(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/28 W
(21)【出願番号】P 2019041592
(22)【出願日】2019-03-07
【審査請求日】2021-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 寿典
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-246200(JP,A)
【文献】特開2004-248485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧が入力される入力端子対と、
出力電圧が出力される出力端子対と、
1次側巻線および2次側巻線をそれぞれ有する第1および第2のトランスと、
前記入力端子対と前記第1および第2のトランスにおける前記1次側巻線との間に
配置され、各々がスイッチング素子を含んで構成された第1および第2のインバータ回路と、
前記出力端子対と前記第1および第2のトランスにおける前記2次側巻線との間に配置され、第1および第2の整流素子を有する整流回路と、第1および第2のチョークコイルと前記出力端子対間に配置された容量素子とを有する平滑回路と、を含んで構成された、カレントダブラ型の整流平滑回路と、
前記第1および第2のインバータ回路同士が位相差を持って動作するように、前記スイッチング素子に対してスイッチング位相制御によるスイッチング駆動を行う駆動部と
を備え、
前記第1のインバータ回路は、前記スイッチング素子としての第1ないし第4のスイッチング素子を含む、フルブリッジ回路により構成されていると共に、前記第1のインバータ回路では、前記入力端子対間で互いに直列接続された前記第1および第2のスイッチング素子と、前記入力端子対間で互いに直列接続された前記第3および第4のスイッチング素子とが、互いに並列配置されており、
前記第2のインバータ回路は、前記第1および第2のスイッチング素子と、第1および第2のコンデンサとを含む、ハーフブリッジ回路により構成されていると共に、前記第2のインバータ回路では、前記入力端子対間で互いに直列接続された前記第1および第2のスイッチング素子と、前記入力端子対の間で互いに直列接続された前記第1および第2のコンデンサとが、互いに並列配置されており、
前記第1のトランスにおける前記1次側巻線である第1の1次側巻線が、前記第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、前記第3および第4のスイッチング素子同士の接続点と、の間に配置されていると共に、前記第2のトランスにおける前記1次側巻線である第2の1次側巻線が、前記第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、前記第1および第2のコンデンサ同士の接続点と、の間に配置されており、
前記第2のトランスにおける前記2次側巻線が、第1および第2の直列2次側巻線により構成されており、
前記整流平滑回路では、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第1端と、前記出力端子対のうちの一方の出力端子に接続された出力ライン上の接続点との間に、前記第1のチョークコイルが配置されていると共に、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第2端と、前記出力ライン上の接続点との間に、前記第2のチョークコイルが配置されており、
前記整流平滑回路では、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第1端と、前記第2のトランスにおける前記第1の直列2次側巻線の第1端とが、第1の電圧地点において互いに接続され、前記第1の直列2次側巻線の第2端と、前記第1の整流素子のカソードとが、互いに接続され、前記第1の整流素子のアノードが接地に接続されていると共に、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第2端と、前記第2のトランスにおける前記第2の直列2次側巻線の第1端とが、第2の電圧地点において互いに接続され、前記第2の直列2次側巻線の第2端と、前記第2の整流素子のカソードとが、互いに接続され、前記第2の整流素子のアノードが接地に接続されており、
前記整流平滑回路では、前記出力ライン上の接続点と接地との間に、前記容量素子が配置されており、
前記第1および第2の電圧地点での電圧を複数のレベルに設定するために前記第1のトランスにおける前記2次側巻線に発生させる電圧の基となる所定のパルス電圧が、前記第1のインバータ回路における前記スイッチング位相制御によって生成されて、前記第1のインバータ回路から前記第1の1次側巻線に対して印加されると共に、
前記第1および第2の直列2次側巻線にそれぞれ発生する電圧の基となる所定の電圧値が、前記第2のインバータ回路から前記第2の1次側巻線に対して印加されるようになっており、
前記所定の電圧値の印加に基づいて前記第1の直列2次側巻線に発生する電圧が、前記第1の電圧地点での電圧に対して重畳されると共に、前記所定の電圧値の印加に基づいて前記第2の直列2次側巻線に発生する電圧が、前記第2の電圧地点での電圧に対して重畳されるようになっている
スイッチング電源装置。
【請求項2】
入力電圧が入力される入力端子対と、
出力電圧が出力される出力端子対と、
1次側巻線および2次側巻線をそれぞれ有する第1および第2のトランスと、
前記入力端子対と前記第1および第2のトランスにおける前記1次側巻線との間に
配置され、各々がスイッチング素子を含んで構成された第1および第2のインバータ回路と、
前記出力端子対と前記第1および第2のトランスにおける前記2次側巻線との間に配置され、第1および第2の整流素子を有する整流回路と、第1および第2のチョークコイルと前記出力端子対間に配置された容量素子とを有する平滑回路と、を含んで構成された、カレントダブラ型の整流平滑回路と、
前記第1および第2のインバータ回路同士が位相差を持って動作するように、前記スイッチング素子に対してスイッチング位相制御によるスイッチング駆動を行う駆動部と
を備え、
前記第1のインバータ回路は、前記スイッチング素子としての第1ないし第4のスイッチング素子を含む、フルブリッジ回路により構成されていると共に、前記第1のインバータ回路では、前記入力端子対間で互いに直列接続された前記第1および第2のスイッチング素子と、前記入力端子対間で互いに直列接続された前記第3および第4のスイッチング素子とが、互いに並列配置されており、
前記第2のインバータ回路は、前記第1および第2のスイッチング素子と、第1および第2のコンデンサとを含む、ハーフブリッジ回路により構成されていると共に、前記第2のインバータ回路では、前記入力端子対間で互いに直列接続された前記第1および第2のスイッチング素子と、前記入力端子対の間で互いに直列接続された前記第1および第2のコンデンサとが、互いに並列配置されており、
前記第1のトランスにおける前記1次側巻線である第1の1次側巻線が、前記第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、前記第3および第4のスイッチング素子同士の接続点と、の間に配置されていると共に、前記第2のトランスにおける前記1次側巻線である第2の1次側巻線が、前記第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、前記第1および第2のコンデンサ同士の接続点と、の間に配置されており、
前記第2のトランスにおける前記2次側巻線が、第1および第2の直列2次側巻線により構成されており、
前記整流平滑回路では、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第1端と、前記出力端子対のうちの一方の出力端子に接続された出力ライン上の接続点との間に、前記第1のチョークコイルが配置されていると共に、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第2端と、前記出力ライン上の接続点との間に、前記第2のチョークコイルが配置されており、
前記整流平滑回路では、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第1端と、前記第1の整流素子のカソードとが、第1の電圧地点において互いに接続され、前記第1の整流素子のアノードと、前記第2のトランスにおける前記第1の直列2次側巻線の第1端とが、互いに接続され、前記第1の直列2次側巻線の第2端が接地に接続されていると共に、
前記第1のトランスにおける前記2次側巻線の第2端と、前記第2の整流素子のカソードとが、第2の電圧地点において互いに接続され、前記第2の整流素子のアノードと、前記第2のトランスにおける前記第2の直列2次側巻線の第1端とが、互いに接続され、前記第2の直列2次側巻線の第2端が接地に接続されており、
前記整流平滑回路では、前記出力ライン上の接続点と接地との間に、前記容量素子が配置されており、
前記第1および第2の電圧地点での電圧を複数のレベルに設定するために前記第1のトランスにおける前記2次側巻線に発生させる電圧の基となる所定のパルス電圧が、前記第1のインバータ回路における前記スイッチング位相制御によって生成されて、前記第1のインバータ回路から前記第1の1次側巻線に対して印加されると共に、
前記第1および第2の直列2次側巻線にそれぞれ発生する電圧の基となる所定の電圧値が、前記第2のインバータ回路から前記第2の1次側巻線に対して印加されるようになっており、
前記所定の電圧値の印加に基づいて前記第1の直列2次側巻線に発生する電圧が、前記第1の電圧地点での電圧に対して重畳されると共に、前記所定の電圧値の印加に基づいて前記第2の直列2次側巻線に発生する電圧が、前記第2の電圧地点での電圧に対して重畳されるようになっている
スイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子を用いて電圧変換を行うスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置の一例として種々のDC-DCコンバータが提案され、実用に供されている(例えば、特許文献1参照)。この種のDC-DCコンバータは一般に、スイッチング素子を含むインバータ回路と、電力変換トランス(変圧素子)と、整流平滑回路とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このようなDC-DCコンバータ等のスイッチング電源装置では一般に、電力変換効率を向上させることが求められている。電力変換効率を向上させることが可能なスイッチング電源装置を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1のスイッチング電源装置は、入力電圧が入力される入力端子対と、出力電圧が出力される出力端子対と、1次側巻線および2次側巻線をそれぞれ有する第1および第2のトランスと、入力端子対と第1および第2のトランスにおける1次側巻線との間に配置され、各々がスイッチング素子を含んで構成された第1および第2のインバータ回路と、出力端子対と第1および第2のトランスにおける2次側巻線との間に配置され、第1および第2の整流素子を有する整流回路と、第1および第2のチョークコイルと出力端子対間に配置された容量素子とを有する平滑回路と、を含んで構成された、カレントダブラ型の整流平滑回路と、第1および第2のインバータ回路同士が位相差を持って動作するように、スイッチング素子に対してスイッチング位相制御によるスイッチング駆動を行う駆動部と、を備えたものである。第1のインバータ回路は、スイッチング素子としての第1ないし第4のスイッチング素子を含む、フルブリッジ回路により構成されていると共に、第1のインバータ回路では、入力端子対間で互いに直列接続された第1および第2のスイッチング素子と、入力端子対間で互いに直列接続された第3および第4のスイッチング素子とが、互いに並列配置されている。第2のインバータ回路は、第1および第2のスイッチング素子と、第1および第2のコンデンサとを含む、ハーフブリッジ回路により構成されていると共に、第2のインバータ回路では、入力端子対間で互いに直列接続された第1および第2のスイッチング素子と、入力端子対の間で互いに直列接続された第1および第2のコンデンサとが、互いに並列配置されている。第1のトランスにおける1次側巻線である第1の1次側巻線が、第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、第3および第4のスイッチング素子同士の接続点と、の間に配置されていると共に、第2のトランスにおける1次側巻線である第2の1次側巻線が、第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、第1および第2のコンデンサ同士の接続点と、の間に配置されている。第2のトランスにおける2次側巻線が、第1および第2の直列2次側巻線により構成されている。整流平滑回路では、第1のトランスにおける2次側巻線の第1端と、出力端子対のうちの一方の出力端子に接続された出力ライン上の接続点との間に、第1のチョークコイルが配置されていると共に、第1のトランスにおける2次側巻線の第2端と、出力ライン上の接続点との間に、第2のチョークコイルが配置されている。整流平滑回路では、第1のトランスにおける2次側巻線の第1端と、第2のトランスにおける第1の直列2次側巻線の第1端とが、第1の電圧地点において互いに接続され、第1の直列2次側巻線の第2端と、第1の整流素子のカソードとが、互いに接続され、第1の整流素子のアノードが接地に接続されていると共に、第1のトランスにおける2次側巻線の第2端と、前記第2のトランスにおける第2の直列2次側巻線の第1端とが、第2の電圧地点において互いに接続され、第2の直列2次側巻線の第2端と、第2の整流素子のカソードとが、互いに接続され、第2の整流素子のアノードが接地に接続されている。整流平滑回路では、出力ライン上の接続点と接地との間に、容量素子が配置されている。第1および第2の電圧地点での電圧を複数のレベルに設定するために第1のトランスにおける2次側巻線に発生させる電圧の基となる所定のパルス電圧が、第1のインバータ回路におけるスイッチング位相制御によって生成されて、この第1のインバータ回路から第1の1次側巻線に対して印加されると共に、第1および第2の直列2次側巻線にそれぞれ発生する電圧の基となる所定の電圧値が、第2のインバータ回路から第2の1次側巻線に対して印加されるようになっている。所定の電圧値の印加に基づいて第1の直列2次側巻線に発生する電圧が、第1の電圧地点での電圧に対して重畳されると共に、所定の電圧値の印加に基づいて第2の直列2次側巻線に発生する電圧が、第2の電圧地点での電圧に対して重畳されるようになっている。
本発明の第2のスイッチング電源装置は、入力電圧が入力される入力端子対と、出力電圧が出力される出力端子対と、1次側巻線および2次側巻線をそれぞれ有する第1および第2のトランスと、入力端子対と第1および第2のトランスにおける1次側巻線との間に配置され、各々がスイッチング素子を含んで構成された第1および第2のインバータ回路と、出力端子対と第1および第2のトランスにおける2次側巻線との間に配置され、第1および第2の整流素子を有する整流回路と、第1および第2のチョークコイルと出力端子対間に配置された容量素子とを有する平滑回路と、を含んで構成された、カレントダブラ型の整流平滑回路と、第1および第2のインバータ回路同士が位相差を持って動作するように、スイッチング素子に対してスイッチング位相制御によるスイッチング駆動を行う駆動部と、を備えたものである。第1のインバータ回路は、スイッチング素子としての第1ないし第4のスイッチング素子を含む、フルブリッジ回路により構成されていると共に、第1のインバータ回路では、入力端子対間で互いに直列接続された第1および第2のスイッチング素子と、入力端子対間で互いに直列接続された第3および第4のスイッチング素子とが、互いに並列配置されている。第2のインバータ回路は、第1および第2のスイッチング素子と、第1および第2のコンデンサとを含む、ハーフブリッジ回路により構成されていると共に、第2のインバータ回路では、入力端子対間で互いに直列接続された第1および第2のスイッチング素子と、入力端子対の間で互いに直列接続された第1および第2のコンデンサとが、互いに並列配置されている。第1のトランスにおける1次側巻線である第1の1次側巻線が、第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、第3および第4のスイッチング素子同士の接続点と、の間に配置されていると共に、第2のトランスにおける1次側巻線である第2の1次側巻線が、第1および第2のスイッチング素子同士の接続点と、第1および第2のコンデンサ同士の接続点と、の間に配置されている。第2のトランスにおける2次側巻線が、第1および第2の直列2次側巻線により構成されている。整流平滑回路では、第1のトランスにおける2次側巻線の第1端と、出力端子対のうちの一方の出力端子に接続された出力ライン上の接続点との間に、第1のチョークコイルが配置されていると共に、第1のトランスにおける2次側巻線の第2端と、出力ライン上の接続点との間に、第2のチョークコイルが配置されている。整流平滑回路では、第1のトランスにおける2次側巻線の第1端と、第1の整流素子のカソードとが、第1の電圧地点において互いに接続され、第1の整流素子のアノードと、第2のトランスにおける第1の直列2次側巻線の第1端とが、互いに接続され、第1の直列2次側巻線の第2端が接地に接続されていると共に、第1のトランスにおける2次側巻線の第2端と、第2の整流素子のカソードとが、第2の電圧地点において互いに接続され、第2の整流素子のアノードと、第2のトランスにおける第2の直列2次側巻線の第1端とが、互いに接続され、第2の直列2次側巻線の第2端が接地に接続されている。整流平滑回路では、出力ライン上の接続点と接地との間に、容量素子が配置されている。第1および第2の電圧地点での電圧を複数のレベルに設定するために第1のトランスにおける2次側巻線に発生させる電圧の基となる所定のパルス電圧が、第1のインバータ回路におけるスイッチング位相制御によって生成されて、この第1のインバータ回路から第1の1次側巻線に対して印加されると共に、第1および第2の直列2次側巻線にそれぞれ発生する電圧の基となる所定の電圧値が、第2のインバータ回路から第2の1次側巻線に対して印加されるようになっている。所定の電圧値の印加に基づいて第1の直列2次側巻線に発生する電圧が、第1の電圧地点での電圧に対して重畳されると共に、所定の電圧値の印加に基づいて第2の直列2次側巻線に発生する電圧が、第2の電圧地点での電圧に対して重畳されるようになっている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の第1および第2のスイッチング電源装置によれば、電力変換効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
【
図2】比較例1に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
【
図3】
図2に示したスイッチング電源装置の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図4】
図1に示したスイッチング電源装置の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図5】
図1に示したスイッチング電源装置の動作状態例を表す回路図である。
【
図9】変形例1に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
【
図10】第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
【
図11】
図10に示したスイッチング電源装置の動作例を表すタイミング波形図である。
【
図12】変形例2に係るスイッチング電源装置の概略構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(インバータ回路の構成・動作によりマルチレベル出力を行う例)
2.変形例1(第1の実施の形態において整流素子をハイサイドに配置した場合の例)
3.第2の実施の形態(変換回路を更に設けることによりマルチレベル出力を行う例)
4.変形例2(第2の実施の形態において整流素子をローサイドに配置した場合の例)
5.その他の変形例
【0009】
<1.第1の実施の形態>
[構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1)の概略構成例を、回路図で表したものである。このスイッチング電源装置1は、バッテリ10(第1のバッテリ)から供給される直流入力電圧Vinを直流出力電圧Voutに電圧変換し、図示しない第2のバッテリに供給して負荷9を駆動する、DC-DCコンバータとして機能するものである。ここで、スイッチング電源装置1における電圧変換の態様としては、アップコンバート(昇圧)およびダウンコンバート(降圧)のいずれであってもよい。なお、直流入力電圧Vinは、本発明における「入力電圧」の一具体例に対応し、直流出力電圧Voutは、本発明における「出力電圧」の一具体例に対応している。
【0010】
スイッチング電源装置1は、2つの入力端子T1,T2と、2つの出力端子T3,T4と、入力平滑コンデンサCinと、後述する2つのインバータ回路21,22を含むインバータ回路2と、2つのトランス31,32と、整流平滑回路4と、駆動回路5とを備えている。入力端子T1,T2間には直流入力電圧Vinが入力され、出力端子T3,T4の間からは直流出力電圧Voutが出力されるようになっている。なお、入力端子T1,T2は、本発明における「入力端子対」の一具体例に対応し、出力端子T3,T4は、本発明における「出力端子対」の一具体例に対応している。
【0011】
入力平滑コンデンサCinは、入力端子T1に接続された1次側高圧ラインL1Hと、入力端子T2に接続された1次側低圧ラインL1Lとの間に配置されている。具体的には、後述するインバータ回路2と入力端子T1,T2との間の位置において、入力平滑コンデンサCinの第1端が1次側高圧ラインL1Hに接続されると共に、入力平滑コンデンサCinの第2端が1次側低圧ラインL1Lに接続されている。この入力平滑コンデンサCinは、入力端子T1,T2から入力された直流入力電圧Vinを平滑化するためのコンデンサである。なお、
図1に示した回路構成例では、後述するインバータ回路2内の2つのコンデンサC51,C52もそれぞれ、入力平滑コンデンサとして機能することから、この入力平滑コンデンサCinを設けないようにしてもよい。
【0012】
(インバータ回路2)
インバータ回路2は、入力端子T1,T2と、後述するトランス31,32における1次側巻線311,321との間に、配置されている。このインバータ回路2は、4つのスイッチング素子S1~S4と、2つのコンデンサC51,C52とを有している。また、インバータ回路2は、4つのスイッチング素子S1~S4を含むインバータ回路21と、2つのスイッチング素子S1,S2および2つのコンデンサC51,C52を含むインバータ回路22と、を有している。つまり、インバータ回路21は、4個のスイッチング素子S1~S4を含むフルブリッジ回路により構成され、インバータ回路22は、2個のスイッチング素子S1,S2と2個のコンデンサC51,C52とを含む、ハーフブリッジ回路により構成されている。このような2つのインバータ回路21,22は、上記した入力端子T1,T2と1次側巻線311,321との間において、互いに並列配置されている。
【0013】
インバータ回路21では、スイッチング素子S1,S2の第1端同士が、接続点P1において互いに接続され、スイッチング素子S3,S4の第1端同士が、接続点P2において互いに接続されている。また、スイッチング素子S1,S3の第2端同士が、1次側高圧ラインL1H上において互いに接続され、スイッチング素子S2,S4の第2端同士が、1次側低圧ラインL1L上において互いに接続されている。このような構成によりインバータ回路21では、後述する駆動回路5から供給される駆動信号SG1~SG4に従って各スイッチング素子S1~S4がオン・オフ動作を行うことで、以下のようになる。すなわち、入力端子T1,T2間に印加される直流入力電圧Vinを交流電圧(電圧Va)に変換して、トランス31(1次側巻線311)へと出力するようになっている。
【0014】
インバータ回路22では、スイッチング素子S1,S2の第1端同士が、接続点P1において互いに接続され、コンデンサC51,C52の第1端同士が、接続点P3において互いに接続されている。また、スイッチング素子S1およびコンデンサC51の第2端同士が、1次側高圧ラインL1H上において互いに接続され、スイッチング素子S2およびコンデンサC52の第2端同士が、1次側低圧ラインL1L上において互いに接続されている。なお、接続点P1,P3間には、後述するトランス31の1次側巻線311が挿入配置されている。このような構成によりインバータ回路22では、後述する駆動回路5から供給される駆動信号SG1,SG2に従って各スイッチング素子S1,S2がオン・オフ動作を行うことで、以下のようになる。すなわち、直流入力電圧Vinを交流電圧(電圧Vb)に変換して、トランス32(1次側巻線321)へ出力するようになっている。
【0015】
なお、スイッチング素子S1~S4としては、例えば電界効果型トランジスタ(MOS-FET;Metal Oxide Semiconductor-Field Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolor Transistor)などのスイッチ素子が用いられる。スイッチング素子S1~S4としてMOS―FETを用いた場合には、各スイッチング素子S1~S4に並列接続されるコンデンサおよびダイオード(図示せず)をそれぞれ、このMOS―FETの寄生容量または寄生ダイオードから構成することが可能である。また、このようなコンデンサをそれぞれ、ダイオードの接合容量で構成することも可能である。このように構成した場合、スイッチング素子S1~S4とは別個にコンデンサやダイオードを設ける必要がなくなり、インバータ回路21,22の回路構成を簡素化することが可能となる。
【0016】
(トランス31,32)
トランス31は、1次側巻線311および2次側巻線312を有している。1次側巻線311は、第1端が接続点P1に接続され、第2端が接続点P2に接続されている。2次側巻線312では、第1端が後述する整流平滑回路4内の接続点P4に接続され、第2端が整流平滑回路4内の接続点P5に接続されている。このトランス31は、インバータ回路21によって生成された交流電圧(トランス31の1次側巻線311に入力される電圧Va)を電圧変換し、2次側巻線312の端部から交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の電圧変換の度合いは、1次側巻線311と2次側巻線312との巻数比によって定まる。
【0017】
トランス32は、1次側巻線321および2次側巻線322を有しており、2次側巻線322は、2つの2次側巻線322a,322bにより構成されている。1次側巻線321では、第1端が接続点P1に接続され、第2端が接続点P3に接続されている。2次側巻線322aでは、第1端が後述する整流平滑回路4内の接続点P4に接続され、第2端が、整流平滑回路4内における後述する整流ダイオード41のカソードに接続されている。また、2次側巻線322bでは、第1端が整流平滑回路4内の接続点P5に接続され、第2端が、整流平滑回路4内における後述する整流ダイオード42のカソードに接続されている。このトランス32は、インバータ回路22によって生成された交流電圧(トランス32の1次側巻線321に入力される電圧Vb)を電圧変換し、2次側巻線322(322a,322b)の端部から交流電圧を出力するようになっている。なお、この場合の電圧変換の度合いも、1次側巻線321と2次側巻線322(322a,322b)との巻数比によって定まる。
【0018】
ここで、インバータ回路21は、本発明における「第1のインバータ回路」の一具体例に対応し、インバータ回路22は、本発明における「第2のインバータ回路」の一具体例に対応している。また、スイッチング素子S1~S4はそれぞれ、本発明における「第1ないし第4のスイッチング素子」の一具体例に対応し、コンデンサC51,C52はそれぞれ、本発明における「第1および第2のコンデンサ」の一具体例に対応している。トランス31は、本発明における「第1のトランス」の一具体例に対応し、トランス32は、本発明における「第2のトランス」の一具体例に対応している。また、1次側巻線311は、本発明における「第1の1次側巻線」の一具体例に対応し、1次側巻線321は、本発明における「第2の1次側巻線」の一具体例に対応している。また、2次側巻線322(322a,322b)は、本発明における「直列2次側巻線」の一具体例に対応していると共に、2次側巻線322aは、本発明における「第1の直列2次側巻線」の一具体例に対応し、2次側巻線322bは、本発明における「第2の直列2次側巻線」の一具体例に対応している。
【0019】
(整流平滑回路4)
整流平滑回路4は、トランス31,32における1次側巻線311,321と、出力端子T3,T4との間に配置されている。この整流平滑回路4は、2個の整流ダイオード41,42と、2個のチョークコイルLch1,Lch2と、1個の出力平滑コンデンサCoutとを有しており、いわゆる「カレントダブラ型」の整流平滑回路となっている。なお、整流ダイオード41,42はそれぞれ、本発明における「第1および第2の整流素子」の一具体例に対応し、出力平滑コンデンサCoutは、本発明における「容量素子」の一具体例に対応している。また、チョークコイルLch1,Lch2はそれぞれ、本発明における「第1および第2のチョークコイル」の一具体例に対応している。
【0020】
この整流平滑回路4では、前述した2次側巻線312,322aの第1端同士の接続点(2次側ラインL21上の接続点P4:本発明における「第1の電圧地点」の一具体例に対応)が、チョークコイルLch1を介して、出力ラインLO上の接続点P6に接続されている。一方、前述した2次側巻線312,322bの第1端同士の接続点(2次側ラインL22上の接続点P5:本発明における「第2の電圧地点」の一具体例に対応)が、チョークコイルLch2を介して、出力ラインLO上の接続点P6に接続されている。また、この出力ラインLOは出力端子T3に接続されているとともに、出力端子T4は接地ラインLGに接続されている。そして、これらの出力ラインLOと接地ラインLGとの間(出力端子T3,T4の間)には、出力平滑コンデンサCoutが接続されている。
【0021】
整流平滑回路4ではまた、整流ダイオード41,42のアノード同士がそれぞれ、接地(グランド)に接続されている。そして、整流ダイオード41のカソードは、2次側巻線322aの第2端に接続され、整流ダイオード42のカソードは、2次側巻線322bの第2端に接続されている。つまり、整流ダイオード41,42に対してそれぞれ、トランス32の2次側巻線322a,322bが、個別に直列接続されている。また、整流ダイオード41は、2次側巻線322aと接地との間に配置されているとともに、整流ダイオード42は、2次側巻線322bと接地との間に配置されている(ローサイド配置)。このような構成により、詳細は後述するが、これらの整流ダイオード41,42にはそれぞれ、2次側巻線322a,322bに
発生する電圧(電圧Vc1,Vc2:
図1参照)が重畳されるようになっている。
【0022】
このような構成の整流平滑回路4では、整流ダイオード41,42により構成される整流回路において、トランス31,32から出力される交流電圧を整流して出力するようになっている。また、チョークコイルLch1,Lch2および出力平滑コンデンサCoutにより構成される平滑回路において、上記整流回路によって整流された電圧を平滑化することで、直流出力電圧Voutを生成するようになっている。なお、このようにして生成された直流出力電圧Voutは、出力端子T3,T4から前述した第2のバッテリ(図示せず)に出力され、給電されるようになっている。
【0023】
(駆動回路5)
駆動回路5は、インバータ回路21,22内のスイッチング素子S1~S4の動作をそれぞれ制御する、スイッチング駆動を行う回路である。具体的には、駆動回路5は、スイッチング素子S1~S4に対してそれぞれ駆動信号SG1~SG4を供給することで、各スイッチング素子S1~S4のオン・オフ動作を制御するようになっている。
【0024】
ここで、このような駆動回路5は、例えば、2個のインバータ回路21,22同士が位相差を持って動作するように、スイッチング駆動を行う。換言すると、この駆動回路5は、例えば、スイッチング素子S1~S4に対してスイッチング位相制御を行い、上記位相差を適切に設定することで、直流出力電圧Voutを安定化させるようになっている。あるいは、この駆動回路5は、2個のインバータ回路21,22(4個のスイッチング素子S1~S4)に対して、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)制御を行うようにしてもよい。
【0025】
駆動回路5によって、このようなスイッチング駆動が行われることで、詳細は後述するが、スイッチング電源装置1における整流平滑回路4内の平滑回路への入力電圧(後述する電圧Vd1,Vd2:本発明における「第1の電圧地点での電圧」,「第2の電圧地点での電圧」の一具体例に対応)が、複数レベル(複数段階)に設定されるようになっている(マルチレベル出力)。なお、このような駆動回路5は、本発明における「駆動部」の一具体例に対応している。
【0026】
[動作および作用・効果]
(A.基本動作)
このスイッチング電源装置1では、インバータ回路2(21,22)において、入力端子T1,T2から供給される直流入力電圧Vinがスイッチングされることで、交流電圧(電圧Va,Vb)が生成される。この交流電圧は、トランス31,32における1次側巻線311,321へ供給される。そして、トランス31,32では、この交流電圧が変圧されることで、2次側巻線312,322(322a,322b)から変圧された交流電圧が出力される。
【0027】
整流平滑回路4では、トランス31,32から出力された交流電圧(変圧された交流電圧)が、整流ダイオード41,42によって整流された後、チョークコイルLch1,Lch2および出力平滑コンデンサCoutによって平滑化される。これにより、出力端子T3,T4から直流出力電圧Voutが出力される。そして、この直流出力電圧Voutは、図示しない第2のバッテリに給電されて、その充電に供されるとともに、負荷9が駆動される。
【0028】
(B.詳細動作)
続いて、
図1に加えて
図2~
図8を参照して、スイッチング電源装置1の詳細動作について、比較例1(
図2,
図3)と比較しつつ説明する。
【0029】
(B-1.比較例1の構成)
図2は、比較例1に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置101)の概略構成例を、回路図で表したものである。この比較例1のスイッチング電源装置101は、
図1に示した本実施の形態のスイッチング電源装置1において、整流平滑回路4の代わりに整流平滑回路104を設けるようにしたものに対応しており、他の構成は基本的に同様となっている。
【0030】
また、整流平滑回路104は、前述したカレントダブラ型の整流平滑回路4において、2次側巻線322の配置位置を変更したものとなっている。具体的には、
図2に示したように、整流ダイオード41,42のカソードはそれぞれ、2次側ラインL21,L22上の接続点P4,P5に直接接続されているとともに、2次側巻線312と接続点P5との間に、2次側巻線322が直列接続されている。つまり、2つの2次側巻線312,322が、接続点P4,P5(2次側ラインL21,L22)の間で、互いに直列配置されている。このように、整流平滑回路104は、一般的なカレントダブラ型の整流平滑回路となっている。
【0031】
ここで、
図3,
図4はそれぞれ、このような比較例1のスイッチング電源装置101および実施の形態のスイッチング電源装置1における各部の電圧波形を、タイミング波形図で表したものである。なお、これらの
図3,
図4に示した各電圧波形は、前述したスイッチング位相制御およびPMW制御のうち、スイッチング位相制御が各スイッチング素子S1~S4に対して行われた場合の例について、示している。
【0032】
これらの
図3,
図4において、
図3(A),
図4(A)は、前述した駆動信号SG1,SG2の各電圧波形を示し、
図3(B),
図4(B)は、前述した駆動信号SG3,SG4の各電圧波形を示している。なお、各駆動信号SG1~SG2がH(ハイ)状態を示す期間において、各スイッチング素子S1~S4がオン(ON)状態となり、L(ロー)状態を示す期間において、オフ(OFF)状態となるものとし、以下同様である。また、
図3(C),
図4(C)は、前述した1次側巻線311に印加される交流電圧(電圧Va)の電圧波形を示し、
図3(D),
図4(D)は、前述した1次側巻線321に印加される交流電圧(電圧Vb)の電圧波形を示している。
図3(E),
図4(E)は、2次側ラインL21上におけるチョークコイルLch1の手前の地点での電圧Vd1(
図1,
図2参照)を示している。また、
図3(F),
図4(F)は、2次側ラインL22上におけるチョークコイルLch2の手前の地点での電圧Vd2(
図1,
図2参照)を示している。なお、
図3,
図4における横軸は、時間tを示しており、各電圧の方向は、
図1,
図2中において矢印で示した方向を正方向としている。
【0033】
また、
図5~
図8はそれぞれ、
図4中に示した各タイミング(タイミングt0~t4)の間におけるスイッチング電源装置1の動作状態を、回路図で模式的に表したものである。具体的には、
図5は、タイミングt0~t1の期間における動作状態を示し、
図6は、タイミングt1~t2の期間における動作状態を示し、
図7は、タイミングt2~t3の期間における動作状態を示し、
図8は、タイミングt3~t4(=t0)の期間における動作状態を示している。
【0034】
ここで、
図4に示した本実施の形態での動作例は、タイミングt0~t2(前半の半周期分)の動作例と、タイミングt2~t4(後半の半周期分)の動作例とを合わせて、1周期分の動作例となっている。同様に、
図3に示した比較例1での動作例も、タイミングt100~t102(前半の半周期分)の動作例と、タイミングt102~t104(=t100)(後半の半周期分)の動作例とを合わせて、1周期分の動作例となっている。なお、タイミングt100~t104はそれぞれ、タイミングt0~t4に相当するタイミングとなっている(
図3,
図4参照)。
【0035】
(B-2.本実施の形態の詳細動作)
スイッチング素子S1~S4の駆動信号SG1~SG4(
図4(A),(B))についてみると、以下のようになっている。すなわち、これらスイッチング素子S1~S4は、スイッチング動作のいかなる状態においても、直流入力電圧Vinが印加された入力端子T1,T2が電気的に短絡されない組み合わせおよびタイミングで駆動される。具体的には、スイッチング素子S3,S4同士は、同時にオンとなることはなく、また、スイッチング素子S1,S2同士も、同時にオンとなることはない。これらが同時にオンとなるのを回避するためにとられる時間的間隔は、「デッドタイム」と称される。また、2個のインバータ回路21,22同士は(スイッチング素子S1,S2とスイッチング素子S3,S4とは)、例えば
図4中に示したように、所定の位相差を持って動作する。つまり、駆動回路5は、これらのスイッチング素子S1~S4に対し、前述したようにスイッチング位相制御を行うようになっている。
【0036】
(タイミングt0~t1の期間)
まず、
図5に示したタイミングt0~t1の期間では、スイッチング素子S1,S4がオン状態になっていると共に、スイッチング素子S2,S3がオフ状態となっている(
図4(A),(B)参照)。
【0037】
この際に、トランス31,32の1次側(インバータ回路21,22)では、以下のような電流I1が流れる。すなわち、スイッチング素子S1、1次側巻線311およびスイッチング素子S4をそれぞれ、この順に経由して流れるとともに、スイッチング素子S1、1次側巻線321およびコンデンサC52をそれぞれ、この順に経由して流れる。
【0038】
一方、トランス31,32の2次側(整流平滑回路4)では、以下のような電流I2b,I2cがそれぞれ流れる。すなわち、整流ダイオード42、2次側巻線322bおよびチョークコイルLch2をそれぞれ、この順に経由する電流I2bが流れる。また、整流ダイオード42、2次側巻線322b,312およびチョークコイルLch1をそれぞれ、この順に経由する電流I2cが流れる。
【0039】
(タイミングt1~t2の期間)
次に、
図6に示したタイミングt1~t2の期間では、スイッチング素子S1,S3がオン状態になっていると共に、スイッチング素子S2,S4がオフ状態となっている(
図4(A),(B)参照)。
【0040】
この際に、トランス31,32の1次側では、以下のような電流I1が流れる。すなわち、スイッチング素子S3、1次側巻線311,321およびコンデンサC52をそれぞれ、この順に経由して流れる。また、スイッチング素子S1、1次側巻線321およびコンデンサC52をそれぞれ、この順に経由して流れる。
【0041】
一方、トランス31,32の2次側では、上記したタイミングt0~t1の期間と同様に、電流I2b,I2cがそれぞれ流れる。
【0042】
(タイミングt2~t3の期間)
続いて、
図7に示したタイミングt2~t3の期間では、スイッチング素子S2,S3がオン状態になっていると共に、スイッチング素子S1,S4がオフ状態となっている(
図4(A),(B)参照)。
【0043】
この際に、トランス31,32の1次側では、以下のような電流I1が流れる。すなわち、スイッチング素子S3、1次側巻線311およびスイッチング素子S2をそれぞれ、この順に経由して流れるとともに、このスイッチング素子S2から1次側巻線321をそれぞれ、この順に経由して流れる。
【0044】
一方、トランス31,32の2次側では、以下のような電流I2a,I2dがそれぞれ流れる。すなわち、整流ダイオード41、2次側巻線322aおよびチョークコイルLch1をそれぞれ、この順に経由する電流I2aが流れる。また、整流ダイオード41、2次側巻線322a,312およびチョークコイルLch2をそれぞれ、この順に経由する電流I2dが流れる。
【0045】
(タイミングt3~t4の期間)
次に、
図8に示したタイミングt3~t4の期間では、スイッチング素子S2,S4がオン状態になっていると共に、スイッチング素子S1,S3がオフ状態となっている(
図4(A),(B)参照)。
【0046】
この際に、トランス31,32の1次側では、以下のような電流I1が流れる。すなわち、コンデンサC51、1次側巻線321およびスイッチング素子S2をそれぞれ、この順に経由して流れるとともに、この1次側巻線321から、1次側巻線311およびスイッチング素子S4をそれぞれ、この順に経由して流れる。
【0047】
一方、トランス31,32の2次側では、上記したタイミングt2~t3の期間と同様に、電流I2a,I2dがそれぞれ流れる。
【0048】
以上で、
図4~
図8に示した一連の動作(タイミングt0~t4の各期間での動作)の説明が、終了となる。
【0049】
(C.作用・効果)
このようにして本実施の形態のスイッチング電源装置1では、
図1に示した回路構成となっていると共に、
図4~
図8に示した動作がなされることで、例えば前述した比較例1(
図2,
図3)の場合と比べ、以下の作用・効果が得られる。
【0050】
すなわち、まず、インバータ回路2では、インバータ回路21が前述した回路構成のフルブリッジ回路であり、インバータ回路22が前述した回路構成のハーフブリッジ回路となっている。また、カレントダブラ型の整流平滑回路4では、整流ダイオード41,42に対してそれぞれ、トランス32の2次側巻線322a,322bが、個別に直列接続されている。
【0051】
そして、本実施の形態では駆動回路5は、各トランス31,32の1次側巻線311,321に対して、以下のような電圧が印加されるように、各スイッチング素子S1~S4に対するスイッチング駆動を行う。
【0052】
具体的には、トランス31の1次側巻線311に対しては、前述した電圧Vd1,Vd2(平滑回路への入力電圧)を複数レベルに設定するための所定のパルス電圧(電圧Vaが示すパルス電圧:
図4(C)参照)が、インバータ回路2から印加される。一方、トランス32の1次側巻線321に対しては、このトランス32の2次側巻線322に
発生する電圧(電圧Vc1,Vc2:
図1参照)の基となる、所定の電圧値(電圧Vbが示す電圧値:
図4(D)参照)が、インバータ回路2から印加される。
【0053】
このような回路構成および動作(スイッチング駆動)により、本実施の形態のスイッチング電源装置1(整流平滑回路4)では、以下のようになる。すなわち、前述した電圧Vd1,Vd2が、複数レベルに設定される(マルチレベル出力)とともに、整流ダイオード41,42にはそれぞれ、2次側巻線322a,322bに
発生する電圧(電圧Vc1,Vc2)が重畳される。ちなみに、本実施の形態では、電圧Vd1,Vd2が3段階のレベル(3レベル)に設定されることになる(
図4(E),
図4(F)中に示した、電圧V0,V1,V2の3レベルを参照)。
【0054】
ここで、前述した比較例1のスイッチング電源装置101(
図2,
図3参照)では、整流平滑回路104が、一般的なカレントダブラ型の整流平滑回路となっていることから、以下のようになる。すなわち、チョークコイルLch1,Lch2の前段位置の電圧Vd1,Vd2=0Vとなる期間(電圧が発生しない期間)が生じる(
図3(E)中のタイミングt102~t104の期間、
図3(F)中のタイミングt100~t102の期間を参照)。すると、整流平滑回路104におけるリップル電流が増大してしまうおそれがある。このようにして、この比較例1のスイッチング電源装置101では、カレントダブラ型の整流平滑回路を用いた場合において、電力変換効率が低下してしまうことになる。
【0055】
これに対して、本実施の形態のスイッチング電源装置1では、上記したように、カレントダブラ型の整流平滑回路4において、整流ダイオード41,42にそれぞれ、2次側巻線322a,322bに
発生する電圧(電圧Vc1,Vc2)が重畳される。具体的には、例えば
図4(E),
図4(F)中の破線の矢印で示したように、このような電圧Vc1,Vc2が電圧Vd1,Vd2にそれぞれ重畳されることで、これらの電圧Vd1,Vd2=0Vとなる期間が、(ほとんど)生じなくなる(破線の領域A11,A12参照)。その結果、本実施の形態では、上記比較例1の場合と比べ、整流平滑回路4における効率の低下およびリップル電流の発生が抑えられ、例えば一般的なPSFB(位相シフトフルブリッジ)方式の場合と少なくとも同等のリップル電流となる。
【0056】
以上のようにして本実施の形態では、スイッチング電源装置1が
図1に示した回路構成となっていると共に、
図4~
図8に示した動作がなされるようにしたので、例えば比較例1の場合と比べ、整流平滑回路4における効率の低下およびリップル電流の発生を、抑えることができる。その結果、本実施の形態では比較例1等と比べ、スイッチング電源装置1の電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0057】
また、本実施の形態では、整流ダイオード41が2次側巻線322aと接地との間に配置されているとともに、整流ダイオード42が2次側巻線322bと接地との間に配置されている(ローサイド配置:
図1参照)ようにしたので、例えば以下のような効果も得ることが可能となる。すなわち、整流平滑回路4内における全ての整流ダイオード41,42をローサイド配置としたことで、例えば、以下説明する変形例1(ハイサイド配置)の場合と比べ、いわゆる同期整流に好適な回路構成とすることができる。その結果、本実施の形態では、例えばそのような変形例1と比べ、スイッチング電源装置1における低電圧化や大電流化などを、容易に実現することが可能となる。
【0058】
<2.変形例1>
続いて、上記した第1の実施の形態の変形例(変形例1)について説明する。なお、以下では、第1の実施の形態や前述した比較例1における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0059】
[構成]
図9は、変形例1に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1A)の概略構成例を、回路図で表したものである。
【0060】
本変形例のスイッチング電源装置1Aは、第1の実施の形態のスイッチング電源装置1(
図1参照)において、整流平滑回路4の代わりに整流平滑回路4Aを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0061】
この整流平滑回路4Aは、整流平滑回路4(
図1参照)において、整流ダイオード41および2次側巻線322a同士の配置位置を逆にするとともに、整流ダイオード42および2次側巻線322b同士の配置位置を逆にしたものに対応し、他の構成は同様となっている。
【0062】
具体的には、この整流平滑回路4Aでは、整流ダイオード41が、2次側巻線322aと接続点P4(2次側ラインL21)との間に配置されているとともに、整流ダイオード42が、2次側巻線322bと接続点P5(2次側ラインL22)との間に配置されている(ハイサイド配置)。なお、整流ダイオード41では、アノードが2次側巻線322aに接続されるとともに、カソードが接続点P4に接続され、整流ダイオード42では、アノードが2次側巻線322bに接続されるとともに、カソードが接続点P5に接続されている。ただし、このような整流平滑回路4Aにおいても、整流平滑回路4と同様に、整流ダイオード41,42にはそれぞれ、2次側巻線322a,322bに
発生する電圧(電圧Vc1,Vc2:
図9参照)が重畳されるようになっている。
【0063】
[作用・効果]
このような構成の本変形例においても、基本的には第1の実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、例えば比較例1の場合と比べ、整流平滑回路4Aにおける効率の低下およびリップル電流の発生を、抑えることができる。その結果、本変形例においても比較例1等と比べ、スイッチング電源装置1Aの電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0064】
<3.第2の実施の形態>
続いて、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、以下では、第1の実施の形態や比較例1、変形例1における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0065】
[構成]
図10は、第2の実施の形態に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1B)の概略構成例を、回路図で表したものである。
【0066】
本実施の形態のスイッチング電源装置1Bは、第1の実施の形態のスイッチング電源装置1(
図1参照)において、以下のようにしたものとなっている。すなわち、このスイッチング電源装置1Bは、インバータ回路2の代わりにインバータ回路2Bを設けると共に、整流平滑回路4の代わりに整流平滑回路4Bを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0067】
(インバータ回路2B)
インバータ回路2は、前述した2つのインバータ回路21,22を有しているのに対し、インバータ回路2Bは、2つのインバータ回路21B,22を有している。つまり、このインバータ回路2Bは、インバータ回路2に含まれるインバータ回路21を、インバータ回路21Bに変更したものとなっている。インバータ回路21(
図1参照)では、接続点P1,P2間に1次側巻線311が挿入配置された回路構成となっていたのに対し、インバータ回路21B(
図10参照)では、接続点P2,P3間に1次側巻線311が挿入配置された回路構成となっている。これによりインバータ回路21Bは、2個のスイッチング素子S3,S4と2個のコンデンサC51,C52とを含む、ハーフブリッジ回路となっている。
【0068】
(整流平滑回路4B)
整流平滑回路4Bは、変形例1の整流平滑回路4A(
図9参照)において、複数(6個)の整流ダイオード431~436を含む変換回路43を、更に設けるようにしたものに対応している。この変換回路43は、前述した電圧Vd1,Vd2を複数レベルに設定するための回路であり、整流ダイオード41,42および2次側巻線322a,322bと、1次側巻線311,321との間に配置されている。
【0069】
なお、上記した整流ダイオード431~436はそれぞれ、これまでに説明した整流ダイオード41,42とは異なる(別の)素子である。
【0070】
上記した変換回路43では、整流ダイオード431,432のアノードがともに、接続点P80において、接地に接続されている。また、整流ダイオード431,433のカソードがともに、接続点P81に接続され、整流ダイオード432,434のカソードがともに、接続点P82に接続されている。整流ダイオード433,435のアノードはともに、接続点P83に接続され、整流ダイオード434,436のアノードはともに、接続点P84に接続されている。整流ダイオード435のカソードは、2次側ラインL21に接続され、整流ダイオード436のカソードは、2次側ラインL22に接続されている。
【0071】
なお、2次側巻線312(312a,312b)のうちの2次側巻線312aは、上記した接続点P81と2次側ラインL21との間に配置され、2次側巻線312bは、上記した接続点P82と2次側ラインL22との間に配置されている。また、2次側巻線322(322a~322d)のうち、2次側巻線322cは、上記した接続点P80(接地)と接続点P83との間に配置され、2次側巻線322dは、上記した接続点P80と接続点P84との間に配置されている。
【0072】
[動作および作用・効果]
本実施の形態のスイッチング電源装置1Bにおいても、基本的には、第1の実施の形態および変形例1のスイッチング電源装置1,1Aと同様にして、直流入力電圧Vinが電圧変換され、直流出力電圧Voutが生成される。
【0073】
(A.動作例)
図11は、スイッチング電源装置1Bにおける各部の電圧波形を、タイミング波形図で表したものである。なお、この
図11に示した各電圧波形も、第1の実施の形態(
図4参照)と同様に、前述したスイッチング位相制御およびPMW制御のうち、スイッチング位相制御が各スイッチング素子S1~S4に対して行われた場合の例について、示している。
【0074】
この
図11において、
図11(A)は、駆動信号SG1,SG2の各電圧波形を示し、
図11(B)は、駆動信号SG3,SG4の各電圧波形を示している。また、
図11(C)は、1次側巻線311に印加される交流電圧(電圧Va)の電圧波形を示し、
図11(D)は、1次側巻線321に印加される交流電圧(電圧Vb)の電圧波形を示している。
図11(E)は、2次側ラインL21上におけるチョークコイルLch1の手前の地点での電圧Vd1(
図10参照)を示している。また、
図11(F)は、2次側ラインL22上におけるチョークコイルLch2の手前の地点での電圧Vd2(
図10参照)を示している。なお、
図11における横軸は、時間tを示しており、各電圧の方向は、
図10中において矢印で示した方向を正方向としている。
【0075】
また、この
図11に示した本実施の形態での動作例は、タイミングt10~t12(前半の半周期分)の動作例と、タイミングt12~t14(=t10)(後半の半周期分)の動作例とを合わせて、1周期分の動作例となっている。
【0076】
ちなみに、本実施の形態においては、タイミングt10~t11の期間では、スイッチング素子S1,S3がオン状態となると共に、スイッチング素子S2,S4がオフ状態となる。また、タイミングt11~t12の期間では、スイッチング素子S1,S4がオン状態となると共に、スイッチング素子S2,S3がオフ状態となる。タイミングt12~t13の期間では、スイッチング素子S2,S4がオン状態となると共に、スイッチング素子S1,S3がオフ状態となる。タイミングt13~t14の期間では、スイッチング素子S2,S3がオン状態となると共に、スイッチング素子S1,S4がオフ状態となる。
【0077】
(B.作用・効果)
ここで、第1の実施の形態および変形例1では、インバータ回路2(21,22)の構成と、前述した所定のパルス電圧(電圧Vaが示すパルス電圧)および所定の電圧値(電圧Vbが示す電圧値)とを用いて、前述した電圧Vd1,Vd2が複数レベルに設定されている。
【0078】
これに対して、本実施の形態(および後述する変形例2)では、比較例1と同様のインバータ回路2B(21B,22)の構成と、前述した変換回路43とを用いて、前述した電圧Vd1,Vd2が複数レベルに設定される。ちなみに、本実施の形態においても、電圧Vd1,Vd2が3段階のレベル(3レベル)に設定されている(
図11(E),
図11(F)中に示した、電圧V0,V1,V2の3レベルを参照)。
【0079】
ただし、本実施の形態(および変形例2)においても、第1の実施の形態および変形例1と同様に、カレントダブラ型の整流平滑回路4Bにおいて、整流ダイオード41,42にそれぞれ、2次側巻線322a,322bに
発生する電圧(電圧Vc1,Vc2)が重畳される。具体的には、例えば
図11(E),
図11(F)中の破線の矢印で示したように、このような電圧Vc1,Vc2が電圧Vd1,Vd2にそれぞれ重畳されることで、これらの電圧Vd1,Vd2=0Vとなる期間が、(ほとんど)生じなくなる(破線の領域A21,A22参照)。
【0080】
その結果、本実施の形態においても、例えば前述した比較例1の場合と比べ、整流平滑回路4Bにおける効率の低下およびリップル電流の発生が抑えられ、例えば一般的なPSFB方式の場合と少なくとも同等のリップル電流となる。よって、本実施の形態においても比較例1等と比べ、スイッチング電源装置1Bの電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0081】
<4.変形例2>
続いて、上記した第2の実施の形態の変形例(変形例2)について説明する。なお、以下では、第1,第2の実施の形態や比較例1、変形例1における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0082】
[構成]
図12は、変形例2に係るスイッチング電源装置(スイッチング電源装置1C)の概略構成例を、回路図で表したものである。
【0083】
本変形例のスイッチング電源装置1Cは、第2の実施の形態のスイッチング電源装置1B(
図10参照)において、整流平滑回路4Bの代わりに整流平滑回路4Cを設けるようにしたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0084】
整流平滑回路4Cは、第2の実施の形態の整流平滑回路4B(
図10参照)において、前述した変換回路43の代わりに変換回路43Cを設けるとともに、各整流ダイオード41,42を前述したローサイド配置に変更したものに対応し、他の構成は同様となっている。つまり、この整流平滑回路4Cでは、第1の実施の形態の整流平滑回路4(
図1参照)と同様に、整流ダイオード41が、2次側巻線322aと接地との間に配置されているとともに、整流ダイオード42が、2次側巻線322bと接地との間に配置されている。
【0085】
また、上記した変換回路43Cは、変換回路43と同様に、前述した電圧Vd1,Vd2を複数レベルに設定するための回路であり、整流ダイオード41,42および2次側巻線322a,322bと、1次側巻線311,321との間に配置されている。
【0086】
この変換回路43Cでは、整流ダイオード431~436のアノードがともに、接続点P80において、接地に接続されている。また、整流ダイオード431のカソードが接続点P81に接続され、整流ダイオード432のカソードが接続点P82に接続されている。整流ダイオード433のカソードが接続点P85に接続され、整流ダイオード434のカソードが接続点P86に接続されている。整流ダイオード435のカソードは、後述する2次側巻線312cを介して接続点P85に接続され、整流ダイオード436のカソードは、後述する2次側巻線312dを介して接続点P86に接続されている。
【0087】
なお、2次側巻線312(312a~312d)のうちの2次側巻線312aは、上記した接続点P81と2次側ラインL21との間に配置され、2次側巻線312bは、上記した接続点P82と2次側ラインL22との間に配置されている。また、2次側巻線312cは、上記した接続点P85と、整流ダイオード435のカソードとの間に配置され、2次側巻線312dは、上記した接続点P86と、整流ダイオード436のカソードとの間に配置されている。
【0088】
一方、2次側巻線322(322a~322d)のうち、2次側巻線322cは、上記した接続点P85と2次側ラインL21との間に配置されている。また、2次側巻線322dは、上記した接続点P86と2次側ラインL22との間に配置されている。
【0089】
ここで、このような変換回路43C内の整流ダイオード431~436はそれぞれ、上記した2次側巻線312a,312b,312c,312d,322c,322dと、接地との間に配置されている(ローサイド配置:
図12参照)。
【0090】
[作用・効果]
このような構成の本変形例においても、基本的には、第2の実施の形態と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、例えば前述した比較例1の場合と比べ、整流平滑回路4Cにおける効率の低下およびリップル電流の発生を、抑えることができる。その結果、本変形例においても比較例1等と比べ、スイッチング電源装置1Cの電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0091】
また、特に本変形例では、第1の実施の形態と同様に、整流平滑回路4C内における全ての整流ダイオード(整流ダイオード41,42および整流ダイオード431~436)をローサイド配置としたことで、以下のようになる。すなわち、例えば、前述した変形例1や、上記した第2の実施の形態の場合(ハイサイド配置の場合)と比べ、同期整流に好適な回路構成とすることができる。その結果、本変形例では、例えばそのような変形例1や第2の実施の形態と比べ、スイッチング電源装置1Cにおける低電圧化や大電流化などを、容易に実現することが可能となる。
【0092】
<5.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例をいくつか挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0093】
例えば、上記実施の形態等では、インバータ回路の構成を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、インバータ回路として他の構成のものを用いるようにしてもよい。具体的には、上記実施の形態等では、インバータ回路が、2個のスイッチング素子を含むハーフブリッジ回路の場合、または、4個のスイッチング素子を含むフルブリッジ回路の場合について説明した。しかしながら、これらの場合には限られず、他の構成のインバータ回路を用いるようにしてもよい。
【0094】
また、上記実施の形態等では、カレントダブラ型の整流平滑回路の構成を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、整流平滑回路として他の構成のものを用いるようにしてもよい。具体的には、例えば、整流平滑回路内の各整流素子を、MOS-FETの寄生ダイオードにより構成するようにしてもよい。また、その場合には、このMOS-FETの寄生ダイオードが導通する期間と同期して、MOS-FET自身もオン状態となる(同期整流を行う)ようにするのが好ましい。より少ない電圧降下で整流することができるからである。なお、この場合、MOS-FETにおけるソース側に、寄生ダイオードのアノード側が配置されると共に、MOS-FETにおけるドレイン側に、寄生ダイオードのカソード側が配置されることになる。
【0095】
更に、上記実施の形態等では、インバータ回路およびトランスの個数がそれぞれ、2個の場合(整流平滑回路内の整流素子の個数が、2個,8個(=2個+6個)の場合)を例に挙げて説明したが、それらの個数は、この場合の例には限られない。具体的には、本発明は、インバータ回路およびトランスの個数がそれぞれ、N個(N:2以上の整数)の場合に適用することが可能である。つまり、上記実施の形態等で説明したN=2の場合だけでなく、N=3以上の任意の数の場合(Nが偶数,奇数のいずれの場合)についても同様にして、本発明を適用することが可能である。なお、上記実施の形態等で説明した、インバータ回路やトランス、整流素子の個数としては、物理的な個数には限られず、等価回路に存在する個数を意味している。
【0096】
加えて、上記実施の形態等では、駆動回路による各スイッチング素子の動作制御(スイッチング駆動)の手法を、具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等の例には限られず、スイッチング駆動の手法として、他の手法を用いるようにしてもよい。具体的には、例えば、前述したスイッチング位相制御およびPMW制御の手法や、前述した所定のパルス電圧や電圧値の印加手法、前述した電圧Vd1,Vd2の複数レベル(マルチレベル)の設定手法等については、上記実施の形態等の手法には限られず、他の手法を用いるようにしてもよい。また、電圧Vd1,Vd2を複数レベルに設定する際のレベル数(段階数)についても、上記実施の形態等で説明したレベル数(3レベル)の例には限られず、4レベル以上の任意の数で設定するようにしてもよい。
【0097】
また、上記実施の形態等では、本発明に係るスイッチング電源装置の一例として、DC-DCコンバータを挙げて説明したが、本発明は、例えばAC-DCコンバータなどの、他の種類のスイッチング電源装置にも適用することが可能である。
【0098】
更に、これまでに説明した各構成例等を、任意の組み合わせで適用してもよい。
【符号の説明】
【0099】
1,1A~1C…スイッチング電源装置、10…バッテリ、2(21,22),2B(21B,22)…インバータ回路、31,32…トランス、311,321…1次側巻線、312(312a,312b),322(322a~322d)…2次側巻線、4,4A~4C…整流平滑回路、41,42,431~436…整流ダイオード、43,43C…変換回路、5…駆動回路、9…負荷、T1,T2…入力端子、T3,T4…出力端子、L1H…1次側高圧ライン、L1L…1次側低圧ライン、L21,L22…2次側ライン、LO…出力ライン、LG…接地ライン、Vin…直流入力電圧、Vout…直流出力電圧、I1,I2a~I2d…電流、Va,Vb,Vc1,Vc2,Vd1,Vd2,V0,V1,V2…電圧、Cin…入力平滑コンデンサ、Cout…出力平滑コンデンサ、S1~S4…スイッチング素子、SG1~SG4…駆動信号、C51,C52…コンデンサ、Lch1,Lch2…チョークコイル、P1~P7,P80~P86…接続点、t0~t4,t10~t14…タイミング。