(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-09
(45)【発行日】2024-02-20
(54)【発明の名称】フィーダーおよびダブルニット編地を生産する方法
(51)【国際特許分類】
D04B 15/58 20060101AFI20240213BHJP
【FI】
D04B15/58
(21)【出願番号】P 2023188423
(22)【出願日】2023-11-02
【審査請求日】2023-11-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519087697
【氏名又は名称】株式会社ノリタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 三郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 翔太
(72)【発明者】
【氏名】金城 秀侑
【審査官】▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-269744(JP,A)
【文献】特開平7-166450(JP,A)
【文献】特開2000-154449(JP,A)
【文献】特許第7379623(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 3/00-19/00
D04B23/00-39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側の表面を構成する一方側編地と、他方側の表面を構成する他方側編地とがつなぎ糸によって1枚につなぎ合わされた構成を有し、
前記一方側編地は、前記一方側に露出された一方側地編み組織と、当該一方側地編み組織における前記他方側の面に沿って引きそろえられた一方側プレーティング組織とを備え、
前記他方側編地は、前記他方側に露出された他方側地編み組織と、当該他方側地編み組織における前記一方側の面に沿って引きそろえられた他方側プレーティング組織とを備えている、
ダブルニット編地に対して、
当該ダブルニット編地を生産する装置であるダイアル・シリンダータイプの丸編み機に適用されるフィーダーであって、
前記丸編み機におけるシリンダーの針床よりもダイアルの径方向外方となる位置にセットされる本体と、
前記本体において前記ダイアルの径方向内方側となる面に開口されて、前記一方側地編み組織として編まれる編み糸が前記径方向外方から通されたときには、この編み糸を前記シリンダーの針床にセットされたシリンダー針のニット領域に向けてガイドする一方側給糸口と、
前記他方側プレーティング組織または前記一方側プレーティング組織として編まれる編み糸を、前記ダイアルの針床にセットされたダイアル針のニット領域または前記シリンダー針のニット領域に向けてガイドするガイド溝と、
前記本体から前記径方向外方に張り出されて、前記ガイド溝の壁の少なくとも一部を構成する張り出し片と、
前記張り出し片に設けられて、前記他方側地編み組織として編まれる編み糸が通されたときには、この編み糸を前記ダイアル針のニット領域に向けてガイドする他方側給糸口と、
を備えている、
フィーダー。
【請求項2】
請求項1に記載されたフィーダーであって、
前記張り出し片は、前記丸編み機において前記ダイアル針が編み糸を受け取るべく前記径方向外方に出される領域であるダイアル針出し領域を、前記ダイアル針が編み糸を受け取る側から覆い、
前記他方側給糸口は、前記張り出し片において前記ダイアル針出し領域の側となる端面に開口されている、
フィーダー。
【請求項3】
請求項2に記載されたフィーダーであって、
前記他方側給糸口が、前記ダイアル針出し領域に向かって前記径方向内方側に傾斜している、
フィーダー。
【請求項4】
一方側の表面を構成する一方側編地と、他方側の表面を構成する他方側編地とがつなぎ糸によって1枚につなぎ合わされた構成を有し、
前記一方側編地は、前記一方側に露出された一方側地編み組織と、当該一方側地編み組織における前記他方側の面に沿って引きそろえられた一方側プレーティング組織とを備え、
前記他方側編地は、前記他方側に露出された他方側地編み組織と、当該他方側地編み組織における前記一方側の面に沿って引きそろえられた他方側プレーティング組織とを備えている、
ダブルニット編地を、ダイアル・シリンダータイプの丸編み機によって生産する方法であって、
それぞれが請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載されたフィーダーである第1のフィーダーおよび第2のフィーダーが前記丸編み機に適用され、かつ、
前記第1のフィーダーにおける前記一方側給糸口に、前記一方側地編み組織として編まれる編み糸が前記径方向外方から通され、
前記第1のフィーダーにおける前記ガイド溝に、前記一方側プレーティング組織として編まれる編み糸がかけられ、
前記第2のフィーダーにおける前記ガイド溝に、前記他方側プレーティング組織として編まれる編み糸がかけられ、
前記第2のフィーダーにおける前記他方側給糸口に、前記他方側地編み組織として編まれる編み糸が通された状態で、
これらの編み糸を前記丸編み機によって編成する編成工程によって前記ダブルニット編地を生産する、
ダブルニット編地を生産する方法。
【請求項5】
請求項4に記載されたダブルニット編地を生産する方法であって、
前記フィーダーに編み糸をガイドするガイド部材を取り付け、当該ガイド部材によってガイドされる編み糸を、さらに前記フィーダーにおける前記一方側給糸口、前記ガイド溝、または前記他方側給糸口のいずれかによってガイドさせた状態で、前記編成工程を実行する、
ダブルニット編地を生産する方法。
【請求項6】
請求項5に記載されたダブルニット編地を生産する方法であって、
前記ガイド部材を、前記丸編み機におけるシリンダー回転方向で見て前記第2のフィーダーよりも上流側に配設した状態で、前記編成工程を実行する、
ダブルニット編地を生産する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ダブルニット編地を生産する装置であるダイアル・シリンダータイプの丸編み機に適用可能なフィーダー、および、該丸編み機によってダブルニット編地を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本開示において、「ダブルニット編地」とは、一方側の表面を構成する一方側編地と、他方側の表面を構成する他方側編地とがつなぎ糸によってつなぎ合わされた構成の編地のことをいう。このダブルニット編地には、一方側編地および他方側編地のそれぞれを、短繊維である綿が紡がれた紡績糸からなる地編み組織に、ポリエステルの弾性糸からなるプレーティング組織を引き合わせたものとすることで、組織全体を5層構造としたものが存在する(例えば下記の特許文献1を参照)。ここで、特許文献1に記載された5層構造のダブルニット編地は、ダイアル・シリンダータイプの丸編み機を使用し、そのダイアル針およびシリンダー針で、それぞれ一方側編地および他方側編地を編成することで生産される。
【0003】
ところで、地編み組織にプレーティング組織を引き合わせた構成の編地を丸編み機によって編成する場合、地編み組織として編まれる編み糸およびプレーティング組織として編まれる編み糸を、それぞれ別の給糸ルートから1つのニット領域に向けて給糸する必要がある。この際、いわゆる「ふうめん」(紡績糸から脱落した繊維の集合体)のかみこみなどの理由により編み糸の糸道が延びる方向の入れ替わりが生じると、地編み組織が現れるべき場所にプレーティング組織が現れ、プレーティング組織が現れるべき場所に地編み組織が現れた不良品の編地が編成される。
【0004】
上記のような不良品の編地が編成されるおそれを減らすことが可能な技術としては、例えば特許文献2に記載された給糸用ガイド(一般には「フィーダー」とも称される。)の技術が知られている。この技術では、丸編み機の給糸用ガイドの下方部位に綿糸を挿通する給糸口と円弧状の切除部とを設け、この切除部の近辺に弾性繊維の糸条を案内する凹状案内片を設ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-023308号公報
【文献】特開平11-269744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載された給糸用ガイドは、これをダイアル・シリンダータイプの丸編み機に適用した場合、シリンダー針に給糸される編み糸しか案内することができない。このため、特許文献1に記載された5層構造のダブルニット編地の生産にあたっては、地編み組織が現れるべき場所にプレーティング組織が現れ、プレーティング組織が現れるべき場所に地編み組織が現れた不良品が編成されるおそれが残っていた。
【0007】
本開示は、一方側編地および他方側編地のそれぞれを、地編み組織にプレーティング組織を引き合わせた構成としたダブルニット編地を生産する際に、不良品が編成されるおそれを減らすことを可能とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示における1つの特徴によると、ダブルニット編地を生産する装置であるダイアル・シリンダータイプの丸編み機に適用されるフィーダーが提供される。ここで、ダブルニット編地は、一方側の表面を構成する一方側編地と、他方側の表面を構成する他方側編地とがつなぎ糸によって1枚につなぎ合わされた構成を有する。また、一方側編地は、一方側に露出された一方側地編み組織と、この一方側地編み組織における他方側の面に沿って引きそろえられた一方側プレーティング組織とを備える。また、他方側編地は、他方側に露出された他方側地編み組織と、この他方側地編み組織における一方側の面に沿って引きそろえられた他方側プレーティング組織とを備える。また、フィーダーは、丸編み機におけるシリンダーの針床よりもダイアルの径方向外方となる位置にセットされる本体を備える。また、フィーダーは、本体においてダイアルの径方向内方側となる面に開口された一方側給糸口を備える。この一方側給糸口は、一方側地編み組織として編まれる編み糸が径方向外方から通されたときには、この編み糸をシリンダーの針床にセットされたシリンダー針のニット領域に向けてガイドする。また、フィーダーは、他方側プレーティング組織または一方側プレーティング組織として編まれる編み糸を、ダイアルの針床にセットされたダイアル針のニット領域またはシリンダー針のニット領域に向けてガイドするガイド溝を備える。また、フィーダーは、本体から径方向外方に張り出されて、ガイド溝の壁の少なくとも一部を構成する張り出し片を備える。また、フィーダーは、張り出し片に設けられて、他方側地編み組織として編まれる編み糸が通されたときには、この編み糸をダイアル針のニット領域に向けてガイドする他方側給糸口を備える。
【0009】
上記のフィーダーは、ダイアル・シリンダータイプの丸編み機において一方側編地として編まれる編み糸または他方側編地として編まれる編み糸を給糸するものとして適用されうる。フィーダーが他方側編地として編まれる編み糸を給糸する場合には、フィーダーは、他方側地編み組織として編まれる編み糸を他方側給糸口によりダイアル針のニット領域に向けてガイドし、他方側プレーティング組織として編まれる編み糸をガイド溝によりダイアル針のニット領域に向けてガイドする。これにより、フィーダーは、他方側地編み組織が現れるべき場所に他方側プレーティング組織が現れ、他方側プレーティング組織が現れるべき場所に他方側地編み組織が現れた不良品が編成されるおそれを減らす。また、フィーダーが一方側編地として編まれる編み糸を給糸する場合には、フィーダーは、一方側地編み組織として編まれる編み糸を一方側給糸口によりシリンダー針のニット領域に向けてガイドし、一方側プレーティング組織として編まれる編み糸をガイド溝によりシリンダー針のニット領域に向けてガイドする。これにより、フィーダーは、一方側地編み組織が現れるべき場所に一方側プレーティング組織が現れ、一方側プレーティング組織が現れるべき場所に一方側地編み組織が現れた不良品が編成されるおそれを減らす。これらの作用により、上記のフィーダーは、一方側編地および他方側編地のそれぞれを、地編み組織にプレーティング組織を引き合わせた構成としたダブルニット編地を生産する際に、不良品が編成されるおそれを減らすことができる。
【0010】
他の側面によると、張り出し片は、丸編み機においてダイアル針が編み糸を受け取るべく径方向外方に出される領域であるダイアル針出し領域を、ダイアル針が編み糸を受け取る側から覆う。また、他方側給糸口は、張り出し片においてダイアル針出し領域の側となる端面に開口されている。
【0011】
上記の丸編み機において、他方側地編み組織として編まれる編み糸は、ダイアル針出し領域にてダイアル針に受け取られ、このダイアル針のニット領域に向けて引き込まれる。ここで、上記のフィーダーによれば、他方側給糸口に通される編み糸がダイアル針出し領域に出されるため、丸編み機のダイアル針は、この編み糸をそのまま受け取ってダイアル針のニット領域に引き込むことができる。これにより、他方側給糸口からダイアル針のニット領域に至る編み糸の糸道において、この編み糸が他部材によりガイドされることがない部分の長さを短くして、編み糸の糸道が延びる方向の入れ替わりが生じるおそれをさらに低減させたフィーダーを提供することができる。
【0012】
他の側面によると、他方側給糸口が、ダイアル針出し領域に向かって径方向内方側に傾斜している。
【0013】
上記の丸編み機において、ダイアル針のニット領域に向けての編み糸の引き込みは、ダイアルの径方向外方から径方向内方に向かう向きに行われる。ここで、上記のフィーダーによれば、他方側給糸口に通される編み糸は、ダイアル針出し領域に向かって径方向内方側に傾斜した状態に延びだされる。これにより、ダイアル針による編み糸の引き込みをよりスムーズにすることが可能なフィーダーを提供することができる。
【0014】
他の側面によると、後述するダブルニット編地を、ダイアル・シリンダータイプの丸編み機によって生産する方法が提供される。ここで、ダブルニット編地は、一方側の表面を構成する一方側編地と、他方側の表面を構成する他方側編地とがつなぎ糸によって1枚につなぎ合わされた構成を有する。また、一方側編地は、一方側に露出された一方側地編み組織と、この一方側地編み組織における他方側の面に沿って引きそろえられた一方側プレーティング組織とを備える。また、他方側編地は、他方側に露出された他方側地編み組織と、この他方側地編み組織における一方側の面に沿って引きそろえられた他方側プレーティング組織とを備える。また、ダブルニット編地を生産する方法においては、それぞれが上記のフィーダーである第1のフィーダーおよび第2のフィーダーが丸編み機に適用される。また、ダブルニット編地を生産する方法においては、第1のフィーダーにおける一方側給糸口に、一方側地編み組織として編まれる編み糸が前記径方向外方から通され、第1のフィーダーにおけるガイド溝に、一方側プレーティング組織として編まれる編み糸がかけられ、第2のフィーダーにおけるガイド溝に、他方側プレーティング組織として編まれる編み糸がかけられ、第2のフィーダーにおける他方側給糸口に、他方側地編み組織として編まれる編み糸が通された状態で、これらの編み糸を丸編み機によって編成する編成工程によってダブルニット編地を生産する。
【0015】
上記の方法によれば、第2のフィーダーは、他方側地編み組織として編まれる編み糸を他方側給糸口によりダイアル針のニット領域に向けてガイドし、他方側プレーティング組織として編まれる編み糸をガイド溝によりダイアル針のニット領域に向けてガイドする。これにより、第2のフィーダーは、他方側地編み組織が現れるべき場所に他方側プレーティング組織が現れ、他方側プレーティング組織が現れるべき場所に他方側地編み組織が現れた不良品が編成されるおそれを減らす。また、第1のフィーダーは、一方側地編み組織として編まれる編み糸を一方側給糸口によりシリンダー針のニット領域に向けてガイドし、一方側プレーティング組織として編まれる編み糸をガイド溝によりシリンダー針のニット領域に向けてガイドする。これにより、第1のフィーダーは、一方側地編み組織が現れるべき場所に一方側プレーティング組織が現れ、一方側プレーティング組織が現れるべき場所に他方側地編み組織が現れた不良品が編成されるおそれを減らす。これらの作用により、上記のダブルニット編地を生産する方法は、不良品のダブルニット編地が編成されるおそれを減らすことができる。
【0016】
他の側面によるダブルニット編地を生産する方法では、フィーダーに編み糸をガイドするガイド部材を取り付け、このガイド部材によってガイドされる編み糸を、さらに上記フィーダーにおける一方側給糸口、ガイド溝、または他方側給糸口のいずれかによってガイドさせた状態で、編成工程を実行する。
【0017】
ダイアル・シリンダータイプの丸編み機においては、適用されるフィーダーの数が編地の編成速度に直結するため、一般的に、多数のフィーダーを高密度に配設して編成を行うことが好ましいとされている。しかしながら、丸編み機に適用されるフィーダーの配設密度が高くなると、個々のフィーダーがガイドする編み糸の糸道配設スペースが狭くなるため、編み糸の糸道が延びる方向を正確に定めることが困難になる。これに対し、上記の方法によれば、フィーダーにおける一方側給糸口、ガイド溝、または他方側給糸口のいずれかによってガイドされる編み糸を、このフィーダーに取り付けられたガイド部材によってガイドさせることで、フィーダーがガイドする編み糸の糸道配設スペースを拡張することができる。これにより、フィーダーによってガイドされる編み糸の糸道が延びる方向の入れ替わりが生じるおそれをさらに低減させることができる。
【0018】
他の側面によるダブルニット編地を生産する方法では、ガイド部材を、丸編み機におけるシリンダー回転方向で見て上記フィーダーよりも上流側に配設した状態で、編成工程を実行する。
【0019】
ダイアル・シリンダータイプの丸編み機においては、編み糸は、シリンダー針またはダイアル針のニット領域に対して、丸編み機におけるシリンダー回転方向で見て上流側から下流側に向かう向きに給糸される。ここで、上記の方法によれば、フィーダーがガイドする編み糸の糸道配設スペースは、丸編み機におけるシリンダー回転方向で見た上流側に拡張される。これにより、上記ガイド部材からフィーダーに至る編み糸の糸道が延びる方向を、このフィーダーから上記ニット領域に至る編み糸の糸道が延びる方向に沿うものとして、編み糸がフィーダーにすれることで受けるダメージを低減させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、一方側編地および他方側編地のそれぞれを、地編み組織にプレーティング組織を引き合わせた構成としたダブルニット編地を生産する際に、不良品が編成されるおそれを減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法によって生産されるダブルニット編地10の概略構成を表した要部拡大断面図である。
【
図2】
図1に表されたダブルニット編地10を生産する装置である丸編み機40の要部を撮影した写真である。
【
図3】
図2に表された第2のフィーダー30を単体で表した正面図である。
【
図4】
図2に表された第2のフィーダー30を単体で表した背面図である。
【
図5】
図2に表された第2のフィーダー30を単体で表した左側面図である。
【
図6】
図2に表された第2のフィーダー30を単体で表した右側面図である。
【
図7】
図2に表された第2のフィーダー30を単体で表した平面図である。
【
図8】
図2に表された第2のフィーダー30を単体で表した底面図である。
【
図9】第1の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法を説明するための編成図である。
【
図10】第2の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法を説明するための編成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本開示を実施するための態様について、図面を用いて説明する。
【0023】
〈第1の実施態様〉
始めに、第1の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法によって生産されるダブルニット編地10の構成について、
図1を用いて説明する。このダブルニット編地10は、一方側の表面を構成する一方側編地11と、他方側の表面を構成する他方側編地12とがつなぎ糸10Aによって1枚につなぎ合わされた5層構造の構成である。
【0024】
一方側編地11は、よこ編みの組織をなす一方側地編み組織11Aを、一方側に露出された状態に備えている。本実施態様においては、一方側地編み組織11Aは、オモテメの面11Bを一方側に向け、ウラメの面11Cを他方側に向けた丸編みの天竺組織である。この天竺組織は、紡績糸10Cによって構成されている。
【0025】
紡績糸10Cは、部分的に太い部分と細い部分とがある意匠糸としての性質を有する。このため、一方側地編み組織11Aの天竺組織における輪奈11Dには、その穴の大きさにばらつきができる。本実施態様においては、紡績糸10Cは、天然の短繊維である木綿(cotton)を紡績してなる糸であり、この木綿の素材に由来する糸節(図示せず)を、上記太い部分として有する。また、紡績糸10Cは、その繊維の紡績のむらに起因する糸節も有する。
【0026】
さらに、一方側編地11は、一方側地編み組織11Aにおける他方側の面(すなわちウラメの面11C)に沿って引きそろえられた一方側プレーティング組織11Eを備えている。この一方側プレーティング組織11Eは、一方側地編み組織11Aを構成する紡績糸10Cよりも弾性変形しやすい弾性糸10Dによって構成されている。本実施態様においては、弾性糸10Dは、ポリウレタン系のフィラメントを有するフィラメントヤーンである。
【0027】
他方側編地12は、よこ編みの組織をなす他方側地編み組織12Aを、他方側に露出された状態に備えている。本実施態様においては、他方側地編み組織12Aは、オモテメの面12Bを他方側に向け、ウラメの面12Cを他方側に向けた丸編みの天竺組織である。この天竺組織は、一方側地編み組織11Aを構成する紡績糸10Cと同種の紡績糸10Eによって構成されている。このため、他方側地編み組織12Aの天竺組織における輪奈12Dには、その穴の大きさにばらつきができる。
【0028】
さらに、他方側編地12は、他方側地編み組織12Aにおける一方側の面(すなわちウラメの面12C)に沿って引きそろえられた他方側プレーティング組織12Eを備えている。本実施態様においては、他方側プレーティング組織12Eは、一方側プレーティング組織11Eを構成する弾性糸10Dと同種の弾性糸10Fによって構成されている。すなわち、他方側プレーティング組織12Eを構成する弾性糸10Fは、他方側地編み組織12Aを構成する紡績糸10Eよりも弾性変形しやすいものである。
【0029】
つなぎ糸10Aは、縮れた状態のフィラメントを有する仮撚糸である。このフィラメントは、複数本を紡ぎ合わせることなく糸条を構成することが可能な程度に長尺である。本実施態様においては、つなぎ糸10Aは、ナイロンのフィラメントを複数本束ねられた状態に有する仮撚糸である。
【0030】
ダブルニット編地10は、インターロック出会いとなるように調整されたダイアル・シリンダータイプの丸編み機40(
図2参照)によって生産することができる。言い換えると、丸編み機40は、ダブルニット編地10を生産する装置である。この丸編み機40には、
図2に示すように、それぞれが第1の実施態様にかかるフィーダーである第1のフィーダー20および第2のフィーダー30と、従前公知のフィーダーであるフィーダー40A、40Bとが適用されている。本実施態様においては、上記各フィーダーは、丸編み機40におけるシリンダー回転方向(
図2では左側から右側に向かう方向)で見て、フィーダー40B、フィーダー40A、第2のフィーダー30、第1のフィーダー20、フィーダー40B……の順で周期的に並ぶ。
【0031】
ここで、第2のフィーダー30は、第1のフィーダー20と全く同じ構成を有している。このため、以下においては、第1のフィーダー20および第2のフィーダー30における各構成について、その詳細な説明を第2のフィーダー30における各構成の説明により代表させて行う。そして、第1のフィーダー20における各構成については、第2のフィーダー30の各構成に付した符号から、その十の位の数字を「2」に置き換えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0032】
フィーダー40Aは、編み糸の糸道を1本だけ設定できるタイプの、従前公知のフィーダーである。フィーダー40Aは、つなぎ糸10Aを編み糸として、このつなぎ糸10Aをフィーダー40Aよりもシリンダー回転方向の下流側に位置されるニット領域41Eに給糸する。
【0033】
フィーダー40Bは、フィーダー40Aと全く同じ構成を有している。フィーダー40Bは、つなぎ糸10Aを編み糸として、このつなぎ糸10Aをフィーダー40Bよりもシリンダー回転方向の下流側に位置されるニット領域42Eに給糸する。
【0034】
第2のフィーダー30は、
図3ないし
図8に示すように、本体31と、ハンドル33と、ガイド部材33Aとを備えている。
【0035】
本体31は、
図2に示すように、丸編み機40においてダイアル針42Bがセットされるダイアル42の針床42Aよりも上方となる位置に、ねじ止めによりセットされる板状の部材である。この本体31は、
図6に示すように、丸編み機40のシリンダー41においてシリンダー針41Bがセットされる針床41Aよりも、ダイアル42の径方向外方(
図6では左側)となる位置にセットされる。以下では、本体31が丸編み機40にセットされた状態のことを、単に「セット状態」とも称する。また、以下においては、第2のフィーダー30の各構成における上下左右前後の各方向を、本体31がセット状態にあるときの方向によって説明する。
【0036】
本体31の上部には、
図3ないし
図7に示すように、この本体31を丸編み機40にねじ止めするための長孔31Bが設けられている。また、本体31において長孔31Bの下にあたる部分には、この本体31におねじ(例えば
図5に示すハンドル33)を螺合させるためのナット部31Cが設けられている。また、本体31においてナット部31Cの下にあたる部分には、本体31を左前方上側から右後方下側に貫通する一方側給糸口31Aが設けられている。また、本体31の下縁部には、この下縁部からダイアル42の径方向外方(
図6参照)に張り出される張り出し片32が設けられている。
【0037】
一方側給糸口31Aは、本体31の後面(
図4で見て紙面手前側の面)に開口されている。この後面は、
図6に示すように、セット状態においてダイアル42の径方向内方側となる面である。
【0038】
ガイド部材33Aは、他部材に対してねじ止めで固定されるタイプの、従前公知のループガイドである。本実施態様においては、ガイド部材33Aは、そのアイレット(糸などの線状部材を通す穴)が、後述する他方側給糸口32Aの軸線の延長線上に位置されるように配設される。
【0039】
ハンドル33は、従前公知の円形支柱(頭部が長尺の円筒形状に形成されたおねじ)である。このハンドル33は、本体31のナット部31Cに対してガイド部材33Aをねじ止めすることで、このガイド部材33Aを本体31に固定する。また、ハンドル33の頭部は、第2のフィーダー30を取り扱う際のつまみ、および、他の部材(例えば
図2に示すガイド部材33B)を第2のフィーダー30に取り付けるための支持具として機能する。本実施態様においては、ガイド部材33Bは、従前公知の固定具付きローラーガイドである。
【0040】
張り出し片32は、
図6に示すように、本体31の下縁部から、この下縁部に対して垂直に張り出される板状の構成である。この張り出し片32は、セット状態においては、丸編み機40においてダイアル針42Bが編み糸(
図2の紡績糸10Eを参照)を受け取るべく径方向外方に出される領域であるダイアル針出し領域42Dを、ダイアル針42Bが編み糸を受け取る側(
図6では上側)から覆う。
【0041】
張り出し片32が本体31から張り出される根元部分には、本体31の前面にて一方側給糸口31Aが開口される位置の下(
図3参照)から右後方下側に向かって延びるガイド溝30Aが設けられている。本実施態様においては、ガイド溝30Aは、その片側(
図6では右上側)の壁が本体31によって構成され、同じく反対側(
図6では左下側)の壁が張り出し片32によって構成されている。
【0042】
張り出し片32においてガイド溝30Aよりも前方となる部分には、
図3、
図6、および
図8に示すように、張り出し片32を前方上側から後方下側に貫通する他方側給糸口32Aが設けられている。この他方側給糸口32Aは、
図8に示すように、張り出し片32における下側(
図8では紙面手前側)の端面に開口されている。この端面は、
図6に示すように、セット状態においてダイアル針出し領域42Dの側となる面である。また、他方側給糸口32Aは、セット状態においてダイアル針出し領域42Dに向かって径方向内方側に傾斜するように設けられている。
【0043】
続いて、上述したダブルニット編地10を生産する方法(以下、第1の実施態様の説明においては単に「方法」とも称する。)を説明する。方法においては、第1のフィーダー20および第2のフィーダー30と、フィーダー40A、40Bとがそれぞれ適用されたインターロック出会いの丸編み機40(
図2参照)に対して、編み糸のセッティングを行うセッティング工程が実行される。また、方法においては、セッティング工程にてセッティングされた編み糸を丸編み機40により編成する編成工程によって、ダブルニット編地10を生産する。
【0044】
セッティング工程においては、一方側地編み組織11Aとして編まれる編み糸である紡績糸10Cを、ガイド部材23Aのアイレットおよび第1のフィーダー20の一方側給糸口21Aに、この順で通す。この際、一方側給糸口21Aは、紡績糸10Cがダイアル42の径方向外方から通されることで、この紡績糸10Cをニット領域41Cに向けてガイドする。ここで、ニット領域41Cは、丸編み機40におけるシリンダー41の針床41Aにセットされたシリンダー針41Bのニット領域のうち、紡績糸10Cおよび弾性糸10Dが引きそろえられた状態で編成されるニット領域である。
【0045】
また、セッティング工程においては、一方側プレーティング組織11Eとして編まれる編み糸である弾性糸10Dを、ガイド部材23Bのローラーおよび第1のフィーダー20のガイド溝20Aに、この順でかける。この際、ガイド溝20Aは、かけられた弾性糸10Dをニット領域41Cに向けてガイドする。
【0046】
また、セッティング工程においては、他方側地編み組織12Aとして編まれる編み糸である紡績糸10Eを、第2のフィーダー30の他方側給糸口32Aに上側から通す。この際、他方側給糸口32Aは、通された紡績糸10Eをニット領域42Cに向けてガイドする。ここで、ニット領域42Cは、丸編み機40におけるダイアル42の針床42Aにセットされたダイアル針42Bのニット領域のうち、紡績糸10Eおよび弾性糸10Fが引きそろえられた状態で編成されるニット領域である。
【0047】
また、セッティング工程においては、他方側プレーティング組織12Eとして編まれる編み糸である弾性糸10Fを、ガイド部材33Bのローラーおよび第2のフィーダー30のガイド溝30Aに、この順でかける。この際、ガイド溝30Aは、かけられた弾性糸10Fをニット領域42Cに向けてガイドする。
【0048】
また、セッティング工程においては、編み糸としてのつなぎ糸10Aをフィーダー40Aに通す。この際、フィーダー40Aは、通されたつなぎ糸10Aをニット領域41Eに向けてガイドする。
【0049】
また、セッティング工程においては、フィーダー40Aに通されるつなぎ糸10Aとは別のつなぎ糸10Aを編み糸としてフィーダー40Bに通す。この際、フィーダー40Bは、通されたつなぎ糸10Aをニット領域42Eに向けてガイドする。
【0050】
編成工程は、上記のセッティング工程が完了した状態で実行される。編成工程における編成の設定は、
図9にてF1~F6として示す編成図のとおりである。ここで、F1は、フィーダー40Aに通されるつなぎ糸10Aにおける編成の設定を表した編成図である。また、F4は、フィーダー40Bに通されるつなぎ糸10Aにおける編成の設定を表した編成図である。また、F2は、一方側地編み組織11Aとして編まれる紡績糸10Cにおける編成の設定を表した編成図である。また、F5は、一方側プレーティング組織11Eとして編まれる弾性糸10Dにおける編成の設定を表した編成図である。また、F3は、他方側地編み組織12Aとして編まれる紡績糸10Eにおける編成の設定を表した編成図である。また、F6は、他方側プレーティング組織12Eとして編まれる弾性糸10Fにおける編成の設定を表した編成図である。
【0051】
本開示のフィーダーは、ダイアル・シリンダータイプの丸編み機40において一方側編地11として編まれる編み糸を給糸する第1のフィーダー20として適用されうる。あるいは、本開示のフィーダーは、丸編み機40において他方側編地12として編まれる編み糸を給糸する第2のフィーダー30として適用されうる。本開示のフィーダーが第2のフィーダー30である場合には、第2のフィーダー30は、他方側地編み組織12Aとして編まれる編み糸である紡績糸10Eを他方側給糸口32Aによりダイアル針42Bのニット領域42Cに向けてガイドし、他方側プレーティング組織12Eとして編まれる編み糸である弾性糸10Fをガイド溝30Aによりニット領域42Cに向けてガイドする。これにより、第2のフィーダー30は、他方側地編み組織12Aが現れるべき場所に他方側プレーティング組織12Eが現れ、他方側プレーティング組織12Eが現れるべき場所に他方側地編み組織12Aが現れた不良品が編成されるおそれを減らす。また、本開示のフィーダーが第1のフィーダー20である場合には、第1のフィーダー20は、一方側地編み組織11Aとして編まれる編み糸である紡績糸10Cを一方側給糸口21Aによりシリンダー針41Bのニット領域41Cに向けてガイドし、一方側プレーティング組織11Eとして編まれる編み糸である弾性糸10Dをガイド溝20Aによりニット領域41Cに向けてガイドする。これにより、第1のフィーダー20は、一方側地編み組織11Aが現れるべき場所に一方側プレーティング組織11Eが現れ、一方側プレーティング組織11Eが現れるべき場所に一方側地編み組織11Aが現れた不良品が編成されるおそれを減らす。これらの作用により、本開示のフィーダーは、一方側編地11および他方側編地12のそれぞれを、地編み組織にプレーティング組織を引き合わせた構成としたダブルニット編地10を生産する際に、不良品が編成されるおそれを減らすことができる。
【0052】
上記の丸編み機40において、他方側地編み組織12Aとして編まれる編み糸である紡績糸10Eは、ダイアル針出し領域42Dにてダイアル針42Bに受け取られ、このダイアル針42Bのニット領域42Cに向けて引き込まれる。ここで、第2のフィーダー30によれば、他方側給糸口32Aに通される編み糸である紡績糸10Eがダイアル針出し領域42Dに出されるため、丸編み機40のダイアル針42Bは、この紡績糸10Eをそのまま受け取ってニット領域42Cに引き込むことができる。これにより、他方側給糸口32Aからダイアル針42Bのニット領域42Cに至る紡績糸10Eの糸道において、この紡績糸10Eが他部材によりガイドされることがない部分の長さを短くして、紡績糸10Eの糸道が延びる方向の入れ替わりが生じるおそれをさらに低減させたフィーダーを提供することができる。
【0053】
上記の丸編み機40において、ダイアル針42Bのニット領域42Cに向けての紡績糸10Eの引き込みは、ダイアル42の径方向外方から径方向内方に向かう向きに行われる。ここで、第2のフィーダー30によれば、他方側給糸口32Aに通される編み糸である紡績糸10Eは、ダイアル針出し領域42Dに向かって径方向内方側に傾斜した状態に延びだされる。これにより、ダイアル針42Bによる紡績糸10Eの引き込みをよりスムーズにすることが可能なフィーダーを提供することができる。
【0054】
また、上述した方法によれば、第2のフィーダー30は、他方側地編み組織12Aとして編まれる編み糸である紡績糸10Eを他方側給糸口32Aによりダイアル針42Bのニット領域42Cに向けてガイドし、他方側プレーティング組織12Eとして編まれる編み糸である弾性糸10Fをガイド溝30Aによりニット領域42Cに向けてガイドする。これにより、第2のフィーダー30は、他方側地編み組織12Aが現れるべき場所に他方側プレーティング組織12Eが現れ、他方側プレーティング組織12Eが現れるべき場所に他方側地編み組織12Aが現れた不良品が編成されるおそれを減らす。また、第1のフィーダー20は、一方側地編み組織11Aとして編まれる編み糸である紡績糸10Cを一方側給糸口21Aによりシリンダー針41Bのニット領域41Cに向けてガイドし、一方側プレーティング組織11Eとして編まれる編み糸である弾性糸10Dをガイド溝20Aによりニット領域41Cに向けてガイドする。これにより、第1のフィーダー20は、一方側地編み組織11Aが現れるべき場所に一方側プレーティング組織11Eが現れ、一方側プレーティング組織11Eが現れるべき場所に一方側地編み組織11Aが現れた不良品が編成されるおそれを減らす。これらの作用により、方法は、不良品のダブルニット編地が編成されるおそれを減らすことができる。
【0055】
また、方法によれば、フィーダー(第1のフィーダー20または第2のフィーダー30)における一方側給糸口、ガイド溝、または他方側給糸口のいずれかによってガイドされる編み糸を、このフィーダーに取り付けられたガイド部材(ガイド部材23A、ガイド部材23B、またはガイド部材33B)によってガイドさせることで、フィーダーがガイドする編み糸の糸道配設スペースを拡張することができる。これにより、フィーダーによってガイドされる編み糸の糸道が延びる方向の入れ替わりが生じるおそれをさらに低減させることができる。
【0056】
また、方法によれば、フィーダー(第1のフィーダー20または第2のフィーダー30)がガイドする編み糸の糸道配設スペースは、丸編み機40におけるシリンダー回転方向で見た上流側に拡張される。これにより、上記ガイド部材(ガイド部材23A、ガイド部材23B、またはガイド部材33B)からフィーダーに至る編み糸の糸道が延びる方向を、このフィーダーからニット領域に至る編み糸の糸道が延びる方向に沿うものとして、編み糸がフィーダーにすれることで受けるダメージを低減させることができる。
【0057】
〈第2の実施態様〉
続いて、第2の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法(以下、第2の実施態様の説明においては単に「方法」とも称する。)を説明する。方法は、第1の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法において使用される丸編み機40を用いつつ、この丸編み機40に対するフィーダーの適用および編み糸の編成の態様を変更した実施態様である。
【0058】
方法においては、第1の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法において使用される第1のフィーダー20および第2のフィーダー30と、フィーダー40A、40Bと、の4つを1組として、これらの組を適宜の数だけ丸編み機40に適用する。これらのフィーダーは、丸編み機40におけるシリンダー回転方向で見て、フィーダー40B、第2のフィーダー30、第1のフィーダー20、フィーダー40A、フィーダー40B……の順で周期的に並べられる。
【0059】
方法においては、上記各フィーダーが適用されたインターロック出会いの丸編み機40に対して、
図10にてF1~F4として示す編成図に従った編成工程を実行することで、ダブルニット編地を生産する。これらの編成図は、「ポンチデローマ」と呼ばれる種類のダブルニット編地の編成工程と同様の編成工程を表すものである。
【0060】
図10において、F1は、フィーダー40Aに通される編み糸における編成の設定(1目飛ばしのリブ編み)を表した編成図である。また、F2は、フィーダー40Bに通される編み糸における編成の設定(F1のリブ編みにて目飛ばしされた部分に設定される1目飛ばしのリブ編み)を表した編成図である。これらの編み糸は、生産されるダブルニット編地におけるつなぎ糸の組織を構成する。なお、フィーダー40A、フィーダー40Bに通される編み糸としては、適宜に選択した紡績糸またはフィラメントヤーンを採用することができる。本実施態様においては、フィーダー40A、フィーダー40Bに通される編み糸として、同種の糸が採用される。
【0061】
また、F3は、第2のフィーダー30によってガイドされる編み糸における編成の設定(ダイアル針42Bによる(ベア)天竺編み)を表した編成図である。ここで、「第2のフィーダー30によってガイドされる編み糸」は、第2のフィーダー30の他方側給糸口32Aに通されてガイドされる編み糸と、同じくガイド溝30Aにかけられてガイドされる編み糸と、の2本である。これらの編み糸は、第2のフィーダー30に対して丸編み機40のシリンダー回転方向の下流側直下に位置されるダイアル針42Bのニット領域に、2本が引きそろえられた状態でガイドされる。このニット領域において、他方側給糸口32Aからガイドされた編み糸は、生産されるダブルニット編地における他方側地編み組織を構成する。また、上記ニット領域において、ガイド溝20Aからガイドされた編み糸は、生産されるダブルニット編地における他方側プレーティング組織を構成する。本実施態様においては、他方側地編み組織を構成するための編み糸として、フィーダー40A、フィーダー40Bに通される編み糸と同種の糸が採用される。また、他方側プレーティング組織を構成するための編み糸としては、ポリウレタン系のフィラメントを有するフィラメントヤーンが採用される。
【0062】
また、F4は、第1のフィーダー20によってガイドされる編み糸における編成の設定(シリンダー針41Bによる(ベア)天竺編み)を表した編成図である。ここで、「第1のフィーダー20によってガイドされる編み糸」は、第1のフィーダー20の一方側給糸口21Aに通されてガイドされる編み糸と、同じくガイド溝20Aにかけられてガイドされる編み糸と、の2本である。これらの編み糸は、第1のフィーダー20に対して丸編み機40のシリンダー回転方向の下流側直下に位置されるシリンダー針41Bのニット領域に、2本が引きそろえられた状態でガイドされる。このニット領域において、一方側給糸口21Aからガイドされた編み糸は、生産されるダブルニット編地における一方側地編み組織を構成する。また、上記ニット領域において、ガイド溝20Aからガイドされた編み糸は、生産されるダブルニット編地における一方側プレーティング組織を構成する。本実施態様においては、一方側地編み組織を構成するための編み糸として、フィーダー40A、フィーダー40Bに通される編み糸と同種の糸が採用される。また、一方側プレーティング組織を構成するための編み糸としては、上記他方側プレーティング組織を構成するための編み糸と同種のフィラメントヤーンが採用される。
【0063】
上述した方法によれば、第1の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法によるものとして上述した作用効果と同様の作用効果を享受することができる。
【0064】
また、上述した方法によれば、丸編み機40は、組織全体を5層構造としたダブルニット編地を、ポンチデローマの編成工程と同様の編成工程によって編成することができる。これにより、方法は、組織全体が5層構造とされ、かつポンチデローマが有するメリット(編地としては比較的「のび」や「だれ」が起こりにくい、など)を具備するダブルニット編地を生産することができる。
【0065】
以上、本開示を実施するための態様について、上述した第1の実施態様および第2の実施態様によって説明した。しかしながら、当業者であれば、本開示の目的を逸脱することなく種々の代用、手直し、変更が可能であることは明らかである。すなわち、本開示を実施するための形態は、本明細書に添付した特許請求の範囲の精神および目的を逸脱しない全ての代用、手直し、変更を含みうるものである。例えば、本開示を実施するための形態として、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0066】
(1)第1の実施態様または第2の実施態様にかかるダブルニット編地を生産する方法においては、丸編み機に、本開示にかかるフィーダーと、編み糸の糸道を1本だけ設定できるタイプのフィーダーと、の2種類のフィーダーを適用する。そして、編み糸の糸道を1本だけ設定できるタイプのフィーダーには、ダブルニット編地におけるつなぎ糸の組織を構成するための編み糸が通される。しかしながら、本開示にかかるダブルニット編地を生産する方法は、本開示にかかるフィーダーのみを丸編み機に適用して実行されるものであってもよい。この場合において、つなぎ糸の組織を構成するための編み糸は、フィーダーにおける一方側給糸口または他方側給糸口のいずれかに通すことで、編み糸のニット領域にガイドすることができる。
【0067】
(2)第1の実施態様にかかるフィーダーは、このフィーダーにおける一方側給糸口、ガイド溝、または他方側給糸口のいずれかによってガイドされる編み糸を、さらにガイドするガイド部材が取り付けられたものである。しかしながら、本開示にかかるフィーダーは、上記のようなガイド部材が取り付けられないものであってもよい。また、本開示にかかるフィーダーは、同じ丸編み機に適用される別のフィーダーによってガイドされる編み糸を、さらにガイドするガイド部材が取り付けられたものであってもよい。この場合、上記別のフィーダーがガイドする編み糸の糸道配設スペースを、この別のフィーダーに割り当てられた配設スペースをこえて拡張し、編み糸の糸道が延びる方向の入れ替わりが生じるおそれをさらに低減させることができる。
【0068】
(3)本開示にかかるフィーダーにおいて、ガイド溝は、張り出し片が本体から張り出される根元部分に設けられるものに限定されず、該根元部分から張り出し片の張り出しの先端側に寄った位置に設けられるものであってもよい。この場合、張り出し片は、ガイド溝の壁の少なくとも一部を構成することになる。
【符号の説明】
【0069】
10 ダブルニット編地
10A つなぎ糸
10C 紡績糸
10D 弾性糸
10E 紡績糸
10F 弾性糸
11 一方側編地
11A 一方側地編み組織
11B オモテメの面
11C ウラメの面
11D 輪奈
11E 一方側プレーティング組織
12 他方側編地
12A 他方側地編み組織
12B オモテメの面
12C ウラメの面
12D 輪奈
12E 他方側プレーティング組織
20 第1のフィーダー(フィーダー)
20A ガイド溝
21A 一方側給糸口
23A ガイド部材
23B ガイド部材
30 第2のフィーダー(フィーダー)
30A ガイド溝
31 本体
31A 一方側給糸口
31B 長孔
31C ナット部
32 張り出し片
32A 他方側給糸口
33 ハンドル
33A ガイド部材
33B ガイド部材
40 丸編み機
40A フィーダー
40B フィーダー
41 シリンダー
41A 針床
41B シリンダー針
41C ニット領域
41D シリンダー針出し領域
41E ニット領域
42 ダイアル
42A 針床
42B ダイアル針
42C ニット領域
42D ダイアル針出し領域
42E ニット領域
【要約】
【課題】一方側編地および他方側編地のそれぞれを、地編み組織にプレーティング組織を引き合わせた構成のダブルニット編地を生産する際における不良品を減らす。
【解決手段】フィーダーは、本体におけるダイアルの径方向内方側となる面に開口された一方側給糸口を備える。一方側給糸口は、一方側地編み組織として編まれる編み糸をシリンダーの針床にセットされたシリンダー針のニット領域に向けてガイドする。フィーダーは、他方側プレーティング組織または一方側プレーティング組織として編まれる編み糸を、ダイアル針のニット領域またはシリンダー針のニット領域に向けてガイドするガイド溝を備える。フィーダーは、本体から径方向外方に張り出される張り出し片を備える。フィーダーは、張り出し片に設けられて、他方側地編み組織として編まれる編み糸が通されたときには、この編み糸をダイアル針のニット領域に向けてガイドする他方側給糸口を備える。
【選択図】
図2