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特許7434646インタンク式キャニスタ点検装置、及び、インタンク式キャニスタ点検方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】インタンク式キャニスタ点検装置、及び、インタンク式キャニスタ点検方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20240213BHJP
   B60K 15/035 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
F02M25/08 311F
F02M25/08 311H
B60K15/035 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023078009
(22)【出願日】2023-05-10
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501013880
【氏名又は名称】神奈川トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100172502
【弁理士】
【氏名又は名称】黒瀧 眞輔
(72)【発明者】
【氏名】小川 英夫
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-071198(JP,A)
【文献】特開2005-023851(JP,A)
【文献】実開昭59-022914(JP,U)
【文献】特開2014-066167(JP,A)
【文献】特開平09-195861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
B60K 15/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の燃料タンク内に設置されたキャニスタを点検するインタンク式キャニスタ点検装置であって、
前記キャニスタが備える大気ポート又はパージポートの一方に接続された配管部の一端側に前記キャニスタ点検装置を接続するポート接続部と、
前記ポート接続部を介して前記大気ポート又は前記パージポートからの通気によって警笛音を発する警笛部と、
前記大気ポート又は前記パージポートからの通気を遮断又は開通させる開閉弁部と、
を備え、
前記開閉弁部により前記通気を開通させた状態で、前記大気ポート又はパージポートの他方に接続された配管部から前記キャニスタに送気して、前記警笛音の有無により前記キャニスタ及び前記配管部の点検を行い、
前記開閉弁部により前記通気を遮断した状態で、前記大気ポート又はパージポートの他方に接続された配管部から前記キャニスタに送気及び前記キャニスタから吸気して、前記キャニスタが備えるチェックバルブの点検を行う
ことを特徴とする、インタンク式キャニスタ点検装置。
【請求項2】
前記インタンク式キャニスタ点検装置が、さらに、前記大気ポート又はパージポートの他方に一端側が接続された配管部の他端側に接続される圧力計部を備え、
前記送気及び吸気した場合の前記圧力計部が検出する圧力により前記チェックバルブの点検を行う
ことを特徴とする、請求項1記載のインタンク式キャニスタ点検装置。
【請求項3】
前記インタンク式キャニスタ点検装置が、さらに、前記圧力計部に接続されるシリンジ部を備え、
前記シリンジ部を操作することにより、前記送気及び吸気を行う
ことを特徴とする、請求項2記載のインタンク式キャニスタ点検装置。
【請求項4】
前記インタンク式キャニスタ点検装置が、さらに前記開閉弁部を無線通信により開閉する開閉弁操作部を備え、
前記開閉弁部が、前記開閉弁操作部が送信する所定の信号を受信して前記通気を遮断又は開通させる
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のインタンク式キャニスタ点検装置。
【請求項5】
車両の燃料タンク内に設置されたキャニスタを点検するインタンク式キャニスタ点検方法であって、
前記キャニスタが備える大気ポート又はパージポートの一方に一端側が接続された配管部の他端側に、無線通信により開閉可能な開閉弁部を介して警笛部を設置するとともに、前記大気ポートまたはパージポートの他方に一端側が接続された配管部の他端側に圧力計部を介して送気及び吸気が可能なシリンジ部を設置し、
前記開閉弁部を開通した状態で前記シリンジ部により前記キャニスタに送気して、前記警笛部の警笛音の有無により前記キャニスタ及び配管部の点検を行う行程と、
前記開閉弁部を閉塞した状態で前記シリンジ部により前記送気及び吸気することにより前記キャニスタが備えるチェックバルブの点検を行う行程と、
を備えることを特徴とする、インタンク式キャニスタ点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は効率よくインタンク式キャニスタの点検を行うことができるインタンク式キャニスタ点検装置、及び、インタンク式キャニスタ点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車エンジンの燃料供給系において蒸発燃料を処理する技術として、例えば特許文献1の蒸発燃料処理装置が知られている。この蒸発燃料処理装置は燃料タンク内31で発生した蒸発燃料を、活性炭等を用いたキャニスタ41に回収し、所定のパージ条件が成立した場合にパージバルブ44を開放して、キャニスタ41内の蒸発燃料を吸気管12の負圧によってエンジン1に導入し、燃焼させる。
【0003】
キャニスタはエンジンルームや燃料タンク付近等、様々な場所に設置が可能であるが、昨今では、例えば特許文献2に開示されているように、燃料タンク内にキャニスタを収容する、インタンク式キャニスタの採用が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-066167号公報
【文献】特開平9-195861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
昨今では、自動車の燃料タンクはキャビン内のリアシートの座面下等、リアシート付近に配置されることが多い。これは、強固なフレームによって乗員を保護するキャビン内に燃料タンクを配置して、衝突時に燃料タンクの破損による車両火災を防止する等の理由により行われている。
【0006】
一方で、自動車を安全に使用する上では定期的な点検を行うことが法令その他によって義務付けられている。キャニスタの場合は、キャニスタに設けられた複数のポートに送気して、当該ポート内部やキャニスタ内部に配置された活性炭、チェックバルブその他の構成が正常に動作するか点検することが求められるが、前述のようにインタンク式キャニスタが収容される燃料タンクは車両のリアシート下等に設置されることが多く、この場合には、キャニスタの点検をするために車両からリアシートを取り外す等をする必要が生じるので、点検を行うコストが高いという問題があった。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑み、インタンク式キャニスタを効率よく点検することができるインタンク式キャニスタ点検装置及びインタンク式キャニスタ点検方法を提供することを、その目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の問題を解決するためになされた本発明に係るインタンク式キャニスタ点検装置は、車両の燃料タンク内に設置されたキャニスタを点検するインタンク式キャニスタ点検装置であって、前記キャニスタが備える大気ポート又はパージポートの一方に接続された配管部の一端側に前記キャニスタ点検装置を接続するポート接続部と、前記ポート接続部を介して前記大気ポート又は前記パージポートからの通気によって警笛音を発する警笛部と、前記大気ポート又は前記パージポートからの通気を遮断又は開通させる開閉弁部と、を備え、前記開閉弁部により前記通気を開通させた状態で、前記大気ポート又はパージポートの他方に接続された配管部から前記キャニスタに送気して、前記警笛音の有無により前記キャニスタ及び前記配管部の点検を行い、前記開閉弁部により前記通気を遮断した状態で、前記大気ポート又はパージポートの他方に接続された配管部から前記キャニスタに送気及び前記キャニスタから吸気して、前記キャニスタが備えるチェックバルブの点検を行うことを特徴としている。
【0009】
本発明に係るインタンク式キャニスタ点検装置は、さらに、前記大気ポート又はパージポートの他方に一端側が接続された配管部の他端側に接続される圧力計部を備え、前記送気及び吸気した場合の前記圧力計部が検出する圧力により前記チェックバルブの点検を行うようにしてもよい。
【0010】
本発明に係るインタンク式キャニスタ点検装置は、さらに、前記圧力計部に接続されるシリンジ部を備え、前記シリンジ部を操作することにより、前記送気及び前記吸気を行うようにしてもよい。
【0011】
本発明に係るインタンク式キャニスタ点検装置は、さらに前記開閉弁部を無線通信により開閉する開閉弁操作部を備え、前記開閉弁部が、前記開閉弁操作部が送信する所定の信号を受信して前記通気を遮断又は開通させるようにしてもよい。
【0012】
前述の問題を解決するためになされた本発明に係るインタンク式キャニスタ点検方法は、車両の燃料タンク内に設置されたキャニスタを点検するインタンク式キャニスタ点検方法であって、前記キャニスタが備える大気ポート又はパージポートの一方に一端側が接続された配管部の他端側に、無線通信により開閉可能な開閉弁部を介して警笛部を設置するとともに、前記大気ポートまたはパージポートの他方に一端側が接続された配管部の他端側に圧力計部を介して送気及び吸気が可能なシリンジ部を設置し、前記開閉弁部を開通した状態で前記シリンジ部により前記キャニスタに送気して、前記警笛音の有無により前記キャニスタ及び配管部の点検を行う行程と、前記開閉弁部を閉塞した状態で前記シリンジ部により前記送気及び吸気することにより前記キャニスタが備えるチェックバルブの点検を行う行程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成によれば、インタンク式キャニスタが備える大気ポート又はパージポートの一方に一端側が接続された配管部の他端側に開閉弁部を介して警笛部を設置し、大気ポート又はパージポートの他方に一端側が接続された配管部の他端側において送気及び吸気をして点検を行うので、車両のリアシートを取り外すことなく、効率よくインタンク式キャニスタの点検を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態の一例における、インタンク式キャニスタ点検装置の構成を示す図である。
図2】同実施形態の一例における、インタンク式キャニスタの例を示す図である。
図3】同実施形態の一例における、開閉弁部の構成を示す図であり、(a)は部品配置を示す図であり、(b)は回路構成を示す図である。
図4】同実施形態の一例における、点検対象車両の蒸発燃料制御回路の構成の例を示す図である。
図5】同実施形態の一例における、点検対象車両の蒸発燃料制御回路の配置の例を示す図である。
図6】同実施形態の一例における、点検対象車両の燃料タンクの配置の例を示す側面図である。
図7】同実施形態の一例における、インタンク式キャニスタの点検手順を示すフロー図である。
図8】同実施形態の一例における、配管部点検時の蒸発燃料制御回路の状態を示す図である。
図9】同実施形態の一例における、第1のチェックバルブ点検時の蒸発燃料制御回路の状態を示す図である。
図10】同実施形態の一例における、第2のチェックバルブ点検時の蒸発燃料制御回路の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態の一例について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態の一例における、インタンク式キャニスタ点検装置の構成を示す図であり、図2は、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置を用いて点検するインタンク式キャニスタの例を示す図である。図1で示すように、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1は、第1ポート部11と、第2ポート部12と、開閉弁操作部13を備えている。本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1によって点検を行うインタンク式キャニスタ2は、図2で示すように、活性炭を収容するキャニスタ本体部21の上端側に、後述する大気ポート配管部を介して大気開放される大気ポート22と、後述するパージポート配管部を介して車両のエンジンと接続されるパージポート23を備えており、燃料ポンプ3と接続されている。なお、インタンク式キャニスタ2は、チェックバルブ(図2において図示しない)を介して後述する燃料タンク内部と接続されている。また、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ2は活性炭を用いる、いわゆるチャコールキャニスタであるが、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1によって点検を行う対象はチャコールキャニスタに限られず、周知の構造のインタンク式キャニスタをもってインタンク式キャニスタ2としてよい。
【0016】
第1ポート部11は、インタンク式キャニスタ2の大気ポート22又はパージポート23の一方に接続される装置である。本実施形態の一例における第1ポート部11は大気ポート22に接続され、第1ポート接続部111と、警笛部112と、開閉弁部113を備えている。
【0017】
第1ポート接続部111は、インタンク式キャニスタ2の大気ポート22側を、大気ポート配管部を介して後述する開閉弁部113と接続する。本実施形態の一例における第1ポート接続部111は、具体的には、ホース111aと、継ぎ手111bから構成されている。ホース111a及び継ぎ手111bの材質や寸法は任意に選択してよいが、本実施形態の一例におけるホース111aはビニール材を外径略11mm、内径略8mmに形成したホースであり、継ぎ手111bは、ゴム材を外径略10mm~略13mm、先端内径略7.5mmに形成した継ぎ手である。
【0018】
警笛部112は、前述の第1ポート接続部111を介して、インタンク式キャニスタ2の大気ポート22からの通気によって警笛音を発する。本実施形態の一例における警笛部112は、アルミ合金を直径略12mm、長さ略62mmに形成したホイッスルを用いているが、大気ポートからの通気により警笛音を発する周知のホイッスルその他の装置を用いて警笛部112を構成するようにしてもよい。
【0019】
開閉弁部113は、第1ポート接続部111と、警笛部112の通気を開通及び/又は遮断するバルブである。
【0020】
図3は、本実施形態の一例における、開閉弁部113の構成を示す図であり、図3(a)は開閉弁部113の部品配置を示す図であり、図3(b)は開閉弁部113の回路構成を示す図である。図3で示すように、開閉弁部113は、方形状に形成された合成樹脂からなる筐体113aに、メインスイッチ113bと、電磁バルブ113cと、電源113dと、操作信号受信機113eを備えており、第1ポート接続部111と警笛部112の間に電磁バルブ113cを備えるように構成されている。本実施形態の一例における電磁バルブ113cは非通電時に閉じた状態となる、いわゆるノーマルクローズ型の電磁バルブであり、メインスイッチ113bにより電源113dから駆動電源が供給されている状態において、後述する開閉弁操作部13の操作により開閉弁部113を開放する信号が送信され、当該送信された信号を操作信号受信機113eが受信すると、電磁バルブ113cに駆動電源が供給されて電磁バルブ113cが開いた状態となり、第1ポート接続部111と警笛部112が開通する。
【0021】
第2ポート部12は、インタンク式キャニスタ2の大気ポート22又はパージポート23の他方、すなわち、第1ポート部11が接続されていないポートに接続される装置である。本実施形態の一例における第2ポート部12は、第2ポート接続部121と、圧力計部122と、シリンジ部123を備えている。
【0022】
第2ポート接続部121は、インタンク式キャニスタ2のパージポート23側を、パージポート配管部を介して第2ポート部12に接続する。本実施形態の一例における第2ポート接続部121は、具体的には、ホース121aと、継ぎ手121bから構成されている。ホース121aはビニール材を外径略9mm、内径略6mmに形成したホースであり、継ぎ手121bはゴム材を先端内径略3mm、外径略6~略11mmに形成した継ぎ手である。第1ポート接続部111と同様に、第2ポート接続部121の材質や寸法等は、任意に選択してよい。
【0023】
圧力計部122は、第2ポート接続部121と、後述するシリンジ部123の中間に設置され、シリンジ部123を操作してインタンク式キャニスタ2のパージポート23側に送気又はパージポート23側から吸気した際の圧力を計測する。本実施形態の一例では、圧力計122aとして、正の圧力として最大0.2MPa、負の圧力として最大0.1Mpaの範囲で計測可能なブルドン管式連成計を用いている。なお、圧力計122aとしても用いる計測器は周知の計測器を用いてよく、計測可能な範囲や制度、計測の方法その他を周知の計測器から任意に選択してよい。
【0024】
シリンジ部123は、インタンク式キャニスタ2のパージポート23に送気、又はパージポート23から吸気を行うシリンジであり、筒状のシリンジ本体123aと、押し子123bから構成されている。送気及び吸気が可能な周知の機器をシリンジ部123に用いてよいが、本実施形態の一例では、容量略200mlのシリンジを用いてシリンジ部123を構成している。
【0025】
開閉弁操作部13は、前述の開閉弁部113を開放又は閉塞させる信号を送信する。本実施形態の一例では、開閉弁操作部13は開閉弁部113の操作信号受信機113eと無線通信し、開閉弁操作部13のボタン131を押下することにより電磁バルブ113cへの駆動電源供給を開始又は停止させる。
【0026】
以上が、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1の構成である。なお、本実施形態の一例では、第1ポート部11を大気ポート配管部に接続し、第2ポート部12をパージポート配管部に接続しているが、いずれのポート配管部にいずれの装置を接続するかは任意に変更してよく、第1ポート部11をパージポート配管部に接続し、第2ポート部を大気ポート配管部に接続してもよい。
【0027】
次いで、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1を用いて点検を行う点検対象車両の構成、及び、点検の手順について説明する。図4は、本実施形態の一例における点検対象車両の蒸発燃料制御回路の構成の例を示す図であり、図5は、本実施形態の一例における点検対象車両の蒸発燃料制御回路の部品配置の例を示す図であり、図6は、本実施形態の一例における点検対象車両の燃料タンクの配置の例を示す図である。図4~6で示すように、本実施形態の一例における点検対象車両1は、インタンク式キャニスタ2が燃料ポンプ3と共に燃料タンク4に収容されている。
【0028】
インタンク式キャニスタ2は、前述のように、大気ポート22とパージポート23を備えている。大気ポート22は、大気ポート配管部51を介して給油口41に接続されており、パージポート23は、パージポート配管部52を介してVSV(Vacuum Switching Valve)53に接続されており、ECU6がVSV53を開閉することにより、インタンク式キャニスタ2の活性炭26に吸着された蒸発燃料をインテークマニホールド7に導入する。
【0029】
また、インタンク式キャニスタ2は、燃料タンク4とチェックバルブ24、25を介して接続されている。燃料タンク4内が所定の圧力以上になると、チェックバルブ24が開いて燃料タンク4内の蒸発燃料がインタンク式キャニスタ2に流入し、活性炭26が蒸発燃料を吸着することにより回収する。また、燃料タンク4内が所定の負圧以下になると、チェックバルブ25が開くように構成されている。
【0030】
本実施形態の一例では、インタンク式キャニスタ2を収容する燃料タンク4が車両8のリアシート81下方に設置されている。インタンク式キャニスタ2は燃料タンク4の上方に収容されており、インタンク式キャニスタ2を直接点検するためにはリアシート81を車両8から撤去しなければならない。一方で、インタンク式キャニスタ2の大気ポート22は車両8の左リアフェンダ82に設置された給油口41と大気ポート配管部51を介して接続されており、パージポート23はパージポート配管部52を介して車両8のエンジンルーム83内に配置されたVSV53と接続されている。本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1は、インタンク式キャニスタ2の点検を、大気ポート配管部51及びパージポート配管部52を介して行うことにより、車両8からリアシート81を撤去することなく行う装置である。
【0031】
図7は、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタの点検手順を示すフロー図である。図7で示すように、本実施形態の一例における点検手順は、装置設置S1と、配管部点検S2と、チェックバルブ点検S3と、装置撤去S4から構成されている。なお、本実施形態の一例では配管部点検S2に続いてチェックバルブ点検S3を行っているが、順序は任意に変更してよく、チェックバルブ点検S3の後に配管部点検S2を行うようにしてもよい。
【0032】
本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1を用いた点検では、先ず、点検作業者がインタンク式キャニスタ点検装置1を車両8に設置する(ステップS1参照)。前述のように、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1は、インタンク式キャニスタ2の大気ポート22側に設置する第1ポート部11と、パージポート23側に設置する第2ポート部12を備えている。何れの設置を先に行うかは任意に選択してよいが、本実施形態では、先に第1ポート部11を車両8に設置し、次いで、第2ポート部12を車両8に設置する。なお、本実施形態の一例では第1ポート部11を大気ポート22側に接続し、第2ポート部12をパージポート23側に接続するが、前述のようにいずれのポートにいずれの装置を接続するかは任意に選択してよく、第1ポート部11をパージポート23側に接続し、第2ポート部12を大気ポート22側に接続してもよい。この場合には、ステップS1におけるステップS12は第2ポート部12を設置する行程となり、ステップS15は第1ポート部11を設置する行程となる。後述するステップS4におけるステップS41及びステップS43も同様である。
【0033】
前述のように、車両8の給油口41は左リアフェンダ82に設置されている。前述のように、車両8の大気ポート配管部51は一端側がインタンク式キャニスタ2の大気ポート22に接続され、他端側が給油口41に接続されている。左リアフェンダ82の下側から、或いは、車両8のトランクルームから、点検作業者が給油口41から大気ポート配管部51の他端側を外し(ステップS11参照)、次いで、大気ポート配管部51の他端側に第1ポート部11の第1ポート接続部111を接続すると(ステップS12参照)、大気ポート配管部51を介して大気ポート22と第1ポート部11が接続された状態となる。なお、本実施形態の一例では、一の大気ポート配管部51によってインタンク式キャニスタ2の大気ポート22と給油口41に接続されているが、大気ポート22に接続される配管が2以上のホースや金属管その他の部品によって構成されている場合には当該2以上の部品の一部をもって大気ポート配管部51としてよく、いずれの部品に第1ポート部11を接続するかは作業のし易さ等によって任意に選択してよい。
【0034】
また、第1ポート部11を設置する際に、メインスイッチ113bを入れて開閉弁部113に駆動電力が供給する(ステップS13参照)。なお、ステップS13は配管部点検S2を開始するまでの任意のタイミングで行うようにしてよいが、本実施形態の一例では、第2ポート部12を設置した後は、装置撤去行程S4までエンジンルーム83付近で点検作業を行うことができるようにする目的で、第1ポート部11の設置時にステップS13を実行している。
【0035】
次いで、第2ポート部12を設置する。前述のように、車両8のパージポート配管部52は一端側がインタンク式キャニスタ2のパージポート23に接続され、他端側がエンジンルーム83内に配置されたVSV53に接続されている。エンジンルーム83の上方又は下方から、或いは、車両8が左右のフロントインナーフェンダを備える場合には、当該インナーフェンダを外して左右から、VSV53からパージポート配管部52の他端側を外す(ステップS14参照)。次いで、パージポート配管部52の他端側に第2ポート部12の第2ポート接続部121を接続すると(ステップS15参照)、パージポート配管部52を介してパージポート23と第2ポート部12が接続された状態となる。前述の第1ポート部11及び大気ポート配管部51と同様に、第2ポート部12及びパージポート配管部52についても、パージポート23に接続される配管が2以上のホースや金属管その他の部品によって構成されている場合には当該2以上の部品の一部をもってパージポート配管部52としてよく、いずれの部品に第2ポート部12を接続するかは作業のし易さ等によって任意に選択してよい。
【0036】
インタンク式キャニスタ点検装置1を車両8に設置すると、次いで、点検作業者は配管部点検行程S2を行う。前述のように、本実施形態の一例におけるインタンク式キャニスタ点検装置1の開閉弁部113はノーマルクローズ型の電磁バルブ113cを用いており、メインスイッチ113bを入れた状態では電磁バルブ113cに駆動電力は供給されていないので開閉弁部113は閉じた状態、すなわち、インタンク式キャニスタ2の大気ポート22と警笛部112の通気が遮断された状態である。作業者は、先ず、開閉弁操作部13を操作して、開閉弁部113の電磁バルブ113cを開いて、大気ポート22と警笛部112の通気を開通させる(ステップS21参照)。
【0037】
次いで、作業者は第2ポート部12のシリンジ部123を操作し、パージポート配管部52を介してインタンク式キャニスタ2のパージポート23に送気して、警笛部112の警笛音の有無によりインタンク式キャニスタ2と、大気ポート配管部51と、パージポート配管部52に詰まりや破損等がないか点検する(ステップS22参照)。
【0038】
図8は、本実施形態の一例における、配管部点検における蒸発燃料制御回路の状態を模式的に示す図である。図8で示すように、開閉弁部113は前述のステップS21で警笛部112への通気を開通させる状態となっている。この状態において、シリンジ部123から送出した通気Fは、パージポート配管部52、パージポート23、大気ポート22、大気ポート配管部51、第1ポート接続部111、開閉弁部113、警笛部112を経由して大気解放される。このとき、パージポート配管部52の他端側からインタンク式キャニスタ2を介して大気ポート配管部51の他端側までの上記経路に異常がない場合は、送気Fによって警笛部112が警笛音を発するので、点検作業者はエンジンルーム83付近でシリンジ部123を操作し、警笛音の有無によって配管部点検S2を行うことができる。
【0039】
配管部点検S2が完了した後に、作業者はチェックバルブ点検S3を行う。本実施形態の一例におけるチェックバルブ点検は、燃料タンク4からインタンク式キャニスタ2に蒸発燃料を回収する際のチェックバルブ動作を点検する第1のチェックバルブ点検と(ステップS32参照)、燃料タンク4の圧力を調整する際のチェックバルブ動作を点検する第2のチェックバルブ点検(ステップS33参照)から構成されている。
【0040】
チェックバルブ点検S3では、先ず、作業者が開閉弁操作部13を操作して、開閉弁部113の電磁バルブ113cを閉じ、大気ポート22と警笛部112の通気を遮蔽する(ステップS31参照)。
【0041】
次いで、作業者はシリンジ部123を操作して、パージポート配管部52を介してパージポート23から吸気し、第1のチェックバルブ点検を行う(ステップS32)。
【0042】
図9は、本実施形態の一例における、第1のチェックバルブ点検時の蒸発燃料制御回路の状態を示す図である。前述のように、インタンク式キャニスタ2は燃料タンク4内部とチェックバルブ24、25を介して接続されている。大気ポート22側は開閉弁部113により遮蔽された状態となっているので、この状態では、図9で示すようにパージポート23からの吸気よって発生した負圧P1は、チェックバルブ24を開く方向に作用する。
【0043】
前述の負圧P1がチェックバルブ24の開弁圧力を超えるまでは、チェックバルブ24は閉じた状態であり、負圧P1がチェックバルブ24の開弁圧力を超えるとチェックバルブ24が開き、燃料タンク4内の蒸発燃料及び/又は空気がチェックバルブ24からインタンク式キャニスタ2に流入する。ステップS32においてパージポート23から吸気した際に、チェックバルブ24、25が正常に動作している場合には、圧力計部122の示す負圧がチェックバルブ24の所定の開弁圧力付近まで上昇し、次いで、上記圧力が減衰する。一方で、チェックバルブ24、25の少なくとも一方に固着や詰まりその他の異常が発生している場合には、圧力が上昇しない、或いは、上昇した圧力が減衰しない等によりこれを検知することができる。例えば、上記圧力が所定の開弁圧力付近まで上昇しない場合には、チェックバルブ24、25の少なくとも一方が開いた状態で固着している異常が発生しているおそれがあり、また、上昇した圧力が減衰しない場合には、チェックバルブ24が閉じた状態で固着している、或いは、チェックバルブ24に詰まり等の異常が発生しているおそれがある。点検作業者はシリンジ123を操作しながら圧力計部122の示す値を確認することで、第1のチェックバルブ点検を行う。
【0044】
ステップS32に続いて、点検作業者はシリンジ123を操作してパージポート23に送気することにより、第2のチェックバルブ点検を行う(ステップS33参照)。
【0045】
図10は、本実施形態の一例における、第2のチェックバルブ点検時の蒸発燃料制御回路の状態を示す図である。第1のチェックバルブ点検ではパージポート23から吸気をしてチェックバルブ24を動作させたが、第2のチェックバルブ点検はパージポート24に送気して、チェックバルブ25を動作させる点検である。図10で示すように、パージポート23への送気によって発生した正の圧力P2は、チェックバルブ25を開く方向に作用する。
【0046】
前述の圧力P2がチェックバルブ25の開弁圧力を超えるまでは、チェックバルブ25は閉じた状態であり、圧力Pがチェックバルブ25の開弁圧力を超えるとチェックバルブ25が開き、インタンク式キャニスタ2から空気及び/又は蒸発燃料が燃料タンク4に送出される。ステップS33においてパージポート23に送気した際に、チェックバルブ24、25が正常に動作している場合には、圧力計部122の示す正の圧力がチェックバルブ25の所定の開弁圧付近まで上昇し、次いで、上記圧力が減衰する。一方で、チェックバルブ24、25の少なくとも一方に固着や詰まりその他の異常が発生している場合には、圧力が上昇しない、或いは、上昇した圧力が減衰しない等によりこれを検知することができる。例えば、上記圧力が所定の開弁圧力付近まで上昇しない場合には、チェックバルブ24、25の少なくとも一方が開いた状態で固着している異常が発生しているおそれがあり、また、上昇した圧力が減衰しない場合には、チェックバルブ25が閉じた状態で固着している、或いは、チェックバルブ25に詰まり等の異常が発生しているおそれがある。点検作業者はシリンジ123を操作しながら圧力計部122の示す値を確認することで、第2のチェックバルブ点検を行う。
【0047】
ステップS3が完了すれば、インタンク式キャニスタ2の点検は終了であり、点検作業者は第2ポート部12の撤去(ステップS41、S42)、及び、第1ポート部11の撤去(ステップS43、S44)を行って、本実施形態の一例における点検の全行程が完了する。
【0048】
以上が、本実施形態の一例における、インタンク式キャニスタ点検装置1を用いた点検の手順である。本実施形態の一例では、インタンク式キャニスタ2の点検を、大気ポート配管部51及びパージポート配管部52を介して行うので、インタンク式キャニスタ2を点検するために車両8からリアシート81を脱着する必要がないので、作業コストを削減して効率よくインタンク式キャニスタ2を点検することができる。
【0049】
また、本実施形態の一例では、インタンク式キャニスタ2のみならず、これと接続される配管部51、52の点検も同時に行うことができるので、高品質な点検作業を行うことができる。さらに、配管部点検は警笛部112が警笛音を発するか否かによって行うので、点検はシリンジ123を操作する点検作業者一人で行うことができる。
【0050】
本実施形態の一例の説明は以上であるが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば、開閉弁操作部13は、本実施形態の一例では無線通信によって開閉弁部113を開放/遮蔽するが、開閉弁部113を機械的に開閉するコックその他の機械部品又は装置を用いて開閉弁操作部13としてよい。また、開閉弁操作部13は、第2ポート部12に設置できるように構成して、インタンク式キャニスタ点検装置1の部品点数を減らすようにしてもよい。
【0051】
その他の具体的な構成も本実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0052】
1 インタンク式キャニスタ点検装置
11 第1ポート部
111 第1ポート接続部
112 警笛部
113 開閉弁部
12 第2ポート部
121 第2ポート接続部
122 圧力計部
123 シリンジ部
13 開閉弁操作部
2 キャニスタ
21 キャニスタ本体部
22 大気ポート
23 パージポート
24、25 チェックバルブ
26 活性炭
3 燃料ポンプ
4 燃料タンク
41 給油口
51 大気ポート配管部
52 パージポート配管部
53 VSV
6 ECU
7 インテークマニホールド
8 車両
81 リアシート
82 左リアフェンダ
83 エンジンルーム

【要約】
【課題】 効率よくインタンク式キャニスタの点検を行うことができるインタンク式キャニスタ点検装置、及び、インタンク式キャニスタ点検方法を提供する。
【解決手段】 車両の燃料タンク内に設置されたインタンク式キャニスタの大気ポート又はパージポートの一方に一端側が接続された配管部の他端側に、第1ポート接続部及び通気を遮断又は開通させる開閉弁部を介して警笛部を設け、開閉弁部を開通させた状態で大気ポート又はパージポートの他方からインタンク式キャニスタに送気してインタンク式キャニスタの配管部点検を行い、開閉弁部を遮蔽した状態でインタンク式キャニスタに送気及び吸気してインタンク式キャニスタのチェックバルブ点検を行う。
【選択図】 図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10