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特許7434623端末間直接通信を介したデータ伝送におけるHARQ再送制御を行うシステム、無線端末装置、車両、基地局、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】端末間直接通信を介したデータ伝送におけるHARQ再送制御を行うシステム、無線端末装置、車両、基地局、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/04 20090101AFI20240213BHJP
   H04W 92/18 20090101ALI20240213BHJP
【FI】
H04W28/04 110
H04W92/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023018279
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2021071210の分割
【原出願日】2021-04-20
(65)【公開番号】P2023071686
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】三上 学
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131388(JP,A)
【文献】特表2013-541924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末間直接通信を行う複数の無線端末装置との通信を行う機能を有し前記端末間直接通信に用いる無線リソースを制御可能な移動通信網の基地局であって、
前記端末間直接通信を介した送信側の無線端末装置から受信側の無線端末装置へのデータ伝送に成功したときのHARQ肯定応答を、前記受信側の無線端末装置から受信せず、前記端末間直接通信を介した前記送信側の無線端末装置から前記受信側の無線端末装置へのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を、前記受信側の無線端末装置から受信する手段と、
前記HARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を受信したとき、そのHARQ再送要求に応じて、前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを前記データ伝送の送信側の無線端末装置に送信する手段と、
を備えることを特徴とする基地局。
【請求項2】
請求項1の基地局において、
当該基地局と前記送信側の無線端末装置との間で、前記送信側の無線端末装置から前記受信側の無線端末装置へのデータ伝送におけるスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行うとき、当該基地局と前記受信側の無線端末装置との間で、前記受信側の無線端末装置から当該基地局へ前記HARQ再送要求を直接送信するときのスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行う手段を備える、ことを特徴とする基地局。
【請求項3】
移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置であって、
前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置からデータ伝送を受ける手段と、
前記端末間直接通信を介した前記周辺の無線端末装置からのデータ伝送に成功したときのHARQ肯定応答を前記周辺の無線端末装置に送信し、前記端末間直接通信を介した前記周辺の無線端末装置からのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を前記基地局に送信する手段と、
を備える、ことを特徴とする無線端末装置。
【請求項4】
請求項3の無線端末装置において、
前記基地局と前記周辺の無線端末装置との間で、前記周辺の無線端末装置からのデータ伝送におけるスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行うとき、前記基地局との間で、前記基地局へ前記HARQ再送要求を直接送信するときのスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行う手段を備える、ことを特徴とする無線端末装置。
【請求項5】
移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置であって、
前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置に対してデータ伝送を行う手段と、
前記端末間直接通信を介した前記周辺の無線端末装置へのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答を前記周辺の無線端末装置から受信することなく、前記基地局から前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを受信する手段と、
前記周辺の無線端末装置からの前記HARQ否定応答を受信することなく前記基地局から受信した前記許可メッセージに応じて、前記周辺の無線端末装置に対して前記データ伝送のHARQ再送を行う手段と、
を備えることを特徴とする無線端末装置。
【請求項6】
請求項1の基地局と、請求項の無線端末装置と、請求項の無線端末装置とを備えるシステム。
【請求項7】
端末間直接通信を行う複数の無線端末装置との通信を行う機能を有し前記端末間直接通信に用いる無線リソースを制御可能な移動通信網の基地局と、前記端末間直接通信のデータ伝送の送信側の無線端末装置と、前記端末間直接通信のデータ伝送の受信側の無線端末装置と、を備えるシステムであって、
前記送信側の無線端末装置は、前記端末間直接通信のデータ伝送の送信データを、前記基地局に送信しないで前記受信側の無線端末装置のみに送信し、
前記受信側の無線端末装置は、前記端末間直接通信を介したデータ伝送の送信側の無線端末装置から受信側の無線端末装置へのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答及び無線リソース割当要求を含むフィードバックメッセージを、前記基地局に送信し、
前記基地局は、
前記受信側の無線端末装置から、前記HARQ否定応答及び前記無線リソース割当要求を含む前記フィードバックメッセージを受信し、
前記フィードバックメッセージに応じて、前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを、前記送信側の無線端末装置に送信し、
前記送信側の無線端末装置は、
前記端末間直接通信を介して前記受信側の無線端末装置に対してデータ伝送を行ったとき、前記受信側の無線端末装置からHARQ否定応答を受信することなく、前記基地局から前記許可メッセージを受信し、
前記受信側の無線端末装置からのHARQ否定応答を受信することなく前記基地局から受信した前記許可メッセージに応じて、前記受信側の無線端末装置に対して前記データ伝送のHARQ再送を行う、
システム。
【請求項8】
移動経路を走行する車両であって、
請求項3、4又は5の無線端末装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項9】
端末間直接通信を介したデータ伝送におけるHARQ再送制御を行う方法であって、
前記端末間直接通信を介した送信側の無線端末装置から受信側の無線端末装置へのデータ伝送に成功したときのHARQ肯定応答を、前記受信側の無線端末装置から受信せず、前記端末間直接通信を介した前記送信側の無線端末装置から前記受信側の無線端末装置へのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を、前記受信側の無線端末装置から受信することと、
前記HARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を受信したとき、そのHARQ再送要求に応じて、前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを、前記データ伝送の送信側の無線端末装置に送信することと、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項10】
端末間直接通信を行う複数の無線端末装置との通信を行う機能を有し前記端末間直接通信に用いる無線リソースを制御可能な移動通信網の基地局に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記端末間直接通信を介した送信側の無線端末装置から受信側の無線端末装置へのデータ伝送に成功したときのHARQ肯定応答を、前記受信側の無線端末装置から受信せず、前記端末間直接通信を介した前記送信側の無線端末装置から前記受信側の無線端末装置へのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を、前記受信側の無線端末装置から受信するためのプログラムコードと、
前記HARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を受信したとき、そのHARQ再送要求に応じて、前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを、前記データ伝送の送信側の無線端末装置に送信するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置からデータ伝送を受けるためのプログラムコードと、
前記端末間直接通信を介した前記周辺の無線端末装置からのデータ伝送に成功したときのHARQ肯定応答を前記周辺の無線端末装置に送信し、前記端末間直接通信を介した前記周辺の無線端末装置からのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求を前記基地局に送信するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置に対してデータ伝送を行うためのプログラムコードと、
前記端末間直接通信を介した前記周辺の無線端末装置へのデータ伝送に失敗したときのHARQ否定応答を前記周辺の無線端末装置から受信することなく、前記基地局から前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを受信するためのプログラムコードと、
前記周辺の無線端末装置からの前記HARQ否定応答を受信することなく前記基地局から受信した前記許可メッセージに応じて、前記周辺の無線端末装置に対して前記データ伝送のHARQ再送を行うためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信網の基地局を介して通信可能な複数の無線端末装置の端末間直接通信を介したデータ伝送におけるHARQ再送制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、V2V(Vehicle-to-Vehicle)、V2I(Vehicle-to-Infrastructure)、V2P(Vehicle-to-Pedestrian)、V2X(Vehicle-to-Everything)などの近距離装置間(D2D:Device-to-Device)で直接無線通信する通信方式が知られている。特に、移動体通信システムのセルラー通信技術を用いたV2Xは「セルラーV2X」とも呼ばれている。
【0003】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)のLTE(Long Term Evolution)や次世代(NR)の仕様では、移動通信網(コアネットワーク)を介さずに、V2V、V2I、V2P、V2Xなどの近距離装置間(D2D)でPC5と呼ばれるインターフェースを用いて直接無線通信するSidelink通信方式の標準仕様が策定されている(例えば、非特許文献1、2、3、4参照)。
【0004】
上記Sidelink通信方式における無線リソース割当制御モードとして、基地局がSidelinkの無線リソースを割り当てるモードSL Mode-1(以下「第1モード」という。)と、無線端末装置自身がSidelinkの無線リソースを割り当てるモードSL Mode-2(以下「第2モード」ともいう。)が知られている(例えば、特許文献1および非特許文献1参照)。また、上記Sidelink通信方式によるユーザデータ伝送(以下「SL伝送」という。)の高信頼化のために、受信側端末からPSFCH(Physical Sidelink Feedback Channel)を通じてフィードバックされるSL HARQ(ハイブリッド自動再送要求) ACK/NACKに基づくHARQ再送制御が知られている(特許文献2、非特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第3136811号明細書
【文献】米国特許出願公開第2020/0314959号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Pavel Mach, Zdenek Becavar, and Tomas Vanek, "In-Band Device-to-Device Communication in OFDMA Cellular Networks: A Survey and Challenges," IEEE Communication Surveys & Tutorials, vol.17, no.4, pp.1885-1922, June 2015.
【文献】3GPP TR22.886 V16.2.0, "Study on enhancement of 3GPP support for 5G V2X services (Release 16)," Dec. 2018.
【文献】3GPP TR37.985 V16.0.0, "Overall description of Radio Access Network (RAN) aspects for Vehicle-to-everything (V2X) based on LTE and NR (Release 16)," June 2020.
【文献】3GPP TR38.885 V16.0.0, "Study on NR Vehicle-to-Everything (V2X) (Release 16)," March 2019.
【文献】Shao-Yu Lien, Der-Jiunn Deng, Chun-Cheng Lin, Hua-Lung Tsai, Tao Chen, Chao Guo, And Shin-Ming Cheng, "3GPP NR Sidelink Transmissions Toward 5G V2X,"IEEE Access, vol.8, pp.35368-35382, February 2020 (DOI: 10.1109/ACCESS.2020.2973706).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記基地局がSidelinkの無線リソースを割り当てる第1モードでは、初回送信およびHARQ再送に関わらず、SL伝送のための動的な無線リソースは、まず上りリンクの制御チャネルPUCCH等を介してSL伝送のための無線リソース割当要求(SR: Scheduling Request)を基地局に要求し、基地局が割り当てた無線リソースによるSL伝送を許可するための許可メッセージ(Grant)を下り制御チャネル(PDCCH)で基地局から端末側に通知することで確保している。
【0008】
しかしながら、上記第1モード動作時では、初回送信だけでなくHARQ再送においても上りリンクの制御チャネル(PUCCH)等を介して、SL伝送用の無線リソース割当要求(SR)を基地局に送るL1/L2シグナリングを行っているため、上記第1モード動作時のHARQ再送遅延が増大する、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る基地局は、端末間直接通信を行う複数の無線端末装置との通信を行う機能を有し、前記端末間直接通信に用いる無線リソースを制御可能な移動通信網の基地局である。この基地局は、前記端末間直接通信を介したデータ伝送の受信側の無線端末装置から送信側の無線端末装置へのフィードバック用チャネルを監視し、前記フィードバック用チャネルを復号する手段と、前記フィードバック用チャネルの復号結果に前記受信側の無線端末装置からHARQ否定応答が含まれているとき、HARQ再送用の無線リソースの情報を含む許可メッセージを前記送信側の無線端末装置に通知する手段と、を備える。
【0010】
第1の態様に係る無線端末装置は、移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置である。この無線端末装置は、前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置に対してデータ伝送を行ったとき、前記周辺の無線端末装置からHARQ否定応答を受信することなく、前記基地局からHARQ再送用の無線リソースの情報を含む許可メッセージを受信する手段と、前記周辺の無線端末装置からのHARQ否定応答を受信することなく前記基地局から受信した前記許可メッセージに応じて、前記周辺の無線端末装置に対して前記データ伝送のHARQ再送を行う手段と、を備える。
【0011】
第1の態様に係るシステムは、第1の態様に係る前記基地局と前記無線端末装置とを備える。
【0012】
第1の態様に係る方法は、端末間直接通信を介したデータ伝送におけるHARQ再送制御を行う方法である。この方法は、前記端末間直接通信を介したデータ伝送の受信側の無線端末装置から送信側の無線端末装置へのフィードバック用チャネルを監視し、前記フィードバック用チャネルを復号することと、前記フィードバック用チャネルの復号結果に前記受信側の無線端末装置からHARQ否定応答が含まれているとき、HARQ再送用の無線リソースの情報を含む許可メッセージを前記送信側の無線端末装置に通知することと、を含む。
【0013】
第1の態様に係る基地局におけるプログラムは、端末間直接通信を行う複数の無線端末装置との通信を行う機能を有し前記端末間直接通信に用いる無線リソースを制御可能な移動通信網の基地局に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記端末間直接通信を介したデータ伝送の受信側の無線端末装置から送信側の無線端末装置へのフィードバック用チャネルを監視し、前記フィードバック用チャネルを復号するためのプログラムコードと、前記フィードバック用チャネルの復号結果に前記受信側の無線端末装置からHARQ否定応答が含まれているとき、HARQ再送用の無線リソースの情報を含む許可メッセージを前記送信側の無線端末装置に通知するためのプログラムコードと、を含む。
【0014】
第1の態様に係る無線端末装置におけるプログラムは、移動通信網の基地局を介して通信する機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置に対してデータ伝送を行ったとき、前記周辺の無線端末装置からHARQ否定応答を受信することなく、前記基地局からHARQ再送用の無線リソースの情報を含む許可メッセージを受信するためのプログラムコードと、前記周辺の無線端末装置からのHARQ否定応答を受信することなく前記基地局から受信した前記許可メッセージに応じて、前記周辺の無線端末装置に対して前記データ伝送のHARQ再送を行うためのプログラムコードと、を含む。
【0015】
本発明の第2の態様に係る基地局は、端末間直接通信を行う複数の無線端末装置と通信する機能を有し、前記端末間直接通信に用いる無線リソースを制御可能な移動通信網の基地局である。この基地局は、前記端末間直接通信を介したデータ伝送の受信側の無線端末装置から、HARQ否定応答及び無線リソース割当要求を含むフィードバックメッセージを受信する手段と、前記フィードバックメッセージに応じて、前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを前記データ伝送の受信側の無線端末装置に送信する手段と、を備える。
【0016】
第2の態様に係る第1の無線端末装置は、移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置である。この無線端末装置は、前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置からデータ伝送を受ける手段と、前記データ伝送に対するHARQ否定応答及び無線リソース割当要求を含むフィードバックメッセージを前記基地局に送信する手段と、を備える。
【0017】
第2の態様に係る第2の無線端末装置は、移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置である。この無線端末装置は、前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置に対してデータ伝送を行ったとき、前記周辺の無線端末装置からHARQ否定応答を受信することなく、前記基地局からHARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを受信する手段と、前記周辺の無線端末装置からのHARQ否定応答を受信することなく前記基地局から受信した前記許可メッセージに応じて、前記周辺の無線端末装置に対して前記データ伝送のHARQ再送を行う手段と、を備える。
【0018】
第2の態様に係るシステムは、第2の態様に係る前記基地局と前記第1の無線端末装置と前記第2の無線端末装置とを備える。
【0019】
第2の態様に係る方法は、端末間直接通信を介したデータ伝送におけるHARQ再送制御を行う方法である。この方法は、前記端末間直接通信を介したデータ伝送の受信側の無線端末装置から、HARQ否定応答及び無線リソース割当要求を含むフィードバックメッセージを受信することと、前記フィードバックメッセージに応じて、前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを、前記データ伝送の受信側の無線端末装置に送信することと、を含む。
【0020】
第2の態様に係る基地局におけるプログラムは、端末間直接通信を行う複数の無線端末装置との通信を行う機能を有し前記端末間直接通信に用いる無線リソースを制御可能な移動通信網の基地局に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記端末間直接通信を介したデータ伝送の受信側の無線端末装置から、HARQ否定応答及び無線リソース割当要求を含むフィードバックメッセージを受信するためのプログラムコードと、前記フィードバックメッセージに応じて、前記HARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを、前記データ伝送の受信側の無線端末装置に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0021】
第2の態様に係る第1の無線端末装置におけるプログラムは、移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置からデータ伝送を受けるためのプログラムコードと、前記データ伝送に対するHARQ否定応答及び無線リソース割当要求を含むフィードバックメッセージを、前記基地局に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【0022】
第2の態様に係る第2の無線端末装置におけるプログラムは、移動通信網の基地局を介した通信を行う機能と周辺の無線端末装置と端末間直接通信を行う機能とを有する無線端末装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記端末間直接通信を介して前記周辺の無線端末装置に対してデータ伝送を行ったとき、前記周辺の無線端末装置からHARQ否定応答を受信することなく、前記基地局からHARQ否定応答とHARQ再送用の無線リソースの情報とを含む許可メッセージを受信するためのプログラムコードと、前記周辺の無線端末装置からのHARQ否定応答を受信することなく前記基地局から受信した前記許可メッセージに応じて、前記周辺の無線端末装置に対して前記データ伝送のHARQ再送を行うためのプログラムコードと、を含む。
【0023】
本発明の他の態様に係る車両は、移動経路を走行する車両である。この車両は前記いずれかの無線端末装置を備える。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、基地局が端末間直接通信の無線リソースを割り当てる割当制御モードの動作中におけるHARQ再送遅延を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図。
図2】実施形態に係る通信システムにおけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの一例を示す説明図。
図3】実施形態に係る通信システムにおけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの他の例を示す説明図。
図4】実施形態に係る通信システムにおけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの更に他の例を示す説明図。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ、参考例に係るSLのデータ伝送の初回送信時及びHARQ再送時におけるタイムスロット431の無線リソース(RE)の構成例の一例を示す説明図。
図6】参考例に係るSL Mode-1動作時におけるSLデータ伝送の初回送信及びHARQ再送の一例を示すシーケンス図。
図7】実施形態に係る通信システムにおけるSL Mode-1動作時におけるSLデータ伝送の初回送信及びHARQ再送の一例を示すシーケンス図。
図8図7のデータ伝送におけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの一例を示す説明図。
図9】実施形態に係る通信システムにおけるSL Mode-1動作時におけるSLデータ伝送の初回送信及びHARQ再送の他の例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、複数の車両に搭載された複数の無線端末装置がSidelink通信方式による端末間直接通信を行うときの無線リソースを移動通信網の基地局が割り当てるSL Mode-1(第1モード)の動作中におけるHARQ(ハイブリッ自動再送要求)再送遅延を低減できるシステムである。
【0027】
ここでは、LTE(Long Term Evolution)/LTE-Advancedの移動通信システム(以下「LTEシステム」という。)、第5世代の移動通信システム(以下「5Gシステム」という。)への適用を前提に本発明の実施形態を説明するが、類似のセル構成、物理チャネル構成を用いるシステムであれば、本発明の概念はどのようなシステムにも適用可能である。また、伝搬路の推定に用いられる参照信号系列や誤り訂正のために用いられる符号化方式はLTEシステムや5Gシステムで定義されているものに限定されず、これらの用途に適合するものであれば、どのような種類のものでも構わない。本発明の実施形態は、第5世代よりも後の次世代の移動通信システム(「NRシステム」ともいう。)に適用してもよい。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの全体構成の一例を示す概略構成図である。図1において、本実施形態に係る通信システムは、5Gシステムの例であり、移動通信網のコアネットワーク(例えば、EPC、5GC、又は、NGC)15に接続された2セル構成の基地局10を備える。なお、図1の例では1つの基地局10を備えた例を示しているが、基地局の数は複数であってもよい。また、基地局10が形成するセルは単一のセルでもよいし、3以上のセルでもよい。
【0029】
コアネットワーク15は、例えば3GPP(3rd Generation Partnership Project)で規定されたIP(Internet Protocol)ベースのEPC(Evolved Packet Core)である。コアネットワーク15は、5Gシステム専用のコアネットワークでもよいし、5GシステムとLTEシステムとに兼用されるコアネットワークでもよい。コアネットワーク装置(EPC装置、又は、5GC装置)は、例えば3GPPで規定されたサービスをサードパーティーのアプリケーションプロバイダに提供するための標準インターフェースを有する論理ノードのSCEF(Service Capability Exposure Function)、NEF(Network Exposure Function)、ユーザデータの処理を行うUPF(User Plane Function)等である。コアネットワーク装置(EPC装置、又は、5GC装置)は、複数のV2X(Vehicle-to-Everything)サービスの連携を可能にするVAE(V2X Application Enabler)であってもよい。なお、コアネットワーク装置の一部の機能(例えば、UPFの機能あるいはUPF以外の論理ノードの機能)は、本実施形態のように基地局10が有してもよい。
【0030】
基地局10は、例えば5GシステムのgNodeB(gNB)又はen-gNodeB(en-gNB)であり、アンテナ101,102を介して、自局が形成する無線通信エリアであるセルに在圏する通信端末装置(「端末」、「ユーザ端末」、「ユーザ装置」、「UE」、「移動局」、「移動機」等ともいう。以下「UE」という。)20と無線通信することができる。
【0031】
基地局10は、例えば、建物などの内部に設けられた基地局装置100と、基地局10が形成するセルを構成する2セルに対応する複数のアンテナ101,102とを備える。複数のアンテナ101,102はそれぞれ、建物、支柱、鉄塔などの上部に設けられている。アンテナ101,102は、無指向性のアンテナでもよいし、所定方向に一又は複数のビームを形成可能な複数のアンテナ素子からなるアンテナ(例えば、多数のアンテナ素子が2次元的又は3次元的に配列されたアレイアンテナなどからなるMassiveMIMOアンテナ)であってもよい。なお、図示の例では、2つのアンテナ101,102を備えているが、アンテナの数は単数でもよいし、3以上であってもよい。
【0032】
基地局装置100は、例えば、DU(分散ユニット)110と、CU(集約ユニット)120と、CNE(コアネットワーク装置)130と、MEC(Multi-access Edge Computing)装置140とを備える。なお、図示の例において、CNE130は5Gコアとしている場合の例であるが、5Gのレイヤ3(L3)での制御をLTEで行うNon-StandAlone(NSA)構成では、EPCとしてもよい。また、MEC装置140は、基地局10とコアネットワーク15との間のノードに設けてもよいし、コアネットワークの外側に設けてもよい。
【0033】
DU110は、例えばRFU(無線ユニット)111,RFU112を有する。RFU111,RFU112は、例えば、増幅部、周波数変換部、送受信切替部(DUP)、直交変復調部等を備える。DU110は、下記のBBU(ベースバンドユニット)の一部の機能を有してもよい。なお、図示の例では基地局あたり2つのセルを構成するため、2つのRFU111,112を備えているが、RFUの数は単数でもよいし、3以上であってもよい。
【0034】
CU120は、例えば、BBU(ベースバンドユニット)121と、CU120の各部を制御するCUコントローラ122とを有する。BBU121は、例えば、送受信対象の制御情報やユーザデータ(IPパケット)と、無線伝送路を介して送受信されるOFDM信号等のベースバンド信号の変換(変復調)とを行う。変調方式としては、例えばQPSK、16QAM、64QAM等を用いることができる。ベースバンド信号はDU110との間で送受される。CUコントローラ122は、例えばCPUやメモリなどで構成され、予め組み込まれたプログラムを実行することにより、CU120の各部を制御する。
【0035】
CU120は、複数のDUに接続してもよい。また、CU120は、光ファイバを用いた光通信回線などの高速通信回線を介して遠隔設置した子局のDUに接続してもよい。また、BBU121は、CU120内に複数設けて、RFUごとに接続される構成でもよい。例えば、BBU121を複数のBBU#1,BBU#2で構成し、各BBU#1,BBU#2に接続された複数の外部接続部121aを設け、これら複数の外部接続部121aに、光通信回線などの高速通信回線を介して、遠隔配置された外部の複数のRFU#1,RFU#2がリモート接続されるように構成してもよい。
【0036】
CNE130は、前述のUPFの機能を有し、コアネットワーク15上の各種ノードとの間で所定の通信インターフェース及びプロトコルにより通信する。CNE130は、コアネットワーク15とCU120との間でユーザデータ等の各種データを中継したり、コアネットワーク15及びCU120とMEC装置140との間でユーザデータ等の各種データを中継したりする。
【0037】
MEC装置140は、例えばCPUやメモリなどで構成され、予め組み込まれたプログラム又は通信網を介してダウンロードされたプログラムを実行することにより、基地局10のセルに在圏するUE20との間で送受信される各種データを処理したり、基地局10のセルに在圏するUE20に対する各種の制御を実行したりことができる。また、MEC装置140は、所定のプログラムを実行することにより、後述の無線リソース割当制御モードの選択制御のための各種手段としても機能することができる。
【0038】
なお、後述の無線リソース割当制御モードの選択制御は、MEC装置140の代わりに、前述のCU120が行ってもよい。例えば、CU120のCUコントローラが、所定のプログラムを実行することにより、後述の無線リソース割当制御モードの選択制御のための各種手段としても機能してもよい。また、CU120及びMEC装置140が互いに連携して後述の無線リソース割当制御モードの選択制御を行ってもよい。
【0039】
UE20(1)~20(3)は、基地局10が形成するセル内に位置している移動経路としての道路90を移動する車両(図示の例ではトラック)30(1)~30(3)に搭載されている。UE20(1)~20(3)が搭載された車両30(1)~30(3)は、予め設定されたグループを組んで互いに連携、車群を形成し、移動する。
【0040】
なお、図示の例では、基地局10のセルに3台の車両30(1)~30(3)に搭載された3つのUE20(1)~20(3)が在圏している場合について示しているが、2台又は4台以上の複数の車両30に搭載された複数のUE20が在圏していてもよい。また、図示の例では、3台の車両30(1)~(3)が隊列状(互いに前後方向となる)に車群を形成して群走行、すなわち隊列走行している場合を示しているが、各車両30の相対的な位置関係については、複数の各車両30に搭載されたUE20同士が互いに直接通信できる位置関係にある限り制限されない。さらに、車両30は、地上の移動経路である道路90を移動する自動車、トラック、バス、バイクなどの移動体であってもよいし、上空などの空間における移動経路を飛行して移動可能な移動体であってもよいし、地下、水上(例えば海上)、水中(例えば海中)などにおける移動経路を移動可能な移動体であってもよい。
【0041】
また、以下の説明において、複数のUE20(1)~20(3)に共通する構成、機能などについて説明する場合は括弧を付けないでUE20等と記載し、複数の車両30(1)~30(3)に共通する構成、機能などについて説明する場合も括弧を付けないで車両30等と記載する。また、端末間直接通信において、データの送信元のUEを送信側UE20Tともいい、データの送信先のUEを受信側UE20Rともいう。
【0042】
車両30のUE20は、第1の通信方式である基地局経由通信方式(例えば、3G、LTE、又は、5G等の次世代のNRの方式)により移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局10を介して通信可能である(以下、基地局経由通信方式による通信を「Uu通信」ともいう)。5GのUu通信は、超高信頼・低遅延通信のURLLC(Ultra Reliable & Low Latency Communication)、高速・大容量通信のeMBB(Enhanced Mobile BroadBand)、低コスト・低消費電力の端末が大量かつ同時接続のmMTC(Massive Machine Type Communication)等の通信タイプを利用できる。特に、後続車自動運転トラック隊列走行(図1参照)、自動運転・隊列走行BRT(Bus Rapid Transit)、軌道線路上を走行する鉄道車両などにおける遠隔監視、遠隔操作等の用途には、超高信頼・低遅延通信URLLCが適する。
【0043】
例えば図1の後続車自動運転トラック隊列走行において、先頭の車両(以下「リーダー車両」ともいう。)30(1)は有人ドライバーによる手動運転であり、後続の車両(以下「メンバー車両」ともいう。)30(2),30(3)が無人の自動運転である。後続車自動運転トラック隊列走行において、基地局10及び移動通信網のコアネットワーク15を介して、車両30(1)~30(3)のUE20(1)~20(3)と網側の遠隔運行監視センターとがUu通信を行う。例えば、遠隔運行監視センターは、上りリンクのUu通信により、各車両30(1)~30(3)の監視モニタ画像(静止画、動画)やセンサ情報を受信することができる。また、遠隔運行監視センターは、下りリンクのUu通信により、緊急停止信号などの制御信号を各車両30(1)~30(3)に送信することができる。この車両と網側の遠隔運行監視センターとのUu通信により、複数の車両30(1)~30(3)の集中遠隔管理と遠隔操作を実現し、ドライバーの負担軽減及び安全性を向上させることができる。
【0044】
UE20は、例えば、アンテナ21、送受信切替部(DUP)、受信部、CP除去部、FFT部、信号分離部、伝搬路補償部、復調部、復号部、DMRS伝搬路(チャネル)推定部、信号多重部、IFFT部、CP挿入部、送信部及び制御部を備える。アンテナ21は、Uu通信及びSidelink通信の両方に用いることができる。DMRS伝搬路(チャネル)推定部は、例えば、基地局10から送信されてきた既知の復調用参照信号(DMRS)の受信結果に基づいて、無線伝搬路(等価伝搬路)を推定する。復調部は、無線伝搬路(等価伝搬路)の推定結果に基づいて、送信信号に含まれるデータ信号を復調して復号する。他の各部の構成部分については、従来と同様な機能を有するので、それらの説明は省略する。
【0045】
また、車両30のUE20は、移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局を介さない第2の通信方式により、他の車両との無線通信(以下「端末間直接通信」ともいう。)を各車両に搭載された端末間の直接通信により行うことができる。端末間直接通信における端末間の無線リンクは、基地局経由通信における基地局側から端末側への無線リンクである下りリンク(DL)、および端末側から基地局側への無線リンクである上りリンク(UL)と対比させて、サイドリンク(Sidelink)とも呼ばれる。第2通信方式は、例えば、PC5と呼ばれる端末同士間の無線インターフェースを用いるSidelink通信方式である。PC5インターフェースは、UE同士、UEと他の装置(例えば車両)、車両同士、又は、車両と他の装置が、基地局を介さないで端末間直接通信を行うD2D(Device to Device)のインターフェースであり、LTEでは3GPPリリース12以降、5Gではリリース16以降でそれぞれ標準化されている。
【0046】
端末間通信により道路上を走行する複数の車両を電子的に連結する、後続車自動運転トラック隊列走行(図1参照)および自動運転・隊列走行BRT(Bus Rapid Transit)、あるいは軌道線路上を走行する鉄道車両間の電子連結などにおける各車両間の制御メッセージ伝送や後続車両から先頭車両への周辺監視動画伝送の用途には、各車両に搭載された端末同士が直接通信を行うSidelink通信方式が適する。
【0047】
例えば図1の後続車自動運転トラック隊列走行において、FL(フォワードリンク)及びBL(バックワードリンク)の車車間通信(端末間直接通信)により、車両間で車両制御メッセージ(例えば、速度、加速度、車間距離、操舵などの制御情報)の伝送、監視モニタ画像(静止画、動画)やセンサ情報の伝送等を行うことができる。図中のSidelink(FL)は前方車両から後続車両へ向かう車車間通信であり、Sidelink(BL)は後続車両から前方車両へ向かう車車間通信である。この車車間通信(端末間直接通信)を利用した後続車自動運転トラック隊列走行により、ドライバー不足の解消及び労働環境の改善を図ることができる。更に、車車間通信(端末間直接通信)における5Gの超低遅延かつ高信頼通信の適用により、隊列走行時の車間距離を短縮することでき、車群の空気抵抗減少による燃料消費効率の改善、及び、CO排出量の削減を図るとともに、道路容量の増大による渋滞緩和を実現することができる。
【0048】
Sidelink通信方式では、データ送信先の車両のUEとの間で、他の車両のUEを介さない単一の端末間直接通信(以下「シングルホップ通信」という。)を行ってもよいし、一又は複数の他の車両のUEを介した複数の端末間直接通信を伴うマルチホップ通信を行ってもよい。
【0049】
Sidelink通信方式では、階層化通信モデルのデータリンク層(Layer-2)におけるデータの処理単位であるフレーム(「MACパケット」とも呼ばれる。)を識別する通信識別子(フレーム識別子)であるLayer-2 IDが定義されている。
【0050】
UE20における階層化通信モデルでは、例えば、最下位から上位に向かって、物理層からなるレイヤ1(L1)、MAC(メディアアクセス制御)層とRLC(無線リンク制御)層とPDCP(パケットデータ収束)層とによりデータをフレーム単位で処理するレイヤ2(L2)、各種プロトコル(例えば、IP,Non-IP,ARP)を用いてデータをパケット単位で処理するネットワーク層、アプリケーション層などで構成されている。アプリケーション層におけるデータは「メッセージ」とも呼ばれる。
【0051】
UE20は、例えば、移動通信の上りリンクの無線リソースの一部を用い、レイヤ2(L2)における送信先(通信宛先)の通信識別子としてのフレーム識別子であるDestination L2ID(Dst.L2ID)を指定してデータ(メッセージ)をフレーム単位で送信する。受信側の車両30のUE20は、受信したフレームのヘッダに含まれる送信先のフレーム識別子(Dst.L2ID)が、自装置に割り当てられたフレーム識別子(L2ID)に一致しているか否かを判断する。
【0052】
車両30のUE20は、受信したフレームのヘッダに含まれる送信先のフレーム識別子(Dst.L2ID)が、自装置に割り当てられたフレーム識別子(L2ID)に一致していると判断した場合、受信したフレームのデータ(メッセージ)を含むパケットを上位層に上げるようにデータ処理することにより、当該データをアプリケーションに使用できるようにすることができる。一方、車両30のUE20は、受信したフレームのヘッダに含まれる送信先のフレーム識別子(Dst.L2ID)が、自装置に割り当てられたフレーム識別子(L2ID)に一致していないと判断した場合、受信したフレームのデータ(メッセージ)を含むパケットを上位層に上げないようにデータ処理することにより、当該データをアプリケーションに使用できないようにすることができる。
【0053】
なお、図1の例では複数の車両30(1)~30(3)のUE20(1)~20(3)は同一のセル内に在圏してもよいし、互いに異なるセルに在圏してもよい。また、車両30(1)~30(3)のUE20(1)~20(3)は、Sidelink通信方式による端末間直接通信と基地局経由通信方式によるUu通信とを選択的に又は同時に行うものであってもよい。
【0054】
図2は、本実施形態に係る通信システムにおけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの一例を示す説明図である。図2において、Uu通信の下りリンク(以下「DL」という。)、Uu通信の上りリンク(以下「UL」という。)及びSidelink通信(以下「SL」という。)において、互いに異なる周波数帯を用いる。
【0055】
図2において、DL及びULの無線フレーム401,402はそれぞれ、所定のサブキャリア間隔(図示の例では15kHz)を有し、所定数(図示の例では10個)のタイムスロット(「サブフレーム」ともいう。)からなる所定の時間長(図示の例では10ms)を有する。
【0056】
DLの無線フレーム401における先頭のタイムスロット401aは、下りリンクのSS(同期信号)及びPBCH(物理報知チャネル)からなるブロック(SSB)と、PBCHの情報を復調するためのPBCH_DMRS(PBCH復調用参照信号)とが含まれる特別なタイムスロットである。DLの2番目以降のタイムスロット401bには、下りリンクの制御用のPDCCH(物理下りリンク制御チャネル)、データ伝送用のPDSCH(物理下りリンク共有チャネル)並びにPDCCH及びPDSCHのデータを復調するためのDMRS(データ復調用参照信号)のそれぞれに使用されるOFDM(直交周波数分割多重)シンボルを割り当てることができる。
【0057】
ULの無線フレーム402における先頭のタイムスロット402aは、上りリンクのPRACH(物理ランダムアクセスチャンネル)が含まれる特別なタイムスロットである。ULの2番目以降のタイムスロット402bには、上りリンクの制御用のPUCCH(物理上りリンク制御チャネル)、データ伝送用のPUSCH(物理上りリンク共有チャネル)並びにPUCCH及びPUSCHのデータを復調するためのDMRS(データ復調用参照信号)のそれぞれに使用されるOFDMシンボルを割り当てることができる。なお、PUSCHへのリソース割当が行われるタイムスロットでは、PUCCHを用いずPUCCHで伝送すべき制御情報をPUSCHに多重してもよい。
【0058】
図2において、SLの無線フレーム403は、所定のサブキャリア間隔(図示の例ではDL・ULよりも広い60kHz)を有し、所定数(図示の例ではDL・ULよりも多い40個)のタイムスロットからなる所定の時間長(図示の例では10ms)を有する。
【0059】
SLの無線フレーム403における先頭のタイムスロット403aは、Sidelink通信の同期に用いるSidelink Primary Synchronization Signal(S-PSS)およびSidelink Secondary Synchronization Signal(S-SSS)から構成されるSLSS(Sidelink同期信号)及びPSBCH(物理Sidelink報知チャネル)と、PSBCHの情報を復調するためのPSBCH_DMRS(PSBCH復調用参照信号)とが含まれる特別なタイムスロットである。SLSS、PSBCH及びPSBCH_DMRSは、例えば、基地局10のセルの圏外において、複数のUE20のいずれか一のUE(以下「リーダーUE」又は「マスターUE」ともいう。)20(1)が主体となって他のUE(以下「メンバーUE」ともいう。)20(2),20(3)との間で行うSidelink通信の同期処理及び接続確立処理に用いることができる。
【0060】
なお、各UEがリーダーUEであるか否かは、移動通信網側(例えばMEC装置)から指定してもよいし、UEに組み込まれる記憶媒体(例えば、加入者情報記憶媒体であるSIM(Subscriber Identity Module Card))に書き込まれた情報に基づいて決定されてもよい。
【0061】
SLの無線フレーム403における他のタイムスロット403bには、Sidelink通信のL1/ L2制御用のPSCCH(物理Sidelink制御チャネル)、データ再送(HARQ-ACK/NACKフィードバック)用のPSFCH(物理Sidelinkフィードバックチャネル)、データ伝送用のPSSCH(物理Sidelink共有チャネル)、並びに、PSCCH、PSFCH及びPSSCHのデータを復調するためのDMRSのそれぞれに使用されるOFDM(直交周波数分割多重)シンボルを割り当てることができる。PSCCHは、例えば、基地局10のセルの圏内において、複数のUE20のいずれか一のUE(リーダーUE、マスターUE)20(1)が主体となって他のメンバーUE20(2),20(3)との間で行うSidelink通信の同期処理及び接続確立処理に用いることができる。
【0062】
図3は、本実施形態に係る通信システムにおけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの他の例を示す説明図である。図3の例では、DLとULとが同一周波数帯のTDD(時間分割多重)で運用され、SLがDL及びULとは異なる独立周波数帯で運用されている。
【0063】
図3において、DL及びULに共用の無線フレーム411は、所定のサブキャリア間隔(図示の例では15kHz)を有し、所定数(図示の例では20個)のタイムスロットからなる所定の時間長(図示の例では10ms)を有する。
【0064】
共用の無線フレーム411における先頭のタイムスロット411aは、下りリンクのSS及びPBCHからなるブロック(SSB)並びにPBCH_DMRSが含まれる特別なタイムスロットである。図中の「D」が付された複数のタイムスロット411cには、下りリンクのPDCCH、PDSCH及びDMRSに使用されるOFDMシンボルを割り当てることができる。図中の「S」が付された2つのタイムスロット411bはそれぞれ、上りリンクのGP(ガード期間)、PRACH及びSRS(サウンディング参照信号)が含まれる特別なタイムスロットである。図中の「U」が付された複数のタイムスロットに411dは、上りリンクのPUCCH、PUSCH及びDMRSに使用されるOFDMシンボルを割り当てることができる。なお、PUSCHへのリソース割当が行われるタイムスロットでは、PUCCHを用いずPUCCHで伝送すべき制御情報をPUSCHに多重してもよい。
【0065】
図3において、SLの無線フレーム412は、所定のサブキャリア間隔(図示の例では60kHz)を有し、所定数(図示の例では40個)のタイムスロットからなる所定の時間長(図示の例では10ms)を有する。
【0066】
SLの無線フレーム412における先頭のタイムスロット412aは、Sidelink通信の同期に用いるSLSS及びPSBCHとPSBCH_DMRSとが含まれる特別なタイムスロットである。他のタイムスロット412bには、PSCCH、フィードバック用チャネルとしてのPSFCH、PSSCH及びDMRSに使用されるOFDMシンボルを割り当てることができる。
【0067】
図4は、本実施形態に係る通信システムにおけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの更に他の例を示す説明図である。図4の例では、DLとULとSLが同一周波数帯のTDD(時間分割多重)で運用されている。
【0068】
図4において、DL、UL及びSLに共用の無線フレーム421は、所定のサブキャリア間隔(図示の例では60kHz)を有し、所定数(図示の例では40個)のタイムスロットからなる所定の時間長(図示の例では10ms)を有する。先頭のタイムスロット421aは、上りリンクのPRACHと、下りリンクのSS及びPBCHからなるブロック(SSB)並びにPBCH_DMRSとが含まれる特別なタイムスロットである。先頭から2番目のタイムスロット421bは、Sidelink通信の同期に用いるSS及びPBCHのブロックが含まれる特別なタイムスロットである。
【0069】
共用の無線フレーム421の他の複数のタイムスロットはそれぞれ、GP(ガード期間)で区切られたDL用タイムスロット421c(1)とUL用タイムスロット421c(2)とSL用タイムスロット421c(3)とを有する。DL用タイムスロット421c(1)には、下りリンクのPDCCH及びPDSCHに使用されるOFDMシンボルを割り当てることができる。UL用タイムスロット421c(2)には、上りリンクのPUCCH及びPUSCHに使用されるOFDMシンボルを割り当てることができる。なお、PUSCHへのリソース割当が行われるタイムスロットでは、PUCCHを用いずPUCCHで伝送すべき制御情報をPUSCHに多重してもよい。SL用タイムスロット421c(3)には、PSCCH及びPSSCHに使用されるOFDMシンボルを割り当てることができる。
【0070】
なお、その他の無線リソースの例では、LTEのD2D等でも標準化されているUL用リソースの一部をSL用リソースとして使用してもよい。
【0071】
車両30(1)~30(3)のUE20(1)~20(3)は、Sidelink通信方式による端末間直接通信を行うときの無線フレームの送受信タイミングを決定して設定する端末間同期方式として、例えば、第1の同期方式としてのUu同期方式及び第2の同期方式としてのSLSS同期方式から選択することができる。また、その他の同期方式としては、GNSS同期方式を用いてもよい。
【0072】
Uu同期方式は、移動通信網(セルラーネットワーク)の基地局10が端末側のセルサーチやDL同期確立のために定期的に送信しているPrimary Synchronization Signal(PSS)やSecondary Synchronization Signal(SSS)等の共通信号を端末間同期用リファレンスとして用いる方式である。SL同期方式は、SLSSを用いて端末間同期を実現し、トンネル内や基地局圏外エリアなど他の同期用リファレンスが利用できない場合に用いられる。一方、GNSS同期方式は、UE20に設けた現在位置取得手段としてのGNSS(Global Navigation Satellite System)受信機がGNSS衛星からの電波を受信して取得した時刻リファレンスを端末間同期用リファレンスとして用いる方式であり、時刻リファレンスの信号源は自装置内のGNSS受信機である。
【0073】
例えば、車両30のUE20は、基地局10のセルの圏内において、Uu同期方式を用いてSidelink通信方式の無線フレームの送受信タイミングを決定し、基地局10のセルの圏外では基地局からの共通信号をはじめ、その他の同期用リファレンス信号源を利用することができないため、SLSS同期方式を用いてSidelink通信方式の無線フレームの送受信タイミングを決定する。
【0074】
上記構成の無線通信システムにおいて図2図4に例示したSidelink通信方式における無線リソース(タイムスロット)割当制御モードとして、基地局10がSL無線リソースを割り当てる第1モードとしてのSL Mode-1(以下、略して「Mode-1」ともいう。)と、各UE20がSL無線リソースを自律的に選択する第2モードとしてのSL Mode-2(以下、略して「Mode-2」ともいう。)がある。このMode-1及びMode-2は、複数の車両30のUE20で構成されるグループ(群)ごとに選択して適用することができる。グループ(群)は、予め設定された複数のUEで固定的に形成されてもよいし、又は、互いに近接して位置する複数のUEでアドホックに形成されてもよい。
【0075】
図5(a)及び(b)はそれぞれ、参考例に係るSLのデータ伝送の初回送信時及びHARQ再送時におけるタイムスロット431の無線リソース(RE)の構成例の一例を示す説明図である。SLのデータ伝送のタイムスロット431の先頭部分に、AGC(自動ゲイン制御)、PSCCH、PSSCH、DMRS及びGuard(ガード期間)が割り当てる。AGCは、受信側UEの受信アンプが飽和しないように受信アンプのゲインを制御するための情報である。図5SLのデータ伝送の初回送信時には、タイムスロット431の複数のPSSCHのいずれかに伝送対象のデータが設定される。図5(b)のSLのデータ伝送のHARQ再送時には、HARQの応答メッセージ(HARQ-ACK、又は、HARQ-NACK)を返信するためのPSFCHと当該PSFCHのためのGuard及びAGCとを含むHARQ再送用の無線リソース群431aが挿入されるため、SLのデータ伝送に使えなくなる無線リソースが発生する。
【0076】
図6は、参考例に係るSL Mode-1動作時におけるSLデータ伝送の初回送信及びHARQ再送の一例を示すシーケンス図である。図6において、送信側UE20Tは、基地局10との間でRRC接続再構成(RRC Reconfiguration Procedure)を実行し、SL Mode-1によるデータ伝送におけるスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行う(S101)。
【0077】
基地局10とのRRC接続再構成が完了したら、送信側UE20Tは、SLのデータ伝送の初回送信のための無線リソース割り当てを要求するスケジューリング要求(Scheduling Request)メッセージをPUCCHで基地局10に送信し(S102)、初回送信に割り当てられた無線リソースの情報を含む許可(Grant)メッセージをPDCCHで基地局10から受信する(S103)と、その無線リソースに設定したPSSCHを用いて初回送信データを受信側UE20Rに送信する(S104)。
【0078】
受信側UE20Rは、初回送信データの受信に失敗すると、SLの初回送信に割り当てられた無線リソースの一部(例えば、図5(b)の無線リソース群431a)に設定したPSFCHを用いてHARQ-NACK(否定応答)を含むHARQ再送要求を、送信側UE20Tに返信する(S105)。HARQ-NACKを受信した送信側UE20Tは、SLのHARQ再送のための無線リソース割り当てを要求するスケジューリング要求メッセージをPUCCHで基地局10にフィードバック送信し(S106)、割り当てられた無線リソースの情報を含む許可(Grant)メッセージをPDCCHで基地局10から受信する(S107)と、その無線リソースに設定したPSSCHを用いてHARQ再送データを受信側UE20Rに送信する(S108)。受信側UE20Rは、HARQ再送データの受信に成功すると、SLのHARQ再送に割り当てられた無線リソースの一部(例えば、図5(b)の無線リソース群431a)に設定したPSFCHを用いてHARQ-ACK(肯定応答)を、送信側UE20Tに返信する(S109)。
【0079】
図6の参考例では、受信側UE20RがSLの初回送信データの受信に失敗したとき、送信側UE20TがHARQ再送データを受信側UE20Rに送信するまでに、HARQ-NACKを含むHARQ再送要求の受信(S105)とスケジューリング要求メッセージのフィードバック送信(S106)と許可(Grant)メッセージの受信(S107)の3段階の中間的なシグナリング処理が必要になるため、HARQ再送遅延が増大する。
【0080】
そこで、本実施形態では、以下に示すように受信側UE20RがSLの初回送信データの受信に失敗したとき送信側UE20TがHARQ再送データを受信側UE20Rに送信するまでの中間的なシグナリング処理を2段階にすることにより、HARQ再送遅延を低減している。
【0081】
図7は、実施形態に係る通信システムにおけるSL Mode-1動作時におけるSLデータ伝送の初回送信及びHARQ再送の一例を示すシーケンス図である。図8は、図7のデータ伝送におけるUu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームの一例を示す説明図である。なお、図7において、前述の図6と共通する処理については説明を省略する。
【0082】
図7において、送信側UE20Tと基地局10との間でSL Mode-1によるデータ伝送におけるスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行うとき(S201)、受信側UE20Rと基地局10との間でRRC接続再構成を実行し、受信側UE20Rから基地局10へHARQ再送要求を直接フィードバック(FB)送信するときのスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行う(S202)。
【0083】
受信側UE20Rは、初回送信データの受信に失敗すると、SLの初回送信に割り当てられたUL/SL共用の無線フレームの一部(例えば、図8の無線フレーム442の第5スロット442c(2)のSL要無線リソース群431a)に設定したPSFCHを用いてHARQ-NACK(否定応答)を含むHARQ再送要求を、送信側UE20Tに返信する(S206)。
【0084】
なお、受信側UE20RからHARQ再送要求のPSFCHに先だって送信されるAGC(for PSFCH)の区間(図8参照)では、基地局10がTiming Advanceおよび復調用参照信号用いることなくPSFCHを受信できるようにするために、基地局10での受信タイミング検出可能な(受信タイミング推定可能な)所定の信号系列を多重して伝送する。この信号系列としては、例えば、RACH(Random Access CHannel)等でも使われているZC(Zadoff-Chu)系列等のCAZAC(Constant Amplitude and Zero Auto-correlation Code)系列を用いることができる。
【0085】
基地局10は、受信側UE20Rから送信される送信側UE20T宛のUL/SL共用の無線フレームにおけるPSFCHをモニターする。基地局10は、当該PSFCHを復号してHARQ-NACK(否定応答)を含むHARQ再送要求を確認したら(S207)、送信側UE20Tからのスケジューリング要求(SR)メッセージを待つことなく、SL HARQ再送用に割り当てた無線リソースの情報を含む許可(Grant)メッセージをPDCCHで送信側UE20Tに送信する(S208)。
【0086】
送信側UE20Tは、割り当てられた無線リソースに設定したPSSCHを用いてHARQ再送データを受信側UE20Rに送信する(S209)。受信側UE20Rは、HARQ再送データの受信に成功すると、SLのHARQ再送に割り当てられた無線リソースの一部に設定したPSFCHを用いてHARQ-ACK(肯定応答)を、送信側UE20Tに返信する(S210)。
【0087】
図7の例によれば、受信側UE20RがSLの初回送信データの受信に失敗したとき、送信側UE20TがHARQ再送データを受信側UE20Rに送信するまでに、受信側UE20Rから送信側UE20Tへのメッセージの送受信(S206)と基地局10から送信側UE20Tへのメッセージの送受信(S208)の2段階の中間的なシグナリング処理で済むため、HARQ再送遅延を低減できる。
【0088】
また、図7の例によれば、送信側UE20Tから基地局10へのHARQ再送のためのスケジューリング要求(SR)が不要であり、送信側UE20Tと基地局10との間の制御オーバーヘッドを削減することができる。
【0089】
図9は、実施形態に係る通信システムにおけるSL Mode-1動作時におけるSLデータ伝送の初回送信及びHARQ再送の他の例を示すシーケンス図である。なお、図9において、前述の図6と共通する処理については説明を省略する。
【0090】
図9の例では、Uu通信の下りリンク(DL)及び上りリンク(UL)並びにSidelink通信(SL)の無線フレームとして、例えば、前述の図2図4に例示する無線フレームを用いることができる。
【0091】
図9において、送信側UE20Tと基地局10との間でSL Mode-1によるデータ伝送におけるスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行うとき(S301)、受信側UE20Rと基地局10との間でRRC接続再構成を実行し、受信側UE20Rから基地局10へHARQ再送要求を直接送信するときのスケジューリング要求メッセージの送受信のためのネゴシエーションを行う(S302)。
【0092】
受信側UE20Rは、初回送信データの受信に失敗すると、SL HARQ-NACK(否定応答)及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセージを含むHARQ再送要求(フィードバックメッセージ)を、ULの無線フレームの一部に設定したPUCCHをもしくはPUSCH上に多重し、基地局10に対して直接フィードバック送信する(S306)。
【0093】
基地局10は、受信側UE20RからSL HARQ-NACK(否定応答)及びHARQ再送のスケジューリング要求メッセーを含むHARQ再送要求を受信すると、SL HARQ-NACK(否定応答)とSL HARQ再送用に割り当てた無線リソースの情報を含む許可(Grant)メッセージとをPDCCHで送信側UE20Tに送信する(S307)。送信側UE20Tは、PSFCHを用いずに、SL HARQ-NACKの情報を基地局10経由で取得することができる。
【0094】
送信側UE20Tは、割り当てられた無線リソースに設定したPSSCHを用いてHARQ再送データを受信側UE20Rに送信する(S308)。受信側UE20Rは、HARQ再送データの受信に成功すると、SLのHARQ再送に割り当てられた無線リソースの一部に設定したPSFCHを用いてHARQ-ACK(肯定応答)を、送信側UE20Tに返信する(S309)。
【0095】
図9の例によれば、受信側UE20RがSLの初回送信データの受信に失敗したとき、送信側UE20TがHARQ再送データを受信側UE20Rに送信するまでに、受信側UE20Rから基地局へのフィードバックメッセージの直接送受信(S306)と基地局10から送信側UE20Tへのメッセージの送受信(S307)の2段階の中間的なシグナリング処理で済むため、HARQ再送遅延を低減できる。
【0096】
また、図9の例によれば、受信側UE20Rから送信側UE20TへのPSFCHを用いたHARQ再送信のためのメッセージ送受信がないため、PSFCHに伴うオーバーヘッドを削減することができる。また、PSFCHのAGC及びGuard区間用の無線リソースも削減することができる。
【0097】
以上、本実施形態によれば、基地局10が当該基地局圏内に存在する端末同士のSL通信の無線リソースを割り当てる割当制御モードの動作中におけるSLのHARQ再送遅延を低減することができる。
【0098】
また、本明細書で説明された処理工程並びに無線通信システム、移動通信システム、制御装置、MEC装置、基地局及び無線端末装置(端末、端末装置、ユーザ装置(UE)、移動局、移動機)の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0099】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、Node B、eNodeB、gNodeB、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0100】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0101】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0102】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0103】
10 :基地局
10A :セル
14 :MEC装置
15 :コアネットワーク
20 :UE(無線端末装置)
21 :アンテナ
30 :車両
90 :道路
100 :基地局装置
101 :アンテナ
102 :アンテナ
122 :CUコントローラ
140 :MEC装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9