(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 27/06 20060101AFI20240214BHJP
F16K 11/085 20060101ALI20240214BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20240214BHJP
【FI】
F16K27/06 B
F16K11/085 Z
F16K27/00 D
(21)【出願番号】P 2019202523
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神先 省吾
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/230664(WO,A1)
【文献】特開2019-078315(JP,A)
【文献】特開平10-238650(JP,A)
【文献】特開2021-025513(JP,A)
【文献】特開2018-100636(JP,A)
【文献】中国実用新案第201747969(CN,U)
【文献】国際公開第2018/061892(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 5/00 - 5/22
F16K 11/085- 11/087
F16K 27/00 - 27/12
F16L 21/00 - 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の流量を調整するバルブ装置であって、
内部に形成された内部空間(23)、および、前記内部空間に液体が流入する流入口(251)、前記内部空間から液体が流出する流出口(261)を有するハウジング(20)と、
前記流出口から流出される液体の流量を調整する弁体(31)、および、前記弁体を回転させる回転軸(32)を有し、前記内部空間に配置されるバルブ(30)と、
前記ハウジングと別体として構成され、前記内部空間に対して前記回転軸の軸方向の一方側に配置され、前記内部空間と前記ハウジングの外部空間とを隔てるとともに、前記回転軸を保持する隔壁部(60)と、
前記隔壁部と前記ハウジングとの間の隙間を塞ぐシール部材(65)とを備え、
前記ハウジングは、前記ハウジングのうち前記軸方向の一方側に位置する筒状の内壁第1部(211)と、前記内壁第1部に対して前記軸方向の一方側に連なる筒状の内壁第2部(212)と、前記内壁第2部に対して前記軸方向の一方側に連なる内壁第3部(292a)とを有し、
前記内壁第1部は、前記ハウジングに前記隔壁部が組み付けられた状態で、前記シール部材と接しており、
前記内壁第2部は、前記内壁第1部から前記軸方向の一方側に進むにつれて、前記軸方向に直交する方向での前記回転軸の軸心(Axr)からの距離が徐々に増大するテーパ形状であり、
前記内壁第3部には、前記ハウジングを貫通するハウジング貫通穴(291)が形成されており、
前記隔壁部は、前記内壁第1部と前記内壁第2部とのそれぞれの内側に配置された状態で、前記ハウジングと嵌合する嵌合部(61)を有し、
前記シール部材は、前記嵌合部の外壁(610)の周方向全域を囲むように、前記嵌合部に装着されるとともに、前記嵌合部の外壁と前記内壁第1部との間に挟まれており、
前記嵌合部には、前記回転軸が挿通される挿通穴(62)と、前記挿通穴から前記軸方向に直交する一方向(D2)に延伸して前記嵌合部を貫通する隔壁貫通穴(67)とが形成されており、
前記隔壁貫通穴は、前記シール部材よりも前記軸方向の一方側に配置されているとともに、前記内壁第1部と前記内壁第2部との両方に対して、前記軸方向に直交する前記一方向で対向しており、
前記内壁第2部と前記嵌合部の外壁との間に、前記隔壁貫通穴に連通するとともに、前記ハウジング貫通穴に連通する環状の隙間(S1)が形成されて
おり、
前記隔壁貫通穴は、該隔壁貫通穴のうち前記内壁第2部に対して前記一方向に対向する部位では前記環状の隙間へ連通する一方で、前記内壁第1部に対して前記一方向に対向する部位では該内壁第1部によって塞がれている、バルブ装置。
【請求項2】
前記ハウジング貫通穴は、前記ハウジングに対して、前記嵌合部に対する前記隔壁貫通穴が前記嵌合部の外壁に開口している側と同じ側に形成されている、請求項1に記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の流量を調整するバルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体の流量を調整するバルブ装置が、特許文献1に開示されている。この従来のバルブ装置は、内部に形成された内部空間を有するハウジングと、内部空間に配置されるバルブとを備える。ハウジングは、内部空間に液体が流入する流入口と、内部空間から液体が流出する流出口とを有する。バルブは、流出口から流出される液体の流量を調整する弁体と、弁体を回転させる回転軸とを有する。
【0003】
また、この従来のバルブ装置は、ハウジングの内部空間に対して回転軸の軸方向の一方側に配置される隔壁部と、隔壁部とハウジングとの間の隙間を塞ぐシール部材とを備える。隔壁部は、ハウジングと別体として構成される。隔壁部は、ハウジングの内部空間と外部空間とを隔てるとともに、回転軸を保持する。隔壁部は、ハウジングの内側に配置された状態で、ハウジングと嵌合する嵌合部を有する。シール部材は、嵌合部の外壁の周方向全域を囲むように、嵌合部に装着されている。シール部材は、嵌合部の外壁とハウジングの内壁との間に挟まれている。
【0004】
嵌合部には、回転軸が挿通される挿通穴と、挿通穴から軸方向に直交する一方向に延伸して嵌合部を貫通する隔壁貫通穴とが形成されている。隔壁貫通穴は、隔壁部のうちシール部材が装着される部分よりも、軸方向の一方側に形成されている。ハウジングには、隔壁貫通穴よりも軸方向の一方側に、ハウジング貫通穴が形成されている。嵌合部とハウジングとの間には、隔壁貫通穴とハウジング貫通穴との両方に連通する環状の隙間が形成されている。
【0005】
これによれば、ハウジングの内部空間から嵌合部の挿通穴に流体が漏れたときに、漏れた冷却液を、隔壁貫通穴、環状の隙間およびハウジング貫通穴を介して、ハウジングの外部に排出することができる。よって、隔壁部よりも軸方向の一方側への冷却液の侵入を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した従来のバルブ装置では、環状の隙間を形成することのみを目的として、ハウジングの内壁のうち軸方向で隔壁貫通穴と同じ位置の部分を、嵌合部の外壁から離していた。これが、バルブ装置の体格が大きくなる原因の一つであった。
【0008】
また、上記した従来のバルブ装置では、ハウジングの内壁のうち軸方向で隔壁貫通穴と同じ位置の部分を、嵌合部の外壁から離すために、ハウジングの内壁に段差が生じていた。このため、ハウジングと隔壁部の組み付けにおいて、シール部材が装着された嵌合部を、ハウジングの内壁の内側に挿入するときに、シール部材が段差に引っ掛かる。よって、従来のバルブ装置では、ハウジングと隔壁部との組み付け性が悪い。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、従来のバルブ装置と比較して、ハウジングと隔壁部との組付け性の向上と、バルブ装置の小型化とを両立することができるバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明によれば、
液体の流量を調整するバルブ装置は、
内部に形成された内部空間(23)、および、内部空間に液体が流入する流入口(251)、内部空間から液体が流出する流出口(261)を有するハウジング(20)と、
流出口から流出される液体の流量を調整する弁体(31)、および、弁体を回転させる回転軸(32)を有し、内部空間に配置されるバルブ(30)と、
ハウジングと別体として構成され、内部空間に対して回転軸の軸方向の一方側に配置され、内部空間とハウジングの外部空間とを隔てるとともに、回転軸を保持する隔壁部(60)と、
隔壁部とハウジングとの間の隙間を塞ぐシール部材(65)とを備え、
ハウジングは、ハウジングのうち軸方向の一方側に位置する筒状の内壁第1部(211)と、内壁第1部に対して軸方向の一方側に連なる筒状の内壁第2部(212)と、内壁第2部に対して軸方向の一方側に連なる内壁第3部(292a)とを有し、
内壁第1部は、ハウジングに隔壁部が組み付けられた状態で、シール部材と接しており、
内壁第2部は、内壁第1部から軸方向の一方側に進むにつれて、軸方向に直交する方向での回転軸の軸心(Axr)からの距離が徐々に増大するテーパ形状であり、
内壁第3部には、ハウジングを貫通するハウジング貫通穴(291)が形成されており、
隔壁部は、内壁第1部と内壁第2部とのそれぞれの内側に配置された状態で、ハウジングと嵌合する嵌合部(61)を有し、
シール部材は、嵌合部の外壁(610)の周方向全域を囲むように、嵌合部に装着されるとともに、嵌合部の外壁と内壁第1部との間に挟まれており、
嵌合部には、回転軸が挿通される挿通穴(62)と、挿通穴から軸方向に直交する一方向(D2)に延伸して嵌合部を貫通する隔壁貫通穴(67)とが形成されており、
隔壁貫通穴は、シール部材よりも軸方向の一方側に配置されているとともに、内壁第1部と内壁第2部との両方に対して、軸方向に直交する一方向で対向しており、
内壁第2部と嵌合部の外壁との間に、隔壁貫通穴に連通するとともに、ハウジング貫通穴に連通する環状の隙間(S1)が形成されており、
隔壁貫通穴は、その隔壁貫通穴のうち内壁第2部に対して一方向に対向する部位では環状の隙間へ連通する一方で、内壁第1部に対して一方向に対向する部位ではその内壁第1部によって塞がれている。
【0011】
これによれば、ハウジングの内壁第2部は、内壁第1部から軸方向の一方側に進むにつれて、軸方向に直交する方向での軸心からの距離が徐々に増大するテーパ形状である。このように、内壁第2部は、内壁第1部との間に段差を形成することなく、内壁第1部の軸方向の一方側に連なっている。
【0012】
このため、ハウジングと隔壁部の組み付けにおいて、シール部材が装着された嵌合部を、ハウジングに対して軸方向の一方側から内壁第2部および内壁第1部の内側に挿入するときに、シール部材が段差に引っ掛かることはない。よって、このバルブ装置では、ハウジングと隔壁部との組み付け性が良い。
【0013】
さらに、これによれば、隔壁貫通穴は、隔壁貫通穴の延伸方向で、内壁第1部と内壁第2部との両方に対向している。内壁第2部と嵌合部の外壁との間に、隔壁貫通穴に連通するとともに、ハウジング貫通穴に連通する環状の隙間が形成されている。
【0014】
このため、環状の隙間を形成するために、ハウジングの内壁のうち軸方向で隔壁貫通穴と同じ位置の部分を、嵌合部の外壁から離す必要が無い。すなわち、上記した従来のバルブ装置と比較して、軸方向で隔壁貫通穴と同じ位置の部分を、嵌合部の外壁に近づけることができる。このため、本発明のバルブ装置と従来のバルブ装置とにおいて、第1内壁部の軸心からの距離を同じとする。本発明のバルブ装置と従来のバルブ装置とにおいて、軸方向で隔壁貫通穴と同じ位置におけるハウジングの壁の厚さを同じとする。このとき、本発明のバルブ装置によれば、従来のバルブ装置と比較して、隔壁貫通穴の位置における軸心からハウジングの外壁までの距離を小さくすることができる。すなわち、バルブ装置の外形寸法を小さくすることができる。
【0015】
このように、本発明のバルブ装置によれば、従来のバルブ装置と比較して、ハウジングと隔壁部との組付け性の向上と、バルブ装置の小型化とを両立することができる。
【0016】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態のバルブ装置を適用した冷却システムの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態のバルブ装置の模式的な断面図である。
【
図3】第1実施形態のバルブ装置の模式的な側面図である。
【
図4】第1実施形態のバルブ装置の模式的な斜視図である。
【
図7】
図6に対応する部分における比較例1のバルブ装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0019】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1~
図6に基づいて説明する。バルブ装置10は、例えば、車両のエンジン2を冷却する冷却水を循環させる冷却システム1に適用されるものであって、冷却システム1を循環する冷却水の流量を調整するものである。本明細書でいう冷却水とは、例えば、エチレングリコールを主成分とする冷却液のことである。なお、冷却液として、他の液体が用いられてもよい。
【0020】
図1に示すように、冷却システム1は、バルブ装置10と、エンジン2と、空調用熱交換器3と、オイルクーラ4と、ラジエータ5と、ウォータポンプ6とを含んで構成されている。
【0021】
エンジン2は、点火プラグ等を収容するシリンダヘッド201と、シリンダ等を収容するシリンダブロック202と、冷却水の通路であるウォータジャケット203とを含んで構成されている。ウォータジャケット203を流れる冷却水は、シリンダ等を駆動させることで発生した熱と熱交換することで加熱される。ウォータジャケット203の出口には、バルブ装置10が接続されている。
【0022】
バルブ装置10は、ウォータジャケット203の出口が配置されているシリンダヘッド201に設けられている。バルブ装置10には、ウォータジャケット203を通過することによって加熱された冷却水が流入される。バルブ装置10は、流入された冷却水を空調用熱交換器3、オイルクーラ4およびラジエータ5等の各機器のそれぞれに対して、必要な流量を流出可能に構成されている。
【0023】
空調用熱交換器3は、バルブ装置10から流出された冷却水と、車室内に送風する空気とを熱交換させることによって、冷却水の熱を放熱するものである。空調用熱交換器3の下流側に、ウォータポンプ6が接続されている。空調用熱交換器3を通過した冷却水は、ウォータポンプ6に流入する。
【0024】
オイルクーラ4は、バルブ装置10から流出された冷却水をオイルと熱交換させることによって、オイルを冷却するものである。オイルクーラ4の下流側に、ウォータポンプ6が接続されている。オイルクーラ4を通過した冷却水は、ウォータポンプ6に流入する。
【0025】
ラジエータ5は、バルブ装置10から流出された冷却水を外気と熱交換させることによって、冷却水の熱を放出するものである。ラジエータ5の下流側に、ウォータポンプ6が接続されている。ラジエータ5を通過した冷却水は、ウォータポンプ6に流入する。
【0026】
ウォータポンプ6の上流側に、空調用熱交換器3と、オイルクーラ4と、ラジエータ5とが接続されている。ウォータポンプ6の下流側に、ウォータジャケット203の入口側が接続されている。ウォータポンプ6は、空調用熱交換器3と、オイルクーラ4と、ラジエータ5とのそれぞれから流入した冷却水を、ウォータジャケット203に流入させる。
【0027】
このように、冷却システム1は、ウォータポンプ6が冷却水を循環させつつ、バルブ装置10が各機器のそれぞれに対して、必要な流量の冷却水を流出可能に構成されている。
【0028】
続けて、バルブ装置10について説明する。バルブ装置10は、
図2に示すように、ハウジング20、バルブ30、パイプ部材50、隔壁部60、駆動部70、駆動部カバー80を備えている。
図2に示される軸方向D1は、後述するシャフト32の軸方向である。シャフト32の軸方向は、シャフト32の軸心Axrに平行な方向である。
図2に示される軸直交方向D2は、シャフト32の軸方向に直交する一方向である。また、
図2に示されるハウジング20、パイプ部材50、駆動部カバー80は、
図3、4にも示されている。
【0029】
ハウジング20は、バルブ30を収容する収容部であって、樹脂部材によって有底筒状に形成されている。ハウジング20は、内部に形成された内部空間23を有している。ハウジング20は、ハウジング20の内部空間23を形成するハウジング内壁21およびハウジング20の外殻を形成するハウジング外壁22を有している。
【0030】
ハウジング内壁21は、内部空間23が円柱形状に形成されるように円筒状に形成されている。内部空間23に、バルブ30が配置される。
【0031】
ハウジング外壁22は、エンジン2を取り付けるためのエンジン取付面25と、パイプ部材50を取り付けるためのパイプ取付面26と、底側の面を構成するハウジング底面27と、隔壁部60を取り付けるためのハウジング開口面28とを含む。エンジン取付面25とパイプ取付面26とは、互いに対向する位置に配置されている。換言すると、パイプ取付面26は、ハウジング20のうちエンジン取付面25側とは反対側に配置されている。エンジン取付面25とパイプ取付面26とは、略平行である。また、ハウジング底面27とハウジング開口面28とは、互いに対向する位置に配置されている。ハウジング底面27とハウジング開口面28とは、略平行である。
【0032】
エンジン取付面25は、略平面状であって、エンジン2を取り付け可能に形成されている。また、エンジン取付面25には、内部空間23に冷却水を流入させるための入口ポート251が形成されている。入口ポート251は、円形状に開口して形成され、ウォータジャケット203が接続されている。入口ポート251は、ハウジングの内部空間に冷却液が流入する流入口に相当する。
【0033】
パイプ取付面26は、略平面状であって、後述するパイプ部材50を取り付け可能に構成されている。パイプ取付面26には、入口ポート251を介して内部空間23に流入した冷却水をパイプ部材50に流出させるための第1出口ポート261と、第2出口ポート262と、第3出口ポート263とが形成されている。第1出口ポート261、第2出口ポート262および第3出口ポート263のそれぞれは、円形状に開口して形成されている。第1出口ポート261、第2出口ポート262および第3出口ポート263のそれぞれは、パイプ取付面26のうち軸方向D1で異なる位置に配置されている。第1出口ポート261、第2出口ポート262または第3出口ポート263は、ハウジングの内部空間から冷却液が流出する流出口に相当する。
【0034】
ハウジング底面27は、略平面状であって、エンジン取付面25およびパイプ取付面26に連なって配置されている。また、ハウジング底面27の内側のハウジング内壁21には、後述するシャフト32を回転可能に支持するためのシャフト支持部271が配置されている。
【0035】
ハウジング開口面28は、略平面状であって、後述する隔壁部60を取り付け可能に形成されている。ハウジング開口面28には、内部空間23とハウジング20の外部空間とを連通させるためのハウジング開口部281が形成されている。ハウジング開口部281は、ハウジング20のうち内部空間23とハウジング20の外部空間とを連通させる開口空間を囲む部分である。ハウジング開口面28に隔壁部60が取り付けられることによって、ハウジング開口部281が閉塞される。
【0036】
パイプ部材50は、ハウジング20に対して軸直交方向D2の一方側に取り付けられる。本実施形態では、ハウジング20に対する軸直交方向D2の他方側は、エンジン側である。したがって、パイプ部材50は、ハウジング20に対してエンジン2側とは反対側に取り付けられる。パイプ部材50は、内部空間23に流入した冷却水を、空調用熱交換器3、オイルクーラ4、ラジエータ5等の各機器に流すためのものである。パイプ部材50は、例えば、樹脂部材で形成されている。
【0037】
パイプ部材50は、第1出口ポート261、第2出口ポート262および第3出口ポート263のそれぞれに連通する通路を形成する複数のパイプを有する。具体的には、パイプ部材50は、
図2、3、4に示すように、複数のパイプとしての第1パイプ部51、第2パイプ部52、第3パイプ部53、第4パイプ部54、および、第5パイプ部55と、パイプ連結部56とを有する。各パイプ部51、52、53、54、55は、円筒状に形成されている。
【0038】
パイプ連結部56は、第1パイプ部51と、第2パイプ部52と、第3パイプ部53とを連結させるとともに、パイプ部材50をパイプ取付面26に取り付けるためのものである。パイプ連結部56は、パイプ取付面26に当接して固定可能なように形成されている。また、
図2に示すように、パイプ連結部56とパイプ取付面26との間には、冷却水がバルブ装置10の外部に漏れることを抑制するためのガスケット57が配置されている。
【0039】
第1パイプ部51の冷却水流れ上流側は、第1出口ポート261の内側に配置されている。第1パイプ部51の冷却水流れ下流側は、図示しないホースを介してラジエータ5に接続されている。第2パイプ部52の冷却水流れ上流側は、第2出口ポート262の内側に配置されている。第2パイプ部52の冷却水流れ下流側は、図示しないホースを介して空調用熱交換器3に接続されている。第3パイプ部53の冷却水流れ上流側は、第3出口ポート263の内側に配置されている。第3パイプ部53の冷却水流れ下流側は、図示しないホースを介してオイルクーラ4に接続されている。
【0040】
第4パイプ部54の冷却水流れ上流側は、
図4に示すように、第1パイプ部51の冷却水流れ上流側に接続されている。第4パイプ部54の冷却水流れ下流側は、図示しないホースを介して、図示しないリザーバタンクに接続されている。第5パイプ部55の冷却水流れ上流側は、
図2に示すように、第2パイプ部52の冷却水流れ上流側に接続されている。第5パイプ部55の冷却水流れ下流側は、図示しないホースを介して、図示しないスロットルに接続されている。
【0041】
また、第1パイプ部51~第3パイプ部53と第1出口ポート261~第3出口ポート263とのそれぞれの間には、シールユニット58が配置されている。シールユニット58は、第1パイプ部51~第3パイプ部53と第1出口ポート261~第3出口ポート263とのそれぞれの間の隙間から冷却水が漏れることを抑制するためのものである。シールユニット58には、冷却水の流れ上流側に冷却水の漏れを抑制するためのバルブシール581が配置されている。
【0042】
バルブシール581は、例えば、樹脂部材で略円環状に形成され、内側に形成されるシール開口部582に冷却水が流入可能に構成されている。バルブシール581は、冷却水の流れ上流側の面が後述する弁体31の外周壁に当接するように配置されている。
【0043】
隔壁部60は、内部空間23とハウジング20の外部空間とを隔てる壁である。隔壁部60は、ハウジング20と別体の部材である。隔壁部60は、内部空間23に対して軸方向D1の一方側に配置されている。隔壁部60は、ハウジング開口面28に当接して固定されている。隔壁部60は、例えば、樹脂部材で板状に形成されており、ハウジング開口部281を覆うように配置されている。
【0044】
隔壁部60は、シャフト32を保持する部材と、駆動部70を収容する部材とを兼ねている。すなわち、隔壁部60は、ハウジング開口部281を閉塞するとともに、後述するバルブ30を保持する。さらに、隔壁部60は、駆動部カバー80との間に駆動部70を収容する空間を形成する。
【0045】
具体的には、隔壁部60は、
図2に示すように、当接部601と、開口閉塞部61とを有している。当接部601は、隔壁部60のうちハウジング開口面28に当接する板状の部分である。開口閉塞部61は、隔壁部60のうちハウジング開口部281を閉塞する部分である。
【0046】
開口閉塞部61には、後述するバルブ30のシャフト32が挿通されるシャフト挿通穴62が形成されている。シャフト挿通穴62は、回転軸が挿通される挿通穴に対応する。また、隔壁部60には、シャフト挿通穴62に挿通されたシャフト32を保持するための軸受部63が設けられている。
【0047】
シャフト挿通穴62は、軸心方向がハウジング内壁21の軸心方向と同一方向であって、シャフト挿通穴62にシャフト32が挿入された際にシャフト挿通穴62の軸心および軸受部63の軸心がシャフト32の軸心Axrと同一軸心上になるように形成されている。
【0048】
軸受部63は、例えば、ボールベアリングで構成されており、シャフト挿通穴62に挿通されたシャフト32を回転させつつ支持可能に構成されている。また、軸受部63の外周部には、軸受部63を配置するための金属環64が配置されている。金属環64は、例えば、金属部材で略円環状に形成されている。
【0049】
開口閉塞部61は、ハウジング開口部281の内側の開口空間に配置されている。開口閉塞部61は、略円板状であって、板厚方向がハウジング内壁21の軸心方向と同一方向になるように形成されている。開口閉塞部61は、開口閉塞部61の外壁がハウジング開口部281の内壁に対して、軸方向D1に直交する方向で対向するように配置されている。ハウジング開口部281の内壁は、ハウジング内壁21のうちハウジング開口部281を構成する部分である。
【0050】
また、開口閉塞部61の外壁とハウジング開口部281の内壁との間には、略円環状のハウジングシール部材65が配置されている。ハウジングシール部材65は、隔壁部60とハウジング20との間の隙間を塞ぐシール部材である。ハウジングシール部材65は、開口閉塞部61の外壁とハウジング開口部281の内壁との間に生じる隙間を塞いでいる。
【0051】
ハウジング20と隔壁部60との組付けでは、開口閉塞部61の外壁に、ハウジングシール部材65が装着される。この状態では、ハウジングシール部材65の外径は、ハウジング開口部281の内径より大きい。この状態で、開口閉塞部61がハウジング開口部281の内側に挿入される。これにより、ハウジングシール部材65は、ハウジング開口部281と開口閉塞部61との間に配置される。この際、ハウジングシール部材65は、ハウジング開口部281の径方向内側に圧縮される。
【0052】
また、開口閉塞部61には、シャフト挿通穴62の内周部に、シャフトシール部材66が配置されている。シャフトシール部材66は、内部空間23に流入した冷却水がシャフト挿通穴62に流れることを抑制するためのものであって、樹脂部材で略円環状に形成されている。シャフトシール部材66は、内径がシャフト32の外径に比較して小さく形成されている。なお、シャフトシール部材66には、シャフトシール部材66がシャフト挿通穴62の内周部に配置された状態でシャフト32が挿通される。
【0053】
また、開口閉塞部61には、開口閉塞部61を貫通する隔壁貫通穴67が形成されている。隔壁貫通穴67は、シャフト挿通穴62から軸直交方向D2に延伸している。隔壁貫通穴67は、ハウジングシール部材65よりも軸方向D1の一方側に配置されている。隔壁貫通穴67は、ハウジング20を貫通して形成されたハウジング貫通穴291に連通している。このため、隔壁貫通穴67およびハウジング貫通穴291によって、シャフト挿通穴62に流れ込んだ冷却水をハウジング20の外部に排出することができる。
【0054】
ハウジング20は、ハウジング外周部29を有する。ハウジング外周部29は、ハウジング開口面28のうち外周側の部分に立設する壁である。ハウジング外周部29は、ハウジング開口面28から軸方向D1の一方側に延びている。ハウジング外周部29は、その内側の空間を囲む筒状である。ハウジング外周部29は、ハウジング開口面28に当接した状態の隔壁部60の周囲全域を覆っている。ハウジング外周部29は、駆動部カバー80と結合している。ハウジング外周部29は、駆動部カバー80とともに、駆動部70を収容する収容部の外形を構成している。
【0055】
図5に示すように、ハウジング外周部29のうちエンジン取付面25側の部分に、ハウジング貫通穴291が形成されている。また、ハウジング貫通穴291は、隔壁貫通穴67よりも軸方向D1の一方側に配置されている。すなわち、ハウジング貫通穴291の軸心Ax1と、隔壁貫通穴67の軸心Ax2とは、軸方向D1で異なる位置にある。ハウジング貫通穴291の開口全域は、ハウジング貫通穴291の軸心方向で、隔壁外周部602の外壁603に対向している。
【0056】
これにより、ハウジング20の外部からハウジング貫通穴291に水が侵入しても、ハウジング20の外部からの水は、隔壁外周部602の外壁603に当たる。このため、ハウジング20の外部から隔壁貫通穴67への水の侵入を抑制することができる。例えば、洗車時の高圧の水がハウジング貫通穴291を通過しても、通過した高圧の水は隔壁外周部602の外壁603に当たる。このため、ハウジング20の外部からの隔壁貫通穴67への高圧の水の侵入を抑制することができる。
【0057】
また、
図5、
図6に示すように、開口閉塞部61の外壁610には、外壁第1部611と、外壁第2部612と、外壁第3部613とが含まれる。外壁第1部611は、ハウジングシール部材65が装着される面である。外壁第1部611は、ハウジングシール部材65の内側に位置し、ハウジングシール部材65に接する。外壁第1部611は、軸心Axrを含む断面において、軸心Axrに直交する方向での軸心Axrからの距離が一定である。
【0058】
外壁第2部612は、外壁第1部611の軸方向D1の一方側の端からシャフト32の径方向外側に延伸している。外壁第2部612は、軸方向D1に直交する面である。
【0059】
外壁第3部613は、外壁第1部611よりも軸方向D1の一方側に位置する。外壁第3部613は、外壁第2部612のシャフト32の径方向外側の端に連なっている。外壁第3部613は、軸方向D1に延伸している。すなわち、外壁第3部613は、軸心Axrを含む断面において、軸心Axrに直交する方向での軸心Axrからの距離が一定である。同じ断面で比較したとき、外壁第3部613の軸心Axrからの距離は、外壁第1部611の軸心Axrからの距離よりも大きい。外壁第3部613のうちエンジン取付面25側の部分613aに、隔壁貫通穴67が開口している。
【0060】
また、
図2、5に示すように、隔壁部60は、隔壁外周部602を有する。隔壁外周部602は、隔壁部60のうち外周側の端部に位置する。隔壁外周部602は、隔壁部60の周囲全域にわたって配置されている。隔壁外周部602は、駆動部カバー80と結合する部分である。
図2に示すように、隔壁外周部602は、ハウジング外周部29に覆われる。
【0061】
図5、
図6に示すように、隔壁部60は、隔壁外周部602の外壁603と、外壁第4部614とを有する。外壁第4部614は、外壁第3部613のうちエンジン取付面25側の部分613aと、隔壁外周部602の外壁603のうちエンジン取付面25側の一部603aとの両方に連なっている。外壁第4部614は、外壁第3部613から軸方向D1の一方側へ向かうにつれて、軸直交方向D2での軸心Axrからの距離が徐々に増大する形状である。隔壁外周部602の外壁603のうちエンジン取付面25側の一部603aに対して、ハウジング貫通穴291は、軸直交方向D2で対向している。
【0062】
図5、6に示すように、ハウジング内壁21のうち軸方向D1に直交する方向で開口閉塞部61に対向する部分は、筒状の内壁第1部211と、筒状の内壁第2部212とを含む。換言すると、開口閉塞部61は、内壁第1部211と内壁第2部212とのそれぞれの内側に配置された状態で、ハウジング20と嵌合している。したがって、開口閉塞部61は、ハウジングに嵌合する嵌合部である。
【0063】
内壁第1部211は、ハウジング20のうち軸方向D1の一方側に位置する。内壁第1部211は、軸方向D1に平行に延伸している。すなわち、内壁第1部211は、軸心Axrを含む断面において、軸方向D1に直交する方向での軸心Axrからの距離が一定である。内壁第1部211は、ハウジング20に隔壁部60が組み付けられた状態で、ハウジングシール部材65と接する。ハウジングシール部材65は、開口閉塞部61の外壁の周方向全域を囲むように、開口閉塞部61に装着される。ハウジングシール部材65は、開口閉塞部61の外壁と内壁第1部211との間に挟まれている。
【0064】
内壁第2部212は、内壁第1部211に対して軸方向D1の一方側に連なっている。内壁第2部212は、軸心Axrを含む断面において、軸方向D1の一方側に進むにつれて、軸方向D1に直交する方向での軸心Axrからの距離が徐々に増大するテーパ形状である。
【0065】
図6に示すように、ハウジング外周部29の内壁292のうちエンジン取付面25側の一部292aは、内壁第2部212に対して軸方向D1の一方側に連なっている。この一部292aは、ハウジングが有する内壁第3部に対応する。この一部292aには、ハウジング貫通穴291が形成されている。
【0066】
隔壁貫通穴67は、シャフト挿通穴62から軸直交方向D2に延伸している。隔壁貫通穴67は、内壁第1部211と内壁第2部212との両方に対して、軸直交方向D2で対向している。内壁第2部212と隔壁部60との間に、隔壁貫通穴67に連通する隙間S1が形成されている。隙間S1は、環状に形成されており、開口閉塞部61の外壁610の周方向全域にわたって連続している。隙間S1のうちエンジン取付面25側の部分は、軸方向D1での外壁第4部614と内壁第2部212との間に形成されている。隔壁外周部602の外壁603のうちエンジン取付面25側の一部603aとハウジング外周部29の内壁292のうちエンジン取付面25側の一部292aとの間の隙間を介して、隙間S1は、ハウジング貫通穴291にも連通している。
【0067】
続いて、バルブ30について説明する。
図2に示すように、バルブ30は、所謂ボールバルブであって、樹脂製の弁体31および金属製のシャフト32を有している。弁体31は、バルブ30から流出する冷却液の流量を制御する。換言すると、弁体31は、第1出口ポート261、第2出口ポート262および第3出口ポート263のそれぞれから流出される冷却液の流量を調整する。弁体31は、例えば、シャフト32に連結されており、シャフト32の軸心Axrを中心にシャフト32と一体に回転可能に構成されている。
【0068】
シャフト32は、弁体31を回転させる回転軸である。シャフト32の横断面形状は、略真円の円柱形状である。また、シャフト32の軸方向D1の一方側の端部は、後述するギア部72に接続されている。シャフト32の軸方向D1の他方側の端部は、シャフト支持部271に接続されている。
【0069】
弁体31は、シャフト32の軸心Axrに沿って延びて形成されている。弁体31は、第1ボールバルブ33と、第2ボールバルブ34と、第3ボールバルブ35と、筒状接続部314と、筒状バルブ接続部315と、シャフト接続部316とを含んで構成されている。第1ボールバルブ33および第2ボールバルブ34が、筒状の筒状接続部314を介して接続されている。第2ボールバルブ34および第3ボールバルブ35が、筒状の筒状バルブ接続部315を介して接続されている。
【0070】
第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35の中央にシャフト接続部316が配置されている。弁体31は、シャフト接続部316を介してシャフト32に接続されている。弁体31は、例えば、第1ボールバルブ33と、第2ボールバルブ34と、第3ボールバルブ35と、筒状接続部314と、筒状バルブ接続部315と、シャフト接続部316とが、射出成形によって一体成形された一体成形体で構成されている。
【0071】
第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35は、それぞれ筒状であって、第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35のそれぞれの軸心がシャフト32の軸心Axrと同一軸心上になるようにシャフト32に沿って並んで配置されている。また、第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35のそれぞれは、シャフト32の軸方向D1の中央部分がシャフト32の軸方向D1の両端側に比較して径方向外側に膨らんで形成されている。また、第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35のそれぞれは、シャフト32の軸方向D1の両端側が開口するとともに、内側に冷却水が流れる流路部36が形成されている。
【0072】
第1ボールバルブ33および第2ボールバルブ34の間には、筒状接続部314の外周部とハウジング内壁21との間に形成される第1バルブ間空間37が設けられている。すなわち、第1ボールバルブ33の内側に形成される流路部36と第2ボールバルブ34の内側に形成される流路部36とは、第1バルブ間空間37を介して連通している。
【0073】
第2ボールバルブ34および第3ボールバルブ35は、互いの外周部が筒状バルブ接続部315の外周部を介して連なり、互いの内周部が筒状バルブ接続部315の内周部を介して連なっている。すなわち、第2ボールバルブ34の内側に形成される流路部36と第3ボールバルブ35の内側に形成される流路部36とは、筒状バルブ接続部315の内部に設けられる第2バルブ間空間38を介して連通している。
【0074】
また、第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35のそれぞれの外周部に、内側に形成される流路部36を第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35の外側に連通させる開口部が形成されている。具体的には、第1ボールバルブ33の外周部に、第1弁体開口部331が形成されている。第2ボールバルブ34の外周部に、第2弁体開口部341が形成されている。第3ボールバルブ35の外周部に、第3弁体開口部351が形成されている。
【0075】
第1ボールバルブ33は、第1弁体開口部331が第1出口ポート261に連通するとともに、第1出口ポート261に配置されたバルブシール581のシール開口部582に連通可能な位置に配置されている。第2ボールバルブ34は、第2弁体開口部341が第2出口ポート262に連通するとともに、第2出口ポート262に配置されたバルブシール581のシール開口部582に連通可能な位置に配置されている。第3ボールバルブ35は、第3弁体開口部351が第3出口ポート263に連通するとともに、第3出口ポート263に配置されたバルブシール581のシール開口部582に連通可能な位置に配置されている。また、筒状接続部314は、入口ポート251に対向する位置に配置されている。
【0076】
すなわち、バルブ30は、エンジン2から流出した冷却水が入口ポート251を介して内部空間23に流れ込み、第1バルブ間空間37を介して第1ボールバルブ33~第3ボールバルブ35のそれぞれの流路部36に流入可能に構成されている。また、バルブ30は、弁体31が回転することで、第1弁体開口部331~第3弁体開口部351のそれぞれが対応する第1出口ポート261~第3出口ポート263に配置されたバルブシール581のシール開口部582から冷却水を流出可能に構成されている。
【0077】
また、バルブ30は、第1弁体開口部331~第3弁体開口部351と、シール開口部582とが重なる面積に応じて、弁体31から流出する冷却水の流量を制御可能に構成されている。すなわち、第1弁体開口部331から流出する冷却水の流量と、第2弁体開口部341から流出する冷却水の流量と、第3弁体開口部351から流出する冷却水の流量とは、弁体31の回転角度によって制御される。
【0078】
続いて、駆動部70および駆動部カバー80について説明する。駆動部カバー80は、駆動部70を収容するためのものである。駆動部70および駆動部カバー80は、
図2に示すように、隔壁部60に対して、ハウジング開口面28が当接する面と反対側の面に配置されている。すなわち、駆動部70および駆動部カバー80は、ハウジング20に対して軸方向D1の一方側におけるハウジング20の外側に配置されている。駆動部カバー80は、凹状に形成されている。駆動部カバー80の内側には、駆動部70を収容する空間である駆動部空間81が形成されている。
【0079】
駆動部70は、駆動部空間81に配置されている。駆動部70は、弁体31を駆動する。すなわち、駆動部70は、シャフト32を駆動する。駆動部70は、シャフト32を介して弁体31を回転させるための動力を出力するモータ71と、モータ71から出力された動力をシャフト32に伝えるギア部72とを含んで構成されている。ギア部72は、シャフト32が挿入されるシャフト挿入部73を有している。シャフト挿入部73には、シャフト32の端部を形成するシャフト端部40が圧入されている。
【0080】
また、バルブ装置10は、回転角センサ74を備える。回転角センサ74は、ギア部72の回転角度、すなわち、シャフト32の回転角度を検出するセンサである。回転角センサ74は、駆動部カバー80の内側に収容されている。すなわち、回転角センサ74は、駆動部70と同様に、ハウジング20に対して軸方向D1の一方側におけるハウジング20の外側に配置されている。
【0081】
具体的には、回転角センサ74は、駆動部カバー80の駆動部空間81側に取り付けられている。回転角センサ74は、ホール素子を内蔵したホール式センサであって、ギア部72の回転角度を非接触で検出可能に構成されている。回転角センサ74は、図示しないECUに接続されており、検出したギア部72の回転角度をECUに送信可能に構成されている。ECUは、回転角センサ74から送信されたギア部72の回転角度に基づいて、シャフト32の回転角度を算出可能に構成されている。
【0082】
図2、3、4に示すように、駆動部カバー80は、カバー本体82と、カバー本体82から突き出ているコネクタ部83とを有する。
図2に示すように、カバー本体82は、駆動部カバー80のうち内側に駆動部空間81を形成する部分である。コネクタ部83は、駆動部70および回転角センサ74のそれぞれを外部と電気的に接続するための外部接続部である。コネクタ部83は、軸直交方向D2に延伸した筒状である。コネクタ部83の内側に、接続用空間84が形成されている。コネクタ部83の軸直交方向D2の一端側に開口部が形成されている。コネクタ部83の軸直交方向D2の他端側は閉塞されている。接続用空間84に、複数の外部接続端子85の一端側が露出している。複数の外部接続端子85には、モータ71に電気的に接続されるモータ用接続端子と、回転角センサ74に電気的に接続されるセンサ用接続端子とが含まれる。
図2には、複数の外部接続端子85のうちセンサ用接続端子が示されている。
【0083】
続いて、バルブ装置10の作動について説明する。図示しないECUは、車両の運転状態に基づいて、空調用熱交換器3と、オイルクーラ4と、ラジエータ5とのそれぞれに対して必要な冷却水の流量を算出し、必要な流量を流出するための弁体31の回転角度、すなわちモータ71の回転角度を算出する。そして、ECUは、算出したモータ71の回転角度の情報をバルブ装置10に送信する。
【0084】
バルブ装置10は、ECUから受信した回転角度の情報に基づいて、モータ71を回転させる。そして、バルブ装置10は、モータ71を回転させることで、ギア部72およびシャフト32を介して弁体31を回転させる。これにより、第1弁体開口部331~第3弁体開口部351から必要な流量の冷却水が流出する。具体的には、バルブ装置10は、第1弁体開口部331からラジエータ5に必要な流量の冷却水を流出させる。バルブ装置10は、第2弁体開口部341から空調用熱交換器3に必要な流量の冷却水を流出させる。バルブ装置10は、第3弁体開口部351からオイルクーラ4に必要な流量の冷却水を流出させる。
【0085】
また、バルブ装置10は、回転角センサ74が第3ギア723の回転角度を検出し、検出した回転角度の情報をECUに送信する。ECUは、バルブ装置10から受信したギア部72の回転角度の情報に基づいて、シャフト32の回転角度を算出し、空調用熱交換器3と、オイルクーラ4と、ラジエータ5とのそれぞれに対して必要な流量の冷却水が過不足なく供給されているかを判定する。そして、ECUは、空調用熱交換器3と、オイルクーラ4と、ラジエータ5とのそれぞれに対して流出する冷却水が過多または不足する場合、流量が最適となるモータ71の回転角度を算出し、バルブ装置10に算出した回転角度の情報を送信する。
【0086】
バルブ装置10は、モータ71の回転角度の情報をECUから受信し、受信した回転角度の情報に基づいて、モータ71の回転角度の調整を行う。
【0087】
次に、本実施形態のバルブ装置10の効果について、
図7に示す比較例1のバルブ装置J10と対比して説明する。比較例1のバルブ装置J10は、背景技術の欄および発明が解決しようとする課題の欄に記載の従来のバルブ装置に相当する。
【0088】
比較例1のバルブ装置J10では、ハウジング内壁21のうち軸方向D1に直交する方向で開口閉塞部61に対向する部分は、筒状の内壁第1部J211と、筒状の内壁第2部J212と、内壁第3部J213とを含む。内壁第1部J211は、本実施形態の内壁第1部211と同じ部分である。内壁第2部J212は、内壁第1部J211よりも軸方向D1の一方側に位置する。内壁第2部J212は、本実施形態の内壁第2部212と異なり、軸心Axrを含む断面において、軸心Axrからの距離が一定であって、内壁第1部J211よりも軸心Axrからの距離が大きい。内壁第3部J213は、内壁第1部J211と内壁第2部J212との両方に連なっている。内壁第1部J211の軸方向D1の一方側の端から内壁第2部J212の軸方向D1の他方側の端まで、シャフト32の径方向外側に延伸している。内壁第3部J213は、軸方向D1に直交する面である。
【0089】
そして、比較例1のバルブ装置J10では、内壁第2部J212と開口閉塞部61の外壁第3部613との間に、環状の隙間S2が形成されている。この隙間S2は、本実施形態の隙間S1に対応する。また、外壁第4部614は、外壁第3部613から軸方向D1に直交する方向に延伸している。比較例1のバルブ装置J10の他の構成は、第1実施形態のバルブ装置10と同じである。
【0090】
比較例1のバルブ装置J10では、内壁第2部J212は、軸心Axrに直交する方向での軸心Axrからの距離が一定である。このため、内壁第1部J211と内壁第2部J212との間に、段差が形成されている。すなわち、内壁第3部J213が段差面となっている。このため、隔壁部60とハウジング20の組み付けにおいて、ハウジングシール部材65が装着された開口閉塞部61を、ハウジング開口部281の内側に挿入するときに、ハウジングシール部材65が段差に引っ掛かる。よって、比較例1のバルブ装置J10では、隔壁部60とハウジング20の組み付け性が悪い。
【0091】
これに対して、本実施形態のバルブ装置10では、内壁第2部212は、内壁第1部211から軸方向D1の一方側に進むにつれて、軸方向D1に直交する方向での軸心Axrからの距離が徐々に増大するテーパ形状である。内壁第2部212は、内壁第1部211との間に段差を形成することなく、内壁第1部211の軸方向D1の一方側に連なっている。
【0092】
このため、ハウジングシール部材65が装着された開口閉塞部61を、ハウジング20に対して軸方向D1の一方側からハウジング開口部281の内側に挿入するときに、ハウジングシール部材65が段差に引っ掛かることはない。よって、本実施形態のバルブ装置10では、ハウジング20と隔壁部60との組み付け性が良い。
【0093】
また、比較例1のバルブ装置J10では、隙間S2を形成するために、内壁第2部J212の軸心Axrからの距離D11は、内壁第1部J211の軸心Axrからの距離D12よりも大きい。すなわち、ハウジング内壁21のうち軸方向D1で隔壁貫通穴67と同じ位置の部分は、開口閉塞部61の外壁第3部613から離れている。
【0094】
これに対して、本実施形態のバルブ装置10では、隔壁貫通穴67は、軸直交方向D2で、内壁第1部211とテーパ形状の内壁第2部212との両方に対向する位置に配置されている。テーパ形状の内壁第2部212と隔壁部60との間に、環状の隙間S1が形成されている。
【0095】
これによれば、環状の隙間S1を形成するために、ハウジング内壁21のうち軸方向D1で隔壁貫通穴67と同じ位置の部分を、開口閉塞部61の外壁第3部613から離す必要が無い。すなわち、比較例1のバルブ装置J10と比較して、ハウジング内壁21のうち軸方向D1で隔壁貫通穴67と同じ位置の部分を、開口閉塞部61の外壁第3部613に近づけることができる。このため、本実施形態のバルブ装置10と比較例1のバルブ装置J10とにおいて、内壁第1部J211、211の軸心Axrからの距離D12を同じとする。さらに、軸方向D1で隔壁貫通穴67と同じ位置におけるハウジング20の壁の厚さD13を同じとする。このとき、本実施形態のバルブ装置10によれば、隔壁貫通穴67の位置における軸心Axrからハウジング外壁22までの距離である外形寸法D14を、比較例1のバルブ装置J10の外形寸法D15よりも小さくすることができる。
【0096】
このように、本実施形態のバルブ装置10によれば、比較例1のバルブ装置J10と比較して、ハウジング20と隔壁部60との組付け性の向上と、バルブ装置10の小型化とを両立することができる。
【0097】
(他の実施形態)
(1)上記した実施形態では、外壁第4部614は、外壁第3部613から軸方向D1に直交する方向に延伸する形状であってもよい。この場合であっても、外壁第4部614と内壁第2部212との間に、隙間S1を形成することができる。
【0098】
(2)上記した実施形態では、ハウジング貫通穴291は、軸直交方向D2に延伸している。すなわち、ハウジング貫通穴291は、ハウジング20に対して、開口閉塞部61に対する隔壁貫通穴67が開口閉塞部61の外壁610に開口している側と同じ側に形成されている。しかしながら、ハウジング貫通穴291は、ハウジング20に対して、開口閉塞部61に対する隔壁貫通穴67が開口閉塞部61の外壁610に開口している側と異なる側に形成されていてもよい。ハウジング貫通穴291が環状の隙間S1と連通していればよい。ただし、シャフト挿通穴62に流れ込んだ冷却水を速やか排出するという観点では、ハウジング貫通穴291は、ハウジング20に対して、開口閉塞部61に対する隔壁貫通穴67が開口閉塞部61の外壁610に開口している側と同じ側に形成されていることが好ましい。
【0099】
(3)上記した実施形態では、ハウジング外周部29の内壁292のうちエンジン取付面25側の一部292aが、内壁第3部に対応している。しかしながら、内壁第3部は、ハウジング内壁21のうち開口閉塞部61が内側に配置される筒状の部分によって構成されてもよい。すなわち、内壁第3部は、嵌合部が内側に配置される筒状であってもよい。
【0100】
(4)上記した実施形態では、バルブ装置10は、エンジン2の冷却水の流量を調整する。しかしながら、バルブ装置10は、他の液体の流量を調整してもよい。この場合、バルブ装置10は、車両に搭載されるものでなくてもよい。
【0101】
(5)本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能であり、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0102】
20 ハウジング
211 内壁第1部
212 内壁第2部
30 バルブ
32 回転軸
60 隔壁部
61 開口閉塞部
65 ハウジングシール部材
67 隔壁貫通穴
291 ハウジング貫通穴