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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】磁気シールドルーム
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20240214BHJP
   E04B 1/92 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H05K9/00 H
E04B1/92
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018216532
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020088033
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-07-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136375
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 弘実
(74)【代理人】
【識別番号】100079290
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 隆
(72)【発明者】
【氏名】五木田 剛男
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-007584(JP,A)
【文献】特開平05-267053(JP,A)
【文献】特開2018-093060(JP,A)
【文献】特開2018-131730(JP,A)
【文献】特開平03-120796(JP,A)
【文献】特開平09-046080(JP,A)
【文献】特開2003-133778(JP,A)
【文献】特開平07-131178(JP,A)
【文献】特開2008-218729(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0070828(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
E04B 1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気シールドされた内部空間を形成する上部シールド体、側周部シールド体、及び下部シールド体を備え、扉で開閉可能な開口を有する磁気シールドルームであって、
前記内部空間に、磁気シールド部を有する追加シールド体を備え、
前記追加シールド体は、前記開口を介して出し入れ可能なサイズであり、
前記追加シールド体によるシールド対象領域であって測定対象物のためのシールド対象領域の位置が変更可能であり、
前記追加シールド体は、前記シールド対象領域の上方と、前記シールド対象領域の側方四方のうちの少なくとも一方と、の少なくともいずれかが開放となるよう配置される、磁気シールドルーム。
【請求項2】
前記磁気シールド部は、前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体と非接触である、請求項1に記載の磁気シールドルーム。
【請求項3】
前記磁気シールド部は、前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体と、磁気的に結合していない、又は磁気的に結合しない程度に離間している、請求項1又は2に記載の磁気シールドルーム。
【請求項4】
前記磁気シールド部は、前記追加シールド体の面の一部であって前記シールド対象領域をカバーするのに必要な範囲に限定して設けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項5】
前記追加シールド体は、少なくとも1枚の平板状ないし湾曲板状である、請求項1から4のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項6】
前記追加シールド体が複数設けられ、複数の追加シールド体の磁気シールド部が互いに接触し、又は互いに磁気的に結合している、請求項1から5のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項7】
前記磁気シールド部は、ノイズ磁場源と前記シールド対象領域との間に設けられる、請求項1から6のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項8】
前記磁気シールド部は、ノイズ磁場ないし環境磁場の方向に対して非垂直である、請求項1から7のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項9】
前記磁気シールド部は、前記シールド対象領域の側方を全周に渡って囲む、請求項1から8のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項10】
前記追加シールド体は、前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体のいずれかに対して固定される、請求項1から9のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項11】
前記追加シールド体は、非シールド体からなるパネルと、前記パネルの面の一部に限定して設けられた磁気シールド部と、を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項12】
前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体の外面に対して設けられた別の追加シールド体を備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項13】
可搬型である請求項1から12のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【請求項14】
前記追加シールド体が複数設けられ、各々の前記追加シールド体が前記開口を介して出し入れ可能なサイズである、請求項1から13のいずれか一項に記載の磁気シールドルーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種磁気計測に用いられる磁気シールドルームに関する。
【背景技術】
【0002】
微弱な磁気信号をセンサで読み出す環境として、地磁気などの影響を取り除く磁気シールドルームは必須である。測定対象物が体積的に大きな場合もあり、磁気シールドルームにはある一定のスペースが必要なことが多い。下記特許文献1は、可搬型の磁気シールドルームを開示する。可搬型に限らず、磁気シールドルームは、一般に、高透磁率の物質を使用して作られることが多く、一度出来上がるとその性能(磁気減衰率)は固定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-93060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動先や設置先の環境磁場やノイズ磁場の状況によっては、ある一方向、あるいは、全方向の磁気減衰性能をさらに向上させたい状況も発生しうる。しかしながら、いったん出来上がった磁気シールドルームの磁気減衰性能を向上させるのは極めて困難である。あらかじめ磁気シールドルームの磁気減衰性能を非常に高く設定しておけばよいが、非常にコストがかかり、さらに非常に重くなる。
【0005】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、容易にかつ低コストでシールド性能を高めることの可能な磁気シールドルームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、磁気シールドルームである。この磁気シールドルームは、
磁気シールドされた内部空間を形成する上部シールド体、側周部シールド体、及び下部シールド体を備え、扉で開閉可能な開口を有する磁気シールドルームであって、
前記内部空間に、磁気シールド部を有する追加シールド体を備え、
前記追加シールド体は、前記開口を介して出し入れ可能なサイズであり、
前記追加シールド体によるシールド対象領域であって測定対象物のためのシールド対象領域の位置が変更可能であり、
前記追加シールド体は、前記シールド対象領域の上方と、前記シールド対象領域の側方四方のうちの少なくとも一方と、の少なくともいずれかが開放となるよう配置される。
【0007】
前記磁気シールド部は、前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体と非接触であってもよい。
【0008】
前記磁気シールド部は、前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体と、磁気的に結合していない、又は磁気的に結合しない程度に離間していてもよい。
【0009】
前記磁気シールド部は、前記追加シールド体の面の一部であって前記シールド対象領域をカバーするのに必要な範囲に限定して設けられてもよい。
【0010】
前記追加シールド体は、少なくとも1枚の平板状ないし湾曲板状であってもよい。
【0011】
前記追加シールド体が複数設けられ、複数の追加シールド体の磁気シールド部が互いに接触し、又は互いに磁気的に結合してもよい。
【0012】
前記磁気シールド部は、ノイズ磁場源とシールド対象領域との間に設けられてもよい。
【0013】
前記磁気シールド部は、ノイズ磁場ないし環境磁場の方向に対して非垂直であってもよい。
【0014】
前記磁気シールド部は、シールド対象領域の側方を全周に渡って囲んでもよい。
【0015】
前記追加シールド体は、前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体のいずれかに対して固定されてもよい。
【0016】
前記追加シールド体は、非シールド体からなるパネルと、前記パネルの面の一部に限定して設けられた磁気シールド部と、を有してもよい。
【0017】
前記上部シールド体、前記側周部シールド体、及び前記下部シールド体の外面に対して設けられた別の追加シールド体を備えてもよい。
【0018】
前記磁気シールドルームは、可搬型であってもよい。
前記追加シールド体が複数設けられ、各々の前記追加シールド体が前記開口を介して出し入れ可能なサイズであってもよい。
【0019】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法やシステムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、容易にかつ低コストでシールド性能を高めることの可能な磁気シールドルームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係る磁気シールドルーム1Aを正面右上方向から見た斜視図。
図2】本発明の実施の形態2に係る磁気シールドルーム1Bを正面右上方向から見た斜視図。
図3】実施の形態2に関し、左部追加シールド体21の上部に限定して磁気シールド部21bを設けた構成の概略断面図。
図4】左部追加シールド体21の下部に限定して磁気シールド部21bを設けた構成の概略断面図。
図5】パネル21aと磁気シールド部21bとの間にアルミニウム板21cを設けた構成の概略断面図。
図6】本発明の実施の形態3に係る磁気シールドルーム1Cを正面右上方向から見た斜視図。
図7図6の変形例であり、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23を互いに機械的に連結した場合の左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23の平断面図。
図8】左部追加シールド体21及び後部追加シールド体22の組合せ形態の変形例を示す平断面図。
図9】本発明の実施の形態4に係る磁気シールドルーム1Dを正面右上方向から見た斜視図。
図10】本発明の実施の形態5に係る磁気シールドルーム1Eを正面右上方向から見た斜視図。
図11】本発明の実施の形態6に係る磁気シールドルーム1Fを正面右上方向から見た斜視図。
図12】磁気シールド部24bを磁場方向に対して非垂直とした3つの例を示す概念図。
図13】本発明の実施の形態7に係る磁気シールドルーム1Gを正面右上方向から見た斜視図。
図14】本発明の実施の形態8に係る磁気シールドルーム1Hを正面右上方向から見た斜視図。
図15】本発明の実施の形態9に係る磁気シールドルーム1Jを正面右上方向から見た斜視図。
図16】本発明の実施の形態10に係る磁気シールドルーム1Kを正面右上方向から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態を詳述する。なお、各図面に示される同一または同等の構成要素、部材等には同一の符号を付し、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は発明を限定するものではなく例示であり、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る磁気シールドルーム1Aを正面右上方向から見た斜視図である。図1により、磁気シールドルーム1Aの前後、上下、左右の各方向を定義する。各方向の定義は、図2図6図9図11図13図16においても同様とする。
【0024】
磁気シールドルーム1Aは、上部シールド体11、側周部シールド体12、及び下部シールド体13を備える。図示は省略したが、磁気シールドルーム1Aは、前部開口を開閉する扉を有する。扉は、一枚の扉でもよいし、左扉と右扉とからなる観音開きの扉であってもよい。上部シールド体11、側周部シールド体12、下部シールド体13、及び前述の図示しない扉(以下、それぞれを単に「シールド体」とも表記)は、磁場ノイズ及び電磁波ノイズを遮蔽できる磁気シールド体であって、磁気シールドされた内部空間S1を形成する。
【0025】
各シールド体は、好ましくは、磁性材料層及び高導電率材料層からなる磁気シールド層を2つ有し、かつ当該2つの磁気シールド層の間に、木材層あるいは空気層等の非高導電率かつ非磁性の層を有する。磁性材料層は、例えば高透磁率磁性体かつ導体としてのパーマロイ板である。高導電率材料層は、例えば導体としてのアルミニウム板である。パーマロイ板は、磁場ノイズの遮蔽に有効である。アルミニウム板は、高周波の電磁波ノイズの遮蔽に有効である。上部シールド体11、側周部シールド体12、下部シールド体13、及び前述の図示しない扉は、それらを構成する磁気シールド体の導体同士が相互に電気的に接続されることが好ましい。
【0026】
下部シールド体13の下側(下面)には、床面上を移動させるための移動手段としてのストッパ付きキャスター75が少なくとも3個以上取り付けられる。磁気シールドルーム1Aは、ここでは可搬型であり、キャスター75を設けたことで移動の際に便利である。図示は省略したが、下部シールド体13の下面に、下部シールド体13よりも高剛性で下部シールド体13の底面と同寸法の例えばステンレス鋼からなる台座を設け、この台座上に下部シールド体13を載置固定し、当該台座の底面にキャスター75を設けてもよい。
【0027】
磁気シールドルーム1Aは、磁気シールドされた内部空間S1に、シールド対象領域S2を囲むように、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23(以下、それぞれを単に「追加シールド体」とも表記)を備える。シールド対象領域S2の位置及びサイズは、測定対象物によって異なり、図示は一例である。各追加シールド体は、磁場ノイズ及び電磁波ノイズを遮蔽できる平板状の磁気シールド体であって、下部シールド体13上に立設される。各追加シールド体は、アルミ等の非磁性体からなる図示しない支柱に支持され、下部シールド体13に対して浮いていてもよい。各追加シールド体は、上部シールド体11、側周部シールド体12、下部シールド体13、及び前述の図示しない扉と、非接触であり、磁気的に結合していない、又は磁気的に結合しない程度に離間していることが望ましい。
【0028】
本実施の形態によれば、下記の効果を奏することができる。
【0029】
(1) 磁気シールドルーム1Aは、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23を備えるため、追加シールド体を設けずに、上部シールド体11、側周部シールド体12、下部シールド体13、及び図示しない扉だけで非常に高いシールド性能を確保する場合と比較して、必要に応じてシールド対象領域S2に対するシールド性能(磁気減衰性能)を容易にかつ低コストで高めることができる。
【0030】
(2) 追加シールド体を上部シールド体11、側周部シールド体12、下部シールド体13、及び図示しない扉と磁気的に結合させず、又は磁気的に結合しない程度に離間させることで、上部シールド体11、側周部シールド体12、下部シールド体13、及び図示しない扉に流れる磁気が追加シールド体に入り込むことを抑制し、追加シールド体の磁気飽和のリスクを低減できる。また、上部シールド体11、側周部シールド体12、下部シールド体13、及び図示しない扉で1回減衰させて小さくなった磁気をさらに追加シールド体で減衰させるという2段階での減衰が行われるため、シールド性能が高められる。
【0031】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2に係る磁気シールドルーム1Bを正面右上方向から見た斜視図である。実施の形態1では、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23がそれぞれ全面的に磁気シールド体であったが、本実施の形態では、各追加シールド体の面の一部が磁気シールド体であり、他の部分は非磁気シールド体である。以下、実施の形態1との相違点を中心に説明する。
【0032】
左部追加シールド体21は、非シールド体からなるパネル21aと、パネル21aの面の一部に限定して設けられた磁気シールド部21bと、を有する積層構造である。同様に、後部追加シールド体22は、非シールド体からなるパネル22aと、パネル22aの面の一部に限定して設けられた磁気シールド部22bと、を有する積層構造である。同様に、右部追加シールド体23は、非シールド体からなるパネル23aと、パネル23aの面の一部に限定して設けられた磁気シールド部23bと、を有する積層構造である。
【0033】
パネル21a~23aは、非磁性体としての例えば木材である。磁気シールド部21b~23bは、高透磁率磁性体かつ導体としての例えばパーマロイ板である。磁気シールド部21b~23bは、パネル21a~23aの、シールド対象領域S2とは反対側の面の上部に設けられる。磁気シールド部21b~23bは、パネル21a~23aの、シールド対象領域S2とは反対側の面に替えて又はそれに加えて、シールド対象領域S2側の面の上部に設けられてもよい。磁気シールド部21b~23bの存在する高さ範囲、左右方向範囲、及び前後方向範囲は、好ましくはシールド対象領域S2の存在する高さ範囲、左右方向範囲、及び前後方向範囲を包含する。
【0034】
左部追加シールド体21において、磁気シールド部21bは、図3に示すようにパネル21aの面の上部に限定して設けられる場合の他、図4に示すようにパネル21aの面の下部に限定して設けられてもよい。図示は省略したが、磁気シールド部21bは、パネル21aの面の中間部に限定して設けられてもよい。図5に示すように、左部追加シールド体21は、パネル21aと磁気シールド部21bとの間に、導体かつ非磁性体としての例えばアルミニウム板21cを有する積層構造であってもよい。これらの変形例は、後部追加シールド体22及び右部追加シールド体23にも同様に適用できる。
【0035】
本実施の形態のその他の点は、実施の形態1と同様である。本実施の形態によれば、実施の形態1の効果に加え、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23の面の一部であってシールド対象領域S2をカバーするのに必要な範囲に限定して磁気シールド部21b~23bを設けるため、追加シールド体が全面的に磁気シールド体である場合と比較して材料及びコストを低減することができる。
【0036】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3に係る磁気シールドルーム1Cを正面右上方向から見た斜視図である。磁気シールドルーム1Cは、図2に示した実施の形態2のものと比較して、左部追加シールド体21と後部追加シールド体22とが互いに接触して磁気シールド部21b、22bが互いに磁気的に結合し、後部追加シールド体22と右部追加シールド体23とが互いに接触して磁気シールド部22b、23bが互いに磁気的に結合している点で相違し、その他の点で一致する。本実施の形態によれば、磁気シールド部21b~23bが互いに磁気的に結合するため、磁気的に非結合である場合と比較してシールド性能を高めることができる。
【0037】
図7は、図6の変形例であり、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23を互いに機械的に連結した場合の左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23の平断面図である。図7の例では、断面L字状の磁性体である連結具25により、左部追加シールド体21と後部追加シールド体22とが機械的に連結され、磁気シールド部21b、22bが互いに磁気的に結合する。同様に、断面L字状の磁性体である連結具26により、後部追加シールド体22と右部追加シールド体23とが機械的に連結され、磁気シールド部22b、23bが互いに磁気的に結合する。
【0038】
図8は、左部追加シールド体21及び後部追加シールド体22の組合せ形態の変形例を示す平断面図である。図8の例では、左部追加シールド体21は、パネル21aのシールド対象領域S2側にも磁気シールド部21eを有する。後部追加シールド体22は、パネル22aのシールド対象領域S2側にも磁気シールド部22eを有する。後部追加シールド体22は、左端部が前方に屈曲しており、その屈曲部の前端部に左部追加シールド体21の後端部が嵌め込まれる。この状態で、磁気シールド部21b、22bが互いに接触して磁気的に結合し、磁気シールド部21e、22eが互いに接触して磁気的に結合する。磁気シールド部21b、21eは、好ましくは磁気的に結合しない。同様に、磁気シールド部22b、22eは、好ましくは磁気的に結合しない。右部追加シールド体23は、左部追加シールド体21と同構成であり、左部追加シールド体21と同様に後部追加シールド体22に組み合わされる。後部追加シールド体22は、アルミ等の非磁性体からなる支柱28に固定される。
【0039】
(実施の形態4)
図9は、本発明の実施の形態4に係る磁気シールドルーム1Dを正面右上方向から見た斜視図である。図9において、シールド対象領域S2の図示を省略している。磁気シールドルーム1Dは、図6に示す実施の形態3と比較して、図6の左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23が、それらを一体化した形状である断面コの字状の追加シールド体30に替わった点で相違し、その他の点で一致する。追加シールド体30は、非シールド体からなる断面コの字状の一体のパネル30aと、断面コの字状の一体の磁気シールド部30bと、を有する。本実施の形態も、実施の形態3と同様の効果を奏することができる。
【0040】
(実施の形態5)
図10は、本発明の実施の形態5に係る磁気シールドルーム1Eを正面右上方向から見た斜視図である。磁気シールドルーム1Eは、上方にノイズ磁場源35が存在する環境下で使用される。磁気シールドルーム1Eは、図2に示した実施の形態2のものと比較して、後部追加シールド体22が無くなり、上部追加シールド体24が追加された点で相違し、その他の点で一致する。上部追加シールド体24は、左部追加シールド体21及び右部追加シールド体23の上端部同士を渡すように配置される。上部追加シールド体24は、非シールド体からなるパネル24aと、パネル24aのシールド対象領域S2とは反対側の面(上面)に設けられた磁気シールド部24bと、を有する。磁気シールド部24bは、パネル24aの上面の左右方向中間部に限定して設けられる。磁気シールド部24bは、ノイズ磁場源35とシールド対象領域S2との間に介在する。磁気シールド部21b、23b、24bは、互いに磁気的に結合してもよい。ノイズ磁場源35は、例えば、エレベータ、エスカレータ、ハムノイズを発する電力供給線等である。磁性体である金属が動くようなものは全般的にノイズ磁場源となり得る。本実施の形態によれば、磁気シールド部24bがノイズ磁場源35とシールド対象領域S2との間に介在するため、シールド対象領域S2に対して効率的にシールド性能を高めることができる。
【0041】
(実施の形態6)
図11は、本発明の実施の形態6に係る磁気シールドルーム1Fを正面右上方向から見た斜視図である。磁気シールドルーム1Fは、左上方にノイズ磁場源35が存在する環境下で使用される。磁気シールドルーム1Fは、図6に示した実施の形態3のものと比較して、右部追加シールド体23が無くなり、上部追加シールド体24が追加された点で相違し、その他の点で一致する。上部追加シールド体24は、左部追加シールド体21及び後部追加シールド体22の上端部同士を渡すように設けられる。上部追加シールド体24は、パネル24aの上面に全面的に磁気シールド部24bを有する。磁気シールド部24bは、ノイズ磁場源35とシールド対象領域S2との間に介在する。磁気シールド部21b、23b、24bは、互いに磁気的に結合してもよい。磁気シールド部21b、23b、24bは、ノイズ磁場源35の発生する磁場(ノイズ磁場源35からシールド対象領域S2に向かう磁場)に対して非垂直である。これにより、ノイズ磁場源35の発生する磁場は、磁気シールド部21b、23b、24bに沿って流れやすくなり、磁気シールド部21b、23b、24bを貫通しにくくなる。その結果、シールド対象領域S2に対するシールド性能が高められる。ノイズ磁場源35の発生する磁場に限らず、環境磁場の方向があらかじめ分かる場合は、環境磁場の方向に対して磁気シールド部を非垂直とすることで、シールド性能を高めることができる。
【0042】
図12(A)~図12(B)は、磁気シールド部24bを磁場方向に対して非垂直とした例を示す概念図である。図12(A)は、図11の構成に対応するものである。図12(B)は、磁気シールド部24bを湾曲面とすることで、中央部を除き全体的に磁気シールド部24bを磁場方向に対して非垂直とした例である。図12(C)は、磁場方向と非垂直な2つの磁気シールド部24bを組み合わせた例である。いずれの例においても、磁場は磁気シールド部24bに沿って流れやすくなり、シールド対象領域S2に向けて貫通しにくくなる。
【0043】
(実施の形態7)
図13は、本発明の実施の形態7に係る磁気シールドルーム1Gを正面右上方向から見た斜視図である。磁気シールドルーム1Gは、右方にノイズ磁場源35がある環境下で使用される。磁気シールドルーム1Gは、図6に示した実施の形態3のものと比較して、前部追加シールド体27が追加された点で相違し、その他の点で一致する。前部追加シールド体27は、非シールド体からなるパネル27aと、パネル27aのシールド対象領域S2とは反対側の面(前面)に設けられた磁気シールド部27bと、を有する。磁気シールド部27bは、パネル27aの前面の上部に限定して設けられる。磁気シールド部27bは、磁気シールド部21b及び磁気シールド部23bと互いに接触して磁気的に結合する。本実施の形態では、シールド対象領域S2の側方が全周に渡って磁気シールド部21b、22b、23b、27bで囲まれる。本実施の形態によれば、前方からシールド対象領域S2に向かってくる磁場に対してもシールド性能を高めることができるため、実施の形態3と比較して全体のシールド性能が高められる。
【0044】
(実施の形態8)
図14は、本発明の実施の形態8に係る磁気シールドルーム1Hを正面右上方向から見た斜視図である。磁気シールドルーム1Hは、図13に示した実施の形態7のものと比較して、シールド対象領域S2を囲む追加シールド体が、第1追加シールド体31及び第2追加シールド体32に替わった点で相違し、その他の点で一致する。第1追加シールド体31及び第2追加シールド体32は、共に円弧面状ないし楕円弧面状であり、両者を合わせて円筒側面状ないし楕円筒側面状となる。第1追加シールド体31は、非シールド体からなるパネル31aと、パネル31aのシールド対象領域S2とは反対側の面の上部に限定して設けられた磁気シールド部31bと、を有する。第2追加シールド体32は、非シールド体からなるパネル32aと、パネル31aのシールド対象領域S2とは反対側の面の上部に限定して設けられた磁気シールド部32bと、を有する。磁気シールド部31b、32bは、互いに接触して磁気的に結合し、シールド対象領域S2を円筒状に囲む。本実施の形態も、実施の形態7と同様の効果を奏することができる。
【0045】
(実施の形態9)
図15は、本発明の実施の形態9に係る磁気シールドルーム1Jを正面右上方向から見た斜視図である。図15において、シールド対象領域S2の図示を省略している。磁気シールドルーム1Jは、図6に示した実施の形態3のものと比較して、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23が、それぞれL字状の固定具41、42、43により下部シールド体13に固定された点で相違し、その他の点で一致する。固定具41、42、43は、非磁性体であるとよい。本実施の形態によれば、左部追加シールド体21、後部追加シールド体22、及び右部追加シールド体23の揺れを抑制し、揺れにより位置が適切ではなくなることによるシールド性能の低下や磁場ノイズの発生を抑制できる。追加シールド体を上部シールド体11、側周部シールド体12、及び下部シールド体13のいずれかに機械的に固定することは、本実施の形態に限らず、全ての実施の形態に適用できる。
【0046】
(実施の形態10)
図16は、本発明の実施の形態10に係る磁気シールドルーム1Kを正面右上方向から見た斜視図である。磁気シールドルーム1Kは、図2に示した実施の形態と比較して、外部追加シールド体45~47が追加された点で相違し、その他の点で一致する。外部追加シールド体45は、左側の側周部シールド体12の外面(左面)の高さ方向中間部に限定して設けられる。外部追加シールド体46は、後側の側周部シールド体12の外面(背面)の高さ方向中間部に限定して設けられる。外部追加シールド体47は、右側の側周部シールド体12の外面(右面)の高さ方向中間部に限定して設けられる。外部追加シールド体45~47のいずれか1つ又は2つのみが設けられてもよい。本実施の形態によれば、実施の形態2と比較して更にシールド性能を高めることができる。外部追加シールド体を設けることは、本実施の形態に限らず、全ての実施の形態に適用できる。
【0047】
本発明はこうした状況を認識してなされたものであり、その目的は、容易にかつ低コストでシールド性能を高めることの可能な磁気シールドルームを
【0048】
以上、実施の形態を例に本発明を説明したが、実施の形態の各構成要素や各処理プロセスには請求項に記載の範囲で種々の変形が可能であることは当業者に理解されるところである。以下、変形例について触れる。本発明の磁気シールドルームの外観は、直方体形状に限定されず、円筒形状等の他の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1A~1H、1J、1K 磁気シールドルーム、
11 上部シールド体、12 側周部シールド体、13 下部シールド体、
21 左部追加シールド体、21a パネル、21b 磁気シールド部、
22 後部追加シールド体、22a パネル、22b 磁気シールド部、
23 右部追加シールド体、23a パネル、23b 磁気シールド部、
24 上部追加シールド体、24a パネル、24b 磁気シールド部、
25、26 連結具、
27 前部追加シールド体、27a パネル、27b 磁気シールド部、
28 支柱、
30 追加シールド体、30a パネル、30b 磁気シールド部、
31 第1追加シールド体、31a パネル、31b 磁気シールド部、
32 第2追加シールド体、32a パネル、32b 磁気シールド部、
35 ノイズ磁場源、41~43 固定具、45~47 外部追加シールド体、
75 キャスター(脚部)、S1 内部空間、S2 シールド対象領域
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