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特許7434633情報処理装置、情報処理システム、入力デバイスおよび制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、入力デバイスおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/01 20060101AFI20240213BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
G06F3/01 560
G06F3/041 600
G06F3/041 480
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023046472
(22)【出願日】2023-03-23
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(72)【発明者】
【氏名】吉冨 圭一
(72)【発明者】
【氏名】山▲ざき▼ 充弘
【審査官】星野 裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061711(JP,A)
【文献】特開平07-141094(JP,A)
【文献】特開2022-067616(JP,A)
【文献】特表2016-528654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デバイスに作用する圧力と前記入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得する入力情報取得部と、
前記入力情報に基づいて、振動源から取得される振動源信号の振動特性を制御する振動制御部と、を備え、
前記振動制御部は、
前記移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いて前記振動特性を制御し、
前記入力デバイスは、駆動信号に基づいて振動する振動発生器を備え、
前記駆動信号は、前記振動制御部により制御された振動特性を有する振動信号を含む 情報処理システム。
【請求項2】
前記振動源信号の振動特性を制御して得られる振動信号と音声信号を合成して駆動信号を生成するミキサを備える
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記入力情報に基づいて、音源から取得される音源信号の音響特性を前記速度を遅延させずに制御する音声制御部を備え、
前記ミキサは、前記振動信号と前記音源信号の音響特性を制御して得られる音声信号を合成して前記駆動信号を生成する
請求項2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記振動信号の振動特性は、振幅である
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項5】
入力デバイスに作用する圧力と前記入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得する入力情報取得部と、
前記入力情報に基づいて、振動源から取得される振動源信号の振動特性を制御して振動信号を生成する振動制御部と、
前記振動信号を含む駆動信号を前記入力デバイスに出力する通信部と、を備え、
前記振動制御部は、
前記移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いて前記振動特性を制御する
情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置と入力デバイスを備える情報処理システムにおける制御方法であって、 前記入力デバイスは、振動信号を含む駆動信号に基づいて振動する振動発生器を備え、 前記情報処理装置または前記入力デバイスは、
前記入力デバイスに作用する圧力と前記入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得し、
前記入力情報に基づいて、振動源から取得される振動源信号の振動特性を制御して振動信号を生成し、
前記振動特性の制御において、前記移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いる 制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、情報処理装置、情報処理システム、入力デバイスおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハプティックペン(haptic pen)とは、触覚フィードバック機能(haptics feedback)を有するデジタルペンである。デジタルペンは、手書き文字、描画など、各種の情報機器への表示および記録に用いられる入力デバイスである。デジタルペンは、電子ペン、スマートペン、スタイラス、などとも呼ばれる。触覚フィードバックは、文字等を表示するタッチパネルへの接触に応じて振動体を振動させることにより実現される。
【0003】
例えば、特許文献1には、ストロークデータの再生に応じた触覚フィードバックを生成する手書きデータ生成装置について記載されている。当該装置は、手書き入力に応じて生成されるストロークデータの少なくとも一部に対して触覚フィードバックを関連付け、ストロークデータおよび触覚フィードバックを示すハプティックスデータを含むデジタルインクを生成するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-192213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハプティックペンでは、筆記動作における接触物との摩擦感を表現するため、筆圧もしくは筆記速度に基づいて振動量を制御することがある。摩擦感は、表面が滑らかなパネルやペン先のように、摩擦係数が低い場合でも表現することができる。しかしながら、ペン自体の重さまでは、考慮されていなかった。例えば、木製の鉛筆のような軽さや、高級万年筆のような重さは、振動量だけでは表現されない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は上記の課題を解決するためになされたものであり、本願の一態様に係る情報処理システムは、入力デバイスに作用する圧力と前記入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得する入力情報取得部と、前記入力情報に基づいて、振動源から取得される振動源信号の振動特性を制御する振動制御部と、を備え、前記振動制御部は、前記移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いて前記振動特性を制御し、前記入力デバイスは、駆動信号に基づいて振動する振動発生器を備え、前記駆動信号は、前記振動制御部により制御された振動特性を有する振動信号を含む。
【0007】
上記の情報処理システムにおいて、前記振動源信号の振動特性を制御して得られる振動信号と音声信号を合成して駆動信号を生成するミキサを備えてもよい。
【0008】
上記の情報処理システムにおいて、前記入力情報に基づいて、音源から取得される音源信号の音響特性を、前記圧力を遅延させずに制御する音声制御部を備え、前記ミキサは、前記振動信号と前記音源信号の音響特性を制御して得られる音声信号を合成して前記駆動信号を生成してもよい。
【0009】
上記の情報処理システムにおいて、前記振動信号の振動特性は、振幅であってもよい。
【0010】
上記の情報処理システムにおいて、前記情報処理装置は、周囲の音を収音する収音部を備え、前記コントローラは、前記収音部が収音する音の強度に基づいて前記音声成分の強度を定めてもよい。
【0011】
本願の第2態様に係る情報処理装置は、入力デバイスに作用する圧力と前記入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得する入力情報取得部と、前記入力情報に基づいて、振動源から取得される振動源信号の振動特性を制御して振動信号を生成する振動制御部と、前記振動信号を含む駆動信号を前記入力デバイスに出力する通信部と、を備え、前記振動制御部は、前記移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いて前記振動特性を制御する。
【0013】
本願の第態様に係る制御方法は、情報処理装置と入力デバイスを備える情報処理システムにおける制御方法であって、前記入力デバイスは、振動信号を含む駆動信号に基づいて振動する振動発生器を備え、前記情報処理装置または前記入力デバイスは、前記入力デバイスに作用する圧力と前記入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得し、前記入力情報に基づいて、振動源から取得される振動源信号の振動特性を制御して振動信号を生成し、前記振動特性の制御において、前記移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いる。
【発明の効果】
【0014】
本願の実施形態によれば、入力デバイスの重みを表現して、使用感を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る情報処理システムの基本構成例を示す概略ブロック図である。
図2】第1実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成例を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る情報処理システムの機能構成例を示すブロック図である。
図4】比較例における入力デバイスの振幅変化を例示する説明図である。
図5】第1実施形態における入力デバイスの振幅変化を例示する説明図である。
図6】第2実施形態に係る情報処理システムの概要構成例を示す概略ブロック図である。
図7】第2実施形態に係る情報処理システムの機能構成例を示すブロック図である。
図8】第1変形例に係る機能構成例を示すブロック図である。
図9】第2変形例に係る機能構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、本願の実施形態について、図面を参照して説明する。まず、第1実施形態に係る情報処理システムS1の概要について説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理システムS1の基本構成例を示す概略ブロック図である。情報処理システムS1は、情報処理装置1と入力デバイス30を備える。入力デバイス30は、触覚提示機能を有するデジタルペンである。デジタルペンは、ペン形状を有する操作媒体であり、筆記デバイスとしての機能を有する。本願では、デジタルペンを、単に「ペン」と呼ぶことがある。
情報処理装置1には、タッチセンサ22が備わる。タッチセンサ22は、各種の物体との接触により生じる圧力分布を検出する圧力センサを備える。検出される圧力分布は、入力デバイス30に作用する圧力を示す。圧力センサは、静電容量方式、抵抗膜方式、などいずれの方式に基づくものであってもよい。情報処理装置1は、入力デバイス30と無線で各種のデータを出力可能に接続する。
【0017】
情報処理装置1は、入力情報取得部101、振動制御部110、および、振動源62を備える。
入力情報取得部101は、タッチセンサ22から入力される検出情報に基づいて入力デバイス30の使用状態を示す入力情報を取得する。入力情報取得部101は、圧力検出部101pと移動速度検出部101vとを備える。
圧力検出部101pは、入力デバイス30から入力される検出情報を所定周期ごとに取得し(サンプリング)、検出情報に示される圧力分布をなす位置ごとの圧力の代表値(例えば、最大値)を圧力として検出する。圧力検出部101pは、検出した圧力を振動制御部110に出力する。
【0018】
移動速度検出部101vは、入力デバイス30から入力される検出情報を所定周期ごとに取得し、検出情報に示される圧力分布から入力デバイス30との接触位置の代表点(例えば、重心、圧力の代表値を)をデバイスとの接触位置として特定する。移動速度検出部101vは、最新のサンプル(以下、「現サンプル」と呼ぶことがある)の直前のサンプル(以下、「前サンプル」と呼ぶことがある)における接触位置から現サンプルにおける接触位置までの変位とサンプリング周期に基づいて移動速度を算出する。移動速度検出部101vは、算出した移動速度を振動制御部110に出力する。
【0019】
振動制御部110は、入力情報取得部101から入力される入力情報に基づいて振動源62から出力される振動源信号の振動特性を制御する。振動制御部110は、遅延部110dと利得設定部110gとを備える。
遅延部110dは、移動速度検出部101vから入力される移動速度を所定の遅延量だけ遅延させる。遅延量は、典型的には、20~50ms程度である。遅延部110dは、遅延させた移動速度を利得設定部110gに出力する。
【0020】
利得設定部110gには、圧力検出部101pから圧力が入力され、遅延部110dから移動速度が入力される。利得設定部110gは、利得設定情報を用いて、入力される圧力と移動速度に基づいて振動源信号に対する利得を定める。利得設定部110gには、圧力ならびに移動速度と利得との関係を示す利得設定情報を予め設定しておく。利得設定情報は、情報テーブル、演算手順のいずれの形式を有していてもよい。利得設定情報には、例えば、圧力が高いほど、または、移動速度が高いほど、より大きい利得との関係を与える情報が示される。利得設定部110gは、定めた利得をアンプ34に出力する。
振動源62は、サンプルごとの振幅の時系列を示す振動信号を生成し、生成した振動信号をアンプ34に出力する。
【0021】
入力デバイス30は、アンプ34と振動発生器35を備える。
アンプ34は、振動源62から入力される振動信号に対して、利得設定部110gから入力される利得に従って振動信号の振幅を増幅する。アンプ34vは、振幅を増幅して得られる振動信号を駆動信号として振動発生器35に供給する。
振動発生器35は、アンプ34から供給される駆動信号に従って振動を発生させる。振動発生器35は、アクチュエータを含んで構成される。
【0022】
ここで、図4に例示されるように筆記もしくは描画(本願では、「筆記等」と総称することがある)により入力デバイス30を操作する場合を仮定する。筆記等に係る動作では、入力デバイス30の位置が一定の空間内で反復して折り返される。折り返し点または、その近傍では、周囲よりも移動速度が低下しがちである。図4の例では、当初、入力デバイス30が左方から右方に向け動作し、その後、折り返しを経て、右方から左方に動作する。入力デバイス30の速度は、折り返し点に向かう段階で減速し、折り返し点を超えると加速する。入力デバイス30の塗りつぶしの濃淡は移動速度を示す。濃い塗りつぶしほど、移動速度が高いことを示す。比較例では、移動速度が高くなるほど単に大きくなるように振動信号の振幅を定めていた。かかる状況では、折り返し点において入力デバイス30に生じる振動の強度が極小となる。
【0023】
これに対し、本実施形態では、入力デバイス30の移動よりも遅延した移動速度に応じて振動信号の振幅が定まる。図5に例示されるように、入力デバイス30が折り返し点を通過する段階では、現実の移動速度より高い移動速度に応じた強度の高い振動が生じる。入力デバイス30を操作するユーザは、本来生じるはずがない強度の高い振動により重量感を錯覚する。入力デバイス30が折り返し点を通過した後、入力デバイス30が加速するのに対し、減速に伴い振幅が減少する。ユーザは、移動速度が高い段階では、入力デバイス30の移動に対し注意を払い、振幅強度の低下に気づきにくくなりがちである。よって、ユーザは入力デバイス30の操作全体として入力デバイス30の重量感を感知することができる。
【0024】
次に、本実施形態に係る情報処理システムS1のハードウェア構成例について説明する。図2は、本実施形態に係る情報処理システムS1のハードウェア構成例を示すブロック図である。情報処理システムS1は、情報処理装置1と、入力デバイス30とを備える。図示される情報処理装置1は、コンピュータシステムを備える情報端末装置として実現される。情報処理装置1は、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、タブレット端末装置などの汎用の情報機器として実現されてもよいし、ハンドヘルド端末装置、キオスク端末装などの専用の情報機器として実現されてもよい。情報処理装置1は、プロセッサ11と、メインメモリ12と、フラッシュメモリ13と、タッチスクリーン20と、オーディオシステム24と、マイクロホン25と、スピーカ26と、ベースバンドチップ27と、第2通信部28と、無線通信部29とを備える。
【0025】
プロセッサ11は、情報処理装置1全体の機能を制御する。プロセッサ11として、例えば、1個以上のCPU(Central Processing Unit)が用いられる。プロセッサ11は、所定のプログラムを実行し、メインメモリ12と、その他のハードウェアと協働し、制御部10(図3)の機能を奏するコンピュータシステムを構成する。後述するように、制御部10は、入力情報取得部101と振動制御部110(図1図3)を備える。
【0026】
メインメモリ12は、プロセッサ11の作業領域、即ち、実行プログラム、各種設定データの読み込み領域、プログラムの実行により取得した処理データの書き込み領域として利用される書き込み可能メモリである。メインメモリ12は、例えば、複数個のDRAM(Dynamic Random Access Memory)チップを含んで構成される。実行プログラムには、OS、周辺機器等を制御するための各種デバイスドライバ、各種サービス/ユーティリティ、アプリケーションプログラム(本願では、「アプリ」と呼ぶことがある)、などが含まれる。
【0027】
フラッシュメモリ13には、予め各種のプログラムならびに各種のデータを記憶させておく。
表示部21は、プロセッサ11から出力される表示データに基づく各種の表示画面を表示する。表示部21は、例えば、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのいずれであってもよい。
【0028】
タッチセンサ22は、接触検出部221と、デバイス検出部222とを備える。
接触検出部221は、表示画面に接触した物体(本願では、主に入力デバイス30)と、その接触位置を検出する。接触検出部221は、表示画面に接触した物体の接触圧力を検出する。接触検出部221は、例えば、静電容量圧力センサを含んで構成される。接触検出部221は、接触した物体の傾き、即ち、ペン角度を検出してもよい。接触検出部221が3軸の圧力センサである場合には、個々の軸方向の圧力に対する方向余弦を用いてペン角度を特定することができる。
【0029】
デバイス検出部222は、接触には至っていないが、自部に接近した入力デバイス30とその位置を接近位置として検出してもよい。デバイス検出部222は、例えば、電磁誘導センサを備える。電磁誘導センサは、接近により、入力デバイス30の共振回路LC1(後述)に生じる交流の誘導磁場を検出する。電磁誘導センサは、その共振周波数における検出した磁場の大きさが一定値を超える位置が存在するか否かにより、入力デバイス30の接近の有無を検出することができる。電磁誘導センサは、検出した磁場の大きさが一定値を超える位置を入力デバイス30の接近位置として特定することができる。
【0030】
オーディオシステム24は、音声信号に対する処理を実行可能とする。音声信号に対する処理には、入力、出力、記録、再生、符号化、および、復号などが含まれる。オーディオシステム24は、例えば、オーディオIC(Integrated Circuit)を備える。オーディオシステム24には、マイクロホン25とスピーカ26が接続されている。オーディオシステム24には、プロセッサ11、マイクロホン25またはベースバンドチップ27から音声信号が入力されうる。オーディオシステム24は、自部に記録した音声信号を読み出す。オーディオシステム24は、取得した音声信号をスピーカ26またはプロセッサ11に出力することができる。プロセッサ11に出力された音声信号は、無線通信部29を経由して入力デバイス30に出力されうる。
【0031】
マイクロホン25は、自部に到来する音を収音し、収音された音を表す音声信号を生成する。マイクロホン25は、生成した音声信号をオーディオシステム24に出力する。
スピーカ26は、オーディオシステム24から入力される音声信号に基づいて音を提示する。
【0032】
ベースバンドチップ27は、第2通信部28を用いた通信を制御するための専用ICである。ベースバンドチップ27は、例えば、4G(第4世代無線通信システム)、5G(第5世代無線通信システム)などの公衆無線通信システム、IEEE802.11に規定された構内無線通信ネットワークなどを用いた通信を実現する。ベースバンドチップ27は、プロセッサ11からの制御に従い、第2通信部28を用いて通信ネットワークを経由した他の機器と各種のデータを送受信可能に接続し、各種のデータを送受信する。
【0033】
第2通信部28は、無線通信ネットワークと接続するための無線通信モジュールである。第2通信部28は、電波を送受信するアンテナを備える。
無線通信部29は、入力デバイス30と無線データを送受信するための無線通信モジュールである。無線通信部29は、通信方式として、例えば、IEEE802.15.1に規定された無線PAN(Personal Area Network)方式を用いることができる。
【0034】
入力デバイス30は、径よりも長さの方が大きい細長の形状を有する操作媒体である。入力デバイス30は、無線通信部31と、MCU32と、DAC33と、アンプ34と、振動発生器35と、共振回路LC1とを備える。
無線通信部31は、情報処理装置1の無線通信部29と無線データを送受信するための無線通信モジュールである。
【0035】
MCU(Micro Controller Unit)32は、入力デバイス30の機能を統括的に制御する。MCU32は、プロセッサと、ROMやRAMなどのメモリと、各種の入出力インタフェースを備える。MCU32は、情報処理装置1とは独立に稼働する。
MCU32には、情報処理装置1から無線通信部31を用いて振動源信号と振動制御情報が入力される。振動制御情報には、振動制御部110において設定された利得を示す情報が含まれる。MCU32は、振動制御情報で通知される利得をアンプ34に設定する。
MCU32は、自部に入力された振動源信号をDAC33に出力する。
【0036】
DAC(Digital-to-Analog Converter)33は、MCU32から入力されるディジタルの振動源信号をアナログの振動源信号に変換する。DAC33は、変換されたアナログの振動源信号をアンプ34に出力する。
アンプ(amplifier)34は、DAC33から入力される振動源信号の振幅を調整し、振幅を調整して得られる振動信号を駆動信号として振動発生器35に出力する。
振動発生器35は、アンプ34から入力される駆動信号に従って振動を発生するアクチュエータである。振動発生器35は、例えば、ピエゾ素子などの圧電振動子を備える。
【0037】
共振回路LC1は、一定の共振周波数で共振する電流を生ずる電気回路である。共振回路LC1は、例えば、コイルとキャパシタを直列に接続して構成される。共振回路LC1は、自身が発生した交流電流により、その共振周波数で極性が変動する磁場を発生させる。発生した磁場によりタッチセンサ22のデバイス検出部222により入力デバイス30の接近が検出される。共振回路LC1は、DAC33、アンプ34および振動発生器35から電気的に絶縁される。
【0038】
次に、本実施形態に係る情報処理システムS1の機能構成例について説明する。図3は、本実施形態に係る情報処理システムS1の機能構成例を示すブロック図である。情報処理システムS1は、情報処理装置1と、入力デバイス30とを備える。
情報処理装置1は、制御部10と、タッチセンサ22と、無線通信部29とを備える。タッチセンサ22は、入力デバイス30の入力動作として、表示画面への接触または一定距離内への接近(ホバリング)を検出するとともに、その位置を特定する。タッチセンサ22は、検出した接触または接近、および、その位置を示す検出情報を生成し、生成した検出情報を制御部10に出力する。タッチセンサ22は、入力デバイス30と接触するとき、接触による圧力分布を検出し、検出した圧力分布の情報を検出情報に含めて制御部10に出力する。
【0039】
制御部10は、情報処理装置1の機能全体を制御する。制御部10は、表示処理部102と、入力情報取得部101と、振動制御部110と、振動源62と、を備える。
入力情報取得部101は、上記のように、タッチセンサ22から入力される検出情報に基づいて入力デバイス30の使用状態を示す入力情報を取得する。入力情報取得部101は、圧力検出部101pと移動速度検出部101vの機能を有する。圧力検出部101pと移動速度検出部101vの機能に関しては、特に断らない限り図1の説明を援用する。移動速度検出部101vは、タッチセンサ22から入力される検出情報に基づいてサンプリング周期ごとに取得される接触位置を表示処理部102に通知する。
表示処理部102は、入力情報取得部101から入力されるサンプリング周期ごとの接触位置からなる接触位置の時系列に基づいて移動軌跡を生成する。表示処理部102は、生成した移動軌跡を示す表示データをタッチスクリーン20の表示部21に出力する。なお、入力情報取得部101の機能は、例えば、タッチセンサ22のデバイスドライバを実行して実現される。
【0040】
振動制御部110は、上記のように、入力情報取得部101から入力される入力情報に基づいて振動源62から出力される振動源信号の振幅を制御する。振動制御部110は、遅延部110dと利得設定部110gの機能を有する。遅延部110dと利得設定部110gの機能に関しては、特に断らない限り図1の説明を援用する。利得設定部110gは、圧力と遅延した移動速度に基づいて振動信号に対する利得を定める。利得設定部110gは、定めた利得を示す振動制御情報を、無線通信部29を用いて入力デバイス30に無線で出力する。
【0041】
振動源62は、サンプリング時刻ごとの振幅の時系列を示す振動源信号を生成し、無線通信部29を用いて生成した振動源信号を入力デバイス30に出力する。
無線通信部29は、所定の通信方式を用いて、入力デバイス30と無線で各種のデータを送受信する。
【0042】
次に、入力デバイス30の機能構成例について説明する。入力デバイス30は、無線通信部31と、振動発生器35と、デバイス制御部50と、を備える。
無線通信部31は、所定の通信方式を用いて、情報処理装置1と無線で各種のデータを送受信する。
デバイス制御部50は、入力デバイス30の機能を制御する。デバイス制御部50には、例えば、無線通信部31を用いて振動源信号と振動制御情報が情報処理装置1から入力される。デバイス制御部50は、振動源信号の振幅を振動制御情報で指示される利得に基づいて調整し、振幅が調整された振動信号を駆動信号として振動発生器35に出力する。デバイス制御部50の機能は、例えば、MCU32が所定のファームウェアを実行し、DAC33、アンプ34、その他のハードウェアと協働して実現される。
振動発生器35は、デバイス制御部50から供給される駆動信号に従って振動する。振動発生器35に生ずる振動は、入力デバイス30の他の部分を振動させる。
【0043】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について、第1実施形態との差異点を主として説明する。第1実施形態と共通の機能、構成については、共通の符号を付し、特に断らない限り、その説明を援用する。第1実施形態では、振動成分が含まれる駆動信号に従って振動発生器35が振動する場合を例にした。これに対し、本実施形態では、振動発生器35は振動成分と音声成分がさらに含まれる駆動信号に従って振動する場合を例示する。音声成分による入力デバイス30が振動し、周囲の空気を振動させて音声を発生させる。
【0044】
本願では、振動成分は、約400Hz以下の低域成分が主となるのに対し、音声成分は、約200Hz以上の高域成分が主となる。一般に人間の聴覚特性によれば、500Hz-2kHz帯域に対する感度が他の周波数帯域に対する感度より高く、より低い周波数帯域では、感度が低下する。人間の触覚特性によれば、10-100Hz帯域に対する感度が他の周波数帯域に対する感度より高い周波数帯域では感度が低下し、500Hz以上の周波数では、ほとんど振動が知覚されない。
【0045】
次に、本実施形態に係る情報処理システムS1の概要について説明する。図6は、本実施形態に係る情報処理システムS1の基本構成例を示す概略ブロック図である。情報処理装置1は、入力情報取得部101、振動制御部110、および、振動源62の他、音声制御部112と音源64を備える。入力デバイス30は、アンプ34vと振動発生器35の他、アンプ34aとミキサ37を備える。
【0046】
音声制御部112は、入力情報取得部101から入力される入力情報に基づいて、音源信号の音響特性を制御する。音声制御部112には、圧力検出部101pから圧力が入力され、移動速度検出部101vから移動速度が入力される。音声制御部112は、音声特性設定情報を用いて、入力される圧力と移動速度に基づいて音源信号に対する音響特性の例として、利得を定める。音声制御部112には、圧力ならびに移動速度と利得との関係を示す音響特性設定情報を予め設定しておく。音響特性設定情報は、情報テーブル、演算手順のいずれの形式を有していてもよい。音響特性設定情報には、例えば、圧力が高いほど、または、移動速度が高いほど、より大きい利得との関係を与える情報が示される。音声制御部112は、定めた利得をアンプ34aに出力する。音声制御部112は、振動制御部110とは異なり、利得を定める際、移動速度検出部101vから入力される移動速度を遅延せずに参照する。
【0047】
音源64は、サンプルごとの音声の振幅の時系列を示す音源信号を生成し、生成し音源信号をアンプ34aに出力する。
アンプ34aは、音源64から入力される音源信号の振幅を、音声制御部112により設定される利得に基づいて調整し、得られた音声信号をミキサ37に出力する。
【0048】
本実施形態に係るアンプ34vの機能は、第1実施形態に係るアンプ34の機能に相当する。即ち、アンプ34vは、振動源62から入力される振動源信号の振幅を調整して得られる振動信号をミキサ37に出力する。
ミキサ37は、アンプ34aから入力される音声信号とアンプ34vから入力される振動信号とを加算(ミキシング)する。ミキサ37は、加算して得られる駆動信号を振動発生器35に供給する。
【0049】
次に、本実施形態に係る情報処理システムS1の機能構成例について説明する。図7は、本実施形態に係る情報処理システムS1の機能構成例を示すブロック図である。情報処理システムS1において、情報処理装置1の制御部10は入力情報取得部101、表示処理部102、振動制御部110および振動源62の他、振動制御部110と音源64を備える。入力デバイス30のデバイス制御部50は、アンプ34v、34aとミキサ37の機能を有する(図示せず)。
【0050】
上記の構成により、入力デバイス30の現実の移動速度よりも遅れた移動速度に対応する強度を有する振動が生じる。他方、入力デバイス30において、移動速度に対応する音量を有する音声が発生する、よって、音声に対する違和感をもたらさずに、振動による重量感を入力デバイス30のユーザに与えることができる。
【0051】
<変形例>
上記の実施形態は、変形して実現されてもよい。図8に例示されるように、制御部10は、アンプ66とミキサ68を備えてもよい。アンプ66は、アンプ34v、34aと同様の機能を有する。
即ち、アンプ66は、振動源62から入力される振動源信号の振幅を、振動制御部110により設定される利得に従って調整し、得られる振動信号をミキサ68に出力する。アンプ66は、音源64から入力される音源信号の振幅を、音声制御部112により設定される利得に従って調整し、得られる音声信号をミキサ68に出力する。
ミキサ68は、アンプ66から入力される振動信号と音声信号を加算して駆動信号を生成する。ミキサ68は、無線通信部29を用いて生成した駆動信号を入力デバイス30に出力する。
【0052】
入力デバイス30のデバイス制御部50は、無線通信部31を用いて情報処理装置1から入力される駆動信号を振動発生器35に供給する。振動発生器35は、デバイス制御部50から入力される駆動信号に従って振動を発生する。
【0053】
入力デバイス30では、アンプ34v、34aおよびミキサ37の機能が省略されてもよい。また、入力デバイス30から音声を提示しない場合には、情報処理装置1において音源64およびミキサ68が省略されてもよい。その場合、アンプ66において振幅が調整された振動信号が入力デバイス30に出力される。
【0054】
上記の説明では、情報処理装置1が、振動制御部110と振動源62の機能を備える場合を主としたが、これには限られない。入力デバイス30が、振動制御部110と振動源62と同様の機能を備え、これらが情報処理装置1において省略されてもよい。図9の例では、入力デバイス30のデバイス制御部50は、振動制御部510と振動源562を備える。振動制御部510と振動源562は、それぞれ振動制御部110と振動源62と同様の機能を備える。
【0055】
入力情報取得部101は、取得した入力情報を入力デバイス30に無線通信部29を用いて出力する。
入力デバイス30の振動制御部510は、情報処理装置1から無線通信部31を用いて入力される入力情報に基づいて振動源562から出力される振動源信号の振動特性を制御する。振動制御部510は、振動特性を制御して得られる振動信号を駆動信号として振動発生器35に供給する。
【0056】
デバイス制御部50は、さらに音源、音声制御部とミキサを備えてもよい(図示せず)。音声制御部は、情報処理装置1から入力される入力情報に基づいて音源から出力される音源信号の音響特性を制御する。音声制御部は、音響特性を制御して得られる音声信号をミキサに出力する。また、振動制御部510は、振動源信号の振動特性を制御して得られる振動信号をミキサに出力する。ミキサは、振動制御部510から入力される振動信号と音声制御部から入力される音声信号を加算して駆動信号を生成する。ミキサは、生成した駆動信号を振動発生器35に出力する。
【0057】
なお、上記の説明では、音源信号の音響特性を入力情報に基づいて制御する場合を主としたが、これには限られない。音響特性が入力情報に基づいて制御されずに、音源信号をそのまま音声信号として振動信号と加算して得られる駆動信号が振動発生器35に供給されてもよい。入力情報に基づく制御の要否は、音源の種類により予め設定されてもよい。音源の種類が、筆記により生じる動作音である場合には、入力情報に基づく制御が行われてもよい。かかる動作音は、物理的な筆記具と筆記媒体との摩擦音、打撃音、その他、接触により生ずる音を模擬したものであってもよい。物理的な筆記具として、ペン、鉛筆、毛筆、チョークなど、筆記媒体として、紙、プラスチックシート、黒板など、いずれが適用されてもよい。
その他の種類の音源、例えば、発話音声、音楽、筆記等によらない物音などに対しては、入力情報に基づく音響特性の制御を不要としてもよい。
【0058】
以上に説明したように、上記の情報処理システムS1は、入力デバイス30に作用する圧力と入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得する入力情報取得部101と、入力情報に基づいて、振動源62から取得される振動源信号の振動特性を制御する振動制御部110と、を備える。振動制御部110は、移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いて振動源信号の振動特性を制御し、入力デバイス30は、駆動信号に基づいて振動する振動発生器35を備え、駆動信号は、振動制御部110により制御された振動特性を有する振動信号を含む。
【0059】
この構成によれば、入力デバイス30の移動よりも遅延した移動速度に応じて振動信号の振幅が制御される。操作により入力デバイス30の位置の折り返しにより、移動速度が低下すると、より高い移動速度に応じた強度の高い振動が生じる。そのため、入力デバイス30を操作するユーザは、強度の高い振動により重量感を知覚することができる。
【0060】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。上述の実施形態において説明した各構成は、任意に組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0061】
S1…情報処理システム、1…情報処理装置、10…制御部、11…プロセッサ、12…メインメモリ、13…フラッシュメモリ、20…タッチスクリーン、21…表示部、22…タッチセンサ、24…オーディオシステム、25…マイクロホン、26…スピーカ、27…ベースバンドチップ、28…第2通信部、29、31…無線通信部、30…入力デバイス、32…MCU、33…DAC、34、34a、34v、66…アンプ、35…振動発生器、37、68…ミキサ、40…記憶部、50…デバイス制御部、55…振動部、62、562…振動源、64…音源、101…入力情報取得部、101p…圧力検出部、101v…移動速度検出部、102…表示処理部、103…音声設定部、104…音声処理部、110、510…振動制御部、110d…遅延部、110g…利得設定部、221…接触検出部、222…デバイス検出部
【要約】
【課題】入力デバイスの重みを表現して、使用感を向上する。
【解決手段】入力情報取得部は、入力デバイスに作用する圧力と入力デバイスの移動状態を示す入力情報を取得し、振動制御部は入力情報に基づいて振動源から取得される振動源信号の振動特性を制御し、移動状態を示す速度を遅延させた遅延速度を用いて振動特性を制御し、入力デバイスは、駆動信号に基づいて振動する振動発生器を備え、駆動信号は振動制御部により制御された振動特性を有する振動信号を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9