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特許7434761三次元計測装置用光学アセンブリおよびこれを備えた三次元計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】三次元計測装置用光学アセンブリおよびこれを備えた三次元計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20240214BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240214BHJP
   G03B 15/02 20210101ALI20240214BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20240214BHJP
   G03B 15/03 20210101ALI20240214BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20240214BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240214BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240214BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20240214BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G03B15/00 T
G03B15/02 F
G03B15/05
G03B15/03 K
G03B17/55
G03B17/02
H04N23/52
H04N23/56
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019162342
(22)【出願日】2019-09-05
(65)【公開番号】P2021039075
(43)【公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-07-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪田 岳司
(72)【発明者】
【氏名】有吉 智規
(72)【発明者】
【氏名】中塚 均
(72)【発明者】
【氏名】奥濃 基晴
(72)【発明者】
【氏名】松本 慎也
(72)【発明者】
【氏名】太田 潤
(72)【発明者】
【氏名】木口 哲也
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-167504(JP,A)
【文献】特開平10-160841(JP,A)
【文献】特開2015-111101(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/356484(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/06
G01C 15/00
G03B 15/00
G03B 15/02
G03B 15/05
G03B 15/03
G03B 17/55
G03B 17/02
G03B 21/16
G02B 7/02
G01S 17/88
H04N 23/52
H04N 23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的に共役な関係にある一対の共役面を形成する光学レンズと、
前記一対の共役面のうちの一方に配置された光学デバイスと、
前記光学レンズの温度を検出するための温度センサと、
前記光学レンズを加熱するためのヒータと、
前記温度センサの検出結果に基づいて前記光学レンズが一定温度となるように前記ヒータの動作を制御する制御部とを備え
前記光学デバイスが、パターン照明を形成するパターン照明形成素子からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に対してパターン照明を投影することで投影パターンを結像するための投光レンズからなる、三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項2】
前記光学レンズの光軸と直交する方向において前記光学レンズを取り囲んでこれを支持するレンズ支持部をさらに備え、
前記温度センサおよび前記ヒータが、前記レンズ支持部に組付けられている、請求項1に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項3】
前記レンズ支持部を取り囲むとともに前記温度センサおよび前記ヒータを覆うカバー部材をさらに備え、
前記カバー部材の熱伝導率が、前記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さい、請求項2に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項4】
前記レンズ支持部が、前記光学レンズを支持する鏡筒と、前記鏡筒が固定されたマウント部材とを有し、
前記カバー部材が、前記マウント部材を覆い隠す略密閉構造を有している、請求項3に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項5】
前記カバー部材と前記マウント部材との間の少なくとも一部に空気層が設けられている、請求項4に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項6】
前記レンズ支持部が固定されるベース部をさらに備え、
前記ベース部の熱伝導率が、前記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さい、請求項2から5のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項7】
前記ヒータが、電熱線が設けられてなるフレキシブル基板からなるフレキシブルヒータにて構成され、
前記温度センサが、前記フレキシブル基板に実装され、
前記フレキシブルヒータが、前記レンズ支持部の外周面上に配置されている、請求項2から6のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項8】
前記フレキシブルヒータが、高熱伝導性の接着テープにて前記レンズ支持部に貼り付けられている、請求項7に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項9】
前記一定温度が、当該三次元計測装置用光学アセンブリの使用が許容される周囲環境温度の範囲内において前記ヒータによる前記投光レンズの加熱を行なわなかった場合に前記投光レンズが到達し得る最高温度以上であってかつ前記パターン照明形成素子の動作保証温度の上限以下の温度である、請求項1から8のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項10】
光学的に共役な関係にある一対の共役面を形成する光学レンズと、
前記一対の共役面のうちの一方に配置された光学デバイスと、
前記光学レンズの温度を検出するための温度センサと、
前記光学レンズを加熱するためのヒータと、
前記温度センサの検出結果に基づいて前記光学レンズが一定温度となるように前記ヒータの動作を制御する制御部とを備え
前記光学デバイスが、撮像面を有する撮像素子からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に投影された投影パターンを前記撮像面に結像するための受光レンズからなる、三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項11】
前記光学レンズの光軸と直交する方向において前記光学レンズを取り囲んでこれを支持するレンズ支持部をさらに備え、
前記温度センサおよび前記ヒータが、前記レンズ支持部に組付けられている、請求項10に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項12】
前記レンズ支持部を取り囲むとともに前記温度センサおよび前記ヒータを覆うカバー部材をさらに備え、
前記カバー部材の熱伝導率が、前記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さい、請求項11に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項13】
前記レンズ支持部が、前記光学レンズを支持する鏡筒と、前記鏡筒が固定されたマウント部材とを有し、
前記カバー部材が、前記マウント部材を覆い隠す略密閉構造を有している、請求項12に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項14】
前記カバー部材と前記マウント部材との間の少なくとも一部に空気層が設けられている、請求項13に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項15】
前記レンズ支持部が固定されるベース部をさらに備え、
前記ベース部の熱伝導率が、前記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さい、請求項11から14のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項16】
前記ヒータが、電熱線が設けられてなるフレキシブル基板からなるフレキシブルヒータにて構成され、
前記温度センサが、前記フレキシブル基板に実装され、
前記フレキシブルヒータが、前記レンズ支持部の外周面上に配置されている、請求項11から15のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項17】
前記フレキシブルヒータが、高熱伝導性の接着テープにて前記レンズ支持部に貼り付けられている、請求項16に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項18】
前記一定温度が、当該三次元計測装置用光学アセンブリの使用が許容される周囲環境温度の範囲内において前記ヒータによる前記受光レンズの加熱を行なわなかった場合に前記受光レンズが到達し得る最高温度以上であってかつ前記撮像素子の動作保証温度の上限以下の温度である、請求項10から17のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
【請求項19】
請求項1から9のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリを投影部として備えるとともに、請求項10から18のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリを撮像部として備えてなる、三次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、計測対象物としての被写体に対してパターン照明を投影するとともに、被写体に投影された投影パターンを撮像し、これによって得られた画像を用いて被写体の三次元形状を計測する三次元計測装置、および、当該三次元計測装置に投影部あるいは撮像部として具備される三次元計測装置用光学アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学的な手法を用いて被写体の三次元形状を計測する技術が知られている。たとえば、特開2012-79294号公報(特許文献1)には、複数種類の符号が二次元に並ぶ投影符号列の各符号に符号の種類毎に異なるシンボルを割り当てることで得られた投影パターンを用い、当該投影パターンを被写体に投影し、これを撮像することで得られた画像を用いて被写体の三次元計測を行なう画像情報処理装置が開示されている。
【0003】
また、この種の三次元計測装置に利用可能な撮像部としてのカメラの具体的な構造が開示された文献としては、たとえば米国特許出願公開第2017/0090076号明細書(特許文献2)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-79294号公報
【文献】米国特許出願公開第2017/0090076号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
三次元計測装置において使用される投光レンズおよび受光レンズ(ここで、投光レンズおよび受光レンズの各々は、複数のレンズからなる組レンズにてこれが構成される場合もあれば単一のレンズにてこれが構成される場合もある)は、通常、温度に応じて焦点位置が変化する性質(以下、これを単に「温度特性」と称する場合もある)を有している。この投光レンズおよび受光レンズの温度特性は、被写体の三次元形状の計測が可能な計測レンジ(すなわち、当該計測が可能となる計測ヘッドと被写体との間の距離の範囲)の広狭に多大な影響を及ぼす。
【0006】
そのため、定められた温度域において計測レンジが極端に狭まったりあるいは計測レンジ自体が存在しなくなってしまったりすることがないように計測レンジを広く確保するためには、何らかの手当てを講じることが必要になる。
【0007】
したがって、本開示は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、定められた温度域において計測レンジを広く確保することが可能な三次元計測装置およびこれに具備される三次元計測装置用光学アセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に従ったある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリは、光学レンズと、光学デバイスと、温度センサと、ヒータと、制御部とを備えている。上記光学レンズは、光学的に共役な関係にある一対の共役面を形成するものであり、上記光学デバイスは、上記一対の共役面のうちの一方に配置されている。上記温度センサは、上記光学レンズの温度を検出するためのものであり、上記ヒータは、上記光学レンズを加熱するためのものである。上記制御部は、上記温度センサの検出結果に基づいて上記光学レンズが一定温度となるように上記ヒータの動作を制御する。
【0009】
このように構成することにより、光学レンズの温度を一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において光学レンズの焦点位置に変化が生じることを実質的に抑制できる。そのため、予め加熱後の状態において光学デバイスが光学レンズの焦点位置に配置されるように構成しておくことにより、三次元計測時において光学デバイスを光学レンズの焦点位置に常時配置させた状態が維持可能になる。したがって、上記構成の三次元計測装置用光学アセンブリとすることにより、これを備えた三次元計測装置とした場合に、定められた温度域において計測レンジを広く確保することに資することができる。
【0010】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリは、上記光学レンズの光軸と直交する方向において上記光学レンズを取り囲んでこれを支持するレンズ支持部をさらに備えていてもよく、その場合には、上記温度センサおよび上記ヒータが、上記レンズ支持部に組付けられていてもよい。
【0011】
このように構成することにより、レンズ支持部を介して光学レンズを一定温度に維持することが可能になるとともに、光学レンズを支持するレンズ支持部の温度も一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において光学レンズと光学デバイスとの間の光軸方向における距離である素子間距離に変動が生じることも実質的に抑制できる。そのため、三次元計測時において光学デバイスを光学レンズの焦点位置に常時配置させた状態がより確実に維持可能になる。
【0012】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリは、上記レンズ支持部を取り囲むとともに上記温度センサおよび上記ヒータを覆うカバー部材をさらに備えていてもよく、その場合には、上記カバー部材の熱伝導率が、上記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さいことが好ましい。
【0013】
このように構成することにより、カバー部材によって断熱効果が発揮されることになるため、光学レンズおよびレンズ支持部を効率的に加熱することができるとともに、光学レンズおよびレンズ支持部の温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。そのため、初期のウォームアップ動作に要する時間の短縮が図られるとともに、三次元計測時において光学デバイスが光学レンズの焦点位置に常時配置させた状態がより確実に維持可能になる。
【0014】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記レンズ支持部が、上記光学レンズを支持する鏡筒と、上記鏡筒が固定されたマウント部材とを有していてもよく、その場合には、上記カバー部材が、上記マウント部材を覆い隠す略密閉構造を有していてもよい。
【0015】
このように構成することにより、カバー部材の断熱効果がより高まることになるため、光学レンズおよびレンズ支持部をより効率的に加熱することができるとともに、光学レンズおよびレンズ支持部の温度をより安定的に一定温度に維持することが可能になる。
【0016】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記カバー部材と上記マウント部材との間の少なくとも一部に空気層が設けられていてもよい。
【0017】
このように構成することにより、カバー部材のみならず空気層によっても断熱効果が発揮されることになるため、光学レンズおよびレンズ支持部をさらに効率的に加熱することができるとともに、光学レンズおよびレンズ支持部の温度をさらに安定的に一定温度に維持することが可能になる。
【0018】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリは、上記レンズ支持部が固定されるベース部をさらに備えていてもよく、その場合には、上記ベース部の熱伝導率が、上記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さいことが好ましい。
【0019】
このように構成することにより、レンズ支持部が固定されるベース部によって断熱効果が発揮されることになるため、光学レンズおよびレンズ支持部を効率的に加熱することができるとともに、光学レンズおよびレンズ支持部の温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。そのため、初期のウォームアップ動作に要する時間の短縮が図られるとともに、三次元計測時において光学デバイスが光学レンズの焦点位置に常時配置させた状態がより確実に維持可能になる。
【0020】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記ヒータが、電熱線が設けられてなるフレキシブル基板からなるフレキシブルヒータにて構成されていてもよく、その場合には、上記温度センサが、上記フレキシブル基板に実装されているとともに、上記フレキシブルヒータが、上記レンズ支持部の外周面上に配置されていることが好ましい。
【0021】
このように構成することにより、簡易な構成にて光学レンズおよびレンズ支持部を加熱することが可能になるとともに、簡易な構成にて光学レンズの温度を測定することが可能になるため、組付作業が容易化することになり、結果として製造コストの削減を図ることができる。
【0022】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記フレキシブルヒータが、高熱伝導性の接着テープにて上記レンズ支持部に貼り付けられていてもよい。
【0023】
このように構成することにより、伝熱効率を高めつつフレキシブルヒータをレンズ支持部に容易に組付けることが可能になるとともに、より正確な温度の測定を可能にしつつ温度センサをレンズ支持部に容易に組付けることが可能になり、さらなる製造コストの削減を図ることができる。
【0024】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記光学デバイスが、パターン照明を形成するパターン照明形成素子にて構成されているとともに、上記光学レンズが、上記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に対してパターン照明を投影することで投影パターンを結像するための投光レンズにて構成されていてもよい。
【0025】
このように構成した場合には、当該三次元計測装置用光学アセンブリを三次元計測装置の投影部として用いることができ、当該投影部を備えた三次元計測装置とした場合に、定められた温度域において計測レンジを広く確保することに資することができる。
【0026】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記一定温度が、当該三次元計測装置用光学アセンブリの使用が許容される周囲環境温度の範囲内において上記ヒータによる上記投光レンズの加熱を行なわなかった場合に上記投光レンズが到達し得る最高温度以上であってかつ上記パターン照明形成素子の動作保証温度の上限以下の温度であることが好ましい。
【0027】
このように構成することにより、定められた温度域において計測レンジを広く確保しつつも長寿命でかつ高信頼性の三次元計測装置用光学アセンブリとすることができる。
【0028】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記光学デバイスが、撮像面を有する撮像素子にて構成されているとともに、上記光学レンズが、上記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に投影された投影パターンを上記撮像面に結像するための受光レンズにて構成されていてもよい。
【0029】
このように構成した場合には、当該三次元計測装置用光学アセンブリを三次元計測装置の撮像部として用いることができ、当該撮像部を備えた三次元計測装置とした場合に、定められた温度域において計測レンジを広く確保することに資することができる。
【0030】
本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリにあっては、上記一定温度が、当該三次元計測装置用光学アセンブリの使用が許容される周囲環境温度の範囲内において上記ヒータによる上記受光レンズの加熱を行なわなかった場合に上記受光レンズが到達し得る最高温度以上であってかつ上記撮像素子の動作保証温度の上限以下の温度であることが好ましい。
【0031】
このように構成することにより、定められた温度域において計測レンジを広く確保しつつも長寿命でかつ高信頼性の三次元計測装置用光学アセンブリとすることができる。
【0032】
本開示に従ったある局面に係る三次元計測装置は、投影部として、本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリを備えているとともに、撮像部として、本開示に従った上記ある局面に係る三次元計測装置用光学アセンブリを備えてなるものである。
【0033】
このように構成することにより、定められた温度域において計測レンジを広く確保することができる三次元計測装置とすることができる。
【発明の効果】
【0034】
本開示に従えば、定められた温度域において計測レンジを広く確保することが可能な三次元計測装置およびこれに具備される三次元計測装置用光学アセンブリを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】実施の形態に係る三次元計測装置の概略図である。
図2図1に示す計測ヘッドの機能ブロックの構成を示す模式図である。
図3図1に示す計測ヘッドの具体的な構造の概念を示す模式図である。
図4図1に示す画像計測装置の機能ブロックの構成を示す模式図である。
図5図1に示す三次元計測装置において計測ヘッドから照射される投影パターンの一例を示す図である。
図6図1に示す三次元計測装置が実行する三次元計測の原理を説明するための図である。
図7図1に示す三次元計測装置の撮像部側の計測レンジを示す図である。
図8図1に示す計測ヘッドの外観構造を示す概略斜視図である。
図9図1に示す計測ヘッドの内部構造を示す概略斜視図である。
図10図9に示す投影部の概略斜視図である。
図11図9に示す投影部の模式断面図である。
図12図9に示す投影部の組付構造を示す分解斜視図である。
図13図9に示す撮像部の概略斜視図である。
図14図9に示す撮像部の模式断面図である。
図15図9に示す撮像部の組付構造を示す分解斜視図である。
図16図9に示す投影部および撮像部の放熱構造を示す概略斜視図である。
図17図1に示す計測ヘッドの筐体の密閉構造を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0037】
<A.三次元計測装置>
図1は、実施の形態に係る三次元計測装置の概略図である。まず、この図1を参照して、本実施の形態に係る三次元計測装置1について説明する。
【0038】
図1に示すように、三次元計測装置1は、計測ヘッド10および画像計測装置1000を備えている。このうち、画像計測装置1000は、センサコントローラあるいは視覚センサとも称される。
【0039】
画像計測装置1000は、計測ヘッド10から予め定められた投影パターンを計測対象物としての被写体に投影した状態において、当該被写体を計測ヘッド10で撮像した画像(以下、「入力画像」とも称する)を取得する。典型的には、投影パターンとしては、構造化照明に従う投影パターンが採用される。すなわち、投影パターンとしては、それぞれ固有のコードが割当てられた複数種類の基準パターンを所定規則に従って配置したものが採用される(この種の方法は、固有コード法と称される)。
【0040】
画像計測装置1000は、投影パターンの情報および取得した入力画像に現れる投影パターンの情報を用いて三次元計測処理を実行することにより、三次元計測結果(三次元計測結果画像)を取得する。
【0041】
より具体的には、画像計測装置1000は、投影された投影パターンに含まれる各基準パターン(以下、「プリミティブ」とも称する)を入力画像内で探索することで、各プリミティブが照射された位置および当該照射されたプリミティブが示すコードの集合を取得する。そして、画像計測装置1000は、投影パターンに設定される単位領域(以下、「ワード」とも称する)に含まれる所定数の基準パターンが示すコードの配列と同一の配列を示す対応領域(以下、「格子状コードパターン」とも称する)を当該コードの集合から探索する。最終的に、画像計測装置1000は、格子状コードパターンの探索結果に基づいて、投影パターンの後述する照射基準面から被写体の各部までの距離を算出する。この算出された距離の集合は、三次元計測結果画像として表現される。
【0042】
三次元計測装置1は、各種の用途に用いることができるが、本例では、コンベヤC上を搬送されるワークWKおよびその周囲の三次元形状を計測する用途に用いられる。具体的には、計測ヘッド10に設けられた投影部12から投影パターンが被写体としてのワークWKおよびその周囲に向けて投影され、計測ヘッド10に設けられた撮像部13により、投影パターンが投影されたワークWKおよびその周囲が撮像される。
【0043】
<B.計測ヘッド>
図2は、図1に示す計測ヘッドの機能ブロックの構成を示す模式図であり、図3は、図1に示す計測ヘッドの具体的な構造の概念を示す模式図である。次に、これら図2および図3を参照して、計測ヘッド10の構成について説明する。
【0044】
図2に示すように、計測ヘッド10は、処理部11と、上述した投影部12および撮像部13と、表示部14と、記憶部15と、通信インターフェイス(I/F)部16とを含んでいる。このうち、投影部12は、上述したように、投影パターンを被写体に対して投影し、撮像部13は、投影パターンが投影された被写体を撮像する。
【0045】
処理部11は、計測ヘッド10における全体処理を司る。処理部11は、典型的には、プロセッサと、プロセッサで実行される命令コードを格納するストレージと、命令コードを展開するメモリとを含んでいる。この場合、処理部11において、プロセッサが命令コードをメモリ上に展開して実行することで各種処理を実現する。処理部11の全部または一部を専用のハードウェア回路(たとえば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等)を用いて実装してもよい。
【0046】
表示部14は、計測ヘッド10において取得あるいは算出された各種情報を外部へ通知する。
【0047】
記憶部15は、撮像部13により撮像された画像や予め設定されるキャリブレーションパラメータなどを格納する。
【0048】
通信インターフェイス部16は、計測ヘッド10と画像計測装置1000との間のデータの遣り取りを担当する。
【0049】
図3に示すように、投影部12は、光学デバイスとしてのパターン照明形成素子である光源241およびフォトマスク244と、光学レンズとしての投光レンズ220と、後述する図示しないレンズ支持部等を有している。すなわち、投影部12は、これら光源241、フォトマスク244、投光レンズ220、レンズ支持部等が互いに組付けられることで構成された三次元計測装置用光学アセンブリにて構成されるが、その詳細な構造については後述することとする。
【0050】
光源241は、所定の波長の光をフォトマスク244の方向に向けて照射する。フォトマスク244には、所定のパターンが形成されている。フォトマスク244を通過した光は、投光レンズ220を介して、外部に照射される。これにより、外部空間に投影パターンが照射される。
【0051】
一方、撮像部13は、光学デバイスとしての撮像素子341と、光学レンズとしての受光レンズ320と、後述する図示しないレンズ支持部等とを有している。すなわち、撮像部13は、これら撮像素子341、受光レンズ320、レンズ支持部等が互いに組付けられることで構成された三次元計測装置用光学アセンブリにて構成されるが、その詳細な構造については後述することとする。
【0052】
撮像部13は、投影パターンが投影された状態の被写体を撮像する。詳しくは、受光レンズ320を通過した光を撮像素子341が受光することにより、入力画像が得られる。
【0053】
ここで、図2に示すように、投影部12には、投光レンズ220の温度を検出するための温度センサ254が設けられており、撮像部13には、受光レンズ320の温度を検出するための温度センサ354が設けられている。
【0054】
また、投影部12には、投光レンズ220を加熱するためのヒータであるフレキシブルヒータ250(図11等参照)のヒータ部251が設けられており、撮像部13には、受光レンズ320を加熱するためのヒータであるフレキシブルヒータ350(図14等参照)のヒータ部351が設けられている。
【0055】
一方、処理部11には、制御部11aが設けられている。制御部11aは、三次元計測時において投光レンズ220の温度および受光レンズ320の温度をそれぞれ予め定めた一定温度に保つための制御を行なう。
【0056】
具体的には、制御部11aは、温度センサ254の検出結果に基づいてヒータ部251の動作を制御することで投光レンズ220の温度を一定温度に維持するとともに、温度センサ354の検出結果に基づいてヒータ部351の動作を制御することで受光レンズ320の温度を一定温度に維持する。なお、この点の詳細については後述することとする。
【0057】
<C.画像計測装置>
図4は、図1に示す画像計測装置の機能ブロックの構成を示す模式図である。次に、この図4を参照して、画像計測装置1000の機能ブロックの構成について説明する。
【0058】
図4に示すように、画像計測装置1000は、典型的には汎用コンピュータを用いて実現される。画像計測装置1000は、プロセッサ1020と、メインメモリ1040と、ストレージ1060と、入力部1080と、表示部1100と、光学ドライブ1120と、下位インターフェイス部1140と、上位インターフェイス部1160とを含んでいる。これらのコンポーネントは、プロセッサバス1180を介して接続されている。
【0059】
プロセッサ1020は、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等で構成され、ストレージ1060に格納されたプログラム(一例として、OS1061および三次元計測プログラム1062)を読出して、メインメモリ1040に展開して実行することで、後述するような各種処理を実現する。
【0060】
メインメモリ1040は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性記憶装置等で構成される。ストレージ1060は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の不揮発性記憶装置等で構成される。
【0061】
ストレージ1060には、基本的な機能を実現するためのOS1061に加えて、画像計測装置1000としての機能を提供するための三次元計測プログラム1062が格納される。
【0062】
入力部1080は、キーボードやマウスなどで構成され、ユーザ操作を受付ける。表示部1100は、ディスプレイ、各種インジケータ、プリンタ等で構成され、プロセッサ1020からの処理結果等を出力する。
【0063】
下位インターフェイス部1140は、計測ヘッド10との間のデータの遣り取りを担当する。上位インターフェイス部1160は、図示しない上位装置(たとえば、PLC(プログラマブルコンピュータ)等)との間のデータの遣り取りを担当する。
【0064】
画像計測装置1000は、光学ドライブ1120を有しており、コンピュータ読取可能なプログラムを非一過的に格納する記録媒体1150(たとえば、DVD(Digital Versatile Disc)等の光学記録媒体)から、その中に格納されたプログラムが読取られてストレージ1060等にインストールされる。
【0065】
画像計測装置1000で実行される三次元計測プログラム1062等は、コンピュータ読取可能な記録媒体1150を介してインストールされてもよいが、ネットワーク上のサーバ装置などからダウンロードする形でインストールされるようにしてもよい。また、本実施の形態に係る三次元計測プログラム1062が提供する機能は、OSが提供するモジュールの一部を利用する形で実現される場合もある。
【0066】
図4には、プロセッサ1020がプログラムを実行することで、画像計測装置1000として必要な機能が提供される構成例を示したが、これらの提供される機能の一部または全部を、専用のハードウェア回路(たとえば、ASICまたはFPGA等)を用いて実装してもよい。
【0067】
<D.三次元計測>
次に、本実施の形態に係る三次元計測装置1による三次元計測について説明する。本実施の形態においては、構造化照明と称される手法を用いて三次元計測を実現する。構造化照明の手法では、所定の投影パターンを被写体に投影するともに、投影パターンが投影された状態において被写体を撮像することで得られる画像に基づいて被写体の各部の位置(計測ヘッドからの距離)を計測し、これにより被写体の三次元形状を計測する。
【0068】
本実施の形態においては、構造化照明の一例として、予め定められた投影パターン(典型的には、濃淡パターン)をもつ計測光が照射される方法を採用している。なお、以下の説明においては、投影部12の照射面を投影パターンの「照射基準面」と見なす。
【0069】
三次元計測装置1において、計測ヘッド10に含まれる投影部12と撮像部13との間でキャリブレーションが実行されており、投影部12および撮像部13の光学パラメータおよび両者を関連付ける行列は予め決定されている。投影部12および撮像部13の光学パラメータは、いずれも同じ基準点に基づいて決定されており、投影部12の投影面の高さを指定すれば、投影部12から照射される投影パターンが撮像部13の撮像面上のどの画素に対応するのかを算出できる。
【0070】
投影部12から照射される投影パターンは、投影部12の光軸に対する被写体の位置や傾きに応じて大きさや位置(隣接する要素間の間隔の伸縮)が変化することになり、このような情報に基づいて、三角測量の原理によって、被写体の形状を計測できる。
【0071】
図5は、本実施の形態に係る三次元計測装置において計測ヘッドから照射される投影パターンの一例を示す図である。図6は、本実施の形態に係る三次元計測装置が実行する三次元計測の原理を説明するための図である。
【0072】
計測ヘッド10の投影部12からは、たとえば、図5に示すような投影パターンPを含む計測光が被写体に対して照射される。計測ヘッド10の撮像部13は、投影パターンPが投影された状態で被写体を撮像する。
【0073】
図5に示す投影パターンPは、空間コードを格子状に配置したもの(以下、「格子状コード」とも称する)であって、所定方向において所定長のパターンについて自己相関が生じないような固有のコードが割当てられている。より具体的には、投影パターンPは、複数種類のプリミティブ(基準パターンに相当)の組合せによって規定される。
【0074】
図6(A)には、4種類のプリミティブが示される。各プリミティブは、それぞれに割当てられたコード(図6(A)に示す例では、1~4の4つの数値)を示す。各プリミティブは、4つの大きな正方形Qa~Qdと、中心部に位置する1つの小さな正方形Qeとで構成される。正方形Qa~Qdの各々は、プリミティブ位置Rがコーナとなるように配置されている。プリミティブ位置Rは、小さな正方形Qeの中心位置でもある。
【0075】
図6(A)に示すように、大きな正方形Qa~Qdの交点(格子のコーナ一点)がプリミティブ位置Rと定義される。なお、プリミティブ位置Rについての大きさおよび形状については限定されない。プリミティブの各々が三次元点の1つとして復元される。
【0076】
図6(A)に示すように、プリミティブ位置Rが「白」のときp0=1とし、「黒」のときp0=0とし、プリミティブ位置Rの左上の大きい正方形Qbが「白」のときp1=1とし、「黒」のときp1=0と表現する。プリミティブの種類は、2p1+p0と数値表現できる。
【0077】
図6(B)には、投影パターンP(図5参照)の部分に含まれるプリミティブの種類を数値で表現したものである。すなわち、投影パターンPに含まれる各プリミティブの種類を特定し、各特定したプリミティブの種類を数値で表現することにより、投影パターンPと等価な行列Kを生成できる。
【0078】
以下の説明においては、投影パターンPの面内方向をX方向およびY方向と規定するとともに、光軸方向(高さ)方向をZ方向と規定する。
【0079】
図6(C)には、図6(B)に示す行列Kの部分行列が示される。ここでは、行列Kに設定される所定の大きさ(ワード高さHword×ワード幅Wword)の部分行列を想定する。このような部分行列を「ワード」とも称する。すなわち、各ワードは、所定数のプリミティブの種類の組合せ(図6(C)に示す例では、3×3)によって規定される。投影パターンPは、すべてのワードの各々がユニークとなるように、プリミティブが配置されることで生成される。
【0080】
投影パターンPが被写体に投影した状態で撮像することで取得される入力画像から、行列Kに含まれるすべてのワードが抽出される。なお、プリミティブを抽出して、ワードを特定あるいは再構成する処理を(ワードの)「デコード」とも称する。
【0081】
図6(C)には、抽出された3つのワード(ワードW1,W2,W3)を示している。入力画像に写るパターンからすべてのワードを抽出したときに、各抽出したワード中に部分行列の数値の並びがユニークであれば、そのワードのパターン中での位置が特定される。すなわち、投影パターンPにおける位置(ワードの位置)を特定できる。
【0082】
計測ヘッド10(投影部12)から投影パターンPを照射する場合において、被写体の表面形状に応じて、投影された像から特定されるワードの位置は変化することになる。
【0083】
このような投影パターンPを被写体に投影した状態において、当該被写体を撮像して得られる画像に含まれるプリミティブから規定されるワードの大きさおよび隣接するワード間の位置ずれに基づけば、計測ヘッド10から被写体の各部までの距離および被写体の三次元形状が計測できる。
【0084】
たとえば、図6(C)に示す例においては、隣り合うワードW1~W3は一部のプリミティブを共有している。
【0085】
画像計測装置1000は、それぞれの計測ヘッド10から出力される画像に対して、プリミティブの抽出処理、ならびに、抽出されたプリミティブにより特定されたワードの位置および大きさの評価処理を実行することにより、被写体の三次元形状の計測結果を出力する。
【0086】
なお、図6(A)においては、4種類のプリミティブを使用する例を示しているが、プリミティブの種類数は4種類に限定されない。また、図6(A)に示すようなプリミティブの形状および色に限定されることなく、任意の形状および色を採用できる。
【0087】
また、プリミティブの検出手法としては、各プリミティブをモデルとしたパターンマッチングや、黒画素方向/白画素方向および中央値の色を条件とするフィルタ処理などを採用できる。
【0088】
<E.解決すべき課題>
次に、本開示が解決すべき課題について説明する。本開示が解決すべき課題は、要約すると、上述のように、定められた温度域において計測レンジが極端に狭まったりあるいは計測レンジ自体が存在しなくなってしまったりすることを防止する点にある。
【0089】
ここで、計測レンジとは、被写体の三次元形状の計測が可能となる計測ヘッドと被写体との間の光軸方向に沿った距離の範囲のことを意味しており、当該計測レンジが極端に狭まったりあるいは当該計測レンジ自体が存在しなくなってしまったりした場合には、被写体の三次元形状を計測することができない。
【0090】
この計測レンジには、投影部側での計測レンジと、撮像部側での計測レンジとが含まれている。投影部側の計測レンジの外側に被写体が配置された場合には、被写体に投影された投影パターンがぼやけることになり、入力画像における投影パターンが不鮮明になる。また、撮像部側の計測レンジの外側に被写体が配置された場合には、撮像素子の撮像面上に形成される像がぼやけることになり、入力画像における投影パターンが不鮮明になる。そのため、いずれの場合にも、取得した入力画像から上述したプリミティブを抽出することができず、結果として被写体の三次元形状を計測することが不可能になってしまう。
【0091】
上述したように、三次元計測装置の計測ヘッドには、投影パターンを被写体上において結像するための光学レンズ(投光レンズ)と、投影パターンが被写体に投影された状態の像を撮像素子の撮像面上において結像するための光学レンズ(受光レンズ)とが設けられている。これら光学レンズは、複数のレンズが組み合わされた複合レンズにて構成されることが一般的であるが、通常、温度に応じて焦点位置が変化する性質(温度特性)を有している。上述した計測レンジの有無ならびに広狭には、この光学レンズの温度特性が大きく影響する。
【0092】
図7は、図1に示す三次元計測装置の撮像部側の計測レンジを示す図である。以下、この図7を参照して、光学レンズの温度特性が三次元計測装置1の計測レンジに与える影響について、受光側を例に挙げて詳説する。なお、理解を容易とするために、図7においては、受光レンズ320を単一のレンズにて構成した場合を図示しているが、後述する図14等において示すように、受光レンズ320を複数のレンズからなる組レンズにて構成してもよい。
【0093】
ここで、図7(A)は、受光レンズ320が温度Tにある状態を示しており、図7(B)は、受光レンズ320が温度T+ΔTに昇温した状態を示しており、図7(C)は、受光レンズ320が温度T-ΔTに降温した状態を示している。なお、使用する受光レンズ320としては、温度の上昇に伴って焦点位置が遠ざかる方向に変化するものを例示する。
【0094】
図7(A)に示すように、受光レンズ320は、光学的に共役な関係にある一対の共役面としての物体面および像面を形成する。受光レンズ320の主点から物体面までの距離である物体距離Aと、受光レンズ320の主点から像面までの距離である像距離Bとは、受光レンズ320の焦点距離fを用いて下記の式(1)によって決まる。
【0095】
(1/A)+(1/B)=1/f ・・・(1)
【0096】
ここで、物体面に被写体が配置されるとともに、像面に撮像素子341が配置されることにより、撮像素子341の撮像面に被写体の像が鮮明に結像される。なお、受光レンズ320は、その許容散乱円径Φによって決まる焦点深度δを有しており、当該焦点深度δの範囲内に撮像素子341が配置される限りにおいては、被写体の像が撮像素子341の撮像面上に鮮明に結像されることになる。
【0097】
受光側の計測レンジは、被写界深度DOF(Depth of Field)によって決まる。被写界深度DOFは、像面において像が鮮明に結像する、被写体が配置される側における光軸方向に沿った範囲であり、物体面から見て受光レンズ320側に位置する前側被写界深度Lfと、物体面から見て受光レンズ320側とは反対側に位置する後側被写界深度Lrとの和として表わされる。一般に、被写界深度DOFの受光レンズ320側の端点は「近点」と称され、被写界深度DOFの受光レンズ320側とは反対側の端点は「遠点」と称される。
【0098】
ここで、受光レンズ320の主点から近点までの距離である近点距離Snと、受光レンズ320の主点から遠点までの距離である遠点距離Sfとは、上述した焦点距離f、物体距離Aおよび許容散乱円径Φと、受光レンズ320の明るさFとを用いて、それぞれ下記の式(2)および式(3)によって決まる。
【0099】
Sn=Φ×F×A/(f+Φ×F×A) ・・・(2)
Sf=Φ×F×A/(f-Φ×F×A) ・・・(3)
【0100】
したがって、撮像素子341と受光レンズ320との間の光軸方向に沿った距離(これを「素子間距離」と称する)が上述した像距離Bである撮像部13においては、被写体が、受光レンズ320からの距離が上記式(2)で表わされる近点距離Sn以上で、かつ、上記式(3)で表わされる遠点距離Sf以下の範囲内に配置されることにより、被写体の鮮明な入力画像が取得できることになる。すなわち、当該範囲が、温度Tにおける計測レンジとなる。
【0101】
一方、図7(B)に示すように、受光レンズ320が図7(A)に示す状態よりも温度ΔTだけ昇温した状態においては、受光レンズ320の焦点位置が受光レンズ320から遠ざかる方向に向けて移動し、これに伴って物体面も受光レンズ320から遠ざかる。この遠ざかる距離をΔAとすると、物体距離は、A+ΔAとなる。この場合、近点距離Snおよび遠点距離Sfは、それぞれ下記の式(4)および式(5)によって決まる。
【0102】
Sn=Φ×F×(A+ΔA)/(f+Φ×F×(A+ΔA)) ・・・(4)
Sf=Φ×F×(A+ΔA)/(f-Φ×F×(A+ΔA)) ・・・(5)
【0103】
すなわち、温度T+ΔTにおける計測レンジは、上述した温度Tにおける計測レンジよりも受光レンズ320から遠ざかる方向に向けてシフトすることになる。
【0104】
なお、上述のとおり、物体面が受光レンズ320から遠ざかった場合には、像面は受光レンズ320に近づくことになり、その際の像距離を図中においては、B’で表わしている。ここで、B’は、上記式(1)に基づき、f×(A+ΔA)/(A+ΔA-f)となる。
【0105】
他方、図7(C)に示すように、受光レンズ320が図7(A)に示す状態よりも温度ΔTだけ降温した状態においては、受光レンズ320の焦点位置が受光レンズ320に近づく方向に向けて移動し、これに伴って物体面も受光レンズ320に近づく。この近づく距離をΔAとすると、物体距離は、A-ΔAとなる。この場合、近点距離Snおよび遠点距離Sfは、それぞれ下記の式(6)および式(7)によって決まる。
【0106】
Sn=Φ×F×(A-ΔA)/(f+Φ×F×(A-ΔA)) ・・・(6)
Sf=Φ×F×(A-ΔA)/(f-Φ×F×(A-ΔA)) ・・・(7)
【0107】
すなわち、温度T-ΔTにおける計測レンジは、上述した温度Tにおける計測レンジよりも受光レンズ320に近づく方向に向けてシフトすることになる。
【0108】
なお、上述のとおり、物体面が受光レンズ320から近づいた場合には、像面は受光レンズ320から遠ざかることになり、その際の像距離を図中においては、B”で表わしている。ここで、B”は、上記式(1)に基づき、f×(A-ΔA)/(A-ΔA-f)となる。
【0109】
以上により、温度T-ΔTから温度T+ΔTまでの範囲を計測可能温度域とする三次元計測装置を製作すること想定したとするならば、当該三次元計測装置における実際上の計測レンジは、受光レンズ320からの距離が上記式(4)で表わされる温度T+ΔTにおける近点距離Sn以上で、かつ、上記式(7)で表わされる温度T-ΔTにおける遠点距離Sf以下の範囲(すなわち、図中において符号MRで示す範囲)となる。すなわち、この実際上の計測レンジMRを確保するためには、少なくとも(上記式(4)の右辺)<(上記式(7)の右辺)で示される条件を満たしていることが必要であり、さらに十分にこれを確保するためには、上記式(7)で示される温度T-ΔTにおける遠点距離Sfが、上記式(4)で表わされる温度T+ΔTにおける近点距離Snよりも、十分に大きいことが必要になる。
【0110】
しかしながら、焦点距離f、許容散乱円径Φおよび明るさFは、いずれも使用する受光レンズ320の光学特性によって決まり、多少の微調整は可能ではあるものの、三次元計測を実現する上での種々の制約に基づき、これが自由に設定できるものではない。そのため、本発明者が実仕様を想定して各種の試算を行なったところ、三次元計測を実現する上で光学レンズに求められる上記光学特性を満たしつつ、上述した実際上の計測レンジMRを十分に広く確保することが非常に困難な状況にあることが確認され、当該実際上の計測レンジMRが極端に狭まるか、あるいは、これがそもそも存在しなくなる問題があることが判明した。
【0111】
なお、ここではその詳細な説明は省略するが、受光レンズ320が温度の上昇に伴って焦点位置が近づく方向に変化するものである場合においても、上述した理由と同様の理由によって同じ問題が発生することになり、また、上述した受光レンズ320の温度特性が三次元計測装置1の撮像部13側の計測レンジに与える影響と同様の理由により、投影部12に設けられる投光レンズ220についても、その温度特性が三次元計測装置1の投影部12側の計測レンジに影響を与えることになる。
【0112】
そこで、本発明者は、本実施の形態に係る三次元計測装置1において、三次元計測時に上述した制御部11aによって投光レンズ220の温度および受光レンズ320の温度をそれぞれ予め定めた一定温度に保つための制御を行なうことにより、当該課題の解決を図っている。以下、本実施の形態に係る三次元計測装置1について、この点を含めてより詳細に説明する。
【0113】
<F.計測ヘッドの詳細な構造>
図8および図9は、それぞれ図1に示す計測ヘッドの外観構造および内部構造を示す概略斜視図である。まず、これら図8および図9を参照して、本実施の形態における計測ヘッド10の全体構造について説明する。なお、図9においては、内部構成部品の一部について、その図示を省略している。
【0114】
図8に示すように、計測ヘッド10は、略直方体形状の外形を有しており、筐体100と、当該筐体100の内部に収容された三次元計測装置用光学アセンブリとしての投影部12および撮像部13とを備えている。
【0115】
筐体100は、平板状の底板部101(図9参照)と、下面開口の箱形状の蓋部102とを有しており、底板部101によって蓋部102の下面開口が閉塞されることで全体として略直方体形状を有している。底板部101と蓋部102とは、ビス191によって固定されている。底板部101および蓋部102は、いずれも高熱伝導性の金属製の部材にて構成されており、好ましくはアルミニウム合金等によって形成される。
【0116】
筐体100の前面には、照明用窓部110、投光用窓部120および受光用窓部130の合計で3つの窓部が設けられている。これら照明用窓部110、投光用窓部120および受光用窓部130は、それぞれ透光板111,121,131によって覆われている。
【0117】
筐体100の内部であってかつ照明用窓部110の後方の位置には、たとえばLED(Light Emitting Diode)等からなる照明用光源112が配置されている。照明用光源112から出射された光は、上述した透光板111を透過することで照明用窓部110から外部空間に向けて照射され、これにより計測エリアが明るく照らされることになる。この照明用光源112は、計測エリアを照らす照明設備がない場合等を考慮して設けられたものであり、上述した三次元計測の実行時以外に照明として使用されるものである。
【0118】
筐体100の内部であってかつ投光用窓部120の後方の位置には、投影部12が配置されている。図9を参照して、投影部12は、上述したように、光源241、フォトマスク244、投光レンズ220、レンズ支持部210等(このうちの光源241とフォトマスク244は、図9においては現れていない)が互いに組付けられることで構成された三次元計測装置用光学アセンブリにて構成されている。
【0119】
投影部12の前方の位置には、レンズ支持部210の一部となる鏡筒212が配設されている。鏡筒212は、その内部において投光レンズ220を支持している。これにより、投光レンズ220は、上述した投光用窓部120を覆う透光板121に面するように配置されている。
【0120】
投影部12の内部においてフォトマスク244を通過し、その後投光レンズ220を介して投影部12から出射された光は、上述した透光板121を透過することで投光用窓部120から外部空間に向けて照射され、これにより外部空間に向けて投影パターンが照射される。上述したように、この投影部12から照射された投影パターンがワークWKおよびその周囲に投影されることにより、三次元計測が可能になる。
【0121】
筐体100の内部であってかつ受光用窓部130の後方の位置には、撮像部13が配置されている。図9を参照して、撮像部13は、上述したように、撮像素子341、受光レンズ320、レンズ支持部310等(このうちの撮像素子341は、図9においては現れていない)が互いに組付けられることで構成された三次元計測装置用光学アセンブリにて構成されている。
【0122】
撮像部13の前方の位置には、レンズ支持部310の一部となる鏡筒312が配設されている。鏡筒312は、その内部において受光レンズ320を支持している。これにより、受光レンズ320は、上述した受光用窓部130を覆う透光板131に面するように配置されている。
【0123】
投影パターンが投影されたワークWKおよびその周囲から発せられた反射光は、上述した透光板131を透過することで受光用窓部130から撮像部13へと入射し、受光レンズ320を介して撮像素子341へと照射される。これにより、上述したように、撮像素子341にてこの光が受光されることにより、三次元計測が可能になる。
【0124】
また、筐体100の側面の所定位置には、接続端子141,142が設けられている。当該接続端子141,142は、計測ヘッド10と画像計測装置1000等を電気的に接続するためのものである。
【0125】
図9に示すように、筐体100の内部であって投影部12および撮像部13の後方の位置には、金属製の板状部材からなるシャーシ150が設けられている。当該シャーシ150は、筐体100の底板部101から上方に向けて起立するように設けられており、このシャーシ150の前面側には、回路基板160が組付けられている。これにより、回路基板160は、シャーシ150の前方であってかつ投影部12および撮像部13の後方の位置に起立姿勢にて配置されている。
【0126】
回路基板160は、上述した処理部11が設けられてなるものであり、図示しないフレキシブル配線基板等を介して投影部12および撮像部13にそれぞれ電気的に接続されている。また、回路基板160には、後述するフレキシブルヒータ250,350の動作を制御するための制御部11aも設けられており、当該フレキシブルヒータ250,350の配線部252,352にも電気的に接続されている。
【0127】
<G.投影部の構造>
図10および図11は、それぞれ上述した投影部の概略斜視図および模式断面図であり、図12は、当該投影部の組付構造を示す分解斜視図である。次に、前述の図9と、これら図10ないし図12とを参照して、本実施の形態における投影部12の詳細な構造について説明する。
【0128】
ここで、図10(A)は、後述するカバー部材260が投影部12に組付けられた状態を示しており、図10(B)は、投影部12から当該カバー部材260が取り外された状態を示している。また、図11(A)および図11(B)は、それぞれ図10(A)に示すXIA-XIA線およびXIB-XIB線に沿った断面を表わしている。
【0129】
図9ないし図12に示すように、投影部12は、ベース部200と、レンズ支持部210と、投光レンズ220と、基板230と、光源241と、フォトマスク244と、フレキシブルヒータ250と、温度センサ254と、カバー部材260とを主として備えている。
【0130】
ベース部200は、投影部12の台座となる部分であり、筐体100の底板部101上に設置されている。ベース部200は、底板部101にビスによって固定された第1ベース201と、当該第1ベース201にビス192(図12参照)によって固定された第2ベース202とを含んでいる。このうち、第2ベース202は、第1ベース201上に載置された状態で固定されており、投光レンズ220の光軸と平行な方向に沿って延びる中空部202aを有する外形が角形の筒状部材からなる。
【0131】
図11および図12に示すように、第2ベース202の後端面(すなわち、上述した回路基板160が位置する側の端面)には、基板230が組付けられている。より詳細には、基板230は、ビス281によって第2ベース202の後端面に固定されており、これにより第2ベース202に設けられた中空部202aが、基板230によって閉塞されている。
【0132】
中空部202aを閉塞する部分の基板230の表面には、光源241が実装されており、これにより、光源241は、当該中空部202aに面している。光源241は、レンズ242,243およびフォトマスク244と相まって光学デバイスとしてのパターン照明形成素子を構成するものであり、本実施の形態においては、LEDにて構成されている。
【0133】
第2ベース202は、その内部においてレンズ242,243を支持している。より詳細には、レンズ242,243は、その周縁が第2ベース202によって支持されることで当該第2ベース202に固定されており、これにより光源241に対向するように当該光源241の前方に配置されている。これらレンズ242,243は、光源241から出射された光を平行光化するいわゆるコリメータレンズであり、光源241およびフォトマスク244と相まって光学デバイスとしてのパターン照明形成素子を構成するものである。
【0134】
第2ベース202の前端部には、中空部202aを覆うようにレンズ支持部210が組付けられている。レンズ支持部210は、その後端部が中空部202aに嵌め込まれるとともに、ビス283によって第2ベース202に固定されたマウント部材211と、投光レンズ220を支持するとともに、マウント部材211に固定された鏡筒212とを含んでいる。
【0135】
マウント部材211は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の部材からなり、投光レンズ220の光軸と平行な方向に沿って延びる中空部211aを有する外形が角形の筒状部材からなる。マウント部材211は、上述したようにその後端部が第2ベース202に固定されているとともに、当該後端部寄りの部分においてフォトマスク244および保護部材245を支持している。
【0136】
フォトマスク244は、上述した光源241およびレンズ242,243と相まって光学デバイスとしてのパターン照明形成素子を構成するものであり、第2ベース202によって支持されたコリメータレンズとしてのレンズ242,243に対向して配置されている。保護部材245は、フォトマスクを保護するための部材であり、たとえばガラスによって構成される。これらフォトマスク244および保護部材245は、これらが重ね合わされた状態でその周縁がマウント部材211によって支持されることで当該マウント部材211に固定されている。
【0137】
鏡筒212は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の円筒状の部材からなり、その後端部がマウント部材211の中空部211aに嵌め込まれることで固定されている。鏡筒212は、その前端部がマウント部材211から前方に向けて突出しており、これにより当該前端部が、投影部12の前方の位置に配設されている。
【0138】
ここで、より詳細には、鏡筒212の外周面の後端部に雄ネジが設けられており、マウント部材211の中空部211aの内周面の前端部に雌ネジが設けられている。これにより、鏡筒212は、マウント部材211に対して螺合されることで固定されている。この種の固定方式は、一般にSマウントと称されるレンズの固定方式である。
【0139】
投光レンズ220は、複数のレンズ221~223が組み合わされた複合レンズにて構成されており、これら複数のレンズ221~223は、互いの光軸が重なるように鏡筒212の内部において鏡筒212の軸方向に整列して設けられている。これら複数のレンズ221~223の各々は、それらの周縁が鏡筒212によって支持されている。すなわち、鏡筒212は、投光レンズ220の光軸と直交する方向において当該投光レンズ220を取り囲んでこれを支持している。
【0140】
以上により、光源241、コリメータレンズとしてのレンズ242,243、フォトマスク244、および、投光レンズ220としての複数のレンズ221~223が、投影部12の内部において投光レンズ220の光軸上に並んで配置されることになり、当該投影部12から投影パターンを外部に向けて照射することが可能になる。
【0141】
ここで、図10ないし図12に示すように、レンズ支持部210の一部であるマウント部材211の外周面上には、フレキシブルヒータ250のヒータ部251が組付けられている。より詳細には、フレキシブルヒータ250は、電熱線および当該電熱線に通電するための配線が設けられたフレキシブル基板(たとえばポリイミド基板等)からなり、このうちの電熱線が設けられた部分であるヒータ部251が、高熱伝導性の接着テープ256を介してマウント部材211の外周面に貼り付けられている。
【0142】
一方、フレキシブルヒータ250の上述した配線が設けられた部分である配線部252は、投影部12の上面から外部に向けて引き出され、その先端が上述した回路基板160に接続されることで制御部11aに電気的に接続されている。また、フレキシブルヒータ250のヒータ部251の所定位置には、温度センサ254が実装されており、当該温度センサ254も、フレキシブルヒータ250に設けられた配線を介して制御部11aに電気的に接続されている。
【0143】
これにより、フレキシブルヒータ250の通電時において、マウント部材211および鏡筒212を介して投光レンズ220が加熱されることになる。また、所定時間にわたってフレキシブルヒータ250が通電されることにより、投光レンズ220、鏡筒212、マウント部材211およびフレキシブルヒータ250のヒータ部251の各々の温度は同等となるため、温度センサ254によって投光レンズ220の温度が検出可能になる。
【0144】
なお、本実施の形態においては、マウント部材211の外周面のうちの第1ベース201に面する部分には、フレキシブルヒータ250が組付けられていないが、当該部分にもフレキシブルヒータ250をさらに組付けてもよい。
【0145】
図9ないし図12に示すように、投影部12には、マウント部材211を取り囲むようにカバー部材260が設けられている。これにより、上述したフレキシブルヒータ250のヒータ部251と、当該ヒータ部251に実装された温度センサ254とが、カバー部材260によって覆われている。
【0146】
より詳細には、カバー部材260は、マウント部材211の外周面のうちの第1ベース201に面する部分以外の部分と前端面とを覆う略箱形状を有しており、その前端面側の部分がビス282によってマウント部材211に固定されることにより、マウント部材211に組付けられている。
【0147】
ここで、カバー部材260は、フレキシブルヒータ250の配線部252を引き出すための部分を除き、マウント部材211の上述した部分の外周面および前端面をほぼ全域にわたって覆っている。これにより、カバー部材260は、マウント部材211を覆い隠す略密閉構造を有している。
【0148】
図11に示すように、カバー部材260とフレキシブルヒータ250との間には、空気層270が設けられている。当該空気層270は、カバー部材260の内面とフレキシブルヒータ250の露出表面との間に所定のクリアランスを設けることで構成されており、当該空気層270は、実質的にカバー部材260によって密閉されている。
【0149】
さらに、本実施の形態においては、第1ベース201とマウント部材211との間にも所定のクリアランスが設けられることによって空気層270が設けられており、当該部分に設けられた空気層270も、カバー部材260によって密閉されている。
【0150】
このように、投影部12においては、投光レンズ220を取り囲んでこれを支持するレンズ支持部210としての鏡筒212およびマウント部材211が、カバー部材260によって空気層270を介して取り囲まれているとともに、フレキシブルヒータ250のヒータ部251および温度センサ254が、いずれもカバー部材260によって覆われた状態とされている。
【0151】
ここで、上述したように、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、その三次元計測時において、制御部11aが、投光レンズ220の温度を予め定めた一定温度に保つための制御を行なう。より詳細には、制御部11aは、温度センサ254の検出結果に基づいてヒータ部251の動作の制御(たとえば通電の有無やヒータ出力の調整等)を行なうことで投光レンズ220の温度を一定温度に維持する。
【0152】
これにより、投光レンズ220の温度を一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において投光レンズ220の焦点位置に変化が生じることが実質的に抑制可能となる。そのため、予め加熱後の状態において投光レンズ220の焦点位置にパターン照明形成素子としてのフォトマスク244が配置されるように構成しておくことにより、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態を維持することができる。したがって、当該構成を採用することにより、三次元計測装置1の投影部12側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0153】
さらには、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、投光レンズ220を支持するレンズ支持部210としてのマウント部材211および鏡筒212の各々の温度も一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において投光レンズ220とフォトマスク244との間の光軸方向における距離である素子間距離に変動が生じることも実質的に抑制することができる。そのため、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態がより確実に維持できることにもなる。
【0154】
なお、本実施の形態のように、投光レンズ220を複数のレンズからなる組レンズにて構成した場合には、マウント部材211および鏡筒212からなるレンズ支持部210の温度による膨張および収縮が投光レンズ220の焦点位置の変動に大きく影響を与えてしまうことになるため、上記のようにレンズ支持部210の温度を一定に保つことが特に有効となる。
【0155】
すなわち、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、当該三次元計測装置1が設置される周囲環境(特に周囲環境温度)の影響を殆ど受けることなく、三次元計測時において投光レンズ220が予め定めた一定温度に維持されるため、上述したように、投影部12側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0156】
ここで、上述したベース部200としての第1ベース201および第2ベース202は、レンズ支持部210としてのマウント部材211および鏡筒212の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。このように構成することにより、ベース部200によって断熱効果が発揮されることになる。
【0157】
そのため、当該構成を採用することにより、投光レンズ220、マウント部材211および鏡筒212を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0158】
また、上述したカバー部材260は、レンズ支持部210としてのマウント部材211および鏡筒212の熱伝導率と同じかそれよりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。より詳細には、本実施の形態の如くカバー部材260とマウント部材211との間に空気層270を設ける場合には、カバー部材260の熱伝導率をレンズ支持部210の熱伝導率と同じかされよりも小さくすることが好ましく、本実施の形態とは異なり、カバー部材260をマウント部材211等に密着させる構成を採用する場合には、カバー部材260の熱伝導率をレンズ支持部210の熱伝導率よりも小さくすることが好ましい。このように構成することにより、カバー部材260あるいはこれに加えて空気層270によって断熱効果が発揮されることになる。
【0159】
そのため、当該構成を採用することにより、投光レンズ220、マウント部材211および鏡筒212を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時においてフォトマスク244を投光レンズ220の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0160】
なお、上述した観点から、ベース部200としての第1ベース201および第2ベース202、ならびに、カバー部材260は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂等に代表される樹脂製の部材にて構成されるか、あるいは、比較的低い熱伝導率の金属製の部材にて構成されることが好ましい。ただし、本実施の形態の如くカバー部材260とマウント部材211との間に空気層270を設ける場合には、カバー部材260としては、比較的高い熱伝導率の金属製の部材(たとえばアルミニウム合金製)としてもよい。
【0161】
一方、上述した制御部11aによって一定に保たれるべき投光レンズ220の温度としては、投影部12の使用が許容される周囲環境温度の範囲内においてフレキシブルヒータ250による投光レンズ220の加熱を行なわなかった場合に投光レンズ220が到達し得る最高温度以上であってパターン照明形成素子の動作保証温度の上限以下の温度であることが好ましい。このように構成することにより、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保しつつも長寿命でかつ高信頼性の投影部およびこれを備えた三次元計測装置とすることができる。
【0162】
ここで、上述したパターン照明形成素子の動作保証温度の上限とは、パターン照明形成素子が複数の構成部品にて構成されている場合には、当該複数の構成部品の各々の動作保証温度の上限のうちで最も低い温度を指す。そのため、本実施の形態においては、上述したようにパターン照明形成素子が光源241とレンズ242,243とフォトマスク244とによって構成されているため、これら光源241、レンズ242,243およびフォトマスク244の動作保証温度の上限のうちの最も低い温度が、パターン照明形成素子の動作保証温度の上限となる。なお、当然のことながら、制御部11aによって一定に保たれるべき投光レンズ220の温度は、投光レンズ220の動作保証温度の上限以下であることが必要である。
【0163】
また、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、上述したようにフレキシブルヒータ250によって投光レンズ220、マウント部材211および鏡筒212を加熱するように構成するとともに、当該フレキシブルヒータ250に温度センサ254を実装することとしている。このように構成することにより、簡易な構成にてこれら投光レンズ220、マウント部材211および鏡筒212を加熱することが可能になるとともに、簡易な構成にて投光レンズ220の温度を測定することが可能になる、したがって、組付作業が容易化することになり、結果として製造コストの削減が図られる。
【0164】
さらには、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、フレキシブルヒータ250を高熱伝導性の接着テープ256にてマウント部材211に貼り付ける構成としている。このように構成することにより、伝熱効率を高めつつフレキシブルヒータ250をマウント部材211に容易に組付けることが可能になるとともに、より正確な温度の測定を可能にしつつ温度センサ254をマウント部材211に容易に組付けることが可能になる。したがって、この点においても製造コストの削減が図られる。
【0165】
<H.撮像部の構造>
図13および図14は、それぞれ上述した撮像部の概略斜視図および模式断面図であり、図15は、当該投影部の組付構造を示す分解斜視図である。次に、前述の図9と、これら図13ないし図15とを参照して、本実施の形態における撮像部13の詳細な構造について説明する。
【0166】
ここで、図13(A)は、後述するカバー部材360が撮像部13に組付けられた状態を示しており、図13(B)は、撮像部13から当該カバー部材360が取り外された状態を示している。また、図14(A)および図14(B)は、それぞれ図13(A)に示すXIVA-XIVA線およびXIVB-XIVB線に沿った断面を表わしている。
【0167】
図9および図13ないし図15に示すように、撮像部13は、ベース部300と、レンズ支持部310と、受光レンズ320と、基板330と、撮像素子341と、フレキシブルヒータ350と、温度センサ354と、カバー部材360とを主として備えている。
【0168】
ベース部300は、撮像部13の台座となる部分であり、筐体100の底板部101上に設置されている。ベース部300は、底板部101にビスによって固定されている。
【0169】
ベース部300上には、レンズ支持部310が載置された状態で固定されている。レンズ支持部310は、ビス193(図15参照)によってベース部300に固定されたマウント部材311と、受光レンズ320を支持するとともに、マウント部材311に固定された鏡筒312とを含んでいる。
【0170】
マウント部材311は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の部材からなり、受光レンズ320の光軸と平行な方向に沿って延びる中空部311aを有する外形が角形の筒状部材からなる。
【0171】
図14および図15に示すように、マウント部材311の後端面(すなわち、上述した回路基板160が位置する側の端面)には、基板330が組付けられている。より詳細には、基板330は、ビス381によってマウント部材311の後端面に固定されており、これによりマウント部材311に設けられた中空部311aが、基板330によって閉塞されている。
【0172】
中空部311aを閉塞する部分の基板330の表面には、撮像素子341が実装されており、これにより、撮像素子341は、当該中空部311aに面している。撮像素子341は、たとえば、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ、CCD(Charged-Coupled Devices)イメージセンサ等からなる。基板330の表面であって撮像素子341の周囲には、額縁状の遮光部材342が設けられている。
【0173】
鏡筒312は、たとえばアルミニウム合金等に代表される高熱伝導性の金属製の円筒状の部材からなり、その後端部がマウント部材311の中空部311aに嵌め込まれることで固定されている。鏡筒312は、その前端部がマウント部材311から前方に向けて突出しており、これにより当該前端部が、撮像部13の前方の位置に配設されている。
【0174】
ここで、より詳細には、鏡筒312の外周面の後端部に雄ネジが設けられており、マウント部材311の中空部311aの内周面の前端部に雌ネジが設けられている。これにより、鏡筒312は、マウント部材311に対して螺合されることで固定されている。この種の固定方式は、一般にSマウントと称されるレンズの固定方式である。
【0175】
受光レンズ320は、複数のレンズ321~323が組み合わされた複合レンズにて構成されており、これら複数のレンズ321~323は、互いの光軸が重なるように鏡筒312の内部において鏡筒312の軸方向に整列して設けられている。これら複数のレンズ321~323の各々は、それらの周縁が鏡筒312によって支持されている。すなわち、鏡筒312は、受光レンズ320の光軸と直交する方向において当該受光レンズ320を取り囲んでこれを支持している。
【0176】
以上により、撮像素子341、および、受光レンズ320としての複数のレンズ321~323が、撮像部13の内部において受光レンズ320の光軸上に並んで配置されることになり、当該撮像部13に入射した光を撮像素子341が受光することにより、入力画像が得られることになる。
【0177】
ここで、図13ないし図15に示すように、レンズ支持部310の一部であるマウント部材311の外周面上には、フレキシブルヒータ350のヒータ部351が組付けられている。より詳細には、フレキシブルヒータ350は、電熱線および当該電熱線に通電するための配線が設けられたフレキシブル基板(たとえばポリイミド基板等)からなり、このうちの電熱線が設けられた部分であるヒータ部351が、高熱伝導性の接着テープ356を介してマウント部材311の外周面に貼り付けられている。
【0178】
一方、フレキシブルヒータ350の上述した配線が設けられた部分である配線部352は、撮像部13の上面から外部に向けて引き出され、その先端が上述した回路基板160に接続されることで制御部11aに電気的に接続されている。また、フレキシブルヒータ350のヒータ部351の所定位置には、温度センサ354が実装されており、当該温度センサ354も、フレキシブルヒータ350に設けられた配線を介して制御部11aに電気的に接続されている。
【0179】
これにより、フレキシブルヒータ350の通電時において、マウント部材311および鏡筒312を介して受光レンズ320が加熱されることになる。また、所定時間にわたってフレキシブルヒータ350が通電されることにより、受光レンズ320、鏡筒312、マウント部材311およびフレキシブルヒータ350のヒータ部351の各々の温度は同等となるため、温度センサ354によって受光レンズ320の温度が検出可能になる。
【0180】
なお、本実施の形態においては、マウント部材311の外周面のうちのベース部300に面する部分は当該ベース部300に密着しているため、当該部分のマウント部材311の外周面には、フレキシブルヒータ350は組付けられていない。
【0181】
図9および図13ないし図15に示すように、撮像部13には、マウント部材311を取り囲むようにカバー部材360が設けられている。これにより、上述したフレキシブルヒータ350のヒータ部351と、当該ヒータ部351に実装された温度センサ354とが、カバー部材360によって覆われている。
【0182】
より詳細には、カバー部材360は、マウント部材311の外周面のうちのベース部300に面する部分以外の部分と前端面とを覆う略箱形状を有しており、その前端面側の部分がビス382によってマウント部材311に固定されることにより、マウント部材311に組付けられている。
【0183】
ここで、カバー部材360は、フレキシブルヒータ350の配線部352を引き出すための部分を除き、マウント部材311の上述した部分の外周面および前端面をほぼ全域にわたって覆っている。これにより、カバー部材360は、マウント部材311を覆い隠す略密閉構造を有している。
【0184】
図14に示すように、カバー部材360とフレキシブルヒータ350との間には、空気層370が設けられている。当該空気層370は、カバー部材360の内面とフレキシブルヒータ350の露出表面との間に所定のクリアランスを設けることで構成されており、当該空気層370は、実質的にカバー部材360によって密閉されている。
【0185】
このように、撮像部13においては、受光レンズ320を取り囲んでこれを支持するレンズ支持部310としての鏡筒312およびマウント部材311が、カバー部材360によって空気層370を介して取り囲まれているとともに、フレキシブルヒータ350のヒータ部351および温度センサ354が、いずれもカバー部材360によって覆われた状態とされている。
【0186】
ここで、上述したように、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、その三次元計測時において、制御部11aが、受光レンズ320の温度を予め定めた一定温度に保つための制御を行なう。より詳細には、制御部11aは、温度センサ354の検出結果に基づいてヒータ部351の動作の制御(たとえば通電の有無やヒータ出力の調整等)を行なうことで受光レンズ320の温度を一定温度に維持する。
【0187】
これにより、受光レンズ320の温度を一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において受光レンズ320の焦点位置に変化が生じることが実質的に抑制可能となる。そのため、予め加熱後の状態において受光レンズ320の焦点位置に撮像素子341が配置されるように構成しておくことにより、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態を維持することができる。したがって、当該構成を採用することにより、三次元計測装置1の撮像部13側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0188】
さらには、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、受光レンズ320を支持するレンズ支持部310としてのマウント部材311および鏡筒312の各々の温度も一定温度に維持することが可能になるため、三次元計測時において受光レンズ320と撮像素子341との間の光軸方向における距離である素子間距離に変動が生じることも実質的に抑制することができる。そのため、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態がより確実に維持できることにもなる。
【0189】
なお、本実施の形態のように、受光レンズ320を複数のレンズからなる組レンズにて構成した場合には、マウント部材311および鏡筒312からなるレンズ支持部310の温度による膨張および収縮が受光レンズ320の焦点位置の変動に大きく影響を与えてしまうことになるため、上記のようにレンズ支持部310の温度を一定に保つことが特に有効となる。
【0190】
すなわち、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、当該三次元計測装置1が設置される周囲環境(特に周囲環境温度)の影響を殆ど受けることなく、三次元計測時において受光レンズ320が予め定めた一定温度に維持されるため、上述したように、撮像部13側において、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保することが可能になる。
【0191】
ここで、上述したベース部300は、レンズ支持部310としてのマウント部材311および鏡筒312の熱伝導率よりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。このように構成することにより、ベース部300によって断熱効果が発揮されることになる。
【0192】
そのため、当該構成を採用することにより、受光レンズ320、マウント部材311および鏡筒312を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0193】
また、上述したカバー部材360は、レンズ支持部310としてのマウント部材311および鏡筒312の熱伝導率と同じかそれよりも小さい熱伝導率を有する部材にて構成されていることが好ましい。より詳細には、本実施の形態の如くカバー部材360とマウント部材311との間に空気層370を設ける場合には、カバー部材360の熱伝導率をレンズ支持部310の熱伝導率と同じかされよりも小さくすることが好ましく、本実施の形態とは異なり、カバー部材360をマウント部材311等に密着させる構成を採用する場合には、カバー部材360の熱伝導率をレンズ支持部310の熱伝導率よりも小さくすることが好ましい。このように構成することにより、カバー部材360あるいはこれに加えて空気層370によって断熱効果が発揮されることになる。
【0194】
そのため、当該構成を採用することにより、受光レンズ320、マウント部材311および鏡筒312を効率的に加熱することができるとともに、これらの温度を安定的に一定温度に維持することが可能になる。したがって、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間の短縮化が可能になるとともに、三次元計測時において撮像素子341を受光レンズ320の焦点位置に常時配置させた状態をより確実に維持することができる。
【0195】
なお、上述した観点から、ベース部300およびカバー部材360は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂やポリカーボネート(PC)樹脂等に代表される樹脂製の部材にて構成されるか、あるいは、比較的低い熱伝導率の金属製の部材にて構成されることが好ましい。ただし、本実施の形態の如くカバー部材360とマウント部材311との間に空気層370を設ける場合には、カバー部材360としては、比較的高い熱伝導率の金属製の部材(たとえばアルミニウム合金製)としてもよい。
【0196】
一方、上述した制御部11aによって一定に保たれるべき受光レンズ320の温度としては、撮像部13の使用が許容される周囲環境温度の範囲内においてフレキシブルヒータ350による受光レンズ320の加熱を行なわなかった場合に受光レンズ320が到達し得る最高温度以上であってかつ撮像素子341の動作保証温度の上限以下の温度であることが好ましい。このように構成することにより、定められた温度域において計測レンジMRを広く確保しつつも長寿命でかつ高信頼性の撮像部およびこれを備えた三次元計測装置とすることができる。
【0197】
ここで、上述した撮像素子341の動作保証温度の上限とは、本実施の形態のように、撮像素子341がCMOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等の単一の構成部品にて構成されている場合には、当該単一の構成部品の動作保証温度の上限となるが、当該撮像素子が複数の構成部品にて構成されている場合には、当該複数の構成部品の各々の動作保証温度の上限のうちで最も低い温度を指すことになる。なお、当然のことながら、制御部11aによって一定に保たれるべき受光レンズ320の温度は、受光レンズ320の動作保証温度の上限以下であることが必要である。
【0198】
また、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、上述したようにフレキシブルヒータ350によって受光レンズ320、マウント部材311および鏡筒312を加熱するように構成するとともに、当該フレキシブルヒータ350に温度センサ354を実装することとしている。このように構成することにより、簡易な構成にてこれら受光レンズ320、マウント部材311および鏡筒312を加熱することが可能になるとともに、簡易な構成にて受光レンズ320の温度を測定することが可能になる、したがって、組付作業が容易化することになり、結果として製造コストの削減が図られる。
【0199】
さらには、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、フレキシブルヒータ350を高熱伝導性の接着テープ356にてマウント部材311に貼り付ける構成としている。このように構成することにより、伝熱効率を高めつつフレキシブルヒータ350をマウント部材311に容易に組付けることが可能になるとともに、より正確な温度の測定を可能にしつつ温度センサ354をマウント部材311に容易に組付けることが可能になる。したがって、この点においても製造コストの削減が図られる。
【0200】
<I.投影部および撮像部の放熱構造>
図16は、本実施の形態における投影部および撮像部の放熱構造を示す概略斜視図である。以下、前述の図9とこの図16とを参照して、本実施の形態における投影部12および撮像部13の放熱構造について説明する。なお、図16においては、内部構成部品の一部について、その図示を省略している。
【0201】
上述した投影部12に含まれる光源241および上述した撮像部13に含まれる撮像素子341は、いずれも発熱部品であり、これら光源241および撮像素子341は、その動作保証温度範囲内にて使用することが必要である。その場合に何らの放熱構造も採用しなかった場合には、これら光源241および撮像素子341は、動作保証温度の上限を超えてしまうおそれがある。
【0202】
特に、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、上述したように投影部12に含まれる投光レンズ220および撮像部13に含まれる受光レンズ320をいずれも三次元計測時において加熱される構成のものであるため、特にこれら光源241および撮像素子341にて発生する熱を効率的に放熱することが必要になる。
【0203】
そのため、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、以下の放熱構造を採用することにより、これら光源241および撮像素子341にて発生する熱を効率的に放熱することを可能にしている。
【0204】
図9および図16に示すように、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、投影部12の後方であって回路基板160(図16においては不図示)の前方に放熱ブロック171が設けられている。当該放熱ブロック171は、その台座部が筐体100の底板部101に固定されるとともに、当該台座部から立設された部分が投影部12の後端部に位置する基板230の裏面に圧接触している。
【0205】
ここで、放熱ブロック171が圧接触する部分の基板230の裏面は、上述した光源241が実装された部分に該当し、好ましくは放熱ブロック171と基板230との間に高熱伝導性の放熱シートが介装される。なお、放熱ブロック171は、高熱伝導性の金属製の部材にて構成されていることが好ましく、たとえばアルミニウム合金や真鍮が利用できる。
【0206】
このように構成することにより、光源241にて発生した熱は、基板230および放熱ブロック171を介して筐体100の底板部101に伝熱されることになる。そのため、光源241にて発生する熱を効率的に放熱することが可能になり、その動作保証温度範囲内においてこれを使用することが可能になる。
【0207】
一方、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、撮像部13の後方であって回路基板160(図16においては不図示)の前方に放熱ブロック172が設けられている。当該放熱ブロック172は、その台座部が筐体100の底板部101に固定されるとともに、当該台座部から立設された部分が撮像部13の後端部に位置する基板330の裏面に圧接触している。
【0208】
ここで、放熱ブロック172が圧接触する部分の基板330の裏面は、上述した撮像素子341が実装された部分に該当し、好ましくは放熱ブロック172と基板330との間に高熱伝導性の放熱シートが介装される。なお、放熱ブロック172は、高熱伝導性の金属製の部材にて構成されていることが好ましく、たとえばアルミニウム合金や真鍮が利用できる。
【0209】
このように構成することにより、撮像素子341にて発生した熱は、基板330および放熱ブロック172を介して筐体100の底板部101に伝熱されることになる。そのため、撮像素子341にて発生する熱を効率的に放熱することが可能になり、その動作保証温度範囲内においてこれを使用することが可能になる。
【0210】
<J.筐体の密閉構造>
図17は、本実施の形態における計測ヘッドの筐体の密閉構造を示す模式断面図である。以下、前述の図8および図16と、この図17とを参照して、本実施の形態における計測ヘッド10の筐体100の密閉構造について説明する。なお、図17(A)は、筐体100の組付け前の状態を表わしており、図17(B)は、筐体100の組付け後の状態を表わしている。
【0211】
上述した計測ヘッド10においては、投影部12において、加熱対象である投光レンズ220およびこれを支持するレンズ支持部210等がカバー部材260によって実質的に密閉された略密閉構造が採用されているとともに、撮像部13において、加熱対象である受光レンズ320およびこれを支持するレンズ支持部310等がカバー部材360によって実質的に密閉された略密閉構造が採用されている。
【0212】
しかしながら、これらカバー部材260,360は、完全な意味において加熱対象を密閉するものではないため、筐体100の内部の空間が外部空間と連通している場合には、加熱対象を一定温度に維持することが不安定化するおそれもある。さらには、これらカバー部材260,360を投影部12および撮像部13に設けなかった場合には、加熱対象を一定温度に維持することがさらに困難になる。
【0213】
そのため、本実施の形態に係る三次元計測装置1においては、以下の筐体100の密閉構造を採用することにより、加熱対象を一定温度に維持することの安定化が図られている。
【0214】
図9図16および図17に示すように、筐体100の底板部101には、当該底板部101の周縁に沿って延在するように溝部101aが設けられている。当該溝部101aは、筐体100の蓋部102の下端部の周縁と対向するように設けられている。図17に示すように、この溝部101aの内部には、パッキン180が収容されている。
【0215】
一方、図17に示すように、筐体100の蓋部102の下端部であって上述した溝部101aに対向することとなる部分には、突起部102aが設けられている。当該突起部102aは、蓋部102の下端部の周縁に沿って延在するように設けられており、その幅は、溝部101aの幅よりも小さく構成されている。
【0216】
図17に示すように、筐体100の組付けに際しては、底板部101に対して蓋部102が重ね合わされる。これにより、底板部101の内部に収容されたパッキン180が、蓋部102に設けられた突起部102aによって圧縮されることになり、パッキン180が底板部101と蓋部102の双方に密着した状態となる。これにより底板部101と蓋部102との境目において生じ得る隙間がパッキン180によって封止されることになり、筐体100の内部の空間が外部空間から密閉されることになる。
【0217】
なお、ここではその詳細な説明は省略するが、筐体100の蓋部102のうち、照明用窓部110、投光用窓部120および受光用窓部130、ならびに、接続端子141,142が設けられた部分においても、それぞれ透光板111,121,131および接続端子141,142と、当該蓋部102に設けられた開口部の周縁との間にパッキンが介装されることにより、これらの部分においても筐体100の内部の空間が外部空間から密閉されている。
【0218】
このように構成することにより、加熱対象である投光レンズ220およびこれを支持するレンズ支持部210等、ならびに、受光レンズ320およびこれを支持するレンズ支持部310等を一定温度に維持することの安定化が図られることになる。
<K.その他>
【0219】
本発明者は、上述した実施の形態に係る三次元計測装置1を実際に試作し、カバー部材260,360を投影部12および撮像部13に取付けた場合と、これらカバー部材260,360を投影部12および撮像部13から取り外した場合とで、加熱効率の観点でどの程度の差が生じるかの確認を行なった。なお、投光レンズ220および受光レンズ320の維持すべき一定温度は、60℃~70℃程度に設定した。
【0220】
その結果、カバー部材260,360を投影部12および撮像部13から取り外した場合において、三次元計測装置1の使用開始時の初期に必要となるウォームアップ動作に要する時間(すなわち、投光レンズ220および受光レンズ320の双方が予め定めた一定温度に達するまでの時間)が約10分であったところ、カバー部材260,360を投影部12および撮像部13に取付けることにより、当該ウォームアップ動作に要する時間が約2分にまで短縮化できることが確認された。
【0221】
また、カバー部材260,360を投影部12および撮像部13から取り外した場合において、フレキシブルヒータ250,350による加熱を停止してから温度が1℃低下するまでの時間が約1秒であったところ、カバー部材260,360を投影部12および撮像部13に取付けることにより、当該時間が約10秒にまで遅延できることが確認された。
【0222】
すなわち、前者の結果は、カバー部材260,360を投影部12および撮像部13に取付けることにより、投光レンズ220および受光レンズ320を非常に効率的に加熱できることを示しており、後者の結果は、カバー部材260,360を投影部12および撮像部13に取付けることにより、保温性能が向上し、三次元計測時に加熱に消費される電力を大幅に省エネルギー化できることを示している。
【0223】
このように、本実施の形態に係る三次元計測装置1とすることにより、加熱効率の観点からも好適な三次元計測装置とすることができることが実験的に確認された。
【0224】
<L.付記>
上述した本実施の形態に係る三次元計測装置用光学アセンブリおよびこれを備えた三次元計測装置の特徴的な構成を要約すると、以下のとおりとなる。
[構成1]
光学的に共役な関係にある一対の共役面を形成する光学レンズ(220,320)と、
前記一対の共役面のうちの一方に配置された光学デバイス(244,341)と、
前記光学レンズの温度を検出するための温度センサ(254,354)と、
前記光学レンズを加熱するためのヒータ(251,351)と、
前記温度センサの検出結果に基づいて前記光学レンズが一定温度となるように前記ヒータの動作を制御する制御部(11a)とを備えた、三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成2]
前記光学レンズの光軸と直交する方向において前記光学レンズを取り囲んでこれを支持するレンズ支持部(210,310)をさらに備え、
前記温度センサおよび前記ヒータが、前記レンズ支持部に組付けられている、構成1に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成3]
前記レンズ支持部を取り囲むとともに前記温度センサおよび前記ヒータを覆うカバー部材(260,360)をさらに備え、
前記カバー部材の熱伝導率が、前記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さい、構成2に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成4]
前記レンズ支持部が、前記光学レンズを支持する鏡筒(212,312)と、前記鏡筒が固定されたマウント部材(211,311)とを有し、
前記カバー部材が、前記マウント部材を覆い隠す略密閉構造を有している、構成3に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成5]
前記カバー部材と前記マウント部材との間の少なくとも一部に空気層(270,370)が設けられている、構成4に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成6]
前記レンズ支持部が固定されるベース部(200,300)をさらに備え、
前記ベース部の熱伝導率が、前記レンズ支持部の熱伝導率と同じかそれよりも小さい、構成2から5のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成7]
前記ヒータが、電熱線が設けられてなるフレキシブル基板からなるフレキシブルヒータ(250,350)にて構成され、
前記温度センサが、前記フレキシブル基板に実装され、
前記フレキシブルヒータが、前記レンズ支持部の外周面上に配置されている、構成2から6のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成8]
前記フレキシブルヒータが、高熱伝導性の接着テープ(256,356)にて前記レンズ支持部に貼り付けられている、構成7に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成9]
前記光学デバイスが、パターン照明を形成するパターン照明形成素子(241,244)からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に対してパターン照明を投影することで投影パターンを結像するための投光レンズ(220)からなる、構成1から8のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成10]
前記一定温度が、当該三次元計測装置用光学アセンブリの使用が許容される周囲環境温度の範囲内において前記ヒータによる前記投光レンズの加熱を行なわなかった場合に前記投光レンズが到達し得る最高温度以上であってかつ前記パターン照明形成素子の動作保証温度の上限以下の温度である、構成9に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成11]
前記光学デバイスが、撮像面を有する撮像素子(341)からなり、
前記光学レンズが、前記一対の共役面のうちの他方に配置される被写体に投影された投影パターンを前記撮像面に結像するための受光レンズ(320)からなる、構成1から8のいずれかに記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成12]
前記一定温度が、当該三次元計測装置用光学アセンブリの使用が許容される周囲環境温度の範囲内において前記ヒータによる前記受光レンズの加熱を行なわなかった場合に前記受光レンズが到達し得る最高温度以上であってかつ前記撮像素子の動作保証温度の上限以下の温度である、構成11に記載の三次元計測装置用光学アセンブリ。
[構成13]
構成9または10に記載の三次元計測装置用光学アセンブリを投影部(12)として備えるとともに、構成11または12に記載の三次元計測装置用光学アセンブリを撮像部(13)として備えてなる、三次元計測装置。
【0225】
<M.その他の形態等>
上述した実施の形態においては、単一の投影部および単一の撮像部を備えた三次元計測装置およびこれに具備される三次元計測装置用光学アセンブリに本開示を適用した場合を例示して説明を行なったが、本開示は、この種のものにその適用範囲が制限されるものではない。すなわち、本開示は、単一の投影部および複数の撮像部を備えた三次元計測装置、複数の投影部および単一の撮像部を備えた三次元計測装置、ならびに、複数の投影部および複数の撮像部を備えた三次元計測装置のいずれにもその適用が可能なものであり、さらには、これら三次元計測装置に具備される三次元計測装置用光学アセンブリの各々にもその適用が可能なものである。
【0226】
また、上述した実施の形態においては、三次元計測装置として、固有コード法を適用したものを例示して説明を行なったが、この他にも、三次元計測装置としては、ランダムドット法、位相シフト法、空間コード法等を適用したものがある。本開示は、これらいずれの三次元計測装置およびこれに具備される三次元計測装置用光学アセンブリにも適用することができるものであり、固有コード法が適用された三次元計測装置およびこれに具備される三次元計測装置用光学アセンブリにその適用が制限されるものではない。
【0227】
また、上述した実施の形態においては、三次元計測装置の用途として、コンベヤ上を搬送されるワークの三次元形状を計測する用途を例示したが、当然にこの他にも、種々の用途に用いられる三次元計測装置およびこれに具備される三次元計測装置用アセンブリに本開示を適用することができる。ここで、他の用途としては、たとえば、ばら積み状態にあるワークをロボットハンドによって個別にピッキングするに際し、当該ばら積み状態にあるワークの三次元形状を計測してそれらワークの三次元的な位置や姿勢等を個別に認識する用途等が挙げられる。
【0228】
また、上述した実施の形態においては、三次元計測装置として、特定の波長の光を用いて投影パターンを被写体に投影するように構成されたものを例示して説明を行なったが、本開示は、複数の波長の光を用いたり白色光を用いたりすることで投影パターンを被写体に投影するように構成された三次元計測装置にも当然にその適用が可能である。
【0229】
また、上述した実施の形態においては、レンズの固定方式としていわゆるSマウントが採用された場合を例示して説明を行なったが、Cマウントに代表されるようなその他のレンズの固定方式を採用する場合にも、本開示を当然に適用することができる。
【0230】
また、上述した実施の形態においては、投影部に設けられるパターン照明形成素子の光源として、LEDを用いた場合を例示して説明を行なったが、当該光源としては、この他にも、たとえばLD(Laser diode)、水銀ランプ等が利用できる。また、パターン照明形成素子としては、たとえば、上述した光源と液晶デバイスとの組み合わせ、上述した光源とマイクロミラーアレイとの組み合わせ、有機EL(electro-luminescence)等を利用することもできる。
【0231】
また、上述した実施の形態においては、前述したように、制御部によって一定に保たれるべき投光レンズの温度(投光レンズの設定温度)を、当該投光レンズが設けられた投影部としての三次元計測装置用光学アセンブリに具備されるパターン照明形成素子の動作保証温度の上限以下の温度に設定するとともに、制御部によって一定に保たれるべき受光レンズの温度(受光レンズの設定温度)を、当該受光レンズが設けられた撮像部としての三次元計測装置用光学アセンブリに具備される撮像素子の動作保証温度の上限以下の温度に設定することが好ましいが、これら投光レンズの設定温度および受光レンズの設定温度は、同じであってもよいし異なっていてもよい。ここで、これら設定温度を同じに設定する場合には、パターン照明形成素子の動作保証温度の上限と撮像素子の動作保証温度の上限とのうちのより低い方の温度を設定温度とすることが好ましい。このように構成すれば、より長寿命で高信頼性の三次元計測装置とすることができる。
【0232】
さらには、上述した実施の形態においては、投影部および撮像部の各々にヒータを設けることで投影部の一部および撮像部の一部を局所的に加熱するように構成した場合を例示して説明を行なったが、これら投影部および撮像部にカバー部材を設けずに筐体の内部の空間にヒータを設置し、筐体の内部の全体を当該ヒータによって加熱することとしてもよい。
【0233】
一方で、関連形態としては、投影部および撮像部の各々にペルチェ素子等の冷却手段を設けるか、あるいは、これら投影部および撮像部にカバー部材を設けずに筐体の内部の空間にペルチェ素子等の冷却手段を設置し、当該冷却手段の駆動を制御部によって制御することにより、投光レンズおよび受光レンズを常温に維持することも想定される。このように構成した場合にも、上述した実施の形態と同様に、定められた温度域において計測レンジを広く確保することが可能になる。
【0234】
今回開示した上記実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0235】
1 三次元計測装置、10 計測ヘッド、11 処理部、11a 制御部、12 投影部、13 撮像部、14 表示部、15 記憶部、16 通信I/F部、100 筐体、101 底板部、101a 溝部、102 蓋部、102a 突起部、110 照明用窓部、111 透光板、112 照明用光源、120 投光用窓部、121 透光板、130 受光用窓部、131 透光板、141,142 接続端子、150 シャーシ、160 回路基板、171,172 放熱ブロック、180 パッキン、191~193 ビス、200 ベース部、201 第1ベース、202 第2ベース、202a 中空部、210 レンズ支持部、211a 中空部、211 マウント部材、212 鏡筒、220 投光レンズ、221~223 レンズ、230 基板、241 光源、242,243 レンズ、244 フォトマスク、245 保護部材、250 フレキシブルヒータ、251 ヒータ部、252 配線部、254 温度センサ、256 接着テープ、260 カバー部材、270 空気層、281~283 ビス、300 ベース部、310 レンズ支持部、311 マウント部材、311a 中空部、312 鏡筒、320 受光レンズ、321~323 レンズ、330 基板、341 撮像素子、342 遮光部材、350 フレキシブルヒータ、351 ヒータ部、352 配線部、354 温度センサ、356 接着テープ、360 カバー部材、370 空気層、381,382 ビス、1000 画像計測装置、1020 プロセッサ、1040 メインメモリ、1060 ストレージ、1061 OS、1062 三次元計測プログラム、1080 入力部、1100 表示部、1120 光学ドライブ、1140 下位I/F部、1150 記録媒体、1160 上位I/F部、1180 プロセッサバス、C コンベヤ、MR 計測レンジ、P 投影パターン、R プリミティブ位置、W1,W2,W3 ワード、WK ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17