(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】定着器および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 510
G03G15/20 565
(21)【出願番号】P 2019160051
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船田 敦
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-063418(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0020003(US,A1)
【文献】特開2012-068435(JP,A)
【文献】特開2010-237711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未定着の画像が保持された記録材を相互間に挟み込んで圧力をかける一対の加圧部材と、
前記一対の加圧部材の少なくとも一方に力を伝えて前記圧力を生じさせる加圧機構と、
前記加圧機構に各々の弾性力を加えることで前記圧力を生じさせる、少なくとも1つが中空部材であって互いに同軸に配備された2つの弾性部材と、
前記2つの弾性部材各々の第1端部が、前記一対の加圧部材が前記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、該2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第1の被押圧部材と、
前記2つの弾性部材各々の第2端部が、前記一対の加圧部材が前記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、該2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第2の被押圧部材とを備え、
前記第1の被押圧部材が、前記第2端部側に突き出て前記2つの
弾性部材の間に入り込んだ第1の姿勢保持壁を有し、
前記第2の被押圧部材が、前記第1端部側に、前記第1の姿勢保持壁とは非接触の位置まで突き出て前記2つの
弾性部材の間に入り込んだ第2の姿勢保持壁を有することを特徴とする定着器。
【請求項2】
前記2つの弾性部材は、一端で該2つの弾性部材に共通した共通箇所に力を加えるものであり、
前記2つの弾性部材の前記一端に対する他端が該2つの弾性部材について共通に接触した1つの調整部材を有し、当該調整部材の位置が調整されることで前記圧力の大きさを調整する調整機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の定着器。
【請求項3】
画像を保持する記録材上に未定着の画像を形成する画像形成部と、
前記未定着の画像を前記記録材上に定着させる定着器と、を備え、
前記定着器は、
前記未定着の画像が保持された記録材を相互間に挟み込んで圧力をかける一対の加圧部材と、
前記一対の加圧部材の少なくとも一方に力を伝えて前記圧力を生じさせる加圧機構と、
前記加圧機構に各々の弾性力を加えることで前記圧力を生じさせる、少なくとも1つが中空部材であって互いに同軸に配備された2つの弾性部材と、
前記2つの弾性部材各々の第1端部が、前記一対の加圧部材が前記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、該2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第1の被押圧部材と、
前記2つの弾性部材各々の第2端部が、前記一対の加圧部材が前記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、該2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第2の被押圧部材とを備え、
前記第1の被押圧部材が、前記第2端部側に突き出て前記2つの
弾性部材の間に入り込んだ第1の姿勢保持壁を有し、
前記第2の被押圧部材が、前記第1端部側に、前記第1の姿勢保持壁とは非接触の位置まで突き出て前記2つの
弾性部材の間に入り込んだ第2の姿勢保持壁を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着器および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、未定着の画像を保持した記録材をニップ領域で挟み込み、加熱あるいは非加熱で画像を記録材に定着させる定着器、およびこのような定着器を備えた画像形成装置が知られている。また、このような定着器として、ニップ領域における圧力をバネなどの弾性部材の力で得る構成の定着器も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、定着部材と加圧回転体とを所定の圧力で圧接させ被記録媒体を挟持する定着ニップ部を形成する付勢手段として機能する圧縮コイルばねを備えた定着装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、加圧部材を保持する第1の加圧レバーと、加圧カムに同期して動作し、第1の付勢部材を介して第1の加圧レバーに圧接力を付与する第2の加圧レバーとを有し、定着部材と加圧部材とにより定着ニップを形成する加圧機構が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、加圧ローラの回転軸を支持する支持手段としての支持部材と、支持部材に上端が圧接する付勢手段としてのスプリングと、スプリングの下端を支持する加圧プレートと、加圧プレートの底面に当接する楕円形状の押圧カムと、押圧カムを回転駆動させる荷重変更モータと、を備えた定着ニップ荷重変更部が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-155803号公報
【文献】特開2019-020520号公報
【文献】特開2012-013914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
定着器や画像形成装置の内部で弾性部材が設置され得るスペースは狭く、大きな弾性定数を有した短い弾性部材が用いられるのが一般的である。しかし、特に大きな弾性定数を有した短い弾性部材は経時的に劣化して、いわゆるヘタリを生じやすい。
【0008】
本発明は、1つの弾性部材の力で定着の圧力を得る場合に較べて弾性部材のヘタリが抑制される定着器および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る定着器は、
未定着の画像が保持された記録材を相互間に挟み込んで圧力をかける一対の加圧部材と、
上記一対の加圧部材の少なくとも一方に力を伝えて前記圧力を生じさせる加圧機構と、
上記加圧機構に各々の弾性力を加えることで前記圧力を生じさせる、少なくとも1つが中空部材であって互いに同軸に配備された2つの弾性部材と、
上記2つの弾性部材各々の第1端部が、上記一対の加圧部材が上記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、上記2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第1の被押圧部材と、
上記2つの弾性部材各々の第2端部が、上記一対の加圧部材が上記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、上記2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第2の被押圧部材とを備え、
上記第1の被押圧部材が、上記第2端部側に突き出て上記2つの弾性部材の間に入り込んだ第1の姿勢保持壁を有し、
上記第2の被押圧部材が、上記第1端部側に、上記第1の姿勢保持壁とは非接触の位置まで突き出て上記2つの弾性部材の間に入り込んだ第2の姿勢保持壁を有することを特徴とする。
請求項2に係る定着器は、請求項1の定着器において、
上記2つの弾性部材は、一端で上記2つの弾性部材に共通した共通箇所に力を加えるものであり、
上記2つの弾性部材の上記一端に対する他端が上記2つの弾性部材について共通に接触した1つの調整部材を有し、当該調整部材の位置が調整されることで上記圧力の大きさを調整する調整機構をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項3に係る画像形成装置は、
画像を保持する記録材上に未定着の画像を形成する画像形成部と、
上記未定着の画像を上記記録材上に定着させる定着器と、を備え、
上記定着器は、
上記未定着の画像が保持された記録材を相互間に挟み込んで圧力をかける一対の加圧部材と、
上記一対の加圧部材の少なくとも一方に力を伝えて上記圧力を生じさせる複数の加圧機構と、
上記加圧機構に各々の弾性力を加えることで上記圧力を生じさせる、少なくとも1つが中空部材であって互いに同軸に配備された2つの弾性部材と、
上記2つの弾性部材各々の第1端部が、上記一対の加圧部材が上記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、上記2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第1の被押圧部材と、
上記2つの弾性部材各々の第2端部が、上記一対の加圧部材が上記記録材に圧力をかける可動域全域において常に接し、上記2つの弾性部材双方からの押圧を受ける第2の被押圧部材とを備え、
上記第1の被押圧部材が、上記第2端部側に突き出て上記2つの弾性部材の間に入り込んだ第1の姿勢保持壁を有し、
上記第2の被押圧部材が、上記第1端部側に、上記第1の姿勢保持壁とは非接触の位置まで突き出て上記2つの弾性部材の間に入り込んだ第2の姿勢保持壁を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る定着器および請求項3に係る画像形成装置によれば、1つの弾性部材の力で定着の圧力を得る場合に較べて弾性部材のヘタリが抑制される。
また、請求項1に係る定着器および請求項3に係る画像形成装置によれば、同軸配置でない場合に較べて省スペース化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】画像形成装置の一実施形態に相当するプリンタの概略構成図である。
【
図3】第1実施形態における奥の一端側に配備された加圧機構を示す図である。
【
図4】第1実施形態における手前の一端側に配備された加圧機構を示す図である。
【
図5】第1実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す斜視図である。
【
図6】第1実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す側面図である。
【
図7】第2実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す斜視図である。
【
図8】第2実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す側方断面図である。
【
図9】第3実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す斜視図である。
【
図10】第3実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態について、以下図面を参照して説明する。
図1は、画像形成装置の一実施形態に相当するプリンタの概略構成図である。
【0016】
図1に示すプリンタ10はモノクロプリンタであり、プリンタ10外で作成された、画像を表す画像信号が、不図示の信号ケーブル等を介して入力される。プリンタ10には、このプリンタ10内の各構成要素の動作を制御する制御部11が備えられており、画像信号はこの制御部11に入力される。そして、プリンタ10では、この制御部11の制御の下で画像信号に基づく画像の形成が行われる。
【0017】
プリンタ10の下部には用紙トレイ21が備えられていて、用紙トレイ21には、用紙Pが積み重なった状態に収容されている。用紙トレイ21は、用紙Pの補給のために、プリンタ10の本体に対して引出し可能となっている。また、用紙トレイ21としては、互いに異なるサイズの用紙Pが収容された複数の用紙トレイ21が備えられている。
【0018】
各用紙トレイ21には、紙の用紙Pに替えてOHPシートやプラスチック紙や封筒などが本発明にいう媒体として収容されてもよい。本実施形態では用紙Pが本発明にいう媒体として収容されているものとしてプリンタ10の動作を説明するが、他の媒体が収容される場合であっても基本的な動作は同様となる。
【0019】
用紙トレイ21内の用紙Pは、ピックアップロール22およびさばきロール23により取り出され、上方の待機ロール24へと送られる。待機ロール24に到達した用紙Pは、搬送のタイミングが調整されてさらに上方へと搬送される。
【0020】
このプリンタ10には、矢印Aで示す向きに回転する円柱状の感光体12が備えられ、この感光体12の周囲に、帯電器13、露光器14、現像器15、転写器16、および感光体クリーナ17が配備されている。感光体12、帯電器13、露光器14、現像器15、および転写器16を併せたものが本発明にいう画像形成部の一例に相当する。
【0021】
帯電器13は感光体12の表面を帯電させ、露光器14は、制御部11から送られてくる画像信号に従って感光体12の表面を露光して静電潜像を形成する。静電潜像は現像器15により現像されてトナー像が形成される。
【0022】
ここで、上記の待機ロール24は、転写器16に対面した転写位置に感光体12上のトナー像が達するタイミングに合わせて用紙Pを送り出すことで、用紙Pをトナー像と同時に転写位置に到達させる。そして、感光体12上のトナー像は、転写器16の作用を受け、その送り出されてきた用紙P上に転写される。これにより用紙P上に未定着なトナー像が形成される。
【0023】
未定着なトナー像が形成された用紙Pは、さらに矢印B方向(上方向)に進み、定着器18に送り込まれる。定着器18で用紙Pは加熱および加圧を受けてその用紙P上にトナー像が定着される。その結果、用紙P上には定着トナー像からなる画像が形成される。定着器18で加熱加圧された用紙Pは排出器19へと向かう。排出器19へと向かった用紙Pはその排出器19によってさらに矢印D方向に送られて排紙台20上に排出される。定着器18が本発明の定着器の第1実施形態に相当する。
以下、定着器18の構造について更に詳細に説明する。
図2は、定着器の構造を示す断面図である。
【0024】
定着器18は、外観が略ロール状で
図2の奥行き方向に延びた加熱ロール31と、
図2の奥行き方向に加熱ロール31と並んで延びた加圧ロール32とを備えている。加圧ロール32は、加熱ロール31との間の定着領域(ニップ領域とも称される)に用紙Pを挟み込んで加圧し、回転によって用紙Pを
図2の上方へと搬送する。加圧ロール32は、金属芯33の周囲をゴム層34が取り巻いたいわゆるゴムロールである。一方、加熱ロール31は、複数の部材によって組み立てられた組立物であり、熱源35を内蔵し、外周面が過熱ベルト36で形成されている。加熱ベルト36は、加熱ロール31の周囲を循環移動して熱源35の熱を定着領域へと運ぶ。
【0025】
未定着の画像が形成された用紙Pが加熱ロール31と加圧ロール32との間を通過することで、画像が用紙Pに定着される。これら加熱ロール31と加圧ロール32との組み合わせが、本発明にいう一対の加圧部材の一例に相当する。
【0026】
このような定着器18においては、定着領域における圧力は、定着される画像の画質や、用紙Pを搬送する搬送能力を決定づける重要なパラメータである。定着領域における圧力は、定着圧やニップ圧などと称される。本実施形態の定着器18では、例えば加熱ロール31が加圧ロール32側に押し付けられることによって定着圧が得られる。定着器18には、加熱ロール31を加圧ロール32側に押し付ける加圧機構が備えられている。
【0027】
加熱ロール31には、組立物である加熱ロール31全体を支える支持部材37が組み込まれており、この支持部材37は
図2の奥行き方向の両側に突き出している。加圧機構は、このように突き出した支持部材37の両端それぞれに力を加える。
図3および
図4は、第1実施形態における加圧機構を示す図である。
【0028】
加圧機構40は、加熱ロール31に対して例えば1対備えられ、図の奥行き方向の両端それぞれに配備されている。
図3には、加熱ロール31における図の奥の一端側に配備された加圧機構40が示され、
図4には、加熱ロール31における図の手前の一端側に配備された加圧機構40が示されている。これらの加圧機構40が、本発明にいう加圧機構の一例に相当する。
【0029】
加圧機構40は、支点41の回りに回転自在なレバー42と、レバー42を一端で押すコイルバネ43と、コイルバネ43の他端を支える支持板44と、支持板44に頭45aが掛かり図示省略された筐体に脚45bがねじ込まれて支持板44の位置を決める支持ねじ45とを備えている。
【0030】
支持ねじ45および支持板44によって支持されたコイルバネ43がレバー42を図の上方へと押すことにより、レバー42は支点41の回りに図中で左回りに回転し、レバー42が加熱ロール31の支持部材37を加圧ロール32側へと押し込む。この押し込む力によって上述した定着圧が生じる。定着圧を生じさせるコイルバネ43のバネ荷重は、生産拠点で製品ごとに支持ねじ45のねじ込み量が調整され支持板44の位置が調整されることによって適切なバネ荷重に調整される。
【0031】
バネ荷重は、定着領域で求められる最大の定着圧が生じるいわゆるフルニップ状態となるように調整される。但し、定着器18では、フルニップ状態が常時保たれるとは限らず、例えば用紙Pのジャム時における用紙Pの除去性を確保するためや、例えば厚手の用紙Pの搬送性を得るため等に、必要に応じて加熱ロール31を、フルニップ状態に較べて加圧ロール32から遠ざけることも必要とされる。加圧機構40には、加熱ロール31を加圧ロール32から遠ざける仕組みとして、カム46およびカムフォロワ47が備えられている。
【0032】
カム46は定着器18の筐体側に回転軸が保持されており、
図4に示す状態ではカム面がカムフォロワ47と離れてフルニップ状態となっている。
図4に示す状態からカム46が回転するとカム面がカムフォロワ47と接触してカムフォロワ47を押す。カムフォロワ47はレバー42に固定されており、カムフォロワ47がカム面に押されることでレバー42は加圧ロール32から遠ざかる方向へと動く。この結果、レバー42に押された加熱ロール31も加圧ロール32から遠ざかる方向へと動き、定着圧が低下する。カム面がカムフォロワ47を最大限押した場合には、加熱ロール31が加圧ロール32から離間し、ジャムで詰まった用紙Pの除去が容易となる。
【0033】
このように、加圧機構40では、コイルバネ43の弾性力によって定着圧が生じるが、コイルバネ43のバネ定数が大きいと、コイルバネ43の素材が硬い素材となり、コイルバネ43のヘタリが生じやすい。また、コイルバネ43のバネ定数が大きいと、定着圧を変更するためのカム46の駆動系として強力な駆動系を要し、コストアップに繋がる。
そこで、本実施形態の定着器18に備えられた加圧機構40では、コイルバネ43のバネ定数を小さくする工夫が施されている。
【0034】
図5および
図6は、第1実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す図である。
図5には斜視図が示され、
図6には側面図が示されている。
上述したように、加圧機構40は、レバー42と、コイルバネ43と、支持板44と、支持ねじ45とを備えている。
【0035】
レバー42は、切り欠き部42aで加熱ロール31の支持部材37(
図3参照)を押し、衝立部42bでコイルバネ43の力を受ける。加圧機構40には、複数(ここでは一例として2本)の同径のコイルバネ43が並列で備えられ、それら複数のコイルバネ43は、各一端がレバー42の衝立部42bを押す。また、複数のコイルバネ43の各他端は支持板44によって支持されている。複数のコイルバネ43によって力が分担されていることで、各コイルバネ43のバネ定数は小さくなる。これら複数のコイルバネ43が、本発明にいう複数の弾性部材の一例に相当する。
ここで、コイルバネを1つだけ有する比較例と、2本のコイルバネ43を有する本実施形態とでバネ仕様を比較する。
【0036】
必要なバネ荷重が例えば86Nである場合、比較例では、例えば外径が13.2mm、線径が2.3mm、バネ定数が19.4N/mmのバネが必要となる。バネの素材としては例えば○○や○○等の硬い素材が用いられ、バネのヘタリが生じやすい。これに対して本実施形態の場合、86Nのバネ荷重を2本のコイルバネ43で分担するので、各コイルバネ43は43Nのバネ荷重を担う。そして、各コイルバネ43としては、例えば外径が11mm、線径が1.5mm、バネ定数が4.7N/mmのバネが用いられ、バネ定数が比較例よりも大幅に小さくなる。
【0037】
上述したように、支持板44の位置は支持ねじ45によって調整され、支持板44の位置調整によってコイルバネ43のバネ荷重が調整される。つまり、1つの支持ねじ45で1つの支持板44が位置調整されることにより、複数のコイルバネ43について一度にバネ荷重が調整されるので調整が容易である。
【0038】
支持板44と、レバー42の衝立部42bとのそれぞれには、コイルバネ43の内側へと突き出してコイルバネ43の端部に入る姿勢保持棒49が設けられている。姿勢保持棒49は、コイルバネ43の内周に接触してコイルバネ43の姿勢を保持する。即ち、姿勢保持棒49は、コイルバネ43の中心軸に交わる方向へのコイルバネ43の移動を抑制する。これらの姿勢保持棒49によりコイルバネ43の姿勢が保持されることにより、コイルバネ43の力が正しい向きで衝立部42bに伝わる。
【0039】
次に、定着器の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、コイルバネの周辺構造が異なる点を除いて第1実施形態と同様の実施形態であるので、以下では相違点に着目して説明を行い重複説明は省略する。
【0040】
図7および
図8は、第2実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す図である。
図7には斜視図が示され、
図8には側方断面図が示されている。
【0041】
第2実施形態における加圧機構50は、第1実施形態における加圧機構40と同様のレバー52を備えている。また、第2実施形態における加圧機構50の場合には、第1実施形態における加圧機構40の支持板44と支持ねじ45とを併せたものに相当する支持調整部材55を備えている。
【0042】
第1実施形態における加圧機構40では2つの同径のコイルバネ43が並列で備えられているのに対し、第2実施形態における加圧機構50では、大径のコイルバネ53と小径のコイルバネ54が同軸に配置されている。第2実施形態ではこのような同軸配置によって省スペース化が図られている。
【0043】
大径のコイルバネ53と小径のコイルバネ54は、各一端がレバー52の衝立部52bを互いに並列に押す。衝立部52bのコイルバネ53、54側には、支持調整部材55が貫通した中間部材57が備えられ、コイルバネ53、54は、この中間部材57を介して衝立部52bを押す。また、大径のコイルバネ53と小径のコイルバネ54の各他端は支持調整部材55の板状部分55aによって支持され、支持調整部材55のねじ込み量が調整されることにより大径のコイルバネ53と小径のコイルバネ54の各バネ荷重が同時に調整される。ここで同軸に配置される弾性部材としてはコイルバネに限られず、同軸配置できるものであれば、中空状の部材であってもよい。
ここで、コイルバネを1つだけ有する上記比較例と、大径のコイルバネ53および小径のコイルバネ54を有する本実施形態とでバネ仕様を比較する。
【0044】
比較例におけるバネ仕様は、上述したように、例えば外径が13.2mm、線径が2.3mm、バネ定数が19.4N/mmである。これに対して本実施形態の場合、86Nのバネ荷重を2本のコイルバネ53、54で分担し、各コイルバネ53、54は、例えば43Nずつのバネ荷重を担う。そして、大径のコイルバネ53としては、例えば外径が14.5mm、線径が1.7mm、バネ定数が4.3N/mmのバネが用いられる。また、小径のコイルバネ54としては、例えば外径が9.8mm、線径が1.5mm、バネ定数が6.2N/mmのバネが用いられる。
【0045】
支持調整部材55の板状部分55aと中間部材57とのそれぞれには、大径のコイルバネ53と小径のコイルバネ54との間へと突き出した円筒状の姿勢保持壁58が設けられている。姿勢保持壁58は、大径のコイルバネ53の内周に接触して大径のコイルバネ53の姿勢を保持する。即ち、姿勢保持壁58は、大径のコイルバネ53の中心軸に交わる方向への大径のコイルバネ53の移動を抑制し、大径のコイルバネ53と小径のコイルバネ54との接触を防ぐ。姿勢保持壁58は、大径のコイルバネ53の外径に接触して姿勢を保持するものであってもよいが、大径のコイルバネ53の内周に接触する姿勢保持壁58の場合には、大径のコイルバネ53と小径のコイルバネ54との接触がより確実に防がれる。
【0046】
なお、第2実施形態において小径のコイルバネ54は、支持調整部材55が内側を貫通して支持調整部材55の外周面が小径のコイルバネ54の内周に接触することによって姿勢が保持されている。
【0047】
次に、定着器の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、コイルバネの姿勢を保持する構造が異なる点を除いて第2実施形態と同様の実施形態であるので、以下では相違点に着目して説明を行い重複説明は省略する。
【0048】
図9および
図10は、第3実施形態の定着器に備えられた加圧機構におけるコイルバネ等の詳細を示す図である。
図9には斜視図が示され、
図10には側方断面図が示されている。
【0049】
第3実施形態における加圧機構60でも、第2実施形態における加圧機構50と同様に、小径のコイルバネ54は、支持部材55が内側を貫通することによって姿勢が保持されている。
【0050】
一方、大径のコイルバネ53の姿勢を保持する部材として第3実施形態では、小径のコイルバネ54と大径のコイルバネ53との間に挿入された筒形状の姿勢保持筒61が備えられている。姿勢保持筒61は、小径のコイルバネ54の外周を囲い、外周面が大径のコイルバネ53の内周に接触する。このような姿勢保持筒61が備えられることにより、小径のコイルバネ54と大径のコイルバネ53との接触が防がれる。また、姿勢保持筒61が備えられた加圧機構60は、構造が簡素であると共に、組立性に優れている。
【0051】
なお、上記説明では、本発明の定着器の実施形態として、加熱加圧方式の定着器が例示されるが、本発明の定着器は、非加熱で加圧する方式の定着器であってもよい。
【0052】
また、上記説明では、本発明にいう加圧機構として、加熱ロールを加圧ロール側に押し付けるものが例示されているが、本発明にいう加圧機構は、加圧ロールを加熱ロール側に押し付けるものであってもよい。
【0053】
また、上記説明では、本発明にいう複数の弾性部材としてコイルバネが例示されているが、本発明にいう複数の弾性部材は、コイルバネ以外のバネであってもよいし、ゴムであってもよい。また、上記説明では、本発明にいう複数の弾性部材として、押しバネが例示されているが、本発明にいう複数の弾性部材は、引く力が用いられる部材であってもよい。
【0054】
また、上記説明では、本発明にいう一対の加圧部材として、ロール部材とベルト部材との組み合わせが例示されているが、本発明にいう一対の加圧部材は、ロール部材同士の組み合わせであってもよいし、あるいは、ベルト部材同士の組み合わせであってもよい。
【0055】
また、上記説明では、本発明の画像形成装置の一実施形態として、モノクロプリンタが例示されているが、本発明の画像形成装置は、カラープリンタであってもよいし、複写機であってもよいし、ファクシミリであってもよいし、複合機であってもよい。
【0056】
また、上記説明では、本発明の画像形成装置の一実施形態として、電子写真方式のプリンタが例示されているが、本発明の画像形成装置は、電子写真方式以外の方式の装置であってもよい。
【0057】
また、本発明は、「発明が解決しようとする課題」欄に記載された課題を解決する目的で発明されたものであるが、本発明の構成は、この課題を解決しない形での他の目的への転用が妨げられるものではなく、そのように本発明の構成が転用された形態も本発明の一実施形態である。
【符号の説明】
【0058】
10……プリンタ、 12……感光体、 13……帯電器、 14……露光器、
15……現像器、 16……転写器、 17……感光体クリーナ、 18……定着器、
31……加熱ロール、 32……加圧ロール、 33……金属芯、 34……ゴム層、
35……熱源、 36……加熱ベルト、 37……支持部材、
40,50,60……加圧機構、 42……レバー、 43……コイルバネ、
44……支持板、 45……支持ねじ、 46……カム、 47……カムフォロワ、
49……姿勢保持棒、 53……大径のコイルバネ、 54……小径のコイルバネ、
55……支持調整部材、 57……中間部材、 58……姿勢保持壁、
61……姿勢保持筒、