IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

特許7434703トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20240214BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240214BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240214BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240214BHJP
   C08L 47/00 20060101ALI20240214BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08L9/00
C08K3/04
C08K3/36
C08L47/00
B60C1/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018147630
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020023600
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-23
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 顕哉
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-059140(JP,A)
【文献】特開2001-233994(JP,A)
【文献】特開2008-143484(JP,A)
【文献】特表2014-518912(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104144(WO,A1)
【文献】特開平09-077912(JP,A)
【文献】特開2006-143804(JP,A)
【文献】特開2015-229701(JP,A)
【文献】特開2008-088236(JP,A)
【文献】特開昭62-048739(JP,A)
【文献】特開平07-179669(JP,A)
【文献】特開2005-008804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分、樹脂、並びに、カーボンブラックを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記イソプレン系ゴムの含有量が10~60質量%、前記スチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以下であり、
前記樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15~40質量部であり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が80~150m/gであり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、5~50質量部であり、
tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下であり、
前記tanδピーク温度は、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で温度-100~100℃のtanδの温度分散曲線を測定し、温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度であり、
前記ぜい化温度は、JIS K 6261-2:2017に準拠して測定される50%衝撃ぜい化温度であるトレッド用ゴム組成物。
【請求項2】
ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分、軟化点が80℃以上である樹脂、シリカ、並びに、カーボンブラックを含み、
前記樹脂が、テルペン系樹脂、α-メチルスチレン系樹脂及びジシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以下であり、
前記樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15~40質量部であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、80~200質量部であり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が80~150m/gであり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~50質量部であり、
tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下であり、
前記tanδピーク温度は、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で温度-100~100℃のtanδの温度分散曲線を測定し、温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度であり、
前記ぜい化温度は、JIS K 6261-2:2017に準拠して測定される50%衝撃ぜい化温度であるトレッド用ゴム組成物。
【請求項3】
ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分、軟化点が80℃以上である樹脂、シリカ、並びに、カーボンブラックを含み、
前記樹脂が、テルペン系樹脂、α-メチルスチレン系樹脂及びジシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が40~60質量%であり、
前記樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15~40質量部であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、80~200質量部であり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が80~150m/gであり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、5~50質量部であり、
tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下であり、
前記tanδピーク温度は、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で温度-100~100℃のtanδの温度分散曲線を測定し、温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度であり、
前記ぜい化温度は、JIS K 6261-2:2017に準拠して測定される50%衝撃ぜい化温度であるトレッド用ゴム組成物。
【請求項4】
ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分、樹脂、シリカ、並びに、カーボンブラックを含み、
前記樹脂が、テルペン系樹脂、α-メチルスチレン系樹脂及びジシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が60質量%以下であり、
前記樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15~40質量部であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、80~200質量部であり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が80~150m /gであり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、10~50質量部であり、
tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下であり、
前記tanδピーク温度は、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で温度-100~100℃のtanδの温度分散曲線を測定し、温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度であり、
前記ぜい化温度は、JIS K 6261-2:2017に準拠して測定される50%衝撃ぜい化温度であるトレッド用ゴム組成物(ただし、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムを含むトレッド用ゴム組成物を除く)
【請求項5】
ブタジエンゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分、樹脂、シリカ、並びに、カーボンブラックを含み、
前記樹脂が、テルペン系樹脂、α-メチルスチレン系樹脂及びジシクロペンタジエン系樹脂からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が40~60質量%であり、
前記樹脂の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、15~40質量部であり、
前記シリカの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、80~200質量部であり、
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が80~150m /gであり、
前記カーボンブラックの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して、5~50質量部であり、
tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下であり、
前記tanδピーク温度は、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で温度-100~100℃のtanδの温度分散曲線を測定し、温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度であり、
前記ぜい化温度は、JIS K 6261-2:2017に準拠して測定される50%衝撃ぜい化温度であるトレッド用ゴム組成物(ただし、希土類元素系触媒を用いて合成されたブタジエンゴムを含むトレッド用ゴム組成物を除く)
【請求項6】
tanδピーク温度が-8℃以上である請求項1~のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
tanδピーク温度が-6℃以上である請求項1~のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項8】
ぜい化温度が-42℃以下である請求項1~のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項9】
ぜい化温度が-45℃以下である請求項1~のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項10】
ゴム成分100質量%中スチレンブタジエンゴムを20~60質量%含有する請求項1~9のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項11】
更に、イソプレン系ゴムを含有する請求項2~5のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載のゴム組成物で少なくとも一部が構成されたトレッドを有する空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物及び空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの重要な性能として、走行時の安全性向上を確保するために、良好なウェットグリップ性能が求められている。ウェットグリップ性能を向上させるためには一般的にタイヤトレッドゴムのヒステリシスロスを上げる手法が知られており、そのためにゴムの温度依存性カーブにおけるtanδピーク温度を高くする手法がよく知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-056979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、tanδピーク温度を高くする手法を採用することにより、ゴムのぜい化温度が必然的に高くなるため、特に冬期のタイヤ保管時にトレッドの表面や溝底にゴムの脆性破壊によるクラックを生じる懸念があることが本発明者の検討の結果明らかとなった。
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能をバランスよく改善できるトレッド用ゴム組成物、及び、該ゴム組成物で少なくとも一部が構成されたトレッドを有する空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、本発明者が見出した上記新たな課題について鋭意検討した結果、ウェットグリップ性能を高めるためにtanδピーク温度を特定値以上とし、耐低温ぜい化性能を高めるためにぜい化温度を特定値以下とすることにより、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能をバランスよく改善できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、スチレンブタジエンゴムを含み、
tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下であるトレッド用ゴム組成物に関する。
【0006】
前記ゴム組成物は、tanδピーク温度が-8℃以上であることが好ましく、tanδピーク温度が-6℃以上であることがより好ましい。
【0007】
前記ゴム組成物は、ぜい化温度が-42℃以下であることが好ましく、ぜい化温度が-45℃以下であることがより好ましい。
【0008】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中スチレンブタジエンゴムを20~90質量%含有することが好ましい。
【0009】
前記ゴム組成物は、ブタジエンゴム及び/又はイソプレン系ゴムを含有することが好ましい。
【0010】
本発明はまた、上記ゴム組成物で少なくとも一部が構成されたトレッドを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スチレンブタジエンゴムを含み、tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下であるトレッド用ゴム組成物であるので、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能をバランスよく改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のトレッド用ゴム組成物は、スチレンブタジエンゴムを含み、tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下である。これにより、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能をバランスよく改善できる。
【0013】
上記ゴム組成物は前述の効果が得られるが、このような作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のように推察される。
tanδピーク温度は、高いほど良好なウェットグリップ性能が得られる。しかしながら、tanδピーク温度が高いとぜい化温度も高くなり、耐低温ぜい化性能が低下するおそれがある。
一方で、ぜい化温度が低いほど良好な耐低温ぜい化性能が得られる。しかしながら、ぜい化温度が低いほどtanδピーク温度も低くなり、ウェットグリップ性能が低下するおそれがある。
このように、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能は背反性能であるため、両者をバランスよく改善することは困難であった。
本発明者が、この点について、鋭意検討した結果、スチレンブタジエンゴムを含むゴム組成物において、tanδピーク温度を特定温度以上、ぜい化温度を特定温度以下とすることにより、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能をバランスよく改善できることを見出した。
すなわち、ヒステリシスロスが高く、tanδピーク温度を高くできるスチレンブタジエンゴムを配合したゴム組成物において、tanδピーク温度、ぜい化温度を共に特定の温度範囲内とすることにより、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能をより好適にバランスよく改善できる。
なお、tanδピーク温度、ぜい化温度は、加硫後のゴム組成物を分析することで得られる値である。
【0014】
上記ゴム組成物(加硫後)のtanδピーク温度は、良好なウェットグリップ性能が得られるという理由から、-10℃以上であり、好ましくは-8℃以上、より好ましくは-6℃以上であり、上限は特に限定されないが、良好な耐低温ぜい化性能が得られるという理由から、好ましくは0℃以下、より好ましくは-2℃以下、更に好ましくは-4℃以下である。
なお、tanδピーク温度は、後述する実施例に記載の測定方法により得られる値である。
また、本明細書において、tanδピーク温度は、粘弾性試験を行って得られたtanδの温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度を意味する。
【0015】
上記ゴム組成物(加硫後)のぜい化温度は、良好な耐低温ぜい化性能が得られるという理由から、-40℃以下であり、好ましくは-42℃以下、より好ましくは-45℃以下、更に好ましくは-50℃以下、特に好ましくは-55℃以下であり、下限は特に限定されないが、良好なウェットグリップ性能が得られるという理由から、好ましくは-65℃以上、より好ましくは-60℃以上である。
なお、本明細書において、ぜい化温度とは、JIS K 6261-2:2017の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-低温特性の求め方-第2部:低温衝撃ぜい化試験」に準拠して測定される「50%衝撃ぜい化温度」を意味する。
【0016】
なお、ゴム組成物のtanδピーク温度、ぜい化温度は、ゴム組成物に配合される薬品(特に、ゴム成分、樹脂)の種類や量によって調整することが可能であり、例えば、tanδピーク温度は、軟化点の高い樹脂を配合すると高くなる傾向があり、ぜい化温度は、ガラス転移温度の低いゴム成分(例えば、ブタジエンゴム、イソプレン系ゴム)を配合すると低くなる傾向があり、ぜい化温度は、充填材を増量すると高くなる傾向があり、tanδピーク温度は、充填材としてシリカを使用すると高くなる傾向、ぜい化温度は、軟化剤を増量すると低くなる傾向がある。
【0017】
より具体的に説明すると、加硫後のゴム組成物において、tanδピーク温度、ぜい化温度は、後述するゴム成分、樹脂を適宜選択すること、これらの配合量を適宜調整すること、等により付与することが可能である。具体的には、軟化点の高い樹脂を配合することによりtanδピーク温度を高くしつつ、ぜい化温度が高くなりすぎないように、ガラス転移温度の低いゴム成分(例えば、ブタジエンゴム、イソプレン系ゴム)を配合し、両者(軟化点の高い樹脂、ガラス転移温度の低いゴム成分)の配合量を適宜調整することにより、tanδピーク温度、ぜい化温度を調整すればよい。特に、軟化点の高い樹脂、ガラス転移温度の低いゴム成分、スチレンブタジエンゴムの配合量を適宜調整することにより、より好適にtanδピーク温度、ぜい化温度を調整できる。
【0018】
以下、使用可能な薬品について説明する。
【0019】
上記ゴム組成物は、ゴム成分として、スチレンブタジエンゴム(SBR)を含む。
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合SBR(E-SBR)、溶液重合SBR(S-SBR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ここで、ゴム成分は、重量平均分子量(Mw)が15万以上が好ましく、より好ましくは35万以上のゴムである。Mwの上限は特に限定されないが、好ましくは400万以下、より好ましくは300万以下である。
【0021】
SBRのスチレン量、ビニル量は、大きいほど、ゴム組成物のtanδピーク温度は大きくなる傾向がある。
【0022】
SBRのスチレン量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0023】
SBRのビニル量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0024】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)、アミド基が好ましい。
【0026】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用することができる。
【0027】
ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、特に好ましくは65質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0028】
SBR以外に使用できるゴム成分としては、例えば、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、BRがより好ましい。
【0029】
BRとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
BRのシス量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは97質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0031】
BRは、非変性BR、変性BRのいずれでもよい。
変性BRとしては、前述の官能基が導入された変性BRが挙げられる。好ましい態様は変性SBRの場合と同様である。
【0032】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0033】
ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0034】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、天然ゴムが好ましい。
【0035】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0036】
ゴム成分100質量%中のBR、イソプレン系ゴムの合計含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
【0037】
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
また、シス量(シス-1,4-結合ブタジエン単位量)、ビニル量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定でき、スチレン量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0038】
上記ゴム組成物は、樹脂を含有することが好ましい。
【0039】
上記樹脂の軟化点は、tanδピーク温度を大きくでき、良好なウェットグリップ性能が得られるという理由から、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、120℃以上が更に好ましく、130℃以上が特に好ましく、140℃以上が最も好ましい。また、軟化点の上限は特に限定されないが、180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる傾向がある。
なお、樹脂の軟化点は、JIS K 6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0040】
上記樹脂としては、特に制限されないが、例えば、クマロン系樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂(DCPD系樹脂)、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、p-t-ブチルフェノールアセチレン樹脂、アクリル系樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、樹脂は、水添されていてもよい。なかでも、テルペン系樹脂、スチレン系樹脂、DCPD系樹脂が好ましく、スチレン系樹脂がより好ましい。
【0041】
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を構成モノマーとして用いたポリマーであり、スチレン系単量体を主成分(50質量%以上)として重合させたポリマー等が挙げられる。具体的には、スチレン系単量体(スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-フェニルスチレン、o-クロロスチレン、m-クロロスチレン、p-クロロスチレン等)をそれぞれ単独で重合した単独重合体、2種以上のスチレン系単量体を共重合した共重合体の他、スチレン系単量体及びこれと共重合し得る他の単量体のコポリマーも挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記他の単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのアクリロニトリル類、アクリル類、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸類、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチルなどの不飽和カルボン酸エステル類、クロロプレン、ブタジエンイソプレンなどのジエン類、1-ブテン、1-ペンテンのようなオレフィン類;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物;等が例示できる。
スチレン系樹脂としては、なかでも、α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレン単独重合体、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体等)が好ましい。
【0042】
テルペン系樹脂としては、テルペン化合物に由来する単位を有する樹脂であれば特に限定されず、例えば、ポリテルペン(テルペン化合物を重合して得られる樹脂)、テルペン芳香族樹脂(テルペン化合物と芳香族化合物とを共重合して得られる樹脂)、芳香族変性テルペン樹脂(テルペン樹脂を芳香族化合物で変性して得られる樹脂)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ポリテルペンが好ましい。
【0043】
上記テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。上記テルペン化合物としてはまた、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマール酸、ピマール酸、イソピマール酸などの樹脂酸(ロジン酸)なども挙げられる。すなわち、上記テルペン系樹脂には、松脂を加工することにより得られるロジン酸を主成分とするロジン系樹脂も含まれる。なお、ロジン系樹脂としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジンなどの天然産のロジン樹脂(重合ロジン)の他、マレイン酸変性ロジン樹脂、ロジン変性フェノール樹脂などの変性ロジン樹脂、ロジングリセリンエステルなどのロジンエステル、ロジン樹脂を不均化することによって得られる不均化ロジン樹脂などが挙げられる。
【0044】
上記芳香族化合物としては、芳香環を有する化合物であれば特に限定されないが、例えば、フェノール、アルキルフェノール、アルコキシフェノール、不飽和炭化水素基含有フェノールなどのフェノール化合物;ナフトール、アルキルナフトール、アルコキシナフトール、不飽和炭化水素基含有ナフトールなどのナフトール化合物;スチレン、アルキルスチレン、アルコキシスチレン、不飽和炭化水素基含有スチレンなどのスチレン誘導体などが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0045】
上記樹脂としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0046】
樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは7質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは45質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0047】
上記ゴム組成物は、シリカを含んでもよい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上であり、また、好ましくは300m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0049】
シリカとしては、例えば、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。
【0050】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、特に好ましくは90質量部以上であり、また、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0051】
上記ゴム組成物において、充填剤(補強性充填剤)100質量%中のシリカの含有量は、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは85質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%であってもよい。
【0052】
上記ゴム組成物がシリカを含有する場合、更にシランカップリング剤を含有することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販されているものとしては、例えば、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、スルフィド系シランカップリング剤、メルカプト系シランカップリング剤が好ましく、メルカプト系シランカップリング剤がより好ましい。
【0053】
特に好適なメルカプト系シランカップリング剤として、下記式(S1)で表わされるシランカップリング剤や、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が挙げられる。なかでも、効果がより良好に得られる傾向がある点から、下記式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤が好ましい。
【化1】
(式中、R1001は-Cl、-Br、-OR1006、-O(O=)CR1006、-ON=CR10061007、-ON=CR10061007、-NR10061007及び-(OSiR10061007(OSiR100610071008)から選択される一価の基(R1006、R1007及びR1008は同一でも異なっていても良く、各々水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基であり、hは平均値が1~4である。)であり、R1002はR1001、水素原子又は炭素数1~18の一価の炭化水素基、R1003はR1001、R1002、水素原子又は-[O(R1009O)0.5-基(R1009は炭素数1~18のアルキレン基、jは1~4の整数である。)、R1004は炭素数1~18の二価の炭化水素基、R1005は炭素数1~18の一価の炭化水素基を示し、x、y及びzは、x+y+2z=3、0≦x≦3、0≦y≦2、0≦z≦1の関係を満たす数である。)
【化2】
【化3】
(式中、xは0以上の整数、yは1以上の整数である。Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
【0054】
式(S1)において、R1005、R1006、R1007及びR1008はそれぞれ独立に、炭素数1~18の直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。また、R1002が炭素数1~18の一価の炭化水素基である場合は、直鎖状、環状もしくは分枝状のアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基からなる群から選択される基であることが好ましい。R1009は直鎖状、環状又は分枝状のアルキレン基であることが好ましく、特に直鎖状のものが好ましい。R1004は例えば炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数5~18のシクロアルキレン基、炭素数6~18のシクロアルキルアルキレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基を挙げることができる。アルキレン基及びアルケニレン基は、直鎖状及び分枝状のいずれであってもよく、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基は、環上に低級アルキル基等の官能基を有していてもよい。このR1004としては、炭素数1~6のアルキレン基が好ましく、特に直鎖状アルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。
【0055】
式(S1)におけるR1002、R1005、R1006、R1007及びR1008の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ビニル基、プロぺニル基、アリル基、ヘキセニル基、オクテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
式(S1)におけるR1009の例として、直鎖状アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、n-ブチレン基、ヘキシレン基等が挙げられ、分枝状アルキレン基としては、イソプロピレン基、イソブチレン基、2-メチルプロピレン基等が挙げられる。
【0056】
式(S1)で表されるシランカップリング剤の具体例としては、3-ヘキサノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリエトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリエトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリエトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリエトキシシラン、3-ヘキサノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-デカノイルチオプロピルトリメトキシシラン、3-ラウロイルチオプロピルトリメトキシシラン、2-ヘキサノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-オクタノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-デカノイルチオエチルトリメトキシシラン、2-ラウロイルチオエチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらは、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なかでも、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランが特に好ましい。
【0057】
式(I)で示される結合単位Aと下記式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは1モル%以上、より好ましくは5モル%以上、更に好ましくは10モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す式(I)、(II)と対応するユニットを形成していればよい。
【0058】
のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などがあげられる。
【0059】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などがあげられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1~12である。
【0060】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニル基としては、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、1-オクテニル基などがあげられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0061】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などがあげられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0062】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1~30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などがあげられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1~12である。
【0063】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1-プロペニレン基、2-プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、1-ペンテニレン基、2-ペンテニレン基、1-ヘキセニレン基、2-ヘキセニレン基、1-オクテニレン基などがあげられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0064】
の分岐若しくは非分岐の炭素数2~30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などがあげられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2~12である。
【0065】
式(I)で示される結合単位Aと式(II)で示される結合単位Bとを含むシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3~300の範囲が好ましい。
【0066】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0067】
上記ゴム組成物は、カーボンブラックを含んでもよい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは100m/g以上であり、また、好ましくは150m/g以下、より好ましくは130m/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0069】
カーボンブラックとしては、例えば、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。
【0070】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより好適に得られる。
【0071】
上記ゴム組成物は、オイルを含んでもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、軽度抽出溶媒和物(MES(mild extraction solvates))、処理留出物芳香族系抽出物(TDAE(treated distillate aromatic extracts)などを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果が良好に得られるという理由から、プロセスオイルが好ましく、MES、TDAEが好ましい。
【0072】
オイルとしては、例えば、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。
【0073】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0074】
上記ゴム組成物は、ワックスを含んでもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックスなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、石油系ワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
【0075】
ワックスとしては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0076】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0077】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましい。
【0078】
老化防止剤としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0079】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0080】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0081】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0082】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0083】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0084】
上記ゴム組成物は硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0085】
硫黄としては、例えば、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0086】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下、更に好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0087】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、効果がより好適に得られるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤が好ましく、スルフェンアミド系加硫促進剤、グアニジン系加硫促進剤を併用することが好ましい。
【0088】
加硫促進剤としては、例えば、川口化学(株)、大内新興化学(株)製等の製品を使用できる。
【0089】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0090】
上記ゴム組成物には、前記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカなどの充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0091】
上記ゴム組成物は、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0092】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは80~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0093】
上記ゴム組成物は、タイヤのトレッドに使用する。キャップトレッド及びベーストレッドで構成されるトレッドの場合、キャップトレッドに好適に使用可能である。
【0094】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドの各タイヤ部材の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0095】
なお、上記空気入りタイヤのトレッドは、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0096】
上記空気入りタイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、二輪車用タイヤ、競技用タイヤ、スタッドレスタイヤ(冬用タイヤ)、オールシーズンタイヤ、ランフラットタイヤ、航空機用タイヤ、鉱山用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例
【0097】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0098】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:ALANXEO社製のBuna VSL5025(スチレン量:25質量%、ビニル量:50質量%、ガラス転移温度:-29℃)
SBR2:ALANXEO社製のBuna VSL-2525(スチレン量:25質量%、ビニル量:25質量%、ガラス転移温度:-49℃)
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス量:97質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(NSA:114m /g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウルトラシルVN3(NSA:175m/g)
シランカップリング剤:Momentive社製のNXT-Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
レジンA:KRATON社製のsylvatraxx4401(α-メチルスチレン系樹脂、軟化点:85℃)
レジンB:KRATON社製のSA120(α-メチルスチレン系樹脂、軟化点:120℃)
レジンC:KRATON 社製のsylvatraxx 4150(ポリテルペン、軟化点:150℃)
レジンD:KRATON 社製のsylvatraxx 4120(ポリテルペン、軟化点:120℃)
レジンE:エクソンモビール社製のPR120(水添DCPD樹脂、軟化点:120℃)
TDAEオイル:H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル)
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸「椿」
酸化亜鉛:ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛3種
老化防止剤:大内新興化学(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエース0355
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
【0099】
(実施例及び比較例)
表1に示す配合処方にしたがい、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で10分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をキャップトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて未加硫タイヤを作製し、170℃の条件下で10分間プレス加硫して試験用タイヤ(サイズ:195/65R15)を得た。
【0100】
得られた加硫ゴム組成物及び試験用タイヤを下記により評価した。結果を表1に示す。
【0101】
(ぜい化温度)
得られた加硫ゴム組成物を用いて、JIS K 6261-2:2017の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-低温特性の求め方-第2部:低温衝撃ぜい化試験」に準拠して「50%衝撃ぜい化温度」を測定した。
【0102】
(tanδピーク温度)
得られた加硫ゴム組成物から、所定サイズの試験片を作製し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で温度-100~100℃のtanδの温度分散曲線を測定し、温度分布曲線における最も大きいtanδ値に対応する温度をtanδピーク温度とした。
【0103】
(ウェットグリップ性能)
得られた試験用タイヤを車両(国産FF2000cc)の全輪に装着して、湿潤アスファルト路面にて初速度100km/hからの制動距離を求め、比較例1を100としたときの指数で表示した(ウェットスキッド性能指数)。指数が大きいほど、制動距離が短く、ウェットスキッド性能(ウェットグリップ性能)に優れることを示す。
【0104】
(耐低温ぜい化性能)
得られた試験用タイヤを-40℃の保管庫で3カ月間保管した。保管後、トレッドの表面や溝底でのクラックの発生有無を確認した。○、△の場合に、耐低温ぜい化性能が良好で、冬季のタイヤ保管時にトレッドの表面や溝底においてクラックの発生を抑制できると判断した。
○:クラック発生なし
△:3mm未満のクラック発生
×:3mm以上のクラック発生
【0105】
【表1】
【0106】
表1より、スチレンブタジエンゴムを含み、tanδピーク温度が-10℃以上、ぜい化温度が-40℃以下である実施例は、ウェットグリップ性能、耐低温ぜい化性能をバランスよく改善できることが分かった。