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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】ステントグラフト
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20240214BHJP
【FI】
A61F2/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020549108
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2019036915
(87)【国際公開番号】W WO2020066874
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2018182618
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200035
【氏名又は名称】SBカワスミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白濱 憲昭
(72)【発明者】
【氏名】吉森 崇志
【審査官】白川 敬寛
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-525227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0313512(US,A1)
【文献】特開2018-051259(JP,A)
【文献】特開2013-071005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状組織内に留置されるステントグラフトであって、
骨格部と、
前記骨格部に沿って設けられ、管壁の一部に、内腔に通じる側面開口部を有する管状のグラフト部と、
前記管状組織内に当該ステントグラフトが留置された状態において、前記グラフト部における前記側面開口部の相対的な位置を調整可能な位置調整部と、を備え、
前記位置調整部は、当該ステントグラフトの軸方向に直交する幅方向における前記側面開口部の両側に形成されたプリーツであり、
前記プリーツは、山部と谷部が前記幅方向に交互に形成されるように立体的に折り畳まれたものであり、且つ、前記山部及び前記谷部に形成された直線状の折り目が前記軸方向に沿うことで前記幅方向に伸縮自在であり、
前記折り目の前記軸方向に沿う長さは、前記側面開口部の前記軸方向に沿う長さよりも長い、
ステントグラフト。
【請求項2】
前記位置調整部は、前記側面開口部の周辺に設けられている、
請求項1に記載のステントグラフト。
【請求項3】
前記側面開口部及び前記位置調整部は、前記グラフト部における当該ステントグラフトとは異なる他のステントグラフトが接続される領域に設けられている、
請求項1又は2に記載のステントグラフト。
【請求項4】
前記グラフト部は、前記管壁の一部が径方向内側に窪んだ凹部を有し、
前記側面開口部及び前記位置調整部は、前記凹部に設けられている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項5】
前記凹部の変形を規制する変形規制部を備える、
請求項4に記載のステントグラフト。
【請求項6】
前記グラフト部は、前記管壁の一部が径方向内側に窪み、底面が前記幅方向に延在する凹部を有し、
前記プリーツは、前記凹部の底面を横切って両側に前記山部及び前記谷部が形成されるように前記凹部の底面を折り畳むことにより形成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項7】
前記位置調整部は、前記グラフト部における前記側面開口部の前記幅方向の相対的な位置を調整可能である、
請求項1から6のいずれか一項に記載のステントグラフト。
【請求項8】
前記変形規制部は、前記幅方向に掛け渡された線材で構成されている、
請求項5に記載のステントグラフト。
【請求項9】
前記線材は、前記側面開口部の前記軸方向における両側に配置されている
請求項8に記載のステントグラフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントグラフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大動脈に生じた大動脈瘤や大動脈解離などの治療に用いられるステントグラフトとして、分枝血管対応型のステントグラフトが知られている(例えば、特許文献1参照)。この分枝血管対応型のステントグラフトは、管状のグラフト部の管壁に、分枝血管に通じる側面開口部を有している。
例えば、分枝血管対応型の主血管用ステントグラフトを主血管内に留置した状態で、側面開口部に分枝血管用ステントグラフトを接続し、分枝血管内に分枝血管用ステントグラフトを留置することにより、主血管と分枝血管との血流の維持が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5789867号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分枝血管内に分枝血管用ステントグラフトを適正に留置させるためには、分枝血管の血管口と主血管用ステントグラフトの側面開口部との位置ずれが極力小さくなるように、主血管用ステントグラフトを留置することが望ましい。しかしながら、分枝血管の血管口の位置は患者ごとに個体差があり、主血管用ステントグラフトの側面開口部の位置も装填状態によって変化するため、分枝血管の血管口と主血管用ステントグラフトの側面開口部の位置合わせには、施術者の技術や経験が大きく影響する。
また、主血管内に留置した状態における主血管用ステントグラフトの側面開口部の位置や向き等によっては、側面開口部への分枝血管用ステントグラフトの接続が困難となったり、さらには、分枝血管内への分枝血管用ステントグラフトの留置を適正に行うことができなくなったりする虞がある。
【0005】
本発明の目的は、主管状組織(例えば、主血管)用のステントグラフトの側面開口部と分枝管状組織の分枝口(例えば、分枝血管の血管口)との位置合わせを好適に行うことができるステントグラフトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステントグラフトは、
管状組織内に留置されるステントグラフトであって、
骨格部と、
前記骨格部に沿って設けられ、管壁の一部に、内腔に通じる側面開口部を有する管状のグラフト部と、
前記管状組織内に当該ステントグラフトが留置された状態において、前記グラフト部における前記側面開口部の相対的な位置を調整可能な位置調整部と、を備え、
前記位置調整部は、当該ステントグラフトの軸方向に直交する幅方向における前記側面開口部の両側に形成されたプリーツであり、
前記プリーツは、山部と谷部が前記幅方向に交互に形成されるように立体的に折り畳まれたものであり、且つ、前記山部及び前記谷部に形成された直線状の折り目が前記軸方向に沿うことで前記幅方向に伸縮自在であり、
前記折り目の前記軸方向に沿う長さは、前記側面開口部の前記軸方向に沿う長さよりも長い
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、主管状組織用のステントグラフトの側面開口部と分枝管状組織の分枝口との位置合わせを好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1A図1Bは、ステントグラフト留置装置の構成を示す図である。
図2図2A図2Bは、第1のステントグラフトの構成を示す図である。
図3図3A図3Bは、第1のステントグラフトの分枝部の構成を示す断面図である。
図4図4A図4Bは、第1及び第2のステントグラフトを血管内に留置させた状態を示す図である。
図5図5A図5Cは、第1及び第2のステントグラフトを血管内に留置する際の分枝部の開口と分枝血管の血管口との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るステントグラフトの一実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
本実施の形態では、本発明を適用した第1のステントグラフト10を主血管V1に留置するとともに、第1のステントグラフト10に第2のステントグラフト50を接続して分枝血管V2に留置する場合について説明する(図4A図4B参照)。
【0010】
図1A図1Bは、ステントグラフト留置装置1の構成を示す図である。図1Aは、ステントグラフト留置装置1を分解した状態を示し、図1Bは、ステントグラフト留置装置1を組み立てた状態を示す。なお、図1A図1Bでは、発明の理解を容易にするため、ステントグラフト留置装置1を構成する各部材の大きさ(長さ、径寸法など)や形状などを模式的に図示している。
【0011】
ステントグラフト留置装置1は、第1のステントグラフト10及び第2のステントグラフト50を血管内に留置させる際に使用される。以下の説明では、第1のステントグラフト10を血管内に留置させる場合を例に挙げて説明する。
【0012】
図1A図1Bに示すように、ステントグラフト留置装置1は、管状のシース20、シース20の内側に配置されシース20の軸方向(長手方向)に沿ってシース20内を進退可能に構成されたインナーロッド30、及び、シース20内に径方向に拡張可能な状態で収容される第1のステントグラフト10を備える。なお、第2のステントグラフト50を血管内に留置させる場合は、第1のステントグラフト10に代えて第2のステントグラフト50がシース20内に収容されることとなる。
【0013】
シース20は、管状のシース本体部21と、シース本体部21の基端側(図1A図1Bでは右側)に設けられたハブ22と、を有する。図示による説明は省略するが、ハブ22には、インナーロッド30をシース20に対して固定する、又はその固定を解除するためのナットが設けられている。
【0014】
シース20は、可撓性を有する材料で形成される。可撓性を有する材料としては、例えば、フッ素樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂等から選択される生体適合性を有する合成樹脂(エラストマー)、これらの樹脂に他の材料が混合された樹脂コンパウンド、これらの合成樹脂による多層構造体、並びに、これらの合成樹脂と金属線との複合体などが挙げられる。
【0015】
インナーロッド30は、棒状のロッド本体部31と、収縮状態にある第1のステントグラフト10を保持する保持部32と、インナーロッド30の先端部(遠位端部)に設けられた先端チップ33と、を有する。保持部32は、例えば、第1のステントグラフト10の厚さ分だけロッド本体部31よりも直径が小さく設定されている。
【0016】
ロッド本体部31及び保持部32を構成する材料としては、例えば、樹脂(プラスチック、エラストマー)又は金属等、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料が挙げられる。先端チップ33を構成する材料としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びポリ塩化ビニル系樹脂等から選択される合成樹脂(エラストマー)等の、適度な硬度及び柔軟性を有する種々の材料が挙げられる。
【0017】
なお、図示を省略するが、ロッド本体部31、保持部32及び先端チップ33には、例えば、ガイドワイヤーを通すためのガイドワイヤー用ルーメンや、収縮状態にある第1のステントグラフト10を患部で拡張させるためのトリガーワイヤーを通すためのトリガーワイヤー用ルーメン等が、インナーロッド30の軸方向に沿って形成されている。
【0018】
図2Aは第1のステントグラフト10の斜視図であり、図2Bは第1のステントグラフト10を分枝部121側から見た平面図である。図3A図2BにおけるA-A断面図(分枝部121側のみ)であり、図3B図2BにおけるB-B断面図である。これらの図では、発明の理解を容易にするため、第1のステントグラフト10の拡張状態を模式的に示している。また、図3A図3Bでは、骨格部11を省略している。
【0019】
第1のステントグラフト10は、分枝血管対応型の主血管用ステントグラフトであり、主血管V1(図4A図4B参照)に留置される。
図2A図2Bに示すように、第1のステントグラフト10は、骨格部11と、骨格部11に沿って設けられた管状のグラフト部12とを備える。グラフト部12の管壁には、グラフト部12の内腔に通じる開口121a(側面開口部)を有する分枝部121が設けられている。第1のステントグラフト10を主血管V1内に留置した状態で、分枝部121に第2のステントグラフト50を接続し、分枝血管V2内に第2のステントグラフト50を留置することにより、主血管V1と分枝血管V2との血流の維持が図られる。
【0020】
なお、本実施の形態では、第1のステントグラフト10が直管形状を有している場合を例示しているが、第1のステントグラフト10は、弓状に湾曲した形状(例えば、患者の大動脈弓の形状に対応した形状)を有していてもよいし、捻れるように迂曲した形状を有していてもよい。
【0021】
骨格部11は、径方向内側に収縮した収縮状態から、径方向外側に拡張して管状流路を画成する拡張状態へと変形可能に構成された自己拡張型のステント骨格である。本実施の形態では、骨格部11は、金属細線がジグザグ状に折り返されて管状に形成された5つの骨格片で構成されており、それぞれの内腔が連通するように骨格片が並設されることにより、全体として管形状を呈している。なお、隣接する骨格片同士は、連結部材で連結されてもよい。
骨格部11を形成する金属細線の材料としては、例えば、ステンレス鋼、ニッケル-チタン合金、コバルト-クロム合金、チタン合金等に代表される公知の金属又は金属合金が挙げられる。なお、骨格部11は、金属以外の材料(例えば、セラミックや樹脂等)で形成されてもよい。
【0022】
グラフト部12は、骨格部11に沿って、骨格部11を覆うように配置され、上述した管状流路を画成する。グラフト部12を形成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等が挙げられる。グラフト部12は、例えば、糸による縫合、テープによる貼着、接着又は溶着等により、骨格部11に固定される。
なお、グラフト部12は、骨格部11の外周側に配置されてもよいし、骨格部11の内周側に配置されてもよいし、骨格部11を外周側と内周側から挟み込むように配置されてもよい。
【0023】
グラフト部12は、管壁の一部(図2A図2Bでは、第1のステントグラフト10の軸方向略中央)に、径方向内側に窪んだ凹部122を有している。凹部122の平坦な底面の略中央には、グラフト部12の径方向において外側に突出するように、筒形状の分枝部121が形成されている。分枝部121は、グラフト部12と同じ材料で、グラフト部12と一体的に形成される。分枝部121は、例えば、主血管V1から分枝血管V2への血流によって、開口121aの向きが変形可能な程度の柔軟性(フレキシビリティ)を有する。
【0024】
分枝部121は、先端側の開口121aに向けて縮径するテーパー形状を有することが好ましい。これにより、主血管V1に第1のステントグラフト10を留置し、分枝部121に第2のステントグラフト50を接続して分枝血管V2に留置する場合に、第1のステントグラフト10と第2のステントグラフト50の密着性を高めることができる。
【0025】
さらに、ステントグラフト1は、血管内に留置された状態において、グラフト部12における分枝部121の相対的な位置(具体的には、分枝部121の開口121aの位置及び向き)を調整可能な位置調整部13を有する。
【0026】
本実施の形態では、位置調整部13は、例えば、変形可能に構成され、凹部122の幅方向(軸方向に直交する方向)における分枝部121の両側に、軸方向に沿って形成されたプリーツで構成されている。図3Bに示すように、プリーツは、山部131と谷部132が交互に形成されるように立体的に折り畳まれた折り目(ひだ)であり、例えば、グラフト部12の凹部122の底面を折り畳むことにより形成される。
【0027】
なお、プリーツは、当該プリーツの延在方向に直交する方向(折り目の配列方向、ここでは、凹部122の幅方向)に伸縮自在であればよく、プリーツの種類(例えば、蛇腹状のアコーディオン・プリーツなど)は特に限定されない。また、プリーツは、図3Bに示すように、凹部122の底面を横切るように両側に山部131及び谷部132を形成した形状であってもよいし、凹部122の底面に対して片側に山部131のみ又は谷部132のみを形成した形状であってもよい。また、プリーツは、山部131及び/又は谷部132を複数有していてもよく、この場合、山部131と谷部132が交互に連続して形成されてもよいし、山部131又は谷部132が連続して形成されてもよい。また、プリーツは、山部131及び谷部132の一方が1つだけ形成されている形状も含む。
【0028】
位置調整部13は、例えば、ガイドワイヤー40(図5C参照)やシース20が当接することにより分枝部121に外力が作用すると、プリーツの折り目の配列方向に容易に伸縮する。位置調整部13の伸縮(変形)に伴い、分枝部121は幅方向に変位する。したがって、分枝血管V2の血管口に対して適正な位置となるように、分枝部121の開口121aを容易に変位させることができる。
【0029】
なお、位置調整部13は、その変形に伴って分枝部121の開口121aを変位可能であれば、例えば、変形可能な部分のみから構成されてもよいし、当該変形可能な部分と分枝部121とを繋ぐ間の平坦部分を含めて構成されてもよい。また、位置調整部13は、例えば、分枝部121の縁部(実施の形態では、分枝部121における凹部122との接続部分)に直接接続されて形成されてもよい。すなわち、位置調整部13は、分枝部121の開口121a(側面開口部)の周辺(より好ましくは、近傍)に設けられ、開口121aを変位させる力を、開口121aの形成部位である分枝部121に対して好適に作用させることができるように構成されていればよい。
このように、側面開口部としての開口121a及び位置調整部13は、グラフト部12における第1のステントグラフト10とは異なる第2のステントグラフト50が接続される領域(凹部122)に設けられている。
【0030】
ここで、本実施の形態のように、グラフト部12に凹部122を形成した場合、例えば、当該凹部122の形状、骨格部11の金属細線の配置や強度等によっては血流により凹部122の底面が径方向外側に変位する虞がある。特に、プリーツ状の位置調整部13を設けると、血流によってプリーツ部分が径方向外側に膨出し、凹部122の底面が径方向外側に変位し易くなる。この場合、分枝部121の開口121aも変位するため、設計通りの位置からずれてしまう。そこで、ステントグラフト1に、グラフト部12の凹部122の変形を規制する変形規制部14を設けることにより、上述した問題を解決している。
【0031】
本実施の形態では、変形規制部14は、凹部122の幅方向に掛け渡された線材で構成されている。図2A図2Bでは、第1のステントグラフト10の軸方向における分枝部121の両側に1本ずつ線材が配置されている。線材は、例えば、伸縮性及び弾性を有しないか、相対的に低い材料で形成されるのが好ましい。なお、変形規制部14は、凹部122を平坦状に維持し、その幅を一定に保持できるものであればよく、線材の本数等は特に限定されない。さらには、線材以外の形態で凹部122の変形を規制するようにしてもよい。
変形規制部14により凹部122の幅が一定に保持されるので、血流によってプリーツ状の位置調整部13が膨出することなく凹部122の底面の平坦性が維持され、その結果、分枝部121の位置が保持される。
【0032】
図4A図4Bは、第1のステントグラフト10及び第2のステントグラフト50を血管内に留置させる方法を示す図である。図4A図4Bでは、第1のステントグラフト10を主血管V1の病変部位(例えば、大動脈瘤等が生じている部位)に留置するとともに、第2のステントグラフト50を病変部位の近傍において主血管V1から分枝する分枝血管V2に留置する場合について示している。第1のステントグラフト10の分枝部121に、第2のステントグラフト50が接続される。
【0033】
なお、第2のステントグラフト50の拡張状態における外径は、第1のステントグラフト10の分枝部121の内径と同等以上である。また、第2のステントグラフト50の構成は、分枝部121、凹部122、位置調整部13及び変形規制部14を具備しない点を除いて、第1のステントグラフト10と概略同様であるので、説明を省略する。
【0034】
第1のステントグラフト10及び第2のステントグラフト50を血管内に留置する場合、例えば、予め血管に挿通されたガイドワイヤーに沿ってステントグラフト留置装置1を血管内に導入し、先端部を所定の病変部位まで送達する。この状態でシース20を引き抜くことにより、第1のステントグラフト10をシース20から放出する。放出された第1のステントグラフト10は、自己拡張力により拡張し、主血管V1に密着して留置される(図4A参照)。
【0035】
その後、例えば、第2のステントグラフト50を留置するためのガイドワイヤーを、分枝血管V2から第1のステントグラフト10の分枝部121の開口121aを通してステントグラフト挿入部位(例えば、鼠径部)から引き出す。このガイドワイヤーに沿ってステントグラフト留置装置1を血管内に導入し、先端部を第1のステントグラフト10の内部を通って分枝血管V2の所定の部位まで送達する。第1のステントグラフト10の分枝部121と第2のステントグラフト50が重複するように位置決めし、この状態でシース20を引き抜くことにより、第2のステントグラフト50をシース20から放出する。放出された第2のステントグラフト50は、自己拡張力により拡張し、分枝血管V2に密着して留置される(図4B参照)。
これにより、重複部分において、第1のステントグラフト10(分枝部121)の内周面と第2のステントグラフト50の外周面が密着し、第1のステントグラフト10と第2のステントグラフト50が接続される。
【0036】
なお、第2のステントグラフト50は、分枝血管V2を通って移送され、第1のステントグラフト10の分枝部121に内挿されてもよい。
【0037】
図5A図5Cは、第1のステントグラフト10を主血管V1(例えば、大動脈)に留置し、第2のステントグラフト50を分枝血管V2に留置する際の分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口との位置関係を示す図である。図5A図5Cでは、主血管V1及び分枝血管V2を破線で示している。また、図5Cでは、分枝部121及び位置調整部13の変位前の状態を点線で示している。
【0038】
図5Aに示すように、第1のステントグラフト10を主血管V1に留置したときに、分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口とが対向配置されていれば、第2のステントグラフト50を留置部位までスムーズに移送することができる。
一方、図5Bに示すように、第1のステントグラフト10を主血管V1に留置したときに、分枝部121の開口121aが分枝血管V2の血管口に対して、例えば、主血管V1の周方向にずれていた場合、従来であれば、第2のステントグラフト50を留置部位までスムーズに移送することができなかった。これに対して、実施の形態に係る第1のステントグラフト10は、位置調整部13を有しているので、例えば、第2のステントグラフト50を留置するためのガイドワイヤー40又はシース20を分枝部121の開口121aの縁部に当接するように当該開口121aに挿通することで外力を作用させ、分枝部121の開口121aを幅方向に変位させることができる(図5C参照)。このとき、一方の位置調整部13(図5Cでは右側)は幅方向に収縮し、他方の位置調整部13(図5Cでは左側)は幅方向に伸長することとなる。これにより、分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口とを容易に位置合わせすることができる。
【0039】
このように、本実施の形態に係る第1のステントグラフト10は、主血管V1(管状組織)内に留置されるステントグラフトであって、骨格部11と、骨格部11に沿って設けられ、管壁の一部に、内腔に通じる開口121a(側面開口部)を有する管状のグラフト部12と、主血管V1内に第1のステントグラフト10が留置された状態において、グラフト部12における開口121aの相対的な位置を調整可能な位置調整部13と、を備える。
【0040】
実施の形態に係る第1のステントグラフト10によれば、位置調整部13によりグラフト部12における分枝部121の開口121aの相対的な位置を調整することができるので、例えば、第1のステントグラフト10を主血管V1に留置したときに、分枝部121の開口121aが分枝血管V2の血管口に対してずれていても、分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口との位置合わせを好適に行うことができる。したがって、主血管V1と分枝血管V2との血流の維持を図ることができる。
【0041】
また、位置調整部13は、分枝部121の開口121a(側面開口部)の周辺に設けられている。分枝部121の開口121aをその周辺に設けられた位置調整部13により好適に変位させることができ、分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口との位置合わせを好適に行うことができる。
【0042】
また、分枝部121の開口121a及び位置調整部13は、グラフト部12における第1のステントグラフト10とは異なる第2のステントグラフト50が接続される領域に設けられている。
これにより、第2のステントグラフト50が接続される領域に設けられた位置調整部13によって分枝部121の開口121aが容易に変位するので、第2のステントグラフト50の接続を容易化でき、分枝血管V2に第2のステントグラフト50を適正に留置させることができる。
【0043】
また、グラフト部12は、管壁の一部が径方向内側に窪んだ凹部122を有し、開口121a(側面開口部)及び位置調整部13は、凹部122に設けられている。具体的には、開口121aは、凹部122の底面から径方向外側に突出して形成されている分枝部121に設けられている。
これにより、第1のステントグラフト10と第2のステントグラフト50との接続を好適に行う上で、分枝部121を有する凹部122を形成しても、当該凹部122に設けられた位置調整部13により分枝部121の開口121aを変位させることができ、分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口との位置合わせをより好適に行うことができる。
【0044】
さらに、第1のステントグラフト10は、凹部122の変形を規制する変形規制部14を備える。これにより、血流によって凹部122の底面が径方向外側に変位するのを抑制することができ、特に、位置調整部13によってグラフト部12における開口121aの相対的な位置を調整可能な構成であっても、開口121aが意図しない位置にずれるのを防止できる。したがって、分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口との位置合わせをより好適に行うことができる。
【0045】
また、位置調整部13は、分枝部121の開口121aの周辺にプリーツ状に形成されている。プリーツ状の位置調整部13が当該プリーツの延在方向に直交する方向に伸縮することにより、分枝部121の開口121aを容易に変位させることができ、分枝部121の開口121aと分枝血管V2の血管口との位置合わせを好適に行うことができる。特に、プリーツ状の位置調整部13を、第1のステントグラフト10の軸方向に沿って形成することで、分枝部121の開口121aを幅方向に容易に変位させることができる。
【0046】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0047】
例えば、実施の形態では、グラフト部12に位置調整部13を設けた場合について説明したが、位置調整部13は、グラフト部12以外の部位に設けられてもよい。例えば、第1のステントグラフト10において、骨格部11のうち、第2のステントグラフト50が接続される部分の周辺の骨格部11の形状や、かしめ形状を工夫することにより、分枝部121の開口121aの位置を調整できるようにしてもよい。
【0048】
また例えば、実施の形態では、位置調整部13がプリーツ状を有する場合について説明したが、位置調整部13は、その他の形態であってもよい。例えば、第1のステントグラフト10において、プリーツ状の位置調整部13に対応する部分を、グラフト部12とは弾性が異なり、変形しやすい材料で形成した場合も、幅方向の伸縮により分枝部121の開口121aの位置を調整することができる。
【0049】
また、実施の形態では、第1のステントグラフト10に1つの分枝部121(開口121a)を設けた形態について説明したが、第1のステントグラフト10は、複数(例えば、3つ)の分枝部121を有していてもよい。この場合、位置調整部13は、それぞれの分枝部121の開口121aの位置を調整可能であることが好ましい。特に、複数の分枝部121の開口121aに沿うように延在する一のプリーツ状の位置調整部13を設けることで、複数の分枝部121の開口121aのうち、何れか一の分枝部121の開口121a(例えば、3つのうちの真ん中の開口121a)を所定方向(例えば、幅方向)に変位させることで、当該変位に連動させて他の分枝部121の開口121aも変位させることができる。これにより、複数の分枝部121の開口121aと複数の分枝血管V2の血管口との位置合わせをより容易に行うことができる。
【0050】
また、位置調整部13の配置は、第1のステントグラフト10の軸方向に沿ったものでなくてもよく、適宜任意に変更可能である。例えば、位置調整部13を第1のステントグラフト10の軸方向に直交する一方向(幅方向)に形成することにより、分枝部121の開口121aを軸方向に容易に変位させることができる。また、分枝部121の開口121aを取り囲むように位置調整部13を円環形状に配置することにより、分枝部121の開口121aを分枝部121の軸方向に直交する全方向に容易に変位させることができる。
【0051】
また、変形規制部14は、凹部122の変形を抑制し凹部122の底面の平坦性を維持できればよく、例えば、グラフト部12において凹部122の底面に対向する部分と凹部122の底面とを連結する紐状部材などにより、凹部122の底面が径方向内側に引っ張られるように構成してもよい。
【0052】
また、実施の形態では、第1のステントグラフト10が凹部122を有する形態について説明したが、一例であってこれに限られるものではなく、凹部122を有するか否かは適宜任意に変更可能である。さらに、第1のステントグラフト10が分枝部121を有するようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、分枝部121を有するか否かは適宜任意に変更可能である。
すなわち、第1のステントグラフト10は、必ずしも凹部122及び分枝部121を有する必要はなく、グラフト部12における側面開口部としての開口121aの周囲に位置調整部13が設けられていればよい。
【0053】
また、分枝部121は、グラフト部12とは別部材で構成され、グラフト部12に接合して形成されてもよい。この場合、分枝部121は、グラフト部12と同じ材料で形成されてもよいし、異なる材料で形成されてもよい。
【0054】
さらに、実施の形態では、管状組織の一例として血管に留置されるステントグラフトについて説明したが、本発明は、血管以外の管状組織、例えば、胆管と十二指腸との分枝部分等に留置されるステントグラフトに適用することもできる。
【0055】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0056】
2018年9月27日出願の特願2018-182618の日本出願に含まれる明細書、図面および要約書の開示内容は、すべて本願に援用される。
【符号の説明】
【0057】
1 ステントグラフト留置装置
10 第1のステントグラフト
11 骨格部
12 グラフト部
121 分枝部
121a 開口(側面開口部)
122 凹部
13 位置調整部
14 変形規制部
50 第2のステントグラフト
V1 主血管
V2 分枝血管
図1
図2
図3
図4
図5