列番号105のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号106のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み;
(h)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号111のアミノ酸配列を含み;
(i)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号115のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み;
(j)CDR-H1は配列番号119のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号120のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み;又は
(k)CDR-H1は配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号125のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含む。
【0013】
少なくとも一実施形態では、本開示は抗PD-L1抗体を提供し、ここで:
(a)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-L1は配列番号61のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号62のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号63のアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-L1は配列番号69のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号70のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号71のアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号91のアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号97のアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号103のアミノ酸配列を含み;
(g)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号108のアミノ酸配列を含み;
(h)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号113のアミノ酸配列を含み;
(i)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号117のアミノ酸配列を含み;又は
(j)CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号122のアミノ酸配列を含む。
【0014】
少なくとも一実施形態では、本開示は抗PD-L1抗体を提供し、ここで:
(a)CDR-H1は配列番号49のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号50のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号51のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-H1は配列番号57のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号58のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号59のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号61のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号62のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号63のアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H1は配列番号65のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号66のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号67のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号69のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号70のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号71のアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-H1は配列番号87のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号88のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号89のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号91のアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号97のアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-H1は配列番号99のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号100のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号101のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号103のアミノ酸配列を含み;
(g)CDR-H1は配列番号105のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号106のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号108のアミノ酸配列を含み;
(h)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号111のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号113のアミノ酸配列を含み;
(i)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号115のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号117のアミノ酸配列を含み;
(j)CDR-H1は配列番号119のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号120のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号122のアミノ酸配列を含み;又は
(k)CDR-H1は配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号125のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含む。
【0015】
少なくとも一実施形態では、本開示は抗PD-L1抗体を提供し、ここで、本抗体は、配列番号52、60、68、90、96、102、107、112、116、121、及び126から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列; 及び/又は配列番号56、64、72、92、98、104、109、114、118、及び123から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含み;任意選択で、ここで:
(a)本抗体は、配列番号52と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号56と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(b)本抗体は、配列番号60と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号64と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(c)本抗体は、配列番号68と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号72と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(d)本抗体は、配列番号90と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号92と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(e)本抗体は、配列番号96と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号98と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(f)本抗体は、配列番号102と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号104と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(g)本抗体は、配列番号107と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号109と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(h)本抗体は、配列番号112と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号114と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(i)本抗体は、配列番号116と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号118と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(j)本抗体は、配列番号121と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号123と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;又は
(k)本抗体は、配列番号126と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号56と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。
【0016】
少なくとも一実施形態では、本開示は抗PD-L1抗体を提供し、ここで、本抗体は、
配列番号149、150、152、154、155、156、157、158、159、160、及び161から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖(HC)アミノ酸配列、及び/又は配列番号128、130、132、134、136、138、140、142、151、及び153から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列を含み;任意選択で、ここで、本抗体は:
(a)配列番号149のHCアミノ酸配列、及び配列番号142のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号150のHCアミノ酸配列、及び配列番号151のLCアミノ酸配列;
(c)配列番号152のHCアミノ酸配列、及び配列番号153のLCアミノ酸配列;
(d)配列番号154のHCアミノ酸配列、及び配列番号128のLCアミノ酸配列;
(e)配列番号155のHCアミノ酸配列、及び配列番号130のLCアミノ酸配列;
(f)配列番号156のHCアミノ酸配列、及び配列番号132のLCアミノ酸配列;
(g)配列番号157のHCアミノ酸配列、及び配列番号134のLCアミノ酸配列;
(h)配列番号158のHCアミノ酸配列、及び配列番号136のLCアミノ酸配列;
(i)配列番号159のHCアミノ酸配列、及び配列番号138のLCアミノ酸配列;
(j)配列番号160のHCアミノ酸配列、及び配列番号140のLCアミノ酸配列;又は
(k)配列番号161のHCアミノ酸配列、及び配列番号142のLCアミノ酸配列
を含む
【0017】
少なくとも一実施形態では、本開示は抗PD-L1抗体を提供し、ここで、本抗体は、IL2、IL7、IL10、IL12、IL15、IL21又はIFN-αから選択されるサイトカインにリンカーを介して融合された重鎖(HC)を含み;任意選択で、ここで、リンカーは、配列番号74、75、76、77、78、及び79から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0018】
サイトカインにリンカーを介して融合されたHCを含む抗PD-L1抗体の少なくとも一実施形態では、サイトカインはIL10であり;任意選択で、ここで:
(a)IL-10ポリペプチドに融合されたHCは、配列番号83、84、85、127、129、131、133、135、137、139、及び141から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列を含み;
(b)IL10は配列番号73のアミノ酸配列を含み; 及び/又は
(c)IL10は、そのサイトカイン活性を保持する、IL10の天然に存在する若しくは操作されたバリアントであり;
(d)IL10は、そのサイトカイン活性を保持する、IL10の合成的に改変されたバージョンであり; 及び/又は
(e)IL10は、1つ、2つ、若しくは4つのIL10ポリペプチドを含む。
【0019】
少なくとも一実施形態では、本開示は、IL10ポリペプチドにリンカーを介して融合されたHCを含む抗PD-L1抗体であって、
(i)第1の軽鎖相補性決定領域(CDR-L1)、第2の軽鎖相補性決定領域 (CDR-L2)、及び第3の軽鎖相補性決定領域(CDR-L3)、並びに
(ii)第1の重鎖相補性決定領域(CDR-H1)、第2の重鎖相補性決定領域(CDR-H2)、及び第3の重鎖相補性決定領域(CDR-H3)を含む抗PD-L1抗体を提供し、ここで:
(a)CDR-H1は配列番号1のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号2のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号3のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号5のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号6のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号7のアミノ酸配列を含み;
(b)CDR-H1は配列番号9のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号10のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号14のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号15のアミノ酸配列を含み;
(c)CDR-H1は配列番号17のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号18のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号19のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号21のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号22のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号23のアミノ酸配列を含み;
(d)CDR-H1は配列番号25のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号26のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号27のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号29のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号30のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号31のアミノ酸配列を含み;
(e)CDR-H1は配列番号33のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号34のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号35のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号37のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号38のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号39のアミノ酸配列を含み;
(f)CDR-H1は配列番号41のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号42のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号43のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号45のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号46のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号47のアミノ酸配列を含み;
(g)CDR-H1は配列番号49のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号50のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号51のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含み;
(h)CDR-H1は配列番号57のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号58のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号59のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号61のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号62のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号63のアミノ酸配列を含み;
(i)CDR-H1は配列番号65のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号66のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号67のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号69のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号70のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号71のアミノ酸配列を含み;
(j)CDR-H1は配列番号87のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号88のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号89のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号91のアミノ酸配列を含み;
(k)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号94のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号97のアミノ酸配列を含み;
(1)CDR-H1は配列番号99のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号100のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号101のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号103のアミノ酸配列を含み;
(m)CDR-H1は配列番号105のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号106のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号108のアミノ酸配列を含み;
(n)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号110のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号111のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号113のアミノ酸配列を含み;
(o)CDR-H1は配列番号93のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号115のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号117のアミノ酸配列を含み;
(p)CDR-H1は配列番号119のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号120のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号122のアミノ酸配列を含み;又は
(q)CDR-H1は配列番号124のアミノ酸配列を含み、CDR-H2は配列番号125のアミノ酸配列を含み、CDR-H3は配列番号95のアミノ酸配列を含み、CDR-L1は配列番号53のアミノ酸配列を含み、CDR-L2は配列番号54のアミノ酸配列を含み、CDR-L3は配列番号55のアミノ酸配列を含む。
【0020】
少なくとも一実施形態では、本開示は、IL10ポリペプチドにリンカーを介して融合されたHCを含む抗PD-L1抗体であって、配列番号4、12、20、28、36、44、52、60、68、90、96、102、107、112、116、121、及び126から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)アミノ酸配列; 及び/又は配列番号8、16、24、32、40、48、56、64、72、92、98、104、109、114、118、及び123から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)アミノ酸配列を含む抗PD-L1抗体を提供し;任意選択で、ここで:
(a)本抗体は、配列番号4と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号8と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(b)本抗体は、配列番号12と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号16と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(c)本抗体は、配列番号20と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号24と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(d)本抗体は、配列番号28と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号32と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(e)本抗体は、配列番号36と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号40と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(f)本抗体は、配列番号44と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号48と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(g)本抗体は、配列番号52と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号56と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(h)本抗体は、配列番号60と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号64と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(i)本抗体は、配列番号68と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号72と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(j)本抗体は、配列番号90と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号92と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(k)本抗体は、配列番号96と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号98と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(l)本抗体は、配列番号102と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号104と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(m)本抗体は、配列番号107と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号109と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(n)本抗体は、配列番号112と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列:及び/若しくは配列番号114と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(o)本抗体は、配列番号116と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列:及び/若しくは配列番号118と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;
(p)本抗体は、配列番号121と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号123と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含み;又は
(q)本抗体は、配列番号126と少なくとも90%の同一性を有するVHアミノ酸配列;及び/若しくは配列番号56と少なくとも90%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。
【0021】
少なくとも一実施形態では、本開示は、IL10ポリペプチドにリンカーを介して融合されたHCを含む抗PD-L1抗体であって、配列番号80、81、82、83、84、85、127、129、131、133、135、137、139、及び141から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有するHC-IL10融合アミノ酸配列、並びに配列番号128、130、132、134、136、138、140、142、144、146、及び148から選択される配列と少なくとも90%の同一性を有する軽鎖(LC)アミノ酸配列を含む抗PD-L1抗体を提供し;任意選択で、ここで、本抗体は
(a)配列番号80のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号144のLCアミノ酸配列;
(b)配列番号81のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号146のLCアミノ酸配列;
(c)配列番号82のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号148のLCアミノ酸配列;
(d)配列番号83のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号142のLCアミノ酸配列;
(e)配列番号84のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号151のLCアミノ酸配列;
(f)配列番号85のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号153のLCアミノ酸配列;
(g)配列番号127のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号128のLCアミノ酸配列;
(h)配列番号129のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号130のLCアミノ酸配列;
(i)配列番号131のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号132のLCアミノ酸配列;
(j)配列番号133のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号134のLCアミノ酸配列;
(k)配列番号135のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号136のLCアミノ酸配列;
(l)配列番号137のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号138のLCアミノ酸配列;
(m)配列番号139のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号140のLCアミノ酸配列;又は
(n)配列番号141のHC-IL10融合アミノ酸配列、及び配列番号142のLCアミノ酸配列
を含む。
【0022】
少なくとも一実施形態では、本開示は抗PD-L1抗体を提供し、ここで:
(a)本抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下の結合親和性でヒトPD-L1に結合し;任意選択で、ここで、結合親和性は、配列番号174のhuPD-L1ポリペプチドに対する平衡解離定数(KD)によって測定され;
(b)本抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下の結合親和性でカニクイザルPD-L1に結合し;任意選択で、ここで、結合親和性は、配列番号176のcynoPD-L1ポリペプチドに対する平衡解離定数(KD)によって測定され;
(c)タンパク質は、MC/9細胞増殖を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%又はそれを超えて増加させ;
(d)タンパク質は、活性化CD8 T細胞からのIFNγ及びグランザイムBの産生を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、又はそれを超えて増加させ;並びに/又は
(e)本抗体は、28日目に測定された同系マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍体積を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、又はそれを超えて低下させ、ここで、マウス腫瘍モデルは:CT26結腸がん、EMT6乳がんから選択される。
【0023】
本開示はまた、本明細書に開示されている抗PD-L1抗体の実施形態を提供し、以下の実施形態を含む:(i)本抗体はヒト、ヒト化、又はキメラ抗体である;(ii)本抗体は組換えタンパク質への融合体;任意選択で、IL10ポリペプチドへの融合体を含む;(iii)本抗体はクラスIgGの完全長抗体であり、任意選択で、ここで、クラスIgG抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるアイソタイプを有する;(iv)本抗体は、Fc領域バリアント、任意選択でエフェクター機能を変化させるFc領域バリアント、及び/又は抗体半減期を変化させるバリアントを含む;(v)本抗体は抗体断片であり、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、単一ドメイン抗体(VHH)、及びscFvからなる群から任意選択で選択される;(vi)本抗体は、免疫コンジュゲートを含み、任意選択で、ここで、免疫コンジュゲートは、PD-L1媒介性の疾患又は状態を処置するための治療薬を含む;又は(vii)本抗体は多重特異性抗体であり、任意選択で二重特異性抗体である。
【0024】
少なくとも一実施形態では、本開示は、本開示の抗PD-L1抗体をコードする単離されたポリヌクレオチド若しくはベクターを提供する。少なくとも一実施形態では、本開示は、本開示の抗PD-L1抗体をコードするポリヌクレオチド又はベクターを含む単離された宿主細胞を提供する。少なくとも一実施形態では、本開示はまた、抗体が産生されるように、抗PD-L1抗体をコードするポリヌクレオチド又はベクターを含む宿主細胞を培養する工程を含む、本開示の抗PD-L1抗体を産生する方法を提供する。
【0025】
少なくとも一実施形態では、本開示は、本開示の抗PD-L1抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する;任意選択で、ここで、組成物は、IL10ポリペプチド、化学療法剤、及び/又は免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む抗体を更に含む。
【0026】
少なくとも一実施形態では、本開示は、対象におけるPD-L1媒介性疾患を処置する方法を提供し、本方法は、本開示の抗PD-L1抗体の治療有効量を対象に投与する工程、又は、本開示の医薬組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含み;任意選択で、ここで、疾患はがんであり;任意選択で、ここで、がんは結腸がん、膵臓がん、卵巣がん、肝臓がん、腎がん、乳がん、肺がん、胃がん、頭頸部がん、及び口腔がんである。
【0027】
少なくとも一実施形態では、本開示は、PD-L1アンタゴニスト及びIL-10アゴニストを対象に投与する工程を含む、対象におけるがんを処置するための方法を提供し;任意選択で、ここで、PD-L1アンタゴニストは、抗PD-L1抗体、shRNA、siRNA、miRNA、PD-L1の小分子阻害剤、又はそれらの組合せを含み;任意選択で、ここで、IL-10アゴニストは、IL-10、IL-10受容体結合タンパク質、又はそれらの組合せであり;任意選択で、ここで、PD-L1アンタゴニストは、本開示の抗PD-L1抗体であり;任意選択で、ここで、PD-L1アンタゴニスト及びIL10アゴニストは、IL10ポリペプチドにリンカーを介して融合されたHCを有する抗PD-L1抗体を含み;任意選択で、ここで、本方法は対象にT細胞療法を投与する工程を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例1に記載のように生成、クローニング、発現、及び精製された、完全長IgGフォーマットの例示的な抗PD-L1抗体、及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質のSDS-PAGEゲル画像を表す図である。
図1A:アベルマブ、アベルマブ/IL10のSDS-PAGE画像。
図1B:デュルバルマブ及びデュルバルマブ/IL-10のSDS-PAGE画像。
図1C:抗PD-L1抗体、PHS102、PHS206、PHS219、及び抗PD-L1/IL10融合体:PHS102/IL10、PHS206/IL10、及びPHS219/IL10のSDS-PAGE画像。N:非還元、R:還元。
【
図2】例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質がヒトPD1へのヒトPD-L1の特異的結合を遮断する能力を示す、競合ELISA研究の結果のプロットを表す図である。組換えヒトPD-L1(1μg/mL)をマイクロタイターウェルに固定化し、ビオチンコンジュゲートヒトPD1を添加し、実施例2に記載のように、ELISAを使用してストレプトアビジンによって検出した。競合活性を試験するために、抗PD-L1又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質の連続希釈物を添加した。
図2A:例示的な抗PD-L1抗体、アテゾリズマブ、PHS102、PHS206、及びPHS219によって呈されたPD-L1へのPD1の結合を遮断する図。
図2B:例示的な抗PD-L1/IL10融合体、アテゾリズマブ/IL10、PHS102/IL10、PHS206/IL10、及びPHS219/IL10によって呈されたPD-L1へのPD1の結合を遮断する図。
図2C:例示的な抗PD-L1/IL10融合体、アベルマブ/IL10、及びデュルバルマブ/IL10によって呈されたPD-L1へのPD1の結合を遮断する図。
【
図3AB】例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質の、ヒトPD-L1を過剰発現する安定なF293細胞(「F293/hPDL1」)への結合に関するフローサイトメトリー研究からの結果のプロットを表す図である。上記F293細胞は、実施例3に記載のように、完全長ヒトPD-L1発現構築物をF293細胞にトランスフェクトし、次いで選択薬物耐性に対して選択することによって生成した。
図3Aは、実施例1のように調製した抗PD-L1抗体の連続希釈物と共にインキュベートした細胞の結果を示す図である。
図3Bは、実施例1のように調製した対応する抗PD-L1/IL10融合タンパク質の連続希釈物と共にインキュベートした細胞の結果を示す図である。細胞表面結合を、フローサイトメトリーによって解析し、幾何学的MFIとして表した。
【
図3CD】例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質が、ヒトPD-L1を過剰発現する安定なF293細胞(「F293/hPDL1」)へのヒトPD1の特異的結合を遮断する能力を示す、フローサイトメトリー研究からの結果のプロットを表す図である。F293/hPDL1発現細胞は、実施例3に記載のように、完全長ヒトPD-L1発現構築物をF293細胞にトランスフェクトし、次いで選択薬物耐性に対して選択することによって生成した。F293/hPDL1細胞を、ビオチンコンジュゲートhPD1(20μg/mL)及び例示的な抗PD-L1抗体(
図3C)又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質(
図3D)の連続希釈物と共に氷上で1時間、インキュベートした。PD1の細胞表面結合をストレプトアビジンによって検出し、フローサイトメトリーによって解析した。
【
図4】実施例4に記載のような、例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質によるPD1シグナル伝達阻害のプロット結果を表す図である。例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質を、U2OS PD-L1細胞株の共培養によって媒介されるPD1活性化を遮断する能力についてアッセイした。U2OS PD-L1細胞を、抗PD-L1抗体(
図4A)又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質(
図4B)の連続希釈物で1時間処理し、その後に、Jurkat PD1シグナル伝達細胞で、室温で2時間、刺激した。
【
図5】例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質が、CD4 T細胞-DC-混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞活性化を増強する能力を示す研究結果のプロットを表す図である。
図5A:CD4 T細胞を、0.67μg/mLにての抗PD-L1抗体又はIgG対照の存在下で、同種異系成熟樹状細胞(DC)と共に共培養した。
図5B:CD4 T細胞を、0.2μg/mLにての種々の抗PDL1/IL10融合タンパク質(又はIL10-Fc対照)の存在下で、同種異系成熟樹状細胞(DC)と共に共培養した。2日後、ELISAによるIL-2産生の解析用に上清を採取した。平均±SDを示す。*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001。
【
図6】実施例6に記載のように、例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質によるMC/9細胞増殖の誘導を示す研究で得られたデータのプロットを表す図である。MC/9細胞を、IL10-Fc及び本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質と共に3日間共培養した。細胞増殖はCellTiter-Gloアッセイによって測定した。
【
図7】実施例7に記載のように、活性化CD8 T細胞からのIFNγ及びグランザイムBの産生の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質による増強を示す研究で得られたデータのプロットを表す図である。単離CD8 T細胞を抗CD3及び抗CD28で3日間活性化した。活性化されたCD8 T細胞を、IL10-Fc又は抗PDL1/IL10融合タンパク質で3日間処理し、抗CD3で4時間誘引した。IFNγ(
図7A)及び細胞傷害性タンパク質グランザイムB(
図7B)のレベルをELISAによって測定した。
【
図8A】本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質が、同系マウスCT26腫瘍モデルにおいて腫瘍負荷を制御するように作用することを示す研究(実施例8に記載)で得られたデータのプロットを表す図である。CT26腫瘍が50~10mm
3に達したら、マウスを無作為化し、次いで、PBS対照、IL10-Fc(3mg/kg)、抗PD-L1/TGFβR(5.8mg/kg)、抗PD-L1(4.9mg/kg)、抗CSF1R/IL10(36mg/kg)、又は抗PD-L1/IL10(6mg/kg)で週2回、3週間、処置した。0日目に腫瘍細胞を移植されたマウスの経時的な腫瘍体積。n=1群あたり7匹のマウス。平均±SEMを示す。***p<0.001、****p<0.0001。
【
図8B】本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質が、同系マウスEMT6腫瘍モデルにおいて腫瘍負荷を制御するように作用することを示す研究(実施例8に記載)で得られたデータのプロットを表す図である。EMT6腫瘍が50~10mm
3に達したら、マウスを無作為化し、次いで、PBS対照、抗PDL1(5mg/kg)、IL10-Fc(3mg/kg)、抗PDL1/TGFβR(6mg/kg)、又は抗PDL1/IL10(6mg/kg)で週2回、3週間、処置した。0日目に腫瘍細胞を移植されたマウスの経時的な腫瘍体積。n=1群あたり7匹のマウス。平均±SEMを示す。*p<0.05、***p<0.001、****p<0.0001。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本開示は、高親和性でPD-L1と特異的に結合し、それにより、免疫調節に関与するタンパク質リガンドとしてのPD-L1の機能、特に、免疫チェックポイント分子PD1のリガンドとしてのPD-L1の機能を阻害する、低下させる、及び/又は完全に遮断する、ヒト化抗体を含めた抗体を提供する。PD-L1/PD1免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害によって、抗腫瘍T細胞応答が増強すると考えられている。治験では、PD-L1阻害剤の患者における抗腫瘍効果は、単独の薬剤として投与された場合、限定的であったので、これらの阻害剤とその他の抗腫瘍治療アプローチとの併用が必要であると考えられている。IL10は、抗炎症及びCD8+ T細胞の活性化特性を有するサイトカインである。強力なIL-10シグナルは、腫瘍特異的CD8+ T細胞の増殖を促進し、消耗したT細胞を再活性化し、それによってT細胞の細胞傷害性を高めることができる。本開示は、ヒトIL10ポリペプチドとの抗PD-L1抗体融合体として含む、IL10アゴニストと組み合わせた抗PD-L1抗体の使用を企図する。本明細書に開示されているように、PD-L1/PD1シグナル伝達免疫抑制を減少するPD-L1阻害と、TMEにおけるCD8+ T細胞傷害性を増強する濃縮IL10用量との組合せによって、がん処置への向上した治療アプローチを提供することができる。
【0030】
したがって、本開示の抗PD-L1抗体(IL10ポリペプチドに融合された抗PD-L1抗体を含めて)を含む組成物又は製剤のいずれもが、がん等の、PD-L1又はその標的受容体タンパク質であるPD1の機能によって媒介される疾患の処置のための治療法として使用され得ることが企図される。更に、本開示の抗PD-L1抗体は、CD8+ T細胞を活性化する抗体等の他の治療法、及び/又は他の標的免疫チェックポイント分子(これには、限定されないが、PD1、LAG3、CTLA-4、A2AR、TIM-3、BTLA、CD276、CD328、VTCN1、IDO、KIR、NOX2、VISTA、OX40、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、GITR、ICOSが含まれる)と組み合わせて療法として使用され得ることが企図される。
【0031】
用語及び技法の概要
本明細書における説明及び添付の特許請求の範囲について、単数形「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、文脈が明確に別に示さない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1種のタンパク質」への言及は、2種以上のタンパク質を含み、「1種の化合物」への言及は、2種以上の化合物を指す。特許請求の範囲は、いかなる選択的な要素も排除するように記載される場合があることを更に留意されたい。したがって、この陳述文は、請求項の要素の記述と関連して、「単独の(solely)」、「唯一の(only)」等の排他的な用語を使用するための、又は「否定的(negative)」な限定を使用するための、前提として機能すべく意図される。「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、「含んでいる(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」の使用は互換可能であり、制限であることを意図しない。種々の実施形態の説明で「含んでいる(comprising)」という用語を使用する場合、一部の特別な場合においては、実施形態を、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」又は「~からなる(consisting of)」という言回しを使用して代替的に説明することができることは、当業者であれば理解することを更に理解すべきである。
【0032】
値の範囲が提供されている場合、明確に別段の定めがない限り、その範囲の上限と下限の間の、明確に別段の定めがない限りは値のそれぞれの介在する整数及び値のそれぞれの介在する整数のそれぞれの10分の1、並びに言明された範囲内の言明された他の任意の値又は介在する値が本発明内に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲内に独立して含まれ得、また、言明された範囲内の任意の具体的に除外された限度を条件として、本発明の範囲内に包含される。言明された範囲が限度の内の一方又は両方を含む場合、これらの含まれた限度の内の(i)一方又は(ii)両方を除外する範囲も本発明に含まれる。例えば、「1~50」は、「2~25」、「5~20」、「25~50」、「1~10」等を含む。
【0033】
一般に、本明細書で使用される命名法、並びに本明細書に記載の技法及び手順には、以下に記載の通常の技法や方法論等の、当業者によって十分に理解され、通常に用いられるものが含まれる:Sambrookら、Molecular Cloning-A Laboratory Manual (2版)、Vols. 1~3、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989 (以下、「Sambrook」); Current Protocols in Molecular Biology、F. M. Ausubelら編、Current Protocols、a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc. (2011年増補) (以下、「Ausubel」); Antibody Engineering、Vols. 1 and 2、R. Kontermann and S. Dubel編、Springer-Verlag、Berlin and Heidelberg (2010); Monoclonal Antibodies: Methods and Protocols、V. Ossipow and N. Fischer編、2版、Humana Press (2014); Therapeutic Antibodies: From Bench to Clinic、Z. An編、J. Wiley & Sons、Hoboken、N.J. (2009);及びPhage Display、Tim Clackson and Henry B. Lowman編、Oxford University Press、United Kingdom (2004)。
【0034】
本開示で参照されるすべての刊行物、特許、特許出願、及びその他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願、及びその他の文書のそれぞれが、あたかも、すべての目的のために参照により組み込まれていると個別に示されているかのように、同程度にすべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
他に特に定義されていない限り、本明細書に使用されたすべての技術的及び科学的用語は、本発明に関連する当業者によって一般的に理解される意味を持つものとする。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定であることを意図するものではないことを理解されたい。本開示を解釈する目的で、用語の以下の説明が適用され、適切であれば、単数形で使用される用語は複数形も含み、逆もまた同様である。
【0036】
「PD-L1(又は「PDL1」)」とは、本明細書で使用される場合、膜貫通タンパク質、プログラム細胞死リガンド1を指し、本明細書で使用される場合、ヒト、カニクイザル、マウスの各PD-L1タンパク質、及びこれらのタンパク質の任意のアイソフォームを包含する。種々の例示的なPD-L1タンパク質のアミノ酸配列は、当技術分野で知られており、下のTable 1(表2)及び添付の配列表に提供されている。
【0037】
「PD-L1媒介性状態」又は「PD-L1媒介性疾患」とは、本明細書で使用される場合、受容体及び免疫チェックポイント分子、PD1(又は「PD-1」)へのPD-L1の特異的結合に関連する任意の病状を包含する。例えば、T細胞上のPD1へのPD-L1の特異的結合は、免疫応答の一部としてそれらの活性化を阻害するように作用する。したがって、PD-L1媒介性疾患には、限定されないが、がんを含めて、PD-L1のアンタゴニスト若しくは阻害剤、及び/又はPD1によって媒介される及び/又はそれらに応答する任意の疾患又は状態が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「IL10」又は「IL-10」とは、サイトカイン合成阻害因子(CSIF)としても知られるサイトカイン、インターロイキン10を指し、これにはまた、そのサイトカイン機能を保持する、インターロイキン10の天然に存在するバリアント、操作されたバリアント、及び/又は合成的に改変されたバージョンも含まれることが企図される。種々の例示的なIL10ポリペプチド及び組換えIL10融合構築物のアミノ酸配列は、下のTable 2(表3)及び添付の配列表に提供されている。サイトカイン機能を保持する他の例示的な操作された及び/又は改変されたIL10ポリペプチドが当技術分野で知られている(例えば、US 7,749,490 B2; US 2017/0015747 A1; Naing, A.ら「PEGylated IL-10 (Pegilodecakin) Induces Systemic Immune Activation, CD8+ T Cell Invigoration and Polyclonal T Cell Expansion in Cancer Patients.」Cancer Cell 34, 775~791頁.e3 (2018); Gorby, C.ら「Engineered IL-10 variants elicit potent immunomodulatory effects at low ligand doses.」Sci Signal 13, (2020); Yoon, S. I.ら「Epstein-Barr virus IL-10 engages IL-10R1 by a two-step mechanism leading to altered signaling properties.」J Biol Chem 287, 26586~26595頁(2012)を参照されたい)。
【0039】
本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」とは、自然には存在しない構成で連結されている(又は「融合されている」)2つ以上のタンパク質及び/又はポリペプチドの分子を指す。本開示の例示的な融合タンパク質には、そのC末端でポリペプチドリンカー配列を通して免疫グロブリンFc領域ポリペプチドに共有結合で連結されたIL10ポリペプチドを含む「IL10-Fc」融合タンパク質が含まれる。本開示の融合タンパク質にはまた、その重鎖C末端でポリペプチドリンカー配列を通してIL-10ポリペプチドに共有結合で連結されている完全長IgG抗体(重鎖ポリペプチドと軽鎖ポリペプチドの両方を有する)を含む「抗体融合体」が含まれる。
【0040】
本明細書で使用される「ポリペプチドリンカー」又は「リンカー配列」とは、鎖の各末端が別のポリペプチド分子に共有結合で付着し、それによって別のポリペプチドをコンジュゲート又は融合するように機能する2個以上のアミノ酸の鎖を指す。通常、ポリペプチドリンカーはアミノ酸5~30個のポリペプチド鎖を含む。広範囲のポリペプチドリンカーが当技術分野で知られており、本開示の組成物及び方法で使用することができる。本開示の組成物及び方法に含まれている例示的なポリペプチドリンカーには、(GGGGS)n、(SSSSG)n、(GGGG)(SGGGG)n、(EAAAK)n、(XP)n、ENLYFQ(-G/S)(通常、式中、nは2~6である)、及び本明細書の他の場所に開示されているその他の特定のリンカー配列が含まれる。
【0041】
「抗体」とは、本明細書で使用される場合、特定の抗原に特異的に結合するか、又はそれと免疫学的に反応性である1つ又は複数のポリペプチド鎖を含む分子を指す。本開示の例示的な抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体融合体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、一価抗体(例えば、シングルアーム抗体)、多価抗体、抗原結合断片(例えば、Fab'、F(ab')2、Fab、Fv、rIgG、及びscFv断片)、及び合成抗体(又は抗体模倣物)が含まれる。
【0042】
「抗PD-L1抗体」又は「PD-L1と結合する抗体」とは、抗体がPD-L1を標的とするための治療薬及び/又は診断薬として有用であるように、十分な親和性でPD-L1と結合する抗体を指す。一部の実施形態では、関連のない、非PD-L1抗原への抗PD-L1特異的抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)又は表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定して、PD-L1への本抗体の結合の約20%未満、約15%未満、約10%未満、又は約5%未満である。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、解離定数(KD)、<1μM、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<1pM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8Mから10-13Mまで、例えば、10-9Mから10-13Mまで)を有する。
【0043】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、又は「全抗体」とは、本明細書では互換的に使用されて、天然抗体の構造に実質的に類似する構造を有するか、又は本明細書で定義のFc領域を含有する重鎖を有する、抗体を指す。
【0044】
「抗体融合体」とは、通常には抗体の軽鎖(LC)又は重鎖(HC)の末端へのリンカーを介して、ポリペプチド又はタンパク質に共有結合でコンジュゲートしている(又は融合している)抗体を指す。本開示の例示的な抗体融合体には、抗体重鎖のC末端からIL10ポリペプチドのN末端までのアミノ酸15個のポリペプチドリンカー(例えば、配列番号74)を介して組換えIL10ポリペプチドに融合された抗PD-L1抗体が含まれる。抗体融合体は、本明細書において、「抗体/ポリペプチド」命名法で表示されて、「Ab/IL10」又は「抗PD-L1/IL10」等の融合成分を示す。本明細書の他の場所で記載のように、本開示の抗体融合体は、完全長IgG抗体を含むことができ、重鎖-軽鎖対の二量体複合体を含むが、この場合、重鎖C末端のそれぞれはポリペプチドリンカー配列を通してIL10ポリペプチドに連結されている。
【0045】
「抗体断片」とは、完全長抗体と同じ抗原と結合することができる、完全長抗体の一部を指す。抗体断片の例には、それらに限定されないが、Fv、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2;ダイアボディ;線形抗体;一価又はシングルアームド抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);及び抗体断片から形成された多重特異性抗体が含まれる。
【0046】
抗体の「クラス」とは、その重鎖が保有する定常ドメイン又は定常領域のタイプを指す。抗体の主要な5つのクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは更にサブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に分けられる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0047】
「可変領域」又は「可変ドメイン」とは、抗体が抗原へ結合する際に関与する抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを指す。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは(それぞれ、VH及びVL)は全体として類似の構造を有し、各ドメインは保存された4つのフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)を含む(例えば、Kindtら、Kuby Immunology、6版、W.H. Freeman and Co.、91頁を参照されたい)。単一のVHドメイン又はVLドメインが、抗原結合特異性を付与するのに十分である場合もある。更に、特定の抗原と結合する抗体を、その抗原と結合する抗体由来のVHドメイン又はVLドメインを使用して単離し、その結果、それぞれ、相補的なVLドメイン又はVHドメインのライブラリーをそれぞれスクリーニングすることができる(例えば、Portolanoら、J. Immunol. 150:880~887頁(1993); Clarksonら、Nature 352:624~628頁(1991)を参照されたい)。
【0048】
「超可変領域」又は「HVR」とは、本明細書で使用される場合、配列が超可変的であるか、且つ/又は構造的に定められたループ(「超可変ループ」)を形成する、抗体可変ドメインの領域のそれぞれのことを指す。一般に、天然抗体は、6つのHVR;重鎖可変ドメインVH(HVR-H1、HVR-H2、HVR-H3)に3つ及び軽鎖可変ドメインVL(HVR-L1、HVR-L2、HVR-L3)に3つを有する4本の鎖を含む。HVRは一般に、超可変ループ由来の及び/又は「相補性決定領域」(CDR)由来のアミノ酸残基を含む。いくつかの超可変領域の描出が、本明細書で使用されており、本明細書に包含される。Kabat Complementarity Determining Regions (CDR)は、配列の変動性に基づいており、最も一般的に使用されている(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版 Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、Md. (1991))。代わりに、Chothiaは構造ループの位置を指す(Chothia and Lesk J. Mol. Biol. 196:901~917頁(1987))。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia構造ループの間の折衷物を表し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアによって使用されている。「接触」超可変領域は、利用可能な複合結晶構造体の解析に基づく。これらのシステムの下で定義された超可変領域の残基範囲を、下の表に記載する。
【0049】
【0050】
上記のシステムに加えて、HVR及びCDRを、IMGT/V-Questと呼ばれ、Brochet, X.ら、Nucl. Acids Res. 36、W503~508頁(2008)に記載の、international ImMunoGeneTics information systemを使用して、特定することができる。PMID: 18503082;及びwww.imgt.org/IMGT_vquest/inputにて、オンラインで使用可能。IMGT/V-Questは、IMGTのユニークなナンバリングを使用して、最も近い生殖系列V遺伝子の可変領域ヌクレオチド配列へのアラインメントを解析し、その結果、HVRとCDRを特定する。
【0051】
超可変領域(HVR)には、本明細書で使用される場合、以下のような拡張又は代替の超可変領域が含まれ得る:27~32、27~36、24~34、又は24~38(HVR-L1);50~52、54~56、50~56又は54~60(HVR-L2); 89~97又は93~101(HVR-L3);VHドメイン中の、26~33、26~35、又は31~35(HVR-H1);51~58、50~61、又は50~66(H2);及び97~110、97~112、99~110、又は99~112(H3)。可変ドメイン残基は、これらの定義のそれぞれについて、Kabatら、上記に従って番号が付けられている。
【0052】
「相補性決定領域」又は「CDR」とは、本明細書で使用される場合、最も高い配列変動性を有し、及び/又は抗原認識に関与する、可変ドメインのHVR内の領域を指す。一般に、天然抗体は6つのCDR;重鎖可変ドメインに3つ、VH(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、及び軽鎖可変ドメインに3つ、VL(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)を有する4本の鎖を含む。例示的なCDRは、可変ドメインアミノ酸残基の以下の各位置に存在する: 24~34、27~32、27~36、24~38(CDR-L1); 50~56、50~52、54~56、又は54~60(CDR-L2); 89~97、又は93~101(CDR-L3); 31~35、又は26~33(CDR-H1)、50~66、又は51~58(CDR-H2);及び99~112、99~110、97~112、又は97~110(CDR-H3)。
【0053】
「フレームワーク」又は「FR」とは、HVR残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に、4つのドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR配列及びFR配列は一般に、VH(又はVL)中に以下の配列で出現する:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0054】
別段の指示がない限り、HVR、CDR、FRの残基、及び可変ドメインのその他の残基の位置は、Kabatら、上記に従って、本明細書で番号が付けられる。
【0055】
「天然抗体」とは、天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。例えば、天然IgG抗体は、ジスルフィド結合している2つの同一の軽鎖と2つの同一の重鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端まで、各重鎖は、可変重鎖ドメイン又は重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)を有し、これに続いて、3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様に、N末端からC末端まで、各軽鎖は、可変軽鎖ドメイン又は軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)を有し、これに続いて、定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2タイプのうちの1つに割り当てることができる。
【0056】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」とは、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、集団を構成する個々の抗体は同一であり、及び/又は同じエピトープに結合するが、可能性のあるバリアント抗体(例えば、天然に存在する変異を含有するか、又はモノクローナル抗体の産生中に発生し、一般には少量で存在するバリアント抗体)を除く。様々な決定基(エピトープ)に対して向けられた様々な抗体を通常には含む、ポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して向けられている。従って、「モノクローナル」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体の特徴を示すものであり、特定の任意の方法による抗体の産生を必要とするものとして解釈されるべきではない。例えば、使用されるモノクローナル抗体は、限定されないが、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含めて、様々な技法によって作製することができ、モノクローナル抗体を作製するためのかかる方法及びその他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0057】
「キメラ抗体」とは、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が特定の起源又は種に由来し、一方、重鎖及び/又は軽鎖の残りが異なる起源又は種に由来する、抗体を指す。
【0058】
「ヒト化抗体」とは、非ヒトHVR由来のアミノ配列及びヒトFR由来のアミノ酸配列を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのすべてを実質的に含むが、この場合、HVRのすべて又は実質的にすべてが、非ヒト抗体のものに対応し、そして、FRのすべて又は実質的にすべてが、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は任意選択で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含むことができる。抗体の「ヒト化型」、例えば、非ヒト抗体とは、ヒト化を遂げた抗体を指す。
【0059】
「ヒト抗体」とは、ヒト又はヒト細胞により産生される抗体又はヒト抗体のレパートリーや他のヒト抗体をコードする配列を利用する非ヒト起源に由来する抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を保有する抗体を指す。ヒト抗体に関するこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0060】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンVL又はVHフレームワーク配列の選択に際して最も通常に存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVL配列又はVH配列の選択は可変ドメイン配列のサブグループからである。一般に、配列のサブグループは、Kabat, E.A.ら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、5版、Bethesda MD (1991), NIH Publication 91-3242, Vols. 1~3と同様なサブグループである。一実施形態では、VLについては、サブグループはKabatら、上記のようにサブグループカッパIである。一実施形態では、VHについては、サブグループはKabatら、上記のようにサブグループIIIである。
【0061】
本明細書で使用される「アクセプターヒトフレームワーク」とは、ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)フレームワーク又は重鎖可変ドメイン(VH)フレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワーク又はヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それらと同じアミノ酸配列を含むことができ、又は、アクセプターヒトフレームワークはアミノ酸配列の変化を含有してもよい。一部の実施形態では、アミノ酸変化の数は10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、5個以下、4個以下、3個以下、又は2個以下である。一部の実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列又はヒトコンセンサスフレームワーク配列と配列が同一である。
【0062】
「Fc領域」とは、免疫グロブリン重鎖のC末端ポリペプチド配列を含むダイマー複合体を指し、ここで、C末端ポリペプチド配列は、インタクトな抗体のパパイン消化によって得ることができる配列である。Fc領域は、天然Fc配列を含んでもバリアントFc配列を含んでもよい。免疫グロブリン重鎖のFc配列の境界は様々であるが、ヒトIgG重鎖Fc配列は通常、Fc配列の、Cys226位付近にあるアミノ酸残基から又はPro230位付近からカルボキシル末端に及ぶと定義されている。しかし、Fc配列のC末端リジン(Lys447)は、存在してもよく存在しなくてもよい。免疫グロブリンのFc配列は一般に、2つの定常ドメイン、CH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、任意選択で、CH4ドメインを含む。
【0063】
「Fc受容体」又は「FcR」とは、抗体のFc領域に結合する受容体を指す。一部の実施形態では、FcRは、天然ヒトFcRである。一部の実施形態では、FcRは、IgG抗体に結合するものであり(ガンマ受容体)、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び代替的にスプライシングされた形態が含まれる。FcγRII受容体には、主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害性受容体」)が含まれる。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)を含有する(例えば、Daeron、Annu. Rev. Immunol. 15:203~234頁(1997)を参照されたい)。FcRには、本明細書で使用される場合、母性IgGの胎児への移動(Guyerら、J. Immunol. 1 17:587頁(1976)及びKimら、J. Immunol. 24:249頁(1994))、並びに免疫グロブリンの恒常性の調節を担う、新生児受容体FcRnも含まれる。FcRは、例えば、Ravetch and Kinet、Annu. Rev. Immunol 9:457~92頁(1991); Capelら、Immunomethods 4:25~34頁(1994);及びde Haasら、J. Lab. Clin. Med. 126:330~41頁(1995)に、総説されている。
【0064】
「多重特異性抗体」とは、少なくとも異なる2つの結合部位を有する抗体であり、各部位は異なる結合特異性を有する。多重特異性抗体は、完全長抗体であっても抗体断片であってもよく、異なる結合部位はそれぞれ、異なる抗原に結合することができ、又は異なる結合部位は、同じ抗原の異なる2つのエピトープに結合することができる。
【0065】
「Fv断片」とは、完全な抗原認識及び結合部位を含有する抗体断片を指す。この領域は、密接な会合にある重鎖可変ドメイン1つと軽鎖可変ドメイン1つのダイマーから構成され、この会合は自然では、例えばscFvでは共有結合である。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VLダイマーの表面の抗原結合部位を画定するのは、この構成においてである。まとめると、この6つのHVR又はそのサブセットによって、抗体への抗原結合特異性が賦与される。しかし、単一の可変ドメイン(又は抗原に特異的なHVRを3つしか含んでいないFvの半分)でも、通常は結合部位全体よりも親和性は低いものの、抗原を認識し、これと結合する能力を有する。
【0066】
「Fab断片」とは、軽鎖の可変及び定常のドメイン、並びに重鎖の可変ドメイン及び第1の定常ドメイン(CH1)を含有する抗体断片を指す。「F(ab')2断片」は、Fabの間のヒンジシステインによってFabのカルボキシ末端の近くで一般に共有結合で連結している一対のFab断片を含む。抗体断片の他の化学的カップリングも当技術分野で知られている。
【0067】
「抗原結合アーム」とは、本明細書で使用される場合、目的の標的分子と特異的に結合する能力を有する抗体の成分を指す。通常には、抗原結合アームは、免疫グロブリンポリペプチド配列の、例えば、HVR及び/又は免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖の可変ドメイン配列の、複合体である。
【0068】
「単鎖Fv」又は「scFv」とは、抗体のVH及びVLドメインを含む抗体断片を指し、ここで、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖で存在する。一般に、Fvポリペプチドは、scFvが所望の抗原結合構造を形成することを可能とする、VHドメインとVLドメインとの間にポリペプチドリンカーを更に含む。
【0069】
「親和性」とは、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)との間の非共有結合の相互作用の総和の強度を指す。「結合親和性」とは、結合対(例えば、抗体と抗原)のメンバーどうしの間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xの、そのパートナーYに対する親和性は一般に、平衡解離定数(KD)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載のものを含めて、当技術分野で既知の共通の方法により測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な例示的かつ例となる実施形態を以下に記載する。
【0070】
「特異的に結合する」又は「特異的結合」とは、約1×10-7M以下の親和性値での、抗原への抗体の結合を指す。一部の実施形態では、抗体は、それが特異的に結合する抗原以外の抗原に対する二次親和性を有するが、ここで、「二次親和性」とは一般に、本明細書の他の場所で記載のように、約10nM超の親和性値での、二次抗原への抗体の結合を指す。抗体が二次抗原に対して二次親和性を有し得る場合、それにもかかわらず、かかる抗体は一次抗原に特異的に結合することになる。
【0071】
「単離された抗体」とは、その自然環境の成分から隔離された抗体を指す。一部の実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)又はクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換又は逆相HPLC)によって決定して、95%超の又は99%超の純度に精製される。抗体純度の評価方法の総説については、例えば、Flatmanら、J. Chromatogr. B 848:79~87頁を参照されたい。
【0072】
「エフェクター機能」とは、抗体アイソタイプによって異なる、抗体のFc領域に起因する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例には:Clq結合及び補体依存性細胞傷害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞傷害性(ADCC);ファゴサイトーシス;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)のダウンレギュレーション;及びB細胞の活性化が含まれる。
【0073】
「免疫コンジュゲート」とは、それに限定されないが細胞傷害性薬物を含めて、1つ又は複数の異種分子にコンジュゲートされた抗体を指す。
【0074】
「処置」、「処置する」又は「処置すること」とは、処置されている個体において障害の自然経過を変えようと試みる臨床介入を指し、発症予防のために行われても、臨床病理の経過の間に行われても、いずれでもよい。処置の所望の結果には、それらに限定されないが、障害の発生又は再発の防止、症状の軽減、障害の任意の直接的又は間接的な病理的帰結の減弱、転移の防止、進行速度の低下、疾患状態の寛解又は緩和、及び軽快又は予後の改善が含まれる。例えば、処置には、PD-L1及び/又はPD1若しくはその他のリガンドへのその結合によって媒介される疾患又は状態の、或いは、PD-L1が病因及び/又は進行においてある役割を果たす可能性のある疾患又は状態の、発症を遅らせるか又は進行を遅延させるために、抗PD-L1抗体を含む医薬製剤の治療有効量を対象に投与することが、含まれ得る。
【0075】
「医薬製剤」とは、有効成分の生物活性が有効であることを可能とする形態にあり、且つ、当該製剤が投与される対象に対して毒性である更なる成分をまったく含有しない、調製物を指す。医薬製剤は1つ又は複数の活性剤を含むことができる。例えば、医薬製剤は、製剤の単独の活性剤として抗PD-L1抗体を含むことができるか、又は抗PD-L1抗体と、1つ又は複数の更なる活性剤、IL10等の免疫活性化因子、又は免疫チェックポイント分子の阻害剤とを含むことができる。
【0076】
「単独の活性剤」とは、本明細書で使用される場合、処置されている状態に対して対象を処置するための関連する薬理学的効果を提供する、又は提供すると予想される、その製剤中に存在する唯一の活性剤である、医薬製剤中の活性剤を指す。単独の活性剤を含む医薬製剤は、医薬製剤における1つ又は複数の非活性剤、例えば、薬学的に許容される担体等の存在を排除しない。「非活性剤」とは、その状態に対して対象を処置することを意図した関連する薬理学的効果を提供すること、又はそうでなければ有意に寄与することが期待されないと思われる、薬剤である。
【0077】
「薬学的に許容される担体」とは、それが投与される対象にとって無毒である、有効成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、それらに限定されないが、緩衝剤、賦形剤、安定剤、又は防腐剤が含まれる。
【0078】
「免疫チェックポイント分子」とは、本明細書で使用される場合、免疫系経路を調節するように機能し、これによってその経路が無用に細胞を攻撃するのを妨げる分子を指す。抑制性と共刺激性の両方の多くの免疫チェックポイント分子が、がん及びウイルス感染症の処置における免疫療法(例えば、免疫阻害を遮断する遮断抗体による又は免疫刺激を促進するアゴニストによる)の標的である。がん免疫療法の標的とされる例示的な免疫チェックポイント分子には、それらに限定されないが、以下が含まれる: PD1、PD-L1、LAG3、CTLA-4、A2AR、TIM-3、BTLA、CD276、CD328、VTCN1、IDO、KIR、NOX2、VISTA、OX40、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、GITR、ICOS。
【0079】
「治療有効量」とは、所望の治療的又は予防的結果を達成するための、例えば、対象における疾患、障害、又は状態を処置又は予防するための、有効成分又は活性薬剤(例えば、医薬製剤)の量を指す。PD-L1媒介性の疾患又は状態の場合では、治療薬の治療有効量とは、疾患、障害、又は状態に伴う症状の1つ又は複数の症状を、ある程度までに、減少、予防、阻害、及び/又は緩和する、量である。がん療法では、in vivoでの効力は、例えば、原発腫瘍の成長、二次腫瘍の発生及び/又は成長、転移の発生及び/又は数、持続期間、重症度、及び/又は症状の再発、奏効率(RR)、奏効期間、及び/又は生活の質を評価することによって測定することができる。
【0080】
「同時に」とは、本明細書で使用される場合、2つ以上の治療薬の投与を指し、ここで、投与の少なくとも一部分が時間において重複する。したがって、同時投与には、1つ又は複数の薬剤の投与が、1つ又は複数の他の薬剤の投与を中止した後に、継続する場合の投薬レジメンが含まれる。
【0081】
「個体」又は「対象」とは、それらに限定されないが、飼いならされた動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサル等の非ヒトの霊長類)、ウサギ、及びげっ歯類(例えば、マウス及びラット)を含む哺乳動物を指す。
【0082】
種々の実施形態の詳細な説明
I. PD-L1及びPD1
ヒトPD-L1(本明細書では「huPD-L1」又は「hPD-L1」とも呼ばれる)の配列及び注釈は、UniProtエントリーQ9NZQ7に見いだすことができ、hPD-L1の完全長アミノ酸290個のアイソフォーム1配列は、本明細書に配列番号173として記載されている。配列番号174のより短い組換えヒトPD-L1.ECDセグメントを、本明細書の他の場所に記載の実施例において使用した。
【0083】
カニクイザルPD-L1(本明細書では「cynoPD-L1」とも呼ばれる)の配列及び注釈は、NCBI Reference Sequence XP_015292694.1/XP_014973151.1に見いだすことができる。配列番号176のより短い組換えcyno PD-L1.ECDセグメントを、本明細書の他の場所に記載の実施例の結合アッセイにおいて使用した。
【0084】
コグネート受容体ヒトPD-1であるヒトPD1の配列及び注釈は、UniProtエントリーQ8IX89に見いだすことができる。配列番号175のより短い組換えヒトPD1.ECDセグメントを、本明細書の他の場所に記載の実施例において使用した。
【0085】
本開示で使用される、PD-L1タンパク質及びPD1タンパク質及び組換え構築物の配列、並びに配列識別子に関する概要説明を、下のTable 1(表2)に提供する。配列はまた、添付の配列表にも含まれている。
【0086】
【0087】
II. IL10
ヒトIL10サイトカインは、アミノ酸178個のポリペプチドサブユニット2つのホモダイマータンパク質である。IL10は、2つのIL10受容体-1(IL-10Rαサブユニット)と2つのIL10受容体-2(IL-10Rβサブユニット)のタンパク質とから構成される受容体複合体を通してシグナルを伝達する。したがって、機能的受容体はIL10受容体分子4つから構成される。IL-10RαへのIL10結合は、JAK1及びTyk2によるIL10受容体の細胞質側末端のリン酸化を介してSTAT3シグナル伝達を誘導する。IL10は主として単球によって、より少ないが、リンパ球、すなわちII型Tヘルパー細胞(TH2)、肥満細胞、CD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞によって、そして活性化T細胞とB細胞のある特定のサブセットにおいて、産生される。IL10は、PD-1の誘引で単球によって産生され得る。本開示の実施例で使用されるヒトIL10ポリペプチド及び組換えIL10-Fc融合構築物のアミノ配列、並びにそれらの配列識別子に関する概要説明を、下のTable 2(表3)に提供する。配列はまた、添付の配列表にも含まれている。
【0088】
【0089】
天然に存在するヒトIL10に加えて、IL10のサイトカイン機能を保持する様々な操作された及び/又は合成的に改変されたIL10ポリペプチドが当技術分野で知られている。PEG化IL10であるペギロデカキン(Pegilodecakin)は、天然に存在するヒトIL10の抗腫瘍免疫監視機能を保持することが示されてきた。Naing, A.ら「PEGylated IL-10 (Pegilodecakin) Induces Systemic Immune Activation, CD8+ T Cell Invigoration and Polyclonal T Cell Expansion in Cancer Patients.」Cancer Cell 34, 775~791頁. (2018)を参照されたい。操作されたIL-10バリアントR5A11は、IL10R2に対してより高い親和性を有し、ヒトCD8+ T細胞においてシグナル伝達活性の増強を呈することが示されてきており、CAR-T細胞の抗腫瘍機能を増強する。Gorby, C.ら「Engineered IL-10 variants elicit potent immunomodulatory effects at low ligand doses.」Sci Signal 13, (2020)を参照されたい。Epstein-Barrウイルス由来のIL-10は、IL-10R1へのより弱い結合を有するが、ヒトIL10の免疫抑制サイトカイン活性を保持しつつ、一方、一部の細胞で免疫刺激活性を誘導する能力を失っている。Yoon, S. I. et alら「Epstein-Barr virus IL-10 engages IL-10R1 by a two-step mechanism leading to altered signaling properties.」J Biol Chem 287, 26586~26595頁(2012)、を参照されたい。US7,749,490B2及びUS2017/0015747Alには、MC/9細胞増殖アッセイにおいて低い免疫刺激活性を呈する操作されたIL10変異体(例、F129S-IL10)が記載されている。全体として、一部のIL10サイトカイン機能を保持する、IL10ポリペプチドのいずれもの操作された又は改変されたバージョンが、本開示の抗PD-L1/IL10融合タンパク質組成物及び方法のいずれにおいても使用され得ることが企図される。
【0090】
III.抗PD-L1抗体
一部の実施形態では、本開示は、種々のよく知られている免疫グロブリン特性(例えば、CDR、FR、VH、VLの各ドメイン、並びに完全長の重鎖及び軽鎖)のアミノ酸及びコードヌクレオチドの配列によって抗PD-L1抗体の構造体を提供する。抗体融合体を含めて、本開示の抗PD-L1抗体配列、及びそれらの配列識別子の概要説明について、下のTable 3(表4)に提供する。配列は添付の配列表に含まれている。
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
1.抗PD-L1抗体結合親和性及び機能的特徴
一部の実施形態では、本明細書で提供の抗PD-L1抗体は、PD-L1に結合するための平衡解離定数(KD)、<100nM、<10nM、<1nM、<0.1nM、<0.01nM、又は<0.001nM(例えば、10-8M以下、10-8Mから10-13Mまで、例えば、10-9Mから10-13Mまで)を有する。
【0116】
本明細書に開示されているように生成される種々の抗PD-L1抗体には、huPD-L1、cynoPD-L1、及びhuPD-L1とcynoPD-L1の両方に高親和性結合することができる抗体が含まれることが企図される。より具体的には、一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhuPD-L1に結合する。一部の実施形態では、結合親和性は、配列番号174のhuPD-L1ポリペプチドへの結合に対する平衡解離定数(KD)として測定される。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でcynoPD-L1に結合する。一部の実施形態では、結合親和性は、配列番号176のcynoPD-L1ポリペプチドへの結合に対する平衡解離定数(KD)として測定される。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下、又は1×10-11M以下の結合親和性でhuPD-L1とcynoPD-L1の両方に結合する。一部の実施形態では、結合親和性は、配列番号174のhuPD-L1ポリペプチド及び配列番号176のcynoPD-L1ポリペプチドへの結合に対する平衡解離定数(KD)として測定される。
【0117】
一般に、リガンドのその受容体に対する結合親和性については、様々なアッセイのいずれかを使用して決定し、様々な定量値で表すことができる。抗体の親和性を決定するのに有用な特異的PD-L1結合アッセイが、本明細書の実施例に開示されている。更に、抗原結合アッセイは、当技術分野で知られており、限定されないが、以下の技法を使用する任意の直接又は競合結合アッセイを含めて、本明細書で使用することができる:ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、表面プラズモン共鳴ベースのアッセイ(例えばWO2005/012359に記載のBIAcoreアッセイ)、免疫沈降アッセイ、蛍光免疫アッセイ、プロテインA免疫アッセイ、フローサイトメトリー及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)アッセイ等。
【0118】
したがって、一部の実施形態では、結合親和性はKD値として表され、(例えば、最小の結合力の効果を持って)固有の結合親和性を反映する。本開示の抗PD-L1抗体は、配列番号174のhuPD-L1ポリペプチドに対して強力な結合親和性を呈し、例えば、10nMと1pMの間のKD値を呈する。したがって、本開示の抗PD-L1抗体は、PD-L1の同じ又は重複するエピトープに対してより低い親和性を有する抗体と、競合することができる。
【0119】
一部の実施形態では、本明細書で提供の抗PD-L1抗体は、腫瘍微小環境(TME)におけるT細胞活性の抑制を含めて、PD-L1へのPD1結合、並びにPD-L1へのPD1結合によって媒介される免疫調節及び/又は免疫シグナル伝達を低下させ、阻害し、及び/又は完全に遮断する。PD-L1へのPD1の結合によって媒介されるこれらの免疫調節及び免疫シグナル伝達経路を阻害する抗体の能力については、本開示の実施例に記載のそういったアッセイを含めて、既知の細胞ベースのアッセイを使用してin vitroでアッセイすることができる。
【0120】
更に、本明細書で提供の抗PD-L1抗体は、IL10との抗体融合体を含み、したがって、腫瘍微小環境におけるCD8+ T細胞の活性化を含めて、IL10アゴニスト活性によって媒介される効果も提供することができる。IL10アゴニスト効果を提供する、IL10との抗PD-L1抗体融合体の能力は、本開示の実施例に記載のそういった細胞ベースのアッセイを含めて、既知の細胞ベースのアッセイを使用してin vitroでアッセイすることができる。
【0121】
したがって、一部の実施形態では、本開示のPD-L1抗体は、PD-L1媒介経路による細胞内シグナル伝達を低下させる、阻害する、及び/又は完全に遮断する能力に基づく以下の機能特性のうちの1つ又は複数によって特徴付けられる。
【0122】
少なくとも一実施形態では、抗PD-L1抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下の結合親和性でヒトPD-L1に結合し;任意選択で、ここで、結合親和性は、配列番号174のhuPD-L1ポリペプチドに対する平衡解離定数(KD)によって測定される。
【0123】
少なくとも一実施形態では、抗PD-L1抗体である、抗体は、1×10-8M以下、1×10-9M以下、1×10-10M以下の結合親和性でカニクイザルPD-L1に結合し;任意選択で、ここで、結合親和性は、配列番号176のcynoPD-L1ポリペプチドに対する平衡解離定数(KD)によって測定される。
【0124】
少なくとも一実施形態では、抗PD-L1/IL10融合タンパク質である、タンパク質は、MC/9細胞増殖を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも150%、少なくとも200%又はそれを超えて増加させる。
【0125】
少なくとも一実施形態では、抗PD-L1/IL10融合タンパク質である、タンパク質は、活性化CD8 T細胞からのIFNγ及びグランザイムBの産生を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも100%、又はそれを超えて増加させる。
【0126】
少なくとも一実施形態では、抗PD-L1抗体である、抗体は、28日目に測定された同系マウス腫瘍モデルにおいて腫瘍体積を少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、又はそれを超えて低下させ、ここで、マウス腫瘍モデルは:CT26結腸がん及びEMT6乳がんから選択される。
【0127】
2.抗PD-L1抗体断片
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、抗体断片であり得る。本開示の結合決定基を有する有用な抗体断片には、それらに限定されないが、Fab、Fab'、Fab'-SH、F(ab')2、Fv、scFvの各断片、一価、単一ドメイン抗体、ワンアームド又はシングルアーム抗体、及び本明細書に記載され且つ当技術分野で知られているその他の断片が含まれる。したがって、本開示の抗PD-L1抗体の一部の実施形態では、抗体は、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、単一ドメイン抗体(VHH)、シングルアーム抗体、及びscFvからなる群から選択される抗体断片である。
【0128】
種々の抗体断片の総説については、例えば、Hudsonら Nat. Med. 9: 129~134頁(2003)を参照されたい。scFv断片の総説については、例えば、Pluckthun、in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、vol. 113、Rosenburg and Moore編、(Springer-Verlag、New York) 269~315頁(1994)を参照されたい;WO93/16185;及び米国特許第5,571,894号及び第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、in vivo半減期の延長を有するFab及びF(ab')2断片の説明については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。他の一価抗体形態は、例えば、WO2007/048037、WO2008/145137、WO2008/145138、及びWO2007/059782、に記載されている。一価のシングルアームド抗体は、例えば、WO2005/063816に記載されている。ダイアボディとは、二価又は二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である(例えば、EP0404097; WO93/01161; Hudsonら、Nat. Med. 9: 129~134頁(2003);及びHollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 6444~6448頁(1993)を参照されたい)。
【0129】
一部の実施形態では、抗体断片とは、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む単一ドメイン抗体である。一部の実施形態では、単一ドメイン抗体とは、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis, Inc.社、Waltham、MA;例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0130】
抗体断片は、本明細書に記載のように、それらに限定されないが、インタクトな抗体のタンパク質分解消化、並びに組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E. coli)又はファージ)による産生を含めて、種々の技法によって作製することができる。
【0131】
3.キメラ、ヒト化、及びヒトの抗PD-L1抗体
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、キメラ抗体であり得る。(例えば、米国特許第4,816,567号;及びMorrisonら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81:6851~6855頁(1984)に記載のキメラ抗体を参照されたい)。一実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又はサル等の非ヒト霊長類に由来する可変領域)とヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、キメラ抗体とは、そのクラス又はサブクラスが親抗体のクラス又はサブクラスから変更された「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体には、それらの抗原結合断片が含まれ得ることが企図される。
【0132】
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しつつ、ヒト化されてヒトに対する免疫原性を減少させる。一般に、ヒト化抗体は、HVR、CDR(又はそれらの一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(又はそれらの一部)がヒト抗体配列に由来する、1つ又は複数の可変ドメインを含む。ヒト化抗体はまた、任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むことになる。一部の実施形態では、ヒト化抗体中の一部のFR残基を、抗体の特異性又は親和性を回復又は改善するために、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換する。
【0133】
ヒト化抗体及びそれらを作製する方法については、例えば、Almagro and Fransson、Front. Biosci. 13: 1619~1633頁2008)において総説されており、更には、例えば、Riechmannら、Nature 332:323~329頁1988); Queenら、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86: 10029~10033頁1989);米国特許第5,821,337号、第7,527,791号、第6,982,321号、及び第7,087,409号; Kashmiriら、Methods 36:25~34頁2005)(SDR (a-HVR)グラフティングについて記載); Padlan、Mol. Immunol. 28:489~498頁1991)(「リサーフェーシング)について記載); Dall'Acquaら、Methods 36:43~60頁2005)(「FRシャフリング」について記載);及びOsbournら、Methods 36:61~68頁2005)及びKlimkaら、Br. J. Cancer、83 :252~260頁2000)(FRシャフリングへの「ガイドセレクション」アプローチについて記載)に記載されている。
【0134】
ヒト化に使用できるヒトフレームワーク領域には、それらに限定されないが、以下が含まれるが:「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Simsら J. Immunol. 151 :2296頁(1993)を参照されたい);軽鎖又は重鎖の可変領域の特定サブグループのヒト抗体コンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carterら Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89:4285頁(1992);及びPrestaら J. Immunol、151 :2623頁(1993)を参照されたい);ヒト成熟(体細胞変異の)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson、Front. Biosci. 13: 1619~1633頁(2008)を参照されたい);及びFRライブラリーのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Bacaら、J. Biol. Chem. 272: 10678~10684頁(1997)及びRosokら、J. Biol. Chem. 271 :22611~22618頁(1996)を参照されたい)。
【0135】
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、ヒト抗体であり得る。ヒト抗体は、当技術分野で知られている種々の技法を使用して産生することができる。ヒト抗体は、全体として、van Dijk and van de Winkel、Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368~74頁(2001)及びLonberg、Curr. Opin. Immunol. 20:450~459頁(2008)に記載されている。ヒト抗体は、抗原性チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することにより調製することができる。かかる動物は通常には、ヒト免疫グロブリン座のすべて又は一部を含有し、それは内因性免疫グロブリン座に取って代わるか、又は染色体外に存在するか又は動物の染色体内に無作為に組み込まれる。かかるトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン座は一般に、不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説については、Lonberg、Nat. Biotech. 23:1117~1125頁(2005)を参照されたい。また、例えば、米国特許第号6,075,181号及び第6,150,584号のXENOMOUSE(商標)技術;米国特許第5,770,429号のHUMAB(登録商標)技術;米国特許第7,041,870号のK-M MOUSE(登録商標)技術;及び米国特許出願公開第US 2007/0061900)号のVELOCIMOUSE(登録商標)技術も、参照されたい。かかる動物により生成されるインタクトな抗体由来のヒト可変領域を、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、更に改変することができる。
【0136】
また、ヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法によって作製することもできる。ヒトモノクローナル抗体の産生向けのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。例えば、Kozbor J. Immunol、133 : 3001頁(1984); Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51~63頁(Marcel Dekker, Inc.、New York、1987);及びBoernerら、J. Immunol.、147: 86頁(1991)を参照されたい。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体も、Liら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103 :3557~3562頁(2006)に記載されている。更なる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生について記載)に記載のものが含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)はまた、Vollmers and Brandlein、Histology and Histopathology、20(3):927~937頁(2005)及びVollmers and Brandlein、Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3): 185~91頁(2005)にも記載されている。
【0137】
ヒト抗体はまた、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することにより生成することもできる。かかる可変ドメイン配列は、次いで、所望のヒト定常ドメインと組み合わせることができる。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択する技法を下に記載する。
【0138】
4.抗PD-L1抗体のライブラリー由来バリアント
少なくとも一実施形態では、抗PD-L1抗体の改善バリアントは、結合親和性や交差反応性等の所望の改善された機能的特徴を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離することができる。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、改善された結合特徴を保有するバリアント抗体についてかかるライブラリーをスクリーニングするために、様々な方法が当技術分野で知られている。かかるライブラリー由来抗体を産生するための他の方法が、例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178: 1~37頁(O'Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、2001); McCaffertyら、Nature 348:552~554; Clacksonら、Nature 352: 624~628頁(1991); Marksら、J. Mol. Biol. 222: 581~597頁(1992); Marks and Bradbury、m Methods in Molecular Biology 248: 161~175頁(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003); Sidhuら、J. Mol. Biol. 338(2): 299~310頁(2004); Leeら、J. Mol. Biol. 340(5): 1073~1093頁(2004); Fellouse、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34): 12467~12472頁(2004);及びLeeら、J. Immunol. Methods 284(1-2): 1 19~132(2004)
に見出すことができる。
【0139】
5.多重特異性抗体及び抗体融合体
少なくとも一実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、多重特異性抗体、例えば、二重特異性抗体とし得ることが企図される。一部の実施形態では、多重特異性抗体は、少なくとも異なる2つの結合部位を有し、この場合、それぞれが異なる抗原に対する結合特異性を有し、そのうちの少なくとも1つはPD-L1に特異的に結合する。少なくとも一実施形態では、多重特異性抗体は、PD-L1に対する特異性と、免疫調節、免疫シグナル伝達を媒介する、及び/又はがん又は腫瘍細胞上で発現される別の抗原に対する特異性とを含む二重特異性抗体であることが企図される。例えば、他の特異性とは、PD1、LAG3、CTLA-4、A2AR、TIM-3、BTLA、CD276、CD328、VTCN1、IDO、KIR、NOX2、VISTA、OX40、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、GITR、又はICOS等の、免疫チェックポイント分子に対するものである可能性がある。
【0140】
多重特異性抗体の作製技法には、それらに限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現が含まれる(例えば、Milstein and Cuello、Nature 305: 537頁(1983)、WO 93/08829、及びTrauneckerら、EMBOJ. 10: 3655頁(1991)を参照されたい)。「ノブインホール」エンジニアリングを使用して、本開示の抗PD-L1抗体で有用な二重特異性抗体を生成することもできる。ノブインホールエンジニアリングの技法は当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,731,168号に記載されている。
【0141】
多重特異性抗体はまた、以下によっても作製することができる:ホモダイマーではなくFc-ヘテロダイマー抗体分子の形成に有利である「静電ステアリング」効果を操作すること(WO 2009/089004A1);2つ以上の抗体又は断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号;及びBrennanら、Science, 229: 81頁(1985)を参照されたい);ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を産生すること(例えば、Kostelnyら、J. Immunol, 148(5): 1547~1553頁(1992)を参照されたい);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、Hollingerら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA、90:6444~6448頁(1993)を参照されたい);単鎖Fv(scFv)ダイマーを使用すること(例えば、GruberらJ. Immunol, 152:5368頁(1994)を参照されたい);又は三重特異性抗体(例えば、Tuttら、J. Immunol. 147: 60頁(1991)を参照されたい)。
【0142】
少なくとも一実施形態では、本明細書で提供の抗PD-L1抗体は、タンパク質との抗体融合体を含むことができる。抗体融合体又は融合タンパク質の調製及び使用の方法は当技術分野でよく知られており、実施例を含めて本明細書の他の場所に記載されている。典型的には、抗体は、ポリペプチドリンカー(アミノ酸5~30個の鎖を含む)を通してタンパク質に共有結合でコンジュゲートしている(又は融合している)。典型的には、リンカーは抗体の重鎖(HC)定常領域のC末端にコンジュゲートしているが、N末端を通したコンジュゲーション、又は抗体の軽鎖(LC)のいずれかの末端へのコンジュゲーションも使用することができる。抗体融合体はまた、種々の抗体断片を用いて調製することができ、この場合、断片は、抗原への特異的結合に必要なCDRを含む。
【0143】
少なくとも一実施形態では、本開示の抗体融合体は、完全長抗PD-L1抗体を含むことができ、この抗体は軽鎖末端又は重鎖末端でポリペプチドリンカー配列にコンジュゲートされており、この配列はそのもう一方の端でT細胞活性化又は免疫刺激性サイトカインにコンジュゲートされている。サイトカインには、それらに限定されないが、IL2、IL7、IL10、IL12、IL15、IL21、又はIFN-αが含まれ得る。かかる抗PD-L1抗体融合体は、PD-L1/PD1シグナル伝達によって媒介される活性を遮断し、免疫刺激性サイトカイン効果をもたらすことができる。かかる抗PD-L1/サイトカイン抗体融合体が免疫刺激性サイトカイン効果をもたらす能力については、実施例に記載のものを含めて、サイトカインと関連する既知の細胞ベースのアッセイを使用してin vitroでアッセイすることができる。
【0144】
本明細書の他の場所で記載のように、本開示の抗体融合体は、完全長IgG抗体を含むことができ、重鎖-軽鎖対のダイマー複合体を含むが、この場合、重鎖C末端のそれぞれはポリペプチドリンカー配列を通してIL10ポリペプチドに連結されている。例示的な一実施形態では、本開示の抗体融合体には、抗体重鎖のC末端からIL10ポリペプチドのN末端までのアミノ酸15個のポリペプチドリンカー(例えば、配列番号74)を介して組換えIL10ポリペプチドに融合された抗PD-L1抗体が含まれ得る。いくつかのかかる例示的な抗PD-L1/IL10抗体融合体を、実施例において、それらのPD-L1結合、及び免疫刺激性IL10効果について更に説明し、特徴付ける。
【0145】
6.抗PD-L1抗体のバリアント
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体のバリアントは、抗体の結合親和性及び/又はその他の生物学的特性等の改善された特徴を有することが企図される。バリアントは、抗体をコードするヌクレオチド配列に適当な改変を導入することによって、又はペプチド合成によって調製することができる。かかる改変には、例えば、抗体のアミノ酸配列内における、残基からの欠失、及び/又は残基への挿入及び/又は残基の置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組合せを行って最終構築物に到達し得るが、最終構築物がPD-L1抗原結合の所望の特徴を保有しているという条件である。
【0146】
A. 置換、挿入、及び欠失バリアント
一部の実施形態では、本明細書に記載のものに加えて、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗PD-L1抗体バリアントが提供される。変異誘発の部位には、HVR及びFRが含まれ得る。通常の「保存的」アミノ酸置換及び/又は共通の側鎖クラス又は特性に基づいた置換は当技術分野でよく知られており、本開示の実施形態で使用することができる。本開示はまた、アミノ酸側鎖クラスのうちの1つのメンバーが別のクラスからのアミノ酸と交換される非保存的アミノ酸置換に基づいたバリアントも企図する。アミノ酸側鎖は、以下のクラス又は共通の特性に従って通常にはグループ化される:(1)疎水性:Met、Ala、Val、Leu、Ile、ノルロイシン;(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;(3)酸性:Asp、Glu;(4)塩基性:His、Lys、Arg;(5)鎖配向に影響を与える:Gly、Pro;及び(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。抗体へのアミノ酸置換のための、及び所望の機能、例えば、保持された/改善された抗原結合、低減した免疫原性、又は改善されたADCC又はCDCに関するその後のスクリーニングのための技法は、当技術分野でよく知られている。
【0147】
アミノ酸置換バリアントにはまた、親抗体の超可変領域に1つ又は複数の置換を有するバリアントが含まれ得る。一般に、更なる研究向けに選択された結果として得られるバリアントは、親抗体と比較してある特定の生物学的特性の改変形態(例えば、親和性の向上、免疫原性の低減)を有することになり、且つ/又は親抗体のある特定の生物学的特性を保持することになる。例示的な置換バリアントは親和性成熟抗体であり、これは、ファージディスプレイベースの親和性成熟技法を使用して、簡便に生成することができる。簡潔に言えば、1つ又は複数のHVR残基に変異を起こさせ、バリアント抗体がファージ上に表示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0148】
変異誘発向けに標的であり得る、抗体の残基又は領域を特定するための有用な一方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」である(例えば、Cunningham and Wells (1989) Science、244:1081~1085頁を参照されたい)。この方法では、標的残基のうちの残基又は基(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGlu等の荷電残基)を特定し、そして、中性又は負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えて、抗原と抗体との相互作用が影響を受けるか否かを判定する。最初の置換に対して機能的感受性を示すアミノ酸の位置に更なる置換を導入することができる。代替的に、又は付加的に、抗体と抗原との間の接触点を特定するための抗原-抗体複合体の結晶構造を決定することができる。かかる接触残基及び隣接残基を、置換の候補として標的としてもよく排除してもよい。バリアントをスクリーニングして、それらが所望の特性を含有するか否か判定することができる。
【0149】
調製することができるアミノ酸配列挿入には、長さが1残基から100以上の残基を含有するポリペプチドまでに及ぶアミノ末端融合体及び/又はカルボキシル末端融合体、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、抗体の血清半減期を延長する酵素又はポリペプチドへの、抗体のN末端又はC末端の融合体が含まれ得る。
【0150】
他の残基置換をHVRにおいて行って抗体親和性を改善することができる。かかる変更は、「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基において、行うことができるが(例えば、Chowdhury、Methods Mol. Biol. 207: 179~196頁(2008)を参照されたい)、この場合、結果として得られるバリアントVH又はVLは結合親和性について試験される。一実施形態では、親和性成熟を、二次ライブラリーを構築しこれから再選択することによって実施することができる(例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178: 1~37頁(O'Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、(2001).)において参照されたい)。多様性を導入する別の方法には、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)が無作為化されるHVR指向アプローチが関与する。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にHVR-H3及びHVR-L3が標的とされる場合が多い。一般に、置換、挿入、又は欠失は、かかる変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に減少させない限り、1つ又は複数のHVR内で行うことができる。例えば、結合親和性を実質的に減少しない、保存的変更(例えば、本明細書で提供の保存的置換)を、HVRにおいて行うことができる。かかる変更は、HVRの「ホットスポット」の外側でもよい。
【0151】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体を、特定の非HVR位置にてシステイン残基で置換して、反応性チオール基を創り出し得ることが企図される。かかる操作された「チオMAb」を使用して、本明細書の他の場所に記載のように、抗体を例えば薬物部分又はリンカー-薬物部分にコンジュゲートし、それによって免疫コンジュゲートを創り出すことができる。システイン操作抗体を、例えば、米国特許第7,521,541号に記載のように生成することができる。一部の実施形態では、以下の抗体残基のいずれか1つ又は複数をシステインで置換することができる:軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);及び重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)。
【0152】
B.グリコシル化バリアント
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体を変化させて、抗体がグリコシル化される程度を増減させる。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失を、1つ又は複数のグリコシル化部位を創製又は除去するようにアミノ酸配列を変更することによって実施することができる。抗体がFc領域を含む実施形態では、Fc領域に付着した炭水化物を変更することができる。通常には、哺乳動物細胞によって産生される天然抗体は、Fc領域のCH2ドメインの約297位(「N297」)にあるアスパラギンへのNリンケージによって付着した分枝である二分岐オリゴ糖を含む(例えば、Wrightら TIBTECH 15:26~32頁(1997)を参照されたい)。オリゴ糖には、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、シアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」中のGlcNAcに付着したフコース等の、種々の炭水化物が含まれ得る。一部の実施形態では、抗体のFc領域に関するオリゴ糖の修飾によって、ある特定の改善された特性を有するバリアントを創り出すことができる。
【0153】
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、Fc領域に(直接的又は間接的に)付着したフコースを欠いた炭水化物構造を含むバリアントであり得る。例えば、かかる抗体中のフコースの量は、約1%から約80%、約1%から約65%、約5%から約65%、又は約20%から約40%であり得る。フコースの量は、MALDI-TOF質量分析法によって測定された、N297に付着したすべての糖構造体(例えば、複合体、ハイブリッド、及び高マンノース構造体)の合計に対する、残基N297に付着した糖鎖内のフコースの平均量を計算することによって決定することができる(例えば、WO 2008/077546を参照されたい)。
【0154】
一部の実施形態では、フコシル化バリアントは、バリアント抗体の改善されたADCC機能を提供することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号、又は第2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」又は「フコース欠損」抗体の例及びそれらを調製するための関連方法については、例えば、以下に開示されている: US2003/0157108; US2003/0115614; US2002/0164328; US2004/0093621; US2004/0132140; US2004/0110704; US2004/0110282; US2004/0109865; WO2000/61739; WO2001/29246; WO2003/085119; WO2003/084570; WO2005/035586; WO2005/035778; WO2005/053742; WO2002/031140; Okazakiら J. Mol. Biol. 336: 1239~1249頁(2004); Yamane-Ohnukiら. Biotech. Bioeng. 87: 614頁(2004)。脱フコシル化抗体を産生させるのに有用な細胞株には、タンパク質フコシル化が欠損しているLed 3 CHO細胞(例えば、Ripkaら Arch. Biochem. Biophys. 249:533~545頁(1986); US2003/0157108,及びWO2004/056312を参照されたい)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnukiら. Biotech. Bioeng. 87: 614頁(2004); Kanda, Y.ら、Biotechnol. Bioeng.、94(4):680~688頁(2006);及びWO2003/085107を参照されたい)等のノックアウト細胞株が含まれる。
【0155】
C.Fc領域バリアント
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、Fc領域において1つ又は複数のアミノ酸改変(すなわち、Fc領域バリアント)を含むことができる。Fc領域バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸残基の位置にアミノ酸置換を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4のFc領域)を含むことができる。本開示の抗PD-L1抗体で有用である、当技術分野で知られている広範囲のFc領域バリアントを下に記載する。
【0156】
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、エフェクター機能の変化を有するFc領域バリアントである。一部の実施形態では、エフェクター機能の変化を有する抗体は、親抗体のエフェクター機能のうちの一部(すべてではない)、低下したエフェクター機能を保有するか、又はエフェクター機能をいずれも保有しない(例えば、エフェクターが無い)。エフェクターが無いFc領域バリアントは、エフェクター機能(例えばADCC)が不要又は有害であり、且つ/又は抗体のin vivo半減期が重要である場合、ある特定の適用にとってより望ましいものである。エフェクターの機能減少又はエフェクターが無い機能を有するFc領域バリアント抗体は、以下のFc領域位置の1つ又は複数でのアミノ酸置換に起因するとし得る:238、265、269、270、297、327及び329。(例えば、米国特許第6,737,056号を参照されたい)。かかるFc領域バリアントは、265、269、270、297及び327の各位のうちの2つ以上にアミノ酸置換を含むことができる。かかるFc領域バリアントは、アラニンへの265及び297の両残基の置換も含むことができる(例えば、米国特許第7,332,581号を参照されたい)。
【0157】
一部のFc領域バリアントは、FcRへの改善された又は減弱した結合を提供することができる(例えば、米国特許第6,737,056号; WO 2004/056312;及びShieldsら、J. Biol. Chem. 9(2): 6591~6604頁(2001)を参照されたい)。改善されたADCCを提供することができる一部のFc領域バリアントは、例えば、Fc領域の298、333、及び/又は334の各位(EUナンバリングに基づく)に1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。例えば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogieら、J. Immunol. 164: 4178~4184頁(2000)に記載のように、変化した(すなわち、改善された又は減弱した)Clq結合及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)を有するFc領域バリアント。
【0158】
一部のFc領域バリアントは、半減期の延長を提供することができ、新生児Fc受容体(FcRn)への改善された結合が、例えば、US2005/0014934A1(Hintonら)に開示されている。かかるFc領域バリアントは、以下の位置のうちの1つ又は複数にアミノ酸置換を含む:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、及び434。延長した半減期を有する他のFc領域バリアントには、例えば、US 7658921B2(Dall'Acquaら)に記載の、252、254、及び256の各位にYTE変異のセットを含む(すなわち、M252Y/S254T/T256E)。Fc領域バリアントの更なる例は、例えば、米国特許第5,648,260号及び第5,624,821号;並びにWO94/29351に見いだすことができる。
【0159】
一般には、in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを実施して、Fc領域バリアントにおけるCDC及び/又はADCC活性の減少/枯渇を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを実行して、抗体はFcγR結合を欠くが(したがって、ADCC活性を欠く可能性がある)FcRn結合能力を保持することを確保することができる。ADCCを媒介する初代細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現するが、一方、単球はFcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。目的の分子のADCC活性を評価するin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstromら、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 83:7059~7063頁(1986)を参照されたい)及びHellstromら、Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82: 1499~1502頁(1985);米国特許第5,821,337号(例えば、Bruggemann, M.ら、J. Exp. Med. 166: 1351~1361頁(1987))に記載されている。代替的に、非放射性アッセイ法を用いることができる(例えば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc.社、Mountain View、CA);及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega社、Madison、WI)を参照されたい)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に又は付加的に、目的の分子のADCC活性は、in vivoで、例えば、Clynesら Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95:652~656頁(1998)に開示されているもの等の動物モデルにおいて、評価することができる。Clq結合アッセイを実施して、抗体がClqと結合できず、したがってCDC活性を欠いていることを確認することもできる。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のClq及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを行うことができる(例えば、Gazzano-Santoroら、J. Immunol. Methods 202: 163頁(1996); Cragg, M.S.ら、Blood 101: 1045~1052頁(2003);及びCragg, M.S. and M.J. Glennie、SW 103:2738~2743頁(2004)を参照されたい)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定を、当技術分野で知られている方法を使用して行うことができる(例えば、Petkovaら、Intl. Immunol. 18(12): 1759~1769頁(2006)を参照されたい)。
【0160】
D.非タンパク質抗体誘導体-免疫コンジュゲート
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体は、非タンパク質性部分で更に修飾(すなわち、誘導体化)することができる。抗体の誘導体化に適した非タンパク質性部分には、それらに限定されないが、例えば以下の水溶性ポリマーが含まれる:ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコールとプロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸ホモポリマー又はランダムコポリマー、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物。一部の実施形態では、抗体の修飾は、メトキシ-ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドを使用して実施することができる。ポリマーは任意の分子量のものであり得、分枝であっても非分枝であってもよい。抗体に付着するポリマーの数は様々であってもよく、複数のポリマーが結合している場合、ポリマーは同じ分子であっても異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、それらに限定されないが、抗体の特定の特性又は機能、例えば、抗体誘導体が規定の条件下で治療に使用されるのかどうかといった検討に基づいて決定することができる。
【0161】
一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体はまた免疫コンジュゲートであってもよく、ここで、免疫コンジュゲートは、1つ又は複数の細胞傷害性薬物にコンジュゲートされた抗PD-L1抗体を含む。本開示によって企図される適切な細胞傷害性薬物には、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、又は動物由来の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体が含まれる。一部の実施形態では、免疫コンジュゲートは、抗PD-L1抗体が、本明細書に記載のように、1つ又は複数の薬物にコンジュゲートされている、抗体薬物コンジュゲート(ADC)である。一部の実施形態では、本開示の免疫コンジュゲートは、PD-L1媒介性の疾患又は状態の処置用の薬物又は治療薬にコンジュゲートされた、本明細書に記載の抗PD-L1抗体を含む。
【0162】
一部の実施形態では、本明細書に記載の抗PD-L1抗体を、酵素的に活性な毒素又はその断片にコンジュゲートさせることができ、限定されないが、それには、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、エキソトキシンA鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質、ツルレイシ(Momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、ジェロニン、ミトゲリン、リストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセン類が含まれる。
【0163】
一部の実施形態では、本開示の免疫コンジュゲートは、放射性同位体にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗PD-L1抗体(すなわち、放射性コンジュゲート)を含む。様々な放射性同位体が、かかる放射性コンジュゲートの製造に利用できる。例として、211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、212Pb、及びLuの放射性同位体が挙げられる。一部の実施形態では、免疫コンジュゲートは、シンチグラフィー検出用の放射性同位体、又はNMR検出又はMRI用のスピンラベルを含むことができる。適切な放射性同位体又はスピンラベルには、例えば、123I、131I、111In、13C、19F、15N、17O、Gd、Mn、及びFeの種々の同位体が含まれ得る。
【0164】
抗PD-L1抗体と細胞傷害性薬物の免疫コンジュゲートは、タンパク質へのコンジュゲートに適した様々なよく知られている二官能基の試薬及び化学物質を使用して作製することができる。かかる試薬には、それらに限定されないが、以下が含まれる:N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能基誘導体(例えば、ジメチルアジピミデートHQ)、活性エステル(例えば、ジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えば、ビス-(p-アジドベンゾイル)-ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート類(例えば、トルエン-2,6-ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)。本開示の免疫コンジュゲートを調製するための試薬にはまた、以下の市販の「架橋」試薬が含まれ得る:BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、及びSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)(例えば、Pierce Biotechnology, Inc.社、Rockford、IL.、米国を参照されたい)。
【0165】
IV.組換え方法及び組成物
本開示の抗PD-L1抗体は、抗体産生の分野でよく知られている組換え方法及び材料を使用して産生することができる。一部の実施形態では、本開示は、抗PD-L1抗体をコードする単離された核酸を提供する。核酸は、抗体の、VLを含むアミノ酸配列及び/又はVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/又は重鎖)をコードすることができる。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体をコードする核酸配列を含む1つ又は複数のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。一部の実施形態では、本開示の抗PD-L1抗体をコードする核酸配列を含む宿主細胞が提供される。一実施形態では、宿主細胞は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクターで形質転換されている。別の実施形態では、宿主細胞は、抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター、で形質転換されている。
【0166】
組換え方法の一部の実施形態では、使用される宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又はリンパ系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20)等の、真核細胞である。一実施形態では、抗PD-L1抗体を作製する方法が提供され、ここで、方法は、抗体の発現に適した条件下で、上で提供のように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養する工程、及び任意選択で宿主細胞(又は宿主細胞培養培地)から抗体を回収する工程を含む。
【0167】
簡潔に言えば、抗PD-L1抗体の組換え産生は、抗体をコードする核酸を単離する工程(例えば、本明細書に記載のように)、並びに宿主細胞における更なるクローニング及び/又は発現のためにこの核酸を1つ又は複数のベクターに挿入する工程、によって実施される。当技術分野でよく知られている従来の手順を使用して(例えば、所望の抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、かかる核酸は容易に単離及び配列決定される。抗体をコードするベクターをクローニングする又は発現させるのに適切な宿主細胞及び培養方法は、当技術分野でよく知られており、これらには原核細胞又は真核細胞が含まれる。通常には、発現後、抗体を可溶性画分中の細胞ペーストから単離し、更に精製することができる。原核生物に加えて、そのグリコシル化経路が「ヒト化」され、その結果、部分的又は完全にヒトのグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす真菌及び酵母株を含めて、糸状菌又は酵母等の真核微生物が、抗体をコードするベクターに適したクローニング又は発現の宿主である(例えば、Gerngross、Nat. Biotech. 22: 1409~1414頁(2004、及びLiら、Nat. Biotech. 24:210~215頁(2006)を参照されたい)。
【0168】
本開示のグリコシル化抗PD-L1抗体の発現に適した宿主細胞はまた、多細胞生物体(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来してもよい。無脊椎動物の細胞の例には、植物及び昆虫の細胞が含まれる。特にツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクション向けに、昆虫細胞と併せて使用することができる多数のバキュロウイルス株が同定されてきた。植物細胞培養物も宿主として利用することができる(例えば、米国特許第5,959,177号、第6,040,498号、第6,420,548号、及び7,125,978号を参照されたい)。
【0169】
本開示の抗PD-L1抗体の産生に有用な哺乳動物宿主細胞株の例には、以下が含まれる:DHFR-CHO細胞を含めて、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(例えば、Urlaubら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216頁(1980)を参照されたい); Y0、NS0、Sp2/0等の骨髄腫細胞株;SV40(COS-7)によって形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚性腎臓株(例えば、Grahamら、J. Gen Virol. 36:59頁(1977)に記載の293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、Biol. Reprod. 23:243~251頁(1980)に記載のTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1); アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌの腎臓細胞(MDCK);バッファローラット肝細胞(BRL 3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝細胞(Hep G2);マウス乳腺腫瘍(MMT 060562);TR1細胞(例えば、Matherら、Annals N Y. Acad. Sci. 383:44~68頁(1982)及びUS 6,235,498において参照されたい);Medical Research Council 5(MRC 5)細胞(例えば、ATCCから入手可能で、CCL-171とも呼ばれるもの等の);及びForeskin 4(FS-4)細胞(例えば、Vilcekら Ann. N. Y. Acad. Sci. 284:703~710頁(1977)、Gardner & Vilcek. J. Gen. Virol. 44:161~168頁(1979)、及びPangら Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 77:5341~5345頁(1980)において参照されたい)。抗体産生に適した有用な哺乳動物宿主細胞株の一般的総説については、例えば、Yazaki and Wu、Methods in Molecular Biology、Vol. 248 (B.K.C. Lo編、Humana Press、Totowa、NJ)、255~268頁(2003)を参照されたい。
【0170】
V.抗PD-L1抗体の医薬組成物及び医薬製剤
本開示はまた、抗PD-L1抗体を含む医薬組成物及び医薬製剤を提供する。一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載の抗PD-L1抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬製剤を提供する。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体は、医薬組成物のうちの単独の活性剤である。かかる医薬製剤は、純度に関して所望の程度を有する抗PD-L1抗体を、1つ又は複数の薬学的に許容される担体と混合することによって調製することができる。典型的には、かかる抗体製剤は、水性溶液(例えば、米国特許第6,171,586号、及びWO2006/044908を参照されたい)として又は凍結乾燥製剤(例えば、米国特許第6,267,958号を参照されたい)として調製することができる。
【0171】
薬学的に許容される担体は一般に、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して無毒である。かかる薬学的に許容される担体の広い範囲が当技術分野でよく知られている(例えばRemington's Pharmaceutical Sciences 16版、Osol, A.編(1980)を参照されたい)。本開示の製剤において有用な例示的な薬学的に許容される担体には、それらに限定されないが、以下が含まれ得る:リン酸塩、クエン酸塩、及びその他の有機酸等の緩衝剤;アスコルビン酸やメチオニンといった抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチル若しくはベンジルアルコール;メチル若しくはプロピルパラベン等のアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、免疫グロブリン等のタンパク質;ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジン等のアミノ酸;単糖、二糖、及びその他の炭水化物、例えばグルコース、マンノース、若しくはデキストリン;EDTA等のキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース若しくはソルビトール等の糖類;ナトリウム等の塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質複合体);並びに/又はポリエチレングリコール(PEG)等の非イオン性界面活性剤。
【0172】
本開示の製剤において有用な薬学的に許容される担体にはまた、間質薬物分散剤、例えば可溶性中性活性ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)(例えば、米国特許出願公開2005/0260186号及び第2006/0104968号を参照されたい)、例えばヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質(例えば、rHuPH20又はHYLENEX(登録商標)、Baxter International, Inc.社)、も含まれ得る。
【0173】
本明細書に開示されている製剤は、製剤が投与される対象において処置される特定の適応症の任意選択で、抗PD-L1に加えて有効成分を含有することができることも企図される。好ましくは、更なる任意の有効成分は、抗PD-L1抗体活性の有効成分と相補的な活性を有し、両活性は互いに悪影響を及ぼさない。
【0174】
実施例を含めて本明細書の他の場所に開示されているように、本開示の抗PD-L1抗体は、IL10ポリペプチドと組み合わせて使用されて、がんを処置する上で改善された治療効果を提供できることが示されてきた。したがって、一部の実施形態では、本開示は、PD-L1アンタゴニスト(例えば抗PD-L1)及びIL10アゴニスト(例えばIL10)を含む、がんを処置するのに有用な医薬組成物又は医薬製剤を提供する。かかる医薬製剤又は医薬組成物におけるPD-L1アンタゴニストとしての本開示の抗PD-L1抗体の使用に加えて、それらに限定されないが、shRNA、siRNA、miRNA、PD-L1の小分子阻害剤、又はそれらの組合せを含めて、その他のアンタゴニストを使用し得ることも、企図される。かかる医薬組成物又は医薬製剤に有用なPD-L1の小分子阻害剤には、それらに限定されないが、AUNP12(Aurigene社)、CA-170(Aurigene社/Curis社)、及びBMS-986189(Bristol-Myers Squibb社)を含めて、臨床開発中の既知の化合物が含まれ得る。本開示の抗PD-L1抗体の他にも、IL10とのかかる組合せ医薬組成物又は医薬製剤において有用なその他の既知の抗PD-L1抗体には、本明細書の他の場所で記載のように、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ロダポリマブ、FAZ053(BAP058-hum13)、及びMDX-1105等のがん処置向けに臨床開発中のものを含めて、PD-L1と結合する既知の任意の抗体が含まれ得る。
【0175】
本明細書の他の場所に記載のように、一部の実施形態では、本開示は、PD-L1アンタゴニスト及びIL10アゴニストを含む併用療法で使用するための医薬組成物又は医薬製剤を提供する。一部の実施形態では、本組合せは、配列番号74、75、76、77、78、又は79のリンカー配列等の、ポリペプチドリンカーを通してIL10に共有結合で融合された抗PD-L1抗体を有する抗PD-L1抗体融合体を含む、単一の医薬組成物又は医薬製剤として提供することができる。かかる抗PD-L1抗体融合体(例えば、PHS102/IL10)と、様々な同系マウスがんモデルで腫瘍体積を縮小させるための医薬組成物中でのそれらの使用とを実証する実施例が、実施例を含めて本明細書の他の場所で提供される。
【0176】
一部の実施形態では、医薬組成物は、抗PD-L1抗体と、免疫チェックポイント阻害剤等のがん処置向けの更なる活性剤とを含む。かかる実施形態では有用なチェックポイント阻害剤には、それらに限定されないが、免疫チェックポイント分子である、抗原に対する特異性を含む二次抗体が含まれる。一部の実施形態では、二次抗体は、PD1、LAG3、CTLA-4、A2AR、TIM-3、BTLA、CD276、CD328、VTCN1、IDO、KIR、NOX2、VISTA、OX40、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、GITR、ICOSから選択される免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む。少なくとも一実施形態では、抗PD-L1抗体及び更なる活性剤を含む医薬組成物であり、ここで、更なる活性剤とは、免疫チェックポイント分子PD1に対する特異性を含む抗体である。本明細書に開示されている医薬組成物の実施形態において有用である、PD1に対する特異性を含む例示的な抗体には、それらに限定されないが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピジリズマブ、ドスタリマブ、及びHX008が含まれる。
【0177】
例えば、コアセルベーション技法によって、又は界面重合によって、調製されたマイクロカプセル中に、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースマイクロカプセル若しくはゼラチン-マイクロカプセル中に及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル中に、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中に或いはマクロエマルジョン中に、活性成分を封入することができる。かかる技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences 16版、Osol, A.編(1980)に開示されている。
【0178】
一部の実施形態では、製剤は、抗体及び/又はその他の有効成分の徐放性調製物であり得る。徐放性調製物の適切な例には、抗体を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、このマトリクスは、成形品、例えば、フィルム又はマイクロカプセルの形態である。
【0179】
典型的には、対象に投与される本開示の製剤は無菌である。無菌製剤は、よく知られた技法を使用して、例えば、無菌濾過膜を通す濾過によって容易に調製することができる。
【0180】
VI.使用及び処置の方法
本開示の抗PD-L1抗体を含む組成物又は製剤のいずれもが、PD-L1タンパク質に特異的に結合するそれらの能力を利用し、それによって、免疫調節又はシグナル伝達に関与するタンパク質としてのPD-L1の機能、特に免疫チェックポイント分子であるPD1を特異的に結合し、それによって腫瘍微小環境(TME)における抗腫瘍免疫応答(例えば、T細胞活性化)を阻害し、そして腫瘍の成長と進行に寄与する上でのPD-L1の機能を阻害する、低下させる、及び/又は完全に遮断する治療方法における等の任意の方法又は使用に使用できることが企図される。
【0181】
PD-L1の免疫調節及び/又は免疫シグナル伝達活性、特に腫瘍進行に対するPD-L1の効果を阻害し、低下させ、及び/又は完全に遮断することによって潜在的に処置することができる様々な疾患、障害、及び状態がある。疾患、障害、及び状態にはそれに限定されないががんが含まれ、結腸がん、膵臓がん、卵巣がん、肝臓がん、腎がん、乳がん、肺がん、胃がん、頭頸部がん、又は口腔がんが挙げられるがこれらに限定されない。IL10ポリペプチドとの抗PD-L1抗体融合体を含めて、本開示の抗PD-L1抗体を含む組成物又は製剤のいずれもが、上に列記のがんのいずれかの処置のための方法又は使用のために使用され得ることが企図される。一部の実施形態では、がんは結腸がん、膵臓がん、卵巣がん、肝臓がん、腎がん、乳がん、肺がん、胃がん、頭頸部がん、又は口腔がんから選択される。一部の実施形態では、本開示は、対象におけるがんを処置する方法を提供し、本方法は、本開示の抗PD-L1抗体の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程、又は本開示の抗PD-L1抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含む。
【0182】
下の実施例を含めて、本明細書に開示されているように、本開示の抗PD-L1抗体は、PD-L1へのPD1結合を低下、阻害、及び/又は遮断する能力を有し、それによって、PD-L1により媒介される免疫シグナル伝達経路とのPD1相互作用を変化させる。したがって、一部の実施形態では、本開示は、対象におけるPD-L1媒介性疾患又は状態を処置する方法を提供し、本方法は、本開示の抗PD-L1抗体の治療有効量を対象に投与する工程、又は、本開示の抗PD-L1抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。同様に、一部の実施形態では、本開示は、対象の細胞上で発現したPD-L1への結合によって媒介される疾患を処置する方法を提供し、本方法は、本開示の抗PD-L1抗体の治療有効量を対象に投与する工程、又は、本開示の抗PD-L1抗体及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の治療有効量を、それを必要とする対象に投与する工程を含む。
【0183】
本処置方法による抗PD-L1抗体、組成物、又は医薬製剤を投与することによって、対象においてPD-L1媒介性疾患の進行から対象を保護する及び/又はその進行を処置する、抗体誘導性の治療効果が提供される。一部の実施形態では、本処置方法は、PD-L1媒介性疾患又は状態を予防及び/又は処置するために当業者に知られている1つ又は複数の更なる治療薬又は処置法の投与を更に含むことができる。1つ又は複数の更なる薬剤の投与を含むかかる方法は、併用投与(この場合、2種以上の治療薬が同じ製剤又は別々の製剤に含まれている)と、個別投与とを、この場合では、抗体組成物又は製剤の投与は、更なる治療薬の投与の前、同時、及び/又は後に行い得るが、包含することができる。
【0184】
サイトカインIL10は、抗炎症性特性及びCD8+ T細胞活性化特性を呈する。強力なIL-10シグナルは、腫瘍特異的CD8+ T細胞の増殖を促進し、消耗したT細胞を再活性化し、それによってT細胞の細胞傷害性を高めることができる。したがって、少なくとも一実施形態では、本開示は、IL10アゴニストと組み合わせてPD-L1アンタゴニスト(例えば、抗PD-L1抗体)を使用する処置方法を企図する。少なくとも一実施形態では、本併用療法は、IL10ポリペプチドとの抗PD-L1抗体融合体を使用して実施することができる。本明細書に開示されているように、PD-L1がPD1に結合することからなる免疫抑制性効果を低減するPD-L1阻害を、T細胞傷害性を増強するTMEの近傍で濃縮されたIL10シグナルと組み合わせることよって、がん治療の改善を提供することができる。したがって、本開示の抗PD-L1抗体を使用してPD-L1媒介性疾患(例えばがん)を処置する方法に関する実施形態のいずれでも、抗PD-L1抗体は、本明細書の他の場所に開示されているIL10ポリペプチドとの抗体融合体(又は融合タンパク質)とし得ることが、企図される。
【0185】
他のPD-L1又はPD1アンタゴニストは、それらに限定されないが、shRNA、siRNA、miRNA、又はPD-L1の小分子阻害剤、又はそれらの組合せを含めて、IL10とのかかる併用療法において使用され得ることも、企図される。かかる方法で有用なPD-L1の小分子阻害剤には、AUNP12(Aurigene社)、CA-170 (Aurigene社/Curis社)、及びBMS-986189 (Bristol-Myers Squibb社)等の臨床開発中の既知のPD-L1阻害剤化合物が含まれる。更に、他の既知のPD-L1アンタゴニスト抗体を、PD-L1を遮断する既知の抗体を含めて、これにはアテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ロダポリマブ、FAZ053 (BAP058-hum13)、及びMDX-1105等のがん処置向けの臨床開発中のものが含まれるが、IL10とのかかる併用療法において使用することができる。
【0186】
本開示の処置方法の一部の実施形態では、抗PD-L1抗体又は抗PD-L1抗体を含む医薬製剤は、薬剤を全身的に又は所望の標的組織に送達する投与の任意の様式によって、対象に投与される。全身投与とは一般に、抗体又はその製剤が対象の循環系に入り、したがって代謝や他の似たようなプロセスを受けやすくなるように、所望の標的部位、組織、又は臓器への直接以外の部位にて対象に抗体を投与する任意の様式を指す。
【0187】
したがって、本開示の処置方法において有用な投与様式には、それらに限定されないが、注射、注入、点滴注入、及び吸入が含まれ得る。注射による投与には、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、脳室内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、脳内脊髄、及び胸骨内の各注射及び各注入が含まれ得る。
【0188】
一部の実施形態では、抗PD-L1抗体の医薬製剤は、抗体が腸内の不活性化から保護されるように製剤化される。したがって、本処置方法は、製剤の経口投与を含むことができる。
【0189】
一部の実施形態では、医薬としての本開示の抗PD-L1抗体を含む組成物又は製剤の使用もまた提供される。更に、一部の実施形態では、本開示はまた、医薬、特にPD-L1媒介性疾患を処置、予防又は阻害するための医薬の製造又は調製における抗PD-L1抗体を含む組成物又は製剤の使用も提供する。更なる実施形態では、医薬は、PD-L1媒介性疾患を有する個体に医薬の有効量を投与する工程を含む、PD-L1媒介性疾患を処置、予防又は阻害するための方法で、使用するためのものである。ある特定の実施形態では、医薬は、少なくとも1つの更なる治療薬又は処置法の有効量を更に含む。少なくとも一実施形態では、更なる治療薬又は処置法とは、(抗体融合体としてではなく)抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される、IL10ポリペプチド等のIL10アゴニストである。
【0190】
本明細書の他の場所に開示されているように、本開示の抗PD-L1抗体を含むかかる医薬において使用され得る更なる治療薬又は処置法は、免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む治療抗体、それらに限定されないが、例えば、PD1、LAG3、CTLA-4、A2AR、TIM-3、BTLA、CD276、CD328、VTCN1、IDO、KIR、NOX2、VISTA、OX40、CD27、CD28、CD40、CD122、CD137、GITR、ICOSを含むことができることも企図される。免疫チェックポイント分子に対する特異性を含む例示的な抗体には、それらに限定されないが、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ、ピジリズマブ、ドスタリマブ、及びHX008から選択される抗PD1抗体が含まれる。
【0191】
更なる実施形態では、医薬は、PD-L1媒介性疾患を処置、阻害又は予防するために医薬の有効量を対象に投与する工程を含む、対象のがん等のPD-L1媒介性疾患の処置、阻害又は予防における使用のためのものである。
【0192】
本開示の組成物及び製剤に含有される抗PD-L1抗体の適当な投薬量(単独で、又は1つ又は複数の他の更なる治療薬と組み合わせて使用される場合)は、処置される特定の疾患又は状態、疾患の重症度と経過、抗体が予防目的で投与されるかそれとも治療目的で投与されるか、患者に投与された以前の治療、患者の病歴と抗体への応答、及び主治医の裁量、によって左右されることになる。本明細書に記載の組成物及び製剤に含まれる抗PD-L1抗体は、一度で、又は一連の処置にわたって患者に適切に投与することができる。それらに限定されないが、種々の時点にわたる単回又は複数回の投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含めて、種々の投薬スケジュールが、本明細書では企図される。
【0193】
疾患のタイプ及び重症度に応じて、例えば、1回又は複数の別々の投与によるものであれ、継続的な注入によるものであれ、本開示の製剤中の抗PD-L1抗体、約1μg/kg~15mg/kgが、ヒト対象に投与するための最初の候補投与量である。一般に、抗体の投与投薬量は、約0.05mg/kgから約10mg/kgの範囲と考えられる。一部の実施形態では、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組合せ)のうちの1つ又は複数の用量を患者に投与することができる。
【0194】
用量投与を、対象の状態に応じて、数日以上にわたって維持することができ、例えば、当技術分野で知られている方法によって決定して、PD-L1媒介性疾患が十分に処置されるまで投与を継続させることができる。一部の実施形態では、最初のより高い負荷用量を投与し、これに続いて、1つ又は複数のより低い用量を投与することができる。しかし、他の投薬レジメンが有用である場合もある。用量投与の治療効果の進行を、従来の技法及びアッセイによってモニタリングすることができる。
【0195】
したがって、本開示の方法の一部の実施形態では、抗PD-L1抗体の投与は、約1mg/kgから約100mg/kgの1日投薬量を含む。一部の実施形態では、抗PD-L1抗体の投薬量は、少なくとも約1mg/kg、少なくとも約5mg/kg、少なくとも約10mg/kg、少なくとも約20mg/kg、又は少なくとも約30mg/kgの1日投薬量を含む。
【実施例】
【0196】
本開示の種々の特徴及び実施形態が、以下の代表的実施例に例示されているが、これらの実施例は例示であるよう意図されるものであり、制限ではない。当業者であれば、特定の実施例は、後述の特許請求の範囲をより詳細に説明する本発明の単なる例示であることを、容易に理解するであろう。本出願に記述されたあらゆる実施形態及び特徴は、含有されるあらゆる実施形態と互換性があり組み合わせ可能であることを理解されたい。
【0197】
(実施例1)
抗PD-L1抗体及びIL10融合体の生成並びに結合解析
本実施例は、ヒトPD-L1及び/又はIL10Rに特異的に結合するとともにPD-L1がPD-1に結合する能力を遮断する、本開示の例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質を生成する、ファージディスプレイ抗体ライブラリー技術の使用について例示する。
【0198】
A.ファージディスプレイ抗体ライブラリーからの抗PD-L1 scFvバインダーの選択
パニング手順について下に簡単に記載した。まず、ヒトPD-L1/ECD抗原(ウェルあたり5μg、Sino Biological社)を96ウェルプレート(NUNC Maxisorbイムノプレート)のPBS緩衝剤(pH7.4)中で4℃で一晩コーティングし、PBST[0.1%(v/v) Tween20]中の5%スキムミルクで1時間ブロッキングした。ブロッキングの後、濃縮ファージライブラリー(PBS緩衝剤中1013cfu/mL)100μLをブロッキング緩衝剤100μLと混合し、次いで、穏やかな振とうの下で各ウェルに添加し1時間おいた。プレートをPBSTで12回及びPBSで3回洗浄した。結合ファージをウェルあたり0.1M HCl/グリシン(pH2.2) 100μLで溶出し、即座に1M Tris塩基緩衝剤(pH9.0) 20μLで中和した。溶出ファージを大腸菌(E.coli) ER2738(A600nm=0.6) 1mLと37℃で30分間混合した;アンピシリンを添加することにより、非感染細菌を排除した。30分間のアンピシリン処理の後、細菌培養物を、M13K07ヘルパーファージ(合計およそ1011CFU) 100μLに37℃で1時間感染させ、次いで、カナマイシン50μg/mLとアンピシリン100μg/mLを含有する2×YT培地50mLに激しく振とうしながら37℃で一晩添加した。レスキューされたファージライブラリーを20%ポリエチレングリコール/NaClで沈殿させ、PBSに再懸濁した。濃縮されたファージ溶液を、パニングの次のラウンドに使用した。
【0199】
3~4ラウンドの選択増幅サイクルの後、単一コロニーを、ディープ96ウェル培養プレート(プレートA;分泌されたscFv)へと無作為に選択した;各ウェルは2YT(100μg/mLアンピシリン) 950μLを含有した。振とうしながら37℃で3時間のインキュベーション後、細菌培養物50μLを新鮮なディープ96ウェルプレート(プレートB;ファージ形態)の対応するウェルに移した;各ウェルは、アンピシリン100μg/mLを有する2YT 0.8mLを含有した。それと同時に、M13K07(合計およそ5×1010CFU) 50μLをプレートBの各ウェルに添加した。1時間のインキュベーション後、IPTG(10mM)を含有する2YT 100μLをプレートAの各ウェルに添加した;カナマイシン(500μg/mL)を含有する2YT 100μLをプレートBの各ウェルに添加した。激しく振とうしながら37℃で一晩のインキュベーション後、培養物を3000gで4℃で10分間遠心分離した。プレートBを、更なるシーケンシング決定用に保存した。分泌されたscFv培養プレート(プレートA)の場合、培養培地100μL及び5%PBSTミルク100μLを、それぞれ、プロテインL(0.1μg/ウェル)、ヒトCD36(0.5~1μg/ウェル)及びウシ血清アルブミン(BSA)(2μg/ウェル)でプレコーティングした3つの96ウェルプレートの相当するウェルに添加し、5%PBSTミルクでブロッキングした。室温で1時間のインキュベーション後、プレートをPBSTで3回洗浄した。プロテインA-HRP(Thermo Scientific社) 100μLをプロテインLコーティングのイムノプレートの各ウェルに添加した;抗E-tag-HRP(ICL Inc.者) 100μLを、ヒトPD-L1.ECD抗原コーティング及びBSAコーティングのプレートの各ウェルに添加した。1時間のインキュベーション後、プレートをPBST緩衝剤で3回、PBSで2回洗浄し、3,3',5,5'-テトラメチルベンジジンペルオキシダーゼ基質(Kirkegaard & Perry Laboratories社)で3分間発色させ、1.0M HClでクエンチし、450nmにて分光光度法で読み取った。
【0200】
陽性クローンを、以下の基準によって選択した:ヒトPD-L1.ECD抗原コーティングウェルについてELISA OD450>0.2(抗原結合陽性);BSAコーティングウェルについてOD450<0.05(非特異的結合陰性);プロテインLコーティングウェルについてOD450>0.5(プロテインLとプロテインAの両方に結合して溶液中での適切な折り畳みを確保する、可溶性scFv)、次いで、DNAシーケンシングに供する。
【0201】
ファージディスプレイパニングから得られた例示的な抗PD-L1抗体PHS102(配列番号162)、PHS206(配列番号163)、及びPHS219(配列番号164)のscFvのポリヌクレオチド配列を、Table 3(表4)及び添付の配列表に提供する。
【0202】
抗PDL1抗体PHS102の親和性を更に向上させるために、PHS102の個々のCDR変異誘発用に6つのファージディスプレイライブラリーを創り出した。最初のパンニングの後、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3からユニークな38個のCDRを選択し、解離選択用の新しいライブラリーとして組み立てた。解離速度が改善されたscFvを備えるファージを選択するために、パニング過程で10倍、100倍、又は1000倍のhPDL1.ECDタンパク質と共に共培養することにより解離選択を行った。抗PD-L1抗体PHS102に由来するバリアントCDR配列から構成されるこれらのファージディスプレイライブラリーを更にパニングすることによって、以下の8つの例示的な抗PD-L1抗体(scFvポリヌクレオチド配列)がもたらされた:YT6D(配列番号165)、YP11F(配列番号166)、YT10H(配列番号167)、YT7A(配列番号170)、YT7H(配列番号171)、YP7G(配列番号172)、HSYPP31F(配列番号168)、及びHSYPP411C(配列番号169)。これらの8つの抗PD-L1抗体のCDR、VH、VL、重鎖、及び軽鎖の各アミノ酸配列もTable 3(表4)及び添付の配列表に列記されている。
【0203】
B.完全長抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合体の生成
scFvの再フォーマット及びクローニング:ファージディスプレイパニングから選択されたscFvのPD-L1結合決定基を、それぞれ、制限部位MluI/NheI及びBsiWI/DraIIIを使用して、断片のVHドメイン及びVLドメインを、ヒトIgG1-N297A重鎖ベクター及びヒトカッパ軽鎖ベクターにクローニングすることによって、完全長IgG抗体へと再フォーマットした。VH及びVLドメインを、以下のフォワード及びリバースオリゴヌクレオチドプライマー対を使用して増幅した:
(1) PhageLib_VL_Fw: 5'-AATCACgATgTgATATTCAAATgACCCAgAgCCCgAgC-3'(配列番号177)、(2) PhageLib_VL_Rv: 5'-AATCgTACgTTTgATTTCCACTTTggTgCCTTg-3'(配列番号178)、(3) PhageLib_VH_Fw: 5'-AATACgCgTgTCCTgTCCgAAgTgCAgCTggTggAATCg-3'(配列番号179)、及び4) PhageLib_VH_Rv: 5'-AATgCTAgCCgAgCTCACggTAACAAg-3'(配列番号180)。
【0204】
抗PD-L1/IL10融合タンパク質の生成:組換えIL10-Fc融合タンパク質(配列番号86)を、アミノ酸15個のリンカー配列、-GGGGSGGGGSGGGGS-(配列番号76)によって隔てられたヒトIgG1-FcのN末端にIL-10(配列番号73)を遺伝子融合することによって設計した。組換え抗PD-L1/IL10融合タンパク質を、-LGGGGSGGGGSGGGG-(配列番号74)のアミノ酸リンカー配列によって隔てられた抗体重鎖のC末端にIL-10を遺伝子融合することによって設計した。その他の有用なリンカー配列をTable 2(表3)に提供する。組換えタンパク質の分泌に必要なIL-2分泌配列が先行している、所望の遺伝子セグメントを、Thermo遺伝子合成サービスを使用して取得し、ExpiCHO-S細胞のトランスフェクション及び同細胞内での発現向けに哺乳動物発現ベクターにクローニングした。
【0205】
完全長抗PD-L1抗体、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ロダポリマブ、FAZ053、及びMDX-1105を、Thermo遺伝子合成サービスを使用して取得し、ExpiCHO-S細胞のトランスフェクション及び同細胞内での発現向けに哺乳動物発現ベクターにクローニングした。ポリペチド配列を、Table 3(表4)及び添付の配列表に提供する。
【0206】
完全長抗体及び融合タンパク質の発現:再フォーマットされた抗PD-L1抗体又は抗PD-L1/IL10融合遺伝子でクローニングされたベクターを、ExpiCHO-S細胞(Thermo Scientific社)において一過性に発現させた。指数関数的増殖期の間に、ExpiCHO-S細胞6×106に、ExpiFectamine CHO Transfection Kit(Thermo Scientific社)によってベクター20μgを一過性にトランスフェクトした。トランスフェクション18~22時間後、ExpiFectamine CHO Enhancer及びExpiCHO Feedをフラスコに添加した。細胞を8日間培養した。各培養物の上清を遠心分離し、続いて0.45μmフィルターを通して濾過した。
【0207】
完全長抗体及び融合タンパク質の精製及びSDS-PAGE特性評価:抗体及びAb/IL10融合タンパク質を、Protein A Sepharose Fast Flowビーズ(GE Healthcare社)を用いて、トランスフェクトした細胞上清から精製した。抗体をロードしたカラムをPBS 20カラム容量で洗浄し、次いで、0.1Mグリシン(pH2.5)3ビーズ容量で、1M Tris緩衝剤(pH9.0)1/10容量に直接溶出した。抗体含有画分をプールし、PBSに対して透析した。精製抗PD-L1抗体及び融合タンパク質の質を、還元剤の存在下又は非存在下でSDS-PAGEを使用して判定した。
【0208】
SDS-PAGEの結果:
図1A及び
図1Bに表されたSDS-PAGE画像の検査が示すところは、クローニング、発現、及び精製によって、完全長IgGフォーマットで精製された抗PD-L1抗体、及びIL10ポリペプチドとの抗PD-L1融合体がもたらされたことである。
【0209】
(実施例2)
抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質の特異的結合アッセイ
本実施例は、抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合体の特異的抗原結合及び遮断機能を示すELISA研究及びBLI研究について、例示する。
【0210】
A.完全長抗体及び融合タンパク質による抗原特異的結合のELISA
組換えヒトPD-L1-mFc融合タンパク質(1μg/mL)、組換えカニクイザルPD-L1(1μg/mL; Sino Biological社)、又はIL10Rα-Fc融合タンパク質(1μg/mL、R&D Systems社)を、96ウェルマイクロタイタープレートにコーティング溶液(SeraCare社)中1μg/mlの濃度で4℃で一晩、固定化した。ウェルを洗浄溶液(イミダゾール緩衝生理食塩水中の0.05%Tween20)で洗浄し、1%BSAでブロッキングした。抗PD-L1又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質の連続希釈物をウェルに添加した。37℃での1時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄液で洗浄した。ペルオキシダーゼコンジュゲートヤギ抗ヒトカッパ軽鎖抗体(Sigma社)を、各ウェルに37℃で1時間インキュベーションの間、適用した。PD-1/PD-L1競合ELISAの場合、ビオチンコンジュゲートPD-1-Fcタンパク質(30μg/mL、Biolegend社)を添加した。PD-1の結合はストレプトアビジン-HRPによって検出した。洗浄後、ウェルをTMB基質でRTで5~10分間発色させ、次いで、1N HClで停止した。その後、450nm及び650nmで吸光度を測定した。EC50値とIC50値はGraphPad Prism7を使用して計算した。
【0211】
結果
本開示の例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合体によって呈されたヒトPD-L1に対する特異的結合活性を示すELISA決定のEC50値を、下のTable 4(表5)に示す。
【0212】
【0213】
本開示の例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合体によって呈された、カニクイザルPD-L1に対する特異的結合活性を示すELISA決定のEC50値を、下のTable 5(表6)に示す。
【0214】
【0215】
本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合体によって呈されたIL10Rに対する特異的結合活性を示すELISA決定のEC50値を、下のTable 6(表7)に示す。
【0216】
【0217】
競合ELISAによって得られた結合データのプロットを
図2A、
図2B、及び
図2Cに示す。本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合体によって呈された、PD-L1へのPD-1の結合を遮断するための比活性を示すIC50値を、下のTable 7(表8)に示す。
【0218】
【0219】
B.抗PD-L1結合動態のBLI解析
バイオレイヤー干渉法(BLI)(ForteBio社製Octet RED96)アッセイを、AHC(Anti-hIgG Fc Capture)バイオセンサー(ForteBio社)を使用して実行し、その結果、各抗PD-L1抗体(5μg/mL)を捕獲して0.5nmシフトを取得し、次いで、PBS-Tween 20(0.1%)、BSA(0.1%)含有ランニング緩衝剤中の組換えヒトPD-L1-Hisの様々な濃度(すなわち、0、1.5625、3.125、6.25、4.94、12.5、25、50及び100nM)に、バイオセンサーを浸漬した。速度定数を、2.5分間会合と5分間解離の相互作用時間での、結合応答のカーブフィッティング解析(1:1 Langmuirモデル)によって計算した。
【0220】
結果:抗原PD-L1への例示的な抗PD-L1抗体の特異的結合についてBLIによって決定された解離定数KD、及び速度論的速度定数ka及びkdを、下のTable 8(表9)に提供する。
【0221】
【0222】
(実施例3)
抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質の細胞結合アッセイ
本実施例は、本開示の例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質の、PD-L1発現F293細胞への特異的結合を示すフローサイトメトリー研究について、例示する。
【0223】
材料及び方法
A.PD-L1発現F293細胞の調製:完全長ヒトPD-L1をコードする遺伝子セグメントを、Thermo遺伝子合成サービスを使用して取得し、哺乳動物発現ベクターpCDNA3.4にクローニングした。Freestyle 293-F細胞(Thermo Scientific社)にポリエチレンイミン(PEI)法にてPD-L1発現ベクターをトランスフェクトし、Geneticin(Thermo Scientific社)にて選択してPD-L1発現安定F293細胞株を樹立した。
【0224】
B.フローサイトメトリー: F293細胞又はPD-L1過剰発現F293細胞を、抗PD-L1抗体又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質と共に4℃で30分間、インキュベートした。FACS緩衝剤(PBS中2%FBS)で洗浄した後、細胞を抗ヒトIgG-Alexa Fluor 647で染色し、Attune NxT Flow Cytometer(Thermo Scientific社)によって解析し、細胞表面結合を幾何学的MFIとして表した。
【0225】
C.PD-1遮断アッセイ:F293/hPD-L1細胞を、抗PD-L1抗体又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質の連続希釈物と共に、氷上で30分間インキュベートした。20μg/mlのビオチンコンジュゲートヒトPD1.ECDタンパク質(配列番号175)を添加し、氷上で60分間インキュベートした。FACS緩衝剤(PBS中2%FBS)で洗浄した後、細胞をストレプトアビジン-Alexa Fluor 647で染色し、Attune NxT Flow Cytometer(Thermo Scientific社)によって解析した。
【0226】
結果
図3A及び
図3Bに表されたフローサイトメトリーデータのプロットによって示されるように、例示的な抗PD-L1抗体(PHS102、PHS206、PHS219、及びアテゾリズマブ)及び対応する抗PD-L1/IL10融合タンパク質(PHS102/IL10、PHS206/IL10、PHS219/IL10、及びアテゾリズマブ/IL10)は、F293細胞の表面で発現したヒトPD-L1に対して特異的な結合活性を呈する。
【0227】
図3C及び
図3Dに表されたフローサイトメトリーデータのプロットによって示されるように、例示的な抗PD-L1抗体(PHS102、PHS206、PHS219、及びアテゾリズマブ)及び対応する抗PD-L1/IL10融合タンパク質(PHS102/IL10、PHS206/IL10、PHS219/IL10、及びアテゾリズマブ/IL10)は、F293細胞の表面で発現したヒトPD-L1へのヒトPD-1の結合の特異的遮断を呈する。
【0228】
(実施例4)
PD-1/PD-L1細胞シグナル伝達遮断のアッセイ
本実施例は、本開示の例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質がPD-1/PD-L1細胞シグナル伝達を遮断する能力に関する研究について、例示する。
【0229】
材料及び方法
PD-1/PD-L1遮断バイオアッセイを、PathHunter(登録商標)PD-1 Signaling Bioassay Kit (Eurofins社)を使用して実施した。例示的な抗PD-L1抗体又は抗PDL1/IL10融合タンパク質の連続希釈物を、PD-L1提示U2OSバイオアッセイ細胞(ウェルあたり1×104)と共に37℃で1時間プレインキュベートした。Jurkat PD-1シグナル伝達細胞(ウェルあたり2×104)をPD-L1提示細胞に添加し、室温で2時間インキュベートし、その後に、検出試薬を添加した。
【0230】
結果
図4A及び
図4Bにプロットされた遮断アッセイデータ並びにTable 9(表10)に列挙されたIC50値によって示されるように、例示的な抗PD-L1抗体(PHS102、HSYPP31F、HSYPP411C、YT7A、YT7H、YP10H)及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質(PHS102/IL10、YT7A/IL10、YT7H/IL10、YP10H/IL10)は、PD-L1へのPD-1結合によって媒介される細胞シグナル伝達を遮断することができる。
【0231】
【0232】
(実施例5)
抗PD-L1抗体及び融合タンパク質によるT細胞活性化の増強
本実施例は、本開示の例示的な抗PD-L1抗体及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質が混合リンパ球反応(MLR)においてT細胞活性化を増強する能力に関する研究について、例示する。
【0233】
材料及び方法
ヒト末梢血を健康なドナーから得た。末梢血単核細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare社)を使用して密度勾配遠心分離によって即座に単離した。同種異系抗原提示細胞(APC)として機能するために、CD14+単球を、ドナーAから、抗ヒトCD14コンジュゲート磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を使用することによってまず単離した。未成熟樹状細胞(DC)分化の場合、単球を、10%FBSを補充したRPMI1640中のGM-CSF(20ng/mL)及びIL-4(20ng/mL)と共に6日間培養した。成熟DCの生成の場合、未成熟DCをLPS(500ng/mL)で24時間処理した。成熟DCを40μg/mLのマイトマイシンCで37℃で30分間処理した後、T細胞と共に共培養した。
【0234】
CD4+ T細胞を、ドナーBから、抗ヒトCD4コンジュゲート磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を使用することによって単離した。レスポンダーCD4 T細胞を培養培地に4×106細胞/mLで再懸濁し、T細胞50μLを、DCのみのウェルを除くすべてのウェルに添加した。刺激因子DCを培養培地に4×106細胞/mLで再懸濁し、DC 50μLを、CD4 Tのみのウェルを除くすべてのウェルに添加した。IL10-Fc又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質0.1~2μgを含有する培養培地更なる100μLを、96ウェルU底プレート中のCD4 T-DC培養物に添加した。共培養物を37℃でインキュベートした。2日の共培養後の細胞培養培地中のIL-2の濃度を、製造元の取扱説明書に従ってELISA(Biolegend社)によって決定した。
【0235】
結果
図5A及び
図5Bにプロットされたアッセイデータによって示されるように、例示的な抗PD-L1抗体(PHS102、PHS206、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ)及び抗PD-L1/IL10融合タンパク質(アベルマブ/IL10、PHS102/IL10、YT7A/IL10、YT10H/IL10、HSYPP31F/IL10、HSYPP411C/IL10、YT7H/IL10、YP7G/IL10、YP11F/IL10)は、MLR中hIgG又はIL10-Fcの対照と比較して、T細胞の活性化を増強することができる。
【0236】
(実施例6)
抗PD-L1/IL10融合タンパク質によるMC/9細胞増殖の刺激
本実施例は、本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質に連結されたIL10ポリペプチドがMC/9細胞増殖を刺激する能力に関する研究について、例示する。
【0237】
方法及び材料
IL10の生物学的活性を、増殖アッセイを使用することによって決定した。MC/9(ATCC、CRL-8306)マウス肥満細胞を、2mM L-グルタミン、0.05mM 2-メルカプトエタノール、10%ラットT-STIM(Becton Dickenson社)及び10%FBSを補充したDMEM(GIBCO)で培養した。増殖アッセイでは、IL10-Fc又は例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質の存在下でアッセイ培地(10%FBS含有DMEM)200μL中、ウェルあたり1×104で96ウェルプレートに、MC/9細胞をプレーティングした。72時間の刺激後、MC/9細胞増殖を、CellTiter-Gloアッセイを使用して測定した。
【0238】
結果
図6A、
図6B、
図6C、
図6D、
図6E、及び
図6Fにプロットされたアッセイデータ、並びに下のTable 10(表11)に列挙されたEC50値によって示されるように、例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質(アテゾリズマブ/IL10、アベルマブ/IL10、デュルバルマブ/IL10、PHS102/IL10、PHS206/IL10、YT7A/IL10、YT10H/IL10、HSYPP31F/IL10、HSYPP411C/IL10、YT6D/IL10、YT7H/IL10、YP7G/IL10、YP11F/IL10)は、IL10-Fcタンパク質と比較して、向上したレベルでMC/9増殖を刺激することができる。
【0239】
【0240】
(実施例7)
抗PD-L1/IL10融合タンパク質によるCD8 T細胞の活性化
本実施例は、CD8 T細胞を活性化する、本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質に連結されたIL10ポリペプチドに関する研究について、例示する。
【0241】
材料及び方法
ヒトCD8 T細胞を、CD8磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社)を使用することによってPBMCから単離した。単離CD8 T細胞(1×107細胞/3mL/6ウェルプレートのうちの1ウェル)をAIM-V培地(Thermo Scientific社)中で培養し、T Cell TransAct(Miltenyi Biotec社)で3日間活性化した。活性化に続いて、CD8 T細胞を次いで洗浄し、96ウェルプレートのウェルあたり4×105細胞でプレーティングし、抗PD-L1/IL10融合タンパク質で3日間処理した。抗PD-L1/IL10融合タンパク質での処理に続いて、細胞を可溶性抗CD3(Biolegend社)1μg/mLで4時間再刺激した。細胞培養培地中のIFN-γ及びグランザイムBの濃度を、製造元の取扱説明書に従ってELISA(Biolegend社)によって測定した。
【0242】
結果
図7A及び
図7Bにプロットされたアッセイデータ、並びにTable 11(表12)に列挙されたEC50値によって示されるように、例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質(アベルマブ/IL10、PHS102/IL10)は、IL10-Fcタンパク質と比較して、向上したレベルでCD8 T細胞を活性化することができる(IFN-γ及びグランザイムBのレベルによって評価して)。
【0243】
【0244】
(実施例8)
同系腫瘍モデルにおける抗PD-L1/IL10融合タンパク質の抗腫瘍活性
本実施例は、2つの同系腫瘍モデル、CT26及びEMT6における、本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質の抗腫瘍活性に関する研究について、例示する。
【0245】
材料及び方法
BALB/cマウス(6~8週齢、雌)にCT26細胞(ATCC CRL-2638)5×105又はEMT6細胞(ATCC CRL-2755)5×105を皮下移植した。8日後、腫瘍体積が50~100mm3に達した場合、マウスを処置群に無作為化した。次いで、マウスに、PBS対照、IL10-Fc(92kDa) 3mg/kg、抗PD-L1抗体(アベルマブ)(150kDa) 4.9mg/kg、抗CSF1R/IL10融合体(185.5kDa) 36mg/kg、抗PD-L1/TGFβR融合体(M7824)(177kDa) 5.8mg/kg、又は抗PD-L1/IL10融合タンパク質(アベルマブ/IL10)(185.5kDa) 6mg/kgを週に2回腹腔内注射した。腫瘍体積を、研究の終了まで、ノギス測定によって週に2回測定した。
【0246】
結果
図8A及び
図8Bにプロットされた腫瘍体積データによって示されるように、本開示の例示的な抗PD-L1/IL10融合タンパク質は、研究の過程にわたってきわめて強力な抗腫瘍活性を呈し、CT26とEMT6の両腫瘍モデルにおいてすべての処置の内で最小の腫瘍体積を示した。
【0247】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本明細書に記載の本開示はまた、以下の条項によって定義されるが、これらは、単独で、又は他の1つ又は複数の条項又は実施形態と組み合わせて有益となり得る。前述の説明を制限することなく、下のように番号付けの、開示に関するある特定の非限定条項を提供するが、ここで、個々に番号が付けられた条項のそれぞれは、先行又は後続の条項のいずれかと共に使用することができ又は組み合わせることができる。したがって、条項のそれぞれはかかるすべての組合せへの支持を提供することを意図するものであり、必ずしも下に明示的に提供される特定の組合せに限定されるものではない:
【0248】
本発明の上述の開示について、明確さ及び理解の目的で、例及び例示としていくらか詳細に記載してきたが、本明細書に記載される例、説明及び実施形態を含む本開示は、例示目的であり、例示的であることが意図され、本開示を限定すると解釈すべきではない。本明細書に記載される例、説明及び実施形態に対する種々の改変又は変化が行われ得、それらが本開示及び添付の特許請求の範囲の精神及び視野の範囲内に含まれることは、当業者であれば明らかである。更に、当業者であれば、本明細書に記載されるものと均等ないくつかの方法及び手順を認識するであろう。かかるすべての均等物は、本開示の範囲内であると理解すべきであり、添付の特許請求の範囲によって包含される。
【0249】
本発明の更なる実施形態について、以下の特許請求の範囲に記載する。
【0250】
本明細書に記述のすべての刊行物、特許出願、特許、又はその他の文書の開示は、かかる個々の刊行物、特許、特許出願又はその他の文書のそれぞれが、あたかも、すべての目的のためにその全体が参照により組み込まれていると個別に具体的に示されているかのように、そしてその全体が本明細書に記載されているかのように、同程度にすべての目的のためにその全体が参照により明示的に組み込まれる。矛盾する場合は、具体的な用語を含めて、本明細書が優先することになる。
【配列表】