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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20240213BHJP
   G03G 5/04 20060101ALI20240213BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240213BHJP
   G03G 9/093 20060101ALI20240213BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G03G5/147
G03G5/04
G03G21/00 318
G03G9/093
G03G9/087
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023018681
(22)【出願日】2023-02-09
(62)【分割の表示】P 2018213876の分割
【原出願日】2018-11-14
(65)【公開番号】P2023062027
(43)【公開日】2023-05-02
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山内 恒
(72)【発明者】
【氏名】中田 慶太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖数
(72)【発明者】
【氏名】井加田 洸輔
(72)【発明者】
【氏名】山脇 健太郎
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-191769(JP,A)
【文献】国際公開第2005/093519(WO,A1)
【文献】特開2018-077466(JP,A)
【文献】特開2016-118628(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/04
G03G 21/00
G03G 9/093
G03G 9/087
G03G 5/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状支持体および前記円筒状支持体上に設けられた有機感光層を有する円筒状の像担持体と、
前記像担持体の周面に形成された潜像を現像するために前記像担持体へ現像剤を供給する現像手段と、
前記像担持体の前記周面に当接して前記周面をクリーニングするクリーニング部材と、を有するカートリッジにおいて、
前記像担持体の前記周面には、前記周面の周方向に延びる溝であって前記周面の母線方向における幅が0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝が、前記母線方向に複数並ぶように形成されており、
前記溝の本数が、前記周面の母線方向の幅1000μmあたり20本以上1000本以下であり、
前記像担持体の前記周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)が0.08μm以下であり、
前記現像剤は、トナー粒子を有するトナーを含有し、
前記トナー粒子は、下記式(1)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を含有する表層を有し、
前記トナー粒子の表面における前記有機ケイ素重合体の固着率が90%以上であり、
前記トナーは、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定した時のマルテンス硬度が、200MPa以上1100MPa以下である、ことを特徴とするカートリッジ。
R-SiO3/2 式(1)(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基)
【請求項2】
前記像担持体の前記周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)が0.01μm以上0.02μm以下である、請求項に記載のカートリッジ。
【請求項3】
前記像担持体の前記周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)と、
前記像担持体の前記周面の粗さ曲線の中核をなすコア部分の高さ(Rk)と、
前記像担持体の前記周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)
との和が、0.24μm以下である、請求項に記載のカートリッジ。
【請求項4】
前記像担持体の回転軸に垂直な断面において、
前記クリーニング部材のエッジが前記像担持体の前記周面における所定の仮想点と接するように、前記クリーニング部材を前記像担持体に対して配置したときの、前記クリーニング部材の前記エッジよりも前記像担持体の回転方向における下流側において前記周面と対向する面と、前記仮想点を通る接線と、がなす角度を設定角θとし、
前記仮想点から前記接線と直交する方向に前記像担持体に対して侵入するように前記クリーニング部材を移動させたときの侵入量δとしたとき、
18≦θ≦26(°)
0.6≦δ≦1.4(mm)
を満たす、請求項1~3のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項5】
前記クリーニング部材の前記像担持体との接触部のダイナミック硬度DHsが、
0.07(mN/μm)≦DHs≦1.1(mN/μm)を満たす、請求項1~4のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項6】
前記トナーの重量平均粒径が、3.0μm以上10.0μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項7】
使用時の姿勢において、前記像担持体は、前記クリーニング部材が当接する部分において、前記周面が上方から下方に向かう方向に移動するように回転する、請求項1~のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【請求項8】
前記像担持体を回転可能に支持するとともに、前記クリーニング部材が固定される枠体を備え、
前記クリーニング部材は、弾性体と、前記弾性体を支持する支持体であって、一端が前記枠体に固定され、自由端である他端に前記弾性体が固定された支持体と、を有し、
前記弾性体は、一端が前記支持体に固定され、自由端である他端が前記周面に当接し、
前記支持体の前記一端から前記弾性体の前記他端へ延びる方向が、前記弾性体の前記他端が前記周面と当接する部分における前記像担持体の回転方向に対して対向する方向である、請求項1~7のいずれか1項に記載のカートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真画像形成装置に関するものである。ここで、電子写真画像形成装置(以下、単に「画像形成装置」ともいう)とは、電子写真画像形成方式を用いて記録材(記録媒体)に画像を形成するものである。画像形成装置の例としては、複写機、プリンタ(レーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、ファクシミリ装置、ワードプロセッサ、及び、これらの複合機(マルチファンクションプリンタ)などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、像担持体である感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像装置が現像剤によりトナー像に現像し、これを感光体ドラムから記録材に転写させ、順次定着することにより、画像を得るものである。カラー画像形成装置においては、感光体ドラムから中間転写ベルトにトナー像を転写させたのち、中間転写ベルトから記録材に再度トナー像を転写させる中間転写ベルト方式の画像形成装置も実用化されている。
感光体ドラムから中間転写ベルトへの転写工程では、正規と逆極性に帯電したトナーや帯電量の低いトナーは転写工程で転写されずに感光体ドラムに残ることがある。この残トナーを除去する装置として、感光体ドラムにクリーニング部材を当接させて残トナーの除去を行うクリーニング装置が用いられている。
これら現像装置、感光体ドラム、クリーニング装置は、画像形成装置に着脱可能なプロセスカートリッジとして一体に構成されることがある。
クリーニング装置としては、構成の単純さと除去能力の観点から、弾性体で構成されたクリーニングブレードを感光体ドラムの回転方向に対してカウンター方向で当接させるカウンター方式のブレードクリーニングが広く用いられている。
カウンター方式のブレードクリーニングでは、クリーニングブレードが感光体ドラムに対して強く当接され摺擦される。このため、感光体ドラムの駆動トルクがプロセスカートリッジ駆動トルクの多くを占める。
プロセスカートリッジが搭載される画像形成装置の駆動トルクの低減による消費電力の低減や画像形成装置および装置の小型化に向け、ブレードクリーニングにおけるトルクを低減したものとして例えば特許文献1に開示されたものがある。特許文献1には、感光体ドラムの表面粗さを制御するものが記されている。ここでは、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触面積を減少することで、トルクを低下させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4027407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、先に説明した画像形成装置においては、クリーニング効率の向上や装置の長寿命化など観点から、駆動トルクを更に低下させる必要がある。
一方、近年、消費電力のさらなる低減の為に、感光体ドラムの駆動トルクの更なる低減のために、クリーニングブレードの感光体ドラムに対する当接状態における侵入量を低くすることが求められている。しかしながら、特許文献1では、クリーニングブレードの感光体ドラムに対する侵入量を低くすると、クリーニングブレードからトナーがすり抜け、帯電部材を汚染し、縦スジ等の画像不良が発生する懸念があることがわかった。
本発明の目的は、感光体ドラムの駆動トルクを下げた状態において、帯電部材の汚染による画像問題の発生を抑制することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明におけるカートリッジは
筒状支持体および前記円筒状支持体上に設けられた有機感光層を有する円筒状の像担持体と、
前記像担持体の周面に形成された潜像を現像するために前記像担持体へ現像剤を供給する現像手段と、
前記像担持体の前記周面に当接して前記周面をクリーニングするクリーニング部材と、を有するカートリッジにおいて、
前記像担持体の前記周面には、前記周面の周方向に延びる溝であって前記周面の母線方向における幅が0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝が、前記母線方向に複数並ぶように形成されており、
前記溝の本数が、前記周面の母線方向の幅1000μmあたり20本以上1000本以
下であり、
前記像担持体の前記周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)が0.08μm以下であり、
前記現像剤は、トナー粒子を有するトナーを含有し、
前記トナー粒子は、R-SiO3/2(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を含有する表層を有し、
前記トナー粒子の表面における前記有機ケイ素重合体の固着率が90%以上であり、
前記トナーは、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定した時のマルテンス硬度が、200MPa以上1100MPa以下である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、感光体ドラムの駆動トルクを下げた状態において、帯電部材の汚染による画像問題の発生を抑制することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略断面図
図2】本発明の実施形態に係るプロセスカートリッジの概略断面図
図3】本発明の実施形態におけるクリーニングブレードの概要説明図
図4】クリーニングブレードの感光体ドラムに対する当接状態の定義の説明図
図5】本発明の実施形態における感光体ドラムの形態例を示す模式図
図6】本発明の実施形態における感光体ドラム表面を研磨する研磨装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明において、数値範囲を表す「○○以上××以下」や「○○~××」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限及び上限を含む数値範囲を意味する。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態又は実施例を例示的に詳しく説明する。ただし、該実施形態又は実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対位置等は、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるから、特に特定的な記載が無い限りは、発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0009】
[実施形態1]
<画像形成装置>
図1を参照して、本発明の実施形態に係る電子写真画像形成装置(画像形成装置)の全体構成について説明する。図1は、本実施形態の画像形成装置100の模式的断面図である。本発明が適用可能な画像形成装置としては、電子写真方式を利用した複写機、プリンタなどが挙げられ、ここでは、本実施形態の画像形成装置100として、タンデム方式、中間転写方式を採用したフルカラーレーザービームプリンタに本発明を適用した場合について説明する。
【0010】
画像形成装置100は、画像情報に従って、記録材(例えば、記録用紙、プラスチックシート、布など)にフルカラー画像を形成することができる。画像情報は、画像形成装置本体に接続された画像読み取り装置、或いは画像形成装置本体に通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ等のホスト機器から、画像形成装置本体に入力される。
【0011】
画像形成装置100は、複数の画像形成部としてのプロセスカートリッジ7が、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を形成するための第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKを有する。本実施形態では、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKは、鉛直方向と交差する方向に一列に配置されている。
尚、本実施形態では、第1~第4の画像形成部SY、SM、SC、SKの構成及び動作は、形成する画像の色が異なることを除いて実質的に同じである。従って、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用に設けられた要素であることを表すために符号に与えた添え字Y、M、C、Kは省略して、総括的に説明する。
【0012】
プロセスカートリッジ7は、画像形成装置本体に設けられた装着ガイド、位置決め部材などの装着手段を介して、画像形成装置100に着脱可能となっている。本実施形態では、各色用のプロセスカートリッジ7は全て同一形状を有しており、各色用のプロセスカートリッジ7内には、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー(現像剤)が収容されている。本実施形態では、プロセスカートリッジが装置本体に着脱可能な構成について説明するが、現像ユニット3(図2参照)が単独で画像形成装置本体に着脱可能な構成としても良い。
【0013】
静電像(静電潜像)を担持する像担持体としての感光体ドラム1は、図示しない駆動手段(駆動源)により回転駆動される。画像形成装置100にはスキャナユニット(露光装置)30が配置されている。スキャナユニット30は、画像情報に基づきレーザーを照射して感光体ドラム1上に静電像(静電像)を形成する露光手段である。また、画像形成装置100には、4個の感光体ドラム1に対向して、感光体ドラム1上のトナー像を記録材12に転写するための中間転写体としての中間転写ベルト31が配置されている。
中間転写体としての無端状のベルトで形成された中間転写ベルト31は、全ての感光体ドラム1に当接し、図示矢印B方向(反時計方向)に循環移動(回転)する。
【0014】
中間転写ベルト31の内周面側には、各感光体ドラム1に対向するように、一次転写手段としての、4個の一次転写ローラ32が並設されている。そして、一次転写ローラ32に、図示しない一次転写バイアス印加手段としての一次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト31上に転写(一次転写)される。
【0015】
また、中間転写ベルト31の外周面側において二次転写手段としての二次転写ローラ33が配置されている。そして、二次転写ローラ33に、図示しない二次転写バイアス印加手段としての二次転写バイアス電源(高圧電源)から、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト31上のトナー像が記録材12に転写(二次転写)される。例えば、フルカラー画像の形成時には、上述のプロセスが、画像形成部SY、SM、SC、SKにおいて順次に行われ、中間転写ベルト31上に各色のトナー像が順次に重ね合わせて一次転写される。その後、中間転写ベルト31の移動と同期が取られて記録材12が二次転写部へと搬送される。そして、記録材12を介して中間転写ベルト31に当接している二次転写ローラ33の作用によって、中間転写ベルト31上の4色トナー像は、一括して記録材12上に二次転写される。
【0016】
トナー像が転写された記録材12は、定着手段としての定着装置34に搬送される。定着装置34において記録材12に熱および圧力を加えられることで、記録材12にトナー像が定着される。
【0017】
二次転写工程で残留したトナーは、クリーニング手段としてのクリーニング装置35に搬送される。クリーニング装置35において、クリーニング装置35内のクリーニングブ
レード(不図示)により中間転写ベルト31上から残留トナーをかきとり、かきとられたトナーはクリーニング装置35からトナー回収容器(不図示)に搬送され、収容される。
【0018】
<プロセスカートリッジ>
本実施形態の画像形成装置に装着されるプロセスカートリッジ7の全体構成について説明する。
図2は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に沿って見た本実施形態のプロセスカートリッジ7の断面(主断面)図である。尚、本実施形態では、収容している現像剤の種類(色)を除いて、各色用のプロセスカートリッジ7の構成および動作は実質的に同一である。本実施形態における各動作は不図示のCPUの制御部(制御手段)により制御される。
【0019】
プロセスカートリッジ7は、現像手段としての現像ローラ4等を備えた現像ユニット3と、感光体ドラム1等を備えた感光体ユニット13とを有する。
【0020】
現像ユニット3は、現像ローラ4と、トナー供給ローラ5と、トナー搬送部材22と、それらを回転可能に支持する現像枠体18と、を備える。現像枠体18は、現像ローラ4とトナー供給ローラ5が配置された現像室18aと、トナー10を収容する現像剤収容室18bと、を備える。現像室18aと現像剤収容室18bは、開口部18cを介して連通している。現像剤収容室18bは現像室18aの下方に配置されている。この現像剤収容
室18の内部には、現像剤としてのトナー10が収容されている。本実施形態において、このトナー10の正規帯電極性は負極性である。ここで、正規帯電極性とは、静電像を現像するための帯電極性である。本実施形態では負極性の静電像を反転現像するので、トナーの正規帯電極性は負極性である。ただし、本発明は、負帯電性トナーに限定されるものではない。
【0021】
また、現像剤収容室18bには、このトナー10を現像室18aに搬送するためのトナー搬送部材22が設けられており、図中矢印Gの方向へ回転することによってトナー10を現像室18aへと搬送している。
【0022】
現像室18aには、感光体ドラム1と接触して図示矢印D方向に回転する現像剤担持体としての現像ローラ4が設けられている。本実施形態では、現像ローラ4と感光体ドラム1とは、対向部においてそれぞれの表面が互いに同方向に移動するように、すなわち、回転方向が互いに逆になるように、それぞれ回転する。また、現像ローラ4には、第一電圧印加手段としての不図示の第一電源(高圧電源)から、感光体ドラム1上の静電像をトナー像として現像、可視化するのに十分な電圧が印加される。
【0023】
また、現像室18aの内部には、トナー収容室18bから搬送されたトナー10を現像ローラ4に供給する現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ(以下、単に「供給ローラ」という。)5が配置されている。また、供給ローラ5によって供給された現像ローラ4上のトナーのコート量規制及び電荷付与を行う現像剤量規制部材(以下、単に「規制部材」という。)6が配置されている。
【0024】
供給ローラ5は、導電性芯金と、表面に発泡層とを有する弾性スポンジローラであり、現像ローラ4との間に接触部を形成して配設されており、図示矢印Eの方向に回転する。ただし、供給ローラ5の回転方向はEと逆方向であってもよい。
また、供給ローラ5には、第二電圧印加手段としての不図示の第二電源(高圧電源)から電圧が印加される。
【0025】
供給ローラ5によって現像ローラ4に供給されたトナー10は、現像ローラ4の矢印D
方向への回転によって、規制部材6と現像ローラ4との当接部へ侵入する。トナー10は現像ローラ4と規制部材6との間での摺擦で摩擦帯電され、電荷を付与されると同時にその層厚が規制される。規制された現像ローラ4上のトナー10は、現像ローラ4の回転により、感光体ドラム1との対向部に搬送され、感光体ドラム1上の静電像をトナー像として現像、可視化する。
【0026】
一方、感光体ユニット13は、感光体1等の感光体ユニット13における各種構成を支持する枠体としてのクリーニング枠体9を有する。クリーニング枠体9には、図示しない軸受を介して感光体ドラム1が回転可能に取り付けられている。感光体ドラム1は、有機感光体ドラムであり外径24mmである。ドラム駆動手段としての不図示の駆動モータの駆動力を受けることによって、図示矢印A方向に回転駆動される。
【0027】
また、感光体ユニット13には、感光体ドラム1の周面上に接触するように、帯電ローラ2、クリーニング部材としてのクリーニングブレード8が配置されている。帯電ローラ2は不図示のばねによって感光体ドラム1に向かう方向に付勢されており、感光体ドラム1の回転に従い従動回転する。
【0028】
クリーニングブレード8は、感光体ドラム1の回転によって、感光体ドラム1の表面速度と等しい相対速度で感光体ドラム1を摺擦し、転写工程で残留したトナー10をかきとり、帯電部材としての帯電ローラ2の残留トナー等による汚染を防止する。また、帯電工程で感光体ドラム1の表面に付着する放電生成物を除去し、感光体ドラム1の摩擦の増大などを防止している。
クリーニングブレード8によってかきとられたトナーは回収室9aに収納される。トナー回収室9aを介して画像形成装置に設けられたトナー回収容器に収容する構成としてもよい。
【0029】
以下、本発明にかかるクリーニングブレードとトナーと感光体ドラムの詳細を記述する。
<クリーニングブレード>
(クリーニングブレードの構成)
図3は、感光体ドラム1の長手方向(回転軸線方向)に垂直な断面を長手方向に沿って見た本実施形態のクリーニングブレード8の模式的断面図である。
【0030】
本実施形態のクリーニングブレード8は、板状弾性体からなる弾性部材8aと、弾性部材8aを支持する支持部材8bとから構成されている。弾性部材8aは、感光体ドラム1の被クリーニング部に当接される角部であるエッジEDを形成する第一の面M1および第二の面M2と、第三の面M3と、を有する。弾性部材8aにおいて感光体ドラム1の回転方向上流側に位置する面を第一の面M1、下流側の面を第二の面M2、第一の面M1の上流を第三の面M3とする。
【0031】
すなわち、第一の面M1は、弾性部材8aの先端面であって、弾性部材8aにおいてエッジEDよりも、感光体ドラム1の回転方向における上流側に位置し、感光体ドラム1の周面と対向する面である。第一の面M1は、弾性部材8aの感光体ドラム1に対する当接状態によっては、エッジEDと隣接する側の領域が感光体ドラム1の周面と摺動接触する場合がある。
第二の面M2は、エッジEDを挟んで弾性部材8aの先端面に連なる側面であって、弾性部材8aにおいてエッジEDよりも、感光体ドラム1の回転方向における下流側に位置し、感光体ドラム1の周面と対向する面である。第二の面M2は、弾性部材8aの感光体ドラム1に対する当接状態によっては、弾性部材8aのたわみにより、エッジEDと隣接する側の領域が感光体ドラム1の周面と摺動接触する(図4(c)参照)。
第三の面M3は、第二の面M2とは反対側において弾性部材8aの先端面、すなわち第一の面M1に連なる側面である。
【0032】
支持部材8bは、金属板金などからなる板状の支持部材であり、クリーニング枠体9に固定されている。支持部材8bは、一端がクリーニング枠体9に固定され、自由端である他端に弾性部材8aが固定され、クリーニングブレード8を構成している。支持部材8bは、L字に折り曲げられた一方の板部がクリーニング枠体9にビス等の締結具によって固定されており、他方の板部が一方の板部に対して略直交する方向に延びており、その先端に弾性部材8aが固定されている(図2参照)。支持部材8b(他方の板部)と弾性部材8aは、支持部材8bの固定端(一方の板部)から略同じ方向に一体的に延びている。その延びる方向は、感光体ドラム1周面において弾性部材8aの先端(他端)が当接する部分における、感光体ドラム1の回転方向に対して対向する方向(逆方向)となる。支持部材8b及び弾性部材8aが延びる方向は、下方から上方に向かう方向である。感光体ドラム1の回転方向は、感光体ドラム1周面において弾性部材8aの先端(他端)が当接する部分が上方から下方に向かう方向に移動する方向になる。
【0033】
なお、図2のプロセスカートリッジ7の姿勢は、画像形成装置本体に装着された状態(使用時)での姿勢であり、本明細書においてプロセスカートリッジの各部材の位置関係や方向等について記載する場合はこの姿勢における位置関係や方向等を示している。すなわち、図2における紙面の上下方向が鉛直方向に対応し、紙面の左右方向が水平方向に対応する。なお、この配置構成の設定は、画像形成装置が、通常の設置状態として、水平面に設置されることを前提とした設定である。
【0034】
本実施形態のクリーニングブレード8において、弾性部材8aの「自由端」とは、支持部材8bによって支持されている端部と反対側の弾性部材8aの端部である。また、弾性部材8aの「自由端部分」とは、自由端及びその近傍である。「エッジ」とは、被クリーニング部材(感光体ドラム1)に当接されるクリーニングブレード8の当接部であって、互いに交差する方向に沿ってそれぞれ延びる第一の面M1および第二の面M2の接続部に形成される稜線部である。
【0035】
本実施形態のクリーニングブレード8は、金型内に支持部材8bを配置した後、ポリウレタンエラストマー等の原料組成物を上記金型内に注入し、加熱して反応硬化させ脱型することによって得ることができる。脱型した後、必要に応じて弾性部材8aの自由端の先端部及び弾性部材8aの長手方向の両端部を切断等することができる。
該クリーニング部材の像担持体との接触部のダイナミック硬度DHsは、0.07(mN/μm)≦DHs≦1.1(mN/μm)を満たすことが好ましい。
自由端部分にダイナミック硬度DHs、0.07(mN/μm)≦DHs≦1.1(mN/μm)の部分を形成するには、自由端部分の硬化工程を設けることで実現することができる。弾性部材8aの先端部に硬化領域を形成する工程は、その切断前であっても切断後でもよい。これにより弾性部材8aと支持部材8bとが一体化されたクリーニングブレード8を得ることができる。
【0036】
(支持部材8b)
本実施形態のクリーニングブレード8の支持部材8bを構成する材料は特に限定されず、例えば以下の材料を挙げることができる。鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛めっき鋼板、クロムフリー鋼板の如き金属材料、6-ナイロン、6,6-ナイロンの如き樹脂材料等。また、支持部材8bの構造も特に限定されない。クリーニングブレード8の弾性部材8aは、その一端が支持部材8bによって支持されている。
【0037】
(弾性部材8a)
本実施形態のクリーニングブレード8の弾性部材8aを構成する材料としては、例えば以下の材料が挙げられる。ポリウレタンエラストマー、エチレン-プロピレン-ジエン共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロロヒドリンゴム、NBRの水素化物、多硫化ゴム等。ポリウレタンエラストマーとしては、機械的特性が優れることから、ポリエステルウレタンエラストマーが好ましい。ポリウレタンエラストマーは、主にポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤、触媒、その他添加剤等の原料から得られる材料である。
【0038】
(硬化領域の形成部位〕
弾性部材8aの先端部における硬化領域の形成部位は、被クリーニング部材(感光体ドラム1)に当接される第一の面M1と第二の面M2の少なくとも一方の表面である。また、該表面近傍の内部を硬化したものも用いることができる。
硬化領域は更に、第三の面M3、及び弾性部材8aの長手方向の両端面において形成されていてもよい。この場合、弾性部材8aの両端面部の剛性を向上させることができる。
【0039】
(弾性部材8aの形状)
本実施形態の弾性部材8aにおいて、第一の面M1と第二の面M2とによって形成されるエッジの角度は、特に限定されないが、通常、85~95度程度である。
本実施形態の弾性部材8aにおける国際ゴム硬さ(IRHD)は、60度以上であることが好ましく、65度以上であることがより好ましい。
【0040】
(クリーニングブレードの製造方法)
〔硬化領域の形成方法〕
先端部分に硬化領域を形成する方法は、硬化領域形成用の材料を塗布して硬化させることによって行うことができる。この硬化領域形成用の材料は必要に応じて希釈溶剤で希釈して使用され、ディッピング、スプレー、ディスペンサ、刷毛塗り、ローラ塗布等、公知の手段で塗布することができる。硬化領域形成用の材料としてはイソシアネート化合物等を用いることができる。また、表面よりも内部に高硬度領域を存在させるためには、硬化領域形成用の材料(イソシアネート化合物等)を十分に弾性部材8aの中に含浸する必要がある。硬化領域形成用の材料を高濃度かつ低粘度にすることで含浸は促進されるため、硬化領域形成用材料を希釈等せずに加熱することが効果的である。材料温度は60℃以上が好ましい。
【0041】
以下、硬化領域形成用の材料としてイソシアネート化合物を用いた例によって、硬化領域の形成方法の一例を説明する。硬化領域形成用の材料を塗布した弾性部材8aを「前駆体」と称す場合がある。
【0042】
〔硬化領域形成用の材料〕
硬化領域を形成するための材料は、弾性部材8aを硬化することが可能なもの、または、弾性部材8aの表面上に硬化領域を形成することが可能なものであれば特に限定されず、例えばイソシアネート化合物やアクリル樹脂等が挙げられる。硬化領域を形成する材料は、溶剤等で希釈して用いてもよい。希釈に用いる溶剤としては、使用する材料を溶解するものであれば特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0043】
弾性部材8aの構成材料がポリエステルウレタンエラストマーである場合、硬化領域を形成する材料としては、弾性部材8aとの相溶性や弾性部材8aへの含浸性を考慮すると、ポリエステルウレタンエラストマーの構成材料であるイソシアネート化合物を用いるこ
とがより好ましい。弾性部材8aに接触させるイソシアネート化合物としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を有するものを使用することができる。分子中に1個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、オクタデシルイソシアネート(ODI)等の脂肪族モノイソシアネート、フェニルイソシアネート(PHI)等の芳香族モノイソシアネートなどを使用することができる。分子中に2個のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物としては、通常、ポリウレタン樹脂の製造に用いられるものが使用でき、具体的には、以下のものを挙げることができる。2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、m-フェニレンジイソシアネート(MPDI)、テトラメチレンジイソシアネート(TMDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等。また、分子中に3個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物として、例えば、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、2,4,4’-ビフェニルトリイソシアネート、2,4,4’-ジフェニルメタントリイソシアネート等が使用できる。また、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物は、その変性誘導体や多量体等も使用可能である。中でも、硬化領域の硬度を効率的に上げるためには、結晶性の高い、つまり構造が対称性をもっているMDIが好ましく、さらに、変性体を含んだMDIは常温で液体であるため、作業性の面からより好ましい。
【0044】
上述した硬化領域は、弾性部材8aの被クリーニング部材(感光体ドラム1)に当接されるエッジEDを形成する第一の面M1と第二の面M2の両面に形成されていることが更に好ましい。クリーニング時には感光体ドラム1に第一の面M1と第二の面M2の両面が接する場合があるためである。
【0045】
<クリーニングブレード8の硬度の測定方法>
本実施形態において硬化領域の硬度は、以下の方法により測定することができる。測定機としては、島津製作所製「島津ダイナミック超微小硬度計 DUH-W211S」を用いることができる。圧子としては、115°三角すい圧子を用い、以下の計算式よりダイナミック硬度を求めることができる。
ダイナミック硬度:DHs=α×P/D2
【0046】
式中、αは、圧子形状による定数を、Pは、試験力(mN)を、また、Dは圧子のサンプルへの侵入量(押し込み深さ)(μm)を表す。
尚、測定条件は以下の通りである。
α:3.8584、
P:1.0mN、
負荷速度:0.03mN/sec、
保持時間:5秒、
測定環境:温度23℃、相対湿度55%、
測定サンプルのエージング:温度23℃、相対湿度55%の環境下で6時間以上放置。
【0047】
(測定サンプルの調整方法)
測定サンプルの調製方法は以下の通りである。測定サンプルは、画像形成領域内における長手方向を3等分した3箇所のそれぞれの中間点(3個所)から、長手方向に4mm(中間点から両方向に2mm)、短手方向はエッジEDから2mmの寸法で切り出す。
測定サンプルの硬化領域の硬化表面(第一の面M1)に圧子が垂直に当たるようにサンプルを配置し、長手方向は端部から2mmの位置、短手方向もしくは厚み方向はエッジEDから100μmの位置のダイナミック硬度を測定する。これは当接時に第一の面M1が主に当接し、トナーを保持する主な役割を担っているためである。
この測定を3個の測定サンプルについて行い、その平均値をクリーニングブレード8の
表面のダイナミック硬度DHsとする。
【0048】
<クリーニングブレード8の製造方法>
(クリーニングブレード前駆体の製造)
本実施形態におけるクリーニングブレード8の製造方法は、公知の方法の中から適したものを選択すればよく、特に限定されない。また、弾性部材8aの製造方法は、金型成形法や遠心成形法等の公知の方法の中から適したものを選択すればよい。
【0049】
例えば、金属成形の場合は、弾性部材8aを形成するためのキャビティを備えたクリーニングブレード用金型内に、弾性部材8aとの接触部分に接着剤を塗布した支持部材8bを配置する。一方、ポリイソシアネートとポリオールを部分的に重合したプレポリマーならびにポリオール、鎖延長剤、触媒、その他添加剤を含む硬化剤を注型機内に投入し、ミキシングチャンバー内で、一定比率にて混合、攪拌し、ポリウレタンエラストマー等の原料組成物を得る。この原料組成物を上記金型内に注入して支持部材8bの接着剤塗布面上に硬化成型物(弾性部材8a)を形成し、反応硬化後に脱型する。必要に応じて、弾性部材8aを所定の寸法や、弾性部材8aの当接部のエッジ寸法精度を確保するために適宜切断して、支持部材8bと弾性部材8aが一体的に成形されたクリーニングブレード前駆体を製造することができる。
【0050】
また、弾性部材8aを遠心成形機により製造する場合は、ポリイソシアネートとポリオールを部分的に重合したプレポリマーならびにポリオール、鎖延長剤、触媒、その他添加剤を含む硬化剤を混合、攪拌して得たポリウレタンエラストマー等の原料組成物を、回転するドラム内に投入し、ポリウレタンエラストマーシートを得る。このポリウレタンエラストマーシートを、所定の寸法や、弾性部材8aの当接部のエッジ寸法精度を確保するために切断する。このようにして得られたポリウレタンエラストマーシート(弾性部材8a)を、接着剤を塗布した支持部材8bに貼り付けて、クリーニングブレード前駆体を製造することができる。
【0051】
(硬化領域の形成)
硬化領域の形成は既に説明した方法によって行うことができる。即ち、先ず、クリーニングブレード前駆体の弾性部材8aの先端部の第一の面M1及び第二の面M2等に硬化領域形成用の材料を塗布する。次いで、弾性部材8aの先端部を、例えば温度80℃以上で3分間以上、加熱処理する。これにより、弾性部材8aの先端部の表面及び内部に硬化領域を形成することができる。
被クリーニング部材(感光体ドラム1)に当接するためのエッジをクリーニングブレード8に形成するために弾性部材8aを切断することが必要な場合、硬化領域の形成はその切断前でも切断後であっても構わない。なお、遠心成形の場合は支持部材8bに接合される前に硬化領域を形成することもできる。以上のようにして、クリーニングブレード8を得ることができる。
【0052】
以下、製造したクリーニングブレードの例を示す。
なお、以下の説明においてクリーニングブレードに付した番号1~5は、その種類を区別するためのものであり、他の説明や図において付している符号「8」とは異なるものである。
[クリーニングブレード1]
この製造例においては、図3に示す一体成型タイプのクリーニングブレードを製造して評価した。
【0053】
1.支持部材8b
厚さ1.6mmの亜鉛めっき鋼板を用意し、これを加工して、断面がL字形状の支持部
材8bを得た。なお、この支持部材8bの弾性部材8aが接触する箇所に、ポリウレタン樹脂接着用の接着剤(商品名;ケムロック219、ロード・コーポレーション社製)を塗布した。
【0054】
2.弾性部材8a用原料の調製
表1中の成分1の欄に示す種類と量の材料を80℃で3時間、攪拌しながら反応させてイソシアネートのモル濃度が8.50%のプレポリマーを得た。このプレポリマー1000gに、表1中の成分2の欄に示す種類と量の材料からなる硬化剤212.9gを混合して、イソシアネート基に対する水酸基のモル比(α値)0.60のポリウレタンエラストマー組成物を調製し、これを弾性部材8a用原料とした。
【0055】
【表1】
【0056】
3.支持部材8bと弾性部材8aの一体成型
上記支持部材8bの接着剤塗布箇所をキャビティ内に突出する様に配置したクリーニングブレード用成形金型内に、前記ポリウレタンエラストマー組成物を注入し、130℃で2分間硬化させた後に脱型して、弾性部材8aと支持部材8bとの一体成型体を得た。
この一体成型体を、硬化領域形成前に適宜切断して、エッジの角度90度、弾性部材8aの短手方向、厚み方向および長手方向の距離をそれぞれ7.5mm、1.6mm、237mmとした。
【0057】
4.硬化領域の形成
硬化領域形成用材料として変性MDI(商品名;ミリオネートMTL、東ソー社製)を準備した。この硬化領域形成用材料を90℃に加熱し、この材料中に、支持部材8b側のゴム表面を除く他の5表面が浸漬するように前記一体成型体の弾性部材8aを30秒間浸漬して、各表面上に前記材料を塗工した。その後、溶剤として酢酸ブチルを浸したスポンジにて、弾性部材8aの表面上の硬化領域形成用材料を拭きとった。
このようにして、弾性部材8aの5つの表面(第一の面M1、第二の面M2、第三の面M3、長手方向の両端面)及びそれら表面下の内部に硬化領域が形成されたクリーニングブレード1を得た。なお、弾性部材8aの成型から24時間経過後に硬化領域の形成を行った。
【0058】
[クリーニングブレード2]
硬化領域形成の工程を省いた以外は、クリーニングブレード1と同じの条件でクリーニングブレード2を形成した。
【0059】
[クリーニングブレード3]
硬化領域の形成における、硬化領域形成用材料の温度を90℃、浸漬時間を90秒に変更した以外は、クリーニングブレード1と同じ条件でクリーニングブレード3を得た。
【0060】
[クリーニングブレード4]
弾性部材用原料の調製製造方法において、イソシアネート基に対する水酸基のモル比(α値)0.90のポリウレタンエラストマー組成物を調製しこれを弾性部材用原料とした以外は、クリーニングブレード2と同じ条件でクリーニングブレード4を形成した。また、硬化領域形成の処理は行わなかった。
【0061】
〔クリーニングブレード5〕
硬化領域の形成における、硬化領域形成用材料の温度を90℃、浸漬時間を150秒に変更した以外は、クリーニングブレード1と同じ条件でクリーニングブレード5を得た。
表2に作成したクリーニングブレードの製造条件とダイナミック硬度の測定結果を示す。
【0062】
【表2】
【0063】
(クリーニングブレードと感光体ドラムの位置関係)
上記特徴を有し、先端が微小に変形するクリーニングブレード8において、後述するマルテンス硬度200MPa~1100MPaのトナーをクリーニングするために必要な力を発生させるには、設定角18°~26°、侵入量0.6mm~1.4mmが好適である。
すなわち、
像担持体の回転軸に垂直な断面において、
クリーニング部材のエッジが像担持体の周面における所定の仮想点と接するように、クリーニング部材を像担持体に対して配置したときの、クリーニング部材のエッジよりも像
担持体の回転方向における下流側において周面と対向する面と、仮想点を通る接線と、がなす角度を設定角θとし、
仮想点から接線と直交する方向に像担持体に対して侵入するようにクリーニング部材を移動させたときの侵入量δとしたとき、
18≦θ≦26(°)
0.6≦δ≦1.4(mm)
を満たすことが好ましい。
【0064】
なお、クリーニングブレード8の設定角、侵入量は以下のように規定される。
(1)設定角
クリーニングブレード8をその弾性部材8aのエッジが丁度仮想点Fで感光体ドラム1と接するように配置した時の感光体ドラム1の接線とクリーニングブレード8のエッジを挟む感光体ドラム回転方向下流側の平面(第二の面)のなす角度θ(図4(a))。
(2)侵入量
前記仮想点Fから前記接線と90°方向にクリーニングブレード8を感光体ドラム1と当接する方向に侵入(移動)させたときの侵入量(移動量)δ(図4(b))。
【0065】
感光体ドラム1がいない状態でクリーニングブレード8のエッジが上記(1)(2)の位置に配置されるようにクリーニングブレード8を固定する。固定し、感光体ドラム1と接したとき、実際のクリーニングブレード8は図4(c)のような形に変形する。
【0066】
像担持体の周面に形成された潜像を現像するための現像剤は、トナー粒子を有するトナーを含有する。
<トナー>
本発明の実施形態1で使用するトナーは、例えば、マイナスに帯電極性をもつ非磁性1成分の重合トナーであり、粒径は7μmである。
【0067】
(トナー粒子の製造方法)
トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに、湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができる。
【0068】
ここでは懸濁重合法について説明する。懸濁重合法においてはまず、結着樹脂を生成するための重合性単量体、並びに、必要に応じて着色剤及びその他の添加剤を、ボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する(重合性単量体組成物の調製工程)。このとき、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤などを適宜加えることができる。
【0069】
次に、上記重合性単量体組成物を予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高せん断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに形成する(造粒工程)。
【0070】
造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることが、トナー粒子の粒径制御、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、好適に用いられる。
【0071】
造粒工程の後、あるいは造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る(重合工程)。
【0072】
重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことができる。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことができる。
【0073】
高精細かつ高解像の画像を得るという観点から、トナーの重量平均粒径は、3.0μm以上10.0μm以下であることが好ましい。トナーの重量平均粒径は細孔電気抵抗法により測定することができる。例えば「コールター・カウンター Multisizer 3」(ベックマン・コールター(株)製)用いて測定することができる。こうして得られたトナー粒子分散液は、トナー粒子と水系媒体を固液分離する濾過工程へと送られる。
【0074】
得られたトナー粒子分散液からトナー粒子を得るための固液分離は、一般的な濾過方法で行うことができ、その後トナー粒子表面から除去しきれなかった異物を除去するため、リスラリーや洗浄水のかけ洗いなどによって更に洗浄を行うことが好ましい。十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナーケーキを得る。その後、公知の乾燥手段により乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離してトナー粒子を得る。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率を向上させるために再利用してもよい。
【0075】
(感光体ドラム)
図5に本実施形態の感光体ドラムの層構成の例を示す。
本実施形態に係る画像形成装置100で用いられる感光体ドラム1について説明する。本実施形態における感光体ドラム1は、特許第4027407号公報に記載の製造方法により作製した。図5(a)は、感光体ドラム1の模式的断面図である。図5(a)に示すように、感光体ドラム1は、支持体41と、支持体41上に形成される感光層(電荷発生層441、電荷輸送層442)と、感光層上に形成される保護層45と、を有する。また、感光体1(保護層45)の表面1aには研磨による粗面化処理が施されている。
【0076】
(支持体)
感光体ドラム1が有する支持体41は、導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体41の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。本実施形態では、感光体ドラム1は、概略、円筒状支持体上に有機感光層が設けられる構成となっている。また、支持体41の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
【0077】
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合又は被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
【0078】
また、支持体41の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体41表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体41表面における光の反射を制御することがで
きる。導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
【0079】
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
【0080】
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリンやアルミニウムなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズなどの金属酸化物が挙げられる。
また、導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0081】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0082】
また、導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などを更に含有してもよい。
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
導電層は、上述の各材料及び溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0083】
(下引き層)
支持体又は導電層の上に、下引き層を設ける。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0084】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0085】
また、下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
また、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。
【0086】
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
下引き層は、上述の各材料及び溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0087】
(電荷発生層)
電荷発生層441は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中441の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0088】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
また、電荷発生層441は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0089】
電荷発生層441の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
電荷発生層441は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0090】
(電荷輸送層)
電荷輸送層442は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。電荷輸送
物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層442中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層442の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0091】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
また、電荷輸送層442は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0092】
電荷輸送層442の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上30μm以下であることが特に好ましい。本実施形態1では12μmとした。
電荷輸送層442は、上述の各材料及び溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0093】
(保護層)
感光体ドラム1は、耐摩耗性改善のため、最表層に耐摩耗性の保護層45を設けている。保護層45を設けることで、耐久性を向上することができる。
保護層45は、導電性粒子及び/又は電荷輸送物質と、樹脂とを含有することが好ましい。
【0094】
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂が好ましい。
【0095】
また、保護層45は、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成してもよい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0096】
保護層45は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0097】
保護層45の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることが好ましい。
保護層45は、上述の各材料及び溶剤を含有する保護層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥及び/又は硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
本実施形態では、保護層45の平均膜厚を3μmとした。
【0098】
(粗面化処理)
本実施形態の感光体ドラム1は、クリーニングブレード8との接触面積を低減させ、感光体ドラム1の駆動トルクを小さくするために、感光体ドラム1の表面を研磨する粗面化処理を行っている。
特許第4027407号公報によれば、感光体ドラム1の周面に該周面の略周方向に延びる幅が0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝が長手方向(母線方向)に複数並ぶように形成されている。
図5(b)に、感光体ドラム1の周面1aに形成される溝1bの状態の例を示す。図5(b)に示すように、各溝1bは、それぞれ感光体1の周面1a上においてその周方向に延びる環状の溝であり、周面1aの母線方向において互いに間隔を空けて並ぶように形成されている。すなわち、周面1aは、溝1bが形成されていない平坦部1cと、溝1bと、が母線方向に交互に形成された構成となっている。なお、周面1aにおいて溝1bが形成される領域は、少なくとも、クリーニングブレード8が当接する領域を含んでいればよく、必ずしも、周面1aの長手方向の全域に渡って形成する必要はない。
なお、上記公報でも述べているように、溝1bは、図6(b)に示すように周方向と同じ方向に延びるように形成される構成に限定されない。例えば、溝1bが周方向に対して10°の角度をもたせて形成される構成でもよい。また、溝1bが周方向に対して±30°の角度をもたせて形成された構成とし、角度の異なる溝1bが互いに交差するように構成してもよい。本実施形態において、「略周方向」とは、完全に周方向である場合とほぼ周方向である場合とを含み、ほぼ周方向とは、具体的には、周方向に対して±60°未満の方向である。
【0099】
この溝1bの本数が周面1aの母線方向の幅1000μmあたり20本以上1000本以下であることが好ましい。(以下、幅が0.5μm~40μmの範囲内にある溝1bの、周面1aの母線方向の幅1000μmあたりの本数を、「溝密度」ともいう。つまり、上記の場合、溝密度は20~1000である。)
周面1aの母線方向の幅1000μmあたりの溝1bの本数を、「溝密度」としたとき、溝密度が20より小さいと、通紙枚数の増加によりクリーニングブレードのエッジ部に欠けが生じやすい。その結果、クリーニング不良となりやすく、出力画像上に黒いスジ状の画像が生じやすい。また、トナーなどの融着が生じやすく、出力画像上に白い点状の画像が生じやすくなる。
【0100】
一方、溝密度が1000を超えると、文字再現性が低下し、小文字(例えば3ポイント以下の文字)画像が再現されにくく、かすれてしまう場合や、特に低湿環境下においてトナーがクリーニングブレードをすり抜けるというクリーニング不良が発生する場合がある。
また、幅が40μmを超える溝1bは、ハーフトーン画像上で濃淡ムラや白いキズ画像を生じさせやすく、また、白地画像上に黒いキズ画像を生じさせやすい。そのため、感光体ドラム1の周面1aに形成された溝1bのうち幅が40μmを超える溝1bの割合は、感光体ドラム1の周面に形成された溝1bすべてに対して20本数%以下であることが好ましい。
また、感光体ドラム1の周面1aの十点平均面粗さRzは、0.3μm~1.3μmであることが好ましい。0.3μmより小さいと、画像流れ解消の効果が薄くなる場合があり、1.3μmを超えると、文字再現性が低下し、小文字(例えば3ポイント以下の文字)画像が再現されにくく、つぶれてしまう場合があるためである。
【0101】
以上を踏まえ、本実施形態においても特許第4027407号公報に記載と同様の粗面化処理を行ったが、条件は下記の通りとした。
【0102】
図6は、感光体ドラム1の表面1aを研磨する研磨装置の概略図である。本実施形態では、感光体ドラム1の表面1aを、図6に示す研磨装置を用いて研磨し、図5(b)の様に粗面化処理を行った。
研磨シート19は巻き取り機構(不図示)で矢印方向に巻き取られる。感光体ドラム1は矢印方向に回転する。バックアップローラー20は矢印方向に回転する。研磨条件としては、研磨シート19として理研コランダム社製の研磨シート(商品名:GC♯3000、基層シート厚:75μm)を用い、バックアップローラー20としては硬度20°のウレタンローラー(外径:50mm)を用い、侵入量:2.5mm、シート送り量:200mm/s~400mm/sとして、研磨シートの送り方向と感光体ドラム1の回転方向を同一として、5秒間~30秒間研磨した。
該粗面化処理された感光体ドラムの周面には、周面の周方向に延びる溝であって周面の母線方向における幅が0.5μm以上40μm以下の範囲内にある溝が、母線方向に複数並ぶように形成されていた。
また、溝の本数が、周面の母線方向の幅1000μmあたり20本以上1000本以下であった(具体的には、400本であった。)
【0103】
研磨した後の感光体ドラム1の表面粗さは、表面粗さ測定機(商品名:SE700、SMB-9、(株)小坂研究所製)を用い、JIS B 0671-2に準じて、像担持体の周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)、像担持体の周面の粗さ曲線の中核をなすコア部分の高さ(Rk)、像担持体の周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)を、下記の条件で測定した。
感光体ドラム1の長手方向に、塗布上端から30、110、185mmの位置において測定した、また、120°手前に回転させた後、同様にして塗布上端から30、110、185mmの位置において測定した。更に、120°手前に回転させた後、同様にして測定し、計9点の測定を行い、計9点の測定を行い、感光体ドラム1として(表3)の各感光体ドラムを作製した。なお、以下の説明において感光体ドラムに付した番号1~4は、クリーニングブレード1~5と同様、その種類を区別するためのものであり、他の説明や図において付している符号「1」とは異なるものである。測定条件は、測定長さ:2.5mm、カットオフ値:0.8mm、送り速さ:0.1mm/s、フィルタ特性:2CR、レベリング:直線(全域)とした。
【0104】
像担持体の周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)は、0.01μm以上0.08μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.03μm以下であることがより好ましい。
像担持体の周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)は、0.01μm以上0.02μm以下であることが好ましく、0.01μm以上0.015μm以下であることがより好ましい。
像担持体の周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)と、
像担持体の周面の粗さ曲線の中核をなすコア部分の高さ(Rk)と、
像担持体の周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)との和は、0.03μm以上0.24μm以下であることが好ましく、0.03μm以上0.10μm以下であることがより好ましい。
これは、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)と周面の粗さ曲線の中核をなすコア部分の高さ(Rk)と周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)の和が0.24μmよりも大きくなってくると、粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)を小さくしても、クリーニングブレードと感光体ドラム間の隙間がトナー粒径よりも大きくなってしまい、トナーすり抜けが発生してしまうからである。
【0105】
【表3】
【0106】
(実施例)
実施形態1の実施例1~6、比較例1~2として表4に示すようなクリーニングブレード1~5と感光体ドラム1~4の組み合わせを準備した。
【0107】
(実験)
(トルク)
プロセスカートリッジ7の現像剤室18にトナーを100g充填した。同じく、感光体ユニット13に実施例1~6、比較例1~2のクリーニングブレードと感光体ドラムを取り付け、クリーニングブレードの設定角θを22°、侵入量δを1.0mmに設定した。
室温15℃、相対湿度10%Rh環境で、現像ローラ当接状態において、感光体表面速度296mm/s、現像ローラの表面速度425mm/sで回転させながら、帯電ローラに-1kV、現像ローラを接地、供給ローラと規制部材に-100Vを印可した。
回転開始から30秒経過後から2秒間の感光体駆動トルクを測定した。評価は以下のように行った。
A:低トルク性良好 0.16N・m以下
B:低トルク効果あり 0.16N・mを超え0.18N・m以下
C:低トルク効果あり 0.18N・mを超え0.20N・m以下
F:低トルク効果が見られない 0.20N・mを超える
評価A、B及びCであったものを低トルク化の効果ありとした。結果を表4「トルク」の列に示す。
【0108】
(トナーのすり抜け)
画像形成装置100により、室温15℃、相対湿度10%Rh環境で、印字率1%の15,000枚の画像形成を行った。画像形成2枚ごとに間欠時間3秒を設けた。
感光体ドラム表面速度296mm/s、現像ローラ表面速度425mm/sとし、感光体ドラム表面電位-500V、現像ローラの印可電圧-350V、供給ローラの電圧-450V、規制部材の電圧-450Vとした。
15,000枚画像形成後のトナーのすり抜けを評価した。評価は以下のように行った。
A:感光体表面上目視で汚れなく、画像への影響なし
B:感光体表面上目視でほとんど汚れなく、画像への影響なし
C:感光体表面上目視で軽微なトナーのすり抜けあるが画像への影響なし
F:感光体表面上目視で汚れており、画像への影響もある
画像への影響とは、白画像の記録材搬送方向にトナーすり抜けに起因するスジの発生があるものを影響ありとしている。
結果を表4「トナーすり抜け」の列に示す。画像への影響がないA、B及びCを発明の効果ありとした。
【0109】
【表4】
【0110】
上記の様に、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)を0.02μm以下とし、周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)を0.08μm以下とし、クリーニングブレードのダイナミック硬度DHsを0.07以上1.1以下とすることが、好適に例示できる。
また、クリーニングブレードの感光体ドラムに対する当接状態における設定角を18°~26°、侵入量を0.6mm~1.4mmとすることで、低いトルクを実現しつつトナーすり抜けのさらなる抑制も可能となる。
これは、例えば、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さRpkを0.02以下にすることで、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触部の面積が狭くなり、低トルクの効果が得られやすい。また、例えば、周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)を0.08μm以下にすることにより、クリーニングブレードとドラム間にトナー粒径よりも大きな隙間を形成しにくくなる。また、この状態でクリーニングブレードのダイナミック硬度DHsを0.07~1.1とすることでクリーニングブレードと感光体ドラム間に十分な圧を加えることができ、すり抜けをより抑制することが可能となる。
【0111】
実施例4では、クリーニングブレードのダイナミック硬度DHsが低いため、面圧が低下しやすく、トナーのすり抜けが若干発生した。
実施例5では、クリーニングブレードのダイナミック硬度DHsが高いため、面圧が上昇し、トルクの低減効果が若干低下した。
実施例6では、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)が大きく、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触面積が十分狭くならず、トルクの低減効果が若干低下した。
比較例1では、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)が大きく、クリーニングブレードと感光体ドラムの間に隙間が発生し、トナーすり抜けが発生した。
比較例2では、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)が大きく、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触面積が十分狭くならず
、トルクを十分低くすることができなかった。また、(Rpk+Rk+Rvk)が0.25と大きい為、クリーニングブレードと感光体ドラムの間に大きい隙間が発生しトナーすり抜けが発生した。
【0112】
(低トルクとトナーすり抜けを両立できるクリーニングブレードの姿勢範囲)
実施例1の構成に対して、設定角θ、侵入量δ及び評価条件(室温15℃、相対湿度10%Rh[以下、L/Lともいう])、又は、室温30℃、相対湿度80%Rh[以下、H/Hともいう])を表5及び表6に示すように、さまざまに変えてトルクを測定した。結果を表5及び表6に示す。なお、表5中の評価は、上記(トルク)の評価基準を用いた。
設定角18°~26°(18≦θ≦26(°))、侵入量0.6mm~1.4mm(0.6≦δ≦1.4(mm))の範囲であれば、トルクは0.20N・m以下となる。
また、[L/L]及び[H/H]の環境で、15000枚の1%印字率画像形成を行った。表5及び表6に結果を示す。評価は、上記(低トルク及びトナーのすり抜けと感光体ドラム表面粗さ及びクリーニングブレードの関係)の評価基準を用いた。
クリーニング性は侵入量が大きくなるほど接触部の接触力が増し、クリーニング性がよくなるので、0.6mm~1.4mmの範囲、設定角18°~26°の範囲で好適にクリーニングできることが分かった。
【0113】
以上より、十分な圧力を加えて好適にクリーニングしつつ、トルク低減効果を維持するには、18°~26°、0.6mm~1.4mmであることが好ましく、より好ましくは、20°~24°、0.9mm~1.2mmである。
なお、侵入量0.6mm未満または、設定角18°未満の領域で、室温10℃、相対湿度15%Rhの環境においてクリーニングブレードの追従性が低くなる傾向があり、感光体ドラムの偏心やクリーニングブレードのエッジの微小凹凸に起因してトナーが帯状にすり抜けやすくなる傾向にあった。
一方、侵入量1.5mm以上または設定角26°を超える範囲では、室温30℃、相対湿度80%Rhの環境において、クリーニングブレードのめくれが発生しやすい傾向にあった。
【0114】
【表5】
【0115】
【表6】
【0116】
以上述べたように、本実施形態によれば、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触面積を抑制した状態で、クリーニングブレードと感光体ドラム間の隙間をトナーすり抜けが抑制できる範囲内に抑制することが可能となる。また、クリーニングブレードのダイナミック硬度DHsを0.07~1.1にすることにより、十分な面圧を確保することができる。これにより、感光体ドラムの駆動トルクが低く、トナーのすり抜け起因のスジ画像の発生がないプロセスカートリッジ提供することができる。
【0117】
[実施形態2]
実施形態1では、像担持体の周面の粗さ曲線に係る変数、クリーニング部材の像担持体との接触部のダイナミック硬度DHs、並びに、クリーニング部材に係る設定角θ及び侵入量δと、感光体ドラムの駆動トルク低減及びクリーニングブレードからのトナーすり抜け抑制について検討した。
一方、本実施形態2は、上記に加えてトナーの特定硬度を制御することにより、さらに長寿命に渡って、上記効果が得られる態様である。
尚、本実施形態の説明において、上述した実施形態1と重複する部分については、その説明を省略する。
【0118】
実施形態2において、現像剤は、トナー粒子を有するトナーを含有し、
トナー粒子は、下記式(1)で表される構造を有する有機ケイ素重合体を含有する表層を有し、
トナー粒子の表面における前記有機ケイ素重合体の固着率が90%以上であり、
トナーは、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定した時のマルテンス硬度が、200MPa以上1100MPa以下であることが好ましい。
R-SiO3/2 式(1)
(Rは炭素数1以上6以下の炭化水素基)
最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定した時の、トナーのマルテンス硬度を200MPa以上1100MPa以下とするためには、例えば、トナー粒子が特定の有機ケイ素重合体を含有する表層を有する態様とすることが挙げられる。
また、トナー粒子の表面における有機ケイ素重合体の固着率を90%以上とするためには、有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子の表面に形成させる方法が適している。以下、さらに詳細に説明する。
【0119】
<トナーのマルテンス硬度の測定方法>
硬度とは、物体の表面又は表面近傍の機械的性質の一つであり、異物によって変形や傷を与えられようとするときの、物体の変形しにくさ、物体の傷つきにくさであり、様々な測定方法や定義が存在する。例えば測定方法は測定領域の広さによって使い分けられ、測定領域が10μm以上の場合にはビッカース法、10μm以下の場合にはナノインデンテーション法、1μm以下の場合にはAFMなどと使い分けられることが多い。定義としては、例えば押し込み硬さとしてはブリネル硬度やビッカース硬度、引っ掻き硬さとしてはマルテンス硬度、反発硬さとしてはショア硬度などが使い分けられている。
【0120】
トナーの測定においては、一般的な粒径は3μm~10μmであるから、ナノインデンテーション法が好ましく用いられる測定方法である。発明者らの検討によると本発明の効果を向上させるための硬度の規定として、引っ掻き硬さを表すマルテンス硬度が適当であった。これは、トナーが現像機内で金属や外添剤などの硬い物質に引っ掻かれることに対する強さを表し得るのが引っ掻き硬さであるためと考えている。
【0121】
ナノインデンテーション法にてトナーのマルテンス硬度を測定する方法は市販のISO14577-1に準拠した装置にて、ISO14577-1に規定された押込み試験の手順に従って、得られた荷重-変位曲線から算出することができる。本発明においては、前記ISO規格に準拠した装置として、超微小押し込み硬さ試験機「ENT-1100b」(株式会社エリオニクス製)を用いた。測定方法は、装置に付属の「ENT1100操作マニュアル」に記載されているが、具体的な測定方法は以下の通りである。
【0122】
測定環境は、付属の温度調節装置にてシールドケース内を30.0℃に保った。雰囲気温度を一定に保つことは熱膨張やドリフトなどによる測定データのバラつき低減に有効である。設定温度は、トナーが摩擦される現像機近辺の温度を想定した30.0℃の条件とした。試料台は装置に付属の標準試料台を用い、トナーを塗布した後にトナーが分散するように微弱なエアーを吹き付け、その試料台を装置にセットして1時間以上保持してから測定を行った。
【0123】
圧子には装置に付属の先端が20μm四方の平面である平圧子(チタン製圧子、先端はダイヤモンド製)を用いて測定した。トナーの様に小径かつ球形の物体、外添剤が付着している物体、表面に凹凸が存在する物体においては、尖った圧子を用いると測定精度に大きな影響を与えるため平圧子を用いる。試験の最大荷重は2.0×10-4Nに設定して行う。この試験荷重に設定することで、現像部においてトナー1粒が受けるストレスに相当する条件で、トナーの表層を破壊せずに硬度を測定することが可能である。本発明においては、耐摩擦性が重要であるから表層を破壊せずに維持したまま硬さを測ることが重要である。
【0124】
測定対象の粒子としては、装置付属の顕微鏡による測定用画面(視野サイズ:横幅160μm、縦幅120μm)にトナーが単独で存在しているものを選択する。ただし、変位量の誤差を極力無くすため、粒子径(D)が個数平均粒径(D1)の±0.5μmの範囲にあるもの(D1-0.5μm≦D≦D1+0.5μm)を選択する。なお、測定対象粒子の粒径測定は装置付属のソフトを用いてトナーの長径と短径を測定し、[(長径+短径)/2]をもって粒子径D(μm)とする。また、個数平均粒径は「コールター・カウンター Multisizer 3(ベックマン・コールター株式会社製)により後述する方法にて測定する。
【0125】
測定に際しては、粒子径D(μm)が上記条件を満たす任意のトナー100粒を選んで測定を行う。測定の際に入力する条件は以下の通りである。
試験モード :負荷-除荷試験
試験荷重 :2.0×10-4
分割数:1000step
ステップインターバル:10msec
【0126】
解析メニュー「データ解析(ISO)」を選択して測定を行うと、測定後に装置付属ソフトでマルテンス硬度が解析され、出力される。トナー100粒について上記測定を行って、その相加平均値を本発明におけるマルテンス硬度とする。
【0127】
トナーの最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定したときのマルテンス硬度を200MPa以上1100MPa以下に調整することにより、従来のトナーよりもクリーニングニップにおけるトナーの変形を少なくすることが可能になった。つまり、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触面積を小さく保ち、より低トルクとすることができる。
【0128】
該マルテンス硬度が200MPa以上の場合、より長期にわたるトルク低減効果を発揮することができる。一方、該マルテンス硬度が1100MPa以下であれば、より長期にわたるトナーすり抜け抑制効果を発揮することができる。
【0129】
最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定する時のマルテンス硬度を200MPa以上1100MPa以下に調整するための手段は特に限定されない。ただし、当該硬度は一般的なトナーに用いられている有機樹脂の硬さに比べて大幅に硬いため、硬度を上げるために通常行われている手段では達成が困難である。例えば、ガラス転移温度の高い樹脂設計にする手段、樹脂分子量を上げる手段、熱硬化する手段、表層にフィラーを添加する手段などでは達成が難しい。
【0130】
一般的なトナーに用いられている有機樹脂のマルテンス硬度は、最大荷重2.0×10-4Nの条件で測定すると50MPa~80MPa程度である。さらに樹脂設計や分子量を上げるなどして硬度を上げた場合でも120MPa以下程度である。さらに、磁性体やケイ素化合物といったフィラーを表層近傍に充填して熱硬化させた場合でも180MPa以下程度であり、該トナーは一般的なトナーに比べて大幅に硬い。
【0131】
<硬度の制御方法>
上記特定の硬度範囲に調整するための1つの手段として、例えば、適切な硬度を持つ無機物などの物質でトナーの表層を形成させ、更にその化学構造やマクロ構造を適切な硬度を持つ様に制御する方法が挙げられる。
【0132】
具体的な例示として、上記特定の硬度を持ち得る物質としては有機ケイ素重合体が挙げられ、材料の選択として有機ケイ素重合体のケイ素原子に直接結合している炭素原子の数や炭素鎖長などによって硬度を調整することが可能である。
トナー粒子が、有機ケイ素重合体を含有する表層を有し、該有機ケイ素重合体のケイ素原子に直接結合している炭素原子の数が1個以上3個以下(好ましくは1個以上2個以下、より好ましくは1個)であると、上記特定の硬度に調整しやすいため好ましい。
【0133】
化学構造によりマルテンス硬度を調整する手段としては表層物質の架橋や重合度などの化学構造の調整などにより可能である。マクロ構造によりマルテンス硬度を調整する手段としては、表層の凸凹形状や凸間を繋ぐネットワーク構造の調整などにより可能である。これらの調整は有機ケイ素重合体を表層として用いる場合には、有機ケイ素重合体を前処
理する際のpH、濃度、温度、時間などで調整可能である。また、トナー粒子のコア粒子に有機ケイ素重合体を表層付けするタイミングや形態、濃度、反応温度などによって調整可能である。
本発明において特に好ましいのは以下の方法である。まず、トナー粒子のコア粒子を製造して水系媒体に分散し、コア粒子分散液を得る。この時の濃度はコア粒子分散液総量に対し、コア粒子の固形分が10質量%以上40質量%以下となる濃度で分散することが好ましい。そして、該コア粒子分散液の温度は35℃以上に調整しておくことが好ましい。また、該コア粒子分散液のpHは有機ケイ素化合物の縮合が進みにくいpHに調整することが好ましい。有機ケイ素重合体の縮合が進みにくいpHは物質によって異なるため、最も反応が進みにくいpHを中心として、±0.5以内が好ましい。
【0134】
一方、有機ケイ素化合物は加水分解処理を行ったものを用いることが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物の前処理として別容器で加水分解しておく。加水分解の仕込み濃度は有機ケイ素化合物の量を100質量部とした場合、イオン交換水やRO水などイオン分を除去した水40質量部以上500質量部以下が好ましく、より好ましくは水100質量部以上400質量部以下である。加水分解の条件としては、好ましくはpHが2~7、温度が15℃~80℃、時間が30分~600分である。
【0135】
得られた加水分解液とコア粒子分散液とを混合して縮合に適したpH(好ましくは6~12、又は1~3、より好ましくは8~12)に調整することで、有機ケイ素化合物を縮合させながらトナー粒子のコア粒子表面に表層付けすることができる。縮合と表層付けは35℃以上で60分間以上取ることが好ましい。また、縮合に適したpHに調整する前に35℃以上で保持する時間を調整することで表面のマクロ構造を調整可能であるが、特定のマルテンス硬度を得やすくするため、3分以上120分以下が好ましい。
以上のような手段によって反応残基を減らすことができ、表層に凹凸を形成させることができ、更に凸間にネットワーク構造を形成させることができるため、上記特定のマルテンス硬度のトナーを得られやすい。
有機ケイ素重合体を含有する表層を用いる場合には、トナー粒子の表面における有機ケイ素重合体の固着率が90%以上100%以下であることが好ましい。より好ましくは、95%以上100%以下である。トナー粒子の表面における有機ケイ素重合体の固着率の測定方法は後述する。
【0136】
<有機ケイ素重合体を含有する表層について>
トナー粒子が有機ケイ素重合体を含有する表層を有する場合、式(1)で表される構造を有することが好ましい。
R-SiO3/2 式(1)
(Rは、炭素数が1以上、6以下の炭化水素基を示す。)
【0137】
(NMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分の調製法)
トナー粒子のテトラヒドロフラン(THF)不溶分は、以下のように調製した。
トナー粒子10.0gを秤量し、円筒濾紙(東洋濾紙製No.86R)に入れてソックスレー抽出器にかける。溶媒としてTHF200mLを用いて20時間抽出し、円筒濾紙中の濾物を40℃で数時間真空乾燥を行って得られたものをNMR測定用のトナー粒子のTHF不溶分とした。
【0138】
なお、外添剤などでトナー粒子の表面が処理されている場合は、下記方法によって外添剤を除去し、トナー粒子を得る。
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に該ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機
ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。この操作により、トナー粒子と外れた外添剤が分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥し、トナー粒子を得る。この操作を複数回実施して、必要量を確保する。
【0139】
《式(1)で示される構造の確認方法》
トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)で示される構造の確認には以下の方法を用いる。
式(1)のRで表される炭化水素基は、13C-NMRにより確認した。
13C-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:123.25MHz(13C)
基準物質:アダマンタン(外部標準:29.5ppm)
試料回転数:20kHz
コンタクト時間:2ms
遅延時間:2s
積算回数:1024回
当該方法にて、ケイ素原子に結合しているメチル基(Si-CH)、エチル基(Si-C)、プロピル基(Si-C)、ブチル基(Si-C)、ペンチル基(Si-C11)、ヘキシル基(Si-C13)またはフェニル基(Si-C-)などに起因するシグナルの有無により、式(1)のRで表される炭化水素基を確認した。
【0140】
≪トナー粒子に含有される有機ケイ素重合体における、式(1)の構造に帰属されるピーク面積の割合の算出方法≫
トナー粒子のTHF不溶分の29Si-NMR(固体)測定を、以下の測定条件で行う。
29Si-NMR(固体)の測定条件≫
装置:JEOLRESONANCE製JNM-ECX500II
試料管:3.2mmφ
試料:NMR測定用のトナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分150mg
測定温度:室温
パルスモード:CP/MAS
測定核周波数:97.38MHz(29Si)
基準物質:DSS(外部標準:1.534ppm)
試料回転数:10kHz
コンタクト時間:10ms
遅延時間:2s
積算回数:2000~8000回
上記測定後に、トナー粒子のテトラヒドロフラン不溶分の、置換基及び結合基の異なる
複数のシラン成分をカーブフィティングにて下記X1構造、X2構造、X3構造、及びX4構造にピーク分離して、それぞれピーク面積を算出する。
X1構造:(Ri)(Rj)(Rk)SiO1/2 (2)
X2構造:(Rg)(Rh)Si(O1/2 (3)
X3構造:RmSi(O1/2 (4)
X4構造:Si(O1/2 (5)
【0141】
【化1】






【0142】
(式(2)、(3)及び(4)中のRi、Rj、Rk、Rg、Rh、Rmはケイ素に結合している、炭素数1~6の炭化水素基などの有機基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基又はアルコキシ基を示す。)
なお、上記式(1)で示される構造をさらに詳細に確認する必要がある場合、上記13C-NMR及び29Si-NMRの測定結果と共にH-NMRの測定結果によって同定してもよい。
【0143】
式(1)の構造を有する有機ケイ素重合体において、Si原子の4個の原子価のうち1個はRと、残り3個はO原子と結合している。O原子は、原子価2個がいずれもSiと結合している状態、つまり、シロキサン結合(Si-O-Si)を構成する。有機ケイ素重合体としてのSi原子とO原子を考えると、Si原子2個でO原子3個を有することになるため、-SiO3/2と表現される。この有機ケイ素重合体の-SiO3/2構造は、多数のシロキサン結合で構成されるシリカ(SiO)と類似の性質を有することが考えられる。従って、従来の有機樹脂により表層形成されたトナーに比べて無機物に近い構造のため、マルテンス硬度を高くすることが可能であると考えられる。
式(1)で表される構造において、Rは、炭素数が1以上、6以下の炭化水素基であることが好ましい。これにより帯電量が安定しやすい。特に環境安定性に優れている、炭素数が1以上、5以下の脂肪族炭化水素基、又はフェニル基が好ましい。
また、上記Rは、炭素数が1以上、3以下の炭化水素基であることが、帯電性のさらなる向上のためにより好ましい。帯電性が良好であると、転写性が良く転写残トナーが少ないためドラム、帯電部材及び転写部材の汚染が良化する。
炭素数が1以上、3以下の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、又はビニル基が好ましく例示できる。環境安定性と保存安定性の観点から、より好ましくは、Rはメチル基である。
【0144】
有機ケイ素重合体の製造例としては、ゾルゲル法が好ましい。ゾルゲル法は、液体原料を出発原料に用いて加水分解及び縮合重合させ、ゾル状態を経てゲル化する方法であり、ガラス、セラミックス、有機-無機ハイブリット、ナノコンポジットを合成する方法に用いられる。この製造方法を用いれば、表層、繊維、バルク体、微粒子などの種々の形状の機能性材料を液相から低温で作製することができる。
トナー粒子の表層に存在する有機ケイ素重合体は、具体的には、アルコキシシランに代表されるケイ素化合物の加水分解及び縮重合によって生成されることが好ましい。
この有機ケイ素重合体を含有する表層をトナー粒子に設けることによって、環境安定性が向上し、かつ、長期使用時におけるトナーの性能低下が生じにくく、保存安定性に優れたトナーを得ることができる。
さらに、ゾルゲル法は、液体から出発し、その液体をゲル化することによって材料を形成しているため、様々な微細構造及び形状をつくることができる。特に、トナー粒子が水系媒体中で製造される場合には、有機ケイ素化合物のシラノール基のような親水基による親水性によってトナー粒子の表面に析出させやすくなる。上記微細構造及び形状は反応温度、反応時間、反応溶媒、pHや有機金属化合物の種類及び量などによって調整することができる。
トナー粒子の表層の有機ケイ素重合体は、下記式(Z)で表される構造を有する有機ケイ素化合物の縮重合物であることが好ましい。
【0145】
【化2】


(式(Z)中、Rは、炭素数1以上6以下の炭化水素基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基を表す。)
【0146】
の炭化水素基(好ましくはアルキル基)により疎水性を向上することができ、環境安定性に優れたトナー粒子を得ることができる。また、炭化水素基として芳香族炭化水素基であるアリール基、例えばフェニル基を用いることもできる。Rの疎水性が大きい場合、様々な環境において帯電量変動が大きくなる傾向を示すことから、環境安定性を鑑みてRは炭素数が1以上、3以下の炭化水素基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
、R及びRは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アセトキシ基、又は、アルコキシ基である(以下、反応基ともいう)。これらの反応基が加水分解、付加重合及び縮重合させて架橋構造を形成し、耐部材汚染及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。加水分解性が室温で穏やかであり、トナー粒子の表面への析出性と被覆性の観点から、炭素数が1以上、3以下のアルコキシ基であることが好ましく、メトキシ基やエトキシ基であることがより好ましい。また、R、R及びRの加水分解、付加重合及び縮合重合は、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
本発明に用いられる有機ケイ素重合体を得るには、上記に示す式(Z)中のRを除く一分子中に3つの反応基(R、R及びR)を有する有機ケイ素化合物(以下、三官能性シランともいう)を1種又は複数種を組み合わせて用いるとよい。
【0147】
さらに、トナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量は0.5質量%以上10.5質量%以下であることが好ましい。
有機ケイ素重合体の含有量が0.5質量%以上であることで、表層の表面自由エネルギーを更に小さくすることができ、流動性が向上し、部材汚染やカブリの発生を抑制することができる。10.5質量%以下であることで、チャージアップを発生し難くすることができる。有機ケイ素重合体の含有量は有機ケイ素重合体形成に用いる有機ケイ素化合物の種類及び量、有機ケイ素重合体形成時のトナー粒子の製造方法、反応温度、反応時間、反応溶媒及びpHによって制御することができる。
有機ケイ素重合体を含有する表層とトナーコア粒子は、隙間なく接していることが好ましい。これにより、トナー粒子の表層よりも内部の樹脂成分や離型剤等によるブリードの発生が抑えられ、保存安定性、環境安定性及び現像耐久性に優れたトナーを得ることができる。表層には上記の有機ケイ素重合体の他に、スチレン-アクリル系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂や各種添加剤などを含有させてもよい。
【0148】
<トナー粒子の製造方法>
トナー粒子の製造方法は公知の手段を用いることができ、混練粉砕法や湿式製造法を用いることができる。粒子径の均一化や形状制御性の観点からは湿式製造法を好ましく用いることができる。さらに、湿式製造法には懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化重合凝集法、乳化凝集法などを挙げることができる。
【0149】
ここでは懸濁重合法について説明する。懸濁重合法においてはまず、結着樹脂を生成するための重合性単量体及び必要に応じて着色剤などのその他の添加剤をボールミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解又は分散させた重合性単量体組成物を調製する(重合性単量体組成物の調製工程)。このとき、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また、離型剤としてのワックスや荷電制御剤、可塑剤などを適宜加えることができる。
【0150】
次に、上記重合性単量体組成物を予め用意しておいた水系媒体中に投入し、高せん断力を有する撹拌機や分散機により、重合性単量体組成物からなる液滴を所望のトナー粒子のサイズに形成する(造粒工程)。
【0151】
造粒工程における水系媒体は分散安定剤を含有していることが、トナー粒子の粒径制御
、粒度分布のシャープ化、製造過程におけるトナー粒子の合一を抑制するために好ましい。
分散安定剤としては、一般的に立体障害による反発力を発現させる高分子と、静電気的な反発力で分散安定化を図る難水溶性無機化合物とに大別される。難水溶性無機化合物の微粒子は、酸やアルカリにより溶解するため、重合後に酸やアルカリで洗浄することにより溶解させて容易に除去することができるため、好適に用いられる。
【0152】
造粒工程の後、あるいは造粒工程を行いながら、好ましくは50℃以上90℃以下の温度に設定して、重合性単量体組成物に含まれる重合性単量体の重合を行い、トナー粒子分散液を得る(重合工程)。
【0153】
重合工程では容器内の温度分布が均一になる様に攪拌操作を行うことが好ましい。重合開始剤を添加する場合、任意のタイミングと所要時間で行うことができる。また、所望の分子量分布を得る目的で重合反応後半に昇温してもよく、さらに、未反応の重合性単量体、副生成物などを系外に除去するために反応後半、または反応終了後に、一部水系媒体を蒸留操作により留去してもよい。蒸留操作は常圧又は減圧下で行うことができる。
こうして得られたトナー粒子分散液は、トナー粒子と水系媒体を固液分離する濾過工程へと送られる。
【0154】
得られたトナー粒子分散液からトナー粒子を得るための固液分離は、一般的な濾過方法で行うことができ、その後トナー粒子表面から除去しきれなかった異物を除去するため、リスラリーや洗浄水のかけ洗いなどによって更に洗浄を行うことが好ましい。十分な洗浄が行なわれた後に、再び固液分離してトナーケーキを得る。その後、公知の乾燥手段により乾燥され、必要であれば分級により所定外の粒径を有する粒子群を分離してトナー粒子を得る。このとき分離された所定外の粒径を有する粒子群は最終的な収率を向上させるために再利用してもよい。
【0155】
有機ケイ素重合体を有する表層を形成する場合は、水系媒体中でトナー粒子を形成する場合には水系媒体中で重合工程などを行いながら前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加して該表層を形成させることができる。重合後のトナー粒子の分散液をコア粒子分散液として用いて、有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、該表層を形成させてもよい。また、混練粉砕法など水系媒体以外の場合には得られたトナー粒子を水系媒体に分散してコア粒子分散液として用いて、前述のように有機ケイ素化合物の加水分解液を添加し、該表層を形成させることができる。
【0156】
<トナー(粒子)の粒径の測定>
細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置(商品名:コールター・カウンター Multisizer 3)と、専用ソフト(商品名:ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51、ベックマン・コールター社製)を用いた。アパーチャー径は100μmを用い、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。測定用の電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、ベックマン・コールター社製のISOTON II(商品名)を使用した。なお、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。
【0157】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は(標準粒子10.0μm、ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定した。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定した。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON II(商品名)に設定し、測
定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れた。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定した。
【0158】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行った。そして、解析ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておいた。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れた。ここにコンタミノンN(商品名)(精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加えた。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器(商品名:Ultrasonic Dispersion System Tetora150、日科機バイオス(株)製)の水槽内にイオン交換水所定量とコンタミノンN(商品名)を約2mL添加した。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させた。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整した。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー(粒子)約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させた。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続した。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節した。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー(粒子)を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整した。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行った。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出した。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0159】
<有機ケイ素重合体の固着率の測定方法>
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、ショ糖濃厚液を調製する。遠心分離用チューブ(容量50mL)に上記ショ糖濃厚液を31gと、コンタミノンN(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)を6mL入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。
【0160】
遠心分離用チューブをシェイカーにて350spm(strokes per min)、20分間振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(容量50mL)に入れ替えて、遠心分離機(H-9R 株式会社コクサン製)にて3500rpm、30分間の条件で分離する。トナー粒子と水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナー粒子をスパチュラ等で採取する。採取したトナー粒子を含む水溶液を減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥する。乾燥品をスパチュラで解砕し、蛍光X線でケイ素の量を測定する。洗浄後のトナー粒子と洗浄前のトナー粒子の測定対象のケイ素量比から固着率(%)を計算する。
【0161】
各元素の蛍光X線の測定は、JIS K 0119-1969に準ずるが、具体的には
以下の通りである。
【0162】
測定装置としては、波長分散型蛍光X線分析装置「Axios」(PANalytical社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「SuperQ ver.4.0F」(PANalytical社製)を用いる。なお、X線管球のアノードとしてはRhを用い、測定雰囲気は真空、測定径(コリメーターマスク径)は10mm、測定時間10秒とする。また、軽元素を測定する場合にはプロポーショナルカウンタ(PC)、重元素を測定する場合にはシンチレーションカウンタ(SC)で検出する。
【0163】
測定サンプルとしては、専用のプレス用アルミリング直径10mmの中に水洗後のトナー粒子と初期のトナー粒子を約1g入れて平らにならし、錠剤成型圧縮機「BRE-32」(前川試験機製作所社製)を用いて、20MPaで60秒間加圧し、厚さ約2mmに成型したペレットを用いる。
【0164】
上記条件で測定を行い、得られたX線のピーク位置をもとに元素を同定し、単位時間あたりのX線光子の数である計数率(単位:cps)からその濃度を算出する。
【0165】
トナー粒子中の定量方法としては、例えばケイ素量はトナー粒子100質量部に対して、例えば、シリカ(SiO)微粉末を0.5質量部となるように添加し、コーヒーミルを用いて充分混合する。同様にして、シリカ微粉末を2.0質量部、5.0質量部となるようにトナー粒子とそれぞれ混合し、これらを検量線用の試料とする。
【0166】
それぞれの試料について、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにして検量線用の試料のペレットを作製し、PETを分光結晶に用いた際に回折角(2θ)=109.08°に観測されるSi-Kα線の計数率(単位:cps)を測定する。この際、X線発生装置の加速電圧、電流値はそれぞれ、24kV、100mAとする。得られたX線の計数率を縦軸に、各検量線用試料中のSiO添加量を横軸として、一次関数の検量線を得る。
【0167】
次に、分析対象のトナー粒子を、錠剤成型圧縮機を用いて上記のようにしてペレットとし、そのSi-Kα線の計数率を測定する。そして、上記の検量線からトナー粒子中の有機ケイ素重合体の含有量を求める。上記方法により算出した洗浄前のトナー粒子の元素量に対して、洗浄後のトナー粒子の元素量の比率を求め固着率(%)とする。
【0168】
〔外添剤〕
トナー粒子は、外添剤を外添せずにトナーとすることもできるが、流動性、帯電性、クリーニング性などを改良するために、いわゆる外添剤である流動化剤、クリーニング助剤などを添加してトナーとしてもよい。
【0169】
外添剤としては、例えば、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などよりなる無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいは、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などが挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0170】
これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性の向上、環境安定性の向上のために、表面処理が行われていることが好ましい。外添剤のBET比表面積は、10m/g以上450m/g以下であることが好ましい。
【0171】
BET比表面積は、BET法(好ましくはBET多点法)に従って、動的定圧法による低温ガス吸着法により求めることができる。例えば、比表面積測定装置(商品名:ジェミニ2375 Ver.5.0、(株)島津製作所製)を用いて、試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて測定することにより、BET比表面積(m/g)を算出することができる。
【0172】
これらの種々の外添剤の添加量は、その合計が、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.05質量部以上5質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上3質量部以下である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0173】
トナーは、トナー粒子の表面にポジ帯電粒子を有していてもよい。ポジ帯電粒子の個数平均粒子径は、0.10μm以上1.00μm以下であることが好ましい。より好ましくは0.20μm以上0.80μm以下である。
【0174】
この様なポジ帯電粒子を有すると、耐久使用を通して転写効率が良好であることが明らかとなった。当該粒径のポジ帯電粒子であることで、トナー粒子表面で転がり可能であり、感光ドラムと転写ベルトの間で摩擦されてトナーの負帯電が促進され、結果的に転写バイアス印加によるポジ化を抑制しているためと考えられる。本発明のトナーは表面が硬いことが特徴であり、ポジ帯電粒子がトナー粒子表面に固着又は埋没しにくいため、転写効率を高く維持できる。
【0175】
なお、本発明におけるポジ帯電粒子とは日本画像学会から提供される標準キャリア(アニオン性:N-01)と混合撹拌して摩擦帯電させた時に正帯電する粒子である。
【0176】
外添剤の個数平均粒子径の測定は、走査型電子顕微鏡「S-4800」(日立製作所製)を用いて行う。外添剤が外添されたトナーを観察して、最大20万倍に拡大した視野において、ランダムに100個の外添剤の一次粒子の長径を測定してその個数平均粒子径を求める。観察倍率は、外添剤の大きさによって適宜調整する。
【0177】
トナー粒子の表面に、ポジ帯電粒子を存在させる手段としては種々の方法が考えられ、いかなる方法でもよいが、外添により付与する方法が好ましい。トナーのマルテンス硬度が本発明の範囲であれば、ポジ帯電粒子を均一にトナー粒子表面に存在させることが可能であることを見出した。ポジ帯電粒子のトナー粒子に対する固着率は、5%以上75%以下であることが好ましく、5%以上50%以下であることがより好ましい。固着率がこの範囲であれば、トナー粒子及びポジ帯電粒子の摩擦帯電を促進する事によって、転写効率を高く維持することが可能となる。固着率の測定方法は後述する。
【0178】
ポジ帯電粒子の種類としては、ハイドロタルサイト、酸化チタン、及びメラミン樹脂等が好ましい。この中でも特にハイドロタルサイトが好ましい。
【0179】
<ポジ帯電粒子の固着率の測定方法>
有機ケイ素重合体の固着率の測定方法において、測定対象の元素をポジ帯電粒子に含まれる元素とする。例えば、ハイドロタルサイトの場合にはマグネシウムとアルミニウムを測定対象とする。それ以外は同様の方法にてポジ帯電粒子の固着率を測定する。
【0180】
以下、製造したトナーを示す。各材料の「部」は特に断りがない場合、全て質量基準である。なお、以下の説明においてトナーに付した番号1~6は、感光体ドラム1~4、クリーニングブレード1~5と同様、その種類を区別するためのものであり、他の説明や図において付している符号「10」とは異なるものである。
【0181】
[トナー1]
(水系媒体1の調製工程)
反応容器中のイオン交換水1000.0部に、リン酸ナトリウム(ラサ工業社製・12水和物)14.0部を投入し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。
T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、12000rpmにて攪拌しながら、イオン交換水10.0部に9.2部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、水系媒体に10質量%塩酸を投入し、pHを5.0に調整し、水系媒体1を得た。
【0182】
(表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程)
撹拌機、温度計を備えた反応容器に、イオン交換水60.0部を秤量し、10質量%の塩酸を用いてpHを3.0に調整した。これを撹拌しながら加熱し、温度を70℃にした。その後、表層用有機ケイ素化合物であるメチルトリエトキシシラン40.0部を添加して2時間以上撹拌して加水分解を行った。加水分解の終点は目視にて油水が分離せず1層になったことで確認を行い、冷却して表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を得た。
【0183】
(重合性単量体組成物の調製工程)
・スチレン :60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 : 6.5部
前記材料をアトライタ(三井三池化工機株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料分散液を調製した。前記顔料分散液に下記材料を加えた。
・スチレン :20.0部
・n-ブチルアクリレート :20.0部
・架橋剤(ジビニルベンゼン) : 0.3部
・飽和ポリエステル樹脂 : 5.0部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA(2モル付加物)とテレフタル酸との重縮合物(モル比10:12)、ガラス転移温度Tg=68℃、重量平均分子量Mw=10000、分子量分布Mw/Mn=5.12)
・フィッシャートロプシュワックス(融点78℃) : 7.0部
これを65℃に保温し、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0184】
(造粒工程)
水系媒体1の温度を70℃、T.K.ホモミクサーの回転数を12000rpmに保ちながら、水系媒体1中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート9.0部を添加した。そのまま該撹拌装置にて12000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0185】
(重合工程)
造粒工程の後、攪拌機をプロペラ撹拌羽根に換え150rpmで攪拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行ってコア粒子を得た。スラリーの温度を55℃に冷却してpHを測定したところ、pH=5.0だった。55℃で撹拌を継続したまま、表層用有機ケイ素化合物の加水分解液を20.0部添加してトナーの表層形成を開始した。そのまま30分保持した後に、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持し、表層を形成させた。
【0186】
(洗浄、乾燥工程)
重合工程終了後、トナー粒子のスラリーを冷却し、トナー粒子のスラリーに塩酸を加え
pH=1.5以下に調整して1時間撹拌放置してから加圧ろ過器で固液分離し、トナーケーキを得た。これをイオン交換水でリスラリーして再び分散液とした後に、前述のろ過器で固液分離した。リスラリーと固液分離とを、ろ液の電気伝導度が5.0μS/cm以下となるまで繰り返した後に、最終的に固液分離してトナーケーキを得た。
【0187】
得られたトナーケーキは気流乾燥機フラッシュジェットドライヤー(セイシン企業製)にて乾燥を行い、更にコアンダ効果を利用した多分割分級機を用いて微粗粉をカットしてトナー粒子1を得た。乾燥の条件は吹き込み温度90℃、乾燥機出口温度40℃、トナーケーキの供給速度はトナーケーキの含水率に応じて出口温度が40℃から外れない速度に調整した。
【0188】
トナー粒子1の断面TEM観察においてケイ素マッピングを行い、表層にケイ素原子が存在することを確認した。以降のトナー製造例においても、有機ケイ素重合体を含有する表層は同様のケイ素マッピングで表層にケイ素原子が存在することを確認した。本製造例においては、得られたトナー粒子1を外添せずにそのままトナー1として用いた。
【0189】
トナー1について行った評価について、その方法を以下に述べる。
【0190】
<マルテンス硬度の測定>
上記「トナーのマルテンス硬度の測定方法」で述べた方法により測定を行った。
【0191】
<固着率の測定方法>
上記「有機ケイ素重合体の固着率の測定方法」にて述べた方法により測定を行った。
【0192】
[トナー2、トナー3]
(重合工程)における加水分解液を添加する時の条件、及び添加後の保持時間を表7のように変えた以外は、トナー1と同様の方法でトナーを作製した。なお、スラリーのpH調整は塩酸及び水酸化ナトリウム水溶液で行った。得られたトナー2、トナー3の測定結果を表7に示す。
【0193】
[トナー4]
トナー1に対して、表8のように外添を行い、トナー4を作製した。外添の方法は、トナー粒子100部に対し、表8に記載の部数の外添剤をSUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、3000rpmで10分間混合を行った。得られたトナー4の測定結果を表7に示す。
【0194】
[トナー5]
(重合工程)における加水分解液を添加する時の条件、及び添加後の保持時間を表7のように変えた以外は、トナー1と同様の方法でトナー5を作製した。得られたトナーの評価結果を表7に示す。
【0195】
[トナー6]
(表層用有機ケイ素化合物の加水分解工程)は行わなかった。代わりに、表層用有機ケイ素化合物のメチルトリエトキシシラン30部をモノマーのまま(重合性単量体組成物の調製工程)で添加した。
【0196】
(重合工程)では70℃に冷却してpH測定を行った後、加水分解液の添加を行わなかった。70℃で撹拌を継続したまま、水酸化ナトリウム水溶液を用いてスラリーを縮合完結用にpH=9.0に調整して更に300分保持して表層を形成させた。それ以外はトナー1と同様の方法でトナーを作製した。得られたトナー6の評価結果を表7に示す。
【0197】
【表7】
【0198】
【表8】
【0199】
表中、DHT-4A(登録商標)は協和化学工業(株)製である。
【0200】
(実施例)
実施形態2の実施例1~21、比較例1~2として表9に示すようなクリーニングブレード1~5と感光体ドラム1~4の組み合わせを準備した。
【0201】
(実験)
(トルク)
プロセスカートリッジ7の現像剤室18にトナーを100g充填した。同じく、感光体ユニット13に実施例1~21、比較例1~2のクリーニングブレードと感光体ドラムを取り付け、クリーニングブレードの設定角θを20°、侵入量δを1.0mmに設定した。
室温15℃、相対湿度10%Rh環境で、現像ローラ当接状態において、感光体表面速度296mm/s、現像ローラの表面速度425mm/sで回転させながら、帯電ローラ
に-1kV、現像ローラを接地、供給ローラと規制部材に-100Vを印可した。
回転開始から30秒経過後から2秒間の感光体駆動トルクを測定した。評価は以下のように行った。
A:低トルク性良好 0.16N・m以下
B:低トルク効果あり 0.16N・mを超え0.18N・m以下
C:低トルク効果あり 0.18N・mを超え0.20N・m以下
F:低トルク効果が見られない 0.20N・mを超える
評価A、B及びCであったものを低トルク化の効果ありとした。結果を表9「トルク」の列に示す。
【0202】
(トナーのすり抜け)
画像形成装置100により、室温15℃、相対湿度10%Rh環境で、印字率1%の150,000枚の画像形成を行った。画像形成2枚ごとに間欠時間3秒を設けた。
感光体表面速度296mm/s、現像ローラ表面速度425mm/sとし、感光体表面電位-500V、現像ローラの印可電圧-350V、供給ローラの電圧-450V、規制部材の電圧-450Vとした。
150,000枚の画像形成後のトナーのすり抜けを評価した。評価は以下のように行った。
A:感光体表面上目視で汚れなく、画像への影響なし
B:感光体表面上目視でほとんど汚れなく、画像への影響なし
C:感光体表面上目視で軽微なトナーのすり抜けあるが画像への影響なし
F:感光体表面上目視で汚れており、画像への影響もある
画像への影響とは、白画像の記録材搬送方向にトナーすり抜けに起因するスジの発生があるものを影響ありとしている。
結果を表9「トナーすり抜け」の列に示す。画像への影響がないA、B及びCを発明の効果ありとした。
【0203】
【表9】
【0204】
上記の様に、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)を0.02μm以下とし、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)を0.08μm以下とし、クリーニングブレードのダイナミック硬度DHsを0.07以上1.1以下とすることが好適に例示できる。これにより、低いトルクを実現しつつトナーすり抜けのさらなる抑制も可能となる。
これは、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)が0.02以下であることで、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触部の面積が狭くなり、低トルクの効果が得られる。一方、周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)が0.08μm以下であることで、クリーニングブレードと感光体ドラム間にトナー粒径よりも大きな隙間を形成しにくくなる。また、この状態でクリーニングブレードのダイナミック硬度DHsを0.07~1.1とすることで、クリーニングブレードと感光体ドラム間に十分な圧を加えることができ、すり抜けをより抑制することが可能となる。
また、トナーのマルテンス硬度が200MPa以上1100MPa以下に制御された場合、通紙によって発生する感光体ドラム表面の傷を抑制することが可能となり、より長寿命に渡って感光体ドラムの初期からの表面粗さを保持することができるようになる。その結果、より画像形成装置の長寿命化をはかることができる。
【0205】
実施例13では、トナーのマルテンス硬度が高いため、クリーニングブレードのニップ部にトナーが侵入しやすくなり、トナーのすり抜け抑制効果が若干低下した。
実施例14では、トナーのマルテンス硬度が低いため、クリーニングブレードのニップ部にトナーが侵入しにくくなり、トルクの低減効果が若干低下した。
実施例15では、トナーのマルテンス硬度が高いため、クリーニングブレードのニップ部にトナーが侵入しやすくなり、トナーのすり抜け抑制効果が若干低下した。
実施例16では、トナーのマルテンス硬度が低いため、クリーニングブレードのニップ部にトナーが侵入しにくくなり、トルクの低減効果が若干低下した。
実施例17では、トナーのマルテンス硬度が高いため、クリーニングブレードのニップ部にトナーが侵入しやすくなり、トナーのすり抜け抑制効果が若干低下した。
実施例18では、トナーのマルテンス硬度が低いため、クリーニングブレードのニップ部にトナーが侵入しにくくなり、トルクの低減効果が若干低下した。
実施例19では、クリーニングブレードのダイナミック硬度DHsが低いため、クリーニングブレードと感光体ドラムのニップ部において、面圧が低下しやすく、ニップ部にトナーが侵入し、トナーのすり抜けが若干発生した。
実施例20では、クリーニングブレードのダイナミック硬度DHsが高いため、クリーニングブレードと感光体ドラムのニップ部において、面圧が上昇し、トルクの低減効果が若干低下した。
実施例21では、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)が大きく、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触面積が十分狭くならず、トルクの低減効果が若干低下した。
比較例1では、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の下にある突出谷部の平均深さ(Rvk)が大きく、クリーニングブレードと感光体ドラムのニップの隙間が発生し、トナーのすり抜けを抑制することができなかった。
比較例2では、感光体ドラムの周面の粗さ曲線のコア部の上にある突出山部の平均高さ(Rpk)が大きく、クリーニングブレードと感光体ドラムの接触面積が十分狭くならず、トルクを十分低くすることができなかった。また、(Rpk+Rk+Rvk)が0.25と大きい為、クリーニングブレードと感光体ドラムのニップの隙間が大きく、トナーのすり抜けを抑制することができなかった。
【0206】
以上述べたように、本実施形態によることにより、電子写真感光体の周面の粗さ曲線に係る変数を制御することにより、感光体ドラムの駆動トルクを低減した状態で、クリーニングブレードからのトナーすり抜けを抑制することができる。その結果、帯電部材の汚染による画像の問題を発生させない画像形成装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0207】
1:感光体ドラム、2:帯電ローラ、3:現像ユニット、4:現像ローラ、5:供給ローラ、6:現像剤規制ブレード、7:プロセスカートリッジ、8:クリーニングブレード、9:トナー回収容器、10:現像剤、12:記録材、13:感光体ユニット、18a:現像室、18b:現像剤収容室、18c:開口部、22:撹拌シート41:円筒状支持体、45:保護層、100:画像形成装置、441:電荷発生層、442:電荷輸送層
図1
図2
図3
図4
図5
図6