IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TDK株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-圧電素子 図1
  • 特許-圧電素子 図2
  • 特許-圧電素子 図3
  • 特許-圧電素子 図4
  • 特許-圧電素子 図5
  • 特許-圧電素子 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】圧電素子
(51)【国際特許分類】
   H10N 30/20 20230101AFI20240214BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20240214BHJP
   H10N 30/097 20230101ALI20240214BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
H10N30/20
H10N30/853
H10N30/097
H04R17/00 330H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019112807
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020205371
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】松村 湧
(72)【発明者】
【氏名】菅原 潤
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳生
(72)【発明者】
【氏名】武田 明丈
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-225528(JP,A)
【文献】特開2008-264699(JP,A)
【文献】特開平05-023331(JP,A)
【文献】特開2006-100805(JP,A)
【文献】特開2001-339105(JP,A)
【文献】特開平11-234084(JP,A)
【文献】特開昭63-268173(JP,A)
【文献】国際公開第2018/236284(WO,A1)
【文献】特開2018-182604(JP,A)
【文献】特開2010-212315(JP,A)
【文献】特開平09-181372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/20
H10N 30/853
H10N 30/097
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状を呈し、互いに対向し、それぞれ電極が設けられた第1主面及び第2主面と、
前記第1主面及び前記第2主面の対向方法に延び、それぞれ電極が設けられていない複数の側面と、
前記第1主面及び前記第2主面の対向方向に延び、隣り合う前記側面間に位置する複数の第1稜線部と、
前記第1主面及び前記複数の側面間に位置する複数の第2稜線部と、
前記第2主面及び前記複数の側面間に位置する複数の第3稜線部と、を有する圧電素子であって、
前記圧電素子には前記第1主面を分割し、電極が設けられていない底面を有するスリットが設けられており、
前記複数の第1稜線部のうちの一つの第1稜線部は、前記第1主面側の端部において面取り形状を呈しており、
前記複数の第2稜線部及び前記複数の第3稜線部のぞれぞれは、面取り形状を呈していない部分を有している、圧電素子。
【請求項2】
前記面取り形状は、曲面状である、請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
矩形状を呈し、互いに対向する第1主面及び第2主面と、
前記第1主面及び前記第2主面の対向方法に延びる複数の側面と、
前記第1主面及び前記第2主面の対向方向に延び、隣り合う前記側面間に位置する複数の第1稜線部と、
前記第1主面及び前記複数の側面間に位置する複数の第2稜線部と、
前記第2主面及び前記複数の側面間に位置する複数の第3稜線部と、を有する圧電素子であって、
前記圧電素子には前記第1主面を分割するスリットが設けられており、
前記複数の第1稜線部のうちの一つの第1稜線部は、前記第1主面側の端部において面取り形状を呈しており、
前記複数の第2稜線部及び前記複数の第3稜線部のぞれぞれは、面取り形状を呈していない部分を有し、
前記面取り形状は、平面状である、圧電素子。
【請求項4】
前記複数の第1稜線部は、いずれも前記第1主面側の端部において前記面取り形状を呈している、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記一つの第1稜線部は、前記対向方向の全体にわたって前記面取り形状を呈している、請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記複数の第1稜線部は、いずれも前記対向方向の全体にわたって前記面取り形状を呈している、請求項に記載の圧電素子。
【請求項7】
前記第2主面には、スリットが設けられていない、請求項1~6のいずれか一項に記載の圧電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに対向する第1主面及び第2主面を有する圧電素子であって、第1主面を分割するスリットが設けられた圧電素子が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された超音波振動子では、超音波により気体や液体の流量や流速の計測が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-348681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような圧電素子では、スリットにより分割された第1主面側で分極変形が大きくなり、第1主面の平面状態が悪化する。このような第1主面を平板状の振動部材に接合すると、第1主面と振動部材との接合状態が第1主面内においてばらつく。その結果、振動の伝達性が低下する。
【0005】
本開示の一側面は、振動の伝達性が低下することを抑制可能な圧電素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る圧電素子は、多角形状を呈し、互いに対向する第1主面及び第2主面と、第1主面及び第2主面の対向方向に延びる複数の稜線部と、を有する圧電素子であって、第1主面を分割するスリットが設けられており、複数の稜線部のうちの一つの稜線部は、第1主面側の端部において面取り形状を呈している。
【0007】
この圧電素子では、スリットにより分割されていない第2主面側よりも、スリットにより分割された第1主面側で分極変形が大きくなる。このため、第1主面の平面状態は、第2主面の平面状態に比べて悪化し易い。したがって、例えば、第1主面を平板状の振動部材に接合すると、第1主面と振動部材との接合状態が第1主面内においてばらつく。特に、第1主面において、稜線部の第1主面側の端部に近い位置ほど、振動部材との間の距離が大きくなる。この圧電素子では、複数の稜線部のうちの一つの稜線部が、第1主面側の端部において面取り部を有している。つまり、第1主面は、最も振動部材との間の距離が大きくなる部分の少なくとも一つを有していない。これにより、第1主面と振動部材との接合状態のばらつきが抑制される。よって、振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【0008】
複数の稜線部は、いずれも第1主面側の端部において面取り形状を呈していてもよい。この場合、第1主面は、最も振動部材との間の距離が大きくなる部分をいずれも有していない。よって、振動の伝達性が低下することを更に抑制可能となる。
【0009】
一つの稜線部は、対向方向の全体にわたって面取り形状を呈していてもよい。この場合においても、振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【0010】
複数の稜線部は、いずれも対向方向の全体にわたって面取り形状を呈していてもよい。この場合においても、振動の伝達性が低下することを更に抑制可能となる。
【0011】
面取り形状は、平面状であってもよい。この場合においても、振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【0012】
面取り形状は、曲面状であってもよい。この場合においても、振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一側面によれば、振動の伝達性が低下することを抑制可能な圧電素子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。
図2図1の圧電素子を示す断面図である。
図3】比較例に係る圧電素子を示す斜視図である。
図4】第2実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。
図5】第3実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。
図6】第4実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。図2は、図1の圧電素子を示す断面図である。図1及び図2に示される圧電素子1Aは、例えば、SUS(ステンレス鋼)等の金属板からなる振動部材(不図示)に接合されてセンサとして使用される。圧電素子1Aは、例えば、超音波を送受信して車間距離を検知する車載用センサ、又は複写機のトナーの量を検知する粉体レベルセンサ等のセンサに使用される。
【0017】
圧電素子1Aは、例えば、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。圧電素子1Aは、その外表面として、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bと、互いに対向する一対の側面1cと、互いに対向する一対の側面1dと、を有している。
【0018】
第1主面1a及び第2主面1bは、多角形状を呈している。第1主面1a及び第2主面1bの各内角は、180度未満である。第1主面1aは、第1主面1a及び第2主面1bが互いに対向する方向D1から見て、第2主面1bと重なっている。本実施形態では、第1主面1a及び第2主面1bは、矩形状を呈している。第1主面1a及び第2主面1bの4つの内角は、例えば、それぞれ90度である。第1主面1aは、例えば、振動部材に接合される面である。
【0019】
一対の側面1cは、矩形状を呈している。一対の側面1cは、互いに同形状を呈している。一対の側面1dは、矩形状を呈している。一対の側面1dは、互いに同形状を呈している。側面1cは、一対の側面1dのそれぞれと隣り合っている。側面1dは、一対の側面1cのそれぞれと隣り合っている。
【0020】
第1主面1a及び第2主面1bが互いに対向する方向D1と、一対の側面1cが互いに対向する方向D2と、一対の側面1dが互いに対向する方向D3とは、互いに交差(例えば、直交)している。圧電素子1Aの方向D1の長さは、例えば、3mmであり、圧電素子1Aの方向D2の長さは、例えば8mmであり、圧電素子1Aの方向D3の長さは、例えば8mmである。
【0021】
第1主面1a及び第2主面1bは、一対の側面1cの間を連結するように方向D2に延びている。第1主面1a及び第2主面1bは、一対の側面1dの間を連結するように方向D3にも延びている。一対の側面1cは、第1主面1a及び第2主面1bの間を連結するように方向D1に延びている。一対の側面1cは、一対の側面1dの間を連結するように方向D3にも延びている。一対の側面1dは、第1主面1a及び第2主面1bの間を連結するように方向D1に延びている。一対の側面1dは、一対の側面1cの間を連結するように方向D2にも延びている。
【0022】
圧電素子1Aは、複数(ここでは4つ)の稜線部1eと、複数(ここでは4つ)の角部A1と、複数(ここでは4つ)の角部A2と、を有している。稜線部1eは、互いに隣り合う側面1cと側面1dとの間に位置し、第1主面1aと第2主面1bとを連結するように方向D1に延びている。稜線部1eは、第1主面1a側の端部1fと、第2主面1b側の端部1gと、を含んでいる。
【0023】
複数の角部A1は、複数の稜線部1eの各端部1fに位置している。複数の角部A1は、互いに隣り合う側面1c及び側面1dと、第1主面1aとの間に位置している。複数の角部A2は、複数の稜線部1eの各端部1gに位置している。複数の角部A2は、互いに隣り合う側面1c及び側面1dと、第2主面1bとの間に位置している。
【0024】
稜線部1eは、端部1fにおいて面取り形状を呈している。本実施形態では、複数の稜線部1eは、いずれも端部1fにおいて面取り形状を呈している。面取り形状は、実際に端部1fを面取りすることによって形成された形状に限られず、それと同等の形状であればよい。端部1fは、側面1cを含む仮想的な平面と、側面1dを含む仮想的な平面と、第1主面1aを含む仮想的な平面とが交差してなる仮想的な角部の内側に位置している。本実施形態の面取り形状は、少なくとも後述の圧電体2及び電極3にわたって連続して設けられている形状を指す。
【0025】
角部A1は、角取り形状を呈している。本実施形態では、複数の角部A1は、いずれも角取り形状を呈している。角取り形状は、実際に角部A1を角取りすることによって形成された形状に限られず、それと同等の形状であればよい。角部A1は、側面1cを含む仮想的な平面と、側面1dを含む仮想的な平面と、第1主面1aを含む仮想的な平面とが交差してなる仮想的な角部の内側に位置している。本実施形態の角取り形状は、少なくとも後述の圧電体2及び電極3にわたって連続して設けられている形状を指す。
【0026】
本実施形態では、端部1fの面取り形状(つまり、角部A1の角取り形状)は、方向D1に対して傾斜した平面状である。端部1fの面取り形状(つまり、角部A1の角取り形状)は、側面1c、側面1d、及び第1主面1aとそれぞれ交差する形状である。端部1fの面取り形状(つまり、角部A1の角取り形状)は、側面1c、側面1d、及び第1主面1a上にそれぞれ一辺を有する三角形状である。圧電素子1Aは、互いに隣り合う側面1c及び側面1dと、第1主面1aとの間に、角取り形状を呈している角取り部を有しているとも言える。
【0027】
圧電素子1Aには、第1主面1aを分割する複数(ここでは3つ)のスリット5が設けられている。複数のスリット5は、具体的には、圧電素子1Aの第1主面1a寄りの部分に設けられている。複数のスリット5は、方向D3において等間隔で並んでいる。スリット5は、方向D2に延び、圧電素子1Aの方向D2の一端から他端に至っている。スリット5は、第2主面1bには至っていない。スリット5は、例えば、圧電素子1Aがセンサに使用される場合に、センシングのための共振周波数及びインピーダンス波形等を調整するために設けられている。
【0028】
第1主面1aは、スリット5により分割されている。第1主面1aは、複数のスリット5により分割された複数(ここでは4つ)の主面部分1a1を有している。方向D3で隣り合う一対の主面部分1a1は、スリット5を介して互いに離間している。複数の主面部分1a1は、方向D3において等間隔で並んでいる。複数の主面部分1a1は、互いに略同形状の矩形状を呈している。方向D3の両端の主面部分1a1は、角部A1に対応する角部が角取りされた形状を呈している点で、他の主面部分1a1と形状が異なる。
【0029】
スリット5の底面は、方向D1において第2主面1bと対向している。スリット5の底面は、例えば、第1主面1a及び第2主面1bと平行に設けられている。複数のスリット5の底面と第2主面1bとの間隔は、互いに同等である。すなわち、複数のスリット5の方向D1の長さは、互いに同等である。
【0030】
スリット5の方向D1の長さ(スリット5の深さ)は、例えば2.6mmである。スリット5の方向D2の長さは、圧電体2の方向D2の長さと一致しており、例えば8mmである。スリット5の方向D3の長さ(スリット5の幅)は、例えば0.3mmである。方向D1におけるスリット5と第2主面1bとの離間距離は、例えば0.4mmである。
【0031】
圧電素子1Aは、複数のスリット5により分割された複数(ここでは4つ)の分割部分11と、複数の分割部分11を互いに接続する複数(ここでは3つ)の接続部分12と、を有している。
【0032】
複数の分割部分11は、互いに略同形状を呈している。方向D3の両端の分割部分11は、面取り形状を呈している稜線部1eを有している点で、他の分割部分11と形状が異なる。方向D3で隣り合う一対の分割部分11は、スリット5を介して互いに離間している。方向D1から見て、分割部分11は、スリット5と重なっていない。分割部分11は、第1主面1aの一部(主面部分1a1)及び第2主面1bの一部を含んでいる。分割部分11は、第1主面1aから第2主面1bに至っている。
【0033】
複数の接続部分12は、例えば互いに同形状を呈している。方向D1から見て、接続部分12は、スリット5と重なっている。接続部分12は、スリット5の底面と第2主面1bの一部とを含んでいる。接続部分12は、スリット5の底面から第2主面1bに至っている。接続部分12は、スリット5の底部を構成している。接続部分12は、方向D3で隣り合う一対の分割部分11の間に配置されており、方向D3で隣り合う一対の分割部分11を互いに接続している。
【0034】
圧電素子1Aは、例えば、圧電体2と、電極3と、電極4と、を備えている。圧電体2は、例えば、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。圧電体2は、その外表面として、互いに対向する主面2a及び主面2bを有している。主面2aは、第1主面1aと略同形状を呈している。主面2bは、第2主面1bと同形状を呈している。
【0035】
主面2aは、複数のスリット5により分割された複数(ここでは4つ)の主面部分2a1を有している。方向D3で隣り合う一対の主面部分2a1は、スリット5を介して互いに離間している。複数の主面部分2a1は、方向D3において等間隔で並んでいる。複数の主面部分2a1は、互いに略同形状の矩形状を呈している。方向D3の両端の主面部分2a1は、角部A1に対応する角部が角取りされた形状を呈している点で、他の主面部分2a1と形状が異なる。
【0036】
圧電体2は、圧電材料からなる。本実施形態では、圧電体2は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料としては、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を主成分とし、Nb、Zn、Ni又はSr等の元素が添加されたものが挙げられる。
【0037】
電極3は、主面2aに設けられている。電極3は、後述のスリット5の部分を除く主面2aの全体に設けられている。電極3は、方向D1において互いに対向する主面3a及び主面3bを有している。主面3aは、圧電素子1Aの第1主面1aを構成している。よって、電極3は、第1主面1aを有している。主面3aは、第1主面1aと略同形状を呈している。主面3bは、方向D1において圧電体2の主面2aと対向している。電極3の厚さ(方向D1の長さ)は、例えば5μmである。
【0038】
電極3は、後述の複数のスリット5により分割された複数(ここでは4つ)の電極部分31を有している。方向D3で隣り合う一対の電極部分31は、スリット5を介して互いに離間している。複数の電極部分31は、複数の主面部分2a1にそれぞれ設けられている。複数の電極部分31は、複数の主面部分2a1の全体にそれぞれ設けられている。
【0039】
電極4は、主面2bに設けられている。電極4は、方向D1において互いに対向する主面4a及び主面4bを有している。主面4aは、方向D1において圧電体2の主面2bと対向している。主面4bは、圧電素子1Aの第2主面1bを構成している。よって、電極4は、第2主面1bを有している。主面4bは、第2主面1b及び主面2bと同形状を呈している。電極4の厚さ(方向D1の長さ)は、例えば電極3の厚さと同等である。電極4の厚さは、例えば5μmである。
【0040】
圧電素子1Aの製造方法の一例について説明する。まず、圧電セラミック材料の粉末に、ポリビニール系バインダ及び水等を加え、圧電セラミックスのペーストを形成する。次に、圧電セラミックスのペーストを所定の大きさの金型に充填し、例えば、40MPaの圧力でプレス成形する。これにより、セラミックグリーンが得られる。続いて、セラミックグリーンに脱バインダ処理を施す。脱バインダ処理は、例えば、400℃で12時間かけて行われる。続いて、セラミックグリーンを焼成する。焼成は、例えば、1250℃で4時間かけて行われる。これにより、圧電体が得られる。
【0041】
次に、圧電体をラップ研磨し、例えば、厚さ3.2mmの板状に成形する。続いて、導電性ペーストを圧電体の両主面に付与する。導電性ペーストは、例えば、Ag等の導電性材料の粉末にバインダ、可塑剤及び有機溶剤等を加えることにより形成される。導電性ペーストは、例えばスクリーン印刷により10μmの厚さで付与される。続いて、圧電体の外周研削、及び、スリット加工を施す。その後、導電性ペーストの焼き付け処理を行う。焼き付け処理は、例えば、800℃で20分間かけて行われる。
【0042】
次に、稜線部の端部に対し、面取り加工(つまり、角取り加工)を行う。面取り加工は、例えば、グラインダーを用いて行う。面取り加工により、稜線部の端部から、例えば、方向D1、方向D2、及び方向D3に沿う各稜線の長さが3mmである三角錐状の部分が除去される。続いて、分極処理を施す。分極処理は、例えば、150℃で、電界強度3.5kV/mmの電圧を圧電素子の電極に5分間印加することにより行われる。これにより、圧電素子が得られる。
【0043】
図3は、比較例に係る圧電素子を示す斜視図である。図3に示されるように、比較例に係る圧電素子100は、稜線部1eが面取り形状を呈していない(つまり、角部A1が角取り形状を呈していない)点で、圧電素子1A(図1参照)と相違している。圧電素子1A及び圧電素子100は、いずれも分極処理により分極変形する。説明のため、図3では、分極変形が強調して示されている。
【0044】
スリット5により分割されていない第2主面1b側では、分割部分11(図2参照)同士が接続部分12(図2参照)により接続されているので、変形が拘束され、自由に変形し難い。これに対し、スリット5により分割された第1主面1a側では、分割部分11同士が互いに離間しているので、自由に変形し易い。よって、第1主面1a側では、第2主面1b側に比べて、分極変形が大きくなる。このため、圧電素子1A及び圧電素子100は、第1主面1aが湾曲外側、第2主面1bが湾曲内側となるように湾曲変形し、第1主面1aの平面状態は、第2主面1bの平面状態に比べて悪化し易い。
【0045】
このような平面状態の第1主面1aを平板状の振動部材(不図示)に接合すると、第1主面1aと振動部材との接合状態が第1主面1a内においてばらつく。特に、第1主面1aにおいて、角部A1に近い位置ほど、振動部材との間の距離が大きくなるので、振動部材との接合状態が低下し易い。接合状態がばらつく結果、圧電素子100と振動部材との間で振動の伝達性が低下する。
【0046】
これに対し、圧電素子1Aでは、稜線部1eが面取り形状を呈している。つまり、角部A1が角取り形状を呈している。このため、圧電素子1Aの第1主面1aは、圧電素子100の第1主面1aにおいて最も振動部材との間の距離が大きくなる部分に対応する部分を有していない。これにより、第1主面1aと振動部材との接合状態のばらつきが抑制される。よって、振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【0047】
圧電素子1Aでは、複数の稜線部1eは、いずれも端部1fにおいて面取り形状を呈している。このため、第1主面1aは、圧電素子100の第1主面1aにおいて最も振動部材との間の距離が大きくなる部分に対応する部分をいずれも有していない。よって、振動の伝達性が低下することを更に抑制可能となる。
【0048】
圧電素子1Aでは、側面1cと第1主面1aとの間の稜線部、側面1dと第1主面1aとの間の稜線部、側面1cと第2主面1bとの稜線部、及び、側面1dと第2主面1bとの間の稜線部は、それぞれ面取り形状を呈していない。これにより、圧電素子1Aの振動発生領域が減少することが抑制され、所望の振動量を確保できる。
【0049】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。図4に示される圧電素子1Bは、主に、稜線部1eが方向D1の全体にわたって面取り形状を呈している点で、図1に示される圧電素子1Aと相違している。本実施形態では、複数の稜線部1eは、いずれも方向D1の全体にわたって面取り形状を呈している。
【0050】
面取り形状は、実際に稜線部1eを面取りすることによって形成された形状に限られず、それと同等の形状であればよい。稜線部1eは、側面1cを含む仮想的な平面と、側面1dを含む仮想的な平面と、第1主面1aを含む仮想的な平面とが交差してなる仮想的な稜線部の内側に位置している。
【0051】
本実施形態では、稜線部1eの面取り形状は、方向D1と平行な平面状である。稜線部1eの面取り形状は、側面1c、側面1d、第1主面1a及び第2主面1bとそれぞれ交差する形状である。稜線部1eの面取り形状は、側面1c、側面1d、第1主面1a及び第2主面1b上にそれぞれ一辺を有する矩形状である。本実施形態では、稜線部1eと第1主面1aとの間は面取りされていないが、面取りされていてもよい。圧電素子1Bは、互いに隣り合う側面1c及び側面1dの間に、面取り形状を呈している面取り部を有しているとも言える。圧電素子1Bは、稜線部1eがいずれも面取りされることにより、実質的に八角柱状を呈しているとも言える。
【0052】
圧電素子1Bにおいても、圧電素子1Aと同様に、第1主面1aが、圧電素子100の第1主面1aにおいて最も振動部材との間の距離が大きくなる部分に対応する部分を有していない。よって、振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【0053】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。図5に示される圧電素子1Cは、主に、端部1fの面取り形状(つまり、角部A1の角取り形状)が曲面状である点で、図1に示される圧電素子1Aと相違している。端部1f(つまり、角部A1)は、丸められた形状を呈している。本実施形態では、複数の稜線部1eは、いずれも端部1fにおいて曲面状である面取り形状を呈している。つまり、複数の角部A1は、いずれも曲面状である角取り形状を呈している。
【0054】
面取り形状は、実際に端部1fを曲面状に面取りする(つまり、角部A1を曲面状に角取りする)ことによって形成された形状に限られず、それと同等の形状であればよい。端部1f(つまり、角部A1)は、側面1cを含む仮想的な平面と、側面1dを含む仮想的な平面と、第1主面1aを含む仮想的な平面とが交差してなる仮想的な角部の内側に位置し、仮想的な角部に沿って湾曲している。端部1f(つまり、角部A1)は、側面1c、側面1d、及び第1主面1aを互いに滑らかに接続している。端部1f(つまり、角部A1)は、球面状を呈している。圧電素子1Cは、互いに隣り合う側面1c及び側面1dと、第1主面1aとの間に、角取り形状を呈している角取り部を有しているとも言える。
【0055】
圧電素子1Cにおいても、圧電素子1Aと同様に、第1主面1aが、圧電素子100の第1主面1aにおいて最も振動部材との間の距離が大きくなる部分に対応する部分を有していない。よって、圧電素子1Cにおいても、振動部材との間で振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【0056】
[第4実施形態]
図6は、第4実施形態に係る圧電素子を示す斜視図である。図6に示される圧電素子1Dは、主に、稜線部1eが方向D1の全体にわたって面取り形状を呈している点と、稜線部1eが曲面状である点とで、図1に示される圧電素子1Aと相違している。稜線部1eは、丸められた形状を呈している。本実施形態では、複数の稜線部1eは、いずれも方向D1の全体にわたって曲面状である面取り形状を呈している。
【0057】
面取り形状は、実際に稜線部1eを曲面状に面取りすることによって形成された形状に限られず、それと同等の形状であればよい。稜線部1eは、側面1cを含む仮想的な平面と、側面1dを含む仮想的な平面と、第1主面1aを含む仮想的な平面とが交差してなる仮想的な稜線部の内側に位置し、仮想的な稜線部に沿って湾曲している。稜線部1eは、側面1cと側面1dとを互いに滑らかに接続している。稜線部1eは、方向D1から見て、外方に凸の曲線である。圧電素子1Dは、互いに隣り合う側面1c及び側面1dの間に、面取り形状を呈している面取り部を有しているとも言える。本実施形態では、稜線部1eと第1主面1aとの間は面取りされていないが、面取りされていてもよい。
【0058】
圧電素子1Dにおいても、圧電素子1Aと同様に、第1主面1aが、圧電素子100の第1主面1aにおいて最も振動部材との間の距離が大きくなる部分に対応する部分を有していない。よって、圧電素子1Dにおいても、振動部材との間で振動の伝達性が低下することを抑制可能となる。
【0059】
以上、実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0060】
圧電素子1A、1B,1C,1Dでは、側面1cと第1主面1aとの間の稜線部、側面1dと第1主面1aとの間の稜線部、側面1cと第2主面1bとの稜線部、及び、側面1dと第2主面1bとの間の稜線部は、それぞれ面取り形状を呈していてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1A,1B,1C,1D…圧電素子、1a…第1主面、1b…第2主面、1e…稜線部、1f…端部、5…スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6