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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】編地
(51)【国際特許分類】
   D04B 21/16 20060101AFI20240214BHJP
   D04B 21/12 20060101ALI20240214BHJP
   D01F 1/10 20060101ALI20240214BHJP
   D01F 8/04 20060101ALI20240214BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20240214BHJP
   A01G 13/02 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
D04B21/16
D04B21/12
D01F1/10
D01F8/04 Z
A01G9/14 S
A01G13/02 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019198709
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021070886
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】境 賢一
(72)【発明者】
【氏名】武田 昌信
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-161248(JP,A)
【文献】特開2017-153377(JP,A)
【文献】特開2009-081996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04B 21/16
D04B 21/12
D01F 1/10
D01F 8/04
A01G 9/14
A01G 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂繊維を含む編地において、
前記熱可塑性樹脂繊維は、マルチフィラメントであり、
前記熱可塑性樹脂繊維の総繊度が30~150dtexであり、
前記熱可塑性樹脂繊維は、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有し、
前記編地は、複数の貫通孔を備え、
前記複数の貫通孔の各貫通孔の開孔の面積は、10000~500000μmの範囲に含まれ、
前記編地の開孔率は、15~45%であり、
前記編地の三次元算術平均粗さは、200μm以下であり、
前記熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸が、芯鞘複合繊維であり、
前記芯鞘複合繊維は、芯部および鞘部を有し、
前記芯部は、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0~0.1質量%含有し、
前記鞘部は、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有する、編地。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂繊維の単糸繊度が、2.0~10.0dtexである、請求項1に記載の編地。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂繊維が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、および炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0~0.5質量%含有する、請求項1または2に記載の編地。
【請求項4】
厚さが、0.1~0.5mmである、請求項1~3のいずれかに記載の編地。
【請求項5】
目付が、30~250g/m2である、請求項1~4のいずれかに記載の編地。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の編地を用いた、農業用日よけシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編地に関する。
【背景技術】
【0002】
農業において、夏場の高温障害に起因する農作物の生育不良や品質低下による生産性低下の問題がある。園芸作物ハウスにおいてはハウス内の温度が高くなり作業者の日射病や熱中症となるリスクが、昨今の気候変動の影響による気温上昇により年々増加している。これら課題に対しては、日よけシートを用いて太陽光によるハウス内の温度の上昇を抑制することが従来から行われてきた。
【0003】
しかしながら、日よけシートをハウスにかけた場合、熱線となる赤外線が遮断されると同時に、作物の成長に必要な可視光線も遮断されてしまうという問題があった。
【0004】
そこで、上記の課題に対応して、日よけシートとして、赤外線の遮蔽力が大きい赤外線吸収剤を含有するスリットヤーンを織成させた日よけシートであって、可視光線が透過するための貫通孔を備える日よけシートが知られている(特許文献1参照)。また、日よけシートとして、赤外線吸収剤を含有するマルチフィラメントで構成された織物状の日よけシートであって、可視光線の透過の阻害を抑制すべく日よけシートを構成するマルチフィラメントが少量の艶消し剤を含有する日よけシートも知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-55002号公報
【文献】特開2006-307395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の日よけシートには以下の課題があることを本発明者らは見出した。上記のとおり、特許文献1に記載の日よけシートは、赤外線の遮蔽力が大きくなるように赤外線吸収剤を含有するスリットヤーンが織成されてなるシートである。また、この日よけシートには可視光線の遮蔽力が小さくなるように貫通孔が設けられている。しかし、この日よけシートでは、日よけシートの表面粗さや日よけシートが備える貫通孔の開孔の面積について何ら考慮されておらず、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性が、ともに不十分であるとの課題がある。
【0007】
また、上記のとおり、特許文献2に記載の日よけシートは、赤外線の遮蔽力が大きくなるように赤外線吸収剤を含有するマルチフィラメントが織成されてなる織物状シートである。また、この日よけシートでは、可視光線の遮蔽力が抑制されるように、この日よけシートを構成するマルチフィラメントが少量の艶消し剤を含有する構成となっている。しかし、この日よけシートでも、日よけシートの表面粗さや日よけシートが備える貫通孔の開孔の面積について何ら考慮されておらず、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性が、ともに不十分であるとの課題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記の課題に鑑み、可視光線の透過性に優れるとともに、赤外線の遮蔽性にも優れるという、トレードオフの関係にある特性を両立させた編地であって、日よけシートに好適に用いることができる編地を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために、本発明の編地は次のようなものである。
すなわち、(1)熱可塑性樹脂繊維を含む編地において、前記熱可塑性樹脂繊維は、マルチフィラメントであり、前記熱可塑性樹脂繊維の総繊度が30~150dtexであり、前記熱可塑性樹脂繊維は、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有し、前記編地は、複数の貫通孔を備え、前記複数の貫通孔の各貫通孔の開孔の面積は、10000~500000μmの範囲に含まれ、前記編地の開孔率は、15~45%であり、前記編地の三次元算術平均粗さは、200μm以下である、編地であり、
(2)前記熱可塑性樹脂繊維の単糸繊度が、2.0~10.0dtexである、(1)の編地であることが好ましく、
(3)前記熱可塑性樹脂繊維が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、および炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0~0.5質量%含有する、(1)または(2)の編地であることが好ましく、
(4)厚さが、0.1~0.5mmである、(1)~(3)のいずれかの編地であることが好ましく、
(5)目付が、30~250g/mである、(1)~(4)のいずれかの編地であることが好ましく、
(6)前記熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸が、芯鞘複合繊維であり、前記芯鞘複合繊維は、芯部および鞘部を有し、前記芯部は、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0~0.1質量%含有し、前記鞘部は、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有する、(1)~(5)のいずれかの編地であることが好ましく、
(7)(1)~(6)のいずれかの編地を用いた、農業用日よけシートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可視光線の透過性に優れ、赤外線の遮蔽性にも優れる編地であって、日よけシートに好適に用いることができる編地を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実態の形態について詳細に説明する。
【0012】
本発明の編地は、熱可塑性樹脂繊維を含み、複数の貫通孔を備え、上記の複数の貫通孔の各貫通孔の開孔の面積が10000~500000μmの範囲に含まれ、開孔率が15~45%であり、三次元算術平均粗さが200μm以下である。また、上記の熱可塑性樹脂繊維は、マルチフィラメントであり、この熱可塑性樹脂繊維の総繊度は、30~150dtexである。そして、前記熱可塑性樹脂繊維は、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有する。そして、これらの条件の全てを具備する本発明の編地は、可視光線の透過性に優れ、かつ、赤外線の遮蔽性にも優れたものとなる。なお、本願明細書においては、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上を金属酸化物系微粒子と称することがある。
【0013】
まず、本発明の編地が可視光線の透過性に優れたものとなるメカニズムについて、以下のとおり推測する。すなわち、本発明の編地が複数の貫通孔を備え、かつ、編地の開孔率が15~45%であることで、編地における貫通孔の総量が適当なものとなる。そして、三次元算術平均粗さが200μm以下であることで、編地表面に対して斜めから入射する光を編地の一方の面から他方の面により多く通過させる編地となる。さらに、上記の特徴に加え、マルチフィラメントである熱可塑性樹脂繊維の総繊度が30~150dtexであることで、繊維内部を通過する光の光路長が短くなるため、光を通過しやすい構成が実現され、結果として、本発明の編地が可視光線の透過性に優れたものとなると推測する。また、本発明の編地が備える複数の貫通孔のうちの開孔の面積が最小である貫通孔の開孔の面積(以下、貫通孔の開孔の最小面積と称することがある。)が10000μm以上であることで、編地を構成する熱可塑性樹脂繊維による可視光線の吸収および反射が抑制され、結果として、本発明の編地の可視光線の透過性が優れたものとなる。
【0014】
次に、本発明の編地が、赤外線の遮蔽性に優れたものとなるメカニズムについて、以下のとおり推測する。すなわち、本発明の編地に含有される熱可塑性樹脂繊維が金属酸化物系微粒子を熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有することで、近赤外線領域の波長における光の吸収が強い編地となる。ここで、金属酸化物系微粒子の詳細は後述するが、金属酸化物系微粒子は近赤外線領域の波長の光線を多く吸収する性能を備える。さらに、上記特徴に加え、編地が備える複数の貫通孔のうちの開孔の面積が最大である貫通孔の面積(以下、貫通孔の開孔の最大面積と称することがある。)が500000μm以下であることで、本発明の編地は赤外線の遮蔽性に優れたものとなる。その理由は定かではないが、貫通孔の開孔の最大面積が500000μm以下である、すなわち貫通孔の開孔が比較的小さいことで、編地が赤外線をより多く受けることができる構成となる。赤外線をより多く受けることができることで、熱可塑性樹脂繊維に含有される金属酸化物系微粒子によって編地の赤外線を吸収する量が多くなるためであると推測する。
【0015】
本発明の編地は、マルチフィラメントである熱可塑性樹脂繊維を含んでいる。この熱可塑性樹脂繊維の素材には、具体的には、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂およびポリアミド樹脂などあらゆる熱可塑性樹脂繊維を採用することができる。なお、効果が阻害されない範囲であれば、熱可塑性樹脂繊維以外の綿などの天然繊維やレーヨンなどの繊維材料を熱可塑性樹脂繊維と併用することができる。
【0016】
熱可塑性樹脂繊維の総繊度は30~150dtexである。屋外などでの使用において編地の耐久性が向上するとの理由から、熱可塑性樹脂繊維の総繊度は50dtex以上であることが好ましい。一方で、編地の可視光線の透過性がより優れたものとなるとの理由からは、熱可塑性樹脂繊維の総繊度は120dtex以下であることが好ましい。
【0017】
ここで、繊維の総繊度とは、編地の組織を構成する繊維(編糸)1本分の繊度をさし、例えば、2本の単糸が引き揃わされて1本の繊維(編糸)を構成する場合には、この2本の単糸からなる繊維(編糸)の太さが総繊度となる。
【0018】
本発明の編地では、熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸の単糸繊度が2.0~10.0dtexであることが好ましい。単糸と単糸の間での空隙が増し編地の可視光線の透過性がより優れたものとなるとの理由から、熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸の単糸繊度は3.0dtex以上であることがより好ましい。一方で、編地が硬くなることによる取扱性の低下を抑制できるとの理由から、熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸の単糸繊度は8.0dtex以下であることがより好ましい。
【0019】
本発明の編地で用いる熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸は、横断面が丸断面でも異形断面でもよい。
【0020】
本発明の編地に含まれる熱可塑性樹脂繊維は、金属酸化物系微粒子を熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有する。編地の赤外線を遮蔽する性能がより優れたものとなるとの理由から、前記熱可塑性樹脂繊維が金属酸化物系微粒子を前記熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.5質量%以上含有することが好ましく、0.7質量%以上含有することがより好ましい。一方で、熱可塑性樹脂繊維を紡糸する際に糸切れなどの発生を抑制するとの理由から、熱可塑性樹脂繊維が金属酸化物系微粒子を熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して2.5質量%以下含有することが好ましく、2.0質量%以下含有することがより好ましい。
【0021】
金属酸化物系微粒子としては、具体的には、インジウム酸化スズ、セシウム酸化タングステン、およびアンチモン酸化スズからなる群より選ばれる1種以上である。波長が780~1200nmの赤外線をより遮蔽したい場合においては、金属酸化物系微粒子はセシウム酸化タングステンを主成分とするものであることが好ましく、セシウム酸化タングステンのみから構成されるものであることがより好ましい。また、波長が1200~2500nmの赤外線をより遮蔽したい場合においては、金属酸化物系微粒子はインジウム酸化スズを主成分とするものであることが好ましく、金属酸化物系微粒子はインジウム酸化スズのみから構成されるものであることがより好ましい。ここで、主成分とは、金属酸化物系微粒子の全体の質量に対し、特定の物質を50質量%を超えて含有することをいい、金属酸化物系微粒子の全体の質量に対し、特定の物質を80質量%以上含有することが好ましく、金属酸化物系微粒子の全体の質量に対し、特定の物質を95質量%以上含有することがより好ましい。
【0022】
また、熱可塑性樹脂繊維の紡糸において、紡糸用のフィルターの詰まりなどの発生を抑えるとの理由から、金属酸化物系微粒子の数平均粒子径は300nm以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の編地は、熱可塑性樹脂繊維を編地の全体の質量に対して50質量%以上含んでいることが好ましい。編地の赤外線を遮蔽する性能がより優れたものとなるとの理由から、本発明の編地は、熱可塑性樹脂繊維を編地の全体の質量に対して70質量%以上含んでいることがより好ましい。
【0024】
本発明の編地に含まれる熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸としては、単一の素材から構成される繊維である単独繊維や、複数の素材から構成され、芯部および鞘部を有する芯鞘複合繊維を挙げることができる。これらのなかでも、本発明の編地に含まれる熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸の形態は芯鞘複合繊維であることが好ましい。なお、繊維のうち、複数の素材から構成される複合繊維ではない繊維は、単一の素材から構成される単独繊維である。また、この場合において、芯鞘複合繊維の芯部は、金属酸化物系微粒子を熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0~0.1質量%含有し、芯鞘複合繊維の鞘部は、金属酸化物系微粒子を熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.3~5.0質量%含有することが好ましい。芯鞘複合繊維の表面側に配置される鞘部に金属酸化物系微粒子を多く配置した方が、編地の赤外線の遮蔽性が効率的に優れたものとなり、生産性に優れた単糸を得ることができる。
【0025】
本発明の編地では、熱可塑性樹脂繊維が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、および炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0~0.5質量%の含有量にて含有することが好ましい。なお、本願明細書においては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、および炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上を艶消し剤と称することがある。熱可塑性樹脂繊維が、艶消し剤を熱可塑性樹脂繊維の全体の質量に対して0.5質量%以下の含有量で有することにより、熱可塑性樹脂繊維の表面での光の散乱を抑制することができ、編地の可視光線の透過性がより優れたものとなる。上記の理由から、熱可塑性樹脂繊維は艶消し剤を含まないものであることが好ましい。ここで、艶消し剤としては、当該技術分野において通常、用いられるものであれば、特に限定はされない。より具体的には、艶消し剤とは、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化亜鉛、および炭酸カルシウムからなる群から選ばれる1種以上である。
【0026】
本発明の編地は、三次元算術平均粗さが200μm以下である。三次元算術平均粗さとは、表面粗さパラメーターを二次元から三次元に拡張したものである。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。編地の可視光線の透過性がより優れたものとなるとの理由から、編地の三次元算術平均粗さは150μm以下であることが好ましい。また、編地の三次元算術平均粗さを上記の範囲とする手段としては、熱可塑性樹脂繊維の総繊度、編地の編密度および編地の厚さを調整すること等が挙げられる。
【0027】
本発明の編地は、開孔率が15~45%である。開孔率とは、編地の表面において、編地の表面に露出している熱可塑性樹脂繊維の部分の総面積と貫通孔の開孔の総面積との合計である全面積に対する貫通孔の開孔の総面積の比率のことである。より詳細には、実施例の測定方法の項に記載の方法で測定されるものをいう。編地の可視光線の透過性がより優れたものとなるとの理由から、編地の開孔率は20%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。編地の赤外線を遮蔽する性能が低下するのを抑制できるとの理由から、編地の開孔率が40%以下であることが好ましい。また、編地の開孔率を上記の範囲とする手段としては、熱可塑性樹脂繊維の総繊度、編地の編密度および各貫通孔の開孔の面積を調整すること等が挙げられる。
【0028】
本発明の編地は、複数の貫通孔を備え、これらの複数の貫通孔の各貫通孔の開孔の面積は10000~500000μmの範囲に含まれる。ここで、複数の貫通孔の各貫通孔の開孔の面積が10000~500000μmの範囲に含まれるとは、貫通孔の開孔の最小面積が10000μm以上であり、かつ、貫通孔の開孔の最大面積が500000μm以下であることを意味する。編地の赤外線を遮蔽する性能がより優れたものとなるとの理由から、貫通孔の開孔の最大面積は400000μm以下であることが好ましく、350000μm以下であることがより好ましい。一方で、開孔の通気性低下による熱の滞留が発生するのを抑制できるとの理由から、前記貫通孔の開孔の最小面積は20000μm以上であることが好ましい。また、前記貫通孔の開孔の最大面積および最小面積を上記の範囲とする手段としては、熱可塑性樹脂繊維の総繊度および編地の編密度を調整すること等が挙げられる。
【0029】
本発明の編地は、厚さが0.1~0.5mmであることが好ましい。編地の厚さが0.5mm以下であることで、編地を通過する光線の光路長が短くなり、編地の可視光線の透過性がより優れたものとなる。上記の理由から、編地の厚さが0.4mm以下であることがより好ましい。編地の厚さを0.1mm以上とすることで、製造工程時における編地の破れなどにつながる編地の強力低下を抑制することができる。
【0030】
本発明の編地は、目付が30~250g/mであることが好ましい。使用時の破れの発生を抑制できるとの理由から、編地の目付は50g/m以上であることがより好ましい。一方で上限については、取扱い性に優れるとの理由から、編地の目付は200g/m以下であることがより好ましく、150g/m以下であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の編地は、編密度が300~2000個/6.45cmであることが好ましい。編地の赤外線を遮蔽する性能が低下するのを抑制できるとの理由から、編密度が350個/6.45cm以上であることがより好ましく、400個/6.45cm以上であることがさらに好ましい。一方で上限については、編地の可視光線の透過性がより優れたものとなるとの理由から、編密度が1500個/6.45cm以下であることがより好ましく、1000個/6.45cm以下であることがさらに好ましい。
【0032】
本発明に用いる編地の種類は、経編地であってもよいし緯編地であってもよい。経編地としては、トリコット編、ラッセル編、ジャガード編等が例示され、緯編地としては平編、ゴム編、両面編、パール編、タック編等が好ましく例示されるが、それらに限られるものではない。編地は、丸編機、横編機、トリコット編機、ラッシェル編機等の通常の編機を用いて通常の方法により編地とすることができる。層数も特に限定されず単層でもよいし2層以上の多層構造を有する編地でもよい。使用時の耐久性や寸法安定性の観点より、編地は経編地が好ましい。生産性の観点より、編地はトリコット編地がより好ましい。
【0033】
本発明の編地は、本発明の効果を阻害しない範囲内において、撥水加工、起毛加工、あるいは忌避剤、防虫剤、抗菌剤などの機能を後加工で付与することができる。機能付与の方法としては例えば、ディップ-ニップ方式、スプレー方式等を挙げることができる。また、捺染等の方法により図柄をプリントしても良い。
【0034】
本発明の編地は、屋外での使用など紫外線を浴びる環境下での使用が想定される場合には、耐候性を向上させるために、耐候剤を機能付与することが好ましい。耐候剤としては、トリアジン誘導体やベンゾトリアゾール誘導体などがある。トリアジン誘導体を含む耐候剤としては、例えばTinuvin1600(BASF社製)、UV-FAST P(ハンツマン・ジャパン社製)などがあり、ベンゾトリアゾール誘導体を含む耐候剤としては、例えばTinuvin329(BASF社製)、HOSTAVIN3315(クラリアントケミカルズ社製)などがある。耐候剤を機能付与する方法としては、熱可塑性樹脂繊維の内部へ練り込んでもよいし、後加工で付与してもよい。
【0035】
また、本発明の編地は、日よけシートに好適に用いられる。ここで、本発明の編地の効果を阻害しない範囲において、日よけシートは、本発明の編地と、本発明の編地以外のシート状物とを縫製により一体化してなるものであってもよい。具体的には、編地を農業用ハウスなどの施工対象物に施工する際に、編地の幅や長さが足りない場合などに、本発明の編地と、本発明の編地以外のシート状物とを縫製により一体化するものである。
【0036】
本発明の編地の光線透過率の特性は、波長380~780nmの範囲における可視光線の透過率が60%以上であり、かつ、波長800~2500nmの範囲における赤外線の透過率が60%以下であることが好ましい。上記の編地を日よけシートに用いることで、作物の発育に必要な可視光線を農業用ハウスの室内により多く導入することができ、その一方で、農業用ハウスの室内の温度の上昇の原因となる赤外線をより多く遮蔽することができる。可視光線の透過率は、より好ましくは、65%以上であり、さらに好ましくは、70%以上である。また、赤外線の透過率は、より好ましくは、50%以下であり、さらに好ましくは、45%以下である。このような編地を得る手段としては、例えば、実施例1等で記載の材料を用い、実施例1で記載の製造方法を採用することを挙げることができる。なお、熱可塑性樹脂繊維の総繊度、熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸の単糸繊度、熱可塑性樹脂繊維の全体に対する金属酸化物系微粒子の含有量、熱可塑性樹脂繊維を構成する単糸が芯鞘複合繊維である場合の芯部および鞘部における熱可塑性樹脂繊維の全体に対する金属酸化物系微粒子の含有量、熱可塑性樹脂繊維に含有される艶消し剤の含有量、編地の三次元算術平均粗さ、編地が備える各貫通孔の開孔の最大面積、編地が備える各貫通孔の開孔の最小面積、編地の開孔率、編地の厚さ、編地の編密度、からなる群より選ばれる一種以上を適宜調整することで編地の波長380~780nmの範囲における可視光線の透過率および波長800~2500nmの範囲における赤外線の透過率を上記の範囲とすることができる。
【実施例
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、実施例中の性能は次の方法で測定した。
【0038】
[測定方法]
(1)可視光線の透過率と赤外線の透過率
50cm角の正方形の編地の試験片を用意した。分光測光器「UV-3600plus(株式会社島津製作所製)」を用い、試験片の5点について、波長380~2500nmの分光透過率を2nm間隔で測定した。前記試験片の5点の位置については、試験片の2つの対角線の交点と、試験片の2つの対角線のうちの一方の対角線A上の点であって、対角線Aによって結ばれる角Aおよび角Bのうちの角Aと上記の交点との中間の点、対角線A上の点であって、上記の角Bと上記の交点との中間の点、試験片の2つの対角線のうちの他方の対角線B上の点であって、対角線Bによって結ばれる角Cおよび角Dのうちの角Cと上記の交点との中間の点、対角線B上の点であって、上記の角Dと交点との中間の点の合計5つの点とした。上記の5つの測定点で得られた5つの波長380~780nmの範囲の光線透過率の平均値を可視光線の透過率(%)とし、上記の5つの測定点で得られた5つの波長800~2500nmの範囲の光線透過率の平均値を赤外線の透過率(%)とした。なお、測定条件としては、スキャンスピード「中速」、スリット幅「20nm」、検出器ユニット「外部(3検出器)」、S/R切替「標準」、スリットプログラム「標準」とした。
【0039】
(2)総繊度
JIS L 1018(2010)8.7.1に基づき試料から繊維(編糸)を25本ほぐし、その長さ(mm)と質量(mg)を測定し、次の式によって、総繊度を求めた。
【0040】
T=W/L×100
ここに、
T:総繊度(dtex)
W:繊維25本の合計の質量(mg)
L:繊維25本の合計の長さ(mm)
(3)目付(単位面積(1m)当たりの質量(g/m))
JIS L 1018(8.4.2)(2010)に規定された方法により、試料の単位面積(1m)当たりの質量(g/m)を求めた。
【0041】
(4)厚さ
JIS L 1018(8.5.1)(2010)に規定された方法により、厚さ測定器(TECLOCK製)を用いて試料の厚さ(mm)を求めた。
【0042】
(5)三次元算術平均粗さ
3D形状測定機(キーエンス社製、VR-3200)を用いて、ISO 25178に定められた評価方法により、5枚の試験片について、それぞれの試験片の一方の面および他方の面の三次元算術平均粗さ(μm)を測定した。そして、得られた10点の測定値の平均値を算出し本発明における三次元算術平均粗さ(μm)とした。三次元算術平均粗さ(μm)の測定には、12倍の倍率(低倍率カメラ)で、フィルターの処理設定は、フィルター種別を「ガウシアン」、S-フィルターを「なし」、F-オペレーションを「なし」、L-フィルターを「なし」、終端効果の補正を「ON」とした。
【0043】
(6)編密度
JIS L 1018(2010)8.8に基づき、5枚の試験片それぞれの試験片の一方の面と他方の面について、編地の巾方向2.54cmあたりの編目の数であるウェル数と編地の長さ方向2.54cmあたりの編目の数であるコース数を測定し、それぞれの平均値を算出し整数に丸める。その算出したウェル数とコース数とを掛け算することにより算出した値を6.54cmあたりの編密度とした。
【0044】
(7)開孔率
電子顕微鏡(キーエンス社製、VHX-6000)を用いて、試験片の一方の面と他方の面とにおいて、それぞれ5箇所の観察エリアを無作為に選定し、合計10箇所の観察エリアにて25倍の倍率(低倍率レンズ VH-25)の写真を撮影した。次に、得られた10枚の写真のそれぞれを画像処理ソフト(ソフト名:WinROOF、三谷商事株式会社製)を用いて処理し、上記写真の視野の全面積に対する編糸ではない部分の全面積の比率を測定し、その平均値を開孔率(%)とした。開孔率の測定には、上記の画像処理ソフトの自動2値化(しきい値の決定方法:判別分析法、抽出領域の明暗:暗い領域、対象濃度範囲:0~255)を用いた。但し、上記の自動2値化に拠っては、しきい値の決定が困難である場合は、平動設定により行うことができる。
【0045】
(8)貫通孔の開孔の面積
電子顕微鏡(キーエンス社製、VHX-6000)を用いて、試験片の一方の面と他方の面のそれぞれを25倍の倍率(低倍率レンズ VH-25)にて写真撮影をした。より具体的には、写真撮影は、試験片の一方の面から無作為に選定した5箇所の観察エリアおよび試験片の他方の面から無作為に選定した5箇所の観察エリアの合計10箇所の観察エリアにおいて行った。次に、得られた10枚の写真のそれぞれを画像処理ソフト(ソフト名:WinROOF、三谷商事株式会社製)を用いて処理し、上記写真の編地ではない部分、すなわち、貫通孔の開孔を特定し、個々の貫通孔の開孔の面積を測定した。測定した個々の貫通孔の開孔の面積の値のうちの最大値(μm)を貫通孔の開孔の最大面積とし、測定した個々の貫通孔の開孔の面積の値のうち最小値(μm)を貫通孔の開孔の最小面積とした。なお、編地ではない部分、貫通孔の開孔の特定と、個々の貫通孔の開孔の面積の測定には、上記の画像処理ソフトの自動2値化(しきい値の決定方法:判別分析法、抽出領域の明暗:暗い領域、対象濃度範囲:0~255)を用いた。但し、上記の自動2値化に拠っては、しきい値の決定が困難である場合は、平動設定により行うことができる。
【0046】
(9)微粒子の数平均粒子径
編地より熱可塑性樹脂繊維を採取し、その断面を透過型電子顕微鏡(日立製作所製、H-7100FA)で、微粒子が100個以上観察できる倍率で5ヶ所撮影した。次に、得られた写真5枚のそれぞれを画像処理ソフト(ソフト名:WinROOF、三谷商事株式会社製)を用いて処理し、無作為に選定した100個の粒子径を測定した。これらの粒子径の平均値を算出することで、微粒子の数平均粒子径(nm)を求めた。
【0047】
[実施例1]
28ゲージのトリコット編み機を用いて、前記トリコット編み機の2枚の筬でフロント糸およびバック糸を編成した。ここで、フロント糸およびバック糸は、ともに、金属酸化物系微粒子としてインジウム酸化スズを1.2質量%含有していた。また、フロント糸およびバック糸は、ともに、24本の単糸から構成され、総繊度が84dtexであるポリエチレンテレフタレート糸である。なお、上記の単糸は、単独繊維であり、単糸の単糸繊度は3.5dtexであった。ここで、仕上げヒートセット後の編地の開孔率が30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の最大面積が250000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積が25000μmであり、編地の厚さが0.3mmとなるように編成し、トリコット編地を得た。その後、かかるトリコット編地を仕上げヒートセットとして乾燥機で180℃、40秒乾燥させて、編地を得た。この編地の構成および性能を表1に示す。この編地の可視光線の透過率は70%であり、赤外線の透過率は45%であり、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性は優れるものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の最大面積は248000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は27000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0048】
[実施例2]
実施例1で用いたフロント糸およびバック糸をともに以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして編地を得た。ここで、フロント糸およびバック糸は、ともに以下のポリエチレンテレフタレート糸である。すなわち、このポリエチレンテレフタレート糸は、金属酸化物系微粒子としてセシウム酸化タングステンを0.4質量%含有し、24本の単糸から構成され、総繊度が84dtexである。なお、上記の単糸は単独繊維であり、単糸の単糸繊度は3.5dtexである。この編地の構成および性能を表1に示す。この編地の可視光線の透過率は61%であり、赤外線の透過率は30%であり、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性は優れるものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の最大面積は252000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は29000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0049】
[実施例3]
実施例1で用いたフロント糸およびバック糸をともに以下のものに変更した以外は実施例1と同様にして編地を得た。ここで、フロント糸およびバック糸は、ともに以下のポリエチレンテレフタレート糸である。すなわち、このポリエチレンテレフタレート糸を構成する単糸は、芯部と鞘部を備える芯鞘複合繊維であり、芯部(ポリエチレンテレフタレート、分率60質量%)は金属酸化物系部粒子を含有せず、鞘部(ポリエチレンテレフタレート、分率40質量%)はインジウム酸化スズをポリエチレンテレフタレート糸に対して1.2質量%含有していた。また、このポリエチレンテレフタレート糸は、24本の単糸から構成され、総繊度が84dtexである。なお、上記の単糸の単糸繊度は3.5dtexである。この編地の構成および性能を表1に示す。この編地の可視光線の透過率は70%であり、赤外線の透過率は40%であり、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性は優れるものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の最大面積は245000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は25000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0050】
[実施例4]
インジウム酸化スズの含有量を0.3質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表1に示す。この編地の可視光線の透過率は71%であり、赤外線の透過率は60%であり、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性は優れるものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は253000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は26000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0051】
[実施例5]
インジウム酸化スズを1.2質量%含有させた84dtex/48フィラメント(単独繊維、単糸繊度1.8dtex)のポリエチレンテレフタレート糸に変更した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表1に示す。この編地の可視光線の透過率は64%であり、赤外線の透過率は44%であり、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性は優れるものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は249000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は27000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0052】
[実施例6]
インジウム酸化スズを1.2質量%および酸化チタンを0.7質量%含有させた84dtex/24フィラメント(単独繊維、単糸繊度3.5dtex)のポリエチレンテレフタレート糸とし、編地の厚さを0.6mmとなるよう編成した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表1に示す。この編地の可視光線の透過率は64%であり、赤外線の透過率は42%であり、可視光線の透過性および赤外線の遮蔽性は優れるものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は251000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は24000μmであり、編地の厚さは0.6mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0053】
[比較例1]
金属酸化物系微粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートに変更した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表2に示す。この編地の可視光線の透過率は72%であり、赤外線の透過率は72%であり、可視光線の透過性は優れるものであったが、赤外線の遮蔽性は劣るものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は249000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は27000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0054】
[比較例2]
インジウム酸化スズの含有量を0.1質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表2に示す。この編地の可視光線の透過率は71%であり、赤外線の透過率は65%であり、可視光線の透過性は優れるものであったが、赤外線の遮蔽性は劣るものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は249000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は28000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は575個/6.45cmであった。
【0055】
[比較例3]
編地の三次元算術平均粗さを250μmとなるよう編成した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表2に示す。この編地の可視光線の透過率は58%であり、赤外線の透過率は49%であり、赤外線の遮蔽性は優れるものであったが、可視光線の透過性は劣るものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は248000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は25000μmであり、編地の厚さは0.6mmであり、編地の編密度は896個/6.45cmであった。
【0056】
[比較例4]
編地の貫通孔の開孔の面積を600000μmとなるよう編成した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表2に示す。この編地の可視光線の透過率は75%であり、赤外線の透過率は61%であり、可視光線の透過性は優れるものであったが、赤外線の遮蔽性は劣るものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は30%であり、編地が備える貫通孔の開孔の最大面積は590000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は37000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は460個/6.45cmであった。
【0057】
[比較例5]
編地の開孔率を10%となるよう編成した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表2に示す。この編地の可視光線の透過率は48%であり、赤外線の透過率は26%であり、赤外線の遮蔽性は優れるものであったが、可視光線の透過性は劣るものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は10%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は251000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は26000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は1404個/6.45cmであった。
【0058】
[比較例6]
編地の開孔率を50%となるよう編成した以外は、実施例1と同様にして編地を得た。この編地の構成および性能を表2に示す。この編地の可視光線の透過率は85%であり、赤外線の透過率は63%であり、可視光線の透過性は優れるものであったが、赤外線の遮蔽性は劣るものであった。なお、仕上げヒートセット後の編地の開孔率は50%であり、編地が備える貫通孔の開孔の面積は248000μmであり、編地が備える貫通孔の開孔の最小面積は27000μmであり、編地の厚さは0.3mmであり、編地の編密度は374個/6.45cmであった。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の編地の用途としては、農業ハウス用などの日よけシート、日よけカーテンなどで用いるのに好適である。