(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-13
(45)【発行日】2024-02-21
(54)【発明の名称】イヤホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240214BHJP
【FI】
H04R1/10 104A
(21)【出願番号】P 2019206900
(22)【出願日】2019-11-15
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】美和 康弘
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-290667(JP,A)
【文献】特開2016-119527(JP,A)
【文献】特開2009-60157(JP,A)
【文献】特開2013-21590(JP,A)
【文献】国際公開第2010/005039(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1851740(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に組み合わされて内部に空間を有する筐体を構成する第1ハウジング及び第
2ハウジングと、
前記空間に収容されたスピーカユニットと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に挟まれて保持されると共に前記第1
ハウジング及び前記第2ハウジングよりも柔軟なサポータと、
前記サポータの前記第1方向の幅の縮小を規制するインナーフレームと、
を備え
、
前記サポータは、前記第1方向の一方外側に張り出した第1張り出し部及び他方外側に
張り出した第2張り出し部を有し、
前記第1ハウジングは前記第1張り出し部と係合する第1係合部を有し、前記第2ハウ
ジングは前記第2張り出し部と係合する第2係合部を有することを特徴とするイヤホン。
【請求項2】
前記インナーフレームの前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングに対する前記第1
方向に直交する方向の移動を規制するフレーム係合部を有することを特徴とする請求項
1
記載のイヤホン。
【請求項3】
前記筐体が耳介の耳甲介に収まり、前記サポータが前記耳介の内壁に当接して前記耳介
に装着されることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載のイヤホン。
【請求項4】
前記内壁は、前記耳介における対耳輪の内壁であることを特徴とする請求項
3記載のイ
ヤホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イヤホンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、耳介に装着する本体部と、本体部から突出した突出部(サポータ)とを備えたイヤホンが知られている。突出部は、本体部を耳介に装着した状態で耳介の内壁に当接し、装着を安定化させる。
本体部は硬質樹脂で形成されサポータは柔軟性を有するシリコーンゴムなどで形成されていることが望まれる。そのため、従来、本体部の外殻となるハウジングとサポータとをインサート成形によって一体形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インサート成形は、金型が高価であり、高い成形技術が要求されるため高品質で成形できる成形工場が限られる。また、ハウジング及びサポータのいずれか一方の形状が異なるような形状のバリエーション展開をする場合、それぞれの形状に対し専用の金型が必要となり、部材の共用が容易ではない。
このように、耳介に当接する柔軟なサポータを備えたイヤホンについては、インサート成形に関し生産性向上の観点で改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、耳介に当接する柔軟なサポータを備えながらも生産性に優れたイヤホンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明は次の1)の構成を有する。
1) 第1方向に組み合わされて内部に空間を有する筐体を構成する第1ハウジング及び第2ハウジングと、
前記空間に収容されたスピーカユニットと、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの間に挟まれて保持されると共に前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングよりも柔軟なサポータと、
前記サポータの前記第1方向の幅の縮小を規制するインナーフレームと、
を備えたイヤホンである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耳介に当接する柔軟なサポータを備えながらも生産性に優れる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係るイヤホンの実施例であるイヤホン91の構造をモデル化した縦断面図である。
【
図3】
図3は、イヤホン91Aの第1の外観斜視図である。
【
図4】
図4は、イヤホン91Aの第2の外観斜視図である。
【
図6】
図6は、サポータ取り付け構造TKの変形例1であるサポータ取り付け構造TK1を示す部分断面図である。
【
図7】
図7は、サポータ取り付け構造TKの変形例2であるサポータ取り付け構造TK2を示す部分断面図である。
【
図8】
図8は、サポータ取り付け構造TKの変形例3であるサポータ取り付け構造TK3を示す部分断面図である。
【
図9】
図9は、サポータ取り付け構造TKの変形例4であるサポータ取り付け構造TK4を示す部分断面図である。
【
図10】
図10は、サポータ取り付け構造TKの変形例5であるサポータ取り付け構造TK5を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係るイヤホンを、実施例のイヤホン91,91Aにより説明する。
【0010】
(実施例)
図1は、イヤホン91の構造をモデル化して示した縦断面図であり、
図2は、
図1に示されたモデルの分解図である。以下に説明するイヤホン91は、カナル型(耳栓型)であって、右の耳介に装着される右耳用である。左耳用は右耳用と対称形状につき、以下、代表として右耳用のイヤホン91を説明する。
図1には、イヤホン91を右の耳介に装着した状態での左右上下の各方向を矢印で規定している。従って、前方は紙面奥方であり、後方は紙面手前方である。
【0011】
イヤホン91は、第1ハウジング11,第2ハウジング12,インナーフレーム13,サポータ14,スピーカユニット82,及びコード83を有する。
第1ハウジング11及び第2ハウジング12は、イヤホン91を耳介に装着した際にそれぞれ頭部側及び反頭部側となるハウジングである。第1及び第2ハウジングは、第1方向となる左右方向に組み合わされて、内部に空間Vaを形成する中空の筐体1Kとなる。
【0012】
空間Vaには、スピーカユニット82が収容される。スピーカユニット82にはリード83aが接続され、リード83aを内包するコード83が、空間Vaから、第2ハウジング12に突出して形成されたコード引き出し部124の貫通孔122を通して外部に引き出されている。
第1ハウジング11の左端部には、左方に突出する音筒部111が形成されている。音筒部111には、イヤホン91の使用時に外耳道に挿入されるイヤピース81が着脱可能に装着される。
【0013】
インナーフレーム13は、
図1及び
図2に示される横断面形状において、細幅の首部131aを有するT字状の基部131と、基部131の下端から左右方向にそれぞれ突出した突出部13aとを有する。左方に突出した突出部13aを突出部13a1とし、右方に突出した突出部13aを突出部13a2とする。
第1ハウジング11には、突出部13a1が進入して係合するフレーム係合穴11aが設けられている。第2ハウジング12には、突出部13a2が進入して係合するフレーム係合穴12aが設けられている。
【0014】
第1ハウジング11,第2ハウジング12,及びインナーフレーム13は、硬質樹脂で形成されている。樹脂の例はABSである。
【0015】
サポータ14は、第1ハウジング11及び第2ハウジング12よりも柔軟に形成されている。サポータ14の材料例はシリコーンゴムである。
サポータ14は、
図1及び
図2に示されるように、縦断面形状において下方が開放された逆U字形状を呈する基部14aと、基部14aの下端の、開放された開口端部において、左右外方にそれぞれ張り出した張り出し部14bとを有する。左外方に張り出した張り出し部14bを第1張り出し部の張り出し部14b1とし、右外方に張り出した張り出し部14bを第2張り出し部の張り出し部14b2とする。
第1ハウジング11には、張り出し部14b1が進入して係合可能な第1係合部としてのサポータ係合穴11bが設けられ、第2ハウジング12には、張り出し部14b2が進入して係合可能な第2係合部としてのサポータ係合穴12bが形成されている。
【0016】
イヤホン91は、コード83の先端が音楽再生装置などに接続されてスピーカユニット82に音声信号が供給される。スピーカユニット82は、入来した音声信号を音声に変換して左方へ出力する。出力された音声は、音筒部111の内部空間を通りイヤピース81の先端から外部へ放出される。
【0017】
イヤホン91の、
図2に示されるモデルの分解状態からの組み立ては次のように行われる。
まず、
図2に示される矢印DRaのように、インナーフレーム13をサポータ14の開口端部に、基部131の首部131a及び突出部13aが露出するように嵌め込む。
サポータ14の内面の開口幅は、インナーフレーム13の外面の左右方向幅よりもわずかに小さく形成されているので、インナーフレーム13はサポータ14との摩擦により自然落下することなく嵌め込まれた状態で保持される。
【0018】
次いで、スピーカユニット82にリード83aを接続固定する。そして、第1ハウジング11及び第2ハウジング12を、それらの間にサポータ14とサポータ14に保持されたインナーフレーム13との一体物を挟むようにして嵌め合わせて、
図1に示される組み立て状態とする。嵌め合わせの合わせ部位は境界部15で示される。
第1ハウジング11と第2ハウジング12との境界部15における嵌め合わせは、単なる凹凸の強嵌合でもよいし、接着剤を介在させてもよいし、溶着などを施してもよい。
【0019】
サポータ14は、
図1に示されるような内部に空間V14を形成する中空のものに限定されず、内部が中実のものであってもよい。
【0020】
図1に示されるように、サポータ14は、仮に、抜き取ろうとして左右方向の外形の幅D14を狭める力を付与しても、インナーフレーム13がサポータ14の開口端部に概ね隙間なく介在しているので、サポータ14の幅D14を狭めることはできない。
すなわち、インナーフレーム13は、サポータ14における左右方向の幅D14の縮小を規制する。
これにより、サポータ14は、通常の使用状態で本体部1から外れることはない。
そのため、サポータ14を、インサート成形を用いることなく独立した部材として形成し、上述のように組み立てれば、イヤホン91において、サポータ14はインサート成形の場合と実用上で差のない耐離脱強度が得られる。
【0021】
また、サポータ14の開口端部にインナーフレーム13がほぼ隙間なく介在しているので、サポータ14に対し突出量や突出形状が異なる変形形状のサポータも、同じインナーフレーム13を共用して組み立てることが可能である。
【0022】
このように、イヤホン91は、サポータ14を備えていてもインサート成形の専用金型が不要であり、生産性が向上する。
【0023】
上述のモデル構造を、商品のイヤホンとしてデザインした例を、
図3~
図5に示されるイヤホン91Aにより説明する。イヤホン91Aは、左耳用と右耳用とが対称形状であり、以下、右耳用のイヤホン91Aを説明する。
図3はイヤホン91Aを右に装着した状態での頭部の後方から見た図であり、
図4は頭部の前方右斜め上方ら見た図である。
【0024】
イヤホン91Aは、第1ハウジング11及び第2ハウジング12が境界部15で嵌め合わされている。サポータ14は、境界部15の周方向の一部である上斜め前方から上方及び後方を経て後方斜め下方に至る範囲に挟みこまれている。
これにより、イヤホン91Aを耳介に装着した際に、サポータ14が対耳輪の内壁の広い範囲に当接するのでイヤホン91Aの耳介への装着感は良好である。
【0025】
サポータ14の開口側端部には、サポータ14に保持されたインナーフレーム13(サポータ14の内側に隠れるため不図示)が、第1ハウジング11及び第2ハウジング12に挟まれて介在している。
第2ハウジング12におけるコード引き出し部124の貫通孔122からは、コード83が外部に引き出されている。
【0026】
図5は、イヤホン91Aの組み立て図である。
インナーフレーム13は、側面視(例えば左方視)において三ケ月形状の薄い弓形に形成されている。インナーフレーム13の突出部13aは、弓形の長手方向(上下方向)の中央部において左右一つずつ突出部13a1,13a2として鍔状に突出形成されている。
第1ハウジング11には、突出部13a1が進入係合可能なフレーム係合穴11aが形成され、第2ハウジング12には、突出部13a2が進入係合可能なフレーム係合穴12aが形成されている。
【0027】
サポータ14は、側面視(例えば左方視)において、インナーフレーム13より高さが大きい三ケ月形状の弓形に形成されている。サポータ14は、
図5における紙面奥側が開口して袋状に形成されている。
サポータ14の張り出し部14bは、サポータ14の開口端部における長手方向(上下方向)の中央部において、左右それぞれ三つずつ張り出し部14b1,14b2として鍔状に突出形成されている。
第1ハウジング11には、張り出し部14b1が進入係合可能なサポータ係合穴11bが形成され、第2ハウジング12には、張り出し部14b2が進入係合可能なサポータ係合穴12bが形成されている。
【0028】
これにより、イヤホン91Aは、次の手順例で組み立て可能である。
まず、サポータ14に対しインナーフレーム13を
図5の奥側から、矢印DRbのように嵌め込んで一体化した一体物とする。
また、第1ハウジング11の内部に、リード83aを電気接続したスピーカユニット82を矢印DRcのように第1ハウジング11内に収める。コード83の先端側は、鎖線矢印DRdのように、第2ハウジング12のコード引き出し124の貫通孔122(
図3参照)に内側から通して外部に引き出しておく。
【0029】
次いで、第1ハウジング11と第2ハウジング12とを、間にサポータ14とインナーフレーム13との一体物を挟んで組み合わせる。
その際に、インナーフレーム13の突出部13a1は第1ハウジング11のフレーム係合穴11aに係合させ、サポータ14の張り出し部14b1は、第1ハウジング11のサポータ係合穴11bに係合させる。
また、インナーフレーム13の突出部13a2は第2ハウジング12のフレーム係合穴12aに係合させ、サポータ14の張り出し部14b2は、第2ハウジング12のサポータ係合穴12bに係合させる。
インナーフレーム13の突出部13a1,13a2とフレーム係合穴11a,12aとを合わせてフレーム係合部FKとも称する。フレーム係合部FKの係合により、インナーフレーム13の第1ハウジング11及び第2ハウジング12に対する少なくとも左右方向に直交する方向の移動が規制される。
【0030】
上述の手順で明らかなように、イヤホン91A及びそのモデルであるイヤホン91は容易に組み立てることができる。また、イヤホン91A,91において、サポータ14が組み立て後に外れることはない。
また、イヤホン91A,91は、インサート成形を行うことなく、クッションとなるサポータ14を有するイヤホンとして製造が可能である。
そのため、金型は安価であり、構成部品の成形も容易であるから成形工場が限定されることはない。これにより、イヤホン91A,91は生産性に優れる。
【0031】
また、イヤホン91A,91は、インナーフレーム13を用いつつ異なる形状のサポータを用いて組み立てることができる。このように、イヤホン91A,91は部材の共有化が容易であり生産性に優れる。
また、イヤホン91A,91は、第1ハウジング11及び第2ハウジング12を用いつつ、インナーフレーム13及びサポータ14の少なくとも一方を異なる形状のものにできる。この部材共有化の観点でも、イヤホン91A,91は生産性に優れる。
【0032】
以上詳述した実施例は、上述の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形した変形例としてもよい。
【0033】
第1ハウジング11及び第2ハウジング12に対するサポータ14の取り付け構造は、上述の構造に限定されるものではなく、例えば、
図6~
図10それぞれを参照して説明する変形例1~5のように変形することができる。
図6~
図10それぞれに示されたサポータ取り付け構造TK1~TK5は、
図1においてA部で示されるサポータ取り付け構造TKに代替え可能である。イヤホン91のサポータ取り付け構造TKをサポータ取り付け構造TK1~TK5に置き換えた変形例1~5のイヤホンを、イヤホン911~915と称する。
【0034】
(変形例1)
図6に示されるように、変形例1のイヤホン911が備えるサポータ取り付け構造TK1は、インナーフレーム13と第1ハウジング11及び第2ハウジング12との係合部分がなく、サポータ14がインナーフレーム13と第1及び第2ハウジングとに挟まれる部分を有している点でサポータ取り付け構造TKと異なる。
詳しくは、サポータ14は、サポータ取り付け構造TKの場合と同様に、第1ハウジング11に係合する張り出し部14b1及び第2ハウジング12に係合する張り出し部14b2を有する。さらにサポータ14は、インナーフレーム13に内係合部13cとして形成された内係合部13c1,13c2にそれぞれ係合する内張り出し部14c1,14c2を含む内張り出し部14cを有する。
サポータ取り付け構造TK1において、サポータ14は、意図的に抜き取るべくその幅D14を狭めようとしても、インナーフレーム13がサポータ14の開口端部にほぼ隙間なく介在しているので、サポータ14の幅D14を狭めることはできない。これにより、サポータ14は、組み立て後に本体部1から外れることはない。
サポータ取り付け構造TK1では、インナーフレーム13と第1ハウジング11及び第2ハウジング12とが係合していないので、第1ハウジング11及び第2ハウジング12とが係合する境界部15は、段差を付けて位置決めが図られている。
インナーフレーム13を、第1ハウジング11又は第2ハウジング12に対し接着或いは溶着によって固定してより強固に一体化してもよい。
【0035】
(変形例2)
図7に示されるように、変形例2のイヤホン912が備えるサポータ取り付け構造TK2は、インナーフレーム13と第1ハウジング11及び第2ハウジング12との係合部分がない点でサポータ取り付け構造TKと異なる。
サポータ取り付け構造TK2において、サポータ14は、意図的に抜き取るべくその幅D14を狭めようとしても、インナーフレーム13がサポータ14の開口端部にほぼ隙間なく介在しているので、サポータ14の幅D14を狭めることはできない。これにより、サポータ14は、組み立て後に本体部1から外れることはない。
サポータ取り付け構造TK2では、インナーフレーム13と第1ハウジング11及び第2ハウジング12とが係合していないので、第1ハウジング11及び第2ハウジング12とが係合する境界部15は、段差を付けて位置決めが図られている。
インナーフレーム13を、第1ハウジング11又は第2ハウジング12に対し接着或いは溶着によって固定してより強固に一体化してもよい。
【0036】
(変形例3)
図8に示されるように、変形例3のイヤホン913が備えるサポータ取り付け構造TK3は、サポータ14がインナーフレーム13と第1及び第2ハウジングとに挟まれる部分を有している点でサポータ取り付け構造TKと異なる。
詳しくは、サポータ14は、インナーフレーム13と第1ハウジング11との間に挟まれる内張り出し部14c1と、インナーフレーム13と第2ハウジング12との間に挟まれる内張り出し部14c2とを含む内張り出し部14cを有する。
サポータ取り付け構造TK3において、サポータ14は、意図的に抜き取るべく幅D14を狭めようとしても、インナーフレーム13がサポータ14の開口端部にほぼ隙間なく介在しているので、サポータ14の幅D14を狭めることはできない。これにより、サポータ14は、組み立て後に本体部1から外れることはない。
サポータ取り付け構造TK3では、第1ハウジング11及び第2ハウジング12との厚さ方向の組み合わせ位置が、インナーフレーム13により規定されるので、第1ハウジング11と第2ハウジング12とが係合する境界部15は、段差が不要で単に突き当てる形状となっている。
【0037】
(変形例4)
図9に示されるように、変形例4のイヤホン914が備えるサポータ取り付け構造TK4は、インナーフレーム13と第1ハウジング11及び第2ハウジング12との係合部分が、空間Va側に突出して形成されている点でサポータ取り付け構造TKと異なる。
詳しくは、インナーフレーム13は、
図9における下方に突出するT状凸部13dを有する。
T状凸部13dの首部には、第1ハウジング11の端部が進入係合する凹部であるハウジング凹部13d1及び第2ハウジング12の端部が進入係合する凹部であるハウジング凹部13d2が形成されている。T状凸部13dの先端部分は空間Va内に突出している。
サポータ取り付け構造TK4において、サポータ14は、意図的に抜き取るべく幅D14を狭めようとしても、インナーフレーム13がサポータ14の開口端部にほぼ隙間なく介在しているので、サポータ14の幅D14を狭めることはできない。これにより、サポータ14は、組み立て後に本体部1から外れることはない。
サポータ取り付け構造TK4では、第1ハウジング11及び第2ハウジング12との厚さ方向の組み合わせ位置が、インナーフレーム13のT状凸部13dによって規定されるが、空間Va内に突出部分が生じる。空間Vaは、スピーカユニット82のバックキャビティとして機能するため、イヤホン914の再生音に影響が出る虞があり、バックキャビティの密閉性の観点で、空間Va内に突出部分が生じないサポータ取り付け構造TK1~TK3とは異なる再生特性になる場合があり得る。
【0038】
(変形例5)
図10に示されるように、変形例5のイヤホン915が備えるサポータ取り付け構造TK5は、インナーフレーム13に対しサポータ14と第1ハウジング11及び第2ハウジング12とが係合して位置決めされる構造となっている点で、サポータ取り付け構造TKと異なる。
詳しくは、インナーフレーム13は、左右方向それぞれに突出するダボ13e1及びダボ13e2を含むダボ13eを有する。
サポータ14は、ダボ13e1及びダボ13e2がそれぞれ挿通可能なダボ孔14d1及びダボ孔14d2を有する。
第1ハウジング11及び第2ハウジング12は、それぞれダボ13e1及びダボ13e2が進入係合可能なダボ穴11d,12dを有する。
組み立てにおいて、インナーフレーム13のダボ13e1及びダボ13e2それぞれをサポータ14のダボ孔14d1及びダボ孔14d2に挿通する。ダボ13e1,ダボ13e2は十分長く形成されて、なお突出するので、それぞれ第1ハウジング11のダボ穴11d,第2ハウジング12のダボ穴12dに係合させつつ、第1ハウジング11と第2ハウジング12とを組付ける。
サポータ取り付け構造TK5において、サポータ14は、意図的に抜き取るべく幅D14を狭めようとしても、インナーフレーム13がサポータ14の開口端部にほぼ隙間なく介在しているので、サポータ14の幅D14を狭めることはできない。これにより、サポータ14は、組み立て後に本体部1から外れることはない。
サポータ取り付け構造TK5において、フレーム係合部FKは、インナーフレーム13のダボ13e1,13e2、並びに、第1ハウジング11のダボ穴11d及び第2ハウジング12のダボ穴12dが該当する。サポータ取り付け構造TK5においても、フレーム係合部FKの係合により、インナーフレーム13の第1ハウジング11及び第2ハウジング12に対する少なくとも左右方向に直交する方向の移動が規制される。
また、サポータ取り付け構造TK5では、インナーフレーム13,サポータ14,並びに,第1ハウジング11及び第2ハウジング12が一つの部位であるダボ13eにより位置決めされている。これにより、
図10における上下方向の寸法を小さくすることができ、イヤホン915は小型化が容易である。
【0039】
変形例1~5のサポータ取り付け構造TK1~TK5を備えたイヤホン911~915は、いずれもインサート成形を行うことなくクッションとなるサポータ14を有するイヤホンとして製造可能である。そのため、金型は安価で済み成形工場が限定されることはない。これにより、イヤホン911~915は生産性に優れる。
また、イヤホン911~915は、インナーフレーム13を用いつつ異なる形状のサポータを用いて組み立てることができる。この部品共有の観点で、イヤホン911~915は生産性に優れる。
【0040】
実施例及び変形例1~5は、可能な範囲において自由に組み合わせることができる。
【0041】
イヤホン91は、イヤピース81を外耳道内に挿入して使用するカナル型に限定されるものではない。イヤホン91は、音筒部111を有せず本体部1を耳介E内に装着して使用するいわゆるインイヤータイプであってもよい。
【0042】
イヤホン91,91A,911~915は、使用者の耳介に対し、筐体1Kを耳甲介に収めたときに、サポータ14が耳介の内壁に対し当接するように装着される。耳介の内壁は、例えば対耳輪の内壁である。
この装着状態において、通常、サポータ14はわずかに圧縮し、その弾性反発力によって内壁を付勢するので、使用者は良好な装着感が得られ、装着状態が安定的に維持される。
サポータ14は、対耳輪の内壁に当接するものに限定されず、耳介の他の部位の内壁に当接するものであってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 本体部
1K 筐体
11 第1ハウジング
11a フレーム係合穴
11b サポータ係合穴
111 音筒部
12 第2ハウジング
12a フレーム係合穴
12b サポータ係合穴
122 貫通孔
124 コード引き出し部
13 インナーフレーム
13a,13a1,13a2 突出部
13c,13c1,13c2 内係合部
131 基部
131a 首部
14 サポータ
14a 基部
14b,14b1,14b2 張り出し部
14c,14c1,14c2 内張り出し部
15 境界部
81 イヤピース
82 スピーカユニット
83 コード
83a リード
91,91A,911~915 イヤホン
D14 (サポータの)幅
FK フレーム係合部
TK,TK1~TK5 サポータ取り付け構造
Va,V14 空間