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特許7434693情報提示方法、情報提示システム、及び情報提示プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】情報提示方法、情報提示システム、及び情報提示プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240214BHJP
【FI】
G06Q50/10
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020534746
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030291
(87)【国際公開番号】W WO2020027281
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2018146219
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【弁理士】
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】亀井 梨奈子
(72)【発明者】
【氏名】佐草 敦
(72)【発明者】
【氏名】榊原 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】大森 基司
(72)【発明者】
【氏名】松尾 三紀子
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-293893(JP,A)
【文献】特開2018-074920(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムにおける情報提示方法であって、
前記情報提示システムのコンピュータが、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得し、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出し、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースから、各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出し、
抽出した前記食品を提示し、
前記ユーザの情報端末に前記指示情報の入力画面を表示し、
前記入力画面は、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを入力するための複数次元の座標空間を示す座標空間画像を含む、
情報提示方法。
【請求項2】
更に、抽出した前記食品について、前記距離を用いて前記ユーザの好みの味に対して相応しい味になる時期を特定し、
前記提示では、更に、特定した前記時期を提示する、
請求項1記載の情報提示方法。
【請求項3】
前記時期は、前記食品の出荷日を基準とする時期を示す、
請求項2記載の情報提示方法。
【請求項4】
前記指示情報は、前記第1特徴量を構成する1以上のパラメータを含む、
請求項1~3のいずれかに記載の情報提示方法。
【請求項5】
前記指示情報は、前記食品の出荷日からの熟成日数を更に含み、
前記抽出では、前記経過情報から前記熟成日数に対応する前記第2特徴量を特定し、特定した前記第2特徴量と前記第1特徴量との距離が前記基準値以下となる食品を抽出する、
請求項1~4のいずれかに記載の情報提示方法。
【請求項6】
前記指示情報は、前記食品の摂取希望日を含み、
前記抽出では、更に、前記経過情報から前記摂取希望日に対応する前記第2特徴量を特定し、特定した前記第2特徴量と前記第1特徴量との距離が前記基準値以下となる食品を抽出する、
請求項1~4のいずれかに記載の情報提示方法。
【請求項7】
前記ユーザが過去に摂取した前記食品及び前記食品に対する評価を示す評価値を対応付けた評価情報と、前記食品の1以上の成分のそれぞれの含有量を示す成分情報とをメモリから取得し、取得した前記評価情報及び前記成分情報から前記ユーザの味の嗜好を示す前記座標空間上の領域を示す嗜好領域を算出し、前記座標空間画像に表示させる、
請求項記載の情報提示方法。
【請求項8】
前記入力画面は、提示された前記食品の銘柄と、提示された前記食品の前記味の特徴量の前記座標空間での位置とを対応付けて表示する、
請求項1又は7記載の情報提示方法。
【請求項9】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムにおける情報提示方法であって、
前記情報提示システムのコンピュータが、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得し、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出し、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースから、各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出し、
抽出した前記食品を提示し、
前記指示情報は、前記ユーザが過去に摂取した前記食品及び前記食品に対する評価を示す評価値を対応付けた評価情報と、前記食品の1以上の成分のそれぞれの含有量を示す成分情報とから算出され、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを座標軸とする座標空間上に表された嗜好領域で構成される、
報提示方法。
【請求項10】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムにおける情報提示方法であって、
前記情報提示システムのコンピュータが、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得し、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出し、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースから、各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出し、
抽出した前記食品を提示し、
前記食品データベースは、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの含有量の代表値の経時的変化を記憶すると共に、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの基準含有量を記憶し、
更に、各前記食品について出荷日と前記出荷日における各前記成分のそれぞれの測定値とを対応付けた測定情報を参照し、各前記食品について、前記基準含有量と前記測定値との差分から前記食品データベースが記憶する含有量を補正し、補正後の含有量を用いて前記経過情報を算出する、
報提示方法。
【請求項11】
前記食品は無濾過ビールである、
請求項1~10のいずれかに記載の情報提示方法。
【請求項12】
前記第1特徴量及び前記第2特徴量は、それぞれ、苦味を示す第1パラメータと味わいを示す第2パラメータとを少なくとも含む、
請求項11記載の情報提示方法。
【請求項13】
前記食品は、発酵食品、又はアルコール飲料である、
請求項1~10のいずれかに記載の情報提示方法。
【請求項14】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムであって、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得する取得部と、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出する特徴量算出部と、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースを記憶するメモリと、
前記食品データベースから各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出する抽出部と、
抽出した前記食品を提示する提示部とを備え、
前記提示部は、前記ユーザの情報端末に前記指示情報の入力画面を表示し、
前記入力画面は、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを入力するための複数次元の座標空間を示す座標空間画像を含む、
情報提示システム。
【請求項15】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムとしてコンピュータを機能させる情報提示プログラムであって、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得する取得部と、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出する特徴量算出部と、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースと、
前記食品データベースから各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出する抽出部と、
抽出した前記食品を提示する提示部としてコンピュータを機能させ、
前記提示部は、前記ユーザの情報端末に前記指示情報の入力画面を表示し、
前記入力画面は、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを入力するための複数次元の座標空間を示す座標空間画像を含む、
情報提示プログラム。
【請求項16】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムであって、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得する取得部と、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出する特徴量算出部と、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースを記憶するメモリと、
前記食品データベースから各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出する抽出部と、
抽出した前記食品を提示する提示部とを備え、
前記指示情報は、前記ユーザが過去に摂取した前記食品及び前記食品に対する評価を示す評価値を対応付けた評価情報と、前記食品の1以上の成分のそれぞれの含有量を示す成分情報とから算出され、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを座標軸とする座標空間上に表された嗜好領域で構成される、
情報提示システム。
【請求項17】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムとしてコンピュータを機能させる情報提示プログラムであって、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得する取得部と、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出する特徴量算出部と、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースと、
前記食品データベースから各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出する抽出部と、
抽出した前記食品を提示する提示部としてコンピュータを機能させ、
前記指示情報は、前記ユーザが過去に摂取した前記食品及び前記食品に対する評価を示す評価値を対応付けた評価情報と、前記食品の1以上の成分のそれぞれの含有量を示す成分情報とから算出され、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを座標軸とする座標空間上に表された嗜好領域で構成される、
情報提示プログラム。
【請求項18】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムであって、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得する取得部と、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出する特徴量算出部と、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースを記憶するメモリと、
前記食品データベースから各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出する抽出部と、
抽出した前記食品を提示する提示部とを備え、
前記食品データベースは、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの含有量の代表値の経時的変化を記憶すると共に、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの基準含有量を記憶し、
前記抽出部は、各前記食品について出荷日と前記出荷日における各前記成分のそれぞれの測定値とを対応付けた測定情報を参照し、各前記食品について、前記基準含有量と前記測定値との差分から前記食品データベースが記憶する含有量を補正し、補正後の含有量を用いて前記経過情報を算出する、
情報提示システム。
【請求項19】
ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムとしてコンピュータを機能させる情報提示プログラムであって、
前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得する取得部と、
前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出する特徴量算出部と、
1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースと、
前記食品データベースから各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出する抽出部と、
抽出した前記食品を提示する提示部としてコンピュータを機能させ、
前記食品データベースは、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの含有量の代表値の経時的変化を記憶すると共に、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの基準含有量を記憶し、
前記抽出部は、各前記食品について出荷日と前記出荷日における各前記成分のそれぞれの測定値とを対応付けた測定情報を参照し、各前記食品について、前記基準含有量と前記測定値との差分から前記食品データベースが記憶する含有量を補正し、補正後の含有量を用いて前記経過情報を算出する、
情報提示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ユーザの好みの食品を提示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット上では、ユーザの好みの味の食品を検索し、ユーザに提示するサービスが行われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、自分が味を知っているワインの銘柄をユーザに入力させ、そのワインの味覚上の位置を味の分布図内に表示し、その位置を基準にそのワインよりも甘いなどのユーザの希望に沿って分布図上の別の箇所をユーザに入力させ、その箇所に対応する味のワインを検索してユーザに通知する技術が開示されている。
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、ワインの熟成による味の変化を考慮に入れてユーザの好みの味のワインの検索が行われていないため、この点で改善の必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-117059号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示は、食品の味の経時的変化を考慮に入れてユーザの好みの味の食品を提示する技術を提供することを目的とする。
【0007】
本開示の一態様に係る情報提示システムは、ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムにおける情報提示方法であって、前記情報提示システムのコンピュータが、前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得し、前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出し、1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースから、各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出し、抽出した前記食品を提示する。
【0008】
本開示によれば、食品の味の経時的変化を考慮に入れてユーザの好みの味の食品を提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施の形態1に係る情報提示システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
図2】味の特徴量を構成する複数のパラメータを座標軸とする座標空間の一例を示す図である。
図3】醸造所DBのデータ構成の一例を示す図である。
図4】評価情報DBののデータ構成の一例を示す図である。
図5図1に示す情報提示システムの処理の一例を示すフローチャートである。
図6図5のS4の抽出処理の詳細を示すフローチャートである。
図7】経過情報の生成の第1例を示すための図である。
図8】経過情報の生成の第2例を示すための図である。
図9図1に示す情報提示システムの処理を纏めた図である。
図10】ユーザ端末に表示される入力画面の一例を示す図である。
図11】実施の形態2における抽出処理の詳細を示すフローチャートである。
図12】実施の形態3における抽出処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0011】
(本開示に至る経緯)
近年、ビールに対する消費者の味の多様性から、従来の大手メーカにより製造されるビールに代えて、小規模醸造所で製造されるクラフトビールが流行している。クラフトビールは日本全国だけでも、約300以上の醸造所があり、そのレシピの種類は1000以上にものぼると言われている。そのため、ユーザが好みの味のクラフトビールを見つけ出すのは容易ではなく、ユーザが好みの味のビールを検索するシステムの構築が望まれている。
【0012】
大手メーカにより製造されるビールは、透明度を確保すると共に残存する酵母による過発酵を防止するために最後に濾過及び/又は加熱殺菌工程が行われて出荷されることが多いが、濾過及び/又は加熱殺菌工程を行うには大規模な設備が必要となる。そのため、クラフトビールは、濾過及び/又は加熱殺菌工程を行わずに出荷されることが多い。しかし、これが逆に、クラフトビール独特の色味及び味を醸しだし、クラフトビールの個性を引き立たせ、消費者に受けている。このような濾過されていないクラフトビールは「無濾過ビール」とも称されている。
【0013】
無濾過ビールは、出荷後も残存する酵母によって樽又はビンの内部で熟成が進むため、味が変化していく。よって、出荷後も適切な環境下で無濾過ビールを管理すると、無濾過ビールの味により大きな深みを与えることが可能となる。そのため、例えば、出荷直後はユーザの好みの味ではなかったものが、出荷後ある日数を経過すると、ユーザの好みの味に変化するようなケースが発生する。逆に、出荷直後はユーザの好みの味であったものが、出荷後ある日数を経過するとユーザの好みの味ではなくなるケースも発生する。更に、出荷後ある日数を経過すると元々ユーザの好みの味であったものがよりユーザの好みの味に近づくケースも発生する。このように、無濾過ビールは、ベースとなる味のみならず、出荷日からの日数も重要な選択要因の1つとなる。
【0014】
しかし、従来、出荷日から経時的に変化する味を考慮に入れてユーザの好みの味の食品を提示する技術は存在していなかった。
【0015】
例えば、上述の特許文献1では、ユーザが分布図上で指定した箇所の味のワインが探索されているが、この探索において、出荷日からのワインの味の変化は何ら考慮されていない。そのため、特許文献1では、味の経時的変化を考慮に入れてユーザの好みのワインを提示することはできないという課題がある。
【0016】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、食品の味の経時的変化を考慮に入れてユーザの好みの味の食品を提示する技術を提供することを目的とする。
【0017】
本開示の一態様に係る情報提示システムは、ユーザの好みの食品を提示する情報提示システムにおける情報提示方法であって、前記情報提示システムのコンピュータが、前記食品に対して前記ユーザの好みの味を示す指示情報を取得し、前記指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出し、1以上の食品のそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する食品データベースから、各食品の前記味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、前記第1特徴量と前記経過情報との距離が基準値以下となる食品を抽出し、抽出した前記食品を提示する。
【0018】
本構成によれば、ユーザの好みの味の特徴を示す第1特徴量と、食品データベースに記憶された各食品についての味の特徴を示す第2特徴量の経時的変化を示す経過情報との距離が基準値以下となる食品が抽出され、抽出した食品がユーザに提示される。そのため、本構成は、食品の味の経時的変化を考慮に入れてユーザの好みの味の食品を提示することができる。
【0019】
上記態様において、更に、抽出した前記食品について、前記距離を用いて前記ユーザの好みの味に対して相応しい味になる時期を特定し、前記提示では、更に、特定した前記時期を提示してもよい。
【0020】
本構成によれば、抽出された食品を摂取するべき時期も合わせてユーザに提示することができる。
【0021】
上記態様において、前記時期は、前記食品の出荷日を基準とする時期を示してもよい。
【0022】
本構成によれば、出荷日からの時期が提示されるため、ユーザはその食品を購入する時期及び購入後に摂取する時期を適切に判断することができる。
【0023】
上記態様において、前記指示情報は、前記第1特徴量を構成する1以上のパラメータを含んでもよい。
【0024】
本構成によれば、指示情報には第1特徴量を構成する1以上のパラメータが含まれるので、ユーザの好みの味を容易に数値化できる。
【0025】
上記態様において、前記指示情報は、前記食品の出荷日からの熟成日数を更に含み、前記抽出では、前記経過情報から前記熟成日数に対応する前記第2特徴量を特定し、特定した前記第2特徴量と前記第1特徴量との距離が前記基準値以下となる食品を抽出してもよい。
【0026】
本構成によれば、ユーザが希望する熟成日数が経過した時点でユーザの好みの味を持つ食品をユーザに提示できる。
【0027】
上記態様において、前記指示情報は、前記食品の摂取希望日を含み、前記抽出では、更に、前記経過情報から前記摂取希望日に対応する前記第2特徴量を特定し、特定した前記第2特徴量と前記第1特徴量との距離が前記基準値以下となる食品を抽出してもよい。
【0028】
本構成によれば、ユーザが食品の摂取を希望する摂取希望日においてユーザの好みの味を持つ食品をユーザに提示できる。
【0029】
上記態様において、前記ユーザの情報端末に前記指示情報の入力画面を表示し、前記入力画面は、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを入力するための複数次元の座標空間を示す座標空間画像を含んでもよい。
【0030】
本構成によれば、第1特徴量を構成する複数のパラメータを入力するための座標空間画像が入力画面に表示されるため、ユーザに対して指示情報を容易に入力させることができる。
【0031】
上記態様において、前記ユーザが過去に摂取した前記食品及び前記食品に対する評価を示す評価値を対応付けた評価情報と、前記食品の1以上の成分のそれぞれの含有量を示す成分情報とをメモリから取得し、取得した前記評価情報及び前記成分情報から前記ユーザの味の嗜好を示す前記座標空間上の領域を示す嗜好領域を算出し、前記座標空間画像に表示させてもよい。
【0032】
本構成によれば、ユーザが過去に摂取した食品とその食品に対するユーザの評価値とを含む評価情報を用いてユーザの味の嗜好を示す嗜好領域が座標空間画像上に表示されるため、ユーザは自分の嗜好領域を参照しながら指示情報をより容易に入力することができる。
【0033】
上記態様において、前記入力画面は、提示された前記食品の銘柄と、提示された前記食品の前記味の特徴量の前記座標空間での位置とを対応付けて表示してもよい。
【0034】
本構成によれば、提示された食品の銘柄が、当該食品の味の特徴量の座標空間での位置と対応付けて表示されるので、ユーザは提示された食品の銘柄及び味の特徴量を容易に認識できる。
【0035】
上記態様において、前記指示情報は、前記ユーザが過去に摂取した前記食品及び前記食品に対する評価を示す評価値を対応付けた評価情報と、前記食品の1以上の成分のそれぞれの含有量を示す成分情報とから算出され、前記第1特徴量を構成する複数のパラメータを座標軸とする座標空間上に表された嗜好領域で構成されてもよい。
【0036】
本構成によれば、ユーザが過去に摂取した食品に対する評価値から生成された嗜好領域が指示情報として取得されるため、希望する味をユーザに入力させることなく、ユーザの嗜好に即した食品を提示できる。
【0037】
上記態様において、前記食品データベースは、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの含有量の代表値の経時的変化を記憶すると共に、各前記食品について1以上の成分のそれぞれの基準含有量を記憶し、更に、各前記食品について前記出荷日と前記出荷日における各前記成分のそれぞれの測定値とを対応付けた測定情報を参照し、各前記食品について、前記基準含有量と前記測定値との差分から前記食品データベースが記憶する含有量を補正し、補正後の含有量を用いて前記経過情報を算出してもよい。
【0038】
本構成によれば、測定情報が示す各食品の成分毎の測定値と、各食品の成分毎の基準含有量(製造レシピ)との差分から食品データベースに記憶された各成分の含有量が補正され、補正後の含有量を用いて経過情報が算出される。そのため、実際に製造された食品の各成分の測定値の製造レシピに対するずれを考慮に入れて、経過情報を補正することができる。そして、補正後の経過情報を用いてユーザの好みの食品が抽出されているため、ユーザの好みの食品をより正確に抽出できる。
【0039】
上記態様において、前記食品は無濾過ビールであってもよい。
【0040】
本構成によれば、出荷日からの味の変化を重要な選択要因の1つとして持つ無濾過ビールについて、出荷日からの味の変化を考慮に入れて、ユーザの好みの味を持つ無濾過ビールをユーザに提示できる。
【0041】
上記態様において、前記第1特徴量及び前記第2特徴量は、それぞれ、苦味を示す第1パラメータと及び味わいを示す第2パラメータとを少なくとも含んでもよい。
【0042】
本構成によれば、無濾過ビールの味を特徴付ける苦味及び味わいを考慮に入れて無濾過ビールの味の特徴量を規定することができる。
【0043】
上記態様において、前記食品は、発酵食品、又はアルコール飲料であってもよい。
【0044】
本構成によれば、チーズ、漬け物、及びヨーグルト等の発酵食品、又はワイン、ウイスキー、及び日本酒等のアルコール食品といった、経時的に味が変化する食品について、味の変化を考慮に入れてユーザの好みの食品をユーザに提示できる。
【0045】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1に係る情報提示システムの全体構成の一例を示すブロック図である。本情報提示システムは、ユーザの好みの食品を提示するシステムである。ここでは、食品としてビールを例に挙げて説明する。ビールの中でも、特に、濾過及び/又は加熱殺菌工程が行われておらず、残存する酵母によって出荷後も熟成が進み、出荷日からの味が経時的に変化する無濾過ビール(以下、単に「ビール」と記述する。)が採用される。但し、これは一例であり、ビール以外の、ワイン及び焼酎といった出荷後に熟成されて味が変化するアルコール飲料であればどのようなものが採用されてもよい。また、食品としては、アルコール飲料に限定されず、チーズ及びヨーグルト等の発酵食品が採用されてもよい。
【0046】
本情報提示システムは、サーバ10及びユーザ端末20を備える。サーバ10は、例えば1以上のコンピュータを含むクラウドサーバで構成されている。ユーザ端末20は、本情報提示システムにおいてサービスの適用を受けるユーザが所持する端末である。ユーザ端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、及び携帯電話等の携帯可能なコンピュータで構成されてもよいし、デスクトップコンピュータ等の据え置き型のコンピュータで構成されてもよい。
【0047】
図1の例では、説明の便宜上、ユーザ端末20は1つしか示されていないが、本開示はこれに限定されず、複数のユーザ端末20で構成されてもよい。この場合、各ユーザ端末20は、それぞれ、所持するユーザのユーザIDによって管理される。サーバ10は、ユーザIDをキーとして、ユーザの氏名等の個人情報及びユーザ端末20の通信アドレスを対応付けた個人情報データベース(図略)をメモリ13に記憶しており、この個人情報データベースを用いて、各ユーザ端末20と通信を行う。
【0048】
サーバ10及びユーザ端末20は、ネットワークNTを介して相互に通信可能に接続されている。ネットワークNTとしては、例えば、インターネット通信網及び携帯電話通信網等のWAN(Wide Area Network)が採用できる。
【0049】
サーバ10は、通信部11、プロセッサ12、及びメモリ13を備える。通信部11は、サーバ10をネットワークNTに接続する通信回路で構成されている。
【0050】
プロセッサ12は、例えば、CPUで構成され、嗜好領域生成部121、取得部122、特徴量算出部123、抽出部124、時期特定部125、及び決定部126を備える。これらのプロセッサ12の構成は、プロセッサ12が、メモリ13に記憶された、コンピュータを本情報提示システムのサーバ10として機能させるプログラムを実行することによって実現されてもよいし、専用の電気回路で構成されてもよい。
【0051】
嗜好領域生成部121は、評価情報DB132に記憶されたユーザが過去に飲んだビールに対する評価を記憶する評価情報と、醸造所DB131に記憶されたユーザにより評価されたビールを構成する1以上の成分それぞれの含有量の測定値とを用いて、ユーザの嗜好領域を生成する。ここで、嗜好領域とは、ビールの味の特徴量を構成する複数のパラメータを座標軸とする座標空間上に表されたユーザの好みの味を示す領域である。嗜好領域生成部121は、生成した嗜好領域を通信部11を用いてユーザ端末20に送信する。これにより、嗜好領域は、ユーザ端末20においてユーザが後述する指示情報を入力するための入力画面G1(図10参照)に表示され、ユーザが指示情報を入力する際の目安として用いられる。嗜好領域の生成の詳細については後述する。
【0052】
取得部122は、ビールに対するユーザの好みの味を示す指示情報を取得する。ここで、指示情報は、ユーザがユーザ端末20の表示部24に表示された入力画面G1(図10参照)を操作することによって入力された情報である。入力された指示情報は、ユーザ端末20からネットワークNTを介してサーバ10に送信され、取得部122によって取得される。図10を参照して、入力画面G1には、苦味及び味わいを2軸とする座標空間画像G11が表示されている。ユーザは、座標空間画像G11に対して好みの味を選択する操作を入力することで指示情報を入力する。したがって、本開示では、指示情報は、苦味及び味わいの2種類のパラメータによって構成される。
【0053】
特徴量算出部123は、指示情報が示す味の特徴を示す第1特徴量を算出する。本実施の形態では、味の特徴量は、図2に示すように苦味及び味わいの2種類のパラメータで構成される。したがって、特徴量算出部123は、取得部122が取得した指示情報を構成する2種類のパラメータの値から第1特徴量を算出する。
【0054】
図2は、味の特徴量を構成する複数のパラメータを座標軸とする座標空間SPの一例を示す図である。図2に示すように座標空間SPは、苦味及び味わいを座標軸とする2軸の座標空間で構成されている。ここでは、複数のパラメータとして、苦味及び味わいの2種類のパラメータが採用されたが、本開示はこれに限定されず、パラメータの種類は3種類以上であってもよいし、1種類であってもよい。例えば、ビールにおいて、苦味及び味わいの他、酸味、モルティーさ、甘み、うまみ、及びホップ感といった指標を用いて味が評価されることもある。したがって、これらの指標の少なくとも1つがパラメータとして採用されてもよい。
【0055】
苦味は、イソアルファ成分に基づいて決定されるIBU(International Bitterness Units)値によって表される。苦味が高いほどイソアルファ成分が増大してIBU値は増大する。本開示では、ビールの醸造所によって銘柄別に提供されるIBU値が苦味を定める数値として採用される。なお、ビールは、経時的にイソアルファ成分が減少し、苦味が少なくなる傾向を一般的に示す。
【0056】
味わいは、ビールの味の深みを表す指標であり、熟成の度合いが高いほど、値が大きくなる。ワインで例えるなら、味わいはフルボディー及びライトボディーといった指標に相当する。味わいは、アルコール度数及びビールに含まれるグルタミン酸ナトリウムの含有量に基づいて決定される。本開示では、ビールの醸造所によって銘柄別に提供されるアルコール度数及びグルタミン酸ナトリウムの含有量に対して、所定の演算を行うことによって算出される数値が味わいを定める数値として採用される。例えば、本開示では、グルタミン酸ナトリウムの含有量及びアルコール度数と、味わいの値との対応関係を予め定めた関数又はルックアップテーブル等を用いて、味わいの値が決定される。なお、ビールの味わいは、アルコール度数とグルタミン酸ナトリウムとの含有量が経時的に変化することによって微妙に変化する。
【0057】
図1に参照を戻す。抽出部124は、1以上のビールのそれぞれについて1以上の成分のそれぞれの含有量の経時的変化を記憶する醸造所DB(データベース)131から味の特徴を示す第2特徴量の経時的な変化を示す経過情報を算出し、第1特徴量が算出した第1特徴量と経過情報とのユークリッド距離が基準値以下となるビールを抽出する。
【0058】
図2を参照し、あるビールの第2特徴量の経過情報が折れ線で示されるグラフGR1で表され、ユーザが入力した指示情報が点P0で表されたとする。なお、点P0はユーザの好みの味を示す第1特徴量を表している。この場合、抽出部124は、グラフGR1と点P0とのユークリッド距離dを算出する。また、抽出部124は、醸造所DB131に記憶された他の全てのビールについてもユークリッド距離dを算出する。そして、抽出部124は、ユークリッド距離dが基準値以下となるビールをユーザの味の好みに近いビールとして抽出する。
【0059】
なお、グラフGR1において、左端の点P11は出荷日における第2特徴量を示し、左端から2、3、4番目の点P12,P13,P14はそれぞれ出荷日から3日後(3d)、1週間後(1w)、及び2週間後(2w)の第2特徴量を示している。醸造所からはグラフGR1において点P11~P14で示されるような代表的なIBU値、アルコール度数、及びグルタミン酸ナトリウムの含有量が提供される。そのため、抽出部124は、これら代表的なIBU値、アルコール度数、及びグルタミン酸ナトリウムの含有量から代表的な第2特徴量を算出する。そして、抽出部124は、代表的な第2特徴量を繋ぐことで、グラフGR1を算出すればよい。
【0060】
図1に参照を戻す。時期特定部125は、抽出部124が抽出したビールについて、ユークリッド距離dを用いて、ユーザの好みの味に対して相応しい味になる時期を特定する。図2を参照し、グラフGR1と点P0とのユークリッド距離dが示す直線とグラフGR1との交点がPxで表されるとすると、時期特定部125は、交点Pxに対応する出荷日からの日数を求める。そして、時期特定部125は、出荷日の日付を発酵テーブルT32(図3参照)から特定し、特定した出荷日に出荷日からの日数を加えた日付(以下、「飲み頃の日付」と記述する。)を前記時期として特定すればよい。なお、点P0とグラフGR1とのユークリッド距離dとは、点P0とグラフGR1との最短距離を示す。
【0061】
なお、抽出部124及び時期特定部125によって抽出されたビール及び各ビールの飲み頃の日付は、抽出結果として、通信部11を用いてユーザ端末20に送信され、ユーザ端末20に表示される。
【0062】
図1に参照を戻す。決定部126は、抽出部124により抽出されたビールのうち、ユーザがユーザ端末20を操作することで選択したビールの選択指示をネットワークNTを介してユーザ端末20から取得すると、当該ビールをユーザの購入対象のビールとして決定する。また、決定部126は、選択指示を取得した場合、該当するビールが購入可能な店舗を検索し、検索によって得られた店舗を含む店舗リストを通信部11を用いてユーザ端末20に送信する。以後、ユーザは、店舗リストに含まれる店舗の中から所望する店舗を訪問する或いは所望する店舗からビールを取り寄せる等してビールを購入する。
【0063】
メモリ13は、例えば半導体メモリで構成され、醸造所DB131(食品DBデータベースの一例)及び評価情報DB132を記憶する。醸造所DB131は、1以上のビールのそれぞれについて各成分の含有量の経時的な変化を予め記憶するデータベースである。図3は、醸造所DB131のデータ構成の一例を示す図である。
【0064】
醸造所DB131は、銘柄テーブルT31と、発酵テーブルT32と、測定テーブルT33とを備える。銘柄テーブルT31は、ビールの銘柄別に作成されたテーブルであり、縦軸に「成分」及び「ターゲット情報」が設定され、横軸に「経過日数」が設定されている。1つの銘柄テーブルT31には、「銘柄ID」が割り付けられている。「銘柄ID」は、ビールの銘柄を識別するための識別子である。銘柄テーブルT31は、ビールの醸造所からサーバ10に提供されたデータに基づいて事前に作成されたものである。
【0065】
「成分」は、ビールを構成する成分を示す。ここでは、「成分」として、苦味を数値化するためのIBU値と、味わいを数値化するためのアルコール度数及びグルタミン酸ナトリウムとが含まれている。但し、これは、一例であり、ビールの味の特徴量として苦味及び味わい以外のパラメータが採用されるのであれば、このパラメータを算出するために必要となる成分が採用されればよい。例えば、「成分」として、ホップ量、糖質、タンパク質、及び脂肪が採用されてもよい。また、成分の含有量としては、含有量そのものではなく、例えば、単位体積(100ml又は1バレル等)あたりの含有量が採用されればよい。
【0066】
「ターゲット情報」とは、各成分の基準含有量を示す。基準含有量とは、目標とする味を再現するために必要となる各成分の含有量を示す。すなわち、「ターゲット情報」は、ビールの製造レシピを示す。ここでは、「ターゲット情報」として、アルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムのそれぞれの基準含有量が採用されている。
【0067】
「経過日数」は、出荷日を基準日とする経過日数を示す。銘柄テーブルT31において、「経過日数」及び「成分」のマトリックスにより表されるセル群C1は、各成分の出荷日からの含有量の経時的変化を記憶している。
【0068】
銘柄テーブルT31の右側には、セル群C1に記憶された各成分の含有量の経時的変化を示すグラフが表示されている。この例では、縦軸に各成分の含有量が設定され、横軸に出荷日からの経過日数が設定されている。この例において、アルコール度数は、ほぼ横ばいであり、経時的に変化していないことが分かる。また、グルタミン酸ナトリウムは、経過日数が経つにつれてわずかに上昇していることが分かる。また、IBU値は、経過日数が経つにつれて漸次減少していることが分かる。したがって、この銘柄のビールは、出荷日からの経過日数が経つにつれて味わいが深まり、苦味が減少していることが推測される。このように、本開示が対象とするビール(無濾過ビール)は、同じ銘柄であっても、出荷日からの経過日数が経つにつれて味が変化する。
【0069】
発酵テーブルT32は、ビールの飲み頃の日付を特定する際に用いられるテーブルであり、1つのテーブルに対して1つの「発酵ID」が割り付けられている。
【0070】
「発酵ID」は、ビールの発酵日を特定するための識別子である。ここで、1つの銘柄のビールについて、複数の発酵IDが付与され、複数の発酵テーブルT32が作成されることもある。本実施の形態では、説明の便宜上、1つの銘柄のビールについて複数の発酵テーブルT32が存在する場合、出荷日が最新の発酵テーブルT32が参照されるものとする。すなわち、本実施の形態では、ある銘柄のビールについて異なる出荷日のビールがある場合、ビールの販売者は出荷日が最新のビールをユーザに提供するものとして説明する。
【0071】
発酵テーブルT32は、「銘柄ID」、「発酵終了日」、及び「出荷日」を対応付けて記憶する。「銘柄ID」は、銘柄テーブルT31に示す銘柄IDに対応している。「発酵終了日」は、該当する銘柄のビールの発酵終了日を示す。発酵終了日とは、ビールの製造過程において発酵工程が終了した日付を指す。「出荷日」は、該当する銘柄のビールの出荷日を示し、醸造所からビールが出荷された日付を示す。
【0072】
測定テーブルT33(成分情報の一例)は、発酵テーブルT32に記憶された銘柄のビールの出荷日における各成分の測定値を示す測定情報を記憶するテーブルである。具体的には、発酵テーブルT32は、1つの発酵テーブルT32に対応して1つの測定テーブルT33が作成され、「成分」及び「測定値」を対応付けて記憶する。各測定テーブルT33には、発酵テーブルT32と対応付けるための「発酵ID」が割り付けられている。
【0073】
ここでは、「成分」として、銘柄テーブルT31と同様、「アルコール度数」、「IBU値」、及び「グルタミン酸ナトリウム」が含まれている。すなわち、測定テーブルT33は、該当する銘柄のビールについて、出荷日において測定された「アルコール度数」、「IBU値」、及び「グルタミン酸ナトリウム」のそれぞれの測定値を記憶する。
【0074】
図4は、評価情報DB132のデータ構成の一例を示す図である。評価情報DB132は、ユーザごとに作成された評価情報テーブルT41によって構成されており、ユーザが過去に飲んだビールに対する評価を示す評価情報をユーザ別且つ時系列に記憶するデータベースである。
【0075】
評価情報DB132は、ユーザがビールを飲んだ際にユーザ端末20を介して送信されるビールに対する評価を示すデータを基に予め作成されたデータベースである。1つの評価情報テーブルT41には1つのユーザID(この例では「U1」)が割り付けられている。また、評価情報テーブルT41は、縦軸に「銘柄ID」、「発酵ID」、「評価」、「コメント」、及び「料理」が割り付けられ、横軸に「飲酒日」が割り付けられている。
【0076】
「飲酒日」は、「2018/7/21/9:00」というように、ユーザがビールを飲んだ日時を示す。「銘柄ID」は、ユーザが飲んだビールの銘柄の識別子を示す。「発酵ID」は、図3に示す発酵テーブルT32と、ユーザが飲んだビールとを対応付けるための識別子を示す。「評価」は、ユーザによるビールの評価値を示す。本開示では、評価値は、1~5の5段階で数値化され、数字が増大するにつれてユーザによる評価が高いことを示す。
【0077】
「コメント」は、ユーザのビールに対するコメントを示す。ここでは、「のどごしが良好」、「コクがある」といったビールの味に関する文字列が「コメント」として採用されている。「料理」は、ユーザがビールを評価した際にそのビールと共に食べた料理を示す。例えば、1列目のレコードには、2018年7月21日の9時に銘柄ID「AA」のビールが「鳥の唐揚げ」と共に飲まれ、そのビールに対して「5」の評価がされた評価情報が記憶されている。
【0078】
図1に参照を戻す。ユーザ端末20は、通信部21、プロセッサ22、操作部23、及び表示部24を備える。通信部21は、ユーザ端末20をネットワークNTに接続する通信回路で構成されている。プロセッサ22は、例えば、CPUで構成され、入力画面生成部221、指示受付部222、結果表示部223、及び選択受付部224を備える。なお、これらのプロセッサ22の構成は、プロセッサ22がメモリ(図略)に記憶された、コンピュータを本情報提示システムのユーザ端末20として機能させるプログラムを実行することで実現されてもよいし、専用の電気回路で構成されてもよい。
【0079】
入力画面生成部221は、ユーザが指示情報を入力するための入力画面G1(図10参照)を生成し、表示部24に表示する。指示受付部222は、入力画面G1を閲覧したユーザが操作部23を操作することによって入力した指示情報を受け付け、通信部21を用いてサーバ10に送信する。
【0080】
結果表示部223は、サーバ10によって抽出されたビールの抽出結果及び飲み頃の日付を通信部21を用いて受信し、表示部24に表示する。選択受付部224は、サーバ10によって抽出されたビールの中からユーザが操作部23を操作することで入力した選択指示を受け付け、通信部21を用いてサーバ10に送信する。
【0081】
操作部23は、例えば、タッチパネル、キーボード、及びマウス等の入力装置で構成され、ユーザが種々の指示を入力するために使用される。表示部24は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成され、入力画面G1等を表示したり、サーバ10により抽出されたビールの銘柄等を表示する。
【0082】
図5は、図1に示す情報提示システムの処理の一例を示すフローチャートである。S1では、嗜好領域生成部121は、評価情報DB132に記憶された評価情報テーブルT41と、醸造所DB131に記憶された測定テーブルT33とを用いて嗜好領域を生成する。嗜好領域の生成の詳細について、以下説明する。
【0083】
まず、嗜好領域生成部121は、該当するユーザのユーザIDが割り付けられた評価情報テーブルT41(図4参照)において、評価値が5以上のビールを抽出する。ここでは、銘柄ID「AA」及び「AB」のビールの評価値が「5」であるため、これらのビールが抽出される。次に、嗜好領域生成部121は、銘柄ID「AA」及び「AB」に対応する発酵ID「AA_1」及び「AB_1」をキーにして測定テーブルT33を特定する。次に、嗜好領域生成部121は、特定した測定テーブルT33から両ビールのそれぞれの成分(アルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウム)の測定値を取得する。
【0084】
次に、嗜好領域生成部121は、両ビールのそれぞれのIBU値から両ビールのそれぞれの苦味の値を決定すると共に、両ビールのそれぞれの「アルコール度数」及び「グルタミン酸ナトリウム」の含有量から両ビールのそれぞれの味わいの値を決定する。
【0085】
次に、嗜好領域生成部121は、両ビールのそれぞれの苦味及び味わいの値に対応する2つの点を両ビールの味の特徴量を示す点として座標空間SPにプロットする。次に、嗜好領域生成部121は、プロットした2つの点を通る又は含む閉曲線を設定し、この閉曲線によって取り囲まれた領域を嗜好領域として生成する。この例ではプロットされた点は2つなので、例えば、2点を焦点とする楕円が閉曲線として採用されればよい。プロットされた点が3つ以上であれば、3点を曲線補間することで閉曲線が設定されればよい。プロットされた点が1つの場合は、1点を中心とする所定半径の円の円周が閉曲線として設定されればよい。
【0086】
これにより、図10の座標空間画像G11に示されるような閉曲線D11によって取り囲まれる領域D1が嗜好領域として設定される。なお、嗜好領域生成部121は、上述した手法で設定した閉曲線D11の外側にこの閉曲線D11を取り囲む別の閉曲線D12を設定し、領域D1に対して閉曲線D11及び閉曲線D12によって取り囲まれる領域D2を加えた領域(D1+D2)を嗜好領域として設定してもよい。この場合、図10の座標空間画像G11に示されるように閉曲線D11,D12を用いた嗜好領域が生成され、あたかも等高線を用いたかのように嗜好領域を表現することができる。
【0087】
この場合、嗜好領域生成部121は、閉曲線D11で取り囲まれる領域D1の色を閉曲線D11及び閉曲線D12で挟まれる領域D2の色よりも濃い色に設定してもよい。これにより、領域(D1+D2)の中心ほどユーザの味の好みが高いことを表現できる。
【0088】
上記説明では、嗜好領域生成部121は、評価情報テーブルT41から評価値「5」のビールを抽出したが、本開示はこれに限定されず、評価値が所定値(例えば、「4」又は「3」)以上のビールを抽出してもよい。この場合、嗜好領域生成部121は、座標空間SPにおいてプロットした点を評価値別に通る閉曲線又は含む閉曲線によって取り囲まれる領域を嗜好領域として設定してもよい。また、評価情報テーブルT41において評価値「5」のビールが存在しない場合、評価情報テーブルT41が記憶する評価値のうち評価値が最高のビールが評価情報テーブルT41から抽出されればよい。
【0089】
更に、上記説明では、嗜好領域生成部121は、測定テーブルT33を参照することで、評価値「5」のビールの成分の含有量を特定したが、本開示はこれに限定されず、銘柄テーブルT31の「ターゲット情報」のフィールドに記憶された基準含有量を用いて評価値「5」のビールの成分の含有量を特定してもよい。この場合、「ターゲット情報」フィールドに記憶された基準含有量が成分情報の一例となる。
【0090】
図5に参照を戻す。S2では、嗜好領域生成部121は、S1で生成した嗜好領域を示す情報を通信部11を用いてユーザ端末20に送信する。
【0091】
S21では、ユーザ端末20の通信部21は嗜好領域を示す情報を受信する。S22では、入力画面生成部221は、S21で受信した嗜好領域を示す情報を用いて入力画面G1に嗜好領域を表示する。これにより、図10で示される嗜好領域1001等が入力画面G1上に表示される。
【0092】
S23では、ユーザ端末20の指示受付部222は、ユーザから好みの味を示す指示情報の入力を受け付ける。S24では、ユーザ端末20の指示受付部222は、S23で受け付けられた指示情報を通信部21を用いてサーバ10に送信する。
【0093】
S3では、サーバ10の通信部11は、指示情報を受信する。S4では、サーバ10のプロセッサ12は抽出処理を実行し、ユーザの好みのビールとそのビールの飲み頃の日付とを含む抽出結果を決定する。抽出処理の詳細は図6を用いて後述する。
【0094】
S5では、サーバ10の通信部11は、S4で決定された抽出結果をユーザ端末20に送信する。S25では、ユーザ端末20の通信部21は、抽出結果を受信する。
【0095】
S26では、ユーザ端末20の結果表示部223は、抽出結果を表示部24に表示する。S27では、ユーザ端末20の選択受付部224は、抽出結果で示されたビールに対するユーザの選択指示を操作部23を介して受け付ける。S28では、ユーザ端末20の選択受付部224は、S27で受け付けられた選択指示を通信部21を用いてサーバ10に送信する。
【0096】
S6では、サーバ10の通信部11は、選択指示を受信する。S7では、サーバ10の決定部126は、選択指示が示すビールを購入対象のビールとして決定する。
【0097】
図6は、図5のS4の抽出処理の詳細を示すフローチャートである。S401では、サーバ10の抽出部124は、銘柄テーブルT31(図3参照)を用いて醸造所DB131が記憶する各ビールの経過情報を生成する。
【0098】
図7は、経過情報の生成の第1例を示すための図である。第1例は醸造所DB131において1つの銘柄テーブルT31(図3参照)が記憶されている銘柄のビールに対して適用される手法である。この場合、抽出部124は、図3に示す銘柄テーブルT31に示すセル群C1の各列の3つのセルに記憶された3つの含有量から各列に対応する苦味の値及び味わいの値を算出して、各列に対応する第2特徴量を得る。そして、抽出部124は、算出した第2特徴量を座標空間SPにプロットする。これにより、図7に示すように、第2特徴量を示す点P11、点P12、点P13、及び点P14が座標空間SPにプロットされる。点P11~点P14は、それぞれ出荷日から0日目、3日目、1週目、及び2週目の第2特徴量を示している。
【0099】
次に、抽出部124は、点P11~P14を繋ぐ折れ線からなるグラフGR1を座標空間SPに設定し、グラフGR1に経過日数をプロットすることで経過情報を生成する。以上により第1例に示す経過情報が生成される。なお、図7の例では、4つの点しかプロットされていないが、実際には、セル群C1の各列に対応する個数の点が座標空間SPにプロットされる。
【0100】
図8は、経過情報の生成の第2例を示すための図である。第2例は醸造所DB131において複数の銘柄テーブルT31(図3参照)が記憶されている銘柄のビールに対して適用される手法である。ここでは、ある銘柄につきk(kは2以上の整数)個の銘柄テーブルT31があるとする。この場合、抽出部124は、第1例と同様、銘柄テーブルT31に示すセル群C1の各列に対応する第2特徴量を算出して座標空間SPをプロットしていくが、銘柄テーブルT31がk個あるため、第1例に対してk倍の点が座標空間SPにプロットされることになる。ここで、プロットされた点をPmとする。次に、抽出部124は、座標空間SPにプロットされた点Pmの回帰直線又は回帰曲線を求め、得られた回帰直線又は回帰曲線に経過日数をプロットすることで経過情報を生成する。図8の例では、グラフGR2で示される回帰曲線が経過情報として生成されている。ここで、抽出部124は、点Pmを経過日数ごとに分類し、分類した点Pmの苦味又は味わいの平均値を求め、その平均値のグラフGR2上の位置に対応する経過日数をプロットすればよい。1日目を例に挙げると、抽出部124は、1日目を構成するk個の点Pmの苦味又は味わいの平均値を算出し、その平均値を持つグラフGR2上の点に経過日数「1日目」をプロットすればよい。
【0101】
そして、抽出部124は、銘柄テーブルT31に記憶されている全銘柄のビールのそれぞれについて、図7又は図8に示す処理を適用して、全銘柄のそれぞれの経過情報を生成する。
【0102】
図6に参照を戻す。S402では、サーバ10の特徴量算出部123は、S3で受信した指示情報から第1特徴量を算出する。S403では、抽出部124は、S402で算出した第1特徴量とS401で生成した全銘柄の経過情報のそれぞれとのユークリッド距離dを算出する。図7に示す経過情報の生成の第1例が採用された場合のユークリッド距離dの算出手法は、図2で説明した手法と同じである。
【0103】
図8に示す経過情報の生成の第2例が採用された場合も、抽出部124は、第1例の場合と同様、経過情報と第1特徴量を示す点P0との最短距離を示すユークリッド距離dを算出すればよい。
【0104】
図6に参照を戻す。S404では、抽出部124は、S403で算出したユークリッド距離dのうち、基準値以下のビールを抽出する。ここで、基準値としては、ユーザが指示情報によって指定した好みの味に近いとみなせる予め定められた値が採用できる。
【0105】
S405では、時期特定部125は、S404で抽出されたビールについて飲み頃の日付を求める。図7の例では、交点Pxが出荷日から1週目の点P13と出荷日から2週目の点P14との間に位置する。この場合、時期特定部125は、点P13及び点P14間の距離に対する点P13及び交点Px間の距離の比を求め、その比で1週目と2週目との差である7日を乗じることで、交点Pxに対応する経過日数を算出する。例えば、交点Pxが点P13及び点P14の中点にあったとすると、点P13を基準とする交点Pxに対応する経過日数が4日(7×0.5=3.5の繰り上げ)となるので、交点Pxの経過日数は、1週間+4日=11日と算出される。そして、時期特定部125は、点P11に対応する出荷日を発酵テーブルT32から特定し、その出荷日に交点Pxの経過日数を加えることで、飲み頃の日付を算出すればよい。例えば、出荷日が2018年7月20日であったとすると、この日付に11日を加えた2018年7月31日が飲み頃の日付として算出される。なお、抽出部124は、S404で抽出された全銘柄のビールについて飲み頃の日付を算出する。
【0106】
S406では、抽出部124は、S404で抽出したビールとそのビールの飲み頃の日付とを対応付けた情報を抽出結果として生成する。例えば、銘柄ID「AA」及び銘柄ID「AB」のビールが抽出され、それぞれの飲み頃の日付が「2018年7月31日」、「2018年7月30日」であったとすると、抽出結果には、銘柄ID「AA」及び飲み頃の日付「2018年7月31日」が対応付けられたデータと、銘柄ID「AB」及び飲み頃の日付「2018年7月30日」が対応付けられたデータとが含まれることになる。なお、抽出結果には銘柄ID「AA」の他、ビールの銘柄及び醸造所等のビールに関する情報が含まれていてもよい。S406が終了すると処理は、図5のS5に進む。
【0107】
図9は、図1に示す情報提示システムの処理を纏めた図である。まず、図9の1段目では、評価情報テーブルT41に蓄積された評価情報からユーザの味に対する嗜好領域が算出されている。図9の1段目の例では2つの嗜好領域901,902が算出されている。このように、本実施の形態では、嗜好領域生成部121は、座標空間SPに多数の点がプロットされた場合、複数の嗜好領域を生成してもよい。
【0108】
具体的には、嗜好領域生成部121は、まず、図5のS1で説明したように、座標空間SPに評価値が所定値以上のビールの特徴量を示す点Pnをプロットする。次に、嗜好領域生成部121は、例えば、最長距離法及び群距離法等の公知のクラスタリング手法を用いてプロットされた点Pnのクラスタリングを試みる。そして、プロットされた点Pnが複数のクラスタに分割された場合、嗜好領域生成部121は、各クラスタを構成する点Pnについて、図5のS1で説明した手法を適用して各クラスタに対応する嗜好領域を生成すればよい。
【0109】
図9の2段目では、嗜好領域901,902がユーザ端末20に表示されている。図9の3段目では、ユーザは、嗜好領域901,902を参照しながら、好みの味を示す座標空間SP上の位置を指定することで指示情報を入力する。ここでは、嗜好領域902内において中心の少し上方の点P0が指定されている。
【0110】
図9の4段目では、点P0と醸造所DB131に記憶された各ビールの経過情報のそれぞれとのユークリッド距離dが算出され、ユークリッド距離dが基準値以下のビールが抽出され、抽出結果がユーザ端末20に表示されている。ここでは、3つの領域91,92,93内に経過情報が位置する3つのビールが抽出され、ユーザ端末20に表示されている。
【0111】
図10は、ユーザ端末20に表示される入力画面G1~G4の一例を示す図である。まず、ユーザ端末20には入力画面G1が表示される。この入力画面G1は、ユーザが本情報提示システムにおけるサービスを受けるためのアプリケーションをユーザ端末20上で起動させ、サーバ10にログインした直後に表示される画面である。
【0112】
入力画面G1は、座標空間SPを示す座標空間画像G11と、銘柄表示欄G12とを備えている。座標空間画像G11は、縦軸に苦味、横軸に味わいが設定された座標空間SPを表示する画像である。この例では、座標空間画像G11には、3つの嗜好領域1001,1002,1003が表示されている。これらの嗜好領域1001~1003は、ログインしたユーザの評価情報テーブルT41に基づいて生成された領域である。嗜好領域1001~1003を表示することで、ユーザに対して指示情報を入力する際の目安を提供することができ、指示情報の入力が容易になる。
【0113】
楕円で示される複数の領域1101は、醸造所DB131に記憶されている各銘柄のビールの経過情報の座標空間SP上での分布を示している。ここで、全ての経過情報が含まれるように領域1101を表示してしまうと、領域1101が過度に大きく表示されて、視認性が低下する可能性がある。そこで、領域1101は、出荷日から数日(例えば、3日又は4日)までの経過情報を含む大きさで表示されてもよい。
【0114】
銘柄表示欄G12には醸造所DB131に記憶された各ビールの銘柄を示すアイコンAC1が表示される。ここで、銘柄表示欄G12の中央に表示されたアイコンAC1は、線L1によって領域1101と対応付けて表示されている。このとき、中央に表示されたアイコンAC1に対応する領域1101は他の領域1101に比べて濃い色で表示されている。これらにより、ユーザは、アイコンAC1で示す銘柄のビールの座標空間SP上での味の分布を容易に認識できる。
【0115】
銘柄表示欄G12を右方向E1にスライドする操作が入力されると、入力画面生成部221は、銘柄表示欄G12を右方向にスクロール表示させる。一方、銘柄表示欄G12を左方向E2にスライドする操作が入力されると、入力画面生成部221は、銘柄表示欄G12を左方向にスクロール表示させる。これにより、他の銘柄のアイコンAC1が銘柄表示欄G12に表示される。この場合、銘柄表示欄G12の中央に表示された他の銘柄のアイコンAC1も線L1によって領域1101と対応付けて表示される。そのため、他の銘柄のビールについてもユーザは座標空間SP上での味の分布を容易に認識することができる。
【0116】
入力画面G1において入力欄R1又は編集ボタンB11を選択する操作(例えば、タップ又はクリック)が入力されると、指示受付部222は、表示部24に入力画面G2を表示させる。
【0117】
入力画面G2は、ユーザに好みの味を示す指示情報を入力させる画面である。入力画面G2は、日付指定欄R10、味わい入力欄R21、苦味入力欄R22、及び「探す」と記載された検索ボタンB24を備えている。
【0118】
日付指定欄R10は、ユーザにビールの摂取を希望する希望日付を入力させる欄である。日付指定欄R10に日付が入力された場合のビールの抽出手法については実施の形態3で説明し、ここでは、説明を省略する。なお、日付の入力を希望しない場合、ユーザはトグルスイッチB21をオフにすればよい。
【0119】
味わい入力欄R21は、ユーザに好みの味の値を入力させる欄である。味わい入力欄R21は、横長のスライドバーPAを備えている。スライドバーPAは、味わいの範囲の下限値を入力するためのスライドボタンT11と、味わいの範囲の上限値を入力するためのスライドボタンT12とを備えている。
【0120】
スライドボタンT11及びスライドボタンT12とは、それぞれ、味わいの指定可能範囲を示す0~100の値が割り付けられたゲージR212上でスライド可能に構成されている。ユーザはスライドボタンT11をゲージR212上でスライドさせて適当な位置に位置決めすることにより、好みの味の値の下限値を入力する。また、ユーザはスライドボタンT12をゲージR212上でスライドさせて適当な位置に位置決めすることにより、好みの味の値の上限値を入力する。したがって、スライドボタンT11とスライドボタンT12との幅が味わいの範囲となる。この幅はゲージR212に比べて太い線で表示されている。これにより、ユーザはこの幅から自身が入力した味わいの範囲を容易に認識することができる。
【0121】
スライドバーPAの上側には、味わいの範囲を示す数値表示欄R211が設けられている。数値表示欄R211は、ユーザがスライドボタンT11をスライドさせることで入力した味わいの値の下限値と、ユーザがスライドボタンT12をスライドさせることで入力した味わいの値の上限値とを表示する。
【0122】
スライドボタンT11がスライドされると、それに連動して数値表示欄R211の下限値が変動する。また、スライドボタンT12がスライドされると、それに連動して数値表示欄R211の上限値が変動する。この例では、スライドボタンT11が味わいの値「46」の位置に位置決めされ、スライドボタンT12が味わいの値「67」の位置に位置決めされている。そのため、数値表示欄R211には、「46-67」と表示されている。これにより、ユーザは自身が入力した好みの味の範囲を数値を通じてより容易に認識することができる。
【0123】
苦味入力欄R22も、味わい入力欄R21と同様、スライドバーPA及び数値表示欄R211を備えている。ユーザは、スライドボタンT11及びスライドボタンT12をスライドさせることで、苦味の範囲を入力する。この例では、苦味の範囲として「36-60」が入力されている。
【0124】
このように、ユーザは、味わい入力欄R21と苦味入力欄R22とにおいて味わいの範囲と苦味の範囲とを入力することで指示情報を入力する。
【0125】
なお、ユーザは味わい及び苦味のいずれか一方の入力を省くことも可能である。味わいの入力を省く場合、ユーザはトグルスイッチB22をオフにすればよい。また、苦味の入力を省く場合、ユーザはトグルスイッチB23をオフにすればよい。
【0126】
検索ボタンB24は、好み味のビールをユーザが検索する際に選択されるボタンである。検索ボタンB24が選択されると、指示受付部222は、ユーザが入力した指示情報をサーバ10に送信する。また、検索ボタンB24が選択されると結果表示部223は、入力画面G3を表示部24に表示する。
【0127】
入力画面G3は、サーバ10による抽出結果を表示する画面である。入力画面G3は、座標空間画像G31及び銘柄表示欄G32を備えている。
【0128】
座標空間画像G31は、座標空間画像G11と同様、座標空間SPを表示する画像である。但し、入力画面G1の座標空間画像G11が醸造所DB131に記憶された全銘柄のビールの領域1101を表示するのに対して、入力画面G3の座標空間画像G31は、サーバ10から送信された抽出結果に含まれる銘柄のビールの領域1101のみが表示されている。ここでは、4つのビールが抽出されたため、4つの領域1101が表示されている。また、座標空間画像G31には、入力画面G2で入力された味わいの範囲を示す縦長の帯と苦味の範囲を示す横長の帯とが表示されている。したがって、縦長の帯と横長の帯とがクロスする四角形の領域がユーザが入力した好みの味の範囲を示すことになる。
【0129】
この場合、サーバ10において、特徴量算出部123はクロスする四角形の領域の中心点を第1特徴量として設定し、抽出部124は設定されたこの中心点に対してユークリッド距離dが基準値以下のビールを抽出すればよい。
【0130】
また、味わいの入力が省略された場合、サーバ10において、特徴量算出部123は、苦味の範囲を示す横長の帯の中央を通る横線を第1特徴量として設定し、抽出部124は設定された横線に対してユークリッド距離dが基準値以下のビールを抽出すればよい。
【0131】
また、苦味の入力が省略された場合、サーバ10において、特徴量算出部123は、味わいの範囲を示す縦長の帯の中央を通る縦線を第1特徴量として設定し、抽出部124は設定された縦線に対してユークリッド距離dが基準値以下のビールを抽出すればよい。
【0132】
銘柄表示欄G32をスライドさせる操作が入力されると、選択受付部224は、抽出結果に含まれる銘柄のビールの中から別の銘柄のビールのアイコンAC1を表示させる。これにより、ユーザは抽出された全てのビールの銘柄を確認することができる。
【0133】
また、銘柄表示欄G32の中央に表示されたアイコンAC1は線L1によって領域1101と対応付けて表示されている。これにより、ユーザは抽出された全てのビールについて味が分布する領域1101を確認することができる。また、座標空間画像G31にはユーザが入力した好みの味の範囲が表示されているので、ユーザは、この好みの味の範囲と領域1101とを対比しながら、購入するビールを選択することができる。
【0134】
なお、入力画面G3の表示後に再検索したいと考えたユーザにより入力欄R1又は編集ボタンB11を選択する操作が入力されると、指示受付部222は、表示部24に入力画面G2を表示させればよい。
【0135】
入力画面G3においてある領域1101を選択する操作(例えば、タップ又はクリック)が入力されると、結果表示部223は、入力画面G4を表示部24に表示させる。入力画面G4には、選択された領域1101を中心に座標空間画像G31を拡大させ座標空間画像G41が表示されている。
【0136】
座標空間画像G41には、選択された領域1101に含まれる経過情報を示すグラフGC1が表示されている。グラフGC1において黒色の点は日付を示している。この例では、左から1つ目の点が本日における第2特徴量を示し、2つ目の点は翌日における第2特徴量を示すというように、第2特徴量が日付と対応付けて表示されている。更に、左から3つ目の点は飲み頃の日付であるため、他の点よりも大きく表示されており、且つ、吹き出しマークM1が近傍に表示されている。吹き出しマークM1内には、「おすすめタイミング 2018/06/20」とのメッセージが表示されている。これにより、ユーザは該当するビールの飲み頃の日付が本日から2日後の2018年6月20日であることを容易に認識できる。
【0137】
また、入力画面G4には、選択された領域1101に対応するビールの詳細情報を示す銘柄表示欄G42が表示されている。ここでは、銘柄表示欄G42には、銘柄「門真IPA」と、第2特徴量である味わいの値「65」及び苦味の値「45」と、この銘柄のビールに対する説明が表示されている。更に、銘柄表示欄G42は、店舗検索ボタンB41が表示されている。店舗検索ボタンB41は、該当するビールを購入する際にユーザにより選択されるボタンである。
【0138】
店舗検索ボタンB41がユーザにより選択される操作が入力されると、選択受付部224は、選択指示をサーバ10に送信し、サーバ10から送信された該当するビールを購入するための店舗リスト(図略)を表示部24に表示させる。ユーザは店舗リストに一覧表示された店舗の中から好みの店舗を選択すると、その店舗のホームページが表示部24に表示される。そして、ユーザは、その店舗を実際に訪問する又はその店舗からビールを取り寄せる等してビールを購入する。なお、店舗リストには該当するビールを提供する飲食店が含まれてもよい。
【0139】
以上説明したように実施の形態1に係る情報提示システムによれば、ユーザの好みの味の特徴を示す第1特徴量と、醸造所DB131に記憶された各ビールについての味の特徴を示す第2特徴量の経時的変化を示す経過情報とのユークリッド距離dが基準値以下となる食品が抽出され、抽出した食品がユーザに提示される。そのため、本構成は、ビールの味の経時的変化を考慮に入れてユーザの好みの味のビールを提示することができる。
【0140】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る情報提示システムは、ユーザに好みの熟成日数を入力させ、その熟成日数を更に考慮に入れてユーザの好みのビールを抽出するものである。熟成日数とは、出荷日からの経過日数を示す。無濾過ビールは出荷日からの経過日数が経つにつれて熟成の度合いが進むので、本実施の形態では、出荷日からの経過日数を熟成日数と称している。
【0141】
なお、本実施の形態において実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。また、本実施の形態において、情報提示システムの構成は実施の形態1と同じであるため、図1を用いるものとする。また、本実施の形態において、情報提示システムのメインルーチンは実施の形態1と同じであるため、図5を用いるものとする。但し、図5において、S24で送信される指示情報には、ユーザが入力した熟成日数が含まれているものとする。
【0142】
入力画面G2において、「More」と記載されたその他の表示欄R23を選択する操作がユーザにより入力されると、指示受付部222は、入力画面G2に熟成日数の入力欄(図略)を表示する。この熟成日数の入力欄に希望する熟成日数がユーザにより入力されると、指示受付部222は、その熟成日数を指示情報に含めてサーバ10に送信する。
【0143】
図11は、実施の形態2における抽出処理の詳細を示すフローチャートである。なお、図11のフローにおいて図6と同一の処理には同一のステップ番号を付している。
【0144】
S402に続くS1101では、抽出部124は、熟成日数に対応する第2特徴量を抽出する。図7を参照して、例えば、熟成日数として「3日」が入力されたとすると、抽出部124は、経過情報を示すグラフGR1の中から「3日」が対応付けられた第2特徴量を抽出する。そして、抽出部124は抽出した第2特徴量を示す点P12と、第1特徴量を示す点P0とのユークリッド距離dを算出する。
【0145】
抽出部124は、醸造所DB131に記憶された全てのビールについても同様にして出荷日から3日後の第2特徴量を抽出し、抽出した第2特徴量を示す点と点P0とのユークリッド距離dを算出する。そして、抽出部124は、ユークリッド距離dが基準値以下のビールをユーザの好みのビールとして抽出し、抽出結果をユーザ端末20に送信する。
【0146】
このように実施の形態2によれば、ユーザが希望する熟成日数が経過した時点でユーザの好みの味を持つビールをユーザに提示できる。
【0147】
(実施の形態3)
実施の形態3は、ユーザにビールを飲む希望日付を入力させ、希望日付を考慮に入れてユーザの好みの味のビールを抽出するものである。希望日付とは、例えば「2018年6月20日」というように、ユーザがビールの摂取を希望する日付である。
【0148】
なお、本実施の形態において実施の形態1、2と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。また、本実施の形態においては、情報提示システムの構成及びメインルーチンはそれぞれ図1及び図5を用いるものとする。但し、図5において、S24で送信される指示情報には、ユーザが入力した希望日付が含まれているものとする。
【0149】
入力画面G2において、日付指定欄R10にユーザにより希望日付が入力されると、指示受付部222は、その希望日付を指示情報に含めてサーバ10に送信する。図12は、実施の形態3における抽出処理の詳細を示すフローチャートである。なお、図12のフローにおいて図6と同一の処理には同一のステップ番号を付している。
【0150】
S402に続くS1201では、抽出部124は、希望日付に対応する第2特徴量を抽出する。図7を参照して、例えば、希望日付として「2018年6月20日」が入力されたとする。この場合、抽出部124は、希望日付に対応する出荷日の経過日数を特定する。具体的には、抽出部124は、発酵テーブルT32から出荷日を特定し、その出荷日と希望日付の差分日数を経過日数として算出する。例えば、出荷日が「2018年6月17日」であるとすると、3日が経過日数として算出される。そして、抽出部124は、経過情報を示すグラフGR1の中から経過日数「3日」が対応付けられた第2特徴量を抽出し、第2特徴量を示す点P12と、第1特徴量を示す点P0とのユークリッド距離dを算出する。
【0151】
抽出部124は、醸造所DB131に記憶された全てのビールについても同様にして希望日付と出荷日との差分日数から第2特徴量を示す点と点P0とのユークリッド距離dを算出する。そして、抽出部124は、ユークリッド距離dが基準値以下のビールをユーザの好みのビールとして抽出し、抽出結果をユーザ端末20に送信する。
【0152】
このように実施の形態3によれば、ユーザがビールの摂取を希望する希望日付においてユーザの好みの味を持つビールをユーザに提示できる。
【0153】
(実施の形態4)
実施の形態4は、銘柄テーブルT31の「ターゲット情報」のフィールドに記憶された各成分の基準含有量と、測定テーブルT33に記憶された各成分の測定値との差分から、経過情報が実際に出荷されたビールの第2特徴量を示すように経過情報を補正するものである。
【0154】
なお、本実施の形態において実施の形態1~3と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。また、本実施の形態においては、情報提示システムの構成は実施の形態1と同じであるため図1を用いるものとする。
【0155】
本実施の形態では、抽出部124は、以下のようにして経過情報を補正する。まず、抽出部124は、対象となるビールの銘柄テーブルT31の「ターゲット情報」からアルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムのそれぞれの基準含有量を取得する。
【0156】
次に、抽出部124は、「銘柄ID」をキーに発酵テーブルT32を参照して対象となるビールの「発酵ID」を特定し、特定した「発酵ID」をキーに対象となるビールの測定テーブルT33を特定する。次に、抽出部124は、特定した測定テーブルT33からアルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムのそれぞれの測定値を取得する。
【0157】
次に、抽出部124は、アルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムのそれぞれの測定値から、銘柄テーブルT31から取得したアルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムのそれぞれの基準含有量を差し引くことにより差分を算出する。ここで、アルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムのそれぞれの差分を、それぞれ、Δθ1、Δθ2、Δθ3とおく。
【0158】
次に、抽出部124は、セル群C1に記憶されたアルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムのそれぞれの含有量にΔθ1,Δθ2,Δθ3を加える。これにより、図3の銘柄テーブルT31の右側のグラフに示されるように、セル群C1に記憶されたアルコール度数、IBU値、及びグルタミン酸ナトリウムの経時的変化を示すグラフが、それぞれ、縦軸の方向にΔθ1,Δθ2,Δθ3だけオフセットされる。
【0159】
次に、抽出部124はセル群C1に記憶されたΔθ1,Δθ2,Δθ3が加えられた各含有量を用いて、味わいの値及び苦味の値を算出し、第2特徴量の経時的変化を示す経過情報を生成する。
【0160】
製造工程においては、ターゲット情報を参照して、各成分の基準含有量が決定されてビールが製造されるが、製造後に各成分の含有量を測定すると、何らかの要因によって、ターゲット情報通りに含有量が含まれないケースが発生する。また、醸造所では、単にターゲット情報が示す各成分の含有量通りに成分を配合するのではなく、季節、温度、及び湿度等の環境要因、並びに原料となるホップ及び麦の品質等の品質要因によって各成分の含有量が調整されることもある。
【0161】
また、銘柄テーブルT31のセル群C1を構成する各セルには、ターゲット情報に示される基準含有量通りに製造されたビールに対応する各成分の含有量が記憶されている。すなわち、セル群C1を構成する各セルには、含有量の代表値が記憶されている。ここで、代表値としては、例えば、コンピュータシミュレーションを用いて予測された予測値が採用されてもよいし、基準含有量通りに製造されたビールの各成分の測定値及びその測定値の平均値が採用されてもよい。そのため、セル群C1が記憶する含有量は、実際に出荷されたビールの含有量と必ずしも一致するわけではない。
【0162】
そこで、本実施の形態では経過情報を出荷されたビールの第2特徴量の経時的変化を示すように補正する。これにより、実際に製造されたビールの各成分の測定量の製造レシピに対するずれを考慮に入れて経過情報を補正することができる。そして、補正後の経過情報を用いてユーザの好みのビールが抽出されているため、ユーザの好みのビールをより正確に抽出できる。
【0163】
(変形例)
(1)上記実施の形態では、ユーザに指示情報を入力させるものとして説明したが、本開示はこれに限定されず、指示情報の入力は省かれてもよい。この場合、ユーザは、入力画面G2においてトグルスイッチB22,B23の両方をオフにすればよい。また、この場合、特徴量算出部123は、評価情報テーブルT41から生成された嗜好領域の中心点を第1特徴量として設定すればよい。そして、抽出部124はこの中心点に対するユークリッド距離dが基準値以下のビールを抽出すればよい。なお、図10に示すように複数の嗜好領域1001,1002,1003が生成された場合、特徴量算出部123は、嗜好領域1001,1002,1003のそれぞれの中心点を第1特徴量として設定すればよい。そして、抽出部124は、これらの中心点のうちいずれかの中心点に対するユークリッド距離dが基準値以下のビールをユーザの好みのビールとして抽出すればよい。
【0164】
(2)ユーザは、図10の入力画面G2において検索ボタンB24を選択してビールの検索依頼を行う際、検索対象のビールが何杯目に飲みたいビールであるかの順序情報を入力してもよい。例えば、今回の食事において、3杯目のビールを飲もうとした時に検索依頼を入力するケースが考えられる。この場合、入力画面G2に順序情報の入力欄を設け、その入力欄に順序情報として「3」をユーザに入力させる。入力された順序情報は指示情報に含まれてサーバ10に送信される。なお、このケースにおいては、ユーザは味わい及び苦味を入力しないものとする。
【0165】
すると、サーバ10において、特徴量算出部123は、順序情報が示す順序において評価値が所定値(例えば「5」)のビールを評価情報テーブルT41から抽出する。ここで、特徴量算出部123は、評価情報テーブルT41の「飲酒日」のフィールドに記憶された日時から、評価情報テーブルT41を1回の食事毎に区分する。なお、特徴量算出部123は、飲酒日に記憶された日時が一定時間以内にある列同士を1つの区画として区分すればよい。次に、特徴量算出部123は、例えば順序情報として「3」が入力されたとすると、各区分において3番目に飲まれたビールを特定する。次に、特徴量算出部123は、3番目に飲まれたビールにおいて、評価値が所定値以上のビールを抽出し、抽出したビールの成分情報からそのビールの苦味及び味わいの値を特定して、ユーザの嗜好領域を生成する。そして、特徴量算出部123は、生成した嗜好領域の中心点を第1特徴量として設定する。そして、抽出部124は、第1特徴量に対してユークリッド距離dが基準値以下のビールをユーザが3番目に飲むのに相応しいビールとして抽出し、ユーザ端末20に提示すればよい。
【0166】
(3)ユーザは、図10の入力画面G2において検索ボタンB24を選択してビールの検索依頼を行う際、入力画面G2に現在食べている料理を入力させてもよい。この場合、入力画面G2に料理を入力するための入力欄を設ければよい。この入力欄に例えば「鳥のからあげ」が入力されたとすると、この情報が指示情報に含まれてサーバ10に送信される。なお、このケースにおいては、ユーザは味わい及び苦味を入力しないものとする。
【0167】
すると、サーバ10の特徴量算出部123は、評価情報テーブルT41から「料理」として「鳥のからあげ」が記憶された列を抽出し、抽出した列に対応するビールのうち、評価値が所定値以上のビールを抽出する。そして、特徴量算出部123は、抽出したビールの成分情報からそのビールの味わい及び苦味の値を特定し、ユーザの嗜好領域を生成する。以下、上記の変形例(2)と同様にユーザの好みのビールが抽出され、ユーザに提示される。本変形例によれば、ユーザが現在食べている料理又はこれから食べようと考えている料理と相性の良いビールをユーザに提示できる。
【0168】
(4)決定部126は、店舗リストを生成する際、該当するビールが購入可能な店舗に加えて、ユーザからの位置も考慮に入れて店舗を抽出してもよい。この場合、決定部126は、ユーザ端末20のGPSセンサの検出値を取得することで、ユーザの現在位置を特定する。そして、決定部126は、ユーザの現在位置に対して所定距離範囲内にある店舗を抽出して店舗リストに含めればよい。
【0169】
(5)本情報提示システムは、飲食店でのメニュー作成に利用されてもよい。この場合、飲食店の店員はユーザ端末20を用いて店舗が取り扱うビールの銘柄を入力して、サーバ10に送信する。すると、サーバ10のプロセッサ12は、入力された銘柄のビールのうち醸造所DBに記憶されている銘柄のビールを抽出し、抽出したビールについて銘柄テーブルT31を参照し、本日の味の特徴量を算出する。そして、プロセッサ12は、入力されたビールの銘柄と、本日の味の特徴量とが対応付けられたビールリストをユーザ端末20に送信する。
【0170】
ビールリストを受信したユーザ端末20は、ビールリストから特徴量が示されたメニューを作成し、印刷指示を受け付けると、作成したメニューをプリントアウトする。これにより、飲食店は各ビールについての本日の味が示されたメニューを得ることができる。ここで、作成されたメニューには、例えば、図10の入力画面G1に示すように、各ビールの本日の味の特徴量がプロットされた座標空間画像G11が含まれる。
【0171】
(6)図3に示す銘柄テーブルT31は1つの銘柄のビールについて、例えば、季節毎に複数作成されてもよい。この場合、抽出部124は、現在の季節に対応する銘柄テーブルT31を用いて経過情報を算出すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本開示は、食品の味の経時的変化を考慮に入れてユーザの好みの食品を提示できるため、ユーザに好みの食品を提示するサービスにおいて有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12