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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 1/14 20060101AFI20240213BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
B66B1/14 E
B66B5/02 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023109272
(22)【出願日】2023-07-03
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 貴子
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特許第7047949(JP,B1)
【文献】特許第7081704(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/124405(WO,A1)
【文献】特許第7379646(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/066056(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52
B66B 5/00-5/28
B66B 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律型の自走装置の運転を制御する自走制御装置と通信可能に接続されたエレベータ制御装置を備えたエレベータシステムにおいて、
前記エレベータ制御装置は、
前記自走装置が乗りかご内に乗車中に、任意の階で異常が発生した場合に、予め設定された第1避難階の混雑状況を検出する混雑状況検出手段と、
前記混雑状況検出手段によって検出された前記第1避難階の混雑状況に基づいて、前記自走装置を避難させる階を前記第1避難階または前記第1避難階とは別の第2避難階に決定する避難階決定手段と、
前記避難階決定手段によって決定された前記第1避難階または前記第2避難階に前記乗りかごを移動させ、前記自走装置を降車させるように前記自走制御装置に通知する運転制御手段と
を具備したことを特徴とするエレベータシステム。
【請求項2】
前記避難階決定手段は、
前記第1避難階が混雑している場合に、前記自走装置を避難させる階を前記第2避難階に決定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記避難階決定手段は、
前記第1避難階が混雑していない場合に、前記自走装置の行先階が前記第1避難階と同じ階であれば、前記自走装置を避難させる階を前記第1避難階に決定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記避難階決定手段は、
前記第1避難階が混雑していない場合に、前記自走装置の行先階が前記第1避難階以外の階であれば、前記自走装置を避難させる階を前記第2避難階に決定することを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記第2避難階は、前記自走装置の行先階、異常が発生した階と異常の影響範囲を除いた階、各階の混雑状況、前記第1避難階の最寄り階のいずれかによって決定されることを特徴とする請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記乗りかご内の状況を検出するかご内状況検出手段を備え、
前記運転制御手段は、
前記第1避難階で利用者が降車する場合に、前記かご内状況検出手段によって検出された前記乗りかご内の状況に基づいて、前記利用者の降車を妨げない位置に前記自走装置を移動させるように前記自走制御装置に通知することを特徴とする請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記運転制御手段は、
前記乗りかごを前記第2避難階で空かごの状態にする必要がない場合には、前記自走装置を前記第2避難階で降車させないように前記自走制御装置に通知することを特徴とする請求項2に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記避難階決定手段は、
複数台の乗りかごが存在する場合には、前記各乗りかごから降車する各自走装置が同じ階に集中しないように、前記各乗りかご毎に前記第2避難階を決定することを特徴とする請求項1記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自律型の自走装置と連動するエレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物内において警備や荷物の運搬に自走装置(自律走行型ロボット)が利用されるようになってきた。自走装置に目的地をインプットすると、障害物を避けながら目的地まで移動し、目的地での各種作業を行う。自走装置は、エレベータシステムと連動することにより、エレベータの乗りかごを利用して各階に移動することができる。
【0003】
ここで、火災や地震等の災害が発生した場合、通常、自走装置は自走装置自身の避難階を決定している。この場合、自走装置の避難階が利用者と同じ避難階に決定されると、乗場に利用者と自走装置が集中し、利用者の避難の妨げになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5787806号公報
【文献】特許第7097533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、災害時に、利用者の避難を妨げないように、自走装置を制御することが可能なエレベータシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエレベータシステムは、自律型の自走装置の運転を制御する自走制御装置と通信可能に接続されたエレベータ制御装置を備える。前記エレベータ制御装置は、混雑状況検出手段と、避難階決定手段と、運転制御手段とを具備する。前記混雑状況検出手段は、前記自走装置が乗りかご内に乗車中に、任意の階で異常が発生した場合に、予め設定された第1避難階の混雑状況を検出する。前記避難階決定手段は、前記混雑状況検出手段によって検出された前記第1避難階の混雑状況に基づいて、前記自走装置を避難させる階を前記第1避難階または前記第1避難階とは別の第2避難階に決定する。前記運転制御手段は、前記避難階決定手段によって決定された前記第1避難階または前記第2避難階に前記乗りかごを移動させ、前記自走装置を降車させるように前記自走制御装置に通知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図である。
図2図2は同実施形態における自走装置の構成の一例を示す図である。
図3図3は同実施形態における自走装置用の呼びテーブルの一例を示す図である。
図4図4は同実施形態における自走装置の避難階を決定する処理のフローチャートである。
図5図5は同実施形態における乗場の混雑状況を検出する一例を示す図である。
図6図6は同実施形態における乗りかご内の状況を検出する一例を示す図である。
図7図7は同実施形態における第1避難階が混雑していない場合の一例を示す図である。
図8図8は同実施形態における第1避難階が混雑している場合の一例を示す図である。
図9図9は同実施形態における乗りかご内に自走装置を待機させる場合の一例を示す図である。
図10図10は変化例として複数台の乗りかごが存在し、各乗りかご毎に第2避難階を決定する場合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの構成を示すブロック図であり、エレベータ制御装置と自律型の自走装置の制御装置とが通信可能に接続された構成が示されている。
【0010】
乗りかご11は、エレベータ制御装置20の制御の下で、図示せぬ巻き上げ機の駆動により昇降路内を昇降動作する。乗りかご11内には、かご内カメラ12が設置されている。かご内カメラ12は、例えば乗りかご11内の天井面に設置され、乗りかご11の運転中にかご室内の状態を連続的に撮影する。かご内カメラ12は、図示せぬケーブルを介してエレベータ制御装置20に接続されている。なお、かご内カメラ12の設置場所は天井面に限らず、かご内全体を撮影可能な場所であればどこでもよい。
【0011】
自走装置13は、例えば、荷物の配送、警備、清掃等を行う自律走行型ロボットであり、乗りかご11に乗車して建物内の各階を移動可能である。自走装置13は、自走制御装置14から指示に従って行動する。自走装置13と自走制御装置14とは、無線通信によって接続されている。
【0012】
自走制御装置14は、エレベータ制御装置20と無線通信によって接続し、自走装置13の運転を制御する。自走制御装置14は、自走装置13に目的地がインプットされたとき、その目的地に対応した行先階を判断し、その行先階と出発階の情報を含む行先呼びの情報を当該自走装置13の識別情報とともにエレベータ制御装置20に送信する。
【0013】
各階の乗場15には、乗場呼びボタン16、乗場ドア17、乗場カメラ18が設置されている。乗場呼びボタン16は、利用者が乗場呼びを登録するためのボタンである。なお、「乗場呼び」とは、各階の乗場に設置された乗場呼びボタン16の操作により登録される呼びの信号のことであり、登録階と行先方向の情報を含む。これに対し、「かご呼び」とは、乗りかご11内に設けられた図示せぬ行先呼びボタンの操作により登録される呼びの信号のことであり、行先階の情報を含む。
【0014】
乗場ドア17は、乗りかご11の到着口に開閉自在に設置されている。乗場ドア17は、乗りかご11のかごドアに係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア17はかごドアに追従して開閉するだけである。
【0015】
乗場カメラ18は、少なくとも、後述する第1避難階に設置され、その第1避難階の乗場の状況を撮影する。乗場カメラ18の設置個所は、例えば乗場ドア17の近傍など、乗場15の周辺に存在する利用者および自走装置13を撮影可能な場所であれば、どこでもよい。乗場カメラ18によって撮影された乗場15の画像は、エレベータ制御装置20にリアルタイムに送信される。なお、各階の乗場に乗場カメラ18を設置しておき、各階の乗場の画像をエレベータ制御装置20にリアルタイムに送信する構成としてもよい。
【0016】
異常検出部19は、建物内で発生した火災等の異常を検出する。異常検出部19は、例えば火災検知器や地震検知器などを含む。異常検出部19が火災検知器の場合には、各階に設置され、任意の階で発生した煙を検知することで、当該階で火災が発生した信号をエレベータ制御装置20に送信する。また、異常検出部19が地震検知器の場合には、例えばエレベータの昇降路内の底部に設置され、地震の揺れを検知することで、地震信号をエレベータ制御装置20に送信する。なお、地震の場合には、建物内で地震の揺れによって危険な階を予め定めておき、当該階を回避するように、後述する避難階(第1避難階/第2避難階)が設定されるものとする。
【0017】
エレベータ制御装置20は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータからなり、エレベータ全体の制御を行う。本実施形態において、エレベータ制御装置20は、呼び記憶部21、運転制御部22、混雑状況検出部23、避難階決定部24、通信部25、かご内状況検出部26を備える。
【0018】
呼び記憶部21は、各階の乗場に設置された乗場呼びボタン16の操作によって登録される乗場呼びと、乗りかご11内に設置された図示せぬかご呼びボタンの操作によって登録されるかご呼びとを記憶する。また、呼び記憶部21は、自走装置用の呼びテーブル21aを有する。自走装置用の呼びテーブル21aには、自走制御装置14から送信された行先呼びの情報(出発階,行先階)が自走装置13の識別情報と関連付けられて記憶される。
【0019】
運転制御部22は、呼び記憶部21に記憶された乗場呼び、かご呼び、行先呼びに基づいて、乗りかご11を各階に移動させるなどの運転制御を行う。また、運転制御部22は、火災や地震等の発生時に、乗りかご11を避難階に移動させるための管制運転制御を行う。本実施形態では、火災や地震等の発生時に、運転制御部22は、通信部25を介して自走制御装置14と無線通信を行い、自走装置13を避難階(第1避難階または第2避難階)に移動させるための制御を行う機能を備える。
【0020】
混雑状況検出部23は、異常検出部19によって任意の階で発生した異常が検出された場合に、第1避難階の混雑状況を検出する。具体的には、混雑状況検出部23は、第1避難階に設置された乗場カメラ18から得られる画像を解析処理することで、第1避難階の乗場15にいる利用者の人数や自走装置13の台数を求め、これらの数から混雑しているか否かを判断する。
【0021】
避難階決定部24は、混雑状況検出部23によって検出された第1避難階の混雑状況に基づいて、自走装置13を避難させる階を第1避難階、または第1避難階とは別の第2避難階に決定する。「第1避難階」は、火災や地震等が発生したときに、利用者を避難させる階として存在し、例えば基準階など、利用者がすぐに地上等に避難できる階に予め設定されている。なお、第1避難階は、1つに限られず、例えば基準階、中間階、屋上階など、複数の階を第1避難階として設定しておくことでもよい。また、第1避難階で異常が発生した場合には、別の第1避難階が設定されることでもよい。第1避難階の乗場15の混雑状況によっては、利用者だけでなく、自走装置13を第1避難階から避難させることもある。一方、「第2避難階」は、第1避難階とは別の階であり、第1避難階で自走装置13が利用者の避難の妨げになる場合に設定される。自走装置13を避難させる階を決定する方法については後述する。
【0022】
通信部25は、自走制御装置14を介して自走装置13に対するデータの通信制御を行う。通信部25は、避難階決定部24によって決定された自走装置13の避難階(第1避難階または第2避難階)を自走制御装置14に通知する。
【0023】
かご内状況検出部26は、かご内カメラ12から得られる画像を解析処理し、乗りかご11内の状況を検出する。乗りかご11内の状況とは、利用者の人数や自走装置13の台数、さらに、乗車位置などを含む。
【0024】
図2は自走装置13の機能構成を示すブロック図である。
自走装置13には、制御部31、センサ32、通信装置33、操作部34、表示部35、記憶部36、駆動部37などが備えられている。
【0025】
制御部31は、CPUからなり、所定のプログラムの起動により、エレベータシステムと連動して、建物の各階を含む所定領域内を自律移動するための制御を行う。センサ32は、例えばレーザ距離センサ(Laser Range Finder)や超音波距離センサ、デュアルカメラ、LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)などである。自走装置13は、このセンサ32により障害物を避けながら移動し、乗りかご11内の空きスペースを検出して乗車する。
【0026】
通信装置33は、自走制御装置14と無線通信する。操作部34は、例えば目的地を入力するなど、各種データの入力操作を行う部分である。表示部35は、各種データの表示を行う。記憶部36には、予めプログラムの他、自走装置13の移動経路を含む地図情報などが記憶されている。駆動部37は、自走装置13の底部に設置された車輪を駆動するためのモータなどを含む。
【0027】
操作部34の操作により、自走装置13の目的地がインプットされると、自走制御装置14がその目的地に対応した行先階を判断し、その行先階と自走装置13の現在地(出発階)を含む行先呼びの情報を当該自走装置13の識別情報とともにエレベータ制御装置20に送信する。また、自走制御装置14は、自走装置13に対して、目的地に対応した行先階を通知して、乗りかご11がその行先階に到着したときに降車するように指示する。
【0028】
図3は、自走装置用の呼びテーブル21aの一例を示す図である。
自走制御装置14を通じて登録された行先呼びの情報は、当該行先呼びの自走装置13の識別情報(自走装置ID)とともに自走装置用の呼びテーブル21aに記憶される。図3の例では、自走装置ID:ID01,登録階:3F,行先階:1Fが自走装置用の呼びテーブル21aに記憶されている。これは、自走装置IDとしてID01を付された自走装置13の出発階が3F、行先階が1Fであることを意味している。ID02~05が付された自走装置13についても同様であり、それぞれに出発階と行先階の情報が自走装置IDに関連付けられて自走装置用の呼びテーブル21aに記憶されている。
【0029】
次に、本システムの動作について説明する。
図4は本システムの動作を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、主としてコンピュータであるエレベータ制御装置20によって実行される。
【0030】
いま、自走装置13が乗りかご11に乗車している場合に、任意の階において火災が発生し、当該階で火災が発生した信号がエレベータ制御装置20に送信されたとする。混雑状況検出部23は、第1避難階の乗場15の混雑状況を検出する。避難階決定部24は、混雑状況検出部23によって検出された第1避難階の乗場15の混雑状況(混雑しているか否か)に応じて、自走装置13を避難させる階を第1避難階または第2避難階に決定する(ステップS11)。
【0031】
図5に第1避難階の乗場15が混雑しているか否かを判定する場合の例を説明する。図中のPは利用者を示している。
任意の階で火災が発生したときに、混雑状況検出部23は、第1避難階の乗場15に設置された乗場カメラ18から得られる画像を解析処理し、乗場15にいる利用者Pの人数や自走装置13の台数を求める。図5の例では、6人の利用者と5台の自走装置13が検出される。
【0032】
混雑状況検出部23は、利用者Pの人数と自走装置13の台数の合計が所定値(例えば8)以上である場合、乗場15が混雑していると判定する。図5の例では、利用者Pと自走装置13の合計は11であり、所定値以上であるため、第1避難階の乗場15は混雑していると判定される。なお、乗場カメラ18の撮影範囲の中で利用者Pと自走装置13が占める割合から、第1避難階の乗場15が混雑しているか否かを判定することでもよい。この場合、利用者Pと自走装置13が占める割合が例えば撮影範囲全体の半分以上であれば、第1避難階の乗場15が混雑していると判定される。
【0033】
図4に戻り、第1避難階の乗場15が混雑していない場合(ステップS11のYes)、避難階決定部24は、乗りかご11に乗車している自走装置13の行先階が利用者の避難階として予め設定されている第1避難階と同じ階であるか否かを判定する(ステップS12)。詳しくは、避難階決定部24は、呼び記憶部21の自走装置用の呼びテーブル21aに記憶された自走装置13による行先呼びの情報から自走装置13の行先階を確認し、その行先階が第1避難階と同じであるか否かを判定する。
【0034】
自走装置13の行先階が第1避難階と同じであった場合(ステップS12のYes)、運転制御部22は、乗りかご11を第1避難階に移動させるとともに、自走装置13を第1避難階で降車させるように自走制御装置14に通知する(ステップS13)。自走制御装置14は、この通知に従って自走装置13の運転を制御する。これにより、自走装置13は、第1避難階で降車し、例えば事前にインプットされた目的地に向かって移動するか、あるいは、新たに自走制御装置14から指定された場所に移動する。このとき、利用者が乗りかご11に乗車していれば、自走装置13とともに利用者も第1避難階で降車することになるが、第1避難階の乗場15は混雑していないので、自走装置13が利用者の避難の妨げになることはない。
【0035】
一方、第1避難階の乗場15が混雑している場合には(ステップS11のNo)、自走装置13が利用者の避難の妨げになるので、自走装置13を第1避難階とは別の第2避難階で降車させる必要がある。その際、まず、かご内状況検出部26によって、乗りかご11内に自走装置13と利用者とが同乗しているか否かを判定する(ステップS14)。具体的には、かご内状況検出部26は、かご内カメラ12から得られる乗りかご11内の画像を解析処理して、利用者を1人以上、かつ、自走装置13を1台以上検出した場合に、乗りかご11内に自走装置13と利用者とが同乗していると判定する。
【0036】
また、自走装置13の行先階が第1避難階と同じ階でない場合も同様であり(ステップS12のNo)、自走装置13を第1避難階とは別の第2避難階で降車させる必要がある。その際に、前記ステップS14にて、乗りかご11内に自走装置13と利用者とが同乗しているか否を判定する。
【0037】
乗りかご11内に自走装置13と利用者とが同乗している場合(ステップS14のYes)、かご内状況検出部26は、自走装置13が乗りかご11のかごドア前に乗車しているか否かを判定する(ステップS15)。
【0038】
図6に乗りかご11内で自走装置13がかごドア前に乗車していることを判定する場合の例を説明する。図中のPは利用者を示している。
かご内状況検出部26は、かご内カメラ12から得られる乗りかご11内の画像上で自走装置13の位置と利用者Pの位置を検出する。自走装置13の位置がかごドア前に設定された所定の範囲内にあれば、かご内状況検出部26は、自走装置13がかごドア前に乗車していると判定する。なお、利用者Pの位置を検出するのは、利用者Pの降車時に、自走装置13を利用者の降車を妨げない位置に移動させるためである。
【0039】
図4に戻り、自走装置13が乗りかご11のかごドア前に乗車している場合(ステップS15のYes)、運転制御部22は、乗りかご11を第1避難階に移動させたときに、利用者の降車を妨げない位置に自走装置13を移動させるように、自走制御装置14に通知する(ステップS16)。自走制御装置14は、この通知に従って自走装置13の運転を制御する。
【0040】
具体的には、図6の例のように、自走装置13がかごドア前に乗車していれば、乗りかご11が第1避難階に到着したとき、自走装置13を乗りかご11から一旦降車させ、続いて利用者Pが降車してから、自走装置13を乗りかご11に再度乗車させる。
【0041】
また、乗りかご11内に自走装置13をドア前から移動させることのできる空きスペースがあれば、自走装置13をその空きスペースに移動させることでもよい。空きスペースの有無は、乗りかご11内の画像解析から判断できる。自走装置13を空きスペースに移動させておけば、第1避難階で利用者Pは自走装置13に邪魔されずにスムーズに降車して避難することができる。
【0042】
自走装置13が乗りかご11のかごドア前に乗車していない場合には(ステップS15のNo)、自走装置13を移動させる処理は不要である。つまり、運転制御部22は、乗りかご11を第1避難階に移動させ、そこで利用者を降車させて避難させる(ステップS17)。
【0043】
ここで、ステップS16または、ステップS17の処理により、第1避難階で利用者を降車させたときに、運転制御部22は、乗りかご11を空かごの状態(無人)で待機させておく必要があるか否かを判定する(ステップS18)。乗りかご11が非常用エレベータとして設定されている場合に、消防隊が第1避難階から乗りかご11に乗って消防活動を円滑に行うため、乗りかご11を空かごの状態で待機させておく必要がある。
【0044】
乗りかご11を空かごの状態にしておく必要がある場合(ステップS18のYes)、運転制御部22は、避難階決定部24によって決定された第2避難階に乗りかご11を移動させるとともに、そこで自走装置13を降車させるように自走制御装置14に通知する(ステップS19)。自走制御装置14は、この通知に従って自走装置13の運転を制御する。その後、運転制御部22は、乗りかご11を第1避難階に引き戻し、空かごの状態で待機させる。
【0045】
一方、乗りかご11が非常用エレベータに設定されていない場合には(ステップS18のNo)、運転制御部22は、乗りかご11が第1避難階に到着したときに、自走装置13を降車させず、乗りかご11内で待機させておくように自走制御装置14に通知する(ステップS20)。自走制御装置14は、この通知に従って自走装置13の運転を制御する。なお、乗りかご11を第2避難階に移動させてから、そこで自走装置13を乗りかご11内で待機させておくことでもよい。
【0046】
ここで、第2避難階の決定方法について説明する。
第2避難階は、「自走装置13の行先階(目的階)」、「異常発生階あるいは異常の影響範囲を除いた階」、「各階の乗場混雑状況を考慮した階(つまり、自走装置13を降車させても混雑的に問題ない階)」、「第1避難階の最寄階」のいずれかに決定される。これらの階を重み付けしておき、その重み付けで優先度順に第2避難階を決定してもよい。この場合、「自走装置13の行先階(目的階)」を第2避難階をとして最優先で決定することでもよい。これは、自走装置13の行先階で降車した後、そこに留まらずに、予めインプットされた目的地にすぐに移動するからである。
【0047】
図7に第1避難階が混雑していない場合の具体例を示す。図中のPは利用者を示す。利用者Pの避難階は、第1避難階であり、ここでは1Fに設定されている。
いま、自走装置13が乗りかご11に乗車して、1Fに向かっている途中で、5Fにて火災が発生したとする。
【0048】
第1避難階である1Fが混雑していない場合、自走装置13を第1避難階で降車させても、利用者の避難の妨げにならないため、自走装置13の避難階は、利用者と避難階として予め設定されている第1避難階(1F)に決定される。乗りかご11が第1避難階に到着したときに、自走装置13は利用者と共に降車する。このとき、利用者を降車させてから自走装置13を降車させることが好ましい。これは、自走装置13が先に降車すると、利用者の避難が遅れるからである。
【0049】
図8に第1避難階が混雑している場合の具体例を示す。図中のPは利用者を示す。利用者Pの避難階は、第1避難階であり、ここでは1Fに設定されている。
いま、自走装置13が乗りかご11に乗車して、1Fに向かっている途中で、5Fにて火災が発生したとする。
【0050】
第1避難階である1Fが混雑している場合、自走装置13の避難階は、第2避難階に決定される。上述したように、第2避難階は、「自走装置13の行先階(目的階)」、「異常発生階あるいは異常の影響範囲を除いた階」などから決定される。図8の例では、第2避難階が3Fに決定されている。したがって、第1避難階である1Fで利用者が降車した後、乗りかご11は、第2避難階として決定された3Fに移動する。これにより、自走装置13が3Fで降車する。このとき、乗りかご11が非常用エレベータに設定されている場合には、乗りかご11は第1避難階に引き戻しされて、そこで空かごの状態で待機する。
【0051】
このように、第1避難階が混雑している場合に、自走装置13を第1避難階以外の階に避難させることで、第1避難階における利用者の避難を妨げることがなく、自走装置13を避難させることができる。
【0052】
図9に乗りかご内に自走装置を待機させる場合の具体例を示す。図8と同様に、利用者Pの避難階は、第1避難階であり、ここでは1Fに設定されている。
例えば、自走装置13の行先階が第1避難階と同じであり、利用者が第1避難階の1階で降車した場合において、乗りかご11が非常用エレベータに設定されていない場合には、乗りかご11を空かごの状態にする必要はないので、自走装置13を乗りかご11内に待機させておくことでもよい。自走装置13を乗りかご11内で待機させることで、自走装置13が第1避難階の乗場15のスペースを占有し、利用者の避難の妨げになることを防ぐことができる。
【0053】
このように本実施形態では、火災等が発生したときに、第1避難階の混雑状況に応じて、自走装置の避難階を第1避難階または第2避難階に決定することで、第1避難階で自走装置が利用者の避難の妨げになることを防ぐことができる。
【0054】
(変化例)
上述した実施例では、1台の乗りかごを想定して説明したが、複数台の乗りかごが存在する場合、これらの乗りかご毎に自走装置を避難させるための第2避難階を決定する構成としてもよい。この場合、各乗りかごが、分散するように別々の階に第2避難階を決定すれば、これらの乗りかごに乗車していた自走装置も各階の乗場に分散することになるので、複数台の自走装置が同じ階に集中することを回避することができる。なお、この変化例に関する処理は、複数台の乗りかごの運転を制御する図示せぬ管理制御装置によって実行される。この管理制御装置には、図1に示したエレベータ制御装置20の各機能が備えられており、その中の避難階決定部24に相当する機能によって、各乗りかご毎に第2避難階が決定される。
【0055】
図10は複数台の乗りかごが存在し、各乗りかご毎に第2避難階を決定する場合の具体例を示す。図中のPは、利用者を示す。利用者Pの避難階は第1避難階であり、ここでは1Fに設定されている。
いま、自走装置13aがA号機の乗りかご11aに乗車して、1Fに向かっている途中で、6Fにて火災が発生したとする。自走装置13bが乗車するB号機の乗りかご11bと、自走装置13cが乗車するC号機の乗りかご11cも、乗りかご11a同様に1Fに向かっている。乗りかご11a~11cは、それぞれA号機、B号機、C号機の順番で1Fへ到着する。
【0056】
まず、1Fに到着するA号機の乗りかご11aについて考える。第1避難階である1Fが混雑している場合、自走装置13aの避難階は、第1避難階とは別の第2避難階に決定される。図10の例では、自走装置13aの第2避難階が4Fに決定されている。したがって、第1避難階である1Fで利用者が降車した後、A号機の乗りかご11aは、第2避難階として決定された4Fに移動する。これにより、自走装置13aが4Fで降車する。
【0057】
次に、B号機の乗りかご11bについて考える。A号機の乗りかご11aに乗車した自走装置13aの第2避難階が4Fであることから、自走装置13bの第2避難階は、4Fとは別の階(図10の例では3F)に決定される。したがって、第1避難階である1Fで利用者が降車した後、B号機の乗りかご11bは、第2避難階に決定された3Fに移動する。B号機の乗りかご11bが3Fに到着すると、自走装置13bが3Fで降車する。
【0058】
最後に、C号機の乗りかご11cについて考える。C号機の乗りかご11cに乗車した自走装置13cの第2避難階は、自走装置13a,13bの避難階とは別の階(図10の例では2F)に決定される。したがって、第1避難階である1Fで利用者が降車した後、C号機の乗りかご11cは、第2避難階に決定された2Fに移動する。C号機の乗りかご11cが2Fに到着すると、自走装置13cが2Fで降車する。
【0059】
このように、各乗りかご毎に自走装置に対する第2避難階が決定することにより、各乗りかごに乗車した自走装置を分散させ、同じ階に集中するのを防ぐことができる。これにより、異常発生時に各自走装置が同じ階に集中することによって、利用者の避難の妨げになることを防ぐことができる。
【0060】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、災害時に、利用者の避難を妨げないように、自走装置を制御することが可能なエレベータシステムを提供することができる。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
11…乗りかご、12…かご内カメラ、13…自走装置、14…自走制御装置、15…乗場、16…乗場呼びボタン、17…乗場ドア、18…乗場カメラ、19…異常検出部、20…エレベータ制御装置、21…呼び記憶部、21a…自走装置用の呼びテーブル、22…運転制御部、23…混雑状況検出部、24…避難階決定部、25…通信部、26…かご内状況検出部、P…利用者。
【要約】
【課題】災害時に、利用者の避難を妨げないように、自走装置を制御することが可能なエレベータシステムが提供される。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、混雑状況検出手段と、避難階決定手段と、運転制御手段とを具備する。混雑状況検出手段は、自走装置が乗りかご内に乗車中に、任意の階で異常が発生した場合に、予め設定された第1避難階の混雑状況を検出する。避難階決定手段は、混雑状況検出手段によって検出された第1避難階の混雑状況に基づいて、自走装置を避難させる階を第1避難階または第1避難階とは別の第2避難階に決定する。運転制御手段は、避難階決定手段によって決定された第1避難階または第2避難階に前記乗りかごを移動させ、自走装置を降車させるように自走制御装置に通知する。
【選択図】図1
図1
図2
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図5
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図8
図9
図10