(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光学効果層を生成するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20240214BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20240214BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240214BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20240214BHJP
B42D 25/369 20140101ALI20240214BHJP
B42D 25/40 20140101ALI20240214BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D5/06 Z
B05D7/24 303A
B05D7/24 303J
B41M3/14
B42D25/369
B42D25/40
(21)【出願番号】P 2021504288
(86)(22)【出願日】2019-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2019065982
(87)【国際公開番号】W WO2020025218
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-20
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ニクサーシュ, ガネポー ネダ
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー, エドガー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, マチュー
(72)【発明者】
【氏名】デスプランド, クロード-アラン
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511703(JP,A)
【文献】国際公開第2018/019594(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00- 7/26
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
B42D15/02
25/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の入れ子になったしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(x20)上に生成するためのプロセスであって、
a)コーティング層(x10)を基板(x20)上に形成するために、i)血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子及びii)バインダ材料を含むコーティング組成物を前記基板(x20)表面に塗布するステップであり、前記コーティング組成物が第1の液体状態である、ステップと、
b)磁気アセンブリ(x30)の磁界に前記コーティング層(x10)を曝露するステップであり、前記磁気アセンブリ(x30)が、
i)透磁率の高い1つ若しくは複数の軟磁性金属、合金、若しくは化合物を含むか、又は、およそ25重量%~およそ95重量%の軟磁性粒子が非磁性材料中に分散した複合材で造られた軟磁性板(x31)であり、前記重量百分率が前記磁性板(x31)の総重量に基づき、
前記軟磁性板(x31)は、1つ又は複数の双極子磁石(x32)を受容する1つ又は複数のボイド(V)を含み、
前記軟磁性板(x31)は、それぞれが1つ若しくは複数の連続ループ状しるし及び/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしを形成する1つ若しくは複数の窪み(I)及び/又は1つ若しくは複数の突起(P)を備え、
前記1つ又は複数のボイド(V)が、前記1つ若しくは複数の連続ループ状しるし及び/又は前記1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしに囲まれた、軟磁性板(x31)と、
ii)それぞれの磁気軸が前記基板(x20)表面と実質的に垂直な前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)であり、すべての磁場方向が同じで、前記1つ又は複数のボイド(V)内に配設された、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)と、
を備える、ステップと、
c)前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子をそれぞれの選ばれた位置及び配向に固定するために、前記コーティング組成物を固化させて第2の状態とするステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記軟磁性板(x31)が、前記1つ又は複数の窪み(I)を含み、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面が、前記軟磁性板(x31)の上面と同一平面である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記軟磁性板(x31)が、前記1つ又は複数の突起(P)を含み、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面が、前記軟磁性板(x31)の上面と同一平面である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を2軸配向させるために、前記コーティング層(x10)を装置の動的な磁界に曝露するステップであり、前記ステップb)の前又は前記ステップb)と同時に、かつ前記ステップc)の前に発生する、ステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記軟磁性板(x31)が、ポリマーマトリクスである非磁性材料中に分散したおよそ25重量%~およそ95重量%の軟磁性粒子を含む複合材で造られ、前記ポリマーマトリクスは、ポリアミド、コポリアミド、ポリフタルイミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、液晶ポリマー、ポリカーボネート、及びこれらの混合物から成る群から選択される熱可塑性材料、又は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、及びこれらの混合物から成る群から選択される熱硬化性材料のいずれかを含むか、又は、これらのいずれかから成る、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記軟磁性粒子が、カルボニル鉄、カルボニルニッケル、コバルト、及びこれらの組合せから成る群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記軟磁性粒子が、およそ0.5μm~およそ100μmのd50を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記1つ又は複数のボイド(V)が、前記軟磁性板(x31)の厚さと比較しておよそ5%~およそ100%の深さを有し、及び/又は、前記1つ又は複数の窪み(I)が、前記軟磁性板(x31)の厚さと比較しておよそ5%~およそ100
%の深さを有し、及び/又は、前記1つ又は複数の突起(P)が、前記軟磁性板(x31)の厚さと比較しておよそ5%~およそ100%の高さ(H)を有する、請求項5~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記1つ又は複数の窪み(I)が、前記軟磁性板(x31)の厚さと比較しておよそ5%~およそ90%の深さを有する、請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の直径が、前記1つ又は複数のボイド(V)のサイズよりも小さい、請求項1~
9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記コーティング組成物を固化させる前記ステップc)が、前記ステップb)と一部同時に実行される、請求項1~
10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子が、血小板状磁性薄膜干渉顔料粒子、血小板状磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む血小板状干渉被覆顔料粒子、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される血小板状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子である、請求項1~
11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
セキュリティ文書又は装飾要素又は装飾物体を製造する方法であって、
a)セキュリティ文書又は装飾要素又は装飾物体を用意するステップと、
b)前記セキュリティ文書又は装飾要素又は装飾物体に含まれるように、請求項1~
12のいずれか一項に記載のプロセスに従って光学効果層を用意するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[001]本発明は、磁気配向血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む光学効果層(OEL)を生成するためのプロセスの分野に関する。特に、本発明は、配向血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング層内に、入れ子になった2つ以上のしるしを示す光学効果層(OEL)を生成するためのプロセスと、前記OELの偽造防止手段としてのセキュリティ文書若しくはセキュリティ物品上での使用、又は装飾目的としての使用と、を提供する。
【背景技術】
【0002】
[002]当技術分野においては、配向磁性又は磁化可能顔料粒子、特に、光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子を含むインク、組成物、コーティング、又は層を用いることにより、セキュリティ要素を製造することが、例えばセキュリティ文書の分野において知られている。配向磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング又は層については、例えば米国特許第2,570,856号、米国特許第3,676,273号、米国特許第3,791,864号、米国特許第5,630,877号、及び米国特許第5,364,689号に開示されている。配向磁性変色顔料粒子を含むことによって特に良好な光学効果を示し、セキュリティ文書の保護に有用なコーティング又は層については、国際公開第2002/090002 A2号及び国際公開第2005/002866 A1号に開示されている。
【0003】
[003]例えばセキュリティ文書のセキュリティフィーチャは一般的に、一方では「秘密」のセキュリティフィーチャ、他方では「公然」のセキュリティフィーチャに分類可能である。秘密のセキュリティフィーチャによる保護は、そのような対策が検出困難であり、検出には通常、特殊な機器及び知識が必要である、という原則に依拠している。一方、「公然」のセキュリティフィーチャは、人間の感覚のみで容易に検出可能であり、例えばそのような対策の可視化及び/又は触覚による検出が可能でありながら、製造及び/又はコピーは依然として困難である、という概念に依拠している。ただし、公然のセキュリティフィーチャの有効性は、それぞれのセキュリティフィーチャとしての認識容易性に大きく依存する。
【0004】
[004]印刷インク又はコーティングにおける磁性又は磁化可能顔料粒子は、対応する構成の磁界の印加により、未固化(すなわち、湿潤)コーティング中で磁性又は磁化可能顔料粒子を局所的に配向させた後、コーティングを固化させることによって、磁気誘導像、デザイン、及び/又はパターンを生成することを可能にする。その結果は、固定された安定的な磁気誘導像、デザイン、又はパターンである。コーティング組成物中の磁性又は磁化可能顔料粒子の配向のための材料及び技術は、例えば米国特許第2,418,479号、米国特許第2,570,856号、米国特許第3,791,864号、独国特許出願公開第2006848号、米国特許第3,676,273号、米国特許第5,364,689号、米国特許第6,103,361号、欧州特許第0406667号、米国特許出願公開第2002/0160194号、米国特許出願公開第2004/0009308号、欧州特許出願公開第0710508号、国際公開第2002/009002号、国際公開第2003/000801号、国際公開第2005/002866号、国際公開第2006/061301号に開示されている。このように、偽造に対する耐性が高い磁気誘導パターンが得られる。対象とするセキュリティ要素は、磁性若しくは磁化可能顔料粒子又は対応するインク、並びに前記インクの印刷及び印刷インク中の前記顔料の配向に用いられる特定の技術の両者を利用することによってのみ達成される。
【0005】
[005]欧州特許第1641624号、欧州特許第1937415号、及び欧州特許第2155498号は、磁性又は磁化可能顔料粒子を含む未固化(すなわち、湿潤)コーティング組成物にしるしを磁気転写して光学効果層(OEL)を形成するための装置及び方法を開示する。開示の方法によれば、顧客固有の磁気デザインを有するセキュリティ文書及び物品を生成可能であるため都合が良い。
【0006】
[006]欧州特許第1641624号は、磁性又は磁化可能粒子を含む湿潤コーティング組成物に転写されるデザインに対応するしるしを基板上に磁気転写するための装置を開示する。開示の装置は、表面と実質的に垂直な方向に永久磁化された永久磁石材料の本体を備え、前記本体の表面には、その磁界の摂動を生じさせる彫刻の形態のしるしを有する。開示の装置は、セキュリティ印刷の分野等において使用される高速印刷プロセスにおける高分解能パターンの転写によく適している。ただし、欧州特許第1937415号に記載の通り、欧州特許第1641624号に開示の装置は、光学効果層の反射が不十分で、視覚的外見がかなり暗くなる可能性がある。
【0007】
[007]欧州特許第1937415号は、基板上の磁性又は磁化可能顔料薄片を含む湿潤コーティング組成物にしるしを磁気転写するための改良された装置を開示する。開示の装置は、第1の磁界を有し、前記しるしを表す表面起伏、彫刻、又は切り欠きを表面に有する少なくとも1つの磁化された磁性板と、第2の磁界を有する少なくとも1つの付加的な磁石とを備え、付加的な磁石が磁性板に隣接して固定配置されることにより、それぞれの磁界が実質的に重なり合う。
【0008】
[008]移動リング効果が効率的なセキュリティ要素として開発されている。移動リング効果は、前記光学効果層の傾斜角に応じて任意のx-y方向に移動するように見える漏斗、円錐、ボウル、円、楕円、及び半球等の物体の光学的錯覚像から成る。移動リング効果を生む方法については、例えば欧州特許出願公開第1 710 756 A1号、米国特許第8,343,615号、欧州特許出願公開第2 306 222 A1号、欧州特許出願公開第2 325 677 A2号、及び米国特許出願公開第2013/084411号に開示されている。
【0009】
[009]国際公開第2011/092502 A2号は、視角の変化で見かけ上の単一の移動リングを表示する移動リング像を生成する装置を開示している。開示の移動リング像は、軟磁化可能シートと、磁気軸がコーティング層の平面に垂直であるとともに前記軟磁化可能シートの下側に配設された球状磁石との組合せにより生成された磁界によって磁性又は磁化可能粒子の配向を可能とする装置の使用によって取得又は生成され得る。
【0010】
[010]国際公開第2014/108404 A2号は、コーティング中に分散した複数の磁気配向非球状磁性又は磁化可能粒子を含む光学効果層(OEL)を開示している。開示のOELの特定の磁気配向パターンは、OELの傾斜に際して移動する単一のループ状体の光学効果又は印象を観察者に与える。さらに、国際公開第2014/108404 A2号は、ループ状体において、当該ループ状体に囲まれた中央領域の反射帯による突起の光学効果又は印象をさらにもたらすOELを開示している。開示の突起は、ループ状体に囲まれた中央領域に存在する半球等の3次元物体の印象を与える。
【0011】
[011]国際公開第2014/108303 A1号は、コーティング中に分散した複数の磁気配向非球状磁性又は磁化可能粒子を含む光学効果層(OEL)を開示している。開示のOELの特定の磁気配向パターンは、1つの共通中央領域を囲み、視角に応じた見かけ上の運動を示す複数の入れ子になったループ状体の光学効果又は印象を観察者に与える。
【0012】
[012]以上から、複数すなわち2つ以上の入れ子になった動的効果を示すカスタマイズ光学効果層(OEL)を良好な品質で基板上に生成するためのプロセスが依然として求められており、前記プロセスは、人目を引く効果のみならず、明るくて十分に分解された外見を示す動的なOELの生成を可能にしつつ、信頼性があり、実装が容易で、高速に機能し得るものとする。
【発明の概要】
【0013】
[013]したがって、本発明は、上述の従来技術の不備を克服することを目的とする。これは、光学効果層(OEL)を生成するためのプロセスであって、
a)コーティング層(x10)を基板(x20)上に形成するために、i)血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子及びii)バインダ材料を含むコーティング組成物を前記基板(x20)表面に塗布するステップであり、前記コーティング組成物が第1の液体状態である、ステップと、
b)磁気アセンブリ(x30)の磁界にコーティング層(x10)を曝露するステップであり、磁気アセンブリ(x30)が、i)透磁率の高い1つ若しくは複数の軟磁性金属、合金、若しくは化合物を含むか、又は、およそ25重量%~およそ95重量%の軟磁性粒子が非磁性材料中に分散した複合材で造られた軟磁性板(x31)であり、重量百分率が当該磁性板(x31)の総重量に基づき、軟磁性板(x31)は、1つ又は複数の双極子磁石(x32)を受容する1つ又は複数のボイド(V)を含み、軟磁性板(x31)は、それぞれが1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしを形成する1つ若しくは複数の窪み(I)及び/又は1つ若しくは複数の突起(P)を備え、1つ又は複数のボイド(V)が、1つ若しくは複数の連続ループ状しるし及び/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしに囲まれた、軟磁性板(x31)と、
ii)それぞれの磁気軸が基板(x20)表面と実質的に垂直な前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)であり、すべての磁場方向が同じで、1つ又は複数のボイド(V)内に配設された、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)と、
を備える、ステップと、
c)血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子をそれぞれの選ばれた位置及び配向に固定するために、コーティング組成物を固化させて第2の状態とするステップと、
を含む、プロセスの提供により実現される。
【0014】
[014]また、本明細書には、本明細書に記載のプロセスにより生成された光学効果層(OEL)と、本明細書に記載の1つ又は複数の光学OELを備えたセキュリティ文書のほか、装飾要素及び装飾物体を記載する。
【0015】
[015]また、本明細書には、セキュリティ文書又は装飾要素又は装飾物体を製造する方法であって、a)セキュリティ文書又は装飾要素又は装飾物体を用意するステップと、b)セキュリティ文書又は装飾要素又は装飾物体に含まれるように、本明細書に記載のような光学効果層、特に、本明細書に記載のプロセスにより得られるような光学効果層を用意するステップと、を含む、方法を記載する。
【0016】
[016]また、本明細書には、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)と併せた、本明細書に記載の軟磁性板(x31)の使用であって、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)がそれぞれ、基板(x20)表面と実質的に垂直な(且つ、軟磁性板(x31)表面と実質的に垂直な)磁気軸を有し、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)がすべて、同じ磁場方向を有し、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を基板上のコーティング層内において磁気配向させるために、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)が、ボイド(V)内に配設される、使用を記載する。
【0017】
[017]本発明は、複数すなわち2つ以上の高度に動的なループ状効果を示す光学効果層(OEL)を生成する高信頼性且つ実装容易なプロセスであって、第1の状態すなわち未固化(すなわち、湿潤)状態のコーティング組成物により形成されたコーティング層へと血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を配向させるステップであり、コーティング層を固化させて第2の状態とした前記光学効果層(OEL)を形成するように血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子が自由に移動及び回転可能であるとともに、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向及び位置が固定/停止される、ステップを含む、プロセスを提供する。所望の効果が未固化(すなわち、湿潤)コーティング層に生じると、コーティング組成物が部分的に又は完全に固化され、OEL中の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の相対位置及び配向を永久に固定/停止する。
【0018】
[018]本発明、特に、軟磁性板及び双極子磁石の効果として、複数の入れ子になった動的効果を示すカスタマイズ光学効果層を良好な品質で基板上に生成可能であり、光学効果層を生成するための方法は、信頼性があり、実装が容易で、高速に使用可能であるため、人目を引く効果のみならず、明るくて十分に分解された外見を示す動的な光学効果層の生成を可能にする。特に、上述の軟磁性板の形状では、例えば2つ以上の入れ子になったしるしを示すOELを基板上に生成可能な所望の効果を得るために複数の双極子磁石を必要としない。
【0019】
[019]さらに、本発明が提供するプロセスは、機械的に堅牢であり、煩雑、単調、且つ高価な改良の必要がなく、工業用高速印刷機器による実装が容易である。
【0020】
[020]好適な一実施形態において、軟磁性板(x31)は、1つ又は複数の窪み(I)を含み、1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面と同一平面である。これにより、磁石を含む軟磁性板の特にコンパクトな構成が可能となる。
【0021】
[021]別の好適な実施形態において、軟磁性板(x31)は、1つ又は複数の突起(P)を含み、1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面と同一平面である。これによっても同様に、磁石を含む軟磁性板の特にコンパクトな構成が可能となる。
【0022】
[022]このプロセスは、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を2軸配向させるために、コーティング層(x10)を装置の動的な磁界に曝露するステップであり、ステップb)の前又はステップb)と同時に、かつステップc)の前に発生する、ステップをさらに含むのが好ましい。このステップにより、基板上のしるしの複雑性及び/又は品質をさらに向上させることが可能となる。
【0023】
[023]好適な一実施形態によれば、軟磁性板(x31)は、ポリマーマトリクスである非磁性材料中におよそ25重量%~およそ95重量%の軟磁性粒子が分散した複合材で造られ、ポリマーマトリクスは、ポリアミド、コポリアミド、ポリフタルイミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、液晶ポリマー、ポリカーボネート、及びこれらの混合物から成る群から選択される熱可塑性材料、又は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、及びこれらの混合物から成る群から選択される熱硬化性材料を含むか、又は、これらから成る。これらの材料は、OELを生成するプロセスに特に適することが分かっている。
【0024】
[024]軟磁性粒子は、カルボニル鉄、カルボニルニッケル、コバルト、及びこれらの組合せから成る群から選択されるのが好ましい。この場合も、これらの材料は、OELを生成するプロセスに特に適することが分かっている。
【0025】
[025]好適な一実施形態においては、1つ又は複数のボイド(V)が、軟磁性板(x31)の厚さと比較しておよそ5%~およそ100%の深さを有し、1つ又は複数の窪み(I)が、軟磁性板(x31)の厚さと比較しておよそ5%~およそ100%、好ましくはおよそ5%~およそ90%の深さを有し、及び/又は、1つ又は複数の突起(P)が、軟磁性板(x31)の厚さと比較しておよそ5%~およそ100%の高さ(H)を有する。これらの相対的なサイズにより、本背景において、非常にコンパクトながら非常に効果的な軟磁性板が可能となる。
【0026】
[026]さらに、1つ又は複数の双極子磁石(x32)の直径は、1つ又は複数のボイド(V)のサイズよりも小さいのが好ましい。これにより、双極子磁石がボイドに含まれるのみならず、より複雑で偽造が困難なしるしの外見が可能となる。
【0027】
[027]血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、血小板状磁性薄膜干渉顔料粒子、血小板状磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む血小板状干渉被覆顔料粒子、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択される血小板状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子であるのが好ましい。これらの粒子は、OELに特に適することが分かっているため、好ましい。
【0028】
以下、図面及び特定の実施形態を参照することにより、本明細書に記載の光学効果層(OEL)及びそれぞれの製造について、より詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1A】ボイド(V)、特にループ状のボイド(V)と、連続ループ状しるし、特に星形を形成する窪み(I)とを含む軟磁性板(131)の模式上面図である。ボイド(V)は、窪み(I)により形成された連続ループ形状によって囲まれている。
【
図1B】ボイド(V)、特にループ状のボイド(V)と、不連続ループ状しるし、特に星形を形成する2つ以上の窪み(I)とを含む軟磁性板(131)の模式上面図である。ボイド(V)は、窪み(I)により形成された不連続ループ形状によって囲まれている。
【
図2A】深さが100%未満のボイド(V)を含む軟磁性板(231)の模式断面図である。
【
図2B】深さ(D)が100%のボイド(V)を含む軟磁性板(231)の模式断面図である。
【
図3A】x個の窪み又は突起(x=1)の一実施形態の模式上面図である。
【
図3B】x個の窪み又は突起(x=2)の一実施形態の模式上面図である。
【
図3C】x個の窪み又は突起(x=3)の一実施形態の模式上面図である。
【
図3D】x個の窪み又は突起(x=4)の一実施形態の模式上面図である。
【
図4A】ボイド(V)及び窪み(I)を含む厚さ(T)の軟磁性板(331)の模式断面図である。
【
図4B】ボイド(V)及び厚さ(H)の突起(P)を含む厚さ(T)の軟磁性板(431)の模式断面図である。
【
図5A】深さが100%未満のボイド(V)及び窪み(I)を含む軟磁性板(531)であって、双極子磁石(532)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(531)の模式断面図である。
【
図5B】深さが100%未満のボイド(V)及び窪み(I)を含む軟磁性板(531)であって、双極子磁石(532)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(531)の模式断面図である。
【
図5C】深さが100%のボイド(V)及び窪み(I)を含む軟磁性板(531)であって、双極子磁石(532)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(531)の模式断面図である。
【
図5D】深さが100%のボイド(V)及び窪み(I)を含む軟磁性板(531)であって、双極子磁石(532)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(531)の模式断面図である。
【
図5E】深さが100%のボイド(V)及び窪み(I)を含む軟磁性板(531)であって、双極子磁石(532)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(531)の模式断面図である。
【
図5F】深さが100%のボイド(V)及び窪み(I)を含む軟磁性板(531)であって、双極子磁石(532)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(531)の模式断面図である。
【
図6A】深さが100%未満のボイド(V)及び突起(P)を含む軟磁性板(631)であって、双極子磁石(632)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(631)の模式断面図である。
【
図6B】深さが100%のボイド(V)及び突起(P)を含む軟磁性板(631)であって、双極子磁石(632)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(631)の模式断面図である。
【
図6C】深さが100%のボイド(V)及び突起(P)を含む軟磁性板(631)であって、双極子磁石(632)がボイド(V)内に配設された、軟磁性板(631)の模式断面図である。
【
図7A】5つの独立した効果を示す光学効果層(OEL)を生成するためのプロセスであり、2つ以上の入れ子になったループ状、特に、円形状及び星形状のしるしを基板(720)上に観察可能である、プロセスであって、i)ループ状、特に、円形状のボイド(V)及びループ状、特に、星形状の窪み(I)を含む軟磁性板(731)と、ii)ループ状のボイド(V)それぞれにより規定された第1のループ内に対称に配設され、上面が軟磁性板(731)の上面と同一平面であり、底面が軟磁性板(731)の底面と同一平面である双極子磁石(732)と、を備えた磁気アセンブリ(730)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(710)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図7B】
図7Aに示す軟磁性板(731)の模式上面図である。
【
図7C】
図7Aに示す軟磁性板(731)の模式断面図である。
【
図7D】
図7Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【
図8A】2つ以上の入れ子になったループ状、特に、2つの入れ子になった円形状のしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(820)上に生成するためのプロセスであって、i)ループ状、特に、円形状のボイド(V)及びループ状、特に、円形状の窪み(I)を含む軟磁性板(831)と、ii)ループ状のボイド(V)により規定された第1のループ内に対称に配設され、上面が軟磁性板(831)の上面と同一平面である双極子磁石(832)と、を備えた磁気アセンブリ(830)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(810)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図8B】
図8Aに示す軟磁性板(831)の模式上面図である。
【
図8C】
図8Aに示す軟磁性板(831)の模式断面図である。
【
図8D】
図8Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【
図9A】2つ以上の入れ子になったループ状、特に、2つの入れ子になった円形状のしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(920)上に生成するためのプロセスであって、i)ループ状、特に、円形状のボイド(V)及びループ状、特に、円形状の窪み(I)を含む軟磁性板(931)と、ii)ループ状のボイド(V)により規定された第1のループ内に対称に配設され、上面が軟磁性板(931)の上面と同一平面である4つの双極子磁石(932a~932d)とを備えた磁気アセンブリ(930)であり、3つの双極子磁石(932b~932d)が双極子磁石(932a)の下側に配置された、磁気アセンブリ(930)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(910)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図9B】
図9Aに示す軟磁性板(931)の模式上面図である。
【
図9C】
図9Aに示す軟磁性板(931)の模式断面図である。
【
図9D】
図9Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【
図10A】2つ以上の入れ子になったループ状、特に、2つの入れ子になった円形状のしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(1020)上に生成するためのプロセスであって、i)ループ状、特に、円形状のボイド(V)及びループ状、特に、円形状の突起(P)を含む軟磁性板(1031)と、ii)ループ状のボイド(V)により規定された第1のループ内に対称に配設され、上面が軟磁性板(1031)の上面と同一平面である5つの双極子磁石(1032a~1032d)とを備えた磁気アセンブリ(1030)であり、4つの双極子磁石(1032b~1032e)が双極子磁石(1032a)の下側に配置された、磁気アセンブリ(1030)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(1010)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図10D】
図10Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【
図11A】2つ以上の入れ子になったループ状、特に、円形状及び正方形状のしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(1120)上に生成するためのプロセスであって、i)ループ状、特に、円形状のボイド(V)及びループ状、特に、正方形状の窪み(I)を含む軟磁性板(1131)と、ii)ループ状のボイド(V)により規定された第1のループ内に対称に配設された4つの双極子磁石(1132a~1132d)とを備えた磁気アセンブリ(1130)であり、前記4つの磁石のうちの1つ(1132a)の上面が軟磁性板(1131)の上面よりも低く、他の3つの双極子磁石(1132b~1132d)が双極子磁石(1132a)の下側に配置された、磁気アセンブリ(1130)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(1110)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図11D】
図11Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【
図12A】2つ以上の入れ子になったループ状、特に、2つの入れ子になった円形状のしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(1220)上に生成するためのプロセスであって、i)ループ状、特に、円形状のボイド(V)及びループ状、特に、円形状の窪み(I)を含む軟磁性板(1231)と、ii)ループ状のボイド(V)により規定された第1のループ内に非対称に配設された4つの双極子磁石(1232a~1232d)とを備えた磁気アセンブリ(1230)であり、前記4つの磁石のうちの1つ(1232a)の上面が軟磁性板(1231)の上面と同一平面であり、他の3つの双極子磁石(1232b~1232d)が双極子磁石(1232a)の下側に配置された、磁気アセンブリ(1230)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(1210)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図12D】
図12Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【
図13A】2つ以上の入れ子になったループ状、特に、2つの入れ子になった星形状のしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(1320)上に生成するためのプロセスであって、i)ループ状、特に、星形状のボイド(V)及びループ状、特に、星形状の窪み(I)を含む軟磁性板(1331)と、ii)ループ状のボイド(V)により規定された第1のループ内に対称に配設された3つの双極子磁石(1332a~1332c)とを備えた磁気アセンブリ(1330)であり、前記磁石のうちの1つ(1332a)の上面が軟磁性板(1331)の上面と同一平面であり、他の2つの双極子磁石(1332b及び1332c)が双極子磁石(1332a)の下側に配置された、磁気アセンブリ(1330)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(1310)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図13D】
図13Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【
図14A】2つ以上の入れ子になったループ状、特に、2つの入れ子になった星形状のしるしを示す光学効果層(OEL)を基板(1420)上に生成するためのプロセスであって、i)ループ状、特に、星形状のボイド(V)及びループ状、特に、星形状の窪み(I)を含む軟磁性板(1431)と、ii)ループ状のボイド(V)により規定された第1のループ内に対称に配設された3つの双極子磁石(1432a~1432c)とを備えた磁気アセンブリ(1430)であり、前記磁石のうちの1つ(1432a)の上面が軟磁性板(1331)の上面と同一平面であり、他の3つの双極子磁石(1432b~1432d)が双極子磁石(1432a)の下側に配置された、磁気アセンブリ(1430)の使用によって、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物で造られたコーティング層(1410)の前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を配向させる、プロセスを模式的に示した図である。
【
図14D】
図14Aに示すプロセスを用いて得られたOELの写真画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
[028]以下の定義を用いることによって、本明細書及び特許請求の範囲に記載の用語の意味を解釈するものとする。
【0031】
[029]本明細書において、不定冠詞「a」は、1つ及び2つ以上を示し、必ずしもその指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0032】
[030]本明細書において、用語「少なくとも(at least)」は、1つ又は2つ以上(例えば、1つ、2つ、又は3つ)を規定するものである。
【0033】
[031]本明細書において、用語「およそ(about)」は、対象とする量又は値が指定された特定の値又はその近傍の他の値であってもよいことを意味する。一般的に、ある値を示す用語「およそ」は、その値の±5%の範囲を示すことを意図している。一例として、表現「およそ100」は、100±5の範囲すなわち95~105の範囲を示す。一般的に、用語「およそ」を使用する場合は、本発明に係る類似の結果又は効果が指定値の±5%の範囲で得られることが予想され得る。
【0034】
[032]本明細書において、用語「及び/又は(and/or)」は、前記群の要素のすべて又は1つだけが存在していてもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ、Bのみ、又はA及びBの両者」を意味するものとする。「Aのみ」の場合、この用語は、Bが存在しない可能性すなわち「AのみであってBではない」という可能性も網羅している。
【0035】
[033]本明細書において、用語「備える(具備する、含む)(comprising)」は、非排他的且つオープンエンドであることを意図している。したがって、例えば化合物Aを含むコーティング組成物は、A以外の化合物を含んでいてもよい。ただし、用語「備える(含む)」は、その特定の一実施形態として、「~から本質的に成る(consisting essentially of)」及び「~から成る(consisting of)」というより限定的な意味も網羅するため、例えば「A、B、及び任意選択としてCを含む湿し水」は、A及びBから(本質的に)成っていてもよいし、A、B、及びCから(本質的に)成っていてもよい。
【0036】
[034]本明細書において、用語「光学効果層(optical effect layer(OEL))」は、血小板状配向磁性又は磁化可能顔料粒子及びバインダを含むコーティング又は層であって、前記血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子が磁界により配向され、血小板状配向磁性又は磁化可能顔料粒子が(固化/硬化後に)それぞれの配向及び位置に固定/停止されて磁気誘導像を形成する、コーティング又は層を示す。
【0037】
[035]用語「磁気軸(magnetic axis)」は、磁石の対応するNS極を接続するとともに、前記両極を通って延びた仮想線を示す。この用語には、如何なる特定の磁場方向も含まない。
【0038】
[036]用語「磁場方向(magnetic direction)」は、磁石の外部でN極からS極へと向かう磁界線に沿った磁界ベクトルの方向を示す(Handbook of Physics,Springer 2002の463~464頁参照)。
【0039】
[037]用語「コーティング組成物(coating composition)」は、光学効果層(OEL)を固体基板上に形成可能であるとともに、印刷法によって好適且つ非排他的に塗布可能な任意の組成物を表す。コーティング組成物は、本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子及び本明細書に記載のバインダを含む。
【0040】
[038]本明細書において、用語「湿潤(wet)」は、未硬化のコーティング層(例えば、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子がそれぞれに作用する外力の影響下でそれぞれの位置及び配向を依然として変更可能であるコーティング)を表す。
【0041】
[039]本明細書において、用語「しるし(indicium)」は、パターン等の不連続層を意味するものとし、記号、英数字記号、モチーフ、文字、単語、数字、ロゴ、及び図画を含むが、これらに限定されない。
【0042】
[040]用語「固化(hardening)」は、第1の物理的状態の未固化(すなわち、湿潤)コーティング組成物の粘度を高くして、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子がそれぞれの現在位置及び配向に固定/停止されて移動も回転もできなくなる第2の物理的状態すなわち固化又は固体状態へとコーティング組成物を変換するプロセスを示すのに使用する。
【0043】
[041]用語「セキュリティ文書(security document)」は、少なくとも1つのセキュリティフィーチャにより偽造又は不正に対して通例保護される文書を表す。セキュリティ文書の例としては、有価文書及び有価商品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
[042]用語「セキュリティフィーチャ(security feature)」は、認証目的で使用可能な像、パターン、又は図形要素を示すのに使用する。
【0045】
[043]本明細書において「好適な」実施形態/特徴に言及する場合は、これら「好適な」実施形態/特徴の組合せについても、その組合せが技術的に有意である限り開示されているものと考えられる。
【0046】
[044]本発明は、2つ以上の入れ子になったしるしを示す光学効果層(OEL)を生成するためのプロセスを提供する。用語「入れ子になったしるし(nested indicia)」は、しるしの光学効果又は光学的印象をそれぞれ与えるしるしの配置を示すのに使用し、「入れ子」は、しるしのうちの1つ又は複数が別の1つ又は複数のしるしを囲んでいることを意味する。このようにして得られる2つ以上の入れ子になったしるしは、2つ以上のループ状しるしであるのが好ましく、前記入れ子になったループ状しるしは、「同心」であるのがさらに好ましく、最も外側の1つ又は複数のループ状しるしは、互いに交差することなく、最も内側の1つ又は複数のループ状しるしを完全に囲む。2つ以上の入れ子になったループ状しるし、好ましくは2つ以上のループ状しるしを示す光学効果層(OEL)は、当該OEL内の本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向によって、前記しるしの観察が可能になる層を表す。
【0047】
[045]2つ以上の入れ子になったしるしは、如何なる形態であってもよく、記号、英数字記号、モチーフ、文字、単語、数字、ロゴ、及び図画が挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上の入れ子になったループ状しるしは、如何なる形態であってもよく、ループ状の形態を有する記号、英数字記号、モチーフ、文字、単語、数字、ロゴ、及び図画が挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上の入れ子になったしるし及び2つ以上の入れ子になったループ状しるしは、同じ形状であってもよいし(例えば、2つのしるしの場合は、2つの円、2つの長方形、2つの三角形、2つの六角形等が存在する)、異なる形状であってもよい。
【0048】
[046]本明細書に記載の通り、2つ以上の入れ子になったしるしは、如何なる形態であってもよく、記号、英数字記号、モチーフ、文字、単語、数字、ロゴ、及び図画が挙げられるが、これらに限定されない。1つ又は複数のループ状しるしは、円形、長円形、楕円形、三角形、正方形、長方形、又は任意の多角形状のいずれであってもよい。ループ状形態の例としては、リング又は円、長方形又は正方形(角丸の有無に依らず)、三角形(角丸の有無に依らず)、(正又は不規則)五角形(角丸の有無に依らず)、(正又は不規則)六角形(角丸の有無に依らず)、(正又は不規則)七角形(角丸の有無に依らず)、(正又は不規則)八角形(角丸の有無に依らず)、任意の多角形(角丸の有無に依らず)、ハート形、星形、月形等が挙げられる。
【0049】
[047]本発明は、基板上の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子及びバインダ材料を含むコーティング組成物で造られた未固化(すなわち、湿潤又は液体)コーティング層に対して、i)a)しるし、好ましくはループ状しるしをそれぞれ規定する1つ又は複数のボイド(V)と、b)1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしをそれぞれ形成する1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)とを含む本明細書に記載の軟磁性板(x31)と、ii)本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)と、を備えた磁気アセンブリ(x30)の磁界にコーティング層(x10)を曝露して前記顔料粒子を磁気配向させることにより、2つ以上の入れ子になったしるし、特に、2つ以上の入れ子になったループ状しるしを示す光学効果層(OEL)を生成するためのプロセスを提供する。
【0050】
[048]本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)を含む。すなわち、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、1つ若しくは複数の窪み、1つ若しくは複数の突起、又は1つ若しくは複数の窪み(I)及び1つ若しくは複数の突起(P)の組合せを含む。
【0051】
[049]前記1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)はそれぞれ、1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしを形成する。「連続ループ状しるし」によって、前記しるしがその形状の単一片から成ることが意図され、「不連続ループ状しるし」によって、前記しるしがループ状しるしを一体的に形成する複数片から成ることが意図される。
図1Aは、ボイド(V)及び連続ループ状しるし(すなわち、星)を形成する1つの窪み(I)を含む軟磁性板(131)を示した図である。
図1Bは、ボイド(V)及び不連続ループ状しるし(すなわち、星)を形成する2つ以上の窪み(I)を含む軟磁性板(131)を示した図である。
【0052】
[050]窪み(I)及び突起(P)の数に応じて、1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしの組合せが得られ、以下のような実施形態が挙げられるが、これらに限定されない(
図3A~
図3D参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が1つの窪み(I)を含み、前記1つの窪み(I)が連続ループ状しるしを形成する。言い換えると、本明細書に記載の前記軟磁性板(x31)は、1つのループ状窪み(I)を含む(
図3A参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が1つの突起(P)を含み、前記1つの突起(P)が連続ループ状しるしを形成する。言い換えると、本明細書に記載の前記軟磁性板(x31)は、1つのループ状突起(P)を含む(
図3A参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が2つの窪み(I)を含み、前記2つの窪み(I)が2つの連続ループ状しるし又は1つの不連続ループ状しるしを形成する(
図3B参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が2つの突起(P)を含み、前記2つの突起(P)が2つの連続ループ状しるし又は1つの不連続ループ状しるしを形成する(
図3B参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が3n個の窪み(I)(n=1、2、3等)を含み、前記3n個の窪み(I)が3n個の連続ループ状しるし又はn個の不連続ループ状しるしを形成する。例えば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)が3つの窪み(I)(n=1)を含み、前記3つの窪み(I)が3つの連続ループ状しるし又は1つの不連続ループ状しるしを形成する(
図3C参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が3n個の突起(P)(n=1、2、3等)を含み、前記3n個の突起(P)が3n個の連続ループ状しるし又はn個の不連続ループ状しるしを形成する。例えば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)が3つの突起(P)(n=1)を含み、前記3つの突起(P)が3つの連続ループ状しるし又は1つの不連続ループ状しるしを形成する(
図3C参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が4m個の窪み(I)(m=1、2、3等)を含み、前記4m個の窪み(I)が4m個の連続ループ状しるし、m個の不連続ループ状しるし、m個の連続ループ状しるし及びm個の不連続ループ状しるし、又は2m個の連続ループ状しるし及びm個の不連続ループ状しるしを形成する。例えば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)が4個の窪み(I)(m=1)を含み、前記4個の窪み(I)が4個の連続ループ状しるし、1個の不連続ループ状しるし、1個の連続ループ状しるし及び1個の不連続ループ状しるし、又は2個の連続ループ状しるし及び2個の不連続ループ状しるしを形成する(
図3D参照)。
本明細書に記載の軟磁性板(x31)が4m個の突起(P)(m=1、2、3等)を含み、前記4m個の突起(P)が4m個の連続ループ状しるし、m個の不連続ループ状しるし、m個の連続ループ状しるし及びm個の不連続ループ状しるし、又は2m個の連続ループ状しるし及びm個の不連続ループ状しるしを形成する。例えば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)が4個の突起(P)(m=1)を含み、前記突起(P)が4個の連続ループ状しるし、1個の不連続ループ状しるし、1個の連続ループ状しるし及び1個の不連続ループ状しるし、又は2個の連続ループ状しるし及び1個の不連続ループ状しるしを形成する(
図3D参照)。
その他、上記の任意の組合せを含む。
【0053】
[051]血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の磁気配向及び位置は、コーティング組成物の固化により固定/停止され、明るくて高分解能の動的な光学効果層(OEL)が得られる。2つ以上の入れ子になったしるし、好ましくは2つ以上の入れ子になったループ状しるしは、磁気アセンブリ(x30)から、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む未固化コーティング層(x10)に転写される。本発明は、実装容易且つ高信頼性の方法で、動的な外見を示す顧客固有の明るくて高分解能の光学効果層(OEL)を印刷文書又は物品上に得る前記プロセスを提供する。
【0054】
[052]本発明に係るプロセスは、
a)コーティング層(x10)を基板(x20)上に形成するために、本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子及びバインダ材料を含むコーティング組成物を前記基板(x20)表面に塗布するステップであり、前記コーティング組成物が第1の液体状態である、ステップと、
b)本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)の磁界にコーティング層(x10)を曝露するステップであり、磁気アセンブリ(x30)が、i)1つ又は複数のボイド(V)と、1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしをそれぞれ形成する1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)とを含む本明細書に記載の軟磁性板(x31)と、ii)本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)と、を備える、ステップと、
c)血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子をそれぞれの選ばれた位置及び配向に固定するために、コーティング組成物を固化させて第2の状態とするステップと、
を含む。
【0055】
[053]本明細書に記載のプロセスは、a)コーティング層を形成するために、本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含むコーティング組成物を本明細書に記載の基板(x20)表面に塗布するステップであり、前記コーティング組成物が、層としての塗布を可能にする第1の物理的状態で、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子がバインダ材料内で移動及び回転可能な未固化(すなわち、湿潤)状態である、ステップを含む。本明細書に記載のコーティング組成物が基板表面に設けられることから、本明細書に記載のバインダ材料及び血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を少なくとも含むコーティング組成物は、所望の印刷又は被覆機器上での処理を可能とする形態である必要がある。前記ステップa)は、好ましくはスクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット印刷、及び凹版印刷(当技術分野においては銅版凹版印刷及び鋼製金型凹版印刷とも称する)から成る群から選択され、より好ましくはスクリーン印刷、グラビア印刷、及びフレキソ印刷から成る群から選択される印刷プロセスによって実行されるのが好ましい。
【0056】
[054]スクリーン印刷(当技術分野においては、シルクスクリーン印刷とも称する)は、例えば木材又は金属(例えば、アルミニウム又はステンレス鋼)で造られたフレームにしっかりと張られたポリアミド、ポリエステル、又は金属糸等の合成繊維で造られたシルクの単繊維又は多繊維の微細メッシュ生地により支持されたステンシルを通してインクが表面に転写されるステンシルプロセスである。或いは、スクリーン印刷メッシュは、化学的エッチング、レーザエッチング、又は電解形成された多孔質金属箔(例えば、ステンレス鋼箔)であってもよい。メッシュの細孔は、非像エリアにおいて遮断され、像エリアにおいて開放状態に維持され、この像担体がスクリーンと呼ばれる。スクリーン印刷は、平台型も可能であるし、回転型も可能である。スクリーン印刷については、例えばThe Printing ink manual,R.H.Leach and R.J.Pierce,Springer Edition,5th Edition,pages 58-62及びPrinting Technology,J.M.Adams and P.A.Dolin,Delmar Thomson Learning,5th Edition,pages 293-328に詳しく記載されている。
【0057】
[055]輪転グラビア印刷(当技術分野においては、グラビア印刷とも称する)は、シリンダの表面に像要素が彫刻される印刷プロセスである。非像エリアは、元の一定レベルである。印刷に先立って、印刷版(非印刷要素及び印刷要素)全体にインクが塗布され、インクが充填される。印刷の前に、ワイパー又はブレードによってインクが非像エリアから除去されるため、セル中にのみインクが残る。通常は2~4barの範囲の圧力及び基板とインクとの間の接着力によって、像がセルから基板に転写される。輪転グラビア印刷という用語は、例えば異なる種類のインクに依拠する凹版印刷プロセス(当技術分野においては、彫刻鋼製金型又は銅版印刷プロセスとも称する)を含まない。さらに詳しいことは、「Handbook of print media」,Helmut Kipphan,Springer Edition,page 48及びThe Printing ink manual,R.H.Leach and R.J.Pierce,Springer Edition,5th Edition,pages 42-51に記載されている。
【0058】
[056]フレキソ印刷では、ドクターブレード(好ましくは、チャンバ付きドクターブレード)、アニロックスローラ及びプレートシリンダを備えたユニットを使用するのが好ましい。アニロックスローラは、その容積及び/又は密度によってインク塗布速度が決まる微小セルを有するため都合が良い。ドクターブレードは、アニロックスローラに対して存在し、余剰インクを同時にこそげ落とす。アニロックスローラがインクをプレートシリンダに転写し、プレートシリンダが最終的に、インクを基板に転写する。デザインが施されたフォトポリマープレートを用いて、特定のデザインが実現されるようになっていてもよい。プレートシリンダは、ポリマー又はエラストマ材料により構成可能である。ポリマーは、主としてプレート中のフォトポリマーとして使用されるが、スリーブ状のシームレスコーティングとして使用される場合もある。フォトポリマープレートは、紫外(UV)光によって固化する感光性ポリマーにより構成される。フォトポリマープレートは、所要サイズに切断され、UV光曝露ユニット中に配置される。プレートの一方の面がUV光に完全に曝露されることにより、プレートの基部が固化又は硬化する。その後、プレートがひっくり返され、ジョブのネガが未硬化面に搭載された上で、プレートがUV光にさらに曝される。これによって、プレートの像エリアが固化する。その後、プレートの処理によって、非像エリアから未固化フォトポリマーが除去されるため、これらの非像エリアにおいてプレート表面が低下する。処理後は、プレートが乾燥され、UV光の曝露後照射によって、プレート全体が硬化する。フレキソ印刷のためのプレートシリンダの作成については、Printing Technology,J.M.Adams and P.A.Dolin,Delmar Thomson Learning,5th Edition,pages 359-360及びThe Printing ink manual,R.H.Leach and R.J.Pierce,Springer Edition,5th Edition,pages 33-42に記載されている。
【0059】
[057]本明細書に記載のコーティング組成物のほか、本明細書に記載のコーティング層は、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む。本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、好ましくはおよそ5重量%~およそ40重量%、より好ましくはおよそ10重量%~およそ30重量%の量で存在し、重量百分率は、コーティング組成物の総重量に基づく。
【0060】
[058]疑似1次元粒子と考えられる針状顔料粒子とは対照的に、血小板状顔料粒子は、寸法のアスペクト比が大きいことから、疑似2次元粒子である。血小板状顔料粒子は、寸法X及びYが寸法Zよりも実質的に大きな2次元構造と考えられる。また、当技術分野において、血小板状顔料粒子は、扁平粒子又は薄片とも称する。このような顔料粒子は、各顔料粒子を横断する最長寸法に対応する主軸Xと、Xに垂直で、各顔料粒子を横断する2番目に長い寸法に対応する第2軸Yとを用いて記述されるようになっていてもよい。言い換えると、XY平面は、各顔料粒子の1番目及び2番目に長い寸法によって形成される平面をおおよそ規定し、Z寸法は無視される。
【0061】
[059]本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、形状が非球状であることから、固化/硬化バインダ材料の少なくとも一部が透明である入射電磁放射線に対して非等方的な反射性を有するのが好ましい。本明細書において、用語「非等方的な反射性(non-isotropic reflectivity)」は、第1の角度からの入射放射線が粒子により特定の(観察)方向(第2の角度)に反射される割合が粒子の配向の関数であること、つまり、第1の角度に対する粒子の配向の変化に応じて観察方向への反射の大きさが異なり得ることを示す。
【0062】
[060]本明細書に記載のOELにおいて、本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、当該血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向を固定する固化バインダ材料を含むコーティング組成物中に分散している。バインダ材料は、少なくともその固化又は固体状態(本明細書では第2の状態とも称する)において、200nm~2500nmすなわち通常「光学スペクトル」と称し、電磁スペクトルの赤外、可視、及びUV部分を含む波長範囲内に含まれる様々な波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明である。したがって、バインダ材料に含まれる固化又は固体状態の粒子及びそれぞれの配向に応じた反射性は、この範囲内のいくつかの波長でバインダ材料を通じて認識され得る。固化バインダ材料は、好ましくは200nm~800nm、より好ましくは400nm~700nmに含まれる様々な波長の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明である。本明細書において、用語「透明(transparent)」は、該当する(1つ又は複数の)波長において、OEL(血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は含まないが、OELのその他任意選択の成分があれば、それらをすべて含む)に存在する固化バインダ材料の20μmの層に対する電磁放射線の透過率が少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%であることを示す。これは、例えばDIN5036-3(1979-11)等の確立した試験方法に従って固化バインダ材料(血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は含まず)の試験片の透過率を測定することによって決定可能である。OELが秘密のセキュリティフィーチャとして機能する場合、選択した非可視波長を含む各照明条件下においてOELが生成する(完全な)光学効果を検出するには通常、技術的な手段が必要となる。当該検出では、可視領域外(例えば、近UV領域)において入射放射線の波長が選択される必要がある。この場合、OELは、入射放射線に含まれる可視スペクトルの外側の選択波長に応答して発光する発光性顔料粒子を含むのが好ましい。電磁スペクトルの赤外、可視、及び紫外部分は、700~2500nm、400~700nm、及び200~400nmの波長範囲にそれぞれ略対応する。
【0063】
[061]本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の好適な例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)から成る群から選択される磁性金属、鉄、マンガン、コバルト、ニッケル、若しくはこれらの2つ以上の混合物の磁性合金、クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、若しくはこれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物、又はこれらの2つ以上の混合物を含む顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。金属、合金、及び酸化物に関する用語「磁性(magnetic)」は、強磁性又はフェリ磁性金属、合金、及び酸化物を対象とする。クロム、マンガン、コバルト、鉄、ニッケル、又はこれらの2つ以上の混合物の磁性酸化物は、純粋又は混合酸化物であってもよい。磁性酸化物の例としては、赤鉄鉱(Fe2O3)、磁鉄鉱(Fe3O4)、二酸化クロム(CrO2)、磁性フェライト(MFe2O4)、磁性スピネル(MR2O4)、磁性ヘキサフェライト(MFe12O19)、磁性オルソフェライト(RFeO3)、磁性ガーネット(M3R2(AO4)3)等の鉄酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、Mは2価、Rは3価、Aは4価の金属を表す。
【0064】
[062]本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の例としては、コバルト(Co)、鉄(Fe)、又はニッケル(Ni)等の磁性金属及び鉄、コバルト、又はニッケルの磁性合金のうちの1つ又は複数で造られた磁気層Mを含む顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。前記磁性又は磁化可能顔料粒子は、1つ又は複数の別の層を含む多層構造であってもよい。1つ又は複数の別の層は、好ましくはフッ化マグネシウム(MgF2)等の金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、及び酸化アルミニウム(Al2O3)から成る群から選択される1つ又は複数の材料、より好ましくは二酸化ケイ素(SiO2)で独立して造られた層A、金属及び金属合金、好ましくは反射性金属及び反射性金属合金、より好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、及びニッケル(Ni)から成る群から選択される1つ又は複数の材料、さらに好ましくはアルミニウム(Al)で独立して造られた層B、或いは上述のような1つ又は複数の層A並びに上述のような1つ又は複数の層Bの組合せである。上述の多層構造である血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の一般的な例としては、A/M多層構造、A/M/A多層構造、A/M/B多層構造、A/B/M/A多層構造、A/B/M/B多層構造、A/B/M/B/A多層構造、B/M多層構造、B/M/B多層構造、B/A/M/A多層構造、B/A/M/B多層構造、B/A/M/B/A多層構造が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、層A、磁気層M、及び層Bは、上述の層から選定される。
【0065】
[063]本明細書に記載のコーティング組成物は、血小板状光学可変磁性若しくは磁化可能顔料粒子並びに/又は光学可変特性を持たない血小板状磁性若しくは磁化可能顔料粒子を含んでいてもよい。本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部は、血小板状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子によって構成されているのが好ましい。光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子の変色特性によってもたらされる公然のセキュリティフィーチャは、本明細書に記載の光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子を含むインク、コーティング組成物、又はコーティング層を有する物品又はセキュリティ文書を人間の感覚のみで容易に検出、認識、及び/又はその考え得る偽造品から識別可能であるが、これに加えて、光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子の光学特性をOEL認識用の機械可読ツールとして使用するようにしてもよい。したがって、顔料粒子の光学(例えば、スペクトル)特性を解析する認証プロセスにおいては、秘密又は準秘密のセキュリティフィーチャとして、光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子の光学特性を同時に使用するようにしてもよい。
【0066】
[064]OELを生成するコーティング層に血小板状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子を使用すると、OELのセキュリティ文書用途におけるセキュリティフィーチャとしての意義が高くなる。このような材料は、セキュリティ文書印刷業のためのものであって、一般には市販されていないためである。
【0067】
[065]前述の通り、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、少なくとも一部が血小板状光学可変磁性又は磁化可能顔料粒子によって構成されているのが好ましい。これらは、磁性薄膜干渉顔料粒子、磁性コレステリック液晶顔料粒子、磁性材料を含む干渉被覆顔料粒子、及びこれらの2つ以上の混合物から成る群から選択されるのがより好ましい。
【0068】
[066]磁性薄膜干渉顔料粒子については、当業者に既知であって、例えば米国特許第4,838,648号、国際公開第2002/073250 A2号、欧州特許第0 686 675 B1号、国際公開第2003/000801 A2号、米国特許第6,838,166号、国際公開第2007/131833 A1号、欧州特許出願公開第2 402 401 A1号、及びこれらの引用文献に開示されている。磁性薄膜干渉顔料粒子は、5層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子及び/又は6層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子及び/又は7層ファブリペロー多層構造を有する顔料粒子を含んでいるのが好ましい。
【0069】
[067]好ましい5層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/誘電体/吸収体の多層構造から成り、反射体及び/又は吸収体が磁性層でもあり、好ましくは反射体及び/又は吸収体が、ニッケル、鉄、及び/若しくはコバルト、ニッケル、鉄、及び/若しくはコバルトを含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含む磁気層である。
【0070】
[068]好ましい6層ファブリペロー多層構造は、吸収体/誘電体/反射体/磁性体/誘電体/吸収体の多層構造から成る。
【0071】
[069]好ましい7層ファブリペロー多層構造は、米国特許第4,838,648号に開示されているような吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射対/誘電体/吸収体の多層構造から成る。
【0072】
[070]本明細書に記載の反射体層は、金属及び金属合金から成る群から選択され、好ましくは反射性金属及び反射性金属合金から成る群から選択され、より好ましくはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金から成る群から選択され、さらに好ましくはアルミニウム(Al)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの合金から成る群から選択される1つ又は複数の材料、なお好ましくはアルミニウム(Al)で独立して構成されているのが好ましい。誘電体層は、好ましくはフッ化マグネシウム(MgF2)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化セリウム(CeF3)、フッ化ランタン(LaF3)、フッ化アルミニウムナトリウム(例えば、Na3AlF6)、フッ化ネオジム(NdF3)、フッ化サマリウム(SmF3)、フッ化バリウム(BaF2)、フッ化カルシウム(CaF2)、フッ化リチウム(LiF)等の金属フッ化物、酸化ケイ素(SiO)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)等の金属酸化物から成る群から選択され、より好ましくはフッ化マグネシウム(MgF2)及び二酸化ケイ素(SiO2)から成る群から選択される1つ又は複数の材料、なお好ましくはフッ化マグネシウム(MgF2)で独立して構成されている。吸収体層は、好ましくはアルミニウム(Al)、銀(Ag)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ロジウム(Rh)、ニオブ(Nb)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、金属硫化物、金属炭化物、及び金属合金から成る群から選択され、より好ましくはクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、これらの金属酸化物、及び金属合金から成る群から選択され、さらに好ましくはクロム(Cr)、ニッケル(Ni)、及びこれらの金属合金から成る群から選択される1つ又は複数の材料で独立して構成されている。磁性体層は、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性合金、並びに/又はニッケル(Ni)、鉄(Fe)、及び/若しくはコバルト(Co)を含む磁性酸化物を含むのが好ましい。7層ファブリペロー構造を含む磁性薄膜干渉顔料粒子が好ましい場合は、磁性薄膜干渉顔料粒子がCr/MgF2/Al/Ni/Al/MgF2/Cr多層構造から成る吸収体/誘電体/反射体/磁性体/反射体/誘電体/吸収体の7層ファブリペロー多層構造を含むのが特に好ましい。
【0073】
[071]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は、人間の健康及び環境に対して安全と考えられ、例えば5層ファブリペロー多層構造、6層ファブリペロー多層構造、及び7層ファブリペロー多層構造に基づく多層顔料粒子であってもよく、前記顔料粒子は、およそ40重量%~およそ90重量%の鉄、およそ10重量%~およそ50重量%のクロム、及びおよそ0重量%~およそ30重量%のアルミニウムを含む実質的にニッケルを含まない組成の磁性合金を含む1つ又は複数の磁気層を備える。人間の健康及び環境に対して安全と考えられる多層顔料粒子の一般的な例は、欧州特許出願公開第2 402 401 A1号に見られるため、そのすべての内容を本明細書に援用する。
【0074】
[072]本明細書に記載の磁性薄膜干渉顔料粒子は通常、ウェブ上への異なる所要層の従来堆積技術によって製造される。例えば物理的気相成長法(PVD)、化学的気相成長法(CVD)、又は電解析出によって所望数の層を堆積させた後は、好適な溶媒中での剥離層の溶解又はウェブからの材料の剥離によって層スタックをウェブから除去する。そして、このように得られた材料を粉砕することにより薄片が得られるが、これは、研削、ミル加工(例えば、ジェットミル加工プロセス等)、又は任意の好適な方法でさらに処理して所要サイズの顔料粒子を得る必要がある。得られる製品は、縁部が破砕され、形状が不規則で、アスペクト比が異なる平らな薄片から成る。好適な磁性薄膜干渉顔料粒子の作成に関する詳細については、例えば欧州特許出願公開第1 710 756 A1号及び欧州特許出願公開第1 666 546 A1号に見られるが、これらの内容を本明細書に援用する。
【0075】
[073]光学可変特性を示す好適な磁性コレステリック液晶顔料粒子としては、磁性単層コレステリック液晶顔料粒子及び磁性多層コレステリック液晶顔料粒子が挙げられるが、これらに限定されない。このような顔料については、例えば国際公開第2006/063926 A1号、米国特許第6,582,781号、及び米国特許第6,531,221号に開示されている。国際公開第2006/063926 A1号は、高い輝度及び変色特性のほか、磁化可能性等の特定の特性を有する単層及び当該単層から得られた顔料粒子を開示している。この開示の単層及び当該単層の粉砕により得られた顔料は、3次元架橋したコレステリック液晶混合物及び磁性ナノ粒子を含む。米国特許第6,582,781号及び米国特許第6,410,130号は、配列がA1/B/A2の血小板状のコレステリック多層顔料粒子を開示している。ここで、A1及びA2は、同じであってもよいし異なっていてもよく、それぞれ少なくとも1つのコレステリック層を含む。Bは、層A1及びA2から送られた光の全部又は一部を吸収するとともに磁気特性を付与する中間層である。米国特許第6,531,221号は、配列がA/Bであり、任意選択としてCを含む血小板状のコレステリック多層顔料粒子を開示している。ここで、A及びCは、磁気特性を付与する顔料粒子を含む吸収層であり、Bはコレステリック層である。
【0076】
[074]1つ又は複数の磁性材料を含む好適な干渉被覆顔料としては、1つ又は複数の層で被覆されたコアから成る群から選択される基板から成る構造が挙げられるが、これらに限定されない。ここで、上記コア又は1つ若しくは複数の層の少なくとも一方は、磁性を有する。例えば、好適な干渉被覆顔料は、上記のような磁性材料で造られたコアであって、1つ又は複数の金属酸化物で造られた1つ又は複数の層で被覆された、コアを含むか、合成又は天然雲母、層状ケイ酸塩(例えば、タルク、カオリン、及び絹雲母)、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩)、二酸化ケイ素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiO2)、グラファイト、及びこれらの2つ以上の混合物で造られたコアから成る構造を有する。さらに、着色層等の1つ又は複数の別の層が存在していてもよい。
【0077】
[075]本明細書に記載の磁性又は磁化可能顔料粒子は、コーティング組成物及びコーティング層に生じ得る任意の劣化に対する保護並びに/又は前記コーティング組成物及びコーティング層への組み込みの容易化のために表面処理されていてもよく、通常は、腐食防止剤及び/又は湿潤剤が用いられるようになっていてもよい。
【0078】
[076]さらに、コーティング層(x10)を形成するために、本明細書に記載のコーティング組成物を本明細書に記載の基板(x20)表面に塗布した(ステップa))後、コーティング層(x10)は、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)を受容するための本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)と、1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしを形成する1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)とを含む軟磁性板(x31)と、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)と、を備えた磁気アセンブリ(x30)の磁界に曝露される(ステップb))。
【0079】
[077]本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を配向させるステップ(ステップb))の後又は一部同時、好ましくは一部同時に、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向が固定又は停止される(ステップc))。このように特筆すべきこととして、コーティング組成物は第1の液体状態を有する必要があり、未固化で十分に湿潤又は柔軟であるため、コーティング組成物中に分散した血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、磁界への曝露に際して自由に移動、回転、及び配向可能である。また、第2の固化(例えば、固体又は固体様)状態も有する必要があり、この場合の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、それぞれの位置及び配向で固定又は停止される。
【0080】
[078]このような第1及び第2の状態は、ある種のコーティング組成物を用いることによって提供するのが好ましい。例えば、コーティング組成物の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子以外の成分は、インク又は機密用途、例えば紙幣印刷に用いられるようなコーティング組成物の形態であってもよい。上述の第1及び第2の状態は、例えば温度変化又は電磁放射線への曝露等の刺激に反応して粘度が高くなる材料を用いて提供可能である。すなわち、流体のバインダ材料は、固化又は凝固によって、第2の状態すなわち固化又は固体状態に変換され、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子が現在の位置及び配向に固定されて、バインダ材料内で移動も回転もできなくなる。当業者には既知の通り、基板等の表面上に塗布するインク又はコーティング組成物に含まれる成分及び上記インク又はコーティング組成物の物性は、当該インク又はコーティング組成物の基板表面への転写に用いられるプロセスの要件を満たす必要がある。その結果、本明細書に記載のコーティング組成物に含まれるバインダ材料は通常、当技術分野において既知の材料から選定されるとともに、当該インク又はコーティング組成物の塗布に用いられる被覆又は印刷プロセス及び選定された固化プロセスによって決まる。
【0081】
[079]本明細書に記載のOELは、その形状のために非等方的な反射性を有する血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を含む。血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、200nm~2500nmの範囲の1つ又は複数の波長範囲の電磁放射線に対して、少なくとも一部が透明なバインダ材料中に分散している。
【0082】
[080]本明細書に記載の固化ステップ(ステップc))は、例えばコーティング組成物がポリマーバインダ材料及び溶媒を含み、高温で塗布される場合の純粋な物理的性質と考えられる。そして、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子が磁界の印加によって高温で配向し、溶媒が蒸発した後、コーティング組成物が冷却される。これにより、コーティング組成物が固化して、顔料粒子の配向が固定される。
【0083】
[081]或いは、コーティング組成物の固化には、セキュリティ文書の通常使用時に起こり得る(例えば、最大80℃の)単純な温度上昇では不可逆の(例えば、硬化による)化学反応を伴うのが好ましい。用語「硬化」又は「硬化性」は、塗布したコーティング組成物中の少なくとも1つの成分が化学反応、架橋、又は重合によって開始材料よりも大きな分子量を有するポリマー材料に変化するプロセスを表す。硬化によって、安定した3次元ポリマーネットワークが形成されるのが好ましい。このような硬化は一般的に、(i)基板への塗布(ステップa))後、及び(ii)血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部の配向(ステップb))の後又は一部同時に、コーティング組成物に外部刺激を印加することによって引き起こされる。本明細書に記載のコーティング組成物の固化(ステップc))は、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部の配向(ステップb))と一部同時に実行されるため都合が良い。したがって、コーティング組成物は、放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物、酸化乾燥組成物、及びこれらの組合せから成る群から選択されるのが好ましい。特に、コーティング組成物は、放射線硬化性組成物から成る群から選択されるのが好ましい。放射線硬化、特にUV・可視硬化では、放射線への曝露によりコーティング組成物の粘度が瞬時に高くなり、顔料粒子のさらなる移動が抑えられ、結果的に磁気配向ステップ後の情報喪失が抑えられるため都合が良い。固化ステップ(ステップd))は、好ましくはUV可視光による照射(すなわち、UV・可視光放射線硬化)又は電子ビーム(すなわち、電子ビーム放射線硬化)、より好ましくはUV可視光による照射によって実行される。
【0084】
[082]したがって、本発明に適したコーティング組成物としては、UV・可視光放射線(以下、UV・可視硬化性と称する)又は電子ビーム放射線(以下、EBと称する)によって硬化可能な放射線硬化性組成物が挙げられる。本発明の特に好適な一実施形態によれば、本明細書に記載のコーティング組成物は、UV・可視硬化性コーティング組成物である。UV・可視硬化によれば、非常に高速な硬化プロセスが可能であるため、本明細書に記載のOEL、文書、及び物品、並びに前記OELを備えた文書の作成時間が劇的に短縮されて都合が良い。
【0085】
[083]UV・可視硬化性コーティング組成物は、ラジカル硬化性化合物及びカチオン硬化性化合物から成る群から選択される1つ又は複数の化合物を含むのが好ましい。本明細書に記載のUV・可視硬化性コーティング組成物は、ハイブリッド系であってもよく、1つ又は複数のカチオン硬化性化合物及び1つ又は複数のラジカル硬化性化合物の混合物を含む。カチオン硬化性化合物は、酸等のカチオン種を遊離させて硬化を開始することにより、モノマー及び/又はオリゴマーの反応及び/又は架橋によってコーティング組成物を固化させる1つ又は複数の光開始剤の放射による活性化を通常含むカチオン機構によって硬化する。ラジカル硬化性化合物は、1つ又は複数の光開始剤の放射によってラジカルを生成することにより重合を開始してコーティング組成物を固化させる活性化を通常含むフリーラジカル機構によって硬化する。本明細書に記載のUV・可視硬化性コーティング組成物に含まれるバインダの作成に用いられるモノマー、オリゴマー、又はプレポリマーに応じて、異なる光開始剤を使用可能である。遊離基光開始剤の好適な例は、当業者に既知であり、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタル、α-アミノケトン、α-ヒドロキシケトン、ホスフィンオキシド、及びホスフィンオキシド誘導体のほか、これらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。カチオン光開始剤の好適な例は、当業者に既知であり、有機ヨードニウム塩(例えば、ジアリールヨードニウム塩)、オキソニウム(例えば、トリアリールオキソニウム塩)、及びスルホニウム塩(例えば、トリアリールスルホニウム塩)等のオニウム塩のほか、これらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な光開始剤の他の例は、標準的な教科書に見られる。また、効率的な硬化を実現するため、1つ又は複数の光開始剤と併せて増感剤を含むのが好都合と考えられる。好適な光増感剤の一般的な例としては、イソプロピル-チオキサントン(ITX)、1-クロロ-2-プロポキシ-チオキサントン(CPTX)、2-クロロ-チオキサントン(CTX)、及び2,4-ジエチル-チオキサントン(DETX)、並びにこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。UV・可視硬化性コーティング組成物に含まれる1つ又は複数の光開始剤は、好ましくはおよそ0.1重量%~およそ20重量%、より好ましくはおよそ1重量%~およそ15重量%の総量で存在し、重量パーセントは、UV・可視硬化性コーティング組成物の総重量に基づく。
【0086】
[084]或いは、ポリマー熱可塑性バインダ材料又は熱硬化性バインダ材料を採用するようにしてもよい。熱可塑性樹脂は、熱硬化性樹脂と異なり、加熱及び冷却によって、特性に重大な変化を来たすことなく、繰り返し溶融及び凝固可能である。熱可塑性樹脂又はポリマーの代表例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリアセタール、ポリオレフィン、スチレン系高分子、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリフェニレン系樹脂(例えば、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレン酸化物、ポリフェニレン硫化物)、ポリスルホン、及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
[085]本明細書に記載のコーティング組成物は、有機顔料粒子、無機顔料粒子、及び有機色素から成る群から選択される1つ若しくは複数の着色成分並びに/又は1つ若しくは複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。後者としては、粘度(例えば、溶媒、増粘剤、及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス、オイル)、UV安定性(光安定剤)、密着性、帯電防止特性、保存性(重合防止剤)等のコーティング組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の添加剤は、当該添加剤の寸法のうちの少なくとも1つが1~1000nmの範囲である所謂ナノ材料等、当技術分野において既知の量及び形態でコーティング組成物中に存在していてもよい。
【0088】
[086]本明細書に記載のコーティング組成物は、1つ又は複数の添加剤をさらに含んでいてもよく、粘度(例えば、溶媒及び界面活性剤)、稠度(例えば、硬化防止剤、充填剤、及び可塑剤)、起泡性(例えば、消泡剤)、潤滑性(ワックス)、UV反応性及び安定性(光増感剤及び光安定剤)、及び密着性等の組成物の物理的、流動学的、及び化学的パラメータの調整に用いられる化合物及び材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の添加剤は、粒子の寸法のうちの少なくとも1つが1~1000nmの範囲である所謂ナノ材料の形態等、当技術分野において既知の量及び形態で本明細書に記載のコーティング組成物中に存在していてもよい。
【0089】
[087]本明細書に記載のコーティング組成物は、1つ若しくは複数のマーカ物質若しくはタガント及び/又は磁性材料(本明細書に記載の磁性又は磁化可能顔料粒子とは異なる)、発光材料、導電材料、及び赤外線吸収材料から成る群から選択される1つ又は複数の機械可読材料をさらに含んでいてもよい。本明細書において、用語「機械可読材料(machine readable material)」は、装置又は機械により検出可能な少なくとも1つの特別な特性を示し、あるコーティングに含めることによって、特定の検出及び/又は認証用機器の使用により当該コーティング又は当該コーティングを含む物品を認証する方法を提供可能な材料を表す。
【0090】
[088]本明細書に記載のコーティング組成物は、本明細書に記載の磁性又は磁化可能顔料粒子並びに1つ又は複数の添加剤(本明細書に記載のバインダ材料の存在下で存在する場合)の分散又は混合によって液体組成物を形成することにより作成されるようになっていてもよい。1つ又は複数の光開始剤が存在する場合は、その他すべての成分の分散又は混合ステップにおいて組成物に添加されるようになっていてもよいし、後の段階(すなわち、液体コーティング組成物の形成後)に添加されるようになっていてもよい。
【0091】
[089]本明細書に記載の通り、コーティング層(x10)は、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)の磁界に曝露される。
【0092】
[090]本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、本明細書に記載の軟磁性板(x31)を備え、前記軟磁性板(x31)は、透磁率の高い1つ若しくは複数の軟磁性金属、合金、若しくは化合物又はおよそ25重量%~およそ95重量%の軟磁性粒子が非磁性材料中に分散した複合材で構成されており(重量百分率は当該磁性板(x31)の総重量に基づく)、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)を受容する本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含むとともに、1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしをそれぞれ形成する本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)を備える。
【0093】
[091]本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)を含む。2つ以上のボイド(V)が本明細書に記載の軟磁性板(x31)に含まれる場合、前記ボイド(V)は、同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。2つ以上のボイド(V)が本明細書に記載の軟磁性板(x31)に含まれる場合、前記2つ以上のボイド(V)はそれぞれ、1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしに囲まれていてもよい。或いは、前記2つ以上のボイド(V)のうちの2つ以上が1つ若しくは複数の連続ループ状しるしに囲まれ、並びに/又は、前記2つ以上のボイド(V)がそれぞれ1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしに囲まれていてもよい。
【0094】
[092]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、本明細書に記載の形状がループ状ではない1つ若しくは複数のボイド(V)及び1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)を含む。
【0095】
[093]別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む。2つ以上のループ状ボイド(V)が本明細書に記載の軟磁性板(x31)に含まれる場合、前記ループ状ボイド(V)は、同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0096】
[094]
図1A及び
図1Bは、ボイド(V)、特にループ状ボイド(V)(
図1A及び
図1B中の円形ボイド)を含む厚さ(T)の軟磁性板(131)を模式的に示した図である。用語「ボイド(void)」は、本発明の背景において、軟磁性板中の凹部(
図2A参照)又は軟磁性板を貫通してその両面を接続する孔若しくはチャネル(
図2B参照)を意味する。
【0097】
[095]
図2A及び2Bは、深さ(D)のボイド(V)を含む軟磁性板(231)の模式断面図である。一実施形態によれば、例えば
図2Aに示すように、本明細書に記載の軟磁性板(231)は、深さが100%未満の1つ又は複数のボイド(V)を含む。すなわち、1つ又は複数のボイド(V)は、凹部の形態である。別の実施形態によれば、例えば
図2Bに示すように、本明細書に記載の軟磁性板(331)は、深さが100%の1つ又は複数のボイド(V)を含む。すなわち、1つ又は複数のボイド(V)は、軟磁性板(331)を貫通してその両面を接続する孔若しくはチャネルの形態である。
【0098】
[096]本明細書に記載の軟磁性板(x31)の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)は、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)を受容するように設計されている。すなわち、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)の前記軟磁性板(x31)への組み込みを可能にする。
【0099】
[097]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含み、前記1つ又は複数のボイド(V)、特に、深さが100%のボイドは、後述のようなポリマーバインダ及び任意選択としての充填剤を含む非磁性材料が充填されていてもよい。1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、後述のような非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。
【0100】
[098]例えば
図1及び
図3~
図6に示すように、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)のほか、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、本明細書に記載の1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしをそれぞれ形成する1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)をさらに含む。例えば
図1及び
図3~
図6に示すとともに上述した通り、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)は、本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)により形成された1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしにより囲まれている。
【0101】
[099]一実施形態によれば、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)は、ループ状ボイド(V)であり、前記1つ又は複数のループ状ボイド(V)は、本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)により形成された1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしにより囲まれ、入れ子となっている。言い換えると、1つ又は複数のループ状ボイド(V)により規定された(1つ又は複数の)ループと1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)により規定された(1つ又は複数の)ループとが入れ子となっており、1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)により形成された1つ若しくは複数の連続ループ状しるし並びに/又は1つ若しくは複数の不連続ループ状しるしにより規定された最も外側のループが、1つ又は複数のループ状ボイド(V)により規定された最も内側のループを囲む。
【0102】
[0100]一実施形態によれば、例えば
図4Aに示すように、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、1つ又は複数の窪み(I)を含む。例えば
図4Aに示すように、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、1つ又は複数の窪み(I)(例えば、単一のループ状窪み(I)又は2つの窪み(I))を含む。
図4Aに示すように、1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)並びに1つ若しくは複数の窪み(I)を含む軟磁性板(431)の厚さ(T)は、1つ若しくは複数の窪み(I)も1つ若しくは複数のボイド(V)もない軟磁性板(431)の領域の厚さ(すなわち、軟磁性板(431)の窪んでいない領域の厚さ)を表す。
【0103】
[0101]別の実施形態によれば、例えば
図4Bに示すように、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、1つ又は複数の突起(P)を含む。
【0104】
[0102]表現「突起(protrusion)」は、表面から延出した凸状の起伏を表す。
図4Bは、1つ又は複数の突起(P)(例えば、単一のループ状突起(P)又は2つの突起(P))を含む軟磁性板(431)の模式断面図である。
図4Bに示すように、軟磁性板(431)は、厚さ(T)を有し、前記突起(P)は、高さ(H)を有する。1つ又は複数の突起(P)を含む軟磁性板(x31)の厚さ(T)は、軟磁性板(x31)の総厚さすなわち1つ又は複数の突起(P)のうちの最も高い突起の高さ(H)と前記1つ又は複数の突起(P)がない軟磁性板(x31)の領域の厚さとの組合せを表す。
【0105】
[0103]別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、1つ若しくは複数の窪み(I)並びに1つ若しくは複数の突起(P)を含む。
【0106】
[0104]本明細書に記載の軟磁性板(x31)のうち、1つ又は複数の突起(P)がない1つ又は複数の領域は、上述のようなポリマーバインダ及び任意選択としての充填剤を含む非磁性材料が充填されていてもよい。1つ又は複数のボイド突起(P)を含む本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、後述のような非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。
【0107】
[0105]本明細書に記載の軟磁性板(x31)のほか、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)を備え、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)がすべて、基板(x20)表面と実質的に垂直な(且つ、軟磁性板(x31)表面と実質的に垂直な)磁気軸をそれぞれ有するとともに、同じ磁場方向を有する。
【0108】
[0106]配設された1つ又は複数の双極子磁石(x32)は、高保磁力材料(強磁性材料とも称する)で独立して構成されているのが好ましい。好適な高保磁力材料は、保磁力値が少なくとも50kA/m、好ましくは少なくとも200kA/m、より好ましくは少なくとも1000kA/m、さらに好ましくは少なくとも1700kA/mの材料である。これらは、例えばアルニコ5(R1-1-1)、アルニコ5DG(R1-1-2)、アルニコ5-7(R1-1-3)、アルニコ6(R1-1-4)、アルニコ8(R1-1-5)、アルニコ8HC(R1-1-7)、及びアルニコ9(R1-1-6)等のアルニコ、式MFe12O19のヘキサフェライト(例えば、ストロンチウムヘキサフェライト(SrO*6Fe2O3)又はバリウムヘキサフェライト(BaO*6Fe2O3)、式MFe2O4のハードフェライト(例えば、コバルトフェライト(CoFe2O4)又は磁鉄鉱(Fe3O4))(ただし、Mは二価金属イオン)、セラミック8(SI-1-5)から成る群から選択される1つ又は複数の焼結又はポリマー接合磁性材料、RECo5(RE=Sm又はPr)、RE2TM17(RE=Sm、TM=Fe、Cu、Co、Zr、Hf)、RE2TM14B(RE=Nd、Pr、Dy、TM=Fe、Co)から成る群から選択される希土類磁性材料、Fe、Cr、Coの異方性合金、PtCo、MnAlC、REコバルト5/16、REコバルト14から成る群から選択される材料で構成されているのが好ましい。1つ又は複数の双極子磁石(x32)の高保磁力材料は、好ましくは希土類磁性材料から成る群、より好ましくはNd2Fe14B及びSmCo5から成る群から選択されるのが好ましい。特に好ましいのは、ストロンチウムヘキサフェライト(SrFe12O19)又はネオジム/鉄/ホウ素(Nd2Fe14B)粉末等の永久磁石充填剤をプラスチック系又はゴム系マトリクスに含む加工が容易な永久磁石複合材である。
【0109】
[0107]本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含み、前記1つ又は複数のボイド(V)それぞれは、本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)の前記軟磁性板(x31)への組み込みを可能にする。
【0110】
[0108]本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)は、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)内で対称に配設されていてもよいし、非対称に配設されていてもよい。
【0111】
[0109]例えば
図9に示すように、1つの双極子磁石(x32)の代わりとして、2つ以上の双極子磁石(x32)、特に4つの双極子磁石(x32)が用いられるようになっていてもよい。2つ以上の双極子磁石(x32)が用いられる場合、前記2つ以上の双極子磁石(x32)は、重なり合って配置されるのが好ましい。前記2つ以上の双極子磁石(x32)の直径は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。前記2つ以上の双極子磁石(x32)の厚さは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0112】
[0110]
図4A、
図5A、
図5B、及び
図6Aは、深さが100%未満のボイド(V)を含む軟磁性板(x31)の模式断面図である。すなわち、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)は、凹部の形態であり、前記軟磁性板(x31)は、1つ若しくは複数の窪み(I)(例えば、単一のループ状窪み(I)若しくは2つの窪み(I)(
図4A、
図5A、及び
図5B))又は1つ若しくは複数の突起(P)(例えば、単一のループ状突起(P)若しくは2つの突起(P)(
図4B及び
図6A))を含む。
【0113】
[0111]
図5C~
図5F、
図6B、及び
図6Cは、深さが100%のボイド(V)を含む軟磁性板(x31)の模式断面図である。すなわち、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)は、孔又はチャネルの形態であり、前記軟磁性板(x31)は、1つ若しくは複数の窪み(I)(例えば、単一のループ状窪み(I)若しくは2つの窪み(I)(
図5C~
図5F))又は1つ若しくは複数の突起(P)(例えば、単一のループ状突起(P)若しくは2つの突起(P)(
図6B及び
図6C))を含む。
【0114】
[0112]本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、上面を特徴とし、前記上面は、コーティング層(x10)を有する基板(x20)が直接接触又は間接接触にて配置される表面から成る。例えば
図4A及び
図5A~
図5Dに示すように、本明細書に記載の1つ又は複数の窪み(I)を含む軟磁性板(x31)の上面(TS(点線))は、軟磁性板自体の上面から成る。例えば
図4B、
図6A、及び
図6Bに示すように、本明細書に記載の1つ又は複数の突起(P)を含む軟磁性板(x31)の上面(TS(点線))は、1つ又は複数の突起(P)の上面から成る。1つ若しくは複数の窪み(I)並びに1つ若しくは複数の突起(P)を含む軟磁性板(x31)の上面は、1つ又は複数の突起(P)の上面から成る。
【0115】
[0113]一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、i)本明細書に記載の1つ若しくは複数のボイド(V)、好ましくは1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)並びに本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)を含む本明細書に記載の軟磁性板(x31)と、ii)本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)とを備え、1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面と同一平面である(例えば、
図5A、
図5C、及び
図5D参照)か、又は、軟磁性板(x31)の上面の下側にあり(例えば、
図5B、
図5E、及び
図5F参照)、1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面と同一平面であるのが好ましい。
【0116】
[0114]一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、i)本明細書に記載の1つ若しくは複数のボイド(V)、好ましくは1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)並びに本明細書に記載の1つ若しくは複数の突起(P)を含む本明細書に記載の軟磁性板(x31)と、ii)1つ又は複数の双極子磁石(x32)とを備え、1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面と同一平面であるのが好ましい(例えば、
図6A~
図6C参照)。
【0117】
[0115]一実施形態によれば、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、i)本明細書に記載の1つ若しくは複数のボイド(V)、好ましくは1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)、本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)、並びに本明細書に記載の1つ若しくは複数の突起(P)を含む本明細書に記載の軟磁性板(x31)と、ii)1つ又は複数の双極子磁石(x32)とを備え、1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面と同一平面であるのが好ましい。
【0118】
[0116]一実施形態によれば、
図4A、
図5A、及び
図5Bに示すように、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、i)深さが100%未満の本明細書に記載の1つ若しくは複数のボイド(V)、好ましくは1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)並びに本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)を含む軟磁性板(x31)と、ii)本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)とを備え、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)は、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)により規定されたループ内で対称又は非対称に配設されており、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、a)軟磁性板(x31)の上面(点線)と同一平面である(前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の底面が軟磁性板(x31)の1つ又は複数のボイド(V)の上面と同一平面であるのが好ましい)(
図5A参照)か、又は、b)軟磁性板(x31)の上面(点線)の下側にある(前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の底面が軟磁性板(x31)の1つ又は複数のボイド(V)の上面と同一平面であるのが好ましい)(
図5B参照)。
【0119】
[0117]一実施形態によれば、
図4B及び
図6Aに示すように、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、i)深さが100%未満の本明細書に記載の1つ若しくは複数のボイド(V)、好ましくは1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)並びに本明細書に記載の1つ若しくは複数の突起(P)を含む軟磁性板(x31)と、ii)本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)とを備え、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)は、1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)により規定されたループ内で対称又は非対称に配設されており、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面(点線)と同一平面である(前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の底面が軟磁性板(x31)の1つ又は複数のボイド(V)の上面と同一平面であるのが好ましい)。
【0120】
[0118]一実施形態によれば、
図5C~
図5Fに示すように、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、i)深さが100%の本明細書に記載の1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)並びに本明細書に記載の1つ若しくは複数のループ状窪み(I)を含む軟磁性板(x31)と、ii)本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)とを備え、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)は、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)により規定されたループ内で対称又は非対称に配設されており、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、a)軟磁性板(x31)の上面(点線)と同一平面である(前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の底面が軟磁性板(x31)の底部と同一平面である(
図5C参照)か、又は、軟磁性板(x31)の下側にある(
図5D参照))か、又は、b)軟磁性板(x31)の上面(点線)の下側にある(前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の底面が軟磁性板(x31)の底部と同一平面である(
図5E参照)か、又は、軟磁性板(x31)の下側にある(
図5F参照))。
【0121】
[0119]一実施形態によれば、
図6B及び
図6Cに示すように、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)は、i)深さが100%未満の本明細書に記載の1つ若しくは複数のループ状ボイド(V)並びに本明細書に記載の1つ若しくは複数のループ状突起(P)を含む軟磁性板(x31)と、ii)本明細書に記載の1つ又は複数の双極子磁石(x32)とを備え、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)は、本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)により規定されたループ内で対称又は非対称に配設されており、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の上面は、軟磁性板(x31)の上面(点線)と同一平面である(前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)の底面が軟磁性板(x31)の底面と同一平面である(
図6B参照)か、又は、軟磁性板(x31)の下側にある(
図6C参照))。
【0122】
[0120]また、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、表面処理によって、コーティング層(x10)を有する基板(x20)との接触を容易化することにより、高速印刷用途における摩擦、摩耗、及び/又は静電帯電を抑えるようにしてもよい。
【0123】
[0121]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、平坦又は平面状である。別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、印刷アセンブリの回転シリンダ中又は回転シリンダ上で適応するように湾曲している。回転シリンダは、印刷若しくは被覆機器中での使用、印刷若しくは被覆機器との併用、又は印刷若しくは被覆機器の一部としての構成が意図されており、本明細書に記載の1つ又は複数の軟磁性板を支える。一実施形態において、回転シリンダは、高い印刷速度で連続動作する回転式、枚葉給紙式、又はウェブ給紙式の産業用印刷機の一部である。
【0124】
[0122]本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、透磁率の高い1つ又は複数の軟磁性金属、合金、又は化合物を含むプレートであってもよい(又は、非磁性材料中に軟磁性粒子が分散した複合材で造られたプレート(以下、「軟磁性複合材プレート」と称する)であってもよい)。
【0125】
[0123]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、透磁率の高い1つ又は複数の軟磁性金属、合金、又は化合物を含む(以下、「軟磁性金属板」と称する)。軟磁性材料は、低い保磁力及び高い飽和磁化を有する。好適な低保磁力・高飽和度材料は、IEC60404-1:2000に従って、1000Am-1未満の保磁力を有することにより、高速磁化及び減磁を可能にするが、その飽和磁化は、好ましくは少なくとも1テスラ、より好ましくは少なくとも1.5テスラ、さらに好ましくは少なくとも2テスラである。軟磁性材料については、例えば(1)Handbook of Condensed Matter and Materials Data,Chap.4.3.2,Soft Magnetic Materials,p.758-793及びChap.4.3.4,Magnetic Oxides,p.811-813,Springer 2005、(2)Ferromagnetic Materials,Vol.1,Iron,Cobalt and Nickel,p.1-70,Elsevier 1999、(3)Ferromagnetic Materials,Vol.2,Chap.2,Soft Magnetic Metallic Materials,p.55-188及びChap.3,Ferrites for non-microwave Applications,p.189-241,Elsevier 1999、(4)Electric and Magnetic Properties of Metals,C.Moosbrugger,Chap.8,Magnetically Soft Materials,p.196-209,ASM International,2000、(5)Handbook of modern Ferromagnetic Materials,Chap.9,High-permeability High-frequency Metal Strip,p.155-182,Kluwer Academic Publishers,2002、並びに(6)Smithells Metals Reference Book,Chap.20.3,Magnetically Soft Materials,p.20-9-20-16,Butterworth-Heinemann Ltd,1992といったハンドブックに記載されている。高透磁率材料は、透磁率が1.0×10-2H/mより大きい材料であるのが好ましい。
【0126】
[0124]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性金属板(x31)は、シート又はスレッドとして容易に加工できる1つ又は複数の軟磁性金属又は合金で構成されている。本明細書に記載の軟磁性金属板(x31)は、鉄、コバルト、ニッケル、ニッケル-モリブデン合金、ニッケル-鉄合金(パーマロイ又はスーパーマロイ型材料)、コバルト-鉄合金、コバルト-ニッケル合金、鉄-ニッケル-コバルト合金(フェルニコ型材料)、ホイスラー型合金(Cu2MnSn又はNi2MnAl等)、低シリコン鋼、低炭素鋼、シリコン鉄(電気鋼)、鉄-アルミニウム合金、鉄-アルミニウム-シリコン合金、アモルファス金属合金(例えば、メトグラス(Metglas)(登録商標)等の合金、鉄-ホウ素合金)、ナノ結晶軟磁性材料(例えば、ヴィトロパーム(Vitroperm)(登録商標))、及びこれらの組合せから成る群から選択される1つ又は複数の材料により構成されているのが好ましく、鉄、コバルト、ニッケル、低炭素鋼、シリコン鉄、ニッケル-鉄合金、及びコバルト-鉄合金、並びにこれらの組合せから成る群から選択されるのがより好ましい。
【0127】
[0125]本明細書に記載の軟磁性金属板は、好ましくはおよそ10μm~およそ3000μm、より好ましくはおよそ50μm~およそ2000μm、さらに好ましくはおよそ500μm~およそ2000μm、なお好ましくはおよそ1000μm~およそ2000μmの厚さを有する。上述の通り、1つ若しくは複数のボイド(V)並びに1つ若しくは複数の窪み(I)を含む軟磁性金属板の厚さは、1つ若しくは複数のボイド(V)も1つ若しくは複数の窪み(I)もない軟磁性金属板の領域の厚さを表し(
図4A参照)、1つ又は複数の突起(P)を含む軟磁性金属板の厚さは、軟磁性金属板の総厚さすなわち1つ又は複数の突起のうちの最も高い突起の高さと前記1つ又は複数の突起がない軟磁性金属板の領域の厚さとの組合せを表す(
図4B参照)。軟磁性金属板の透磁率が低いことで、本明細書に記載の厚さでの作用が可能となるため、プレートの機械的強度が保たれる。
【0128】
[0126]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性金属板は、深さが100%の本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む。別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性金属板は、深さが100%未満の本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む。すなわち、深さが好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ20%~およそ90%、より好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ30%~およそ90%、さらに好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ50%~およそ90%の凹部又は窪みを含む。
【0129】
[0127]本明細書に記載の軟磁性金属板は、本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は本明細書に記載の1つ若しくは複数の突起(P)を含み、
一実施形態によれば、1つ又は複数の窪み(I)は、深さが好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ20%~およそ100%、より好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ30%~およそ100%、さらに好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ50%~およそ100%であり、別の実施形態によれば、1つ又は複数のループ状窪み(I)は、深さが好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ20%~およそ90%、より好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ30%~およそ90%、さらに好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ50%~およそ90%であり、
並びに/又は、
1つ又は複数の突起(P)は、高さが好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ20%~およそ100%、より好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ30%~およそ100%、さらに好ましくは軟磁性金属板の厚さのおよそ50%~およそ100%である。
【0130】
[0128]本明細書に記載の軟磁性金属は、非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。通常、前記非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)(例えば、非磁性金属板)は、本明細書に記載のポリマーマトリクス材料のうちの1つで構成されていてもよい。例えば、深さが100%の本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)を含む軟磁性金属板が前記非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。例えば、高さが100%の本明細書に記載の1つ又は複数の突起(P)を含む軟磁性金属板が前記非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。
【0131】
[0129]本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)のほか、本明細書に記載の軟磁性金属板の1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は1つ若しくは複数の突起(P)は、当技術分野において既知の如何なる切断又は彫刻方法により生成されるようになっていてもよく、鋳造、成型、手動彫刻又は機械的切除ツール、気体若しくは液体ジェット切除ツールから成る群から選択される切除ツール、化学エッチング、電気化学エッチング、並びにレーザ切除ツール(例えば、CO2-、Nd-YAG、又はエキシマレーザ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
[0130]別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性板(x31)は、およそ25重量%~およそ95重量%の軟磁性粒子が非磁性材料中に分散した複合材で構成されており、重量百分率が軟磁性板(x31)の総重量に基づく。軟磁性複合材プレートの複合材は、およそ50重量%~およそ90重量%の軟磁性粒子を含むのが好ましく、重量百分率が軟磁性複合材プレートの総重量に基づく。本明細書に記載の軟磁性粒子は、鉄(特に、ペンタカルボニル鉄(カルボニル鉄とも称する))、ニッケル(特に、テトラカルボニルニッケル(カルボニルニッケルとも称する))、コバルト、軟磁性フェライト(例えば、マンガン亜鉛フェライト及びニッケル亜鉛フェライト)、軟磁性酸化物(例えば、マンガン、鉄、コバルト、及びニッケルの酸化物)、及びこれらの組合せから成る群から選択される1つ又は複数の軟磁性材料で構成されるのが好ましく、カルボニル鉄、カルボニルニッケル、コバルト、及びこれらの組合せから成る群から選択されるのがより好ましい。
【0133】
[0131]軟磁性粒子は、針状の形状であってもよいし、血小板状の形状であってもよいし、球状の形状であってもよい。軟磁性粒子は、球状の形状を有することにより、1つ又は複数の軟磁性複合材プレートの飽和を最大化させるとともに、軟磁性複合材プレートの密着を損なうことなく、考え得る最高の濃度となるようにするのが好ましい。軟磁性粒子は、球形の形状を有し、例えばmicrotrac X100レーザ粒子サイズ解析装置を用いたレーザ回折により測定される平均粒子サイズ(d50)が好ましくはおよそ0.1μm~およそ1000μm、より好ましくはおよそ0.5μm~およそ100μm、さらに好ましくはおよそ1μm~およそ20μm、なお好ましくはおよそ2μm~およそ10μmである。
【0134】
[0132]本明細書に記載の軟磁性複合材プレートは、本明細書に記載の軟磁性粒子が非磁性材料中に分散した複合材で構成される。好適な軟磁性材料としては、分散した軟磁性粒子に対するマトリクスを形成するポリマー材料が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーマトリクス形成材料は、1つ若しくは複数の熱可塑性材料又は1つ若しくは複数の熱硬化性材料であってもよいし、1つ若しくは複数の熱可塑性材料又は1つ若しくは複数の熱硬化性材料を含んでいてもよい。好適な熱可塑性材料としては、ポリアミド、コポリアミド、ポリフタルイミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリテトラフロオロエチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート(例えば、PMMA)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリルエーテルケトン、ポリフェニレンスルファイド、液晶ポリマー、ポリカーボネート、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な熱硬化性材料としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の1つ又は複数の軟磁性板は、本明細書に記載のおよそ5重量%~およそ75重量%の非磁性材料を含む複合材で構成されており、重量百分率が軟磁性複合材プレートの総重量に基づく。
【0135】
[0133]本明細書に記載の複合材は、例えば固化剤、分散剤、可塑剤、充填剤/増量剤、及び消泡剤等の1つ又は複数の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0136】
[0134]本明細書に記載の軟磁性複合材プレートは、厚さが好ましくは少なくともおよそ0.5mm、より好ましくは少なくともおよそ1mm、さらに好ましくは少なくともおよそ1mm~およそ5mmである。上述の通り、本明細書に記載の1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む軟磁性複合材プレートの厚さは、1つ又は複数のループ状ボイド(V)がない軟磁性複合材プレートの領域の厚さを表し、本明細書に記載の1つ又は複数の突起(P)を含む軟磁性複合材プレートの厚さは、軟磁性複合材プレートの総厚さすなわち1つ又は複数の突起のうちの最も高い突起の高さと前記1つ又は複数の突起がない軟磁性複合材プレートの領域の厚さとの組合せを表す。
【0137】
[0135]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性複合材プレートは、深さが好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ5%~およそ100%、より好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ10%~およそ100%、さらに好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ50%~およそ100%の本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む。
【0138】
[0136]一実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性複合材プレートは、深さが100%の本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む。別の実施形態によれば、本明細書に記載の軟磁性複合材プレートは、深さが100%未満の本明細書に記載の1つ又は複数のボイド(V)、好ましくは1つ又は複数のループ状ボイド(V)を含む。すなわち、深さが好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ5%~およそ90%、より好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ10%~およそ90%、さらに好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ50%~およそ90%の凹部又は窪みを含む。
【0139】
[0137]本明細書に記載の軟磁性複合材プレートは、本明細書に記載の1つ若しくは複数の窪み(I)並びに/又は本明細書に記載の1つ若しくは複数の突起(P)を含み、
一実施形態によれば、1つ又は複数の窪み(I)は、深さが好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ5%~およそ100%、より好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ10%~およそ100%、さらに好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ50%~およそ100%であり、別の実施形態によれば、1つ又は複数の窪み(I)は、深さが好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ5%~およそ90%、より好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ10%~およそ90%、さらに好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ50%~およそ90%であり、
並びに/又は、
1つ又は複数の突起(P)は、高さが好ましくは軟磁性複合材プレートの厚さのおよそ5%~およそ100%、より好ましくは軟磁性金属プレートの厚さのおよそ10%~およそ100%、さらに好ましくは軟磁性金属プレートの厚さのおよそ50%~およそ100%である。
【0140】
[0138]本明細書に記載の軟磁性複合材プレートは、非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。通常、前記非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)(例えば、非磁性金属板)は、本明細書に記載のポリマーマトリクス材料のうちの1つで構成されていてもよい。例えば、深さが100%の1つ又は複数のボイドを含む軟磁性複合材プレートが前記非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。例えば、高さが100%の本明細書に記載の1つ又は複数の突起(P)を含む軟磁性複合材プレートが前記非磁性ホルダー又はスペーサ(x33)上に配置されていてもよい。
【0141】
[0139]本発明は、本明細書に記載の軟磁性複合材プレートを使用するため都合が良く、これは、その他任意のポリマー材料と同様に前記プレートを容易に生成及び処理可能なためである。3D印刷、積層成型、圧縮成型、樹脂転写成型、又は射出成型等、当技術分野において周知の技術が用いられるようになっていてもよい。成型後は、(熱可塑性ポリマーが用いられる場合の)冷却又は(熱硬化性ポリマーが用いられる場合の)高温若しくは低温硬化等の標準的な硬化手順が適用されるようになっていてもよい。本明細書に記載の1つ又は複数の軟磁性複合材プレートを得る別の方法として、プラスチック部品を追い出す標準的なツールを用いて一部を除去することにより、所要の1つ若しくは複数のボイド(V)、窪み(I)、並びに/又は突起(P)を得る。特に、機械的切除ツールを使用可能であるのが好都合である。
【0142】
[0140]本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)の軟磁性板(x31)の上面とコーティング層(x10)を有する基板(x20)との間の距離(h)は、動的な効果を示す所望の明るい高分解能光学効果層を得るように調整及び選択される。軟磁性板(x31)の上面と基板(x20)との間の距離は、ほぼゼロ又はゼロであるのが特に好ましい。
【0143】
[0141]コーティング層(x10)を有する基板(x20)は、コーティング層/組成物が湿潤(すなわち、未固化)状態のまま血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子が配向されるように、本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)の磁界に曝される。
【0144】
[0142]本明細書に記載のOELを生成するためのプロセスは、ステップb)以前に、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を2軸配向させるために、コーティング層(x10)を装置の動的な磁界に曝露するステップであり、ステップb)以前及びステップc)の前に実行される、ステップ(ステップb2))をさらに含んでいてもよい。このように、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の少なくとも一部を2軸配向させるためにコーティング組成物を装置の動的な磁界に曝露するステップを含むプロセスについては、国際公開第2015/086257 A1号に開示されている。本明細書に記載の磁気アセンブリ(x30)の磁界に対するコーティング層(x10)の曝露の後は、内部の血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子がさらに移動及び回転し得るようにコーティング層(x10)が依然として湿潤又は柔軟な間に、本明細書に記載の装置を用いて、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子がさらに再配向される。2軸配向を実行することは、2つの主軸が拘束されるように血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を配向させることを意味する。すなわち、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子はそれぞれ、顔料粒子の面内に長軸を有し、顔料粒子の面内に直交する短軸を有するものと考えられる。血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子の長軸及び短軸はそれぞれ、動的な磁界に従って配向される。実用上は、これにより、空間中で互いに近く隣接する血小板状磁性顔料粒子が本質的に相互平行となる。2軸配向を実行するため、血小板状磁性顔料粒子は、時間に強く依存する外部磁界を受ける必要がある。
【0145】
[0143]血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる特に好ましい装置は、欧州特許出願公開第2 157 141 A1号に開示されている。欧州特許出願公開第2 157 141 A1号に開示の装置は、X軸及びY軸という両主軸が基板表面に対して実質的に平行になるまで血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を急激に振動させる方向を変化させる動的な磁界を与える。すなわち、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子は、基板表面に実質的に平行なX軸及びY軸との安定したシート状構成になり、前記2つの次元で平坦化するまで回転する。血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる特に好ましい他の装置は、直線状の永久磁石ハルバッハ配列すなわち磁化方向が異なる複数の磁石を備えたアセンブリを含む。ハルバッハ永久磁石の詳細な説明は、Z.Q.Zhu及びD.Howe(Halbach permanent magnet machines and applications:a review,IEE.Proc.Electric Power Appl.,2001,148,p.299-308)によって与えられている。このようなハルバッハ配列により生成される磁界は、一方側に集中し、他方側ではほぼゼロまで弱まる特性を有する。国際公開第2016/083259 A1号は、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる好適な装置であって、ハルバッハ円筒アセンブリを備えた、装置を開示している。血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる特に好ましい他の装置は、回転磁石であり、それらの直径に沿って本質的に磁化されるディスク状の回転磁石又は磁気アセンブリを含む。好適な回転磁石又は磁気アセンブリは、米国特許出願公開第2007/0172261 A1号に記載されており、半径方向に対称的な時間可変磁界を発生させることによって、未硬化又は未固化コーティング組成物の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の2軸配向が可能になる。これらの磁石又は磁気アセンブリは、外部のモータに接続されたシャフト(又は、スピンドル)によって駆動される。中国特許第102529326 B号は、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させるのに適し得る回転磁石を備えた装置の例を開示している。好適な一実施形態において、血小板状の磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる好適な装置は、非磁性材料、好ましくは非導電性材料で造られたハウジング中に拘束されたシャフトのないディスク状回転磁石又は磁気アセンブリであり、ハウジングに巻回された1つ又は複数の磁石ワイヤコイルによって駆動される。このようにシャフトのないディスク状回転磁石又は磁気アセンブリの例は、国際公開第2015/082344 A1号、国際公開第2016/026896 A1号、及び同時係属の欧州特許出願第17153905.9号に開示されている。
【0146】
[0144]本明細書に記載のOELを生成するためのプロセスは、コーティング組成物を固化させるステップ(ステップc))を含み、前記ステップc)は、ステップb)又はステップb2)(前記第2の配向ステップb2)が実行される場合)と一部同時に実行されるのが好ましい。コーティング組成物を固化させるステップによれば、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を所望のパターンにてそれぞれの選ばれた位置及び配向に固定可能であるため、コーティング組成物が第2の状態となり得る。ただし、如何なる脱配向及び情報損失も回避するため、ステップb)の終了からステップc)の開始までの時間は、相対的に短くするのが好ましい。通常、ステップb)の終了とステップc)の開始との間の時間は、1分未満、好ましくは20秒未満、より好ましくは5秒未満である。特に、配向ステップb)(又は、ステップb2(第2の配向ステップが実行される場合))の終了と固化ステップc)の開始との間には、本質的に時間差がないのが好ましい。すなわち、ステップc)がステップb)の直後に始まるか、又はステップb)の進行中に(一部同時に)開始しているのが好ましい。「一部同時」によって、両ステップの一部が同時に実行される。すなわち、各ステップの実行タイミングが部分的に重なることになる。本明細書に記載の背景において、ステップb)(又は、ステップb2)(第2の配向ステップが実行される場合))と一部同時に固化が実行される場合は、OELの完全又は部分的な固化の前に血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子が配向するように、配向後に固化が有効となることが了解される必要がある。本明細書に記載の通り、固化ステップ(ステップc))は、血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子も含むコーティング組成物に含まれるバインダ材料に応じて、異なる手段又はプロセスにより実行してもよい。
【0147】
[0145]固化ステップは一般的に、基板に密着する実質的に固体の材料が形成されるように、コーティング組成物の粘度を高くする任意のステップであってもよい。また、固化ステップは、溶媒等の揮発性成分の蒸発及び/又は水の蒸発に基づく物理的プロセス(すなわち、物理的乾燥)を伴っていてもよい。本明細書においては、高温空気、赤外線、又は高温空気と赤外線との組合せを用いてもよい。或いは、固化プロセスには、コーティング組成物に含まれるバインダ並びに任意選択としての開始剤化合物及び/若しくは任意選択としての架橋化合物の硬化、重合、又は架橋等の化学反応を含んでいてもよい。このような化学反応は、物理的固化プロセスに関する上記概説の通り、加熱又はIR(赤外線)照射によって開始してもよいが、紫外・可視光放射線硬化(以下、UV・可視硬化と称する)及び電子ビーム放射線硬化(電子ビーム硬化)、酸化重合(通常、酸素と、好ましくはコバルト含有触媒、バナジウム含有触媒、ジルコニウム含有触媒、ビスマス含有触媒、及びマンガン含有触媒から成る群から選択される1つ又は複数の触媒との協調作用により引き起こされる酸化細網化)、架橋反応、又はこれらの任意の組合せ等、或いはこれらに限定されない放射機構による化学反応の開始を含んでいるのが好ましい。
【0148】
[0146]放射線硬化が特に好ましく、紫外・可視光放射線硬化がさらに好ましい。これらの技術によれば、硬化プロセスが非常に高速となって、本明細書に記載のOELを備えた任意の物品の作製時間が劇的に短縮されて都合が良いためである。さらに、放射線硬化には、硬化放射線への曝露によりコーティング組成物の粘度を略瞬時に高くすることによって、粒子のさらなる移動を最小限に抑えられるという利点がある。その結果、磁気的配向ステップ後の如何なる配向の損失も本質的に回避可能となる。特に、電磁スペクトルの紫外又は青色部分の波長成分(通常、200nm~650nm、より好ましくは200nm~420nm)を有する化学光の影響下での光重合による放射線硬化が好ましい。紫外・可視光硬化用機器は、化学線源として、高出力発光ダイオード(LED)ランプ又は中圧水銀アーク(MPMA)若しくは金属蒸気アークランプ等のアーク放電ランプを備えていてもよい。
【0149】
[0147]一実施形態によれば、本明細書に記載のOELを生成するためのプロセスは、放射線硬化ステップである固化ステップc)(好ましくは、UV・可視光放射線硬化ステップであり、1つ又は複数のウィンドウを含むフォトマスクを使用する)を含む。フォトマスクを使用する方法の例は、国際公開第2002/090002 A2号に開示されている。1つ又は複数のウィンドウを含むフォトマスクは、コーティング層(x10)と放射線源との間に配置されるため、1つ又は複数のウィンドウの下に配置された1つ又は複数の領域においてのみ、本明細書に記載の血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子の配向を固定/停止可能となる。コーティング層(x10)の非曝露部に分散した血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子は、後続のステップにおいて、第2の磁界を用いることにより再配向されるようになっていてもよい。
【0150】
[0148]放射線硬化ステップである固化ステップc)(好ましくは、UV・可視光放射線硬化ステップであり、本明細書に記載のフォトマスクを使用する)を含むプロセスは、コーティング層(x10)を磁界発生装置の磁界に曝露して、1つ又は複数のウィンドウがないフォトマスクの1つ又は複数の領域の存在により第1の状態であるコーティング層(x10)の1つ又は複数の領域において血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を配向させるステップd)をさらに含み、前記磁界発生装置によれば、顔料粒子の磁気配向によって、ランダム配向を除く任意の配向パターンに追従可能となる。血小板状磁性又は磁化可能顔料粒子を2軸配向させる本明細書に記載の装置は、第2の配向ステップ(ステップd))に用いられるようになっていてもよい。放射線硬化ステップである固化ステップc)(好ましくは、UV・可視光放射線硬化ステップであり、本明細書に記載のフォトマスクを使用する)及び本明細書に記載のステップd)を含むプロセスは、これらと同時、一部同時、又はこれらの後に(好ましくは、同時又は一部同時に)、コーティング層(x10)を固化させて、上述のように、磁性又は磁化可能顔料粒子をそれぞれの選ばれた位置及び配向に固定又は停止するステップe)をさらに含む。
【0151】
[0149]本発明は、光学効果層(OEL)を基板上に生成するプロセスを提供する。本明細書に記載の基板(x20)は、紙又はセルロース、紙含有材料、ガラス、金属、セラミック、プラスチック、及びポリマー等のその他繊維材料(織布及び不織布繊維材料を含む)、金属化プラスチック若しくはポリマー、複合材、並びにこれらの2つ以上の混合物又は組合せから成る群から選択するのが好ましい。代表的な紙、紙状、又はその他の繊維材料は、アバカ、綿、麻、木材パルプ、及びこれらの混合等、様々な繊維で構成されるが、これらに限定されない。当業者には周知の通り、紙幣には綿及び綿/麻混合が好ましく、紙幣以外のセキュリティ文書には、木材パルプが一般的に用いられている。プラスチック及びポリマーの代表例としては、ポリエチレン(PE)及び2軸配向ポリプロピレン(BOPP)を含むポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリアミド、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(エチレン 2,6-ナフトエート)(PEN)等のポリエステル、並びにポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。基板としては、例えばTyvek(登録商標)という商標で販売されているスパンボンドオレフィン繊維も使用可能である。金属化プラスチック又はポリマーの代表例としては、表面に連続的又は不連続的に配設された金属を有する上述のプラスチック又はポリマー材料が挙げられる。金属の代表例としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、これらの合金、及びこれら金属の2つ以上の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。上述のプラスチック又はポリマー材料の金属化は、電着プロセス、高真空被覆プロセス、又はスパッタリングプロセスによって行われるようになっていてもよい。複合材の代表例としては、紙及び上記のような少なくとも1つのプラスチック若しくはポリマー材料の多層構造又は積層並びに上記のような紙状又は繊維材料に組み込まれたプラスチック及び/若しくはポリマー繊維等が挙げられるが、これらに限定されない。当然のことながら、基板には、充填剤、サイジング剤、漂白剤、加工助剤、補強又は湿潤増強剤等、当業者に既知の別の添加剤を含むことも可能である。例えばネイルラッカー等の装飾又は化粧を目的として、本発明に従って生成されたOELが使用される場合、前記OELは、爪、人工爪、又は動物若しくは人間の他の部位を含む他種の基板上に生成されるようになっていてもよい。
【0152】
[0150]本発明に従って生成されたOELがセキュリティ文書上にある場合は、当該セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くすることを目的として、上記基板は、印刷され、被覆され、レーザマーキングされ、又はレーザ穿孔されたしるし、透かし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、窓、箔、デカール、及びこれらの2つ以上の組合せを備えていてもよい。セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに高くするという同じ目的で、上記基板は、1つ又は複数のマーカ物質若しくは追跡用添加物並びに/又は機械可読物質(例えば、発光物質、UV/可視/IR吸収物質、磁性物質、及びこれらの組合せ)を含んでいてもよい。
【0153】
[0151]ステップa)の前に、必要に応じて下塗層を基板に塗布するようにしてもよい。これにより、本明細書に記載の光学効果層(OEL)の品質が向上するか、又は密着性が促進される可能性がある。このような下塗層の例は、国際公開第2010/058026 A2号に見られる。
【0154】
[0152]本明細書に記載のプロセスにより得られた光学効果層(OEL)を備えた物品、セキュリティ文書、又は装飾要素又は装飾物体の汚染耐性若しくは耐化学性及び清浄度ひいては流通寿命を向上させる目的又はその美的外観(例えば、光沢)を改良する目的で、光学効果層(OEL)上には、1つ又は複数の保護層を塗布するようにしてもよい。1つ又は複数の保護層が存在する場合、当該層は通常、保護ワニスで構成されている。これらは、透明であってもよいし、わずかに着色又は染色されていてもよく、光沢度が高くてもよいし低くてもよい。保護ワニスは、放射線硬化性組成物、熱乾燥組成物、又はこれらの任意の組合せであってもよい。1つ又は複数の保護層は、好ましくは放射線硬化性組成物、より好ましくは紫外・可視光硬化性組成物である。また、保護層は通常、光学効果層(OEL)の形成後に塗布される。
【0155】
[0153]本発明は、本発明に係るプロセスにより生成された光学効果層(OEL)をさらに提供する。
【0156】
[0154]本明細書に記載の光学効果層(OEL)は、基板上に直接設けて、永久に残るようにしてもよい(例えば、紙幣用途の場合)。或いは、製造のための暫定的な基板上に光学効果層(OEL)を設け、後でOELを取り外すようにしてもよい。これにより、特にバインダ材料が流体状態のままである場合に、例えば光学効果層(OEL)の製造が容易化される可能性がある。その後、コーティング組成物を固化させて光学効果層(OEL)を製造したら、暫定基板をOELから取り外してもよい。
【0157】
[0155]或いは、別の実施形態において、光学効果層(OEL)又はOELを備えた基板上に接着層が存在していてもよく、当該接着層は、OELが設けられた面と反対側の基板面に存在していてもよいし、OELと同じ面でOELの上に存在していてもよい。したがって、光学効果層(OEL)又は基板に接着層が塗布されていてもよく、前記接着層は、硬化ステップの完了後に塗布される。このような物品は、機械類や大きな労力を伴う印刷等のプロセスなく、あらゆる種類の文書又は他の物品に取り付けられるようになっていてもよい。或いは、本明細書に記載の光学効果層(OEL)を備えた本明細書に記載の基板は、独立した転写ステップにおいて文書又は物品に適用可能な転写箔の形態であってもよい。この目的のため、基板には剥離コーティングが設けられ、その上において、本明細書に記載の通り、光学効果層(OEL)が生成される。このように製造された光学効果層(OEL)上には、1つ又は複数の接着層を塗布するようにしてもよい。
【0158】
[0156]本明細書には、本明細書に記載のプロセスにより得られた2つ以上すなわち2つ、3つ、4つ等の光学効果層(OEL)を備えた基板も記載する。
【0159】
[0157]また、本明細書には、本発明に従って生成された光学効果層(OEL)を備えた物品、特に、セキュリティ文書、装飾要素又は装飾物体を記載する。これらの物品、特に、セキュリティ文書、装飾要素又は装飾物体は、本発明に従って生成された2つ以上(例えば、2つ、3つ等)のOELを備えていてもよい。
【0160】
[0158]前述の通り、本発明に従って生成された光学効果層(OEL)は、装飾目的並びにセキュリティ文書の保護及び認証に用いられるようになっていてもよい。
【0161】
[0159]装飾要素又は装飾物体の代表例としては、高級品、化粧品パッケージ、自動車部品、電子/家電製品、家具、及びネイル物品が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
[0160]セキュリティ文書としては、有価書類及び有価商品が挙げられるが、これらに限定されない。有価文書の代表例としては、紙幣、証書、チケット、小切手、証票、収入印紙及び納税印紙、契約書等、パスポート等の身分証明書類、身分証明書、ビザ、運転免許証、銀行カード、クレジットカード、取引カード、アクセス書類又はカード、入場券、公共交通乗車券又は証書等が挙げられ、紙幣、身分証明書類、権利付与書類、運転免許証、及びクレジットカードが好ましいが、これらに限定されない。用語「有価商品(value commercial good)」は、特に化粧品、栄養補助食品、医薬品、アルコール、タバコ製品、飲料又は食料品、電気/電子製品、織物又は宝飾品、すなわち偽造及び/又は違法複製に対する保護により、例えば本物の薬等のパッケージの内容物を保証すべき物品のパッケージ材料を表す。これらパッケージ材料の例としては、認証ブランドラベル、不正防止ラベル等のラベル及びシールが挙げられるが、これらに限定されない。なお、開示の基板、有価文書、及び有価商品は、本発明の範囲を制限することなく、専ら例示目的で示している。
【0163】
[0161]或いは、光学効果層(OEL)は、例えばセキュリティスレッド、セキュリティストライプ、箔、デカール、窓、又はラベル等の補助基板上に生成され、その結果、独立したステップにおいて、セキュリティ文書に転写されるようになっていてもよい。
【0164】
[0162]当業者であれば、本発明の主旨から逸脱することなく、上述した特定の実施形態について、いくつかの改良に想到し得る。このような改良は、本発明に含まれる。
【0165】
[0163]さらに、本明細書全体で引用したすべての文献は、参照によりその全内容が漏れなく本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0166】
[0164]後述の例では、市販の黒い紙(Gascogne Laminates M-cote 120)を基板(x20)として使用した。
【0167】
[0165]血小板状光学可変磁性顔料粒子を含むコーティング組成物として、表1に記載のUV硬化性スクリーン印刷インクを使用することにより、コーティング層(x20)を形成した。T90スクリーンを用いた手動スクリーン印刷によって厚さがおよそ20μmのコーティング層(x10)(30mm×20mm)を構成することにより、基板(x20)(40mm×30mm)にコーティング組成物を塗布した。
【0168】
【表1】
[0166]
図7A~
図14Cに示す磁気アセンブリ(x30)を独立して使用することにより、表1に記載のUV硬化性スクリーン印刷インクで造られたコーティング層(x10)における血小板状光学可変磁性顔料粒子を配向させ、
図7D~
図14Dに示す光学効果層(OEL)を生成した。
【0169】
[0167]磁気アセンブリ(x30)は、軟磁性板(x31)並びに1つ若しくは複数の双極子磁石(x32)を備え、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)はそれぞれ、基板(x20)表面及び軟磁性板(x31)表面と実質的に垂直な磁気軸を有し、前記1つ又は複数の双極子磁石(x32)はすべて、同じ磁場方向を有するものとし、スコッチ(Scotch)(登録商標)リムーバブルポスターテープ(x33)によって、ホルダーを模擬するように軟磁性板(x31)に対して適所に保持した。
【0170】
[0168]軟磁性板(x31)は、軟磁性粒子としてカルボニル鉄(表2参照)を含む複合材組成物(表2参照)で造られたものである。実施例1~8において使用する軟磁性板(x31)は、表2の成分を高速混合器(Flack Tek Inc. DAC 150 SP)において2500rpmで3分間十分に混合することにより、独立して作成した。その後、混合物をシリコン金型に注ぎ入れ、3日間放置して完全に固化させた。
【0171】
[0169]軟磁性板(x31)は、ループを規定するループ状ボイド(V)を独立して含むとともに、(1つ若しくは複数の)窪み(I)又は(1つ若しくは複数の)突起(P)を独立して含むものとし、前記(1つ若しくは複数の)窪み(I)又は(1つ若しくは複数の)突起(P)は、連続ループ状しるし(
図7A~
図13A参照)又は不連続ループ状しるし(
図14A参照)を形成するものとし、前記連続ループ状しるし又は不連続ループ状しるしがボイド(V)を囲むものとした。磁気アセンブリ(x30)は、ループ状ボイド(V)により形成されたループ内に配設された1つ又は複数の双極子磁石(x32)を独立して備えるものとした。
【0172】
[0170]軟磁性板(x31)のボイド(V)、窪み(I)、及び突起(P)は、直径が1mm及び2mmのメッシュ(Gravographのコンピュータ制御の機械的彫刻装置IS500)を用いることにより、上記得られた軟磁性板(x31)に機械的に彫刻した。
【0173】
【表2】
[0171]上述のようにUV硬化性スクリーン印刷インクを適用するとともに、コーティング層(x10)を有する基板(x20)を磁気アセンブリ(x30)上に配置して血小板状光学可変磁性顔料粒子を機械的に配向させた後、磁気配向ステップと一部同時に、PhoseonのUV-LEDランプ(Type FireFlex 50×75mm、395nm、8W/cm
2)を用いてコーティング層(x10)をUV硬化させることにより、磁気配向した血小板状光学可変磁性顔料粒子を固定/停止した。
【0174】
[0172]このようにして得られたOELの写真は、
光源:150W石英ハロゲン光ファイバ(Dolan-JennerのFiber-lite DC-950)(照射角度は10°w.r.t.(基板に垂直))、
1.3MPカメラ:PixeLINKのカラーカメラ(PL-B7420)(USBインターフェース付き)、
対物レンズ:0.19×テレセントリックレンズ、
フリーのソフトウェア(Fiji)を用いてカラー画像を白黒画像に変換、
といったセットアップによって撮影した。
【0175】
実施例1(
図7A~
図7D)
[0173]
図7A~
図7Dに示すように、磁気アセンブリ(730)を使用して、基板(720)上のコーティング層(710)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(円形しるし及び正四分岐星形しるし)をそれぞれ示す5つの独立した効果を示すOELが得られた。軟磁性板(731)の5つの窪み(I)はそれぞれ、連続ループ状しるし(星)を独立して形成しており、前記ループ状しるしがそれぞれ、円形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。
【0176】
[0174]5つの正四分岐星形しるしのうちの4つが正方形の隅部を形成し(幅(A3)=13mm)、第5の星が正方形の中心に配置されていた(正方形の隅部に配置された4つの星それぞれからの距離が√2/2・A3すなわち9.2mmであることを意味する)。
図7Bは、明瞭化のため、1つの四分岐星しか示しておらず、
図7Cは、前記正方形の1辺を構成する2つの星の仮想中心を通過する磁気アセンブリ(730)の断面を表す。
【0177】
[0175]磁気アセンブリ(730)は、i)軟磁性板(731)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2)=2mm)を備え、前記軟磁性板(731)は、5つの円形ボイド(V)(直径(A4)=3.5mm、深さ(A7)=2mm)及び5つの正四分岐星形窪み(I)(内径(A8)=5mm、外形(A9)=12mm、厚さ(A5)=1mm、深さ(A10)=1.6mm)を含んでいた。
図7A~
図7Cに示すように、各円形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、四分岐星形窪み(I)のうちの1つによって対称に囲まれていた。
【0178】
[0176]磁気アセンブリ(730)は、ii)NdFeB N45で造られた5つの双極子磁石(732)(直径(A6)=2mm、厚さ(A7)=2mm)を備えており、前記5つの双極子磁石(732)がそれぞれ、円形ボイド(V)それぞれにより規定されたループ内に対称に独立して配設されていた。5つの双極子磁石(732)はそれぞれ、N極が前記基板(720)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(720)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(731)と実質的に垂直であった)。
図7Cに示すように、5つの双極子磁石(732)それぞれの上面は、軟磁性板(731)の上面と同一平面であり、5つの双極子磁石(732)それぞれの底面は、軟磁性板(731)の底面と同一平面であった。5つの双極子磁石(732)は、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×5mm)(733)を用いて適所に保持した。
【0179】
[0177]軟磁性板(731)の上面と基板(720)表面との間の距離(h)は、0mmであった。すなわち、コーティング組成物(710)を有する基板(720)は、磁気アセンブリ(730)すなわち軟磁性板(731)と直接接触して配置された。
【0180】
[0178]
図7Dには、基板(720)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図7A~
図7Cに示す磁気アセンブリ(730)により生成された結果としてのOELを示している。
【0181】
実施例2(
図8A~
図8D)
[0179]
図8A~
図8Cに示すように、磁気アセンブリ(830)を使用して、基板(820)上のコーティング層(810)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(円形しるし)を示すOELが得られた。軟磁性板(831)の窪み(I)は、連続ループ状しるし(円)を形成しており、前記ループ状しるしが、円形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。
【0182】
[0180]磁気アセンブリ(830)は、i)軟磁性板(831)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2)=2mm)を備え、前記軟磁性板(831)は、円形ボイド(V)(直径(A4)=7mm、深さ(A7)=2mm)及び円形窪み(I)(直径(A8)=13mm、厚さ(A5)=1mm、深さ(A10)=1.6mm)を含んでいた。
図8A~
図8Cに示すように、円形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、円形窪み(I)によって対称に囲まれていた。
【0183】
[0181]磁気アセンブリ(830)は、ii)NdFeB N45で造られた円筒状双極子磁石(832)(直径(A6)=3mm、厚さ=8mm)を備えており、前記双極子磁石(832)が円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設されていた。双極子磁石(832)は、N極が前記基板(820)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(820)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(831)と実質的に垂直であった)。
図8Cに示すように、双極子磁石(832)の上面は、軟磁性板(831)の上面と同一平面であり、双極子磁石(832)の底面は、軟磁性板(831)の底面の下側にあった。双極子磁石(832)は、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×13mm)(833)を用いて適所に保持した。
【0184】
[0182]軟磁性板(831)の上面と基板(820)表面との間の距離(h)は、0.1mmであった。
【0185】
[0183]
図8Dには、基板(820)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図8A~
図8Cに示す磁気アセンブリ(830)により生成された結果としてのOELを示している。
【0186】
実施例3(
図9A~
図9D)
[0184]
図9A~
図9Cに示すように、磁気アセンブリ(930)を使用して、基板(920)上のコーティング層(910)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(円形しるし)を示すOELが得られた。軟磁性板(931)の窪み(I)は、連続ループ状しるし(円)を形成しており、前記ループ状しるしが、円形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。
【0187】
[0185]磁気アセンブリ(930)は、i)軟磁性板(931)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2)=2mm)を備え、前記軟磁性板(931)は、円形ボイド(V)(直径(A4)=7mm、深さ(A7)=2mm)及び円形窪み(I)(直径(A8)=12mm、厚さ(A5)=1mm、深さ(A10)=1.6mm)を含んでいた。
図9A~
図9Cに示すように、円形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、円形窪み(I)によって対称に囲まれていた。
【0188】
[0186]磁気アセンブリ(930)は、ii)NdFeB N45で構成され、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設された4つの円筒状双極子磁石(932a~932d)(直径(A6)=3mm、厚さ(A7)=2mm)を備えていた。前記4つの双極子磁石(932a~932d)はそれぞれ、N極が前記基板(920)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(920)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(931)と実質的に垂直であった)。第1の双極子磁石(932a)は、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設され、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×13mm)(933)を用いて適所に保持した。その他3つの双極子磁石(932b~932d)は、テープ(933)の下で重なり合って配設され、第1の双極子磁石(932a)と位置合わせされるとともに、すべてが同じ方向の磁気軸をそれぞれ有していた。双極子磁石(932b~932d)は、それぞれの磁気軸の位置合わせによりもたらされる磁力によって、適所に保持されていた。
図9Cに示すように、第1の双極子磁石(932a)の上面は、軟磁性板(931)の上面と同一平面であり、第4の双極子磁石(932d)の底面は、軟磁性板(931)の底面の下側にあった。
【0189】
[0187]軟磁性板(931)の上面と基板(920)表面との間の距離(h)は、0mmであった。すなわち、コーティング組成物(910)を有する基板(920)は、磁気アセンブリ(930)すなわち軟磁性板(931)と直接接触して配置された。
【0190】
[0188]
図9Dには、基板(920)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図9A~
図9Cに示す磁気アセンブリ(930)により生成された結果としてのOELを示している。
【0191】
[0189]このようにして得られたOELは、
図8Dの実施例2に示す効果と同じように見えるが、これにより、磁気軸に沿って位置合わせされた複数すなわち2つ以上の双極子磁石が単一の双極子磁石により置き換え可能であることが示される。
【0192】
実施例4(
図10A~
図10D)
[0190]
図10A~
図10Cに示すように、磁気アセンブリ(1030)を使用して、基板(1020)上のコーティング層(1010)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(円形しるし)を示すOELが得られた。軟磁性板(1031)の突起(P)は、連続ループ状しるし(円)を形成しており、前記ループ状しるしが、円形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。
【0193】
[0191]磁気アセンブリ(1030)は、i)軟磁性板(1031)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2+A10)=2(0.4+1.6)mm)を備え、前記軟磁性板(1031)は、円形ボイド(V)(直径(A4)=4mm、深さ(A7)=2mm)及び円形突起(P)(直径(A8)=10mm、厚さ(A5)=2mm、高さ(A10)=1.6mm)を含んでいた。
図10A~
図10Cに示すように、円形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、円形突起(P)によって対称に囲まれていた。
【0194】
[0192]磁気アセンブリ(1030)は、ii)NdFeB N45で構成され、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設された5つの円筒状双極子磁石(1032a~1032e)(直径(A6)=2mm、厚さ(A7)=2mm)を備えていた。前記5つの双極子磁石(1032a~1032e)はそれぞれ、N極が前記基板(1020)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(1020)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(1031)と実質的に垂直であった)。第1の双極子磁石(1032a)は、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設され、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×10mm)(1033)を用いて適所に保持した。その他4つの双極子磁石(1032b~1032e)は、テープ(1033)の下で重なり合って配設され、第1の双極子磁石(1032a)と位置合わせされるとともに、すべてが同じ方向の磁気軸をそれぞれ有していた。双極子磁石(1032b~1032e)は、それぞれの磁気軸の位置合わせによりもたらされる磁力によって、適所に保持されていた。
図10Cに示すように、第1の双極子磁石(1032a)の上面は、軟磁性板(1031)の上面すなわち突起(P)の上面と同一平面であり、第5の双極子磁石(1032e)の底面は、軟磁性板(1031)の底面の下側にあった。
【0195】
[0193]軟磁性板(1031)の上面と基板(1020)表面との間の距離(h)は、0mmであった。すなわち、コーティング組成物(1010)を有する基板(1020)は、磁気アセンブリ(1030)すなわち軟磁性板(1031)の突起(P)と直接接触して配置された。
【0196】
[0194]
図10Dには、基板(1020)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図10A~
図10Cに示す磁気アセンブリ(1030)により生成された結果としてのOELを示している。
【0197】
実施例5(
図11A~
図11D)
[0195]
図11A~
図11Cに示すように、磁気アセンブリ(1130)を使用して、基板(1120)上のコーティング層(1110)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(円形しるし及び正方形状しるし)を示すOELが得られた。軟磁性板(1131)の窪み(I)は、連続ループ状しるし(正方形)を形成しており、前記ループ状しるしが、円形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。磁気アセンブリ(1130)は、i)軟磁性板(1131)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2)=1.5mm)を備え、前記軟磁性板(1131)は、円形ボイド(V)(直径(A4)=5mm、深さ(A7)=1.5mm)及び正方形状窪み(I)(直径(A8)=(A9)=12mm、厚さ(A5)=2mm、深さ(A10)=1.1mm)を含んでいた。
図11A~
図11Cに示すように、円形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、正方形状窪み(I)によって対称に囲まれていた。
【0198】
[0196]磁気アセンブリ(1130)は、ii)NdFeB N45で構成され、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設された4つの円筒状双極子磁石(1132a~1132d)を備えていた。前記4つの双極子磁石(1132a~1132d)はそれぞれ、N極が前記基板(1120)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(1120)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(1131)と実質的に垂直であった)。第1の双極子磁石(1132a)(直径(A6)=3mm、厚さ(A11)=1mm)は、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設され、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×12mm)(1133)を用いて適所に保持した。その他3つの双極子磁石(1132b~1132d)(直径(A6)=3mm、厚さ(A12)=2mm)は、テープ(1133)の下で重なり合って配設され、第1の双極子磁石(1132a)と位置合わせされるとともに、すべてが同じ方向の磁気軸をそれぞれ有していた。双極子磁石(1132b~1132d)は、それぞれの磁気軸の位置合わせによりもたらされる磁力によって、適所に保持されていた。
図11Cに示すように、第1の双極子磁石(1132a)の上面は、軟磁性板(1131)の上面の下側0.5mmにあり、第4の双極子磁石(1132d)の底面は、軟磁性板(1131)の底面の下側にあった。
【0199】
[0197]軟磁性板(1131)の上面と基板(1120)表面との間の距離(h)は、0mmであった。すなわち、コーティング組成物(1110)を有する基板(1120)は、磁気アセンブリ(1130)すなわち軟磁性板(1131)と直接接触して配置された。
【0200】
[0198]
図11Dには、基板(1120)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図11A~
図11Cに示す磁気アセンブリ(1130)により生成された結果としてのOELを示している。
【0201】
実施例6(
図12A~
図12D)
[0199]
図12A~
図12Cに示すように、磁気アセンブリ(1230)を使用して、基板(1220)上のコーティング層(1210)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(円形しるし)を示すOELが得られた。軟磁性板(1231)の窪み(I)は、連続ループ状しるし(円)を形成しており、前記ループ状しるしが、円形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。
【0202】
[0200]磁気アセンブリ(1230)は、i)軟磁性板(1231)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2)=2mm)を備え、前記軟磁性板(1231)は、円形ボイド(V)(直径(A4)=5mm、深さ(A7)=2mm)及び円形窪み(I)(直径(A8)=15mm、厚さ(A5)=1mm、深さ(A10)=1.6mm)を含んでいた。
図12A~
図12Cに示すように、円形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、円形窪み(I)によって非対称に囲まれていた。
【0203】
[0201]磁気アセンブリ(1230)は、ii)NdFeB N45で構成され、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設された4つの円筒状双極子磁石(1232a~1232d)(直径(A6)=3mm、厚さ(A7)=2mm)を備えていた。前記4つの双極子磁石(1232a~1232d)はそれぞれ、N極が前記基板(1220)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(1220)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(1231)と実質的に垂直であった)。第1の双極子磁石(1232a)は、円形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設され、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×12mm)(1233)を用いて適所に保持した。その他3つの双極子磁石(1232b~1232d)は、テープ(1233)の下で重なり合って配設され、第1の双極子磁石(1232a)と位置合わせされるとともに、すべてが同じ方向の磁気軸をそれぞれ有していた。双極子磁石(1232b~1232d)は、それぞれの磁気軸の位置合わせによりもたらされる磁力によって、適所に保持されていた。
図12Cに示すように、第1の双極子磁石(1232a)の上面は、軟磁性板(1231)の上面と同一平面であり、第4の双極子磁石(1232d)の底面は、軟磁性板(1231)の底面の下側にあった。
【0204】
[0202]軟磁性板(1231)の上面と基板(720)表面との間の距離(h)は、0mmであった。すなわち、コーティング組成物(1210)を有する基板(1220)は、磁気アセンブリ(1230)すなわち軟磁性板(1231)と直接接触して配置された。
【0205】
[0203]
図12Dには、基板(1220)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図12A~
図12Cに示す磁気アセンブリ(1230)により生成された結果としてのOELを示している。
【0206】
実施例7(
図13A~
図13D)
[0204]
図13A~
図13Cに示すように、磁気アセンブリ(1330)を使用して、基板(1320)上のコーティング層(1310)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(2つの正六分岐星形しるし)を示すOELが得られた。軟磁性板(1331)の窪み(I)は、連続ループ状しるし(星)を形成しており、前記ループ状しるしが、星形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。
【0207】
[0205]磁気アセンブリ(1330)は、i)軟磁性板(1331)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2)=2mm)を備え、前記軟磁性板(1331)は、正六分岐星形ボイド(V)(外径(A4)=6mm、内径(A4’)=4mm、深さ(A7)=2mm)及び正六分岐星形窪み(I)(外径(A9)=15mm、内形(A8)=8mm、厚さ(A5)=1mm、深さ(A10)=1.6mm)を含んでいた。
図13A~
図13Cに示すように、星形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、星形窪み(I)によって対称に囲まれていた。
【0208】
[0206]磁気アセンブリ(1330)は、ii)NdFeB N45で構成され、星形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設された3つの円筒状双極子磁石(1332a~1332c)(直径(A6)=3mm、厚さ(A7)=2mm)を備えていた。前記3つの双極子磁石(1332a~1332c)はそれぞれ、N極が前記基板(1320)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(1320)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(1331)と実質的に垂直であった)。第1の双極子磁石(1332a)は、星形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設され、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×13mm)(1333)を用いて適所に保持した。その他2つの双極子磁石(1332b及び1332c)は、テープ(1333)の下で重なり合って配設され、第1の双極子磁石(1332a)と位置合わせされるとともに、すべてが同じ方向の磁気軸をそれぞれ有していた。双極子磁石(1332b及び1332c)は、それぞれの磁気軸の位置合わせによりもたらされる磁力によって、適所に保持されていた。
図13Cに示すように、第1の双極子磁石(1332a)の上面は、軟磁性板(1331)の上面と同一平面であり、第3の双極子磁石(1332c)の底面は、軟磁性板(1331)の底面の下側にあった。
【0209】
[0207]軟磁性板(1331)の上面と基板(1320)表面との間の距離(h)は、0mmであった。すなわち、コーティング組成物(1310)を有する基板(1320)は、磁気アセンブリ(1330)すなわち軟磁性板(1331)と直接接触して配置された。
【0210】
[0208]
図13Dには、基板(1320)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図13A~
図13Cに示す磁気アセンブリ(1330)により生成された結果としてのOELを示している。
【0211】
実施例8(
図14A~
図14D)
[0209]
図14A~
図14Cに示すように、磁気アセンブリ(1430)を使用して、基板(1420)上のコーティング層(1410)の血小板状光学可変磁性顔料粒子の少なくとも一部を配向させることにより、2つの入れ子になったしるし、特に、2つの入れ子になったループ状しるし(2つの六分岐星形しるし)を示すOELが得られた。軟磁性板(1431)の6つの窪み(I)は、不連続ループ状しるし(星)を形成しており、前記ループ状しるしが、星形のループ状形態のボイド(V)を囲んでいた。
【0212】
[0210]磁気アセンブリ(1430)は、i)軟磁性板(1431)(幅(A1)=40mm、厚さ(A2)=1.5mm)を備え、前記軟磁性板(1431)は、正六分岐星形ボイド(V)(外径(A4)=6mm、内径(A4’)=4mm、深さ=1.5mm)及び不連続な正六分岐星形窪み(I)を形成する6つの窪み(I)(直径(A8)=8.5mm、厚さ(A5)=1mm、深さ(A10)=1.6mm、長さ(A13)=3mm)を含んでいた。
図14A~
図14Cに示すように、星形ボイド(V)は、ループを規定するとともに、6つの窪み(I)で造られた不連続な正六分岐星形しるしによって対称に囲まれていた。
【0213】
[0211]磁気アセンブリ(1430)は、ii)NdFeB N45で構成され、星形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設された4つの円筒状双極子磁石(1432a~1432d)(直径(A6)=3mm、厚さ(A7)=2mm)を備えていた。前記4つの双極子磁石(1432a~1432d)はそれぞれ、N極が前記基板(1420)表面側を向いた状態で、磁気軸が基板(1420)表面と実質的に垂直であった(また、軟磁性板(1431)と実質的に垂直であった)。第1の双極子磁石(1432a)は、星形ボイド(V)により規定されたループ内に対称に配設され、一片のスコッチ(登録商標)両面テープ(13mm×13mm)(1433)を用いて適所に保持した。その他3つの双極子磁石(1432b~1432d)は、テープ(1433)の下で重なり合って配設され、第1の双極子磁石(1432a)と位置合わせされるとともに、すべてが同じ方向の磁気軸をそれぞれ有していた。双極子磁石(1432b及び1432c)は、それぞれの磁気軸の位置合わせによりもたらされる磁力によって、適所に保持されていた。
図14Cに示すように、第1の双極子磁石(1432a)の上面は、軟磁性板(1431)の上面と同一平面であり、第4の双極子磁石(1432d)の底面は、軟磁性板(1431)の底面の下側にあった。
【0214】
[0212]軟磁性板(1431)の上面と基板(1420)表面との間の距離(h)は、0mmであった。すなわち、コーティング組成物(1410)を有する基板(1420)は、磁気アセンブリ(1430)すなわち軟磁性板(1431)と直接接触して配置された。
【0215】
[0213]
図14Dには、基板(1420)を30°~-30°傾斜させた様々な視角にて、
図14A~
図14Cに示す磁気アセンブリ(1430)により生成された結果としてのOELを示している。