(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】光半導体素子、光半導体装置、光伝送システム、および光半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/183 20060101AFI20240214BHJP
H01S 5/023 20210101ALI20240214BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H01S5/183
H01S5/023
H01L31/02 B
(21)【出願番号】P 2019021032
(22)【出願日】2019-02-07
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 智志
(72)【発明者】
【氏名】大野 健一
(72)【発明者】
【氏名】皆見 健史
(72)【発明者】
【氏名】村上 朱実
(72)【発明者】
【氏名】早川 純一朗
(72)【発明者】
【氏名】大塚 勤
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-119428(JP,A)
【文献】特開2007-287849(JP,A)
【文献】特開2010-219342(JP,A)
【文献】特開2011-166150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
H01L 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性の半導体基板と、
当該半導体基板の表面側に形成され、表面側から光を出射または受光する柱状体と、
前記柱状体と接続された表面側の電極と、
前記半導体基板の裏面側に形成された裏面側の電極と、
前記半導体基板を貫通して前記表面側の電極と前記裏面側の電極を接続するとともに、前記半導体基板の表面側に前記表面側の電極より突出した突出部を有する導電部材と、
を備え、
前記柱状体と前記導電部材とは、分離して配置さ
れ、
前記突出部は前記柱状体の上面を越える高さを有する、
光半導体素子。
【請求項2】
前記導電部材と前記表面側の電極とは、前記半導体基板の前記柱状体が形成された側の面で接続されている
請求項
1に記載の光半導体素子。
【請求項3】
前記裏面側の電極に形成されたバンプをさらに備える
請求項1
又は請求項
2に記載の光半導体素子。
【請求項4】
前記表面側の電極は平面視で閉形状の電極を含み、前記突出部は平面視で前記閉形状の電極の少なくとも一部と接続されている
請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の光半導体素子。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の光半導体素子と、
前記光半導体素子に光結合される光学部材と、を備え、
前記光学部材は、前記突出部によって前記柱状体との位置関係が規定される
光半導体装置。
【請求項6】
前記光半導体素子が発光素子であり、
前記光学部材が前記光半導体素子から出射された光を外部に拡散する光拡散部材である
請求項
5に記載の光半導体装置。
【請求項7】
請求項
5に記載の光半導体装置と、
前記光半導体素子から出射された光または前記光半導体素子で受光される光を伝送する前記光学部材としての光伝送路と、
を備える光伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子、光半導体装置、光伝送システム、および光半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上にメサ構造の面発光型半導体レーザ素子を含む半導体レーザ装置であって、基板上に少なくとも1つの静電破壊防止用の突出部を含み、該少なくとも1つの突出部は、基準電位に接続される導電経路を有し、かつ、面発光型半導体レーザ素子の周囲に配置されている、半導体レーザ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、表面から光を出射または受光する光半導体素子において、外部と接続した場合に寄生素子を低減しつつ表面を保護することが可能な光半導体素子、光半導体装置、光伝送システム、および光半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1態様に係る光半導体素子は、半絶縁性の半導体基板と、当該半導体基板の表面側に形成され、表面側から光を出射または受光する柱状体と、前記柱状体と接続された表面側の電極と、前記半導体基板の裏面側に形成された裏面側の電極と、前記半導体基板を貫通して前記表面側の電極と前記裏面側の電極を接続するとともに、前記半導体基板の表面側に突出した突出部を有する導電部材と、を備えるものである。
【0006】
第2態様に係る光半導体素子は、第1態様に係る光半導体素子において、前記突出部は前記柱状体の上面に達する高さを有するものである。
【0007】
第3態様に係る光半導体素子は、第1態様に係る光半導体素子において、前記突出部は前記柱状体の上面を越える高さを有するものである。
【0008】
第4態様に係る光半導体素子は、第1態様に係る光半導体素子において、前記突出部は前記表面側の電極を越える高さを有するものである。
【0009】
第5態様に係る光半導体素子は、第1態様から第4態様のいずれかの態様に係る光半導体素子において、前記導電部材と前記表面側の電極とは、前記半導体基板の前記柱状体が形成された側の面で接続されているものである。
【0010】
第6態様に係る光半導体素子は、第1態様から第5態様のいずれかの態様に係る光半導体素子において、前記裏面側の電極に形成されたバンプをさらに備えるものである。
【0011】
第7態様に係る光半導体素子は、第1態様から第6態様のいずれかの態様に係る光半導体素子において、前記表面側の電極は平面視で閉形状の電極を含み、前記突出部は平面視で前記閉形状の電極の少なくとも一部と接続されているものである。
【0012】
上記目的を達成するために、第8態様に係る光半導体装置は、第1態様から第7態様のいずれかの態様に係る光半導体素子と、前記光半導体素子に光結合される光学部材と、を備え、前記光学部材は、前記突出部によって前記柱状体との位置関係が規定されるものである。
【0013】
第9態様に係る光半導体装置は、第8態様に係る光半導体装置において、前記光半導体素子が発光素子であり、前記光学部材が前記光半導体素子から出射された光を外部に拡散する光拡散部材であるものである。
【0014】
上記目的を達成するために、第10態様に係る光伝送システムは、第8態様に係る光半導体装置と、前記光半導体素子から出射された光または前記光半導体素子で受光される光を伝送する前記光学部材としての光伝送路と、を備えるものである。
【0015】
上記目的を達成するために、第11態様に係る光半導体素子の製造方法は、半導体基板の表面に前記表面側から光を出射または受光する柱状体および前記柱状体に接続される配線を形成する工程と、半導体基板の表面にレジストを塗布する工程と、前記レジストおよび前記配線を通過し前記半導体基板の裏面に至らない深さの開口部を形成する工程と、前記半導体基板の表面に導電層を形成して前記開口部を前記導電層で埋める工程と、前記レジスト上の前記導電層を研削する工程と、前記半導体基板の裏面を研削して前記開口部を露出させる工程と、を含むものである。
【0016】
第12態様に係る光半導体素子の製造方法は、第11態様に係る光半導体素子の製造方法において、前記柱状体および前記柱状体に接続される配線を形成する工程は、前記配線の一部に閉形状の配線を形成するように前記柱状体および前記柱状体に接続される配線を形成し、前記開口部を形成する工程は、平面視で前記閉形状の配線の少なくとも一部と前記開口部の一部とが接続されるようにして前記開口部を形成するものである。
【0017】
第13態様に係る光半導体素子の製造方法は、第11態様または第12態様に係る光半導体素子の製造方法において、前記半導体基板の裏面に露出する前記導電層に接続されるバンプを形成する工程をさらに含むものである。
【発明の効果】
【0018】
第1態様、第8の態様、第10の態様、および第11の態様によれば、表面から光を出射または受光する光半導体素子において、外部と接続した場合に寄生素子を低減しつつ表面を保護することが可能な光半導体素子、光半導体装置、光伝送システム、および光半導体装置の製造方法を提供することができる、という効果を奏する。
【0019】
第2態様から第4態様によれば、光半導体素子の用途等に応じて、突出部の高さを適切に調整することができる、という効果を奏する。
【0020】
第5態様によれば、導電部材と表面側の電極とが接続されていない場合と比較して、導電部材と電極とを同電位にできる、という効果を奏する。
【0021】
第6態様によれば、裏面側の電極に形成されたバンプを備えない場合と比較して、光半導体素子をフリップチップ実装することができる、という効果を奏する。
【0022】
第7態様によれば、突出部が接続される電極が平面視で開形状の場合と比較して、配線接続における不具合の少ない光半導体素子を実現できる、という効果を奏する。
【0023】
第9態様によれば、光半導体素子から出射された光を外部に拡散する光拡散部材を備えない場合と比較して、光の出射角度を拡大することができる、という効果を奏する。
【0024】
第12態様によれば、配線の一部に開形状の配線を形成するようにして柱状体および柱状体に接続される配線を形成し、開形状の配線の少なくとも一部と開口部の一部とが接続されるようにして開口部を形成する場合と比較して、製造工程における位置合わせマージンが増加する、という効果を奏する。
【0025】
第13態様によれば、半導体基板の裏面に露出する導電層に接続されるバンプを形成する工程を含まない場合と比較して、フリップチップ実装型の光半導体素子を製造することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】第1の実施の形態に係る光半導体素子の構成の一例を示す断面図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る光半導体素子の製造方法の一例を説明する断面図の一部である。
【
図3】第1の実施の形態に係る光半導体素子の製造方法の一例を説明する断面図の一部である。
【
図4】第1の実施の形態に係る光半導体素子の電極パッドを含む配線を示す平面図である。
【
図5】第1の実施の形態に係る光半導体素子の応用例を示す図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る光半導体素子の構成の一例を示す断面図である。
【
図7】第3の実施の形態に係る光半導体装置、および光伝送システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照し、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明に係る光半導体素子として、面発光型半導体レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を例示して説明する。
【0028】
[第1の実施の形態]
図1から
図4を参照して、本実施の形態に係る光半導体素子、および光半導体素子の製造方法について説明する。
【0029】
図1を参照して、本実施の形態に係る光半導体素子10の構成の一例について説明する。
図1に示すように、光半導体素子10は、半絶縁性GaAs(ガリウムヒ素)の基板12上に形成されたn型GaAsのコンタクト層14、下部DBR(Distributed Bragg Reflector)16、活性領域24、酸化狭窄層32、および上部DBR26を含んで構成されている。光半導体素子10では、コンタクト層14、下部DBR16、活性領域24、酸化狭窄層32、および上部DBR26の各構成が柱状体(以下、「ポストP」)を形成し、該ポストPがレーザ部分を構成している。
【0030】
ポストPを含む半導体層の周囲は無機絶縁膜としての層間絶縁膜34が着膜されている。該層間絶縁膜34はポストPの側面から基板12の表面まで延伸されている。本実施の形態に係る層間絶縁膜34は、一例として、シリコン窒化膜(SiN膜)で形成されている。なお、層間絶縁膜34の材料はシリコン窒化膜に限らず、例えば、シリコン酸化膜(SiO2膜)、あるいはシリコン酸窒化膜(SiON膜)等であてもよい。
【0031】
図1に示すように、層間絶縁膜34上にはp側電極配線36が設けられている。p側電極配線36の一端側は上部DBR26の最上層に形成されたコンタクト層(図示省略)に接続され、該コンタクト層との間でオーミック性接触を形成している。一方、p側電極配線36の他端側はポストPの側面から基板12の表面まで延伸され、電極パッド(図示省略)を構成している。p側電極配線36は、例えば、Ti(チタン)/Au(金)の積層膜を着膜して形成される。
図1に示すように、本実施の形態では、p側電極配線36が後述する突出部50-1に接続されている。
【0032】
同様に、層間絶縁膜34の開口部を介してn側電極配線30が設けられている。n側電極配線30の一端側はコンタクト層14に接続され、コンタクト層14との間でオーミック性接触を形成している。一方、n側電極配線30の他端側は基板12の表面まで延伸され、電極パッド(図示省略)を形成している。n側電極配線30は、例えば、AuGe/Ni/Auの積層膜を着膜して形成される。
図1に示すように、本実施の形態では、n側電極配線30が後述する突出部50-2に接続されている。
【0033】
基板12上に形成されたコンタクト層14は、一例としてSiがドープされたGaAs層によって形成されている。コンタクト層14の一端はn型の下部DBR16に接続され、他端はn側電極配線30に接続されている。すなわち、コンタクト層14は、下部DBR16とn側電極配線30との間に介在し、ポストPで構成されるレーザ部分に負電位を付与する機能を有する。
【0034】
コンタクト層14上に形成されたn型の下部DBR16は、光半導体素子10の発振波長をλ、媒質(半導体層)の屈折率をnとした場合に、膜厚がそれぞれ0.25λ/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。具体的には、下部DBR16は、一例としてAl0.90Ga0.1Asによるn型の低屈折率層と、Al0.15Ga0.85Asによるn型の高屈折率層と、を交互に繰り返し積層することにより構成されている。
【0035】
本実施の形態に係る活性領域24は、例えば、下部スペーサ層、量子井戸活性層、および上部スペーサ層を含んで構成されてもよい(図示省略)。本実施の形態に係る量子井戸活性層は、例えば、4層のAl0.3Ga0.7Asからなる障壁層と、その間に設けられた3層のGaAsからなる量子井戸層と、で構成されてもよい。なお、下部スペーサ層、上部スペーサ層は、各々量子井戸活性層と下部DBR16との間、量子井戸活性層と上部DBR26との間に配置されることにより、共振器の長さを調整する機能とともに、キャリアを閉じ込めるためのクラッド層としての機能も有している。
【0036】
活性領域24上に設けられたp型の酸化狭窄層32は電流狭窄層であり、非酸化領域32aおよび酸化領域32bを含んで構成されている。p側電極配線36からn側電極配線30に向かって流れる電流は、非酸化領域32aによって絞られる。
【0037】
酸化狭窄層32上に形成された上部DBR26は、膜厚がそれぞれ0.25λ/nとされかつ屈折率の互いに異なる2つの半導体層を交互に繰り返し積層して構成される多層膜反射鏡である。具体的には、上部DBR26は、一例としてAl0.90Ga0.1Asによるp型の低屈折率層と、Al0.15Ga0.85Asによるp型の高屈折率層と、を交互に繰り返し積層することにより構成されている。
【0038】
本実施の形態では、先述したように上部DBR26の最上層にコンタクト層(図示省略)が設けられており、該コンタクト層上には、光の出射面を保護する出射面保護層38が設けられている。出射面保護層38は、一例としてシリコン窒化膜を着膜して形成される。
【0039】
図1に示すように、光半導体素子10は、さらにビア52-1、52-2(以下、総称する場合は「ビア52」)、バンプ54-1、54-2(以下、総称する場合は「バンプ54」)を備えている。バンプ54は、例えば光半導体素子10をプリント基板等にフリップチップ実装する場合に用いられる。ビア52-1、52-2は、各々突出部50-1、50-2(以下、総称する場合は「突出部50」)に接続されている。突出部50は、後述するようにアライメントマークとしての機能、製造工程における素子表面の保護機能(接触ダメージの予防機能)等の機能を有する。突出部50の光半導体素子10の表面からの高さは、表面電極の保護を勘案し、最低限p側電極配線あるいはn側電極配線の高さを越える高さを有している。
【0040】
なお、ビア52と突出部50とは、一例として金属により一体として形成されたもので両者に明確な境界線はないが、以下では便宜的に、基板12の表面から裏面にかけて形成された金属部分をビア52といい、基板12の表面から突出した金属部分を突出部50という。ビア52-1と突出部50-1とを合わせた金属部分が導電部材58-1であり、ビア52-2と突出部50-2とを合わせた金属部分が導電部材58-2(以下、総称する場合は「導電部材58)」である。
【0041】
ここで、発光素子において、出射光の波長帯域が基板に吸収される波長帯域である場合は通常表面出射とする。この場合発光素子と外部(プリント基板等)との接続は、表面電極の場合はワイヤボンディングで接続する。また、発光素子を高速で駆動させたい場合は、寄生素子低減のために基板に貫通電極を形成し裏面にバンプを設けて接続する場合もある。しかしながら、いずれの方法においても発光素子チップの表面の保護という観点では特別な工夫はなされていない。本実施の形態に係る光半導体素子10では、基板に貫通電極を設け裏面でバンプ接続するとともに、表面に該貫通電極と連続する(一体化された)突出部50を設けている。このことにより、素子表面から光を出射する光半導体素子において、外部と接続した場合に寄生素子を低減しつつ素子表面が保護される。なお、後述するように本実施の形態に係る突出部は、本実施の形態に係る製造方法において自動的に形成される。また、従来技術では素子の裏面から開口部を形成し表面から埋める。これに対し本実施の形態に係る光半導体素子では、表面から開口部を形成し表面から埋める。
【0042】
次に、
図2および
図3を参照して、光半導体素子10の製造方法について説明する。なお、以下の説明においては、ポストPを含むVCSELの素子がすでに基板70上に形成されているものとする。すなわち、基板70上にはポストPが形成され、さらに絶縁膜72が形成され、絶縁膜72上には配線74が形成されている。また、
図2および
図3の工程は、複数のVCSEL素子が形成されたウエハ状態で行われるが、1個の光半導体素子10を示した図を用いて説明する。
【0043】
まず、フォトリソグラフィおよびエッチングを用いて、導電部材58を形成するための開口部80を基板12の表面側に形成する。そのために、基板12の表面側にレジスト76を塗布し、レジスト76の開口部80に対応する位置に開口部78を形成する(
図2(a))。
【0044】
ここで、本実施の形態では、
図4に示すように、配線74の開口部80に対応する位置に電極パッド75が形成されている。配線74および電極パッド75は、一例としてAu等の金属で形成されている。そして、開口部80を形成する際のエッチングで配線金属のエッチングが少なくてすむように、本実施の形態に係る電極パッド75は
図4に示すようにリング形状(閉形状)とされている。これは、例えば配線74開口部80の基板12の面上の位置が若干ずれても導電部材58との接続がなされるようにするためでもある。すなわち、本実施の形態では、電極パッド75をリング形状としているので、配線形成における製造上の位置合わせの許容度が、線状の配線(一般に開形状の配線)と比較して向上している。
【0045】
次に、開口部78を介したエッチングにより、基板12に開口部80を形成する(
図2(b))。この際のエッチングは、ドライエッチングでもウエットエッチングでもよいが、本実施の形態ではドライエッチングを用いている。
【0046】
次に、一例としてスパッタを用いて金属膜82を形成する(
図2(c))。金属膜82は電極パッド75と、以下で説明する導電部材84との電気的接続性を向上させるためのもので、特に電気的接続性が問題とならない等の場合には本工程を省略してもよい。
【0047】
次に、開口部80を導電部材84で埋め込む(
図2(d))。導電部材84の材料、形態は特に限定されず、例えば銅による金属メッキ、例えば銀ペーストによる真空印刷によって行う。本実施の形態では一例として銀ペーストを用いて導電部材84を形成している。
【0048】
次に、レジスト76上に形成された金属膜82、および導電部材84を切削し、開口部80内の導電部材84を残留させる(
図2(e))。残留した導電部材84が
図1に示す導電部材58を構成する。本実施の形態に係る光半導体素子10の製造方法では、製造工程の途中で導電部材58が形成されるので、後工程のバックグラインド工程や、各工程間のハンドリングにおいてポストPの出射面等が保護される。
【0049】
次に、RIE(Reactive Ion Etching:反応性イオンエッチング)もしくはウエットエッチングを用いて、レジスト76を隔離する(
図2(f))。この際、レジスト76の一部を残すようにしてもよい。なお、
図2(g)以降ではレジスト76を残留させる場合について例示している。
【0050】
次に、基板12の表面側に一例としてバックグラインドテープ86を貼り付ける(
図2(g)、
図2(g)は
図2(f)に対し上下が反転している)。
【0051】
次に、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて基板12の裏面を研削し、導電部材84を露出させる(
図2(h))。
図2(h)に示すように、本実施の形態では、基板12の裏面研削によって導電部材84(すなわち
図1に示すビア52)が露出する。
【0052】
次に、全面にレジスト88を塗布し、フォトリソグラフィを用いて導電部材84に対応する位置に開口部89を形成する(
図3(a))。
【0053】
次に、一例として銀によるペースト90を印刷し(
図3(b))、その後レジスト88の位置まで該ペースト90を切削する(
図3(c))。
【0054】
次に、一例としてNi(ニッケル)/Auによる金属膜92を形成し(
図3(d)、その後リフトオフによってレジスト88およびレジスト88上の金属膜92を剥離する(
図3(e))。
【0055】
次に、ダイシングテープ94を貼り付け(
図3(f))、バックグラインドテープ86を剥離する(
図3(g))。
【0056】
次に、ウエハ状態の複数のVCSEL素子を個片化して、本実施の形態に係る光半導体素子10が製造される。
図3(g)における基板70、絶縁膜72、および導電部材84の各々が、
図1に示す基板12、層間絶縁膜34、および導電部材58に相当する。ここで、
図1に示すバンプ54は、必要に応じ金属膜92上に形成する。
【0057】
次に、
図5を参照して、本実施の形態に係る光半導体素子10の応用形態について説明する。
【0058】
図5(a)は、突出部50をアライメントマークとして用いた形態である光半導体素子10Aを示している。光半導体素子10Aは、光半導体素子10に対してさらに突出部50Aが設けられている。この突出部50Aをアライメントマークとして用い、例えば光半導体素子10Aの外部に接続する部材とのアライメントが行われる。なお、
図5(a)の例では、ビア52Aを用い、基板12を貫通した導電部材を用いる形態を例示しているが、必ずしも貫通させる必要はなく、基板12の内部に止まっている形態としてもよい。この場合は、
図2(b)に示す開口部80をより浅く形成すればよい。
【0059】
図5(b)は、突出部50を用いて光半導体素子10の検査を行う形態である。
図1に示すように、本実施の形態に係る光半導体素子10では、突出部50がp側電極配線36、あるいはn側電極配線30に接続されているので、
図5(b)に示すように突出部50に例えばテスターの探針(プローブ)300を接触させることによって、光半導体素子10の検査が行える。つまり、バンプ54を用いることなく表面側から検査が行われる。なお、この際の光半導体素子10は、ウエハレベルであってもよいし、個片化されていてもよい。
【0060】
[第2の実施の形態]
図6を参照して、本実施の形態に係る光半導体素子10Aについて説明する。光半導体素子10Aは、光半導体素子10において表面にレジスト56を設けた形態である。従って、光半導体素子10と同様の構成には同じ符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0061】
図6に示すように、光半導体素子10Aでは、突出部50の頂部以外の部分がレジスト56で被覆されている。そのため、光半導体素子10Aによれば、外部と接続した場合に寄生素子を低減しつつ表面が保護される上、さらに信頼性の高い光半導体素子が提供される。
【0062】
[第3の実施の形態]
図7を参照して、本実施の形態に係る光半導体装置、および光伝送システムについて説明する。
【0063】
図7(a)に示すように、本実施の形態に係る光半導体装置100は、光半導体素子10および光拡散板102を含んで構成されている。光拡散板102は、光半導体素子10から出射された出射光の出射角を広げる機能を有し、例えば接着剤によって突出部50に固定されている。光半導体装置100は例えば距離計測装置の投光源として、一定の広がりのある均一な光を被計測対象に向けて照射するような用途を有する。光半導体装置100では光拡散板102が突出部50で位置決め(アライメント)される、つまり例えば光拡散板102に設けた凹部等に突出部50を突き合わせることによって光半導体素子10と光拡散板102との位置関係が自動的に設定される。また、その際光半導体素子10と光拡散板102の間隔も自動的に定められるので、光半導体装置100の低背化も実現される。換言すれば、光半導体装置100では、光半導体素子10と光拡散板102との間の距離が精度よく調整可能である。なお、光拡散板102は、本発明に係る「光学部材」の一例である。
【0064】
図7(b)に示すように、本実施の形態に係る光伝送システム200は、光半導体素子10および光ファイバ202を含んで構成されている。光ファイバ202は、光拡散板102と同様の方法で突出部50に固定され、同様の方法でアライメントされる。すなわち、光半導体素子10の出射光の光軸と、光ファイバ202のコアの相対的な位置関係が自動的に設定されるので、光半導体素子10と光ファイバ202との間の結合効率が向上する。換言すれば、光伝送システム200では、光半導体素子10と光ファイバ202との間の結合効率の調整が可能である。ここで、光ファイバ202は、本発明に係る「光学部材」の一例である。
【0065】
なお、上記各実施の形態では本発明を発光素子に適用した形態を例示して説明したが、これに限られず受光素子にも適用が可能である。この場合の受光素子の製造方法も
図2および
図3で説明した製造方法に準じて製造される。
【0066】
また、上記各実施の形態では、導電部材58がp側電極配線36、あるいはn側電極配線30に接続される形態を例示して説明したが、これに限られない。例えば、導電部材58をアライメントマークとして用い、p側電極配線36、あるいはn側電極配線は例えばボンディングワイヤで接続するような場合には、導電部材58と、p側電極配線36およびn側電極配線30とを接続しない形態としてもよい。むろん、必要に応じ、導電部材58と、p側電極配線36およびn側電極配線30のいずれか一方を接続する形態としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10、10A 光半導体素子
12 基板
14 コンタクト層
16 下部DBR
24 活性領域
26 上部DBR
30 n側電極配線
32 酸化狭窄層
32a 非酸化領域
32b 酸化領域
34 層間絶縁膜
36 p側電極配線
38 出射面保護層
50、50-1、50-2、50A 突出部
52、52-1、52-2 ビア
54、54-1,54-2 バンプ
56 レジスト
58、58-1、58-2 導電部材
70 基板
72 絶縁膜
74 配線
75 電極パッド
76 レジスト
78、80 開口部
82 金属膜
84 導電部材
86 バックグラインドテープ
88 レジスト
89 開口部
90 ペースト
92 金属膜
94 ダイシングテープ
100 光半導体装置、102 光拡散板
200 光伝送システム、202 光ファイバ
300 探針
P ポスト