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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】液体を攪拌するためのデバイス及び装置
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/00 20060101AFI20240213BHJP
   C25D 21/10 20060101ALI20240213BHJP
   C25D 17/00 20060101ALI20240213BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20240213BHJP
【FI】
C25D5/00 101
C25D21/10 301
C25D17/00 K
C23C18/31 E
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2023116652
(22)【出願日】2023-07-18
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】18/066,055
(32)【優先日】2022-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523271505
【氏名又は名称】リン チュン-ミン
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】リン チュン-ミン
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-014222(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105299001(CN,A)
【文献】米国特許第08262871(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/00-21/22
C23C 18/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の攪拌を補助するためのデバイスであって、
底部と、前記底部と角度をなす側壁を有するフレームと、
第一の可撓性フィルムであって、前記第一の可撓性フィルムの周縁部分で前記フレームに取り付けられた、第一の可撓性フィルムと、
前記フレームの前記側壁に設けられ、前記第一の可撓性フィルムの前記周縁部分に隣接する第一の磁場発生器と、
前記フレームの前記底部に近接する第二の磁場発生器であって、前記第一の磁場発生器及び前記第二の磁場発生器は、前記第一の可撓性フィルムの少なくとも一部分に平行な磁場を提供するように構成され、前記第一の可撓性フィルムは前記液体と接触するように構成される、第二の磁場発生器と、
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記第一の可撓性フィルムと接続する第一の導電性コイルをさらに備え、前記第一の導電性コイルは、前記フレームの前記底部に直交するコイル軸に対して螺旋を形成する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第一の導電性コイルは、電流を流すための2つの端子を備え、前記電流と、前記第一の可撓性フィルムの少なくとも前記一部分に平行な磁場とが相互作用すると、前記第一の導電性コイル及び前記第一の可撓性フィルムを振動させる、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記電流は、交流又は直流である、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第一の磁場発生器は、前記第一の可撓性フィルムを取り囲む複数の磁石を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第一の磁場発生器と前記第二の磁場発生器の少なくとも一方は、リング形状の磁石である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
第二の可撓性フィルムであって、前記第二の可撓性フィルムの周縁部分で前記フレームに取り付けられた第二の可撓性フィルムをさらに備え、前記第一の可撓性フィルムは、前記第二の可撓性フィルムと前記フレームの前記底部との間に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記フレームの前記側壁に設けられ、前記第二の可撓性フィルムの前記周縁部分に隣接する第三の磁場発生器と、
前記第一の可撓性フィルムと前記第二の可撓性フィルムとの間に第四の磁場発生器と、
をさらに備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第四の磁場発生器は、磁気導電性材料によって前記第二の磁場発生器に接続される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第三の磁場発生器及び前記第四の磁場発生器は、前記第二の可撓性フィルムの少なくとも一部分に平行な磁場を提供するように構成される、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記フレームは、磁気導電性材料で構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
液体の撹拌を補助するための装置であって、
前記液体を収容するように構成されたチャンバと、
前記チャンバの側壁に隣接し、前記液体と接触する振動モジュールであって、前記振動モジュールが、
底部と、前記底部と角度をなす側壁とを有するフレームと、
第一の可撓性フィルムであって、前記第一の可撓性フィルムの周縁部分で前記フレームに取り付けられた、第一の可撓性フィルムと、
前記フレームの前記側壁に設けられ、前記第一の可撓性フィルムの前記周縁部分に隣接する第一の磁場発生器と、
を備える、振動モジュールと、
前記フレームの前記底部に近接する第二の磁場発生器であって、前記第一の磁場発生器及び前記第二の磁場発生器は、前記第一の可撓性フィルムの少なくとも一部分に平行な第一の磁場を提供するように構成される、第二の磁場発生器と、
を備える、装置。
【請求項13】
前記第二の磁場発生器は、前記振動モジュールの前記底部にある、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第二の磁場発生器は、前記チャンバの前記側壁に隣接し、前記チャンバ内の水平方向に第二の磁場を提供するように構成される複数の磁石を備える、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
前記チャンバの上部壁及び下部壁に隣接し、前記チャンバ内に垂直方向の電場を提供するように構成された一対の電極
をさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項16】
前記一対の電極が前記液体と接触し、前記液体が液相析出のための溶液である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記一対の電極は、前記チャンバの前記上部壁に囲まれた第一の電極と、前記チャンバの前記下部壁に囲まれた第二の電極と、を備える、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
前記第一の電極及び前記第二の電極は、テフロン(登録商標)で囲まれ、前記液体から隔離され、前記液体は、液相析出のための溶液である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記チャンバの前記側壁に隣接し、アレイ状に配置された複数の振動モジュールをさらに備える、請求項12に記載の装置。
【請求項20】
前記振動モジュールのそれぞれに電気的に接続され、前記振動モジュールのそれぞれに入る電流の位相を制御するように構成された電流位相コントローラをさらに備える、請求項19に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
2022年12月14日に出願され、「DEVICE AND APPARATUS FOR AGITATION OF LIQUID」と題する米国特許出願第18/066,055号に記載された明細書及び図面は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、液体を攪拌するためのデバイス及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路(IC)産業は、指数関数的な成長を経験している。ICの材料及び設計における技術的進歩は、各世代が前世代よりも小型で複雑な回路を有するICの世代を生み出してきた。ICの進化の過程で、機能密度(すなわち、チップ面積あたりの相互接続されたデバイスの数)は一般に増加し、ジオメトリサイズ(すなわち、製造プロセスを使用して作成できる最小のコンポーネント(又はライン)のサイズ)は減少してきた。このような微細化プロセスは、一般に生産効率を高めるというメリットをもたらす。しかしながら、このような微細化プロセスは、ICを加工して製造するのがますます複雑になる。これらの進歩を実現するためには、ICの処理及び製造機器の改良が必要である。
【0004】
電気メッキ及び自己触媒メッキ(すなわち無電解メッキ)を含む液相析出は、IC製造に不可欠なプロセスの1つである。液相析出には、基板(例えばシリコンウェーハ)又はプリント回路基板への金属(例えば、銅)の析出が含まれる。電気メッキの場合、析出される基板エリアにシード層を形成する。電源のカソード端子はシード層に接続され、アノード端子は基板から離れた場所に配置される。基板と端子は、電気メッキ液に浸される。その結果、金属層は、電気メッキ液中の塩類とアノード端子によって供給される金属イオンから、シード層上に析出する。一方、無電解メッキは、プリント回路基板業界において最も重要な金属化技術の一つでもある。近年、マイクロビア及びスルーホールを有するような高密度プリント回路基板は、無電解メッキで処理されているが、その理由は、マイクロビア、特に1:1以上の高アスペクト比のマイクロビアの底まで金属化薬液が到達することが流体力学的により有益だからである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
本開示の態様は、添付の図と一緒に読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。当業界の標準的な慣行に従って、様々な特徴は、縮尺通りに描かれていないことに留意されたい。実際、様々な特徴の寸法は、議論を明確にするために、任意に大きくすることも、小さくすることもある。
【0006】
図1】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの概略上面図である。
図2】本開示のいくつかの実施形態に従う図1の線A-A’に沿ったデバイスの概略断面図である。
図3A】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの導電性コイルの構成を示す概略図である。
図3B】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの導電性コイルの構成を示す概略図である。
図4】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの第一の磁場発生器及び第二の磁場発生器によって確立される力の磁力線を示す概略図である。
図5】導電性コイルの概略図で、導電性コイルを流れる電流と、本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの磁場とが相互作用することで生じる力を示す。
図6】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの概略断面図である。
図7】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの概略上面図である。
図8】本開示のいくつかの実施形態に従う、図7の線B-B’に沿ったデバイスの概略断面図である。
図9A】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの導電性コイルの構成を示す概略図である。
図9B】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの導電性コイルの構成を示す概略図である。
図10】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの概略上面図である。
図11】本開示のいくつかの実施形態に従う、図10の線C-C’に沿ったデバイスの概略断面図である。
図12】本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイスの概略上面図である。
図13図12の線D-D’に沿ったデバイスの概略断面図で、本開示のいくつかの実施形態に従うデバイスの磁力線を例示する。
図14】導電性コイルの概略図で、導電性コイルを流れる電流と、図13のデバイスの磁場とが相互作用することで生じる力を示す。
図15】本開示の異なる実施形態に従う異なるメッキ装置の概略図である。
図16】本開示の異なる実施形態に従う異なるメッキ装置の概略図である。
図17】本開示の異なる実施形態に従う異なるメッキ装置の概略図である。
図18】本開示の異なる実施形態に従う異なるメッキ装置の概略図である。
図19】本開示の異なる実施形態に従う異なるメッキ装置の概略図である。
図20】本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置上の振動モジュールの配置を示す概略図である。
図21】本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置上の振動モジュールによって生成される力を示す概略図である。
図22】本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置の概略図である。
図23】本開示のいくつかの実施形態に従うモジュールの概略断面図である。
図24】本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置の概略図である。
図25】本開示の異なる実施形態に従う振動モジュールの概略断面図である。
図26】本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の開示は、提供される主題の異なる特徴を実施するために、多くの異なる実施形態又は例を提供する。本開示を簡略化するために、構成要素及び配置の具体例を以下で説明する。当然、これらは単なる例であり、限定を意図するものではない。例えば、以下の説明において、第二の特徴の全体に、又はその上に第一の特徴を形成することは、第一及び第二の特徴が直接接触して形成される実施形態を含んでもよいし、また第一及び第二の特徴が直接接触しないように、第一及び第二の特徴の間に追加の特徴を形成し得る実施形態を含んでもよい。さらに、本開示では、様々な例において、参照番号及び/又は文字を繰り返すこともある。この繰り返しは、単純化及び明確化のためであり、それ自体では、議論される様々な実施形態及び/又は構成の間の関係を指示するものではない。
【0008】
さらに、「下方に」、「下に」、「下部」、「上に」、「上部」等の空間的に相対的な用語は、本明細書では、説明を容易にするために、1つの要素又は特徴について、図面に示すような別の要素又は特徴に対する関係を説明するために使用することもある。空間的に相対的な用語は、図面に描かれている向きに加えて、使用中又は動作中のデバイスの異なる向きを包含することが意図されている。装置は、別の向きを向いていてもよく(例えば、90°回転されてもよいし、他の向きに回転されてもよい)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述子は、同様に、それに応じて解釈されてもよい。
【0009】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の例に示す数値は、可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれの試験測定において見出される標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。また、本明細書で使用される場合、「およそ」、「実質的に」、「実質」、「約」という用語は、少しの変化を述べ、説明するために用いられる。事象又は状況と結び合わせて用いるとき、これらの用語は、当該事象又は状況が正確に生じる場合、及び当該事象又は状況が近似的に生じる場合を指すことができる。例えば、数値と結び合わせて使うとき、これらの用語は、当該数値の±10%以下の変化の範囲を指すことができ、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下の範囲である。例えば、2つの数値が「実質的に」同じ又は等しいとみなすことができるのは、当該2つの数値の差がその数値の平均の±10%以下である場合、例えば、±5%以下、±4%以下、±3%以下、±2%以下、±1%以下、±0.5%以下、±0.1%以下、又は±0.05%以下の場合である。例えば、「実質的に」平行とは、角度の変化の範囲が0°に対して±10°以下であること、例えば、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、又は±0.1°以下、又は±0.05°以下であることを指すことができる。例えば、「実質的に」垂直とは、角度の変化の範囲が90°に対して±10°以下であること、例えば、±5°以下、±4°以下、±3°以下、±2°以下、±1°以下、±0.5°以下、又は±0.1°以下、又は±0.05°以下であることを指すことができる。したがって、反対に示されない限り、本開示及び添付の特許請求の範囲に提示される数値パラメータは、所望に応じて変化し得る近似である。少なとも、各数値パラメータは、報告された有効桁数を考慮して、通常の丸め技術を適用することによって、少なくとも解釈されるべきである。範囲は、本明細書では、1つのエンドポイントから別のエンドポイントまで、すなわち、2つのエンドポイントの間として表すことができる。本明細書に開示される全ての範囲は、特に明記しない限り、エンドポイントを含む。
【0010】
メッキは、半導体デバイス又はプリント回路基板(PCB)を製造するための従来のアプローチで利用される一般的な技術であるが、このような技術は、先端技術ノードにおいて欠陥を引き起こすウェーハ上の不均一な分布の問題に、しばしば直面する。無電解メッキと電気メッキが、ワークピース上に薄膜を形成する技術として一般的に使用される2種類のメッキ技術である。無電解メッキ(化学メッキ又は自己触媒メッキとも呼ばれる)は、液体浴中で金属カチオンを自己触媒的に化学還元することにより、様々な材料上に金属又は金属含有合金コーティングを形成する技術の一種であり、メッキされるワークピース(例えば、ウェーハ又は基板)を還元剤に浸漬し、還元剤は、特定の材料によって触媒されると、金属イオンをワークピースにコーティングを形成する金属に変化させる。一般に、無電解メッキ技術の利点は、互換性と製品品質であるが、無電解メッキの処理時間は、同じ厚さの膜を形成するための電気メッキの処理時間よりも長い。場合によっては、無電解メッキ技術は、導電性のワークピースと非導電性のワークピースとの両方に、より小さなサイズ又はより小さな表面積を有するワークピースも含め、適用できる。これに対して、電気メッキは、外部から発生させた電流によって、様々な材料に金属コーティングを形成する技術である。電気メッキ技術の利点には、効率もスループットも高いことが含まれるが、電気メッキは、無電解メッキ技術と比較して、互換性が低く、製品品質が劣る場合がある。
【0011】
本出願におけるメッキ技術の詳細及び用途は、2022年3月18日に出願され、「CONDUCTIVE STRUCTURE INCLUDING COPPER-PHOSPHOROUS ALLOY AND A METHOD OF MANUFACTURING CONDUCTIVE STRUCTURE」と題する米国特許出願第17/697,937号と、2022年7月28日に出願され、「INTERCONNECT STRUCTURE AND MANUFACTURING METHOD FOR THE SAME」と題する米国特許出願第17/815,613号を参照されたい。両出願の開示は、参照により本書に組み込まれる。
【0012】
本開示は、液相析出を補助するためのデバイス及び液相析出のための装置を提供し、装置は、メッキ効率を促進するためのデバイスを含む。本開示の装置は、無電解メッキ技術及び電気メッキ技術の両方で適用できる。また、本開示のアプローチは、メッキチャンバ内のイオンの分布を効果的に改善することができるため、均一性が改善された薄膜をワークピース上に形成することができる。
【0013】
図1及び図2を参照すると、図1は、本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイス500の概略上面図であり、図2は、図1の線A-A’に沿ったデバイス500の概略断面図である。デバイス500は、フレーム51と、第一の磁場発生器52と、第二の磁場発生器53と、可撓性フィルム54と、可撓性フィルム54内の導電性コイル541とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、フレーム51は、底部511と、底部511と角度を形成して、底部511に接続された側壁512とを含む。いくつかの実施形態では、側壁512は、底部511を取り囲む。いくつかの実施形態では、フレーム51は、図1に示すように、上面から見て正方形又は長方形の構成を有する。いくつかの実施形態では、フレーム51は、図2に示すように、上方向(例えば、Z方向)に向く開口部を含むオープンボックスの構成を有する。いくつかの実施形態において、フレーム51は、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、ビニル、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ステンレス鋼、他の適切な材料、又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、フレーム51は、磁気導電性材料で作られている。
【0014】
第一の磁場発生器52は、フレーム51の底部511に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、第一の磁場発生器52は、フレーム51の内側に配置され、フレーム51の内部底面51Aに取り付けられる。いくつかの実施形態では、第一の磁場発生器52は、フレーム51の底部511の中央部分に配置される。上面から見た第一の磁場発生器52の構成は、異なる用途に応じて調整することができる。いくつかの実施形態では、第一の磁場発生器52は、図1に示すように、上面から見て長方形の構成を有する。第一の磁場発生器52は、フレーム51の底部511に少なくとも部分的に直交する第一の磁場を提供するように構成される。第一の磁場発生器52は、1つ以上の磁石を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の磁石は、永久磁石であり得る。いくつかの実施形態では、永久磁石は、ネオジム(Nd)、鉄(Fe)、ホウ素(B)、それらの合金、又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態において、第一の磁場発生器52は、図1に示すように、正方形の磁石を含む。換言すれば、第一の磁場発生器52の磁石の北極及び南極は、底部511に実質的に垂直な方向(例えば、Z方向)に配置される。いくつかの実施形態では、第一の磁場発生器52の磁石の南極は、内部底面51Aに取り付けられ、第一の磁場発生器52の磁石の北極は、南極の上方にあり、第一の磁場は、内部底面51Aに直交する上方向に向けられる。説明の便宜上、磁場発生器52又は53が1つの磁石のみを含む場合、磁場発生器52又は53は、磁石52又は53と呼ぶこともある。
【0015】
第二の磁場発生器53は、フレーム51の側壁512に配置され、可撓性フィルム54に隣接されてもよい。いくつかの実施形態では、第二の磁場発生器53は、底部511と反対側の側壁512の端部に近接して側壁512に配置される。第二の磁場発生器53は、異なる用途に応じて、側壁512内に全体的又は部分的に存在し得ることに留意されたい。したがって、図は、例示することだけを目的として提供され、本開示を限定することを意図しない。第二の磁場発生器53は、1つ以上の磁石を含んでもよい。いくつかの実施形態では、第二の磁場発生器53は、底部511を取り囲む側壁512に配置された磁石531、532、533、及び534を含む。第二の磁場発生器53の磁石は、フレーム51の底部511をできるだけ均等に取り囲んでもよい。いくつかの実施形態では、磁石531、532、533及び534のそれぞれは、図1に示すように、上面から見て側壁512の一部分に沿って延びる細長い構成を有する。いくつかの実施形態では、磁石531及び533は、図1及び図2に示すように、側壁512の2つの対向部分512a及び512bに配置される。いくつかの実施形態では、磁石532及び534は、磁石531及び533の間に配置され、図1に示されるように、側壁512の2つの対向する部分に配置される。
【0016】
第二の磁場発生器53は、フレーム51の底部511に少なくとも部分的に平行な第二の磁場を提供するように構成される。いくつかの実施形態では、第二の磁場発生器53の磁石531、532、533及び534のそれぞれの北極及び南極は、底部511に実質的に平行な方向(例えば、X方向)に配置される。いくつかの実施形態では、磁石531、532、533及び534のそれぞれの南極は、フレーム51の内側を向き、磁石531、532、533及び534のそれぞれの北極は、フレーム51の外側を向いている。
【0017】
可撓性フィルム54は、可撓性フィルム54の周辺部分543でフレーム51に取り付けられることがある。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54の周辺部分543は、フレーム51の側壁511内に取り付けられ、保持され、又は固定される。可撓性フィルム54は、フレーム51の底部511に対して実質的に平行であってよい。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54は、フレーム51の底部511の全カバー領域にわたって延びる。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54は、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(又はエチレンテレフタレート)(PET)、味の素ビルドアップフィルム(ABF)、他の適切な材料、又はそれらの組合せを含む。可撓性フィルム54は、蒸着中にメッキ液に振動運動を与えるように構成されている。可撓性フィルム54及びフレーム51は、共に共振キャビティを規定し、可撓性フィルム54と内部底面51Aとの間の距離d1は、共振キャビティの高さを規定する。共振空洞を満たす材料に応じて距離d1を調整することにより、メッキ(又は蒸着)効率を最適化することができる。詳細な説明を以下の段落で提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54は、特に可撓性フィルム54の低振動数における可撓性フィルム54の振動振幅を促進する目的で、バネとして機能するオーバーハング部分542を含む。いくつかの実施形態では、オーバーハング部分542は、図1に示すように、上面から見てオープンリング形状の構成を有する。オーバーハング部分542のリング形状は、円、正方形、三角形、六角形、又は異なる用途に応じた別の適切な形状であり得ることに留意されたい。図1に示すオーバーハング部分542の円形リング形状は、例示的な実施形態によるものであり、本開示はこの形状に限定されない。
【0019】
導電性コイル541は、可撓性フィルム54に接続され、フレーム51の底部511に実質的に直交するコイル軸に対して螺旋を形成する。いくつかの実施形態では、導電性コイル541は、可撓性フィルム54内に配置される。いくつかの実施形態では、導電性コイル541は、可撓性フィルム54によって封止又はカプセル化されている。いくつかの実施形態では、導電性コイル541は、可撓性フィルム54の中央領域にあり、オーバーハング部分542によって取り囲まれている。いくつかの実施形態では、導電性コイル541は、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、又は他の適切な材料を含む。図1の上面から見た導電性コイル541の構成は、異なる用途に応じて変更してもよい。理解及び例示を容易にする目的で、導電性コイル541は、可撓性フィルム54の要素と見なすことができる。
【0020】
図3A及び図3Bを参照すると、図3A及び図3Bは、本開示の異なる実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイス500の導電性コイル541の概略上面図である。いくつかの実施形態では、図3Aに示すように、導電性コイル541は、上面から見て円形の構成を有する。いくつかの実施形態では、図3Bに示すように、導電性コイル541は、上面から見て長方形の構成を有する。いくつかの実施形態では、導電性コイル541は、可撓性フィルム54のX-Y平面上で、そのコイル軸541aから螺旋状に延びる。図3A及び図3Bに示す構成は、例示を目的とし、本開示を限定することを意図するものではないことに留意されたい。上記に例示したように、導電性コイル541の構成は、異なる用途に応じて設計することができる。
【0021】
導電性コイル541は、導電性コイル541の両端において導電性ライン545a、545bと接続されている。導電性ライン545a及び545bは、上に列挙したような導電性コイル541の導電性材料から選択される導電性材料で作ることができる。いくつかの実施形態では、導電性ライン545a及び545bは、可撓性フィルム54によって封止又はカプセル化される。いくつかの実施形態では、導電性ライン545a及び545bは、オーバーハング部分542のリング形状の導電性コイル541から、オーバーハング部分542の開口部を介してオーバーハング部分542のリング形状の外側の可撓性フィルム54の一部分まで延びる。導電性ライン545a、545bは、導電性コイル541に/から電流を流すためのものである。
【0022】
図1及び図2に戻って参照すると、デバイス500は、第二の磁場発生器53をフレーム51に固定するように構成された複数の固定要素55をさらに含んでもよい。固定要素55は、杭、釘、ネジ、リベット、他の適切なファスナ、又はそれらの組合せを含んでもよい。いくつかの実施形態では、固定要素55は、磁気導電性材料で作られている。固定要素55は、フレーム51の上面51Cから側壁512に挿入され、第二の磁場発生器53の磁石531、532、533、534のそれぞれの少なくとも一部分に延びてもよい。いくつかの実施形態では、固定要素55の少なくとも1つは、図2に示すように、磁石531、532、533、及び534の少なくとも1つを貫通する。いくつかの実施形態では、固定要素55の少なくとも1つは、可撓性フィルム54の周辺部分543で可撓性フィルム54を貫通する。
【0023】
図4を参照すると、図4は、デバイス500の第一の磁場発生器52及び第二の磁場発生器53によって確立される磁力線を示す概略図である。第一の磁場発生器52(以下、「磁石」と呼ぶこともある)と第二の磁場発生器531(以下、「磁石」と呼ぶこともある)とは、一端で磁石52の近傍でフレーム51の底面に垂直に、他端で磁石531の近傍で可撓性フィルム54の平面に実質的に平行に、磁場B21(例えば、磁力線で描かれて表現されている)を共通して構築していく。次いで、磁場B21は、磁場B11でラベル付けされているように、水平方向(-X方向)に沿ってフレーム51の内部側壁面51Eから外部側壁面51Dに向かって磁石531に入り、フレーム51の内部の磁導ルート(例えば、フレーム51は磁気導電性材料で作ることができる)を通って磁石52に戻るように周回する。磁石52の内部の磁場はB12とラベル付けされ、先に説明した磁場B21の原点に合致し、閉ループを形成する。図4に描かれた磁場B12、B21、及びB11は、図1の線A-A’に沿った断面で確立される磁場の設計とすることができる。
【0024】
同様に、第一の磁場発生器52(以下、「磁石」と呼ぶこともある)と第二の磁場発生器533(以下、「磁石」と呼ぶこともある)とは、一端で磁石52の近傍でフレーム51の底面に垂直に、他端で磁石533の近傍で可撓性フィルム54の平面に実質的に平行に、磁場B22(例えば、磁力線で描かれて表現されている)を共通して構築していく。次いで、磁場B22は、磁場B13でラベル付けされているように、水平方向(+X方向)に沿ってフレーム51の内部側壁面51Eから外部側壁面51Dに向かって磁石533に入り、フレーム51の内部の磁気導電ルートを通って磁石52に戻るように循環している。磁石52の内部の磁場はB12とラベル付けされ、先に説明した磁場B22の原点と合致し、閉ループを形成する。図4に描かれた磁場B12、B22、及びB13は、図1の線A-A’に沿った断面で確立される磁場の設計とすることができる。
【0025】
図5を参照すると、図5は、導電性コイル541の概略図で、導電性コイル541を流れる電流と、図4で以前に論じた磁場B21及びB22とが相互作用することで生じ、導電性コイル541に作用する力を示す。時刻T1において、電流Cは、図5で矢印で示すように、反時計回りの方向に従って導電性コイル541を流れることがある。時刻T2において、電流Cは、時計回り方向(図5には図示せず)に従って導電性コイル541に流れることもある。例えば、磁場B21は、導電性コイル514の平面に対して実質的に平行であり、-X方向を向いている。ローレンツ力の式(I)によれば、qはカチオンの電荷、Vは電子の速度、Eは電場、Bは磁場、Fはカチオンに作用する電磁気力である。図5に例示するように、導電性コイル514の左部分及び右部分のそれぞれの磁場B21及びB22が確立されると、力Fがカチオンに加えられので、導電性コイル514の本体及びそれに接続された可撓性フィルム54は、電場Eがない状態で、紙面の内側又は紙面に向かう方向を指す(すなわち、図5を見る人から離れる)。
【0026】
F=q(E+V×B) (I)
【0027】
その結果、可撓性フィルム54には、紙面の内側の方向又は紙面に向かう方向の力Fが加わる。これに対して、他の条件を変えずに時計回り方向(図5では図示せず)に従って導電性コイル541に電流Cを流すと、その結果、可撓性フィルム54に加えられる力Fは、紙面から外側に向かう方向(すなわち、図5を見る人に向かう方向)になる。いくつかの実施形態では、電流Cは、交流電流又は直流電流であり得る。導電性コイル541が、1%~90%の間のデューティサイクルを有する交流電源又は直流電源に接続されると、可撓性フィルム54の振動運動が発生する。いくつかの実施形態では、交流電源又は直流電源は、50%のデューティサイクルを有する。メッキ液に適用される可撓性フィルム54の振動運動は、そこに物理的な攪拌を提供するので、液相析出効率を向上させることができる。デバイス500が提供する振動は、メッキチャンバ内のメッキ液に様々な強度の機械的攪拌を与え、反応剤の運動及び衝突を促進し、したがって、液相析出の効率を向上させることができる。また、このように説明されたメッキプロセスによってワークピース上に形成されたメッキ膜の均一性も向上させることができる。
【0028】
図2に戻って参照すると、可撓性フィルム54と内部底面51Aとの間の距離d1は、デバイス500の共振キャビティの高さを定義する。可撓性フィルム54の振動効率は、共振キャビティ内の材料に応じた距離d1の調整によって制御することができる。振動効率は、距離d1が、下記の式(II)(式中、nは整数、λは音響波長、vは音速、fは音響周波数)で定義される音響波長の整数倍に等しいときに最適化することができる。
【0029】
d1=nλ=nv/f (II)
【0030】
いくつかの実施形態では、共振キャビティは空気で満たされており、デバイス500の振動媒体は空気である。したがって、音速vは、空気中の音速である約330メートル/秒(m/s)であるべきである。n=1の場合(デバイス500の厚さを最小化すると同時に振動効率を最適化する目的で)、本開示の異なる実施形態に従って式(II)によって得られる音響周波数f及び対応する距離d1(すなわち、共振キャビティの高さ)を以下の表1に提供する。
【表1】
【0031】
上記に例示したようなデバイス500は、液相析出の効率を高めるために振動を与えることができる。デバイス500の厚さは、上述した距離d1を調整することによって調整することができる。しかしながら、図1及び図2に示すデバイス500は、本開示の概念を説明するための例示的な実施形態であり、本発明を限定することを意図するものではない。
【0032】
本開示では、上述したものと同じ発明概念を有する本発明の複数の実施形態を提供する。明確化及び簡略化の目的のために、同一又は同様の機能を有する要素の参照番号は、異なる実施形態において繰り返される。しかしながら、このような使用は、本開示を特定の実施形態又は特定の要素に限定することを意図していない。簡潔化のため、以下の明細書では、他の実施形態との相違点のみを強調し、同様又は同一の要素、機能及び特性の説明を省略する。さらに、異なる実施形態で例示した条件又はパラメータは、使用するパラメータ又は条件が矛盾しない限り、組み合わせたり変更したりして、異なる組合せの実施形態を有することもできる。
【0033】
図6を参照すると、図6は、本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイス501の概略断面図である。いくつかの実施形態において、可撓性フィルム54は、フレーム51の側壁512の上面51Cに取り付けられる。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54の全体は、フレーム51の上に配置される。可撓性フィルム54は、接着剤、シリコーン、固定要素55、又は他の適切な材料によってフレーム51上に固定してもよい。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54は、固定要素55によって固定され、固定要素55の配置は、図2に示す配置と同様である。いくつかの実施形態では、固定要素55は、フレーム51の上面51Cから側壁512に挿入され、それによって、上面51Cの上に可撓性フィルム54を固定する(図2に示すものと同様であるが、図6には図示せず)。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54は、接着剤又はシリコーンによってフレーム51上に固定され、固定要素55は、図6に示すように、第二の磁場発生器53を固定するために使用される。いくつかの実施形態では、固定要素55は、図6に示すように、フレーム51の外部側壁面51Dから側壁512に挿入される。いくつかの実施形態では、固定要素55は、フレーム51の内部側壁面51Eから側壁512に挿入される(図示せず)。固定要素55は、第二の磁場発生器53を貫通しても、貫通しなくてもよい。いくつかの実施形態では、固定要素55は、図6に示すように、第二の磁場発生器53の中に延び、その内部で停止する。同様に、固定要素55は、フレーム51の側壁512を貫通しても、貫通しなくてもよい。デバイス501の上面図は、図1に示すデバイス500の上面図と同様であり得、繰り返しの図示は、本明細書で省略する。フレーム51上に可撓性フィルム54を配置するために、デバイス501の厚さは、デバイス500の厚さよりも小さくてもよい。
【0034】
図7及び図8を参照すると、図7は、本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイス502の概略上面図であり、図8は、図7の線B-B’に沿ったデバイス502の概略断面図である。デバイス502は、デバイス500と同様であるが、リング形状の磁石52と、中央に緩いコイル密度を有するリング形状の導電性コイル541とを含む。デバイス502の導電性コイル541は、デバイス500の導電性コイル541と同様であってもよいが、デバイス502の導電性コイル541は、デバイス500の導電性コイル541の最内輪の半径よりも大きな半径を有する最内輪を含む。図9A及び図9Bは、本開示の異なる実施形態に従うデバイス502の導電性コイル541の概略上面図である。図9A及び図9Bは、説明の目的で提供される例示的な実施形態であり、本開示を限定することを意図するものではない。
【0035】
図10及び図11を参照すると、図10は、本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイス503の概略上面図であり、図11は、図10における線C-C’に沿ったデバイス503の概略断面図である。いくつかの実施形態では、デバイス503は、垂直方向に配置され、互いに実質的に平行な複数の可撓性フィルム(例えば、54a及び54b)を含む。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54aは、可撓性フィルム54bの上にあり、距離d2だけ可撓性フィルム54bから離間している。距離d2は、可撓性フィルム54aの共振キャビティの高さを規定し、可撓性フィルム54aと可撓性フィルム54bとの間の距離と等しい。いくつかの実施形態では、距離d2は、デバイス503の振動効率を最大化する目的で、可撓性フィルム54aの共振キャビティの共振周波数を可撓性フィルム54bの共振キャビティの共振周波数と同一にするために、距離d1に実質的に等しい。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54aは、図10に示す上面図において、可撓性フィルム54bの全体と重なる。
【0036】
可撓性フィルム54aは、デバイス500の可撓性フィルム54と同様又は同一であり得、可撓性フィルム54bは、可撓性フィルム54aとフレーム51の底部511の間に配置される。可撓性フィルム54bは、デバイス502の可撓性フィルム54と同様であり得るが、接続構造523を通過させる開口部544をさらに含む。可撓性フィルム54bと接続された導電性コイル541bは、開口部のエリアを避けて、接続構造523を通過させてもよい(例えば、導電性コイル541bは図9A及び9Bに示すものと同様とすることができる)。導電性コイル541bは、デバイス502の導電性コイル541と同様であるか、又は実質的に同一であることができる。いくつかの実施形態では、導電性コイル541bは、開口部544に隣接する点から螺旋状に広がっている。
【0037】
可撓性フィルム54aの少なくとも一部分及び可撓性フィルム54bの一部分に平行な磁場を発生させる目的で、第一の磁場発生器52は、複数の磁石(例えば、521及び522)を含んでもよく、磁石は垂直に配置されている。いくつかの実施形態では、第一の磁場発生器52の磁石521は、フレーム51の底面51(又は内部底面51A)に配置される。磁石521の配置は、上記に例示したデバイス500の磁石52の配置と同様とすることができ、本明細書では繰り返しの説明を省略する。いくつかの実施形態では、第一の磁場発生器52の磁石522は、可撓性フィルム54aと54bとの間に配置される。いくつかの実施形態では、距離d21と距離d22との間の比は、1:4~3:2の範囲であり、距離d21は、垂直方向に沿って可撓性フィルム54aから磁石522の中心線(点線で示す)まで測定され、距離d22は、磁石522の中心線から可撓性フィルム54bまで測定される。図11の断面に見られるような磁石521の幅W1は、磁石522の幅W2より小さいことも、実質的に等しいことも、あるいは大きいこともあり得る。いくつかの実施形態では、図11に示すように、磁石522の幅は、磁石521の幅よりも小さい。溶液上でデバイス503の共振効率に対する磁石522の悪影響を最小限に抑える目的で、磁石521の幅W1は、フレーム51の空洞の幅W3(例えば、図10の線C-C’に沿って図11に示す内部側壁面51Eの異なる部分間の距離)の1/3~1/2の間である。いくつかの実施形態では、磁石522は、図10に示すような上面から見て、磁石521よりも小さい。上面から見た磁石521及び522の構成は、図10に示すような円形状に限定されないことに留意されたい。図10に示す磁石521及び522の円形状は、説明のための例示的な実施形態である。さらに、磁石521、522は、用途に応じて上面から見て異なる形状とすることができる。
【0038】
磁石522は、接続構造523によって支持することができる。いくつかの実施形態では、接続構造523は、磁石521と522との間に配置され、磁石521と522を磁気的に接続している。いくつかの実施形態では、接続構造523は、可撓性フィルム54bの開口部544を通過する。いくつかの実施形態では、接続構造523は、磁気導電性材料を含む。接続構造523が磁気導電性材料を含む場合、接続構造523は、第一の磁場発生器52の一部と見なすことができる。
【0039】
第二の磁場発生器53は、垂直に配置された磁石を含んでもよい。第二の磁場発生器53は、第二の複数の磁石53bに垂直方向に重なる第一の複数の磁石53aを含んでもよい。いくつかの実施形態では、第一の複数の磁石53aは、図1及び図2に示すデバイス500の第二の磁場発生器53の磁石531、532、533及び534の配置と同様の配置で、磁石531a、532a、533a及び534aを含む。いくつかの実施形態では、第二の複数の磁石53bは、磁石531a、532a、533a及び534aのそれぞれと垂直に整列した磁石531b、532b、533b及び534bを含む。いくつかの実施形態では、第一の複数の磁石53aの磁石531a、532a、533a、及び534aのそれぞれは、1つ以上の固定部材55aによってフレーム51上に固定される。固定部材55aは、上面51C、内部側壁面51E又は外部側壁面51Dからフレーム51の側壁512に水平又は垂直に延びる(又は挿入される)ことができる。いくつかの実施形態では、第二の複数の磁石53bの磁石531b、532b、533b及び534bのそれぞれは、1つ以上の固定部材55bによってフレーム51に固定される。固定部材55bは、内部側壁面51E又は外部側壁面51Dからフレーム51の側壁512に水平に延びる(又は挿入される)ことができる。
【0040】
第一の複数の磁石53aは、可撓性フィルム54aの上方で、フレーム51の上面51Cに近接して配置されてもよい。いくつかの実施形態では、磁石531a、532a、533a及び534aは、可撓性フィルム54aの周辺領域543aに隣接して配置される。磁石522及び第一の複数の磁石53aは、上述し、図4に例示した磁場B21及びB22と同様の磁場をもたらすことができ、可撓性フィルム54aの導電性コイル541aに電流が供給されると、可撓性フィルム54aの振動運動を発生させることができる。
【0041】
第二の複数の磁石53bは、可撓性フィルム54aと54bとの間で、可撓性フィルム54bに近接して配置されてもよい。いくつかの実施形態では、磁石531b、532b、533b及び534bは、可撓性フィルム54bの周辺領域543bに隣接して配置される。磁石521及び第二の複数の磁石53bは、上述し、図4に例示した磁場B21及びB22と同様の磁場をもたらすことができ、可撓性フィルム54bの導電性コイル541bに電流が供給されると、可撓性フィルム54bの振動運動を発生させることができる。
【0042】
図12及び図13を参照すると、図12は、本開示のいくつかの実施形態に従う液相析出を補助するためのデバイス504の概略上面図であり、図13は、図12の線D-D’に沿ったデバイス504の概略断面図である。デバイス504は、デバイス500と同様であってもよいが、フレーム51の構成と、図12に示す上面から見た第二の磁場発生器53の幾何学的構成とが異なる。いくつかの実施形態では、フレーム51は、上面図で円形の構成を有する。いくつかの実施形態では、第二の磁場発生器53は、リング形状の磁石を含む(第二の磁場発生器53は、本明細書において磁石53と呼ぶこともある)。いくつかの実施形態では、磁石53は、フレーム51の側壁512内で、側壁512に沿って延び、側壁51は、リング形状の構成を有する。いくつかの実施形態では、磁石53は、固定部材55なしで側壁512によって封止され、側壁512に固定される。
【0043】
さらに、デバイス504は、デバイス500と同様であってもよいが、図4に先に例示したように、デバイス500の第一及び第二の磁場発生器52及び53とは異なる第一及び第二の磁場発生器52及び53の極性配置を有する。第一の磁場発生器52(以下、「磁石」と呼ぶこともある)と、第二の磁場発生器53(以下、「磁石」と呼ぶこともある)の一部分531とは、一端で磁石52の近傍でフレーム51の底面に垂直に、他端で磁石53の一部分531の近傍で可撓性フィルム54の平面に実質的に平行に、磁場B21(例えば、磁力線で描かれて表現されている)を共通して構築していく。次いで、磁場B21は、磁石52に入り、磁石52に蓄積された磁場B12と接続し、フレーム51の内部の磁気導電ルート(例えば、フレーム51は、磁気導電性材料で作ることができる)を通って、磁石53の一部分531に戻るように循環している。磁石53の一部分531の内部の磁場は、B11とラベル付けされ、先に説明した磁場B21の原点に合致し、閉ループを形成する。図13に描かれた磁場B11、B21、及びB12は、図12の線D-D’に沿った断面で確立される磁場の設計とすることができる。
【0044】
同様に、第一の磁場発生器52(以下、「磁石」と呼ぶこともある)と第二の磁場発生器53(以下、「磁石」と呼ぶこともある)の一部分533とは、一端で磁石52の近傍でフレーム51の底面に垂直に、他端で磁石53の一部分533の近傍で可撓性フィルム54の平面に実質的に平行に、磁場B22(例えば、磁力線で描かれて表現されている)を共通して構築していく。次いで、磁場B22は、磁石52に入り、磁石52に蓄積された磁場B12と接続し、フレーム51の内部の磁気導電ルート(例えば、フレーム51は、磁気導電性材料で作ることができる)を通って、磁石53の一部分533に戻るように循環している。磁石53の一部分533の内部の磁場は、B13とラベル付けされ、先に説明した磁場B22の原点に合致し、閉ループを形成する。図13に描かれた磁場B13、B22、及びB12は、図12の線D-D’に沿った断面で確立される磁場の設計とすることができる。
【0045】
図14を参照すると、図14は、デバイス504の導電性コイル541の概略図で、導電性コイル541を流れる電流と、図13で以前に論じた磁場B21及びB22とが相互作用することで生じ、導電性コイル541に作用する力を示す。前述したローレンツ力の式(I)によれば、可撓性フィルム54は、紙面から外側に向かう方向(すなわち、図14を見る人に向かう方向)に力Fを経験する。メッキ液に適用される可撓性フィルム54の振動運動は、そこに物理的な攪拌を与えるので、液相析出効率を向上させることができる。デバイス504が提供する振動は、メッキチャンバ内のメッキ液に様々な強度の機械的攪拌を与え、反応剤の移動及び衝突を促進し、したがって、液相析出の効率を向上させることができる。このように説明されたメッキプロセスによってワークピース上に形成されるメッキ膜の均一性も向上させることができる。
【0046】
図15を参照すると、図15は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置201の概略側面図である。メッキ装置201は、液相析出のための装置を含む。メッキ装置201は、チャンバ11と、1つ以上の振動モジュール20とを含む。チャンバ11は、メッキ液と、チャンバ11内に配置された、半導体基板、ウェーハ、プリント回路基板等であり得るワークピースSBとを収容し、ワークピースSB上にメッキ膜を形成できるように構成される。図に描かれたワークピースSBは、チャンバ11内の相対的な位置を示すための例示を目的としていることに留意されたい。ワークピースSBは、メッキプロセス中にチャンバ11内に配置され、台座、ラック、又はワークピースSBを固定し、その上にメッキされるべき表面を露出させる任意の支持部材(例えば、図26に示す支持構造80、詳細説明は関連段落に記載)上に配置することができる。さらに、図に示すワークピースSBの数又は向きは、例示することだけを目的としている。いくつかの実施形態では、複数のワークピースSBをチャンバ11内に配置することができる。ワークピースSBの向きは、水平方向(例えば、チャンバ11の下部側壁114又は図15のX方向に沿う方向)又は垂直方向(例えば、下部側壁114又は図15のZ方向に対して実質的に直交する方向)に沿うことができる。いくつかの実施形態では、図に示すワークピースSBは、1つ以上の基板を配置するためのエリアを表すことができ、メッキ膜は、そのエリア内の1つ以上の基板の全ての露出面に形成することができる。いくつかの実施形態において、メッキ膜は、銅-リン膜(CuPを含み得る)又は銅膜であり得る。
【0047】
1つ以上の振動モジュール20は、チャンバ11の側壁111及び113の少なくとも1つに近接して配置される。いくつかの実施形態では、振動モジュール20は、チャンバ11の側壁111内に部分的に配置されているか、又は側壁111によって部分的に囲まれている。いくつかの実施形態では、振動モジュール20は、1つ以上の個別のデバイス505又は506を指す。デバイス505又は506のそれぞれは、図示して上述したようなデバイス500、501、502、503及び504のうちの1つと同様とすることができる。デバイス505又は506の可撓性フィルムをチャンバ11内のメッキ液と接触させるために、可撓性フィルムを固定する開放側は、側壁111又は113の内面111a又は113aに近接し、それによってメッキ液に面し、接触していなければならない。いくつかの実施形態では、デバイス505又は506のフレームの外部底面(例えば、図2、6、8、11又は13の51B)は、側壁111又は113の外面111B又は113Bに近接し、又はそれに向かって面している。いくつかの実施形態では、デバイス505又は506のフレームの上面(例えば、図2、6、8、11又は13の51C)は、内面111A又は113Aに近接している。いくつかの実施形態では、デバイス505又は506に接続された電気コンポーネント又は要素(例えば、デバイス505又は506の導電性コイルに電気経路を提供するワイヤ、又は導電性コイルへの電気接続を制御する処理ユニット)は、チャンバ11の側壁111又は113に囲まれてもよいし、あるいはメンテナンスの利便性を目的として少なくとも側壁111又は113の外面111B又は113Bからアクセス可能であってもよい。
【0048】
図15に描かれているように、各デバイス505又は506の第一の磁場発生器は、デバイス500、501、502、503及び/又は504の第一の磁場発生器52等のように、組み合わせて、水平方向(例えば、X方向)に沿ってチャンバ11を横切って磁場B1を提供する。いくつかの実施形態では、デバイス505又は506の第一の磁場発生器の全てが、同じ極性を有し、同じ方向(例えば、左にS、右にN)に配向されているので、磁場B1は、図15に描かれるように、チャンバ11の側壁111から側壁113に向かう方向を有する。いくつかの他の実施形態では、デバイス505又は506の第一の磁場発生器の全てが、同じ極性を有し、同じ方向(例えば、左にN、右にS)に配向されているので、磁場は、チャンバ11の側壁113から側壁111に向かう方向を有する(図15に図示せず)。前述したローレンツ力の式(I)によれば、振動モジュール20によって引き起こされるメッキ液への撹拌とともに、磁場B1の存在に起因して、メッキ液中の(正又は負の)帯電イオン/反応剤が受ける力Fを発生させることができ、帯電イオン/反応剤が螺旋軌道になって、ワークピースSBのメッキ面に到達することができる。このような螺旋軌道は、帯電イオン/反応剤がキンクに衝突する可能性、又は総ギブス自由エネルギーを低下させるサイトが結合する可能性を高めるので、メッキ膜の生産効率及び均一性を向上させることができる。
【0049】
振動モジュール20のそれぞれのデバイスの数は、本明細書のものに限定されないことに留意されたい。図15に示す5つのデバイス505及び5つのデバイス506は、例示することだけを目的としている。
【0050】
メッキ装置201は、複数の導管をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、メッキ装置201は、チャンバ11の上部壁112を通って延び、チャンバ11への又はチャンバ11からの液体経路を提供する1つ以上の導管71を含む。いくつかの実施形態では、導管71は、化学物質又はメッキ液をチャンバ11内に供給するように構成される。いくつかの実施形態では、メッキ装置201は、チャンバ11の下部壁114を通って延び、チャンバ11への又はチャンバ11からの液体経路を提供する1つ以上の導管72を含む。いくつかの実施形態では、導管72は、チャンバ11から化学物質又はメッキ液を排出するように構成される。
【0051】
本開示は、振動モジュールを含むメッキ装置を提供し、振動モジュールのそれぞれは、液相析出を補助するためのデバイスの少なくとも1つを含む。デバイスの磁場発生器によって確立された局所磁場と、前記装置の導電性コイル内の電流の流れとが相互作用すると、その結果、振動モジュールの可撓性フィルムが振動する。デバイスの個々の磁場発生器によって確立されたマクロ磁場と、メッキ液中の帯電イオン/反応剤とが相互作用すると、その結果、前記帯電イオン/反応剤の螺旋軌道が生じる。この振動により、メッキプロセス中のメッキチャンバ内のメッキ液を撹拌すること、又は掻き混ぜることが容易になり、マクロ磁場が帯電イオン/反応剤に螺旋軌道を提供して、メッキ効率及び膜の均一性が向上する。
【0052】
図16を参照すると、図16は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置202の概略側面図である。メッキ装置202は、メッキ装置201と同様であり得るが、チャンバ11の側壁111の内面111Aと、側壁111と反対側の側壁113の内面113A上に配置された振動モジュール20を含む。いくつかの実施形態では、振動モジュール20のデバイス505又は506のそれぞれは、例えば、シリコーン又は他の適切な材料によって、内面111A又は113Aに取り付けられ、又は固定されている。図16に示す実施形態は、本開示のデバイスをメッキチャンバに容易に統合できるという利点を提供し得る。
【0053】
図17を参照すると、図17は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置203の概略側面図である。メッキ装置203は、無電解メッキ装置又は電気メッキ装置として使用することができ、メッキ装置201と同様であってもよいが、メッキ装置203の垂直方向に渡って配置された一対の電極をさらに含む。例えば、一対の電極は、チャンバ11の内部に配置され、メッキ操作中にメッキ液にさらされる正電極63及び負電極64を含む。いくつかの実施形態では、メッキ装置203は、ワークピースSBの上に配置され、正電極63と負電極64との間にあるセパレータ70をさらに含む。いくつかの実施形態では、セパレータ70は、プロトン交換膜又は高分子電解質膜(PEM)である。いくつかの実施形態では、セパレータ70は、パーフルオロ膜(NAFION(登録商標)膜として市販されている)である。セパレータ70は、正イオン又はメッキ膜の析出の反応剤に対してのみ透過性であり、あるいはセパレータ70は、メッキ液中の水及びカチオンに対して透過性であり、したがって、メッキ膜の品質を向上させることができる。
【0054】
正電極63及び負電極64は、図17に示すように、下方向を有する電場E1を提供する。いくつかの実施形態では、メッキ装置203が電気メッキ装置として使用されるとき、正電極63は、電気メッキ操作中に電源13に電気的に接続される。いくつかの実施形態では、メッキ装置203が無電解メッキ装置として使用されるとき、正電極63は、無電解メッキ操作中に電源13から電気的に切り離される。
【0055】
ワークピースSB上の金属膜又は金属含有合金膜のコーティングを容易にするために、カチオン又は正反応剤は、ワークピースSBに向かって、又は図17における下方向に案内されることが望ましい。下向きの電場E1が存在することに起因して、メッキ液中の正反応剤に作用する下向きの力が発生する。磁場B1と電場E1とが相互作用すると、正反応剤は、前述したローレンツ力の式(I)に従って、下向きの螺旋軌道を辿るように案内される。本開示のメッキ装置203は、メッキ液中の正反応剤をワークピースSBに向けての移動を促進し、メッキ効率を向上させることができる。このような下向き螺旋軌道は、正反応剤がキンクに衝突する可能性、又は総ギブス自由エネルギーを低下させるサイトが結合する可能性を高めるので、メッキ膜の生産効率及び均一性を向上させることができる。さらに、正反応剤の下向き運動とは対照的に、前述の磁場と電場を確立すると、メッキ液中の負反応剤の上向き螺旋運動も生じる。負の反応剤の上向き移動は、正反応剤と負反応剤が分離されず、還元反応を促進する中途で衝突した場合に、正反応剤の還元を防止することができるので、液相析出の効率を向上させることができる。いくつかの実施形態では、セパレータ70は、電子又はカチオンを含む負反応剤が正電極63に析出するように上方に移動することをブロックするように選択することができ、その場合、液相析出中の正電極63の機能に影響を及ぼすことがある。したがって、セパレータ70の存在によって、析出膜の品質を向上させることができる。
【0056】
図18を参照すると、図18は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置204の概略側面図である。メッキ装置204は、無電解メッキ装置として使用することができ、メッキ装置203と同様であってもよいが、メッキ操作中にメッキ液から分離された正電極61及び負電極62を含む。いくつかの実施形態では、正電極61及び負電極62は、メッキ装置203を垂直方向に横断する電場を確立する目的のためであるが、メッキ液と接触していない。
【0057】
いくつかの実施形態では、メッキ装置204は、上部壁112の内部に配置された正電極61と、上部壁112とは反対側の下部壁114の内部に配置された負電極62とを含む。いくつかの実施形態では、電極61及び62は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE又はテフロン(登録商標))、ビニル、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ステンレス鋼、適切な誘電材料、他の適切な材料、又はこれらの組合せによって囲まれる。正電極61と負電極62の両方は、無電解メッキプロセス中にメッキ液から分離され、電気的に絶縁される。
【0058】
正電極61及び負電極62は、チャンバ11を垂直方向に横断する電場E1を提供するように構成される。図18の磁場B1及び電場E1を示す矢印は、例示を目的とし、図18の矢印のサイズが他の図の矢印のサイズと異なっていても、磁場B1及び電場E1のカバー率又は強度を示すことを意図していないことに留意されたい。磁場B1又は電場E1のカバー率又は強度は、振動モジュール20の第一の磁場発生器52によって、又は電極61及び62に加えられるバイアスによって決定される。いくつかの実施形態では、正電極61は、電源13に電気的に接続され、負電極62はグランドに接続される。磁場B1と電場E1とを組み合わせると、その結果、メッキ液中のイオンの螺旋運動が生じ、無電解メッキプロセスを促進し、析出速度を向上させる。さらに、磁場と電場とが相互作用すると、その結果、メッキ液中のアニオンが上向き螺旋運動が生じる。したがって、本発明のメッキ装置204は、セパレータ70がない場合でも、メッキ液中のカチオンとアニオンとの分離を促進し、メッキ効率をさらに向上させることができる。
【0059】
図19を参照すると、図19は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置300の概略図である。メッキ装置300は、メッキ装置201、202、203及び204のうちの1つと同様であり得るが、電流位相コントローラ12をさらに含む。例示を目的として、以下の説明は、図15で以前に取り上げたメッキ装置201における同じ数字ラベルを参照する。
【0060】
電流位相コントローラ12は、メッキ液中の帯電した(正又は負の)反応剤の運動のより多目的な制御を提供するために、振動モジュール20のそれぞれの導電性コイルに入る電流の位相を制御するように構成される。いくつかの実施形態では、振動モジュール20のデバイスのそれぞれの導電性コイルは、電流位相コントローラ12に電気的に接続される。異なる導電性コイルは、帯電した反応剤に局所的に(例えば、指定された位相を有する導電性コイルに近接して)異なる方向の力Fを作用させるために、異なる位相を有する電流を同時に供給される。デバイス211、212、213、214及び215のそれぞれは、磁場の方向が一致している限り、デバイス500、501、502、503及び504のうちの1つと同様であり得る。同様に、デバイス221、222、223、224及び225のそれぞれは、磁場の一貫した方向を有する限り、デバイス500、501、502、503及び504のうちの1つと同様であり得る。
【0061】
いくつかの実施形態では、異なる位相の電流が、デバイス211~215及び221~225の導電性コイルに入る。一定間隔を有する異なる電流位相角は、反時計回り又は時計回り方向に配置された隣接する導電性コイルに適用することができる。例えば、反時計回り方向に配置された隣接する導電性コイルは、電流位相コントローラ12によって設定される電流位相差の一定間隔を有する。いくつかの実施形態では、反時計回り方向に配置された隣接する導電性コイルに割り当てられた電流位相角の一定間隔は、正又は負とすることができ、このように配置された隣接する導電性コイルの間で電流位相角を大きくすることも、小さくすることもできるようにすることができる。その結果、帯電反応剤に作用する力は、図19に湾曲した矢印で示すように、帯電反応剤の巨視的な流れを反時計回り方向に案内する。
【0062】
例えば、以下の表2に示すように、デバイス225は0(又は360)°の位相角を有する電流を、デバイス224は36°の位相角を有する電流を、デバイス223は72°の位相角を有する電流を、デバイス222は108°の位相角を有する電流を、デバイス221は144°の位相角を有する電流を、デバイス211は180°の位相角を有する電流を、デバイス212は216°の位相角を有する電流を、デバイス213は252°の位相角を有する電流を備え、デバイス214は288°の位相角を有する電流を、デバイス215は324°の位相角を有する電流を提供する。デバイス211~215及び221~225の異なる導電性コイルに対応する異なる結果の力の位相も表2に示されている。全ての結果として生じる力の組合せは、メッキ液の反時計回りの運動、したがって、その中の帯電した反応剤の運動をもたらす。
【0063】
【表2】
【0064】
図19の概略図は、チャンバ11に対する振動モジュール20の位置を側面から見た視点で示す。振動モジュール20は、側壁111又は側壁113に面する図において見られるように、より多くの数のデバイスを含んでもよい。
【0065】
図20を参照すると、図20は、本開示のいくつかの実施形態に従う装置300の側壁111に面する振動モジュール20の配置を示す概略断面図である。振動モジュール20は、アレイ状に配置された複数のデバイスを含んでもよい。いくつかの実施形態では、振動モジュール20は、図20の側壁111の上にY方向に沿って延びる列に9つのデバイス(211-1~211-9、212-1~212-9、213-1~213-9、214-1~214-9、又は215-1~215-9)を含む。図19に示すデバイス211、212、213、214及び215は、それぞれ図20に示すデバイス211-1、212-1、213-1、214-1及び215-1となり得る。図示を容易にするために、記号「-」の前の数字(すなわち、211、212、213、214及び215)は、Z方向に沿って配置されたデバイスの異なる列を表し、記号「-」の後の数字(すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8及び9)は、Y方向に沿って延びる列における異なるデバイスを表す。言い換えれば、振動モジュール20は、チャンバ11の側壁111上に45個のデバイスを含む。
【0066】
電流位相コントローラ12は、図20に示す実施形態に適用して、メッキ液及びその中の帯電反応剤の時計回り又は反時計回りの運動を促進することができる。
【0067】
図21を参照すると、図21は、デバイスによって生じる力の方向を示す概略図である。いくつかの実施形態では、図20の45個のデバイスのそれぞれは、図19に示す電流位相コントローラ12に電気的に接続される。異なる位相を有する電流が、前述したように振動モジュール20のデバイスに入り、メッキ液の所望の旋回方向を提供することができる。メッキ液の螺旋運動のパターンは、電流位相コントローラ12によって調整又は制御することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、図21で、デバイス211-5、212-5、213-5、214-5及び215-5への電気接続がオフにされ、他のデバイスには、上述の概念に従って異なる位相を有する電流が提供される。それによって、図21の湾曲した矢印によって示される結果の力が発生し得、結果として生じる力を組み合わせると、側壁111の内面111aに面するとき、メッキ液は2つの反時計回りの円で旋回する。図21に示される結果として生じる力は、例示を目的としていることに留意されたい。結果として生じる力の方向又はパターンは、異なる用途及び異なる設計に従って調整することができる。
【0069】
上述のような発明の概念によれば、本開示は、以下の説明において、メッキ装置及びデバイスの実施形態をさらに提供する。
【0070】
図22を参照すると、図22は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置400の概略側面図である。メッキ装置400は、メッキ装置201と同様の無電解メッキ装置であり得るが、各デバイス507又は508のフレームに第一の磁場発生器を有さない。
【0071】
メッキ装置400の振動モジュール20は、複数のデバイス507又は508を含む。いくつかの実施形態では、側壁111上の振動モジュール20は、側壁113上の振動モジュール20と鏡面対称であるか又は対称である。デバイス507又は508は、図2、6、8、11又は13に示す第一の磁場発生器52を有しないデバイス500、501、502、503又は504と同様であり得る。X方向に沿ってメッキ装置400のチャンバ11を横切る磁場B1を提供するために、1つ以上の磁場発生器41又は42を、デバイス507及び508のそれぞれのフレームの底部に近接するチャンバ11の側壁111又は113に取り付けられることができる。
【0072】
いくつかの実施形態では、メッキ装置400は、チャンバ11の側壁111に配置された第三の磁場発生器41を含む。いくつかの実施形態では、第三の磁場発生器41は、チャンバ11の側壁111の外面111Bの上に配置され、デバイス507のフレームの外部底面に近接するように配置される。いくつかの実施形態では、第三の磁場発生器41は、複数の磁石411、412、413、414及び415を含む。いくつかの実施形態では、磁石411、412、413、414及び415のそれぞれは、図22の水平方向に沿ってデバイス507のうちの1つと位置合わせされる。いくつかの実施形態では、磁石411、412、413、414及び415のそれぞれは、シリコーンによってチャンバ11上に固定される。いくつかの実施形態では、磁石411、412、413、414及び415のそれぞれは、杭、釘、ネジ、リベット、他の適切なファスナ、又はそれらの組合せ(図示せず)によってチャンバ11上に固定される。メッキ装置400は、チャンバ11の側壁113に配置された第四の磁場発生器42をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、第四の磁場発生器42は、磁石421、422、423、424及び425を含む。磁石421、422、423、424及び425の配置は、磁石411、412、413、414及び415の配置と同様とすることができ、本明細書では繰り返し説明を省略する。
【0073】
側壁111から側壁113に向かう方向を有する磁場B1を提供するために、デバイス507又は508の外側の磁場発生器41及び42の全てが、同じ極性を有し、同じ方向(例えば、左にS、右にN)に配向されているので、磁場B1は、図22に描かれるように、チャンバ11の側壁111から側壁113に向かう方向を有する。いくつかの他の実施形態では、デバイス507又は508の外側の磁場発生器の全てが、同じ極性を有し、同じ方向(例えば、左にN、右にS)に配向されているので、磁場は、チャンバ11の側壁113から側壁111に向かう方向を有する(図22に図示せず)。デバイス507と磁石411、412、413、414、415のいずれかが組み合わされて、図4に描かれたものと実質的に同じ局所磁場を形成し、デバイス508と磁石421、422、423、424、425のいずれかが組み合わされて、図13に描かれたものと実質的に同じ局所磁場を形成していることに留意されたい。このような配置では、局所磁場B21、B22をデバイスレベルのそれぞれで局所的に構築することができるだけでなく、巨視的な磁場B1を、チャンバ11を横切るように構築することもできる。
【0074】
第一の磁場発生器52を第三の磁場発生器41及び第四の磁場発生器42に交換する目的は、メンテナンスの利便性を図るためである。さらに、第三の磁場発生器41及び第四の磁場発生器42はチャンバ11の外部に存在することで、磁場B1の強さを調整しやすいという利点がある。上述したように、反応剤の螺旋運動及び振動モジュール20のフィルムの振動は、磁場B1による影響を受ける場合がある。例えば、磁場B1の強さを制御することにより、反応剤の回転半径及びデバイス507又は508の膜の振幅を調整することができる。図22に示す実施形態は、チャンバ11内で行われる異なる蒸着操作に応じて、磁場B1の強さを制御し、可撓性フィルム54を振動させる局所磁場を制御する点で、柔軟性を提供する。
【0075】
前述したローレンツ力の式(I)によれば、振動モジュール20によって引き起こされるメッキ液への撹拌とともに、磁場B1の存在に起因して、メッキ液中の(正又は負の)帯電イオン/反応剤が受ける力Fを発生させることができ、帯電イオン/反応剤が螺旋軌道になって、ワークピースSBのメッキ面に到達することができる。このような螺旋軌道は、帯電イオン/反応剤がキンクに衝突する可能性、又は総ギブス自由エネルギーを低下させるサイトが結合する可能性を高めるので、メッキ膜の生産効率及び均一性を向上させることができる。
【0076】
磁場発生器41及び42は、チャンバ11の側壁111又は113の外側又は内側に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、磁場発生器41又は42は、デバイス507又は508のそれぞれのフレームの外部底面に取り付けられることができる。
【0077】
第三の磁場発生器41又は第四の磁場発生器42は、上述したのと同じ目的を達成できる限り、異なる数の磁石を含むことができることに留意されたい。いくつかの実施形態では、第三の磁場発生器41は、全てのデバイス507に横方向に重なる1つの大きな磁石を含む。さらに、第三の磁場発生器41又は第四の磁場発生器42は、第一の磁場発生器52として適用することができる。その場合の第三の磁場発生器41及び第四の磁場発生器42は、磁場B1を向上させ、磁場B1の強度の調整及び磁石411~415及び421~425の外部からのメンテナンスの容易化を図るためのものである。
【0078】
図23は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置400のデバイス507の概略断面図である。デバイス507は、デバイス500と同様であってもよいが、図2に示す第一の磁場発生器52を有しない。先に説明したように、磁石411、412、413、414、415は、第一の磁場発生器52の目的を果たし、第二の磁場発生器53と組み合わせて、一端で、磁石411、412、413、414、415の近傍でフレーム51の底面に垂直な磁場を形成し、他端で、第二の磁場発生器53の磁石531、及び533の近傍で可撓性フィルム54の平面に実質的に平行な磁場を形成する。
【0079】
図24を参照すると、図24は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置401の概略側面図である。振動モジュール20のデバイス507及び508と、磁石411、412、413、414、415、421、422、423、424、425とは、図22で説明したものと実質的に同一であるが、振動モジュール20が、上述し図16に例示したように、側壁111及び113の内面111A及び113Aに配置できることだけが異なり、一方、第一の磁場発生器の目的を果たす磁石411、412、413、414、415、421、422、423、424、425は、依然としてチャンバ11の外面111B、113Bに取り付けられている。本開示では図示されていないが、当業者は、いくつかの実施形態では、メッキ装置が、デバイス501、502、503、504のいずれかを含むだけでなく、デバイス501、502、503、504の外側にあり、メッキ装置に貼り付けられた磁石411、412、413、414、415、421、422、423、424、425のような追加の磁場発生器も含み、その理由が、メッキ装置のチャンバ11を横切る局所磁場B21、B22とマクロ磁場B1との両方を構築させるためであることを理解できる。
【0080】
図25を参照すると、図25は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置401のデバイス507の概略断面図である。デバイス507の厚さを最小化することを目的として、図23に示すフレーム51の底部511が除去されている。いくつかの実施形態では、図25に示すデバイス507のフレーム51は、上面から見てリング形状の構造である。いくつかの実施形態では、図25に示すリング形状のフレーム51は、側壁111の内面111aに取り付けられている。いくつかの実施形態では、可撓性フィルム54と内面111Aとの間の距離d1は、デバイス507の共振キャビティの高さを規定する。いくつかの実施形態では、内面111Aの一部分は、フレーム51の底面51Cと見なされる。いくつかの実施形態では、内面111Aの少なくとも一部分は、磁気導電性である。
【0081】
図26を参照すると、図26は、本開示のいくつかの実施形態に従うメッキ装置410の概略断面図である。いくつかの実施形態では、メッキ操作のためのメッキ液又は化学物質が、チャンバ11の側壁の1つ以上の開口部を通してチャンバ11内に提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上の液体化学物質(例えば、銅含有溶液、リン含有溶液、硫酸、又は他のメッキ液)が、開口部711を通じてチャンバ11に提供される。いくつかの実施形態では、1つ以上の気体化学物質(例えば、ホスフィン)は、開口部712を通じて注入される。いくつかの実施形態では、メッキ装置410は、開口部712からチャンバ11の内部に延びる導管715をさらに含み、導管715の自由端は、メッキ操作中にメッキ液116の上面116aの下にあるように設計されている。いくつかの実施形態では、複数の拡散構造716が、メッキ液中のガス状化学物質の拡散を促進する目的で、導管715の自由端に近接して配置される。いくつかの実施形態では、拡散構造716の構成は、シャワーヘッドの構成と同様であってよい。
【0082】
メッキ装置410の正電極63は、メッキ操作中に、部分的又は全体的にメッキ液内にあることができる。アノード713は、正電極63の近位に配置することができる。いくつかの実施形態では、アノード713は、正電極63に接続される。アノード713の少なくとも一部分は、メッキ操作中に、メッキ液内にあるべきである。いくつかの実施形態では、アノード713は、正電極63の下に配置され、アノード713の全体は、メッキ液内に存在する。いくつかの実施形態では、アノード713は、リン含有銅アノードボール(約0.03%~0.08%の濃度でリンを含み得る)である。いくつかの実施形態では、アノード713は、微粒銅アノードボールである。いくつかの実施形態では、アノード713は、アノードバッグ714に封入されるか、又はアノードバッグ714によって密封される。いくつかの実施形態では、アノードバッグ714は、濾過の目的のために、ダイネル(Dynel)材料、ポリプロピレン、又はそれらの組合せを含む。いくつかの実施形態では、アノードバッグ714は、アノード713を保持する目的のために、チタンバスケットである。いくつかの実施形態では、導管715の一部分は、正極63及びアノード713の下方に延びる。いくつかの実施形態では、拡散構造716は、導管715の一部分上に配置される。負電極64は、正電極63と反対側のチャンバ11に配置される。例えば、正電極63は、チャンバ11の上部(又は上部側壁)に近接して配置され、負電極64から離れ、負電極64は、チャンバ11の底部(又は下部側壁)に近接して配置される。いくつかの実施形態では、負電極64は、メッキ操作において正極として機能する。電場(図15には示されていない)は、電気メッキ操作中に、正電極63と負電極64とによって生成される。メッキ装置410は、チャンバ11内に配置され、チャンバの底部に近接するヒータ84をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、ヒータ74は、チャンバ11の下部側壁と負電極64との間に配置される。いくつかの実施形態では、ヒータ74の温度は、メッキ操作中に、50~60℃の範囲に制御される。
【0083】
メッキ装置410は、チャンバ11内に複数のワークピースSBを保持するように構成された支持構造80をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、支持構造80は、複数の柱82によって保持又は支持された1つ以上のビーム81を含む。いくつかの実施形態では、複数の上部クランプ構造83が、複数のワークピースSBを保持するために、複数のビーム81にそれぞれ接続される。いくつかの実施形態では、ワークピースSBのそれぞれは、柱82の間の負電極64の上に垂直に配置される。いくつかの実施形態では、ワークピースSBは、メッキ操作中に、互いに実質的に平行である。いくつかの実施形態では、上部クランプ構造83のそれぞれは、ワークピースSBのそれぞれの第一の周辺部分を保持する。いくつかの実施形態では、支持構造80は、複数の下部保持部材84をさらに含む。いくつかの実施形態では、下部保持部材84のそれぞれは、上部クランプ構造83のそれぞれと垂直に整列している。いくつかの実施形態では、下部保持部材84のそれぞれは、ワークピースSBのうちの1つの第一の周辺部分とは反対側の第二の周辺部分を保持する。支持構造80は、1回のメッキ操作によって、複数のワークピースSBへの薄膜の形成を同時に達成することができる。いくつかの実施形態では、支持構造80のコンポーネント(例えば、ビーム81、柱82、上部クランプ構造83、及び下部保持部材84)は、銅又は銅合金で作ってもよい。いくつかの実施形態では、上部クランプ構造83及び下部保持部材84は、プラスチゾル又はコロシール等の誘電材料でコーティングされる。支持構造80は、上記に例示したような他の実施形態(例えば、メッキ装置201、202、203、204、300、400又は401)において適用することができ、本開示は、図の1つに示された特定の実施形態に限定されないことに留意されたい。
【0084】
メッキ装置410は、濾過システム73をさらに含んでもよい。濾過システム73は、より良いメッキ結果を得るために、不純物濾過及び金属イオン沈殿を目的とするものである。いくつかの実施形態では、濾過システム73は、導管734と、フィルタ735と、ポンプ736とを含む。いくつかの実施形態では、導管734は、開口部731及び732を介するチャンバとの流体連通を提供する。いくつかの実施形態では、フィルタ735は、導管の断面を通過するメッキ液を濾過するために、導管734の断面内に、その断面を横切って配置される。ポンプ736の動作の下で、メッキ液は、開口部731を通してチャンバ11から引き出され、導管734に流入し、フィルタ735を通過し、その後、開口部732を通してチャンバ11に戻される。いくつかの実施形態では、メッキ液の全体は、ポンプ736によって1時間当たり1~3回濾過される。いくつかの実施形態では、フィルタ735は、1.3μm又は5μmの膜アパーチャを有してもよい。
【0085】
いくつかの実施形態では、メッキ装置410は、ガス状化合物(例えば、メッキ操作中に生成される水素、塩素、フッ素又は他のガス)を排気するために、局所スクラバー752に接続された排気導管751をさらに含んでもよい。局所スクラバー752は、サーマルスクラバー、湿式スクラバー、サーマル湿式スクラバー、バーンスクラバー、乾式スクラバー、触媒スクラバー、又はプラズマスクラバーであり得る。任意の適切なタイプのスクラバーを使用することができ、本明細書において限定されるものではない。
【0086】
上述したように、メッキ装置410は、チャンバ11の側壁のうちの1つ(又は複数)の上に、図22で上述したような磁場発生器41又は42を少なくとも含むべきである。図26に示すようないくつかの実施形態では、磁場発生器41又は42によって、紙面の内側に向かう方向に、すなわち、見る人から磁場B1が提供される。したがって、複数のワークピースSBにそれぞれ複数の薄膜を形成することができ、電場と磁場B1との組合せによって、メッキ操作の適合性及び効率を向上させることができる。
【0087】
したがって、本開示は、チャンバ内の液体又は溶液の撹拌を支援するためのデバイスと、そのデバイスを含む装置とを提供する。上記の実施形態及び説明は、理解を容易にすることを目的として、例示的な説明として、析出操作及び析出装置に焦点を当てていることに留意されたい。しかしながら、本発明の概念及び装置は、水又は溶液の撹拌を補助又は促進するために、半導体製造産業におけるウェーハ洗浄装置、又は食洗器もしくは洗濯機等の一般家庭向け用途等の他のタイプの装置においても適用可能である。本発明は、本開示に例示された実施形態に限定されない。
【0088】
本開示のいくつかの実施形態は、液相析出を補助するためのデバイスを提供する。このデバイスは、底部と、当該底部と角度をなす側壁とを有するフレームと、第一の可撓性フィルムであって、当該第一の可撓性フィルムの周縁部分でフレームに取り付けられた、第一の可撓性フィルムと、フレームの側壁に設けられ、第一の可撓性フィルムの周縁部分に隣接する第一の磁場発生器と、フレームの底部に設けられた第二の磁場発生器であって、第一の磁場発生器及び第二の磁場発生器は、第一の可撓性フィルムの少なくとも一部分に平行な磁場を提供するように構成され、第一の可撓性フィルムは液相析出のために液体と接触するように構成される、第二の磁場発生器と、を含む。
【0089】
本開示のいくつかの実施形態は、液相薄膜析出のための装置を提供する。この装置は、チャンバと、振動モジュールとを含む。チャンバは、液相析出のための溶液を収容するように構成され、振動モジュールは、チャンバの側壁に隣接し、液相析出のための溶液に接触する。振動モジュールは、底部と、当該底部と角度をなす側壁とを有するフレームと、第一の可撓性フィルムであって、当該第一の可撓性フィルムの周縁部分でフレームに取り付けられた、第一の可撓性フィルムと、フレームの側壁に設けられ、前記第一の可撓性フィルムの前記周縁部分に隣接する第一の磁場発生器と、を含む。この装置は、チャンバの側壁に隣接する第二の磁場発生器をさらに含み、第一の磁場発生器及び第二の磁場発生器は、第一の可撓性フィルムの少なくとも一部分に平行な第一の磁場を提供するように構成される。
【0090】
上記は、当業者が本開示の態様をよりよく理解し得るように、いくつかの実施形態の特徴を概説している。当業者は、本明細書で紹介した実施形態の同じ目的を遂行するために、及び/又は同じ利点を達成するために、他の操作及び構造を設計又は修正するための基礎として、本開示を容易に使用し得ることを理解するべきである。また、当業者は、そのような同等の構造が本開示の精神及び範囲から逸脱しないことも、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書において様々な変更、置換、及び改変を実施し得ることを認識すべきである。
【0091】
さらに、本出願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法及びステップの特定の実施形態に限定されることを意図していない。当業者であれば、本発明の開示から容易に理解できるように、現在存在するか又は今後開発されるプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法、又はステップで、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすもの、又は実質的に同じ結果を達成するものは、本発明に従って利用され得る。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造、物質組成、手段、方法、及びステップをその範囲に含めることを意図している。
【要約】      (修正有)
【課題】液相の撹拌を補助するためのデバイスを提供する。
【解決手段】デバイス500は、底部、及び当該底部と角度をなす側壁を有するフレーム51と、第一の可撓性フィルム54であって、当該第一の可撓性フィルムの周縁部分でフレームに取り付けられた、第一の可撓性フィルムと、フレームの側壁に設けられ、第一の可撓性フィルムの周縁部分に隣接する第一の磁場発生器52と、フレームの底部に設けられた第二の磁場発生器53であって、第一の磁場発生器及び第二の磁場発生器は、第一の可撓性フィルムの少なくとも一部分に平行な磁場を提供するように構成され、第一の可撓性フィルムの少なくとも一部分は液体と接触するように構成される、第二の磁場発生器と、を含む。
【選択図】図1
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13
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図26