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特許7434722改質木材、改質木材の製造方法および楽器
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  • 特許-改質木材、改質木材の製造方法および楽器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】改質木材、改質木材の製造方法および楽器
(51)【国際特許分類】
   B27K 3/34 20060101AFI20240214BHJP
   B27M 3/00 20060101ALI20240214BHJP
   G10D 3/22 20200101ALI20240214BHJP
【FI】
B27K3/34 Z
B27M3/00 Q
G10D3/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019082766
(22)【出願日】2019-04-24
(65)【公開番号】P2020179547
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2022-02-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】平工 達也
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347160(JP,A)
【文献】特開平06-262601(JP,A)
【文献】Richard Dapson et al.,Brazilwood, sappanwood, brazilin and the red dye brazilein: from textile dyeing and folk medicine to biological staining and musical instruments,Biotechnic & Histochemistry,Taylor & Francis,2015年04月20日,90巻,第6号,p.401-423
【文献】Masahiro Matsunaga et al.,Vibrational property changes of spruce wood by impregnation with watersoluble extractives of pernambuco (Guilandina echinata Spreng.) II: structural analysis of extractive components,Journal of Wood Science,ドイツ,シュプリンガー・ネイチャー社,2000年06月01日,46巻,p.253-257
【文献】Masahiro Matsunaga et al.,Vibrational property changes of spruce wood by impregnation with watersoluble extractives of pernambuco (Guilandina echinata Spreng.),Journal of Wood Science,ドイツ,シュプリンガー・ネイチャー社,1999年12月01日,45巻,p.470-474
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B27K 1/00-9/00
B27M 1/00-3/38
G10D 1/00-3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材と、前記木材に含浸されたスオウ抽出成分とを有し、前記スオウ抽出成分が、スオウの水抽出成分の精製していない成分組成を有するものであって、前記スオウから抽出された固形分の質量が抽出前のスオウの質量の8~12%となるまで水を用いて抽出したものであり、前記木材の表面から平均1mm以上の深さまで前記スオウ抽出成分が侵入している改質木材。
【請求項2】
前記スオウ抽出成分の質量が、前記木材の絶乾状態での質量の0.5~10%である請求項1に記載の改質木材。
【請求項3】
前記木材の繊維方向の内部損失が4×10-3以上である請求項1または請求項2に記 載の改質木材。
【請求項4】
前記木材が、メープル、スプルース、マホガニー、ビーチ、バーチ、ウォルナットのいずれかである請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の改質木材。
【請求項5】
スオウから水を用いてスオウ抽出成分を抽出する抽出工程であって、前記スオウから抽出された固形分の質量が、抽出前のスオウの質量の8~12%となるまで抽出を行う抽出工程と、
木材に、スオウの水抽出成分の精製していない成分組成を有するスオウ抽出成分を含浸させる含浸工程であって、前記スオウ抽出成分を含むスオウ溶液に浸漬させた状態で前記木材を密閉容器に入れて減圧し、前記木材の表面から平均1mm以上の深さまで前記スオウ抽出成分を侵入させる含浸工程を含む改質木材の製造方法。
【請求項6】
前記含浸工程が、前記木材を、前記スオウ抽出成分を0.1~5.0質量%含むスオウ溶液に浸漬させる工程である請求項5に記載の改質木材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の改質木材を含む楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改質木材、改質木材の製造方法および楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器、打楽器、管楽器などの楽器には、木材が使用されている。楽器に使用される木材としては、良好な音質が得られるように、内部損失(tanδ)の低いものを用いることが好ましい。しかし、楽器の材料として好適な内部損失の低い木材は希少である。このため、木材を改質して、内部損失を低減させることが要求されている。
【0003】
従来、木材の内部損失を低減させる方法として、レゾルシンおよびホルムアルデヒドを用いて木質を改質する方法がある。しかし、この方法では、ホルムアルデヒドを用いるため、改質後の木材がホルムアルデヒド臭を有するものになるという欠点があった。
【0004】
ホルムアルデヒドを用いずに、木材の内部損失を低減させる方法として、ヘマトキシリンを用いて木材を改質する方法がある。例えば、特許文献1には、ヘマトキシリンおよび/またはその誘導体を含む溶液を木材に含浸させもしくは塗布した後に、目的の含水率となるまで乾燥させる木材の改質方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3520962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ヘマトキシリンおよび/またはその誘導体を含む溶液を用いる木材の改質方法では、ヘマトキシリンおよび/またはその誘導体が高価であるという不都合があった。ヘマトキシリンおよび/またはその誘導体は、マメ科植物から抽出して精製する方法によって製造される。ヘマトキシリンおよび/またはその誘導体を得るために行われる精製は、手間のかかる作業であり、ヘマトキシリンおよび/またはその誘導体の価格が高いことの原因となっている。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、精製することなく容易に製造できる改質成分が含浸された内部損失の低い改質木材、およびこれを用いた楽器を提供することを課題とする。
また、本発明は、精製することなく容易に製造できる改質成分を用いて、木材の内部損失を低下させる木材の改質方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために、木材の内部損失を低減させるために木材に含浸させる改質成分として、精製することなく容易に製造できる改質成分に着目し、鋭意検討を重ねた。
その結果、本発明者は、改質成分としてスオウ抽出成分を用いればよいことを見出し、本発明を想到した。
すなわち、本発明は以下の事項に関する。
【0009】
[1] 木材と、前記木材に含浸されたスオウ抽出成分とを有し、前記スオウ抽出成分が、スオウの水抽出成分の精製していない成分組成を有するものであって、前記スオウから抽出された固形分の質量が抽出前のスオウの質量の8~12%となるまで水を用いて抽出したものであり、前記木材の表面から平均1mm以上の深さまで前記スオウ抽出成分が侵入している改質木材。
[2] 前記スオウ抽出成分の質量が、前記木材の絶乾状態での質量の0.5~10%である[1]に記載の改質木材。
[3] 前記木材の繊維方向の内部損失が4×10-3以上である[1]または[2]に記載の改質木材。
[4] 前記木材が、メープル、スプルース、マホガニー、ビーチ、バーチ、ウォルナットのいずれかである[1]~[3]のいずれかに記載の改質木材。
【0010】
[5] スオウから水を用いてスオウ抽出成分を抽出する抽出工程であって、前記スオウから抽出された固形分の質量が、抽出前のスオウの質量の8~12%となるまで抽出を行う抽出工程と、
木材に、スオウの水抽出成分の精製していない成分組成を有するスオウ抽出成分を含浸させる含浸工程であって、前記スオウ抽出成分を含むスオウ溶液に浸漬させた状態で前記木材を密閉容器に入れて減圧し、前記木材の表面から平均1mm以上の深さまで前記スオウ抽出成分を侵入させる含浸工程を含む改質木材の製造方法。
[6] 前記含浸工程が、前記木材を、前記スオウ抽出成分を0.1~5.0質量%含むスオウ溶液に浸漬させる工程である[5]に記載の改質木材の製造方法
【0011】
[8] [1]~[4]のいずれかに記載の改質木材を含む楽器。
【発明の効果】
【0012】
本発明の改質木材は、木材と、木材に含浸されたスオウ抽出成分とを有する。スオウ抽出成分は、スオウから水を用いて抽出するだけで得られ、精製することなく容易に製造できる。
また、スオウ抽出成分は、木材に含浸させることで、木材の内部損失を低減させる改質成分である。したがって、本発明の改質木材は、内部損失の低いものである。
【0013】
本発明の改質木材の製造方法は、木材に、スオウ抽出成分を含浸させる含浸工程を含む。本発明の改質木材の製造方法によれば、精製することなく容易に製造できる改質成分を用いて、木材の内部損失を低下させることができる。
本発明の楽器は、本発明の改質木材が用いられている。本発明の改質木材は、内部損失が低いため、本発明の楽器は、音質が良好である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の楽器の一例としてのアコースティックギターを示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した実施形態について詳細に説明する。
[改質木材]
本実施形態の改質木材は、木材と、木材に含浸されたスオウ抽出成分とを有する。
本実施形態において、木材にスオウ抽出成分が含浸しているとは、少なくとも木材の表面から0.5mm以上、好ましくは2mm以上の深さまでスオウ抽出成分が侵入している状態であることを意味する。
【0016】
改質木材の材料として使用される木材は、半径方向(R方向)の内部損失が12×10-3以上であるものが好ましく、15×10-3以上であるものがより好ましい。半径方向の内部損失が12×10-3以上の木材は、スオウ抽出成分を含浸させることによる内部損失の低減効果が顕著であるため、改質木材の材料として好ましい。
また、改質木材の材料として使用される木材は、半径方向の内部損失が25×10-3以下であることが好ましく、23×10-3以下であることがより好ましい。半径方向の内部損失が25×10-3以下の木材は、スオウ抽出成分を含浸させることにより、楽器の材料として好適な半径方向の内部損失が22×10-3以下の改質木材となりやすく、好ましい。
【0017】
改質木材の材料として使用される木材は、繊維方向(L方向)の内部損失が4×10-3以上であるものが好ましく、5×10-3以上であるものがより好ましい。繊維方向の内部損失が4×10-3以上の木材は、スオウ抽出成分を含浸させることによる内部損失の低減効果が顕著であるため、改質木材の材料として好ましい。
また、改質木材の材料として使用される木材は、繊維方向の内部損失が12×10-3以下であることが好ましく、10×10-3以下であることがより好ましい。繊維方向の内部損失が12×10-3以下の木材は、スオウ抽出成分を含浸させることにより、楽器の材料として好適な繊維方向の内部損失が9×10-3以下の改質木材となりやすく、好ましい。
【0018】
本実施形態において、「内部損失(tanδ)」とは、以下に示す方法により求めた数値である。
両端自由たわみ振動法(矢野等:木材学会誌,32,984-989(1986))を用いて、共振周波数よりEuller-Bernoulli式で比動的ヤング率を求めた。また、自由減衰曲線より対数減衰率を得て、これをπで除してtanδに変換し、振動減衰率である内部損失の数値とした。
【0019】
特に指定がない限り、本実施形態における木材または改質木材の「内部損失(tanδ)」とは、温度105℃のオーブンで質量が安定するまで加熱して絶乾状態とした後、温度22℃、相対湿度60%の雰囲気下で質量が安定するまで放置した木材または改質木材の測定値である。
【0020】
改質木材の材料として使用される木材の種類は、特に限定されないが、メープル、スプルース、マホガニー、ビーチ、バーチ、ウォルナットから選ばれるいずれかであることが好ましい。これらの木材は、入手が容易であるため、これらの木材にスオウ抽出成分を含浸させた改質木材は、安定して供給可能である。しかも内部損失が低いため高性能な楽器の材料として好適である。
【0021】
改質木材の材料として使用される木材の種類は、これらの中でも、メープル、スプルース、ビーチ、バーチ、ウォルナットから選ばれるいずれかであることが好ましい。これらの木材は、スオウ抽出成分を含浸させることによる内部損失の低減効果が顕著である。このため、スオウ抽出成分を含浸させることにより、楽器の材料として好適な内部損失を有する高性能な改質木材となり、好ましい。
【0022】
本実施形態の改質木材に含まれるスオウ抽出成分の質量は、木材(スオウ抽出成分を含浸させる前の木材)の絶乾状態での質量の0.5~10%であることが好ましく、1~7%であることがより好ましい。絶乾状態の木材の質量に対する、改質木材中のスオウ抽出成分の質量の割合が0.5%以上であると、スオウ抽出成分を含浸させたことによる内部損失の低減効果が顕著な改質木材となる。しかし、絶乾状態の木材の質量に対する、改質木材中のスオウ抽出成分の質量の割合が10%を超えても、スオウ抽出成分を含浸させたことによる内部損失の低減効果は飽和する。このため、改質木材中のスオウ抽出成分の質量は、木材の絶乾状態での質量の10%以下であることが好ましい。
【0023】
本実施形態における「木材の質量に対する改質木材中のスオウ抽出成分の質量の割合」は、絶乾状態の木材の質量(処理前)と、絶乾状態の改質木材の質量(処理後)とをそれぞれ測定し、以下に示す式により算出した数値である。
[{(処理後-処理前)/処理前}×100(%)]
【0024】
本実施形態の改質木材は、気乾密度が0.2~1.2g/cm-3であることが好ましく、0.3~1.0g/cm-3であることがより好ましい。改質木材の気乾密度が0.2g/cm-3以上であると、これを用いた楽器が、楽器としての十分な剛性を有するものとなる。また、改質木材の気乾密度が1.2g/cm-3以下であると、これを用いた楽器が演奏時に十分に振動するものとなるため、音量および音質が良好となる。
【0025】
本実施形態の改質木材における繊維方向(L方向)の弾性率は、7~20GPaであることが好ましく、8~18GPaであることがより好ましい。改質木材における半径方向(R方向)の弾性率は、0.5~2.5GPaであることが好ましく、0.8~2GPaであることがより好ましい。改質木材における繊維方向および半径方向の弾性率が、それぞれ上記範囲内であると、楽器の材料としてより好適なものとなる。改質木材における繊維方向の弾性率が7GPa以上であって半径方向の弾性率が0.5GPa以上であると、これを用いた楽器が、楽器としての十分な剛性を有するものとなる。また、半径方向の弾性率が2.5GPa以下であると、半径方向の弾性率と繊維方向の弾性率との差が確保されやすくなり、所望の音色を有する楽器が得られやすい改質木材となる。
【0026】
[改質木材の製造方法]
本実施形態の改質木材の製造方法について説明する。
本実施形態の改質木材の製造方法は、木材にスオウ抽出成分を含浸させる含浸工程を含む。本実施形態の改質木材の製造方法は、含浸工程の前に、スオウから水を用いてスオウ抽出成分を抽出する抽出工程を有することが好ましい。
【0027】
(抽出工程)
抽出工程では、スオウから水を用いてスオウ抽出成分を抽出する。
抽出工程において使用する抽出器は、特に限定されない。
抽出工程において使用するスオウの形状は、特に限定されないが、効率よく抽出するために、チップ状または粉末状のものを用いることが好ましく、粉末状のものを用いること特に好ましい。
【0028】
抽出工程は、特に限定されないが、例えば、以下のような方法がある。
抽出工程では、スオウを被抽出材料として用いる第1工程と、スオウ抽出液から分離されたスオウを被抽出材料として用いる第2工程とを行うことが好ましい。
【0029】
第1工程は、スオウを水中に入れ、所定の温度で所定の時間加熱してスオウ抽出液を得た後、スオウ抽出液中のスオウを除去してスオウ溶液を得る工程である。
第1工程において抽出に使用する水の質量は、特に限定されないが、効率よくスオウ抽出成分を抽出するために、スオウの質量の10~20倍とすることが好ましい。
第1工程における抽出温度は、特に限定されないが、効率よくスオウ抽出成分を抽出するために、95~98℃であることが好ましい。
第1工程における抽出時間は、例えば、1~2時間である。
第1工程において、スオウ抽出液中のスオウを除去する方法は、使用するスオウの形状に応じて適宜決定でき、特に限定されない。例えば、金網や布などを用いてスオウ抽出液をろ過する方法を用いることができる。
【0030】
第2工程は、スオウ抽出液から分離されたスオウを水中に入れ、所定の温度で所定の時間加熱してスオウ抽出液を得た後、スオウ抽出液中のスオウを除去してスオウ溶液を得る工程である。
第2工程において抽出に使用する水の質量は、特に限定されないが、効率よくスオウ抽出成分を抽出するために、スオウ抽出液から分離されたスオウの質量の10~20倍とすることが好ましい。
第2工程における抽出温度および抽出時間は、効率よくスオウ抽出成分を抽出するために、第1工程と同じ範囲内であることが好ましい。
第2工程において、スオウ抽出液中のスオウを除去する方法は、例えば、第1工程と同じ方法を用いることができる。
【0031】
第2工程は必要に応じて複数回行ってもよい。スオウの形状、第1工程および第2工程における抽出温度および抽出時間などに応じて、抽出回数を決定してよい。
第1工程および第2工程を行うことにより得られた全てのスオウ溶液は、集められて後述する含浸工程で用いられる。
【0032】
本実施形態では、抽出工程において、スオウから抽出された固形分の質量が、抽出前のスオウの質量の8~12%となるまで抽出を行うことが好ましく、9~11%となるまで抽出を行うことがより好ましい。スオウから抽出された固形分の質量が、抽出前のスオウの質量の8%以上となるまで抽出を行うことで、スオウに含まれる抽出可能な成分が十分に抽出されるとともに、スオウ抽出成分の組成のばらつきが少なく、品質の安定したスオウ溶液が得られる。また、スオウから水を用いてスオウ抽出成分を抽出する場合、スオウから抽出された固形分の質量が、抽出前のスオウの質量の12%超となるまで抽出を行うことは困難である。このため、スオウから抽出された固形分の質量は、抽出前のスオウの質量の12%以下であることが好ましい。
【0033】
抽出前のスオウの質量に対するスオウから抽出された固形分の質量の割合は、スオウの形状、抽出に使用する水の量、抽出温度、抽出時間、抽出回数によって変化する。具体的には、スオウの形状を小さく、抽出に使用する水の量を多く、抽出温度を高く、抽出時間を長く、抽出回数を多くすることにより、抽出前のスオウの質量に対するスオウから抽出された固形分の質量の割合を高くすることができる。
したがって、スオウの形状、抽出に使用する水の量、抽出温度、抽出時間、抽出回数を異ならせて、スオウからスオウ抽出成分を抽出し、それぞれの条件での抽出前のスオウの質量に対するスオウから抽出された固形分の質量の割合をあらかじめ求めておくことにより、スオウから抽出された固形分の質量が所定の量となる条件を求めることができる。
【0034】
本実施形態において、スオウから抽出された固形分の質量は、抽出工程を行うことにより得られた全てのスオウ溶液を集めたものから一部をサンプルとして採取し、これを蒸発乾固して得られた固形分の質量を用いて、全てのスオウ溶液に含まれる固形分の質量を算出して得た数値である。
【0035】
抽出工程を行うことにより得られたスオウ溶液(第1工程および第2工程を行うことにより得られた全てのスオウ溶液を集めたもの)は、スオウ溶液中のスオウ抽出成分の濃度を調整するために、必要に応じて濃縮または希釈してよい。
スオウ溶液を濃縮する方法は、例えば、スオウ溶液を加熱して、スオウ溶液中に含まれる水を蒸発させる方法が挙げられる。この場合、スオウ溶液の濃縮に必要な時間を少なくするために、スオウ溶液を減圧下で加熱してもよい。
スオウ溶液を希釈する方法は、例えば、スオウ溶液に水を加える方法が挙げられる。
【0036】
(含浸工程)
含浸工程では、木材にスオウ抽出成分を含浸させる。含浸工程は、木材をスオウ溶液に浸漬させる工程であることが好ましい。
【0037】
含浸工程は、木材を、スオウ抽出成分を0.1~5.0質量%含むスオウ溶液に浸漬させる工程であることが好ましく、スオウ抽出成分を0.5~4.0質量%含むスオウ溶液に浸漬させる工程であることがより好ましい。スオウ溶液に含まれるスオウ抽出成分が0.1質量%以上であると、スオウ抽出成分の質量が木材の質量の0.5%以上である改質木材が得られやすく、好ましい。また、スオウ溶液に含まれるスオウ抽出成分が5.0質量%以下であると、スオウ抽出成分の質量が木材の質量の10%以下である改質木材が得られやすいため、好ましい。
【0038】
改質木材中のスオウ抽出成分の質量は、材料として使用する木材の種類および板厚に応じて、木材を浸漬させるスオウ溶液中のスオウ抽出成分の濃度を制御するとともに、必要に応じて、例えば、以下に示す(1)~(5)の木材へのスオウ抽出成分の含浸を促進する方法から選ばれる一つまたは複数の方法を、1回以上行うことにより調整できる。
【0039】
(1)木材を浸漬させたスオウ溶液に超音波を伝導させる方法
(2)木材に穴をあけてからスオウ溶液に浸漬させる方法
(3)木材をスオウ溶液に浸漬させた状態で木材を減圧する方法
(4)木材をスオウ溶液に浸漬させた状態で木材を加圧する方法
(5)木材を浸漬させるスオウ溶液を加熱する方法
【0040】
上記の(3)木材をスオウ溶液に浸漬させた状態で木材を減圧する方法は、例えば、スオウ溶液に浸漬させた状態の木材を、密閉容器内で20~50hPaの圧力で30分~1時間減圧する方法が挙げられる。スオウ溶液に浸漬させた状態の木材を減圧することにより、木材中の空気が抜かれて、木材へのスオウ抽出成分の含浸が促進される。上記(3)の方法を行った後、常圧に戻した木材は、引き続きスオウ溶液に浸漬させてもよい。
【0041】
上記の(4)木材をスオウ溶液に浸漬させた状態で木材を加圧するは、例えば、スオウ溶液に浸漬させた状態の木材を、密閉容器内で2~10MPaの圧力で30分~2時間加圧する方法が挙げられる。(4)木材をスオウ溶液に浸漬させた状態で木材を加圧する方法は、上記(3)の方法を行った後の木材に対して行ってもよい。
上記の(5)木材を浸漬させるスオウ溶液を加熱する方法は、例えば、スオウ溶液を50℃~90℃に加熱する方法が挙げられる。
【0042】
材料として使用する木材が板厚1mm以下の木材単板である場合、木材を浸漬させるスオウ溶液中のスオウ抽出成分の濃度を制御するだけで、木材にスオウ抽出成分を十分に含浸させることができる。
材料として使用する木材が板厚1mm~数mmの木材単板である場合、上記の(3)木材をスオウ溶液に浸漬させた状態で木材を減圧する方法を用いることが好ましい。
材料として使用する木材が数mmを超える板厚の高比重材である場合、上記(3)の方法を行った後に、上記の(4)木材をスオウ溶液に浸漬させた状態で木材を加圧する方法を用いることが好ましい。
【0043】
含浸工程においては、木材をスオウ溶液に浸漬させる工程の後、木材を乾燥させる工程を行うことが好ましい。
木材を乾燥させる工程は、例えば、常温常圧環境下で1週間~数ヶ月程度放置する自然乾燥工程であってもよいし、温度、湿度をコントロールした環境下で所望の含水率となるように調湿する人工乾燥工程であってもよいし、自然乾燥工程を行った後、人工乾燥工程を行ってもよい。
【0044】
本実施形態の改質木材は、木材と、木材に含浸されたスオウ抽出成分とを有する。スオウ抽出成分は、スオウから水を用いて抽出するだけで得られるものであり、精製することなく容易に製造できる。
また、スオウ抽出成分は、木材に含浸させることで、木材の内部損失を低減させる改質成分である。したがって、本実施形態の改質木材は、内部損失の低いものである。
【0045】
また、本実施形態の改質木材の製造方法は、木材に、スオウ抽出成分を含浸させる含浸工程を含む。したがって、本実施形態の改質木材の製造方法によれば、精製することなく容易に製造できる改質成分を用いて、木材の内部損失を低下させることができる。また、本実施形態の改質木材の製造方法では、ホルムアルデヒドなどの化学物質を用いることなく木材の内部損失を低下させることができ、好ましい。
【0046】
本実施形態の改質木材の製造方法では、材料として使用される木材と、含浸工程後に得られた改質木材とにおける気乾密度の変化率[{(処理後-処理前)/処理前}×100(%)]が小さい。気乾密度の変化率は、材料として使用される木材の種類およびスオウ抽出成分の質量の割合などによって異なる。気乾密度の変化率は、-5%~5%の範囲内であることが好ましく、-4%~4%の範囲内であることがより好ましい。上記の気乾密度の変化率が-5%~5%であると、楽器の材料として適した気乾密度を有する木材に含浸工程を行うことにより、気乾密度に支障を来すことなく内部損失の低い改質木材が得られる。
【0047】
本実施形態の改質木材の製造方法では、材料として使用される木材と、含浸工程後に得られた改質木材とにおける繊維方向(L方向)および半径方向(R方向)の弾性率の変化率[{(処理後-処理前)/処理前}×100(%)]が小さい。繊維方向および半径方向の弾性率の変化率は、材料として使用される木材の種類およびスオウ抽出成分の質量の割合などによって異なる。繊維方向の弾性率の変化率は、-7~2%であることが好ましい。半径方向の弾性率の変化率は、-6~20%であることが好ましい。繊維方向および半径方向の弾性率の変化率が上記範囲内であると、楽器の材料として適した弾性率を有する木材に含浸工程を行うことにより、楽器の材料として好適な弾性率を有し、かつ内部損失の低い改質木材が得られる。
【0048】
[楽器]
次に、本発明の楽器について、例に挙げて詳細に説明する。
図1は、本発明の楽器の一例としてのアコースティックギターを示した平面図である。図1において、符号1はアコースティックギターを示し、符号2はボディを示し、符号3は指板を示している。
【0049】
本実施形態のアコースティックギター1は、ボディ2および/または指板3の材料として、上述した本実施形態の改質木材が用いられている。ボディ2および/または指板3の材料として用いられている本実施形態の改質木材は、内部損失の低いものである。このため、本実施形態のアコースティックギター1は、音質の良好なものである。
【0050】
「他の例」
本発明の楽器は、上述した実施形態に限定されるものではない。
本実施形態では、本発明の楽器の一例として、アコースティックギターを例に挙げて説明したが、本発明の楽器は、本発明の改質木材が用いられているものであればよく、アコースティックギターに限定されるものではない。アコースティックギターの他、バイオリンなどの弦楽器、ドラムなどの打楽器、ピアノなどの鍵盤楽器、管楽器などが本発明の楽器として挙げられる。
【実施例
【0051】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
「実施例1」
粉末状のスオウから熱水を用いてスオウ抽出成分を抽出した(抽出工程)。抽出工程を行うことによってスオウから抽出された固形分の質量は、スオウの質量の10%であった。
次に、抽出工程を行うことにより得られたスオウ溶液に水を加えて、スオウ抽出成分を0.7質量%含むスオウ溶液を得た。
【0052】
(木材)
木材として、L方向(繊維方向)長さが180mm、R方向(半径方向)長さが20mm、厚みが4.5mmのメープル(以下、メープル(L)という)を2枚(サンプルNo.1、2)用意した。
次に、各メープル(L)を温度105℃のオーブンで質量が安定するまで加熱して絶乾状態とし、それぞれ質量を測定した(表1における処理前)。絶乾状態とした各メープル(L)を、温度22℃、相対湿度60%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、以下に示す方法により、それぞれ気乾密度、弾性率を測定し、上述した方法により内部損失(tanδ)を測定した(表1における処理前)。その結果を表1に示す。
【0053】
(気乾密度の測定方法)
各メープル(L)の寸法を、ノギスを用いて測定し、各メープル(L)の体積を算出した。得られた各メープル(L)の体積で、各メープル(L)の質量を除して、気乾密度とした。
(弾性率の測定方法)
両端自由たわみ振動法(矢野等:木材学会誌,32,984-989(1986))を用いて、共振周波数よりEuller-Bernoulli式で比動的ヤング率を求め、弾性率とした。
【0054】
(含浸工程)
次に、内部損失を測定した各メープル(L)を、スオウ抽出成分を0.7質量%含むスオウ溶液に浸漬させた状態で密閉容器に入れ、30hPaの圧力で一定時間減圧した。その後、常温常圧環境に戻した各メープル(L)を、一定時間引き続きスオウ溶液に浸漬させた。
その後、スオウ溶液から各メープル(L)を取り出し、常温常圧環境下で放置する自然乾燥を行い、2枚の実施例1の改質木材を得た。
【0055】
得られた実施例1の改質木材について、マイクロスコープにて、断面を観察した。その結果、スオウ抽出成分が木材の表面から平均1mm以上含浸していることが確認された。
【0056】
「スオウ抽出成分の質量の割合の算出」
このようにして得られた各改質木材を、105℃のオーブンで質量が安定するまで加熱して絶乾状態とし、それぞれ質量を測定(表1における処理後)し、処理前との変化率[{(処理後-処理前)/処理前}×100(%)]およびその平均値を求め、木材の質量に対する改質木材中のスオウ抽出成分の質量の割合とした。
【0057】
さらに、絶乾状態とした各改質木材を、温度22℃、相対湿度60%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、上述した方法により、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、処理前との変化率[{(処理後-処理前)/処理前}×100(%)]およびその平均値を求めた(表1における処理後)。その結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
「実施例2」
木材として、L方向(繊維方向)長さが20mm、R方向(半径方向)長さが180mm、厚みが4.5mmのメープル(以下、メープル(R)という)を2枚(サンプルNo.1、2)用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2の改質木材を得た。
【0060】
「実施例3」
実施例1と同様にして抽出工程を行うことにより得られたスオウ溶液を加熱して、スオウ溶液中に含まれる水を蒸発させて、スオウ抽出成分を1.8質量%含むスオウ溶液を得た。得られたスオウ抽出成分を1.8質量%含むスオウ溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3の改質木材を得た。
【0061】
「実施例4」
木材として、メープル(R)を用いたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例4の改質木材を得た。
【0062】
「実施例5」
実施例1と同様にして抽出工程を行うことにより得られたスオウ溶液を加熱して、スオウ溶液中に含まれる水を蒸発させて、スオウ抽出成分を5.1質量%含むスオウ溶液を得た。得られたスオウ抽出成分を5.1質量%含むスオウ溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5の改質木材を得た。
【0063】
「実施例6」
木材として、メープル(R)を用いたこと以外は、実施例6と同様にして、実施例6の改質木材を得た。
【0064】
実施例2~実施例6で使用した各メープル(R)について、実施例1と同様にして、質量、気乾密度、弾性率、内部損失を測定(表1における処理前)した。
【0065】
また、実施例2~実施例6の改質木材について、実施例1と同様にして、断面を観察した。その結果、いずれの改質木材についても、スオウ抽出成分が木材の表面から平均1mm以上含浸していることが確認された。
また、実施例1と同様にして、絶乾状態とした実施例2~実施例6の各改質木材の質量を測定(表1における処理後)し、処理前との変化率およびその平均値を求め、スオウ抽出成分の質量の割合を算出した。
【0066】
さらに、絶乾状態とした実施例2~実施例6の各改質木材を、温度22℃、相対湿度60%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、実施例1と同様にして、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、処理前との変化率およびその平均値を求めた(表1における処理後)。その結果を表1に示す。
【0067】
表1に示すように、メープル(L)およびメープル(R)をスオウ抽出液に浸漬させて、スオウ抽出成分を含浸させることにより、メープル(L)およびメープル(R)の内部損失が低減することが確認できた。
また、木材としてメープル(R)を用いた場合、メープル(L)を用いた場合よりも内部損失の変化率の絶対値が大きく、スオウ抽出成分を含浸させることによる内部損失の低減効果が大きいことが分かった。
また、実施例1~実施例6の結果から、スオウ抽出成分を多く含むスオウ抽出液を用いたものほど、内部損失が大きく低減することが分かった。
【0068】
「実施例7」
実施例1の各改質木材を、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、上述した方法により、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、その平均値を求めた(表2における処理後)。その結果を表2に示す。
「実施例8」
実施例2の各改質木材を、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、上述した方法により、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、その平均値を求めた(表2における処理後)。その結果を表2に示す。
【0069】
「実施例9」
実施例3の各改質木材を、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、上述した方法により、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、その平均値を求めた(表2における処理後)。その結果を表2に示す。
「実施例10」
実施例4の各改質木材を、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、上述した方法により、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、その平均値を求めた(表2における処理後)。その結果を表2に示す。
【0070】
「実施例11」
実施例5の各改質木材を、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、上述した方法により、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、その平均値を求めた(表2における処理後)。その結果を表2に示す。
【0071】
【表2】
【0072】
「比較例1」
メープル(L)を2枚(サンプルNo.1、2)用意し、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、それぞれ実施例1と同様にして、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、平均値を求めた(表2における処理前)。その結果を表2に示す。
【0073】
「比較例2」
メープル(R)を2枚(サンプルNo.1、2)用意し、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、それぞれ実施例1と同様にして、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、平均値を求めた(表2における処理前)。その結果を表2に示す。
【0074】
表2に示すように、メープル(L)およびメープル(R)をスオウ抽出液に浸漬させて、スオウ抽出成分を含浸させることにより、温度35℃、相対湿度95%の雰囲気下におけるメープル(L)およびメープル(R)の内部損失が低減することが確認できた。
【0075】
「実施例21」
木材として、L方向(繊維方向)長さが180mm、R方向(半径方向)長さが20mm、厚みが4.5mmのスプルース(以下、スプルース(L)という)を2枚用いたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例21の改質木材を得た。
「実施例22」
木材として、L方向(繊維方向)長さが20mm、R方向(半径方向)長さが180mm、厚みが4.5mmのスプルース(以下、スプルース(R)という)を2枚用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例22の改質木材を得た。
【0076】
「実施例23」
木材として、L方向(繊維方向)長さが180mm、R方向(半径方向)長さが20mm、厚みが4.5mmのバーチ(樺)(以下、バーチ(L)という)を2枚用いたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例23の改質木材を得た。
「実施例24」
木材として、L方向(繊維方向)長さが20mm、R方向(半径方向)長さが180mm、厚みが4.5mmのバーチ(以下、バーチ(R)という)を2枚用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例24の改質木材を得た。
【0077】
「実施例25」
木材として、L方向(繊維方向)長さが180mm、R方向(半径方向)長さが20mm、厚みが4.5mmのビーチ(ブナ)(以下、ビーチ(L)という)を2枚用いたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例25の改質木材を得た。
「実施例26」
木材として、L方向(繊維方向)長さが20mm、R方向(半径方向)長さが180mm、厚みが4.5mmのビーチ(以下、ビーチ(R)という)を2枚用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例26の改質木材を得た。
【0078】
「実施例27」
木材として、L方向(繊維方向)長さが180mm、R方向(半径方向)長さが20mm、厚みが4.5mmのマホガニー(以下、マホガニー(L)という)を2枚用いたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例27の改質木材を得た。
「実施例28」
木材として、L方向(繊維方向)長さが20mm、R方向(半径方向)長さが180mm、厚みが4.5mmのマホガニー(以下、マホガニー(R)という)を2枚用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例28の改質木材を得た。
【0079】
「実施例29」
木材として、L方向(繊維方向)長さが180mm、R方向(半径方向)長さが20mm、厚みが4.5mmのウォルナット(以下、ウォルナット(L)という)を2枚用いたこと以外は、実施例3と同様にして、実施例29の改質木材を得た。
「実施例30」
木材として、L方向(繊維方向)長さが20mm、R方向(半径方向)長さが180mm、厚みが4.5mmのウォルナット(以下、ウォルナット(R)という)を2枚用いたこと以外は、実施例4と同様にして、実施例30の改質木材を得た。
【0080】
実施例21~実施例30で使用した各木材について、実施例1と同様にして、質量、気乾密度、弾性率、内部損失を測定(表3および表4における処理前)した。
また、実施例21~実施例30の改質木材について、実施例1と同様にして、断面を観察した。その結果、いずれの改質木材についても、スオウ抽出成分が木材の表面から平均1mm以上含浸していることが確認された。
また、実施例1と同様にして、絶乾状態とした実施例21~実施例30の各改質木材の質量を測定(表3および表4における処理後)し、処理前との変化率およびその平均値を求め、スオウ抽出成分の質量の割合を算出した。
【0081】
さらに、絶乾状態とした実施例21~実施例30の各改質木材を、温度22℃、相対湿度60%の雰囲気下で質量が安定するまで調湿処理し、実施例1と同様にして、気乾密度、弾性率、内部損失を測定し、処理前との変化率およびその平均値を求めた(表3および表4における処理後)。その結果を表3および表4に示す。
また、表3に、メープルを用いた実施例3および実施例4の結果も併せて示す。
【0082】
【表3】
【0083】
【表4】
【0084】
表3および表4に示すように、実施例3および実施例4、実施例21~実施例30で使用した各木材をスオウ抽出液に浸漬させて、スオウ抽出成分を含浸させることにより、内部損失が低減することが確認できた。
【符号の説明】
【0085】
1 アコースティックギター(楽器)、2 ボディ、3 指板。
図1