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特許7434800レーザー加工支持体用ポリエステルフィルム及び配線基板製造用離型フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】レーザー加工支持体用ポリエステルフィルム及び配線基板製造用離型フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240214BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240214BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
H05K3/00 N
B32B27/00 L
B32B27/36
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019196008
(22)【出願日】2019-10-29
(65)【公開番号】P2021070711
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】重野 健斗
(72)【発明者】
【氏名】本郷 有記
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-070077(JP,A)
【文献】特開平04-232726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
C08J 7/00-7/02;7/12-7/18
B32B 1/00-43/00
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線吸収剤を含有しないポリエステルフィルムであって、
前記ポリエステルフィルムは、電子線を照射されたポリエステルフィルムであり、
前記電子線照射における電子線の線量は10~100kGyであり、ただし100kGyを除き、
前記ポリエステルフィルムは、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.50以上であり、かつ波長355nmにおける分光透過率が75%より大きい、レーザー加工支持体用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
z平均分子量(Mz)が5.5万以上である請求項1に記載のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムが2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に直接または他の層を介して離型層を設けた配線基板製造用離型フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工支持体用ポリエステルフィルム及び配線基板製造用離型フィルムに関するものであり、詳しくは配線基板を製造する工程にて微細なレーザー加工性を有し、低コストで配線基板を製造し得る、レーザー加工支持体用ポリエステルフィルム及び配線基板製造用離型フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの携帯情報端末の高機能化や、自動車の電装化、通信の高速化などに対応するために、電子部品の小型化や集積回路の高精細化が進んでいる。これら産業の発展に伴い、半導体素子等を収納するパッケージに使用される配線基板についても、電子部品の高集積化と緻密な配線が可能な回路基板が求められる傾向にある。
【0003】
従来より、高密度な配線が可能な配線基板としては、セラミック多層回路基板が多様されている。このセラミック多層回路基板の製造方法の一例について述べると、離型フィルムを用いて製造することができる。例えば、離型フィルムの離型層表面上に、アルミナなどのセラミック原料を含むペーストをダイコートやグラビアコートによって塗工し、乾燥することでシート状に成型できる。この離型フィルム付きセラミックシートに対し、炭酸ガスレーザーやUVレーザーなどのレーザー光照射によりビアホールを形成し、導体ペーストを充填・印刷した後に、離型フィルムをセラミックシートから剥離することでセラミックシートが製造される。このセラミックシートを積層することで多層化し、焼成、メッキ処理を行うことで多層回路基板が製造される。
【0004】
前記離型フィルム付きセラミックシートに対してレーザー光照射によってビアホールを形成する際には、セラミックシートのレーザー加工性だけでなく、離型フィルム自体のレーザー加工性も重要となる。
【0005】
セラミック多層回路基板の高密度化を達成するためには、ビアホールの小径化やビアピッチを狭くすることが求められている。炭酸ガスレーザーを用いて離型フィルム付きセラミックシートにレーザー光照射する場合には、離型フィルムのレーザー光照射部分は熱により分解除去されるが、照射部の周辺部分も熱の影響を受けるために、表面が分解されて孔径が不揃いになる問題があった。離型フィルム上の孔径が不揃いになるとセラミックシート上のビアホール径にも影響を与え、設計値から外れるおそれがある。セラミックシートのビアホール径が不揃いになると、ビアホールの小径化やビアピッチを狭くする際に、近接するビアホール導体間で短絡が発生し、回路パターン間の短絡不良の原因となる恐れがあった。
【0006】
また、レーザー加工部の加工屑がレーザー孔周辺部に付着するため離型フィルムの該周辺部分が盛り上がるような変形が生じる。その結果、セラミックシートの平滑性が損なわれ導体層がうまく形成できなかったり、配線基板を多層化する際に積層不良が生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、炭酸ガスレーザーよりも発生する熱が少なく、より微細な加工が可能なUVレーザーを用いたビアホールの形成方法が報告されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、UVレーザーを用いた場合は、熱による分解除去が炭酸ガスレーザーと比較すると抑えられるため離型フィルムに孔が開きづらく、レーザー光照射部へのレーザー照射回数を増やす必要があり、生産性に課題があった。そこで、UV吸収剤を含有する樹脂フィルムを用いて、UVレーザー加工性を改善した報告がされている(例えば、特許文献2)。しかしながら、UV吸収剤による工程汚染や、分解物による欠点の発生などが生じる可能性があり、微細な加工精度が要求される用途には適用しづらいといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2007-294708号公報
【文献】特開2018-154111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、ポリエステルフィルムの特性を大きく変えることなく、汚染源となる物質も使用せず、ポリエステルフィルムの分子量分布を制御することにより、レーザー加工性に優れたポリエステルフィルムを提供できることを見出し本発明に到達した。本発明の課題は、前記のようなレーザー加工性に優れたポリエステルフィルムを提供し、経済性に優れ、剥離性に優れた配線基板製造用離型フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は以下の構成よりなる。
1. 紫外線吸収剤を含有しないポリエステルフィルムであって、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.50以上であり、かつ波長355nmにおける分光透過率が75%より大きいレーザー加工支持体用ポリエステルフィルム。
2. z平均分子量(Mz)が5.5万以上である上記第1に記載のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルム。
3. 電子線を照射されたポリエステルフィルムである上記第1又は第2に記載のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルム。
4. ポリエステルフィルムが2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする上記第1~第3のいずれかに記載のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルム。
5. 上記第1~第4のいずれかに記載のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルムの少なくとも一方の面に直接または他の層を介して離型層を設けた配線基板製造用離型フィルム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来のポリエステルフィルムと比較して、フィルム特性を大きく変えることなく同等であるポリエステルフィルムを提供でき、且つ、レーザー加工性に優れるため、経済性、加工性に優れた配線基板製造用離型フィルムの提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルムは、紫外線吸収剤を含まず、数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)が2.50以上であり、かつ波長355nmにおける分光透過率が75%より大きいことが好ましい。そして、前記のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルムを用いた配線基板製造用離型フィルムは、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有している配線基板製造用離型フィルムを好ましい態様とするものである。
【0014】
レーザー加工性を向上させるためにはポリエステルフィルムの分子量を制御することが好ましい。レーザー光照射によって離型フィルム上にレーザー孔を形成する際には、レーザー光照射部は熱によって分解除去される。そのため、熱分解性を向上させることが好ましく、熱分解性を向上させるためには、フィルムの低分子量成分を多くすることが好ましい。
【0015】
また、離型フィルムのレーザー孔周辺部の加工屑の盛り上がりを防ぐためには、ポリエステルフィルムの高分子量成分の量を多くすることが好ましい。レーザー孔周辺部の加工屑は熱により溶融したフィルム溶融物であり、フィルム高分子量成分の量が多いほど、溶融物の粘度が高まり流動性が抑えられるため、レーザー孔周辺部の盛り上がりを抑制することができる。
【0016】
すなわち、本発明のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルムは、フィルムの低分子量成分の量と高分子量成分の量を制御することが好ましい。フィルムの低分子量成分の量と高分子量成分の量を制御するためには、電子線を照射することが好ましい。ポリエステルフィルムに対して電子線を照射すると、分子の分解による低分子量化と分子の架橋による高分子量化が同時に進行するため、高度に分子量分布を制御することができる。
【0017】
フィルムの低分子量成分は数平均分子量(Mn)で表すことができ、高分子量成分は重量平均分子量(Mw)で表すことができる。数平均分子量と重量平均分子量の比(Mw/Mn)が、2.50以上であることが好ましく、2.53以上であることがより好ましく、2.55以上であることが更に好ましい。(Mw/Mn)が2.50以上であると、レーザー加工性に優れ、レーザー孔周辺部の溶融物による盛り上がりも抑制することができるため好ましい。(Mw/Mn)が大きいほど好適に用いることができるが、加工性の観点から8.0以下であることが好ましい。
【0018】
フィルムの高分子量成分の量を表すz平均分子量(Mz)は、5.5万以上であることが好ましく、5.8万以上であることがより好ましく、6.0万以上であることが更に好ましい。z平均分子量が5.5万以上であると、レーザー孔周辺部の溶融物による盛り上がりを更に抑制することができるため好ましい。(Mz)が大きいほど好適に用いることができるが、加工性の観点から20万以下であることが好ましい。
【0019】
本発明のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルムは、波長355nmにおける分光透過率が75%より大きいことがより好ましい。波長355nm以上における分光透過率が75%よりも大きいと、UVレーザーを照射して離型フィルム上にレーザー孔を形成する際に、UVレーザーのエネルギーを過度に吸収する恐れがなく、PETの溶融物等の加工屑がレーザー孔周辺部に飛び散り、セラミックシートの変形や汚染を抑制することができるため好ましい。波長355nmにおける分光透過率は、より好ましくは76%以上である。一方、波長355nmにおける分光透過率の上限は特に設けないが、85%以下でも好ましく、80%以下でも好ましい。
【0020】
(ポリエステルフィルム)
本発明のレーザー加工支持体用ポリエステルフィルムを構成するポリエステルは特に限定されず、離型フィルム基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成型したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体であってもよく、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが好適である。また、ポリエステルフィルムは、縦横双方向の弾性率の高さによる機械的特性の良さなどの理由で2軸延伸フィルムが好ましく、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであることが特に好ましい。
【0021】
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させたり、帯電を防止するなどのために表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、コロナ処理などを施すこともできる。
【0022】
また、本発明において、ポリエステルフィルム中に紫外線吸収剤を含まないことが好ましい。紫外線吸収剤を含むポリエステルフィルムは商業的に厚みのラインナップが少なく、用途などが限定される他、レーザー加工性には優れるが、フィルム上に紫外線硬化型離型層をコート後、硬化させる際に硬化阻害を起こすおそれがあり、使用しないことが好ましい。
【0023】
本発明において、ポリエステルフィルム中に含まないことが好ましい紫外線吸収剤とは、公知の一般的な紫外線吸収剤を指しており、具体的な紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0024】
有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、及び環状イミノエステル系等、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0025】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、及びアクリロニトリル系紫外線吸収剤としては、例えば、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-5’-(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,4-ジ-tert-ブチル-6-(5-クロロベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール等が挙げられる。環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)、2-メチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-ブチル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン、2-フェニル-3,1-ベンゾオキサジン-4-オン等が挙げられる。
【0026】
ポリエステルフィルムのヘイズ値は8%以下であることが好ましく、6%以下がさらに好ましい。ヘイズ値が5%以下であれば、レーザーが拡散することなく、良好なビアホールが形成できる。ヘイズ値は低いことが好ましいが0.1%以上でも構わず、0.3%以上であっても構わない。
【0027】
ポリエステルフィルムの厚みは、10~100μmが好ましく、12~75μmがさらに好ましい。10μm以上の厚みであれば離型フィルムとして加工する際の搬送性に優れるため好ましい。100μm以下であればレーザー加工時に余分な残渣物が少なくなるため好ましい。
【0028】
(電子線)
本発明における電子線照射は電子線の線量は10~200kGyが好ましく、さらに好ましくは20~150kGyである。10kGy以上の線量であれば、十分にポリエステルフィルムに電子線エネルギーを照射することができ、フィルムの分子量が変化するため好ましい。200kGy以下であれば、波長355nmにおける分光透過率が75%よりも大きくなるため、UVレーザー照射時にUVのエネルギーを過度に吸収するおそれがなく好ましい。
【0029】
不活性ガス雰囲気下で電子線を照射する際には、酸素濃度を500ppm以下とすることが好ましい。酸素存在下で電子線を照射するとオゾンが発生するため装置や環境に悪影響を及ぼす場合がある。また、電子線のエネルギーが失活してしまい、照射線量が不十分となる恐れがあるためである。酸素濃度を500ppm以下とするには、真空下または窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下において、フィルムに電子線を照射すればよく、例えば、電子線照射装置内を窒素充填することにより、酸素濃度500ppm以下を達成することができる。
【0030】
このような電子線照射装置としては、従来公知のものを使用でき、例えばカーテン型電子照射装置(LB1023、株式会社アイ・エレクトロンビーム社製)やライン照射型低エネルギー電子線照射装置(EB-ENGINE、浜松ホトニクス株式会社製)、エリア型電子照射装置(EBC-300、NHVコーポレーション社製)等を好適に使用することができる。
【0031】
(離型層)
本発明における離型層は、特に限定されず、離型剤として一般に使用されるシリコーン系、ポリオレフィン系、長鎖アルキル系などのほか、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂などのバインダー成分に、シリコーンオイルやフッ素樹脂などの離型成分を添加して成型した離型層も適用することが出来る。
【0032】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型層が0.01~3.0μmとなる範囲がよく、より好ましくは、0.01~1.0μmである。離型層の厚みが0.01μm以上であると適度な剥離力が得られ好ましい。また、3.0μm以下であると、レーザーの透過率に影響を及ぼすことなく加工できるため好ましい。
【0033】
本発明において離型層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、硬化させる方法が用いられる。
【0034】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【実施例
【0035】
以下に、実施例を用いて本発明のさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。本発明で用いた特性値は下記の方法を用いて評価した。
【0036】
(波長355nmにおける分光透過率、及びヘイズ)
ヘイズメーター(日本電色工業社製、製品名:NDH5000)を用いて測定した。
【0037】
(離型加工性)
離型材料(荒川化学工業社製、製品名:シリコリース(登録商標)UV POLY215、固形分濃度:100質量%)100質量部、光硬化触媒(荒川化学工業社製、シリコリース(登録商標)UV CATA211、固形分濃度:18.5質量%)5質量部を、トルエン/MEK=1/1の混合溶剤で希釈して、固形分濃度1.0質量%の離型層塗布液を調製した。
離型層塗布液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に、マイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.1μmになるように塗布後、100℃×20秒乾燥した。次いで、UV(高圧水銀ランプ、100mJ/cm)を照射し離型層を形成し、その状態により離型加工性を判断した。
○:離型層が十分に硬化しており、指で擦っても離型層が脱離しない。
×:離型層の硬化が不十分で、指で擦ると離型層が脱落する。
【0038】
(レーザー加工性)
セラミック粉末(アルミナ粉末及びガラス粉末)88.65質量部、バインダー樹脂(PVB、Tg65℃)9.85質量部、ジ-n-ブチルフタレート1.50質量部、エタノール100質量部、トルエン100質量部からなる組成物を攪拌混合し、ビーズを分散媒とするビーズミルを用いて1時間分散し、セラミックスラリーを調製した。
得られたスラリーを脱泡処理した後、前記同様に離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルムサンプル上にアプリケーターを用いて乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、90℃で乾燥させ、セラミックグリーンシート付配線基板製造用離型フィルムを得た。次いで、UV-YAGレーザー(波長355nm)を離型フィルム面から照射し、100μmφのビアホール加工を行い、ビアホールの形状及びポリエステルフィルムの状態を目視確認した。
○:ビアホール加工及びポリエステルフィルムも問題無く加工できている。
×:ビアホールが変形している箇所があるか、又は、ポリエステルフィルムも十分に穴が貫通していない。
【0039】
(レーザー孔周辺部の状態)
上記レーザー加工性評価後に、離型フィルム上に成形したセラミックシートを剥離し、離型フィルム側の剥離面(レーザー光の出射面)の孔周辺部を光学顕微鏡を用いて確認した。
○:孔周辺部に加工屑の付着がなく、きれいにビアホールが加工できている。
×:孔周辺部に加工屑の付着が見られる。
(分子量測定)
試料16mgを秤量し、クロロホルム8mlに溶解させた。0.2μmのメンブランフィルターで濾過し、得られた試料溶液のGPC分析を以下の条件で実施した。

装置:TOSOH HLC-8320GPC
カラム:K-G+ K-802(排除限界分子量5×10)+ K-801(排除限界分子量1.5×10)(Shodex)、
溶媒:クロロホルム100%
流速:0.6ml/min
濃度:0.2%
注入量:50μL
温度:40℃
検出器:RI

数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、z平均分子量(Mz)をポリスチレン換算で算出した。ポリスチレンは、PStQuickシリーズのPStQuick C(TOSOH)とPStQuick B(TOSOH)を使用した。PSTQuick C(TOSOH)に添加されているポリスチレンのうち、カラムの排除限界分子量を大きく超えているポリスチレンMw2110000、427000、37900については検量線作成から外した。
【0040】
(実施例1)
PETフィルム(東洋紡社製、品番:E5100、フィルム厚み:50μm、紫外線吸収剤非含有)に、電子線照射器(NHVコーポレーション社製、製品名:EBC-300)を用いて、加速電圧200kV、電子流28.1mA、速度20m/minの条件で、線量100kGyを電子線照射した。照射後、3日間エージングを行い、各測定を実施した。
【0041】
(実施例2、3)
電子線照射時の搬送速度を変更することで表1に記載の線量に調節した他は実施例1に準じて電子線照射を実施した。
【0042】
(実施例4,5)
表1に記載のフィルム厚みのPETフィルムを用いた他は実施例1に準じて電子線照射を実施した。
【0043】
(比較例1)
電子線を照射せずにPETフィルム(東洋紡社製、品番:E5100、フィルム厚み:50μm、紫外線吸収剤非含有)の各測定を実施した。
【0044】
(比較例2、3)
EB照射時の搬送速度を変更し、表1に記載の線量になるように調節した他は実施例1に準じて電子線照射を実施した。
【0045】
(比較例4)
電子線を照射せずに紫外線吸収剤含有PETフィルム(帝人フィルムソリューション社製、品番:テトロン(登録商標)フィルムHB、フィルム厚み:50μm)の各測定を実施した。
【0046】
各実施例のポリエステルフィルムを用いたものは、ビアホールを精度良く形成することができ、レーザー孔周辺部に加工屑も見られず、紫外線硬化型離型層の硬化阻害のない満足できるものであった。一方、各比較例のポリエステルフィルムを用いたものは、ビアホール形成で精度が悪いレーザー加工性の良くないものであるか、レーザー孔周辺部に加工屑が見られるか、紫外線硬化型離型層の硬化阻害のある好ましくないものであった。
【0047】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明によれば、配線基板を製造する工程にて微細なレーザー加工性を有し、低コストで配線基板を製造し得る、レーザー加工支持体用ポリエステルフィルム及び配線基板製造用離型フィルムの提供が可能となった。