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特許7434621画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/205 20060101AFI20240213BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240213BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B41J2/205
B41J2/21
B41J2/525
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023015206
(22)【出願日】2023-02-03
(62)【分割の表示】P 2019077338の分割
【原出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2023052888
(43)【公開日】2023-04-12
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森部 将英
(72)【発明者】
【氏名】柳内 由美
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7247006(JP,B2)
【文献】特開平09-248921(JP,A)
【文献】特開2012-214030(JP,A)
【文献】特開2005-059364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各画素について、第1インクに対応する第1階調値と第2インクに対応する第2階調値とを取得する取得手段と、
各画素について、前記第1階調値を量子化して前記第1階調値よりもレベル数の少ない第1量子化値を生成し、前記第2階調値を量子化して前記第2階調値よりもレベル数の少ない第2量子化値を生成する量子化手段と、
を備え、
前記第1量子化値のレベルが高いほど付与される前記第1インクの量が多くなるように前記第1量子化値に従って前記第1インクを付与し、前記第2量子化値のレベルが高いほど付与される前記第2インクの量が多くなるように前記第2量子化値に従って前記第2インクを付与する付与手段によって記録媒体に画像の記録を行うための画像処理を行う画像処理装置であって、
前記第1インクの表面張力は前記第2インクの表面張力よりも高く、
所定の画素領域に含まれる複数の画素にそれぞれ対応する前記第1階調値が一様に同じ値であり、且つ、前記複数の画素にそれぞれ対応する前記第2階調値が一様に同じ値である場合、
前記量子化手段は、前記所定の画素領域の中で、前記第2量子化値のレベルが0ではない画素の数が前記第1量子化値のレベルが小さい画素であるほど多くなるように、前記第1量子化値および前記第2量子化値を生成することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
各画素について、第1インクに対応する第1階調値を量子化して前記第1階調値よりもレベル数の少ない第1量子化値を生成し、第2インクに対応する第2階調値を量子化して前記第2階調値よりもレベル数の少ない第2量子化値を生成する量子化手段を備え、
前記第1量子化値のレベルが高いほど付与される前記第1インクの量が多くなるように前記第1量子化値に従って前記第1インクを付与し、前記第2量子化値のレベルが高いほど付与される前記第2インクの量が多くなるように前記第2量子化値に従って前記第2インクを付与する付与手段によって記録媒体に画像の記録を行うための画像処理を行う画像処理装置であって、
前記第1インクの表面張力は前記第2インクの表面張力よりも高く、
前記量子化手段は、
閾値マトリクスの中の対応する閾値に基づいて当該閾値よりも大きな値を有する補正閾値を導出し、前記第1階調値を前記閾値および前記補正閾値と比較することにより前記第1階調値を量子化して前記第1量子化値を生成し、
前記第1階調値との比較に用いられた前記閾値と前記第2階調値との差分である第1の差分を前記第1階調値に基づいて変更し、更に、前記第1階調値との比較に用いられた前記補正閾値と前記第2階調値との差分である第2の差分を前記第1階調値に基づいて変更し、変更した後の前記閾値および前記補正閾値と前記第2階調値との対応関係に基づいて前記第2階調値の量子化を行い、
所定の画素領域に含まれる複数の画素にそれぞれ対応する前記第1階調値が一様に同じ値であり、且つ、前記複数の画素にそれぞれ対応する前記第2階調値が一様に同じ値である場合、
前記量子化手段は、前記所定の画素領域の中で、前記第2量子化値のレベルが0ではない画素の数が前記第1量子化値のレベルが小さい画素であるほど多くなるように、前記第1の差分と前記第2の差分を変更することを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
前記第1インクはブラックインク、前記第2インクはカラーインクであることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第1インクは顔料インク、前記第2インクは染料インクであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記付与手段を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
各画素について、第1インクに対応する第1階調値と第2インクに対応する第2階調値とを取得する取得工程と、
各画素について、前記第1階調値を量子化して前記第1階調値よりもレベル数の少ない第1量子化値を生成し、前記第2階調値を量子化して前記第2階調値よりもレベル数の少ない第2量子化値を生成する量子化工程と、
を有し、
前記第1量子化値のレベルが高いほど付与される前記第1インクの量が多くなるように前記第1量子化値に従って前記第1インクを付与し、前記第2量子化値のレベルが高いほど付与される前記第2インクの量が多くなるように前記第2量子化値に従って前記第2インクを付与する付与手段によって記録媒体に画像の記録を行うための画像処理を行う画像処理方法であって、
前記第1インクの表面張力は前記第2インクの表面張力よりも高く、
所定の画素領域に含まれる複数の画素にそれぞれ対応する前記第1階調値が一様に同じ値であり、且つ、前記複数の画素にそれぞれ対応する前記第2階調値が一様に同じ値である場合、
前記量子化工程は、前記所定の画素領域の中で、前記第2量子化値のレベルが0ではない画素の数が前記第1量子化値のレベルが小さい画素であるほど多くなるように、前記第1量子化値および前記第2量子化値を生成することを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子化処理を行って記録媒体に画像を記録するための画像処理装置、画像処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に用いられるインクとして顔料インクや染料インクが知られている。顔料インクは染料インクと比較して耐光性や耐水性に優れている。また、顔料インクは比較的表面張力が高く記録媒体への浸透速度が遅いため、記録媒体の表面に残りやすく高い発色性が得られる。その一方で、顔料インクは、記録媒体の表面に残りやすいため、耐擦過性に弱いという特徴も有している。
【0003】
特許文献1には、顔料インク(第1色)と染料インク(第2色)を併用するインクジェット記録装置において、画像の耐擦過性を向上させるための量子化処理方法が開示されている。特許文献1によれば、閾値マトリクスに記憶されている閾値と第1色の階調値を比較して第1色の量子化処理を行い、上記閾値に対し第1色の階調値に基づいてオフセットをかけて得られる値と第2色の階調値を比較して第2色の量子化処理を行っている。以下、このような量子化処理を、本明細書では「色間処理」と称す。
【0004】
色間処理を用いた場合、ハイライトから中間階調までの領域において、記録媒体上では複数色のインクのドットをなるべく重ねないようにして記録することができる。また、ブルーノイズ特性を有する閾値マトリクスを用いた場合、複数のインク色の中で、第1色に指定したインク色の分散性を特に高くすることができる。特許文献1では、このような色間処理の特徴を利用し、表面張力の高い顔料インクを第1色、表面張力の低い染料インクを第2色に設定することにより、顔料インクの重ね合わせに伴う擦過性の低下を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-112892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
インクジェット記録装置では、高い文字品位と、ブリード(異色間の境界にじみ)を抑えたカラー画像を両立させるために、ブラックの顔料インクと、カラーの染料インクを組み合わせて使用するものがある。しかしながら、このような記録装置において、カラーインクとブラックインクが重ねて記録されると、画像のブラック濃度はブラックインクを単独で記録した場合よりも低下し、結果的に黒文字の品位が低下してしまう場合がある。ブラックインクが表面張力の高いインクであっても、表面張力の低いカラーインクと同じ位置に記録されると、記録媒体の深さ方向への浸透が促され、記録媒体の表面に色材が残り難くなるためである。
【0007】
但しこの場合であっても、特許文献1のような色間処理を用い、表面張力の高いブラックインクを第1色、表面張力の低いカラーインクを第2色に設定すれば、これら第1色と第2色をなるべく重ねて記録しないようにすることができる。しかしながら、色間処理を採用しても、第3色、第4色のような更に複数のカラーインクまでを考慮すると、ブラックインクは何れかのカラーインクと重複して記録される状況は発生し、やはり文字品位の低下が懸念されることになる。
【0008】
以上では、表面張力の高いインクとしてブラックインクを例にして説明したが、表面張力の高いインクがカラーインクであっても同様である。すなわち、高い発色性を有する画像を出力するために表面張力の高いカラーインクを用いた場合であっても、このカラーインクが表面張力の低い他のインクと重ねて記録された場合には、カラーインクの発色性を十分に発揮することができなくなってしまう。
【0009】
本発明は上記問題点を解消するためになされたものである。よってその目的とするところは、表面張力の異なる複数のインクを用いて画像を記録するインクジェット記録装置において、表面張力の高いインクの濃度や発色性を損なうことなく、高濃度で発色性に優れた画像を出力することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために本発明は、各画素について、第1インクに対応する第1階調値と第2インクに対応する第2階調値とを取得する取得手段と、各画素について、前記第1階調値を量子化して前記第1階調値よりもレベル数の少ない第1量子化値を生成し、前記第2階調値を量子化して前記第2階調値よりもレベル数の少ない第2量子化値を生成する量子化手段と、を備え、前記第1量子化値のレベルが高いほど付与される前記第1インクの量が多くなるように前記第1量子化値に従って前記第1インクを付与し、前記第2量子化値のレベルが高いほど付与される前記第2インクの量が多くなるように前記第2量子化値に従って前記第2インクを付与する付与手段によって記録媒体に画像の記録を行うための画像処理を行う画像処理装置であって、前記第1インクの表面張力は前記第2インクの表面張力よりも高く、所定の画素領域に含まれる複数の画素にそれぞれ対応する前記第1階調値が一様に同じ値であり、且つ、前記複数の画素にそれぞれ対応する前記第2階調値が一様に同じ値である場合、前記量子化手段は、前記所定の画素領域の中で、前記第2量子化値のレベルが0ではない画素の数が前記第1量子化値のレベルが小さい画素であるほど多くなるように、前記第1量子化値および前記第2量子化値を生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面張力の異なる複数のインクを用いて画像を記録するインクジェット記録装置において、高濃度で発色性に優れた画像を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】インクジェット記録装置と記録ヘッドの概略構成図である。
図2】インクジェット記録システムの制御の構成を示すブロック図である。
図3】画像処理を説明するためのフローチャートである。
図4】量子化処理の詳細を説明するためのブロック図である。
図5】色間処理を説明するためのブロック図およびフローチャートである。
図6】記録と判定される閾値の範囲を示す図である。
図7】本実施形態の色間処理を説明するための図である。
図8】第1色~第4色の量子化の結果を示す図である。
図9】第3色のオフセット値の導出方法を説明するためのフローチャートである。
図10】第4色のオフセット値の導出方法を説明するためのフローチャートである。
図11】第1の量子化処理の結果と第2の量子化処理の結果を示す図である。
図12】第1、第2の閾値オフセット値を導出するためのフローチャートである。
図13】第3の実施形態の量子化処理の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
(装置構成)
図1(a)および(b)は、本発明に使用可能なインクジェット記録装置100(以下、単に記録装置100ともいう)および記録装置100に搭載可能な記録ヘッド102の概略構成図である。本実施形態の記録装置100は、シリアルタイプのインクジェット記録装置であり、記録ヘッド102は図のx方向に往復移動が可能になっている。
【0014】
記録ヘッド102には、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)のインクをそれぞれ吐出するノズル列がx方向に配列し、それぞれのノズル列にはインクを吐出するノズル106がy方向に配列している。図では、1つのノズル列において、同色のインクを吐出するノズルがy方向に一列に配列しているが、個々のノズル列は、同色のインクを吐出する複数のノズル列で構成されていてもよい。本実施形態において、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクのうち、ブラック(K)は相対的に表面張力が高い顔料インク、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)は相対的に表面張力が低い染料インクとする。
【0015】
記録ヘッド102によって記録が行われる領域の記録媒体103は、それぞれ対となっている搬送ローラ104及び排出ローラ107によって挟持され、平滑性が維持されている。また、記録ヘッド102の吐出口面に対向する位置にはプラテン105が配され、記録中の記録媒体103を背面から支持している。
【0016】
以上のような構成のもと、記録ヘッド102は、記録データに従ってインクを吐出しなx方向に移動し1回分の記録走査を行う。このような1回分の記録走査が行われると、搬送ローラ104および排出ローラ107が回転し、記録ヘッド102の記録幅に相当する距離だけ記録媒体103をy方向に搬送する。そして、このような記録ヘッド102による記録走査と記録媒体103の搬送動作とを交互に繰り返すことにより、記録媒体103には順次画像が記録されていく。
【0017】
(システム構成)
図2は、本発明に使用可能なインクジェット記録システムの制御の構成を示すブロック図である。本実施形態におけるインクジェット記録システムは、ホストPC等の画像処理装置200と、記録装置100を有している。画像処理装置200にて所定の画像処理が施された後の画像データは記録装置100に送られ、記録ヘッド102(図2では不図示)によって記録処理される。
【0018】
画像処理装置200において、CPU201は、HDD203に記憶されたプログラムに従ってRAM202をワークエリアとして用いながら、画像処理装置200全体を制御する。RAM202は、揮発性の記憶部であり、プログラムやデータを一時的に保持する。HDD203は、不揮発性の記憶部であり、同じくプログラムやデータを保持する。CPU201は、記録装置100で記録するべき画像データに対し所定の画像処理を施した後、データ転送I/F 204を介して画像データを記録装置100に送信する。
【0019】
データ転送I/F 204は記録装置100との間で、データの送受信を制御するためのI/Fである。接続方式としては、USB、IEEE1394、LAN等を用いることができる。キーボード/マウス I/F 205は、不図示のキーボードやマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するためのI/Fである。ユーザは、キーボードやマウスを介して各種設定やコマンドの入力を行い、キーボード/マウス I/F 205は入力された設定やコマンドをCPU201に送信する。ディスプレイI/F 206は、画像処理装置200に接続された不図示のディスプレイにおける表示画面を制御するためのI/Fである。ユーザは、CPU201がディスプレイI/F 206を介してディスプレイに表示した画面を介して、様々な情報を確認することができる。
【0020】
一方、記録装置100において、CPU211は、ROM213に記憶されたプログラムに従ってRAM212をワークエリアとして用いながら、装置全体を制御する。RAM212は、揮発性の記憶部であり、プログラムやデータを一時的に保持する。ROM213は、不揮発性の記憶部であり、同じくプログラムやデータを保持する。
【0021】
データ転送I/F214は、画像処理装置200との間におけるデータの送受信を制御する。画像処理アクセラレータ216は、CPU211よりも高速に画像処理を実行可能なハードウェアである。画像処理アクセラレータ216は、画像処理に必要なパラメータとデータ転送I/F214より受信した画像データが、CPU211によってRAM212の所定アドレスに書き込まれることによって起動される。そして、画像データに対し所定の画像処理を施すことによって、記録ヘッド102を駆動するための記録データを生成する。
【0022】
モータドライバ217は、記録ヘッド102を搭載したキャリッジをx方向に移動するためのキャリッジモータや、搬送ローラ104と排出ローラ107を回転させるための搬送モータなど、記録装置100の各種モータを駆動させるためのドライバである。ヘッドコントローラ215は、記録データに従って記録ヘッド102を駆動するためのドライバである。
【0023】
画像処理アクセラレータ216によって記録データが生成されると、CPU211は、モータドライバ217を介して各種モータを駆動しつつ、ヘッドコントローラ215を介して記録ヘッド102に記録データに従った記録動作を行わせる。
【0024】
なお、本実施形態において、画像処理アクセラレータ216は必須な要素ではない。CPU211が十分な処理能力を有する場合には、CPU211が所定の画像処理を実行してもよい。
【0025】
(画像処理フロー)
図3は、画像処理装置200のCPU201が実行する画像処理を説明するためのフローチャートである。本処理は、ユーザが、所定の画像を印刷するための印刷コマンドを入力することによって開始される。
【0026】
本処理が開始されると、CPU201は、S300において、記録するべき画像データをRAM202に展開する。ここで展開される画像データは、8ビット(256階調)で表現されるレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の輝度値をそれぞれ有する複数の画素で構成されるものである。以後、このように複数の要素(RGB)で構成される画素の集合体である画像データを「RGBデータ」のように称す。
【0027】
S301において、CPU201は、S300で展開されたRGBデータに対し色補正処理を行う。色補正処理とは、sRGB等で規格化された色空間を記録装置100が表現可能な色空間に対応づけるための処理である。具体的には、CPU201は、HDD203に記憶されている3次元のルックアップテーブルを参照し、8bitのRGBデータを12bitのR´G´B´データに変換する。
【0028】
S302において、CPU201は、S301で得られたR´G´B´データに対し、インク色分解処理を行う。インク色分解処理とは、輝度値を示すR´G´B´データを、記録装置100が使用するインク色のそれぞれに対応づけた階調値を示す画像データに変換する処理である。具体的には、CPU201は3次元のルックアップテーブルを参照し、12bitのR´G´B´データを、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)についての階調値を示す、16bitのCMYKデータに変換する。インク色分解処理によって、16bitの階調データが4チャンネル分生成される。
【0029】
S303において、CPU201は、16bitのCMYKデータに対し量子化処理を行う。本実施形態では、個々の画素について記録(1)または非記録(0)を示す2値の1bitデータに量子化するものとする。量子化処理の詳細については後述する。
【0030】
S304において、CPU201は、S303の量子化処理によって得られた各色の1ビットデータをデータ転送I/F 204を介して記録装置100に出力する。以上で本処理が終了する。
【0031】
なお、以上では、図3で示した全ての工程を、画像処理装置200が行う形態で説明したが、図3に示す工程のうち一部または全ての工程を、記録装置100の画像処理アクセラレータ216(図2参照)が行ってもよい。
【0032】
(量子化処理の詳細)
図4は、図3のS303で実行される量子化処理の詳細を説明するためのブロック図である。本実施形態の量子化処理においては、まず入力された各画素が有する階調値に関する処理が施され、次に閾値に関する処理が施され、最後にディザ法による量子化処理が施される。これら一連の処理は色ごと(チャンネルごと)に並列処理される。以下、任意の色(チャンネル)についての量子化処理を、図4を参照しながら詳しく説明する。
【0033】
画像データ取得部401は、個々の画素について16bitの階調値をインク色分取得する。図では、第1色~第4色それぞれの16bitの階調値が入力される状態を示している。
【0034】
ノイズ付加部402は、16bitの階調値に所定のノイズを付加する。ノイズを付加することにより、同レベルの階調値を有する画素が連続する場合も、同一パターンが連続して記録される状態を回避し、すじやテクスチャの発生を抑制することが出来る。ノイズ付加部402では、所定のランダムテーブルが示す符号と、固定強度と、入力値に応じた変動強度とを用いて生成されたノイズが、画素ごとに階調値に付加される。ここで、ランダムテーブルはノイズの正負を設定するテーブルであり、画素位置ごとに正、ゼロまたは負を設定している。本実施形態のランダムテーブルは最大8面有することが出来、それぞれのテーブルサイズは任意に設定可能としている。固定強度はノイズ量の強さを示し、その大きさによってノイズの大小が決まる。本実施形態では、画像の粒状度とすじやテクスチャの度合い等に応じ、印刷モードごとに最適なランダムテーブルや固定強度を設定することによって、ノイズ量を適切に調整している。
【0035】
正規化処理部403は、ノイズが付加された後の16bitの階調値を、12bitのレンジに正規化する。すなわち、16bitで表される65535値の階調値を12bitで表される4096階調に正規化する。
【0036】
以上説明した画像データ取得部401~正規化処理部403の処理は、各色(各チャンネル)について並列に行われる。そして、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックそれぞれの階調値を示す4色分の12bitデータが、4つのチャンネルのそれぞれのディザ処理部410に入力される。
【0037】
ディザ処理部410において、量子化すべき処理対象色の階調値は、処理対象階調値としてそのまま量子化処理部406に送信される。一方、処理対象色以外の色の階調値は、参照階調値として色間処理部404に入力される。色間処理部404は、閾値取得部405が取得した閾値に対し、参照階調値に基づいて所定の処理を施して最終的な閾値を決定し、これを量子化処理部406に提供する。量子化処理部406は、処理対象階調値を、色間処理部404より入力された閾値と比較することにより、記録(1)または非記録(0)を示す量子化値を生成する。
【0038】
閾値取得部405は、ROMなどのメモリに記憶されている複数のディザパターン409より印刷モードに対応する1つの閾値マトリクスを選択し、処理対象階調値の画素位置に対応した閾値を取得する。本実施形態において、ディザパターン409は、0~4095の閾値がブルーノイズ特性を有するように配列して形成された閾値マトリクスであり、512×512画素、256×256画素、512×256画素、など様々なサイズや形状を呈することが出来る。すなわち、メモリには、このようなサイズや形状の異なる複数の閾値マトリクスが予め格納されており、閾値取得部405は、この中から印刷モードに対応した閾値マトリクスを選択する。そして、選択された閾値マトリクスに配列する複数の閾値の中から、処理対象階調値の画素位置(x,y)に対応する閾値Dth(x、y)を色間処理部に提供する。
【0039】
(一般的な色間処理)
ここではまず特許文献1に開示されているような一般的な色間処理について説明する。
【0040】
図5(a)および(b)は、色間処理部404における処理の構成および工程を説明するためのブロック図およびフローチャートである。色間処理部404は、処理対象色以外の色に対応する階調値を参照階調値とし、これら参照階調値を用いて閾値取得部405が取得した閾値Dthに所定の処理を施し、処理対象階調値を量子化するための量子化閾値Dth´を導出する。例えば、処理対象階調値がブラックの階調値の場合、参照階調値はシアン、マゼンタ、イエローの階調値となる。
【0041】
図5(a)では、処理対象階調値をIn1(x,y)、参照階調値をIn2(x,y)、In3(x,y)およびIn4(x,y)として示している。ここで、(x,y)は画素位置を示し、閾値取得部405が閾値マトリクスの中から処理対象階調値の画素位置に対応する閾値を選出するための座標パラメータとなる。
【0042】
図5(a)を参照するに、色間処理部404に入力された参照階調値In2(x,y)、In3(x,y)およびIn4(x,y)は、まず、閾値オフセット量算出部407に入力される(S501)。すると、閾値オフセット量算出部407は、これら参照階調値を用いて処理対象階調値In1(x,y)に対する閾値オフセット値Ofs1(x,y)を算出する(S502)。図5では、処理対象階調値In1(x,y)に対する閾値オフセット値Ofs1(x,y)を求める例を示しているが、4つの処理対象階調値In1~In4のそれぞれに対応する閾値オフセット値Ofs1~Ofs4が、それぞれのチャンネルで求められる。各チャンネルにおいて、閾値オフセット値Ofs1(x,y)~Ofs4(x,y)は以下の式により算出される。
Ofs1(x,y) = 0 (式1-1)
Ofs2(x,y) = In1(x,y) (式1-2)
Ofs3(x,y) = In1(x,y)+In2(x,y) (式1-3)
Ofs4(x,y) = In1(x,y)+In2(x,y)+In3(x,y) (式1-4)
【0043】
算出された閾値オフセット値Ofs1(x,y)~Ofs4(x,y)は、それぞれのチャンネルの閾値オフセット量加算部408に入力される。以下の処理は、いずれのチャンネルでも同様の処理となるため、共通する呼称として処理対象階調値をIn(x,y)、閾値オフセット値をOfs(x,y)として説明する。
【0044】
閾値オフセット量加算部408は、処理対象階調値In(x,y)の座標(x,y)に対応する閾値Dth(x,y)を閾値取得部405より取得する(S503)。
【0045】
S504において、閾値オフセット量加算部408は、閾値取得部405より入力された閾値Dth(x,y)から、閾値オフセット量算出部407より入力された閾値オフセット値Ofs (x,y)を減算し、量子化閾値Dth´(x,y)を得る。
Dth´(x,y)=Dth(x,y) - Ofs (x,y) ・・・(式2)
【0046】
この際、Dth´(x,y)が負の値となった場合は、ディザパターンが有する閾値の最大値Dth_max(以下、最大閾値と称す)を加算して量子化閾値Dth´(x,y)とする。
【0047】
すなわち、
Dth´(x,y)<0のとき
Dth´(x,y)=Dth´(x,y)+Dth_max ・・・(式3)
とする。これにより、量子化閾値Dth´(x,y)が取りうる値は、
0≦Dth´(x,y)≦Dth_maxの範囲となる。
【0048】
(式2)または(式3)により量子化閾値Dth´(x,y)が得られると、量子化処理部406は、処理対象階調値In (x,y)と量子化閾値Dth´(x,y)を比較する。そして、処理対象の画素位置(x,y)に対する記録(1)または非記録(0)を表す量子化値Out(x,y)を生成する(S505)。以上で本処理が終了する。
【0049】
図6は、第1~第4色に対応する第1~第4の階調値(In1~In4)のそれぞれが、所定の画素領域に一様に入力された場合に、閾値マトリクスに配置された閾値0~Dth_maxのうち、記録(1)と判定される閾値の範囲を示す図である。横軸は閾値Dthであり、0~Dth_max(最大閾値)の範囲を示している。各色に対応する太線は、記録(1)と判定される閾値の範囲を示している。
【0050】
本例の場合、第1色については、(式1-1)よりOfs1=0である。よって、0~In1(601~602)に含まれる閾値に対応する画素位置の量子化値Out(x,y)が記録(1)に設定される。
【0051】
第2色については、(式1-2)よりOfs2=In1である。本例では、In1+In2がDth_maxを超えているものとする。この場合、Dth_maxを超えた領域については、(In1+In2)をDth_maxで除算した余りに相当する領域、すなわち0~In1+In2-Dth_maxの閾値に対応する画素位置の量子化値Out(x,y)が記録(1)に設定される。よって、記録(1)と判定される閾値の範囲は、In1~Dth_max(603~604)と0~In1+In2-Dth_max-1(605~606)となる。
【0052】
第3色については、(式1-3)よりOfs3=In1+In2である。よって、In1+In2-Dth_max~In1+In2+In3-Dth_max-1(607~608)の閾値に対応する画素位置の量子化値Out(x,y)が記録(1)に設定される。
【0053】
第4色については、(式1-4)よりOfs4=In1+In2+In3である。よって、In1+In2+In3-Dth_max~In1+In2+In3+In4-Dth_max-1(609~610)の閾値に対応する画素位置の量子化値Out(x,y)記録(1)に設定される。
【0054】
図6の例では、第1色~第4色のうち2つの色がともに記録(1)と判定される閾値が存在し、記録媒体上ではその2色が重複して記録される状況が発生する。しかし、例えばIn1+In2+In3+In4の値がDth_maxよりも小さい場合は、2色以上がともに記録(1)と判定される閾値は存在しないことになり、全てのインク色が排他的な画素位置に記録される。そのため、閾値マトリクスとしてブルーノイズ特性を有するものを使用した場合には、異なる色のドットが互いに重複することなく、高い分散性でドットを配置させることができる。
【0055】
以上説明したように、一般的な色間処理においては、共通の閾値マトリクスを利用しながらも、互いの階調値をオフセット値とすることにより、各色で固有の量子化閾値Dth´を求めている。そして、その新たに求めた量子化閾値Dth´を用いて、記録(1)または非記録(0)に量子化する処理を行うことにより、記録媒体における複数色のインクドットの重複をなるべく抑えることができる。
【0056】
しかしながら、図6において、第1色が表面張力の高いインク、第2色~第4色が表面張力の低いインクである場合、605~606、607~608および609~610では表面張力の高いインクが表面張力の低いインクと重複して記録される領域となる。この場合、表面張力の高いインクが、表面張力の低いインクとともに記録媒体の深さ方向に浸透し、表面張力の高いインクの画像濃度や発色性が低下してしまう。
【0057】
(本実施形態の色間処理)
以上のことを踏まえ、本実施形態においては、複数色のインクを重複して記録する状況において、なるべく表面張力の高いインクは他のインクと重複して記録されないように、色間処理を行うようにする。
【0058】
図7(a)および(b)は、本実施形態の色間処理を説明するための図である。図6と同様、横軸は閾値Dthが取りうる範囲(0~Dth_max)を示している。ここでは、第1色~第4色に対し階調値In1~In4のそれぞれが所定の画素領域に一様に入力され、第1色の階調値In1と第2色の階調値In2についての量子化処理が終了した状態を示している。
【0059】
図7(a)は(In1+In2)<Dth_maxの場合を示している。この場合、閾値範囲(0~Dth_max)は、第1色のみが記録(1)と設定される領域(701~702)、第2色のみが記録(1)と設定される領域(703~704)、両色とも非記録(0)と設定される領域(705~Dth_max)に分類される。つまり、記録媒体においては、第1色であるブラックの単ドットが記録される画素領域と、第2色であるシアンの単ドットが記録される画素領域と、ブラックのドットもシアンのドットも記録されない画素領域が混在することになる。言い換えると、ブラックとシアンに関しては、これらの重複ドットが存在しないため、シアンドットとの重複に起因してブラックドットの発色性や画像濃度が低下することはない。
【0060】
一方、図7(b)は(In1+In2)>Dth_maxの場合を示している。この場合、閾値範囲(0~Dth_max)は、第1色のみが記録(1)と設定される領域(712~708)と、第2色のみが記録(1)と設定される領域(709~710)と、両色が共に記録(1)と設定される領域(711~712)に分類される。つまり、記録媒体においては、ブラックの単ドットが記録される画素領域と、シアンの単ドットが記録される画素領域と、ブラックとシアンの重複ドットが記録される画素領域とが混在することになる。但し、色間処理を行っているため、ブラックとシアンの重複ドットの発生は最低限に抑えられ、シアンドットとの重複に起因するブラックドットの発色性や濃度の低下も最小限に抑えられている。
【0061】
次に、このように第1色と第2色が量子化された状態で、第3色であるマゼンタと第4色であるイエローを量子化する場合を考える。本実施形態においては、第1色であるブラックインクが他のインクに比べて表面張力が高いため、他のインクとはなるべく重複しないように量子化処理を制御する。具体的には、第3色も第4色も、第1色が非記録(0)と設定されている領域に対し優先的に記録(1)が設定されるように閾値オフセット値を調整する。
【0062】
例えば、図7(a)の状態で更に第3色を記録する場合、第1色も第2色も非記録(0)と設定される領域(705~Dth_max)が第1優先領域となる。そして、表面張力が低いシアン(第2色)のみが記録(1)と設定される領域(703~704)が第2優先領域となり、表面張力が高いブラック(第1色)のみが記録(1)と設定される領域(701~702)が第3優先領域となる。尚、第3色が第2優先領域に設定されるのは、(In1+In2+In3)>Dth_maxとなる場合である。(In1+In2+In3)<Dth_maxの場合には、第3色は第1優先領域にしか設定されない。
【0063】
一方、図7(b)の状態で更に第3色を記録する場合、第1色も第2色も非記録(0)と設定される領域が存在しないので、表面張力が低いシアン(第2色)のみが記録(1)と設定される領域(709~710)が第1優先領域となる。そして、表面張力の高いブラック(第1色)のみが記録(1)と設定される領域(712~708)が第2優先領域となり、第1色と第2色がともに記録(1)と設定される領域(711~712)が第3優先領域となる。尚、第3色が第2優先領域に設定されるのは、(In1+In3)>Dth_maxとなる場合である。(In1+In3)<Dth_maxの場合には、第3色は第1優先領域にしか設定されない。
【0064】
図8は、第1色と第2色が図7(b)のように量子化処理された状態で更に第3色(マゼンタ)と第4色(イエロー)を量子化した結果を示している。第3色が記録(1)と判定される領域(807~808)は、その全域が第1優先領域に含まれており、全てのマゼンタドットがブラックドットではなくシアンドットと重複して記録される。
【0065】
第4色についても同様である。表面張力の大きいブラックが記録(1)と設定される領域(801~802)には、なるべく第4色は記録(1)に設定されないようにしている。更に、ブラックが非記録(0)と設定される領域(803~804)の中でも、なるべく他のインクが記録(1)と設定される領域は外すように優先順位を定めている。このため、第4色を記録(1)と設定する領域としては、シアン(第2色)のみが記録(1)と設定される領域(809~810)が第1優先領域となる。そして、第2色と第3色が記録(1)と設定される領域(807~808)が第2優先領域となり、第1色のみが記録(1)と設定される領域(806~803)が第3優先領域となる。更に、第1色と第2色が記録(1)と設定される領域(805~806)が第4優先領域となる。
【0066】
図8では、第1優先領域の全領域(809~810)と第2優先領域の一部の領域(811~812)に、第4色のイエローが記録(1)と設定された場合を示している。全閾値領域において、第1色が記録(1)と設定される領域の多くは、第2色~第4色は非記録(0)と設定されており、多くのブラックドットは他のインクと重複されることなく記録することができる。
【0067】
このように本実施形態の色間処理においては、第1色および第2色までは従来の色間処理と同様の処理を行う。そして、第3色以降については、記録(1)と設定される閾値領域が上述した優先順位に従って設定されるように、色間処理で用いるオフセット値Ofsを調整する。
【0068】
図9は、本実施形態の色間処理において、第3色のオフセット値Ofs3の導出方法を説明するためのフローチャートである。本処理は、図5(b)のS503において、閾値オフセット量算出部407(図5(a)参照)が実行する処理に相当する。以下の処理では、記述を簡潔にするため、特に必要がない場合は画素位置(x,y)を省略して示す。
【0069】
本処理が開始されると、閾値オフセット量算出部407は、第1色の階調値In1と第2色の階調値In2の和が最大閾値Dth_maxを超えているか否かを判定する(S901)。最大閾値Dth_maxを超えている場合はS902に進み、超えていない場合はS903に進む。
【0070】
S902およびS903では、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色と第2色の量子化値がともに記録(1)と設定される閾値の個数KCを算出する。すなわち、
S902では KC=In1+In2-Dth_max
S903では KC=0 とする。
【0071】
S904では、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色の量子化値が(1)で且つ第2色の量子化値が(0)と設定される閾値の個数Kと、第2色の量子化値が(1)で且つ第1色の量子化値が(0)と設定される閾値の個数Cと、を算出する。
K=In1-KC
C=In2-KC
【0072】
S905では、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色と第2色の量子化値がともに非記録(0)である閾値の個数Wを算出する。
W=Dth_max-K-C-KC
【0073】
S906では、第3色の階調値In3(x,y)の座標(x,y)に対応する閾値Dthを取得する。
【0074】
S907では取得した閾値Dthが(K+C+KC)以上であるか否かを判定する。S907でDth≧(K+C+KC)である場合、S908に進み、第3色の閾値オフセット値Ofs3を(式4-1)に従って算出する。
Ofs3=K+C+KC (式4-1)
【0075】
S907でDth≧(K+C+KC)ではない場合、S909に進み、閾値Dthが(K+KC)以上であるか否かを判定する。S909でDth≧(K+KC)である場合、S910に進み、第3色の閾値オフセット値Ofs3を式(4-2)に従って算出する。
Ofs3=K+KC-W (式4-2)
【0076】
S909でDth≧(K+KC)ではない場合、S911に進み、閾値DthがKC以上であるか否かを判定する。S911でDth≧KCである場合、S912に進み、第3色の閾値オフセット値Ofs3を式(4-3)に従って算出する。
Ofs3=KC-W-C (式4-3)
【0077】
S911でDth≧KCではない場合、S913に進み、第3色の閾値オフセット値Ofs3を式(4-4)に従って算出する。
Ofs3=-W-C-K (式4-4)
【0078】
以上で本処理が終了する。算出された第3色の閾値オフセット値Ofs3は、閾値オフセット量加算部408(図5(a)参照)に提供され、図5(b)におけるS504以降の処理が行われる。
【0079】
図9において、S908でオフセット値Ofs3が求められる場合とは、図7(a)の第1優先領域のように、第1色も第2色も非記録(0)に設定されている領域に第3色が記録(1)となるように、オフセット値Ofs3が設定される場合である。また、S910でオフセット値Ofs3が求められる場合とは、図7(a)の第2優先領域や図7(b)の第1優先領域のように、第1色のみが記録(1)に設定されている領域に第3色が記録(1)となるようにオフセット値Ofs3が設定される場合である。また、S912でオフセット値Ofs3が求められる場合とは、図7(a)の第3優先領域や図7(b)の第2優先領域のように、第1色のみが記録(1)に設定されている領域に第3色が記録(1)となるように、オフセット値Ofs3が設定される場合である。更に、S914でオフセット値Ofs3が求められる場合とは、第1色と第2色の両方が記録(1)に設定されている領域に第3色が記録(1)となるように、オフセット値Ofs3が設定される場合である。
【0080】
このように、S907~S913の判定工程とオフセット値Ofs3の設定工程によれば、図7(a)および(b)で示したような優先順位に従って、第3色であるマゼンタの量子化処理を行うことができる。その結果、表面張力が高いブラックインクが表面張力の低い他のインクと重複して記録される頻度を抑え、高濃度で発色性に優れた画像を出力することが可能となる。
【0081】
図10は、本実施形態の色間処理において、第4色のオフセット値Ofs4の導出方法を説明するためのフローチャートである。本処理も、図5(b)のS503において、閾値オフセット量算出部407(図5(a)参照)が実行する処理に相当する。
【0082】
本処理が開始されると、閾値オフセット量算出部407は、S1001において、第1色の階調値In1と第2色の階調値In2と第3の階調値In3を用い、以下の式に従って、KCM、KCおよびKMを導出する。
KCM=max(In1+In2+In3-2×Dth_max,0)
KC=max(In1+In2-KCM-Dth_max,0)
KM=max(In1+In3-KCM-Dth_max,0)
CM=max(In1+In2+In3-2×KCM-KC-KM-Dth_max,0)
【0083】
ここで、KCMは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色、第2色及び第3色の量子化値がともに記録(1)に設定される閾値の個数を示す。また、KCは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色と第2色の量子化値がともに記録(1)に設定され第3色の量子化値が非記録(0)に設定される閾値の個数を示す。また、KMは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色と第3色の量子化値がともに記録(1)に設定され第2色の量子化値が非記録(0)に設定される閾値の個数を示す。更に、CMは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第2色と第3色の量子化値がともに記録(1)に設定され第1色の量子化値が非記録(0)に設定される閾値の個数を示す。また、“max(X,Y)”とは、2つの引数XおよびYのうち、より大きい値を返す関数を示す。
【0084】
S1002では、S1001で求めたKCM,KC,KMおよびCMを用い、下記式に従いK、C、MおよびWを算出する。ここで、Kは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色(ブラック)の量子化値が(1)で且つ第2色(シアン)および第3色(マゼンタ)の量子化値が(0)である閾値の個数を示す。Cは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第2色の量子化値が(1)で且つ第1色および第3色の量子化値が(0)である閾値の個数を示す。Mは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第3色の量子化値が(1)で且つ第1色および第2色の量子化値が(0)である閾値の個数を示す。更に、Wは、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色、第2色及び第3色の量子化値がともに非記録(0)である閾値の個数を示す。
K=In1-KCM-KC-KM
C=In2-KCM-KC-CM
M=In3-KCM-KM-CM
W=Dth_max-KCM-KC-KM-K-C-M
【0085】
S1003では、第4色の階調値In4(x,y)の座標(x,y)に対応する閾値Dthを取得する。以下、S1004~S1018の工程により、8種類に分類された閾値領域の中から、好ましい優先順位に従って第4色のオフセット値Ofs4が算出される。以上で本処理が終了する。
【0086】
その後、算出された第4色の閾値オフセット値Ofs4は、閾値オフセット量加算部408に提供され、S504以降の処理が行われ、第4色の量子化閾値Out4が導出される。
【0087】
以上のフローチャートによれば、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色~第3色の全ての量子化値が非記録(0)に設定されている領域が最も高い優先順位に設定されている(S1005)。また、第1色(ブラック)が非記録(0)に設定されている閾値領域のうち、第2色(シアン)や第3色(マゼンタ)が1記録(0)に設定されている領域が次に高い優先順位に設定されている。その次に、第1色(ブラック)が記録(1)に設定されている閾値領域のうち、第2色(シアン)や第3色(マゼンタ)が記録(1)に設定されている領域が続いている。
【0088】
なお、以上では、第1色、第2色、第3色、第4色の順に量子化閾値Dth´を求め量子化値を生成する内容で説明したが、以上説明した4色それぞれの量子化処理は並行に行うことができる。なぜならば、いずれの色についても、その色の量子化閾値Dth´を求めるために、他の色の階調値(In1~In4)は利用するものの、他の色の量子化値(Out1~Out4)は利用してはいないからである。
【0089】
また、相対的に表面張力の高いインクを第1色とし、相対的に表面張力の低いインクを第2色~第4色とすることができれば、第2色~第4色はシアン、マゼンタおよびイエローの中で互いに入れ替えてもよい。
【0090】
更に、以上では、ブラックインクの表面張力が他のカラーインクの表面張力よりも高い場合を例に説明したが、表面張力の高いインクは、他の色のインクであってもよい。いずれにしても、相対的に表面張力の高いインクを第1色に設定した上で、上述したような特徴的な色間処理を行えば、出力画像の濃度及び発色性を向上させることができる。
【0091】
以上説明した本実施形態によれば、記録装置で使用するインク色の夫々に対応する階調値を色間処理を用いて量子化する構成において、色間処理の第1色を表面張力が高いインクに設定し、第2色以降を表面張力が低いインクに設定する。そして、第1色と第2色については従来と同様の色間処理を行いながら、第3色以降については、表面張力が大きい第1色とはなるべく同じ画素位置で記録(1)に設定されないように、色間処理のオフセット値Ofsを設定する。これにより、表面張力が高いインクが表面張力が低いインクによって記録媒体の深さ方向に浸透されるのを抑え、高濃度で発色性に優れた画像を出力することが可能となる。
【0092】
(第2の実施形態)
本実施形態においても第1の実施形態と同様、図1図2で示したで説明した記録装置100および画像処理装置200を用い、図3で示した工程で画像処理を行う。但し、本実施形態の記録ヘッド102は、第1の実施形態で説明したブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)のほか、グレイ(Gr)インクを加えた全5色のインクを吐出可能とする。ここで、グレイインクについては、ブラック(K)と同等の比較的高い表面張力を有するものとする。
【0093】
本実施形態の色間処理では、上記5色のインクに対し異なる2つの閾値マトリクスを用意し、2つの系統で色間処理を行う。具体的には、ブラック、シアン、マゼンタについては、第1色をブラック、第2色をシアン、第3色をマゼンタとして、第1の閾値マトリクスを用いた色間処理を行う。以下、このような色間処理を、第1の色間処理と称す。一方、イエローとグレイについては、第1色をグレイ、第2色をイエローとして第2の閾値マトリクスを用いた色間処理を行う。以下、このような色間処理を、第2の色間処理と称す。
【0094】
第1の色間処理については、第1の実施形態の第1色~第3色に対する色間処理と同様の処理を行う。すなわち、第1色(ブラック)のオフセット値Ofs1は(式1-1)に従って求め、第2色(シアン)のオフセット値は(式1-2)に従って求める。また、第3色(マゼンタ)のオフセット値Ofs3は、図9に示したフローチャートに従って(式4-1)~(式4-4)によって求める。
【0095】
一方、第2の色間処理については、第1の実施形態の第1色~第2色に対する色間処理と同様の処理を行う。すなわち、第1色(グレイ)のオフセット値Ofs1は(式1-1)に従って求め、第2色(イエロー)のオフセット値は(式1-2)に従って求める。
第1の閾値マトリクスと第2の閾値マトリクスは、互いに異なる閾値マトリクスであるが、いずれもブルーノイズ特性は有するものとする。
【0096】
図11(a)および(b)は、上記第1の量子化処理の結果と第2の量子化処理の結果をそれぞれ示す図である。図11(a)に示す第1の色間処理では、第1の実施形態の第1色~第3色に対する色間処理と同様の処理を行っている。このため、第2色(シアン)や第3色(マゼンタ)は、第1色(ブラック)が非記録(0)と設定される領域(903~Dth_max)に優先的に記録(1)が設定される。一方、図11(b)に示す第2の色間処理では、第1の実施形態の第1色~第2色に対する色間処理と同様の処理を行っている。このため、第2色(イエロー)は第1色(グレイ)が非記録(0)と設定される領域(910~Dth_max)に優先的に記録(1)が設定される。
【0097】
本実施形態によれば、ブルーノイズ特性を有する閾値マトリクスを2種類用意し、比較的粒状感の目立ち易いブラックインクとグレイインクを、それぞれの色間処理の第1色に設定している。その上で、ブラックインクとグレイインク以外のインクは、なるべくブラックインクやグレイインクと同じ画素領域で記録(1)とならないように、オフセット値Ofsを設定している。このような本実施形態によれば、粒状感を抑制しつつも、ブラック濃度の高い画像を出力することが可能となる。
【0098】
(第3の実施形態)
本実施形態においても第1の実施形態と同様、図1図2で説明した記録装置100および画像処理装置200を用い、図3で説明した工程で画像処理を行う。但し、本実施形態のディザ処理部410は、各色の階調値In1~In4を記録(1)または非記録(0)の2値ではなく、レベル0~レベル2の3つのレベル数で表現される3値に量子化するものとする。
【0099】
ここで再度、図4のブロック図を参照しながら、本実施形態の量子化処理について説明する。本実施形態において、正規化処理部403は、ノイズが付加された後の16bitの階調値を、13bitのレンジに正規化する。すなわち、16bitで表される65535値の階調値を13bitで表される8192階調に変換する。そして、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック4色の階調値が、4つのチャンネルのそれぞれのディザ処理部410に入力される。
【0100】
ディザ処理部410において、閾値取得部405は、選択された閾値マトリクスに配列する複数の閾値の中から、処理対象階調値の画素位置(x,y)に対応する閾値Dth(x、y)を取得する。本実施形態では、入力される階調値が13bit分すなわち0~8191の範囲であるのに対し、閾値マトリクスに配列する閾値Dthは12bit分すなわち0~4096の範囲とする。閾値取得部405は、取得した閾値Dth(x,y)に基づいて、(式5-1)および(式5-2)に従って第1閾値Dth1(x,y)と第2閾値Dth2(x,y)を算出する。なお、以下の説明では、記述を簡潔にするため、特に必要がない場合は画素位置(x,y)を省略して示す。
Dth1=Dth ・・・(式5-1)
Dth2=Dth+Dth_max+1 ・・・(式5-1)
【0101】
ここで、第1閾値Dth1は、処理対象階調値がレベル0であるか或はレベル1であるかを判定するための閾値である。一方、第2閾値Dth2は、第1閾値Dth1よりも高い補正閾値であり、処理対象階調値がレベル1であるか或はレベル2であるかを判定するための閾値である。閾値取得部405は、生成した第1閾値Dth1と第2閾値Dth2を色間処理部404に提供する。
【0102】
次に、図5(a)を参照する。以下では説明を簡単にするため、第1色としてのブラックの階調値InKと第2色としてのシアンの階調値InCの関係について説明する。
【0103】
閾値オフセット量算出部407は、参照階調値を用い、処理対象階調値のための2種類の閾値オフセット値すなわち第1の閾値オフセット値と第1のオフセット値を算出する。第1の閾値オフセット値は第1閾値Dth1をオフセットするために用い、第2の閾値オフセット値は、第2閾値Dth2をオフセットするために用いる。これらオフセット値の算出方法については、後に詳しく説明する。
【0104】
閾値オフセット量加算部408は、閾値オフセット量算出部407が算出した第1の閾値オフセット値Ofs1と第2の閾値オフセット値Ofs2を用いて、閾値取得部405より提供された第1閾値Dth1と第2閾値Dth2を補正する。具体的には、(式6-1)および(式6-2)に従って第1の量子化閾値Dth1´および第2の量子化閾値Dth2´を算出する。
Dth1´=Dth1- Ofs1 ・・・(式6-1)
Dth2´=Dth2- Ofs2 ・・・(式6-2)
【0105】
この際、Dth´1またはDth2´が負の値となった場合は、得られた値に最大閾値Dth_maxを加算する。
すなわち、
Dth1´<0のとき
Dth´1=Dth´1+Dth_max ・・・(式7-1)
Dth2´<0のとき
Dth´2=Dth´2+Dth_max ・・・(式7-2)
【0106】
これにより、第1の量子化閾値Dth´1が取りうる値は、
0≦Dth´1≦Dth_maxの範囲となる。また、第2の量子化閾値Dth´2が取りうる値は、Dth_max+1≦Dth´2≦2×Dth_maxの範囲となる。
【0107】
量子化処理部406は、入力された処理対象階調値Inを、第1の量子化閾値Dth1´および第2の量子化閾値Dth2´と比較し、(式8)に従ってレベル0~レベル2のいずれかを示す量子化値Outを生成する。
In≦Dth1´ のとき Out=0
Dth1´<In≦Dth2´ のとき Out=1
Dth2´<In のとき Out=2 ・・・(式8)
【0108】
その後、量子化値Out(x,y)は、3値の記録データとして記録装置100に送信される。記録装置100では座標(x,y)が示す画素領域に対し、記録ヘッド102より対応する色のインクを吐出する。この際、記録装置100のヘッドコントローラ215(図2参照)は、量子化値Outが示すレベルが大きいほど記録媒体で高い濃度が表現できるように、記録ヘッド102の吐出動作を制御する。例えば、Out=0の場合は(対応する画素位置(x,y)に対しドットを記録せず、Out=1の場合はドットを1つ記録し、Out=2の場合はドットを2つ記録してもよい。また、Out=0の場合はドットを記録せず、Out=1の場合は小ドットを記録し、Out=2の場合は大ドットを記録してもよい。
【0109】
次に、本実施形態の閾値オフセット量算出部407における、第1の閾値オフセット値Ofs1と第2の閾値オフセット値Ofs2の導出方法を説明する。以下では、第1色(ブラック)の第1の閾値オフセット値をOfsK1、第2の閾値オフセット値をOfsK2、第2色(シアン)の第1の閾値オフセット値をOfsC1、第2の閾値オフセット値をOfsC2とする。
【0110】
第1色の階調値InKが処理対象階調値である場合、第1の閾値オフセット値OfsK1および第2の閾値オフセット値OfsK2は、(式9-1)および(式9-2)に従って求められる。
OfsK1= 0 ・・・(式9-1)
OfsK2= 0 ・・・(式9-2)
【0111】
一方、第2色の階調値InCが処理対象階調値である場合は、閾値オフセット量算出部407は図12のフローチャートに従って、第1の閾値オフセット値OfsC1および第2の閾値オフセット値OfsC2を導出する。以下、各工程について順番に説明する。
【0112】
本処理が開始されると、閾値オフセット量算出部407は、参照階調値である第1色の階調値InKが最大閾値Dth_maxを超えているか否かを判定する(S1201)。参照階調値InKが最大閾値Dth_maxを超えている場合はS1202に進み、超えていない場合はS1203に進む。
【0113】
S1202およびS1203では、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色の量子化値がレベル2と設定される閾値の個数KKを算出する。すなわち、
S1202では KK=InK-Dth_max
S1203では KK=0 とする。
【0114】
S1204では、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色の量子化値がレベル1である閾値の個数Kを算出する。
K=InK-KK
【0115】
S1205では、全閾値領域(0~Dth_max)のうち、第1色の量子化値がレベル0である閾値の個数Wを算出する。
W=Dth_max-K-KK
【0116】
S1206では、処理対象階調値InC(x,y)の座標(x,y)に対応する閾値Dthを取得する。
【0117】
S1207では、取得した閾値Dthが(K+KK)以上であるか否かを判定する。S1207でDth≧(K+KK)である場合、S1208に進み、第1の閾値オフセット値OfsC1および第2の閾値オフセット値OfsC2を(式10-1)および(式10-2)に従って算出する。
OfsC1=K+KK ・・・(式10-1)
OfsC2=Dth_max+K+KK-W ・・・(式10-2)
【0118】
S1207でDth≧(K+KK)ではない場合、S1209に進み、閾値DthがKK以上であるか否かを判定する。S1209でDth≧KKである場合、S1210に進み第1の閾値オフセット値OfsC1および第2の閾値オフセット値OfsC2を(式11-1)および(式11-2)に従って算出する。
OfsC1=KK-2W ・・・(式11-1)
OfsC2=Dth_max+KK-2W-K ・・・(式11-2)
【0119】
S1209でDth≧KKではない場合、S1211に進み、第1の閾値オフセット値OfsC1および第2の閾値オフセット値OfsC2を(式12-1)および(式12-2)に従って算出する。
OfsC1=-2W-2K ・・・(式12-1)
OfsC2=Dth_max-2W-2K-KK ・・・(式12-2)
以上で本処理が終了する。
【0120】
図12において、S1208では、第1色についてレベル0が設定されている領域に第2色のレベル1とレベル2が優先的に設定されるように、第1のオフセット値OfsC1と第2のオフセット値OfsC2を設定している。S1210では、第1色についてレベル1が設定されている領域に第2色のレベル1とレベル2が優先的に設定されるように、第1のオフセット値OfsC1と第2のオフセット値OfsC2を設定している。S1211では、第1色についてレベル2が設定されている領域に第2色のレベル1とレベル2が設定されるように、第1のオフセット値OfsC1と第2のオフセット値OfsC2を設定している。すなわち、図12のフローチャートによれば、S1207およびS1209の判断工程により、第1のオフセット値OfsC1と第2のオフセット値OfsC2がS1208、S1210、S1211の優先順序で設定されることになる。
【0121】
図13に、第1色と第2色について本実施形態の色間処理を行った場合の量子化の結果を示す。ここでは、第1色についても第2色についても、最大閾値Dth_maxよりも大きい階調値InK、InCが所定の画素領域に一様に入力された場合を示している。図では、第1色がレベル1と設定される閾値領域、第1色がレベル2と設定される閾値領域、第2色がレベル1と設定される閾値領域、および第2色がレベル2と設定される閾値領域をそれぞれ太線で示している。横軸は閾値Dthが取りうる範囲(0~Dth_max)を示しており、レベル1については0~Dth_maxに対応し、レベル2についてはDth_max+1~2×Dth_maxに対応する。
【0122】
第1色の階調値InKが最大閾値Dth_maxよりも大きいため、全閾値領域(0~Dth_max)は、レベル1またはレベル2に量子化される。より詳しく説明すると、第1色において、閾値領域(1302~1303)はレベル2に設定され、2つのブラックドット(又はブラック大ドット)が記録される。また、閾値領域(1303~Dth_max)はレベル1に設定され、1つブラックのドット(又はブラック小ドット)が記録される。
【0123】
一方、第2色において、閾値領域(1305~1306)はレベル2に設定され、2つのシアンドット(又はシアン大ドット)が記録される。また、閾値領域(1306~Dth_max)はレベル1に設定され、1つのシアンドット(又は小シアンドット)が記録される。
【0124】
本例の場合は、図12のS1209でYesと判定され、S1210において、第1のオフセット値OfsC1と第2のオフセット値OfsC2が設定された場合に相当する。そのため、第2色のレベル1またはレベル2は、第1色がレベル1と設定されている領域に優先して設定されている。
【0125】
このように、本実施形態によれば、色間処理を行いながら、各レベルの閾値オフセット値を調整することにより、表面張力が低い第2色は、表面張力が高い第1色とはなるべく同じ画素領域に記録しないようにしている。そして、同じ画素領域に記録する場合であっても、第1色のインクがなるべく少ない量で記録されている画素領域に第2色を記録するようにしている。このような本実施形態によれば、第1実施形態よりも更に広い階調を表現しながらも、高い発色性を有する画像を出力することが可能となる。
【0126】
(その他の実施形態)
第1~第3の実施形態で説明した色間処理では、算出したオフセット値Ofsを用いて閾値Dthにオフセットをかけ、得られた量子化閾値Dth´を階調値Inと比較して、その大小関係によって量子化値Outを生成した。しかしながら、算出したオフセット値Ofsは、閾値Dthではなく階調値Inをオフセットするために用いてもよい。すなわち、算出したオフセット値Ofsを、階調値Inに加算して新たな階調値In´を求め、この新たな階調値In´を閾値Dthと比較しても同じ結果を得ることができる。いずれにせよ、算出したオフセット値Ofsに基づいて、閾値Dthと階調値Inとの差分を変更し、差分を変更した後の対応関係において閾値Dthと階調値Inとを比較すればよい。
【0127】
以上では、色間処理を利用した量子化処理について説明したが、例えば、誤差拡散法を採用しても、表面張力の高いインクを表面張力の低いインクとなるべく同じ画素領域に記録しないようにすることはできる。
【0128】
具体的に説明すると、まず、最初に表面張力の高い第1色の量子化処理を通常の誤差拡散処理によって行う。次に、表面張力の低い第2色の量子化処理を行うが、このとき既に第1色の量子化値が記録(1)を示す画素については、より大きな値となるように閾値を補正する。更に、第3色の量子化処理を行う場合は、既に第1色の量子化値が記録(1)を示す画素については、更にまた閾値を大きな値に補正する。このようにすることにより、同じ画素において第1色と第3色の量子化値が共に記録(1)となる頻度を抑え、表面張力の高いインクが表面張力の低い他のインクと記録媒体上で重複するのを抑制することができる。但し、本例の場合、第2色以降の量子化は先行色の量子化処理の結果に基づいて行うことになるため、上記実施形態のように4色の量子化処理を並行して行うことはできなくなる。
【0129】
以上の実施形態では、第1色を他の色と極力重複させないための量子化処理について説明した。しかし、例えばブラックのノズル列とカラーのノズル列との記録位置ずれなどに伴う画像の耐性(ロバスト性)を高めるためには、第1色と他の色の量子化値がとともに記録(1)と設定される画素も、ある程度存在したほうが好ましい場合がある。このような画素が存在したとしても、第1色の量子化値が記録(1)に設定される画素のうち他の色の量子化値が非記録(0)と設定される画素の数が記録(1)と設定される画素の数よりも大きければ、第1色において好ましい濃度や発色性を得ることはできる。この際、第1色と他の色の量子化値が共に記録(1)に設定される画素の数は、オフセット値Ofsに対し、所定の大きさの乱数を負荷することにより調整することができる。第1色と他の色の量子化値が共に記録(1)に設定される画素の数を調整することにより、発色性とロバスト性が好適なバランスで維持された画像を出力することができる。
【0130】
なお、以上では図1(a)および(b)を用い、シリアル型のインクジェット記録装置を例に説明したが、本発明はフルライン型のインクジェット記録装置であっても適用可能である。
【0131】
更に、使用するインク色についても上述した実施形態で示したインク色に限定されるものではない。例えば、シアンインクやマゼンタインクに加えて、明度の高いライトシアンインクやライトマゼンタインクを併用しても良いし、レッド、グリーン、ブルーのような特色インクを使用することもできる。
【0132】
また、以上ではブラックの顔料インクが表面張力の高いインク、カラーの染料インクが表面張力の低いインクとして説明したが、インクの表面張力は必ずしも色材の種類に依存するものではない。表面張力の低い顔料インクも表面張力の高い染料インクも製造することはできるし、上記全色を顔料インクとしながらブラックインクのみ表面張力を高くすることもできる。このような調製は、例えば、屈折率や粘度などの物性に基づいて色材や溶剤を選択することによって行うことができる。いずれにせよ、表面張力が高いインクと表面張力の低いインクの量子化値が共に記録(1)に設定される画素の数をなるべく抑制するように、量子化処理を行うことができれば、濃度や発色性の高い画像を出力することが可能となる。
【0133】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサーがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0134】
200 画像処理装置
401 画像データ取得部
406 量子化処理部
410 ディザ処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13