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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 33/02 20060101AFI20240214BHJP
   F16H 29/12 20060101ALI20240214BHJP
   F16H 31/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F16H33/02 B
F16H29/12
F16H31/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019143554
(22)【出願日】2019-08-05
(65)【公開番号】P2021025575
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米澤 紀男
(72)【発明者】
【氏名】森 重文
(72)【発明者】
【氏名】遠山 智之
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-330608(JP,A)
【文献】特開2018-040379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 33/02
F16H 29/12
F16H 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源から得られる動力を変速する変速機構と、
前記変速機構によって変速された動力を、振動現象を用いて間欠的に伝達して変速が可能な間欠駆動型の動力伝達機構と、
を有し、
前記変速機構の変速比は、前記動力源の動作特性と前記動力伝達機構の伝達特性に応じて設定されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項2】
請求項1に記載の動力伝達装置であって、
前記変速機構の変速比は、前記動力源の出力に応じた出力速度範囲と、前記動力伝達機構がエネルギー密度限界以下で伝達できる入力速度範囲と、に応じて設定されることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項3】
請求項2に記載の動力伝達装置であって、
前記変速機構の変速比は、前記出力速度範囲の減速後の回転数が前記入力速度範囲の部分集合となる値とすることを特徴とする動力伝達装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の動力伝達装置であって、
前記動力伝達機構は、パッシブパルスドライブ(PPD)であることを特徴とする動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置に関し、特に、動力を間欠的に伝達して出力する動力伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、入力軸側から得られる動力を間欠的に出力軸側へ伝達する間欠駆動型(パルスドライブ式)の動力伝達機構が知られている。特許文献1には、比較的簡素な構造で弾性体の弾性エネルギーを出力軸に伝達可能な画期的な動力伝達機構が開示されている。その弾性体の具体例の一つとして磁石(シャフト側磁石と固定側磁石)を利用した間欠駆動(パルスドライブ)の原理が記載されている(特許文献1の図31図32等参照)。間欠駆動型の動力伝達機構では、間欠的なパルス状の駆動力(トルク)が入力軸側から出力軸側へ伝達される(特許文献1の図13等参照)。
【0003】
また、ベルト型無段変速機(CVT)に遊星歯車機構を組み合わせて、遊星歯車機構の動力伝達によって低効率な高速域における動力伝達の効率を高める技術が開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-40379号公報
【文献】特開2017-67207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これまで、間欠型動力伝達機構は他の変速機と同様に扱われてきたが、動作原理上、接続される入出力軸の回転数などが適切でなければ、動力の伝達能力が低下してしまう場合がある。これは、通常の変速機は変速比に性能が依存するのに対して、間欠型動力伝達機構ではエネルギー変換を行いながら動力伝達を行うために入出力軸の差速や入力回転数の影響を大きく受けるために入出力回転数への依存性が高いことが原因である。そこで、従来のベルト型無段変速機に対する変速域の適正化とは異なる技術が必要となる。
【0006】
本発明の目的は、間欠駆動型の動力伝達機構を備えた動力伝達装置の伝達能力を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の具体例の一つである動力伝達装置は、動力源から得られる動力を変速する変速機構と、前記変速機構によって変速された動力を間欠的に伝達して出力する間欠駆動型の動力伝達機構と、を有し、前記変速機構の変速比は、前記動力源の動作特性と前記動力伝達機構の伝達特性に応じて設定されることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記変速機構の変速比は、前記動力源の出力に応じた出力速度範囲と、前記動力伝達機構がエネルギー密度限界以下で伝達できる入力速度範囲と、に応じて設定されることが好適である。
【0009】
また、前記変速機構の変速比は、前記出力速度範囲の減速後の回転数が前記入力速度範囲の部分集合となる値とすることが好適である。
【0010】
また、前記動力伝達機構は、パッシブパルスドライブ(PPD)であることが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、間欠駆動型の動力伝達機構を備えた動力伝達装置の伝達能力が向上する。例えば、本発明の具体例の一つによれば、動力源の動作特性と動力伝達機構の伝達特性に応じて決定される変速比で動力源から得られる動力を変速して動力伝達機構へ出力することにより、動力源と動力伝達機構を備えた動力伝達装置全体での動力の伝達能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】動力伝達装置の具体例を示す図である。
図2】動力伝達機構の具体例を示す図である。
図3】増速型PPDの伝達能力マップの具体例を示す図である。
図4】減速型PPDの伝達能力マップの具体例を示す図である。
図5】減速型PPDのリバース動作の伝達能力マップの具体例を示す図である。
図6】変速機構の変速比を決定する処理を示すフローチャートである。
図7】増速型PPDを用いた動力伝達装置の特性例を示す図である。
図8】減速型PPDを用いた動力伝達装置の特性例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の具体的な実施態様の一例を示す。図1には、動力伝達装置の具体例が図示されている。図1に例示する動力伝達装置は、動力源10、変速機構20及び動力伝達機構30を備える。
【0014】
図1の動力伝達装置は、動力源10から得られる動力を利用する。動力源10の具体例にはモータやエンジンなどが含まれる。図1の動力伝達装置は、例えば、動力源10の回転運動により得られる動力を利用して車両などを駆動してもよい。
【0015】
変速機構20は、動力源10から得られる動力を変速する。変速機構20は、例えば、動力源10の動作特性と動力伝達機構30の伝達特性に応じて決定される変速比により、動力源10から得られる動力を変速して動力伝達機構30へ出力する。
【0016】
動力伝達機構30は、変速機構20によって変速された動力を間欠的に伝達して出力する間欠駆動型の伝達装置である。図1に示す具体例において、動力伝達機構30は、入力軸32と出力軸34を備えており、入力軸32から得られるエネルギーの蓄積と出力軸34へのエネルギーの放出とを繰り返すことにより、入力軸32が得た動力を間欠的に出力軸34へ伝達する。
【0017】
図2は、動力伝達機構30の具体例を示す図である。図2には、間欠駆動型(パルスドライブ)の動力伝達機構30に関する具体例が図示されている。
【0018】
図2(A)は、増速型パッシブパルスドライブ(PPD)の具体例を示している。図2(A)に示す増速型の具体例では、入力軸32がワンウェイクラッチOWC(N)を介してクランクCを回転させることにより、ばねSに弾性エネルギーが蓄積される。また、蓄積された弾性エネルギーにより、ばねSがクランクCを回転させて弾性エネルギーを放出することにより、ワンウェイクラッチOWC(O)を介して出力軸34を回転させる。これにより、入力軸32から得られる動力が間欠的に出力軸34へ伝達される。
【0019】
なお、増速型パッシブパルスドライブ(PPD)として、例えば、特許文献1(特開2018-40379号公報)の図1に例示される装置が利用されてもよい。
【0020】
図2(B)は、減速型パッシブパルスドライブ(PPD)の具体例を示している。図2(B)に示す減速型の具体例では、入力軸32がクランクC(I)を回転させることにより、ばねSからの反力によってクランクC(O)が回転され、ワンウェイクラッチOWC(1)とワンウェイクラッチOWC(2)を介して出力軸34が駆動される。すなわち、入力軸32と出力軸34との回転の差によってばねSに弾性エネルギーが蓄積され、蓄積された弾性エネルギーが入力軸32へ放出されることによって当該エネルギーが次回駆動時のアシスト(増トルク)に用いられる。これにより、入力軸32から得られる動力が間欠的に出力軸34へ伝達される。
【0021】
なお、減速型パッシブパルスドライブ(PPD)として、例えば、特許文献1の図16に例示される装置が利用されてもよい。
【0022】
また、図2(A)と図2(B)には、ばねSの弾性エネルギーを利用する間欠駆動型(パルスドライブ)の具体例を例示したが、ばねSの弾性エネルギーに代えて、または、ばねSの弾性エネルギーに加えて、磁石の磁気エネルギーが利用されてもよい。磁石の磁気エネルギーを利用する具体例として、例えば、特許文献1の図31図32に例示される装置が利用されてもよい。
【0023】
図3から図5には、間欠駆動型の動力伝達機構30に係る伝達能力マップの具体例が図示されている。図3から図5の各図に示す伝達能力マップにおいて、横軸は出力速度(例えば出力軸34の単位時間あたりの回転数)であり、縦軸は入力速度(例えば入力軸32の単位時間あたりの回転数)である。また、伝達能力マップ内の濃度(黒から白までのグレースケール)が、入力から出力への動力伝達量(単位はキロワット:kW)を示している。
【0024】
図3は、増速型パッシブパルスドライブ(PPD)の伝達能力マップの具体例を示す図であり、図4は、減速型パッシブパルスドライブ(PPD)の伝達能力マップの具体例を示す図であり、図5は、減速型パッシブパルスドライブ(PPD)のリバース動作における伝達能力マップの具体例を示す図である。
【0025】
通常の変速機は変速比に性能が依存する。一方、パッシブパルスドライブ(PPD)ではエネルギー変換を行いながら動力伝達が行われるために、エネルギー変換の際に入出力軸の差速や入力回転数の影響を大きく受ける。すなわち、パッシブパルスドライブ(PPD)では、入出力回転数への依存性が高く、伝達能力が回転速度に依存する。この依存性は、運動方程式(数1式,数2式)を用いて数値シミュレーションを行うことで導出することができる。なお、数1式は増速型パッシブパルスドライブ(PPD)に対する運動方程式であり、数2式は減速型パッシブパルスドライブ(PPD)に対する運動方程式である。
【0026】
【数1】
【数2】
ただし、振動子慣性をIosc[kgm]、増速型パッシブパルスドライブ(PPD)におけるワンウェイクラッチOWCの出力軸との係合角、入力軸との係合角をφ,φ[rad]、減速型パッシブパルスドライブ(PPD)における出力軸との係合角、固定部との係合角をφ’,φ’[rad]である。また、mは任意の自然数とする。
【0027】
また、伝達能力の回転速度に対する依存性は、エネルギー保存則と運動量保存則から導出される式(数3式,数4式)を用いても算出可能である。なお、数3式は増速型パッシブパルスドライブ(PPD)に対する運動方程式であり、数4式は減速型パッシブパルスドライブ(PPD)に対する運動方程式である。
【0028】
【数3】
【数4】
【0029】
また、数5式から数7式は、入力軸32から出力軸34へ動力が伝達されなくなる原理上の出力回転数の上限式である。数1式は増速型パッシブパルスドライブ(PPD)の上限式であり、数6式は減速型パッシブパルスドライブ(PPD)の上限式であり、数8式は減速型パッシブパルスドライブ(PPD)のリバース動作の上限式である。
【0030】
【数5】
【数6】
【数7】
【0031】
なお、数1式から数7式において、Θは絶対回転角度(rad)であり、添え字inは入力軸32に対応しており、添え字outは出力軸34に対応している。Θ´はΘの時間微分(一階導関数)である。また、Eは蓄積可能なエネルギー量であり、I(Iosc)は振動子慣性である。また、Aは周期反転ばねの片振幅、Nは周期反転の回転次数である。
【0032】
パッシブパルスドライブ(PPD)の特性を示すパラメータである(2E/Iosc0.5をエネルギー密度限界と呼ぶ。エネルギー密度限界は、パッシブパルスドライブ(PPD)の1サイクルの動作でエネルギー変換可能な最大値を速度に換算した量である。図3から図5の各図に示す伝達能力マップ内には、エネルギー密度限界の位置が破線で示されている。
【0033】
図3から図5の伝達能力マップが示すように、入力回転数(縦軸)と出力回転数(横軸)のどちらか一方でもエネルギー密度限界を超えてしまうと、入力回転数と出力回転数が共にエネルギー密度限界以下の場合に比べて変速できる領域が大幅に減少してしまう。
【0034】
図3の増速型パッシブパルスドライブ(PPD)に着目すると、出力回転数がエネルギー密度限界(約6000rpm)を超えた領域においても、入力回転数の増加に応じて動力伝達量が増加している。これは、1回転あたりの伝達量は減少するものの、入力回転数の増加に応じて伝達回数が増加するためである。したがって、変速比を稼ぐ(変速できる範囲を広く確保する)場合にはエネルギー密度限界以下の利用が望ましく、動力伝達量を稼ぐ(大きな動力伝達量を確保する)場合にはエネルギー密度限界を超えた利用も可能である。
【0035】
一方、図4の減速型パッシブパルスドライブ(PPD)に着目すると、出力回転数の増加に応じて動力伝達量も増加する傾向にあるものの、入力回転数がエネルギー密度限界に近づくにつれて動力伝達量が減少する傾向にある。したがって、動力伝達量を稼ぐ(大きな動力伝達量を確保する)ためには、エネルギー密度限界よりも小さな領域(例えばエネルギー密度限界の2/3程度の領域)の利用が望ましい。
【0036】
また、図5のリバース動作に係る伝達能力マップに着目すると、入力回転数と出力回転数の絶対値の増加に応じて動力伝達量が増加する傾向にあるものの、出力回転数がエネルギー密度限界に近づくにつれて動力伝達量が減少する傾向にある。したがって、動力伝達量を稼ぐ(大きな動力伝達量を確保する)ためには、エネルギー密度限界よりも小さな領域(例えばエネルギー密度限界の1/3程度の領域)の利用が望ましい。
【0037】
このように、増速型パッシブパルスドライブ(PPD)や減速型パッシブパルスドライブ(PPD)などを具体例とする間欠駆動型の動力伝達機構30には、例えば変速比や動力伝達量などを確保するのに適した領域(例えば回転数の範囲など)がある。
【0038】
そこで、動力伝達装置が備える変速機構20の変速比は、動力源10の動作特性と動力伝達機構30の伝達特性に応じて決定することが好適である。これによって、変速機構20は、動力源10の動作特性と動力伝達機構30の伝達特性に応じて予め決定された変速比で動力源10から得られる動力を変速して動力伝達機構30へ出力する。
【0039】
変速機構20の変速比は、動力源10から得られる動力が動力伝達機構30の伝達特性に基づく動力伝達限界となるエネルギー密度限界以下で伝達される比率に設定する。具体的には、動力源10の効率的な動作状態において得られる動力が、動力伝達機構30の振動慣性と蓄積可能なエネルギー量に基づいて導出されるエネルギー密度限界以下で伝達されるように変速機構20の変速比を決定する。例えば、動力源10の最大効率点(例えば最大パワーが出力される回転数)で得られる動力をエネルギー密度限界以下で伝達できる変速比とする。
【0040】
変速機構20の変速比の決定方法について、図6のフローチャートを参照して説明する。ステップS10では、動力源10によって所望の出力が可能な出力速度範囲XMGを求める。出力速度範囲XMGは、動力源10の出力パワーと回転数との関係を示す動力源特性から求めることができる。所望の出力は、例えば、動力源10の最大出力とすればよい。ステップS12では、動力伝達機構30であるパッシブパルスドライブ(PPD)が動力源10の出力を受けてエネルギー密度限界以下で伝達できる入力速度範囲ΩPPDを求める。パッシブパルスドライブ(PPD)の伝達特性は、上記のように、数1式又は数2式を用いたシミュレーション又は数3式又は数4式を用いた理論式計算にて導出することができる。ステップS14では、変速機構20の変速比を求める。すなわち、パッシブパルスドライブ(PPD)への入力速度(入力回転数)がステップS12で求められた入力速度範囲ΩPPDに収まるようにステップS10で求められた出力速度範囲XMGを変換するための変速比を算出する。具体的には、出力速度範囲XMGの減速後の回転数X’MGが入力速度範囲ΩPPDの部分集合となる変速比γを算出する。
【0041】
図7は、増速型パッシブパルスドライブ(PPD)を用いた動力伝達装置の例を示す図である。
【0042】
当該例では、動力源10である高回転M/G(高回転モータジェネレータ)の動作特性から最大出力(150kW)が可能な出力速度範囲XMGは5500~15000[rpm]とした。また、動力伝達機構30として図3に示した増速型パッシブパルスドライブ(PPD)を適用し、その入力速度範囲ΩPPDは1000~6200[rpm]とした。これらから、変速機構20は、変速比γ=5.4が最適な値として算出された。
【0043】
変速機構20を設けない構成、すなわち減速無しの構成は、高回転M/Gの後段に増速型パッシブパルスドライブ(PPD)が直接接続された構成である。この場合、図7(a)に示すように、動力源10である高回転M/Gの最大出力(150kW)となる出力速度範囲XMGにおいて増速型パッシブパルスドライブ(PPD)から十分な出力が得られる変速範囲(図中、点線で囲んだ領域)は非常に狭くなった。
【0044】
これに対して、高回転M/Gと増速型パッシブパルスドライブ(PPD)との間に変速機構20を配置して、高回転M/Gの出力回転数を変速比γ=5.4で減速させた場合を図7(b)に示す。この場合、動力源10である高回転M/Gの最大出力(150kW)となる出力速度範囲XMGにおいて増速型パッシブパルスドライブ(PPD)から十分な出力が得られる変速範囲(図中、点線で囲んだ領域)は変速機構20を設けない場合に比べて拡大した。
【0045】
さらに、高回転M/Gと増速型パッシブパルスドライブ(PPD)との間に変速機構20を配置して、高回転M/Gの出力回転数を変速比γ=20で過剰減速させた場合を図7(c)に示す。この場合、動力源10である高回転M/Gの最大出力(150kW)となる出力速度範囲XMGにおいて増速型パッシブパルスドライブ(PPD)から十分な出力が得られる変速範囲(図中、点線で囲んだ領域)は変速機構20を変速比γ=5.4で動作させた場合に比べて縮小した。
【0046】
図8は、減速型パッシブパルスドライブ(PPD)を用いた動力伝達装置の例を示す図である。
【0047】
当該例では、動力源10である高回転M/G(高回転モータジェネレータ)の動作特性から最大出力(150kW)が可能な出力速度範囲XMGは5500~15000[rpm]とした。また、動力伝達機構30として図4に示した減速型パッシブパルスドライブ(PPD)を適用し、その入力速度範囲ΩPPDは2000~6200[rpm]とした。これらから、変速機構20は、変速比γ=2.7が最適な値として算出された。
【0048】
変速機構20を設けない構成、すなわち減速無しの構成は、高回転M/Gの後段に減速型パッシブパルスドライブ(PPD)が直接接続された構成である。この場合、図8(a)に示すように、動力源10である高回転M/Gの最大出力(150kW)となる出力速度範囲XMGにおいて減速型パッシブパルスドライブ(PPD)から十分な出力が得られる変速範囲(図中、点線で囲んだ領域)は非常に狭くなった。
【0049】
これに対して、高回転M/Gと減速型パッシブパルスドライブ(PPD)との間に変速機構20を配置して、高回転M/Gの出力回転数を変速比γ=2.7で減速させた場合を図8(b)に示す。この場合、動力源10である高回転M/Gの最大出力(150kW)となる出力速度範囲XMGにおいて減速型パッシブパルスドライブ(PPD)から十分な出力が得られる変速範囲(図中、点線で囲んだ領域)は変速機構20を設けない場合に比べて拡大した。
【0050】
さらに、高回転M/Gと減速型パッシブパルスドライブ(PPD)との間に変速機構20を配置して、高回転M/Gの出力回転数を変速比γ=5.4で過剰減速させた場合を図8(c)に示す。この場合、動力源10である高回転M/Gの最大出力(150kW)となる出力速度範囲XMGにおいて減速型パッシブパルスドライブ(PPD)から十分な出力が得られる変速範囲(図中、点線で囲んだ領域)は変速機構20を変速比γ=2.7で動作させた場合に比べて縮小した。
【0051】
以上のように、動力伝達機構30の入力側に変速機構20を設けて、変速機構20の変速比を適切に設定することによって動力伝達能力を高く維持することができる。すなわち、エネルギー変換を行いながら動力伝達する間欠型動力伝達機構において入力回転数を適切に設定することで、出力を低下させることなく変速範囲を拡大することができる。
【0052】
なお、減速するとトルクが増大するためにトルク上限が存在する無段変速機(CVT)では変速機構20を後段に設けるのが一般的である。これに対して、パッシブパルスドライブ(PPD)ではトルク制約が緩いので変速機構20を前段に設けて入力回転数を減速させて動力伝達特性を調整することができる。
【0053】
以上、本発明の具体的な実施態様の一例を説明したが、上述した具体例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その本質を逸脱しない範囲で各種の変形形態を包含する。
【符号の説明】
【0054】
10 動力源、20 変速機構、30 動力伝達機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8