(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/74 20180101AFI20240214BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20240214BHJP
F24F 120/10 20180101ALN20240214BHJP
【FI】
F24F11/74
F24F110:10
F24F120:10
(21)【出願番号】P 2019213520
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】左 勝旭
(72)【発明者】
【氏名】村下 和紀
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 健人
(72)【発明者】
【氏名】白鳥 泰宏
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-009654(JP,A)
【文献】特開平05-018594(JP,A)
【文献】特開平08-128704(JP,A)
【文献】特開2004-239525(JP,A)
【文献】特開2011-112322(JP,A)
【文献】特開2000-035243(JP,A)
【文献】特開平11-311442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に面する複数の空調エリアと前記壁面に面しない複数の空調エリアとに室内を仮想的に分割し
、前記壁面に面する前記空調エリア毎に設けられ前記壁面に開口する複数の吸込口と、
前記吸込口毎に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた還気を温度調整する
複数の温度調整手段と、
前記温度調整手段毎に設けられ、前記温度調整手段によって温度調整された還気を
前記壁面に面する前記空調エリアと前記壁面に面しない前記空調エリアに給気する
複数の給気口と、
前記空調エリア毎の熱負荷を測定する熱負荷測定手段と、
単位面積当たりの熱負荷が大きい前記空調エリアに対応する前記給気口の給気風量が、単位面積当たりの熱負荷が小さい前記空調エリアに対応する前記給気口の給気風量よりも大きくなるように、前記給気口毎の前記給気風量を制御する制御手段と、
を備えた空調システム。
【請求項2】
壁面に面する複数の空調エリアと前記壁面に面しない複数の空調エリアとに室内を仮想的に分割し
、前記壁面に面する前記空調エリア毎に設けられ前記壁面に開口する複数の吸込口と、
前記吸込口毎に設けられ、前記吸込口から吸い込まれた還気を温度調整する
複数の温度調整手段と、
前記温度調整手段毎に設けられ、前記温度調整手段によって温度調整された還気を
前記壁面に面する前記空調エリアと前記壁面に面しない前記空調エリアに給気する
複数の給気口と、
前記吸込口から吸い込まれた還気の温度を測定する温度測定手段と、
前記空調エリア毎の熱負荷を測定する熱負荷測定手段と、
前記温度測定手段の測定結果及び前記熱負荷測定手段の測定結果に基づき、前記給気口毎の給気風量を制御する制御手段と、
を備えた空調システム。
【請求項3】
前記吸込口が設けられた前記壁面に面する前記空調エリアと、前記壁面に面しない前記空調エリアと、で所定領域を構成し、
前記制御手段は、
前記温度測定手段の測定結果に基づき、前記所定領域全体の給気風量の総量を求め、
前記熱負荷測定手段の測定結果に基づき、前記給気風量の総量を
、前記所定領域を構成する前記空調エリア毎に分配する、
請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
熱負荷は、前記空調エリアの人員数であり、
前記熱負荷測定手段は、サーモグラフィカメラを有し、
前記制御手段は、前記サーモグラフィカメラの撮影画像における前記空調エリアの閾値以上の温度の画素数に基づいて、前記空調エリアの人員数を求める、
請求項2又は請求項3に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、室内を撮影した画像データをもとに在室者の有無を検出し、空気調和装置及び照明装置を調節する室内環境制御装置に関する技術が開示されている。
【0003】
この先行技術では、室内を複数の制御単位に分割し、各制御単位毎に吹き出し口及び吸い込み口並びに照明装置を設ける。また、デジタルスチルカメラにて撮影した室内の画像データをもとに、画像解析装置にて各制御単位毎の人員密度と照度とを測定するとともに、温度センサにてレタン温度を検出する。そして、之等の検出値に基づいて、空気調和装置の送風温度及び送風量と、吹き出し口の開度と、照明装置の光度と、電動ダンパの開度とを調節する制御装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、室内の熱負荷に応じて冷暖房能力を調節する可変風量方式(VAV(variable air volume system)方式)において、室内を複数の空調エリアに分割し、それぞれの空調エリア毎に開口する吸込口から吸い込まれた還気の温度(レタン温度)の測定結果に基づいて、各空調エリアに対応する給気口から給気する給気風量を制御することがある。
【0006】
しかし、吸込口が開口していない空調エリアがある場合、例えば、吸込口が開口する壁に面していない空調エリアがある場合、給気風量の調整精度が低下し、適切な給気風量になっていない虞がある。
【0007】
本発明は、上記事実に鑑み、吸込口が開口していない空調エリアがあった場合の各給気口の給気風量の制御精度を向上させることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様は、室内の所定領域を仮想的に分割して形成された複数の空調エリアの一つに開口する吸込口と、前記吸込口から吸い込まれた還気を温度調整する温度調整手段と、前記温度調整手段 によって温度調整された還気を前記空調エリア毎に給気する給気口と、単位面積当たりの熱負荷が大きい前記空調エリアに対応する前記給気口の給気風量が、単位面積当たりの熱負荷が小さい前記空調エリアに対応する前記給気口の給気風量よりも大きくなるように、前記給気口毎の前記給気風量を制御する制御手段と、を備えた空調システムである。
【0009】
第一態様の空調システムでは、空調エリアの一つに開口する吸込口から吸い込まれた還気を温度調整して空調エリア毎に給気口から給気する。制御手段は、単位面積当たりの熱負荷が大きい空調エリアに対応する給気口の給気風量が、単位面積当たりの熱負荷が小さい空調エリアに対応する給気口の給気風量よりも大きくなるように、給気口毎の給気風量を制御する。よって、吸込口が開口していない空調エリアがあっても各給気口から給気する給気風量の制御精度が向上する。
【0010】
第二態様は、室内の所定領域を仮想的に分割して形成された複数の空調エリアの一つに開口する吸込口と、前記吸込口から吸い込まれた還気を温度調整する温度調整手段と、前記温度調整手段 によって温度調整された還気を前記空調エリア毎に給気する給気口と、前記吸込口から吸い込まれた還気の温度を測定する温度測定手段と、前記空調エリア毎の熱負荷を測定する熱負荷測定手段と、前記温度測定手段の測定結果及び前記熱負荷測定手段の測定結果に基づき、前記給気口毎の給気風量を制御する制御手段と、を備えた空調システムである。
【0011】
第二態様の空調システムでは、空調エリアの一つに開口する吸込口から吸い込まれた還気を温度調整して空調エリア毎に給気口から給気する。温度測定手段が吸込口から吸い込まれた還気の温度を測定する。また、熱負荷測定手段が空調エリア毎の熱負荷を測定する。そして、制御手段が、温度測定手段の測定結果及び熱負荷測定手段の測定結果に基づき、給気口毎の給気風量を制御する。よって、吸込口が開口していない空調エリアがあっても各給気口から給気する給気風量の制御精度が向上する。
【0012】
第三態様は、前記制御手段は、前記温度測定手段の測定結果に基づき、前記所定領域全体の給気風量の総量を求め、前記熱負荷測定手段の測定結果に基づき、前記給気風量の総量を前記空調エリア毎に分配する、第二態様に記載の空調システムである。
【0013】
第三態様の空調システムでは、制御手段は、温度測定手段の測定結果に基づき所定領域全体の給気風量の総量を求め、熱負荷測定手段の測定結果に基づき給気風量の総量を空調エリア毎に分配し、給気口毎の給気風量を制御する。よって、給気口毎に個別に給気風量を求める場合よりも制御が容易である
【0014】
第四態様は、熱負荷は、前記空調エリアの人員数であり、前記熱負荷測定手段は、サーモグラフィカメラを有し、前記制御手段は、前記サーモグラフィカメラの撮影画像における前記空調エリアの閾値以上の温度の画素数に基づいて、前記空調エリアの人員数を求める、第二態様又は第三態様に記載の空調システムである。
【0015】
第四態様の空調システムでは、サーモグラフィカメラの撮影画像における空調エリアの閾値以上の温度の画素数に基づいて、空調エリアの人員数を求め、空調エリア毎の負荷率を求めている。よって、通常のカメラによる撮影画像の画像解析よりも人員数を容易に求めることができる。また、空調エリアの照度が大きく変化する場合及び空調エリアが暗い場合等でも、人員数を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸込口が開口していない空調エリアがあった場合の各給気口の給気風量の制御精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】建物の室内のフィールド部を模式的に示す平面図及び空調システムのブロック図である。
【
図2】
図1の要部の拡大平面図及び空調システムのブロック図である。
【
図3】建物の室内の側面及び空調システムのブロック図である。
【
図4】建物の室内の側面及び空調システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の一実施形態の空調システムについて説明する。
【0019】
[構成]
先ず空調システムの構成及び本空調システムが導入された建物について説明する。
【0020】
図1~
図4に示す本実施形態の建物10は、室内12にフィールド部20とフィールド部20を囲む客席部14(
図3及び
図4参照)とを備えたアリーナである。
【0021】
本実施形態の空調システム100は、建物10の室内12のフィールド部20の空調を制御する。空調システム100は、吸込口30、温度調整手段の一例としての空調機104、給気口32、温度測定手段の一例としての温度測定器160、熱負荷測定手段の一例としてのサーモグラフィカメラ150(
図1、
図2及び
図4参照)及び制御装置200(
図4参照)を有している。
【0022】
図3及び
図4に示すように、吸込口30及び給気口32は、フィールド部20の周囲を囲む壁面22に開口している(
図1及び
図2も参照)。吸込口30から吸い込まれたフィールド部20の還気は、ダクト102を通って空調機104に送られ、空調機104によって温度調整されたのち、ダクト106を通って給気口32に送られる。
【0023】
ダクト102には、温度測定器160が設けられている。また、温度調整された還気を各給気口32に送るダクト106には、給気風量を制御する風量可変装置110が設けられている。本実施形態の風量可変装置110は、ダンパ開度を調整して給気風量を調整する。風量可変装置110のダンパ開度は、0~100%の間で調整可能である。但し、本実施形態では、風量可変装置110のダンパ開度の最低開度は、30%に設定されている。
【0024】
本実施形態では、空調機104によって温度調整されて給気口32から給気される給気温度は、15.5℃である。なお、
図1及び
図2における扇状の線Rは、各給気口32から給気された還気の気流を表している。また、本実施形態では、線Rは、0.15m/sの風速の気流の領域を図示している。
【0025】
図1に示すように、室内12のフィールド部20は、仮想的に複数の空調エリア50A~50Pの16のエリアに分割される。なお、以降、空調エリアを区別しない場合は、符号の後のA~Pを省略し、空調エリア50と記す。
【0026】
各空調エリア50には、それぞれ対応する複数の給気口32によって給気される。本実施形態では、複数の給気口32を給気口群33A~給気口群33Pとする。なお、以降、給気口群を区別しない場合は、符号の後のA~Pを省略し、給気口群33と記す。また、給気口32から給気された気流が対応する空調エリア50内に収まるように、給気口32から給気される気流の上下方向の向きを調整してもよい。
【0027】
なお、
図1では、給気口群33に対して風量可変装置110が一つ設けられているが、これに限定されない。給気口32毎に風量可変装置110が設けられていてもよい。
【0028】
図4に示すように、本実施形態では、サーモグラフィカメラ150は、フィールド部20の上方の天井16に設けられている。また、
図1に示すように、サーモグラフィカメラ150は、空調エリア50A、50B、50E、50Fの境界部分の上方、空調エリア50C、50D、50G、50Hの境界部分の上方、空調エリア50I、50J、50M、50Nの境界部分の上方及び空調エリア50K、50L、50O、50Pの境界部分の上方の合計四か所に設けられている。
【0029】
図4に示すように、制御装置200は、前述の風量可変装置110、コントローラ210及びパソコン220を有して構成されている。また、風量可変装置110には、温度測定器160及びコントローラ210が電気的に接続されている。また、コントローラ210には、パソコン220が電気的に接続され、パソコン220にはサーモグラフィカメラ150が電気的に接続されている。
【0030】
なお、制御装置200を構成するコントローラ210及びパソコン220と、サーモグラフィカメラ150とは、後述する空調エリア群52Aを構成する空調エリア50E及び空調エリア50F、空調エリア群52Bを構成する空調エリア50G及び空調エリア50H、空調エリア群52Cを構成する空調エリア50I及び空調エリア50J、そして空調エリア群52Dを構成する空調エリア50K及び空調エリア50Lの空調に使用される。
【0031】
[空調制御]
次に、空調制御について説明する。
【0032】
まず、フィールド部20の
図1における左右方向の両側部分の空調エリア50A、50B、50C、50D、50M、50N、50O、50Pの空調制御について説明する。
【0033】
これらの空調エリア50A、50B、50C、50D、50M、50N、50O、50Pは、それぞれ吸込口30が開口する壁面22に面している。つまり、空調エリア50毎に吸込口30が開口している。
【0034】
図1及び
図3に示すように、これらの空調エリア50A、50B、50C、50D、50M、50N、50O、50Pの空調は、各空調エリア50の熱負荷に応じて冷房能力を調節する可変風量方式(VAV(variable air volume system)方式)を用いている。具体的には、それぞれの空調エリア50毎に開口する吸込口30から吸い込まれた還気を温度測定器160が還気温度を測定する。そして、風量可変装置110が還気温度に基づいて、給気風量を調整、本実施形態ではダンパ開度を調整し、各空調エリア50に対応する給気口群33A、33B、33C、33D、33M、33N、33O、33Pを構成する給気口32から給気する。なお、この可変風量方式は、一般的な空調方式であるので、詳しい説明は省略する。
【0035】
次に、フィールド部20の
図1における左右方向の中央部分の空調エリア50E、50F、50G、50H、50I、50J、50K、50Lの空調制御について説明する。
【0036】
空調エリア50E、50H、50I、50Lは吸込口30が開口する壁面22に面し、空調エリア50F、50G、50J、50Kは吸込口30が開口する壁面22に面していない。よって、空調エリア50E、50H、50I、50Lには吸込口30が開口し、空調エリア50F、50G、50J、50Kには吸込口30が開口していない。
【0037】
このため、隣接する空調エリア50E及び空調エリア50Fは、空調エリア50Eに開口した吸込口30が吸い込んだ還気が温度調整されたたのち、空調エリア50Eを空調する給気口群33Eを構成する給気口32から給気されると共に空調エリア50Fを空調する給気口群33Fを構成する給気口32から給気される。つまり、隣接する空調エリア50E及び空調エリア50Fは、空調エリア50Eに開口した吸込口30を共用している。
【0038】
同様に、隣接する空調エリア50G及び空調エリア50Hは空調エリア50Hに開口した吸込口30を共用し、隣接する空調エリア50I及び空調エリア50Jは空調エリア50Iに開口した吸込口30を共用し、そして、隣接する空調エリア50K及び空調エリア50Lは空調エリア50Lに開口した吸込口30を共用している。
【0039】
本実施形態では、空調エリア50Eに開口する吸込口30を共有する空調エリア50E及び空調エリア50Fを空調エリア群52Aとし、空調エリア50Hに開口する吸込口30を共有する空調エリア50G及び空調エリア50Hを空調エリア群52Bとし、空調エリア50Iに開口する吸込口30を共有する空調エリア50I及び空調エリア50Jを空調エリア群52Cとし、空調エリア50Lに開口する吸込口30を共有する空調エリア50K及び空調エリア50Lを空調エリア群52Dとする。
【0040】
別の観点から説明すると、所定領域を仮想的に分割して形成された二つの空調エリア50の一つに吸込口30が開口している。つまり、所定領域の一例が、空調エリア群52である。
【0041】
なお、空調エリア群52A、空調エリア群52B、空調エリア群52C及び空調エリア群52Dの空調制御は、同様であるので、空調エリア群52Aを代表して説明する。
【0042】
図2に示す空調エリア群52Aを構成する空調エリア50E及び空調エリア50Fの定員は、それぞれ200人である。そして、空調エリア50Eの人員数が120人で、空調エリア50Fの人員数は200人である。
【0043】
なお、本実施形態では、空調エリア50E及び空調エリア50Fの定員はそれぞれ200人であり、定員200人が満員である場合が空調エリア50E、50Fにおける最大の熱負荷である。よって、空調エリア50E、50Fがそれぞれ必要とする最大給気風量は、200人の熱負荷に対応するように設定されている。言い換えると、風量可変装置110のダンパ開度が100%のとき、定員200人の熱負荷に対応するように設定されている。
【0044】
図2及び
図4に示すように、空調エリア50Eに開口した吸込口30から吸い込まれた還気は、温度測定器160によって還気温度が測定される。そして、還気温度に基づいて、空調エリア50Eを空調する給気口群33E(
図2参照)を構成する給気口32の風量可変装置110と、空調エリア50Fを空調する給気口群33F(
図2参照)を構成する給気口32の風量可変装置110と、がそれぞれダンパ開度を決定する。
【0045】
このとき各風量可変装置110は、空調エリア群52A全体の熱負荷に対応したダンパ開度となる。つまり、還気温度が高いと熱負荷が大きいのでダンパ開度が大きくなり、還気温度が低いと熱負荷が小さいのでダンパ開度が小さくなる。より具体的には、本実施形態では、ダンパ開度は、還気温度と、予め定められている目標設定温度と、の差によって決定される。
【0046】
そして、本実施形態では、空調エリア群52A全体では、人員数320人であるので、320人の熱負荷に対応した給気風量となる。本実施形態では、空調エリア群52A全体の定員400人に対して人員数320人であるので、ダンパ開度は80%に決定される。
【0047】
別の観点から説明すると、還気温度に基づいて、空調エリア群52A全体の熱負荷に応じた空調エリア群52A全体の給気風量の総量が決定される。
【0048】
ここで、本実施形態では、空調エリア50Eと空調エリア50Fとでは、人員数が異なっている。よって、仮に空調エリア50Eを空調する給気口群33Eの給気風量と空調エリア50Fを空調する給気口群33Fの給気風量とのダンパ開度がいずれも80%であった場合、人員数の少ない空調エリア50Eは給気風量が過剰となり、人員数の多い空調エリア50Fは給気風量が不足する。
【0049】
そこで、本実施形態では、天井16に設置したサーモグラフィカメラ150の測定結果に基づいて、パソコン220が各空調エリア50E、50Fの人員数を求めてコントローラ210に送る。コントローラ210は、空調エリア50E、50Fを空調する給気口群33E、33Fの給気口32の風量可変装置110を制御し、給気風量の補正を行なっている。つまり、空調エリア群52A全体の給気風量の総量を、空調エリア50E、50Fの人員数に応じて空調エリア50E、50Fに比例分配している。
【0050】
具体的には、本実施形態では、空調エリア50Eは定員200人に対して人員数は120人であるので給気口群33Eの最大給気風量の60%の給気風量(ダンパー開度を60%)に調整する。同様に、空調エリア50Fに定員200人に対して人員数は200人であるので、給気口群33Fの最大給気風量の100%を給気風量(ダンパー開度を100%)に調整する。
【0051】
このように、還気温度によって空調エリア群52Aの各給気口32の風量可変装置110のダンパ開度が決定され、人員数によって空調エリア50E、50F毎に給気口32のダンパ開度が補正される。
【0052】
別の観点から説明すると、制御装置200は、単位面積当たりの人員数が大きい空調エリア50Eに対応する給気口群33Eの給気風量が、単位面積当たりの人員数が小さい空調エリア50Fに対応する給気口群33Fの給気風量よりも大きくなるように、給気口32毎の給気風量を制御している。
【0053】
次に、サーモグラフィカメラ150による空調エリア50の人員数の求め方について説明する。
【0054】
本実施形態では、サーモグラフィカメラ150に撮影画像における空調エリア50の閾値以上の温度の画素数に基づいて人員数を求めている。画素数から実際の人数を割り出す具体的な方法の一例は、フィールド部20内の床や壁等の所定場所に「基準温度点」を設定し、基準温度点の基準温度よりも所定温度以上高い画素の画素総数を求める。そして、画素総数を1人あたりの画素数で割れば、空調エリア50の人員数が求まる。
【0055】
しかし、イベントにより、1人あたりの画素数が異なる場合がある。例えば、座っている人の画素数は立っている人の画素数よりも多い。よって、本実施形態では、下記の三つもモードで一人当たりの画素数を変更している。
【0056】
Aモード:人が椅子などに着座しているモード
Bモード:人が立ち且つライブ等の人員密度が高いモード
Cモード:人が立ち且つ展示会等の人員密度が低いモード
【0057】
本実施形態では、これらAモード、Bモード及びCモードのいずれかをパソコン220に入力し、モード及び画素総数に基づいて、人員数が求められ、コントローラ210に送られる。
【0058】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0059】
本実施形態の空調システム100では、空調エリア群52A、空調エリア群52B、空調エリア群52C及び空調エリア群52Dにおいては、温度測定器160が測定した還気温度から決定された対応する給気口群33全体の給気風量を、サーモグラフィカメラ150が測定した空調エリア50毎の人員数に基づいて、コントローラ210が風量可変装置110を制御し、各空調エリア50の給気風量を調整する。言い換えると、還気温度によって風量可変装置110のダンパ開度を決定し、人員数によってダンパ開度を補正する。
【0060】
よって、吸込口30が開口していない空調エリア50、本実施形態では50F、50G、50J、50Kがあっても、各給気口32から給気する給気風量の制御精度が向上する。
【0061】
別の観点から説明すると、制御装置200は、空調エリア群52A、52B、52C、50Dにおける単位面積当たりの人員数が大きい空調エリア50に対応する給気口群33の給気風量が、単位面積当たりの人員数が小さい空調エリア50に対応する給気口群33の給気風量よりも大きくなるように、給気口32毎の給気風量を制御している。
【0062】
よって、吸込口30が開口していない空調エリア50があっても各給気口32から給気する給気風量の制御精度が向上する。
【0063】
また、サーモグラフィカメラ150によって空調エリア50の人員数を求めている。よって、通常のカメラによる撮影画像の画像解析よりも人員数を容易に求めることができる。また、空調エリア50の照度が大きく変化する場合及び空調エリア50が暗い場合等でも、人員数を正確に測定することができる。
【0064】
(計算例)
次に、本実施形態の計算例の一つを説明する。
【0065】
空調エリア群52Aにおける空調エリア50E及び空調エリア50Fの定員は、それぞれ200人であるので、それぞれ熱負荷200人分に対応する給気風量の総量が最大の給気風量となる。
【0066】
給気風量は、下記公式から求められる。
Q=3600SH/Cp・ρ(tr-ts)
=SH/0.33(tr-ts)
Q:送風量[m3/h]
SH:室内顕熱負荷[W]
Cp:空気の定圧比熱≒1000[J/(kg・K)]
ρ:空気の密度=1.2kg/m3(標準空気20℃のとき)
tr:還気温度[℃]
ts:給気温度[℃]
【0067】
1人あたりの顕熱を69Wとし、(tr-ts)が10℃の場合、上記公式を用いて、給気風量を算出すると、空調エリア群52A全体の最大給気風量は、
69W/人×400人÷((10℃)×0.33)×2≒8400CMH
になる。
【0068】
空調エリア群52Aには、定員400人に対して合計人員が320人であるので、最大給気風量の80%(
図5のX)、つまりダンパ開度80%である6720CMHが総給気風量になる。
【0069】
本実施形態では、空調エリア50Eの人員数は120人であり、空調エリア50Fの人員数は200人である。よって、空調エリア50Eの給気風量は、120人/200人=0.6(60%)であるので、1-60/80=25%減とする(
図5のA)。空調エリア50Fの給気風量は、200人/200人=1.0(100%)であるので、100/80-1=25%増とする(
図5のB)。
【0070】
このような調整によって、空調エリア50Eの給気風量は人員数に応じた適切な2520CMHになり、空調エリア50Fの給気風量は人員数に応じた適切な4200CMHになる。
【0071】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0072】
上記実施形態では、所定領域の二つの空調エリア50が一つのみ吸込口30を共有していたが、これに限定されない。所定領域の三つ以上の空調エリア50が一つのみ吸込口30を共有していてもよい。別の観点から説明すると、上記実施形態では、吸込口30が開口した一つの空調エリア50と、吸込口30が開口していない一つの空調エリア50と、で空調エリア群を構成していたが、これに限定されない。吸込口30が開口した一つの空調エリア50と、吸込口30が開口していない複数の空調エリア50と、で空調エリア群を構成してもよい。
【0073】
また、例えば、上記実施形態では、イベントにより、1人あたりの画素数のモードを変更したが、これに限定されない。例えば、椅子が設置されている場合など、1人あたりの画素数がイベント等によって変わらない場合は、1人あたりの画素数を固定していてもよい。
【0074】
また、上記実施形態では、サーモグラフィカメラ150で人員数を測定したが、これに限定されない。例えば、撮影画像の顔認証等の画像解析によって、人員数を測定してもよい。或いは、他の方法で人員数を測定しもよい。また、例えば、指定席のみが設置され予め人員数が確定している場合等は、パソコン220に人員数のデータを入力してもよい。
【0075】
また、熱負荷は、人員数のみであったが、これに限定されない。空調エリア50に照明器具等の熱源があった場合、その熱源による熱負荷を加えて、給気口32の給気風量を制御してもよい。
【0076】
また、制御装置による制御は、上記実施形態に限定されない。要は、還気温度と各空調エリアの熱負荷とに基づき、給気口毎の給気風量を制御すればよい。或いは、単位面積当たりの熱負荷が大きい空調エリアに対応する給気口の給気風量が、単位面積当たりの熱負荷が小さい空調エリアに対応する給気口の給気風量よりも大きくなるように、給気口毎の給気風量を制御すればよい。
【0077】
また、実施形態では、空調は冷房であったが、これに限定されない。暖房であってもよい。なお、暖房の場合、人員数が少ない場合に熱負荷が大きくなる。
【0078】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0079】
10 建物
12 室内
30 吸込口
32 給気口
50 空調エリア
52 空調エリア群(所定領域の一例)
104 空調機(温度調整手段の一例)
150 サーモグラフィカメラ(熱負荷測定手段の一例)
160 温度測定器(温度測定手段の一例)
200 制御装置